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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/06 20060101AFI20240621BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240621BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H01L27/06 311A
H01L27/04 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020164381
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056567
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杣田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】津留 正臣
(72)【発明者】
【氏名】伊東 健治
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-129531(JP,A)
【文献】特開2019-129171(JP,A)
【文献】特開2006-019511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース端子、ドレイン端子及びゲート端子を有しており、前記ソース端子が、ダイオードのカソード端子と接続されているN型トランジスタと、
ソース端子、ドレイン端子及びゲート端子を有しており、当該ドレイン端子が前記N型トランジスタのドレイン端子と接続され、当該ソース端子が、前記ダイオードのアノード端子と接続されているP型トランジスタと、
前記N型トランジスタのゲート端子と一端が接続され、前記P型トランジスタのソース端子と他端が接続されており、前記N型トランジスタのゲート端子と前記N型トランジスタのソース端子との間を流れる直流電流を抑制する第1の直流電流抑制受動回路と、
前記P型トランジスタのゲート端子と一端が接続され、前記N型トランジスタのソース端子と他端が接続されており、前記P型トランジスタのゲート端子と前記P型トランジスタのソース端子との間を流れる直流電流を抑制する第2の直流電流抑制受動回路と
を備えたダイオード。
【請求項2】
前記第1の直流電流抑制受動回路として、抵抗が用いられ、前記第2の直流電流抑制受動回路として、抵抗が用いられていることを特徴とする請求項1記載のダイオード。
【請求項3】
前記第1の直流電流抑制受動回路として、抵抗とキャパシタとが並列に接続されている並列回路が用いられ、前記第2の直流電流抑制受動回路として、抵抗とキャパシタとが並列に接続されている並列回路が用いられていることを特徴とする請求項1記載のダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダイオードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下の非特許文献1には、クロスカップルペア構造のダイオード(以下「CCPダイオード」と称する)が開示されている。当該ダイオードは、NMOSと、PMOSとを備えている。
当該NMOSのソース端子は、当該PMOSのゲート端子と接続され、当該NMOSのドレイン端子は、当該PMOSのドレイン端子と接続されている。当該NMOSのゲート端子は、当該PMOSのソース端子と接続されている。CCPダイオードは、PMOSのソース端子とNMOSのゲート端子とが接続されている端子をアノード端子として、NMOSのソース端子とPMOSのゲート端子とが接続されている端子をカソード端子としている。
順方向電圧として、カソード端子に印加されている電圧よりも高い電圧がアノード端子に印加されたときは、アノード端子からカソード端子に向かって電流が流れる。即ち、NMOSのドレイン端子とソース端子との間に電流が流れ、PMOSのドレイン端子とソース端子との間に電流が流れる。
逆方向電圧として、NMOSの逆方向降伏電圧とPMOSの逆方向降伏電圧との合計値未満の電圧がカソード端子に印加されたときは、NMOSのゲート端子とソース端子との間、及び、PMOSのゲート端子とソース端子との間のそれぞれは、ゲート端子に印加された電圧によって、強く遮断される。このため、CCPダイオードのカソード端子とアノード端子との間に電流が流れない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Shunya Tsuchimoto et al,. 「SOI-CMOS High Power Rectifier with Cross Coupled CMOS Piar」IEEE, Asia-Pasific Microwave Conference,2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来型の、例えばNMOSのゲート端子とドレイン端子とが接続されたゲート制御型ダイオードでは、ゲート制御型ダイオードとしての逆方向降伏電圧が、NMOSのドレイン端子とソース端子との間の耐圧によって決まる。当該逆方向降伏電圧は、図2に示す逆方向降伏電圧に等しい。ゲート制御型ダイオードに逆方向降伏電圧が印加されたときに流れる電流は、NMOSのドレイン端子とソース端子との間に流れる電流が支配的である。
これに対して、非特許文献1に開示されているCCPダイオードは、ゲート制御型ダイオードと挙動が異なり、逆方向電圧が高くなることによって、逆方向降伏を起こしたときに流れる電流は、NMOSのゲート端子とNMOSのソース端子との間の電流(以下、「第1の電流」と称する)と、PMOSのゲート端子とPMOSのソース端子との間を流れる電流(以下、「第2の電流」と称する)とが支配的となる。このため、CCPダイオードの逆方向耐電圧を高めるには、従来のゲート制御型ダイオードとは異なる対策が必要であった。
しかしながら、非特許文献1には、CCPダイオードの逆方向耐電圧を高める手法が開示されていない。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、非特許文献1に記載のCCPダイオードよりも、逆方向降伏電圧を高めることができるダイオードを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るダイオードは、ゲート端子、ドレイン端子及びソース端子を有しており、ソース端子が、ダイオードのカソード端子と接続されているN型トランジスタと、ゲート端子、ドレイン端子及びソース端子を有しており、当該ドレイン端子がN型トランジスタのドレイン端子と接続され、当該ソース端子が、ダイオードのアノード端子と接続されているP型トランジスタと、N型トランジスタのゲート端子と一端が接続され、P型トランジスタのソース端子と他端が接続されており、N型トランジスタのゲート端子とN型トランジスタのソース端子との間を流れる直流電流を抑制する第1の直流電流抑制受動回路と、P型トランジスタのゲート端子と一端が接続され、N型トランジスタのソース端子と他端が接続されており、P型トランジスタのゲート端子とP型トランジスタのソース端子との間を流れる直流電流を抑制する第2の直流電流抑制受動回路とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、非特許文献1に記載のCCPダイオードよりも、逆方向降伏電圧を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るダイオードを示す構成図である。
図2】NMOS3のドレイン電流についての、ドレイン端子3bとソース端子3aとの間の電圧依存性を示す説明図である。
図3】NMOS3のドレイン電流についての、ゲート端子3cとソース端子3aとの間の電圧依存性を示す説明図である。
図4】PMOS4のドレイン電流についての、ゲート端子4cとソース端子4aとの間の電圧依存性を示す説明図である。
図5】実施の形態2に係るダイオードを示す構成図である。
図6】実施の形態3に係るダイオードを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るダイオードを示す構成図である。
図1に示すダイオードは、カソード端子1及びアノード端子2を有している。
図1に示すダイオードは、クロスカップルペア構造のダイオードであり、NMOS3及びPMOS4を備えている。NMOS3は、N型トランジスタであり、PMOS4は、P型トランジスタである。
図1に示すダイオードでは、N型トランジスタとして、NMOS3が用いられ、P型トランジスタとして、PMOS4が用いられている。しかし、図1に示すダイオードが備えるトラジスタが、N型トランジスタとP型トランジスタとであればよく、NMOS3以外のN型トランジスタを用いてもよいし、PMOS4以外のP型トランジスタを用いてもよい。
また、図1に示すダイオードは、第1の直流電流抑制受動回路5及び第2の直流電流抑制受動回路6を備えている。
【0011】
NMOS3は、ソース端子3a、ドレイン端子3b及びゲート端子3cを有している。
NMOS3のソース端子3aは、カソード端子1及び第2の直流電流抑制受動回路6の他端のそれぞれと接続されている。
NMOS3のドレイン端子3bは、PMOS4のドレイン端子4bと接続されている。
NMOS3のゲート端子3cは、第1の直流電流抑制受動回路5の一端と接続されている。
【0012】
PMOS4は、ソース端子4a、ドレイン端子4b及びゲート端子4cを有している。
PMOS4のソース端子4aは、アノード端子2及び第1の直流電流抑制受動回路5の他端のそれぞれと接続されている。
PMOS4のドレイン端子4bは、NMOS3のドレイン端子3bと接続されている。
PMOS4のゲート端子4cは、第2の直流電流抑制受動回路6の一端と接続されている。
【0013】
第1の直流電流抑制受動回路5の一端は、NMOS3のゲート端子3cと接続されている。
第1の直流電流抑制受動回路5の他端は、PMOS4のソース端子4a及びアノード端子2のそれぞれと接続されている。
第1の直流電流抑制受動回路5は、NMOS3のゲート端子3cとNMOS3のソース端子3aとの間を流れる直流電流を抑制する。
【0014】
第2の直流電流抑制受動回路6の一端は、PMOS4のゲート端子4cと接続されている。
第2の直流電流抑制受動回路6の他端は、NMOS3のソース端子3a及びカソード端子1のそれぞれと接続されている。
第2の直流電流抑制受動回路6は、PMOS4のゲート端子4cとPMOS4のソース端子4aとの間を流れる直流電流を抑制する。
【0015】
図2は、NMOS3のドレイン電流についての、ドレイン端子3bとソース端子3aとの間の電圧依存性を示す説明図である。
図3は、NMOS3のドレイン電流についての、ゲート端子3cとソース端子3aとの間の電圧依存性を示す説明図である。
図4は、PMOS4のドレイン電流についての、ゲート端子4cとソース端子4aとの間の電圧依存性を示す説明図である。
図1に示すダイオードには、順方向電圧として、カソード端子1に印加されている電圧よりも高い電圧がアノード端子2に印加され、図3に示すNMOS3の閾値電圧よりも高い電圧がNMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間に印加され、図4に示すPMOS4の閾値電圧よりも高い電圧がPMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間に印加され、図2に示す順方向降伏電圧未満の電圧がNMOS3のドレイン端子3bとソース端子3aとの間に印加され、かつ、順方向降伏電圧未満の電圧がPMOS4のドレイン端子4bとソース端子4aとの間に印加されるように、アノード端子2に電圧が印加される場合を想定する。
この場合、NMOS3のドレイン端子3bとソース端子3aとの間をドレイン電流が流れ、PMOS4のドレイン端子4bとソース端子4aとの間をドレイン電流が流れるため、アノード端子2からカソード端子1に向かって電流が流れる。即ち、PMOS4のソース端子4a→PMOS4のドレイン端子4b→NMOS3のドレイン端子3b→NMOS3のソース端子3aの経路で電流が流れる。
【0016】
NMOS3のドレイン端子3bとソース端子3aとの間に、図2に示す順方向降伏電圧未満の順方向電圧が印加されているときは、ゲート酸化膜によって電流が遮断されるため、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間に第1の電流が流れない。また、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間に第2の電流が流れない。よって、順方向降伏電圧未満の順方向電圧が印加されているときは、第1の直流電流抑制受動回路5において電圧降下を生じることがなく、第2の直流電流抑制受動回路6において電圧降下を生じることがない。
仮に、順方向降伏電圧以上の順方向電圧が印加された場合、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間に第1の電流が流れ、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間に第2の電流が流れる。以下、第1の電流及び第2の電流のそれぞれを順方向電流と呼ぶことがある。第1の電流が流れることによって、第1の直流電流抑制受動回路5において電圧降下が生じ、第2の電流が流れることによって、第2の直流電流抑制受動回路6において電圧降下が生じる。これにより、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間の電圧が低下し、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間の電圧が低下するため、順方向降伏電圧以上の順方向電圧が印加された場合、順方向電流が抑制される。
ダイオードが使用されるときは、一般的に、順方向降伏電圧未満の順方向電圧が印加され、順方向降伏電圧未満の順方向電圧が印加されたときは、低い閾値電圧によって、多くの電流が流れることが望ましい。順方向降伏電圧未満の順方向電圧では、NMOS3のゲート酸化膜及びPMOS4のゲート酸化膜によって、第1の電流と第2の電流とが流れないため、第1の直流電流抑制受動回路5と第2の直流電流抑制受動回路6とによる電圧降下がなく、アノード端子2とカソード端子1と間の電圧差をそのままNMOS3及びPMOS4におけるそれぞれの閾値電圧として用いることができる。よって、第1の直流電流抑制受動回路5と第2の直流電流抑制受動回路6とは、通常のCCPダイオードの順方向の直流電流電圧特性に悪影響を与ることがない。
【0017】
次に、図1に示すダイオードに対して逆方向電圧が印加されているときの動作について説明する。
まず、図1に示すダイオードに対する逆方向電圧として、逆方向降伏電圧未満の電圧が印加されているときの動作について説明する。
アノード端子2に印加されている電圧よりも高く、かつ、図1に示すダイオードの逆方向降伏電圧未満の逆方向電圧がカソード端子1に印加された場合を想定する。例えば、NMOS3の逆方向降伏電圧が1Vであって、PMOS4の逆方向降伏電圧が1Vである場合、図1に示すダイオードの逆方向降伏電圧は2Vである。ここでは、アノード端子2に印加されている電圧が、例えば0Vであり、カソード端子1に印加された電圧が、例えば0.5Vであるとする。
この場合、NMOS3におけるゲート端子3cの電圧が0V、ソース端子3aの電圧が0.5Vであり、ドレイン端子3bの電圧が例えば0.25Vであるとすれば、ゲート端子3cの電圧は、ドレイン端子3bの電圧及びソース端子3aの電圧のそれぞれよりも低く、NMOS3のドレイン電流は、図3に示すような電圧依存性を有しているため、NMOS3のドレイン端子3bとソース端子3aとの間の電流は遮断される。
また、この場合、PMOS4におけるソース端子4aの電圧が0Vであり、ゲート端子4cの電圧が例えば0.5V、ドレイン端子4bの電圧が例えば0.25Vであるとすれば、ゲート端子4cの電圧は、ドレイン端子4bの電圧及びソース端子4aの電圧のそれぞれよりも高く、PMOS4のドレイン電流は、図4に示すような電圧依存性を有しているため、PMOS4のドレイン端子4bとソース端子4aとの間の電流は遮断される。
NMOS3のドレイン端子3bとソース端子3aとの間の電流が遮断され、PMOS4のドレイン端子4bとソース端子4aとの間の電流が遮断されるため、カソード端子1とアノード端子2との間には、極めて微弱な電流しか流れない。
【0018】
次に、図1に示すダイオードに対する逆方向電圧として、逆方向降伏電圧以上の電圧が印加されているときの動作について説明する。
アノード端子2に印加されている電圧よりも高い電圧がカソード端子1に印加されたとする。ここでは、アノード端子2に印加されている電圧が、例えば0Vであり、カソード端子1に印加された電圧が、例えば2Vであるとする。
図1に示すダイオードが、第1の直流電流抑制受動回路5を備えておらず、NMOS3のゲート端子3cがアノード端子2と接続されていれば、NMOS3のゲート端子3cには0V、ソース端子3aには2V、ドレイン端子3bには例えば1Vの電圧が印加される。
また、図1に示すダイオードが、第2の直流電流抑制受動回路6を備えておらず、PMOS4のゲート端子4cがカソード端子1と接続されていれば、PMOS4のゲート端子4cには2V、ソース端子4aには0V、ドレイン端子4bには例えば1Vの電圧が印加される。
このとき、NMOS3のドレイン端子3bとソース端子3aとの間の電圧が1Vであるの対して、ゲート端子3cとソース端子3aとの間の電圧が2Vであり、ドレイン端子3bとソース端子3aとの間の電圧よりも、ゲート端子3cとソース端子3aとの間の電圧の方が高い。このため、NMOS3のゲート酸化膜には、ホットキャリアが注入される。NMOS3のゲート酸化膜にホットキャリアが注入されることによって、NMOS3のソース端子3aからゲート端子3cに向かって流れる電流が発生する。即ち、ゲート端子3cとソース端子3aとの間を流れる第1の電流が発生する。
また、PMOS4のドレイン端子4bとソース端子4aとの間の電圧が1Vであるの対して、ゲート端子4cとソース端子4aとの間の電圧が2Vであり、ドレイン端子4bとソース端子4aとの間の電圧よりも、ゲート端子4cとソース端子4aとの間の電圧の方が高い。このため、PMOS4のゲート酸化膜には、ホットキャリアが注入される。PMOS4のゲート酸化膜にホットキャリアが注入されることによって、PMOS4のゲート端子4cからソース端子4aに向かって流れる電流が発生する。即ち、ゲート端子4cとソース端子4aとの間を流れる第2の電流が発生する。
第1の電流及び第2の電流のそれぞれは、NMOS3及びPMOS4のそれぞれに印加される逆方向電圧に対して指数関数的に増大し、ダイオードの逆方向降伏が起こる。
【0019】
図1に示すダイオードが、第1の直流電流抑制受動回路5を備えることなく、N型トランジスタとしてNMOS3を用いる場合、増大した第1の電流によってゲート酸化膜が破壊されることがある、また、図1に示すダイオードが、第2の直流電流抑制受動回路6を備えることなく、P型トランジスタとしてPMOS4を用いる場合、増大した第2の電流によってゲート酸化膜が破壊されることがある。
【0020】
図1に示すダイオードは、第1の直流電流抑制受動回路5及び第2の直流電流抑制受動回路6を備えている。
ダイオードに対する逆方向電圧として、アノード端子2に印加されている電圧よりも高い電圧がカソード端子1に印加されたとする。ここでは、アノード端子2に印加されている電圧が、例えば0Vであり、カソード端子1に印加された電圧が、例えば2Vであるとする。
このとき、NMOS3のドレイン端子3bとソース端子3aとの間の電圧が1Vであるの対して、ゲート端子3cとソース端子3aとの間の電圧が2Vであり、ドレイン端子3bとソース端子3aとの間の電圧よりも、ゲート端子3cとソース端子3aとの間の電圧の方が高い。このため、NMOS3のゲート酸化膜には、ホットキャリアが注入される。
NMOS3のゲート酸化膜にホットキャリアが注入されることによって、NMOS3のソース端子3aからゲート端子3cに向かって流れる電流が発生する。即ち、ゲート端子3cとソース端子3aとの間を流れる第1の電流が発生する。しかし、第1の電流が、第1の直流電流抑制受動回路5に流れるため、第1の直流電流抑制受動回路5が持つインピーダンスによって、NMOS3のゲート電圧が上昇する。例えば、0Vから0.5Vに上昇する。NMOS3のゲート電圧が上昇することによって、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間の電圧が、例えば1.5Vに緩和され、第1の電流が抑制されるという負帰還がかかる。
【0021】
同様に、PMOS4のドレイン端子4bとソース端子4aとの間の電圧が1Vであるの対して、ゲート端子4cとソース端子4aとの間の電圧が2Vであり、ドレイン端子4bとソース端子4aとの間の電圧よりも、ゲート端子4cとソース端子4aとの間の電圧の方が高い。このため、PMOS4のゲート酸化膜には、ホットキャリアが注入される。PMOS4のゲート酸化膜にホットキャリアが注入されることによって、PMOS4のゲート端子4cからソース端子4aに向かって流れる電流が発生する。即ち、ゲート端子4cとソース端子4aとの間を流れる第2の電流が発生する。しかし、第2の電流が、第2の直流電流抑制受動回路6に流れるため、第2の直流電流抑制受動回路6が持つインピーダンスによって、PMOS4のゲート電圧が低下する。例えば、2Vから1.5Vに低下する。PMOS4のゲート電圧が低下することによって、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間の電圧が、例えば1.5Vに緩和され、第2の電流が抑制されるという負帰還がかかる。
よって、図1に示すダイオードは、第1の直流電流抑制受動回路5及び第2の直流電流抑制受動回路6を備えていないダイオードよりも、ダイオードの逆方向降伏電圧が高くなる。
【0022】
以上の実施の形態1では、ゲート端子3c、ドレイン端子3b及びソース端子3aを有しており、ソース端子3aが、ダイオードのカソード端子1と接続されているNMOS3と、ゲート端子4c、ドレイン端子4b及びソース端子4aを有しており、ドレイン端子4bがNMOS3のドレイン端子3bと接続され、ソース端子4aが、ダイオードのアノード端子2と接続されているPMOS4と、NMOS3のゲート端子3cと一端が接続され、PMOS4のソース端子4aと他端が接続されており、NMOS3のゲート端子3cとNMOS3のソース端子3aとの間を流れる直流電流を抑制する第1の直流電流抑制受動回路5と、PMOS4のゲート端子4cと一端が接続され、NMOS3のソース端子3aと他端が接続されており、PMOS4のゲート端子4cとPMOS4のソース端子4aとの間を流れる直流電流を抑制する第2の直流電流抑制受動回路6とを備えるように、ダイオードを構成した。したがって、ダイオードは、非特許文献1に記載のCCPダイオードよりも、逆方向降伏電圧を高めることができる。
【0023】
実施の形態2.
実施の形態2では、第1の直流電流抑制受動回路5として、抵抗7が用いられ、第2の直流電流抑制受動回路6として、抵抗8が用いられているダイオードについて説明する。
【0024】
図5は、実施の形態2に係るダイオードを示す構成図である。図5において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
抵抗7の一端は、NMOS3のゲート端子3cと接続されている。
抵抗7の他端は、PMOS4のソース端子4a及びアノード端子2のそれぞれと接続されている。
逆方向電圧として、アノード端子2に印加されている電圧よりも高く、かつ、逆方向降伏電圧以上の電圧がカソード端子1に印加されたときに、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間を流れる第1の電流によって、抵抗7において、電圧降下が発生する。このため、抵抗7は、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間に印加される電圧を緩和する。ゲート端子3cとソース端子3aとの間に印加される電圧が緩和されることによって、負帰還がかかり、第1の電流が抑制される。
【0025】
抵抗8の一端は、PMOS4のゲート端子4cと接続されている。
抵抗8の他端は、NMOS3のソース端子3a及びカソード端子1のそれぞれと接続されている。
逆方向電圧として、アノード端子2に印加されている電圧よりも高く、かつ、逆方向降伏電圧以上の電圧がカソード端子1に印加されたときに、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間を流れる第2の電流によって、抵抗8において、電圧降下が発生する。このため、抵抗8は、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間に印加される電圧を緩和する。ゲート端子4cとソース端子4aとの間に印加される電圧が緩和されることによって、負帰還がかかり、第2の電流が抑制される。
【0026】
抵抗7は、図1に示す第1の直流電流抑制受動回路5と同様に動作し、抵抗8は、図1に示す第2の直流電流抑制受動回路6と同様に動作する。
したがって、図5に示すダイオードは、図1に示すダイオードと同様に、逆方向降伏電圧以上の逆方向電圧が印加されても、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間を流れる第1の電流と、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間を流れる第2の電流との増大を抑えることができる。このため、ダイオードの逆方向降伏電圧を高めることができる。
【0027】
実施の形態3.
実施の形態3では、第1の直流電流抑制受動回路5として、抵抗7とキャパシタ9とが並列に接続されている並列回路が用いられ、第2の直流電流抑制受動回路6として、抵抗8とキャパシタ10とが並列に接続されている並列回路が用いられているダイオードについて説明する。
【0028】
図6は、実施の形態3に係るダイオードを示す構成図である。図6において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
キャパシタ9は、抵抗7と並列に接続されている。
即ち、キャパシタ9の一端は、NMOS3のゲート端子3cと接続されている。
キャパシタ9の他端は、PMOS4のソース端子4a及びアノード端子2のそれぞれと接続されている。
キャパシタ9は、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間を流れる直流電流を遮断し、抵抗7は、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間を流れる直流電流を抑制する。
図6に示すダイオードを、ダイオードとして動作させるには、第1の直流電流抑制受動回路5が直流を通す必要があるため、直流を遮断するキャパシタ9と並列に抵抗7が接続されている。
【0029】
キャパシタ10は、抵抗8と並列に接続されている。
即ち、キャパシタ10の一端は、PMOS4のゲート端子4cと接続されている。
キャパシタ10の他端は、NMOS3のソース端子3a及びカソード端子1のそれぞれと接続されている。
キャパシタ10は、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間を流れる直流電流を遮断し、抵抗8は、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間を流れる直流電流を抑制する。
図6に示すダイオードを、ダイオードとして動作させるには、第2の直流電流抑制受動回路6が直流を通す必要があるため、直流を遮断するキャパシタ10と並列に抵抗8が接続されている。
【0030】
次に、順方向降伏電圧未満の交流の順方向電圧が印加されたときの図6に示すダイオードの動作について説明する。
実施の形態2に係る図5に示すダイオードに交流の順方向電圧が印加されると、交流の順方向電圧が、抵抗7を通して、NMOS3のゲート端子3cに印加される。順方向電圧が直流であれば、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間に存在する容量成分のインピーダンスは、抵抗7を無視できるほどに大きいため、ダイオードの特性に影響を与えない。
順方向電圧が交流である場合、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間に存在する容量成分のインピーダンスが低下し、抵抗7を無視できなくなるため、当該容量成分のインピーダンスは、ダイオードの特性に影響を与える。
即ち、NMOS3に印加される交流の順方向電圧は、抵抗7と当該容量成分のインピーダンスとによって分圧される。NMOS3のゲート端子3cに印加される電圧が分圧によって小さくなると、NMOS3のドレイン端子3bとソース端子3aとの間に流れる電流が小さくなる。このため、直流の順方向電圧が印加されるときと比べて、交流の順方向電圧が印加されるときは、順方向電流が低下する。このことは、NMOS3の閾値電圧が高くなったことに等しい。
同様に、PMOS4に印加される交流の順方向電圧は、抵抗8と、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間に存在する容量成分のインピーダンスとによって分圧される。PMOS4のゲート端子4cに印加される電圧が分圧によって小さくなると、PMOS4のドレイン端子4bとソース端子4aとの間に流れる電流が小さくなる。このため、直流の順方向電圧が印加されるときと比べて、交流の順方向電圧が印加されるときは、順方向電流が低下する。このことは、PMOS4の閾値電圧が高くなったことに等しい。
【0031】
実施の形態3に係る図6に示すダイオードでは、抵抗7と並列にキャパシタ9を接続し、抵抗8と並列にキャパシタ10を接続している。交流の順方向電圧が印加されると、キャパシタ9のインピーダンスが、直流の順方向電圧が印加されるときよりも、小さくなるため、抵抗7とキャパシタ9との合成インピーダンスが小さくなる。また、キャパシタ10のインピーダンスが、直流の順方向電圧が印加されるときよりも、小さくなるため、抵抗8とキャパシタ10との合成インピーダンスが小さくなる。
抵抗7とキャパシタ9との合成インピーダンスが、NMOS3のゲート端子3cとソース端子3aとの間に存在する容量成分のインピーダンスよりも十分に小さければ、抵抗7と、キャパシタ9と、当該容量成分とによる分圧によって、ゲート端子3cとソース端子3aとの間の電圧の低下は、無視できる程度に小さくなる。つまり、順方向電圧が交流であっても、閾値電圧に影響を与えなくなる。
同様に、抵抗8とキャパシタ10との合成インピーダンスが、PMOS4のゲート端子4cとソース端子4aとの間に存在する容量成分のインピーダンスよりも十分に小さければ、抵抗8と、キャパシタ10と、当該容量成分とによる分圧によって、ゲート端子4cとソース端子4aとの間の電圧の低下は、無視できる程度に小さくなる。つまり、順方向電圧が交流であっても、閾値電圧に影響を与えなくなる。
【0032】
したがって、図6に示すダイオードでは、順方向降伏電圧未満の順方向電圧が交流で与えられたとき、NMOS3のドレイン端子3bとソース端子3aとの間を流れる電流の低下と、PMOS4のドレイン端子4bとソース端子4aとの間を流れる電流の低下とを抑えることができる。
【0033】
図6に示すダイオードでは、2つの並列回路が、抵抗とキャパシタとの組み合わせである。しかし、順方向電圧が交流で与えられるとき、並列回路における合成インピーダンスが十分に小さくなり、直流を通過させることが可能な組み合わせであればよく、抵抗とキャパシタとの組み合わせや、2つの素子の並列接続のみの組み合わせに限るものではない。
【0034】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 カソード端子、2 アノード端子、3 NMOS、3a ソース端子、3b ドレイン端子、3c ゲート端子、4 PMOS、4a ソース端子、4b ドレイン端子、4c ゲート端子、5 第1の直流電流抑制受動回路、6 第2の直流電流抑制受動回路、7,8 抵抗、9,10 キャパシタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6