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特許7507686カプセル封入された光吸収剤を含む眼鏡用レンズの製造のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】カプセル封入された光吸収剤を含む眼鏡用レンズの製造のための組成物
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/00 20060101AFI20240621BHJP
   C08K 3/014 20180101ALI20240621BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G02C7/00
C08K3/014
C08L101/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020530603
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018081403
(87)【国際公開番号】W WO2019110264
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-06-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】17306731.5
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518182542
【氏名又は名称】エシロール アテルナジオナール
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】フロマンタン, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ラートワッタナーセーリー, ティッパラット
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】井口 猶二
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507649(JP,A)
【文献】特開2011-154363(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0212365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
)少なくとも1種のアリル又は非アリル系のモノマー又はオリゴマーの重合物からなるマトリックス、
b)前記マトリックス中に分散されているナノ粒子の中に含まれる少なくとも1種の光吸収剤、
c)少なくとも1種の紫外線吸収剤、
を含む複合基材を含む眼鏡用レンズであって:
厚さ2mmの眼鏡用レンズの光透過率が280~400nmの範囲の各光波長で1%未満であり、430nmの波長を有する光では65%超であり、
動的光散乱法に従って測定される前記ナノ粒子のサイズが10nm~5μmである、眼鏡用レンズ。
【請求項2】
前記マトリックスが、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)、セルローストリアセテート、及びこれらのコポリマーから選択される、あるいは環状オレフィンコポリマー、アリルエステルのホモポリマー又はコポリマー、直鎖又は分岐の脂肪族又は芳香族ポリオールの炭酸アリルのホモポリマー又はコポリマー、(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー又はコポリマー、チオ(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー又はコポリマー、ウレタン及びチオウレタンのホモポリマー又はコポリマー、エポキシのホモポリマー又はコポリマー、スルフィドのホモポリマー又はコポリマー、ジスルフィドのホモポリマー又はコポリマー、エピスルフィドのホモポリマー又はコポリマー、チオール及びイソシアネートのホモポリマー又はコポリマー、並びにこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項3】
前記光吸収剤が、着色剤、無色の光吸収剤、又はこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項4】
前記ナノ粒子がポリマーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項5】
ナノ粒子が無機酸化物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項6】
前記ナノ粒子中の前記光吸収剤の量が、前記ナノ粒子の重量を基準として0.0001~90重量%である、請求項1~のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項7】
前記組成物中のナノ粒子の量が、前記組成物の総重量を基準として0.001重量%~1重量%である、請求項1~のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項8】
紫外線吸収剤が、
a)ベンゾフェノン誘導体;又は
b)ベンゾトリアゾール誘導体;又は
c)少なくとも1つのエステル基を有するクロロベンゾトリアゾール化合物;又は
d)2-(2-ヒドロキシ-5-R-フェニル)ベンゾトリアゾール(式中、Rは、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、(アリール)(アルキル)アミノ、ホルムアミド、アルキルアミド、アリールアミド、ホルミルオキシ、アルキルカルボキシ、アリールカルボキシ、アルキルイミノ、及びアリールイミノの基から選択される共鳴基である);又は
e)トリアジン誘導体;又は
f)オキサラニリド誘導体;又は
g)これらの混合物;
から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズを作製する、眼鏡用レンズの作製方法であって、
a)前記マトリックスを調製することができるモノマー又はオリゴマーを準備する工程;
b)前記モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な粉末の形態か、前記モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な液体中のナノ粒子の分散液の形態で、ナノ粒子の中に含まれる光吸収剤を調製する工程;
c)前記モノマー又はオリゴマーの前記重合を開始するための触媒を準備する工程;
d)紫外線吸収剤を準備する工程;
e)ナノ粒子が分散されている重合性液体組成物を得るために、前記モノマー又はオリゴマーと、前記ナノ粒子と、前記触媒と、前記紫外線吸収剤とを混合する工程;
)前記重合性液体組成物を基材上に堆積させる工程;
f)前記重合性液体組成物を硬化させる工程;
を含む、眼鏡用レンズの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー又はオリゴマーと、触媒と、紫外線吸収剤と、前記モノマー又はオリゴマー中に分散されているナノ粒子の中に含まれる少なくとも1種の光吸収剤とに由来する組成物を含む、可視スペクトルの特に青紫色範囲の光線を効率的に吸収する眼鏡用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の目に到達して入る光は、約380~780nmの波長を含む可視光と、紫外領域の光(約280~380nmのUV-A及びUV-B光)及び赤外領域(約780~1400nmまでの近赤外光)を含む非可視光とに分けられる。
【0003】
紫外光は人間の目に有害であることが知られている。特に、これは眼の老化を加速させる場合があり、これは初期の白内障又はより極度の障害(光角膜炎又は「雪盲」等)をもたらし得る。
【0004】
高エネルギー可視(HEV)光としても知られる青色光は、380~500nmの間の青紫帯域の可視光に相当する。テレビ、ノートパソコン、タブレット、及びスマートフォンなどのデジタル機器から発せられる青色光や蛍光灯やLEDの光に長時間曝されることは、青色光が網膜に到達する可能性があるため有害である。ある特定の範囲の青色光は、光網膜炎、デジタル眼精疲労、又はコンピュータビジョン症候群を引き起こすことが示されており、コンピュータビジョン症候群には、眼のかすみ、焦点の合わせにくさ、ドライアイ、眼の炎症、頭痛、首及び背中の痛み;概日リズムの乱れ;メラニン産生の減少;加齢性黄斑変性症;緑内障;網膜変性疾患;乳がん及び前立腺がん;糖尿病;心臓疾患;肥満;及びうつ病が含まれる。約420~450nmの範囲の青色光が特に有害であると考えられている。
【0005】
眼鏡用レンズに光吸収剤を配合することによって、紫外光及び青色光による損傷を防止することができる。
【0006】
しかしながら、重合中に、ラジカルと光吸収剤との間の相互作用により光吸収剤の黄色の退色又は分解が生じることが多い。この作用は、高濃度の触媒を使用して重合を開始させる場合、とりわけアリル系モノマーのような反応性が弱いモノマーを用いる場合に特に明白である。
【0007】
レンズの黄変は、より少ない触媒を使用する場合には妨げられる可能性があるものの、重合が完了せず、またレンズの機械的特性が許容できないものになる。
【0008】
更に、レンズを通過する青色光の一部が吸収されると、透過光はレンズの装着者に黄色味を帯びて見える。
【0009】
これらの2つの黄変作用は重ね合わされる。
【0010】
レンズの黄変は、美容上の理由のため、及びこれがレンズ装着者の色の知覚に影響を及ぼして最終的にはレンズの可視範囲の透過率を低下させる可能性があるため、望ましくない。
【0011】
そのため、UV光の透過と、HEV青色光の少なくとも一部の透過を抑制でき、最終的に非常に低い黄色の外観を示すことができる眼鏡用レンズが必要とされている。
【0012】
出願人は、可視HEV紫色-青色光にある程度の吸収を示す特定の紫外線吸収剤を選択し、熱硬化性組成物中に分散されているナノ粒子の中にカプセル封入されている光吸収剤を使用することによって、この要求を満たすことができることを見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の目的は、
a)モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒の存在下で、少なくとも1種のアリル又は非アリル系のモノマー又はオリゴマーを重合することによって得られるマトリックス、
b)前記マトリックス中に分散されているナノ粒子の中に含まれる少なくとも1種の光吸収剤、
c)少なくとも1種の紫外線吸収剤、
を含む眼鏡用レンズであって:
厚さ2mmの眼鏡用レンズの光透過率が280~400nmの範囲の各光波長で1%未満であり、430nmの波長を有する光では65%超である、眼鏡用レンズである。
【0014】
本発明の第2の目的は、
a)マトリックスを調製することができるモノマー又はオリゴマーを準備する工程;
b)モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な粉末の形態か、モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な液体中のナノ粒子の分散液の形態で、ナノ粒子の中に含まれる光吸収剤を調製する工程;
c)前記モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒を準備する工程;
d)紫外線吸収剤を準備する工程;
e)ナノ粒子が分散されている重合性液体組成物を得るために、モノマー又はオリゴマーと、ナノ粒子と、触媒と、紫外線吸収剤とを混合する工程;
e)任意選択的に重合性液体組成物を基材上に堆積させる工程;
f)重合性液体組成物を硬化させる工程;
を含む、眼鏡用レンズの作製方法である。
【0015】
本発明の別の目的は、モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒による前記光吸収剤の分解を防止するための、特に前記眼鏡用レンズの黄変を防止するための、本発明による眼鏡用レンズ内に分散されているナノ粒子中に含まれる光吸収剤の使用である。
【0016】
光吸収剤のカプセル封入は多くの利点を有する。最も重要なことには、これにより、マトリックスを形成するために使用されるモノマー、触媒、及び/又は添加剤と不適切な形で相互作用し得る様々な化合物を使用することが可能になる。そのような不適切な相互作用としては、溶解性の問題、分解、色の変化などが挙げられる。
【0017】
例えば、影響を受けやすい材料をカプセル封入することは、封入しないと分解させることになる場合に、マトリックスと反応することを防ぐことができる。
【0018】
無機粒子は、水溶性の光吸収剤のための優れたカプセル封入材料である。実際、これらの粒子は、モノマーなどの非プロトン性媒体との優れた相溶性を示す。表面修飾により、これらの粒子をほとんどの媒体と相溶性にすることができる。これによって、疎水性溶媒又はマトリックス中で水溶性光吸収剤を使用することが可能になる。
【0019】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)などのいくつかの用途では、光吸収剤は互いに近くに維持されなければならない。FRETは、ストークスシフトを増加させることができる興味深い技術である:第1の蛍光性の光吸収剤Aによって吸収された光は、光を吸収及び再放出することができる第2の光吸収剤Bに向かって再放出され、それにより波長シフトが生じる。この移動が起こるためには、光吸収剤AとBの両方が、相互の分極、したがってエネルギー移動が可能なように十分に空間的に近接していなければならない。そのような短い距離は非常に高濃度にすることで達成することができ、これはほとんどの眼科的用途には適合しない(コスト、機械的特性、色、又は美容のいずれかの点で)。両方の薬剤をカプセル封入することは、低い光吸収剤濃度で非常に必要とされる近さをもたらす:両方の薬剤は、例えば単一のカプセルの中に閉じ込めることができる。
【0020】
同じ原理により、影響を受けやすい光吸収性化合物の近くに酸化防止剤を確実に局所的に高濃度に存在させることができる。
【0021】
光吸収剤をカプセル封入することは、光吸収を調整することも可能にし得る。実際、ナノ粒子マトリックス組成の変化、又はアニーリング条件への曝露でのより少ない程度での変化は、カプセル封入された光吸収剤の吸収波長の変化をもたらす場合があり、これはマトリックスを適切に修正することによって前記吸収波長を調整することを可能にし得る。
【0022】
カプセル封入のもう1つの利点は、これがほとんどの化合物の光安定性を高めることである。
【0023】
いくつかの蛍光吸収剤の量子収率は、これらがナノ粒子中に隠されている場合に大きく増加する。光電池、及び適切な光学素子(導波路、集光器として機能するレンズ)に連結されると、そのような効果は、アクティブアイウェアシステムに電力を供給することを可能にし得る。
【0024】
最後ではあるが大切なこととして、ナノ粒子は標準化剤とみなすことができる:カプセル封入される光吸収剤が何であろうと、モノマーと相互作用するナノ粒子の外表面は同じにすることができ、そのため配合物の中に同様な基材が既に配合されている場合、異なる光吸収剤を用いても、所定の光吸収剤を配合物の中に容易に配合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】液体状態の重合性組成物(破線)の330nm~780nm(波長)の光範囲の光透過率(%T)1と、重合後の比較のレンズの光透過率(%T)(実線)のグラフである。
図2】330nm~780nm(波長)の範囲の光に対する本発明のレンズ1の光透過率(%T)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の眼鏡用レンズは、ポリマーマトリックスと、紫外線吸収剤と、その中に分散されたナノ粒子とを含み、ナノ粒子は光吸収剤をカプセル封入している。
【0027】
ポリマーマトリックス(本明細書では「マトリックス」ともいう)は、前記モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒の存在下で、少なくとも1種のアリル又は非アリルモノマー又はオリゴマーを重合することによって得られる。
【0028】
ポリマーマトリックス及び紫外線吸収剤及びその中に分散されているナノ粒子は、そのため、複合基材、すなわち最終的な眼鏡用レンズにおいてその前面及び後面に対応する2つの主表面を有する複合材料を一緒に形成する。
【0029】
ある実施形態では、眼鏡用レンズは、本質的にポリマーマトリックスとその中に分散されているナノ粒子とからなる。
【0030】
別の実施形態では、眼鏡用レンズは、ポリマーマトリックスと、紫外線吸収剤と、その中に分散されているナノ粒子とのコーティングがその上に堆積されている光学基材を含む。
【0031】
ポリマーマトリックスは、好ましくは透明マトリックスである。
【0032】
本発明の眼鏡用レンズは、重合中の完全な網状化のため満足できる機械的特性を示す。
【0033】
ポリマーマトリックスは、有利には、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)、セルローストリアセテート、又はこれらのコポリマーなどの熱可塑性樹脂から選択することができ、あるいは環状オレフィンコポリマー、アリルエステルのホモポリマー又はコポリマー、直鎖又は分岐の脂肪族又は芳香族ポリオールの炭酸アリルのホモポリマー又はコポリマー、(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー又はコポリマー、チオ(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー又はコポリマー、ウレタン及びチオウレタンのホモポリマー又はコポリマー、エポキシのホモポリマー又はコポリマー、スルフィドのホモポリマー又はコポリマー、ジスルフィドのホモポリマー又はコポリマー、エピスルフィドのホモポリマー又はコポリマー、チオール及びイソシアネートのホモポリマー又はコポリマーなどの熱硬化性樹脂、並びにこれらの組み合わせから選択される。
【0034】
光吸収剤は、好ましくは染料若しくは顔料などの着色剤、無色の光吸収剤、又はこれらの混合物から選択される。着色剤が本発明に特に適している。
【0035】
光吸収剤のモル吸光係数は、その極大吸収で好ましくは5000L.mol-1.cm-1よりも大きく、より好ましくは20000L.mol-1.cm-1よりも大きい。実際、高いモル吸光係数は、優れた減衰性能のため非常に低い濃度での光吸収剤の使用を可能にすることから好ましい。マトリックス中の光吸収剤の濃度はマトリックス中のナノ粒子の濃度及び光吸収剤におけるナノ粒子の担持の関数であるため、高いモル吸光係数は増加させることが困難な場合があるナノ粒子担持に関する制約を制限し、眼鏡用レンズのヘイズや機械的な弱さをもたらし得るナノ粒子の濃度を抑える。
【0036】
ある実施形態では、ナノ粒子は、内側から外側まで均質な組成を有し、その中に光吸収剤が均一に分布している。この特徴により、ナノ粒子全体の光学特性を正確に制御することができる。
【0037】
別の実施形態では、ナノ粒子は光吸収剤を含むコアとコアを囲むシェルとを有する。シェルは、好ましくはコアからマトリックスを分離するように選択される。そのため、シェルの性質は、好ましくは対応する粒子が中で使用されることが意図されているマトリックスと関連付けられる。
【0038】
ナノ粒子は、有機化合物を全く含まない外表面を示してもよい。
【0039】
ナノ粒子は、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、又はこれらの混合物などの無機酸化物を含んでいてもよい。
【0040】
ISO489:1999に従って測定されるナノ粒子の屈折率は、好ましくは1.47~1.74である。より好ましくは、ナノ粒子の屈折率はポリマーマトリックスの屈折率と同一である。実際、両方の屈折率が近いほど、組成物の全体の透過率に対するナノ粒子の影響が少なくなる。
【0041】
動的光散乱法に従って測定されるナノ粒子のサイズは、好ましくは1nm~10μm、より好ましくは10nm~5μmである。
【0042】
ナノ粒子中の光吸収剤の量は、ナノ粒子の総重量を基準として0.0001~90重量%、特には0.01~50重量%、より具体的には0.1~10重量%であってもよい。
【0043】
ポリマーマトリックス中のナノ粒子の量は、ポリマーマトリックスの重量を基準として0.001~1重量%、好ましくは0.0025~0.1重量%であってもよい。
【0044】
本発明の前記マトリックスを生成するために使用される重合性液体組成物(以降「重合性組成物」という)は、モノマー又はオリゴマーと、触媒と、紫外線吸収剤と、光吸収剤を含むナノ粒子とを含有する。前記モノマー又はオリゴマーは、アリル化合物又は非アリル化合物のいずれかであってもよい。
【0045】
本発明による組成物の中に含まれるアリルモノマー又はアリルオリゴマーは、アリル基を含む化合物である。
【0046】
好適なアリル化合物の例としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のオリゴマー、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)のオリゴマー、ビスフェノールAビス(アリルカーボネート)、ジアリルフタレート類(ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、及びジアリルテレフタレート等)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
好適な非アリル化合物の例としては、アクリル基又はメタクリル基を有するアクリルモノマーとして知られる熱硬化性材料が挙げられる。(メタ)アクリレートは、一官能性(メタ)アクリレート、又は2~6個の(メタ)アクリル基を有する多官能性(メタ)アクリレート、又はこれらの混合物であってもよい。限定するものではないが、(メタ)アクリレートモノマーは以下から選択される:
・ アルキル(メタ)アクリレート、特には
-アダマンチン、ノルボルネン、イソボルネン、シクロペンタジエン、又はジシクロペンタジエンから誘導された(メタ)アクリレート、
-メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートなどのC1~C4アルキル(メタ)アクリレート;
・ ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、又はフルオレン(メタ)アクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレート;
・ ビスフェノールから、特にはビスフェノールAから誘導される(メタ)アクリレート;
・ ポリエトキシル化ビスフェノレートジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシル化フェノール(メタ)アクリレートなどのポリアルコキシル化芳香族(メタ)アクリレート;
・ ポリチオ(メタ)アクリレート;
・ アルキル(メタ)アクリル酸とポリオール又はエポキシとのエステル化生成物;
・ 並びにこれらの混合物。
【0048】
(メタ)アクリレートは、特にハロゲン置換基、エポキシ、チオエポキシ、ヒドロキシル、チオール、スルフィド、カーボネート、ウレタン、又はイソシアネート官能基で更に官能化されていてもよい。
【0049】
好適な非アリル化合物の他の例としては、ポリウレタン又はポリチオウレタンマトリックス、すなわち少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマー又はオリゴマーと少なくとも2つのアルコール、チオール、又はエピチオ官能基を有するモノマー又はオリゴマーとの混合物、を調製するために使用される熱硬化性材料が挙げられる。
【0050】
少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマー又はオリゴマーは、2,2’メチレンジフェニルジイソシアネート(2,2’MDI)、4,4’ジベンジルジイソシアネート(4,4’DBDI)、2,6トルエンジイソシアネート(2,6TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’MDI)などの対称芳香族ジイソシアネート;又は2,4’メチレンジフェニルジイソシアネート(2,4’MDI)、2,4’ジベンジルジイソシアネート(2,4’DBDI)、2,4トルエンジイソシアネート(2,4TDI)などの非対称芳香族ジイソシアネート;又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,5(又は2,6)-ビス(イソ-シアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NDI)、又は4,4’ジイソシアナト-メチレンジシクロヘキサン(H12MDI)などの脂環式ジイソシアネート;又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート;又はこれらの混合物から選択することができる。
【0051】
チオール官能基を有するモノマー又はオリゴマーは、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ビス[(2-メルカプトエチル)チオメチル]-1,4-ジチアン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアンウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアンウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアンウンデカン、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0052】
エピチオ官能基を有するモノマー又はオリゴマーは、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、及びビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(β-エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル]スルフィドから選択することができる。
【0053】
アリル系モノマー又はオリゴマーに基づく重合性組成物
モノマー又はオリゴマーがアリル型である場合、本発明によるマトリックスを生成するために使用される重合性組成物中の前記アリルモノマー又はオリゴマーの量は、組成物の総重量を基準として、20~99重量%、特には50~99重量%、より具体的には80~98重量%、更に具体的には90~97重量%であってもよい。特に、マトリックスを生成するために使用される重合性組成物は、組成物の総重量を基準として、20~99重量%、特には50~99重量%、より具体的には80~98重量%、更に具体的には90~97重量%のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のオリゴマー、又はこれらの混合物を含有していてもよい。別の実施形態では、マトリックスを生成するために使用される重合性組成物は、組成物の総重量を基準として、20~40重量%の、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のオリゴマー、又はこれらの混合物と、組成物の総重量を基準として、40~80重量%の、ジアリルフタレート、イソジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、又はこれらの混合物を含有していてもよい。
【0054】
モノマー又はオリゴマーがアリル型の場合、触媒は、ペルオキソジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルケタール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができ、好ましくは、触媒は、ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
本発明による重合性組成物の中の触媒の量は、組成物の総重量を基準として、1.0~5.0質量%、特には2.5~4.5質量%、より具体的には3.0~4.0質量%であってもよい。
【0056】
マトリックスを生成するために使用される重合性組成物は、上述したアリルモノマー又はオリゴマーと重合することができる第2のモノマー又はオリゴマーも含有していてもよい。好適な第2のモノマーの例としては:スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルキルモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリルオキシプロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリルオキシジエトキシ)フェニル]プロパン、及び2,2-ビス[4-((メタ)-アクリルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパンなどのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びテトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート;テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリレート;が挙げられる。これらのモノマーは、単独で使用されても2種以上の組み合わせで使用されてもよい。上の記載において、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート」又は「アクリレート」を意味し、「(メタ)アクリルオキシ」は「メタクリルオキシ」又は「アクリルオキシ」を意味する。好ましいモノマーは、芳香族ビニル化合物、特にはスチレン及びジビニルベンゼンである。
【0057】
本発明によるマトリックスを生成するために使用される重合性組成物中の第2のモノマー又はオリゴマーの量は、組成物の総重量を基準として、1~80重量%、特には1~50重量%、より具体的には2~30重量%、更に具体的には5~25重量%であってもよい。
【0058】
非アリル系モノマー又はオリゴマーに基づく重合性組成物
モノマー又はオリゴマーが(メタ)アクリル型のものである場合、本発明によるマトリックスを生成するために使用される重合性組成物中の前記(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーの量は、組成物の総重量を基準として、20~99重量%、特には50~99重量%、より具体的には80~98重量%、更に具体的には90~97重量%である。
【0059】
(メタ)アクリルのモノマーの例は、上で定義したアルキルモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、又はテトラ(メタ)アクリレートである。これらのモノマーは、単独で使用されても2種以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0060】
マトリックスを生成するために使用される重合性組成物は、上述した(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーと重合することができる第2のモノマー又はオリゴマーも含有していてもよい。好適な第2のモノマーの例としては、スチレンなどの芳香族ビニル化合物が挙げられる。これらのモノマーは単独で使用されても2種以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0061】
本発明によるマトリックスを生成するために使用される重合性組成物中の第2のモノマー又はオリゴマーの量は、組成物の総重量を基準として、1~80重量%、特には1~50重量%、より具体的には2~20重量%、更に具体的には3~10重量%であってもよい。
【0062】
本発明によるマトリックスがポリウレタン又はポリチオウレタン型のものである場合、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマー又はオリゴマーと、少なくとも2つのアルコール、チオール、又はエピチオ官能基を有するモノマー又はオリゴマーとは、好ましくは全ての重合性官能基が完全に反応するような化学量論比で選択される。
【0063】
本発明による組成物の中に含まれる触媒は、例えば有機過酸化物、有機アゾ化合物、有機スズ化合物、及びこれらの混合物などの、モノマーの重合を開始させるのに適した触媒である。
【0064】
好適な有機過酸化物の例としては、ジイソプロピルペルオキシド及びジ-t-ブチルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド;メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソプロピルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、及びシクロヘキサンペルオキシド等のケトンペルオキシド;ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、及びイソプロピル-sec-ブチルペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカーボネート;t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート及びt-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等のペルオキシエステル;ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド;2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、及び1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどのペルオキシケタール;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0065】
好適な有機アゾ化合物の例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
好適な有機スズ化合物の例は、ジメチルスズクロリド、ジブチルスズクロリド、及びこれらの混合物である。
【0067】
紫外線吸収剤
組成物に含まれる紫外線吸収剤は、可視光で残留吸収を示すように選択される。実際、これらの紫外線吸収剤は、UV-A範囲(315~380nm)に主な吸収帯を有しているものの、HEV紫青色光における吸収は完全には無視できない。したがって、これらの紫外線吸収剤は、紫外光からの優れた保護と一部のHEV紫青色光の吸収を同時に提供する。
【0068】
本発明による紫外線吸収剤は、厚さ2mmの眼鏡用レンズに組み込まれた場合に、280~400nm、好ましくは280~405nmの範囲の各光波長に対して1%未満であると同時に430nmの波長を有する光に対して65%超である光透過率を有する光学材料をもたらす。好ましくは、本発明による紫外線吸収剤は、厚さ2mmの眼鏡用レンズに組み込まれた場合に、430nmの波長を有する光に対して75%より大きい光透過率を有する光学材料をもたらす。
【0069】
或いは、本発明による紫外線吸収剤は、エタノール中0.4mM/Lの濃度で、400nmの波長で0.01より大きい吸光度を示す。
【0070】
特定の実施形態では、紫外線吸収剤は、エタノール中0.4mM/Lの濃度で、400nmの波長で0.02より大きい吸光度を示す。
【0071】
本発明によれば、「吸光度」は、厚さ2mmの石英キュベット中、400nmの波長で、0.4mM/Lの紫外線吸収剤を含有するエタノール溶液中で測定される。ブランクとしての純粋なエタノールを参照として測定される。
【0072】
言い換えると、所定の放射束I0は、純粋なエタノールが入っている厚さ2mmの石英キュベットを通過する。
【0073】
次いで、同じ放射束I0が、0.4mM/Lの紫外線吸収剤のエタノール溶液が入っている厚さ2mmの石英キュベットを通過する。ブランクの補正を含め、透過した放射束Isampleが測定される。
【0074】
その後、吸光度は、ブランクの補正を含む、サンプルを通過する透過した放射束に対する入射放射束の比の、10を底とする対数として定義される。
吸光度=log(I0/Isample)
【0075】
この特定の吸光度を有する紫外線吸収剤を使用すると、厚さ2mmの眼鏡用レンズに組み込んだ場合に、280~400nm、好ましくは280~405nmの範囲の各光波長で1%未満の光透過率を有し、430nmの波長を有する光で65%超、好ましくは75%超の光透過率を有する光学材料を作製することができる。
【0076】
特定の実施形態によれば、本発明による眼鏡用レンズに含まれる紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、オキサラニリド、又はこれらの混合物である。
【0077】
適切な紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン誘導体、特に、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(Shipro KaseiのSeesorb 106)又は2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(Shipro KaseiのSeesorb 107)、又は2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(Cytec Industries Inc.のUV24)である。
【0078】
他の適切な紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール誘導体、特に2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール(Shipro KaseiのSeesorb 703)及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASFのTinuvin 928)である。
【0079】
他の適切なベンゾトリアゾール誘導体は、少なくとも1つのエステル基を有するクロロベンゾトリアゾール化合物、特に式(IV)の化合物である:
【化1】
(式中、Aは二価の基であり、R1はクロロ基であり、R2基は同じ又は異なる一価の基であり、nは1~3の範囲の整数であり、R3は直鎖又は分岐の置換又は無置換のアルキル又はアリール基である)。ただし、クロロベンゾトリアゾール化合物は、アリル、アクリル、及びメタクリル部位から選択される重合性基を含まない。
【0080】
R1は、好ましくは、ベンゾトリアゾール基上の4位又は5位にある。R1基の最も好ましい位置は、ベンゾトリアゾール基の5位である。
【0081】
A基は、二価の基、例えば、任意選択的に置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキレン基(好ましい置換基は、直鎖若しくは分岐のアルキル基、又はアリール基である)、任意選択的に置換されていてもよいシクロアルキレン基、任意選択的に置換されていてもよいアリーレン基、又は同じカテゴリー及び/又は様々なカテゴリーの前述した基の組み合わせであり、特にはシクロアルキレンアルキレン、ビスシクロアルキレン、ビスシクロアルキレンアルキレン、アリーレンアルキレン、ビスフェニレン、及びビスフェニレンアルキレン基である。好ましいアルキレン基としては、直鎖のC1~C10アルキレン基、例えばメチレン基-CH2-、エチレン基-CH2-CH2-、ブチレン、又はヘキシレン、特には1,4-ブチレン及び1,6-ヘキシレン、並びに分岐C3~C10アルキレンラジカル(1,4-(4-メチルペンチレン)、1,6-(2,2,4-トリメチルヘキシレン)、1,5-(5-メチルヘキシレン)、1,6-(6-メチルヘプチレン)、1,5-(2,2,5-トリメチルヘキシレン)、1,7-(3,7-ジメチルオクチレン)、2,2-(ジメチルプロピレン)、1,1-ジメチルペンチレン(式Iのアリール基に連結している四級炭素原子を有する)、及び1,6-(2,4,4-トリメチルヘキシレン)ラジカル等)が挙げられる。好ましいシクロアルキレンラジカルとしては、特にアルキル基で任意選択的に置換されていてもよいシクロペンチレンラジカル及びシクロヘキシレンラジカルが挙げられる。
【0082】
一実施形態では、Aは-(CR5R6)-基を表し、式中のR5及びR6は独立してH又はアルキル基、好ましくは任意選択的にアリール基などの基で置換されていてもよいC1~C6の直鎖又は分岐アルキル基を表す。この基は、好ましくは-(CHR5)-基(R6=H)である。
【0083】
別の実施形態では、Aは-(CR5R6-CR’5R’6)-基を表し、式中のR5、R’5、R6、及びR’ 6は独立してH又はアルキル基、好ましくは任意選択的にアリール基などの基で置換されていてもよいC1~C6の直鎖又は分岐アルキル基を表す。この基は、好ましくは-(CHR5-CHR’5)-基(R6=R’6=H)である。
【0084】
A基は、好ましくは、1~6個の炭素原子を含む置換又は無置換の直鎖又は分岐のアルキレン基である。Aは、好ましくは、メチレン、エチレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、及び1,6-ヘキシレン基などの直鎖の基である。好ましいA基は、プロピオン酸エステルを生じるエチレン基である。
【0085】
R2基は、同じ又は異なる一価の基であり、好ましくは、水素原子と、1~12個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、更に好ましくは2~5個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の置換又は無置換の炭化水素(アルキルなど)基(炭化水素基は炭素原子を介してアリール基に連結されている)、例えば、アリールアルキル基、及びヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシル、チオール、アミノ、ハロ(フルオロ、ブロモ、ヨード、又はクロロ)、ニトロ、アルキルチオ、アルコキシ、アリールオキシ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヒドロキシスルホニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、シアノ、トリフルオロメチル、テトラゾリル、カルバモイル、アルキルカルバモイル、又はジアルキルカルバモイル基などの基とから選択される。R2基は、好ましくは、水素原子と、1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の置換又は無置換の炭化水素基とから選択される同じ又は異なる基である。
【0086】
nは好ましくは1である。
【0087】
式(IV)の化合物は、好ましくは、アリール基の3位、すなわちヒドロキシル基に対してオルト位に(単一の)R2基を含む。R2は、好ましくは、1,1-ジメチルペンチル基、イソプロピル基、又はt-ブチル基、好ましくはt-ブチル基などの立体障害を有するアルキル基である。
【0088】
R3は、直鎖又は分岐の置換又は無置換のアルキル又はアリール基であり、好ましくは1~14個の炭素原子、より好ましくは2~10個の炭素原子、更に好ましくは4~9個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の置換又は無置換のアルキル基である。R3は、好ましくは、n-オクチル基又はエチルヘキシル基などのC7~C9の直鎖又は分岐アルキル基である。いくつかの実施形態では、同じ置換基を有するが異性体のR3基(同じ数の炭素原子を有し異なる空間配置を有する)などの異なるR3基を有する式(I)の化合物の混合物、又は直鎖若しくは分岐のC7~C9アルキル鎖の混合物が使用される。
【0089】
一実施形態では、R3は、R2基と同じ基から選択され得る同じ又は異なる基で任意選択的に置換されていてもよいC5~C7環を有するシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル基であり、好ましくは1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル鎖、1~6個の炭素を含む直鎖又は分岐のアルコキシ鎖、ヒドロキシル基、及びアミノ基である。
【0090】
式(IV)の好ましい化合物は、n=1であり、R2が1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基であり、R3が1~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基であり、Aが1~4個の炭素原子を含む直鎖アルキレン基であるものである。
【0091】
特に、オクチル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート及び/又は2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート(Everlight chemicalのEversorb 109)が適している。
【0092】
他の適切なベンゾトリアゾール誘導体は、2-(2-ヒドロキシ-5-R1-フェニル)ベンゾトリアゾールであり、式中のR1は、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、(アリール)(アルキル)アミノ、ホルムアミド、アルキルアミド、アリールアミド、ホルミルオキシ、アルキルカルボキシ、アリールカルボキシ、アルキルイミノ、及びアリールイミノの基から選択される共鳴基、特には式(I)の化合物
【化2】
であり、式中、R1は共鳴基であり、R2基は、同じ又は異なる一価の基であり、nは0又は1の整数であり、R3基は同じ又は異なる一価の基であり、mは0~2の範囲の整数である。
【0093】
2-(2-ヒドロキシ-5-R1-フェニル)ベンゾトリアゾールは、好ましくは、アリル部位、アクリル部位、及びメタクリル部位から選択される重合性基を含まない。
【0094】
R1は、共鳴基、すなわち構造に共鳴を与える基である。つまり、R1は、共鳴構造を介して電子分布に影響を与える能力を有する。
【0095】
R1は、本ベンゾトリアゾール化合物の2-フェニル基の5位、すなわち、ヒドロキシル基に対してパラ位にある。最もよいR1基は、ベンゾトリアゾールの吸収スペクトルを赤色の端、すなわち高波長にシフトする優れた能力を有している電子供与基である。この赤色シフト効果により、可視スペクトルの青紫色領域(400~450nm)でより大きな減光、つまりより高い光遮断波長を有する光学材料が得られる。R1基は強力な共鳴電子効果を有していることから、一層効率的である。好ましくは、R1基は、-0.22以下のハメット共鳴定数σRを有する。別の実施形態では、R1は、-0.20以下、好ましくは-0.25以下のハメット定数σparaを有する。
【0096】
R1は、好ましくはアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、(アリール)(アルキル)アミノ、ホルムアミド、アルキルアミド、アリールアミド、アルキルイミノ、及びアリールイミノの基から、より好ましくは、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、及び(アリール)(アルキル)アミノの基から選択される。
【0097】
一実施形態では、R1は式O-R4の基であり、式中、R4は水素原子であるか、直鎖又は分岐の置換又は無置換のアルキル又はアリール基であり、好ましくは1~14個の炭素原子、より好ましくは1~10個の炭素原子、更に好ましくは1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の置換又は無置換のアルキル基である。R4は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、又はブチル基などのC1~C4の直鎖又は分岐アルキル基である。一実施形態では、R4は、以下に記載のR2基と同じ基(好ましくは1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル鎖、1~6個の炭素を含む直鎖又は分岐のアルコキシ鎖、ヒドロキシル基、及びアミノ基)から選択され得る同じ又は異なる基で任意選択的に置換されていてもよいC5~C7環を有するシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル基である。R4は、好ましくは(無置換)炭化水素基である。
【0098】
別の実施形態では、R1は、式NR4aR4bの基であり、式中のR4a及びR4bは、独立してR4基と同じ基から選択され得る基を表す。
【0099】
別の実施形態では、本発明によるベンゾトリアゾール化合物は、2-(2-ヒドロキシ-5-R1-フェニル)ベンゾトリアゾールであり、式中のR1は式-C(=O)-Ar(カルボニル基を介して連結)の任意選択的に置換されていてもよいアリールカルボニル基である。前記アリール基Arは、好ましくは、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、(アリール)(アルキル)アミノ、ホルムアミド、アルキルアミド、アリールアミド、アルキルイミノ、及びアリールイミノの基から好ましくは選択される1つ以上の、好ましくは2つの電子供与性基で置換されている。好ましいアリールカルボニルR1基は、2,4-ジヒドロキシフェニルカルボニル基である。
【0100】
R2及びR3基は、互いに独立して、同じ又は異なる一価の基を表し、これは、水素原子と、1~12個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、更に好ましくは2~5個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の置換又は無置換の炭化水素(アルキルなど)基(炭化水素基は炭素原子を介してアリール基に連結されている)、例えばアリールアルキル基、及びヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシル、チオール、アミノ、ハロ(フルオロ、ブロモ、ヨード、又はクロロ)、ニトロ、アルキルチオ、アルコキシ、アリールオキシ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヒドロキシスルホニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、シアノ、トリフルオロメチル、テトラゾリル、カルバモイル、アルキルカルバモイル、又はジアルキルカルバモイル基などの基とから好ましくは選択される。
【0101】
R2基は、好ましくは、水素原子と、1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の置換又は無置換の炭化水素基とから選択される同じ又は異なる基である。R2は、好ましくは電子供与性基である。
【0102】
一実施形態では、R3基は、水素原子と、1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の置換又は無置換の炭化水素基とから独立して選択される。
【0103】
別の実施形態では、R3は、水素原子又は共鳴基であり、これは、好ましくは、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシ、アルキルスルファニル、及びアリールスルファニルから選択される。R3は、好ましくは水素原子又は電子求引性基である。この実施形態では、R3基は、好ましくはベンゾトリアゾール基の4位又は5位のハロゲン原子であり、より好ましくはクロロ基である。R3は、理想的にはベンゾトリアゾール基の5位に位置する。
【0104】
一実施形態では、n=0である。別の実施形態では、本発明によるベンゾトリアゾールは、ベンゾトリアゾール環の5位で置換されていない。好ましい実施形態では、m=0であり、これは、ベンゾトリアゾール環の炭素原子上に置換基がないことを意味する。式(I)の好ましい化合物は、n=m=0であるもの、特に式中のR4、R4a、及びR4bが独立して水素原子を表すか、上述したような直鎖若しくは分岐の置換若しくは無置換のアルキル若しくはアリール基を表す式(II)及び(III)のものである:
【化3】
【0105】
特に、2-(2,4-ジヒドロキシ-5-(2,4-ジヒドロキシフェニルカルボニル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-ブトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、及び2-(2-ヒドロキシ-5-アミノフェニル)ベンゾトリアゾールが本発明に適している。
【0106】
トリアジン紫外線吸収剤の中でも、ヒドロキシフェニルトリアジン、特に2-[4,6-ジ(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノールが特に適している。
【0107】
オキサラニリド紫外線吸収剤は、N-(2-エトキシフェニル)-N’-(4-イソドデシルフェニル)オキサミド、N-(2-エトキシフェニル)-N’-(2-エチルフェニル)オキサミド、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0108】
本発明で使用される紫外線吸収剤の量は、青色光及び紫外光からの十分な保護を与えるのに十分であるが、黄変を防ぐため過剰ではない量である。紫外線吸収剤は、通常、重合性液体組成物に対して0.05~3重量%、好ましくは0.1~2.5重量%、より好ましくは0.15~2重量%の範囲の量で存在する。非常に多い量の紫外線吸収剤は、液体配合物が固体材料へと硬化するのを妨げる可能性があるため、或いは硬化した固体材料から放出されて硬化した固体材料の表面特性、特に接着性を低下させる可能性があるため、回避すべきである。
【0109】
本特許出願において、「アルキル」という用語は、好ましくは1~25個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和の一価炭化水素を主体とするラジカルを意味する。アルキルという用語には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、及びn-ヘキシル基などの1~8個の炭素原子を好ましくは含む非環式基が含まれ、シクロアルキル基は好ましくは3~7個の炭素原子を含み、シクロアルキルメチル基は好ましくは4~8個の炭素原子を含む。
【0110】
「シクロアルキル」という用語は、「ヘテロシクロアルキル」基、すなわち、環の1つ以上の炭素原子が窒素、酸素、リン、又は硫黄などのヘテロ原子で置き換えられている非芳香族単環式環又は多環式環も含む。ヘテロシクロアルキル基は、好ましくは1~4個の環内ヘテロ原子を含む。ヘテロシクロアルキル基は、1つ以上の非芳香環を含む構造であってもよい。複数の環を有する構造では、環は、縮合してもよく、共有結合していてもよく、又はメチレン、エチレン、若しくはカルボニル基などの一般的な二価の基を介して結合していてもよい。ヘテロシクロアルキル基は、それらの存在によって環が芳香族にされない限り、環に1つ以上の炭素-炭素二重結合又は炭素-ヘテロ原子二重結合を有していてもよい。好ましくは、ヘテロシクロアルキル基は、単環式環又は二環式環、より好ましくは単環式環であり、環は2~6個の炭素原子と1~3個のヘテロ原子を含む。ヘテロシクロアルキル基の具体例としては、限定するものではないが、アジリジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリノ、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、テトラヒドロピラニル、及びピラニルが挙げられる。
【0111】
「置換アルキル」基という用語は、sp3炭素原子を介して連結されており、1つ以上のアリール基で置換されている且つ/又はN、S、若しくはOなどの1つ以上のヘテロ原子を含む、上で定義したアルキル基を意味する。言及し得る例としては、アリールアルキル基(トリチル基(-CPh3)、ベンジル基、又は4-メトキシベンジル基等)、アルコキシアルキル基、特にはジアルコキシメチル基(ジエトキシメチル基又はジメトキシメチル基等)、CH2CO2R11基(R11は任意選択的に置換されていてもよいアルキル基又はアリール基を表す)が挙げられる。
【0112】
「アルキレン」及び「置換アルキレン」という用語は、上で定義したアルキル基及び置換アルキル基の二価バージョンに相当する。
【0113】
「エステル基」という用語は、式-C(O)OR10の基を意味し、R10は、任意選択的に置換されていてもよいアリール基又はアルキル基を意味する。
【0114】
「アリール」という用語は、1つの環(例えばフェニル基)のみであるか複数の、任意選択的に縮合されていてもよい環(例えばナフチル又はターフェニル基)を含む芳香族一価炭素環式ラジカルを意味し、これは、限定するものではないが、アルキル(例えばメチル)、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシル、チオール、アミノ、ハロ(フルオロ、ブロモ、ヨード、又はクロロ)、ニトロ、アルキルチオ、アルコキシ(例えばメトキシ)、アリールオキシ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヒドロキシスルホニル、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、シアノ、トリフルオロメチル、テトラゾリル、カルバモイル、アルキルカルバモイル、又はジアルキルカルバモイル基などの1つ以上の基で任意選択的に置換されていてもよい。或いは、芳香環の2つの隣接する位置は、メチレンジオキシ基又はエチレンジオキシ基で置換されていてもよい。
【0115】
「アリール」という用語には、「ヘテロアリール」基、すなわち芳香環の1つ以上の炭素原子が窒素、酸素、リン、又は硫黄などのヘテロ原子で置き換えられている芳香環も含まれる。ヘテロアリール基は、好ましくは1~4個の環内ヘテロ原子を含む。ヘテロアリール基は、1つ以上の芳香環を含む構造、又は1つ以上の非芳香環と結合した1つ以上の芳香環を含む構造であってもよい。複数の環を有する構造では、環は、縮合してもよく、共有結合していてもよく、又はメチレン、エチレン、若しくはカルボニル基などの一般的な二価の基を介して結合していてもよい。ヘテロアリール基の例は、チエニル(2-チエニル、3-チエニル)、ピリジル(2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、イソキサゾリル、オキサゾリル、フタルイミジル、ピラゾリル、インドリル、フラニル、キノリニル、フェノチアジニル、チアゾリル、(1,2,3)-及び(1,2,4)-トリアゾリル、テトラゾリル、カルバゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジル、トリアジニル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾピラノニル、並びにそれらのベンゾ縮合類似体である。好ましくは、ヘテロアリール基は単環式の環であり、その環は2~5個の炭素原子と1~3個のヘテロ原子を含む。
【0116】
光吸収剤
本発明による眼鏡用レンズ中に分散されているナノ粒子に含まれる光吸収剤は、紫外線、可視光、及び/又は赤外光を吸収することができる化合物である。
【0117】
特に、光吸収剤は、染料又は顔料などの着色剤;無色の光吸収剤;及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。染料、顔料、及び着色剤の好適な例は、アゾ又はローダミン又はシアニン又はポリメチン又はメロシアニン又はフルオレセイン又はピリリウム又はポルフィリン又はフタロシアニン又はペリレン又はクマリン又はアクリジン又はインドレニン又はインドール-2-イリデン又はベンズアントロン又はアントラピリミジン又はアントラピリドン又はベンゾトリアゾール又はベンゾフェノン又はアントラキノン又はトリアジン又はオキサラニリド族に属する化合物;希土類クリプテート又はキレートなどの金属錯体;アルミン酸塩、ケイ酸塩、及びアルミノケイ酸塩である。
【0118】
特定の実施形態では、光吸収剤は着色剤である。すなわち、それらは、限られた範囲の波長の可視光を吸収する。
【0119】
特定の実施形態では、光吸収剤は青色光吸収剤である。すなわち、これらは380~500nmの青紫帯域の可視光を吸収する。この吸収は特異的であってもよく、選択的な吸収剤は380~500nmの帯域に吸収ピークを有する。
【0120】
光吸収剤が青色光吸収剤である場合、得られる眼鏡用レンズは、特定の範囲の青色光、特に420nm~450nmの範囲にわたる平均光透過率により特徴付けることができる。好ましくは、青色光吸収剤は、本発明の重合性組成物から得られる眼鏡用レンズが420nm~450nmの範囲で85%未満、より好ましくは75%未満の平均光透過率(以降TB%)となるように選択される。
【0121】
特定の実施形態によれば、本発明による組成物中に含まれる青色光吸収剤は、オーラミンO;クマリン343;クマリン314;プロフラビン;ニトロベンゾオキサジアゾール;ルシファーイエローCH;9,10ビス(フェニルエチニル)アントラセン;クロロフィルa;クロロフィルb;4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン;2-[4-(ジメチルアミノ)スチリル]-1-メチルピリジニウムヨージド、3,3’-ジエチルオキサカルボシアニンヨージド、ルテイン、ゼアキサンチン、β-カロテン又はリコペン又はペリレン;及びこれらの混合物である。
【0122】
別の実施形態によれば、本発明による組成物の中に含まれる青色光吸収剤はポルフィリン又はその誘導体である。ポルフィリンのいくつかの例としては、5,10,15,20-テトラキス(4-スルホナトフェニル)ポルフィリンナトリウム塩錯体;5,10,15,20-テトラキス(N-アルキル-4-ピリジル)ポルフィリン錯体;5,10,15,20-テトラキス(N-アルキル-3-ピリジル)ポルフィリン金属錯体、及び5,10,15,20-テトラキス(N-アルキル-2-ピリジル)ポルフィリン錯体、並びにこれらの混合物が挙げられ、これらの中のアルキルは、メチル、エチル、ブチル、及び/又はプロピルから選択される。全てのこれらのポルフィリンは非常に優れた水溶性を示し、300℃まで安定である。ポルフィリンの他の例としては、ジプロトン化テトラフェニルポルフィリン、マグネシウムオクタエチルポルフィリン、マグネシウムテトラメシチルポルフィリン、テトラキス(2,6-ジクロロフェニル)ポルフィリン、テトラキス(o-アミノフェニル)ポルフィリン、テトラメシチルポルフィリン、亜鉛テトラメシチルポルフィリン、亜鉛テトラフェニルポルフィリン、Mg(II)メソ-テトラ(4-スルホナトフェニル)ポルフィン四ナトリウム塩、マンガン(III)5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)-21H、23H-ポルフィリンクロリドテトラキス(メトクロリド)、5,10,15,20-テトラキス(4-スルホナトフェニル)-21H、23H-ポルフィンマンガン(III)クロリド、5,10,15,20-テトラキス(4-スルホナトフェニル)-ポルフィン-Cu(II)、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H、23H-ポルフィンマンガン(III)クロリド、亜鉛5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)-21H、23H-ポルフィンテトラキス(メトクロリド)、5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)-21H、23H-ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)-21H、23H-ポルフィン、5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)-21H、23H-ポルフィン鉄(III)クロリド、亜鉛5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)-21H、23H-ポルフィンテトラキス(メトクロリド)、5,10,15,20-テトラキス(1-メチル-4-ピリジニオ)ポルフィリンテトラ(p-トルエンスルホネート)、5,10,15,20-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-21H、23H-ポルフィン、4,4’、4’’、4’’’-(ポルフィン-5,10,15,20-テトライル)テトラキス(安息香酸)が挙げられる。
【0123】
別の実施形態によれば、本発明による組成物の中に含まれる青色光吸収剤はメタロポルフィリンであり、特には疎水性メタロポルフィリンである。
【0124】
別の実施形態によれば、本発明による組成物の中に含まれる青色光吸収剤は金属錯体であり、その中の金属は、Cr(III)、Ag(II)、In(III)、Mg(II)、Mn(III)、Sn(IV)、Fe(III)、又はZn(II)であってもよい。特に、Cr(III)、Ag(II)、In(III)、Mn(III)、Sn(IV)、Fe(III)、又はZn(II)を主体とする金属錯体は、pH<6で金属を失わないことからこれらが酸の影響を受けにくくより安定な錯体を与えるという利点を有する。
【0125】
特定の実施形態では、光吸収剤は黄緑色光吸収剤である。すなわちこれらは550~610nmの波長の可視光を吸収する。この吸収は特異的であってもよく、選択的吸収剤は550~610nmの帯域に吸収ピークを有する。
【0126】
光吸収剤が黄緑色光吸収剤である場合、得られる眼鏡用レンズは、特定の範囲の黄緑色光、特に570nm~590nmの範囲にわたる平均光透過率を特徴とし得る。好ましくは、黄緑色光吸収剤は、本発明の重合性組成物から得られる眼鏡用レンズが85%未満、より好ましくは75%未満の、570nm~590nm(以降TG%)の範囲の平均光線透過率を有するように選択される。
【0127】
光吸収剤が着色剤である場合、得られる眼鏡用レンズは、ASTM E313に従って光源C観測者2°で測定される、非常に低い黄色度指数YIを特徴とし得る。YIは、CIE三刺激値X、Y、Zから次の関係:YI=(127.69X-105.92Z))/Yにより決定することができる。通常、得られる眼鏡用レンズは、8未満、好ましくは5未満の黄色度指数を有する。
【0128】
着色剤はカラーインデックスの中で選択することができる。
【0129】
特定の実施形態によれば、赤色染料と青色染料との混合物が使用されてもよい。
【0130】
ナノ粒子中の光吸収剤の量は、ナノ粒子の重量を基準として0.0001~90重量%、特には0.01~50重量%、より具体的には0.1~10重量%であってもよい。
【0131】
ナノ粒子
本発明によれば、光吸収剤は、本発明による組成物中に分散されているナノ粒子の中にカプセル封入される。すなわち、光吸収剤は前記ナノ粒子の中に含まれるかグラフト化される。
【0132】
ナノ粒子は、光吸収剤が中に貯蔵され保護される貯蔵器のように振る舞う。光吸収剤は、ナノ粒子中に均一に分散されてもよく、あるいはナノ粒子のコア中に局在していてもよい。光吸収剤は、ナノ粒子の表面又は空隙の内部に局在していてもよい。
【0133】
実際、本発明による眼鏡用レンズからの活性反応物、すなわちラジカル重合に関与するラジカルは、ナノ粒子の内部に拡散することができないであろう。光吸収剤がナノ粒子の表面又は空隙の中に位置する場合、活性反応物がそれらに到達する可能性があるものの、グラフト化された又は捕捉された添加剤の移動性が妨げられるため、反応の可能性が下がり、添加剤も保護される。
【0134】
本発明の文脈において、「ナノ粒子」という用語は、本明細書に開示の動的光散乱法により測定される、1nm~10μmの範囲、好ましくは10nm~5μmの範囲の、その最も長い方向で測定されるサイズを有する任意の形状の個別化された粒子を意味することが意図されている。
【0135】
本発明のナノ粒子は、ポリマーを主体とする(すなわちこれらがポリマーを含有する)ものであっても、あるいは無機物質を主体とする(すなわちこれらが無機酸化物を含有する)ものであってもよい。
【0136】
好ましい実施形態では、ナノ粒子の中に含まれるポリマー又は無機酸化物は透明な材料である。
【0137】
第1の実施形態によれば、本発明による組成物の中に分散されているナノ粒子はポリマーを含む。
【0138】
ポリマーを主体とするナノ粒子は、例えばラテックスナノ粒子、コアシェルナノ粒子、光吸収剤が上にグラフトされたナノ粒子、デンドリマーナノ粒子、120℃より高い融点を有するポリマーを含むナノ粒子などの様々な種類のものであってもよい。ポリマーを主体とするナノ粒子は、保護層で更に被覆されていてもよい。
【0139】
好ましくは、前記ポリマーを主体とするナノ粒子は、アクリルポリマー、ビニルポリマー、アリルポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む。好ましくは、ポリマーを主体とするナノ粒子は、アクリルポリマー、より好ましくはメチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートとのコポリマーを含む。
【0140】
ポリマーを主体とするナノ粒子は、溶媒蒸発、ナノ析出、乳化重合、界面重合、噴霧乾燥、及びコアセルベーションによって調製することができる。好ましくは、ポリマーを主体とするナノ粒子は、ミニエマルション重合又はマイクロエマルション重合などの乳化重合によって調製される。
【0141】
光吸収剤を含有する、ポリマーを主体とするナノ粒子は、水などの溶媒;光吸収剤;アクリルモノマー、ビニルモノマー、アリルモノマー、及びこれらの混合物などのモノマー;有機アゾ化合物、ペルオキソ二硫酸塩、ペルオキシエステル、又はペルケタールなどの温和な触媒;少なくとも1種の界面活性剤、好ましくはドデシルスルホン酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤;並びに任意選択的な網状化剤:を混合することによる乳化重合によって調製することができる。イオン性界面活性剤の使用は、イオン反発により、重合中のモノマー液滴の合体及び重合後のナノ粒子の凝集を回避するのに有利に役立つ。温和な触媒の使用は、ペルオキシジカーボネートなどの強い触媒で生じる光吸収剤の分解を有利に防止する。網状化剤の使用は、ナノ粒子を有利に緻密化し、それにより光吸着添加剤のナノ粒子からの漏出を防止し、レンズの重合中のナノ粒子内部へのラジカルの移動を防止する。
【0142】
いくつかの実施形態では、光吸収剤はポリマーを主体とするナノ粒子内部で共重合可能である。「共重合可能」とは、光吸収剤が不飽和基又は官能基などの反応性基を含み、前記反応性基がポリマーを主体とするナノ粒子を調製するために使用される材料と共有結合を形成できることを意味する。
【0143】
第2の実施形態によれば、本発明による組成物中に分散されているナノ粒子は無機酸化物を含む。好ましくは、前記無機物を主体とするナノ粒子は、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、及びこれらの混合物からなる群から選択される無機酸化物を含む。
【0144】
無機物を主体とするナノ粒子は、Stoeber合成又は逆マイクロエマルションによって調製することができる。
【0145】
光吸収剤を含むシリカナノ粒子は、テトラエチルオルトシリケートと光吸収剤とをエタノールなどの低分子量アルコール及びアンモニアを含有する過剰の水の中で混合することによるStoeber合成によって調製することができる。Stoeber法では、光吸収剤は、シリカと共有結合を形成できるように、例えば従来のシラン、好ましくはアルコキシシランでシリル化できるように官能化されなければならない。Stoeber合成により、有利なことには制御可能なサイズの単分散SiO2粒子が得られる。
【0146】
光吸収剤を含有するシリカ又はシリカ-金属酸化物ナノ粒子は、シクロヘキサン及びn-ヘキサノールなどの油相;水;Triton X-100などの界面活性剤;光吸収剤;テトラエチルオルトシリケート、チタンアルコキシレート、及びアルミニウムアルコキシドなどの1種以上の無機酸化物前駆体;並びに水酸化ナトリウムなどのpH調整剤;を混合することによる、逆(油中水型)マイクロエマルションにより調製することができる。逆マイクロエマルション法では、Stoeber合成でカプセル封入されたものよりも多量の極性の光吸収剤を無機酸化物マトリックス中にカプセル封入することができる。カプセル化収率は非常に高く、そのため高価な光吸収剤の無駄遣いを回避することができる。更に、この方法により、有利なことには、特に逆マイクロエマルションの場合に、粒径を容易に制御することができる。加えて、この方法により、シリカナノ粒子中にTiO2、ZrO2、又はAl2O3を添加することができる。
【0147】
Stoeber合成及び逆(油中水型)マイクロエマルションによって得られる無機物を主体とするナノ粒子は、高度に網状化され、疎水性シリカ基で被覆されているため、光吸収剤のナノ粒子からの漏出が防止され、レンズの重合中のナノ粒子内部へのラジカルの移動が防止される。
【0148】
好ましい実施形態では、ナノ粒子の屈折率は1.47~1.56であり、好ましくは、ナノ粒子の屈折率は、ISO 489:1999に従って測定される重合したアリルモノマー又はオリゴマーの屈折率と同一である。実際、ナノ粒子の屈折率が重合したアリルモノマー又はオリゴマーの屈折率に近い場合、眼鏡用レンズはより少ない光散乱を示し、そのため光強度の減少及び/又はヘイズがより少ない。
【0149】
ポリマーを主体とするナノ粒子の屈折率は、ナノ粒子を調製するために使用されるモノマー又はモノマー混合物の種類に依存する。そのため、アリル系ナノ粒子の屈折率は1.5であり、アクリル系又はビニル系のナノ粒子の屈折率は、アクリルモノマー又はビニルモノマーを芳香族基含有モノマーと共重合することにより増加させることができる。
【0150】
無機物を主体とするナノ粒子の屈折率は、ナノ粒子を調製するために使用される無機酸化物又は無機酸化物の混合物の種類に依存する。そのため、SiO2ナノ粒子の屈折率は1.47~1.5であり、SiO2とTiO2との混合物、SiO2とZrO2との混合物、又はSiO2とAl2O3との混合物を含むナノ粒子の屈折率は、1.56に到達し得る。
【0151】
有利には、ナノ粒子は、動的光散乱法に従って測定される1nm~10μm、好ましくは10nm~5μmのサイズを示す。実際、ナノ粒子のサイズが10μm未満の場合、眼鏡用レンズはより少ない光散乱を示し、そのため光強度のより少ない低下を示す。そのようなナノ粒子は、マイクロエマルション重合によって、又はそれらのサイズを粉砕工程で小さくすることによって、直接得ることができる。
【0152】
組成物中のナノ粒子の量は、組成物の重量を基準として0.001~1重量%、好ましくは0.0025~0.1重量%である。
【0153】
眼鏡用レンズの調製方法
上記の眼鏡用レンズの作製を行うための方法は:
a)マトリックスを調製することができるモノマー又はオリゴマーを準備する工程;
b)モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な粉末の形態であるか、モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な液体中のナノ粒子の分散液の形態のいずれかで、ナノ粒子に含まれる光吸収剤を調製する工程;
c)前記モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒を準備する工程;
d)紫外線吸収剤を準備する工程;
e)ナノ粒子が分散されている重合性液体組成物を得るために、モノマー又はオリゴマーと、ナノ粒子と、触媒と、紫外線吸収剤とを混合する工程;
e)任意選択的に重合性液体組成物を基材上に堆積させる工程;
f)重合性液体組成物を硬化させる工程;
を含む。
【0154】
好ましくは、触媒は最後の成分として添加される。
【0155】
好ましくは、硬化は熱硬化である。
【0156】
眼鏡用レンズは、その後、耐摩耗コーティング、反射防止コーティング、防汚コーティング、帯電防止コーティング、防曇コーティング、偏光コーティング、着色コーティング、及びフォトクロミックコーティングからなる群から選択される1つ以上の機能性コーティングで被覆されてもよい。
【0157】
本明細書において、基材の表面上に堆積されるとされるコーティングは、(i)基材の上に位置する、(ii)基材と必ずしも接触しない、すなわち1つ以上の中間層が基材と対象の層との間に配置され得る、及び(iii)基材を必ずしも完全に被覆しない、コーティングとして定義される。
【0158】
本明細書では、眼鏡用レンズは、眼を保護する及び/又は視力を矯正するために眼鏡フレームに合うように設計されたレンズとして定義される。前記眼鏡用レンズは、非矯正用眼鏡レンズ(プラノレンズ又はアフォーカルレンズともいう)であっても矯正用眼鏡レンズであってもよい。矯正レンズは、単焦点、二焦点、三焦点、又は累進レンズであってもよい。
【0159】
ナノ粒子中に含まれる光吸収剤の使用
本発明は、モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒による前記光吸収剤の分解を防止するためにナノ粒子中に含まれている光吸収剤の使用にも関する。触媒による光吸収剤の分解の防止は、重合前の組成物の吸収スペクトルを重合後の眼鏡用レンズのものと比較することによって評価することができる。眼鏡用レンズの吸収スペクトルが光吸収剤の最大吸収波長で同じ透過率の低下を示す場合、光吸収剤は重合中に触媒によって分解されないとみなすことができる。
【0160】
特に、重合中の触媒による光吸収剤の分解は、レンズの望ましくない黄変をもたらす分解生成物を生成する。好ましい実施形態によれば、ナノ粒子中に含まれる光吸収剤の使用は、硬化した眼鏡用レンズの黄変を防止する。
【0161】
以下の実施例により本発明をより詳しく説明するが、これらの実施例は純粋に例示を目的として与えられており、いかなる形でも本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例
【0162】
測定方法
以降の測定は、イソプロピルアルコールで洗浄された、中心の厚さが2mmのレンズに対して行う。
【0163】
420~450nmの範囲にわたっての平均光透過率(TB%)は、ISO 8980-3-2003に従って測定された透過率曲線から計算する。
【0164】
ナノ粒子のサイズは標準的な動的光散乱法によって測定する。この手法は、ランダムなブラウン運動を行っているナノ粒子の懸濁液からの散乱光の強度の時間依存ゆらぎを測定する。これらの強度ゆらぎの分析によって拡散係数を決定することができ、これは、ストークス-アインシュタインの関係を使用して粒子サイズとして表すことができる。
【0165】
本発明のレンズの比色係数は、15°の入射角での標準光源D 65及び観察者(10°の角度)を考慮して、国際比色系CIE L*a*b*に従って測定する。すなわち380~780nmの間で計算する。
【0166】
材料
実施例では次の化合物を使用する:
【0167】
【表1】
【0168】
実施例1:紫外線吸収剤の吸光度
様々な紫外線吸収剤を使用した。紫外線吸収剤の吸光度は、厚さ2mmの石英キュベット中、400nmの波長で、0.4mM/Lの紫外線吸収剤を含有するエタノール溶液中で測定した。ブランクとしての純粋なエタノールを参照として測定する(表1)。
【0169】
【表2】
【0170】
実施例2:光吸収剤を含有する、無機物を主体とするナノ粒子の逆マイクロエマルションによる調製
実施例2a:シクロヘキサン(7.5ml)、n-ヘキサノール(1.8ml)、Triton X-100(1.5g)、OMNISTAB(商標)47(40mg、Deltachem Co;Ltdから入手可能)、TEOS(0.1ml)、及び水酸化アンモニウム30%(0.06ml)の混合物を24時間混合する。その後、アセトンを添加し、粒子を遠心分離によって回収し、エタノールで洗浄して乾燥させる。ナノ粒子は、100nmを中心とする単分散のサイズ、及び約1.47の沈降シリカに対応する屈折率を有する。
【0171】
ナノ粒子をCR-39(モノマー中に12.5重量%のナノ粒子)中に分散させてマスターバッチ(マスター2a)を調製する。
【0172】
実施例2b:7.56gのTriton X-100、5.86gのヘキサン-1-オール、23.46gのシクロヘキサン、1.6mlの脱イオン水、0.32mlのメチレンブルー溶液(CAS:61-73-4、1重量%水溶液、光吸収剤)、0.4mlのTEOS、及び0.24mlの30%水酸化アンモニウム水溶液を混合し、室温で24時間撹拌する。
【0173】
24時間後、得られた溶液に1体積のアセトン(約50ml)を添加し、粒子を遠心分離により回収し、アセトン又は水で洗浄し、室温で一晩乾燥し、80℃のオーブン中で3時間アニールする。
【0174】
その後、得られた0.2gの乾燥した無機ナノ粒子を、約20mlのアセトン及び研磨剤としての1mmのサイズのジルコニウムビーズの中で、磁気撹拌下で再分散させる。混合物を最後に濾過してジルコニウムビーズを除去する。その後、99.8gのCR-39(登録商標)を添加し、アセトンを真空下で除去してマスターバッチ(マスター2b)を得る。
【0175】
実施例2c:7.56gのTriton X-100、30mlのヘキサン-1-オール、7.2mlのシクロヘキサン、1.6mlの脱イオン水、0.32mlのメチレンブルー溶液(CAS:61-73-4、1重量%水溶液、光吸収剤)、0.4mlのTEOS、及び0.24mlの30%水酸化アンモニウム水溶液を混合し、室温で24時間撹拌する。
【0176】
24時間後、得られた溶液に1体積のアセトン(約50ml)を添加し、粒子を遠心分離により回収し、アセトン又は水で洗浄し、室温で一晩乾燥する。ナノ粒子は、100nmの単分散のサイズ、及び約1.47の沈降シリカに対応する屈折率を有する。
【0177】
ナノ粒子を実施例2bの通りにCR-39(登録商標)中に分散させてマスターバッチ(マスター2c)を調製する。
【0178】
実施例2d:1.6mlの代わりに1.76mlの脱イオン水を使用し、7.56gの代わりに7.4gのTriton X-100を使用したことを除いては実施例2cを再現した(マスター2d)。ナノ粒子は、80nmの単分散のサイズを有する。
【0179】
実施例2e:1.6mlの代わりに2.16mlの脱イオン水を使用し、7.56gの代わりに7gのTriton X-100を使用したことを除いては実施例2cを再現した(マスター2e)。ナノ粒子は、50nmの単分散のサイズを有する。
【0180】
実施例2c~2eは、脱イオン水対Triton X-100の比率がナノ粒子の最終的なサイズを規定することを示している:比率が大きいほど、ナノ粒子は小さくなる。
【0181】
実施例2f:1.6mlの代わりに1.44mlの脱イオン水を使用し、7.54gの代わりに7gのTriton X-100を使用したことを除いては実施例2cを再現した(マスター2f)。更に、0.16mlの5,10,15,20-テトラキス(4-スルホナトフェニル)-ポルフィン-Cu(II)(TSPP-Cu(II))溶液(脱イオン水の中で0.01M)を添加した。ナノ粒子は100nmの単分散のサイズを有する。
【0182】
下の表Aにまとめられているように、同じ調製手順で他の光吸収剤を使用した。
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
【表5】
【0186】
実施例3:光吸収剤を含有する、無機物を主体とするナノ粒子(屈折率1.5超)の逆マイクロエマルションによる調製
実施例3a:実施例2cで得たナノ粒子を36.5重量%のテトラブチルオルトチタネート(TBOT)の水溶液の中に入れる。
【0187】
実施例2bで得た1gのナノ粒子を、20:1の水/エタノール(体積)の混合物25mlの中に分散させる。その後、1.85mlのHCl(37重量%水溶液)を混合物に添加する。反応を磁気撹拌子により15分間撹拌する。その後、9.1gのテトラブチルオルトチタネート(TBOT)を滴下し、混合物を室温で3時間連続的に撹拌する。
【0188】
チタニアの薄層がシリカを主体とするナノ粒子上に堆積され、コアシェルナノ粒子が生成する。これらのナノ粒子をエタノールで洗浄し、室温で乾燥し、次いで180℃で2時間アニールする。これは100nmの単分散のサイズを有し、約1.54の屈折率を有する。
【0189】
マスターバッチは、CR-39(登録商標)の代わりにアクリルモノマーとしてSK-1.60光学樹脂モノマー(Jiangsu Shikexincai Co.,Ltd.から供給)を使用する以外は実施例2bの通りにマスターバッチを調製する(マスター3a)。ナノ粒子とモノマーの屈折率がほぼ一致しているため、マスターバッチはヘイズがなく透明である。
【0190】
実施例3b:TBOT15.0gを添加することを除いて実施例3aを再現する。ナノ粒子は1.55より大きい屈折率を有する100nmの単分散サイズを有する。
【0191】
CR-39(登録商標)の代わりに4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオールを使用する以外は実施例2bの通りにマスターバッチを調製する(マスター3b)。ナノ粒子とモノマーの屈折率がほぼ一致しているため、マスターバッチはヘイズがなく透明である。
【0192】
実施例4:光吸収剤を含有する、無機物を主体とするナノ粒子(屈折率約1.47)のStoeber法による調製
384mLのメタノールを1000mlの瓶に入れる。次いで、96mlのNH4OH(30重量%水溶液)及び6.4mlのメチレンブルー(CAS:61-73-4、2重量%の脱イオン水溶液)を添加する。混合物を400rpmで10分間撹拌する(磁気撹拌)。その後、3.2mlのTEOSを滴下し、800rpmで2時間撹拌する。
【0193】
反応が完了した後、粒子サイズを動的光散乱により確認する。平均粒子サイズは約200~230nm(単分散)である。
【0194】
メタノールの体積を500から100mlに減らすために、混合物を丸底フラスコに移して1時間留去し、次いで4000rpmで45分間遠心分離する。上清みを除去し、ナノ粒子をメタノール中の濃縮分散液として回収する。
【0195】
その後、混合物を次の手順で2回洗浄する:50mlのメタノールを超音波をかけながら添加して粒子を再分散させる。ナノ粒子を4000rpmで30分間遠心分離することにより回収する。
【0196】
ナノ粒子を周囲温度で一晩空気乾燥させ、次いでめのう乳鉢で粉砕する。その後、ナノ粒子を180℃で2時間アニールする。
【0197】
250mlの瓶の中で0.3gのナノ粒子を99.7gのCR-39モノマーと混合する。マスターバッチを30分間超音波処理する。4000rpmで30分間遠心分離を行って凝集粒子を除去する。上清みを回収してマスターバッチ(マスター4)を得る。
【0198】
上の表Aに列挙されている光吸収剤は、同じ調製手順で使用した。
【0199】
実施例5:光吸収剤を含有する、無機物を主体とするナノ粒子(屈折率1.5超)のStoeber法による調製
実施例4で得たナノ粒子を36.5重量%のテトラブチルオルトチタネート(TBOT)の水溶液の中に入れる。
【0200】
実施例4で得た1gのナノ粒子を、20体積の水:1体積のエタノールの混合物25mlの中に分散させる。その後、1.85mlのHCl(37重量%水溶液)を混合物に添加する。反応を磁気撹拌子により15分間撹拌する。その後、9.1gのテトラブチルオルトチタネート(TBOT)を滴下し、混合物を室温で3時間連続的に撹拌する。
【0201】
チタニアの薄層がシリカを主体とするナノ粒子上に堆積され、コアシェルナノ粒子が生成する。これらのナノ粒子をエタノールで洗浄し、室温で乾燥し、次いで180℃で2時間アニールする。これは200~230nmの単分散のサイズを有し、約1.54の屈折率を有する。
【0202】
CR-39(登録商標)の代わりにアクリルモノマーとしてSK-1.60光学樹脂モノマー(Jiangsu Shikexincai Co.、Ltd.から供給)を使用する以外は実施例4の通りにマスターバッチを調製する(マスター5)。ナノ粒子とモノマーの屈折率がほぼ一致しているため、マスターバッチはヘイズがなく透明である。
【0203】
実施例6:本発明による眼鏡用レンズの作製
【0204】
【表6】
【0205】
重合性組成物は、室温でビーカー中の成分を秤量及び混合することにより製造する。CR39(登録商標)、後にCR39E(登録商標)又はジアリルフタレートを最初に混合する。均一になった後、紫外線吸収剤を添加し、完全に分散するまで混合する。次いで、メチレンブルー(CR39(登録商標)中の溶液として)又はマスターバッチ中のナノ粒子を添加し、完全に分散するまでビーカーの中身を再度混合する。最後に、IPPを添加し、混合物を十分に攪拌してから脱気及び濾過する。
【0206】
その後、シリンジを使用して直径71mmのガラス製バイプラノモールドに組成物を充填し、温度を45℃から85℃に15時間で徐々に上昇させ、その後85℃で5時間一定に保つ制御された電気オーブンの中で重合を行う。その後モールドを分解し、得られたレンズはその中心で2mmの厚さを有する。
【0207】
図1は、液体状態の重合性組成物(破線)の330nm~780nm(波長)の光範囲の光透過率(%T)1と、重合後の比較のレンズの光透過率(%T)(実線)を示している。明らかに、メチレンブルーは液体組成物中に存在し(90ppm、650nmで透過率の極小を示す)、重合中の分解のため重合後に消失した(透過率の極小なし)。
【0208】
330nm~780nm(波長)の範囲の光に対する本発明のレンズ1の光透過率(%T)を図2に示す。メチレンブルーの吸収に関連する、透過率のわずかな極小が約580~600nmで観察される。実際、カプセル(2ppmのメチレンブルーに相当する90ppmのカプセル)内に入れられたメチレンブルーは、重合中に分解されなかった。図1と2の実線の比較は、メチレンブルーのカプセル封入の利点を明確に示している。カプセル封入された2ppmのメチレンブルーは有効である一方で、カプセル封入されていない90ppmのメチレンブルーは完全に分解される。
【0209】
最後に、400nm未満では光が全く透過せず(光透過率は404nmまで1%未満)、420~450nmにわたって光は少し透過し、HEV紫青色光の約20%のかなりの吸収を示すTB=80%の420~450nmにわたる平均光透過率が得られることが明らかに観察できる。加えて、430nmでの透過率は80%である。
【0210】
比較及び本発明のレンズ1を透過した光は、以下の比色パラメータを示した。
【0211】
【表7】
【0212】
そのため、カプセル封入されていない染料を含む比較の眼鏡用レンズは高い黄色度指数を示す一方で、本発明によりカプセル封入された染料を含む本発明の眼鏡用レンズは、青色光の吸収と残留色との間の優れた折り合いを示す(YIが5未満)。
【0213】
本発明のレンズ2及び3は、本発明のレンズ1と同様の性能を示した。
【0214】
更に、得られた本発明のレンズ1~3は、全ての通常の機械的要件を満たした。
【0215】
最後に、Chiguard BP-6紫外線吸収剤をUV24(0.3%)又は2-(2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール(表1でサンプルAと表記;0.3%)に置き換えた以外は同じプロセスでレンズ4及び5を作製したところ、TB=70%又はTB=88%(それぞれ)及び透過光の同様の比色パラメータを有するレンズが得られた。
【0216】
【表8】
【0217】
表3の成分を以下の方法で秤量及び混合することによりモノマーブレンド物を製造する。
【0218】
2,5(又は2,6)-ビス(イソ-シアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、DMC、及びZelec UN(登録商標)を、最初に室温で1時間、真空下で混合する。均一になった後、混合物を5℃まで冷却し、次いでN2ガスを瓶の内部に移して真空を開放する。その後、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、及びマスター3bを添加し、次いで真空下、混合物を5℃で完全に分散するまで撹拌する。N2置換により真空を開放する。
【0219】
シリンジを使用して直径71mmのバイプラノモールドにモノマー混合物を充填する。重合サイクルを15℃で開始し、その後温度を16時間で130℃まで徐々に上昇させ、3時間一定に保持する。その後モールドを分解し、中心で2mmの厚さを有する透明なレンズを得る。
【0220】
このレンズでは、光は400nm未満で全く透過せず、430nmでの透過率は80%であり、透過光は低い黄色度指数を示す。
図1
図2