(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
B05B 11/00 20230101AFI20240621BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B05B11/00 102B
B05B11/00 102E
B65D47/34 100
B65D47/34 200
(21)【出願番号】P 2021013907
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082040(JP,A)
【文献】特開平11-192179(JP,A)
【文献】実開昭64-021764(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 11/00
B65D 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体の前端部に装着され、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、
前記噴出器本体は、
上下方向に延び、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、
前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に設けられたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、を有し、
前記ノズル部材は、
前後方向に延びる噴出筒、および前記噴出筒の後端開口を閉塞し、かつ前記噴出孔が形成された閉塞壁を有するノズル筒と、
前記ノズル筒の内側に設けられ、前記噴出孔から噴出された液体の一部を衝突させて前記ノズル筒内に留まらせる干渉突片と、
前後方向に延びるとともに、前記ノズル筒を前記ノズル筒の下方から覆い、後端開口縁が、前記トリガー部の前面に当接、若しくは近接した樋部と、を備え、
前記噴出筒の下端部に回収孔が形成され、この回収孔を通して、前記ノズル筒内と前記樋部内とが連通し、
前記樋部の内面のうちの上方を向く底面は、後方に向かうに従い下方に向けて延びている、トリガー式液体噴出器。
【請求項2】
前記ノズル筒、前記干渉突片、および前記樋部は、一体に形成されている、請求項1に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
前記樋部の後端開口縁には、後方に向けて突出し、前記トリガー部の前面に当接、若しくは近接する集液突部が設けられている、請求項1または2に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項4】
前記トリガー部の前面に、前記樋部の後端開口縁から落下した液体が保持される保持部が形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項5】
前記トリガー部の前面は、下方に向かうに従い前方に向けて延び、
前記樋部の後端開口縁は、前記トリガー部の前面の下端部より後方に位置している、請求項1から4のいずれか1項に記載のトリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、上下方向に延び、容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に設けられたトリガー部を有し、トリガー部の後方への移動によって、液体を縦供給筒部内から噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、を有するトリガー式液体噴出器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のトリガー式液体噴出器では、液体として、例えば消毒液等が充填され、不特定多数の人が使用可能となる例えば店頭等に置かれた場合に、使用時に触れる必要のあるトリガー部の前面に触れたくないため、使用をためらうことがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、トリガー部の前面を清潔に保つことができるトリガー式液体噴出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るトリガー式液体噴出器は、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、前記噴出器本体の前端部に装着され、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、前記噴出器本体は、上下方向に延び、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に設けられたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、を有し、前記ノズル部材は、前後方向に延びる噴出筒、および前記噴出筒の後端開口を閉塞し、かつ前記噴出孔が形成された閉塞壁を有するノズル筒と、前記ノズル筒の内側に設けられ、前記噴出孔から噴出された液体の一部を衝突させて前記ノズル筒内に留まらせる干渉突片と、前後方向に延びるとともに、前記ノズル筒を前記ノズル筒の下方から覆い、後端開口縁が、前記トリガー部の前面に当接、若しくは近接した樋部と、を備え、前記噴出筒の下端部に回収孔が形成され、この回収孔を通して、前記ノズル筒内と前記樋部内とが連通し、前記樋部の内面のうちの上方を向く底面は、後方に向かうに従い下方に向けて延びている。
【0007】
本発明によれば、ノズル筒の内側に、干渉突片が設けられているので、トリガー部を牽引して後方に移動させ、液体を噴出孔から前方に向けて噴出したときに、この液体の一部が、干渉突片に衝突することで、ノズル筒から前方に噴出されず、ノズル筒内に留まることとなる。
ノズル筒をノズル筒の下方から覆い、後端開口縁がトリガー部の前面に当接、若しくは近接した樋部が設けられ、噴出筒の下端部に形成された回収孔を通して、ノズル筒内と樋部内とが連通しているので、前述のようにノズル筒内に滞留した液体は、回収孔を通して樋部内に流入することとなる。
樋部の内面のうちの上方を向く底面が、後方に向かうに従い下方に向けて延びているので、回収孔から樋部内に流入した液体は、後方に向けて流動し、樋部の後端開口縁からトリガー部の前面に向けて流れ落ちる。
以上より、液体の噴出時に、トリガー部の前面にも液体を付着させることが可能になり、液体が例えば消毒液等の場合に、トリガー部の前面を清潔に保つことができる。
【0008】
前記ノズル筒、前記干渉突片、および前記樋部は、一体に形成されてもよい。
【0009】
この場合、ノズル筒、干渉突片、および樋部が、一体に形成されているので、部品点数の増大を防ぐことができる。
【0010】
前記樋部の後端開口縁には、後方に向けて突出し、前記トリガー部の前面に当接、若しくは近接した集液突部が設けられてもよい。
【0011】
この場合、樋部の後端開口縁に、後方に向けて突出し、トリガー部の前面に当接、若しくは近接した集液突部が設けられているので、樋部の後端開口縁に到達した液体を、集液突部に集めることが可能になり、この液体を円滑にトリガー部の前面に向けて落下させることができる。
【0012】
前記トリガー部の前面に、前記樋部の後端開口縁から落下した液体が保持される保持部が形成されてもよい。
【0013】
この場合、トリガー部の前面に、樋部の後端開口縁から落下した液体が保持される保持部が形成されているので、樋部の後端開口縁からの液体を、トリガー部の前面から垂れ落ちにくくすることができるとともに、トリガー部の前面における広範囲にわたって行き渡らせやすくすることができる。
【0014】
前記トリガー部の前面は、下方に向かうに従い前方に向けて延び、前記樋部の後端開口縁は、前記トリガー部の前面の下端部より後方に位置してもよい。
【0015】
この場合、トリガー部の前面が、下方に向かうに従い前方に向けて延び、樋部の後端開口縁は、トリガー部の前面の下端部より後方に位置しているので、樋部の後端開口縁から落下した液体を、トリガー部の前面に確実に供給することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トリガー部の前面を清潔に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態として示したトリガー式液体噴出器の縦断面図である。
【
図5】他の実施形態として示したトリガー部の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1から
図4を参照し、トリガー式液体噴出器の一実施形態について説明する。本実施形態のトリガー式液体噴出器1は、例えば消毒液等の液体が収容された容器体Aに装着される噴出器本体20と、噴出器本体20に装着されたノズル部材19と、を備えている。
なお、トリガー式液体噴出器1の各構成部品は、特に記載がなければ合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0019】
噴出器本体20は、縦供給筒部10と、トリガー機構Tと、を有している。
以下、縦供給筒部10の中心軸線O1に沿う方向を上下方向といい、上下方向に沿って容器体Aの底部側を下側、その反対側を上側という。上下方向から見て、縦供給筒部10に対してノズル部材19が位置している側を前側、その逆側を後側という。上下方向から見て、前後方向に直交する方向を左右方向という。
【0020】
縦供給筒部10は、口部A1内に挿入され、容器体A内の液体を吸上げる。縦供給筒部10は、有頂筒状の外筒12と、外筒12内に嵌合された内筒13と、内筒13内に嵌合されたパイプ15と、を備えている。
【0021】
外筒12は、大径部12aと、大径部12aの上方に配置され、かつ大径部12aより直径が小さい小径部12bと、大径部12aの上端部と小径部12bの下端部とを連結する上フランジ部12cと、を備えている。
小径部12bの上端開口は、頂壁部12dに塞がれている。
【0022】
内筒13は、大径部13aと、大径部13aより直径が小さい小径部13bと、大径部13aの上端部と小径部13bとを連結する下フランジ部13cと、を備えている。
大径部13aは、外筒12の大径部12a内に嵌合され、小径部13bは、外筒12の小径部12b内に嵌合されている。小径部13bの上端部は、大径部13aの上端部より上方に位置している。小径部13bの下端部は、大径部13aの下端部より上方で、かつ外筒12の小径部12bの下端部より下方に位置している。
【0023】
内筒13の小径部13b内に、容器体A内に配置され、かつ容器体Aの図示しない底部に下端開口が位置するパイプ15の上部が嵌合されている。内筒13の下フランジ部13cは、外筒12の上フランジ部12cよりも下方で、かつ外筒12の大径部12aの下端部より上方に位置している。下フランジ部13cと、上フランジ部12cと、の間に上下方向の隙間S1が設けられている。下フランジ部13cは、小径部13bの外周面のうち、外筒12の小径部12bから下方に突出した部分から径方向の外側に向けて突出し、周方向の全長にわたって連続して延びている。
【0024】
内筒13の大径部13aにおいて、外筒12の大径部12aから下方に突出した部分に、その径方向の外側に向けて突出した環状の鍔部13dが形成されている。鍔部13dは、容器体Aの口部A1に装着(例えば螺着)される装着キャップ21の上端部内に設けられ、装着キャップ21の上端部をその軸線回りに回転可能に係止する。鍔部13dは、装着キャップ21と容器体Aの口部A1における上端開口縁とにより上下方向に挟まれる。装着キャップ21は、容器体Aの口部A1に螺着され、縦供給筒部10を口部A1に対して固定する。
外筒12、内筒13、およびパイプ15で構成される縦供給筒部10の中心軸線O1は、容器体Aの容器軸に対して後方に位置している。
【0025】
内筒13の上端部内に、上下方向に弾性変形可能に形成された噴出弁30が設けられている。
噴出弁30は、内筒13の内周面に段差状に形成された弁座32に対して上方から下方付勢状態で密に当接している。噴出弁30は、内筒13内において、弁座32よりも上方に位置する空間と、弁座32よりも下方に位置する空間と、の連通を遮断する。噴出弁30は、下方付勢力に抗して上昇し、弁座32から離間することで、内筒13内において、弁座32よりも上方に位置する空間と、弁座32よりも下方に位置する空間と、を連通する。
【0026】
内筒13の内周面のうち、弁座32よりも下方に位置し、かつパイプ15の上端よりも上方に位置する部分に、内側に向けて突出する環状のテーパ筒部35が形成されている。テーパ筒部35は、下方に向かうに従い縮径している。テーパ筒部35の内側に、テーパ筒部35の内周面に離反可能に着座するボール弁36が配置されている。
【0027】
ボール弁36は、内筒13内において、テーパ筒部35よりも上方に位置する空間と、テーパ筒部35よりも下方に位置する空間と、の連通を遮断する。ボール弁36は、上昇してテーパ筒部35の内周面から離間することで、内筒13内において、テーパ筒部35よりも上方に位置する空間と、テーパ筒部35よりも下方に位置する空間と、を連通する。
【0028】
噴出器本体20は、縦供給筒部10の前方に設けられた射出筒部11を備えている。射出筒部11は、縦供給筒部10内の液体を、後述する噴出孔18側に向けて流通させる。
射出筒部11は、縦供給筒部10の上端部から前方に向けて延びている。射出筒部11の内部は、外筒12および内筒13に一体に形成された前後方向に貫通する第1横孔16を通して、縦供給筒部10の内部に連通している。第1横孔16は、内筒13内において、弁座32よりも上方に位置する空間に開口している。
【0029】
外筒12において、射出筒部11よりも下方に位置する部分に、前方に向けて突出するシリンダ装着筒40が形成されている。シリンダ装着筒40は、後端開口が閉塞された横向きの筒状に形成されている。シリンダ装着筒40の下端部は、外筒12の上フランジ部12cと一体に形成されている。
【0030】
トリガー機構Tは、トリガー部51の後方への移動によって、液体を縦供給筒部10内から射出筒部11内を通じて噴出孔18側に向けて流通させる。トリガー機構Tは、縦供給筒部10の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に設けられたトリガー部51と、トリガー部51の移動に連係して前後動するピストン52と、ピストン52が挿入され、内部が縦供給筒部10内に連通するシリンダ53と、を備えている。
【0031】
トリガー部51は、上下方向に延びるとともに、上端部回りに前後方向に回転可能に設けられている。トリガー部51は、射出筒部11から下方に向けて延びている。
シリンダ53は、後端開口が閉塞された横向きの筒状に形成され、シリンダ装着筒40内に嵌合されている。
ピストン52は、前端開口が閉塞された横向きの筒状に形成され、シリンダ53内に前後動可能に嵌合されている。ピストン52の前端壁にトリガー部51が連結されている。 ピストン52は、トリガー部51とともに後述する弾性板部54により前方に付勢され、かつトリガー部51の後方への移動に伴って後方に移動してシリンダ53内に押し込まれる。
【0032】
シリンダ53の外周面とシリンダ装着筒40の内周面とは、前後方向の両端部において密接している。シリンダ53の外周面とシリンダ装着筒40の内周面との間のうち、前後方向の両端部同士の間に位置する中間部に、環状の隙間S2が設けられている。
シリンダ53に、シリンダ53の内側と前記隙間S2とを連通する第1通気孔63が形成されている。外筒12の上フランジ部12cに、前記隙間S2と、上フランジ部12cと内筒13の下フランジ部13cとの間の隙間S1と、を連通する第2通気孔64が形成されている。下フランジ部13cに、前記隙間S1と、内筒13の大径部13aの内側(容器体Aの内部)と、を連通する第3通気孔65が形成されている。
【0033】
トリガー部51が最前方移動位置に位置しているときに、ピストン52は第1通気孔63を閉塞している。トリガー部51の後方への移動によってピストン52が所定量だけ後方移動したときに、第1通気孔63が開放される。これにより、容器体Aの内部は、第3通気孔65、前記隙間S1、第2通気孔64、前記隙間S2および第1通気孔63を通じて外部に連通する。
【0034】
シリンダ53のうち後端開口を閉塞する後端壁と、縦供給筒部10と、に、前後方向に貫通し、シリンダ53内と内筒13の小径部13b内とを連通する第2横孔17が一体に形成されている。第2横孔17は、内筒13内において、弁座32よりも下方に位置し、かつテーパ筒部35よりも上方に位置する空間に開口している。
以上より、噴出弁30は、縦供給筒部10内を通した、射出筒部11内とシリンダ53内との連通およびその遮断を切換え、ボール弁36は、縦供給筒部10内を通した、容器体A内とシリンダ53内との連通およびその遮断を切換える。
【0035】
射出筒部11の上面には、縦供給筒部10における外筒12の頂壁部12dに連結された平板状の上板部材84が取付けられている。
上板部材84における左右方向の両端部に、左右方向から見た側面視で前方に突の円弧状を呈し、射出筒部11の下方まで延びる弾性板部54が形成されている。弾性板部54の下端部に、下方に向けて突出する係止片が形成されており、この係止片がトリガー部51に形成されたポケット部51c(
図4参照)に上方から差し込まれている。これにより、弾性板部54はトリガー部51を前方に付勢している。
【0036】
噴出器本体20は、射出筒部11に対して前方から組み合わされた中継部材22を備えている。
中継部材22は、射出筒部11の前端開口を前方から覆う隔壁90と、隔壁90から後方に向けて延び、射出筒部11に外嵌された外嵌筒部91と、隔壁90から前方に向けて延び、ノズル部材19が装着された第1装着筒部92と、隔壁90のうち、第1装着筒部92の内側に位置する部分から前方に向けて延びるガイド軸部94と、を備えている。
【0037】
隔壁90のうち、第1装着筒部92の内側に位置する部分に、射出筒部11内に連通する連通孔95が形成されている。
ガイド軸部94における前端部の外周面に、前後方向に延びるとともに前方に向けて開口する第1切換溝が形成されている。ガイド軸部94は、第1装着筒部92と同軸に配設されている。
【0038】
ノズル部材19は、噴出器本体20の前端部に装着され、液体を前方に向けて噴出する噴出孔18を有している。
ノズル部材19は、第1装着筒部92を介して中継部材22に装着されることで、中継部材22に対して前方から組み合わされている。ノズル部材19は、中継部材22に対して回転可能に装着されている。
【0039】
ノズル部材19は、第1装着筒部92に回転可能に外嵌された第2装着筒部24と、第2装着筒部24の内側に設けられ、ガイド軸部94に回転可能に外嵌された嵌合筒部23と、を備えている。第2装着筒部24および嵌合筒部23は、同軸に配設されている。
嵌合筒部23の内周面に、前後方向に延びるとともに、後方に開口する第2切換溝が形成されている。第2切換溝は、第1装着筒部92の内側に連通している。第2切換溝は、ガイド軸部94の第1切換溝に対応して配置されている。第2切換溝の前端部、および第1切換溝の後端部それぞれの前後方向の位置は、互いに同じになっている。
【0040】
そして、本実施形態では、ノズル部材19は、ノズル筒31、干渉突片33、および樋部34を備えている。ノズル筒31、干渉突片33、および樋部34は、一体に形成されている。
なお、ノズル筒31、干渉突片33、および樋部34は、別体に形成されてもよい。
【0041】
ノズル筒31は、前後方向に延びる噴出筒27、および噴出筒27の後端開口を閉塞し、かつ噴出孔18が形成された閉塞壁29を有している。
閉塞壁29から第2装着筒部24および嵌合筒部23が後方に向けて延びている。噴出孔18の後端開口は、嵌合筒部23内に開口し、噴出孔18の前端開口は、噴出筒27内に開口している。
【0042】
干渉突片33は、ノズル筒31の内側に設けられ、噴出孔18から噴出された液体の一部を衝突させてノズル筒31内に留まらせる。
干渉突片33は、ノズル筒31の内側において、噴出孔18と前後方向で対向する位置から離れている。干渉突片33は、閉塞壁29の前面において、噴出孔18の直下に位置する部分から前方に向けて突出している。干渉突片33の前端部は、噴出筒27の前端部より後方に位置している。
図1に示されるように、上下方向および前後方向に沿う縦断面視において、閉塞壁29の前面における噴出孔18の中心と、噴出筒27の内周面における前端縁と、を結ぶ2つの直線Lのうち、下側に位置する直線Lが、干渉突片33と交差している。
【0043】
図2に示されるように、干渉突片33は、前方から見て、噴出孔18を中心とする円弧状を呈する。干渉突片33は、前方から見て、噴出孔18を中心に、90°未満の角度範囲にわたって左右方向の両側に各別に延びている。
なお、干渉突片33は、前方から見て、例えば下方に向けて尖るV字状を呈してもよく、左右方向に真直ぐ延びてもよく、上下に屈曲しながら左右方向に延びる等してもよい。
【0044】
図1に示されるように、樋部34は、前後方向に延びるとともに、ノズル筒31をノズル筒31の下方から覆い、後端開口縁が、トリガー部51の前方を向く前面51aに当接、若しくは近接している。
【0045】
樋部34およびトリガー部51の前面51aそれぞれの左右方向の中央部は、互いに一致している。樋部34の後端開口縁は、第2装着筒部24より後方で、かつ中継部材22の隔壁90より前方に位置している。樋部34の内面のうちの上方を向く底面34bは、後方に向かうに従い下方に向けて延びている。樋部34および噴出筒27それぞれの前端部同士が互いに連結されている。樋部34は、上方に向けて開口した半割の筒状に形成されている。樋部34における左右方向の両端部は、噴出孔18回りに噴出筒27に対して段差なく連なっている。
【0046】
ここで、噴出筒27の下端部に回収孔27aが形成されており、この回収孔27aを通して、ノズル筒31内と樋部34内とが連通している。回収孔27aは、噴出筒27における前後方向の全長にわたって形成されている。回収孔27aは、干渉突片33、および樋部34の内面それぞれにおける噴出孔18回りの全長にわたって各別に上下方向で対向している。
【0047】
トリガー部51の前面51aは、下方に向かうに従い前方に向けて延びている。トリガー部51の前面51aは、後方に向けて窪む曲面状に形成されている。
図1および
図4に示されるように、トリガー部51の前面51aに、樋部34の後端開口縁から落下した液体が保持される保持部51bが形成されている。保持部51bは、トリガー部51の前面51aにおける全域にわたって形成されている。保持部51bは、左右方向に延びる条状に形成され、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。図示の例では、保持部51bは細溝となっている。
【0048】
樋部34の後端開口縁は、トリガー部51の前面51aの下端部より後方に位置している。樋部34の後端開口縁は、トリガー部51の前面51aの上端部に、当接、若しくは近接している。
図1および
図3に示されるように、樋部34の後端開口縁には、後方に向けて突出し、トリガー部51の前面51aに当接、若しくは近接する集液突部34aが設けられている。集液突部34aは、樋部34の後端開口縁における左右方向の中央部に設けられている。集液突部34aの上面は、樋部34の内面における底面34bと前後方向に段差なく連なっている。
【0049】
次に、上述のように構成されたトリガー式液体噴出器1の作用について説明する。
なお、トリガー部51の複数回の操作によって、噴出器本体20の各部内に液体が充填されているものとする。
【0050】
まず、ノズル部材19を、中継部材22に対して回転させ、ガイド軸部94の第1切換溝と嵌合筒部23の第2切換溝とを連通させる。
そして、トリガー部51を弾性板部54の付勢力に抗して後方に引くと、トリガー部51の後方移動に伴ってピストン52が後退するので、シリンダ53内の液体が、第2横孔17を通して縦供給筒部10の内筒13に導入される。内筒13に導入された液体は、ボール弁36を押し下げて閉弁させるとともに、噴出弁30を押し上げて開弁させるので、液体が、加圧された状態で第1横孔16を通じて射出筒部11内に供給される。射出筒部11内に供給された液体は、連通孔95、第1装着筒部92の内側、嵌合筒部23の第2切換溝、およびガイド軸部94の第1切換溝を通じて噴出孔18に到達し、噴出孔18から噴出される。
【0051】
液体の噴出後、トリガー部51を解放すると、弾性板部54の復元力によってトリガー部51が前方に付勢されて元の位置に復帰するので、これに伴ってピストン52が前方移動する。そのため、シリンダ53内に負圧が生じ、この負圧によって、噴出弁30が閉弁した状態で、ボール弁36が上昇して開弁し、容器体A内の液体が、縦供給筒部10内に吸い上げられ、第2横孔17を通してシリンダ53内に導入される。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るトリガー式液体噴出器1によれば、ノズル筒31の内側に、干渉突片33が設けられているので、前述のように液体を噴出孔18から噴出したときに、この液体の一部が、干渉突片33に衝突することで、ノズル筒31から前方に噴出されず、ノズル筒31内に留まることとなる。
ノズル筒31をノズル筒31の下方から覆い、後端開口縁がトリガー部51の前面51aに当接、若しくは近接した樋部34が設けられ、噴出筒27の下端部に形成された回収孔27aを通して、ノズル筒31内と樋部34内とが連通しているので、前述のようにノズル筒31内に滞留した液体は、回収孔27aを通して樋部34内に流入することとなる。
樋部34の底面34bが、後方に向かうに従い下方に向けて延びているので、回収孔27aから樋部34内に流入した液体は、後方に向けて流動し、樋部34の後端開口縁からトリガー部51の前面51aに向けて流れ落ちる。
【0053】
以上より、液体の噴出時に、トリガー部51の前面51aにも液体を付着させることが可能になり、液体が例えば消毒液等の場合に、トリガー部51の前面51aを清潔に保つことができる。
【0054】
ノズル筒31、干渉突片33、および樋部34が、一体に形成されているので、部品点数の増大を防ぐことができる。
【0055】
樋部34の後端開口縁に、後方に向けて突出し、トリガー部51の前面51aに当接、若しくは近接した集液突部34aが設けられているので、樋部34の後端開口縁に到達した液体を、集液突部34aに集めることが可能になり、この液体を円滑にトリガー部51の前面51aに向けて落下させることができる。
【0056】
トリガー部51の前面51aに、樋部34の後端開口縁から落下した液体が保持される保持部51bが形成されているので、樋部34の後端開口縁からの液体を、トリガー部51の前面51aから垂れ落ちにくくすることができるとともに、トリガー部51の前面51aにおける広範囲にわたって行き渡らせやすくすることができる。
【0057】
トリガー部51の前面51aが、下方に向かうに従い前方に向けて延び、樋部34の後端開口縁は、トリガー部51の前面51aの下端部より後方に位置しているので、樋部34の後端開口縁から落下した液体を、トリガー部51の前面51aに確実に供給することができる。
【0058】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
例えば、干渉突片33は、ノズル筒31の内側において、噴出孔18と前後方向で対向する位置から離れていれば、噴出筒27の内周面に設けられてもよい。
干渉突片33は、例えば、閉塞壁29の前面において、噴出孔18の直上に位置する部分等から前方に向けて突出してもよい。
【0060】
保持部51bは、突部、若しくは微細な凹凸からなる粗面部等であってもよい。
保持部51bは、
図5に示されるように、左右方向に屈曲しつつ、上下方向に連続して延びる条状に形成されてもよい。
前記実施形態では、トリガー部51のうち、前面51aに限って保持部51bを形成したが、保持部51bは、トリガー部51のうち、前面51aにおける左右方向の両端部から後方に向けて各別に延び、かつ左右方向を向く一対の側面、および前面51aに、一体に形成されていてもよい。この構成において、保持部51bのうち、トリガー部51の側面に位置する部分の後端部は、トリガー部51の側面の後端縁より前方に位置してもよい。
【0061】
外筒12、内筒13およびパイプ15は、一体に形成されてもよい。
装着キャップ21は、容器体Aの口部A1に、打栓等で装着されてもよい。
【0062】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 トリガー式液体噴出器
10 縦供給筒部
18 噴出孔
19 ノズル部材
20 噴出器本体
27 噴出筒
27a 回収孔
29 閉塞壁
31 ノズル筒
33 干渉突片
34 樋部
34a 集液突部
34b 底面
51 トリガー部
51a 前面
51b 保持部
A 容器体
A1 口部
T トリガー機構