(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】新規のクエンチャーおよびレポーター染料の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20240621BHJP
C12Q 1/6818 20180101ALI20240621BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240621BHJP
G01N 33/58 20060101ALI20240621BHJP
C07D 407/14 20060101ALN20240621BHJP
C07D 209/58 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6818 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/58 A
C07D407/14
C07D209/58
(21)【出願番号】P 2020568944
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 US2019020363
(87)【国際公開番号】W WO2019169307
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-18
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514078933
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ムッラー カイルッザマン バシャール
(72)【発明者】
【氏名】エバンス ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン スコット シー
(72)【発明者】
【氏名】チャン チュアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ションウェイ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/057459(WO,A1)
【文献】William CHIUMAN and Yingfu LI,Efficient signaling platforms built from a small catalytic DNA and doubly labeled fluorogenic substrates, Published online 14 December 2006, Nucleic Acids Research, Vol. 35, No. 2, p. 401-405
【文献】Laura E. SANMAN et al.,Bifunctional Probes of Cathepsin Protease Activity and pH Reveal Alterations in Endolysosomal pH during Bacterial Infection, 2016, Cell Chemical Biology, vol. 23, p. 793-804
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブであって、
a)一般式IaまたはIbを有する染料であって、
【化1】
式中、
R
4、R
13、およびR
14の各々が、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO
3を有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、前記置換ベンジルが、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含み、
R
13およびR
14のうちの1つが、少なくとも1つのカルボキシ基を含む置換ベンジルであり、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
R
2およびR
12の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
Xが、-OH、-SH、-NH
2、-NH-NH
2、-F、-Cl、-Br、I、-O-NHS(ヒドロキシスクシンイミジル/スルホスクシンイミジル)、-O-TFP(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-ベンゾトリアゾール、-ベンゾトリアゾール、-NR-L-OH、-NR-L-O-ホスホルアミダイト、-NR-L-SH、-NR-L-NH
2、-NR-L-NH-NH
2、-NR-L-CO
2H、-NR-L-CO-NHS、-NR-L-CO-STP、-NR-L-CO-TFP、-NR-L-CO-ベンゾトリアゾール、-NR-L-CHO、-NR-L-マレイミド、-NH(CH
2CH
2O)
zCH
2CH
2N
3、-NR-L-NH-CO-CH
2-I、およびアジド(N
3)含有基からなる群から選択され、Rが、-Hまたは脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、zが、1以上5以下の整数であり、Lが、少なくとも1個の酸素原子および/または硫黄原子で任意に置換された二価の直鎖状、交差、または環状アルキル基からなる群から選択され、
Katが、シアニンによってもたらされる負の電荷を補償するために必要な数の、Na
+、K
+、Ca
2+、アンモニア、または他のカチオンであり、
mが、0以上5以下の整数であり、nが、1以上3以下の整数であり、oが、0以上12以下の整数であり、pが、0以上5以下の整数である、染料と、
b)一般式IIを有するクエンチャーであって、
【化2】
式中、
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々が、同じかまたは異なり、独立して、HまたはSO
3のいずれかから選択され、
Zが、NH-Lであり、Lが、
【化3】
であり、Yが、H、または固体支持体への結合のいずれかである、クエンチャーと、
c)前記染料および前記クエンチャーを結合するオリゴヌクレオチドリンカーと、
のコンジュゲーションの産生物を含み、前記染料および前記クエンチャーが、前記オリゴヌクレオチドリンカーの両末端にそれぞれ共有結合されている、プローブ。
【請求項2】
R
23、R
25、R
26、R
27、R
29、およびR
30の各々が、Hであり、R
24およびR
28の各々が、SO
3である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々が、Hである、請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
Zが、NH-Lであり、Lが、
【化4】
であり、Yが、前記固体支持体への結合である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって試料中の標的核酸分子を検出または定量化する方法であって、前記方法が、
(i)1つ以上の標的核酸分子を含む前記試料を、a)前記標的核酸分子に対して少なくとも部分的に相補的である配列を有する少なくとも1つのプローブであって、前記1つ以上の標的核酸分子の増幅時に蛍光の検出可能な変化を受ける、少なくとも1つのプローブ、およびb)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマー対と接触させることと、
(ii)1つ以上の標的核酸分子を増幅するのに十分な条件下で、ステップ(i)の前記混合物をDNAポリメラーゼとともにインキュベートすることと、
(iii)前記プローブの蛍光を測定することによって、前記増幅された標的核酸分子の有無を検出するか、またはその量を定量化することと、
を含み、前記プローブが、
a)一般式IaまたはIbを有する染料であって、
【化5】
式中、
R
4、R
13、およびR
14の各々が、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO
3を有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、前記置換ベンジルが、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含み、
R
13およびR
14のうちの1つが、少なくとも1つのカルボキシ基を含む置換ベンジルであり、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
R
2およびR
12の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
Xが、-OH、-SH、-NH
2、-NH-NH
2、-F、-Cl、-Br、I、-O-NHS(ヒドロキシスクシンイミジル/スルホスクシンイミジル)、-O-TFP(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-ベンゾトリアゾール、-ベンゾトリアゾール、-NR-L-OH、-NR-L-O-ホスホルアミダイト、-NR-L-SH、-NR-L-NH
2、-NR-L-NH-NH
2、-NR-L-CO
2H、-NR-L-CO-NHS、-NR-L-CO-STP、-NR-L-CO-TFP、-NR-L-CO-ベンゾトリアゾール、-NR-L-CHO、-NR-L-マレイミド、-NH(CH
2CH
2O)
zCH
2CH
2N
3、-NR-L-NH-CO-CH
2-I、およびアジド(N
3)含有基からなる群から選択され、Rが、-Hまたは脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、zが、1以上5以下の整数であり、Lが、少なくとも1つの酸素原子および/または硫黄原子で任意に置換された二価の直鎖、交差、または環状アルキル基からなる群から選択され、
Katが、シアニンによってもたらされる負の電荷を補償するために必要な数の、Na
+、K
+、Ca
2+、アンモニア、または他のカチオンであり、
mが、0以上5以下の整数であり、nが、1以上3以下の整数であり、oが、0以上12以下の整数であり、pが、0以上5以下の整数である、染料と、
b)一般式IIを有するクエンチャーであって、
【化6】
式中、
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々が、同じかまたは異なり、独立して、HまたはSO
3のいずれかから選択され、
Zが、NH-Lであり、Lが、
【化7】
であり、Yが、Hまたは固体支持体への結合のいずれかである、クエンチャーと、
c)前記染料および前記クエンチャーを結合する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドリンカーと、
のコンジュゲーションの産生物を含み、前記染料および前記クエンチャーが、前記オリゴヌクレオチドリンカーの両末端にそれぞれ共有結合されている、方法。
【請求項6】
前記PCRが、リアルタイムまたは定量的PCR(qPCR)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリメラーゼが、Taqポリメラーゼである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記プローブが、加水分解プローブである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記プローブが、TaqManプローブである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記標的核酸が、突然変異を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、希少対立遺伝子またはSNPの検出に使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のためのキットであって、前記キットが、
プローブであって、
a)一般式Iaまたは式Ibを有する染料であって、
【化8】
式中、
R
4、R
13およびR
14の各々が、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO
3を有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、前記置換ベンジルが、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含み、
R
13およびR
14のうちの1つが、少なくとも1つのカルボキシ基を含む置換ベンジルであり、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
R
2およびR
12の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
Xが、-OH、-SH、-NH
2、-NH-NH
2、-F、-Cl、-Br、I、-O-NHS(ヒドロキシスクシンイミジル/スルホスクシンイミジル)、-O-TFP(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-ベンゾトリアゾール、-ベンゾトリアゾール、-NR-L-OH、-NR-L-O-ホスホルアミダイト、-NR-L-SH、-NR-L-NH
2、-NR-L-NH-NH
2、-NR-L-CO
2H、-NR-L-CO-NHS、-NR-L-CO-STP、-NR-L-CO-TFP、-NR-L-CO-ベンゾトリアゾール、-NR-L-CHO、-NR-L-マレイミド、-NH(CH
2CH
2O)
zCH
2CH
2N
3、-NR-L-NH-CO-CH
2-I、およびアジド(N
3)含有基からなる群から選択され、Rが、-Hまたは脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、zが、1以上5以下の整数であり、Lが、少なくとも1つの酸素原子および/または硫黄原子で任意に置換された二価の直鎖、交差、または環状アルキル基からなる群から選択され、
Katが、シアニンによってもたらされる負の電荷を補償するために必要な数の、Na
+、K
+、Ca
2+、アンモニア、または他のカチオンであり、
mが、0以上5以下の整数であり、nが、1以上3以下の整数であり、oが、0以上12以下の整数であり、pが、0以上5以下の整数である、染料、
b)一般式IIを有するクエンチャーであって、
【化9】
式中、
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々が、同じかまたは異なり、独立して、HまたはSO
3のいずれかから選択され、
Zが、NH-Lであり、Lが、
【化10】
であり、Yが、Hまたは固体支持体への結合のいずれかである、クエンチャー、
ならびに
c)前記染料および前記クエンチャーを結合する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドリンカー、
のコンジュゲーションの産生物を含み、前記染料および前記クエンチャーが、前記オリゴヌクレオチドリンカーの両末端にそれぞれ共有結合されている、プローブと、
緩衝剤、精製媒体、標的、有機溶媒、酵素、および酵素阻害剤のうちの1つ以上と、を含む、キット。
【請求項13】
前記PCRが、リアルタイムまたは定量的PCR(qPCR)である、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記リアルタイムまたは定量的PCR(qPCR)を行うための説明書をさらに含む、請求項
13に記載のキット。
【請求項15】
前記成分が、別個の容器に包装される、請求項12に記載のキット。
【請求項16】
2つ以上の成分が、マスターミックスとして一緒に包装される、請求項12に記載のキット。
【請求項17】
一般式IaまたはIbを有する少なくとも1つの染料であって、
【化11】
式中、
R
4、R
13およびR
14の各々が、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO
3を有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、前記置換ベンジルが、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含み、
R
13およびR
14のうちの1つが、少なくとも1つのカルボキシ基を含む置換ベンジルであり、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
R
2およびR
12の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
Xが、-OH、-SH、-NH
2、-NH-NH
2、-F、-Cl、-Br、I、-O-NHS(ヒドロキシスクシンイミジル/スルホスクシンイミジル)、-O-TFP(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-ベンゾトリアゾール、-ベンゾトリアゾール、-NR-L-OH、-NR-L-O-ホスホルアミダイト、-NR-L-SH、-NR-L-NH
2、-NR-L-NH-NH
2、-NR-L-CO
2H、-NR-L-CO-NHS、-NR-L-CO-STP、-NR-L-CO-TFP、-NR-L-CO-ベンゾトリアゾール、-NR-L-CHO、-NR-L-マレイミド、-NH(CH
2CH
2O)
zCH
2CH
2N
3、-NR-L-NH-CO-CH
2-I、およびアジド(N
3)含有基からなる群から選択され、Rが、-Hまたは脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、zが、1以上5以下の整数であり、Lが、少なくとも1つの酸素原子および/または硫黄原子で任意に置換された二価の直鎖、交差、または環状アルキル基からなる群から選択され、
Katが、シアニンによってもたらされる負の電荷を補償するために必要な数の、Na
+、K
+、Ca
2+、アンモニア、または他のカチオンであり、
mが、0以上5以下の整数であり、nが、1以上3以下の整数であり、oが、0以上12以下の整数であり、pが、0以上5以下の整数である、少なくとも1つの染料と、
一般式IIを有する少なくとも1つのクエンチャーであって、
【化12】
式中、
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々が、同じかまたは異なり、独立して、HまたはSO
3のいずれかから選択され、
Zが、NH-Lであり、Lが、
【化13】
であり、Yが、Hまたは固体支持体への結合のいずれかである、少なくとも1つのクエンチャーと、
を含む、キット。
【請求項18】
前記少なくとも1つの染料および前記少なくとも1つのクエンチャーをオリゴヌクレオチドにコンジュゲートするための追加の成分をさらに含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記少なくとも1つの染料および前記少なくとも1つのクエンチャーをオリゴヌクレオチドにコンジュゲートするための説明書をさらに含む、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記成分が、別個の容器に包装される、請求項17に記載のキット。
【請求項21】
前記アジド含有基が、末端アジドを有する脂肪族リンカーを含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項22】
末端アジドを有する前記脂肪族リンカーが、NH-CH
2-CH
2-CH
2-N
3またはNH
2-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-N
3から選択される、請求項21に記載のプローブ。
【請求項23】
前記アジド含有基が、末端アジドを有する脂肪族リンカーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項24】
末端アジドを有する前記脂肪族リンカーが、NH-CH
2-CH
2-CH
2-N
3またはNH
2-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-N
3から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アジド含有基が、末端アジドを有する脂肪族リンカーを含む、請求項12に記載のキット。
【請求項26】
末端アジドを有する前記脂肪族リンカーが、NH-CH
2-CH
2-CH
2-N
3またはNH
2-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-N
3から選択される、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記アジド含有基が、末端アジドを有する脂肪族リンカーを含む、請求項17に記載のキット。
【請求項28】
末端アジドを有する前記脂肪族リンカーが、NH-CH
2-CH
2-CH
2-N
3またはNH
2-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-N
3から選択される、請求項27に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、概して、例えば、リアルタイムまたは定量的PCR(qPCR)などのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む生物学的用途のためのクエンチャーおよびレポーター染料の組み合わせを含むFRET対に関する。
【背景技術】
【0002】
二重標識オリゴヌクレオチドプローブ内の蛍光エネルギー移動(FRET)は、遺伝子分析のためのアッセイで広く使用されている。FRETは、DNAハイブリダイゼーションおよび増幅、タンパク質フォールディングのダイナミクス、タンパク質分解、ならびに他の生体分子間の相互作用を研究するために利用されている。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応などの核酸検出/増幅方法は、二重標識プローブを使用して、特定の遺伝子配列または発現したメッセンジャーRNA配列などの標的核酸を検出および/または定量化する。そのような方法で使用するための蛍光発生プローブは、多くの場合、レポーターおよびクエンチャー部分の両方で標識される。そのような場合、レポーターからの蛍光は、2つの染料が、核酸テンプレートへのプローブのハイブリダイゼーションによって、および/またはプローブからクエンチャーもしくはレポーター染料成分のうちの1つを除去するエキソヌクレアーゼ活性によって物理的に分離されると消光されない。
【0003】
蛍光共鳴エネルギー移動は、エネルギーが、ドナー分子とアクセプター分子との間で非放射性で渡されるプロセスである分子エネルギー移動(MET)の形式である。FRETは、ある特定の化合物の特性から発生し、特定の波長の光への曝露によって励起されると、それらは異なる波長で光を放出する(すなわち、それらは蛍光を発する)。そのような化合物は、フルオロフォアと呼ばれる。FRETでは、フルオロフォアであるドナー分子と別のフルオロフォアまたはクエンチャーのいずれかであるアクセプター分子との間で、エネルギーが非放射性で長距離(例えば、10~100オングストローム)にわたって渡される。ドナーは、光子を吸収し、このエネルギーを非放射性でアクセプターに移動させる。
【0004】
励起スペクトルおよび発光スペクトルがオーバーラップする2つのフルオロフォアが近接している場合、1つのフルオロフォアの励起により、第1のフルオロフォアが第2のフルオロフォアにエネルギーを移動させ、順に第2のフルオロフォアが蛍光を発する。言い換えると、第1の(ドナー)フルオロフォアの励起状態エネルギーは、共鳴誘導双極子間相互作用によって隣接する第2の(アクセプター)フルオロフォアに移動される。結果として、ドナー分子の寿命が短くなり、その蛍光はクエンチされるが、アクセプター分子の蛍光強度は増強され、脱分極される。ドナーの励起状態エネルギーが、クエンチャーなどの非フルオロフォアアクセプターに移動すると、ドナーの蛍光は、その後のアクセプターによる蛍光の放出なしにクエンチされる。FRETに関与できる分子の対は、FRET対と呼ばれる。エネルギー移動が起こるためには、ドナー分子およびアクセプター分子が、典型的には近接していなければならない(例えば、最大70~100オングストローム)。
【0005】
核酸増幅産物を検出するために一般的に使用される方法は、増幅産物(すなわち、アンプリコン)を未反応のプライマーから分離する必要がある。これは一般的に、サイズの違いに基づいて増幅産物をプライマーから分離するゲル電気泳動の使用、または遊離プライマーの洗い流しを可能にする産生物の固定化のいずれかによって達成される。アンプリコンからプライマーを分離することなく増幅プロセスをモニタリングするための他の方法が記載されている。そのような方法で使用される例示的な化合物には、TaqMan(登録商標)プローブ、分子ビーコン、SYBR GREEN(登録商標)指示薬染料、LUXプライマー、およびその他が含まれる。SYBR GREEN(登録商標)指示薬染料を使用することなど、PCR産物蓄積のインターカレーターに基づく検出の主な欠点は、特異的産物および非特異的産物の両方がシグナルを生成することである。
【0006】
定量的PCR(qPCR)のリアルタイムシステムは、インターカレーターに基づくPCR産物の検出ではなく、プローブに基づいて改善された。プライマーから分離することなく増幅産物の検出のためのプローブに基づく1つの方法は、5´エキソヌクレアーゼPCRアッセイ(TaqMan(登録商標)アッセイまたは加水分解プローブアッセイとも称される)である。この代替方法は、特定の増幅産物のみを検出するためのリアルタイム方法を提供する。増幅中に、しばしば「TaqManプローブ」と称されるプローブをその標的配列にアニーリングすると、酵素が上流プライマーからプローブの領域に伸びたときに、TaqなどのDNAポリメラーゼの5´エキソヌクレアーゼ活性によって切断される基質が生成される。この重合への依存は、標的配列が増幅されている場合にのみプローブの切断が起こることを保証する。
【0007】
一般に、TaqManプローブは、蛍光レポーター染料(すなわち、フルオロフォア)およびクエンチャー部分に結合された伸長不可能なオリゴヌクレオチドである。TaqManプローブが無傷である場合、レポーターおよびクエンチャー部分は近接しているため、クエンチャーは、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)によりレポーター染料によって放出される蛍光を大幅に低減する。プローブの設計および合成は、レポーターが5´末端にあり、クエンチャーが3´末端にあるプローブに対して適切なクエンチングが観察されるという発見によって簡素化された。
【0008】
PCRの拡張相中に、標的配列が存在する場合、プローブは、プライマー場のうちの1つから下流にアニーリングし、このプライマーが伸長されると、Taqポリメラーゼなどのそのような活性を有するDNAポリメラーゼの5´エキソヌクレアーゼ活性によって切断される。プローブの切断により、レポーター染料がクエンチャー部分から分離し、レポーター染料シグナルを増加させる。切断により、プローブが標的鎖からさらに除去され、プライマーの伸長がテンプレート鎖の末端まで続くようになる。したがって、プローブを含めてもPCRプロセス全体を阻害しない。追加のレポーター染料分子は、各サイクルでそれぞれのプローブから切断され、産生されるアンプリコンの量に比例した蛍光強度の増加に影響を与える。
【0009】
SYBR GREEN(登録商標)などのDNA結合染料を超える蛍光プローブの利点は、プローブと標的との間の特異的ハイブリダイゼーションは、蛍光シグナルを生成するために必要とされる。したがって、蛍光プローブでは、ミスプライミングまたはプライマー・ダイマーアーチファクトに起因する非特異的な増幅は、シグナルを生成しない。蛍光プローブの別の利点は、それらが異なる識別可能なレポーター染料で標識できることである。異なるレポーターで標識されたプローブを使用することにより、複数の異なる配列の増幅を、しばしばマルチプレックスアッセイと称される単一のPCR反応で検出され得る。
【0010】
細胞および組織の機能性に関する現在の分析では、多くの場合、制限されている材料からできるだけ多くの情報を抽出する必要がある。例えば、腫瘍生検などの試料は収集が困難であり、通常、使用可能な核酸は少量しか得られない。シングルプレックスアッセイと称される単一の標的分析物のPCR検出および測定は、核酸レベルで臨床研究試料を分析するためのゴールドスタンダードであり、四半世紀以上にわたって生物学的知識の限界を拡大する上で貴重である。
【0011】
しかしながら、臨床研究標本から得られる限られた量の核酸は、多くの場合、これらの貴重な試料をどのように利用するのが最も良いかについての選択を強いられる。さらに、試料が限られている場合、分析できる遺伝子座の数も制限され、試料から抽出できる情報の量が低減する。最後に、複数のシングルアッセイ反応をセットアップするために必要な追加の時間および材料は、複雑なプロジェクトの費用を大幅に増加させる可能性がある。
【0012】
核酸のマルチプレックスPCR分析は、単一の試料アリコートから複数の標的を増幅および定量化する戦略であり、これらの問題に対する魅力的なソリューションである。マルチプレックスPCRでは、試料アリコートは、単一のPCR反応で蛍光染料を含む複数のプローブでクエリされる。これにより、その試料から抽出できる情報量が増加する。マルチプレックスPCRにより、試料および材料の大幅な節約を実現することができる。この方法の有用性を高めるために、遺伝子特異的プライマーおよびプローブのいくつかの対を使用して、複数の標的配列を同時に増幅および測定するマルチプレックスPCRが開発された。マルチプレックスPCRは、次の利点を提供する。1)効率:マルチプレックスPCRは、いくつかのPCRアッセイを単一の反応に組み合わせることによって、試料材料を節約し、ウェル間のばらつきを回避するのに役立つ。多重化により、感度を損なうことなく複数のアリコートに分割できない稀な標的を含む試料など、限られた試料をより効率的に利用する。2)経済性:標的が一斉に増幅されても、蛍光シグナルに基づいて増幅を区別するために、独自のレポーター染料を備えた遺伝子特異的プローブを使用することによって、各々が独立して検出される。一旦最適化されると、マルチプレックスアッセイは、独立して増幅される同じアッセイよりも費用効果が高くなる。
【0013】
しかしながら、現在、単一のマルチプレックスPCRアッセイで分析できる標的の数には制限がある。マルチプレックスPCRの実験計画は、単一反応の場合よりも複雑である。個々の標的を検出するために使用されるプローブは、別個のスペクトルを持つ独自のレポーター染料を含んでいなければならない。リアルタイム検出システムの励起フィルターおよび発光フィルターの設定は、メーカーによって異なる。したがって、実験の最適化プロセスの一環として、各染料について機器を較正しなければならない。したがって、マルチプレックスPCRアッセイの開発における1つの制限は、単一の反応で効果的に測定できるフルオロフォア、したがってプローブの数である。例えば、マルチプレックスPCRでは、異なる蛍光レポーター間のシグナルクロストークが定量化を損なうか、または偽陽性を引き起こす可能性がある。したがって、最小限のスペクトルのオーバーラップでフルオロフォアを選択することが不可欠である。追加として、フルオロフォア、特にそれらの発光スペクトルおよび励起スペクトルは、使用されるPCR機器、特に各フィルターセットのバンドパス仕様とも互換性がなければならない。
【0014】
追加として、十分にクエンチするプローブを使用することによって、シグナルのクロストークを最小限に抑えることも重要である。蛍光プローブを設計するときは、検出化学の種類を考慮して、フルオロフォアおよびクエンチャーの対に互換性があることを確認する必要がある。さらに、多重化反応を設計するときは、異なる標的のフルオロフォアとクエンチャーとの間のスペクトルのオーバーラップを最小限に抑えて、考えられるクロストークの問題を回避すべきである。以前は、TaqManプローブの最も一般的な染料/クエンチャーの組み合わせの1つは、TAMRAクエンチャーを備えたFAMフルオロフォアであった。今日、「ダーククエンチャー」は、TAMRAのような蛍光クエンチャーに大きく取って代わった。ダーククエンチャーは、フルオロフォアから吸収するエネルギーを、異なる波長の光ではなく熱として放出する。「ダーククエンチャー」はバックグラウンドが低い結果をもたらす傾向があり、クエンチャーからの放出光がレポーター染料のうちの1つとのクロストークシグナルを生成するのを避けることが重要であるマルチプレックス反応で特に有用である。したがって、非常に効率的な「ダーククエンチャー」は、バックグラウンド蛍光を大幅に低減し、感度およびエンドポイントシグナルの増加につながる。同じチューブ内にいくつかのフルオロフォアがあるとバックグラウンド蛍光が高くなるため、これはマルチプレックス反応に特に有用である。
【0015】
一般に、マルチプレックスPCR反応は、4つのプローブの組み合わせに制限されており、デュプレックス反応の場合、最も一般的な組み合わせは、FAMおよびHEX(JOE/VIC(登録商標))であり、トリプレックスの場合、FAM、HEX(JOE/VIC(登録商標))、およびCy5またはNED、FAM、およびVIC(登録商標)であり、クアドリプレックスの場合、FAM、HEX(JOE/VIC(登録商標))、Texas Red(登録商標)、およびCy5染料、またはFAM、VIC(登録商標)、ABY、およびJUNである。これまで、ほとんどのマルチプレックスPCR機器は、4つの独自の染料クエンチャー対しか利用できなかった。しかしながら、これらの機器の多くは、より高いレベルの多重化、例えば5プレックスおよび6プレックスPCRを実施する光学能を有している。
【0016】
したがって、5プレックスおよび6プレックスのマルチプレックスPCRアッセイでの使用など、4つのスペクトルチャネル(すなわち、4プレックス)のみの使用を超えたマルチプレックス反応を可能にする独自のフルオロフォア/クエンチャーの組み合わせを含む追加のプローブを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0017】
一態様では、本明細書において、一般式Ia、式Ib、式Ic、または式Idを有する染料、一般式IIを有するクエンチャー、染料およびクエンチャーを結合するリンカーの共有結合的コンジュゲーションの産生物を含むプローブが提供される。一実施形態では、リンカーは、オリゴヌクレオチドであるか、またはオリゴヌクレオチドを含む。
【0018】
式Ia、Ib、Ic、およびIdは、次のとおりである。
【化1-1】
【化1-2】
R
4、R
13およびR
14、ならびに存在する場合のR
3の各々は、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO
3を有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、置換ベンジルは、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、置換ベンジルは、リンカーLを介して結合された安息香酸塩である。R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22の各々は、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択される。R
2およびR
12の各々は、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択される。Xは、-OH、-SH、-NH
2、-NH-NH
2、-F、-Cl、-Br、I、-O-NHS(ヒドロキシスクシンイミジル/スルホスクシンイミジル)、-O-TFP(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-ベンゾトリアゾール、-ベンゾトリアゾール、-NR-L-OH、-NR-L-O-ホスホルアミダイト、-NR-L-SH、-NR-L-NH
2、-NR-L-NH-NH
2、-NR-L-CO
2H、-NR-L-CO-NHS、-NR-L-CO-STP、-NR-L-CO-TFP、-NR-L-CO-ベンゾトリアゾール、-NR-L-CHO、-NR-L-マレイミド、NH(CH
2CH
2O)
zCH
2CH
2N
3、および-NR-L-NH-CO-CH
2-Iからなる群から選択され、Rは、-Hまたは脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、zは、1以上5以下の整数であり、Lは、少なくとも1個の酸素原子および/または硫黄原子で任意に置換された二価の直鎖、交差(crossed)、または環状アルキル基からなる群から選択される。一実施形態では、Xは、アジド(N
3)含有基である。一実施形態では、アジド含有基は、末端アジドを有する脂肪族リンカーを含む。一実施形態では、末端アジドを有する脂肪族リンカーは、NH-CH
2-CH
2-CH
2-N
3またはNH
2-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH
2-N
3から選択される。上記の化合物は、対イオンKatをさらに含み、これは、シアニンによってもたらされる負の電荷を補償するために必要な数の、Na
+、K
+、Ca
2+、アンモニア、または他のカチオン(複数可)である。式では、mは、0以上5以下の整数であり、nは、1以上3以下の整数であり、oは、0以上12以下の整数であり、pは、0以上5以下の整数である。
【0019】
【0020】
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々は、同じかまたは異なり、独立して、HまたはSO
3のいずれかから選択される。Zは、ORであり、Rは、Hまたはアルキル、またはNH-Lであり、Lは、
【化3】
であり、Yは、Hまたは固体支持体への結合のいずれかである。
【0021】
本明細書で提供される別の態様は、アジド誘導体化染料またはクエンチャーを使用して生体分子を染料および/またはクエンチャーとコンジュゲートまたは標識して、Cuを含まない「クリック反応」によりシクロオクチン部分を有する生体分子を標識する方法である。一実施形態では、生体分子は、オリゴヌクレオチドである。一実施形態では、シクロオクチン部分は、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)である。一実施形態では、コンジュゲートまたは標識するための方法は、本明細書に記載されるようなプローブをもたらす。
【0022】
本明細書で提供される別の態様は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)などによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって試料中の標的核酸分子を検出または定量化する方法である。一実施形態では、方法は、(i)1つ以上の標的核酸分子を含む試料を、a)標的核酸分子に特異的な配列である、本明細書に記載されるものなどの少なくとも1つのプローブであって、1つ以上の標的核酸分子の増幅時に蛍光の検出可能な変化を受ける、少なくとも1つのプローブ、およびb)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマー対と接触させることと、(ii)1つ以上の標的核酸分子を増幅するのに十分な条件下で、ステップ(i)の混合物をDNAポリメラーゼとともにインキュベートすることと、(iii)プローブの蛍光を測定することによって、増幅された標的核酸分子の有無を検出するか、またはその量を定量化することと、を含む。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、5´エキソヌクレアーゼ活性を含む。いくつかの他の実施形態では、DNAポリメラーゼは、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、プローブは、TaqManプローブなどの加水分解プローブである。
【0023】
本明細書で提供される別の態様は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)などのPCR用のキットである。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載されるものなどのプローブ、PCRを行うための説明書、ならびに以下:緩衝剤、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、有機溶媒、酵素、酵素補因子、および酵素阻害剤のうちの1つ以上を含む。別の実施形態では、PCR用のキットは、記載される染料および/またはクエンチャー部分、オリゴヌクレオチドなどの生体分子に染料および/またはクエンチャー部分をコンジュゲートまたは標識するための説明書、PCRを行うための説明書、ならびに以下:緩衝剤、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、有機溶媒、酵素、酵素補因子、および酵素阻害剤のうちの1つ以上を含む。
【0024】
なおもさらなる態様では、本明細書では、PCRで使用される他の成分とともに、記載されるプローブを含むPCR用の「マスターミックス」などの組成物が提供される。いくつかの実施形態では、マスターミックスは、PCRで使用する前に3倍未満の希釈、例えば2倍希釈、1.5倍希釈、1.2倍希釈などを必要とするように調製される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
加水分解プローブアッセイは、PCR中に標識されたプローブを切断するように、Taqなどのある特定のDNAポリメラーゼの5´エキソヌクレアーゼ活性を利用する。加水分解プローブの1つの具体的な例は、TaqManプローブである。一実施形態では、加水分解プローブは、プローブの5´末端にレポーター染料およびプローブの3´末端にクエンチャー部分を含む。PCR反応中、プローブの切断は、レポーター染料およびクエンチャー部分を分離し、レポーターの蛍光の増加をもたらす。PCR産物の蓄積は、レポーター染料の蛍光の増加をモニタリングすることによって直接検出される。プローブが無傷である場合、レポーター染料がクエンチャー部分に近接しているため、主にフェルスター型エネルギー移動によってレポーター蛍光が抑制される(Forster,1948、Lakowicz,1983)。PCR中に、対象の標的が存在する場合、プローブは、フォワードプライマー場とリバースプライマー場との間を特異的にアニーリングする。例えば、Taq DNAポリメラーゼの5´から3´への核酸分解活性は、プローブが標的にハイブリダイズする場合にのみ、レポーターとクエンチャーとの間でプローブを切断する。次いで、プローブ断片が標的から移動し、鎖の重合が継続する。プローブの3´末端は、PCR中のプローブの伸長を防ぐためにブロックされている。このプロセスは、連続したサイクルで発生し、製品の指数関数的な蓄積を干渉しない。
【0026】
これらのパラメータに縛られることなく、TaqManプローブおよびプライマーを設計するための一般的なガイドラインは、次のとおりである。プライマーをプローブにできるだけ近づけて、但しオーバーラップしないように設計する。プローブのTmは、プライマーのTmよりも約10℃高くなければならない。プローブにG塩基よりも多くのC塩基を与える鎖を選択する。プライマーの3´末端における5つのヌクレオチドは、2つ以下のG塩基および/またはC塩基を有する必要があり、反応は、アニーリングおよび伸長を伴う2ステップの熱プロファイルで、同じ温度60℃で実行する必要がある。
【0027】
この開示の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「試料」は、核酸を含有する、または含有すると推定される任意の物質を指し、細胞の試料、組織の試料、または個体(複数可)から単離された流体試料を含み得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「PCR」は、特に定義されていない限り、シングルプレックスまたはマルチプレックスPCRアッセイを指し、リアルタイムまたは定量的PCR(増幅中に検出が行われる場合)、エンドポイントPCR(増幅の終了時に検出が行われる場合)、または逆転写PCRであり得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、プライマー、プローブ、検出されるオリゴマー断片、オリゴマー対照、および非標識ブロッキングオリゴマーを指し、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)、およびプリンもしくはピリミジン塩基、または修飾されたプリンもしくはピリミジン塩基のN-グリコシドである他のタイプのポリヌクレオチドに対する総称とする。「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語の長さの間に意図された区別はなく、これらの用語は互換的に使用される。「核酸」、「DNA」、「RNA」、および同様の用語はまた、核酸類似体を含み得る。本明細書に記載されるオリゴヌクレオチドは、必ずしも任意の既存または天然の配列から物理的に導出されるものではないが、化学合成、DNA複製、逆転写、またはそれらの組み合わせを含む任意の方法で生成され得る。
【0031】
2つの異なる非オーバーラップ(またはいくらか部分的にオーバーラップした)オリゴヌクレオチドが、同じ直鎖状相補的核酸配列の異なる領域にアニーリングし、一方のオリゴヌクレオチドの3´末端がもう一方の5´末端を指す場合、前者は「上流」オリゴヌクレオチドと呼ばれ、後者は「下流」オリゴヌクレオチドと呼ばれ得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「標的配列」、「標的核酸」、「標的核酸配列」、および「対象の核酸」という用語は互換的に使用され、増幅、検出、またはその両方が行われる所望の領域を指す。
【0033】
本明細書で使用される「プローブ」は、蛍光レポーター染料およびクエンチャー部分に結合された伸長不可能なオリゴヌクレオチドである。
【0034】
本明細書で使用される場合、「プライマー」は、複数のプライマーを指すことができ、天然に存在するか、または合成的に産生されたかにかかわらず、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼなどの重合剤の存在下、好適な温度で十分な時間にわたって、また緩衝剤の存在下に置かれたとき、合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを指す。そのような条件は、例えば、好適な緩衝液(「緩衝液」は補因子である置換基、またはpH、イオン強度などに影響する置換基を含む)中の、好適な温度における、少なくとも4つの異なるデオキシリボヌクレオシド三リン酸(G、C、A、およびTなど)およびDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素などの重合誘導剤の存在を含み得る。いくつかの実施形態では、プライマーは、増幅における最大効率のために一本鎖であり得る。本明細書におけるプライマーは、増幅されるべき各特定の配列の異なる鎖に実質的に相補的であるように選択される。これは、プライマーがそれぞれの鎖とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならないことを意味する。非相補的ヌクレオチド断片は、プライマーの5´末端に結合され得、プライマー配列の残りの部分は、標的核酸の標的領域に相補的または部分的に相補的である。一般的に、プライマーは、非相補的ヌクレオチドが、記載されるようなプライマー末端などの所定の配列位置に存在し得る場合を除いて、相補的である。
【0035】
核酸配列の相補体は、本明細書で使用される場合、ある配列の5´末端が、他の配列の3´末端と対になるように核酸配列と整列させたとき、「逆平行の会合」であるオリゴヌクレオチドを指す。相補性は完全である必要はない。安定した二重鎖が、ミスマッチ塩基対また不適合塩基を含み得る。
【0036】
核酸二重鎖の安定性は、融解温度または「Tm」によって測定される。指定された条件下の特定の核酸二重鎖のTmは、塩基対の半分が解離した温度である。
【0037】
「に相補的」という用語は、本明細書では、別の特定のヌクレオチドと塩基対を形成することができるヌクレオチドに関して使用される。したがって、例えば、アデノシンは、ウリジンまたはチミジンに相補的であり、グアノシンは、シチジンに相補的である。
【0038】
「同一の」という用語は、2つの核酸配列が、同じ配列または相補的な配列を有することを意味する。
【0039】
「増幅」は、本明細書で使用される場合、核酸配列の混合物内の特定の核酸配列の濃度を増加させるための任意の増幅手順の使用を示す。
【0040】
「核酸合成」とも称され得る「重合」は、ポリメラーゼおよびテンプレート核酸の使用を通じてプライマーの核酸配列を伸長するプロセスを指す。
【0041】
「標識」という用語は、本明細書で使用される場合、検出可能な(例えば、定量可能な)シグナルを提供するために、または提供を助けるために使用することができ、核酸またはタンパク質に結合させることができる任意の原子または分子を指す。標識は、蛍光、放射能、比色分析、重力測定、磁気、酵素活性などによって検出可能なシグナルを提供することができる。蛍光によって検出可能なシグナルを提供する標識は、本明細書では「フルオロフォア」または「レポーター染料」または「染料」とも称される。
【0042】
「隣接する」または「実質的に隣接する」という用語は、本明細書で使用される場合、テンプレート核酸のその相補鎖上の2つのオリゴヌクレオチドの位置付けを指す。2つのオリゴヌクレオチドは、0~約60ヌクレオチド、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドによって分離され得る。0ヌクレオチドギャップは、2つのオリゴヌクレオチドが、互いに直接隣接していることを意味する。言い換えると、2つのオリゴヌクレオチドによってハイブリダイズされた2つのテンプレート領域は隣接していることがあり、すなわち2つのテンプレート領域の間にギャップがない。あるいは、オリゴヌクレオチドによってハイブリダイズされた2つのテンプレート領域は、1~約60ヌクレオチドだけ離れていてもよい。
【0043】
「オーバーラップする」という用語は、本明細書で使用される場合、テンプレート核酸のその相補鎖上の2つのオリゴヌクレオチドの配置を指す。2つのオリゴヌクレオチドは、1~約40ヌクレオチド、例えば、約1~10ヌクレオチドだけオーバーラップしている場合がある。言い換えれば、オリゴヌクレオチドによってハイブリダイズされた2つのテンプレート領域は、両方のオリゴヌクレオチドに相補的である共通の領域を有し得る。
【0044】
「熱的にサイクルする」、「熱サイクリング」、「熱サイクル(複数可)」、または「サーマルサイクル」という用語は、全変性温度からアニーリング(またはハイブリダイズ)温度まで、伸長温度まで、および全変性温度に戻る温度変化の繰り返しサイクルを指す。これらの用語はまた、アニーリング温度と伸長温度とを1つの温度に組み合わせた、変性温度および伸長温度の繰り返しサイクルも指す。全変性温度は、すべての二本鎖断片を一本鎖にほどく。アニーリング温度は、プライマーが核酸テンプレートの分離された鎖の相補的配列にハイブリダイズまたはアニーリングすることを可能にする。伸長温度により、アンプリコンの新生DNA鎖の合成が可能になる。「1周の熱サイクリング」という用語は、1周の変性温度、アニーリング温度、および伸長温度を意味する。1周の熱サイクリングでは、例えば、アニーリング温度および伸長温度の内部繰り返しサイクルがあり得る。例えば、1周の熱サイクリングは、変性温度、アニーリング温度(すなわち、第1のアニーリング温度)、伸長温度(すなわち、第1の伸長温度)、別のアニーリング温度(すなわち、第2のアニーリング温度)、および別の伸長温度(すなわち、第2の伸長温度)を含み得る。
【0045】
「反応混合物」、「増幅混合物」、または「PCR混合物」という用語は、本明細書で使用される場合、核酸テンプレートから少なくとも1つのアンプリコンを増幅するのに必要な成分の混合物を指す。混合物は、ヌクレオチド(dNTP)、熱安定性ポリメラーゼ、プライマー、および複数の核酸テンプレートを含み得る。混合物は、トリス緩衝液、一価の塩、および/またはMg2+をさらに含み得る。各成分の使用濃度範囲は、当該技術分野で周知であり、当業者が必要に応じてさらに最適化することができる。
【0046】
「マスターミックス」という用語は、試料特異的ではない、リアルタイムPCR反応のためのすべての成分を含む、事前に混合された濃縮溶液である。マスターミックスは、通常、PCR用に最適化された緩衝液に、熱安定性DNAポリメラーゼ、dNTP、MgCl2、および独自の添加剤を含む。
【0047】
「増幅産物」または「アンプリコン」という用語は、PCRなどの増幅方法において一対のプライマーを使用してポリメラーゼによって増幅されたDNAの断片を指す。
【0048】
本明細書において定義される場合、「5´→3´エキソヌクレアーゼ活性」または「5´から3´のエキソヌクレアーゼ活性」、または「5´エキソヌクレアーゼ活性」は、いくつかのDNAポリメラーゼに伝統的に関連し、それによってヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの5´末端から連続的な様式で除去される(すなわち、E.coli DNAポリメラーゼIは、この活性を有するが、Klenow断片は有しない)5´から3´のエキソヌクレアーゼ活性、または-5´端からの複数のホスホジエステル結合(ヌクレオチド)に対して切断が起こる5´から3´のエキソヌクレアーゼ活性のいずれか、または両方、あるいはDNA複製、組み換え、および修復中に産生された分岐状DNA構造である、分岐した分子をトリミングする相同5´-3´エキソヌクレアーゼ(5´エキソヌクレアーゼとしても知られる)の群を含む、切断反応の活性を指す。いくつかの実施形態では、そのような5´エキソヌクレアーゼを、標的核酸配列にアニーリングされた標識オリゴヌクレオチドプローブの切断に使用することができる。
【0049】
レポーター(または蛍光)染料、すなわちフルオロフォア、およびクエンチャー化合物に関する以下の説明は、記載されるプローブの構築に関する一般情報を提供する。本明細書に記載されるように、レポーター染料およびクエンチャー化合物は、リンカーを介して互いに共有結合することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、オリゴヌクレオチドであるか、またはオリゴヌクレオチドを含む。
【0050】
レポーター染料
いくつかの実施形態では、フルオロフォアとも称されるレポーター染料は、修飾されたカルボシアニン染料であってよい。例えば、これらの化合物は、少なくとも1つの置換されたインドリウム環系を有し得、インドリウム環の3炭素上の置換基は、化学的に反応性の基またはコンジュゲートされた物質を含む。他の例示的な化合物は、アザベンザゾリウム環部分および少なくとも1つのスルホネート部分を組み込んでいる。
【0051】
カルボシアニン染料は、典型的には、次の式に従って、ポリメチンリンカーによって一緒に結合された2つの複素環系を含み、
A-BRIDGE-B
式中、Aは、任意に1つ以上の窒素原子(アザベンザゾリウム環)を組み込んだ置換ベンザゾリウム環である第1の複素環系であり、Bは、置換ベンザゾリウムまたはアザベンザゾリウム環である第2の複素環系であり、BRIDGEは、任意に置換されたポリメチンリンカーである。第1および第2の環系、ならびにポリメチンリンカーは、任意に、様々な置換基によってさらに置換されるか、または任意にさらに置換される追加の環に縮合される。一態様では、カルボシアニン染料は、インドリウム環系の炭素3に結合されている化学反応性基またはコンジュゲートされた物質を含む。一実施形態では、カルボシアニン染料は、スルホまたはスルホアルキルによってさらに1回以上置換される。
【0052】
「スルホ」とは、スルホン酸、またはスルホン酸の塩(スルホネート)を意味する。同様に、「カルボキシ」とは、カルボン酸またはカルボン酸の塩を意味する。「ホスフェート」は、本明細書で使用される場合、リン酸のエステルであり、ホスフェートの塩を含む。「ホスホネート」は、本明細書で使用される場合、ホスホン酸であり、ホスホネートの塩を含む。本明細書で使用される場合、別途指定されない限り、置換基のアルキル部分、例えばアルキル、アルコキシ、アリールアルキル、アリルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、またはペルフルオロアルキルは、任意に、飽和、不飽和、直鎖状または分岐状であり、すべてのアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノ置換基は、それら自体が任意に、カルボキシ、スルホ、アミノ、またはヒドロキシによってさらに置換される。
【0053】
いくつかの実施形態では、A部分は、以下の式を有し、
【化4】
式中、Yは、各環に6個の原子を有する1~2つの縮合芳香族環を形成するのに必要な原子を表し、原子は、-CH、-C、-CR
1、および-N(R
2)
βから選択され、各βは、0または1であり、各R
1は、独立して、-L-R
x;または-L-S
c;またはアミノ、スルホ、トリフルオロメチル、もしくはハロゲン;または任意にさらに置換されるC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルアミノ、C
2~C
12ジアルキルアミノである。縮合環上の1つ以上の非水素置換基の組み込みを使用して、得られる染料の吸収および発光スペクトルを微調整することができる。一実施形態では、少なくとも1つの非水素置換基、例えばスルホ、アルコキシ、またはハロゲンがあり、ハロゲンは、一実施形態では臭素である。
【0054】
一実施形態では、Xは、O、S、Se、またはNR5のうちの1つであり、R5は、H、または任意にヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、アミノ、1~6個の炭素を有するアルキルアミノ、もしくは2~12個の炭素を有するジアルキルアミノによって1回以上置換される、1~22個の炭素を有するアルキル基である。あるいは、Xは、O、S、または-CR3R4であり、R3およびR4は、同じでも異なっていてもよく、アルキルまたはアリールアルキルであり、任意にさらに置換される。一実施形態では、R3およびR4の各々は、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO3有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、置換ベンジルは、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、置換ベンジルは、リンカーLを介して結合された安息香酸塩である。例えば、R3は、-L-Rxまたは-L-Sc(以下で定義される)である。
【0055】
いくつかの実施形態では、置換基R2、R4、およびR12は、独立して、-L-Rx、または-L-Sc、またはC1~C22アルキル、またはC7~C22アリールアルキルであり、これらの各アルキル部分は、任意に、N、O、およびSから選択される最大6個のヘテロ原子を組み込み、各アルキル部分は、任意に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、ホスフェート、アミノ、サルフェート、ホスホネート、シアノ、ニトロ、アジド、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルアミノ、またはC2~C12ジアルキルアミノ、またはC3~C18トリアルキルアンモニウムによって1回以上置換されているか、あるいはR3およびR4を組み合わせて、-L-Rx、または-L-Scによって置換される5員または6員の飽和または不飽和環を完成させる。いくつかの実施形態では、R4は、任意に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、またはアミノによって1回以上置換される、1~6個の炭素を有するアルキルであり、例えば、R4は、メチルまたはエチルである。一態様では、R4は、メチルである。あるいは、R4は、R21と組み合わされて、以下に記載されるように、6員環を形成するか、またはR4は、R3と組み合わされて、飽和または不飽和環置換基を形成し、それは-L-Rxまたは-L-Scによって置換される。
【0056】
いくつかの実施形態では、R2およびR12は、独立して、非置換であるか、またはヒドロキシ、スルホ、カルボキシ、もしくはアミノによって1回置換されている、1~6個の炭素原子を有するアルキルである。R2またはR12のいずれかが、ヒドロキシ、スルホ、カルボキシ、またはアミノによって置換されている場合、置換基は、インドリウムまたは2~6個の炭素原子によって他のベンザゾリウム窒素原子から分離されていてもよい。R2およびR12が、非置換アルキル基である場合、それらは、メチルまたはエチルであってよい。いくつかの実施形態では、R2およびR12は、メチルである。典型的には、R2およびR12は同じであり、メチル、エチル、スルホプロピル、またはスルホブチルである。
【0057】
いくつかの実施形態では、B部分は、以下の式を有し、
【化5】
式中、Wは、各環に6個の原子を有する1~2つの縮合芳香族環を形成するのに必要な原子を表し、原子は、-CH、-C、-CR
1、および-N(R
12)
β´から選択され、各β´は、0または1であり、各R
1´は、独立して、-L-R
x;または-L-S
c;またはアミノ、スルホ、トリフルオロメチル、もしくはハロゲン;または各々が任意に、カルボキシ、スルホ、アミノ、もしくはヒドロキシによってさらに置換されるC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルアミノ、C
2~C
12ジアルキルアミノである。6員環が、アザベンザゾール環系を形成する場合、それらは、典型的には、1~3個の窒素原子または1~2個の窒素原子を組み込み、典型的には、アゾール環に縮合した第1の6員芳香族環に組み込まれる。一実施形態では、環系Wは炭素原子のみを含み、ベンザゾール環系である。
【0058】
AまたはBが、アザベンザゾリウムである場合、縮合した芳香族環は、典型的には、1~3個の窒素原子または1~2個の窒素原子を組み込み、典型的には、アゾール環に縮合した第1の6員芳香族環に組み込まれる。アザベンザゾール部分の実施形態には、限定されないが、以下の構造(および窒素がR
12によって四級化されている同等の構造)が含まれる。
【化6】
【0059】
YまたはWが窒素原子を含む場合、アザベンザゾール窒素原子の少なくとも1つは四級化され、形式正電荷をもたらす。一実施形態では、アゾール窒素原子は四級化されており、ベンゾ窒素原子は非置換である。いくつかの実施形態では、アゾール窒素原子は非置換であり、少なくとも1つのベンゾ窒素原子は四級化されている。典型的には、与えられたアザベンザゾール上のアゾール窒素は、1個だけ四級化されており、すなわち、αは0または1であり、βは0または1であり、α+すべてのβ=1であり、またδは0または1であり、β´は0または1であり、δ+すべてのβ´=1である。窒素原子は、同じ位置に炭素原子を有する染料と比較して、発光スペクトルをより長い波長にシフトする。追加の縮合6員環の存在は(上記の最後の構造のように)、波長をさらにシフトする。
【0060】
XおよびZ部分の選択もまた、染料の吸収および蛍光発光特性に影響を与える可能性がある。XおよびZは、任意に、同じかまたは異なり、得られる染料のスペクトル特性は、XおよびZを注意深く選択することによって調整することができる。一実施形態では、Zは、O、S、Se、またはNR15のうちの1つであり、R15は、H、または任意にヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、アミノ、1~6個の炭素を有するアルキルアミノ、もしくは2~12個の炭素を有するジアルキルアミノによって1回以上置換される、1~22個の炭素を有するアルキル基である。あるいは、Zは、O、S、または-CR13R14であり、R13およびR14は、同じでも異なっていてもよく、アルキルまたはアリールアルキルであり、任意にさらに置換される。典型的には、XおよびZは、それぞれ-CR3R4および-CR13R14である。
【0061】
Zが、-CR13R14である場合、置換基R13およびR14は、同じでも異なっていてもよく、独立して、-L-Rx、または-L-Sc、またはC1~C22アルキル、またはC7~C22アリールアルキルであり、これらの各アルキル部分は、任意に、N、O、およびSから選択される最大6個のヘテロ原子を組み込み、各アルキル部分は、任意に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、ホスフェート、アミノ、サルフェート、ホスホネート、シアノ、ニトロ、アジド、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルアミノ、またはC2~C12ジアルキルアミノ、またはC3~C18トリアルキルアンモニウムによって1回以上置換されている。一実施形態では、R13およびR14の各々は、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO3有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、置換ベンジルは、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、置換ベンジルは、リンカーLを介して結合した安息香酸塩である。あるいは、R13およびR14の組み合わせは、-L-Rx、もしくは-L-Scによって任意に置換される、5員もしくは6員の飽和もしくは不飽和環を完成させるか、またはR13もしくはR14は、メチン置換基と組み合わされて、下記のように環を形成する。いくつかの実施形態では、R13およびR14は、独立して、非置換であるか、またはヒドロキシ、スルホ、カルボキシ、もしくはアミノによって1回置換されている、1~6個の炭素原子を有するアルキルである。R13またはR14のいずれかが、ヒドロキシ、スルホ、カルボキシ、またはアミノによって置換されている場合、置換基は、いくつかの実施形態では、2~6個の炭素原子によってインドリウムまたは他のベンザゾリウム窒素原子から分離されていてもよい。一態様では、R13およびR14は、1~6個の炭素を有するアルキル、例えばメチルである。別の態様では、R13およびR14の一方はメチルであり、他方は、カルボキシによって、またはスルホによって、またはヒドロキシによって、または-L-Rxもしくは-L-Scによって置換される1~6個の炭素を有するアルキルである。
【0062】
いくつかの実施形態では、BRIDGE部分は、以下の式を有し、
【化7】
式中、aおよびbは、独立して、0または1である。アザカルボシアニン染料の一態様では、aまたはbのいずれかが1であり、両方ではない。複素環系の間のポリメチンブリッジの長さもまた、染料の吸収および発光特性に影響を与える。Zが、CR
13R
14であり、aおよびb=0であり、インドリウム複素環が、追加の環に縮合していない場合、得られる「インドカルボシアニン」染料は、典型的には、550nm付近に吸収極大を示す。a=1およびb=0の場合、「インドジカルボシアニン」は、典型的には、最大で650nm付近を吸収する。「インドトリカルボシアニン」染料は、aおよびbが両方とも1であり、典型的には、最大で750nm付近を吸収する。
【0063】
R21、R22、R23、R24、R25、R26、およびR27の各々は、存在する場合、独立して、H、F、Cl、1~6個の炭素を有するアルキル、1~6個の炭素を有するアルコキシ、アリールオキシ、N-ヘテロ芳香族部分、またはイミニウムイオンである。あるいは、2つの置換基R21、R22、R23、R24、R25、R26、およびR27は、組み合わされると、非置換であるか、または任意に1~6個の炭素、ハロゲン、もしくはカルボニル酸素を有する飽和もしくは不飽和アルキルによって1回以上置換される、4員、5員、または6員の飽和または不飽和炭化水素環を形成する。さらに別の実施形態では、R21は、R4と組み合わされて、任意に1~6個の炭素を有するアルキルによって置換される6員環を形成する。あるいは、R23(aおよびbが両方とも0である)、R25(a=1およびb=0)、またはR26(aおよびbが両方とも1である)は、R13およびR14のうちの1つと組み合わされて、任意に1~6個の炭素を有するアルキルによって置換される6員環を形成する。
【0064】
典型的には、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、およびR
27の各々は、存在する場合、Hである。R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、およびR
27のうちの1つが、非水素である場合、それは典型的には、BRIDGEの中心炭素上の置換基、すなわち、R
22(a=0およびb=0)、R
23(a=1およびb=0)、ならびにR
24(a=1およびb=1)である。同様に、BRIDGEが、4員、5員、または6員環を組み込む場合、それは典型的には、例えばペンタメチン染料について下記に示されるように、BRIDGE部分の中心で起こる。
【化8】
【0065】
一実施形態は、以下の式の化合物、
【化9】
およびその塩であり、式中、R
2、R
3、R
4、R
12、α、δ、W、Y、およびZは、先に定義されたとおりである。簡潔性のために、R
21~23は、独立して、R
21~27について先に定義されたとおりであり、n=1、2、または3である。nが>3である場合、染料は、さらに赤外領域にシフトしたスペクトルを有する。
【0066】
染料の別の実施形態は、以下の式を有する。
【化10】
置換基R
6~R
9は、独立して、H、1~6個の炭素を有するアルキル、1~6個の炭素を有するアルコキシ、アミノ、1~6個の炭素を有するアルキルアミノ、または2~12個の炭素を有するジアルキルアミノ、スルホ、カルボキシ、1~6個の炭素を有するペルフルオロアルキル、またはハロゲンから選択される。
【0067】
一態様では、AおよびBの両方は、以下の式によるベンザゾリウム環であり、
【化11】
式中、置換基R
16~R
19は、独立して、H、1~6個の炭素を有するアルキル、1~6個の炭素を有するアルコキシ、アミノ、1~6個の炭素を有するアルキルアミノ、または2~12個の炭素を有するジアルキルアミノ、スルホ、カルボキシ、1~6個の炭素を有するペルフルオロアルキル、またはハロゲンから選択される。
【0068】
ベンザゾリウム環のいずれかまたは両方に1つ以上の非水素置換基を組み込むことは、吸収および発光スペクトルを微調整するのに有用である。典型的には、ベンザゾリウム環の各々に少なくとも1つの非水素置換基、例えば、スルホ、アルコキシ、またはハロゲン置換基がある。典型的には、ベンゾ環の置換基は、Hまたはスルホである。一実施形態では、R6、R7、R8、およびR9のうちの1つ、またはR16、R17、R18、およびR19のうちの1つは、ピペリジンなどの、飽和5員または6員窒素複素環であるジアルキルアミノである。追加として、R6~R9およびR16~R19のうちのいずれか2つの隣接する置換基は、任意に組み合わされて1つ以上の縮合芳香族環を形成する。これらの追加の環は、任意に、R6~R9およびR16~R19について上記のように、特にスルホン酸によってさらに置換される。
【0069】
追加の縮合芳香族環を有するカルボシアニン染料の実施形態の選択された例を下記に示す(簡潔性のために、可能な置換基のうちのいくつかを除いてすべてが、最短のポリメチンブリッジを有する水素として示される)。
【化12】
これらの基本構造、およびそれらのより長い波長の類似体は、任意に、このセクションに記載されるようにさらに置換される。上記に具体的に示されていない追加の変形もまた、本開示の範囲内である。
【0070】
一態様では、カルボシアニン染料は、1回以上スルホン化される。染料がスルホによって置換されている場合、それはR7もしくはR17、または両方でスルホン化され得るか、あるいはR2もしくはR12、または両方でスルホアルキル化されるか、あるいはスルホン化およびスルホアルキル化される。典型的に、YまたはWの芳香族環が1個以上の窒素原子を含む場合、その環はスルホン化されない。一般に、市販の反応性カルボシアニン染料は、3回までスルホン化され(R7およびR17に対応する位置において、かつR2およびR12のうちの1つにおけるスルホアルキルとして)、反応性基の位置にR2およびR12のうちの1つを残す。対照的に、R3で反応性基(またはコンジュゲートされた物質)を結合することによって、カルボシアニン染料のある特定の実施形態を少なくとも4回(R7において、R17において、R2およびR12においてスルホアルキルとして)スルホン化することができる。この余分なスルホン化、ならびに結合部位の変化は、反応性染料および染料コンジュゲートをもたらし、これらはより明るく、水溶液中の溶解性が高く、染料-染料スタッキング相互作用から生じる蛍光クエンチングに対してより耐性がある。しかしながら、4つ以上のスルホン酸によるスルホン化は、染料がインドリウム環の3位置を介して連結されていない構造的に類似した染料よりも優れたスペクトル特性を有するために必要ない。
【0071】
さらに、染料のある特定の実施形態は、以下に記載されるように、1つ以上の化学的に反応性の基(-L-Rx)またはコンジュゲートされた物質(-L-SC)によって置換される。典型的には、-L-Rxまたは-L-SC部分は、R2、R3、R4、R13、またはR14において染料に結合される。あるいは、-L-Rxまたは-L-SCは、アザベンザゾリウム環、またはベンザゾリウム環の芳香族炭素原子において染料に結合することができる。実施形態では、R2およびR12のうちの1つ以上は、-L-Rxまたは-L-SCである。さらに別の実施形態では、R3、R4、R13、およびR14のうちの1つ以上は、-L-Rxまたは-L-SCである。あるいは、R21、R22、R23、R24、R25、R26、およびR27のうちの1つ以上が、-L-Rxまたは-L-SCである。一実施形態では、染料は、ただ1つの-L-Rxまたは-L-SCによって置換される。
【0072】
例示的な蛍光染料には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【化13】
【0073】
化合物の多くの実施形態は、全電子電荷を有する。そのような電子電荷が存在することが示される場合、それらが、明確に特定されている場合もされていない場合もある適切な対イオンKatの存在によって平衡化されていることを理解されたい。生物学的に適合性の対イオンは、生物学的用途に有毒ではなく、生体分子に実質的に有害な影響を及ぼさない。化合物が正に帯電している場合、対イオンは、典型的には、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、テトラアリールホウ化物、硝酸塩、および芳香族または脂肪族カルボン酸のアニオンから選択されるが、これらに限定されない。化合物が負に帯電している場合、対イオンは、典型的には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、アンモニウムもしく置換アンモニウム、またはピリジニウムイオンから選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、いずれの必要な対イオンも、生物学的に適合性であり、使用時に有毒ではなく、生体分子に実質的に有害な影響を及ぼさない。対イオンは、イオン交換クロマトグラフィーまたは選択的沈殿などの当該技術分野で周知の方法によって容易に変更され得る。
【0074】
本明細書で開示される染料は、1つまたは別の特定の電子共鳴構造に描かれていることを理解されたい。上記のすべての態様は、対象の染料上の電荷が染料自体の全体に非局在化されるため、他の許可された共鳴構造で形式的に描画された染料に等しく適用される。
【0075】
一実施形態では、染料は、複数のスルホネート基を含む。いくつかの実施形態では、染料は、染料を別の物質に結合するための反応性官能基またはその保護バージョンを含む。いくつかの実施形態では、染料は、保護形態で、例えば、当該技術分野で知られているように、自動核酸合成中にオリゴヌクレオチドなどの分子に染料をコンジュゲートするために使用できるホスホルアミダイト誘導体として提供される。本明細書に記載される代表的なカルボシアニン染料構造を以下に示す。
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【0076】
反応染料のコンジュゲート
一実施形態では、染料は、少なくとも1つの基-L-Rxを含み、Rxは、共有結合Lによって染料に結合される反応性基である。ある特定の実施形態では、染料をRxに結合する共有結合は、スペーサーとして機能する複数の介在原子を含む。反応性基(Rx)を有する染料は、好適な反応性を有する官能基を含むか、または含むように修飾された様々な有機または無機物質を標識し、-L-Scによって表されるコンジュゲートされた物質(Sc)の化学結合をもたらす。
【0077】
本明細書で使用される場合、「反応性基」は、異なる化合物の官能基と化学的に反応して共有結合を形成することができる化合物の部分を意味する。典型的には、反応性基は、求電子剤または求核剤であり、それぞれ求核剤または求電子剤である対応する官能基への曝露によって共有結合を形成することができる。あるいは、反応性基は光活性化可能な基であり、適切な波長の光での照射後にのみ化学的に反応性になる。典型的には、反応性染料とコンジュゲートされる物質との間のコンジュゲーション反応により、反応性基R
xの1つ以上の原子が、染料をコンジュゲートされた物質S
cに結合する新しい結合Lに組み込まれる。反応性基および結合の選択された例を下の表1に示し、求電子基と求核基との反応は、共有結合をもたらす。
【表1-1】
【表1-2】
【0078】
共有結合Lは、反応性基Rxまたはコンジュゲートされた物質Scを化合物に直接(Lは単結合である)または安定した化学結合の組み合わせで結合し、任意に、単結合、二重結合、三重結合、または芳香炭素-炭素結合、ならびに炭素-窒素結合、窒素-窒素結合、炭素-酸素結合、炭素-硫黄結合、リン-酸素結合、リン-窒素結合、および窒素-白金結合を含む。Lは、典型的には、エーテル、チオエーテル、カルボキサミド、スルホンアミド、尿素、ウレタン、またはヒドラジン部分を含む。例示的なL部分は、C、N、O、P、およびSからなる群から選択される1~20個の非水素原子を有し、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、カルボキサミド、スルホンアミド、ヒドラジド結合、および芳香族またはヘテロ芳香族結合の任意の組み合わせから構成される。いくつかの実施形態では、Lは、単一の炭素-炭素結合とカルボキサミド結合またはチオエーテル結合との組み合わせである。結合Lの最も長い線形セグメントは、1個または2個のヘテロ原子を含む、4~10個の非水素原子を含むことができる。Lの例には、置換または非置換ポリメチレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリーレンアルキル、またはアリールチオが含まれる。一実施形態では、Lは、1~6個の炭素原子を含む。別の実施形態では、Lは、チオエーテル結合を含む。さらに別の実施形態では、Lは、式-(CH2)d(CONH(CH2)e)z´-、または-(CH2)d(CON(CH2)4NH(CH2)e)z´-、-(CH2)d(CONH(CH2)eNH2)z´-、-(CH2)d(CONH(CH2)eNHCO)z´-であるか、またはそれを組み込み、dは、0~5であり、eは、1~5であり、z´は、0または1である。
【0079】
コンジュゲートされる物質に染料を結合させるために使用される反応性基の選択は、典型的には、コンジュゲートさせる物質上の官能基および所望の共有結合の種類または長さに依存する。有機または無機物質上に典型的に存在する官能基の種類には、アミン、アミド、アジド、チオール、アルコール、フェノール、アルデヒド、ケトン、ホスフェート、イミダゾール、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、二置換アミン、ハロゲン化物、エポキシド、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、プリン、ピリミジン、カルボン酸、オレフィン結合、またはこれらの基の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。単一の種類の反応性部位が、物質上で利用可能であり得る(多糖に典型的である)か、またはタンパク質に典型的であるように、様々な部位が生じ得る(例えば、アミン、チオール、アルコール、フェノール)。コンジュゲートされた物質は、同じかまたは異なり得る複数の染料にコンジュゲートされ得るか、またはビオチンなどのハプテンによって追加として修飾される物質にコンジュゲートされ得る。いくらかの選択性が反応条件を慎重に制御することによって得ることができるが、標識化の選択性は、適切な反応性染料の選択によって最も良好に得られる。
【0080】
典型的には、Rxは、アミン、チオール、アルコール、アルデヒド、またはケトンと反応するであろう。いくつかの実施形態では、Rxは、アミンまたはチオール官能基と反応する。一実施形態では、Rxは、アクリルアミド、反応性アミン(カダベリンもしくはエチレンジアミンを含む)、カルボン酸の活性化エステル(典型的には、カルボン酸のスクシンイミジルエステル)、アシルアジド、アシルニトリル、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、無水物、アニリン、ハロゲン化アリール、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン(ヒドラジドを含む)、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ホスホルアミダイト、ハロゲン化スルホニル、またはチオール基である。
【0081】
Rxが、カルボン酸の活性化エステルである場合、反応性染料は、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはハプテンの染料コンジュゲートを調製するために有用であり得る。Rxが、マレイミドまたはハロアセトアミドである場合、反応性染料は、チオール含有物質へのコンジュゲーションに有用であり得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、Rxは、カルボン酸、カルボン酸のスクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアネート、マレイミド基、脂肪族アミン、ペルフルオロベンズアミド、アジドペルフルオロベンズアミド基、またはソラレンである。いくつかの実施形態では、Rxは、カルボン酸のスクシンイミジルエステル、マレイミド、またはヨードアセトアミドである。一実施形態では、Rxは、カルボン酸のスクシンイミジルエステルである。
【0083】
いくつかの実施形態では、Rxは、アジドを含み、歪み促進アジド-アルキンクリック反応が用いられ、アジドとジベンゾシクロオクチンなどの歪み環状アルキンとの間に、選択的、生体直交性、および触媒なしのライゲーションが提供される。
【0084】
いくつかの実施形態では、Scは、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、または核酸ポリマーであり、アルキニル結合、アミノアリル結合などの染料の付着のための追加のリンカーもしくはスペーサー、またはヘテロ原子置換リンカー、または他の結合を有するように修飾されたものを含む。
【0085】
別の実施形態では、コンジュゲートされた物質は、非環式スペーサーを介してプリンまたはピリミジン塩基をホスフェート部分またはポリホスフェート部分に結合するヌクレオシドまたはヌクレオチド類似体である。
【0086】
別の実施形態では、染料は、典型的にはヒドロキシル基を介するが、恐らくはチオールまたはアミノ基も介して、ヌクレオチドまたはヌクレオシドの炭水化物部分にコンジュゲートされる。典型的には、コンジュゲートされたヌクレオチドは、ヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸またはジデオキシヌクレオシド三リン酸である。メチレン部分または窒素もしくは硫黄ヘテロ原子の、ホスフェートまたはポリホスフェート部分への組み込みもまた、有用であり得る。非プリン塩基および非ピリミジン塩基、例えば、7-デアザプリンおよびそのような塩基を含む核酸もまた、染料にカップリングされ得る。脱プリン化された核酸とアミン、ヒドラジド、またはヒドロキシルアミン誘導体との反応により調製された核酸付加物は、核酸を標識および検出する追加の手段を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーコンジュゲートは、標識、一本鎖もしくは多重鎖、天然もしくは合成DNAもしくはRNA、DNAもしくはRNAオリゴヌクレオチド、またはDNA/RNAハイブリッドであるか、あるいはモルホリン誘導体化ホスフェート(AntiVirals,Inc.,Corvallis Oreg.)またはN-(2-アミノエチル)グリシン単位などのペプチド核酸を組み込む。核酸が合成オリゴヌクレオチドである場合、それは、典型的には50個未満のヌクレオチド、より典型的には25個未満のヌクレオチドを含む。ペプチド核酸(PNA)のコンジュゲートは、それらの一般により速いハイブリダイゼーション速度のため、いくつかの用途に使用することができる。
【0088】
別の実施形態では、蛍光核酸ポリマーは、オリゴヌクレオチドでプライミングされたDNA重合を使用して、例えばポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって、またはプライマー伸長を介して、または核酸ポリマーの3´末端への標識ヌクレオチドの末端トランスフェラーゼ触媒付加によって、標識ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドから調製することができる。この実施形態では、蛍光RNAポリマーは、典型的には、転写により標識ヌクレオチドから調製される。典型的には、染料は、アミド、エステル、エーテル、もしくはチオエーテル結合により、1つ以上のプリンもしくはピリミジン塩基を介して結合されるか、またはエステル、チオエステル、アミド、エーテル、もしくはチオエーテルである結合によってホスフェートまたは炭水化物に結合されている。あるいは、染料コンジュゲートは、ビオチンもしくはジゴキシゲニンなどのハプテン、またはアルカリホスファターゼなどの酵素、または抗体などのタンパク質で同時に標識されてもよい。ヌクレオチドコンジュゲートは、DNAポリメラーゼによって容易に組み込まれ、in situハイブリダイゼーションおよび核酸配列決定に使用することができる。
【0089】
別の態様では、オリゴヌクレオチドは、脂肪族アミンを組み込んでもよく、これは続いてアミン反応性染料またはチオールまたはチオホスフェートにコンジュゲートされてもよく、これらは順にチオール反応性染料にコンジュゲートされてもよい。
【0090】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドおよび核酸ポリマーなどの生物学的ポリマーのコンジュゲートもまた、少なくとも第2の蛍光または非蛍光染料で標識されて、エネルギー移動対を形成する。一実施形態では、第2の非蛍光染料は、クエンチャーである。いくつかの態様では、標識されたコンジュゲートは、酵素基質として機能し、酵素加水分解がエネルギー移動を妨害する。より具体的には、一実施形態では、核酸ポリメラーゼの5´から3´のエキソヌクレアーゼ活性によりオリゴヌクレオチドが切断され、したがって、フルオロフォアおよびクエンチャーがそれらの近接位置から放出され、それにより、クエンチャーによるフルオロフォアに対するクエンチング効果が除去または実質的に除去される。
【0091】
クエンチャー
一実施形態では、クエンチャーは、芳香族またはヘテロ芳香族クエンチング部分Qによって1個以上のアミノ窒素原子で置換されている3-および/または6-アミノキサンテンの誘導体である。一実施形態では、記載されるクエンチング化合物は、典型的には、530nmを超える吸収極大を有し、観察可能な蛍光をほとんどまたは全く有さず、広範囲の蛍光を効率的にクエンチし、例えば、本明細書で開示されるようなフルオロフォアによって放出される。一実施形態では、クエンチング化合物は、置換ローダミンである。別の実施形態では、クエンチング化合物は、置換ロドールである。さらに別の実施形態では、クエンチャーは、化学的に反応性の化合物である。化学的に反応性のクエンチング化合物は、核酸などの生体分子を含む、様々な物質を標識するための有用性を有する。これらの標識された物質は、特にフルオロフォアと組み合わせて使用される場合、様々なエネルギー移動アッセイおよび適用に非常に有用である。
【0092】
本明細書で使用される場合、各クエンチング部分Qは、単一の共有結合によりアミノ窒素に結合された1~4個の縮合芳香族環またはヘテロ芳香族環を有する芳香族環系またはヘテロ芳香族環系である。Q部分が、完全に芳香族であり、ヘテロ原子を含まない場合、Qは、1~4個の縮合6員芳香族環を含む。Q部分が、ヘテロ芳香族である場合、Qは、O、N、およびSの任意の組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1個、最大4個のヘテロ原子を含む、少なくとも1つの5員または6員の芳香族複素環を組み込み、これは任意に、追加の6員芳香族環に縮合されるか、またはO、N、およびSの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個および最大3個のヘテロ原子を含む1つの5員または6員のヘテロ芳香族環に縮合される。
【0093】
一実施形態では、各Q部分は、単一の共有結合を介して、3-または6-アミノ窒素原子でキサンテン化合物に結合している。いくつかの実施形態では、アミノ窒素置換基は、組み合わされると、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピラジン、またはピペラジンである5員または6員の複素環を形成し、Q部分は、単結合を介してアミノ窒素に形式的に結合されるように、キサンテン窒素に隣接した結果として生じる複素環に縮合される。Q部分は、芳香族環またはヘテロ芳香族環のいずれかでアミノ窒素原子に結合され得るが、但し、その環の炭素原子に結合していることを条件とする。
【0094】
典型的には、Q部分は、置換または非置換フェニル、ナフチル、アントラセニル、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、またはベンズイミダゾールである。アミノ窒素置換基が、5員または6員の複素環を形成し、Q部分が、結果として生じる複素環に縮合される場合、複素環は、典型的にはピロリジン環であり、Q部分は、典型的には縮合6員芳香族環である。いくつかの実施形態では、Qは、フェニルまたは置換フェニルである。
【0095】
様々な実施形態では、各Q部分は、任意にかつ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、スルホ、スルホのアルカリもしくはアンモニウム塩、カルボキシ、カルボキシのアルカリもしくはアンモニウム塩、ニトロ、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアルキルアミドによって置換される。
【0096】
一実施形態では、クエンチング化合物は、以下の式を有し、
【化15】
式中、K部分は、OまたはN
+R
18R
19である。
【0097】
すべてのクエンチング化合物について、R8、R9、R18、およびR19のうちの少なくとも1つは、Q部分である。あるいは、R9と組み合わせたR8またはR19と組み合わせたR18のいずれかは、ピペリジンである飽和5員もしくは6員複素環、またはQ部分に縮合されたピロリジンを形成する。典型的には、R8およびR9のうちの1つならびにR18およびR19のうちの1つは、各々同じかまたは異なるQ部分である。別の実施形態では、R8、R9、R18、およびR19の各々は、同じでも異なっていてもよいQ部分である。
【0098】
R8、R9、R18、およびR19の残りの部分は、独立して、H、C1~C6アルキル、C1~C6カルボキシアルキル、C1~C6スルホアルキル、C1~C6カルボキシアルキルの塩、または、C1~C6スルホアルキルの塩であり、ここでアルキル部分は、任意に、アミノ、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC1~C6アルキルのカルボン酸エステルによって置換される。あるいは、R9と組み合わせたR8、またはR19と組み合わせたR18、または両方が、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピラジン、またはピペラジンである飽和5員または6員の複素環式環を形成する場合、これは任意に、メチル、スルホン酸、スルホン酸の塩、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC1~C6アルキルのカルボン酸エステルによって置換される。あるいは、R2と組み合わせたR8、R3と組み合わせたR9、R4と組み合わせたR18、またはR5と組み合わせたR19のうちの1つ以上は、5員または6員環を形成し、これは飽和または不飽和であり、任意に、1つ以上のC1~C6アルキルまたは-CH2SO3X(Xは、Hまたは対イオンである)によって置換される。
【0099】
一実施形態では、R1およびR6は、Hであるか、またはR2と組み合わせたR1もしくはR5と組み合わせたR6のうちの1つ以上は、縮合6員芳香族環である。
【0100】
一実施形態では、置換基R2、R3、R4、およびR5は、独立して、H、F、Cl、Br、I、CNであるか、またはC1~C18アルキル、もしくはC1~C18アルコキシであり、各アルキルまたはアルコキシは、任意に、F、Cl、Br、I、カルボン酸、カルボン酸の塩、もしくはC1~C6アルコール、または-SO3Xによってさらに置換される。
【0101】
一実施形態では、ペンダント基R
10は、H、CN、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC
1~C
6アルコールのカルボン酸エステルである。あるいは、R
10は、飽和または不飽和、分岐状または非分岐状のC
1~C
18アルキルであり、これは任意に、F、Cl、Br、カルボン酸、カルボン酸の塩、C
1~C
6アルコールのカルボン酸エステル、-SO
3X、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノによって1回以上置換され、このアルキル基は、1~6個の炭素を有する。別の実施形態では、R
10は、以下の式を有し、
【化16】
式中、R
12、R
13、R
14、R
15、およびR
16は、独立して、H、F、Cl、Br、I、-SO
3X、カルボン酸、カルボン酸の塩、CN、ヒドロキシ、アミノ、ヒドラジノ、アジド、またはC
1~C
18アルキル、C
1~C
18アルコキシ、C
1~C
18アルキルチオ、C
1~C
18アルカノイルアミノ、C
1~C
18アルキルアミノカルボニル、C
2~C
36ジアルキルアミノカルボニル、C
1~C
18アルキルオキシカルボニル、もしくはC
7~C
18アリールカルボキシアミドであり、このアルキルまたはアリール部分は、任意に、F、Cl、Br、I、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸の塩、C
1~C
6アルコールのカルボン酸エステル、-SO
3X、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアルコキシによって1回以上置換され、各々のアルキル部分は、1~6個の炭素を有する。あるいは、一対の隣接する置換基R
13およびR
14、R
14およびR
15、またはR
15およびR
16は組み合わされて、カルボン酸またはカルボン酸の塩によって任意にさらに置換された縮合6員芳香族環を形成する。
【0102】
化合物は、任意に、上で詳細に説明されるように、共有結合Lによって化合物に結合される反応性基(Rx)またはコンジュゲートされた物質(Sc)によって置換される。典型的には、化合物は、-L-Rxまたは-L-Sc部分によって、R8、R9、R12、R13、R14、R15、R16、R18、もしくはR19のうちの1つ以上において、例えば、R12~R16のうちの1つにおいて、またはR12、R14もしくはR15において、またはQ部分上の置換基として置換される。あるいは、-L-Rxまたは-L-Sc部分は、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、またはアルキルアミノ置換基上の置換基として存在する。一実施形態では、R8、R9、R12、R13、R14、R15、R16、R18、またはR19のうちの1つのみが、-L-Rxまたは-L-Sc部分である。別の実施形態では、R12、R13、R14、R15、またはR16のうちの1つのみが、-L-Rxまたは-L-Sc部分である。一実施形態では、R12、R14、およびR15-のうちの1つは、-L-Rxまたは-L-Sc部分である。
【0103】
K部分がN
+R
18R
19である実施形態では、化合物は、ローダミンであり、以下の式を有し、
【化17】
【0104】
式中、R8、R9、R18およびR19のうちの少なくとも1つは、Q部分である。いくつかの実施形態では、R8およびR9のうちの少なくとも1つは、Q部分であり、R18およびR19のうちの少なくとも1つは、Q部分であり、これらは同じでも異なっていてもよい。
【0105】
K部分がOである実施形態では、化合物は、ロドールであり、以下の式を有し、
【化18】
式中、R
8およびR
9のうちの少なくとも1つは、Q部分である。
【0106】
一実施形態では、本化合物は、以下の式を有し、
【化19】
式中、Jは、O-R
7またはNR
18R
19であり、R
1~R
19の各々は、上記で定義されるとおりである。
【0107】
クエンチング化合物の前駆体は、典型的には、上記のクエンチング化合物のように、環系の芳香族性が回復しない限り、または回復するまで、クエンチャーとして機能しない。これらの前駆体では、R7は、H、C1~C6アルキル、C1~C6カルボキシアルキル、C1~C6スルホアルキル、C1~C6カルボキシアルキルの塩、またはC1~C6スルホアルキルの塩であり、アルキル部分は、任意に、アミノ、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC1~C6アルキルのカルボン酸エステルによって置換される。あるいは、R7は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、またはグリコシドなどの単糖もしくは多糖からヒドロキシ基を除去することによって形式的に導出された一価ラジカルである。
【0108】
一実施形態では、R10は、先に定義されたとおりであり、R11は、H、ヒドロキシ、CN、または1~6個の炭素を有するアルコキシである。あるいは、R10はR11と組み合わせて、5員または6員スピロラクトン環を形成するか、あるいはR11は、R12と組み合わせて、5員もしくは6員スピロラクトン環、または5員もしくは6員スルホン環を形成する。
【0109】
これらの前駆体化合物は、化学的、酵素的、または光分解的手段によって、完全にコンジュゲートされたクエンチング化合物に容易に変換される。典型的には、無色の前駆体は、-L-Rx部分によって置換されるか、または所望の物質(Sc)にコンジュゲートされる。
【0110】
例示的なクエンチャー化合物には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【化20】
【0111】
一実施形態では、クエンチャーは、以下である。
【化21】
【0112】
一実施形態では、クエンチャーは、例えば、以下のような1つ以上のスルホネートまたはSO
3H置換基を含む。
【化22】
【0113】
反応性化合物のコンジュゲート
一実施形態では、化合物(クエンチング化合物または前駆体化合物)は、少なくとも1つの基-L-Rxによって置換され、Rxは、染料について上で詳細に説明されたように、共有結合Lによって化合物に結合される反応性基である。反応性基(Rx)を有する化合物は、好適な反応性を有する官能基を含むか、または含むように修飾された様々な有機または無機物質を標識し、-L-Scによって表されるコンジュゲートされた物質(Sc)の化学結合をもたらす。
【0114】
一実施形態では、コンジュゲートされた物質(Sc)は、保護または修飾されたものを含む、天然または合成の核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、または核酸ポリマーであり、化合物の結合、例えば、アルキニル結合、アミノアリル結合、または他の結合のための追加のリンカーまたはスペーサーを有する。いくつかの実施形態では、コンジュゲートされたヌクレオチドは、ヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸またはジデオキシヌクレオシド三リン酸である。
【0115】
一般に、自動DNAシンセサイザーを使用して染料を核酸の上に組み込むことが好ましいが、アミダイト形態で利用できないか、または過酷な切断/脱保護(C/D)条件に耐えられない染料は、合成後にそれらのNHSエステル誘導体を介してアミン官能化オリゴヌクレオチドに日常的に導入される。しかしながら、そのような標識反応は、通常、合成からの残留アミン不純物の加水分解およびアミノ分解を含む競合する副反応のために、大過剰の染料-NHSエステル、例えば、核酸相当物よりもモル等量で10~20倍を必要とする。
【0116】
これに鑑みて、本発明者らは、アジド誘導体化染料を使用して、非常に効率的なCuを含まないクリック反応により、歪みのあるシクロオクチン部分を有するオリゴヌクレオチドなどの核酸を標識する代替戦略を開発した。アジド官能基とシクロオクチン官能基との間のトリアゾール形成の特定の性質により、そのような反応と競合するか、またはそれを妨害する副反応はほとんどない。例として、シアニン染料のアジド誘導体を、ポストC/D濃縮ステップ中にシクロオクチン含有オリゴヌクレオチドと反応させて、高濃度のアジドおよびオクチン部分でクリック反応のより速い反応速度を利用した。結果として、シクロオクチン含有オリゴヌクレオチドの、アジド誘導体化染料へのほぼ定量的な変換は、オリゴヌクレオチドに対して染料の20%モル過剰(または1.2等量)のみを使用して達成された。
【0117】
染料-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを産生するための、Cuを含まないアジド/シクロオクチンクリック化学に基づくこの代替標識スキームには、一般的に用いられるNHSエステル/アミン化学よりも次のような利点がある:1.コンジュゲーションに必要なアジド-染料のモル当量は、そのNHSエステル対応物よりも低いため、試薬コストの低減につながる。2.アジド-染料は、それらの化学的不活性に起因して、すぐに使用できる溶液の形態で、それらのNHSエステル対応物よりもはるかに長く(またはより長い貯蔵寿命)再構成および貯蔵することができる。3.標識後のクリーンアップワークフローをさらに合理化して、人件費を削減することができる。
【0118】
アジドおよびアルキンは、活性化アルキンとアジドとの反応を使用することによって、Cuを含まない、すなわち触媒を含まない[3+2]環化付加反応を受け得る。そのような触媒を含まない[3+2]環化付加は、オリゴヌクレオチドなどの生体分子に染料をコンジュゲートするために、本明細書に記載される方法で使用することができる。アルキンは、ほんの一例として、そのようなアルキン環に電子求引基を付加する8員環構造もしくは9員環構造などの環ひずみによって活性化することができるか、またはアルキンは、ほんの一例として、Au(I)もしくはAu(III)などのルイス酸の添加によって活性化することができる。環ひずみによって活性化されたアルキンは説明されており、「銅を含まない」またはCuを含まない[3+2]環化付加と称されている。例えば、Agard et al.,J.Am.Chem.Soc,126(46):15046-15047(2004)によって記載されるシクロオクチンおよびジフルオロシクロオクチン、Boon et al.,PCT国際公開第WO2009/067663A1号(2009)によって記載されるジベンゾシクロオクチン、Debets et al.,Chem.Comm.,46:97-99(2010)によって記載されるアザ-ジベンゾシクロオクチン、ならびにDommerholt et al.,Angew.Chem.122:9612-9615(2010)によって記載されるシクロノニン)。活性化アルキンとアジドのCuを含まない反応の追加の説明は、PCT/US2006/042287、PCT/IB2007/003472、およびPCT/US2013/066765に見出すことができる。本明細書に記載される方法のある特定の実施形態では、染料は、アジド部分を有することができ、その上に生体分子は、活性化アルキン部分を有する。一方、他の実施形態では、染料は、活性化アルキン部分を有することができ、生体分子は、アジド部分を有する。様々な実施形態では、シクロオクチンは、シクロオクチン(OCT)、モノフッ素化シクロオクチン(MOFO)、ジフルオロシクロオクチン(DIFO)、ジメトキシアザシクロオクチン(DIMAC)、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、ジベンゾアザシクロオクチン(DIBAC)、ビアリールアザシクロオクチノン(BARAC)、ビシクロノニン(BCN)、2,3,6,7-テトラメトキシ-DIBO(TMDIBO)、スルホニル化DIBO(S-DIBO)、カルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン(COMBO)、およびピロロシクロオクチン(PYRROC)から選択される。
【0119】
例示的な核酸ポリマーコンジュゲートは、標識、一本鎖、二本鎖、もしくは多重鎖、天然もしくは合成DNAもしくはRNA、DNAもしくはRNAオリゴヌクレオチド、またはDNA/RNAハイブリッドであるか、あるいはモルホリン誘導体化ホスフェートなどの稀なリンカーまたはN-(2-アミノエチル)グリシン単位などのペプチド核酸を組み込む。核酸が合成オリゴヌクレオチドである場合、それは、典型的には50個未満のヌクレオチド、より典型的には25個未満のヌクレオチドを含む。より大きな核酸ポリマーは、典型的には、オリゴヌクレオチドでプライミングされたDNA重合を使用して、例えばポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって、またはプライマー伸長を介して、または核酸ポリマーの3´末端への標識ヌクレオチドの末端トランスフェラーゼ触媒付加によって、標識ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドから調製される。典型的には、化合物は、アミド、エステル、エーテル、もしくはチオエーテル結合により、1つ以上のプリンもしくはピリミジン塩基を介して結合されるか、またはエステル、チオエステル、アミド、エーテル、もしくはチオエーテルである結合によってホスフェートもしくは炭水化物に結合されている。あるいは、化合物は、白金試薬を用いるなどの化学的後修飾によって、またはコンジュゲートされたソラレンなどの光活性化可能な分子を使用して、核酸ポリマーに結合される。一実施形態では、クエンチング部分は、ホスホルアミダイト反応性基を介してヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、または核酸ポリマーに結合され、ホスホジエステル結合をもたらす。
【0120】
クエンチング化合物は、様々なフルオロフォアからエネルギーを受け入れることができるが、但し、クエンチング化合物およびフルオロフォアが、クエンチングが発生するのに十分近接しており、少なくとも一部のスペクトルのオーバーラップが、フルオロフォアの発光波長とクエンチング化合物の吸収帯との間で起こることを条件とする。このオーバーラップは、クエンチング化合物の最大吸収波長よりも短いか、またはさらに高い波長の発光極大で起こるドナーの発光で起こる可能性があるが、但し、十分なスペクトルのオーバーラップが存在することを条件とする。いくつかの実施形態では、クエンチング化合物は、ほんのわずかに蛍光性であるか、または本質的に非蛍光性であるため、エネルギー移動は、蛍光放出をほとんどまたは全く生じない。一態様では、クエンチング化合物は、本質的に非蛍光性であり、約0.05未満の蛍光量子収率を有する。別の態様では、クエンチング化合物は、約0.01未満の蛍光量子収率を有する。さらに別の態様では、クエンチング化合物は、約0.005未満の蛍光量子収率を有する。
【0121】
典型的には、クエンチングは、ドナーとクエンチングアクセプターとの間のFRETによって起こる。ドナーアクセプターの対によって示されるFRETの程度は、フェルスター等式によって表すことができ、
Ro=(8.8×1023・κ2・n-4・QYD・J(λ)1/6Å
式中、フェルスター半径(Ro)は、ドナーとアクセプターとの間のエネルギー移動が50%効率的である(すなわち、励起されたドナーの50%が、FRETによって非活性化される)分離距離を表す。
κ2=双極子配向因子(範囲0~4、ランダムに配向したドナーおよびアクセプターの場合、κ2=2/3)、
QYD=アクセプターの非存在下でのドナーの蛍光量子収率、
n=屈折率、および
J(λ)=スペクトル重なり積分。
【0122】
エネルギー移動の程度は、スペクトル重なり積分に依存するため、次の等式に示されるように、ドナーおよびアクセプター染料のスペクトル特性が、観察されるエネルギー移動に強い影響を与えることが容易に理解され得、
J(λ)=∫εA(λ)・FD(λ)・λ4dλcm3M-1
式中、εA(λ)は、モル吸光係数εAに関して表されるアクセプターの吸収スペクトルである。FD(λ)は、ドナーの蛍光発光スペクトルであり、蛍光強度(FD)は、積分された全強度の一部として表される。
【0123】
FRET中のエネルギー移動の程度、したがってクエンチングは、フルオロフォアとクエンチング化合物との間の分離距離に大きく依存することは容易に理解されるべきである。分子システムでは、蛍光クエンチングの変化は、典型的には、フルオロフォア分子とクエンチング化合物分子との間の分離距離の変化とよく相関する。クエンチング化合物と十分なスペクトルのオーバーラップがあるフルオロフォアは、適用のための好適なドナーである。オーバーラップの程度が大きいほど、観察される全体的なクエンチングが大きくなる。
【0124】
一実施形態では、記載されるフルオロフォアおよびクエンチャーを含む分子構造の分解(disassembly)、切断、または他の分解は、フルオロフォアの蛍光の部分的または完全な回復を観察することによって検出される。いくつかの実施形態では、構造に関連するフルオロフォアの最初にクエンチされた蛍光は、分子構造の分解、切断、または分解によってクエンチング化合物の近接から除去されると脱クエンチングされる。クエンチング化合物は、任意に、フルオロフォアと同じ分子構造に関連付けられるか、またはドナーおよびアクセプターは、構造の隣接する異なるサブユニットに関連付けられる。とりわけ、以下のシステムは、記載されるエネルギー移動の対を使用して分析され、構造分解を検出および/または定量化することができる。
【0125】
蛍光発生物質を使用したプロテアーゼ活性の検出(例えば、HIVプロテアーゼアッセイ)、酵素媒介タンパク質修飾の検出(例えば、炭水化物/脂肪酸、リン酸塩、補欠分子族の切断)、イムノアッセイ(置換/競合アッセイによる)、DNA二本鎖巻き戻しの検出(例えば、ヘリカーゼ/トポイソメラーゼ/ジャイレースアッセイ)、核酸鎖置換、ds DNA融解、ヌクレアーゼ活性、脂質の分布および輸送、ならびにTaqManアッセイ。
【0126】
コンジュゲートされた物質は、分解が起こるのに十分な時間にわたって、対象の分解条件に曝されるため、構造の分解は、典型的には、蛍光の部分的または完全な回復を観察することによって検出される。蛍光の回復は、フルオロフォアとクエンチング化合物との間の分離距離の増加、したがってコンジュゲートされた物質の分解を示す。
【0127】
プローブ
様々なメーカーが、マルチプレックスPCRアッセイを検出することができる機器を提供している。一実施例として、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)は、例えば、Vii7、Quant StudioなどのThermo Fisher Scientific機器上の核酸標的のリアルタイム検出のための4プレックスTaqManアッセイを提供する。これらのリアルタイムqPCR機器の大部分は、6プレックスTaqManアッセイを実行する光学能を有する。いくつかの実施形態では、TaqManマルチプレックスプローブは、FAM、VIC、ABY、およびJUNレポーター染料、ならびにQSY7クエンチャーを有する。QSY7クエンチャーは、蛍光極大>630nmのレポーター染料を効率的にクエンチすることができない。したがって、一実施形態では、第5および第6のフィルターを実装するPCRにおける検出のための理想的な染料は、それぞれ665nmおよび700nmに発光極大を有する。一実施形態では、第5および第6のレポーター染料は、ホスホルアミダイト誘導体として利用可能であるべきであり、これにより、高品質かつ低コストでTaqManプローブを合成することがより容易になる。一実施形態では、記載されるプローブ(複数可)は、第5および/または第6のプローブとしてマルチプレックスPCRアッセイに含まれ、アッセイはまた、以下の染料/クエンチャーの組み合わせを含むプローブを含む:JUN/QSY、VIC/QSY、FAM/MGBNFQ、およびABY/QSY。これらのプローブの染料は、FAM約517nm、VIC約551nm、ABY約580nm、およびJUN約615nmの最大発光を有する。様々な実施形態では、記載されるプローブはまた、プローブの融解温度(Tm)を上昇させ、プローブ-標的ハイブリッドを安定化させる3’末端にマイナーグルーブバインダー(MGB)部分を含む。いくつかの実施形態では、MGBの使用により、プローブを従来のプローブよりも短くすることができ、より多くの標的に対応するためにより良い配列識別および柔軟性を提供することができる。
【0128】
さらに、本発明者らは、シアニン染料のインドールのベンジル置換が、シアニン染料の発光極大に予想外に大きなレッドシフトを与えることを発見した。例えば、次のベンジル置換染料は、ベンジル誘導体を含まない染料と比較して、8nmだけ赤にシフトし、発光は、697nmから705nmにシフトした。
【化23】
発光波長のこのレッドシフトにより、同様の発光波長で発光する他の染料からベンジル染料を分離するのが非常に容易になる。マルチプレックス(例えば、6プレックス)qPCR適用で使用すると、スペクトルのオーバーラップが低減するため、ベンジル誘導体シアニンは、隣接する波長で発光する染料間のクロストークを低減し、シグナルのデコンボリューションに関連するノイズを最小限に抑えることができる。ノイズを最小限に抑えることはまた、より大きな検出ウィンドウの使用を可能にすることによって、より優れた検出感度を促進することができる。様々な実施形態では、この記載されるベンジル置換染料は、記載されるプローブに組み込まれ、6プレックスqPCRを含むマルチプレックスqPCR法を可能にする。
【0129】
一実施形態では、記載されるプローブは、上記のフルオロフォア/レポーター染料のうちの1つおよび上記のクエンチャーのうちの1つを含み、フルオロフォアおよびクエンチャーは、各々オリゴヌクレオチドに共有結合される。マルチプレックスPCR適用に好適なプローブの例としては、適切な波長で励起されると赤色のスペクトル領域で発光する、本明細書に記載されるカルボシアニンレポーター染料を挙げることができる。赤色スペクトル領域で発光するカルボシアニン染料の代表的な例としては、例えば、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)から入手可能なAlexa Fluor 647、Alexa Fluor 676、DyLight 647、またはDyLight 677、およびそれらの誘導体が挙げられる。一実施形態では、フルオロフォアおよびクエンチャーは、オリゴヌクレオチドの末端に共有結合される。完全に組み立てられたプローブの代表的な例は、次のとおりである。
【化24】
【0130】
記載されるプローブは、当該技術分野で知られている方法に従って合成することができる。例えば、一実施形態では、フルオロフォアおよびクエンチャーは、上記のコンジュゲーション化学および反応性基を使用して、オリゴヌクレオチドの末端に共有結合される。別の実施例では、クエンチャーまたはプローブは、固体支持体にコンジュゲートされてもよく、オリゴヌクレオチドは、DNAシンセサイザーなどの標準的なオリゴヌクレオチド合成法を使用して、結合されたクエンチャーまたはプローブから合成され、次にクエンチャーまたはプローブのもう一方は、合成されたオリゴヌクレオチドの末端に共有結合される。クエンチャーを固体支持体に結合する例示的な実施形態は、実施例において提供される。
【0131】
方法およびキット
さらなる態様では、記載されるプローブを使用して、qPCR、エンドポイントPCR、またはRT-PCRなどのシングルプレックスまたはマルチプレックスPCRを実施するための方法およびキットが提供される。エンドポイントPCRは、PCRのすべてのサイクルが完了した後の分析である。テンプレートが2倍になると定量化が可能になるqPCR(対数期)とは異なり、エンドポイント分析は、増幅の定常期に基づいている。RT-PCRは、相補的DNAまたはcDNAと称されるDNAへのRNAの逆転写と、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用した特定のcDNA標的の増幅を組み合わせたものである。様々な実施形態では、RT-PCRおよびqPCRの組み合わせは、研究および臨床設定における遺伝子発現の決定およびウイルスRNAの定量化などの核酸分析のために日常的に使用される。しかしながら、RT-PCRは、qPCRなしで使用して、例えば、RNAの分子クローニング、配列決定、または単純な検出を可能にすることができ、qPCRは、RT-PCRなしで使用して、例えば、特定のDNA片のコピー数を定量化することができる。
【0132】
特に、複数の標的DNA配列を増幅および検出するための方法は、記載されるプローブを含む組成物または反応混合物を提供することと、当該複数の標的配列の増幅が起こり得るように反応混合物を熱サイクリングプロトコルに供することと、複数の増幅サイクルの間に少なくとも1回、記載されるプローブの蛍光を検出することによって増幅をモニタリングすることと、を含む。一実施形態では、方法は、記載されるプローブが、第5および/または第6の核酸標的の検出を可能にする5プレックスまたは6プレックスのマルチプレックスPCRアッセイを含む。
【0133】
シグナルの検出は、フルオロフォアからの蛍光の変化を検出する任意の試薬または機器を使用して達成され得る。例えば、検出は、任意の分光光度的サーマルサイクラーを使用して行われ得る。分光光度的サーマルサイクラーの例としては、Applied Biosystems(AB)PRISM(登録商標)7000、AB 7300リアルタイムPCRシステム、AB 7500リアルタイムPCRシステム、AB PRISM(登録商標)7900HT、Bio-Rad ICycler IQ.TM.、Cepheid SmartCycler(登録商標)II、Corbett Research Rotor-Gene 3000、Idaho Technologies R.A.P.I.D.(商標)、MJ Research Chromo 4(商標)、Roche Applied Science LightCycler(登録商標)、Roche Applied Science LightCycler(登録商標)2.0、Stratagene Mx3000P(商標)、およびStratagene Mx4000(商標)が挙げられるが、これらに限定されない。新たな機器が急速に開発されており、任意の同様の機器が本方法に使用され得ることに留意されたい。一実施形態では、6プレックスのマルチプレックスアッセイの例として、以下のフィルターセットを使用することができる:第1は520±15、第2は558±12、第3は587±10、第4は623±14、第5は682±14、および第6は711±12。このフィルターセットは、Vii7、Quant Studio 5、およびQuant Studio 7リアルタイム機器の標準である。
【0134】
記載される方法の核酸標的(複数可)は、当業者に知られている任意の核酸標的であり得る。さらに、標的は、低突然変異の領域または高突然変異の領域であり得る。例えば、本明細書に開示される方法の1つの特に価値のある使用は、RNAウイルス遺伝子などの高度に突然変異した核酸、または一塩基多型(SNP)などの高い遺伝的可変性の領域を標的とすることを含む。いくつかの実施形態では、法医学試料および/または固定組織からの材料などの標的は、断片化または分解され得る。標的は、増幅しやすい任意のサイズであり得る。本明細書で提供される方法および組成物の1つの特に価値のある使用は、siRNAおよびmiRNAなどの短い断片の同定を伴う。別の特に価値のある使用は、固定された試料または環境に曝露された試料など、核酸が断片化および/または分解された可能性がある試料に対するものである。したがって、この方法は、例えば、生検組織および法医学DNAに使用され得る。標的は、精製されていてもされていなくてもよい。標的は、インビトロで産生されてもよく(例えば、cDNA標的)、または生物学的試料中に見出され得る(例えば、RNAまたはゲノムDNA(gDNA)標的)。生体試料は、処理なしで使用することができるか、または生体試料は、本明細書に開示される方法を妨害する可能性がある物質を除去するために処理することができる。
【0135】
本明細書で提供されるプローブは、診断方法、例えば、SNP検出、特定のバイオマーカーの同定などで使用され得、それにより、プローブは、例えば、ウイルス、細菌、寄生虫、および真菌を含むが、これらに限定されないヒト疾患の感染症因子の配列(例えば、ゲノム)に相補的であり、それにより患者からの核酸を有する試料中の感染性因子の存在を診断する。標的核酸は、ゲノムまたはcDNAまたはmRNAまたは合成、ヒトまたは動物、または微生物などのものであり得る。他の実施形態では、プローブを使用して、感染性因子によって引き起こされない疾患または障害を診断または予知することができる。例えば、プローブは、ヒトまたは動物由来の試料中の突然変異、多型、または対立遺伝子の存在を同定することによって、癌、自己免疫疾患、精神疾患、遺伝性障害などを診断または予後診断するために使用され得る。いくつかの実施形態では、プローブは、突然変異または多型を含む。さらに、プローブは、疾患または障害の治療の進行を評価または追跡するために使用されてもよい。
【0136】
記載されるプローブを含む、反応混合物またはマスターミックスなどの組成物も提供される。一実施形態では、リアルタイムまたは定量的PCR、エンドポイントPCR、またはRT-PCRなどのPCR用の組成物は、記載されるプローブのうちの少なくとも1つを含む。一実施形態では、PCR(例えば、qPCR、エンドポイントPCR、もしくはRT-PCR)のための組成物または反応混合物またはマスターミックスは、4つの標的核酸の検出を可能にするプローブと、第5および/または第6の標的核酸の少なくとも1つの検出を可能にする記載されるプローブ(複数可)とを含み、記載されるプローブの各々は、FRETドナー部分、すなわちフルオロフォア、およびFRETアクセプター部分、すなわちクエンチャーからなり、フルオロフォアは、約650~720nmの発光極大を有する。本明細書に記載されるクエンチャーの吸収極大は、660~668nmである。本明細書に記載されるクエンチャーの吸光度範囲は、530~730nmである。代替実施形態では、記載されるフルオロフォアおよびクエンチャーを選択したオリゴヌクレオチドにコンジュゲートするための標識試薬が提供される。
【0137】
さらに、そのような組成物または反応混合物またはマスターミックスは、次のリストから選択される1つまたはいくつかの化合物および試薬を含む場合がある:ポリメラーゼ連鎖反応に適用可能な緩衝液、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、5´から3´のエキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、少なくとも一対または数対の増幅プライマーおよび/または追加のプローブ。
【0138】
さらに別の態様では、記載されるプローブ(複数可)のうちの少なくとも1つを含むキットが提供される。さらに、キットは、次のリストから選択される1つまたはいくつかの他の化合物および試薬を含む場合がある:ポリメラーゼ連鎖反応に適用可能な緩衝液、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、5´から3´のエキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、少なくとも一対または複数対の増幅プライマー。キットはまた、内部対照DNAまたは標準を含み得る。RT-PCRに関して、キットは、逆転写酵素をさらに含み得る。上記に開示された各成分は、単一の貯蔵容器に貯蔵され得、別々にまたは一緒に包装され得る。しかし、同じ容器内で貯蔵するための成分の任意の組み合わせも同様に可能である。
【実施例】
【0139】
クエンチャー化合物は、以下の反応スキームに従って、オリゴヌクレオチドシンセサイザーを使用してプローブを構築するための基質を提供するために、固体支持体、例えば、ビーズに結合され得る。
【化25】
【0140】
以下の例示的な合成手順は、上記のクエンチャーのうちのいずれかに対して容易に一般化され得る。したがって、上記の反応スキームおよび下記の手順は、特許請求される主題の範囲を限定することを意味するものではない。
【0141】
一実施形態では、代表的な誘導体化クエンチャー(2)は、以下の手順に従って合成され得る。
【化26】
代表的なクエンチャー(1)NHSエステル(100mg、0.123mmol)を1mLの無水DCMに溶解した。1213μLのDCM(5%溶液)に溶解した1-O-DMT-2-(4-アミノブチル)-1,3-プロパンジオール(61mg、0.14mmol)を、ジイソプロピルエチルアミン(32μL、0.19mmol)と混合した。これを代表的なクエンチャー(1)NHSエステルに室温で滴下添加し、窒素下で30分間撹拌した。DCM溶液中の粗製の代表的なクエンチャー(2)をDCM(50mL)で希釈し、1%クエン酸、水、次にブラインで洗浄した。有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、蒸発乾固させた。さらに一晩高真空乾燥すると、125mg(88%収率)のクエンチャー(2)が濃青色の固体として得られた。産生物をさらに精製することなく次のステップで使用した。
1H NMR(400MHz、CD
2Cl
2):δ8.14(1H,d),7.83(2H,m),7.60(2H,d),7.50-7.10(22H,m),6.80(4H,m)4.40(2H,m),4.25(2H,m),3.75(6H,s),3.62-3.50(4H,m),3.30(6H,m),3.05(2H,m),2.51(2H,t),2.40(1H,t),1.72(2H,d),1.50-1.20(7H,m)。LC/HRMS(ESI
+)[M
+]に対する計算値1113.48;実測値1113.47。溶出は、40~100%のアセトニトリル(0.1M酢酸トリエチルアンモニウムに対して)の20分の直線勾配で行った。1.0mL/分の流量。285nmおよび655nmでの検出。
【0142】
別の実施形態では、ジグリコールリンカー(3)を含む代表的なクエンチャーは、以下の手順に従って合成することができる。
【化27】
代表的なクエンチャー(2)(125mg、0.109mmol)を3mLの無水DCMに溶解した。DIPEA(47μL、0.27mmol)、続いて無水ジグリコール酸(25mg、0.22mmol)を添加した。溶液を窒素下で30分間撹拌した。反応溶液を濃縮し、残渣を1% TEA/DCMに再溶解し、5~15% MeOH/DCM/1% TEA溶出液を使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%~1% TEA/DCMで事前平衡化)で精製した。精製したプールを濃縮し、次に1%クエン酸、水、およびブラインで洗浄した。有機層を無水Na
2SO
4上で乾燥させ、蒸発乾固させ、次に高真空下でさらに乾燥させて、代表的なクエンチャージグリコールリンカー(3)(96mg、69%収率)を濃青色の固体として得た。
1H NMR(400MHz、CD
2Cl
2):δ8.14(1H,d),7.85(2H,m),7.60(2H,d),7.52-7.10(22H,m),6.79(4H,d),4.35(2H,m),4.25(2H,m)4.05(3H,s/m),3.80(2H,s),3.72(6H,s),3.28(6H,m),3.00(2H,m),2.90(2H,m),2.50(2H,t),2.32(1H,t),1.65(2H,m),1.50-1.10(7H,m)。LC/HRMS(ESI
+)[M
+]に対する計算値1229.49;実測値1229.49。溶出は、40~100%のアセトニトリル(0.1M酢酸トリエチルアンモニウムに対して)の20分の直線勾配で行った。1.0mL/分の流量。285nmおよび655nmでの検出。
【0143】
代表的なクエンチャー(4)は、以下の手順に従って、固体支持体、例えばポリスチレンビーズに結合され得る。
【化28】
代表的なクエンチャージグリコールリンカー(3)(357mg、0.20mmol)を50mLの無水DMFに溶解した。これにアミノメチルポリスチレン(6.77g、0.223mmol、33umol/gアミン)、DIPEA(194uL、1.12mol)、およびCOMUまたは1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(287mg、0.669mmol)を添加した。混合物を3時間振とうした。溶媒を除去し、樹脂を各々50mLのDMF、MeCN、およびDCMで3回洗浄した。次に、樹脂上の任意の残りのアミン基を、THF中50mLの1-N-メチルイミダゾールと混合されたTHF中50mLの無水酢酸/ピリジンと反応させることによってキャップし、1時間振とうした。溶媒を除去し、樹脂をTHF、MeCN、およびDCMで各々3回洗浄した。次に、樹脂を高真空下で一晩乾燥させて、6.60gの淡青色の粉末の代表的なクエンチャー(4)を得た。樹脂支持体は、ニンヒドリン試験を使用して任意の残留アミン基について試験され、0.94umol/gアミン(微量)であることがわかった。支持体にカップリングされた代表的なクエンチャーの量は、MeCN中の0.1Mトルエンスルホン酸の既知の容量で代表的なクエンチャーPS試料の秤量アリコートのDMT群を切り離すことによって決定された。498での吸光度が得られ、吸光係数(76,500M
-1cm
-1)、質量、および体積を使用して、ポリスチレン1gあたりの代表的なクエンチャーの負荷量は、22μmol/gであることがわかった。このカップリング条件で見出された典型的な範囲は、20~27μmol/gであった。
【0144】
例として、記載されているように、非ベンジル置換シアニン染料からの発光シフトが697nmから705nmであるベンジル置換シアニン染料は、当該技術分野で十分に確立されている合成技法を使用して、以下のように合成することができる。
【化29】
【0145】
1およびパラ-ブロモメチル安息香酸メチルの混合物を、アセトニトリル中で48時間撹拌しながら還流で加熱する。反応物を周囲温度に冷却し、真空ろ過によって不溶性固体を除去する。溶媒を回転蒸発によって除去し、2を酢酸エーテルおよびヘキサン(5:1)で溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製する。化合物2をメタノールに懸濁し、5当量の6M水酸化ナトリウムを添加する。混合物を、EtOAc/ヘキサン/AcOHを使用したTLC分析によって2が消費されるまで、55℃で8時間加熱する。(1:2:0.1)。回転蒸発によりメタノールを除去する。フラスコを0~5℃の氷水浴で冷却し、濃HClを撹拌しながら滴下添加してpH5を得る。水性混合物をCHCl
3で抽出し、有機層を分離し、Na
2SO
4上で乾燥させる。Na
2SO
4をろ過によって除去し、溶媒を回転蒸発によって除去する。油性産生物3は、EtOAc:ヘキサン:AcOH(2:8:0.1)を使用するカラムクロマトグラフィーによって精製される。化合物3を、酢酸中で0.8当量の6-ヒドラジノ-1,3-ナフタレンジスルホン酸4と混合し、撹拌しながら12時間還流する。酢酸を回転蒸発で除去し、5をCH
2Cl
2:MeOH:H
2O:AcOH(6.5:3:0.2:0.1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製する。化合物5を、3当量の1,3-プロパンスルホンおよび2当量の酢酸ナトリウムと混合し、110℃で1時間加熱する。アセトニトリルを残留物に添加し、1時間還流する。溶液を冷却し、AcCNをデカントして、真空乾燥後に粗製物6を得る。
【化30】
【0146】
化合物6を、0.5Nのメタノール性HClに懸濁し、撹拌しながら1時間還流する。回転蒸発によって溶媒を除去する。残留物をメタノールに懸濁し、1.1当量の酢酸ナトリウムを、撹拌しながら10分間にわたって添加する。回転蒸発によってメタノールを除去し、残留物を真空下で乾燥させる。残留物を、0.1%のジイソプロピルエチルアミンおよび5当量のヨウ化メチルを含むDMFに懸濁し、撹拌しながら8時間加熱する。化合物8を、CH2Cl2:MeOH:AcOH(80:20:1)で溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製する。化合物8および1当量のマロンアルデヒドビス(フェニルイミン)一塩酸塩を酢酸に懸濁し、0.1当量のトリエチルアミンを添加する。混合物を110℃で1時間加熱する。反応物を冷却し、EtOH(約2×AcOH容量)を添加し、粗製物9をジエチルエーテルで沈殿させ、ろ過によって収集する。化合物9を、CH2Cl2:MeOH:AcOH(80:20:1)で溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製する。化合物10(20mg)を、DMF(2mL)に懸濁する。1当量の化合物9を、撹拌しながら添加する。無水酢酸を添加し(3.5当量)、次にトリエチルアミン(6.4当量)を撹拌しながら添加し、反応物を室温で2時間撹拌する。溶液を回転蒸発によって濃縮する。EtOAcを濃縮物に添加し、4~12時間撹拌する。青緑色の固体を吸引ろ過によって収集する。固体を水中の0.2M LiOH(15mg/1mL)に懸濁し、室温で3時間撹拌する。Dowex H+樹脂50W-X8、H+、20~50メッシュ(0.5グラム樹脂/1mL LiOH)を添加する。中性になるまで15分間撹拌し、染料溶液をろ過する。染料11を、CH2Cl2:MeOH:AcOH(80:20:1)で溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0147】
前述の実施形態は、例証および実施例によって詳細に説明されているが、特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、多数の修正、置換、および変更が可能であることを理解されたい。本明細書に引用される参考文献の各々は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0148】
本開示のさらなる態様は、以下の番号付きの項に記載されている。
【0149】
項1.プローブであって、
a)一般式Ia、式Ib、式Ic、または式Idを有する染料であって、
【化31-1】
【化31-2】
式中、
R
4、R
13およびR
14、ならびに存在する場合のR
3の各々が、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO
3を有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、置換ベンジルが、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含み、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
R
2およびR
12の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
Xが、-OH、-SH、-NH
2、-NH-NH
2、-F、-Cl、-Br、I、-O-NHS(ヒドロキシスクシンイミジル/スルホスクシンイミジル)、-O-TFP(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-ベンゾトリアゾール、-ベンゾトリアゾール、-NR-L-OH、-NR-L-O-ホスホルアミダイト、-NR-L-SH、-NR-L-NH
2、-NR-L-NH-NH
2、-NR-L-CO
2H、-NR-L-CO-NHS、
-NR-L-CO-STP、-NR-L-CO-TFP、-NR-L-CO-ベンゾトリアゾール、-NR-L-CHO、-NR-L-マレイミド、
-NH(CH
2CH
2O)
zCH
2CH
2N
3、-NR-L-NH-CO-CH
2-I、およびアジド(N
3)含有基からなる群から選択され、Rが、-Hまたは脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、zが、1以上5以下の整数であり、Lが、少なくとも1つの酸素原子および/または硫黄原子で任意に置換された二価の直鎖、交差、または環状アルキル基からなる群から選択され、
Katが、シアニンによってもたらされる負の電荷を補償するために必要な数の、Na
+、K
+、Ca
2+、アンモニア、または他のカチオン(複数可)であり、
mが、0以上5以下の整数であり、nが、1以上3以下の整数であり、oが、0以上12以下の整数であり、pが、0以上5以下の整数である、染料と、
b)一般式IIを有するクエンチャーであって、
【化32】
式中、
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々が、同じかまたは異なり、独立して、HまたはSO
3のいずれかから選択され、
Zが、ORであり、Rが、Hまたはアルキル、またはNH-Lであり、Lが、
【化33】
であり、Yが、Hまたは固体支持体への結合のいずれかである、クエンチャーと、
c)染料およびクエンチャーを結合するオリゴヌクレオチドリンカーと、のコンジュゲーションの産生物を含む、プローブ。
【0150】
項2.
R5、R6、R9、およびR10が、SO3であり、
R7およびR8が、Hであり、
R4、R13、およびR14が、メチルであり、
R2およびR12が、SO3であり、
m、o、およびpが、3であり、nが、2である、項1に記載のプローブ。
【0151】
項3.
R10が、SO3であり、
R5、R6、R7、R8、およびR9が、Hであり、
R4、R13、およびR14が、メチルであり、
R12が、Hであり、
R2が、SO3であり、
mおよびoが、3であり、nおよびpが、2である、項1に記載のプローブ。
【0152】
項4.
R10が、SO3であり、
R5、R6、R7、R8、およびR9が、Hであり、
R4、R13、およびR14が、メチルであり、
R2およびR12が、SO3であり、
m、o、およびpが、3であり、nが、2である、項1に記載のプローブ。
【0153】
項5.
R9およびR10が、SO3であり、
R5、R6、R7、およびR8が、Hであり、
R4、R13、およびR14が、メチルであり、
R12が、Hであり、
R2が、SO3であり、
mおよびoが、3であり、nおよびpが、2である、項1に記載のプローブ。
【0154】
項6.
R9およびR10が、SO3であり、
R5、R6、R7、およびR8が、Hであり、
R4、R13、およびR14が、メチルであり、
R2およびR12が、SO3であり、
m、o、およびpが、3であり、nが、2である、項1に記載のプローブ。
【0155】
項7.
R5、R6、R7、R8、R9、およびR10が、Hであり、
R4、R13、およびR14が、メチルであり、
R2およびR12が、Hであり、
mおよびpが、1であり、nが、2であり、oが、3である、項1に記載のプローブ。
【0156】
項8.
R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、およびR22が、Hであり、
R4、R13、およびR14が、メチルであり、
R2およびR12が、Hであり、
mおよびpが、1であり、nが、2であり、oが、3である、項1に記載のプローブ。
【0157】
項9.
R17およびR18が、SO3であり、
R15、R16、R19、R20、R21、およびR22が、Hであり、
R4、R13、およびR14が、メチルであり、
R2およびR12が、SO3であり、
m、o、およびpが、3であり、nが、2である、項1に記載のプローブ。
【0158】
項10.
R5、R6、R9、およびR10が、SO3であり、
R7およびR8が、Hであり、
R4、R13、およびR14が、メチルであり、
R3が、-C-ベンゾエートであり、
R2が、SO3であり、R12が、Hであり、
mが、3であり、pが、1であり、nが、2である、項1に記載のプローブ。
【0159】
項11.R23、R25、R26、R27、R29、およびR30の各々が、Hであり、R24およびR28の各々が、SO3である、項1に記載のプローブ。
【0160】
項12.R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、およびR30の各々が、Hである、項1に記載のプローブ。
【0161】
項13.Zが、CO
2Rであり、Rが、NH-Lであり、Lが、
【化34】
であり、Yが、固体支持体への結合である、項1に記載のプローブ。
【0162】
項14.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって試料中の標的核酸分子を検出または定量化する方法であって、方法が、
(i)1つ以上の標的核酸分子を含む試料を、a)標的核酸分子に対して少なくとも部分的に相補的である配列を有する少なくとも1つのプローブであって、1つ以上の標的核酸分子の増幅時に蛍光の検出可能な変化を受ける、少なくとも1つのプローブ、およびb)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマー対と接触させることと、
(ii)1つ以上の標的核酸分子を増幅するのに十分な条件下で、ステップ(i)の混合物をDNAポリメラーゼとともにインキュベートすることと、
(iii)プローブの蛍光を測定することによって、増幅された標的核酸分子の有無を検出するか、またはその量を定量化することと、を含み、プローブが、
a)一般式Ia、式Ib、式Ic、または式Idを有する染料であって、
【化35-1】
【化35-2】
式中、
R
4、R
13およびR
14、ならびに存在する場合のR
3の各々が、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO
3を有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、置換ベンジルが、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含み、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
R
2およびR
12の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
Xが、-OH、-SH、-NH
2、-NH-NH
2、-F、-Cl、-Br、I、-O-NHS(ヒドロキシスクシンイミジル/スルホスクシンイミジル)、-O-TFP(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-ベンゾトリアゾール、-ベンゾトリアゾール、-NR-L-OH、-NR-L-O-ホスホルアミダイト、-NR-L-SH、-NR-L-NH
2、-NR-L-NH-NH
2、-NR-L-CO
2H、-NR-L-CO-NHS、
-NR-L-CO-STP、-NR-L-CO-TFP、-NR-L-CO-ベンゾトリアゾール、-NR-L-CHO、-NR-L-マレイミド、-NH(CH
2CH
2O)
zCH
2CH
2N
3、-NR-L-NH-CO-CH
2-I、およびアジド(N
3)含有基からなる群から選択され、Rが、-Hまたは脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、zが、1以上5以下の整数であり、Lが、少なくとも1つの酸素原子および/または硫黄原子で任意に置換された二価の直鎖、交差、または環状アルキル基からなる群から選択され、
Katが、シアニンによってもたらされる負の電荷を補償するために必要な数の、Na
+、K
+、Ca
2+、アンモニア、または他のカチオン(複数可)であり、
mが、0以上5以下の整数であり、nが、1以上3以下の整数であり、oが、0以上12以下の整数であり、pが、0以上5以下の整数である、染料と、
b)一般式IIを有するクエンチャーであって、
【化36】
式中、
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々が、同じかまたは異なり、独立して、HまたはSO
3のいずれかから選択され、
Zが、ORであり、Rが、Hまたはアルキル、またはNH-Lであり、Lが、
【化37】
であり、Yが、Hまたは固体支持体への結合のいずれかである、クエンチャーと、
c)染料およびクエンチャーを結合する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドリンカーと、のコンジュゲーションの産生物を含む、方法。
【0163】
項15.PCRが、リアルタイムまたは定量的PCR(qPCR)である、項14に記載の方法。
【0164】
項16.ポリメラーゼが、Taqポリメラーゼである、項14または項15に記載の方法。
【0165】
項17.プローブが、加水分解プローブである、項1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
項18.プローブが、TaqManプローブである、項1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
項19.標的核酸が、突然変異を含む、項1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
項20.方法が、希少対立遺伝子またはSNPの検出に使用される、項1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
項21.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のためのキットであって、キットが、
プローブであって、
a)一般式Ia、式Ib、式Ic、または式Idを有する染料であって、
【化38-1】
【化38-2】
式中、
R
4、R
13およびR
14、ならびに存在する場合のR
3の各々が、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO
3を有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、置換ベンジルが、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含み、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
R
2およびR
12の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
Xが、-OH、-SH、-NH
2、-NH-NH
2、-F、-Cl、-Br、I、-O-NHS(ヒドロキシスクシンイミジル/スルホスクシンイミジル)、-O-TFP(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-ベンゾトリアゾール、-ベンゾトリアゾール、-NR-L-OH、-NR-L-O-ホスホルアミダイト、-NR-L-SH、-NR-L-NH
2、-NR-L-NH-NH
2、-NR-L-CO
2H、-NR-L-CO-NHS、
-NR-L-CO-STP、-NR-L-CO-TFP、-NR-L-CO-ベンゾトリアゾール、-NR-L-CHO、-NR-L-マレイミド、-NH(CH
2CH
2O)
zCH
2CH
2N
3、-NR-L-NH-CO-CH
2-I、およびアジド(N
3)含有基からなる群から選択され、Rが、-Hまたは脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、zが、1以上5以下の整数であり、Lが、少なくとも1つの酸素原子および/または硫黄原子で任意に置換された二価の直鎖、交差、または環状アルキル基からなる群から選択され、
Katが、シアニンによってもたらされる負の電荷を補償するために必要な数の、Na
+、K
+、Ca
2+、アンモニア、または他のカチオン(複数可)であり、
mが、0以上5以下の整数であり、nが、1以上3以下の整数であり、oが、0以上12以下の整数であり、pが、0以上5以下の整数である、染料、
b)一般式IIを有するクエンチャーであって、
【化39】
式中、
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々が、同じかまたは異なり、独立して、HまたはSO
3のいずれかから選択され、
Zが、ORであり、Rが、Hまたはアルキル、またはNH-Lであり、Lが、
【化40】
であり、Yが、Hまたは固体支持体への結合のいずれかである、クエンチャー、
ならびに
c)染料およびクエンチャーを結合する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドリンカーのコンジュゲーションの産生物を含む、プローブと、
以下:緩衝剤、精製媒体、標的、有機溶媒、酵素、および酵素阻害剤のうちの1つ以上と、を含む、キット。
【0170】
項22.PCRが、リアルタイムまたは定量的PCR(qPCR)である、項21に記載のキット。
【0171】
項23.リアルタイムまたは定量的PCR(qPCR)を行うための説明書をさらに含む、項21または項22に記載のキット。
【0172】
項24.成分が、別個の容器に包装される、項1~23のいずれか1つに記載のキット。
【0173】
項25.2つ以上の成分が、マスターミックスとして一緒に包装される、項1~24のいずれか1つに記載のキット。
【0174】
項26.一般式Ia、式Ib、式Ic、または式Idを有する少なくとも1つの染料であって、
【化41-1】
【化41-2】
式中、
R
4、R
13およびR
14、ならびに存在する場合のR
3の各々が、同じかまたは異なり、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、スルホアルキル、末端SO
3を有するヘテロ脂肪族、ベンジル、および置換ベンジルからなる群から選択され、置換ベンジルが、少なくとも1つのカルボキシ基、少なくとも1つのスルホネート基、-F、-Cl、-Br、またはそれらの組み合わせを含み、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、およびR
22の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
R
2およびR
12の各々が、同じかまたは異なり、HおよびSO
3からなる群から選択され、
Xが、-OH、-SH、-NH
2、-NH-NH
2、-F、-Cl、-Br、I、-O-NHS(ヒドロキシスクシンイミジル/スルホスクシンイミジル)、-O-TFP(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-STP(4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)、-O-ベンゾトリアゾール、-ベンゾトリアゾール、-NR-L-OH、-NR-L-O-ホスホルアミダイト、-NR-L-SH、-NR-L-NH
2、-NR-L-NH-NH
2、-NR-L-CO
2H、-NR-L-CO-NHS、
-NR-L-CO-STP、-NR-L-CO-TFP、-NR-L-CO-ベンゾトリアゾール、-NR-L-CHO、-NR-L-マレイミド、-NH(CH
2CH
2O)
zCH
2CH
2N
3、-NR-L-NH-CO-CH
2-I、およびアジド(N
3)含有基からなる群から選択され、Rが、-Hまたは脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、zが、1以上5以下の整数であり、Lが、少なくとも1つの酸素原子および/または硫黄原子で任意に置換された二価の直鎖、交差、または環状アルキル基からなる群から選択され、
Katが、シアニンによってもたらされる負の電荷を補償するために必要な数の、Na
+、K
+、Ca
2+、アンモニア、または他のカチオン(複数可)であり、
mが、0以上5以下の整数であり、nが、1以上3以下の整数であり、oが、0以上12以下の整数であり、pが、0以上5以下の整数である、少なくとも1つの染料と、
一般式IIを有する少なくとも1つのクエンチャーであって、
【化42】
式中、
R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、およびR
30の各々が、同じかまたは異なり、独立して、HまたはSO
3のいずれかから選択され、
Zが、ORであり、Rが、Hまたはアルキル、またはNH-Lであり、Lが、
【化43】
であり、Yが、Hまたは固体支持体への結合のいずれかである、少なくとも1つのクエンチャーと、を含む、キット。
【0175】
項27.少なくとも1つの染料および少なくとも1つのクエンチャーをオリゴヌクレオチドにコンジュゲートするための追加の成分をさらに含む、項26に記載のキット。
【0176】
項28.少なくとも1つの染料および少なくとも1つのクエンチャーをオリゴヌクレオチドにコンジュゲートするための説明書をさらに含む、項26または項27に記載のキット。
【0177】
項29.成分が、別個の容器に包装される、項1~28のいずれか1つに記載のキット。
【0178】
項30.アジド含有基が、末端アジドを有する脂肪族リンカーを含む、項1~29のいずれか1つに記載のプローブ。
【0179】
項31.末端アジドを有する脂肪族リンカーが、NH-CH2-CH2-CH2-N3またはNH2-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-N3から選択される、項1~30のいずれか1つに記載のプローブ。
【0180】
項32.アジド含有基が、末端アジドを有する脂肪族リンカーを含む、項1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
項33.末端アジドを有する脂肪族リンカーが、NH-CH2-CH2-CH2-N3またはNH2-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-N3から選択される、項1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
項34.アジド含有基が、末端アジドを有する脂肪族リンカーを含む、項1~33のいずれか1つに記載のキット。
【0183】
項35.末端アジドを有する脂肪族リンカーが、NH-CH2-CH2-CH2-N3またはNH2-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-N3から選択される、項1~34のいずれか1つに記載のキット。
【0184】
項36.アジド含有基が、末端アジドを有する脂肪族リンカーを含む、項1~35のいずれか1つに記載のキット。
【0185】
項37.末端アジドを有する脂肪族リンカーが、NH-CH2-CH2-CH2-N3またはNH2-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-N3から選択される、項1~36のいずれか1つに記載のキット。