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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】管加工機用ノロ受け治具
(51)【国際特許分類】
   B23K 10/00 20060101AFI20240621BHJP
   B23K 9/32 20060101ALI20240621BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20240621BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20240621BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B23K10/00 501A
B23K9/32 E
B23K26/16
B23K26/38 B
B23K37/00 301B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020186893
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076514
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391037814
【氏名又は名称】株式会社東京エネシス
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】杉内 正人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 俊之
(72)【発明者】
【氏名】大澤 誠二
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3012354(JP,U)
【文献】特開平06-339770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 10/00
B23K 9/32
B23K 26/16
B23K 26/38
B23K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工管を管軸まわりに回転可能に保持しながら加工する管加工機に用いられるノロ受け治具であって、
前記被加工管に挿し入れられるシャフトと、
前記シャフトを前記管軸に沿わせるように前記被加工管に支持させる支持部と、
前記シャフトに設けられ、前記シャフトの軸線まわりに自由回転可能なノロ受皿と
を備え、
前記シャフトの外周部に軸受けを介して設けられたスリーブと、前記スリーブの周面の一側部から前記シャフトの径方向かつ下方に突出する連結ビームとを備え、前記ノロ受皿は、前記連結ビームの下端に連結され、自重により前記シャフトの下方に位置することを特徴とする管加工機用ノロ受け治具。
【請求項2】
前記スリーブの周面における前記連結ビームの反対側部には保護カバーが被さるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の管加工機用ノロ受け治具。
【請求項3】
前記保護カバーが、止着手段によって前記スリーブに着脱可能に止着されていることを特徴とする請求項2に記載の管加工機用ノロ受け治具。
【請求項4】
前記連結ビームが、前記スリーブに対して分離可能に連結され、かつ前記ノロ受皿に対して分離可能に連結されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の管加工機用ノロ受け治具。
【請求項5】
前記連結ビームが、前記スリーブから前記ノロ受皿に架け渡された雄ネジ部材を含み、
前記スリーブ及び前記ノロ受皿の少なくとも一方には前記雄ネジ部材と螺合されるナットが設けられ、
前記雄ネジ部材の外周には被覆パイプが被さっていることを特徴とする請求項4に記載の管加工機用ノロ受け治具。
【請求項6】
被加工管を管軸まわりに回転可能に保持しながら加工する管加工機に用いられるノロ受け治具であって、
前記被加工管に挿し入れられるシャフトと、
前記シャフトを前記管軸に沿わせるように前記被加工管に支持させる支持部と、
前記シャフトに設けられ、前記シャフトの軸線まわりに自由回転可能なノロ受皿と
を備え、
前記支持部が、前記シャフトの軸方向に互いに離間して配置される複数の支持体を含み、各支持体が、前記シャフトから放射状に伸びる複数の伸縮可能な脚部を有していることを特徴とする管加工機用ノロ受け治具。
【請求項7】
各脚部の先端部には、前記被加工管の内周面上を転動可能な回転体が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の管加工機用ノロ受け治具。
【請求項8】
前記支持体が、前記シャフトの外周に前記軸方向へ移動可能に嵌められるとともに前記各脚部の基端部が接合された筒状のホルダと、前記ホルダを前記シャフトに解放可能に固定する固定手段とを有していることを特徴とする請求項6又は7に記載の管加工機用ノロ受け治具。
【請求項9】
前記ノロ受皿が、前記被加工管の内周面に沿う部分筒状であることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の管加工機用ノロ受け治具。
【請求項10】
被加工管を管軸まわりに回転可能に保持しながら加工する管加工機に用いられるノロ受け治具であって、
前記被加工管に挿し入れられるシャフトと、
前記シャフトを前記管軸に沿わせるように前記被加工管に支持させる支持部と、
前記シャフトに設けられ、前記シャフトの軸線まわりに自由回転可能なノロ受皿と
を備え、
前記シャフトには、前記被加工管の管内空間を仕切るフィルターが支持されていることを特徴とする管加工機用ノロ受け治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工管を管軸まわりに回転可能に保持しながら加工する管加工機に用いられるノロ受け治具に関し、特に被加工管の被加工部を局所的に加熱溶融させて切断(溶断)、穴開け、開先加工等する管加工機用のノロ受け治具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の管加工機として、例えばプラズマ切断機が挙げられる(特許文献1等参照)。プラズマ切断機はプラズマアークの熱で被加工部を局所的に溶解させて切断(溶断)、穴開け、開先加工等の加工を施す。溶解によってノロ(溶解くず)が発生する。ノロは被加工管の内周面などに付着する。このため、加工後に、付着したノロを除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-010330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工後のノロ除去作業は煩雑で非効率である。そこで、プラズマその他の溶断加工時に、被加工管の内部における、プラズマトーチの下方ひいては被加工部の下方にノロ受けを配置しておき、それでノロを受けることで、被加工管の内周面にノロが付着するのを抑制することが考えられる。一方、この種の管加工機は、通常、被加工管を管軸まわりに回転させながら加工する。このため、被加工管内にノロ受けを単に置いただけでは、ノロ受けが被加工管と一緒に回転してしまい、被加工部の下方にノロ受けが常時配置されるようにすることができない。また、溶断加工等で発生したヒュームや飛散ノロは、ノロ受けには落下せずに、ノロ受けよりも奥側の被加工管の内周面に付着しやすく、加工後の除去作業が煩雑である。
本発明は、かかる事情に鑑み、被加工管を管軸まわりに回転させながら溶断等の加工を行う際に発生するノロを確実に受けることができ、被加工管の内周面にノロが付着するのを抑制できるノロ受け治具を提供することを、主たる課題とする。また、ヒュームや飛散ノロがノロ受け治具よりも奥側の被加工管の内周面に付着するのを防止することを、従たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記主たる課題を解決するため、本発明は、
被加工管を管軸まわりに回転可能に保持しながら加工する管加工機に用いられるノロ受け治具であって、
前記被加工管に挿し入れられるシャフトと、
前記シャフトを前記管軸に沿わせるように前記被加工管に支持させる支持部と、
前記シャフトに設けられ、前記シャフトの軸線まわりに自由回転可能なノロ受皿と
を備えたことを第1の特徴とする。
ノロ受皿が被加工部の直下に位置されるようにノロ受け治具をセットする。管加工機による加工時に被加工管を回転させると、ノロ受け治具の支持部及びシャフトのうち少なくとも支持部が被加工管との摩擦で回転され得る。一方、支持部やシャフトが被加工管と共に回転されたとしても、ノロ受皿は、シャフトの軸線まわりに自由に回転可能であるために、自重によってシャフトの下方に常時位置しようとする。これによって、被加工部から発生するノロを、ノロ受皿が、被加工部の直下で常時、確実に受けるようにできる。加工後、被加工管の内周面からノロを除去する作業を軽減又は省略できる。
【0006】
前記シャフトの外周部に軸受けを介して設けられたスリーブを更に備え、前記スリーブの周面の一側部に前記シャフトの径方向へ突出する連結ビームを介して前記ノロ受皿が連結され、前記スリーブの周面の反対側部には保護カバーが被さるように設けられていることが好ましい。
これによって、ノロ受皿が、スリーブ及び保護カバーと一体に、シャフトに対して自由回転可能となる。シャフトを水平にしたときは、シャフトが回転されたとしても、ノロ受皿は、自重によってスリーブから連結ビームを介して吊り下げられた吊下状態を常時保持する。これによって、ノロ受皿が被加工部からのノロを確実に受けることができる。一方、保護カバーは、スリーブの上側に被さった状態を常時保持する。このため、被加工部からスリーブへ向かって落下したノロは、保護カバーに当たる。これによって、スリーブにノロが直接当たるのが回避される。この結果、ノロの高熱によってスリーブ及び軸受けが損傷するのを抑制又は防止できる。
【0007】
前記保護カバーが、止着手段によって前記スリーブに着脱可能に止着されていることが好ましい。保護カバーは、被加工部からのノロを直接受けて損傷されやすい。保護カバーが損傷したときは、止着手段を解除することで、スリーブから保護カバーを簡単に分離して撤去でき、新品の保護カバーと簡単に交換できる。
【0008】
前記連結ビームが、前記スリーブに対して分離可能に連結され、かつ前記ノロ受皿に対して分離可能に連結されていることが好ましい。これによって、異なる管径の被加工管に容易に対応できる。すなわち、連結ビームをスリーブ及びノロ受皿から分離して取り外すことによって、被加工管9の管径と適合する長さのものと容易に交換することができる。
【0009】
前記連結ビームが、前記スリーブから前記ノロ受皿に架け渡された雄ネジ部材を含み、 前記スリーブ及び前記ノロ受皿の少なくとも一方には前記雄ネジ部材と螺合されるナットが設けられ、前記雄ネジ部材の外周には被覆パイプが被さっていることが好ましい。これによって、雄ネジ部材とナットの螺合を解除することで、連結ビームを簡単に取り外して交換できる。溶断加工時にはノロが雄ネジ部材に直接接触するのを回避でき、雄ネジ部材の損傷を防止できる。
【0010】
前記支持部が、前記シャフトの軸方向に互いに離間して配置される複数の支持体を含み、各支持体が、前記シャフトから放射状に伸びる複数の伸縮可能な脚部を有していることが好ましい。
各脚部を長さ調整して被加工管の内周面に突き当てるか、又は微小隙間を介して近接させる。複数の脚部相互の長さ調整によって、シャフトを被加工管の管軸に沿うよう配置できる。複数の支持体によって、シャフトを2点以上で支持できる。前記微小隙間の大きさは、被加工管へのノロ受け治具の出し入れのし易さ、被加工管の内周面の公差又は製造誤差による凹凸、被加工管の管軸に対するシャフトのずれの許容量などを考慮して設定することが好ましい。
【0011】
各脚部の先端部には、前記被加工管の内周面上を転動可能な回転体が設けられていることが好ましい。
これによって、回転体を被加工管の内周面に当てた状態で転動させながら、ノロ受け治具を被加工管内に挿し入れたり、被加工管内で移動させて位置調整したり、被加工管から引き抜いたりできる。脚部の先端部が被加工管の内周面と摺擦するのを回避でき、被加工管の内周面が滑り摩擦によって痛むのを回避できる。
【0012】
前記支持体が、前記シャフトの外周に前記軸方向へ移動可能に嵌められるとともに前記各脚部の基端部が接合された筒状のホルダと、前記ホルダを前記シャフトに解放可能に固定する固定手段とを有していることが好ましい。
固定手段を緩めることによって、支持体をシャフトに対して位置調節できる。位置調節後、固定手段を締めることによって、支持体をシャフトに対して位置固定できる。
【0013】
前記ノロ受皿が、前記被加工管の内周面に沿う部分筒状であることが好ましい。これによって、ノロ受皿が、被加工部からのノロを確実に受けることができる。ノロ受皿は、部分筒状であれば、部分円筒状に限らず、部分楕円状でもよい。
【0014】
前記シャフトには、前記被加工管の管内空間を仕切るフィルターが支持されていることが好ましい。これによって、前記従たる課題が解決される。すなわち、被加工部から飛散したノロやヒュームを前記フィルターで捕捉することができる。したがって、飛散ノロやヒュームが、被加工管におけるノロ受け治具よりも奥側の部分の内周面に付着するのを防止できる。加工後、被加工管の内周面から飛散ノロ及びヒュームを除去する作業を軽減又は省略できる。前記従たる課題を解決するために、本発明は、前記被加工管に挿し入れられるシャフトと、前記シャフトを前記管軸に沿わせるように前記被加工管に支持させる支持部と、前記被加工管の管内空間を仕切るようにして前記シャフトに支持されたフィルターとを備えたフィルター装置を、第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の特徴によれば、被加工管を管軸まわりに回転させながら溶断等の加工を行う際に発生するノロを確実に受けることができ、被加工管の内周面にノロが付着するのを抑制できる。また、本発明の第2の特徴によれば、フィルターを設けることによって、ヒュームや飛散ノロがノロ受け治具よりも奥側の被加工管の内周面に付着するのを防止できる。この結果、加工後の被加工管の内周面の清掃時間を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るノロ受け治具及び管加工機を含む管加工装置の解説正面図である。
図2図2は、図1の円部IIの拡大図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、前記ノロ受け治具の第1フィルターユニットの分解斜視図である。
図6図6は、前記ノロ受け治具の第2フィルターユニットの分解斜視図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係るノロ受け治具を被加工管内に配置した状態で示す正面断面図である。
図8図8は、本発明の第3実施形態に係るノロ受け治具を被加工管内に配置した状態で示す正面断面図である。
図9図9は、本発明の第4実施形態に係るノロ受け治具を被加工管内に配置した状態で示す、図10のIX-IX線に沿う正面断面図である。
図10図10は、図9のX-X折曲線に沿う側面階段断面図である。
図11図11は、前記第4実施形態に係るノロ受け治具のノロ受けアタッチメントの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(図1図6
図1は、管加工装置1を示したものである。管加工装置1は、管加工機10と、ノロ受け治具20を含む。管加工機10は、例えばプラズマ切断機によって構成され、プラズマトーチ11と、トーチ移動機構12と、チャック13と、管支持台14と、集塵機15を備えている。チャック13によって被加工管9の奥端部(図1において右端部)が被加工管9の管軸Lまわりに回転可能に保持されている。管支持台14によって被加工管9が水平かつ回転可能に支持されている。
被加工管9は、例えば口径150A~600A、長さ数m以上の鋼管であるが、必ずしもこれに限られない。
【0018】
プラズマトーチ11は、トーチ移動機構12によって好ましくは多次元的に移動可能に支持されている。該プラズマトーチ11が、被加工管9における被加工部9aの上方に配置されている。プラズマトーチ11からのプラズマアークによって被加工管9の被加工部9aが局所的に加熱溶融され、被加工管9の切断(溶断)、穴開け、開先加工等の加工が行われる。
【0019】
加工時に被加工部9aからノロ9b(溶解くず)が発生する。管加工装置1には、ノロ9bを受けるための管加工機10用のノロ受け治具20が付加されている。
図2に示すように、ノロ受け治具20は、シャフト21と、ノロ受けアタッチメント30と、支持部40を備えている。
【0020】
シャフト21は、被加工管9より細い直管状である。シャフト21の長さは被加工管9より短い。好ましくは、シャフト21の長さは可能な限り短くする。該シャフト21が、水平にされて被加工管9に挿し入れられ、管軸Lに沿うよう配置されている。
【0021】
図2に示すように、シャフト21の中間部にノロ受けアタッチメント30が設けられている。ノロ受けアタッチメント30は、スリーブ31と、ノロ受皿33と、保護カバー35を含む。スリーブ31は、シャフト21より十分に短い円筒状になっている。該スリーブ31がシャフト21の外周部に嵌められている。スリーブ31の内周とシャフト21の外周の間には、軸受け34が介在されている。これによって、スリーブ31は、シャフト21の軸線L21まわりに回転自在になっている。かつスリーブ31は、軸受け34と一体に、シャフト21の軸線方向へ移動可能になっている。
【0022】
図2及び図3に示すように、スリーブ31の周面の一側部には、連結ビーム32を介してノロ受皿33が連結されている。連結ビーム32は、スリーブ31からシャフト21の径方向へ突出されている。連結ビーム32の先端部(図3において下端部)が、ノロ受皿33の中央部に溶接、ネジ締結などによって接合されている。
【0023】
ノロ受皿33は、連結ビーム32及びスリーブ31を介して、シャフト21に対して、軸線L21まわりに自由回転可能かつシャフト21の軸線方向に移動可能に設けられている。ノロ受皿33は、被加工管9の内周面に沿う部分筒状に形成されている。ノロ受皿33の内周面33aが、上方のスリーブ31へ向けられている。図3におけるノロ受皿33は、楕円断面状(ないしは放物線断面状)であるが、真円の断面状であってもよい。楕円断面をなすノロ受皿33の底部(軸線L21から最も遠い位置)における軸線L21からの距離は、被加工管9の内周面の半径より小さい。
シャフト21を管軸Lに沿わせて配置した状態において、ノロ受皿33の外周面と被加工管9の内周面との間には隙間が形成されている。
シャフト21の軸線方向における、ノロ受皿33の長さは、スリーブ31の長さより大きい。
【0024】
ノロ受皿33の周方向の両端部には、それぞれ鍔部36が付設されている。鍔部36は、ノロ受皿33とほぼ同じ長さの薄板によって構成され、ノロ受皿33の各端部の長手方向(図3の紙面と直交する方向)に沿って延びている。鍔部36は、ノロ受皿33から径方向外側へ突出されている。鍔部36の先端部は、被加工管9の内周面と近接している。
【0025】
図2及び図3に示すように、スリーブ31の周面における上側部(ノロ受皿33とは反対側部)には、保護カバー35が設けられている。保護カバー35は、スリーブ31に被さる所定断面の板状に形成され、溶接などによってスリーブ31と接合されている。保護カバー35は、型鋼や平鋼などの鋼材によって構成されている。図3においては、保護カバー35はL字断面の山形鋼(アングル材)によって構成されている。
【0026】
図2に示すように、シャフト21と被加工管9との間には、支持部40が設けられている。支持部40は、シャフト21を管軸Lに沿わせるように被加工管9に支持させている。
詳しくは、支持部40は、3つ(複数)の支持体41を含む。これら支持体41は、シャフト21の軸方向に互いに離間して配置されている。そのうち手前側(図2において左側)と中間の2つの支持体41の間のシャフト21にノロ受けアタッチメント30が配置されている。前記中間と奥側の支持体41どうしは近接して配置されている。
なお、支持体41の数は、3つに限らず、ノロ受け治具20をバランス良く支持できれば2つだけでもよく、4つ以上でもよい。
【0027】
図4に示すように、各支持体41は、ホルダ43と、3つ(複数)の脚部42と、止めボルト44(固定手段)を有している。ホルダ43は、筒状に形成されている。該ホルダ43が、シャフト21の外周に嵌められている。ホルダ43の内径はシャフト21の外径より僅かに大きい。ホルダ43ひいては支持体41は、シャフト21の軸方向へ移動可能になっている。
【0028】
ホルダ43の周面の一箇所には、止めボルト44(固定手段)が設けられている。止めボルト44は、ホルダ43を半径方向に貫通するようにして、ホルダ43と螺合されている。止めボルト44は、ホルダ43をシャフト21に解放可能に固定する。すなわち、止めボルト44を緩めることで、シャフト21に対するホルダ43の移動が許容される。止めボルト44を締めると、止めボルト44の先端部がシャフト21に強く当たり、ホルダ43ひいては支持体41がシャフト21に対して固定される。
【0029】
ホルダ43の外周部に3つ(複数)の脚部42が設けられている。脚部42は、ホルダ43の周方向に等間隔(120°間隔)置きに設けられている。これら脚部42が、シャフト21から放射状に伸びている。
なお、1の支持体41における脚部42の数は、3つに限らず、4つ以上でもよい。
【0030】
各脚部42は、ホルダ43ひいてはシャフト21の径方向へ伸縮可能に伸びている。詳しくは、脚部42は、脚基部45と、脚先部46と、回転体47と、長さ調整ボルト48を含む。脚基部45(脚部の基端部)が、ホルダ43に溶接などによって接合されている。脚基部45の先端部に、長さ調整ボルト48を介して脚先部46が連結されている。長さ調整ボルト48は、スタッドボルトによって構成されている。好ましくは、長さ調整ボルト48は、被加工管9の管径に応じた長さのものに交換して使用される。長さ調整ボルト48の両側の雄ネジが、脚基部45の雌ネジ及び脚先部46の雌ネジにそれぞれ螺合されている。長さ調整ボルト48を回すことによって、脚基部45及び脚先部46どうしが接近離間され、ひいては脚部42が伸縮される。
図示は省略するが、好ましくは、長さ調整ボルト48には、脚基部45及び脚先部46の雌ネジに対する回動ないしは緩みを阻止するロックナットが設けられている。これによって、脚部42の長さを伸縮調整後の長さに固定
できる。
【0031】
脚先部46の先端部には、回転体47が設けられている。回転体47は、球状に形成されており、脚先部46に対して全方向へ回転可能である。該回転体47が、被加工管9の内周面に転動可能に接している。好ましくは、支持体41の3つの回転体47のうち少なくとも上側の回転体47は、被加工管9の内周面から僅かに離れて近接されるように、脚部42の長さが設定されている。重力によって、支持体41の下側の回転体47は、被加工管9の内周面の下側部分に突き当たっている。
ノロ受け治具20を管軸方向に押し引きすると、回転体47が被加工管9の内周面上を転動され、ノロ受け治具20が管軸方向に移動される。
【0032】
図2に示すように、シャフト21は奥側の支持体41よりも更に奥側(図2において右側)へ延出されており、そこにフィルター手段50が設けられている。フィルター手段50は、第1フィルターユニット51と、第2フィルターユニット52を含む。シャフト21の軸線に沿って、ノロ受けアタッチメント30に近い側から、第1フィルターユニット51、第2フィルターユニット52の順に配置されている。
【0033】
図5に示すように、第1フィルターユニット51は、第1フィルター53と、第1フィルター保持具60を備えている。第1フィルター53は、難燃性ないしは耐熱性のフィルターによって構成されている。例えば、第1フィルター53は、ステンレスなどの金属リボンをランダムに巻回してなるたわし状の金属フィルターである。第1フィルター53の全体形状は、中心孔を有する円盤状に形成されている。第1フィルター53の外直径は、被加工管9の内直径より少し(数mm~十数mm程度)だけ小さい。図2に示すように、第1フィルター53は、シャフト21の軸線L21ひいては被加工管9の管軸Lと直交するように配置されることで被加工管9の管内空間を仕切っている。
【0034】
図5に示すように、第1フィルター保持具60は、保持器61と、支持軸部62を含む。保持器61は、網状体又は多孔板によって構成されており、手前側(図5において斜め左側)へ開口された円形の浅い容器状に形成されている。保持器61に第1フィルター53が収容されて保持されている。
【0035】
図2に示すように、保持器61の中央部に支持軸部62が設けられている。支持軸部62は、筒状に形成され、保持器61から奥側(図2において右側)へ突出されている。該支持軸部62が、シャフト21の外周に嵌められている。
【0036】
図5に示すように、支持軸部62の周面の一箇所には、止めボルト64が設けられている。止めボルト64は、支持軸部62を半径方向に貫通するようにして、支持軸部62と螺合されている。止めボルト64は、支持軸部62ひいては第1フィルターユニット51をシャフト21に解放可能に固定する。すなわち、止めボルト64を緩めることで、シャフト21に対する第1フィルターユニット51の移動が許容される。止めボルト64を締めると、止めボルト64の先端部がシャフト21に強く当たり、第1フィルターユニット51がシャフト21に対して固定される。ひいては、第1フィルター53が、シャフト21の軸線L21と直交するようにして、シャフト21に支持される。
【0037】
図2に示すように、第2フィルターユニット52は、シャフト21の軸線に沿って、第1フィルターユニット51より奥側(集塵機15側)に配置されている。
図6に示すように、第2フィルターユニット52は、第2フィルター54と、第2フィルター保持具70を備えている。第2フィルター54は、第1フィルター53よりも目が細かいフィルターであり、例えば紙フィルターによって構成されている。好ましくは、第2フィルター54は、難燃性ないしは耐熱性を有している。第2フィルター54の全体形状は、中心孔を有する円盤状に形成されている。初期状態(被加工管9へ挿入前)の第2フィルター54の外直径は、第1フィルター53の外直径より大きく、被加工管9の内直径と実質的に同径ないしは被加工管9の内直径より僅か(たとえば数mm以下)に大きい。このため、第2フィルター54の外周部は被加工管9の内周面に接している。図2に示すように、第2フィルター54は、シャフト21の軸線L21ひいては被加工管9の管軸Lと直交するように配置されることで被加工管9の管内空間を仕切っている。図6に示すように、好ましくは、第2フィルター54には、楽に交換できるようにするため、外周縁から中心孔まで径方向に真っ直ぐ延びるスリット54cが形成されている。
【0038】
図6に示すように、第2フィルター保持具70は、保持器71と、押さえ部材75を含む。保持器71は、網状体又は多孔板によって構成されており、第2フィルター54より小径の円形に形成されている。保持器71には、複数の鋲73が間隔を置いて分布するように設けられている。鋲73は、保持器71から手前側へ突出されている。押さえ部材75は、エキスパンドメタルなどの多孔板又は網状体によって構成されており、第2フィルター54より小径の円形に形成されている。
【0039】
第2フィルター54が、保持器71の手前側面に宛がわれている。該第2フィルター54に鋲73が突き刺さることで、第2フィルター54が保持器71に保持されている。第2フィルター54の手前側面に押さえ75が被せられている。押さえ部材75と保持器71との間に第2フィルター54が挟まれている。さらに、1又は複数(図6では2つ)の止着材76によって、押さえ部材75と第2フィルター54と保持器71が止着されている。止着材76は、例えば針金などの金属線材によって構成されている。該止着材76の中間部分76aが、押さえ部材75手前側面に配置されるとともに、止着材76の両端部分76bが、押さえ部材75の網目を通して、第2フィルター54を貫通している。更に、止着材76の両端部分76bは、保持器71の網目に通されるとともに折り曲げられて、保持器71に引っ掛けられている。
【0040】
図6に示すように、保持器71の中央部に支持軸部72が設けられている。支持軸部72は、筒状に形成され、保持器71から奥側へ突出されている。図2に示すように、該支持軸部72が、シャフト21の外周に嵌められている。
【0041】
図6に示すように、支持軸部72の周面の一箇所には、止めボルト74が設けられている。止めボルト74は、支持軸部72を半径方向に貫通するようにして、支持軸部72と螺合されている。止めボルト74は、支持軸部72ひいては第2フィルターユニット52をシャフト21に解放可能に固定する。すなわち、止めボルト74を緩めることで、シャフト21に対する第2フィルターユニット52の移動が許容される。止めボルト74を締めると、止めボルト74の先端部がシャフト21に強く当たり、第2フィルターユニット52がシャフト21に対して固定される。ひいては、第2フィルター54が、シャフト21の軸線L21と直交するようにして、シャフト21に支持される。
【0042】
ノロ受け治具20は、次のようにして使用される。
被加工管9の加工に際して、ノロ受け治具20を被加工管9内にセットし、ノロ受皿33が被加工部9aの直下に位置されるようにする。
被加工管9内へのノロ受け治具20のセットに際して、各脚部42を長さ調整することによって、回転体47が被加工管9の内周面と微小隙間を介して近接されるようにする。これによって、支持体41と被加工管9との間にクリアランスが形成され、ノロ受け治具20を被加工管9へ出し入れしやすくなる。3つ(複数)の脚部42を相互に長さ調整するとともに前記クリアランスを微小にすることによって、シャフト21が被加工管9の管軸Lにほぼ沿うように配置できる。3つの支持体41によって、シャフト21を3箇所において支持できる。
支持体41の下側の回転体47は、重力によって被加工管9の内周面の下側部分に突き当たるから、支持体41と被加工管9との間に摩擦が発生し得る。
なお、一番手前(図2において左端)の支持体41については、被加工管9内に挿し入れた後も手が届く場合は、脚部42を少し伸長させて回転体47を被加工管9の内周面に強く押し当てることによって被加工管9に対して固定してもよい。
【0043】
管加工機10によって被加工管9を回転させると、ノロ受け治具20の支持部40及びシャフト21が被加工管9との前記摩擦で回転され得る。一方、ノロ受けアタッチメント30のスリーブ31は、シャフト21に対して空回り(自由回転)される。このため、ノロ受皿33が、自重によってスリーブ31から連結ビーム32を介して吊り下げられた吊下状態を常時保持する。これによって、被加工管9及びシャフト21の回転に拘わらず、ノロ受皿33が、常時、内周面33aを上へ向けて被加工部9aの真下に配置される。
【0044】
これによって、被加工部9aから発生するノロ9bの大部分が、被加工部9aの直下のノロ受皿33上に落下される。この結果、ノロ受皿33がノロ9bの大部分を受けることができる。ノロ受皿33を被加工管9の内周面に沿う部分筒状に形成することによって、被加工部9aからのノロ9bをノロ受皿33によって確実に受けることができる。さらに、鍔部36によって、ノロ9bが、ノロ受皿33の周方向の端部より外側からノロ受皿33と被加工管9の内周面との間に入り込むのを防止できる。
したがって、被加工管9の内周面にノロ9bが付着するのを抑制でき、加工後、被加工管9の内周面からノロを除去する作業を軽減又は省略できる。
ノロ受け治具20によれば、加工管9の回転時にノロ受皿33が被加工管9の内周面と摺擦されるのを防止できる。
【0045】
被加工管9a及びシャフト21の回転に拘わらず、ノロ受けアタッチメント30はほぼ静止状態にあるため、スリーブ31の上側に保護カバー35が配置された状態が常時保持される。このため、被加工部9aからスリーブ31へ向かって落下したノロ9b’は、保護カバー35に当たる。これによって、スリーブ31にノロ9b’が直接当たるのが回避される。この結果、ノロ9b’の高熱によってスリーブ31及び軸受け34が損傷するのを抑制又は防止できる。
保護カバー35上のノロ9b’は、保護カバー35の斜面を伝ってノロ受皿33に落下される。
保護カバー35が損傷したときは、保護カバー35だけを取り換えれば済む。スリーブ31及び軸受け34を取り換える頻度を減らすことができ、メンテナンスを容易化できる。
【0046】
加工中、集塵機15によって被加工管9内のガスを吸い込む。したがって、被加工管9の内部には、管奥端部へ向かう気流ないしは粒子の流れ(流体流)が発生する。被加工部9aにおいて発生したノロ9bの一部やヒュームが、前記流体流に乗って管奥端部へ向けて飛散される。これら飛散ノロ9b”やヒュームは、フィルター53,54で捕捉することができる。特に、飛散ノロ9b”等の比較的大きな粒子を相対的に上流側の第1フィルター53で捕捉できる。第1フィルター53を通過したヒューム中の金属硫化物、金属珪化物、金属酸化物などの微粒子は、下流側の第2フィルター54によって捕捉できる。第2フィルター54の外径を第1フィルター53より大きくして、第2フィルター54の外周部が被加工管9の内周面と接するようにすることで、粒子の通過を確実に防止できる。これによって、飛散ノロ9b”やヒュームが、被加工管9におけるノロ受け治具20よりも奥側の部分の内周面に付着するのを防止できる。
この結果、加工後、被加工管9の内周面から飛散ノロ及びヒュームを除去する作業を一層軽減でき、又は省略できる。
【0047】
フィルター53,54を難燃性ないしは耐熱性にすることによって、飛散ノロ9b”やヒューム熱によるフィルター53,54の損傷を防止できる。
第1フィルター53ひいては第1フィルターユニット51を第2フィルターユニット52より小径にすることで、第1フィルターユニット51の外周を被加工管9の内周から確実に離間させることができ、被加工管9の内周面が第1フィルターユニット51との摺擦により損傷するのを回避できる。
【0048】
第2フィルター54が目詰まりしてきたり劣化してきたりしたときは、止着材76を取り外し、押さえ部材75をシャフト21に沿って少しスライドさせて第2フィルター54から離す。かつ第2フィルター54を鋲73から引き抜く。そのうえで、スリット54cにシャフト21を通すことで、第2フィルター54をシャフト21から簡単に取り外して新品と交換することができる。フィルター交換に際して、第2フィルターユニット52を丸ごとシャフト21から取り外す必要が無い。
第1フィルター53にも同様の交換用スリットを形成することにしてもよい。
【0049】
ノロ受け治具20によれば、回転体47を被加工管9の内周面に当てた状態で転動させながら、ノロ受け治具20を被加工管9内に挿し入れたり、被加工管9内で移動させて位置調整したり、被加工管9から引き抜いたりできる。脚部42の先端部が被加工管9の内周面と摺擦するのを回避でき、被加工管9の内周面が滑り摩擦によって痛むのを回避できる。
止めボルト44を緩めることによって、支持体41をシャフト21に対して位置調節できる。位置調節後、止めボルト44を締めることによって、支持体41をシャフト21に対して位置固定できる。
ノロ受け治具20は、管加工機10とは別に作製されて被加工管9に設置される。したがって、管加工機10自体を改造してノロ受けを設ける必要が無い。ノロ受け治具20は管加工機10とは別の簡単な構造の治具であるために安価に用意でき、ノロ受けのためのコストを削減できる。
【0050】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
保護カバーの形状は図3に示すものに限らない。
<第2実施形態(図7)>
図7に示すように、本発明の第2実施形態においては、保護カバー35Bが半割管(部分円筒)によって構成されている。該保護カバー35Bが、外周面を上へ向けて、スリーブ31の上側部(ノロ受皿33とは反対側部)に被さるように設置されている。保護カバー35Bは、支柱37を介してスリーブ31に支持されている。
【0051】
<第3実施形態(図8)>
図8に示すように、本発明の第3実施形態においては、保護カバー35Cが、斜めの平板状に形成されている。該保護カバー35Cが、スリーブ31の上側部(ノロ受皿33とは反対側部)に被さるように設置されている。保護カバー35Cは、支柱37Cを介してスリーブ31に支持されている。
【0052】
保護カバー35Cは、上下方向(スリーブ31の径方向)に対して斜めになっている。具体的には、保護カバー35Cは、スリーブ31から上方(ノロ受皿33とは反対方向)へ向かって周方向の一側(図8においては右側)へ傾斜されている。保護カバー35の前記径方向に対する傾斜角度θ35は、好ましくは45°程度以下である。これによって、ノロ9b’を保護カバー45Cの斜面に沿って下降させてノロ受皿33へ確実に落とすことができる。
【0053】
<第4実施形態(図9図11)>
図9図11に示すように、第4実施形態のノロ受け治具20Dにおいては、ノロ受皿33の奥側端部に隔壁33bが設けられている。隔壁33bの外周部が、半割円筒状(部分筒状)のノロ受皿33の周面部と接合されている。隔壁33bの上縁部の中央部には、逃がし凹部33dが形成されている。逃がし凹部33dにシャフト21が通されている。
隔壁33bによって、ノロがノロ受皿33より奥側へ飛ばないように堰き止めることができる。
【0054】
第4実施形態におけるノロ受けアタッチメント30Dの保護カバー35Dは、スリーブ31に対して着脱可能になっている。詳述すると、スリーブ31の前後の両端部には、それぞれ左右一対の支持台38が設けられている。各支持台38は、スリーブ31の端面の上側部分に突き当てられて溶接などによって接合されるとともに、シャフト21の軸線に沿う前後方向へ片持ち状に延び出ている。
【0055】
保護カバー35Dが、スリーブ31及び支持台38の上に着脱可能に載せられている。保護カバー35Dの長さは、スリーブ31と前後の支持台38の合計長さと実質的に等しい。保護カバー35Dの前後の端部が、例えばコ字状の板バネ状のクリップ39(止着手段)によって支持台38と解放可能に止着されている。なお、止着手段は、クリップ39に限らず、ボルト等であってもよい。
保護カバー35Dが被加工部9aからのノロ9bによって損傷したときは、クリップ39を取り外すことで、スリーブ31から保護カバー35Dを簡単に分離して撤去できる。これによって、新品の保護カバーと簡単に交換できる。
【0056】
ノロ受けアタッチメント30Dの連結ビーム80は、雄ネジ部材81と、被覆パイプ84を含む。雄ネジ部材81は、スタッドボルト又は全ネジボルトによって構成されている。該雄ネジ部材81が、スリーブ31とノロ受皿33に架け渡されるように、上下方向(スリーブ31の径方向)へ延びている。雄ネジ部材81の長さは、被加工管9の管径に合わせて設定されている。具体的には、シャフト21の軸線から雄ネジ部材81の下端までの距離が、被加工管9の内半径より少し小さくなるように設定されている。
【0057】
スリーブ31の長手方向の中央部における下側部(保護カバー35Dとは反対側部)には、ナット82が溶接などによって固定されている。雄ネジ部材81の上端部が、ナット82に螺合されている。これによって、雄ネジ部材81とスリーブ31が分離可能に連結されている。
なお、連結ビーム80とスリーブ31とは、分離可能に連結されていればよく、ネジ結合に限らず、凹凸嵌合や止めピンなどによって連結されていてもよい。
【0058】
ノロ受皿33の外周面の中央部には、ナット83が配置されている。ノロ受皿33の中央部には、貫通穴33cが形成されている。雄ネジ部材81の下端部が、貫通穴33cに通され、ナット83と螺合されている。これによって、雄ネジ部材81とノロ受皿33が分離可能に連結されている。
なお、連結ビーム80とノロ受皿33とは、分離可能に連結されていればよく、ネジ結合に限らず、凹凸嵌合や止めピンなどによって連結されていてもよい。スリーブ31及びノロ受皿33の少なくとも一方に、雄ネジ部材81と螺合されるナット82又は83が設けられていればよい。
【0059】
雄ネジ部材81の外周に被覆パイプ84が被せられている。言い換えると、雄ネジ部材81は被覆パイプ84に挿通されている。被覆パイプ84の上端部は、ナット82の下端面に突き当たっている。被覆パイプ84の下端部は、ノロ受皿33の内周面における貫通穴3cの周辺部分に突き当たっている。被覆パイプ84の長さは、被加工管9の管径に合わせて設定されている。ナット83の締め付けによって、ノロ受皿33とスリーブ31が被覆パイプ84及び雄ネジ部材81を介してガタツキ無く連結されている。
【0060】
ノロ受け治具20Dによれば、異なる管径の被加工管に容易に対応できる。すなわち、ナット82,83と雄ネジ部材81との螺合を解除することで、雄ネジ部材81を取り外すことができ、被加工管9の管径と適合する長さの雄ネジ部材に交換することができる。被覆パイプ84についても、被加工管9の管径と適合する長さのものに交換できる。
溶断加工時には、被覆パイプ84が雄ネジ部材81に被さることによって、ノロ9bが雄ネジ部材81に直接接触するのを回避でき、雄ネジ部材81の損傷を防止できる。
【0061】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、シャフト21が支持部40に対して軸線L21まわりに自由回転可能であってもよい。被加工管9の回転時には、シャフト21及びノロ受皿33が支持部40に対して相対回転されることで、ノロ受皿33が吊下状態を保つようにしてもよい。フィルター53,54をノロ受皿33より奥側の支持体41とノロ受皿33との間に配置してもよい。シャフト21の中央部にフィルター53,54を配置してもよい。
管加工機は、レーザーを被加工管に照射して局所的に加熱溶融することで切断などするレーザー切断機であってもよい。
前記従たる課題を解決する観点からは、シャフト21と、支持部40と、フィルター手段50を備えたフィルター装置(すなわちノロ受け治具20,20Dからノロ受けアタッチメント30,30Dを省略した構成)を被加工管9内に設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、例えばプラズマ切断機で管を溶断する際のノロ受けとして適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 管加工装置
9 被加工管
9a 被加工部
9b ノロ
管軸
10 管加工機
20,20D ノロ受け治具
21 シャフト
21 軸線
30,30D ノロ受けアタッチメント
31 スリーブ
32 連結ビーム
33 ノロ受皿
34 軸受け
35 保護カバー
35B,35C 保護カバー
35D 保護カバー
38 支持台
39 クリップ(止着手段)
40 支持部
41 支持体
42 脚部
43 ホルダ
44 止めボルト(固定手段)
45 脚基部(脚部の基端部)
46 脚先部(脚部の先端部)
47 回転体
48 長さ調整ボルト(伸縮手段)
50 フィルター手段
51 第1フィルターユニット
52 第2フィルターユニット
53 第1フィルター(フィルター)
54 第2フィルター(フィルター)
60 第1フィルター保持具
70 第2フィルター保持具
80 連結ビーム
81 雄ネジ部材
82 ナット
83 ナット
84 被覆パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11