(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】小流量フローに適した膜による連続的な相分離システム及び装置
(51)【国際特許分類】
B01D 17/00 20060101AFI20240621BHJP
B01D 17/04 20060101ALI20240621BHJP
B01D 17/12 20060101ALI20240621BHJP
B01D 65/10 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B01D17/00 503Z
B01D17/04 501E
B01D17/12 A
B01D17/00 501A
B01D65/10
(21)【出願番号】P 2021519309
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2020015995
(87)【国際公開番号】W WO2020230492
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019092519
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227087
【氏名又は名称】日曹エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】梶田 理
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100067(JP,A)
【文献】特表2014-526957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0183871(US,A1)
【文献】特開2019-018192(JP,A)
【文献】米国特許第05227071(US,A)
【文献】米国特許第05173190(US,A)
【文献】特開2006-175424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00-17/12
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
G01N 21/03-21/15
C10G 1/00-99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性液相と疎水性液相とからなる乳濁液を解乳化するための解乳化装置、
解乳化装置から排出される解乳化液を膜分離装置に
連続的に供給するための解乳化液供給流路、
解乳化液を膜透過液と膜不透過液とに分けるための膜分離装置、
膜透過液を膜分離装置から
連続的に排出するための膜透過液排出流路、
膜不透過液を膜分離装置から
連続的に排出するための膜不透過液排出流路、
解乳化液の光学特性を測定するための装置、
膜透過液の光学特性を測定するための装置、
解乳化液の光学特性の測定値および膜透過液の光学特性の測定値を時系列記録するための記憶装置、および
該時系列記録に基づき解乳化装置または膜分離装置を診断するための診断装置
を具備
し、
前記診断は、所望の解乳化が行われているか否かを、膜による不透過液の透過阻止の度合いが適正か否かを、または膜の透過選択の度合いが適正か否かを、判断することである、
装置。
【請求項2】
解乳化液の光学特性を測定するための装置は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズの解乳化液検査流路を有する、請求項1に記載
の装置。
【請求項3】
膜透過液の光学特性を測定するための装置は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズの膜透過液検査流路を有する、請求項1または2に記載
の装置。
【請求項4】
膜不透過液の光学特性を測定するための装置をさらに具備し、
記憶装置が、膜不透過液の光学特性の測定値をさらに時系列記録するためのものである、請求項1~3のいずれかひとつに記載
の装置。
【請求項5】
膜不透過液の光学特性を測定するための装置は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズの膜不透過液検査流路を有する、請求項4に記載
の装置。
【請求項6】
親水性液相と疎水性液相とからなる乳濁液を解乳化して解乳化液を得、
解乳化液を解乳化液検査流路に
連続的に流して解乳化液の光学特性を測定し、
膜を用いて解乳化液を膜透過液と膜不透過液に分離し、
膜透過液を膜透過液検査流路に
連続的に流して膜透過液の光学特性を測定し、
解乳化液の光学特性の測定値および膜透過液の光学特性の測定値を時系列記録し、且つ
該時系列記録に基づき解乳化または膜分離の状況を診断する、
ことを含
み、
前記診断は、所望の解乳化が行われているか否かを、膜による不透過液の透過阻止の度合いが適正か否かを、または膜の透過選択の度合いが適正か否かを、判断することである、
方法。
【請求項7】
解乳化液検査流路は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズである、請求項6に記載
の方法。
【請求項8】
膜透過液検査流路は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズである、請求項6または7に記載
の方法。
【請求項9】
膜不透過液を膜不透過液検査流路に
連続的に流して膜不透過液の光学特性を測定し、
膜不透過液の光学特性の測定値を時系列記録することをさらに含む、請求項6~8のいずれかひとつに記載
の方法。
【請求項10】
膜不透過液検査流路は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズである、請求項9に記載
の方法。
【請求項11】
親水性溶液と疎水性溶液とを合わせて親水性液相と疎水性液相とからなる乳濁液を得るための乳濁液調製装置
をさらに具備する、請求項1~5のいずれか一つに記載
の装置。
【請求項12】
乳濁液調製装置が、
内径がマイクロサイズまたはミリサイズの循環流路を有するループ管型容器、
親水性溶液と疎水性溶液とを合わせてなる不均一系の液を、ループ管型容器
に0.01~500cm
3/分の流量にて、連続的に供給するための、循環流路に接続された不均一系液供給流路、
供給された液を、不均一系液供給流路と循環流路との接続部から乳濁液排出流路と循環流路との接続部までの流れにおいて乱流となる流量にて、循環流路に流して循環させるための容積式ポンプ、および
循環させた液を
、ループ管型容器からマスバランスを満たす流量にて
、連続的に抜き出すための、循環流路に接続された乳濁液排出流路、
を具備する
、
請求項11に記載
の装置。
【請求項13】
親水性溶液と疎水性溶液とを合わせて親水性液相と疎水性液相とからなる乳濁液を得ること
をさらに含む、
請求項6~10のいずれかひとつに記載
の方法。
【請求項14】
乳濁液を得ることが、
親水性溶液と疎水性溶液とを合わせてなる不均一系の液を、不均一系液供給流路を経て、内径がマイクロサイズまたはミリサイズの循環流路を有するループ管型容器に、連続的に供給し、
供給された液を、不均一系液供給流路と循環流路との接続部から乳濁液排出流路と循環流路との接続部までの流れにおいて乱流となる流量にて、循環流路を循環させ、且つ
循環させた液を、ループ管型容器から、乳濁液排出流路を経て、マスバランスを満たす流量にて、連続的に抜き出すことを含む
、
請求項13に記載
の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続式分液装置および連続式分液方法に関する。より詳細に、本発明は、乳濁液の解乳化および膜分離による分液を連続的に行うための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油水2相系の液を油相と水相とに分ける装置が種々知られている。
例えば、特許文献1は、水分および油分が混濁してなる油水混濁液に分散した微細な油滴を粗粒化させ、油分を水分の上層に浮上させる解乳化部と、前記解乳化部によって粗粒化させた油分を含む混合溶液を、基材に親水撥油性を有する油水分離体を形成してなる油水分離フィルタによって油水分離する油水分離部と、前記混合溶液を前記解乳化部から前記油水分離部に向けて移送する移送部と、を備え、前記油水分離体は、撥油性付与基および親水性付与基とを有するフッ素系化合物を含むことを特徴とする油水分離装置を開示している。
【0003】
特許文献2は、炭化水素/水混合物中に物理的及び/又は化学的に乳化された炭化水素並びに遊離炭化水素を独立して分離させる構造を有すると共に、2つの分離ユニットを具備し、第1分離ユニットが、炭化水素/水混合物から遊離炭化水素を分離させるコアレッセントプレート(ファセット・Mパック)を具有する重量分離ユニットであり、第2分離ユニットが、該重量分離ユニットの対応するタンク内へ導管を経由して炭化水素/水混合物を導入させる吸上ポンプを具有して乳化炭化水素を分離させる構造を有する分離ユニットである船舶ビルジ用物理化学的乳化炭化水素/水分離装置において、(i)直交流式の解乳化膜を具有する解乳化膜分離ユニットであって、解乳化用化学薬品の使用を必要とせずに、該膜中へ流入する乳化滴から炭化水素滴を生成させることによって乳化炭化水素の分離をおこなう該解乳化膜分離ユニット、(ii)該解乳化膜分離ユニット内で分離された炭化水素を、処理後に排出されるべき炭化水素が流入する上部容器を具有する重量分離ユニットへ送給するための捕集管、及び該炭化水素をポンプ輸送するための圧力を供与する吸上ポンプ、(iii)重量分離ユニットから解乳化膜分離ユニットへ流体を通過させると共に、該ユニットから導管を経由して流出用導管へ該流体を送給させる自動弁、並びに(iv)加圧浄水の流入用自動弁と位相センサを具有する炭化水素排出系を具備することを特徴とする該分離装置を開示している。
【0004】
特許文献3は、目的成分群と、水相/有機相の分配係数が前記目的成分群よりも大きい第1の非目的成分群と、水相/有機相の分配係数が前記目的成分群の分配係数と近似した第2の非目的成分群とを含む水相に、有機相を混合攪拌することで、水相とこの水相よりも目的成分群の濃度が濃い有機相とからなるエマルションとし、疎水性膜を用いてこのエマルションを濾過することで目的成分群と第2の非目的成分群を含む有機相を分離し、次いでこの有機相から目的成分群を回収するようにしたことを特徴とする成分分離方法を開示している。
【0005】
特許文献4は、揮発性有機液体と水との混合物を疎水性と親水性の二種類の膜によって分離する方法であって、該混合物を疎水性膜の片側に供給し、該疎水性膜の他の側にキャリアガスを流すことにより一段目の浸透気化分離を行い、次いで該疎水性膜を透過してきた混合蒸気を親水性膜の片側に供給し、該親水性膜の他の側を減圧に吸引して二段目の蒸気透過分離を行い、該親水性膜を透過しなかった混合蒸気を凝縮液化させることを特徴とする液体混合物の分離方法を開示している。
【0006】
特許文献5は、乳化油分含有の排水を油水分離性のUF膜を備えたUF膜ろ過処理装置に通水してUF膜ろ過処理を行い、より油分の少ないUF膜ろ過処理水を得る方法において、該UF膜ろ過処理水の出口配管に油分の流出を検知する濁り検知機構としてサイトグラスと非接触式の光電センサを組み合わせて設置し、該濁り検知機構で濁りを検知した時点で前記UF膜ろ過処理装置を停止し、前記UF膜ろ過処理装置内の濃縮油水を排出し、UF膜を洗浄または交換した後、前記UF膜ろ過処理装置への通水を再開・制御することを特徴とする含油排水の処理方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-064404号公報
【文献】特開2006-175424号公報
【文献】特開平9-47294号公報
【文献】特開昭62-225207号公報
【文献】特開2019-111503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、乳濁液の解乳化および膜分離による分液を連続的に行うための方法および装置を提供すること、ならびに該分液方法および装置を用いて連続的に液液抽出を行うための方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために検討した結果、以下の態様を包含する本発明を見出した。
【0010】
〔1〕 親水性液相と疎水性液相とからなる乳濁液を解乳化(Demulsification)するための解乳化装置、
解乳化装置から排出される解乳化液を膜分離装置に供給するための解乳化液供給流路、
解乳化液を膜透過液と膜不透過液とに分けるための膜分離装置、
膜透過液を膜分離装置から排出するための膜透過液排出流路、
膜不透過液を膜分離装置から排出するための膜不透過液排出流路、
解乳化液の光学特性を測定するための装置、
膜透過液の光学特性を測定するための装置、
解乳化液の光学特性の測定値および膜透過液の光学特性の測定値を時系列記録するための記憶装置、および
該時系列記録に基づき解乳化装置または膜分離装置を診断するための診断装置
を具備する、連続式分液装置。
【0011】
〔2〕 解乳化液の光学特性を測定するための装置は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズの解乳化液検査流路を有する、〔1〕に記載の連続式分液装置。
〔3〕 膜透過液の光学特性を測定するための装置は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズの膜透過液検査流路を有する、〔1〕または〔2〕に記載の連続式分液装置。
〔4〕 膜不透過液の光学特性を測定するための装置をさらに具備し、
記憶装置が、膜不透過液の光学特性の測定値をさらに時系列記録するためのものである、〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の連続式分液装置。
〔5〕 膜不透過液の光学特性を測定するための装置は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズの膜不透過液検査流路を有する、〔4〕に記載の連続式分液装置。
【0012】
〔6〕 親水性液相と疎水性液相とからなる乳濁液を解乳化して解乳化液を得、
解乳化液を解乳化液検査流路に流して解乳化液の光学特性を測定し、
膜を用いて解乳化液を膜透過液と膜不透過液に分離し、
膜透過液を膜透過液検査流路に流して膜透過液の光学特性を測定し、
解乳化液の光学特性の測定値および膜透過液の光学特性の測定値を時系列記録し、且つ
該時系列記録に基づき解乳化または膜分離の状況を診断する、
ことを含む、連続式分液方法。
【0013】
〔7〕 解乳化液検査流路は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズである、〔6〕に記載の連続式分液方法。
〔8〕 膜透過液検査流路は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズである、〔6〕または〔7〕に記載の連続式分液方法。
〔9〕 膜不透過液を膜不透過液検査流路に流して膜不透過液の光学特性を測定し、
膜不透過液の光学特性の測定値を時系列記録することをさらに含む、〔6〕~〔8〕のいずれかひとつに記載の連続式分液方法。
〔10〕 膜不透過液検査流路は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズである、〔9〕に記載の連続式分液方法。
【0014】
〔11〕 親水性溶液と疎水性溶液とを合わせて親水性液相と疎水性液相とからなる乳濁液を得るための乳濁液調製装置、および〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載の連続式分液装置を具備する、連続式液液抽出装置。
【0015】
〔12〕 乳濁液調製装置が、
内径がマイクロサイズまたはミリサイズの循環流路を有するループ管型容器、
親水性溶液と疎水性溶液とを合わせてなる不均一系の液を、ループ管型容器に、0.01~500cm3/分の流量にて、連続的に供給するための、循環流路に接続された不均一系液供給流路、
供給された液を、不均一系液供給流路と循環流路との接続部から乳濁液排出流路と循環流路との接続部までの流れにおいて乱流となる流量にて、循環流路に流して循環させるための容積式ポンプ、および
循環させた液をループ管型容器からマスバランスを満たす流量にて連続的に抜き出すための、循環流路に接続された乳濁液排出流路、
を具備する、連続式液液接触装置である、
〔11〕に記載の連続式液液抽出装置。
【0016】
〔13〕 親水性溶液と疎水性溶液とを合わせて親水性液相と疎水性液相とからなる乳濁液を得ること、および
〔6〕~〔10〕のいずれかひとつに記載の連続式分液方法を行うことを含む、
連続式液液抽出方法。
〔14〕 乳濁液を得ることが、
親水性溶液と疎水性溶液とを合わせてなる不均一系の液を、不均一系液供給流路を経て、内径がマイクロサイズまたはミリサイズの循環流路を有するループ管型容器に、連続的に供給し、
供給された液を、不均一系液供給流路と循環流路との接続部から乳濁液排出流路と循環流路との接続部までの流れにおいて乱流となる流量にて、循環流路を循環させ、且つ
循環させた液を、ループ管型容器から、乳濁液排出流路を経て、マスバランスを満たす流量にて、連続的に抜き出すことを含む、連続式液液接触方法を行うこと
を含む、〔13〕に記載の連続式液液抽出方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の連続式分液法および装置は、乳濁液の解乳化および膜分離による分液条件の最適化を行うことができる。本発明の連続式分液法および装置は、解乳化および膜分離における不具合を的確に把握できるので、それに対する処置を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の連続式分液装置の一例を示す概念図である。
【
図2】本発明の連続式分液装置の別の一例を示す概念図である。
【
図3】本発明の連続式分液装置の別の一例を示す概念図である。
【
図4】乳濁液調製装置の一例(連続式液液接触装置)を示す概念図である。
【
図5】例1~3において使用した装置を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の連続式分液装置は、解乳化装置、膜分離装置7、光学特性を測定するための装置11,12,13、記憶装置、および診断装置を具備する。
【0020】
本発明の連続式液液抽出装置は、乳濁液調製装置、解乳化装置、膜分離装置、光学特性を測定するための装置、記憶装置、および診断装置を具備する。
【0021】
乳濁液は、親水性溶液と疎水性溶液とを合わせて成るものである。乳濁液は、親水性液相のマトリクスに疎水性液相が分散したものであってもよいし、疎水性液相のマトリックスに親水性液相が分散したものであってもよい。乳濁液中に分散する液相(液滴)の大きさは、特に限定されず、例えば、体積基準分布における50%径(D50として、0.1μm~1000μmである。マイクロエマルジョンと呼ばれるD50が10nm~100nmのもの、ナノエマルジョンと呼ばれるD50が1nm~10nmのものも、本発明において用いることができる。本発明に用いられる乳濁液調製装置として、乳化機、液液分散機、ホモジナイザー、スタティックミキサ、充填層などを挙げることができる。また、後述する連続式液液接触装置によって乳濁液を製造してもよい。乳濁液調製装置から排出される乳濁液は乳濁液供給流路1を経て解乳化装置に送ることができる。
【0022】
解乳化装置は、乳濁液を解乳化するためのものである。解乳化は、乳濁液として安定化している系を、積極的に破壊して、相分離系へ移行させるプロセスである。解乳化の方法としては、界面活性剤を含んでいる乳濁液の温度を変化させることによる方法、乳濁液に塩などを添加して分散液滴の電荷を変化させることによる方法、乳濁液に遠心力や剪断力を付与することによる方法、乳濁液を充填層、コアレッサフィルタなどを通過させることによる方法、乳濁液にマイクロ波を照射することによる方法、乳濁液に電圧印加することによる方法、乳濁液に酸や塩基を添加して乳濁液のpHを変化させることによる方法、乳濁液に解乳化剤を添加することによる方法などを挙げることができる。解乳化に用いられる充填層には、多孔質粒子(多孔質ガラスビーズなど)、吸着剤、吸水剤、吸油剤などを充填することができる。解乳化剤としては、アルコキシル化フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルコキシル化エポキシ樹脂、アルコキシル化ポリエチレンイミン、アルコキシル化ポリアミン、アルコキシル化ジエポキシド、アルコキシル化ポリオール、アルコキシル化デンドリマーなどを挙げることができる。解乳化装置から排出される解乳化液は、解乳化液供給流路2を経て膜分離装置7に送ることができる。
図1に示す連続式分液装置には、セトラ型解乳化装置6を設置している。なお、流路8および9は、解乳化液の重液が解乳化装置内において沈降し溜まったときに抜き出すためのものである。
図2に示す連続式分液装置には、コアレッサ式解乳化装置17を設置している。
図3に示す連続式分液装置には、充填層式解乳化装置19を設置している。
【0023】
膜分離装置は、解乳化液を、膜透過液と膜不透過液とに分離することができる。膜分離では、膜にかかる差圧(膜不透過液圧力-膜透過液圧力)を膜のバブリングポイント以下となるように調整しながら行うことが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる膜分離装置7に好ましく用いられる膜としては、疎水性液相を透過させ易く且つ親水性液相を透過させ難い膜、親水性液相を透過させ易く且つ疎水性液相を透過させ難い膜を挙げることができる。
【0025】
疎水性液相を透過させ易く且つ親水性液相を透過させ難い膜としては、例えば、親油撥水性の膜を挙げることができる。親油撥水性の膜としては、疎水性シリカ膜、シリコーン膜、PVDF膜などを挙げることができる。
親水性液相を透過させ易く且つ疎水性液相を透過させ難い膜としては、例えば、親水撥油性の膜を挙げることができる。親水撥油性の膜としては、特許文献1などに記載の親水性付与基を有するフッ素系化合物を含む膜などを挙げることができる。
本発明においては疎水性液相を透過させ易く且つ親水性液相を透過させ難い膜が好ましく用いられる。
さらに、液液分離用の膜として、酢酸セルロース、ポリスルフォン、ポリエチレンなどの有機材料からなる膜、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)などの無機材料からなる膜を必要に応じて用いることができる。
【0026】
膜分離装置から排出される膜透過液は、膜透過液排出流路3を経て、本発明の装置の系外に送ることができる。膜分離装置から排出される膜不透過液は、膜不透過液排出流路4を経て、本発明の装置の系外に送るか、または本発明の装置を構成する解乳化装置に流路5を経由して戻し、乳濁液と混ぜ合わせ、再度の解乳化および膜分離を施すことができる。
【0027】
解乳化液の光学特性を測定するための装置11、膜透過液の光学特性を測定するための装置13、および膜不透過液の光学特性を測定するための装置12は、液体の光学特性を測定できるものであれば特に制限されない。液体の光学特性としては、例えば、光透過率、光反射率、光散乱率、分光分布、屈折率などを挙げることができる。光学特性を測定するための装置の一つである、光電センサは、投光部と受光部とを有し、可視光線、赤外線などの光を投光部から発射し、検出物体によって反射する光や遮光される光量の変化を受光部で検出し出力信号を得る測定装置である。光電センサは、透過形、回転反射形、拡散反射形の3種類に分類されているが、透過形か拡散反射形が好ましい。
【0028】
透過形光電センサは、受光部に入射する投光部からの透過光の光量の変化を検出し、検出物体の有無及び状態等を検出する構成である。つまり、投光部と受光部を対向配置しておき、検出物体が投光部と受光部の間に来て光をさえぎると、受光部に入る光量が減少するのをとらえて検出を行う。
【0029】
反射形光電センサは、投光部を受光部の同軸上又は近傍に設置しておき、検出物体が投光部の前を通過ないしは接近した際に生じる反射光の光量の増減により物体を検出する構成である。つまり、通常は投受光部一体形で、投光部から出た光が検出物体に当たると、検出物体から反射した光が受光部に入り受光量が増加する。その増加をとらえて検出を行う。
【0030】
本発明においては、例えば、光電センサを、解乳化液検査流路、膜透過液検査流路および必要に応じて膜不透過液検査流路のそれぞれに設置することによって、光学特性を測定することができる。解乳化液検査流路、膜透過液検査流路および膜不透過液検査流路は、それぞれ、解乳化液供給流路、膜透過液排出流路および膜不透過液排出流路であってもよいし、解乳化液供給流路、膜透過液排出流路および膜不透過液排出流路とは別に検査用としてそれぞれ設けた流路であってもよい。各検査流路は、水平横向きに配置してもよいし、垂直縦向きに配置してもよい。水平横向き配置にすると、分散フロー(disperse flow)、プラグフロー(Plug flow)、スラグフロー(Slug flow)、流路の上部と下部とに二つの液相が界面で分かれて流れる成層流(Stratified flow)、流路の上部と下部とに二つの液相の界面が波打って流れる波状流(Wavy flow)、アニュラフロー(annular flow)などの流れを生じることがある。垂直縦向き配置にすると、分散フロー(disperse flow)、スラグフロー(Slug flow)、チャーンフロー(Churn flow)、アニュラフロー(annular flow)などの流れが生じることがある。
【0031】
解乳化液検査流路、膜透過液検査流路および膜不透過液検査流路は、それぞれ、その内径がマイクロサイズまたはミリサイズであることが好ましい。本願においてマイクロサイズまたはミリサイズとは、当技術分野において通常の知識を持つ者に知られているサイズのことを言い、例えば、1μm以上1000mm未満のサイズ、好ましくは10μm以上100mm以下のサイズ、より好ましくは100μm以上50mm以下のサイズ、さらに好ましくは0.3mm以上10mm以下のサイズ、よりさらに好ましくは0.5mm以上5mm以下のことをいう。マイクロサイズまたはミリサイズの検査流路を用いると、太い流路を用いた場合には困難であった、スラグフロー(Slug flow)などの種々の流れに伴う光学特性の変動の検出が可能になる。
【0032】
解乳化液の光学特性の測定値、膜透過液の光学特性の測定値および必要に応じて膜不透過液の光学特性の測定値は、それぞれ、記憶装置に、時系列にて記録する。そして、その時系列記録に基づいて、診断装置が、解乳化装置または膜分離装置を診断する。診断結果は、表示部または警報部によって、光、音、文字、記号などで、知らせることができる。さらに、診断結果に基づいて、解乳化装置または膜分離装置の運転条件を変更するための器具、例えば、流量調節器、圧力調節器、温度調節器などの設定を、自動でまたは手動で、変更することができる。このような診断結果に基づく運転条件の変更は自動制御装置などを設けることによって行ってもよい。また、診断装置は、装置毎に、分解、清掃、部材交換などの対処法を提案することができるようになっていてもよい。なお、ここで部材とは、ガラスビーズのような充填剤、分離用の膜、シール材、o-リング、バルブなどを指すが、これら例示に限定されない。
【0033】
解乳化装置の診断の一つの態様においては、所望の解乳化が行われているか否かを判断する。
【0034】
乳濁液は微小な液滴が分散したものである。乳濁液を通過する光は、乳濁液中に分散する液滴の界面等において、反射、屈折などを生じる。検査流路を流れる乳濁液中に分散する液滴はその数が多いので、光学特性は、多数の液滴によって生じた反射や屈折の総合値として検出される。そのため、検査流路を流れる乳濁液の光学特性の時系列における測定値は、レンジ、変動係数または標準偏差が小さい傾向がある。なお、変動係数は、標準偏差を算術平均で割ったものである。レンジは、最大値と最小値との差である。検査流路を流れる乳濁液の光透過率の時系列における測定値の算術平均(移動単純平均)は、濁りのために、均一系液体に比べて、低めの値になるのが一般的である。
【0035】
一方、解乳化液中に分散する液滴は、サイズが乳濁液に比べて大きく、数量が乳濁液に比べて少ない。検査流路、特に、マイクロサイズまたはミリサイズの検査流路を流れる解乳化液は、疎水性液相と親水性液相とが交互に流れやすい。このような流れをスラグフローまたはプラグフロー(栓流)と呼ぶ。スラグフローの状態においては、液体の光学特性の時系列における測定値は、変動係数または標準偏差が大きい傾向がある。解乳化装置における解乳化の度合いは、例えば、解乳化液検査流路を流れる解乳化液の光学特性の時系列における測定値の変動係数や標準偏差の高さレベルによって、推定できる。すなわち、変動係数または標準偏差が大きいほど、解乳化が進んでいると、推測できる。検査流路を流れる解乳化液の光透過率の時系列における測定値の算術平均は、解乳化によって濁りが減るので、乳濁液に比べて、通常、高い値になる傾向がある。さらに、スラグフローの状態においては、疎水性液相と親水性液相とが交互に流れるので、疎水性液相と親水性液相との光学特性の差異を利用して、疎水性液相が流れている平均時間と親水性液相が流れている平均時間とを計測し、疎水性液相と親水性液相との割合を推定することができる。
【0036】
膜分離装置の診断の一つの態様においては、例えば、膜による不透過液の透過阻止の度合いが適正か否かを判断する。
【0037】
疎水性液相を透過させ易く且つ親水性液相を透過させ難い膜を有する膜分離装置から排出される、膜透過液は疎水性液相を主に含有する。親水性液相の透過阻止率が低くなるほど、膜透過液に親水性液相が多く含まれるようになる。膜透過液に含まれる親水性液相の量が少ないほど、親水性液相の透過阻止率が高いことを示唆する。低い透過阻止率で得られた膜透過液においては疎水性液相のマトリックスに親水性液相が液滴として分散している状態になっている。流路、特に、マイクロサイズまたはミリサイズの検査流路を流れる膜透過液中に含まれる親水性液相が多くなると、スラグフローの状態になりやすい。スラグフローの状態においては、液体の光学特性の時系列における測定値は、変動係数または標準偏差が大きい傾向がある。
【0038】
一方、親水性液相を透過させ易く且つ疎水性液相を透過させ難い膜を有する膜分離装置から排出される、膜透過液は親水性液相を主に含有する。疎水性液相の透過阻止率が低くなるほど、膜透過液に疎水性液相が多く含まれるようになる。膜透過液に含まれる疎水性液相の量が少ないほど、疎水性液相の透過阻止率が高いことを示唆する。低い透過阻止率で得られた膜透過液においては親水性液相のマトリックスに疎水性液相が液滴として分散している状態になっている。流路、特に、マイクロサイズまたはミリサイズの検査流路を流れる膜透過液中に含まれる疎水性液相が多くなると、スラグフローの状態になりやすい。スラグフローの状態においては、液体の光学特性の時系列における測定値は、変動係数または標準偏差が大きい傾向がある。
【0039】
以上のとおり、膜分離装置における透過阻止率は、例えば、膜透過液検査流路を流れる膜透過液の光学特性の時系列における測定値の変動係数や標準偏差などによって、推定できる。すなわち、変動係数または標準偏差が大きいほど、透過阻止率が低いことを示唆する。さらに、スラグフローの状態においては、疎水性液相と親水性液相とが交互に流れるので、疎水性液相と親水性液相との光学特性の差異を利用して、疎水性液相が流れている平均時間と親水性液相が流れている平均時間とを計測し、疎水性液相と親水性液相との割合を推定することもできる。
【0040】
膜分離装置の診断の別の一つの態様においては、例えば、膜の透過選択の度合いが適正か否かを判断する。
【0041】
疎水性液相を透過させ易く且つ親水性液相を透過させ難い膜を有する膜分離装置から排出される、膜不透過液は、疎水性液相の割合が解乳化液におけるそれよりも低くなっている。膜の透過選択率が高いほど、膜不透過液における親水性液相の割合が高い傾向がある。
一方、親水性液相を透過させ易く且つ疎水性液相を透過させ難い膜を有する膜分離装置から排出される、膜不透過液は、親水性液相の割合が解乳化液におけるそれよりも低くなっている。膜の透過選択率が高いほど、膜不透過液における疎水性液相の割合が高い傾向がある。
すでに述べたとおり、スラグフローの状態においては、疎水性液相と親水性液相とが交互に流れるので、疎水性液相と親水性液相との光学特性の差異を利用して、疎水性液相が流れている平均時間と親水性液相が流れている平均時間とを検出し、疎水性液相と親水性液相との割合を推定することができる。そこで、膜不透過液検査流路を流れる膜不透過液の光学特性を測定し時系列にて測定値を記録することによって、膜不透過液における疎水性液相と親水性液相との割合を推定することができる。これによって、膜の選択透過の度合いを判断することができる。
また、解乳化液の光学特性と膜不透過液の光学特性との対比から、膜の機能が十分に発揮できているか否かを推定することができる。例えば、解乳化液の光学特性と膜不透過液の光学特性との差異が小さい場合には、解乳化液の膜分離装置への供給流量が膜の分離速度を超えている可能性または膜にかかる差圧が小さすぎる可能性を示唆する。
【0042】
本発明の連続式液液抽出装置において、好ましく用いられる乳濁液調製装置は、内径がマイクロサイズまたはミリサイズの循環流路を有するループ管型容器、親水性溶液と疎水性溶液とを合わせてなる不均一系の液を、ループ管型容器に、0.01~500cm3/分の流量にて、連続的に供給するための、循環流路に接続された不均一系液供給流路、供給された液を、供給流路と循環流路との接続部から乳濁液排出流路と循環流路との接続部までにおいて乱流となる流量にて、循環流路に流して循環させるための容積式ポンプ、および循環させた液をループ管型容器からマスバランスを満たす流量にて連続的に抜き出すための、循環流路に接続された乳濁液排出流路105、を具備する、連続式液液接触装置である。
【0043】
不均一系液供給流路101は、少なくとも2種の液をそれぞれ貯留する容器からループ管型容器までの部分である。不均一系液供給流路101の内径は、特に制限されないが、マイクロサイズまたはミリサイズであることが好ましい。
【0044】
不均一系液供給流路101には、必要に応じて、ポンプ、吸着装置、脱水装置、脱気装置、フィルタ(濾布)、撹拌装置、調液器、温度調節器、冷却器、加熱器などを設けてもよい。撹拌装置としては、静止型混合装置(スタティックミキサとも呼ばれる。)が好ましく用いられる。
【0045】
図4に示す装置においては、第一液が流量Q
1で第一貯留容器(図示せず)から供給され、第二液が流量Q
2で第二貯留容器(図示せず)から供給され、両液が合流部110で合わさり、流量Q
Fで接続部102にて循環流路に流入している。合流部110および接続部102には、2液の混合を促進するために、マイクロリアクターまたはミリリアクターの様な混合器を設けても良いし、エジェクタなどの装置を設けてもよい。なお、エジェクタとは、高圧流体の力を利用し低圧の流体(液体や気体)を吸込んで、中圧にて排出することができる装置のことを言う。混合に伴って体積変化が生じない場合には、流量Q
Fは流量Q
1と流量Q
2との合計である。調液器は、少なくとも2種の原料液を合わせて、少なくとも2種の液からなる均一系若しくは不均一系の液を得るためのものである。調液器は、単なる合流部(例えば、チーズ)110であっても良いし、ミリサイズ反応器(例えば、日曹エンジニアリング社製「ミリリアクター」等が挙げられる)のような混合器であっても良いし、乳化器、分散器などの装置であってもよい。
【0046】
ループ管型反応器は循環流路を有するものである。循環流路は、不均一系液供給流路101と接続される部位である接続部102から始まり、排出流路105と接続される部位である接続部104を経て、再び接続部102に戻る、ループ型の流路である。なお、本願においては、説明を簡略にするために、接続部102から接続部104までの範囲を往流路103outと呼び、接続部104から接続部102までの範囲を復流路103retと呼び、ループ型の流路全体を循環流路と呼ぶ。循環流路は、少なくとも往流路3outの内径がマイクロサイズまたはミリサイズであることが好ましく、往流路3outおよび復流路3retの内径がいずれもマイクロサイズまたはミリサイズであることがより好ましい。
【0047】
循環流路には、必要に応じて、ポンプ、フィルタ(濾布など)、撹拌装置、温度調節器、冷却器、加熱器などを設けてもよい。ポンプは、復流路103retに設けることが好ましい。ポンプPは、正確な流量で液を流すことができる点で容積式ポンプが好ましい。容積式ポンプとしては、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復ポンプ、歯車ポンプ、ベーンポンプ、ねじポンプなどの回転ポンプを挙げることができる。これらのうち、微少流量にも対応できる点でプランジャーポンプが好ましい。容積式ポンプによって、往流路における流れの状態を乱流にする。
【0048】
撹拌装置は、往流路103outに設けることが好ましい。撹拌装置としては、静止型混合装置が好ましく用いられる。不均一系液供給流路101と循環流路との接続部102には、不均一系液供給流路101からの液と復流路103retからの液との混合を促進するために、エジェクタなどの装置を設けてもよいし、ミリサイズ反応器(例えば日曹エンジニアリング社製「ミリリアクター」等が挙げられる)のような混合器を設けてもよい。
また、充填物を、循環流路内に、好ましくは往流路103out内に、詰めることができる。充填物によって、混合を促進することができる。充填物は、化学反応に寄与しないものであってもよいし、化学反応に寄与するものであってもよい。化学反応に寄与するものとしては、触媒、吸着剤などを挙げることができる。充填物の形状は、特に限定されず、例えば、粒状、針状、板状、コイル状、リング状などを挙げることができる。往流路103outにおける液の流量QRは、化学反応などによる体積変化ΔVがある場合、供給流路からの液の流量QFと、復流路103retからの液の流量Qcと、ΔVとの合計である。
【0049】
乳濁液排出流路105は、接続部104から連続式液液接触装置の系外までの流路であり、解乳化装置における乳濁液供給流路1と接続される。乳濁液排出流路105には、必要に応じて、ポンプ、気液分離器、フィルタ(濾布)、撹拌装置、温度調節器、冷却器、加熱器、ダンパなどを設けてもよい。乳濁液排出流路105の内径は、特に制限されないが、マイクロサイズまたはミリサイズであることが好ましい。乳濁液排出流路における液の流量QEは、往流路における液の流量QRから、復流路における液の流量Qcを差し引いたものである。ダンパを、往復ポンプによって発生する脈動を抑えるために、適宜、用いることができる。
【0050】
図4に示す装置においては、循環流路、供給流路101および排出流路105は、おおむね真直ぐな流路であるが、コイル状、ジグザグ状の流路であってもよい。
【0051】
本発明の一つの実施態様において、不均一系液供給流路における液の流量QFは、貯留容器から供給される少なくとも2種の液の供給量によって決まるが、その流れの状態は、層流であってもよいし、乱流であってもよい。なお、層流とは、流体が規則正しく運動している流れを言い、断面円形の直管においては、流体の流線が常に管軸と平行となる流れを言う。
本発明の一つの実施態様において、往流路における液の流量QRは、往流路における液の流れが乱流となる範囲である。乱流とは、流体の速度や圧力などが不規則に変動する流れをいう。乱流となる流量とすることによって、液液接触が促される。
【0052】
本発明の好ましい実施態様において、供給流路101における液の流量QFは、通常、0.01~500cm3/分、より好ましくは0.1~100cm3/分、さらに好ましくは1~50cm3/分に設定する。また、本発明の好ましい実施態様において、往流路103outにおける液の流量QRは、Re×ν×A/DHで算出される流量(m3/秒)に設定する。
なお、Reは、1000以上、好ましくは1300以上、より好ましくは1800以上であり、
ν(m2/秒)は、循環させる液の動粘性係数であり、
A(m2)は、往流路103outの断面の面積であり、
DH(m)は、4×A/Pで算出される長さであり、且つ
P(m)は、往流路103outの断面の周長である。
【0053】
なお、乳濁液排出流路105における液の流量QEは、マスバランスを満たす流量である。また、ループ管型反応器における平均滞留時間は、循環流路の容量を流量QFまたはQEで除算することによって得られる値である。Reは、化学工学の分野においてレイノルズ数と呼ばれる無次元数であり、Re=(DH×QR)/(ν×A)で定義される値である。レイノルズ数が大きいほど、流れが乱流になる傾向がある。
【0054】
(実施例)
次に、実施例を示して、本発明の有用性を明らかにする。
【0055】
(例1)
図5に示す連続式液液抽出装置を用いて実験を行った。
1/8インチチューブ(外径3.18mm、内径2.17mm)からなる螺旋径が200mmである螺旋形状の往流路103
outと、1/8インチチューブからなる復流路103
retとで、構成された、容量20mlの循環流路を用意した。
復流路103
retには、循環用ポンプ3B(日本精密科学(株)製ダブルプランジャーポンプ、NP-HX-200、最大吐出圧力10MPa)、および脈動減衰ダンパ112(1/2インチ-PFAチューブ(内径9mm))を取り付けた。
往流路103
outの入口と復流路103
retの出口との接続部102に供給流路101を接続した。
往流路103
outの出口と復流路103
retの入口との接続部104に排出流路105を接続した。
膜透過液排出流路3および膜不透過液排出流路4には、図示しないが、背圧調整器(窒素ガス加圧、不活性ガスシール圧制御自動弁)を取り付けた。
排出流路105の先に乳化液供給流路1を接続し、その先に、内径6.0mm、高さ50mmの円筒(容量1.4ml)で、径0.3~0.5mmのガラスビーズを充填してなる充填層20を有する解乳化装置19、および径47mmの疎水性PVDFメンブラン(デュラポアGVHP)を有する、有効濾過面積6cm
2の螺旋流路付きの膜分離装置7を設置し、それらに外径3.18mm、内径1.5mmのPFAチューブからなる解乳化液供給流路2、膜透過液排出流路3および膜不透過液排出流路4を接続した。疎水性PVDFメンブランにかける差圧を89kPaに設定した。疎水性PVDFメンブランは、親油撥水性の膜である。解乳化液供給流路2、膜透過液排出流路3および膜不透過液排出流路4には、光電センサ(オムロン社製、E3NX-FA11AN/E32-T11R、発光波長625nm、出力1~5V)11,12,13をそれぞれ取り付けた。
【0056】
2.70質量%酢酸のトルエン溶液1Aおよび2.91質量%4-メトキシフェノールナトリウム塩の水溶液1Bを、それぞれ、4.9ml/分にて、供給用ポンプ(無脈流プランジャーポンプ、日本精密科学(株)製、NP-KX-500、最大吐出圧力35MPa)を用いて、供給流路101を経て、循環流路に連続的に供給した。なお、合流部110および接続部102には、図示しないが、ミリサイズ混合器(日曹エンジニアリング社製「ミリリアクター」)をそれぞれ設置した。往流路103outを通過した液の一部を9.8ml/分にて、乳濁液排出流路105を経て、連続的に排出した。循環用ポンプ3Bを用いて、往流路103outを通過した液の残部を150ml/分にて復流路103retを経て往流路103outの入口に連続的に供給した。
【0057】
トルエンは水に約0.5g/L(25℃)溶解するようである。水はトルエンに約0.94mg溶解するようである。酢酸は水にも溶けやすいようである。4-メトキシフェノールは水に約40g/L(25℃)で溶解するようである。
【0058】
水溶液中の4-メトキシフェノールナトリウム塩とトルエン溶液中の酢酸とが液液接触すると、以下のような化学反応が進み、4-メトキシフェノールと酢酸ナトリウム塩が生成した。
NaOC6H4OCH3 + CH3COOH → HOC6H4OCH3 + CH3COONa
4-メトキシフェノールはトルエンに溶解しやすく、酢酸ナトリウムは水に溶解しやすいので、生成した酢酸ナトリウムはトルエン相から水相に移動し、生成した4-メトキシフェノールは水相からトルエン相に移動した。
【0059】
運転開始から30分、60分、および90分経過したときに、膜分離装置7から排出される膜透過液および膜不透過液中の4-メトキシフェノールをガスクロマトグラムの内部標準法でそれぞれ定量した。抽出率は、53.1%(30分経過時)、66.8%(60分経過時)、および67.9%(90分経過時)であった。反応率は、運転中を通してほぼ同じで、平均94.5%であった。膜分離装置7における相分離率は、運転中を通してほぼ同じで、90%であった。
なお、抽出率は、式:抽出率=(Qa)/(Q1B)×100で算出した値である。反応率は、式:反応率=(Qb+Qa)/(Q1B)×100 で算出した値である。
Qb=排出された膜不透過液中の4-メトキシフェノールの質量流量
Qa=排出された膜透過液中の4-メトキシフェノールの質量流量
Q1B=供給した4-メトキシフェノールナトリウム塩の水溶液1B中の4-メトキシフェノール換算の質量流量
相分離率は、式:抽出率=(Qt)/(Q1A)×100で算出した値である。
Qt=排出された膜透過液中のトルエンの質量流量
Q1A=供給した酢酸のトルエン溶液1A中のトルエンの質量流量
【0060】
また、運転中を通して、目視評価で、解乳化液供給流路2を流れる解乳化液は不均一相スラグフロー、膜透過液排出流路3を流れる膜透過液は均一相フロー、および膜不透過液排出流路4を流れる膜不透過液は均一相フローであった。
また、運転中を通して、光電センサで測定された光透過率に関する出力値のレンジの10秒間単純移動平均は、解乳化液供給流路を流れる解乳化液において0.064V、膜透過液排出流路を流れる膜透過液においては0.005V、膜不透過液排出流路を流れる膜不透過液においては0.03Vであった。
【0061】
本実施例においては、
解乳化液において光透過率に関する出力値のレンジの10秒間単純移動平均が、0.030V(膜不透過液相当のレンジ)以上のときを正常と、0.030V未満のときを異常と診断した。解乳化液の診断が異常となったとき、解乳化液は、均一相液か乳濁液の状態であることが推測されるが、一般的に解乳化装置における解乳化の度合いが低下していることが推測される。解乳化の度合いを引き上げる措置としては、解乳化装置に供給する乳濁液の量を減らす、解乳化装置が解乳化剤を使用するものである場合は、解乳化剤の添加量を増やす、などが考えられる。これらの措置で改善されない場合は、解乳化装置自体が故障したことが推測される。
【0062】
膜透過液において光透過率に関する出力値のレンジの10秒間単純移動平均が、0.005+αV未満のときを正常と、0.005+αV以上のときを異常と診断した。膜透過液の診断が異常となったとき、膜透過液(トルエン相)中に水相が膜を透過して混入した可能性が推測される。この場合の措置としては、疎水性PVDFメンブランにかける差圧を小さくする、具体的には透過液背圧調整器における窒素等の不活性ガスによるシール圧を上げる、または不透過液背圧調整器における窒素等の不活性ガスシール圧を下げる。あるいは膜分離装置7に供給する解乳化液の量を減らす、若しくは4-メトキシフェノールナトリウム塩の水溶液1Bの供給量を減らすなどが考えられる。これらの措置で改善されない場合は、膜分離装置自体が故障したことが推測される。
【0063】
膜不透過液において光透過率に関する出力値のレンジの10秒間単純移動平均が、0.03+αV未満のときを正常と、0.03+αV以上のときを異常と診断した。膜不透過液の診断が異常となったとき、所望量の膜透過液(トルエン相)が膜を透過していない可能性が推測される。この場合の措置としては、疎水性PVDFメンブランにかける差圧を大きくする、具体的には不透過液背圧調整器における窒素等の不活性ガスによるシール圧を上げる、または透過液背圧調整器における窒素等の不活性ガスによるシール圧を下げる。あるいは膜分離装置に供給する解乳化液の量を増やす、若しくは酢酸のトルエン溶液1Aの供給量を減らすなどが考えられる。これらの措置で改善されない場合は、膜分離装置自体が故障したことが推測される。
【0064】
本発明の装置は、図面に示す実施形態に限られず、本発明の装置を構成する各部の形状、大きさ、色、材質を変更したもの、または本発明の装置に、周知または慣用の部品を追加したものも本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0065】
1: 乳濁液供給流路
2: 解乳化液供給流路
3: 膜透過液排出流路
4: 膜不透過液排出流路
6: セトラ型解乳化装置
7: 膜分離装置
11: 解乳化液検査用の光電センサ
12: 膜不透過液検査用の光電センサ
13: 膜透過液検査用の光電センサ
17:コアレッサ式解乳化装置
18:コアレッサフィルタ
19:充填層式解乳化装置
20:充填層