(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞及び結腸直腸腺癌腹水初代腫瘍細胞の培養方法およびキット
(51)【国際特許分類】
C12N 5/02 20060101AFI20240621BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20240621BHJP
【FI】
C12N5/02
C12N5/09
(21)【出願番号】P 2021518844
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 CN2019099245
(87)【国際公開番号】W WO2019238143
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520492695
【氏名又は名称】北京基石生命科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】GENEX HEALTH CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】201-C11 West, E-Park, No.65 Xingshikou Rd., Haidian District, Beijing 100195, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張函▲すうえ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲いん▼申意
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-115106(JP,A)
【文献】特開2013-027407(JP,A)
【文献】国際公開第2017/216278(WO,A2)
【文献】特表2009-523009(JP,A)
【文献】特開平06-078759(JP,A)
【文献】特表2014-516562(JP,A)
【文献】特表2010-516259(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106479891(CN,A)
【文献】特表2019-509024(JP,A)
【文献】PNAS,1980年06月01日,Vol. 77, No. 6,pp. 3464-3468
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB、HEPES、L-アラニル-L-グルタミン、ヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質HGF、ヒト組換えタンパク質Wnt-3a、ヒト組換えタンパク質Noggin、SB202190、A83-01、Primocin
TM、N-アセチル-L-システイン、ニコチンアミド、N-2 Supplement、コルチゾール、B-27
TM Supplement(50X),minus vitamin A、インスリン、トランスフェリン、セレン、エタノールアミン溶液(ITS-X)、Y-27632、およびDulbecco’s Modified Eagle Medium/Ham’s F-12培地からなる結腸直腸癌初代細胞を培養するための培地であって、前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mLであり、前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mLであり、前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のアンホテリシンBの最終濃度は100~250ng/mLであり、前記HEPESの最終濃度は8~12mMであり、前記L-アラニル-L-グルタミンの最終濃度が0.8~1.2%(体積%)であり、前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が10~100ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が10~50ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が5~25ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質Wnt-3aの最終濃度が200~300ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質Nogginの最終濃度が100~200ng/mLであり、前記SB202190の最終濃度が5~10μMであり、前記A83-01の最終濃度が0.25~1.25μMであり、前記Primocin
TMの最終濃度が1%(体積%)であり、前記N-アセチル-L-システインの最終濃度が0.5~2mMであり、前記ニコチンアミドの最終濃度が5~10mMであり、前記N-2 Supplementの最終濃度が1%(体積%)であり、前記コルチゾールの最終濃度が20~50ng/mLであり、前記B-27
TM Supplement(50X),minus vitamin Aの最終濃度が1.5~2.5%(体積%)であり、前記インスリン、トランスフェリン、セレン、エタノールアミン溶液(ITS-X)の最終濃度が0.8~1.2%(体積%)であり、Y-27632の最終濃度が5~20μMであり、残りがDulbecco’s Modified Eagle Medium/Ham’s F-12培地である、培地。
【請求項2】
結腸直腸癌初代細胞を培養するためのキットであって、請求項1に記載の培地と、サンプル解離液、サンプル保存液、サンプル洗浄液、細胞分離緩衝液、細胞消化液、消化終止液、および細胞凍結保存液の全部または一部とからなり、
前記サンプル解離液は、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、およびPBSからなり、前記サンプル解離液中の前記コラゲナーゼIの最終濃度は150~250U/mLであり、前記サンプル解離液中の前記コラゲナーゼIIの最終濃度は150~250U/mLであり、前記サンプル解離液中の前記コラゲナーゼIVの最終濃度は50~150U/mLであり、残りはPBSであり、
前記サンプル保存液は、ウシ胎児血清、ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB、HEPES、およびHBSSからなり、前記サンプル保存液中の前記ウシ胎児血清の最終濃度は1~5%(体積%)であり、前記サンプル保存液中の前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mLであり、前記サンプル保存液中の前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mLであり、前記サンプル保存液中の前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のアンホテリシンBの最終濃度は250~500ng/mLであり、前記サンプル保存液中の前記HEPESの最終濃度は8~12mMであり、残りはHBSSであり、
前記サンプル洗浄液は、ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンBとPBSからなり、サンプル洗浄液中のペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mLであり、サンプル洗浄液中のペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mLであり、サンプル洗浄液中のペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のアンホテリシンBの最終濃度は250~500ng/mLであり、残りはPBSであり、
前記細胞分離緩衝液は、ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB、ヘパリンナトリウム、およびPBSからなり、前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mLであり、前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mLであり、前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のアンホテリシンBの最終濃度は250~500ng/mLであり、前記ヘパリンナトリウムの最終濃度は101U/mLであり、残りはPBSであり、
前記細胞消化液の組成は、前記細胞消化液の10mLごとに4~6mLのStemPro
TM Accutase
TM Cell Dissociation Reagent、最終濃度5mMのEDTA、1.5~2.5mLのTrypLE
TM Express Enzyme (lX), no phenol redが含まれ、残りはPBSであり、
前記消化終止液は、ウシ胎児血清、ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB、およびDMEM培地からなり、前記消化終止液中の前記ウシ胎児血清の最終濃度は8~12%(体積%)であり、前記消化終止液中の前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mLであり、前記消化終止液中の前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mLであり、前記消化終止液中の前記ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB中のアンホテリシンBの最終濃度は250~500ng/mLであり、残りはDMEM培地であり、
前記細胞凍結保存液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium/Ham’s F-12培地、DMSO、及び1%メチルセルロース溶液からなり、前記Dulbecco’s Modified Eagle Medium/Ham’s F-12培地、前記DMSO、及び前記1%メチルセルロース溶液の体積比は20:2:(0.8~1.2)であり、前記1%メチルセルロース溶液は、1g/100mlの濃度のメチルセルロース水溶液である、キット。
【請求項3】
(B1)結腸直腸癌初代細胞の培養における請求項1に記載の培地の使用;
(B2)結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養における請求項2に記載のキットの使用;
(B3)結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培養における請求項2に記載のキットの使用
の中から選ばれるいずれか一つの使用。
【請求項4】
結腸直腸癌初代細胞を培養する方法であって、当該結腸直腸癌初代細胞の種類が、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞で
あり、以下のステップ:
(a1)請求項2に記載のサンプル解離液を使用して
、対象から採取された結腸直腸癌固形腫瘍組織を解離し、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を得るステップ;
(a2)請求項1に記載の培地を使用して、ステップ(a1)で解離された結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を懸濁培養するステップ
を含む、方法。
【請求項5】
ステップ(a1)において、組織1mgあたり0.1~0.3mLの前記サンプル解離液の用量で、細かく切られた前記結腸直腸癌固形腫瘍組織を、予め37℃に予熱した前記サンプル解離液で処理し、37℃条件下で15分間から3時間でサンプルを解離するステップを含む方法に従って、前記サンプル解離液を使用して前記
対象から採取された結腸直腸癌固形腫瘍組織を解離する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a2)において、細胞培養容器Mを使用して、37℃、5%CO
2の条件下で、前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を前記培地に懸濁培養し、2~4日ごとに培地を交換するステップを含む方法に従って、前記培地を使用して前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を懸濁培養し、前記細胞培養容器Mは、(I)ポリスチレン製の細胞培養容器、ポリカーボネート製の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート製の細胞培養容器、COC樹脂製の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー製の細胞培養容器または低吸着表面を有する細胞培養容器;(II)(I)の細胞培養容器をペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾した細胞培養容器のいずれか一つである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
結腸直腸癌初代細胞を培養する方法であって、当該結腸直腸癌初代細胞の種類が、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞で
あり、以下のステップ:
(b1)
対象から採取された結腸直腸癌腹水から結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を分離して獲得するステップ;
(b2)請求項1に記載の培地を使用して、ステップ(b1)で分離された結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を懸濁培養するステップ
を含む、方法。
【請求項8】
ステップ(b1)において、結腸直腸癌腹水中の細胞を請求項2に記載の細胞分離緩衝液で懸濁し、次いで、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を密度勾配遠心分離によって得るステップを含む方法に従って、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を
前記対象から採取された結腸直腸癌腹水から分離して獲得する、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b2)において、細胞培養容器Mを使用して、37℃、5%CO
2
の条件下で、前記結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を前記培地に懸濁培養し、2~4日ごとに培地を交換するステップを含む方法に従って、前記培地を使用して前記結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を懸濁培養し、
前記細胞培養容器Mは、(I)ポリスチレン製の細胞培養容器、ポリカーボネート製の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート製の細胞培養容器、COC樹脂製の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー製の細胞培養容器または低吸着表面を有する細胞培養容器;(II)(I)の細胞培養容器をペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾した細胞培養容器のいずれか一つである、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記(II)において、パワー20W、エッチング時間が3分間であるエッチング条件で前記(I)における細胞培養容器に対して純酸素エッチングを行い、そして、細胞培養容器の表面を1%ペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー溶液で覆い、1%ペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー溶液を乾かしてペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾を完成するステップを含む方法に従って前記(I)中の細胞培養容器をペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾し、
前記1%ペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー溶液の組成として、前記1%ペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー溶液100mLごとに1mLのペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマーが含まれ、残りはフッ素油である、
ことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象から採取された結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルの表面を70~75%体積容量のエタノールで洗浄し、
前記対象から採取された結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルを、請求項2に記載のサンプル洗浄液及び滅菌PBS溶液でこの順に洗浄するという、前記結腸直腸癌固形腫瘍組織を解離前処理するステップをステップ(a1)の前にさらに含む、ことを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記解離前処理を受けた前記
対象から採取された結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルが単離された時間は2時間以内であり、前記解離前処理が行われるまで、請求項2に記載のサンプル保存液に保存されている、ことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a1)において、前記サンプル解離液を使用して前記
対象から採取された結腸直腸癌固形腫瘍組織を解離処理した後に、請求項2に記載の消化終止液を用いて解離反応を終止させ、細胞懸濁液を収集し、細胞懸濁液をろ過して組織断片及び付着細胞を除去し、遠心分離後に滅菌PBSで細胞を再懸濁し、再度遠心分離してから、請求項1に記載の培地を使用して細胞ペレットを再懸濁するステップをさらに含む、ことを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a2)において、前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞が50~80μmの直径を有する塊を形成する場合には、前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を継代させるステップをさらに含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b2)において、前記結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞が50~80μmの直径を有する塊を形成する場合には、前記結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を継代させるステップをさらに含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記継代で使用される細胞消化液は、請求項2に記載の細胞消化液である、ことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記継代で使用される消化終止液は、請求項2に記載の消化終止液である、ことを特徴とする、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
2~3回の継代増殖後の結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞または結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を凍結保存及び/または蘇生させるステップをさらに含み、
前記凍結保存を行う際に使用される細胞凍結保存液は、請求項2に記載の細胞凍結保存液であり、
前記蘇生
させるステップが、以下のステップ:
蘇生する対象細胞が入った凍結保存管を液体窒素から取り出し、37-39℃の無菌水で細胞を迅速に融解する;800-1000gを室温で5-10分間、遠心した後、請求項1に記載の培地で細胞ペレットを再懸濁し、続いて細胞培養容器Mを用いて懸濁した細胞を培養し(初期播種密度は10
5個/cm
2容器底面積)、各管の細胞(10
6個)を3.5cm培養皿に蘇生させるステップ、培養条件は37℃、5%のCO
2であり、前記細胞培養容器Mは、(I)ポリスチレン製の細胞培養容器、ポリカーボネート製の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート製の細胞培養容器、COC樹脂製の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー製の細胞培養容器または低吸着表面を有する細胞培養容器;(II)(I)の細胞培養容器をペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾した細胞培養容器のいずれか一つである、
を含む、ことを特徴とする、請求項4~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項2に記載のサンプル保存液である結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプル保存液。
【請求項20】
請求項2に記載の細胞分離緩衝液である結腸直腸癌腹水細胞分離緩衝液。
【請求項21】
結腸直腸癌固形腫瘍組織の保存における、請求項19に記載のサンプル保存液の使用。
【請求項22】
対象から採取された結腸直腸癌腹水からの結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の分離における、請求項20に記載の細胞分離緩衝液の使用。
【請求項23】
単離された直後の結腸直腸癌固形腫瘍組織を請求項2に記載のサンプル保存液に入れて2時間以内に保存するステップを含む、結腸直腸癌固形腫瘍組織を保存する方法。
【請求項24】
前記結腸直腸癌が原発性結腸直腸癌である、ことを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【請求項25】
前記結腸直腸癌が結腸直腸癌または結腸直腸癌転移病巣である、ことを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【請求項26】
前記結腸直腸癌初代細胞が結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞または結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞である、ことを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【請求項27】
前記結腸直腸癌初代細胞は、結腸直腸癌患者の手術サンプル、結腸鏡検査穿刺サンプル、または腹水サンプルから分離される、ことを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、具体的には、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞及び結腸直腸腺癌腹水初代腫瘍細胞の培養方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
結腸直腸癌は、人間の健康を深刻に脅かす最もよく見られる悪性腫瘍の一つである。中国における結腸直腸癌の発生率は9.24%であり、すべての悪性腫瘍の中で第4位である。結腸直腸癌の死亡率は11.77%であり、すべての悪性腫瘍の中で第5位である。経済の発展、生活水準の向上、およびライフスタイルの変化に伴い、結腸直腸癌の発生率は増加し続けるであろう。また、結腸直腸癌の再発と転移のリスクが高く、結腸直腸癌患者の50%以上が、根治的治療後の数ヶ月から数年以内に異なる程度の再発と転移を経験する。
【0003】
世界各国の化学研究及び医療機構は結腸直腸癌の原因と発生発達に関する研究に多大な投資を行っているが、人類はまだこの病気についてほとんど知らない。結腸直腸癌は複雑な疾患であり、その発生と発達は動的な過程であり、多くのシグナル分子の相互作用に関わり、複雑な分子調節ネットワークが形成され、外部環境要因の影響をも受ける。結腸直腸癌の病因と発生発達には強い個体差があり、一般化することはできない。そのため、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培養物をモデルとして個別化した正確な研究を行うことは、結腸直腸癌の研究分野、さらには結腸直腸癌の診断と治療の分野でのトレンドである。
【0004】
手術の機会を逃した進行性結腸直腸癌の患者にとって、化学療法と標的療法は最も重要な治療方法であり、初めて治療を受けた患者のための最初の化学療法レジメンの選択は、患者の病状管理にとって特に重要である。第二世代シーケンシングテクノロジーの広範な使用に伴い、個別化遺伝子シーケンシングとデータマイニングにより、結腸直腸癌患者の30%~50%はシーケンシング結果を通して有効である可能性のある薬剤を見つけることを予測できるが、これらの薬剤レジメンが実際の化学療法で癌細胞を殺すのに効果的であるという保証はない。
【0005】
従来の方法では、結腸直腸癌細胞株は結腸直腸癌の研究モデルとして使用され、何千万の異なる結腸直腸癌患者の体内の癌細胞の真の状態を代表し難く、大きな制限がある。精密医療の概念を代表するPDXモデルは、モデリングサイクルが長すぎて臨床治療を導くことができないという弱点を克服することは困難である。進行性結腸直腸癌の患者は、腹水をよく併発し、即時に体外に排出する必要があるので、腹水は非常に入手しやすい臨床サンプルであり、脱落した結腸直腸癌細胞は腹水からよく見つかる。結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培養物と結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培養物をモデルとして個別化した正確な研究を行うことは、結腸直腸癌の研究分野、さらには結腸直腸癌の診断と治療の分野でのトレンドである。
【0006】
既存の初代腫瘍細胞培養技術には、主に2D培養、3D培養、リプログラミング培養などがあり、これらの方法はすべて程度が異なるものの、培養サイクルが非常に長く、培養成功率が低く、雑細胞の除去が難しいという問題に直面している。
【発明の開示】
【0007】
上記の技術課題を効果的に解決するために、本発明は、新規の結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞及び結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培養技術およびキットを提供し、その技術の核心は、(1)結腸直腸癌固形腫瘍組織を温和な細胞解離試薬で処理し、組織中の癌細胞の生存率を最大限に確保する;(2)特別な無血清培地を調製し、懸濁培養システムを使用して結腸直腸癌固形腫瘍に由来する腫瘍細胞と結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞をインビトロで培養し、癌細胞の正常な増殖を確保しながら正常細胞からの干渉を最大限に排除することである。
【0008】
第一態様において、本発明は、結腸直腸癌初代細胞を培養するための培地について保護を求める。
【0009】
本発明が保護を求めている結腸直腸癌初代細胞を培養するための培地は、抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)、HEPES、GlutaMax、ヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質HGF、ヒト組換えタンパク質Wnt-3a、ヒト組換えタンパク質Noggin、SB202190(4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール)、A83-01(3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド)、PrimocinTM、N-アセチル-L-システイン(N-acetyl-L-cysteine)、ニコチン(Nicotinamide)、N-2 Supplement、コルチゾール、B27、ITS-X(Insulin、Transferrin、Selenium、Ethanolamine Solution)、Y-27632、およびAdvanced DMEM/F12培地からなる。その中で、前記抗菌抗真菌剤三次抗体中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記抗菌抗真菌剤三次抗体中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記抗菌抗真菌剤三次抗体中のアンホテリシンBの最終濃度は100~250ng/mL(例えば、250ng/mL)であり、前記HEPESの最終濃度は8~12mM(例えば、10mM)であり、前記Gluta Maxの最終濃度が0.8~1.2%(例えば、1%、%は体積%を表す)であり、前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が10~100ng/mL(例えば、20ng/mLまたは40ng/mL)であり、前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が10~50ng/mL(例えば、20ng/mL)であり、前記ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が5~25ng/mL(例えば、20ng/mL)であり、前記ヒト組換えタンパク質Wnt-3aの最終濃度が200~300ng/mL(例えば、300ng/mL)であり、前記ヒト組換えタンパク質Nogginの最終濃度が100~200ng/mL(例えば、150ng/mL)であり、前記SB202190の最終濃度が5~10μM(例えば、10μM)であり、前記A83-01の最終濃度が0.25~1.25μM(例えば、0.5μMまたは1μM)であり、前記PrimocinTMの最終濃度が1%(体積%)であり、前記N-アセチル-L-システイン(N-acetyl-L-cysteine)の最終濃度が0.5~2mM(例えば、1mM)であり、前記ニコチン(Nicotinamide)の最終濃度が5~10mM(例えば、10mM)であり、前記N-2 Supplementの最終濃度が1%(体積%)であり、前記コルチゾールの最終濃度が20~50ng/mL(例えば、20ng/mL)であり、前記B27の最終濃度が1.5~2.5%(例えば、2%、%は体積%を表す)であり、前記ITS-Xの最終濃度が0.8~1.2%(例えば、1%、%は体積%を表す)であり、前記Y-27632の最終濃度が5~20μM(例えば、5μMまたは10μM)であり、残りがAdvanced DMEM/F12培地である。
【0010】
さらに、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)の組成として、1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含む。前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)は、「Antibiotic-Antimycotic、100X」(例えば、Gibco#15240062、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記「Antibiotic-Antimycotic、100X」の1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含み、Fungizone(R)抗真菌剤として、0.85%食塩水の形のペニシリンG(ナトリウム塩)、硫酸ストレプトマイシン、及びアンホテリシンBを使用する。前記GlutaMAXは「GlutaMAXTM Supplement」(例えば、Gibco#35050061、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記「GlutaMAXTM Supplement」の成分は、L-glutamineの代替品であるL-alanyl-L-glutamineであり、濃度は200nMであり、溶媒は0.85%NaCl溶液である。前記PrimocinTMは、初代細胞用の抗菌剤(例えば、Invivogene#ant-pm-1、またはそれと同じ組成を有する他の製品)であり、微生物汚染から初代細胞を保護するために使用される抗生物質であり、グラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコプラズマ、及び真菌を殺す効果がある。前記N-2 Supplementは「N-2 Supplement(100X)」(例えば、Gibco#17502001、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記「N-2 Supplement(100X)」には、最終濃度1mMのヒトトランスフェリン(ホロ)(Human Transferrin(Holo))、500mg/Lのインスリン組換えフルチェーン(Insulin Recombinant Full Chain)、0.63mg/Lのプロゲステロン(Progesterone)、10mMのプトレシン(Putrescine)、0.52mg/Lのセレナイト(Selenite)が含まれている。前記B27は「B-27TM Supplement(50X)、minus vitamin A」(例えば、Gibco#12587010、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記「B-27TM Supplement(50X)、minus vitamin A」には、ビオチン(Biotin)、DL-α-トコフェロールアセテート(DL Alpha Tocopherol Acetate)、DL-α-トコフェロール(DL Alpha Tocopherol)、BSA(fatty acid free Fraction V)、カタラーゼ(Catalase)、ヒト組換えインスリン(Human Recombinant Insulin)、ヒトトランスフェリン(Human Transferrin)、スーパーオキシドジスムターゼ(Superoxide Dismutase)、コルチコステロン(Corticosterone)、D-ガラクトース(D-Galactose)、エタノールアミン塩酸塩(Ethanolamine HCl)、還元グルタチオン(Glutathione (reduced))、L-カルニチン塩酸塩(L-Carnitine HCl)、リノール酸(Linoleic Acid)、リノレン酸(Linolenic Acid)、プロゲステロン(Progesterone)、プトレシン(Putrescine 2HCl)、セレナイトナトリウム(Sodium Selenite)、トリヨードサイロニン(T3-(triodo-I-thyronine))が含まれている。前記ITS-Xの溶媒はEBSS溶液(Earle’s平衡塩溶液)であり、溶質および濃度は、インスリン1g/L、トランスフェリン0.55g/L、セレナイトナトリウム0.00067g/L、エタノールアミン0.2g/Lである。前記GlutaMAXは、細胞培地中のL-グルタミンを直接に置き換えることができる高度な細胞培養添加剤である。前記GlutaMAXは「GlutaMAXTM Supplement」(例えば、Gibco#35050061、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記Y-27632は「Y-27632 dihydrochloride(ATP競合性ROCK-IおよびROCK-II阻害剤、Kiはそれぞれ220nMおよび300nMである)」(例えば、MCE#129830-38-2、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。
【0011】
本発明の具体的な実施形態において、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)のロット番号はGibco#15240062であり、前記HEPESのロット番号はGibco#15630080であり、前記GlutaMAXのロット番号はGibco#35050061であり、前記ヒト組換えタンパク質EGFのロット番号はPeprotech AF-100-15-100であり、前記ヒト組換えタンパク質bFGFのロット番号はPeprotech AF-100-18B-50であり、前記ヒト組換えタンパク質HGFのロット番号はPeprotech AF-100-39-100であり、前記ヒト組換えタンパク質Wnt-3aのロット番号はR&D 5036-WN-500であり、前記ヒト組換えタンパク質Nogginのロット番号は上海近岸#C018であり、前記SB202190のロット番号はSigma#S7067であり、前記A83-01のロット番号はTocris#2939であり、前記PrimocinTMのロット番号はInvivogene#ant-pm-1であり、前記N-acetyl-L-cysteineのロット番号はSigma#A9165であり、Nicotinamideのロット番号はSigma#N0636であり、前記N-2 Supplementのロット番号はGibco#17502001であり、前記コルチゾールのロット番号はSigma#H0888であり、前記B27のロット番号はGibco#12587010であり、前記ITS-Xのロット番号はGibco#51500056であり、前記Y-27632のロット番号はMCE#129830-38-2であり、前記Advanced DMEM/F12培地のロット番号はGibco#12634010である。
【0012】
さらに、前記結腸直腸癌初代細胞を培養するための培地が存在する形として、次の二種類がある:
その一、前記結腸直腸癌初代細胞を培養するための培地は、前記抗菌抗真菌剤三次抗体、前記HEPES、前記GlutaMax、前記ヒト組換えタンパク質EGF、前記ヒト組換えタンパク質bFGF、前記ヒト組換えタンパク質HGF、前記ヒト組換えタンパク質Wnt-3a、前記ヒト組換えタンパク質Noggin、前記SB202190、前記A83-01、前記PrimocinTM、前記N-アセチル-L-システイン、前記ニコチン、前記N-2 Supplement、前記コルチゾール、前記B27、前記ITS-X、前記Y-27632、および前記Advanced DMEM/F12培地を混合してなる溶液である。
前記培地は調製後、0.22μMシリンジフィルター(Millipore SLGP033RS)でろ過して滅菌する必要があり、4℃で2週間保存できる。
その二、結腸直腸癌初代細胞を培養するための培地中の各成分は別々に存在し、使用時に処方に従って調製される。
【0013】
さらに、ヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質HGF、ヒト組換えタンパク質Wnt-3a、ヒト組換えタンパク質Nogginは、ストック溶液(母液)の形で存在することができ(-80℃で長期間保存可能)、具体的には1000倍のストック溶液(母液)の形で存在することができる。SB202190、N-acetyl-L-cysteine、Nicotinamide、コルチゾール、およびY-27632は、ストック溶液(母液)の形で存在することができ(-20℃で長期間保存)、具体的には100000倍のストック溶液(母液)の形で存在することができる。
【0014】
1000×ヒト組換えタンパク質EGFストック溶液は、ヒト組換えタンパク質EGF、BSA、およびPBSからなり、前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残りはPBSである。
【0015】
1000×ヒト組換えタンパク質bFGFストック溶液は、ヒト組換えタンパク質bFGF、BSA、およびPBSからなり、前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残りはPBSである。
【0016】
1000×ヒト組換えタンパク質HGFストック溶液は、ヒト組換えタンパク質HGF、BSA、およびPBSからなり、前記ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残りはPBSである。
【0017】
1000×ヒト組換えタンパク質Wnt-3aストック溶液は、ヒト組換えタンパク質Wnt-3a、BSA、およびPBSからなり、前記ヒト組換えタンパク質Wnt-3aの最終濃度は200μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残りはPBSである。
【0018】
1000×ヒト組換えタンパク質Nogginストック溶液は、ヒト組換えタンパク質Noggin、BSA、およびPBSからなり、前記ヒト組換えタンパク質Nogginの最終濃度は100μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残りはPBSである。
【0019】
上記の5つの1000倍ストック溶液の中で、前記BSAは100倍のストック溶液(母液)の形で存在することができ(使用する直前に調製する)、具体的にはBSAとPBSからなり、BSA(Sigma#A1933)の最終濃度は0.1g/mLであり、残りはPBSである。
【0020】
また、1000×SB202190ストック溶液は、SB202190とDMSOからなり、前記SB202190の最終濃度は10mMであり、残りはDMSOである。
【0021】
100000×A83-01ストック溶液は、A83-01とDMSOからなり、前記A83-01の濃度は25mMであり、残りはDMSOである。
【0022】
1000×N-acetyl-L-cysteineストック溶液は、N-acetyl-L-cysteineと超純水からなり、前記N-acetyl-L-cysteineの濃度は0.5Mであり、残りは超純水である。
【0023】
1000×Nicotinamideストック溶液は、Nicotinamideと超純水からなり、前記Nicotinamideの濃度は5Mであり、残りは超純水である。
【0024】
1000×コルチゾールストック溶液は、コルチゾール、無水エタノール、および超純水からなり、前記コルチゾールの最終濃度は25μg/mLであり、前記無水エタノールの最終濃度は5%(体積%)であり、残りは超純水である。
【0025】
1000×Y-27632は、Y-27632と超純水からなり、前記Y-27632の最終濃度は10mMであり、残りは超純水である。
【0026】
第二態様において、本発明は、結腸直腸癌初代細胞を培養するためのキットについて保護を求めている。
【0027】
本発明が保護を求めているキットは、下記のいずれか一つであってもよい:
(A1)上記第一態様に記載の培地と、サンプル解離液、サンプル保存液、およびサンプル洗浄液の全部または一部とからなる;
(A2)上記第一態様に記載の培地と細胞分離緩衝液からなる;
(A3)(A1)と、細胞消化液、消化終止液、および細胞凍結保存液の全部または一部とからなる:;
(A4)(A2)と、細胞消化液、消化終止液、および細胞凍結保存液の全部または一部とからなる:。
【0028】
前記サンプル解離液は、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、およびPBSからなり、前記サンプル解離液中の前記コラゲナーゼIの最終濃度は150~250U/mL(例えば、200U/mL)であり、前記サンプル解離液中の前記コラゲナーゼIIの最終濃度は150~250U/mL(例えば、200U/mL)であり、前記サンプル解離液中の前記コラゲナーゼIVの最終濃度は50~150U/mL(例えば、100U/mL)であり、残りはPBSである。
【0029】
プロテアーゼの酵素活性を使用してコラゲナーゼ(コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、またはコラゲナーゼIV)の単位Uを定義する:37℃、pH7.5の条件下で、1Uのプロテアーゼを使用してコラゲナーゼ(前記コラゲナーゼI、前記コラゲナーゼII、または前記コラゲナーゼIV)を5時間処理すると、1μmоlのL-ロイシンを放出することができる。
【0030】
本発明の具体的な実施形態では、前記コラゲナーゼIのロット番号はGibco#17100-017であり、前記コラゲナーゼIIのロット番号はGibco#17101-015であり、前記コラゲナーゼIVのロット番号はGibco#17104-019であり、前記PBSのロット番号はGibco#21-040-CVRである。
【0031】
前記サンプル保存液は、ウシ胎児血清、抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)、HEPES、およびHBSS(Hank’s平衡塩溶液)からなり、前記サンプル保存液中の前記ウシ胎児血清の最終濃度は1~5%(例えば、2%、%は体積%を表す)であり、前記サンプル保存液中の前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記サンプル保存液中の前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記サンプル保存液中の前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のアンホテリシンBの最終濃度は250~500ng/mL(例えば、250ng/mL)であり、前記サンプル保存液中の前記HEPESの最終濃度は8~12mM(例えば、10mM)であり、残りはHBSSである。
【0032】
さらに、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)の組成として、1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含む。前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)は、「Antibiotic-Antimycotic、100X」(例えば、Gibco#15240062、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記「Antibiotic-Antimycotic、100X」の1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含み、Fungizone(R)抗真菌剤として、0.85%食塩水の形のペニシリンG(ナトリウム塩)、硫酸ストレプトマイシン、及びアンホテリシンBを使用する。
【0033】
本発明の具体的な実施形態において、前記ウシ胎児血清のロット番号はGibco#16000-044であり、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)のロット番号はGibco#15240062であり、前記HEPESのロット番号はGibco#15630080であり、前記HBSSのロット番号はGibco#14170161である。
【0034】
前記サンプル洗浄液は、抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)とPBSからなり、前記サンプル洗浄液中の前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記サンプル洗浄液中の前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記サンプル洗浄液中の前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のアンホテリシンBの最終濃度は250~500ng/mL(例えば、250ng/mL)であり、残りはPBSである。
【0035】
さらに、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)の組成として、1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含む。前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)は、「Antibiotic-Antimycotic、100X」(例えば、Gibco#15240062、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記「Antibiotic-Antimycotic、100X」の1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含み、Fungizone(R)抗真菌剤として、0.85%食塩水の形のペニシリンG(ナトリウム塩)、硫酸ストレプトマイシン、及びアンホテリシンBを使用する。
【0036】
本発明の具体的な実施形態において、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)のロット番号はGibco#15240062であり、前記PBSのロット番号はGibco#21-040-CVRである。
【0037】
前記細胞分離緩衝液は、抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)、ヘパリンナトリウム、およびPBSからなり、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のアンホテリシンBの最終濃度は250~500ng/mL(例えば、250ng/mL)であり、ヘパリンナトリウムの最終濃度は101U/mLであり、残りはPBSである。
【0038】
さらに、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)の組成として、1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含む。前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)は、「Antibiotic-Antimycotic、100X」(例えば、Gibco#15240062、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記「Antibiotic-Antimycotic、100X」の1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含み、Fungizone(R)抗真菌剤として、0.85%食塩水の形のペニシリンG(ナトリウム塩)、硫酸ストレプトマイシン、及びアンホテリシンBを使用する。
【0039】
本発明の具体的な実施形態において、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)のロット番号はGibco#15240062であり、前記ヘパリンナトリウムのロット番号はSolarbio#H8270であり、前記PBSのロット番号はGibco#21-040-CVRである。
【0040】
前記細胞消化液の組成は次のとおりである:前記細胞消化液の10mLあたり4~6mL(例えば、5mL)のAccutase、最終濃度5mMのEDTA(すなわち、10uL 0.5M EDTA)、1.5~2.5mL(例えば、2mL)のTrypLE Expressが含まれ、残りはPBSである。
【0041】
さらに、前記Accutaseは「StemProTM AccutaseTM Cell Dissociation Reagent」(例えば、Gibco#A11105-01、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記Accutaseは、D-PBS、0.5mM EDTA溶液に溶解する単一成分の酵素である。前記TrypLE Expressは、「TrypLETM Express Enzyme (1X)、no phenol red」(例えば、Gibco#12604013、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記「TrypLETM Express Enzyme (1X)、no phenol red」には、200mg/LのKCl、200mg/LのKH2PO4、8000mg/LのNaCl、2160mg/LのNa2HPO4・7H2O、457.6mg/LのEDTA、および組換えプロテアーゼが含まれている。
【0042】
本発明の具体的な実施形態において、前記Accutaseのロット番号はGibco#A11105-01であり、前記0.5M EDTAのロット番号はInvitrogen#AM9261であり、前記TrypLE Expressのロット番号はGibco#12604013であり、前記PBSのロット番号はGibco#21-040-CVRである。
【0043】
前記消化終止液は、ウシ胎児血清、抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)、およびDMEM培地からなり、前記消化終止液中の前記ウシ胎児血清の最終濃度は8~12%(例えば、10%、%は体積%を表す)であり、前記消化終止液中の前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のペニシリンの最終濃度は100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記消化終止液中の前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記消化終止液中の前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)中のアンホテリシンBの最終濃度は250~500ng/mL(例えば、250ng/mL)であり、残りはDMEM培地である。
【0044】
さらに、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)の組成として、1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含む。前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)は、「Antibiotic-Antimycotic、100X」(例えば、Gibco#15240062、またはそれと同じ組成を有する他の製品)である。前記「Antibiotic-Antimycotic、100X」の1mLあたり10000単位のペニシリン(塩基)、10000μgのストレプトマイシン(塩基)、及び25μgのアンホテリシンBを含み、Fungizone(R)抗真菌剤として、0.85%食塩水の形のペニシリンG(ナトリウム塩)、硫酸ストレプトマイシン、及びアンホテリシンBを使用する。
【0045】
本発明の具体的な実施形態において、前記ウシ胎児血清のロット番号はGibco#16000-044であり、前記抗菌抗真菌剤三次抗体(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB)のロット番号はGibco#15240062であり、前記DMEM培地のロット番号はGibco#11965-092である。
【0046】
前記細胞凍結保存液は、Advanced DMEM/F12培地、DMSO、及び1%メチルセルロース溶液からなり、前記Advanced DMEM/F12培地、DMSO、及び1%メチルセルロース溶液の体積比は20:2:(0.8~1.2)、例えば、20:2:1であり、前記1%メチルセルロース溶液は、1g/100mlの濃度のメチルセルロースの水溶液である。
【0047】
本発明の具体的な実施形態において、前記Advanced DMEM/F12培地のロット番号はGibco#12634010であり、前記DMSOのロット番号はSigma#D2438であり、前記メチルセルロースのロット番号はSigma#M7027である。
【0048】
前記サンプル保存液は、サンプルの単離後の一時保存に使用でき、サンプルの単離後の短時間内でサンプル中の細胞の活性を維持することができる。前記サンプル保存液は、調製後4℃で1ヶ月間保存できる。
【0049】
前記サンプル洗浄液は、サンプルの洗浄と消毒に使用できる。前記サンプル洗浄液は、使用する直前に調製する必要がある。
【0050】
前記サンプル解離液は、サンプルの解離に使用でき、サンプル中の結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を組織から解離することができる。前記サンプル解離液は、使用する直前に調製する必要があり、その中のコラゲナーゼI、コラゲナーゼII、およびコラゲナーゼIVは、ストック溶液(母液)の形で-20℃で長期間保存することができ、具体的には10または20倍のストック溶液(母液)の形で存在することができる。10×コラゲナーゼIストック溶液は、前記コラゲナーゼIとPBSからなり、前記コラゲナーゼIの最終濃度は2000U/mLである。10×コラゲナーゼIIストック溶液は、前記コラゲナーゼIIとPBSからなり、前記コラゲナーゼIIの最終濃度は2000U/mLであり、残りはPBSである。20×コラゲナーゼIVストック溶液は、前記コラゲナーゼIVとPBSからなり、前記コラゲナーゼIVの最終濃度は2000U/mLであり、残りはPBSである。前記コラゲナーゼI、前記コラゲナーゼII、および前記コラゲナーゼIVの酵素活性の定義について、上記を参照できる。
【0051】
前記細胞分離緩衝液は、腹水中の細胞の懸濁に使用され、細胞の密度勾配分離の準備をするためのものである。前記細胞分離緩衝液は調製後、4℃で1ヶ月間保存できる。
【0052】
前記細胞消化液は、細胞塊の消化と継代に使用でき、結腸直腸癌腫瘍塊を単一の細胞に消化することができる。前記細胞消化液は、使用する直前に調製する必要がある。
【0053】
前記消化終止液は、サンプルの解離または細胞の消化過程を終止するために使用できる。前記消化終止液は調製後、4℃で1ヶ月間保存できる。
【0054】
前記細胞凍結保存液は、使用する直前に調製する必要がある。前記1%メチルセルロース溶液は、4℃で長期間保存することができる。
【0055】
第三態様において、本発明は、
(B1)結腸直腸癌初代細胞の培養における上記第一態様に記載の培地の使用;
(B2)結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養における上記第二態様の(A1)または(A3)に記載のキットの使用;
(B3)結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培養における上記第二態様の(A2)または(A4)に記載のキットの使用
の中から選ばれるいずれか一つの使用について保護を求めている。
【0056】
第四態様において、本発明は、結腸直腸癌初代細胞を培養する方法について保護を求めている。
【0057】
本発明が保護を求めている結腸直腸癌初代細胞を培養する方法は、方法Aまたは方法Bである:
方法A:
(a1)上記第二態様に記載のサンプル解離液を使用して結腸直腸癌固形腫瘍組織を解離し、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を得るステップ;
(a2)上記第一態様に記載の培地を使用して、ステップ(a1)で解離された結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を懸濁培養するステップ
を含んでもよい、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を培養する方法;
方法B:
(b1)結腸直腸癌腹水から結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を分離して獲得するステップ;
(b2)上記第一態様に記載の培地を使用して、ステップ(b1)で分離された結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を懸濁培養するステップ
を含んでもよい、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を培養する方法。
【0058】
さらに、ステップ(a1)において、組織1mgあたり0.1~0.3mL(例えば、0.1mL)の前記サンプル解離液の用量で、細かく切られた前記結腸直腸癌固形腫瘍組織(例えば、0.8~1.2mm3の細かい塊に切られた)を、予め37℃に予熱した前記サンプル解離液で処理し、37℃条件下で15分間から3時間でサンプルを解離するステップを含む方法に従って、前記サンプル解離液を使用して前記結腸直腸癌固形腫瘍組織を解離することができる。
【0059】
さらに、ステップ(b1)において、結腸直腸癌腹水中の細胞を上記第二態様に記載の細胞分離緩衝液で懸濁し、次いで、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を密度勾配遠心分離(Ficollリンパ球分離液を利用すること)によって得るステップを含む方法に従って、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を結腸直腸癌腹水から分離して獲得することができる。
【0060】
さらに、ステップ(a2)において、細胞培養容器Mを使用して、37℃、5%CO2の条件下で、前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を前記培地に懸濁培養し、2~4日(例えば、3日)ごとに培地を交換し、細胞が直径50~80μm(例えば、80μm)の塊を形成するまでに培養するステップを含む方法に従って、前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地を使用して前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を懸濁培養することができる。
【0061】
さらに、ステップ(b2)において、細胞培養容器Mを使用して、37℃、5%CO2の条件下で、前記結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を前記培地に懸濁培養し、2~4日(例えば、3日)ごとに培地を交換し、細胞が直径50~80μm(例えば、80μm)の塊を形成するまでに培養するステップを含む方法に従って、前記培地を使用して前記結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を懸濁培養することができる。
【0062】
ここで、最初の播種密度は、容器の底部面積の1cm2当たりに105セルにすることができ、6ウェルプレートを例にすると、ウェルあたり106セルの密度でプレートにコーティングする。
【0063】
ここで、前記細胞培養容器Mは、(I)ポリスチレン製の細胞培養容器、ポリカーボネート製の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート製の細胞培養容器、COC樹脂製の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー製の細胞培養容器または低吸着表面を有する細胞培養容器;(II)(I)の細胞培養容器をCYTOP修飾した細胞培養容器のいずれか一つであってもよい。
【0064】
さらに、前記細胞培養容器は、細胞培養皿、細胞培養ウェルプレート、または細胞培養用のマイクロウェルプレートチップである。
【0065】
前記(II)において、パワー20W、エッチング時間が3分間であるエッチング条件で前記(I)における細胞培養容器に対して純酸素エッチングを行い、そして、前記細胞培養容器の表面を1%CYTOP溶液でコーティングし、前記1%CYTOP溶液を乾かしてCYTOP修飾を完成するステップを含む方法に従って前記(I)中の細胞培養容器をCYTOP修飾することができる。
【0066】
ここで、前記1%CYTOP溶液の組成として、前記1%CYTOP溶液100mLごとに1mLのCYTOPが含まれ、残りはフッ素油である。
【0067】
さらに、結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルの表面を70~75%(例えば、75%)体積容量のエタノールで10~30秒洗浄し、前記結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルをサンプル洗浄液で10~20回(例えば、10回)洗浄し、前記結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルを滅菌PBS溶液で5~10回(例えば、5回)洗浄し、そして、前記結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプル中の不純物、結合組織、脂肪組織、壊死組織など、初代細胞培養に影響を与える成分を除去するという、前記結腸直腸癌固形腫瘍組織を解離前処理するステップをステップ(a1)の前にさらに含んでもよい。
【0068】
前記結腸直腸癌固形腫瘍組織を解離前処理するステップは、氷上で操作する必要があり、操作ステップ全体は10分間以内に完了する必要がある。
【0069】
さらに、前記解離前処理を受けた前記結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルが単離された時間は2時間以内であり、前記解離前処理が行われるまでにずっとサンプル保存液に保存されている。
【0070】
さらに、ステップ(a1)において、前記サンプル解離液を使用して前記結腸直腸癌固形腫瘍組織を解離処理した後に、8~15倍(例えば、10倍)の容量の前記消化終止液を用いて解離反応を終止させ、細胞懸濁液を収集し、前記細胞懸濁液を100μmまたは40μm滅菌セルストレーナーでろ過して組織断片及び付着細胞を除去し、800~1000g(例えば、800g)室温で10~15分間(例えば、10分間)遠心分離した後に上澄みを捨て、そして、3~5mL(例えば、5mL)滅菌PBSで細胞を再懸濁し、再度800~1000g(例えば、800g)、室温で10~15分間(例えば、10分間)遠心分離して上澄みを捨ててから、上記第一態様に記載の培地を使用して細胞ペレットを再懸濁し、顕微鏡で細胞の状態を観察し、細胞をカウントするステップをさらに含んでもよい。
【0071】
さらに、ステップ(b1)の前に、結腸直腸癌腹水サンプル中の不純物や凝血塊など、細胞密度勾配分離に影響を与える成分を除去するという、結腸直腸癌腹水サンプルを分離前処理するステップを含む。
【0072】
さらに、ステップ(a2)において、前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞が50~80μm(例えば、80μm)の直径を有する塊を形成する場合には、前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を継代させるステップをさらに含んでもよい。
【0073】
さらに、ステップ(b2)において、前記結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞が50~80μm(例えば、80μm)の直径を有する塊を形成する場合には、前記結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を継代させるステップをさらに含んでもよい。
【0074】
前記継代で使用される細胞消化液は、上記第二態様に記載の細胞消化液である。
【0075】
前記継代で使用される消化終止液は、上記第二態様に記載の消化終止液である。
【0076】
さらに、前記継代時の消化温度は37℃である。
【0077】
より具体的には、前記継代のステップは次の通りである。継代される細胞塊を収集し、遠心分離後に滅菌PBS溶液で細胞塊を洗浄して遠心分離してから、細胞塊を前記細胞消化液で再懸濁し、37℃で消化し、細胞塊が単一の細胞に消化された後、消化終止液(その用量は5~10倍、例えば、10倍の容量にすることができる)を使用して消化反応を終止させ、細胞懸濁液を収集する。遠心分離後に、上記第一態様に記載の培地で細胞ペレットを再懸濁してカウントし、上記に記載の細胞培養容器Mを使用して培養細胞を懸濁し(最初の播種密度は、容器の底部面積の1cm2当たりに105セルにすることができ、6ウェルプレートを例にすると、ウェルあたり106セルの密度でプレートにコーティングする)、培養条件は、37℃、5%CO2である。上記の継代ステップにおけるすべての遠心分離は、具体的には800~1000g(例えば、800g)室温で10~20分間(例えば、10分間)の遠心分離であってもよい。
【0078】
さらに、前記方法は、2~3回の継代増殖後の前記結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞または前記結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を凍結保存及び/または蘇生(回復)させるステップをさらに含んでもよい。前記凍結保存を行う際に使用される細胞凍結保存液は、上記第二態様に記載の細胞凍結保存液である。
【0079】
さらに、前記凍結保存のステップは次の通りである。凍結保存される細胞塊を収集し、遠心分離後に滅菌PBS溶液で細胞塊を洗浄して遠心分離してから、細胞塊を前記細胞消化液で再懸濁し、37℃で消化し、細胞塊が単一の細胞に消化された後、前記消化終止液(その用量は5~10倍、例えば、10倍の容量にすることができる)を使用して消化反応を終止させ、細胞懸濁液を収集する。遠心分離後に、前記細胞凍結保存液を使用し、0.5~2×106/mL(例えば、106/mL)の密度で細胞ペレットを再懸濁し、勾配冷却ボックス(細胞凍結コンテナー)で一晩凍結保存した後に、長期保存のために液体窒素に移す。上記の凍結保存ステップにおけるすべての遠心分離は、具体的には800~1000g(例えば、800g)室温で10~20分間(例えば、10分間)の遠心分離であってもよい。
【0080】
さらに、前記蘇生の具体的なステップは次の通りである。蘇生される細胞が入った凍結保存チューブを液体窒素から取りだし、37~39℃(例えば、37℃)の滅菌水で細胞をすばやく解凍する。遠心分離(例えば、800~1000g、例えば800g、室温で5~10分間、例えば、10分間)後に、上記第一態様に記載の培地で細胞ペレットを再懸濁してから、上記に記載の細胞培養容器Mを使用して培養細胞を懸濁し(最初の播種密度は、容器の底部面積の1cm2当たりに105セルにすることができる)、各チューブの細胞(106)を3.5cm培養皿に蘇生させ、培養条件は、37℃、5%CO2である。
【0081】
第五態様において、本発明は、
(C1)上記第二態様に記載のサンプル解離液である結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプル解離液;
(C2)上記第二態様に記載のサンプル保存液である結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプル保存液;
(C3)上記第二態様に記載の細胞分離緩衝液である結腸直腸癌腹水細胞分離緩衝液
の中から選ばれるいずれか一つの試薬について保護を求めている。
【0082】
第六態様において、本発明は、
(D1)結腸直腸癌固形腫瘍組織からの結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の解離における、上記第五態様の(C1)に記載のサンプル解離液の使用;
(D2)結腸直腸癌固形腫瘍組織の保存における、上記第五態様の(C2)に記載のサンプル保存液の使用;
(D3)結腸直腸癌腹水からの結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の分離における、上記第五態様の(C3)に記載の細胞分離緩衝液の使用
の中から選ばれるいずれか一つの使用について保護を求めている。
【0083】
第七態様において、本発明は、
(E1)上記第四態様に記載の方法のステップ(a1)を含む、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を結腸直腸癌固形腫瘍組織から解離する方法;
(E2)単離された直後の結腸直腸癌固形腫瘍組織を上記第二態様に記載のサンプル保存液に入れて2時間以内に保存するステップを含む、結腸直腸癌固形腫瘍組織を保存する方法;
(E3)上記第四態様に記載のステップ(b1)を含む、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を結腸直腸癌腹水から分離する方法
の中から選ばれるいずれか一つの方法について保護を求めている。
【0084】
上記各態様において、前記結腸直腸癌は、原発性結腸直腸癌であってもよい。病理学的分類は、結腸直腸癌または結腸直腸癌転移病巣である。病期はステージIIまたはステージIIIまたはステージIVである。
【0085】
さらに、結腸直腸癌固形腫瘍組織から結腸直腸癌初代細胞を分離する際に使用されるサンプルは、結腸直腸癌ステージIIまたはステージIIIまたはステージIVのサンプルであってもよい。結腸直腸癌腹水から結腸直腸癌初代細胞を分離する際に使用されるサンプルは、結腸直腸癌ステージIVのサンプルである。
【0086】
上記各態様において、前記結腸直腸癌初代細胞が結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞または結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞であってもよい。
【0087】
上記各態様において、前記結腸直腸癌初代細胞は、結腸直腸癌患者の手術サンプル(固形腫瘍サンプル)、結腸鏡検査穿刺サンプル、または腹水サンプルから分離されるものであってもよい。ここで、手術サンプルから得られた結腸直腸癌固形腫瘍組織標本は好ましくは20mgを超える重量を有する。腹水サンプルは好ましくは50mL以上である。結腸鏡検査穿刺サンプル(固形腫瘍サンプル)は2つ以上である。
【0088】
本発明において、上記のすべてのPBSは、1×PBS、pH7.3~7.5であってもよい。その具体的な組成として、溶媒は水であり、溶質および濃度は、KH2PO4 144mg/L、NaCl 9000mg/L、Na2HPO4 7H2O 795mg/Lである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】結腸直腸癌組織を処理して得られた単一細胞を示す図である。スケールは100μmであり、100倍拡大されている。
【
図2】結腸直腸癌組織の初代培養後に得られた細胞塊を示す図である。スケールは100μmであり、100倍拡大されている。
【
図3】結腸直腸癌組織の初代培養後に得られた結腸直腸癌細胞塊の切片のHE染色図である。スケールは100μmであり、200倍拡大されている。
【
図4】結腸直腸癌組織の初代培養後に得られた癌細胞塊の免疫蛍光染色図である。スケールは50μmであり、200倍拡大されている。
【
図5】シーケンシング結果に基づいたコピー数変動分析(CNV)を示す図である。
図5は、各代の結腸直腸癌初代細胞培養物(P1、P2、P3、P4、P5)と原発性結腸直腸癌腫瘍組織(Tumor)のコピー数変動状況が非常に一致していることを示している。
【
図6】結腸直腸癌腹水サンプルから分離された単一細胞を示す図である。スケールは100μmである。
【
図7】結腸直腸癌腹水サンプルで初代腫瘍細胞を培養して得られた細胞塊を示す図である。スケールは200μmである。
【
図8】結腸直腸癌腹水サンプルの初代培養後に得られた結腸直腸癌細胞のHE染色図である。
【
図9】結腸直腸癌腹水サンプルの初代培養後に得られた癌細胞塊の免疫蛍光染色図である。
【
図10】シーケンシング結果に基づいたコピー数変動分析(CNV)を示す図である。
図10は、各代の結腸直腸癌腹水初代細胞培養物(P1、P2、P3、P4、P5)と結腸直腸癌腹水中の癌細胞のコピー数変動状況が非常に一致していることを示している。
【
図11】
図11は、本発明で培養された結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を使用して行ったインビトロ薬剤感受性試験の結果を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明のマイクロウェルプレートチップを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
以下の実施例は、本発明をよりよく理解するためのものであるが、本発明を限定するものではない。以下の実施例の実験方法は、特に明記しない限り、通常の方法である。以下の実施例で使用される試験材料は、特に明記しない限り、いずれも通常の生化学試薬店から購入可能なものである。
【0091】
実施例1:結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を培養するための試薬の調製
1、サンプル保存液(100mL)
サンプル保存液(100mL)の具体的な処方を表1に示す。
サンプル保存液を調製した後、15mLの遠心分離チューブに分割装入し、チューブあたり5mLにした。分割装入後、4℃で1ヶ月間保存できる。
【0092】
2、サンプル洗浄液(100mL)
サンプル洗浄液(100mL)の具体的な処方を表2に示す。
サンプル洗浄液は、使用する直前に調製する必要がある。
【0093】
3、サンプル解離液(10mL)
サンプル解離液(10mL)の具体的な処方を表3に示す。
注:サンプル解離液は、使用する直前に調製した。
表3中のコラゲナーゼストック溶液の調製を表4~6に示す。
10×コラゲナーゼIストック溶液を調製した後、1.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入し、チューブあたり1mLにした。このストック溶液は、-20℃で長期間保存できる。
10×コラゲナーゼIIストック溶液を調製した後、1.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入し、チューブあたり1mLにした。このストック溶液は、-20℃で長期間保存できる。
20×コラゲナーゼIVストック溶液を調製した後、1.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入し、チューブあたり1mLにした。このストック溶液は、-20℃で長期間保存できる。
表4、表5、及び表6では、プロテアーゼの酵素活性を使用してコラゲナーゼ(前記コラゲナーゼIまたは前記コラゲナーゼIV)の単位Uを定義する:37℃、pH7.5の条件下で、1Uのプロテアーゼを使用してコラゲナーゼ(前記コラゲナーゼIまたは前記コラゲナーゼIV)を5時間処理すると、1μmоlのL-ロイシンを放出することができる。
【0094】
4、細胞消化液(10mL)
細胞消化液(10mL)の具体的な処方を表7に示す。
細胞消化液は、使用する直前に調製した。
【0095】
5、消化終止液(100mL)
消化終止液(100mL)の具体的な処方を表8に示す。
消化終止液を調製した後、4℃で1ヶ月間保存できる。
【0096】
6、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地(100mL)
結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地(100mL)の具体的な処方を表9に示す。
結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地を調製した後、0.22μMシリンジフィルター(Millipore SLGP033RS)でろ過して滅菌し、4℃で2週間保存できる。
表9中のヒト組換えタンパク質ストック溶液の調製を表11~表15に示し、SB202190ストック溶液の調製を表16に示し、A83-01ストック溶液の調製を表17に示し、N-acetyl-L-cysteinストック溶液の調製を表18に示し、Nicotinamideストック溶液の調製を表19に示し、コルチゾールストック溶液の調製を表20に示し、Y-27632ストック溶液の調製を表21に示す。これらのストック溶液を調製する際に必要な100×BSA溶液の調製を表10に示す。
100×BSA溶液は、使用する直前に調製した。
1000×ヒト組換えタンパク質EGFストック溶液を調製した後、1.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-80℃で長期間保存できる。
1000×ヒト組換えタンパク質bFGFストック溶液を調製した後、1.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-80℃で長期間保存できる。
1000×ヒト組換えタンパク質HGFストック溶液を調製した後、1.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-80℃で長期間保存できる。
1000×ヒト組換えタンパク質Wnt-3aストック溶液を調製した後、1.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-80℃で長期間保存できる。
1000×ヒト組換えタンパク質Nogginストック溶液を調製した後、1.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-80℃で長期間保存できる。
1000×SB202190ストック溶液を調製した後、0.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-20℃で長期間保存できる。
100000×A83-01ストック溶液を調製した後、0.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-20℃で長期間保存できる。
1000×N-acetyl-L-cysteiストック溶液を調製した後、0.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-20℃で長期間保存できる。
1000×Nicotinamideストック溶液を調製した後、0.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-20℃で長期間保存できる。
1000×コルチゾールストック溶液を調製した後、1.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-20℃で長期間保存できる。
1000×Y-27632ストック溶液を調製した後、0.5mLの滅菌遠心分離チューブに分割装入した。このストック溶液は、-20℃で長期間保存できる。
【0097】
7、細胞凍結保存液
細胞凍結保存液の具体的な処方を表22に示す。
細胞凍結保存液は、使用する直前に調製した。
表22中の1%メチルセルロース溶液の調製を表23に示す。
1%メチルセルロース溶液を調製した後、4℃で長期間保存できる。
【0098】
実施例2:結腸直腸癌固形腫瘍の術後標本の獲得
1、三級甲等病院と協力し、この協力は、正式な医療倫理審査により承認された。
2、主治医は、医療ガイドラインで指定された臨床的適応に従ってグループされる患者を選択し、術中の臨床的適応に従って適切なサンプルを選択してインビトロ培養にした。サンプルの選択基準は、原発性結腸直腸癌、病理学的病期分類がステージII、ステージIII、またはステージIVに分けられ、各病理学的分類が結腸直腸癌または結腸直腸癌転移病巣であり、結腸直腸癌手術標本の重量が20mgを超えたサンプルである。
3、主治医は、患者の性別、年齢、病歴、家族歴、喫煙歴、病期分類、臨床診断などの基本的な臨床情報を提供した。患者の名前、ID番号などの患者のプライバシーに関連する情報は隠され、統一された実験番号に置き換えられた。実験番号の命名原則は、サンプル収集の8桁の日付+患者の入院番号の最後の4桁である。例えば、2018年1月1日に提供されたサンプルは、患者の入院番号がT001512765である場合、サンプルの実験番号は201801012765となる。
4、手術中、外科医は手術室の無菌環境で新鮮な標本を収集し、予め準備されたサンプル保存液(表1)に入れた。サンプルは体から採取(単離)後に一時的に氷上に保管され、次の操作のために2時間以内に実験室に輸送された。
【0099】
実施例3:結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルの解離前処理
以下の操作は氷上で行う必要があり、すべての操作ステップは10分以内に完了しなければならない。
以下の操作に使用する手術器具は、予め高温高圧で滅菌する必要があり、乾燥しないと使用できない。
1、サンプルの重量を量った。
2、サンプル表面を75%(体積%)エタノールで10~30秒間洗浄した。
3、サンプルをサンプル洗浄液(表2)で10回洗浄し、滅菌PBS溶液で5回洗浄した。
4、眼科用はさみ、眼科用鑷子、外科用メスなどの器具を使用して、サンプル中の脂肪組織、結合組織、壊死組織を注意深く剥離させた。
【0100】
実施例4:結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルの解離
次の実施例で使用された手術器具は、予め高温高圧で滅菌する必要があり、乾燥しないと使用できない。
1、眼科用はさみで組織を1mm
3くらいの小片に切った。
2、組織1mgあたり0.1mLのサンプル解離液(表3)の用量で、細かく切られた組織サンプルを、予め37℃に予熱したサンプル解離液で処理し、37℃条件下で15分間から3時間でサンプルを解離した。大量の単一細胞が観察されるまで、15分ごとに顕微鏡でサンプルの解離状況を観察した。
3、10倍容量の消化終止液(表8)を使用して解離反応を終止させ、細胞懸濁液を収集した。
4、細胞懸濁液を40μmの滅菌セルストレーナーでろ過して組織断片及び付着細胞を除去した。
5、800gで室温で10分間遠心分離した後に上澄みを捨てた。
6、5mL滅菌PBSで細胞を再懸濁し、800gで室温で10分間遠心分離して上澄みを捨てた。
7、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地(表9)を使用して細胞ペレットを再懸濁し、顕微鏡で細胞の状態を観察し、細胞をカウントした。
図1に示すように、解離して得られた単一細胞懸濁液には、腫瘍細胞の他に、赤血球、リンパ球、線維細胞など、さまざまな種類の細胞が大量に存在する。本方法の利点の1つは、後続の培養過程では、癌細胞のみを大量に増殖させることができ、他の細胞の割合は徐々に減少するまたは無くなるので、最終的に高純度の結腸直腸癌初代腫瘍細胞が得られる。
【0101】
実施例5:結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養
1、低付着表面(Low-attachment-surface)を使用して結腸直腸癌初代細胞の懸濁培養をした。使用した培地はすなわち、実施例1の結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地(表9)であった。6ウェルプレートを例にして、ウェルあたり10
6セルの密度でプレートにコーティングし、37℃、5%CO
2の条件下で細胞インキュベーターで培養した。
2、毎日細胞の状態を観察し、細胞が約80μmの直径を有する塊を形成するまで、3日ごとに培地を交換した。
図2に示すように、3~10日間の培養を経て、癌細胞は大量に増殖して直径80μmの細胞塊を形成した。腫瘍細胞の総数は10
7を超え得、他の種類の細胞の数は明らかに減少するまたは無くなる。本方法は大量のサンプルでテストされており、結腸直腸癌固形腫瘍初代腫瘍細胞のインビトロ培養の成功率は80%に達することができる。
【0102】
実施例6:結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の継代
1、培養皿中の細胞塊を収集し、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
2、滅菌PBS溶液で細胞塊を洗浄し、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
3、細胞塊を細胞消化液(表7)で再懸濁し、37℃で消化した。細胞塊が単一の細胞に消化されるまで、5分ごとに顕微鏡で細胞塊の消化状態を観察した。
4、10倍容量の消化終止液(表8)を使用して解離反応を終止させ、細胞懸濁液を収集した。
5、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地(表9)で細胞ペレットを再懸濁し、細胞をカウントした。
7、低付着表面(Low-attachment-surface)を使用して結腸直腸癌初代細胞の培養をした。使用した培地はすなわち、実施例1の結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地(表9)であった。6ウェルプレートを例にして、ウェルあたり106セルの密度でプレートにコーティングし、37℃、5%CO2の条件下で細胞インキュベーターで培養した。
【0103】
実施例7:結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の凍結保存
懸濁培養した結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞は、2~3回の継代増殖後に凍結保存することができる。
1、培養皿中の細胞塊を収集し、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
2、滅菌PBS溶液で細胞塊を洗浄し、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
3、細胞塊を細胞消化液(表7)で再懸濁し、37℃で消化した。細胞塊が単一の細胞に消化されるまで、15分ごとに顕微鏡で細胞塊の消化状態を観察した。
4、10倍容量の消化終止液(表8)を使用して解離反応を終止させ、細胞懸濁液を収集し、細胞をカウントした。
5、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、細胞凍結保存液(表22)を使用し、106/mLの密度で細胞ペレットを再懸濁し、2mL凍結保存チューブにチューブあたり1mLの細胞懸濁液を入れて、勾配冷却ボックスで一晩凍結保存した後に、長期保存のために液体窒素に移した。
【0104】
実施例8:結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の蘇生
液体窒素に保存された結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞を蘇生させることができる。
1、37℃の滅菌水を5分前に準備した。
2、凍結保存チューブを液体窒素から取りだし、37℃の滅菌水で細胞をすばやく解凍した。
3、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
4、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地(表9)で細胞ペレットを再懸濁し、低付着表面を使用して結腸直腸癌初代細胞を培養し、各チューブの細胞を3.5cm培養皿に蘇生させ、37℃、5%CO2の条件下で細胞インキュベーターで培養した。
【0105】
実施例9:結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞のHE染色同定
下記実施例で使用された試薬消耗品についての説明:
HE染色キット(Beijing Solarbio Science & Technology Co., Ltd.、#G1120);
カチオン脱落防止ガラススライド(北京中杉金橋生物科技有限公司);
キシレン、メタノール、アセトン(北京化学試剤公司、分析グレード);
ニュートラルバルサム(Neutral balsam,Beijing Yili Fine Chemicals Co., Ltd.)。
1、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培地(表9、その中で、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が10ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Wnt-3aの最終濃度が200ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Nogginの最終濃度が100ng/mLであり、SB202190の最終濃度が10μMであり、A83-01の最終濃度が1μMであり、N-アセチル-L-システインの最終濃度が1mMであり、Nicotinamideの最終濃度が10mMであり、コルチゾールの最終濃度が20ng/mLであり、Y-27632の最終濃度が10μMである)で培養して得られた懸濁結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の塊を800gでの遠心分離によって収集し、4%パラホルムアルデヒドで固定させた。細胞塊ペレットをパラフィンに包埋して切片化し、切片の厚さは5μmであった。
2、パラフィン切片をキシレン溶液に浸し、室温で5分間インキュベーションして脱パラフィンし、3回繰り返した後、脱イオン水で2回濯いだ。
3、切片を無水エタノールに浸し、室温で10分間インキュベーションし、2回繰り返した。
4、切片を95%エタノールに浸し、室温で10分間インキュベーションし、2回繰り返した後、脱イオン水で切片を2回濯いだ。
5、ガラススライド上の水分が少し乾いたら、ヘマトキシリン染色液100μLを加えて1分間染色した。
6、ヘマトキシリン染色液を吸い取って、ガラススライドを水道水で3回洗浄した。
7、分化液100μLを滴下して1分間分化した。
8、分化液を吸い取って、ガラススライドを水道水で2回洗浄してから、蒸留水で1回洗浄した。
9、ガラススライドの表面の水分を吸い取って、エオシン染色液200μLを加えて40秒間染色した。
10、エオシン染色液を吸い取って、順に75%、80%、90%、100%エタノールで20秒、20秒、40秒、40秒すすいで脱水した。
11、エタノールが乾いた後、キシレン50μLを滴下して細胞に透過化処理をした。
12、キシレンが完全に乾いた後、ニュートラルバルサムを一滴加え、切片をカバーガラスで封入し、顕微鏡で観察して写真を撮った。
図3は、インビトロ培養で得られた結腸直腸癌固形腫瘍初代腫瘍細胞のHE染色効果を示す図である。この図から見えるように、これらの細胞は一般に、核細胞質比が高く、核が深く染色され、核内にクロマチンが凝集し、多核で、細胞サイズが不均一であるなど、癌細胞の特徴を持っており、数十から数百の腫瘍細胞が凝集して、特定の三次元構造を有する腫瘍細胞塊を形成している。
【0106】
実施例10:結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の免疫蛍光染色同定
次の実施例で使用された試薬についての説明:
パラホルムアルデヒド(北京化学試剤公司、分析グレード)、パラホルムアルデヒド粉末を超純水に溶解して4%(4g/100mL)のパラホルムアルデヒド溶液を調製した;
メタノール、ジメチルスルホキシド(北京化学試剤公司、分析グレード);
過酸化水素(北京化学試剤公司、35%);
メタノール、ジメチルスルホキシド、および35%過酸化水素を4:4:1(体積比)の比率で混合して丹氏すすぎ液を調製した;
ウシ血清アルブミン(Sigma、#A1933)、ウシ血清アルブミンをPBS溶液に溶解して3%(3g/100mL)のBSA溶液を調製した;
免疫蛍光一次抗体(Abcam、#ab17139);
免疫蛍光二次抗体(CST、#4408);
Hoechst染色液(Beijing Solarbio Science & Technology Co., Ltd.、#C0021);
次のステップに従って、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培地(表9、その中で、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が10ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Wnt-3aの最終濃度が200ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Nogginの最終濃度が100ng/mLであり、SB202190の最終濃度が10μMであり、A83-01の最終濃度が1μMであり、N-アセチル-L-システインの最終濃度が1mMであり、Nicotinamideの最終濃度が10mMであり、コルチゾールの最終濃度が20ng/mLであり、Y-27632の最終濃度が10μMである)で培養して得られた結腸直腸癌固形腫瘍初代腫瘍細胞の塊を免疫蛍光染色し、一次抗体はCK8+CK18であり、上皮由来の細胞をキャラクタライゼーションした。
1、培養皿の中の細胞塊を収集し、PBSで1回洗浄した後、細胞ペレットを4%パラホルムアルデヒドで再懸濁し、4℃で一晩して固定させた。
2、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットを予冷したメタノール溶液で再懸濁し、氷上に1時間置いた。
3、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットを丹氏すすぎ液で再懸濁し、室温で2時間置いた。
4、800gで遠心分離して上澄みを捨て、PBSで希釈した75%、50%、25%(体積%)のメタノール溶液で順に細胞を洗浄し、毎回10分間洗浄した。
5、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットを3%BSA溶液で懸濁し、室温で2時間ブロックした。
6、一次抗体を3%BSA溶液で1:500の比率で希釈し、細胞ペレットを抗体希釈液(3%BSA溶液)で再懸濁し、一次抗体を4℃で一晩保持した。
7、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットをPBS溶液で5回、毎回20分間洗浄した。
8、二次抗体を3%BSA溶液で1:2000の比率で希釈し、細胞ペレットを抗体希釈液(3%BSA溶液)で再懸濁し、二次抗体を室温で2時間保持した。
9、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットをPBS溶液で5回、毎回20分間洗浄した。
10、100×Hoechst染色液を1/100の体積比で加え、室温で20分間染色した。
11、細胞ペレットをPBS溶液で2回、毎回10分間洗浄した。共焦点レーザー顕微鏡を使用して細胞塊の染色状況を観察した。
図4は、インビトロで培養された結腸直腸癌固形腫瘍初代腫瘍細胞の塊の免疫蛍光染色効果を示す図である。この図から見えるように、細胞塊を構成する細胞はすべてCK8/CK18陽性であり、上皮由来である。これは、本方法で培養した腫瘍細胞が純度の高いものであることを実証した。20の結腸直腸癌サンプルの初代培養物について免疫蛍光染色によって同定して統計した結果、本方法によって得られた結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞における腫瘍細胞の割合が72%~95%に達したことは示されている(表24)。
【0107】
実施例11:結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培養物及び原発腫瘍組織
下記実施例で言及されたDNA抽出フローは、天根(TIANGEN)血液/組織/細胞ゲノム抽出キット(DP304)を使用して行われた。
下記実施例で言及されたライブラリー構築フローは、NEB DNAシーケンシングライブラリー構築キット(E7645)を使用して行われた。
下記実施例で言及されたハイスループットシーケンシングは、Illumina HiSeq X-tenシーケンシングプラットフォームを指す。
1、結腸直腸癌固形腫瘍サンプルを取得し、インビトロ培養操作を行う前に、まず、DNA抽出、ライブラリー構築、および全ゲノムハイスループットシーケンシング(WGS)のために結腸直腸癌固形腫瘍サンプル10mgを取り、シーケンシング深度は30Xであり、残りの固形腫瘍サンプルを結腸直腸癌初代細胞のインビトロ培養に使用した。
2、結腸直腸癌組織の処理後、一定期間の培養を経て、直径80μm以上の細胞塊を形成したものをP0代細胞として記録し、その後は継代の回数に応じて順にP1、P2、…、Pnとして記録した。結腸直腸癌初代腫瘍細胞培養物のP1、P2、P3、P4代からそれぞれ10
6の細胞を取りだし、DNA抽出、ライブラリー構築、および全ゲノムハイスループットシーケンシング(WGS)に使用し、シーケンシング深度は30Xであった。
3、各グループのシーケンシング結果をコピー数変動分析(CNV)して、原発性結腸直腸癌腫瘍組織と各代の結腸直腸癌初代細胞培養物との間のコピー数変動を比較した。
図5に示すように、各代の結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培養物(P1、P2、P3、P4、P5)と原発性結腸直腸癌腫瘍組織(Tumor)のコピー数変動状況が非常に一致している。よって、本方法で得られた結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞は、患者の原発性腫瘍の真の状況を表すことができる。
【0108】
実施例12:異なる初代細胞培地での結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率の比較
本実施例では、培地の処方のみが異なる以外、すべてのサンプルの初代培養の操作方法およびフローは完全に同じである(上記記載を参照)。テストされた各種の初代細胞培地について表25を参照できる。スキームDは、本発明で使用される処方であり、詳細について、表9を参照できる。
初代細胞培地を調製した後、0.22μMシリンジフィルター(Millipore SLGP033RS)でろ過して滅菌し、4℃で2週間保存できる。
4つの初代細胞培地スキームを使用して、それぞれ20の結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルを処理し、実施例3、4、5に記載の方法に従ってサンプル処理および培養操作を行った。10日間培養した後、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率を統計した結果を表26に示す:
以上から分かるように、初代細胞培地は、結腸直腸癌初代細胞の培養成功率に大きな影響を与え、本発明で使用した結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞培地(表9)は、結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルにおける癌細胞の増殖を最大限に刺激することができ、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率を高めることができる。
【0109】
実施例13:異なるサンプル保存液での結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率の比較
本実施例では、サンプル保存液の処方のみが異なる以外、すべてのサンプルの初代培養の操作方法およびフローは完全に同じである(上記記載を参照)。テストされた各種のサンプル保存液について表27を参照できる。スキームEは、本発明で使用される処方であり、詳細について、表1を参照できる。
上記の表の各種のサンプル保存液を調製した後、15mLの遠心分離チューブに分割装入し、チューブあたり5mLにした。分割装入後、4℃で1ヶ月間保存できる。
5つのサンプル保存液スキームを使用して、それぞれ20の結腸直腸癌固形腫瘍サンプルを処理し、サンプルを体から採取した後、4℃でサンプル保存液に一時的に保存した。体から採取して2時間後、実施例3、4、5に記載の方法に従ってサンプル処理および培養操作を行った。10日間培養した後、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率を統計した結果を表28に示す:
以上から分かるように、サンプル保存液の処方は、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率に大きな影響を与え、本発明で使用したサンプル保存液(表1)は、結腸直腸癌固形腫瘍組織サンプルにおける癌細胞の活性を最大限に保護することができ、培養成功率を高めることができる。
【0110】
実施例14:異なるサンプル解離液での結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率の比較
本実施例では、サンプル解離液の処方のみが異なる以外、すべてのサンプルの初代培養の操作方法およびフローは完全に同じである(上記記載を参照)。テストされた各種のサンプル解離液について表29を参照できる。スキームDは、本発明で使用される処方であり、詳細について、表3を参照できる。
サンプル解離液は、使用する直前に調製した。
重量が100mgを超えた結腸直腸癌固形腫瘍組織塊を20個選択し、4部分に均等に分け、上記の4つのサンプル解離液を使用して、それぞれ実施例3、4、5に記載の方法に従ってサンプル処理および培養操作を行った。10日間培養した後、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率を統計した結果を表30に示す:
以上から分かるように、サンプル解離液の処方は、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率に大きな影響を与え、本発明で使用したサンプル解離液(表3)は、結腸直腸癌固形腫瘍組織における癌細胞を最大限に分離することができ、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養成功率を高めることができる。
【0111】
実施例15:異なる細胞消化液での結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の継代成功率の比較
本実施例では、細胞消化液の処方のみが異なる以外、すべてのサンプルの初代細胞継代の操作方法およびフローは完全に同じである(上記記載を参照)。テストされた各種の細胞消化液について表31を参照できる。スキームDは、本発明で使用される処方であり、詳細について、表7を参照できる。
細胞消化液は、使用する直前に調製した。
培養に成功した結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞のサンプルを20個選択し、それぞれ上記の4つの細胞消化液を使用して、培養された結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞について実施例6に記載の方法に従って連続継代操作を行った。癌細胞が増殖して直径80μmの細胞塊を形成すると継代し(10回以下)、最大継代回数を記録した。統計した結果を表32に示す:
以上から分かるように、細胞消化液の処方は、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の継代成功率に大きな影響を与え、本発明で使用した細胞消化液(表7)は、細胞塊中の癌細胞を温和に解離し、サンプルを連続的に継代して結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の活性を維持することができる。
【0112】
実施例16:結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培養に使用される試薬の調製
1、細胞分離緩衝液(100mL)
細胞分離緩衝液(100mL)の具体的な処方を表33に示す:
細胞分離緩衝液を調製した後、4℃で1ヶ月間保存できる。
表33中のヘパリンナトリウム溶液の調製について、表34を参照できる。
1000×ヘパリンナトリウム溶液は、使用する直前に調製した。
2、細胞消化液(10mL)
細胞消化液(10mL)の具体的な処方は、表7に示す通りである(結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養に使用される細胞消化液の処方と同じである)。
3、消化終止液(100mL)
消化終止液(100mL)の具体的な処方は、表8に示す通りである(結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養に使用される消化終止液の処方と同じである)。
4、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培地(100mL)
結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培地(100mL)の具体的な処方は、表9に示す通りである(結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養に使用される結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培地の処方と同じである)。
5、細胞凍結保存液
細胞凍結保存液の具体的な処方は、表22に示す通りである(結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養に使用される細胞凍結保存液の処方と同じである)。
【0113】
実施例17:結腸直腸癌腹水サンプルの獲得
1、三級甲等病院と協力し、この協力は、正式な医療倫理審査により承認された。
2、主治医は、医療ガイドラインで指定された臨床的適応に従ってグループされる患者を選択し、術中の臨床的適応に従って適切なサンプルを選択してインビトロ培養にした。サンプルの選択基準は、原発性結腸直腸癌、病理学的病期分類がステージIVであり、病理学的分類が結腸直腸癌または結腸直腸癌転移病巣であり、患者は、排出する必要のある悪性腹水があり、排出量は50mL以上である。
3、主治医は、患者の性別、年齢、病歴、家族歴、喫煙歴、病期分類、臨床診断などの基本的な臨床情報を提供した。患者の名前、ID番号などの患者のプライバシーに関連する情報は隠され、統一された実験番号に置き換えられた。実験番号の命名原則は、サンプル収集の8桁の日付+患者の入院番号の最後の4桁である。例えば、2018年1月1日に提供されたサンプルは、患者の入院番号がT001512765である場合、サンプルの実験番号は201801012765となる。
4、主治医は滅菌器具および容器を使用して腹水サンプルを収集した。サンプルは体から採取後に一時的に氷上に保管され、次の操作のために72時間以内に実験室に輸送された。
【0114】
実施例18:結腸直腸癌腹水サンプルの前処理
下記実施例は氷上で操作する必要がある:
1、結腸直腸癌腹水サンプルを氷上に約30分間静置し、サンプル中の凝血塊と大きい不溶性固形物をサンプルチューブの底に沈降させた。
2、上澄みを50mLの滅菌遠心分離チューブに注意深く移した。
3、2000gで5分間、室温で遠心分離し、上澄みを捨てた。
4、細胞ペレットを細胞分離緩衝液(表33)で再懸濁し、2000gで室温で5分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
5、細胞ペレットを細胞分離緩衝液(表33)で再懸濁し、細胞濃度を107~108セル/mLに調整した。
【0115】
実施例19:結腸直腸癌腹水サンプルの密度勾配遠心分離
1、50mLの滅菌遠心分離チューブを使用して、細胞懸濁液と同じ容量のFicoll細胞分離液(MP#50494)を取った。
2、細胞懸濁液を細胞分離液の上層に注意深く加え、細胞懸濁液と細胞分離液との間に明確な界面を形成させた。
3、2000gで横型遠心分離機で室温で20分間遠心分離した。
4、中間層白膜を吸い取って新しいチューブに入れた。
5、細胞ペレットを20mLの滅菌PBSで再懸濁し、1500gで10分間、室温で遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培地(表9)を使用して細胞ペレットを再懸濁し、顕微鏡で細胞の状態を観察し、細胞をカウントした。
図6に示すように、結腸直腸癌腹水サンプルから解離して得られた単一細胞懸濁液には、腫瘍細胞の他に、赤血球、リンパ球、線維細胞など、さまざまな種類の細胞が大量に存在する。本方法の利点の1つは、後続の培養過程では、癌細胞のみを大量に増殖させることができ、他の細胞の割合は徐々に減少するまたは無くなるので、最終的に高純度の結腸直腸癌初代腫瘍細胞が得られる。
【0116】
実施例20:結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞の培養
1、低付着表面を使用して結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の懸濁培養をした。6ウェルプレートを例にして、ウェルあたり10
6セルの密度でプレートにコーティングし、37℃、5%CO
2の条件下で細胞インキュベーターで培養した。
2、毎日細胞の状態を観察し、細胞が約80μmの直径を有する塊を形成するまで、3日ごとに培地を交換した。
図7に示すように、3~10日間の培養を経て、癌細胞は大量に増殖して直径80μmの細胞塊を形成した。腫瘍細胞の総数は10
7を超え得、他の種類の細胞の数は明らかに減少するまたは無くなる。本方法は大量のサンプルでテストされており、結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞のインビトロ培養の成功率は80%に達することができる。
【0117】
実施例21:結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞の継代
1、培養皿中の細胞塊を収集し、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
2、滅菌PBS溶液で細胞塊を洗浄し、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
3、細胞塊を細胞消化液(表7)で再懸濁し、37℃で消化した。細胞塊が単一の細胞に消化されるまで、5分ごとに顕微鏡で細胞塊の消化状態を観察した。
4、10倍容量の消化終止液(表8)を使用して解離反応を終止させ、細胞懸濁液を収集した。
5、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培地(表9)で細胞ペレットを再懸濁し、細胞をカウントした。
7、低付着表面を使用して結腸直腸癌初代細胞の培養をした。6ウェルプレートを例にして、ウェルあたり106セルの密度でプレートにコーティングし、37℃、5%CO2の条件下で細胞インキュベーターで培養した。
【0118】
実施例22:結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞の凍結保存
懸濁培養した結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞は、2~3回の継代増殖後に凍結保存することができる。
1、培養皿中の細胞塊を収集し、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
2、滅菌PBS溶液で細胞塊を洗浄し、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
3、細胞塊を細胞消化液(表7)で再懸濁し、37℃で消化した。細胞塊が単一の細胞に消化されるまで、5分ごとに顕微鏡で細胞塊の消化状態を観察した。
4、10倍容量の消化終止液(表8)を使用して反応を終止させ、細胞懸濁液を収集し、細胞をカウントした。
5、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、細胞凍結保存液(表22)を使用し、106/mLの密度で細胞ペレットを再懸濁し、2mL凍結保存チューブにチューブあたり1mLの細胞懸濁液を入れて、勾配冷却ボックスで一晩凍結保存した後に、長期保存のために液体窒素に移した。
【0119】
実施例23:結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞の蘇生
液体窒素に保存された結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞を蘇生させることができる。
1、37℃の滅菌水を5分前に準備した。
2、凍結保存チューブを液体窒素から取りだし、37℃の滅菌水で細胞をすばやく解凍した。
3、800gで室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
4、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培地(表9)で細胞ペレットを再懸濁し、低付着表面を使用して結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞を培養し、各チューブの細胞を3.5cm培養皿に蘇生させ、37℃、5%CO2の条件下で細胞インキュベーターで培養した。
【0120】
実施例24:結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞のHE染色同定
下記実施例で使用された試薬消耗品についての説明:
HE染色キット(Beijing Solarbio Science & Technology Co., Ltd.、#G1120);
カチオン脱落防止ガラススライド(北京中杉金橋生物科技有限公司);
キシレン、メタノール、アセトン(北京化学試剤公司、分析グレード);
ニュートラルバルサム(Beijing Yili Fine Chemicals Co., Ltd.)。
1、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培地(表9、その中で、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が10ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Wnt-3aの最終濃度が200ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Nogginの最終濃度が100ng/mLであり、SB202190の最終濃度が10μMであり、A83-01の最終濃度が1μMであり、N-アセチル-L-システインの最終濃度が1mMであり、Nicotinamideの最終濃度が10mMであり、コルチゾールの最終濃度が20ng/mLであり、Y-27632の最終濃度が10μMである)で培養して得られた懸濁結腸直腸癌腹水由来初代腫瘍細胞を10
4/mLの濃度の細胞懸濁液に調製し、カチオン脱落防止ガラススライドに10μLを滴下し、自然に乾燥させた。
2、風乾した細胞に、4℃で予冷した50μLのメタノール/アセトン混合物(体積比1:1)を注意深く滴下してから、ガラススライドを4℃の冷蔵庫に入れて10分間固定させた。
3、細胞が固定されたガラススライドを取りだして、室温で自然に乾燥させた。
4、ガラススライドを200μLのPBSで2回洗浄した。
5、ガラススライド上の水分が少し乾いたら、ヘマトキシリン染色液100μLを加えて1分間染色した。
6、ヘマトキシリン染色液を吸い取って、ガラススライドを200μLの水道水で3回洗浄した。
7、分化液100μLを滴下して1分間分化した。
8、分化液を吸い取って、ガラススライドを水道水で2回洗浄してから、蒸留水で1回洗浄した。
9、ガラススライドの表面の水分を吸い取って、エオシン染色液200μLを滴下して40秒間染色した。
10、エオシン染色液を吸い取って、順に75%、80%、90%、100%エタノールで20秒、20秒、40秒、40秒すすいで脱水した。
11、エタノールが乾いた後、キシレン50μLを滴下して細胞に透過化処理をした。
12、キシレンが完全に乾いた後、ニュートラルバルサムを一滴加え、切片をカバーガラスで封入し、顕微鏡で観察して写真を撮った。
図8は、インビトロ培養で得られた結腸直腸癌腹水由来初代腫瘍細胞のHE染色効果を示す図である。この図から見えるように、これらの細胞は一般に、核細胞質比が高く、核が深く染色され、核内にクロマチンが凝集し、多核で、細胞サイズが不均一であるなど、癌細胞の特徴を持っている。
【0121】
実施例25:結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞の免疫蛍光染色同定
下記実施例で使用された試薬についての説明:
パラホルムアルデヒド(北京化学試剤公司、分析グレード)、パラホルムアルデヒド粉末を超純水に溶解して4%のパラホルムアルデヒド溶液を調製した;
メタノール、ジメチルスルホキシド(北京化学試剤公司、分析グレード);
過酸化水素(北京化学試剤公司、35%);
メタノール、ジメチルスルホキシド、および35%過酸化水素を4:4:1の比率で混合して丹氏すすぎ液を調製した;
ウシ血清アルブミン(Sigma、#A1933)、ウシ血清アルブミンをPBS溶液に溶解して3%のBSA溶液を調製した;
免疫蛍光一次抗体(Abcam、#ab17139);
免疫蛍光二次抗体(CST、#4408);
Hoechst染色液(Beijing Solarbio Science & Technology Co., Ltd.、#C0021);
次のステップに従って、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培地(表9、その中で、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が10ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Wnt-3aの最終濃度が200ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Nogginの最終濃度が100ng/mLであり、SB202190の最終濃度が10μMであり、A83-01の最終濃度が1μMであり、N-アセチル-L-システインの最終濃度が1mMであり、Nicotinamideの最終濃度が10mMであり、コルチゾールの最終濃度が20ng/mLであり、Y-27632の最終濃度が10μMである)で培養して得られた結腸直腸癌腹水由来初代腫瘍細胞の塊を免疫蛍光染色し、一次抗体はCK8+CK18であり、上皮由来の細胞をキャラクタライゼーションした。
1、培養皿の中の腹水由来の初代腫瘍細胞塊を収集し、PBSで1回洗浄した後、細胞ペレットを4%パラホルムアルデヒドで再懸濁し、4℃で一晩して固定させた。
2、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットを予冷したメタノール溶液で再懸濁し、氷上に1時間置いた。
3、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットを丹氏すすぎ液で再懸濁し、室温で2時間置いた。
4、800gで遠心分離して上澄みを捨て、PBSで希釈した75%、50%、25%のメタノール溶液で順に細胞を洗浄し、毎回10分間洗浄した。
5、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットを3%BSA溶液で懸濁し、室温で2時間ブロックした。
6、一次抗体を3%BSA溶液で1:500の比率で希釈し、細胞ペレットを抗体希釈液で再懸濁し、一次抗体を4℃で一晩保持した。
7、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットをPBS溶液で5回、毎回20分間洗浄した。
8、二次抗体を3%BSA溶液で1:2000の比率で希釈し、細胞ペレットを抗体希釈液で再懸濁し、二次抗体を室温で2時間保持した。
9、800gで遠心分離して上澄みを捨て、細胞ペレットをPBS溶液で5回、毎回20分間洗浄した。
10、100×Hoechst染色液を1/100の体積比で加え、室温で20分間染色した。
11、細胞ペレットをPBS溶液で2回、毎回10分間洗浄した。レーザー共焦点顕微鏡を使用して細胞塊の染色状況を観察した。
図9は、インビトロで培養された結腸直腸癌腹水由来初代腫瘍細胞の塊の免疫蛍光染色効果を示す図である。この図から見えるように、細胞塊を構成する細胞はすべてCK8/CK18陽性であり、上皮由来である。これは、本方法で培養した腫瘍細胞が純度の高いものであることを実証した。20の結腸直腸癌腹水初代培養物について免疫蛍光染色によって同定して統計した結果、本方法によって得られた結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞における腫瘍細胞の割合が72%~91%に達したことは示されている(表35)。
【0122】
実施例26:結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞培養物及び原発腫瘍組織
下記実施例で言及されたDNA抽出フローは、天根血液/組織/細胞ゲノム抽出キット(DP304)を使用して行われた。
下記実施例で言及されたライブラリー構築フローは、NEB DNAシーケンシングライブラリー構築キット(E7645)を使用して行われた。
下記実施例で言及されたハイスループットシーケンシングは、Illumina HiSeq X-tenシーケンシングプラットフォームを指す。
1、結腸直腸癌腹水サンプルを取得し、インビトロ培養操作を行う前に、まず、結腸直腸癌腹水サンプル20mLを取って遠心分離し、腹水細胞ペレットを得て、DNA抽出、ライブラリー構築、および全ゲノムハイスループットシーケンシング(WGS)を行い、シーケンシング深度は30Xであり、残りの結腸直腸癌腹水サンプルを結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞のインビトロ培養に使用した(具体的な方法について、前述の実施例を参照)。
2、結腸直腸癌腹水サンプルの処理後、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培地(表9、その中で、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が10ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Wnt-3aの最終濃度が200ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Nogginの最終濃度が100ng/mLであり、SB202190の最終濃度が10μMであり、A83-01の最終濃度が1μMであり、N-アセチル-L-システインの最終濃度が1mMであり、Nicotinamideの最終濃度が10mMであり、コルチゾールの最終濃度が20ng/mLであり、Y-27632の最終濃度が10μMである)を使用して一定期間培養した後、直径80μm以上の細胞塊を形成したものをP0代細胞として記録し、その後は継代の回数に応じて順にP1、P2、…、Pnとして記録した。結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞培養物のP1、P2、P3、P4、P5代からそれぞれ10
6の細胞を取りだし、DNA抽出、ライブラリー構築、および全ゲノムハイスループットシーケンシング(WGS)に使用し、シーケンシング深度は30Xであった。
3、各グループのシーケンシング結果をコピー数変動分析(CNV)して、結腸直腸癌腹水中の癌細胞と各代の結腸直腸癌腹水初代細胞培養物との間のコピー数変動を比較した。
図10に示すように、各代の結腸直腸癌腹水初代細胞培養物(P1、P2、P3、P4、P5)と結腸直腸癌腹水中の癌細胞のコピー数変動状況が非常に一致している。よって、本方法で得られた結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞は、患者の腹水に存在する癌細胞の真の状況を表すことができる。
【0123】
実施例27:異なる初代細胞培地での結腸直腸癌腹水由来の初代腫瘍細胞の培養成功率の比較
本実施例では、培地の処方のみが異なる以外、すべてのサンプルの初代培養の操作方法およびフローは完全に同じである(上記記載を参照)。テストされた各種の初代細胞培地について表36を参照できる。スキームDは、本発明で使用される処方であり、詳細について、表9を参照できる(その中で、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が40ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Wnt-3aの最終濃度が300ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質Nogginの最終濃度が150ng/mLであり、SB202190の最終濃度が10μMであり、A83-01の最終濃度が0.5μMであり、N-アセチル-L-システインの最終濃度が1mMであり、Nicotinamideの最終濃度が10mMであり、コルチゾールの最終濃度が20ng/mLであり、Y-27632の最終濃度が5μMである)。
初代細胞培地を調製した後、0.22μMシリンジフィルター(Millipore SLGP033RS)でろ過して滅菌し、4℃で2週間保存できる。
4つの初代細胞培地スキームを使用して、それぞれ20の結腸直腸癌腹水サンプルを処理し、実施例18、19、20に記載の方法に従ってサンプル処理および培養操作を行った。10日間培養した後、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培養成功率を統計した結果を表37に示す:
以上から分かるように、初代細胞培地は、結腸直腸癌腹水初代細胞の培養成功率に大きな影響を与え、本発明で使用した結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞培地(表9)は、結腸直腸癌腹水サンプルにおける癌細胞の増殖を最大限に刺激することができ、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培養成功率を高めることができる。
【0124】
実施例28:異なる細胞消化液での結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の継代成功率の比較
本実施例では、細胞消化液の処方のみが異なる以外、すべてのサンプルの初代細胞継代の操作方法およびフローは完全に同じである(上記記載を参照)。テストされた各種の細胞消化液について表38を参照できる。スキームDは、本発明で使用される処方であり、詳細について、表7を参照できる。
細胞消化液は、使用する直前に調製した。
培養に成功した結腸直腸癌腹水サンプルを20例選択し、それぞれ上記の4つの細胞消化液を使用して、培養された結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞について実施例21に記載の方法に従って連続継代操作を行った。癌細胞が増殖して直径80μmの細胞塊を形成すると継代し(10回以下)、最大継代回数を記録した。統計した結果を表39に示す:
以上から分かるように、細胞消化液の処方は、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の継代成功率に大きな影響を与え、本発明で使用した細胞消化液(表7)は、細胞塊中の癌細胞を温和に解離し、サンプルを連続的に継代して結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の活性を維持することができる。
【0125】
実施例29:異なる材料の細胞培養消耗品を用いた結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培養
本実施例では、細胞培養消耗品の材料(未修飾)のみが異なる(表40)以外、すべてのサンプルの初代培養の操作方法およびフローは完全に同じである(上記記載を参照)。
注:ポリスチレン(Polystyrene、PSと省略)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PCと省略)、ポリメチルメタクリレート(Poly-methyl methacrylate、PMMAと省略)、COC樹脂、シクロオレフィンポリマー(Cyclo Olefin Polymer、COPと省略)、低付着表面(low-attachment-surface、LASと省略)。
表40から分かるように、異なる材料の培養消耗品は、結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培養成功率に一定の影響を与え、低付着表面(LAS)の培養成功率が最も高い。
【0126】
実施例30:CYTOP修飾した細胞培養消耗品を使用した結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞の培養
本実施例では、細胞培養消耗品の材料のみが異なる(表41)以外、すべてのサンプルの初代培養の操作方法およびフローは完全に同じであり(上記記載を参照)、CYTOPの修飾方法も完全に同じである。
CYTOP修飾方法は次の通りである。まず、パワー20W、エッチング時間が3分間であるエッチング条件で、細胞培養容器に対して純酸素エッチングを行う。そして、培養皿または培養プレートの表面を適切な量(96ウェルプレートを例にすると、各ウェルで20μL、適切な量とは、培養皿の底部を完全に覆うことを意味する)の1%CYTOP溶液(処方について表42を参照)で覆い、CYTOP溶液が完全に乾燥してから使用することができる。
表41から見えるように、CYTOP修飾は、様々な材料の培養成功率を効果的に高めることができる。
1%CYTOP溶液を調製した後、室温で長期間保存できる。
【0127】
実施例31:結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞を用いた薬剤感受性試験
本実施例で使用された化学療法薬剤の5-フルオロウラシル(5-Fluorouracil)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、およびイリノテカン(Irinotecan)はいずれもSelleck製品である。
本実施例で言及されたCelltiter-Glo細胞生存率検出キットは、Promega製品である。
本発明で培養して得られた結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞をインビトロ薬剤感受性試験に使用した:標準サイズの96ウェル低吸着細胞培養プレートを使用し、10
5/ウェルの密度で初代細胞を播種し、各薬剤に5つの薬剤濃度勾配を設置し、n=3である。薬剤を添加した後、細胞を37℃、5%CO
2の条件下で7日間インキュベーションした。薬剤作用が終わった後、Celltiter-Glo細胞生存率検出キットを使用して、各ウェルの細胞生存率を検出した。実験の結果を
図11に示す。この結果は、本方法によって得られた結腸直腸癌腹水初代腫瘍細胞が、インビトロの薬剤感受性検出に使用できることを示している。
【0128】
実施例32:マイクロウェルプレートチップの加工
本実施例では、注入成形の加工方法が使用され、PMMA材料(または、PS、PC、COC、COP、LASなどの材料)を加工して、本発明の結腸直腸癌初代細胞を培養するためのマイクロウェルプレートチップを得た。このチップは、結腸直腸癌初代細胞の培養およびインビトロの薬剤感受性検出実験に使用できる。マイクロウェルプレートチップの設計図を
図12に示す。
実際の使用過程では、具体的には、PMMA材料(または、PS、PC、COC、COP、LASなどの材料)を使用して、
図12の設計図に示されるマイクロウェルプレートチップの構造を作製し、上記のCYTOP修飾方法(実施例30を参照)によってその表面をCYTOP修飾すると、ここに記載されている結腸直腸癌初代細胞の培養に使用可能なマイクロウェルプレートチップが得られる。
【0129】
実施例33:結腸鏡検査穿刺微量サンプルを使用した結腸直腸癌初代腫瘍細胞の培養
本実施例では、サンプルの由来のみが異なる(表41)以外、すべてのサンプルの初代培養の操作方法およびフローは、結腸直腸癌固形腫瘍初代細胞の培養方法と完全に同じであり(上記記載を参照)、2つの結腸鏡検査サンプルに統一された(表43)。
表43から分かるように、結腸鏡検査から得られた微量のサンプルでも、依然として高い成功率で結腸直腸癌初代細胞の培養に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、新鮮な結腸直腸癌固形腫瘍組織または結腸直腸癌腹水から結腸直腸癌初代腫瘍細胞を抽出および培養する方法、並びにキットを提供する。この方法は、以下の利点を有する:結腸直腸癌固形腫瘍組織の場合、組織サンプルの用量が少なく、約20mgの結腸直腸癌手術サンプルのみが必要である。結腸直腸癌腹水の場合、サンプルが容易に入手でき、結腸直腸癌患者の通常の治療中に排出される腹水を最大限に利用でき、患者には追加の外傷や痛みを与えることはない。サンプルの用量が少なく、約50mLの結腸直腸癌腹水サンプルのみが必要である。サンプルを収集した後、すぐに処理する必要はなく、サンプルを体から採取してから最大72時間以内に本方法に従って処理すれば、90%以上の細胞生存率が保証できる。培養サイクルが短く、107レベルの結腸直腸癌初代腫瘍細胞を得るには3~10日間しか掛からない。培養安定性が高く、本方法を用いて適格な結腸直腸癌固形腫瘍および腹水標本に対してインビトロ培養をした成功率は70%~80%と高い。細胞純度が高く、本方法によって得られた結腸直腸癌初代細胞培養物における癌細胞の割合は70%~95%にも達することができ、雑細胞の干渉は少ない。本発明の方法で得られた結腸直腸癌初代細胞培養物は、様々な細胞レベルのインビトロ実験、次世代シーケンシング、動物モデルの構築、細胞株の構築などに使用することができる。この培養方法は、結腸直腸癌の研究および臨床診断と治療の分野で幅広い応用の見通しがある。