IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特許-浴室の床構造および浴室ユニット 図1
  • 特許-浴室の床構造および浴室ユニット 図2
  • 特許-浴室の床構造および浴室ユニット 図3
  • 特許-浴室の床構造および浴室ユニット 図4
  • 特許-浴室の床構造および浴室ユニット 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】浴室の床構造および浴室ユニット
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20240621BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20240621BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
E03C1/20 A
E04F15/00 F
E04H1/12 301
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020154633
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048673
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】澤▲崎▼ 美紀子
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕貴
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-229642(JP,A)
【文献】特開2005-113591(JP,A)
【文献】特開2005-139738(JP,A)
【文献】特開2006-336285(JP,A)
【文献】実開平1-69888(JP,U)
【文献】特開平8-177098(JP,A)
【文献】特開2016-65391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
E04F 15/00-15/22
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水マスを備える浴室の床構造であって、
基材上に並べて固定されることで、前記浴室の床面を構成する複数の床パネルと、
前記排水マスに隣接して配置され、前記排水マスに向けて下り傾斜する溝部と、前記溝部に接続して流水を排水する少なくとも2つの排水面部と、を有する排水パネルと、
を有し、
前記排水パネルは平面視で略矩形状であり、
前記溝部は、前記排水パネルの前記排水マスに向かう方向の辺に平行な直線上に設けられる、浴室の床構造。
【請求項2】
前記排水マス及び前記排水パネルの少なくとも何れかに向けて下り傾斜する少なくとも2つの傾斜面をさらに有し、
前記2つの傾斜面同士の境界に形成される稜線は、前記排水パネルに接続する、請求項1に記載の浴室の床構造。
【請求項3】
前記稜線は、前記排水パネルの上流側端に接続する、請求項2に記載の浴室の床構造。
【請求項4】
前記排水パネルは、前記少なくとも2つの傾斜面それぞれの下流端に隣接して配置される、請求項2または3に記載の浴室の床構造。
【請求項5】
前記浴室の床面は、平面視で略矩形状に形成され、
前記稜線は、前記略矩形床面の1の頂点から、前記頂点から延びる一辺に対して45°に延びて形成される、請求項2から4のいずれかに記載の浴室の床構造。
【請求項6】
前記排水マス上に排水目皿を有し、
前記排水目皿は、その上面に、前記排水パネルの前記溝部の深さに対応する深さの凹形状を有する、請求項1から5のいずれかに記載の浴室の床構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の浴室の床構造を備える、浴室ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浴室の床構造および浴室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浴室の床構造として、複数のタイル材や樹脂製の床パネル材を並べることで床面を形成する床構造が広く使用されている。規格化された小さな複数のパネルを並べることで、多様な形状の浴室床に対応して床パネルを適用することができる。
【0003】
浴室床には排水性が求められるため、床面が排水溝に向けて傾斜していることが好ましい。排水溝が浴室床の一点に配置される場合には、排水溝に向けて異なる角度の複数の傾斜面が形成されることになる。この時、複数の傾斜面の境界には、直線状の稜線が形成される。例えば特許文献1には、床面が稜線を境に5分割され、排水口に向けて傾斜する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-065391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のパネルを並べることで床面を構成する場合、稜線部分を構成するパネルは、初めから表面に稜線の一部を構成する凹凸構造を有するものが製造される。この時、製造コストの観点から、製造されるパネルの種類は少ない方がよい。
【0006】
特許文献1のような複雑な稜線を有する浴室床面や、浴室床面中での排水溝の位置によっては、床面中で排水溝や稜線の配置が複雑となるため、パネルの種類数が多くなり、製造コストが高くなってしまう。
【0007】
例えば略矩形状の床面を有する床構造において、稜線の一端が排水マスに接続しない場合、当該稜線の一端から排水マスまで水が誘導される。このような場合には山状の稜線を有する床パネルを配置してさらに水を排水マスまで誘導することが行われている。しかし、この手法では床パネルの種類数が増えてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、排水マスを備える浴室の床構造であって、前記排水マスに隣接して配置され、前記排水マスに向けて下り傾斜する溝部と、前記溝部に接続して流水を排水する少なくとも2つの排水面部と、を有する排水パネルを有する、浴室の床構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る浴室ユニットを示す斜視図である。
図2】本開示の一実施形態に係る床構造を示す平面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る排水パネルを示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る排水目皿の側面視図である。
図5】本開示の一実施形態に係る排水目皿を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、本実施形態の浴室ユニット100は、略矩形状の床構造1と、シャワー2と、水栓3と、浴槽4と、カウンター5と、を有して構成される。さらに床構造1は、意匠性を有する複数の床パネル10と、排水マス11と、稜線12と、基材13と、を有する。複数の床パネル10は、基材13上に並べて固定されることで浴室床面を構成する。
【0011】
床構造1は、排水マス11に向かって傾斜する複数の傾斜面16を有し、当該複数の傾斜面16同士の間には直線谷状の稜線12が形成される。複数の傾斜面16は図2中に矢印で示すように、排水マス11に向かって水の流れを排水するように傾斜しており、良好な排水性を有する。床パネル10は、排水性を向上させるため、その表面に撥水性を有していてもよい。
【0012】
床パネル10は、基材13上に接着層を介して接着して固定される。接着層を構成する接着剤としては、変性シリコーン樹脂系弾性接着剤等を使用することができる。床パネル10の基材13への固定方法は接着に限定されない。他にも、ビス留めなどの機械的な固定手段によって固定されてもよい。床パネル10は複数並べられて床面を構成し、床パネル10同士の隙間には目地が形成される。
【0013】
床パネル10を構成する材料は、特に限定されない。例えば床パネル10は、樹脂素材、FRP材、タイル材や石材などによって構成される。例えばFRP材で構成されると、高い強度を有する床パネル10が得られる。石材で構成される場合には、石調の意匠を有する高意匠性の床パネル10が得られる。
【0014】
床パネル10には、塗装・印刷等によって趣向に応じた意匠性が付与されていてもよい。例えば、樹脂素材等に塗装・インクジェット印刷されたものをアクリル樹脂によってコーティングしてもよいし、一面に粘着剤を有する化粧シートをラッピングすることで、意匠性を有する床パネル10を構成してもよい。
【0015】
床パネル10はさらに、断熱構造を有していてもよい。これにより、浴室床面の断熱性能が向上し、ユーザが浴室ユニット100を快適に使用することができる。断熱構造としては、床パネルが内部に中空構造を有していてもよいし、熱伝導性の低い材質を有して構成されてもよい。例えばFRP製の床パネル10において、FRP材硬化時に中空充填剤を含有することによって、中空構造とすることができる。
【0016】
中空充填材は、内部に独立気泡を有するものであることが好ましく、無機系のもの、有機系のもの何れでも使用することができ、無機系としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン等を用いる事ができる。有機系としては、ウレタンバルーン、フェノールバルーン、ポリアミドバルーン等を用いる事ができる。無機系のものと有機系のものを合わせて使用する事ができる。さらに、粒径の異なる2種類以上の中空充填材を組み合わせて使用することもできる。
【0017】
床構造1において、複数の床パネル10の間には、目地剤が充填される。目地剤としては、例えばエポキシ系樹脂を使用することができる。複数の床パネル10の間に目地剤を有することで、ユーザが複数の床パネル10間の面段差によって感じる違和感を軽減することができる。
【0018】
さらに、複数の床パネル10間の面段差は、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。この範囲内であれば、複数の床パネルは略面一に並んで構成されるため、ユーザが複数の床パネル10間の面段差によって感じる違和感を軽減することができる。本開示において略面一とは、面段差が2mm以下であることを指す。
【0019】
さらに、床パネル10は、縁が丸み面取りされていることが好ましい。ユーザが床パネル10に接触した際の触り心地を向上させることができる。
【0020】
排水マス11は、床構造1中に形成される凹形状の窪みであり、内部に有する排水口を通じて使用後の水を排水する。排水マス11には排水目皿15によって蓋がなされ、床パネル10の表面を流れる水は蓋との隙間部分に流れ込むことで排水される。蓋の上面は床パネル10の表面と統一された外観を有し、床構造1の一部をなしている。これにより、排水性を維持しつつ意匠性を向上させている。
【0021】
排水マス11は、略矩形状の床構造1のうち、浴槽4側の辺の中点付近に配置されている。排水マス11は、浴室の入り口から遠い側に配置されることが好ましい。使用者が浴室へ入室時に通過する位置に洗体後の汚れた水や髪の毛等が集まる排水溝が配置されていると、清潔性が低下するとともに、悪臭を感じる原因となる等、使用者に不快感を生じさせるためである。
【0022】
図3に示すように稜線12は、谷形状を有する複数の床パネル10を並べて連結することで形成される。すなわち、稜線12の一部を備える床パネル10を予め製造し、所定の場所に並べることで、排水マス11に延びる稜線12が完成する。
【0023】
稜線12の数は、2本程度であることが好ましい。傾斜面16の数が多ければ、排水溝までの経路に沿った傾斜をそれぞれ個別に有することで高い排水性を有する。但し、床面の分割数が多ければ稜線12が多くなり広い平面部分を確保しづらくなる。この点、2本程度であれば、良好な排水性を維持しつつ、平面部分を広く確保できる。稜線12の配置が複雑とならず、必要な床パネル10の種類数が少ない。
【0024】
基材13は、ハンドレイアップ成形されたFRP材で構成され、排水マス11に向かって傾斜する複数の傾斜面16および稜線を備える。図3に示すように、基材13が有する複数の傾斜面16および稜線の位置は、床パネル10を並べた後に形成される浴室床面における傾斜面および稜線12に対応している。すなわち、基材13の傾斜面に合わせて床パネル10を並べることで、床パネル10そのものの厚みに傾斜をつける必要がなく、床パネル10は均一な厚みに製造されたものを使用することができる。これにより、床パネル10の強度および生産効率が向上する。
【0025】
さらに、床パネル10を基材13表面に並べる際には、基材13表面に形成された稜線によって、対応する床パネル10を容易に判別することができる。これにより、床パネル10を所定の位置に配置する作業を短時間でおこなえ、床構造1の製造効率が向上する。
【0026】
排水パネル14は、排水マス11に隣接して配置される。排水パネル14は、排水マス11に向けて下り傾斜する溝部141と、溝部141に向けて傾斜して溝部141に流水を排水する2つの排水面部142と、を有する。排水面部142はさらに、排水マスに向けて下り傾斜していてもよい。
【0027】
排水パネル14を用いることで、稜線12が排水マス11と接続しない場合においても、稜線12の下流側端と排水マスとの距離を排水パネルで調節することができる。そのため、山状の稜線を有する床パネルを使用する必要がなく、稜線12の配置を単純化できるため、床パネル10の種類が少なくなり、床構造1の製造コストが低減する。
【0028】
排水パネル14は、図2に示すように2つ以上の傾斜面16の間に配置されることが好ましい。溝部141に対して両側から水が流れ込み、効率よく排水可能なためである。
【0029】
稜線12は、略矩形の1の頂点から、前記頂点から延びる一辺に対して45°に延びて形成されることが好ましい。例えば、図2において矩形の左下の頂点から、下辺(および左辺)に対して45°に形成されることが好ましい。これにより、稜線12に関する床パネル10の対称性が向上し、床パネル10の種類数を低減することができる。
【0030】
具体的には、図2に示す床パネル101と床パネル102は、同形状の床パネルを180°回転させたものである。稜線12の角度が45°であるために、回転した際に対称性が生じ、同形状の1の部材を複数箇所に適用できるようになる。
【0031】
排水目皿15は、排水マス11の上部に配置され、排水マス11および排水マス11の内部に配置される排水口の蓋となる。排水目皿15は図4に示すように、上面に排水パネル14の溝部141の深さに対応する深さの凹形状151を有する。すなわち、図5に示すように排水パネル14の排水マス11と接する端部と、排水目皿15の上面が略面一になるように構成される。これにより、排水パネル14と排水目皿15の上面の間の面段差によるユーザの違和感を低減することができる。前述のように、略面一とは、面段差が2mm以下であることを指す。
【0032】
以上、本実施形態の浴室の床構造1によれば、以下のような効果が奏される。
【0033】
本実施形態の浴室の床構造1は、排水マス11を備える浴室の床構造1であって、排水マス11に隣接して配置され、排水マス11に向けて下り傾斜する溝部141と、溝部141に接続して溝部141に流水を排水する2つの排水面部142と、を有する排水パネル14を有する。これにより、稜線12と排水マス11との距離を排水パネルで調節することができるため、床パネル10の種類が少なくなり、床構造1の製造コストが低減する。
【0034】
床構造1は、排水マス11または排水パネル14に向けて下り傾斜する少なくとも2つの傾斜面16をさらに有し、2つの傾斜面16同士の境界に形成される稜線12は、排水パネル14に接続する。これにより、稜線12の下流端から排水マス11まで距離があっても、間に介在する排水パネル14によって良好に排水することができるため、排水パネル14の形状の調節によって稜線12の角度を自由に変更でき、必要な床パネルの種類数を低減することができる。
【0035】
稜線12は、排水パネル14の上流側端に接続する。これにより、傾斜面16および稜線12の形状を単純化することができ、床パネル10の種類数が低減できる。
【0036】
排水パネル14は、2つの傾斜面16それぞれの下流端に隣接して配置される。これにより、排水パネル14に対して両側の傾斜面16から水が流れ込むため、効率よく排水可能である。
【0037】
前記浴室の床面は、平面視で略矩形状に形成され、稜線12は、前記略矩形の1の頂点から、前記頂点から延びる一辺に対して45°に延びて形成される。これにより、稜線12に関する床パネル10の対称性が向上し、床パネル10の種類数を低減することができる。
【0038】
排水マス11上に排水目皿15を有し、排水目皿15は、その上面に、排水パネル14の溝部141の深さに対応する深さの凹形状151を有する。これにより、稜線に関する床パネルの対称性が向上するため、床パネル10の種類数が低減できる。
【0039】
本実施形態の浴室ユニット100は、床構造1を備える。これにより、床パネル10の種類が少なく、製造コストの低い浴室ユニット100を提供できる。
【0040】
本開示の床構造を備える浴室ユニットの実施形態としては、図1に示すような浴槽4とシャワーが一体となったタイプのものに限定されず、浴槽4がなくシャワーのみが単独で設けられる浴室ユニットであってもよい。
【0041】
以上、本開示に係る実施形態について説明した。本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、これらを改良・変更したものも本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1…床構造、2…シャワー、3…水栓、4…浴槽、5…カウンター、10,101,102…床パネル、11…排水マス、12…稜線、13…基材、14…排水パネル、141…溝部、142…排水面部、15…排水目皿、151…凹形状、16…傾斜面、100…浴室ユニット
図1
図2
図3
図4
図5