(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】更生材の融着装置及び更生材の接続方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20240621BHJP
F16L 47/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B29C65/02
F16L47/02
(21)【出願番号】P 2020213726
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】山室 成樹
(72)【発明者】
【氏名】霜村 潤
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-230472(JP,A)
【文献】特開2008-286272(JP,A)
【文献】特開平11-270745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
F16L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状材(51)の外面の一部が凹状の凹み部(52)を形成しているライナ管(50)がドラム(53)の軸心(54a)周りに巻回され、鉛直方向に対して前記凹み部(52)が横向きの状態で前記ドラム(53)から送り出されるライナ管(50)の始端部(B)を、先行する別のライナ管(50)の終端部(A)に接続する融着装置において、
前記ライナ管(50)の前記凹み部(52)に入り込む凸部(23)を備えた第1の型枠(20)と、前記第1の型枠(20)に対向して前記ライナ管(50)を挟持する第2の型枠(30)とを備え、
前記第1の型枠(20)及び前記第2の型枠(30)のいずれか一方は、鉛直方向に対して横方向から前記ライナ管(50)を挟持するようにフレーム(2)に保持され、他方が前記一方に向かって接離自在である融着装置。
【請求項2】
前記一方は前記第1の型枠(20)であり、前記他方は前記第2の型枠(30)である請求項1に記載の融着装置。
【請求項3】
前記フレーム(2)は前記ドラム(53)よりも下方に配置され、前記フレーム(2)は、前記第1の型枠(20)及び前記第2の型枠(30)が前記ライナ管(50)を挟持した状態で、前記ライナ管(50)の管軸方向が前記始端部(B)側から前記終端部(A)側へ向かって下り勾配になるように、前記第1の型枠(20)及び前記第2の型枠(30)を保持している請求項1又は2に記載の融着装置。
【請求項4】
筒状材(51)の外面の一部が凹状の凹み部(52)を形成しているライナ管(50)がドラム(53)の軸心(54a)周りに巻回され、鉛直方向に対して前記凹み部(52)が横向きの状態で前記ドラム(53)から送り出されるライナ管(50)の始端部(B)を、先行する別のライナ管(50)の終端部(A)に接続するライナ管の接続方法において、
前記ライナ管(50)の前記凹み部(52)に入り込む凸部(23)を備えた第1の型枠(20)と、前記第1の型枠(20)に対向して前記ライナ管(50)を挟持する第2の型枠(30)とを用い、前記第1の型枠(20)及び前記第2の型枠(30)のいずれか一方を鉛直方向に対して横方向から前記ライナ管(50)を挟持するように配置する第1工程と、
前記一方に前記始端部(B)及び前記終端部(A)を宛がう第2工程と、
前記一方に対して他方を接近させて前記一方と前記他方とで前記始端部(B)及び前記終端部(A)を保持する第3工程と、
前記始端部(B)と前記終端部(A)とを融着する第4工程と、
を備えるライナ管の接続方法。
【請求項5】
前記第1工程は、前記ライナ管(50)の前記始端部(B)側から前記終端部(A)側への勾配に合わせて、前記第1の型枠(20)及び前記第2の型枠(30)の角度を調整する工程を含んでいる請求項4に記載のライナ管の接続方法。
【請求項6】
前記第4工程の後段に
、前記第1の型枠(20)及び前記第2の型枠(30)を退避させる第5工程を備える請求項4又は5に記載のライナ管の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管内面を被覆する更生材の融着装置、及び、その更生材の接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から給水管等の各種の管体(以下、既設管と称する)が老朽化した場合、既設管内に柔軟性を有する素材からなる管体を挿入して、それを既設管の内面へ密着させることで管路の更生を行っている。既設管の内面に密着させる管体をライナ管と称し、ライナ管によって内面が被覆された既設管を更生管と称する。
【0003】
既設管の更生方法には、ポリエチレン・コンパクトパイプ工法、オメガライナー工法、EX工法、サブライン工法等がある。ポリエチレン・コンパクトパイプ工法は、ドラムに巻いた断面C型形状の高密度ポリエチレン製のパイプを、人孔(立坑)より、地中の既設管に挿入して密着させ、老朽化した既設管を更生する下水管きょ更生工法(管更生工法)である。オメガライナー工法は、形状記憶機能を持つ折りたたまれたω状硬質塩化ビニル管を、立坑から管内に引き込み、その硬質塩化ビニル管に蒸気を送り込んで加熱し、円形へと急速復元させて、さらに圧縮空気で管内面に密着させて補強する管更生工法である。EX工法は、硬質塩化ビニル管を蒸気と熱風により加熱・軟化させ、蒸気を通した状態で立坑から既設管内に連続的に引き込んで既設管を更生する管更生工法である。サブライン工法は、通常薄肉のポリエチレン管をハート型に折り畳んで既設管内に連続して引き込み、そのポリエチレン管に水圧を全ラインに亘ってかけ、円形に復元して既設管の内面に圧着する管更生工法である。
【0004】
これらの工法では、ライナ管を施工現場へ搬送する必要がある。ライナ管は、ドラムに巻回した状態で搬送されるのが一般的である。ここで、
図5に示すように、ライナ管50は、筒状材51の外面の一部が、長手方向へ伸びる凹状の凹み部52を形成しているU字状の断面である。ライナ管50は、ドラム53の軸心を水平方向とした場合に、凹み部52が鉛直方向に対して横向きの状態、すなわち、凹み部52の開口が軸心方向を向くように巻回されている。これは、ドラム53への巻回時における半径方向への巻き厚を低減する(巻き数を多く確保する)ためである。
【0005】
既設管の更生を行う際には、ドラム53側からライナ管50を送り出し、既設管内にライナ管50を挿入していく。ドラム53に巻回されたライナ管50が終端部に至った時は別のドラム53を用意して、施工中のライナ管50の終端部と、別のドラム53のライナ管50の始端部とを融着により接続する。その融着による接続の手法として、例えば、特許文献1、2に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-230472号公報
【文献】特開2008-286272号公報(
図9等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、筒状材の外面の一部が凹状の凹み部を形成しているライナ管は、ドラムに対して凹み部が横向きの状態で巻回されている。このため、ライナ管をドラム側から既設管側へ送り出す際も、凹み部は横向きの状態である。しかし、上記特許文献1、2に記載のように、ライナ管同士を繋ぐ融着装置(バット融着機)は、凹み部が上方又は下方を向く状態で、その融着の作業を行うことを前提として設計されている。すなわち、ライナ管の凹み部に入り込む凸部を備えた第1の型枠と、凸部を備えない円弧状の凹内面を有する第2の型枠とを備え、第1の型枠及び第2の型枠のいずれか一方がフレームに対して上向きに開口して、他方が一方に向かって下向きに開口して配置されている。このため、ドラムから融着装置へ至るまでの間に、ライナ管を管軸回りに少なくとも90度回転させる必要がある。
【0008】
ライナ管は可撓性を有する素材からなりある程度の柔軟性を有しているものの、特に低温状態では相当強い力を加えないと変形しない素材であるのに加え、非常に重量が大きい素材である。このため、ドラムから融着装置へ至るまでの間に凹み部の向きを変えると、素材の変形に要する力がライナ管の送り出し方向への移動の抵抗となって、ライナ管の送り出しに必要なトルクが増大するという問題がある。ライナ管はできる限り円滑に送り出しできることが望ましい。
【0009】
そこで、この発明の課題は、ドラムに巻回されたライナ管を、できる限り円滑に送り出しできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、筒状材の外面の一部が凹状の凹み部を形成しているライナ管がドラムの軸心周りに巻回され、鉛直方向に対して前記凹み部が横向きの状態で前記ドラムから送り出されるライナ管の始端部を、先行する別のライナ管の終端部に接続する融着装置において、前記ライナ管の前記凹み部に入り込む凸部を備えた第1の型枠と、前記第1の型枠に対向して前記ライナ管を挟持する第2の型枠とを備え、前記第1の型枠及び前記第2の型枠のいずれか一方は、鉛直方向に対して横方向から前記ライナ管を挟持するようにフレームに保持され、他方が前記一方に向かって接離自在である融着装置を採用した。
【0011】
ここで、前記一方は前記第1の型枠であり、前記他方は前記第2の型枠である構成を採用することができる。
【0012】
また、前記フレームは前記ドラムよりも下方に配置され、前記フレームは、前記第1の型枠及び前記第2の型枠が前記ライナ管を挟持した状態で、前記ライナ管の管軸方向が前記始端部側から前記終端部側へ向かって下り勾配になるように、前記第1の型枠及び前記第2の型枠を保持している構成を採用することができる。
【0013】
また、上記の課題を解決するために、この発明は、筒状材の外面の一部が凹状の凹み部を形成しているライナ管がドラムの軸心周りに巻回され、鉛直方向に対して前記凹み部が横向きの状態で前記ドラムから送り出されるライナ管の始端部を、先行する別のライナ管の終端部に接続するライナ管の接続方法において、前記ライナ管の前記凹み部に入り込む凸部を備えた第1の型枠と、前記第1の型枠に対向して前記ライナ管を挟持する第2の型枠とを用い、前記第1の型枠及び前記第2の型枠のいずれか一方を鉛直方向に対して横方向から前記ライナ管を挟持するように配置する第1工程と、前記一方に前記始端部及び前記終端部を宛がう第2工程と、前記一方に対して他方を接近させて前記一方と前記他方とで前記始端部及び前記終端部を保持する第3工程と、前記始端部と前記終端部とを融着する第4工程とを備えるライナ管の接続方法を採用した。
【0014】
ここで、前記第1工程は、前記ライナ管の前記始端部側から前記終端部側への勾配に合わせて、前記第1の型枠及び前記第2の型枠の角度を調整する工程を含んでいる構成を採用することができる。
【0015】
また、前記第4工程の後段に、前記フレーム、前記第1の型枠及び前記第2の型枠を退避させる第5工程を備えている構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、ドラムに巻回されたライナ管をより円滑に送り出しできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】この発明の一実施形態を示す断面図(開放状態)
【
図1B】この発明の一実施形態を示す断面図(閉鎖状態)
【
図5】ドラムに巻回されたライナ管の状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、既に設置されている老朽化した既設管Qの内面に、柔軟性を有する素材からなるライナ管50を密着させて更生するに際して、ライナ管50同士を接続するために使用される融着装置1、及び、その融着装置1を用いたライナ管50の接続方法である。融着装置1の構成を
図1Aから
図2Bに示す。融着装置1の使用状態を、
図3及び
図4に示す。
図5は、ライナ管50がドラム53に巻回された状態を示す。
【0019】
ライナ管50の素材は、従来例と同様に柔軟性を有する素材であり、例えば、熱可塑性プラスチック等の樹脂、あるいはゴム等の可撓性のある素材からなる筒状材(チューブ)51が用いられる。ライナ管50を、地盤Gに掘削されたピット(立坑)Pを通じて既設管Q内に挿入し、筒状材51を蒸気と圧縮空気で拡張させて既設管Qの内周面に密着させ、その後、冷却固化させて管の更生を行う。
【0020】
ライナ管50は、更生に使用される前の状態では、筒状材51の外面の一部が凹状の凹み部52を形成している断面であり、この断面が長手方向全長に亘って続いている。凹み部52は、筒状材51の内部空間が膨らんで断面円形となった状態と比較して、その内部空間の断面積が減少する方向へ凹んでいる。ライナ管50の管軸に直交する断面形状は、例えば、断面C字状、又は、断面U字状、あるいは、断面ハート形状等となっている。実施形態ではライナ管50は断面U字状であり、凹み部52は、対向する対の側壁52b,52bと、対の側壁52b,52bの奥端部同士を円弧状に結ぶ底部52aを備えている。ライナ管50は、ドラム53の支持軸54周りに巻回される。このとき、凹み部52の開口が支持軸54の軸心54aに沿った方向を向くように巻回される。したがって、ドラム53の軸心54aを水平方向とした場合に、凹み部52が鉛直方向に対して横向きの状態になるように巻回されている(
図5参照)。
【0021】
ピットPは、
図3及び
図4に示すように、地表から所定の深さまで掘削され、そのピットPの底面よりも少し上部に既設管Qが開口している。また、図示しない別の箇所にはさらに別のピットPが設けられている。
図3及び
図4に示すピットPがライナ管50の発進抗、別のピットPがライナ管50の到達坑となる。ドラム支持装置60は、ライナ管50を巻回したドラム53を回転自在に支持するものである。ドラム53へのライナ管50の巻回は、支持軸54の軸方向に並列して所要回数、支持軸54から遠ざかる半径方向に所要層数巻回される。ドラム53を支持する架台は、地盤G上に載置される基盤59と、基盤59から立ち上がる支持脚55とを備えている。支持脚55は軸受を介して支持軸54を軸心54a回り回転自在に支持している。ドラム53は支持脚55から着脱可能であるので、一のドラム53に巻回されているライナ管50が無くなれば、別のドラム53に交換することができる。また、ドラム支持装置60は、駆動力によってドラム53を一定速度で回転させてライナ管50を送り出す駆動装置56を備えている。駆動装置56が備える駆動ローラが、油圧シリンダ等からなる押圧装置57によって、ドラム53の外周又は巻回されたライナ管50に押し付けられているので、駆動ローラが駆動力によって回転すればドラム53は軸回りに回転する。
【0022】
ドラム53の軸回り回転によって、既設管Q側にライナ管50が送り出される。ライナ管50が既設管Q内に進入していき、ドラム53に巻回されたライナ管50が終端部Aに至った時は別のドラム53を用意して、施工中のライナ管50の終端部Aと、別のドラム53のライナ管50の始端部Bとを融着により接続することで、送り出しの継続が可能である。
図3は、融着装置1によって、終端部Aと始端部Bとを融着する作業をしている状態である。
【0023】
融着装置1の構成は、
図1A及び
図1Bに示すように、ライナ管50の凹み部52に入り込む凸部23を備えた第1の型枠20と、第1の型枠20に対向してライナ管50を挟持する第2の型枠30とを備えている。第1の型枠20は、筒状材51の外面のうち凹み部52の部分を除く円筒状部51aの外面に沿う弧状断面からなる凹面22aと、その凹面22aの中ほどに位置する底部から立ち上がる前述の凸部23を備えた挟持部22(以下、第1挟持部22と称する)を、躯体21に備えたものである。ここで、弧状断面とは、単一の曲率からなる曲線で構成されるものに限定されず、曲率が異なる複数の曲線の組み合わせや、曲率が連続的に変化する曲線等も含む概念である。躯体21と第1挟持部22とはボルト、ナット等により一体に固定されている。凹面22aは、ライナ管50の長手方向(
図1A及び
図1Bにおける奥行方向)に沿って伸びる円筒面状である。凸部23は、凹み部52の対の側壁52b,52bに接する対の側面23b,23bと、その対の側面23b,23bの先端部同士を円弧状に結び、凹み部52の底部52aに接する頂部23aを備えている。第2の型枠30は、同じく筒状材51の外面のうち凹み部52の部分を除く円筒状の外面に沿う弧状断面からなる凹面32aを備えた挟持部32(以下、第2挟持部32と称する)を、躯体31に備えたものである。躯体31と第2挟持部32とはボルト、ナット等により一体に固定されている。凹面32aは、ライナ管50の長手方向に沿って伸びる円筒面状である。
【0024】
第1の型枠20及び第2の型枠30には加熱装置(図示せず)が設けられている。加熱装置は、第1挟持部22及び第2挟持部32を構成する部材を、ライナ管50を構成する素材を融着に必要な温度まで上昇させることができる。第1挟持部22及び第2挟持部32の断面形状は、それぞれライナ管50の長手方向に沿って全長に亘って同一の断面である。なお、第1挟持部22及び第2挟持部32の断面形状は、使用するライナ管50の断面形状、断面の大きさ等に応じて変更できる。また、第1挟持部22及び第2挟持部32を構成する部材には、熱や摩耗に対して耐久性が高い素材が採用されている。
【0025】
第1の型枠20及び第2の型枠30のいずれか一方の型枠が、鉛直方向に対して横方向からライナ管50を挟持できるようにフレーム2に保持され、他方の型枠が一方の型枠に向かって接離自在である。すなわち、第1の型枠20と第2の型枠30の型割面は、縦材3に沿って鉛直方向である。この実施形態では、一方の型枠は第1の型枠20であり、他方の型枠は第2の型枠30としている。すなわち、第1の型枠20は、第1挟持部22を構成する凹面22aが横向き、すなわち、水平方向に開口した状態でフレーム2に固定されている。このため、凸部23は横向き、すなわち、水平方向に突出した状態である。フレーム2は床面に載置される横材4と、横材4の端部から立ち上がる縦材3とからなる断面L字状である。第1の型枠20の躯体21とフレーム2の縦材3とは、ボルト、ナット等により一体に固定されている。
【0026】
第2の型枠30は、第2挟持部32を構成する凹面32aが上向きに開口した状態と(
図1A及び
図2Aに示す開放状態)、横向き(水平方向)に開口して第1の型枠20の第1挟持部22に対向する状態(
図1B及び
図2Bに示す閉鎖状態)とに回動自在である。この回動は、
図2A及び
図2Bに示すように、躯体21と躯体31とがピン33aを介して接続されていることで可能となっている。躯体21に設けた溝内に躯体31に設けた挿入片33bが入り込んでおり、ピン33aは、その溝の両側の側壁部25と挿入片33bを貫通している。また、第1の型枠20と第2の型枠30の間には、第1挟持部22と第2挟持部32とが対面してライナ管50を挟持できる状態(閉鎖状態)に、第1の型枠20と第2の型枠30とをロックするロック手段24を備えている。ロック手段24は、躯体21にピン24bで支持されたロックレバー24aと、躯体31に設けた係合部34で構成されている。ロックレバー24aがピン24bの軸回りに回動することで、ロックレバー24aが、係合部34の係合溝34a内に入り込んで、第1の型枠20と第2の型枠30とが動かないようにロックされる。
【0027】
既設管Qの更生作業時には、
図3に示すように、融着装置1のフレーム2はドラム53よりも下方に配置される。これは、一般的にドラム53は地上に載置され、融着装置1はピットP内に配置されるからである。ピットP内では、地上に配置したドラム53から引き出されたライナ管50が上方から進入し、ピットP内では、ピットP内の側壁に設けた既設管Qの開口部に向かって下り勾配で進んでいく。ライナ管50の融着をピットP内で行う場合、このピットP内へのライナ管50の進行方向に沿って融着装置1を配置することが望ましい。このため、フレーム2は、第1の型枠20及び第2の型枠30がライナ管50を挟持した状態で、ライナ管50の管軸方向が始端部B側から終端部A側へ向かって下り勾配になるように、第1の型枠20及び第2の型枠30を保持している。すなわち、
図3に示すように、フレーム2は、既設管Qから離れる方向へ向かって横材4が水平方向に対して仰角α(0°<α<90°)となるように、台座6の傾斜面6a上に載置されている。台座6の傾斜面6aの仰角αは、電動のアクチュエータや手動の昇降ジャッキ等の角度調整手段(図示せず)によって、所望の角度に調整可能である。
【0028】
この融着装置1を用いたライナ管50の接続方法について説明すると、まず、ライナ管50の凹み部52に入り込む凸部23を備えた第1の型枠20と、第1の型枠20に対向してライナ管50を挟持する第2の型枠30とを用い、第1の型枠20が鉛直方向に対して横方向からライナ管50を挟持できるように、第1の型枠20を配置する。具体的には、融着装置1が固定されたフレーム2(第1の型枠20が縦材3に固定されたもの)を、ピットP内におけるライナ管50の通過ルートの途中に配置すればよい。これを第1工程と称する。そして、
図1A及び
図2Aに示すように、第1の型枠20に対して、新たに導入するライナ管50の始端部Bと、先行するライナ管50の終端部Aを宛がう。これを第2工程と称する。続いて、第1の型枠20に対して第2の型枠30を接近させて、第1の型枠20の第1挟持部22と第2の型枠30の第2挟持部32とで始端部B及び終端部Aを保持する。この実施形態では、フレーム2に固定の第1の型枠20に対して、第2の型枠30を回動させるとよい。これを第3工程と称する。第3工程では、同一の断面である始端部Bと終端部Aが、段差なく一直線上に固定されていることが求められる。続いて、加熱装置を用いて各型枠の温度を上昇させ、始端部Bと終端部Aとを融着により接続する。これを第4工程と称する。
【0029】
なお、第1工程では、
図3に示すように、ライナ管50の管軸方向が始端部B側から終端部A側へ向かって所定の勾配(実施形態では下り勾配)であることに合わせ、第1の型枠20及び第2の型枠30の角度(仰角α)を、その勾配に合致するように調整する工程を含めてもよい。この角度の調整は、前述の角度調整手段で行うことができる。また、第4工程の後段に、フレーム2、第1の型枠20及び第2の型枠30を退避させる第5工程を設定してもよい。第5工程は、
図3に示す作業位置から
図4に示す退避位置へと、融着装置1及びそれと一体のフレーム2等を移動させるものである。逆に、融着作業を開始する際には、第1工程において、
図4に示す退避位置から
図3に示す作業位置へと融着装置1及びそれと一体のフレーム2等を移動させることになる。
【0030】
このように、ライナ管50を保持する第1の型枠20と第2の型枠30の型割面を垂直方向としたので、ライナ管50がドラム53から融着装置1へ至るまでの間に、ライナ管50を管軸回りに回転させる(長手方向に沿って捩じる)必要がない。このため、ライナ管50の送り出し方向への移動の抵抗を小さくすることができ、ライナ管50の円滑な送り出しが可能となる。上記の実施形態では、ライナ管50の凹み部52に入り込む凸部23を備えた第1の型枠20をフレーム2の縦材3に固定としたが、融着後のライナ管50を容易に引き剥がしできるようにするには、凸部23を備えた第1の型枠20を移動側とし、第2の型枠30を固定側に、すなわち、第2の型枠30をフレーム2の縦材3に固定するのが有利である。
【0031】
また、上記の実施形態では、第1の型枠20及び第2の型枠30のいずれか一方がフレーム2の縦材3に固定され、その固定側である一方の型枠に対して、移動側である他方の型枠はピン33aを介して回動自在に支持されている構成としたが、移動側である他方の型枠を、フレーム2に対して回動自在に支持してもよい。また、移動側である他方の型枠と固定側である一方の型枠とを対面させ、その向きを維持して他方の型枠をフレーム2の横材4に沿って水平方向にスライド自在として、そのスライドによって一方の型枠と他方の型枠とが接離するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 融着装置
2 フレーム
3 縦材
4 横材
20 第1の型枠
22 第1挟持部
23 凸部
30 第2の型枠
32 第2挟持部
50 ライナ管
51 筒状材
52 凹み部
53 ドラム
54a 軸心
A 終端部
B 始端部
P ピット
Q 既設管