(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】車両エントリーシステム
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20240621BHJP
E05B 81/64 20140101ALI20240621BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20240621BHJP
B60R 25/23 20130101ALI20240621BHJP
【FI】
E05B49/00 Z
E05B81/64
B60R25/24
B60R25/23
(21)【出願番号】P 2020169214
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須澤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山浦 剛司
(72)【発明者】
【氏名】宮城 法祐
(72)【発明者】
【氏名】山縣 哲史
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-081344(JP,A)
【文献】特開2017-011557(JP,A)
【文献】特開2005-307480(JP,A)
【文献】特開平9-158576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00ー49/04
E05B 77/00ー85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対する解錠のためのパスワードを出力ごとに変更し、設定したパスワードを出力するパスワード出力手段と、
車両のドアを施錠する施錠手段と、
ユーザの所定の動作を検知し、動作検出信号を送信する検出信号送信手段と、
前記動作検出信号を受信する検出信号受信手段と、
前記動作検出信号の受信に基づき、前記動作検出信号の送信元が正規のユーザであるか否かを認証する検出信号認証手段と、
前記送信元が認証された場合に、設定したパスワードの入力を誘導するパスワード誘導手段と、
パスワードを入力するパスワード入力手段と、
前記入力したパスワードが設定したパスワードであった場合に、施錠されたドアを解錠する解錠手段と、
を備えたことを特徴とする車両エントリーシステム。
【請求項2】
前記パスワード入力手段は、
パスワードとして設定されたユーザのパスワード動作を検知する動作検知手段と、
前記動作検知手段により前記パスワード動作が検知されたことを入力する動作検知情報入力手段と、
を有し、
前記解錠手段は、
前記動作検知情報入力手段により、前記パスワード動作が検知されたことが入力されることにより、設定したパスワードの入力があったとして、施錠されたドアを解錠する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両エントリーシステム。
【請求項3】
前記パスワード出力手段は、
出力ごとに変更したパスワードを複数出力し、
前記パスワード誘導手段は、
出力した複数のパスワードから所定のパスワードを選択して、設定したパスワードの入力を誘導する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両エントリーシステム。
【請求項4】
複数のパスワードから所定のパスワードを選択する選択情報を入力するパスワード選択情報入力手段と、
を備え、
前記パスワード出力手段は、
出力ごとに変更したパスワードを複数出力し、
前記パスワード選択情報入力手段は、
出力された複数のパスワードから所定のパスワードを選択する選択情報を入力し、
前記パスワード誘導手段は、
入力されたパスワードの選択情報に基づいて、所定のパスワードを決定し、設定したパスワードの入力を誘導する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両エントリーシステム。
【請求項5】
パスワードによる解錠ができなかった場合に、施錠されたドアを解錠するための操作を登録しておく非常時解錠操作登録手段と、
パスワードによる解錠ができなかった場合に、非常時解錠操作登録手段に登録された操作が行われることにより、施錠されたドアを解錠する非常時解錠手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両エントリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両エントリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両では、スマートキーなどの電子キー(以下、単にスマートキーという)を用いた車両エントリーシステムが一般的に利用されるようになっている。このような車両エントリーシステムとして、以下のような車両用ドア開閉補助装置が提案されている。
【0003】
この車両用ドア開閉補助装置は、車載アンテナから周囲に呼び掛け信号を送信し、これに応答するスマートキーからの応答信号を受信して認証を行った上で、ドアの解錠スタンバイ状態に入る。その後ドアノブ(ドアハンドル)に加えられた力を検出すると、ドアを解錠し、ラッチを解除した上で、ドアノブに加えられた力に応じた力をドアの開閉を補助するために提供するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスマートキーを用いたシステムに対して、リレーアタックと呼ばれる盗難の手法が用いられることがある。このリレーアタックとは、盗難者(盗難者A、盗難者B)が中継器(中継器A、中継器B)を用い、車両とユーザ(所有者)が所有するスマートキーとの間で、送受信信号を中継し、車両の解錠や始動を不正に行わせてしまう手法である。
【0006】
具体的には、
図8に示すように、車両とユーザが離れている状況において、車両とユーザとの間に、盗難者A、盗難者Bが位置する。盗難者A、盗難者Bは、電波中継器を所持している。この状態で、車両から発信されたリクエスト信号を、盗難者A、盗難者Bが中継器A、中継器Bを利用して中継し、ユーザが所持するスマートキーに伝達させる。通常リクエスト信号の到達範囲は車両周辺に限定されるが、盗難者A、盗難者Bの中継によりユーザが所有するスマートキーまでリクエスト信号を届かせることができる。車両の所有者が携帯するスマートキーは、リクエスト信号を受信したら、自身が記憶しているスマートキー固有のIDコードをRF信号として返信する。
【0007】
返信されたRF信号は、盗難者A、盗難者Bの中継器A、中継器Bにより、車両まで到達する。車両は受信したRF信号に対してマスターIDとの間で照合処理を実行する。RF信号はユーザの持つスマートキーから返信された信号なので、当然照合は成功となる。これにより、車両はドアの解錠許可状態となり、盗難者が車両に侵入することができてしまう。さらに、盗難者が車両に搭乗した後に、同様の手順を繰り返すと、車室内照合も成功して、車両はエンジン始動が許可される。こうして盗難者が車両を走行させることが可能となり、盗難や不正使用をされてしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、車両の盗難や不正使用を防止することができる車両エントリーシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両エントリーシステムは、車両に対する解錠のためのパスワードを出力ごとに変更し、設定したパスワードを出力するパスワード出力手段と、車両のドアを施錠する施錠手段と、ユーザの所定の動作を検知し、動作検出信号を送信する検出信号送信手段と、前記動作検出信号を受信する検出信号受信手段と、前記動作検出信号の受信に基づき、前記動作検出信号の送信元が正規のユーザであるか否かを認証する検出信号認証手段と、前記送信元が認証された場合に、設定したパスワードの入力を誘導するパスワード誘導手段と、パスワードを入力するパスワード入力手段と、前記入力したパスワードが設定したパスワードであった場合に、施錠されたドアを解錠する解錠手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、車両エントリーシステムは、前記パスワード入力手段は、パスワードとして設定されたユーザのパスワード動作を検知する動作検知手段と、前記動作検知手段により前記パスワード動作が検知されたことを入力する動作検知情報入力手段と、を有し、前記解錠手段は、前記動作検知情報入力手段により、前記パスワード動作が検知されたことが入力されることにより、設定したパスワードの入力があったとして、施錠されたドアを解錠する、ようにしてもよい。
【0011】
さらに、車両エントリーシステムは、前記パスワード出力手段は、出力ごとに変更したパスワードを複数出力し、前記パスワード誘導手段は、出力した複数のパスワードから所定のパスワードを選択して、設定したパスワードの入力を誘導する、ようにしてもよい。
【0012】
さらに、車両エントリーシステムは、複数のパスワードから所定のパスワードを選択する選択情報を入力するパスワード選択情報入力手段と、を備え、前記パスワード出力手段は、出力ごとに変更したパスワードを複数出力し、前記パスワード選択情報入力手段は、出力された複数のパスワードから所定のパスワードを選択する選択情報を入力し、前記パスワード誘導手段は、入力されたパスワードの選択情報に基づいて、所定のパスワードを決定し、設定したパスワードの入力を誘導する、ようにしてもよい。
【0013】
さらに、車両エントリーシステムは、パスワードによる解錠ができなかった場合に、施錠されたドアを解錠するための操作を登録しておく非常時解錠操作登録手段と、パスワードによる解錠ができなかった場合に、非常時解錠操作登録手段に登録された操作が行われることにより、施錠されたドアを解錠する非常時解錠手段と、を備える、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の盗難や不正使用を防止することができる車両エントリーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態における車両エントリーシステムの構成を示す概略図である。
【
図2】本実施の形態における車両エントリーシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】インストルメントパネルのパネル表示部の周辺を示す概略模式図である。
【
図4】車両のドアハンドル周辺を示す概略模式図である。
【
図5】車載機における車両制御部の乗員降車時制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】スマートキーにおけるスマート制御部のエントリー処理を示すフローチャートである。
【
図7】車載機における車両制御部の乗員乗車時制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】リレーアタックによる盗難手法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における車両エントリーシステムの構成を示す概略図である。また、
図2は、本実施の形態における車両エントリーシステムの概略構成を示すブロック図である。また、
図3は、インストルメントパネルのパネル表示部の周辺を示す概略模式図である。また、
図4は、車両のドアハンドル周辺を示す概略模式図である。
【0017】
(車両エントリーシステム1の構成)
図1、
図2に示すように、車両エントリーシステム1は、車両に搭載される車載機10と、ユーザが携帯するスマートキー30と、を備えるものである。
【0018】
(車載機10)
車載機10は、車両制御部100と、車両側送受信部110と、ドアロック・アンロック部121と、パスワード検知部122と、パネル表示部131と、ドアハンドル表示灯132と、を備えている。
【0019】
車両制御部100は、車載機10全体を制御するためものである。また、車両制御部100は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUにより実行される制御プログラム、データテーブル、各コマンドやデータ等の記憶を行うROM(Read Only Memory)、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)および入出力インターフェース回路を備え、車載機10の制御を統括するようになっている。
【0020】
なお、車両制御部100のROMまたはEEPROMには、スマートキー30から送信されるIDコードを認証するためのIDコード(マスターID)が記憶されている。
車両制御部100は、マスターIDにより、スマートキー30から送信されるIDコードを検証し、送信元が正規のユーザであるか否を認証する。
【0021】
また、車両制御部100は、ドア解錠を行うためのパスワードを記憶している。パスワードの内容については、後述する。車両制御部100は、ユーザが降車の度に、パスワードを出力(表示)する。なお、パスワードは、複数出力する。また、車両制御部100は、出力ごとに、パスワードを変更する。
また、車両制御部100は、パスワードを失念してしまった場合のために、パスワードによらずにドア解錠を可能とするための操作を登録しておいてもよい。
【0022】
車両側送受信部110は、スマートキー30と信号の送受信を行うものである。また、車両側送受信部110は、車両側送信部111と、車両側受信部112と、を有している。
車両側送信部111は、スマートキー30に対して、問い合わせ信号(リクエスト信号)として、低周波信号(以下、LF信号という)を送信するものである。
【0023】
また、車両側送信部111は、車両の運転席、助手席、左右の後部座席の乗降用ドア、および、トランクにアンテナを有している。車両側送信部111は、例えば、各ドアのハンドル部に内蔵されており、その周囲に定期的にLF信号を送信するようになっている。このLF信号は、各ドアから70cm~1m程度の予め定められたキー応答エリア(ドアロックエリア、検知エリア)内にのみ届くように出力が調整されている。これにより、キー応答エリア内に存在するスマートキー30のみが、このLF信号を受信することができるようになっている。
【0024】
また、車両側送信部111は、例えば、室内中央のルームランプ部に内蔵されたアンテナを有している。車両側送信部111は、車室内に定期的にLF信号を送信する。このLF信号は、車室内の予め定められたキー応答エリア内にのみ届くように出力が調整されている。これにより、キー応答エリア内に存在するスマートキー30のみが、このLF信号を受信することができるようになっている。
【0025】
車両側受信部112は、スマートキー30から、応答信号として、高周波信号(以下、RF信号という)を受信するものである。
また、車両側受信部112は、各ドアや運転席前方のルームミラーなどに設けられたアンテナから、各キー応答エリア内のスマートキー30からのRF信号を受信し、復号して、車両制御部100に出力するようになっている。なお、車両側受信部112は、受信したRF信号が、いずれのキー応答エリアから受信したかを識別可能に、受信した信号を車両制御部100に出力するようになっている。
【0026】
ドアロック・アンロック部121は、車両の各ドアや、トランクのドアロック(施錠)およびアンロック(解錠)を行うものである。なお、以下では、トランクのロックおよびアンロックについては、説明を省略する。
【0027】
ドアロック・アンロック部121は、車両制御部100から所定のドアロック信号を入力すると、ドアロック(施錠)を行う。ここで、ドアロック・アンロック部121は、車両制御部100からドアロック信号を入力すると、全てのドアに対して、ドアロックを行う。なお、車両制御部100から入力するドアロック信号に、ドアロックを行う指定のドア情報が含まれており、ドアロック・アンロック部121は、指定されたドアのみロックするようにしてもよい。
【0028】
また、ドアロック・アンロック部121は、車両制御部100から所定のアンロック信号を入力すると、ドアのアンロック(解錠)を行う。また、車両制御部100から入力するアンロック信号には、アンロックを行う指定のドア情報が含まれており、ドアロック・アンロック部121は、指定されたドアのみアンロックするようになっている。
【0029】
パスワード検知部122は、ユーザが入力したパスワードを検知するものである。ここで、パスワードとは、例えば、ユーザが行う所定の動作を示すものである。具体的には、ドアハンドル操作(ドアハンドルを所定回操作する)などである。なお、後述するように、スマートキー30側でパスワードを検出する場合には、ユーザのキック操作回数や、スマートキー30のボタン操作などが該当する。また、本実施の形態では、パスワードをユーザの所定の動作としたが、操作部などを備え、ユーザにパスワードの「文字列」を入力させるようにしてもよい。
【0030】
パネル表示部131は、パスワードを表示する表示部である。例えば、
図3に示すように、パネル表示部131は、インストルメントパネルの略中央に設けられており、車両制御部100により、複数のパスワードが表示されるものである。また、例えば、3つのパスワードは、それぞれ赤、青、黄色でそれぞれが識別できるように表示される。
【0031】
また、複数のパスワードの表示の下には、パスワード入力による乗車を承認するための、承諾ボタンが表示される。なお、パネル表示部131は、タッチパネルとなっており、ユーザの操作を入力できるようになっている。具体的には、パスワードの選択や、承諾ボタンの操作が入力できるようになっている。
【0032】
ドアハンドル表示灯132は、設定したパスワードの入力を誘導するものであり、パスワードの識別情報を表示する表示灯である。例えば、
図4に示すように、ドアハンドル表示灯132は、ドアハンドルの近傍上部に設けられており、車両制御部100により選択されたパスワードに対応する色で、点灯するようになっている。具体的には、降車時処理において、パネル表示部131に「ドアアンロック操作:3回」というパスワードが赤色で表示されていたとして、乗車時処理において、車両制御部100が、パスワードとして、「ドアアンロック操作:3回」を選択すると、ドアハンドル表示灯132を、赤色で点灯させて、パスワードが「ドアアンロック操作:3回」であることを認識させる。
【0033】
(スマートキー30)
スマートキー30は、スマート制御部300と、端末側送受信部310と、モーションセンサー321と、ドアロックボタン331と、アンロックボタン332と、を備えている。
【0034】
スマート制御部300は、ユーザが携帯し、車載機10と送受信を行って、車両へのエントリー(乗車)を可能とするものである。また、スマート制御部300は、車両制御部100と同様に、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUにより実行される制御プログラム、データテーブル、各コマンドやデータ等の記憶を行うROM(Read Only Memory)、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)および入出力インターフェース回路を備え、スマートキー30の制御を統括するようになっている。
なお、スマート制御部300のROMには、固有のIDコードが記憶されている。
【0035】
端末側送受信部310は、車載機10と信号の送受信を行うものである。また、端末側送受信部310は、端末側送信部311と、端末側受信部312と、を有している。
端末側送信部311は、車載機10に対して、RF信号を送信するものである。
【0036】
端末側受信部312は、車載機10から、LF信号を受信するものである。
また、端末側受信部312は、車載機10から受信したLF信号を復号して、スマート制御部300に出力するようになっている。
【0037】
モーションセンサー321は、ユーザの動作を検出するものである。したがって、モーションセンサー321は、パスワードとして設定されたユーザのパスワード動作も検知するものである。モーションセンサー321は、動作を検出すると、その動作の内容(どのような動作を検出したのか)を含めて、動作検出信号をスマート制御部300に出力するものである。なお、モーションセンサー321は、特定の動作(予め設定されている複数の動作のいずれか)を検出したときにのみ、動作検出信号をスマート制御部300に出力するようにしてもよい。
【0038】
ドアロックボタン331は、ユーザのドアロック(施錠)指示を入力するものである。ドアロックボタン331は、ユーザにより押下されると、ドアロック信号をスマート制御部300に出力する。スマート制御部300は、ドアロックボタン331からドアロック信号を入力すると、端末側送信部311からドアロック信号を送信させ、車載機10によってドアロックを行わせる。
【0039】
アンロックボタン332は、ユーザのアンロック(解錠)指示を入力するものである。アンロックボタン332は、ユーザにより押下されると、アンロック信号をスマート制御部300に出力する。スマート制御部300は、アンロックボタン332からアンロック信号を入力すると、端末側送信部311からアンロック信号を送信させ、車載機10によってドアをアンロックさせる。
【0040】
(車両エントリーシステム1の制御処理)
以下、車両エントリーシステム1における降車時および乗車時の制御処理について、説明する。
【0041】
図5は、車載機10における車両制御部100の降車時制御処理を示すフローチャートである。また、
図6は、スマートキー30におけるスマート制御部300のエントリー処理を示すフローチャートである。さらに、
図7は、車載機10における車両制御部100の乗員乗車時制御処理を示すフローチャートである。
【0042】
(乗員降車時制御処理)
まず、車載機10の車両制御部100は、電源状態が、「ACC ON」状態、または、「IGN ON」状態となると(ステップS11)、降車時制御処理を開始する。
【0043】
ここで、「ACC ON」状態とは、アクセサリー電源が入っており、エアコンやカーオーディオ、通常はドライブレコーダーも使用できる状態をいう。また、「IGN ON」状態とは、エンジンON状態、一般的に走行可能な状態をいう。
【0044】
車両制御部100は、電源状態が、「ACC ON」状態、または、「IGN ON」状態となると、車両が停車状態で、かつ、電源が「ALL OFF」状態であるか否かを判定する(ステップS12)。
ここで、電源が「ALL OFF」状態とは、いわゆる、「+B電源」(バッテリー電源)といわれる、セキュリティ装置やナビの設定保存用等に使用される常時電源のみの状態をいう。
【0045】
車両制御部100は、車両が停車状態で、かつ、電源が「ALL OFF」状態であると判定した場合(ステップS12でYESと判定)には、ステップS13に処理を移行し、車両が停車状態でないか、電源が「ALL OFF」状態でないと判定した場合(ステップS12でNOと判定)には、ステップS12に処理を戻し、上記処理を繰り返す。
【0046】
車両制御部100は、車両が停車状態で、かつ、電源が「ALL OFF」状態であると判定した場合(ステップS12でYESと判定)には、複数のパスワードの生成処理を行う(ステップS13)。なお、車両制御部100は、この処理において、実際にパスワードを生成するようにしてもよいが、予め複数のパスワードを記憶しておき、所定のパスワードを選択するようにすればよい。例えば、車両制御部100は、予め多数のパスワードを記憶しておき、記憶された多数のパスワードから、3つのパスワードを選択する処理を行うようにすればよい。
【0047】
なお、ここでいうパスワードとは、前述のように、ユーザが行う所定の動作を示す情報のことをいう。具体的には、ドアハンドル操作、キック操作回数、スマートキー30のボタン操作(ドアロックボタン、ドアアンロックボタン、トランクアンロックボタン等の操作)、スマートキー30を叩くなどの特定操作などの操作指示や操作回数を示すものである。
【0048】
次いで、車両制御部100は、上記生成した(または、選択した)パスワードを表示する処理を行う(ステップS14)。例えば、
図3に示すように、車両制御部100は、インストルメントパネルのパネル表示部131に、「3つ」のパスワードを表示する。
【0049】
次に、車両制御部100は、パスワード認証の承諾確認操作が入力されたか否かを判定する。また、ユーザに所定のパスワードを選択させる場合には、車両制御部100は、上記生成したパスワードの選択情報、および、パスワード認証の承諾確認操作が入力されたか否かを判定する(ステップS15)。
【0050】
例えば、パッチパネルとなっているインストルメントパネルのパネル表示部131に、「3つ」のパスワードを表示し、その下部に「OK?」ボタンを表示する。車両制御部100は、この「OK?」ボタンがタッチされたら、承諾確認操作が入力されたと判断する。
【0051】
また、ユーザに所定のパスワードを選択させる場合には、車両制御部100は、表示した「3つ」のパスワードの表示領域のうちのいずれかが選択され、「OK?」ボタンがタッチされたら、パスワードの選択情報、および、承諾確認操作が入力されたと判断する。
なお、上記「OK?」ボタンの表示を行わず、パスワードの選択情報が入力されたことをもってして、パスワード認証の承諾確認操作が入力されたと判定してもよい。
【0052】
なお、パスワードをユーザに選択させない場合には、乗車時に車両制御部100側が、複数表示したパスワードの中から所定のパスワードを選択して、ユーザに入力させるようにする。この場合、パスワード表示時に、所定の表示と、該当するパスワードの組み合わせが分かるものとしておく。例えば、色分けしておき、赤のパスワードと、青のパスワードと、黄色のパスワードと、を表示し、乗車時に、赤か青か黄色を表示することにより、対応するパスワードを入力させるようにする。
【0053】
また、上記「OK?」ボタンの表示の際に、隣に、「キャンセル」ボタンを表示し、この「キャンセル」ボタンが選択された際には、ユーザの意思で、乗車時にパスワード入力の操作を行わずに乗車可能となるようにしてもよい(1段階認証のみで乗車を可能とする)。
【0054】
車両制御部100は、パスワード認証の承諾確認操作、あるいは、パスワードの選択情報およびパスワード認証の承諾確認操作(ユーザがパスワードを選択する場合)が入力されたと判定した場合(ステップS15でYESと判定)には、ステップS16に処理を移行し、パスワード認証の承諾確認操作、あるいは、パスワードの選択情報およびパスワード認証の承諾確認操作が入力されないと判定した場合(ステップS15でNOと判定)には、ステップS18に処理を移行する。
【0055】
なお、パスワード認証の承諾確認操作、あるいは、パスワードの選択情報およびパスワード認証の承諾確認操作が入力されないとの判定は、上記「キャンセル」ボタンの操作の他、所定時間パスワードの選択情報やパスワード認証の承諾確認操作の入力がされなかった場合や、パスワードの選択情報・パスワード認証の承諾確認操作が入力されずに、ドアの開閉が行われたこと、スマートキー30が車外に出たことなどを判定情報としてもよい。
【0056】
車両制御部100は、パスワード認証の承諾確認操作、あるいは、パスワードの選択情報およびパスワード認証の承諾確認操作が入力されたと判定すると(ステップS15でYESと判定)、表示した(3つの)パスワードを記憶する(ステップS16)。なお、ユーザがパスワードを選択する場合には、入力されたパスワードの選択情報に基づいて、選択されたパスワードを、乗車時のパスワードとして決定し、記憶する。
【0057】
次いで、車両制御部100は、2段階認証フラグを「ON」とする(ステップS17)。車両制御部100は、この2段階認証フラグを「ON」とすることにより、乗車時にパスワードの入力を行わせる「2段階認証処理」を実行することとなる。
【0058】
次に、車両制御部100は、ユーザの降車を検出したか否かを判定する(ステップS18)。例えば、車両制御部100は、パスワードの表示後に、ドアの開閉が行われたか、スマートキー30が車外に出たか等を、検出することによって、ユーザの降車を判定する。なお、本実施の形態では、車両制御部100は、ユーザの降車を検出することによって、以下のドアロック処理を行うものとしているが、これに限らず、スマートキー30からのドアロック信号の受信等によってドアロックを行うものとしてもよい。
【0059】
車両制御部100は、ユーザの降車を検出したと判定すると(ステップS18でYESと判定)、ステップS19に移行し、ユーザの降車を検出していなければ(ステップS18でNOと判定)、ステップS18に処理を戻し、ユーザの降車の検出判定処理を繰り返す。
【0060】
車両制御部100は、ユーザの降車を検出したと判定すると(ステップS18でYESと判定)、ドアロック処理を行う(ステップS19)。具体的には、車両制御部100は、ユーザの降車を検出すると、ドアロック・アンロック部121にドアロック信号を出力し、ドアロック・アンロック部121にドアをロックさせる。
【0061】
次に、車両制御部100は、LF停止処理を行って(ステップS20)、車両の降車時処理を終了する。車両制御部100は、LF停止処理において、LF信号の出力を停止させる処理を行う。
【0062】
次に、乗車時の処理について、説明する。
まず、スマートキー30におけるエントリー処理について、説明する。
【0063】
スマートキー30では、モーションセンサー321により、動作が検出されると、スマート制御部300がエントリー処理を開始する(ステップS31)。
【0064】
スマート制御部300は、モーションセンサー321により、動作が検出されると、検出された動作が、予め設定されたユーザの特定動作であるか否かを判定する(ステップS32)。例えば、ユーザの足踏み「3回」を特定動作として設定しておく。これにより、スマートキー30のモーションセンサー321が、足踏み「3回」に相当する動作を検出することで、ユーザの特定動作があったと判定する。
【0065】
スマート制御部300は、モーションセンサー321により検出された動作が、予め設定されたユーザの特定動作であると判定すると(ステップS32でYESと判定)、ステップS33に処理を移行し、予め設定されたユーザの特定動作でないと判定すると(ステップS32でNOと判定)、ステップS31に処理を戻す。
【0066】
スマート制御部300は、モーションセンサー321により検出された動作が、予め設定されたユーザの特定動作であると判定した場合(ステップS32でYESと判定)、車載機10にモーションセンサー検出信号を送信する(ステップS33)。車載機10におけるスマートキー30からのモーションセンサー検出信号の受信処理については、後述する。
【0067】
次いで、スマート制御部300は、LF信号を受信したか否かを判定する(ステップS34)。すなわち、スマート制御部300は、モーションセンサー検出信号を送信した車載機10からLF信号を受信したか否かを判定する。
【0068】
スマート制御部300は、LF信号を受信したと判定した場合(ステップS34でYESと判定)には、ステップS35に処理を移行し、LF信号を受信していないと判定した場合(ステップS34でNOと判定)には、ステップS34に処理を戻して、LF信号の受信を待つ。
【0069】
スマート制御部300は、LF信号を受信したと判定した場合(ステップS34でYESと判定)、車載機10にRF信号を送信する(ステップS35)。また、車載機10におけるスマートキー30からのRF信号の受信処理については、後述する。
【0070】
さらに、設定したパスワードがスマートキー30側で処理が必要である場合には、以下の処理を実行する。例えば、設定したパスワードが、スマートキー30のモーションセンサー321で検知する必要があるパスワードである場合等には、スマート制御部300は、モーションセンサー321で検知した動作に対する信号を、車載機10に送信して(ステップS36)、スマートキー30のスマート制御部300によるエントリー処理を終了する。なお、設定したパスワードがスマートキー30側で処理が必要でない場合には、上記車載機10にRF信号を送信する処理(ステップS35)を行って、スマートキー30のスマート制御部300によるエントリー処理を終了する。
【0071】
次に、車載機10の車両制御部100による乗車時処理について、説明する。
車載機10の車両制御部100は、スマートキー30からモーションセンサー検出信号を受信すると、乗車時処理を開始する(ステップS51)。
【0072】
車両制御部100は、スマートキー30からモーションセンサー検出信号を受信すると、スマートキー30に対してLF信号を送信する(ステップS52)。より詳しくは、車両制御部100は、スマートキー30からモーションセンサー検出信号を受信することにより、LF信号の出力処理を再開して、車両の近辺にあるスマートキー30にLF信号を受信させる。これにより、スマートキー30が車載機10からのLF信号を受信し、スマートキー30からRF信号が返信される。
【0073】
次いで、車両制御部100は、スマートキー30からRF信号を受信したか否かを判定する(ステップS53)。車両制御部100は、スマートキー30からRF信号を受信する(ステップS53でYESと判定)と、ステップS54に移行し、スマートキー30からRF信号を受信していなければ(ステップS53でNOと判定)、ステップS53に処理を戻し、RF信号の受信を待つ。
【0074】
車両制御部100は、スマートキー30からRF信号を受信する(ステップS53でYESと判定)と、端末認証処理を行う(ステップS54)。ここでは、車両制御部100は、受信したRF信号から端末ID等から認証処理を行って、受信したRF信号が当該車両のユーザ(オーナー)のスマートキー30から受信したRF信号であるか否かを判定する。
【0075】
次いで、車両制御部100は、LR・RF通信が成立したか否かを判定する(ステップS55)。すなわち、車両制御部100は、端末認証処理により、受信したRF信号が正当な端末(スマートキー30)から受信したRF信号であると判定すれば、LR・RF通信を成立させ、受信したRF信号が正当な端末(スマートキー30)から受信したRF信号でないと判定すると、LR・RF通信を成立させない。
【0076】
車両制御部100は、LR・RF通信が成立したと判定する(ステップS55でYESと判定)と、ステップS56に移行し、LR・RF通信が成立しないと判定する(ステップS55でNOと判定)と、ステップS52に処理を戻し、LF信号を送信し直す。
【0077】
車両制御部100は、LR・RF通信が成立したと判定する(ステップS55でYESと判定)と、2段階認証フラグが「ON」であるか否かを判定する(ステップS56)。すなわち、車両制御部100は、降車時処理において、2段階認証の承認がなされているか否か判定する。
【0078】
車両制御部100は、2段階認証フラグが「ON」であると判定する(ステップS56でYESと判定)と、ステップS57に移行し、2段階認証フラグが「ON」でないと判定する(ステップS56でNOと判定)と、2段階認証処理を省略して、ステップS60に移行する。
【0079】
車両制御部100は、2段階認証フラグが「ON」であると判定する(ステップS56でYESと判定)と、ドアハンドル表示灯132を点灯させる(ステップS57)。ここで、車両制御部100は、降車時処理において表示したパスワードから所定のパスワードをランダムに選択し、選択したパスワードに対応する色でドアハンドル表示灯132を点灯させる。例えば、車両制御部100は、パスワードに対応させた、赤、青、黄色により選択したパスワードに対応する色でドアハンドル表示灯132を点灯させる。なお、車両制御部100は、降車時処理においてユーザに所定のパスワードを選択させた場合には、所定の表示でドアハンドル表示灯132を点灯させるだけでよい。
【0080】
次いで、車両制御部100は、パスワードが入力されたか否かを判定する(ステップS58)。ここでは、車両制御部100は、設定したパスワードに基づいて、所定の動作がパスワード検知部122によって検知されたか、スマートキー30からモーションセンサー321で検知した所定の動作に対する信号を受信したか等を、判定する。
【0081】
車両制御部100は、パスワードが入力されたと判定した場合(ステップS58でYESと判定)、ステップS59に移行し、パスワードが入力されていないと判定した場合(ステップS58でNOと判定)には、ステップS58に処理を戻し、パスワードが入力されるまで待つ。なお、パスワードが所定時間、入力されなかった場合には、ドアをロックさせたまま、解錠させずに乗車時処理を終了する。
【0082】
車両制御部100は、パスワードが入力されたと判定した場合(ステップS58でYESと判定)、正当なパスワードの入力であるか否かを判定する(ステップS59)。すなわち、車両制御部100は、パスワード検知部122によって検知された動作や、スマートキー30から受信したモーションセンサー321で検知した所定の動作に対する信号等が、設定したパスワードに対応する動作であるか否かを判定する。
【0083】
車両制御部100は、正当なパスワードが入力されたと判定した場合(ステップS59でYESと判定)、ステップS60に移行し、入力されたパスワードが正当なパスワードではないと判定した場合(ステップS59でNOと判定)には、ステップS58に処理を戻す。なお、正当なパスワードが入力されない、または、パスワードが入力されない際に、所定の方法でドアの解錠方法を設定するようにしてもよい。
【0084】
例えば、予めパスワードを解除するための解除用パスワードを用意しておき、その解除用パスワードが入力された場合には、パスワードを解除、すなわち、2段階認証を解除して、ドアを解錠させる。この場合、解除用パスワードは、設定するパスワードよりも複雑なパスワードとしておくことが望ましい。また、このとき、予め設定した連絡先(携帯電話など)に通知するようにするとよい。
【0085】
また、パスワードが入力されない、または、所定の解除用パスワードが入力された場合に、所定のパスワードを選択、あるいは、設定したパスワードを、予め設定した連絡先に通知するようにしてもよい。
【0086】
車両制御部100は、正当なパスワードが入力されたと判定した場合(ステップS59でYESと判定)、ドアエントリー許可処理を行う(ステップS60)。すなわち、車両制御部100は、ドアアンロック(ドア解錠)を行って、ユーザの乗車を可能とする。
【0087】
以上のように、本実施の形態における車両エントリーシステム1は、車両のドアをアンロックさせようとする度に、ランダムに選択されたパスワードの入力が求められるので、パスワードを認識しているユーザ以外が、ドアを開けることができないため、車両の盗難や不正使用を防止することができる。
【0088】
なお、本実施の形態において、車両制御部100は、本願の検出信号認証手段を構成する。また、本実施の形態において、車両制御部100およびパネル表示部131は、本願のパスワード出力手段を構成する。また、本実施の形態において、車両側受信部112は、本願の検出信号受信手段を構成する。
また、本実施の形態において、ドアロック・アンロック部121は、本願の施錠手段および解錠手段を構成する。また、本実施の形態において、パスワード検知部122は、本願のパスワード入力手段を構成する。また、本実施の形態において、ドアハンドル表示灯132は、本願のパスワード誘導手段を構成する。
さらに、本実施の形態において、スマート制御部300、端末側送受信部310およびモーションセンサー321は、本願の検出信号送信手段を構成する。
【0089】
また、本実施の形態において、モーションセンサー321は、本願の動作検知手段を構成する。また、本実施の形態において、車両側受信部112は、本願の動作検知情報入力手段を構成する。
また、本実施の形態において、タッチパネルとなったパネル表示部131は、本願のパスワード選択情報入力手段を構成する。
また、本実施の形態において、車両制御部100は、本願の非常時解錠操作登録手段および非常時解錠手段を構成する。
【符号の説明】
【0090】
1 車両エントリーシステム、10 車載機、30 スマートキー、100 車両制御部、110 車両側送受信部、111 車両側送信部、112 車両側受信部、121 ドアロック・アンロック部、122 パスワード検知部、131 パネル表示部、132 ドアハンドル表示灯、300 スマート制御部、310 端末側送受信部、311 端末側送信部、312 端末側受信部、321 モーションセンサー、331 ドアロックボタン、332 アンロックボタン