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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20240621BHJP
   G01F 3/22 20060101ALI20240621BHJP
   G01F 15/14 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G01F1/66 Z
G01F3/22 Z
G01F15/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020178236
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2021117215
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020008562
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000156813
【氏名又は名称】関西ガスメータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138874
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100103012
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】田村 逸朗
(72)【発明者】
【氏名】西 美智男
(72)【発明者】
【氏名】松田 年史
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰広
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-186429(JP,A)
【文献】特開2006-118864(JP,A)
【文献】特開2016-031365(JP,A)
【文献】特開2009-186430(JP,A)
【文献】特許第6478258(JP,B1)
【文献】特開2017-015475(JP,A)
【文献】特開2014-240844(JP,A)
【文献】特開2012-247299(JP,A)
【文献】特開2001-343270(JP,A)
【文献】特開2011-180055(JP,A)
【文献】特開2017-090268(JP,A)
【文献】特開2001-165725(JP,A)
【文献】特開2009-244216(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105444830(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0003741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 3/22,1/66-1/667
G01F 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内の上流側において仕切られた空間である入口バッファ部と、
前記ケース内の下流側において仕切られた空間である出口バッファ部と、
前記ケース内に収納され、入口部が前記入口バッファ部に連通し、かつ、出口部が前記出口バッファ部に連通する筒体を有する計測ユニットと、を有し、
前記ケースの流入部に連通する流入口から流入した気体が、前記入口バッファ部に連通する前記計測ユニットの入口部から流入し、前記計測ユニット内の流通路を流通し、前記出口部に連通する出口バッファ部を介して流出部から流出することにより、前記計測ユニット内を通過する気体の流量を計測する超音波流量計であって、
前記ケースの内向面に突設した仕切壁で前記入口バッファ部から仕切られ、前記流入口から流入した気体が下流側に流下する入口流路部と、
前記入口バッファ部と前記出口バッファ部との間に配置され、前記計測ユニットを収納する中央空間部と、を設け、
前記入口バッファ部と前記出口バッファ部との間に形成した前記中央空間部と、前記入口流路部とが連通し、
前記流入口から流入して前記入口流路部の下流側に流下した気体が、前記仕切壁に設けた入口連通孔を介して前記入口バッファ部に流入することを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
入口連通孔が、計測ユニットの入口部よりも内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
入口バッファ部と中央空間部との間を仕切る入口バッファ仕切壁に、入口バッファ部に流入した液体が中央空間部に流出できる切り欠き部を、設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波流量計。
【請求項4】
出口バッファ部とケースの流出部との間に、出口連通孔を備えた仕切壁をケースの内向面に突設することにより、出口流路部を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項5】
出口バッファ部がケースの流出部に直接、連通していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項6】
出口バッファ部が、下流側に向けて断面積が増大するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の超音波流量計。
【請求項7】
計測ユニットの筒体の入口部の開口縁部および出口部の開口縁部のうち、少なくともいずれか一方の開口縁部が、バッファ部の外向面に面一に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項8】
ケースの内向面に、流入口と入口連通孔との間に位置する遮蔽板を突設したことを特徴とする請求項1ないし7の少なくともいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項9】
ケースの表裏面を形成し、かつ、中央空間部を間にして対向する側壁のうち、少なくともいずれか一方の側壁に外向きに膨出する膨出部を設けたことを特徴とする請求項1ないし8の少なくともいずれか1項に記載の超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスヒートポンプエアコンなどのガス機器の使用状態により、あるいは、ガス供給側の圧力変動により、ガス配管中に周期性および規則性のある圧力変動が発生しやすく、正流方向および逆流方向において流速変化が生じやすい。超音波流量計は一定の周期で計測される瞬時流速に基づいて通過する流量体積を算出する。このため、ガス未使用時や低流量域での使用の際に、前述のような流速変化が大きくなると、計測流量のバラツキによってガス使用量の誤差が大きくなり、請求するガス料金に不公平な結果を生じるおそれがあるので、計測流量のバラツキの小さい超音波流量計が必要とされる。
従来、超音波流量計としては、例えば、流入口12から流入したガスは、遮断弁34を介して整流板36の通路穴36bを通過し、計測管40に流入して通過した後、整流板38の通路穴38bを介して流出口14から流出する超音波流量計がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-186429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記超音波流量計では、オリフィス効果を得るための通路穴36bを設けた整流板36と、通路穴38bを設けた整流板38とがガスメータ10と別体であり、部品点数、組立工数が多いという問題点がある。
本発明は、前記問題点に鑑み、部品点数および組立工数の少ない超音波流量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る超音波流量計は、前記課題を解決すべく、
ケースと、
前記ケース内の上流側において仕切られた空間である入口バッファ部と、
前記ケース内の下流側において仕切られた空間である出口バッファ部と、
前記ケース内に収納され、入口部が前記入口バッファ部に連通し、かつ、出口部が前記出口バッファ部に連通する筒体を有する計測ユニットと、を有し、
前記ケースの流入部に連通する流入口から流入した気体が、前記入口バッファ部に連通する前記計測ユニットの入口部から流入し、前記計測ユニット内の流通路を流通し、前記出口部に連通する出口バッファ部を介して流出部から流出することにより、前記計測ユニット内を通過する気体の流量を計測する超音波流量計であって、
前記ケースの内向面に突設した仕切壁で前記入口バッファ部から仕切られ、前記流入口から流入した気体が下流側に流下する入口流路部と、
前記入口バッファ部と前記出口バッファ部との間に配置され、前記計測ユニットを収納する中央空間部と、を設け、
前記入口バッファ部と前記出口バッファ部との間に形成した前記中央空間部と、前記入口流路部とが連通し、
前記流入口から流入して前記入口流路部の下流側に流下した気体が、前記仕切壁に設けた入口連通孔を介して前記入口バッファ部に流入する構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、入口連通孔を備えた仕切壁がケースの内向面に突設されているので、部品点数、組立工数の少ない超音波流量計が得られる。
また、中央空間部に滞留する気体がいわばクッション材となり、流入する気体の脈動を吸収,緩和することにより、計測流量のバラツキを小さくできる。
【0007】
本発明の実施形態としては、入口連通孔を、計測ユニットの入口部よりも内側に配置しておいてもよい。
本実施形態によれば、気体が流れる沿面距離が長くなり、気体の脈動を低減できるので、計測流量のバラツキが小さい超音波流量計が得られる。
【0008】
本発明の他の実施形態としては、入口バッファ部と中央空間部との間を仕切る入口バッファ仕切壁に、入口バッファ部に流入した液体が中央空間部に流出できる切り欠き部を、設けてもよい。
本実施形態によれば、気体と一緒に入口バッファ部内に大量の液体が侵入しても、中央空間部の底面にも液体を溜めることができる。このため、計測ユニットへの液体の侵入を防止でき、計測流量のバラツキ拡大を防止できる。
【0009】
本発明の異なる実施形態としては、出口バッファ部とケースの流出部との間に、出口連通孔を備えた仕切壁をケースの内向面に突設してもよい。
本実施形態によれば、部品点数,組立工数の少ない超音波流量計が得られる。
【0010】
本発明の別の実施形態としては、出口バッファ部がケースの流出部に直接、連通していてもよい。
本実施形態によれば、いわゆるガス抜けが良くなり、圧力損失を低減できる。
【0011】
本発明の異なる実施形態としては、出口バッファ部を、下流側に向けて断面積が増大するように形成しておいてもよい。
本実施形態によれば、いわゆるガス抜けがより一層良くなり、圧力損失をより一層低減できる。
【0012】
本発明の他の実施形態としては、計測ユニットの筒体の入口部の開口縁部および出口部の開口縁部のうち、少なくともいずれか一方の開口縁部を、バッファ部の外向面に面一に配置してもよい。
本実施形態によれば、バッファ部の外向面と、前記計測ユニットの入口部の開口縁部および/または出口部の開口縁部とが面一になるので、気体の流入,流出が円滑になり、圧力損失が低減し、計測流量のバラツキが小さくなる。
【0013】
本発明の異なる実施形態としては、ケースの内向面に、流入口と入口連通孔との間に位置する遮蔽板を突設してもよい。
本実施形態によれば、流入口から流入した気体が遮蔽板に衝突して迂回することにより、沿面距離が長くなるとともに、気体の脈動を吸収,緩和し、計測流量のバラツキを小さくできる。
【0014】
本発明の新たな実施形態としては、ケースの表裏面を形成し、かつ、中央空間部を間にして対向する側壁のうち、少なくともいずれか一方の側壁に外向きに膨出する膨出部を設けておいてもよい。
【0015】
本実施形態によれば、中央空間部の容積が増大することにより、侵入してきた流体の貯水量が増大するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る超音波流量計の全体斜視図である。
図2図1に示した超音波流量計を異なる角度から見た全体斜視図である。
図3図1に示した超音波流量計から蓋体を外した状態を示す斜視図である。
図4図1に示した蓋体を背面側から見た斜視図である。
図5図1に示したケース本体の斜視図である。
図6図1に示した超音波流量計の縦断面斜視図である。
図7図1に示した超音波流量計の横断面図である。
図8図1に示した超音波流量計の別の横断面図である。
図9図1に示した計測ユニットの縦断面斜視図である。
図10図1に示した計測ユニットの右側面縦断面図である。
図11図10に示した計測ユニットの部分横断面図である。
図12】第2実施形態に係る超音波流量計から蓋体を外した状態を示す斜視図である。
図13】第2実施形態に係る超音波流量計の蓋体を背面側から見た斜視図である。
図14図12に示したケース本体の斜視図である。
図15】第2実施形態に係る超音波流量計の縦断面斜視図である。
図16】第3実施形態に係る超音波流量計から蓋体を外した状態を示す斜視図である。
図17図16に示したケース本体の斜視図である。
図18】第4実施形態に係る超音波流量計の全体斜視図である。
図19図18に示した超音波流量計を異なる角度から見た全体斜視図である。
図20図18に示した超音波流量計から蓋体を外した状態を示す斜視図である。
図21図18に示したケース本体の斜視図である。
図22図18に示した超音波流量計の縦断面図である。
図23図18に示した超音波流量計の横断面図である。
図24】第5実施形態に係る超音波流量計の全体斜視図である。
図25図24に示した超音波流量計を異なる角度から見た全体斜視図である。
図26図24に示した超音波流量計から蓋体を外した状態を示す全体斜視図である。
図27図24に示した蓋体を背面側から見た斜視図である。
図28図26に示した超音波流量計からガスケットを外した状態を示す全体斜視図である。
図29図24に示したケース本体の斜視図である。
図30図24に示した超音波流量計の縦断面図である。
図31図24に示した超音波流量計の中央縦断面図である。
図32図24に示した超音波流量計の正面縦断面図である。
図33】第1実施形態に係る超音波流量計の流量を計算で求めた実施例1の結果を示す棒グラフ図である。
図34】第1実施形態に係る超音波流量計の圧力損失を計算で求めた実施例1の結果を示すグラフ図である。
図35】第2実施形態に係る超音波流量計の流量を計算で求めた実施例2の結果を示す棒グラフ図である。
図36】第3実施形態に係る超音波流量計の流量を計算で求めた実施例3の結果を示す棒グラフ図である。
図37】第2,第3実施形態に係る超音波流量計の圧力損失をそれぞれ計算で求めた実施例2,3の結果を示すグラフ図である。
図38】第4実施形態に係る超音波流量計の流量を計算で求めた実施例4の結果を示す棒グラフ図である。
図39】第4実施形態に係る超音波流量計の圧力損失を計算で求めた実施例4の結果を示すグラフ図である。
図40】第5実施形態に係る超音波流量計の流量を計算で求めた実施例5の結果を示す棒グラフ図である。
図41】第5実施形態に係る超音波流量計の圧力損失を計算で求めた実施例5の結果を示すグラフ図である。
図42】比較例に係る超音波流量計の流量を計算で求めた結果を示す棒グラフ図である。
図43】第1実施形態および第4実施形態の周波数に応じて異なる圧力変動をそれぞれ測定した実施例6,7の結果を示すグラフ図である。
図44】第5実施形態の周波数に応じて異なる圧力変動を測定した実施例8の結果を示すグラフ図である。
図45】第1実施形態に係る気体の流れを可視化した実施例9の流跡線図である。
図46】第3実施形態に係る気体の流れを可視化した実施例10の流跡線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る第1実施形態の超音波流量計を図1ないし図11に示す添付図面に従って説明する。
第1実施形態に係る超音波流量計は、大略、ケース10と、遮断弁40と、計測ユニット50と、で構成されている。
【0018】
ケース10は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属材料で形成されており、図1図2に示すように、箱形状であり、その上面の一端側に流入部11を配置するとともに、その他端側に流出部12を配置してある。
また、ケース10は、ケース本体20と、蓋体30とで構成されている。そして、前記流入部11の下端部に位置する流入口13(図6参照)には、異常時におけるケース10の内部空間への気体流入を阻止するため、弁体41を備えた遮断弁40が配置されている。
【0019】
ケース本体20の内部空間は、図5に示すように、上下に連続するように突設された出口流路仕切壁21および出口バッファ仕切壁22と、上下に連続するように突設された入口流路仕切壁23および入口バッファ仕切壁24とで、左右に3つの空間に仕切られている。特に、ケース本体20の右側には入口側空間部10aを、ケース本体20の左側には出口側空間部10bを、ケース本体20の中央には中央空間部10cを配置してある。
【0020】
前記入口側空間部10aは、水平に延在する第1仕切壁25をケース本体20に一体に突設することにより、入口流路部14と入口バッファ部16とに上下2段に区切られている。そして、第1仕切壁25には入口連通孔25aが形成されている。前記入口連通孔25aを設けることにより、略オリフィス構造が形成され、圧力変動による計測ユニットの誤計量を防止できる超音波流量計が得られる。また、前記入口連通孔25aは後述する計測ユニット50の入口部52aよりも内側に配置され、沿面距離が長くなっている。
【0021】
また、図5に示すように、入口バッファ仕切壁24には後述する計測ユニット50を支持するために係合受け部24aを設けてある。さらに、前記入口バッファ仕切壁24には、気体と同時に流入した液体を、入口バッファ部16から中央空間部10cに導くための切り欠き部24bを設けてある(図6)。このため、入口側空間部10a内に大量の液体が流入しても、入口バッファ部16および中央空間部10cの底面に液体を溜めることにより、計測ユニット50への侵入を防止できる。
【0022】
前記出口側空間部10bは、図3に示すように、水平方向に延在する第2仕切壁26をケース本体20に一体に突設することにより、出口バッファ部17と出口流路部18とに上下2段に区切られている。前記第2仕切壁26には気体が流出するための出口連通孔26aが設けられている。出口連通孔26aを設けることにより、略オリフィス構造が形成され、圧力変動による計測ユニットの誤計量を防止できる超音波流量計が得られる。
また、前記出口連通孔26aは後述する計測ユニット50の出口部52bよりも内側に配置され、沿面距離が長くなっている。
【0023】
前記中央空間部10cには、図5に示すように、出口バッファ仕切壁22と入口バッファ仕切壁24とに架け渡すように第3仕切壁27が水平に突設され、前記切り欠き部24bを介して入口バッファ部16に連通する水溜め用空間部10dが形成されている。また、出口バッファ仕切壁22には後述する計測ユニット50を支持するために係合受け部22aを設けてある。
【0024】
蓋体30は、図4に示すように、前記ケース本体20の開口部を被覆可能な正面形状を有している。そして、前記蓋体30の内向面には、出口流路仕切壁21および出口バッファ仕切壁22と、入口流路仕切壁23および入口バッファ仕切壁24と、第1仕切壁25と、第2仕切壁26および第3仕切壁27とに突き合う位置に、出口流路仕切壁31および出口バッファ仕切壁32と、入口流路仕切壁33および入口バッファ仕切壁34と、第1仕切壁35と、第2仕切壁36および第3仕切壁37とをそれぞれ突設してある。さらに、前記第1仕切壁35には入口連通孔35aが形成されている。また、第2仕切壁36には出口連通孔36aが形成されている。
【0025】
計測ユニット50は、図9に示すように、両端に入口部52aと出口部52bとを有する断面略長方形の筒体51と、前記筒体51の上面中央部に配置された計測回路部53とで構成されている。
【0026】
前記筒体51は、図10および図11に示すように、筒体51内の流通路の中央部に5枚の整流板56a、56b、56c、56d、56eを均等ピッチで並設することにより、6層の計測流路57a、57b、57c、57d、57e、57fが形成されている。また、前記筒体51は、Oリング59を抜け止めするため、その外表面に一対の環状リブ58a,58bを2組形成してある(図9)。さらに、前記筒体51の外側面には補強用リブ58cを突設してある(図3参照)。
【0027】
前記計測回路部53は、図9に示すように、略V字形状に配置された一対の超音波振動子54a,54bと、前記超音波振動子54a,54bの上方に配置された制御回路板55と、で構成されている。
そして、一方の超音波振動子54aから発射された超音波が、整流板56a、56b、56c、56d、56eの間に形成された計測流路57a~57fを通過して反射し、他方の超音波振動子54bで受信されるまでの伝搬時間が測定される。また、他方の超音波振動子54bから発射された超音波が、整流板56a、56b、56c、56d、56eの間に形成された計測流路57a~57fを通過して反射し、一方の超音波振動子54aで受信されるまでの伝搬時間が測定される。これらの伝搬時間の差から、各計測流路57a~57f内の気体の流速を検出し、各計測流路57a~57f内を通過する気体の流量がそれぞれ算出される。
【0028】
そして、計測ユニット50は、図3に示すように、1本のOリング59を入口バッファ仕切壁24の係合受け部24aに係合して位置決めする。さらに、残る他の1本のOリング59を、ケース本体20の出口バッファ仕切壁22の係合受け部22aに係合して位置決めする。ついで、ケース本体20の入口バッファ仕切壁24と蓋体30の入口バッファ仕切壁34とでOリング59,59を挟持する。そして、ケース本体20に蓋体30の取り付けが完了することにより、入口連通孔25a,35aが形成される(図7参照)。この結果、図8に示すように、計測ユニット50の入口部52aが入口バッファ部16内に位置決めされる。また、計測ユニット50の出口部52bが出口バッファ部17内に位置決めされる。そして、中央空間部10c内に計測ユニット50の計測回路部53が配置される。
なお、前記ケース10には、説明の便宜上、計測ユニット50に接続された接続線を引き出す構造、および/または、気体の圧力を測定するために気体の一部を外部に導き出す構造は図示されていないが、必要に応じて適宜、設けても良いことは勿論である。
【0029】
次に、気体の流量計測方法を説明する。
図3示すように、遮断弁40の弁体41を駆動して流入口13を開放することにより、流入部11から流入した気体が流入口13から入口側空間部10aの入口流路部14内に流入する。そして、第1仕切壁25の入口連通孔25aから流入した気体は入口バッファ部16内に流入する。入口バッファ部16内に流入した気体は、計測ユニット50のラッパ形状の入口部52aから筒体51内に流入する。さらに、5枚の整流板56a~56eに沿って整流されながら計測流路57a~57fを通過した気体は、一対の超音波振動子54a,54bが発する超音波を介して伝搬時間が計測される。計測された伝搬時間に基づき、制御回路板55に搭載された中央演算装置(CPU)が通過した気体の流量を算出する。ついで、各計測流路57a~57fを通過した気体は、筒体51の出口部52bから出口バッファ部17に流出し、第2仕切壁26に設けた出口連通孔26aを通過して出口流路部18に流入した後、流出部12から外部に流出する。
【0030】
第2実施形態は、図12ないし図15に示すように、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点はケース本体20内において上下に配置した出口流路仕切壁21と出口バッファ仕切壁22とで、出口側空間部10bとなる出口バッファ部17を形成した点である。
特に、図14に示すように、出口流路仕切壁21は下流側に向けて出口バッファ部17の横断面積が増大するように傾斜している。また、出口バッファ仕切壁22には後述する計測ユニット50の出口部52bを支持するための係合受け部22aを設けてある。
【0031】
さらに、第2実施形態の蓋体30は、図13に示すように、前記ケース本体20の開口部を被覆可能な正面形状を有している。そして、前記蓋体30の内向面には、出口流路仕切壁21および出口バッファ仕切壁22と、入口流路仕切壁23および入口バッファ仕切壁24と、第1仕切壁25および第3仕切壁27とにそれぞれ突き合う位置に、出口流路仕切壁31および出口バッファ仕切壁32と、入口流路仕切壁33および入口バッファ仕切壁34と、第1仕切壁35および第3仕切壁37とをそれぞれ突設してある。さらに、前記出口バッファ仕切壁32には計測ユニット50の出口部52bを支持するための係合受け部32aを設けてある。そして、前記第1仕切壁35には入口連通孔35aが形成されている。
【0032】
ついで、計測ユニット50には、図12に図示するように、出口バッファ仕切壁22の係合受け部22aに対応する位置に、環状の第1鍔部60を取り付けてある。このため、計測ユニット50の出口部52bは出口バッファ仕切壁22の外向き面と面一となっている。この結果、気体の流出が円滑になり、圧力損失が低減し、計測流量のバラツキが小さくなるという利点がある。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一番号を付して説明を省略する。
【0033】
本実施形態によれば、出口バッファ部17が下流側に向けて横断面積が広がっている。このため、いわゆるガス抜けが良くなり、圧力損失を低減できるだけでなく、計測流路57a~57f内の気体の流れを改善でき、計測流量のバラツキを小さくできるという利点がある。
【0034】
第3実施形態は、図16ないし図17に示すように、前述の第2実施形態とほぼ同様であり、異なる点は入口流路部14内に水平方向に延在し、かつ、流入口13と入口連通孔25aとの間に位置する遮蔽板28を、ケース本体20の内向面に突設した場合である。なお、入口連通孔25aは第1仕切壁25のほぼ中央に配置されている。
【0035】
本実施形態によれば、遮蔽板28を設置することにより、流入口13から流入した気体を一旦、遮ることにより、気体の脈動を減少させることができる。
遮蔽板28の位置、大きさ、形状は必要に応じて適宜、選択できることは勿論である。
他は前述の第2実施形態とほぼ同様であるので、同一部分には同一番号を付して説明を省略する。
【0036】
第4実施形態は、図18ないし図21に示すように、入口側空間部10aの入口流路部14と、中央空間部10cとを連通させた場合である。
すなわち、ケース10は、図18に示すように、箱形状であり、その上面の一端側に流入部11を配置するとともに、その他端側に流出部12を配置してある。
また、ケース10は、ケース本体20と、蓋体30とで構成されている。そして、前記流入部11の下端部に位置する流入口13(図22参照)には、ケース10の内部空間への気体の流入を調整するため、弁体41を備えた遮断弁40が配置されている。
【0037】
ケース本体20の内部空間は、図21に示すように、上下に連続するように突設された出口流路仕切壁21および出口バッファ仕切壁22により、ケース本体20の左側に出口側空間部10bが形成されている。
【0038】
前記出口側空間部10bは、水平方向に延在する第2仕切壁26を、ケース本体20の内向面に突設することにより、出口バッファ部17と出口流路部18とに上下2段に区切られている。前記第2仕切壁26には気体が流出するための出口連通孔26aが設けられている。出口連通孔26aを設けることにより、略オリフィス構造が形成され、圧力変動による計測ユニットの誤計量を防止できる超音波流量計が得られる。さらに、前記出口連通孔26aは後述する計測ユニット50の出口部52bよりも内側に配置され、沿面距離が長くなっている。
なお、出口連通孔26aは、本実施形態のようにダイカストで成形した後の後加工で形成してもよいが、前述の実施形態のように、手前側に開口する出口連通孔26aの一部を蓋体の内向面に設けた突部で閉鎖するように形成してもよい。
また、出口バッファ仕切壁22には、後述する計測ユニット50を係合して位置決めするための係合受け部22aを設けてあるとともに、前記係合受け部22aの開口縁部の対向面に上下一対の嵌合溝22cを設けてある。後述するスペーサ61を取り付けるためである。
なお、スペーサを取り付けるために前記係合受け部22aの開口縁部の対向面に上下一対の係合用突条を設け、本実接合してもよい。さらに、前記係合受け部22aの開口縁部の対向面を平坦面とし、かつ、これにスペーサの接合部が跨ぐような形状とすることにより、両者を組付けてもよいことは勿論である。
【0039】
また、ケース本体20は、その内向面に、前記出口流路仕切壁21に連続するように略L字形状の入口流路仕切壁23を一体に突設し、その直下に中央空間部10cを形成してある。前記出口流路仕切壁21と前記入口流路仕切壁23とで囲まれた空間部の正面は内側壁23aで仕切られ、収納部10eを形成してある(図19)。
【0040】
前記入口流路仕切壁23と、これに連続しないように突設された入口バッファ仕切壁24とで入口側空間部10aが区画されている。前記入口側空間部10aは、水平方向に延在し、かつ、入口バッファ仕切壁24のみに連続する第1仕切壁25を突設することにより、入口流路部14と入口バッファ部16とに上下2段に区切られている。このため、入口流路部14と中央空間部10cとは連通している。そして、前記第1仕切壁25には入口連通孔25aが形成されている。前記入口連通孔25aを設けることにより、略オリフィス構造が形成され、圧力変動による計測ユニットの誤計量を防止できる超音波流量計が得られる。前記入口連通孔25aは後述する計測ユニット50の入口部52aよりも内側に配置され、沿面距離が長くなっている。
なお、入口連通孔25aは、本実施形態のようにダイカストで成形した後の後加工で形成してもよいが、前述の実施形態に示すように、手前側に開口する入口連通孔25aの一部を蓋体の内向面に設けた突部で閉鎖するように形成してもよい。
また、入口バッファ仕切壁24には、図21に示すように、後述する計測ユニット50を係合して位置決めするための係合受け部24aを設けてあるとともに、前記係合受け部24aの開口縁部の対向面に上下一対の嵌合溝24cを設けてある。後述するスペーサ62を取り付けるためである。
そして、スペーサを取り付けるために前記係合受け部24aの開口縁部の対向面に上下一対の係合用突条を設け、本実接合してもよい。さらに、前記係合受け部24aの開口縁部の対向面を平坦面とし、かつ、これにスペーサの接合部が跨ぐような形状とすることにより、両者を組付けてもよいことは勿論である。
さらに、入口バッファ仕切壁24には、気体と同時に流入した液体を、入口バッファ部16から中央空間部10cに導くための切り欠き部24bを設けてある(図22)。このため、入口側空間部10a内に大量の液体が流入しても、入口バッファ部16および中央空間部10cの底面に液体を溜めることができ、計測ユニット50への侵入を防止できる。
【0041】
蓋体30は、図18および図19に示すように、前記ケース本体20の開口部を被覆可能な正面形状を有する板状体である。
【0042】
計測ユニット50は、図20に示すように、前述の実施形態とほぼ同様であるので、同一部分には同一番号を附して説明を省略する。
【0043】
そして、計測ユニット50を、図20に示すように、1本のOリング59(図23)を介してケース本体20の係合受け部22a(図29)に係合して位置決めする。さらに、計測ユニット50を、1本のOリング59を介してケース本体20の係合受け部24aに係合して位置決めする。ついで、出口バッファ仕切壁22の嵌合溝22cにスペーサ61を嵌め込むとともに、入口バッファ仕切壁24の嵌合溝24cにスペーサ62を嵌め込む。最後に、ケース本体20に蓋体30の取り付けることにより、切り欠き部24bが形成される(図22参照)。この結果、図23に示すように、計測ユニット50の入口部52aが入口バッファ部16内に位置決めされる。また、計測ユニット50の出口部52bが出口バッファ部17内に位置決めされる。そして、中央空間部10c内に計測ユニット50の計測回路部53が配置される。
【0044】
なお、入口側空間部10a、出口側空間部10bおよび中央空間部10cの隅部には、気体の円滑な流れを確保すべく、アール面となっている。アールの大小は必要に応じて適宜、選択できることは勿論である。例えば、アール面の曲率半径の範囲はR0.5~30mmが好ましい。R0.5mm未満であると、鋳造時の不良発生率が著しく増加するからであり、R30mmを超えると、厚肉となりすぎて製造コストが高くなり、現実的でないからである。
【0045】
第5実施形態は、図24から図32示すように、前述の第4実施形態とほぼ同様であり、大略、ケース10と、遮断弁40と、計測ユニット50と、で構成されている。このため、同一部分について同一番号を附して説明する。
【0046】
なお、遮断弁40と、計測ユニット50とは前述の実施形態とほぼ同様であるので、同一部分に同一番号を附して説明を省略する。
ただし、計測ユニット50は、図29に示した出口バッファ仕切壁22の係合受け部22aと入口バッファ仕切壁24の係合受け部24aとに、図32に示したOリング59,59を介して係合されている。さらに、図28に示すように、出口バッファ仕切壁22の係合受け部22aと入口バッファ仕切壁24の係合受け部24aとには、スペーサ61,62をそれぞれ配置してある。
【0047】
ケース10は、図24および図25に示すように、箱形状であり、ケース本体20と、とで構成されている。
【0048】
ケース本体20は、図26および図27に示すように、ガスケット63を介して蓋体30をネジ(図示せず)で接合一体化してある。
なお、本実施形態では、ネジ止めピッチはシール性を確保するために所定の距離、例えば、側方に隣り合うネジ止めピッチを略均等の距離、例えば、70mmとしてもよい。シール性を確保しつつ、ネジの本数を減らし、生産性を高めるためである。
【0049】
前記ケース本体20は、ケース本体20の内部には、図28および図29に示すように、前述の実施形態と同様、入口側空間部10aと、出口側空間部10bと、中央空間部10cとの3つの空間部に区画されている。
【0050】
入口側空間部10aは、水平に延在する第1仕切壁25をケース本体20に一体に突設することにより、入口流路部14と入口バッファ部16とに上下2段に区切られている。そして、第1仕切壁25には入口連通孔25aが形成されている。前記入口連通孔25aを設けることにより、略オリフィス構造が形成され、圧力変動による計測ユニットの誤計量を防止できる超音波流量計が得られる。
また、入口側空間部10aは、前記第1仕切壁25に連続し、かつ、垂直方向に延在する入口バッファ仕切壁24をケース本体20に一体に突設することにより、入口バッファ部16と中央空間部10cとが左右に区切られている。このため、入口流路部14と中央空間部10cとは連通している。この結果、流入口13から流入した気体の一部は、入口流路部14を介して中央空間部10cに流れ込んだ後、入口バッファ部16に流入する。
【0051】
前記出口側空間部10bは、図28に示すように、水平方向に延在する第2仕切壁26をケース本体20に一体に突設することにより、出口バッファ部17と出口流路部18とに上下2段に区切られている。前記第2仕切壁26には気体が流出するための出口連通孔26aが設けられている。出口連通孔26aを設けることにより、略オリフィス構造が形成され、圧力変動による計測ユニットの誤計量を防止できる超音波流量計が得られる。
また、前記出口連通孔26aは後述する計測ユニット50の出口部52bよりも内側に配置されることになるので、沿面距離が長くなっている。そして、出口流路部18の側壁には圧力センサ45が取り付けられている。
【0052】
前記中央空間部10cは、図30および図31に示すように、入口流路仕切壁23および内側壁23aの内側への突き出し容量を、第4実施形態よりも小さくしてある。入口流路部14から中央空間部10cへ気体を流れ込みやすくするためである。本実施形態によれば、金型の構造が簡単になり、ダイカスト成形が容易になるとともに、ダイカスト材料を節約できるという利点がある。さらに、内側壁23aには、中継コネクタ46が設けられている。
また、前記入口流路仕切壁23の下方側に位置する側壁を外方に膨出させて膨出部20aを形成してある。このため、本実施形態によれば、中央空間部10cの底面積が増大し、侵入した水を貯えられる貯水量が増加するという利点がある。
【0053】
蓋体30は、図27に図示するように、ケース本体20の入口流路部14、入口バッファ部16、中央空間部10c、出口バッファ部17、出口流路部18に対向する位置に、膨出部38a、38b、38c、38d、38eをそれぞれ設けてある。
本実施形態によれば、膨出部38a、38b、38c、38d、38eを設けてあるので、蓋体30全体の剛性が大きくなる。特に、中央空間部10cと対向する位置に設けた膨出部38cは、蓋体30と計測回路部53との衝突を回避するだけでなく(図31)、中央空間部10cの容積を実質的に増大し、貯水量を増大させるという利点がある。
【0054】
なお、前述の第1実施形態ないし第5実施形態のいずれの実施形態も、入口バッファ部16に連通する入口連通孔25aが、入口バッファ部16の上方に位置する。このため、入口連通孔25aは、入口バッファ部16内に位置する計測ユニット50の入口部52aよりも上方に位置する。そして、入口連通孔25aから入口バッファ部16内に流下した被計測流体は、入口バッファ部16内で気体と水分等とに分離され、水分等が除去・管理される。
(実施例1)
【0055】
第1実施形態についてシミュレーションし、6つの計測流路57a~57fにおける流量を求めるとともに、圧力損失を求めた。実施例1の結果を図33の棒グラフ図および図34のグラフ図に示す。
なお、想定した理想的な一層当たりの体積流量は1,000(L/h)とした。
【0056】
図33から明らかなように、最大流量(1,028(L/h))と最小流量(969(L/h))との差異は59(L/h)である。理想的な流量を基準とした場合の差異は5.9%であり、本実施形態のバラツキが後述する比較例のバラツキよりも小さいことを確認できた。
また、図34に図示するように、圧力損失185.3(Pa)であり、社内の規格値(190(Pa))以下であることを確認できた。
(実施例2)
【0057】
第2実施形態についてシミュレーションし、6つの計測流路57a~57fにおける流量を求めるとともに、圧力損失を求めた。実施例2の結果を図35の棒グラフ図および図36のグラフ図に示す。
なお、想定した理想的な一層当たりの体積流量は1,000(L/h)とした。
【0058】
図35から明らかなように、最大流量(1,022(L/h))と最小流量(988(L/h))との差異は34(L/h)である。理想的な流量を基準とした場合の差異は3.4%であり、本実施形態のバラツキが後述する比較例のバラツキよりも小さいことを確認できた。
また、図36に図示するように、圧力損失159.7(Pa)であり、社内の規格値(190(Pa))以下であることを確認できた。
(実施例3)
【0059】
第3実施形態についてシミュレーションし、6つの計測流路57a~57fにおける流量を求めるとともに、圧力損失を求めた。シミュレーション結果を図36の棒グラフ図および図37のグラフ図に示す。
なお、想定した理想的な一層当たりの体積流量は1,000(L/h)とした。
【0060】
図36から明らかなように、最大流量(1,016(L/h))と最小流量(972(L/h))との差異は44(L/h)である。理想的な流量を基準とした場合の差異は4.4%であり、本実施形態のバラツキが後述する比較例のバラツキよりも小さいことを確認できた。
また、図37に図示するように、圧力損失169.6(Pa)であり、社内の規格値(190(Pa))以下であることを確認できた。
(実施例4)
【0061】
第4実施形態についてシミュレーションし、6つの計測流路57a~57fにおける流量を求めるとともに、圧力損失を求めた。シミュレーション結果を図38の棒グラフ図および図39のグラフ図に示す。
なお、想定した理想的な一層当たりの体積流量は1,000(L/h)とした。
【0062】
図38から明らかなように、最大流量(1,023(L/h))と最小流量(981(L/h))との差異は42(L/h)である。理想的な流量を基準とした場合の差異は4.2%であり、本実施形態のバラツキが後述する比較例のバラツキよりも小さいことを確認できた。
また、図39に図示するように、圧力損失177.6(Pa)であり、社内の規格値(190(Pa))以下であることを確認できた。
【0063】
入口流路部14と中央空間部10cとが連通しているにも拘わらず、計測流量のバラツキが小さい。これは、流入口13から流入した気体が脈動していても、中央空間部10c内に滞留する気体がいわばクッション材となり、流入した気体が入口連通孔25aを通過する前に気体の脈動が吸収・緩和されるためであると考えられる。
(実施例5)
【0064】
第5実施形態についてシミュレーションし、6つの計測流路57a~57fにおける流量を求めるとともに、圧力損失を求めた。実施例5の結果を図40の棒グラフ図および図41のグラフ図に示す。
なお、想定した理想的な一層当たりの体積流量は1,000(L/h)とした。
【0065】
図40から明らかなように、最大流量(1,033(L/h))と最小流量(973(L/h))との差異は60(L/h)である。理想的な流量を基準とした場合の差異は5.8%であり、本実施形態のバラツキが後述する比較例のバラツキよりも小さいことを確認できた。
また、図41に図示するように、圧力損失184.6(Pa)であり、社内の規格値(190(Pa))以下であることを確認できた。
【0066】
入口流路部14と中央空間部10cとが連通しているにも拘わらず、計測流量のバラツキが小さい。これは、流入口13から流入した気体が脈動していても、中央空間部10c内に滞留する気体がいわばクッション材となり、流入した気体が入口連通孔25aを通過する前に気体の脈動が吸収・緩和されるためであると考えられる。
(比較例)
【0067】
既存の現行機種を模した超音波流量計をシミュレーションし、6つの計測流路57a~57fにおける流量を求めた。シミュレーション結果を図42の棒グラフ図に示す。
【0068】
図42から明らかなように、最大流量(1,095(L/h))と最小流量(968(L/h))との差異は127(L/h)である。理想的な流量を基準とした場合のバラツキの程度は12.7%であった。
したがって、前述の各実施例に係る計測流量のバラツキが、既存の超音波流量計に係る計測流量のバラツキよりも小さいことが判った。
(実施例6,実施例7)
【0069】
第1実施形態および第4実施形態に対し、流動していない気体に、スピーカを介して低周波(数Hz)、中周波(約20Hz)および高周波(数十Hz)の正弦波の圧力変動を付与し、計測流量の変動をそれぞれ測定し、実施例6,実施例7とした。実施例6,7の計測流量の測定結果を図43に示す。
なお、本実施例における理想的な計測流量はゼロ(L/h)である。
【0070】
図43から明らかなように、計測流量の平均値が±1(L/h)以内であり、検知しなければならない計測流量の最小値である基準値5(L/h)よりも小さいことが判った。
特に、第4実施形態に係る実施例6については、中周波において計測流量の平均値が他の平均値よりも一桁小さいことが判った。これは、計測流量の変動が中央値を中心として変動しており、中央値からのズレが少なく、誤検出が少ないためである。
【0071】
前述したように実施例6および実施例7、特に、実施例7の中周波における計測流量の平均値が他の計測流量の平均値よりも著しく小さい。これは、流入口13から入口連通孔25aに気体が流入する場合に、気体の圧力が脈動していたとしても、中央空間部10c内に滞留する気体が、いわばクッション材として気体の脈動を吸収・緩和するためであると考えられる。
したがって、入口流路部14に連通する中央空間部10cの位置、形状、容積を適宜選択することにより、低周波、中周波および高周波における計測流量の平均値のバラツキを低減できることが判った。
(実施例8)
【0072】
第5実施形態に対し、流動していない気体に、スピーカを介して低周波(数Hz)、中周波(約20Hz)および高周波(数十Hz)の正弦波の圧力変動を付与し、計測流量の変動を測定し、実施例8とした。実施例8の計測流量の測定結果を図44に示す。
なお、本実施例における理想的な計測流量はゼロ(L/h)である。
【0073】
図44から明らかなように、計測流量の平均値が±1(L/h)以内であり、検知しなければならない計測流量の最小値である基準値5(L/h)よりも小さいことが判った。
特に、第5実施形態に係る実施例8については、高周波において計測流量の平均値が他の平均値よりも一桁小さいことが判った。これは、計測流量の変動が中央値を中心として変動しており、中央値からのズレが少なく、誤検出が少ないためである。
【0074】
なお、前述の実施例7および実施例8は、ガスメータにガスが流れていない場合に、圧力変動を与えたときの計測流量と時間との関係を示すものであり、計測流量は0L/hであることが望ましい。そして、実施例7および実施例8は計測流量がおよそ±1L/h以内であり、特に、実施例8の計測流量平均値は-0.04L/hないし-0.52L/hであることから、両者が同等の性能を備えていることが判った。さらに、ガスメータは5L/hを超える流量を検知しなければならないが、前述の誤差範囲であれば、十分に検知可能であることが判った。
【0075】
前述したように実施例8の高周波における計測流量の平均値が他の計測流量の平均値よりも著しく小さい。これは、流入口13から入口連通孔25aに気体が流入する場合に、気体の圧力が脈動していたとしても、中央空間部10c内に滞留する気体が、いわばクッション材として気体の脈動を効率的に吸収・緩和するためであると考えられる。
したがって、入口流路部14に連通する中央空間部10cの位置、形状、容積を適宜選択することにより、低周波、中周波および高周波における計測流量の平均値のバラツキを低減できることが判った。
(実施例9)
【0076】
第1実施形態について、流体の流れをシミュレーションで可視化した流跡線図を図45に示す。
【0077】
図45から明らかなように、流入口13から流入した気体は入口連通孔25aを通過する際に絞られた後、再び拡散して計測ユニット50の入口部52aから流入することが判った。このため、入口連通孔25aで絞られて拡散する際に気体の脈動が吸収されるとともに、迂回することによって沿面距離が長くなり、気体の圧力変動が緩和されることが判った。
(実施例10)
【0078】
第3実施形態について、流体の流れをシミュレーションで可視化した流跡線図を図46に示す。
【0079】
図46から明らかなように、流入口13から流入した気体が遮蔽板28に衝突して拡散して迂回し、入口連通孔25aを通過する際に絞られた後、再び拡散して計測ユニット50の入口部52aから流入することが判った。
【0080】
以上の流跡線図から明らかなように、気体が遮蔽板28に衝突して迂回することにより、あるいは、入口連通孔25aによって気体が絞られ、拡散することにより、気体の脈動が吸収・緩和されることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は都市ガスに限らず、他の気体の流量計測に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
10 ケース
10a 入口側空間部
10b 出口側空間部
10c 中央空間部
10d 水溜め用空間部
10e 収納部
11 流入部
12 流出部
13 流入口
14 入口流路部
16 入口バッファ部
17 出口バッファ部
18 出口流路部
19 中間バッファ部
20 ケース本体
20a 膨出部
21 出口流路仕切壁
22 出口バッファ仕切壁
22a 係合受け部
23 入口流路仕切壁
23a 内側壁
24 入口バッファ仕切壁
24a 係合受け部
24b 切り欠き部
25 第1仕切壁
25a 入口連通孔
26 第2仕切壁
26a 出口連通孔
27 第3仕切壁
28 遮蔽板
30 蓋体
31 出口流路仕切壁
32 出口バッファ仕切壁
33 入口流路仕切壁
34 入口バッファ仕切壁
34a 入口連通孔
35 第1仕切壁
36 第2仕切壁
36a 出口連通孔
37 第3仕切壁
38a~38e 膨出部
40 遮断弁
41 弁体
45 圧力センサ
46 中継コネクタ
50 計測ユニット
51 筒体
52a 入口部
52b 出口部
53 計測回路部
54a 超音波振動子
54b 超音波振動子
55 制御回路板
56a~56e 整流板
57a~56f 計測流路
60 第1鍔部
61 スペーサ
62 スペーサ
63 ガスケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46