(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの製造方法。
(51)【国際特許分類】
C07C 303/02 20060101AFI20240621BHJP
C07C 309/82 20060101ALI20240621BHJP
C07C 309/10 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07C303/02
C07C309/82
C07C309/10
(21)【出願番号】P 2021006662
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 光武
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/012913(WO,A1)
【文献】特開2008-285419(JP,A)
【文献】特開2009-102294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3):
【化1】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)の製造方法であり、
下記一般式(1):
【化2】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
下記一般式(2):
M
1F (2)
(式中、M
1は、Li、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属フッ化物(2)とを、
水の存在下で反応させることを含み、
前記含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の物質量(α)に対する前記アルカリ金属フッ化物(2)の物質量(β)の比率(β/α)が、5~100である、
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の質量(γ)に対する水の質量(δ)の比率(δ/γ)が、0.1~4である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(4):
【化3】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数、M
2はLi、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)も製造する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は前記含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を、抽出溶剤により、水と前記アルカリ金属フッ化物(2)とを含む混合物から分離する工程を含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記抽出溶剤が、炭化水素化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、エステル化合物、カーボネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、食塩電解用隔膜等の主要成分として、下記一般式(5)で表されるフッ素系高分子電解質(5)が主に採用されている。
【化1】
(pは0~6の整数、qは1~6の整数)
一般式(5)で表されるフッ素系高分子電解質は、下記一般式(6)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(6)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体をケン化反応及び酸処理を施すことによって製造できることが知られている。
【化2】
(pは0~6の整数、qは1~6の整数)
上記一般式(6)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(6)の製造方法として、下記一般式(1):
【化3】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
フッ化水素、金属フッ化物、4級アンモニウムフルオリド、及び4級ホスホニウムフルオリドからなる群より選択される1種以上であるフッ素化剤とを、
接触・混合させることにより、下記一般式(3):
【化4】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を製造方法が開示されている(特許文献1)。また、該特許文献では、前記含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を製造する際、同時に下記一般式(4):
【化5】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数、M
2はLi、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)も製造できることが開示されている。さらに、前記含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を再利用し、前記含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を製造する方法も開示されている。また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)は、別法によっても含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)に変換できることが開示されており、有用な化合物であることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/012913号
【文献】米国特許第3560568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、m=0、n=2である含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、フッ化ナトリウム、又はフッ化カリウムとを、アセトニトリル存在下で反応させることで、m=0、n=2である含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を製造する方法が開示されているものの、前記フッ素系高分子電解質(5)の原料である含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)をより高い収率で得られる製造方法が求められている。また、アセトニトリルから、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離する方法も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、当初含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)は、水と反応し、加水分解を起こしてしまい、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を得ることは困難と予想したが、実際には予想に反し、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)は、アルカリ金属フッ化物(2)と優先的に反応するという驚くべき知見を得た。さらに、水の存在下で、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、アルカリ金属フッ化物(2)とを反応させ、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を製造すると、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を高い収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を製造できることも見出した。さらに、特定の抽出溶剤を用いることで、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を、水とアルカリ金属フッ化物(2)とを含む混合物から簡便に分離できることも見出した。
【0006】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記一般式(3):
【化6】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)の製造方法であり、
下記一般式(1):
【化7】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
下記一般式(2):
M
1F (2)
(式中、M
1は、Li、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属フッ化物(2)とを、
水の存在下で反応させることを含み、
前記含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の物質量(α)に対する前記アルカリ金属フッ化物(2)の物質量(β)の比率(β/α)が、5~100である、
ことを特徴とする、製造方法。
[2]
前記含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の質量(γ)に対する水の質量(δ)の比率(δ/γ)が、0.1~4である、[1]に記載の製造方法。
[3]
下記一般式(4):
【化8】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数、M
2はLi、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)も製造する、[1]に記載の製造方法。
[4]
前記含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は前記含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を、抽出溶剤により、水と前記アルカリ金属フッ化物(2)とを含む混合物から分離する工程を含む、[3]に記載の製造方法。
[5]
前記抽出溶剤が、炭化水素化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、エステル化合物、カーボネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[4]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を高い収率で製造することができる。また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)も製造することができる。さらに、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を、水とアルカリ金属フッ化物(2)とを含む混合物から簡便に分離することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
本実施形態の製造方法は、
下記一般式(3):
【化9】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)の製造方法であり、
下記一般式(1):
【化10】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
下記一般式(2):
M
1F (2)
(式中、M
1は、Li、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属フッ化物(2)とを、
水の存在下で反応させることを含み、
前記含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の物質量(α)に対する前記アルカリ金属フッ化物(2)の物質量(β)の比率(β/α)が、5~100である、
ことを特徴とする。
【0010】
以下、化合物(1)、(2)、並びに化合物(1)から化合物(3)、(4)を製造する際の反応条件等の詳細について説明する。
【0011】
<含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)(化合物(1))>
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)は、下記一般式(1):
【化11】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される。
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
mとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、0~1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
nとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、1~4であることが好ましく、2~4であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
mとnの組み合わせとしては、m=0、n=2であることが、特に好ましい。
【0013】
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、国際公開第2020/012913号に記載の方法により、製造することができる。
【0014】
<アルカリ金属フッ化物(2)(化合物2)>
アルカリ金属フッ化物(2)は、下記一般式(2):
MF (2)
(式中、Mは、Li、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される。
アルカリ金属フッ化物(2)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
Mとしては、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)とアルカリ金属フッ化物(2)との反応性が高まる傾向にあり、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリドの収率が高まる傾向にあることから、K、Rb、又はCsであることが好ましい。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、K、又はCsがより好ましく、同様の観点からKがさらに好ましい。
【0016】
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、アルカリ金属フッ化物(2)とを、含フッ素ニトリル化合物(3)の存在下で反応させる際、必要に応じて、例えば、エーテル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホ化合物、飽和炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、エステル化合物、及びカーボネート化合物等を添加剤として用いることができる。
【0017】
前記添加物は、一般的に用いられる化合物であれば特に限定されないが、具体的に例示するならば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、2-メチルブチロニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、及びアジポニトリル等のニトリル化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチルウレア、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド化合物、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、及び3-メチルスルホラン等のスルホ化合物、n-ペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタン等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ナフタリン、テトラリン、及びビフェニル等の芳香族炭化水素化合物、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、塩化イソプロピル、塩化ブチル、塩化ヘキシル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、及びクロロナフタリン等のハロゲン化炭化水素化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコール等のアルコール化合物、アセトン、メチルアセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン化合物、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、及び安息香酸ベンジル等のエステル化合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、フルオロメチルメチルカ一ボネ一卜、ジフルオロメチルメチルカーボネート、卜リフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(卜リフルオロメチル)カーボネート、フルオロメチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、ペンタフルオロエチルメチルカーボネート、エチル卜リフルオロメチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、4-(卜リフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フル才ロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-(フルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ビニレン力一ボネ一卜、ビニルエチレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート等のカーボネート化合物等が挙げられる。
【0018】
<化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)>
化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)は、1以上であれば未反応の化合物(1)を低減することができ好ましいが、化合物(3)の収量が増える傾向にあり、化合物(3)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、10を超えることが特に好ましい。
【0019】
化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)の上限は、特に限定されないが、化合物(2)の使用量が低減され、化合物(4)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、β/αが100以下であることが好ましく、同様の観点から、β/αが50以下であることがより好ましく、β/αが35以下であることがさらに好ましく、β/αが25以下であることが特に好ましい。
【0020】
<化合物(1)の質量(γ)に対する水の質量(δ)の比率(δ/γ)>
化合物(1)の質量(γ)に対する水の質量(δ)の比率(δ/γ)は、化合物(1)と、化合物(2)と、水とを含む反応混合物が、反応中に液状を維持できる傾向が高まり、化合物(3)の収率の安定性が高まる傾向にあることから、0.1以上であることが好ましく、同様の観点から、δ/γが0.5以上であることがより好ましく、δ/γが1以上であることがさらに好まし、1.5以上であることが特に好ましい。
【0021】
化合物(1)の質量(γ)に対する化合物(3)の質量(δ)の比率(δ/γ)の上限は、特に限定されないが、化合物(1)と水とが反応し、加水分解を生じることを抑制できる傾向があることから、δ/γが4以下であることが好ましく、δ/γが3.7以下であることがより好ましく、δ/γが3.5以下であることが特に好ましい。
【0022】
<化合物(1)と化合物(2)との反応>
化合物(1)と化合物(2)との反応温度は、一般的に用いられる反応温度であれば特に限定されないが、化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、-40℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましい。同様の観点、及び工業的に温度調整する際の経済性に優れる傾向にあることから、0℃以上であることがさらに好ましく、10℃以上であることが特に好ましい。
【0023】
化合物(1)と化合物(2)との反応温度の上限は、特に限定されないが、水の揮発を抑制できる傾向にあることから、120℃以下であることが好ましく、100℃以下がより好ましい。化合物(1)と化合物(2)との副反応を抑制でき、化合物(3)の収率が高まる傾向にあることから、80℃以下であることがさらに好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。
化合物(1)と化合物(2)の反応温度は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0024】
化合物(1)と化合物(2)との反応時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(3)の収率の安定性がより高まることから、0.5時間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましい。過剰な反応時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、20時間以下であることがさらに好ましい。
【0025】
化合物(1)と化合物(2)との反応圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、通常は大気圧下で反応が行われる。ただし、反応温度によっては水が揮発するため、水を液化させ、再利用しない場合には、大気圧以上の加圧を行うことが有効な手段である。水を液化させ、再利用する場合には、大気圧以下の減圧であってもよい。
化合物(1)と化合物(2)との反応の圧力は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0026】
化合物(1)と化合物(2)との反応の雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(3)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。
反応雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の反応雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
化合物(1)、(2)、水を添加する順序は特に限定されないが、化合物(1)と化合物(2)との反応は発熱反応であり、特に化合物(1)、(2)、(3)の使用量が多い場合には、副反応を抑制できる傾向にあることから、化合物(1)と水との混合物を化合物(2)に徐々に添加する方法、化合物(1)と水との混合物へ化合物(2)を徐々に添加する方法、化合物(2)と水との混合物を化合物(1)に徐々に添加する方法、化合物(2)と水の混合物へ化合物(1)を徐々に添加する方法が、好ましい方法として例示される。これらの中でも、化合物(1)と水が反応し、加水分解を生じることを抑制できる傾向があることから、化合物(2)と水との混合物を化合物(1)に徐々に添加する方法、化合物(2)と水の混合物へ化合物(1)を徐々に添加する方法がより好ましく、同様の観点から、化合物(2)と水の混合物へ化合物(1)を徐々に添加する方法がさらに好ましい。
【0028】
化合物(1)と、化合物(2)とを、水の存在下で反応させることで、化合物(3)と、化合物(4)と、水とを含む反応液を得ることができる。通常、未反応の化合物(1)を低減することができることから、化合物(2)の物質量は、化合物(1)の物質量より多く用いられるため、前記反応液には化合物(2)も含まれる。そのため、前記反応液は、化合物(3)と、化合物(4)と、水と、化合物(2)を含んでいる。それぞれの物質を分離することで、化合物(3)、及び化合物(4)を所望の用途に利用することができることから、分離する方法は重要である。化合物(3)を得る方法としては、例えば、化合物(3)と水とを留去し、その後精留することで、化合物(3)を得る方法が挙げられる。また、化合物(4)を得る方法としては、化合物(3)と水とを留去した後、残差として化合物(4)と化合物(2)とを含む混合物が得られ、該混合物に、化合物(4)に対して大きな溶解度を有し、化合物(2)に対して小さな溶解度を有する化合物を加え、化合物(2)をろ過により除去した後、化合物(4)に対して大きな溶解度を有する化合物を留去する、若しくは化合物(4)を晶析することで、化合物(4)を得る方法が挙げられる。
【0029】
上記のように、化合物(3)と化合物(4)を分離し、それぞれを得るためには複数の工程を必要とすると考えられる。本発明者は、種々の分離方法を検討する中、特定の抽出溶剤を用いることで、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を抽出し、アルカリ金属フッ化物(2)を含有する水から簡便に分離できることを見出した。
【0030】
前記の抽出溶剤は、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)とを溶解することができ、且つ含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を含有する抽出溶剤と、アルカリ金属フッ化物(2)を含有する水とは、相分離する特徴を有する。
【0031】
抽出溶剤として利用できる化合物としては、前記特徴を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、エーテル化合物、炭化水素化合物、ケトン化合物、エステル化合物、カーボネート化合物等が挙げられる。化合物(3)を抽出し、分離した後、化合物(4)を抽出し、分離する方法を適用したい場合には、化合物(3)を抽出する抽出溶剤として、炭化水素化合物が好ましい。その後、化合物(4)を抽出する抽出溶剤としては、エーテル化合物、ケトン化合物、エステル化合物、カーボネート化合物が好ましい。また、化合物(3)と化合物(4)を同時に抽出する抽出溶剤としては、エーテル化合物、ケトン化合物、エステル化合物、カーボネート化合物が好ましい。前記した、化合物(3)と化合物(4)とを同時に抽出し、分離する方法は、化合物(3)と化合物(4)を別々に抽出し、分離する方法よりも工程数が少なくなることから、より好ましい。
【0032】
抽出溶媒として利用できる化合物は、一般的な化合物であれば特に限定されないが、具体的に例示するならば、n-ペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ナフタリン、テトラリン、ビフェニル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、塩化イソプロピル、塩化ブチル、塩化ヘキシル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロナフタリン等の炭化水素化合物、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物、アセトン、メチルアセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン化合物、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、及び安息香酸ベンジル等のエステル化合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、フルオロメチルメチルカ一ボネ一卜、ジフルオロメチルメチルカーボネート、卜リフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(卜リフルオロメチル)カーボネート、フルオロメチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、ペンタフルオロエチルメチルカーボネート、エチル卜リフルオロメチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、4-(卜リフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フル才ロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-(フルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ビニレン力一ボネ一卜、ビニルエチレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート等のカーボネート化合物が挙げられる。
【0033】
前記炭化水素化合物の内、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあること、及び工業的な取扱い性に優れる傾向にあることから、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエンが好ましく、n-ヘキサン、n-オクタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロホルム、クロロベンゼンがより好ましい。
【0034】
前記エーテル化合物の内、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を含有する抽出溶剤と、アルカリ金属フッ化物(2)を含有する水とが相分離しやすい傾向にあることから、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテルが好ましい。化合物(4)の抽出に優れる傾向にあることから、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピランがより好ましく、4-メチルテトラヒドロピランがさらに好ましい。
【0035】
前記ケトン化合物の内、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を含有する抽出溶剤と、アルカリ金属フッ化物(2)を含有する水とが相分離しやすい傾向にあることから、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、及びジイソブチルケトンが好ましい。化合物(4)の抽出に優れる傾向にあることから、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンがより好ましく、メチルイソブチルケトンがさらに好ましい。
【0036】
前記エステル化合物の内、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、及び安息香酸メチルが好ましい。化合物(4)の抽出に優れる傾向にあることから、酢酸エチル、酢酸ブチルがより好ましく、酢酸ブチルがより好ましい。
【0037】
前記カーボネート化合物の内、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。化合物(4)の抽出に優れる傾向にあることから、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネートがより好ましく、ジメチルカーボネートがさらに好ましい。
【0038】
化合物(3)と、化合物(4)と、水と、化合物(2)とを含む上記の反応液の質量(ε)に対する抽出剤の質量(η)の比率(η/ε)は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(3)、及び/又は化合物(4)の抽出量が増加する傾向にあることから、0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.2以上であることがさらに好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
【0039】
化合物(3)と、化合物(4)と、水と、化合物(2)とを含む上記の反応液の質量(ε)に対する抽出剤の質量(η)の比率(η/ε)の上限は、特に限定されないが、抽出剤の使用量が低減され、化合物(3)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、β/αが100以下であることが好ましく、同様の観点から、β/αが50以下であることがより好ましく、β/αが25以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0040】
化合物(3)と、化合物(4)と、水と、化合物(2)とを含む反応液に抽出剤を添加し、若しくは化合物(3)と、化合物(4)と、水と、化合物(2)とを含む反応液を抽出剤に添加し、攪拌・混合することで、化合物(3)、及び/又は化合物(4)が抽出剤へ溶解する速度が向上する傾向にある。攪拌する方法としては、一般的に用いられる攪拌方法であれば、特に限定されないが、具体的には、攪拌方式(攪拌翼形式、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ポリトロンホモジナイザー等)、攪拌翼形状(例えば、ファン、プロペラ、十字、バタフライ、とんぼ、タービン、ディスクタービン、ディスパ、パドル、傾斜パドル等)、反応槽へのバッフルの設置、ホモジナイザーのシャフト形状(万能型、攪拌型、多重超音波型、オープン型、密閉型等)等が挙げられる。
【0041】
攪拌・混合する時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(3)、及び/又は化合物(4)が抽出剤へ溶解する量が増加する傾向にあることから、0.01時間以上であることが好ましく、0.1時間以上であることがより好ましく、0.5時間以上であることがさらに好ましく、1時間以上であることが特に好ましい。過剰な攪拌・混合する時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることがさらに好ましく、5時間以下であることが特に好ましい。
【0042】
化合物(3)と、化合物(4)と、水と、化合物(2)とを含む反応液と抽出剤を、攪拌・混合した後、静置することで、化合物(3)、及び/又は化合物(4)と、抽出剤とを含む相と、水と化合物(2)とを含む相に相分離する。
相分離するため静置する時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(3)、及び/又は化合物(4)と、抽出剤とを含む相が、水と化合物(2)とを含む相に分散されている量が低減され、化合物(3)、及び/又は化合物(4)の得られる量が増加する傾向にあることから、0.01時間以上であることが好ましく、0.1時間以上であることがより好ましく、0.5時間以上であることがさらに好ましい。過剰な静置する時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることがさらに好ましく、5時間以下であることが特に好ましい。
【0043】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離する温度は、一般的に用いられる分離する温度であれば特に限定されないが、水と化合物とを含む混合物が液状を維持できる傾向が高まることから、-40℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましい。同様の観点、及び工業的に温度調整する際の経済性に優れる傾向にあることから、0℃以上であることがさらに好ましく、10℃以上であることが特に好ましい。
【0044】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離する温度の上限は、特に限定されないが、化合物(3)、及び/又は化合物(4)の水と化合物(2)とを含む混合物への溶解が抑制される傾向にあることから、120℃以下であることが好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離する温度は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0045】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離する圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、通常は大気圧下で反応が行われる。ただし、水、化合物(3)、抽出剤の種類によっては揮発する場合があることから、揮発を抑制するため、大気圧以上の加圧を行うことが有効な手段である。揮発する化合物を液化させ、再利用する場合には、大気圧以下の減圧であってもよい。
化合物(3)、及び/又は化合物(4)を分離する圧力は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0046】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離する雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(3)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。
反応雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の反応雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)と、抽出剤とを含む混合物から、化合物(3)、及び/又は化合物(4)を分離する方法は、一般的に用いられる方法であれば特に限定されない。具体的に例示するならば、化合物(3)と、抽出剤とを含む混合物であり、抽出剤の沸点が化合物(3)の沸点よりも高い場合には、化合物(3)を揮発させ、液化し、回収することで、化合物(3)を得ることができる。化合物(4)と、抽出剤とを含む混合物の場合、抽出剤を揮発させ、化合物(4)を得ることができる。また、冷却し、化合物(4)を析出させる(晶析させる)ことで、化合物(4)を得ることができる。化合物(3)、及び化合物(4)と、抽出剤とを含む混合物の場合、前記の化合物(3)と、抽出剤とを含む混合物から化合物(3)を得る方法、及び化合物(4)と、抽出剤とを含む混合物から化合物(4)を得る方法を組み合わせることにより、化合物(3)、及び化合物(4)を得ることができる。
前記に例示される方法等により分離された抽出剤は、そのまま、若しくは精製した後、化合物(3)、及び/又は化合物(4)を分離する方法に再利用してもよい。
【0048】
以上のように、本発明は、従来よりも燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、食塩電解用隔膜等の主要成分であるフッ素系高分子電解質の原料として有用である含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を収率よく製造することができる。また、各種のフッ素化合物に変換することができる含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を製造することもできる。さらに、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離することもできる。
【実施例】
【0049】
以下に本実施形態を具体的に説明した実施例を例示する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例及び比較例において使用された分析方法は、以下のとおりである。
【0051】
<核磁気共鳴分析(NMR):19F-NMRによる分子構造解析>
実施例及び比較例で得られた生成物について、19F-NMRを用いて、下記測定条件にて分子構造解析を行った。
[測定条件]
測定装置:JNM-ECZ400S型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
観測核:19F
溶媒:重クロロホルム
基準物質:テトラメチルシラン(0.00ppm)
観測周波数:400MHz(1H)
パルス幅:6.5μ秒
待ち時間:2秒
積算回数:16回
【0052】
実施例及び比較例で使用した原材料を以下に示す。
【0053】
[製造例1]
(含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)(化合物(1))
特開2019/156782号公報に従い、下記式(7)で表される化合物(7)を製造した。
CF2=CFOCF2CF2SO3Na (7)
得られた上記式(7)の化合物を用い、国際公開第2020/012913号に従い、下記式(8)で表される化合物(8)を製造した。
(CF2=CFOCF2CF2SO2)2O (8)
得られた化合物(8)は、純度が96重量%であり、下記式(9)で表される化合物(9)を4重量%含んでいた。
CF2=CFOCF2CF2SO3H (9)
【0054】
(アルカリ金属フッ化物(2)(化合物(2))
・フッ化リチウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・フッ化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・フッ化カリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・フッ化ルビジウム(Aldrich社製、純度99.8%)
・フッ化セシウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
【0055】
・精製水(富士フィルム和光純薬株式会社製)
【0056】
(その他)
・2,2,2-トリフルオロエタノール(東京化成工業株式会社製)
・1,2-ジメトキシエタン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・4-メチル-2-ペンタノン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級。以下、「MIBK」ともいう。)
・4-メチルテトラヒドロピラン(東京化成工業株式会社製。以下、「MTHP」ともいう。)
・炭酸ジメチル(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光一級。以下、「DMC」ともいう。)
・ベンゾトリフルオリド(東京化成工業株式会社製)
【0057】
[実施例1]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子とフッ化カリウム(1.60g、27.5mmol)を入れ、真空とした後、窒素雰囲気とした。試験管に水(2.40g)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、40℃に設定し、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(1.00g、化合物(8)が0.96g(1.78mmol)と化合物(9)が0.04g(0.14mmol)からなる)を1分かけて徐々に添加した。さらに1時間攪拌した後、室温に戻した。分析のため、1,2-ジメトキシエタン(3.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を加え、攪拌した。得られた反応混合物を、ろ過し、ろ液を19F-NMRにて分析した。分析の結果、下記一般式(10)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.46g、生成物質量:1.66mmol、生成率:92.8%)。なお、分析においては、2,2,2-トリフルオロエタノールの質量、2,2,2-トリフルオロエタノールのCF3及び含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成量等を算出した。また、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率は、下記式(1)により算出した。
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率(%)=含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の物質量/化合物(8)の物質量×100 (1)
例えば、本実施例における含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率(%)=1.66(mmol)/1.78(mmol)×100=92.8、である。
本実施例では、β/αは15.4であり、δ/γは2.4であった。
CF2=CFOCF2CF2SO2F (10)
19F-NMR:δ(ppm)44.50(1F)、-86.61(2F)、-112.89(2F)、-113.26(1F)、-121.41(1F)、-137.03(1F)
また、分析の結果、下記一般式(11)で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:0.63g、生成物質量:2.00mmol)。なお、分析においては、2,2,2-トリフルオロエタノールの質量、2,2,2-トリフルオロエタノールのCF3及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の生成量等を算出した。
CF2=CFOCF2CF2SO3K (11)
19F-NMR:δ(ppm)-84.85(2F)、-116.42(1F)、-118.49(2F)、-123.61(1F)、-135.08(1F)
【0058】
[実施例2]
フッ化カリウムの使用量を0.56g(9.64mmol)、水の使用量を1.31gとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.41g、生成物質量:1.45mmol、生成率:81.1%)。
本実施例では、β/αは5.4であり、δ/γは1.3であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:0.70g、生成物質量:2.21mmol)。
【0059】
[実施例3]
フッ化カリウムの使用量を1.96g(33.7mmol)、水の使用量を2.04gとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.45g、生成物質量:1.59mmol、生成率:89.2%)。
本実施例では、β/αは18.9であり、δ/γは2.0であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:0.65g、生成物質量:2.07mmol)。
【0060】
[実施例4]
フッ化カリウムの使用量を1.05g(18.0mmol)、水の使用量を1.57gとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.43g、生成物質量:1.54mmol、生成率:86.5%)。
本実施例では、β/αは10.1であり、δ/γは1.6であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:0.67g、生成物質量:2.11mmol)。
【0061】
[実施例5]
フッ化カリウムの使用量を2.35g(40.5mmol)、水の使用量を3.53gとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.47g、生成物質量:1.67mmol、生成率:93.5%)。
本実施例では、β/αは22.7であり、δ/γは3.5であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:0.63g、生成物質量:1.99mmol)。
【0062】
[実施例6]
フッ化カリウムをフッ化リチウム(1.10g、42.4mmol)とし、水の使用量を1.65gとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.43g、生成物質量:1.52mmol、生成率:85.3%)。
本実施例では、β/αは23.8であり、δ/γは1.7であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)が生成していることも確認された(生成量:0.61g、生成物質量:2.14mmol)。
【0063】
[実施例7]
フッ化カリウムをフッ化ナトリウム(1.62g、38.6mmol)とし、水の使用量を2.43gとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.43g、生成物質量:1.55mmol、生成率:86.7%)。
本実施例では、β/αは21.6であり、δ/γは2.4であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)が生成していることも確認された(生成量:0.63g、生成物質量:2.11mmol)。
【0064】
[実施例8]
フッ化カリウムをフッ化ルビジウム(4.43g、42.4mmol)とし、水の使用量を1.90gとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.47g、生成物質量:1.67mmol、生成率:93.5%)。
本実施例では、β/αは23.8であり、δ/γは1.9であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)が生成していることも確認された(生成量:0.72g、生成物質量:1.99mmol)。
【0065】
[実施例9]
フッ化カリウムをフッ化セシウム(5.27g、34.7mmol)とし、水の使用量を2.26gとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.47g、生成物質量:1.68mmol、生成率:94.1%)。
本実施例では、β/αは19.5であり、δ/γは2.3であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)が生成していることも確認された(生成量:0.81g、生成物質量:1.98mmol)。
【0066】
[実施例10]
加熱冷却攪拌装置の設定を60℃とした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.44g、生成物質量:1.58mmol、生成率:88.8%)。
本実施例では、β/αは15.4であり、δ/γは2.4であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:0.66g、生成物質量:2.07mmol)。
【0067】
[実施例11]
加熱冷却攪拌装置の設定を10℃とし、2時間攪拌した以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.46g、生成物質量:1.63mmol、生成率:91.2%)。
本実施例では、β/αは15.4であり、δ/γは2.4であった。
また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:0.64g、生成物質量:2.03mmol)。
【0068】
[比較例1]
比較例として、国際特許2020/012913号の実施例5を示す。該実施例においては、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率は、60.2%、であった。
β/αは1.6であり、δ/γは4.2であった。
【0069】
[比較例2]
比較例として、国際特許2020/012913号の実施例6を示す。該実施例においては、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率は、64.1%、であった。
β/αは1.5であり、δ/γは4.2であった。
【0070】
[比較例3]
フッ化カリウムの使用量を0.48g(8.29mmol)、水の使用量を4.33gとした以外は、実施例1と同様の方法により含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を製造した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:0.09g、生成物質量:0.32mmol、生成率:18.0%)。
β/αは4.6であり、δ/γは4.3であった。
【0071】
実施例1~11に示すように、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の物質量(α)に対する前記アルカリ金属フッ化物(2)の物質量(β)の比率(β/α)が特定の比率において、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、アルカリ金属フッ化物(2)とを、水の存在下で反応させることにより、高い収率で含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)が得られることが示された。また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)も得られることが示された。
【0072】
[実施例12]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子とフッ化カリウム(3.20g、55.1mmol)を入れ、真空とした後、窒素雰囲気とした。試験管に水(4.80g)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、40℃に設定し、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(2.00g、化合物(8)が1.92g(3.57mmol)と化合物(9)が0.08g(0.29mmol)からなる)を1分かけて徐々に添加した。さらに1時間攪拌した後、室温に戻し、攪拌子の入ったバイアルに移した。前記バイアルに、抽出剤として4-メチル-2-ペンタノン(10.0g)を加え、1時間攪拌し、分液ロートに移した後、0.5時間静置したところ、相分離が確認された。4-メチル-2-ペンタノン相を取出したところ、11.9gであった。得られた4-メチル-2-ペンタノン相(1.00g)に、分析のためベンゾトリフルオリド(0.30g)を加え、混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が0.91g(3.24mmol)と、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が1.24g(3.92mmol)含まれていた。分析においては、ベンゾトリフルオリドの質量、ベンゾトリフルオリドのCF3、及び含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、並びに含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の質量、及び物質量を算出した。
本実施例では、β/αは15.4であり、δ/γは2.4であり、η/εは1.0であった。
【0073】
[実施例13]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子とフッ化カリウム(3.20g、55.1mmol)を入れ、真空とした後、窒素雰囲気とした。試験管に水(4.80g)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、40℃に設定し、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(2.00g、化合物(8)が1.92g(3.57mmol)と化合物(9)が0.08g(0.29mmol)からなる)を1分かけて徐々に添加した。さらに1時間攪拌した後、室温に戻し、攪拌子の入ったバイアルに移した。前記バイアルに、抽出剤として4-メチルテトラヒドロピラン(20.0g)を加え、1時間攪拌し、分液ロートに移した後、0.5時間静置したところ、相分離が確認された。4-メチルテトラヒドロピラン相を取出したところ、21.4gであった。得られた4-メチルテトラヒドロピラン相(1.00g)に、分析のためベンゾトリフルオリド(0.30g)を加え、混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が0.90g(3.21mmol)と、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が1.23g(3.88mmol)含まれていた。分析においては、ベンゾトリフルオリドの質量、ベンゾトリフルオリドのCF3、及び含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、並びに含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の質量、及び物質量を算出した。
本実施例では、β/αは15.4であり、δ/γは2.4であり、η/εは2.0であった。
【0074】
[実施例14]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子とフッ化カリウム(3.20g、55.1mmol)を入れ、真空とした後、窒素雰囲気とした。試験管に水(4.80g)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、40℃に設定し、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(2.00g、化合物(8)が1.92g(3.57mmol)と化合物(9)が0.08g(0.29mmol)からなる)を1分かけて徐々に添加した。さらに1時間攪拌した後、室温に戻し、攪拌子の入ったバイアルに移した。前記バイアルに、抽出剤として炭酸ジメチル(10.0g)を加え、1時間攪拌し、分液ロートに移した後、0.5時間静置したところ、相分離が確認された。炭酸ジメチル相を取出したところ、12.0gであった。得られた炭酸ジメチル相(1.00g)に、分析のためベンゾトリフルオリド(0.30g)を加え、混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が0.92g(3.28mmol)と、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が1.25g(3.96mmol)含まれていた。分析においては、ベンゾトリフルオリドの質量、ベンゾトリフルオリドのCF3、及び含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、並びに含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の質量、及び物質量を算出した。
本実施例では、β/αは15.4であり、δ/γは2.4であり、η/εは1.0であった。
【0075】
[実施例15]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子とフッ化ルビジウム(8.86g、84.8mmol)を入れ、真空とした後、窒素雰囲気とした。試験管に水(3.80g)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、40℃に設定し、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(2.00g、化合物(8)が1.92g(3.57mmol)と化合物(9)が0.08g(0.29mmol)からなる)を1分かけて徐々に添加した。さらに1時間攪拌した後、室温に戻し、攪拌子の入ったバイアルに移した。前記バイアルに、抽出剤として4-メチル-2-ペンタノン(7.3g)を加え、1時間攪拌し、分液ロートに移した後、0.5時間静置したところ、相分離が確認された。4-メチル-2-ペンタノン相を取出したところ、9.1gであった。得られた4-メチル-2-ペンタノン相(1.00g)に、分析のためベンゾトリフルオリド(0.30g)を加え、混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が0.89g(3.17mmol)と、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)が1.37g(3.78mmol)含まれていた。分析においては、ベンゾトリフルオリドの質量、ベンゾトリフルオリドのCF3、及び含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、並びに含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の質量、及び物質量を算出した。
本実施例では、β/αは23.8であり、δ/γは1.9であり、η/εは0.5であった。
【0076】
[実施例16]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子とフッ化セシウム(10.5g、69.4mmol)を入れ、真空とした後、窒素雰囲気とした。試験管に水(4.52g)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、40℃に設定し、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(2.00g、化合物(8)が1.92g(3.57mmol)と化合物(9)が0.08g(0.29mmol)からなる)を1分かけて徐々に添加した。さらに1時間攪拌した後、室温に戻し、攪拌子の入ったバイアルに移した。前記バイアルに、抽出剤として4-メチル-2-ペンタノン(34.1g)を加え、1時間攪拌し、分液ロートに移した後、0.5時間静置したところ、相分離が確認された。4-メチル-2-ペンタノン相を取出したところ、35.8gであった。得られた4-メチル-2-ペンタノン相(1.00g)に、分析のためベンゾトリフルオリド(0.30g)を加え、混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が0.92g(3.29mmol)と、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)が1.59g(3.88mmol)含まれていた。分析においては、ベンゾトリフルオリドの質量、ベンゾトリフルオリドのCF3、及び含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、並びに含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の質量、及び物質量を算出した。
本実施例では、β/αは19.5であり、δ/γは2.3であり、η/εは2.0であった。
【0077】
[実施例17]
試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子とフッ化カリウム(3.20g、55.1mmol)を入れ、真空とした後、窒素雰囲気とした。試験管に水(4.80g)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、40℃に設定し、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(2.00g、化合物(8)が1.92g(3.57mmol)と化合物(9)が0.08g(0.29mmol)からなる)を1分かけて徐々に添加した。さらに1時間攪拌した後、室温に戻し、攪拌子の入ったバイアルに移した。前記バイアルに、抽出剤として4-メチル-2-ペンタノン(90.0g)を加え、1時間攪拌し、分液ロートに移した後、0.5時間静置したところ、相分離が確認された。4-メチル-2-ペンタノン相を取出したところ、91.2gであった。得られた4-メチル-2-ペンタノン相(1.00g)に、分析のためベンゾトリフルオリド(0.30g)を加え、混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が0.92g(3.28mmol)と、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が1.25g(3.96mmol)含まれていた。分析においては、ベンゾトリフルオリドの質量、ベンゾトリフルオリドのCF3、及び含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、並びに含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の質量、及び物質量を算出した。
本実施例では、β/αは15.4であり、δ/γは2.4であり、η/εは9.0であった。
【0078】
以上のように、特定の抽出剤を用いることにより、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、アルカリ金属フッ化物(2)とを、水の存在下で反応させえられた反応液より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を、水とアルカリ金属フッ化物(2)とを含む混合物から簡便に分離できることが示された。
【0079】
[実施例18]
フラスコに、攪拌子とフッ化カリウム(48.0g、0.826mol)を入れ、真空とした後、窒素雰囲気とした。フラスコに水(72.0g)を入れ、オイルバス(東京理化機器株式会社製、OHB-3100S)に設置し、40℃に設定し、攪拌した。続いて製造例1で製造した化合物(8)(30.0g、化合物(8)が28.8g(53.5mmol)と化合物(9)が1.20g(4.31mmol)からなる)を10分かけて徐々に添加した。さらに1時間攪拌した後、室温に戻した。抽出剤として4-メチル-2-ペンタノン(74.6g)を加え、1時間攪拌し、分液ロートに移した後、0.5時間静置したところ、相分離が確認された。4-メチル-2-ペンタノン相を取出したところ、104.9gであった。得られた4-メチル-2-ペンタノン相を蒸留装置(充填剤として、スルザー社製スルザーEXラボラトリーパッキンを使用)のフラスコに入れ、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)を蒸留により、13.0g(46.5mmol)得た。蒸留装置のフラスコに残った残差を別のフラスコに取出し、前記フラスコに4-メチル-2-ペンタノンを加え、前記の別のフラスコに加え、ロータリーエバポレータ(東京理化機器株式会社製、N-1300V)により、4-メチル-2-ペンタノンを留去し、さらに真空乾燥機(アズワン株式会社製、AVO-250V)で真空乾燥し、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を18.5g(58.6mmol)得た。なお、留去により得られた4-メチル-2-ペンタノンは、再度抽出剤として利用できることも確認した。
【0080】
以上のように、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、アルカリ金属フッ化物(2)とを、水の存在下で反応させえられた反応液より、特定の抽出剤を用いることで、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を、水とアルカリ金属フッ化物(2)とを含む混合物から分離した後、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)をそれぞれ分離できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の製造方法によれば、従来よりも収率よく含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を製造することができるため、各種フッ素含有化合物、イオン交換樹脂、イオン交換膜、食塩電解膜、燃料電池膜、レドックスフロー電池用膜、水電解用膜等の原料の製造において好適に用いることができる。また、各種のフッ素化合物に変換することができる含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を製造することができる。さらに、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離することができる。