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特許7507762眼の状態を治療するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】眼の状態を治療するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240621BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61N 5/067 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61F9/007 140
A61F9/007 180
A61N5/06 A
A61N5/067
A61N5/06 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021531267
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 IB2019001354
(87)【国際公開番号】W WO2020115557
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】62/776,333
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン エス.ケラハー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スレート
(72)【発明者】
【氏名】マイケル バーク
(72)【発明者】
【氏名】マーク ピーターセン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エシュボー
(72)【発明者】
【氏名】ダン バンス
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533074(JP,A)
【文献】国際公開第2018/039729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61N 5/06
A61N 5/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼瞼を有する哺乳動物の眼を治療するためのデバイスであって、
取り外し可能な患者インターフェース構成要素であって、
前記眼瞼の外表面の近傍に配置可能な前板であって、エネルギー変換器によって放出される複数の波長の光を通過させるクリアな材料で作製され、前記前板に対する前記眼瞼の位置に関する情報を提供するように構成されたセンサを更に含む、前板、
前記眼瞼の内表面の近傍に配置可能な背板であって、エネルギー反射材料で作製されるか又はそれで被覆され、前記エネルギー反射材料は、前記眼瞼を透過された第1の波長の光エネルギーを受け、且つそれを反射させて前記眼瞼に戻すように構成され、前記背板は、前記前板に対する前記眼瞼の位置に関する情報を提供するように構成されたセンサを更に含む、背板
取付タブ、
を有する、取り外し可能な患者インターフェース構成要素と、
手持式の器具であって、
眼瞼を透過するように選択された前記第1の波長と、加温のために前記眼瞼によって吸収されるように選択された第2の波長とを含む前記複数の波長の光エネルギーを放出するデバイスを有するエネルギー変換器と、
前記取り外し可能な患者インターフェース構成要素から温度読取値を受け取り、前記眼瞼の各種の温度を測定するように構成された温度測定デバイスと、
温度を表示するように構成されたディスプレイと、
前記取り外し可能な患者インターフェース構成要素の前記取付タブと結合するためのラッチと、
圧縮制御ボタンによって制御され、可動シュラウドを該器具の本体から離れるように移動させるアクチュエータであって、前記可動シュラウドは、前記可動シュラウドを通して前記光エネルギーを含み、送達するように構成された、アクチュエータと、を含む手持式の器具と、
を含み、
前記眼瞼が前記前板と前記背板との間に配置されるとき、前記エネルギー変換器からの前記光エネルギーは、標的組織部位を、前記標的組織部位内に又はそれに隣接して位置するマイボーム腺内のマイボーム腺分泌脂を融解するのに十分に加熱し、
前記可動シュラウドが該器具の本体から離れるように延びるとき、前記可動シュラウドは、外側眼瞼パッドを前記背板へ向けて前進させ、前記眼瞼を圧迫して、前記マイボーム腺を圧出する、デバイス。
【請求項2】
前記前板と前記背板とに結合されたアクチュエータを更に含み、前記アクチュエータは、前記眼瞼を圧迫して前記マイボーム腺を圧出するために、前記前板と前記背板との間に相対運動を生じさせるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記第2の波長において前記エネルギー変換器から放出される光エネルギーの量を制御し、それにより前記標的組織部位の前記加熱を制御するように更に構成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記エネルギー変換器は、細菌を処理するように選択された第3の波長の光エネルギーを提供するように更に構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
治療中に前記眼瞼を観察するための可視化デバイスを更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記エネルギー変換器は、LED、レーザー、白熱ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光ランプ、高輝度放電ランプ及びガス放電ランプの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
ータロガー;ボイスレコーダ;デバイス構成要素に給電するように構成された電池;電池充電手段;コントローラ;プリント回路基板;並びに前記背板とエネルギー変換器との間の通信回路からなる群から選択される1つ以上の構成要素を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月6日に出願された米国特許仮出願第62/776,333号明細書の利益を主張するものであり、この出願は、参照により本明細書に組み込まれる。前述の出願日の優先権が主張される。
【0002】
本開示は、医療デバイス及びそれを使用する方法に関する。より具体的には、本開示は、通常、眼瞼、マイボーム腺、管、開口部及び周囲組織に関係する、マイボーム腺機能不全及び眼瞼炎などの眼の状態を診断及び治療するために使用されるシステム、方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
マイボーム腺機能不全(MGD)は、涙液蒸発亢進型ドライアイ疾患の最も一般的な原因であると考えられており、研究では一般集団内の20%~60%の範囲の有病率を示す。MGDは、マイボーム腺による適切な量の正常分泌物(マイボーム腺分泌脂と呼ばれる)の産生の障害に関連する。マイボーム腺分泌脂は、健康な涙液膜の脂質に富む必須成分である。涙液膜中に十分なマイボーム腺分泌脂が存在しない場合、膜は、容易に蒸発し、涙液蒸発亢進型ドライアイ疾患に至る。一部の患者では、マイボーム腺分泌脂の粘度及び融点が上昇する場合があり、腺から容易に流出しない濃化したマイボーム腺分泌脂となる。更に、マイボーム腺内のチャネル又は管が過角化し、細胞残屑が過剰になり、経時的な腺の閉塞に寄与する可能性がある。腺が慢性的に閉塞する(固くなる)と、それらは、萎縮するおそれがあり、マイボーム腺分泌脂をもはや産生又は分泌することができない。
【0004】
眼瞼炎は、眼瞼及び眼瞼辺縁に関係する一般的な慢性炎症状態であり、多くの場合、MGDと関連する。研究では、一般集団内の眼瞼炎の有病率は、12%~47%の範囲であり、老年者の間で有病率が高くなっていることを示す。MGDに関連する特定の原因因子に加えて、眼瞼炎は、一部には、眼及び眼瞼内並びにそれらの周囲の特定の細菌の存在量が原因となり得る。細菌の副産物は、眼に刺激を与え、更なる炎症及び患者の不快感につながるものと考えられる。更に、いくつかの種類の一般的なダニは、マイボーム腺又は眼内及び眼の周囲の皮脂腺の炎症を増大させる役割を果たす可能性がある。これらの因子に起因する炎症は、マイボーム腺管の更なる狭窄につながる可能性があり、腺からのマイボーム腺分泌脂の流れを制限し、状態を悪化させる。
【0005】
マイボーム腺機能不全の診断は、様々な手法で行われ得る。典型的な手法としては、涙液破壊時間(TBUT)の測定、様々な眼表面の染色並びにマイボーム腺及びそれらの分泌物の検査が挙げられる。腺自体を調べるために用いられる一般的な手法の1つは、眼瞼を反転させて、反転した瞼の下(瞼の外表面上)に光源を配置し、瞼に光を通過させることにより形成される腺の「徹照」像を検査することである。像は、生体顕微鏡を通して肉眼で又はカメラを用いて観察され得る。健康な腺は、長く、比較的直線の形態のように見えるが、機能不全の腺は、蛇行し、膨張しているように見える場合があり、萎縮した腺は、腺塊と管又は開口部との間に連続性の欠如を示す。特定の場合、反転した瞼上に又は反転した瞼を通して赤外線を投影し、IR高感度カメラを使用してマイボーム腺を観察する。これら徹照法の欠点は、瞼を反転させることが必要とされることである。これは、大部分の患者にとって不快であると共に、臨床医が一部の眼瞼に対して実施することが困難な場合がある。
【0006】
MGDを診断するための別の一般的な手法は、瞼辺縁に沿ったマイボーム腺管又は開口部を、通常、生体顕微鏡などの拡大手段によって観察しながら眼瞼に圧力をかけることである。健康な腺は、加えられた圧力に応じて透明脂性分泌物を生成する。一部機能不全の腺は、より少ない油及び/又は濁った油を生成する。より著しく機能不全の(固くなった)腺は、糊状分泌物を生成し、これは、瞼により大きい圧力が加えられたときにのみ圧出することができる。完全に萎縮した又はその開口部が閉塞した腺は、高圧力下でも油を全く生成しない。
【0007】
MGD及び眼瞼炎は、有効な治療が限られている慢性状態である。最も一般的に推奨される治療の1つは、眼瞼領域への温湿布及びマッサージ(湿布又は指先を使用する)の適用である。温湿布治療の意図する目的は、濃化したマイボーム腺分泌脂が存在する固くなったマイボーム腺を加熱し、マイボーム腺分泌脂を軟化させ、それにより管を通してより容易に圧出することである。このプロセスは、管の詰まりを取り、それにより管が正常分泌を再開し、より健康な涙液膜の維持を可能にすると考えられる。患者は、一般に、1日に複数回、5~10分間、眼瞼に温タオル又は他の温湿布を適用するように指示される。しかしながら、こうした手法の有効性は、限定的である場合がある。
【0008】
MGDの院内治療は、多くの場合、罹患した眼瞼を圧迫し、閉塞した又は固くなった腺からマイボーム腺分泌脂を圧出することに限定されている。ほとんどの臨床医は、マイボーム腺分泌脂を圧出するために、自身の指先又は綿棒を使用して外瞼表面に圧力をかけるが、外瞼を押しながら、内瞼に対して綿棒又は平らな金属デバイス(マストローラパドルと呼ばれることがある)を使用することもある。これらの手法は、全て臨床医にとって煩雑なものであり、ほとんどの患者にとって痛みを伴うものである。
【0009】
別の院内治療では、眼及び眼瞼の周囲にインテンスパルスライト(IPL)を使用する。こうした治療は、複数回のセッションでドライアイ症状の改善をもたらすと言われているが、そのメカニズムは、理解されておらず、機器は、高額である。
【0010】
更に別の院内治療は、TearScience(登録商標)LipiFlow(登録商標)システムであり、このシステムでは、加熱要素を眼瞼の下に配置し、膨張可能な袋によって所定のパターンの圧縮を外瞼に加えながら、自動外部コントローラにより加熱要素を目標温度に維持する。このシステムは、高額であると共に、臨床医は、眼瞼辺縁及びマイボーム腺管を視覚的に監視し、処置中、治療結果を最適化するように加熱及び圧縮のレベルを変更するなどのために治療を制御することができない。こうした臨床医による治療の制御は、重要であり得るが、TearScienceシステムには存在しない。
【0011】
患者は、生理食塩水点眼又は人工涙液を使用して、ドライアイに付随する不快感を低減することもできるが、この手法では、機能不全のマイボーム腺及びその原因となる炎症の治療ができない。更に又は代わりに、眼瞼内及びその周囲の細菌量を減少させるために抗生物質が処方される場合がある。特定の細菌を減少させ、穏やかな抗炎症作用をもたらす経口テトラサイクリン誘導体を含む局所及び経口抗生物質が利用可能である。しかしながら、抗生物質の投与は、副作用又は有害なアレルギー反応を引き起こす可能性があり、この手法は、眼瞼炎及びMGDの顕著な長期の緩和をもたらすには不十分であることが多い。炎症を低減するためにコルチコステロイドが処方される場合がある。しかしながら、このようなステロイドの長期使用は、水晶体皮質の好ましくない変化、眼圧上昇及び免疫抑制による感染のリスクを高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、マイボーム腺機能不全及び眼瞼炎を診断及び治療するための方法及びデバイスの改良に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書に記載される実施形態は、上記の必要性の1つ以上を満たすことができ、且つ現在のMGD及び眼瞼炎治療方法の欠点の1つ以上を克服することができる。添付の特許請求の範囲の範囲内のシステム、方法及びデバイスの様々な実施形態は、それぞれいくつかの態様を有し、そのいずれも、本明細書に記載される望ましい属性を単独で担うことはない。添付の特許請求の範囲の範囲を限定することなく、いくつかの顕著な特徴を本明細書に記載する。
【0014】
本出願は、概して、眼瞼、マイボーム腺、管及び周囲組織を治療するために使用される治療システム、方法及びデバイスに関する。本明細書に記載される対象の1つ以上の実装形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴、実施形態及び利点は、本明細書、図面及び特許請求の範囲により明らかになるであろう。
【0015】
一態様では、眼瞼を有する哺乳動物の眼を治療するためのデバイスが提供され、デバイスは、眼瞼を透過するように選択された第1の波長と、加温のために眼瞼によって吸収されるように選択された第2の波長とを含む複数の波長の光エネルギーを放出するデバイスを有するエネルギー変換器、眼瞼の外表面の近傍に配置可能な前板であって、エネルギー変換器によって放出される波長の光を通過させるクリアな材料で作製され、前板に対する眼瞼の位置に関する情報を提供するように構成されたセンサを更に含む、前板、眼瞼の内表面の近傍に配置可能な背板であって、エネルギー反射材料で作製されるか又はそれで被覆され、エネルギー反射材料は、眼瞼を透過された第1の波長の光エネルギーを受け、且つそれを反射させて眼瞼に戻すように構成され、背板は、前板に対する眼瞼の位置に関する情報を提供するように構成されたセンサを更に含む、背板を含み、眼瞼が前板と背板との間に配置されるとき、エネルギー変換器からの光エネルギーは、標的組織部位を、標的組織部位内に又はそれに隣接して位置するマイボーム腺内のマイボーム腺分泌脂を融解するのに十分に加熱する。
【0016】
実施形態では、デバイスは、前板と背板とに結合されたアクチュエータを更に含み、アクチュエータは、眼瞼を圧迫してマイボーム腺を圧出するために、前板と背板との間に相対運動を生じさせるように構成される。実施形態では、アクチュエータは、第2の波長においてエネルギー変換器から放出される光エネルギーの量を制御し、それにより標的組織の加熱を制御するように更に構成される。実施形態では、アクチュエータは、レバー、ボタン、ホイール、スライダ及びスイッチの少なくとも1つである。
【0017】
実施形態では、エネルギー変換器は、細菌を処理するように選択された第3の波長の光エネルギーを提供するように更に構成される。実施形態では、エネルギー変換器は、LED、レーザー、白熱ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光ランプ、高輝度放電ランプ及びガス放電ランプの少なくとも1つを含む。
【0018】
実施形態では、デバイスは、治療中に眼瞼を観察するための可視化デバイスを更に含む。実施形態では、デバイスは、デバイス状態を表示するように構成されたディスプレイ又はダッシュボード;内側及び/又は外側眼瞼表面温度を含む、眼瞼の各種の温度を測定するように構成された温度測定デバイス;データロガー;ボイスレコーダ;デバイス構成要素に給電するように構成された電池;電池充電手段;コントローラ;プリント回路基板;並びにシールドとエネルギー変換器との間の通信回路からなる群から選択される1つ以上の構成要素を更に含む。
【0019】
別の相互関係のある態様では、哺乳類の眼の状態を治療するための方法が提供され、方法は、眼瞼の内表面の近傍にシールドを配置することであって、シールドは、エネルギー吸収材料で作製されるか又はそれで被覆され、シールドは、シールドに対する眼瞼の位置に関する情報を提供するように構成されたセンサを更に含む、配置することと、哺乳類の眼瞼の外側にエネルギー変換器を配置することであって、エネルギー変換器は、1つ以上の波長の光エネルギーを提供するように構成される、配置することと、眼瞼の外側にエネルギー伝送面を配置することであって、エネルギー伝送面は、エネルギー伝送面に対する眼瞼の位置に関する情報を提供するように構成されたセンサを含む、配置することと、エネルギー伝送面とシールドとの間の隔置された関係を修正するために、エネルギー伝送面とシールドとの間の相対運動を生じさせることと、エネルギー吸収材料を加熱するように選択された第1の波長において、光エネルギーをエネルギー変換器からシールドに向けて誘導することと、標的組織部位を、標的組織部位内に又はそれに隣接して位置するマイボーム腺内のマイボーム腺分泌脂を融解するのに十分に加熱するために、エネルギー吸収材料を光エネルギーで加熱することと、を含む。
【0020】
実施形態では、方法は、眼瞼内の標的組織部位を加熱するように選択された第2の波長において、光エネルギーをエネルギー変換器から眼瞼の外表面に向けて誘導することを更に含む。実施形態では、方法は、細菌を処理するように選択された第3の波長において、光エネルギーをエネルギー変換器から眼に向けて誘導することを更に含む。
【0021】
実施形態では、方法は、エネルギー伝送面とシールドとの間で眼瞼を圧縮することを更に含む。実施形態では、方法は、麦粒腫を治療するために、ものもらい又は面皰に圧縮を集中させることを更に含む。実施形態では、方法は、霰粒腫を治療するために、閉塞した腺に圧縮を集中させることを更に含む。
【0022】
実施形態では、エネルギー変換器に電気的に接続された安全機能部は、シールド及び関連するアセンブリが適切にデバイスに取り付けられておらず、且つデバイスと位置合わせされていない場合、光エネルギーの発生を阻止又は中断する。
【0023】
実施形態では、エネルギー伝送面とシールドとの間の相対運動は、シールドに対するエネルギー伝送面の運動を含む。実施形態では、エネルギー伝送面とシールドとの間の相対運動は、シールドに対するエネルギー伝送面の摺動運動を含む。実施形態では、エネルギー伝送面とシールドとの間の相対運動を生じさせることは、エネルギー伝送面に結合されたアクチュエータを作動させることを含む。実施形態では、アクチュエータを作動させることは、ボタンを押すことを含む。実施形態では、エネルギー伝送面とシールドとの間の相対運動を生じさせることは、エネルギー伝送面をシールドに対して摺動させることを含む。
【0024】
実施形態では、シールド及びエネルギー変換面の位置に対する眼瞼の位置は、エネルギー変換器が光エネルギーを放出する所定の範囲内でなければならない。
【0025】
ここで、上述の態様並びに本技術の他の特徴、態様及び利点について、添付の図面を参照しながら、様々な実施形態と共に説明する。しかしながら、図示される実施形態は、単なる例に過ぎず、限定を意図するものではない。文脈に別段の記載のない限り、図面の全体を通して、同様の記号は、通常、同様の構成要素を示す。以下の図の相対的な寸法は、縮尺通りに描かれていない場合があることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A図1Aは、哺乳動物の眼系10の断面図である。
図1B図1Bは、健康な腺、閉塞した腺及び萎縮した腺を有するマイボーム腺を示す、上眼瞼及び下眼瞼の裏面の図である。
図2A図2Aは、いくつかの実施形態による眼治療デバイスの一実施形態の概略ブロック図である。
図2B図2Bは、眼治療デバイスの別の実施形態の概略ブロック図である。
図2C図2Cは、強膜シールドを有する眼治療デバイスの別の実施形態の概略ブロック図である。
図2D図2Dは、画像化要素を備える強膜シールドを有する眼科用デバイスの別の実施形態の概略ブロック図である。
図2E図2Eは、図2Dの実施形態の一部分の拡大断面図である。
図2F図2Fは、図2Eに示される実施形態の正面図である。
図2G図2Gは、図2Dに類似する眼科用デバイスの別の実施形態の概略ブロック図である。
図2H図2Hは、図2Cに類似する眼科用デバイスの別の実施形態の概略ブロック図である。
図3A図3Aは、眼診断及び治療デバイスの一実施形態の概略ブロック図である。
図3B図3Bは、図3Aに示される強膜シールドの一実施形態の拡大図である。
図4A図4Aは、眼治療デバイスの一実施形態の概略側面平面図である。
図4B図4Bは、図4Aの眼治療デバイス実施形態に含まれるエネルギー変換器及び導波管モジュールの概略正面平面図である。
図4C図4Cは、使用時の状態で示される図4Aの眼治療デバイス実施形態の概略側面平面図である。
図4D図4Dは、眼治療デバイスの別の実施形態の概略側面平面図である。
図4E図4Eは、眼治療デバイスの別の実施形態の光学要素の斜視図である。
図4F-H】図4F-4Hは、図4Eのプリズム要素の正面図、側面図及び断面図である。
図4I-L】図4I-4Lは、図4Eの成形レンズ要素の正面図、断面図、側面図及び斜視図である。
図4M図4Mは、4Eの光学要素によって生成される放射照度パターンの理論上のグラフィカル表現である。
図4N図4Nは、4Eの光学要素によって生成される放射照度パターンの理論上のグラフィカル表現である。
図5A図5Aは、眼治療デバイスの更なる実施形態の概略側面平面図である。
図5B図5Bは、図5Aの眼治療デバイス実施形態の概略正面平面図である。
図5C-F】図5C-5Fは、別のデバイス実施形態の一部分の側面図、上面図、正面図及び斜視図である。
図5G図5Gは、5C~Fの光学要素によって生成される放射照度パターンの理論上のグラフィカル表現である。
図5H図5Hは、5C~Fの光学要素によって生成される放射照度パターンの理論上のグラフィカル表現である。
図6図6は、眼治療デバイス及び強膜シールドを含む眼治療システムの一実施形態の概略側面平面図である。
図7A-D】図7A-7Dは、強膜シールドの様々な実施形態の概略正面平面図及び概略側面図である。
図7E-H】図7E-7Hは、強膜シールドの様々な実施形態の概略正面平面図及び概略側面図である。
図8図8は、眼治療デバイスの別の実施形態の概略側面平面図である。
図9図9は、1つ以上の冷却機構を含む眼治療デバイスの別の実施形態の概略側面平面図である。
図10図10は、1つ以上の安全センサを含む眼治療デバイスの別の実施形態の概略側面平面図である。
図11A図11Aは、図Aは、眼治療デバイスの別の実施形態の概略側面平面図である。
図11B図11Bは、眼治療デバイスの別の実施形態の概略側面平面図である。
図12図12は、振動手段を含む眼治療デバイスの別の実施形態の概略側面平面図である。
図13図13は、個人による使用時の眼治療システムの一実施形態の概略図である。
図14A図14Aは、眼治療システムの一実施形態の概略側面平面図である。
図14B図14Bは、図14Aの眼治療システム実施形態の一部分の概略正面平面図である。
図15A図15Aは、眼治療器具システムの一実施形態の概略側面図である。
図15B図15Bは、図15Aに示される実施形態のA-Aに沿って取られた正面断面図である。
図15C図15Cは、図15Aに示される実施形態の正面図である。
図15D図15Dは、図15Aの実施形態のB-Bに沿って取られた側面断面図である。
図16A-O】図16A-16Oは、治療される眼瞼の部分への熱の印加及び圧縮中、一方又は両方の眼瞼辺縁を観察することを可能にするアパーチャを画定する、システムのエネルギー伝送面、強膜シールド及び支持アームの固有の構成を示す。
図17A-C】図17A-17Cは、エネルギー導波管モジュール及びエネルギー伝送面と組み合わせたエネルギー変換器モジュールの一実施形態を示す。
図17D図17Dは、図17A図17Cの実施形態における、眼瞼を通過する赤外線の放射照度分布のグラフィカル表現を示す。
図17E-F】図17E-17Fは、特定のコーティングを有するエネルギー伝送面の要素を示す。
図17G図17Gは、エネルギー伝送面の一部分に特定のコーティングを有する一実施形態における、眼瞼を通過する赤外線の放射照度分布のグラフィカル表現である。
図17H図17Hは、エネルギー伝送面の一部分に特定のコーティングを有する一実施形態における、眼瞼の外表面上のライム色光の放射照度分布を示す。
図18A-B】図18A-18Bは、眼治療デバイスの別の実施形態の正面図及び側面図である。
図19図19は、使い捨て部分の前板の一実施形態を示す図である。
図20図20は、融解時間の詳細を示す眼治療デバイスディスプレイの一実施形態を示す。
図21A-B】図21A-21Bは、可動ライトパイプを有する眼治療デバイスの一実施形態を示す図である。
図22図22は、前板設計要素を含む使い捨て部分の更なる特徴を示す。
図23図23は、図22の使い捨て部分の分解図である。
図24図24は、背板センサの熱的分離部を含む使い捨て部分の更なる特徴を示す。
図25図25は、光源及びカメラのパルシング又はインターリービングのグラフを示す。
図26A-B】図26A-26Bは、閉塞したマイボーム腺を検出するために眼瞼の表面及び辺縁を観察及び/又は撮影するために使用されるカメラの実施形態を示す。
図27図27は、眼瞼を加温するための加熱部を有する背板の別の実施形態を示す。
図28A-B】図28A-28Bは、使い捨て部分を眼瞼上及び下眼瞼の治療間において回転させることができる眼治療デバイスの別の実施形態の正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な説明では、本開示の一部を形成する添付の図面を参照する。文脈に別段の記載のない限り、図面において、同様の記号は、通常、同様の構成要素を示す。詳細な説明、図面及び特許請求の範囲に記載されている例示的な実施形態は、限定を意図するものではない。本明細書に示される対象の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態が用いられ得、他の変更形態がなされ得る。本明細書に全般的に記載され、図に示される本開示の態様は、多様な異なる構成で配置、置換、組み合わせ及び設計することができ、これらは、全て明示的に企図されるものであり、本開示の一部を形成することが容易に理解されるであろう。
【0028】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、本開示の限定を意図するものではない。当業者であれば、特定数の請求項の要素が意図される場合、そうした意図は、請求項に明示的に記載され、そうした記述がなければ、そうした意図が存在しないことを理解するであろう。例えば、本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈に別段の明示のない限り、複数形も含むものとする。本明細書で使用する場合、「及び/又は」という用語は、記載の関連物品の1つ以上の全ての組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、用語「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「包含する」及び「包含している」は、記載される特徴、整数、工程、動作、要素及び/又は構成要素の存在を明示するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことが更に理解されるであろう。「少なくとも1つ」などの表現が要素のリストに先行する場合、要素のリスト全体を修飾し、リストの個々の要素を修飾しない。
【0029】
本明細書に記載されるデバイス及び方法の説明を補助するために、いくつかの関連用語及び方向を示す用語が使用される。本明細書で使用する場合、「接続される」及び「結合される」並びにそれらの変化形は、別の要素と連続的に形成されるか若しくは接着されるか、又は他に別の要素に、別の要素上に、別の要素内等に直接取り付けられるなどの直接接続及び接続された要素間に1つ以上の要素が配置される間接接続を含む。「接続される」及び「結合される」は、永久的又は非永久的な(即ち取り外し可能な)接続を意味し得る。
【0030】
本明細書で使用する場合、「固定される」及びその変化形は、別の要素に、別の要素上に、別の要素内等に直接接着されるか、ねじ止めされるか、又は他に固定されるなど、要素が別の要素に直接固定される方法並びに固定された要素間に1つ以上の要素が配置される、2つの要素を互いに固定する間接手段を含む。
【0031】
「近位」及び「遠位」は、患者を治療する医療専門家の観点による位置を記述するために本明細書で使用される関係語である。例えば、「遠位」と比較して、「近位」という用語は、医療専門家のより近くにある位置を指す一方、遠位端は、治療中、患者のより近くに位置する。例えば、本明細書に開示されるデバイスの遠位端は、同じデバイスの近位端の反対側にあり、デバイスの遠位端は、多くの場合、例えば患者の眼瞼に対して配置されるように構成された端部を含む。
【0032】
「変換器」は、ある形態のエネルギーを受け、これを別の形態のエネルギーに変換する要素を記述するために本明細書で使用される用語である。例えば、光源は、電気エネルギーを受け、光エネルギーを生成することができる。同様に、超音波変換器は、電気エネルギーを受け、超音波エネルギーを生成することができる。
【0033】
本明細書で使用する場合、「光」とは、可視光スペクトルのエネルギーだけでなく、電磁エネルギースペクトルの赤外部及び紫外部のエネルギーも指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、「導波管」は、光、超音波エネルギー及び高周波エネルギーなどの電磁エネルギーの伝搬、分布又は軌道に影響を及ぼす任意の手段を指す。本明細書に定義されるように、導波管のこの広範な定義には、回折器、屈折器、拡散器等などの光学要素が含まれる。
【0035】
「光路長」は、エネルギーが移動する(例えば、組織部分内の)経路の長さを記述するために本明細書で使用される。
【0036】
本明細書に開示される実施形態は、眼科用デバイス、システム及び方法に関する。本明細書に開示されるデバイス、システム及び方法は、マイボーム腺、管、開口部及び周囲組織を治療するために使用することができ、特にMGD、眼瞼炎並びに涙液蒸発亢進型ドライアイ疾患などのMGD及び眼瞼炎との生理的関係を有する状態の治療を対象とする。図1Aは、眼球20及び周囲眼瞼解剖学的構造を含む哺乳動物の眼系10の断面図である。本開示内に記載されるように且つ図1Aに示されるように、眼の「中心眼球軸」30は、眼球20の角膜22、虹彩24、瞳孔25、水晶体26及び硝子体28の中心を通る中心軸である。眼系10は、上眼瞼12、下眼瞼14及び睫毛16を含む。各眼瞼12、14の組織内にはマイボーム腺18があり、マイボーム腺18は、それぞれ開口部又は管19を有する。健康な眼系10では、マイボーム腺18は、主として脂質及びタンバク質を含むマイボーム腺分泌脂と呼ばれる物質を管19から分泌する。マイボーム腺分泌脂は、眼球20の表面を覆う涙液膜の一部を形成する。
【0037】
図1Bは、健康な腺、閉塞した腺及び萎縮した腺を有するマイボーム腺を示す内側眼瞼の図である。腺の慢性的な閉塞は、MGD及び眼瞼炎のいくつかの形態に付随するものであり、管のキャッピング及び/又は腺の萎縮につながる可能性がある。MGD又は眼瞼炎に付随する炎症は、腺管19の更なる狭窄を更に引き起こす可能性があり、マイボーム腺分泌物の減少、したがって涙液膜中の脂質の量の減少につながる。脂質含有量が減少した涙液膜は、急速に蒸発し、涙液蒸発亢進型ドライアイに至る可能性がある。涙液膜の減少は、眼内又は眼の周囲の細菌のレベルの増加に関連する場合もある。このような細菌は、それ自体により又は眼に刺激を与える特定の副産物により炎症を悪化させる可能性がある。慢性的に閉塞した腺を定期的に除去することにより、腺を永久的に萎縮しないようにすることができると考えられる。
【0038】
眼瞼炎に寄与すると考えられる別の因子は、ニキビダニ(Demodex folliculorum)及びコニキビダニ(Demodex brevis)の存在であり、これらは、大部分の人に一般的に見られ、眼瞼炎に罹患している人ではより多数が報告されている。これらのダニは、睫毛及び眉の毛包内並びにマイボーム腺及び皮脂腺内で生息することができる。これらの存在は、それのみで特定の個人において炎症につながる可能性があるが、こうしたダニは、特定の細菌を宿すおそれがあるとも考えられる。こうした細菌は、それらの生活環中に眼瞼領域に放出され、更なる炎症につながる可能性がある。
【0039】
図2Aは、様々な実施形態による眼治療デバイス100の概略ブロック図である。図2Aに示すように、図示されている眼治療デバイス100は、電源モジュール110と、エネルギー変換器モジュール120と、エネルギー導波管モジュール130と、エネルギー伝送面140(圧縮要素とも呼ばれる)とを含む。いくつかの実施形態では、エネルギー導波管モジュール130は、任意選択的であり得る。他の実施形態では、エネルギー変換器モジュール120とエネルギー導波管モジュール130とは、単一のユニットに組み合わされ得る。
【0040】
様々な実施形態の電源モジュール110は、エネルギー変換器モジュール120にエネルギーを提供する。電源モジュール110は、眼治療デバイス100の他の1つ以上の構成要素に電力を送達するように構成された任意の構造を含み得る。いくつかの実施形態では、電源モジュール110は、使い捨て電池、充電式電池、太陽電池、電源供給部若しくは電力変換器などの電力変換モジュール又は外部電源から交流若しくは直流を受け入れるように構成されたコード、コンセント若しくはプラグなどの電力伝送機構を含む。
【0041】
エネルギー変換器モジュール120は、1つ以上の形態又は種類のエネルギーを放出するように構成されている1つ以上のエネルギー変換器を含み得る。例えば、以下でより詳細に記載するように、いくつかの実施形態では、エネルギー変換器は、光子エネルギー、音響エネルギー、高周波エネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁エネルギー、振動エネルギー、赤外エネルギー又は超音波エネルギーを放出する。いくつかの実施形態では、エネルギー変換器モジュール120は、複数の種類のエネルギーを同時に又は所定の順序で発生させる。
【0042】
エネルギー導波管モジュール130は、エネルギー変換器からのエネルギー放出の方向を制御又は集束するように構成されている1つ以上の構造体を含む。例えば、エネルギー導波管モジュール130は、所望の領域に向けて光子エネルギーを集束するように構成されている1つ以上の反射器、屈折器、回折器若しくは拡散器(以下でより詳細に説明する)又は超音波ホーン若しくは光ファイバーなど、エネルギー放出を構成し、誘導するための他の構造体を含み得る。
【0043】
図2Aの眼治療デバイス100は、有利には、エネルギー変換器モジュール120によって発生したエネルギーを所望の領域に向けて更に誘導するように構成されているエネルギー伝送面140を更に含み得る。例えば、エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120によって発生したエネルギーを集束するように構成されている1つ以上のレンズを含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、エネルギー導波管モジュール130及びエネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120によって発生したエネルギーが眼の特定の領域に伝送されることを阻止又は制限することもできる。エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120によって生成されたエネルギーに対して実質的に不透明又は不透過性の領域と、エネルギー変換器モジュール120によって生成されたエネルギーに対して半透明又は透過性の領域とを含み得る。眼治療デバイス100のモジュールについて、本開示の他の実施形態に関連して以下で更に詳細に説明され、他の構成要素を含み得る。
【0045】
図2Bは、様々な実施形態による眼治療デバイス100の概略ブロック図である。図2Bは、図2Aに類似し、電源モジュール110と、エネルギー変換器モジュール120と、任意選択的なエネルギー導波管モジュール130と、エネルギー伝送面140とを含む。エネルギー伝送面140は、実質的に中実であり得るか、又はエネルギー伝送面140若しくは眼治療デバイス100の他の部品から離隔した要素を含み得る。例えば、エネルギー伝送面140は、エネルギー伝送面140の中実部分から特定の距離に配置される伸張要素を含み得る。例えば、図2Bでは、伸張要素143は、エネルギー伝送面140(存在する場合)の主部から離隔した網目状の構造体として示される。伸張要素143は、エネルギー伝送面140(存在する場合)、又はエネルギー導波管(存在する場合)、又はエネルギー変換器モジュールの主部と眼瞼表面12、14との間に間隙を維持しながら、エネルギー変換器モジュール120によって発生する所望のエネルギーに対して少なくとも部分的に透明な表面を含み得る。伸張要素143によって作成された間隙は、例えば、眼瞼の強制空冷のための経路を提供するのに有利な場合がある。更に、伸張要素143を眼瞼表面に押し付けて、眼瞼12、14及び/又は眼瞼内の目的構成要素を加熱するための光路長を減少させることができる。光路長が減少すると、放射スループットの向上、散乱の減少、屈折率の整合及びフルエンスの増加により、組織の加熱に有利になり得る。伸張要素143は、細線若しくはプラスチックメッシュ又は多孔金属薄板若しくはプラスチック表面等の低熱質量材料で作製され得、眼瞼の表面に圧力をかけている間、眼瞼の形状に合致するように構築され得る。一実施形態では、伸張要素143は、上眼瞼及び下眼瞼の両方に押し付けられているとき、加えられた圧力を、組み合わされた上外側眼瞼表面及び下外側眼瞼表面にわたって均一又は不均一に分散させることができるように構築され得る。例えば、一実施形態では、伸張要素143は、中心眼球軸30に低い圧力をかけ、別の場所に高い圧力をかけ得る。これは、中心眼球軸上で眼瞼に繰り返し加えられる圧力によって円錐角膜などの合併症を生じる可能性が高まると考えられ得る場合に望ましいことがある。他の実施形態では、伸張要素143は、能動的に加熱又は冷却され得る。
【0046】
図2Cは、電源モジュール110と、エネルギー変換器モジュール120と、任意選択的なエネルギー導波管モジュール130と、エネルギー伝送面140と、強膜シールド300(背板とも呼ばれる)とを有する眼治療デバイス100の別の実施形態の概略ブロック図である。この実施形態では、1つ以上の眼瞼12、14がエネルギー伝送面140と強膜シールド300との間に配置されている。
【0047】
エネルギー変換器モジュール120は、1つ以上の形態又は種類のエネルギーを放出するように構成されている1つ以上のエネルギー変換器を含み得る。例えば、以下でより詳細に記載するように、いくつかの実施形態では、エネルギー変換器は、光子エネルギー、音響エネルギー、高周波エネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁エネルギー、振動エネルギー、赤外エネルギー又は超音波エネルギーを放出する。いくつかの実施形態では、エネルギー変換器モジュール120は、複数の種類のエネルギーを同時に又は所定の順序で発生させる。上述のように、任意選択的なエネルギー導波管モジュールは、エネルギー変換器からのエネルギー放出の方向を制御又は集束するために含まれ得る。
【0048】
図2Cの眼治療デバイス100は、有利には、エネルギー変換器モジュール120によって発生したエネルギーを所望の領域に向けて更に誘導するように構成されているエネルギー伝送面140を更に含み得る。エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120によって発生したエネルギーを集束するように構成されている1つ以上のレンズを含み得る。エネルギー伝送面140(及び/又は図2Bに示される伸張要素143)は、(焦点などの)特定のエネルギー伝送特性を調整するために、且つ/又は眼瞼の表面12、14に接触するために、且つ/又は眼瞼12、14に圧力をかけるために移動経路145に沿って移動可能であり得る。強膜シールド300を眼治療デバイス100の他の部品に対して一定の空間的関係に維持しながら眼瞼12、14に圧力をかけることにより、眼瞼12、14を圧縮することができ、それにより眼瞼12、14及び/又は眼瞼内の目的構成要素を加熱するための光路長を減少させる。光路長が減少すると、放射スループットの向上、散乱の減少、屈折率の整合及びフルエンスの増加により、組織の加熱に有利である。眼瞼は、眼瞼を圧縮要素に対して圧縮するか又は押し付ける背板300によって圧縮され得る。代わりに、眼瞼は、眼瞼を背板300に対して圧縮するか又は押し付ける圧縮要素によって圧縮され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、エネルギー変換器モジュール120は、光子エネルギー、音響エネルギー、高周波エネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁エネルギー、振動エネルギー、赤外エネルギー又は超音波エネルギーなどの複数の種類のエネルギーを同時に発生させ得る。例えば、第1のエネルギーは、眼瞼の外表面を加熱し得る一方、第2のエネルギーは、以下で更に詳細に説明するモードにおいて、眼瞼組織のより深くに貫通し、且つ/又は強膜シールドと相互作用し得る。
【0050】
図2Dは、図2Cに類似する、電源モジュール110と、エネルギー変換器モジュール120と、任意選択的なエネルギー導波管モジュール130と、エネルギー伝送面140と、強膜シールド300とを有する眼治療デバイス100の別の実施形態の概略ブロック図である。いくつかの実施形態では、強膜シールド300は、強膜シールド300に統合された像変換部155を更に含み得る。図2Eは、眼瞼14が像変換部155に隣接して配置されている、強膜シールド300に埋設された像変換部155の拡大断面図を示す。示される実施形態では、像変換部155は、反射性である。例えば、可視光線又は赤外線であり得る照明エネルギー170は、眼瞼14を通過し、したがってマイボーム腺18を通過し、その後、エネルギー透過性材料185を通り、反射面180から反射される際に光路175に沿って通過し、最終的に眼瞼辺縁14aの上方で像変換部155を出る。像変換部155から出現する得られる像は、像変換部155に隣接し、照明エネルギー170によって照明された眼瞼14の部分の陰影像又は徹照像であることが理解されるであろう。このようにして、像変換部155は、眼瞼を反転させる必要なく、直接可視化下において又は可視化デバイス若しくは可視化手段160として集合的に示される拡大要素若しくはカメラを用いて、眼瞼14の内側の徹照像190を観察することを可能にする。図2Fは、マイボーム腺の徹照像190を示す、図2Eに示されるものと同じ実施形態の正面図である。
【0051】
像変換部155は、反射面を有する一連の鏡面又はプリズムを含み得る。代わりに、像変換部は、ライトパイプ、光ファイバー束、イメージセンサ又はこれらのいくつかの組み合わせなどの光屈曲要素を含み得る。像投影、角形成又は倍率などの様々な望ましい光学的性質を像変換部155に組み込み得ることが理解されるであろう。このような性質は、例えば、反射面180を曲線状にすることにより、透過性材料185の表面を成形することにより、且つ/又は屈折率を変化させることにより、束内のファイバー要素の密度及び分布を変化させることにより又はこれらのいくつかの組み合わせにより達成され得る。像変換部155がイメージセンサを含む実施形態では、そのようなセンサは、CCDタイプのもの、CMOSタイプのもの、蛍光型集光器(Johannes Kepler University、Linz,Austriaで製作されたものなど)又は徹照データを取り込み、それを視覚、光学若しくは電気情報のいずれかに変換することができる任意の種類のセンサであり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、眼瞼14の診断及び治療中における眼瞼辺縁14aの可視化は、顕著な利点を提供する。例えば、上述のように、エネルギー伝送面140と、像変換部155を有する強膜シールド300との間に眼瞼14を配置することで、眼瞼及びマイボーム腺の徹照像の可視化を可能にする。図1Bに示すように、健康な腺、閉塞した腺及び萎縮した腺の形態は、腺の徹照像を観察することにより各腺の状態の診断を可能にするのに十分に異なる。図2Dを再度参照すると、腺の状態は、エネルギー伝送面140を眼瞼14に押し付けるように移動経路145に沿って移動させながら眼瞼辺縁14aを観察することにより、徹照法なしでも評価され得る。眼瞼14が圧縮されると、眼瞼辺縁14aが観察され、前述したように、管19からの分泌物の質及び量によって腺の状態が評価される。
【0053】
診断後に治療が望まれる場合、眼治療デバイス100は、多数の罹患した腺がエネルギー伝送面140と強膜シールド300との間に配置されるように眼瞼14に沿って再配置され得る。理想的に配置されたら、エネルギー伝送面140を移動経路145に沿って移動させて、眼瞼12、14の表面に接触させ得、且つ/又は強膜シールド300に向けて移動させ続け、眼瞼12、14に圧力をかけ得る。
【0054】
図2Dを再度参照すると、任意選択的な結合媒体195が眼瞼12、14とエネルギー伝送面140との間に配置され得る。結合媒体195は、流体、ゲル、クリーム等であり得、グリセロールなどの物質を含有し得る。グリセロールなどの物質は、眼瞼12、14とエネルギー伝送面140との間の屈折率不整合を低下させることにより、光散乱を低減して、光透過率を増加させることにより、眼瞼及び標的組織への光透過の効率を高めることができる。結合媒体195は、角質層などの眼瞼皮膚表面の一部を水和させることによって散乱の低減を補助することもできる。
【0055】
図2Gは、電源モジュール110と、エネルギー変換器モジュール120と、任意選択的なエネルギー導波管モジュール130と、エネルギー伝送面140と、強膜シールド300に統合された像変換部155とを有する眼治療デバイス100の別の実施形態の概略ブロック図である。像変換部155は、エネルギー伝送面140からのエネルギーの少なくとも一部を眼瞼14の内側に向けて方向転換することを可能にする。例えば、眼瞼14は、エネルギー伝送面140と、像変換部155を含む強膜シールド300との間に配置され得る。エネルギー伝送面140は、眼瞼の外側及び像変換部155の少なくとも1つに向けてエネルギーを誘導する。像変換部155は、エネルギー伝送面140からのエネルギーを眼瞼の内側に向けて方向転換することができる。像変換部155を介して眼瞼の内表面にエネルギーを誘導する利点は、効率的なエネルギー送達モード、したがって加熱モードを、少なくとも眼瞼辺縁に隣接する内表面の部分に提供し得ることである。(像変換部155を介した)この加熱モードと、エネルギーが眼瞼を通して誘導される加熱モードとを組み合わせることにより、内側眼瞼表面の全体的な加熱効率を最適化することができ、瞼辺縁に隣接する内表面の優先的な追加加熱を実現することができる。なぜなら、これは、顕著な塞栓及び閉塞が起こり得るゾーンであるためである。優先的な追加加熱が行われ得る瞼辺縁に隣接する内側眼瞼表面組織の近傍に追加的な温度センサが配置され得る(以下で図3Aを参照して説明及び図示される)。
【0056】
図2Hは、図2Cに類似する、電源モジュール110と、エネルギー変換器モジュール120と、任意選択的なエネルギー導波管モジュール130と、エネルギー伝送面140と、強膜シールド300とを有する眼治療デバイス100の別の実施形態の概略ブロック図である。いくつかの実施形態では、強膜シールド300は、眼瞼を通過する特定の種類のエネルギーによって活性化させることが可能なエネルギー変換コーティング194を更に含み得る。一実施形態では、エネルギー変換コーティング194は、眼瞼を元々通過したものと同じ形態のエネルギーを使用して、エネルギーの方向を、眼瞼の内側に向けて戻る方に転換することができる。別の実施形態では、エネルギー変換コーティング194は、エネルギーの種類を変化させ、変化したエネルギーを好ましい方向に誘導又は放出することができる。一実施形態では、コーティングは、リン光性である。例として、眼瞼を透過するエネルギーは、ほとんど吸収されずに組織を直ちに通過する可視光線又は赤外線の波長であり得、このエネルギーがエネルギー変換コーティング194に到達すると、リン光材料は、コーティングに隣接する組織(これは、好適な実施形態では、マイボーム腺を含む眼瞼の内表面である)によってより即座に吸収される異なる波長の光エネルギーを放出する。別の実施形態では、コーティングによって吸収される特定の形態のエネルギーは、眼瞼の内表面を加熱することができる発熱化学反応を誘発する。図2A図2Hのいくつかの実施形態は、以下:支持アームを有する強膜シールド;強膜シールドに統合された反射性イメージャ;各種の温度の表示;消費可能部分;消費可能物を特定し、再使用を防ぐためにデバイスと消費可能物との間で通信するためのコネクタ及び回路;データロガー;ボイスレコーダ並びに眼瞼を通過する特定の種類のエネルギーによって作動される記録及び/又は伝送能力を備えるカメラの1つ以上も含み得る。一実施形態では、エネルギー変換コーティング194は、眼瞼を元々通過したものと同じ形態のエネルギーを使用して、エネルギーの方向を、眼瞼の内側に向けて戻る方に転換することができる。別の実施形態では、エネルギー変換コーティング194は、エネルギーの種類を変化させ、変化したエネルギーを好ましい方向に誘導又は放出することができる。一実施形態では、コーティングは、エネルギー伝送面140から眼瞼を通して伝送されるエネルギーによって活性化されるリン光材料である。例として、眼瞼を透過するエネルギーは、ほとんど吸収されずに組織を直ちに通過する可視光線又は赤外線の波長であり得、このエネルギーがエネルギー変換コーティング194に到達すると、リン光材料は、コーティングに隣接する組織(これは、好適な実施形態では、マイボーム腺を含む眼瞼の内表面である)によってより即座に吸収される異なる波長の光エネルギーを放出する。別の実施形態では、コーティングによって吸収される特定の形態のエネルギーは、眼瞼の内表面を加熱することができる発熱化学反応を誘発する。
【0057】
図3Aは、眼治療デバイス200の一実施形態の概略側面平面図である。図3Aに示される眼治療デバイス200は、眼瞼14をMGD、眼瞼炎及び他の病態に関して治療するために眼球20に対して配置された状態で示される。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、眼瞼を圧縮している間に眼瞼の内表面及び/又は外表面を加熱するように構成されている。眼治療デバイス200からの熱が眼系10、特にマイボーム腺などの治療組織に伝達されるにつれて、熱により、マイボーム腺分泌脂を軟化させることができ、それによりマッサージ又は眼の運動中にマイボーム腺分泌脂をより容易に圧出することを可能にする。眼治療デバイス200は、眼治療デバイス200の動作時に有用な追加的な構成要素と共に、図2A図2Hに示されるモジュールの構成を含み得る。
【0058】
眼治療デバイス200は、取り外し可能又は消費可能部分260と結合されたハウジング202を含み得る。取り外し可能又は消費可能部分260は、係合手段186によりハウジング202に結合され得、係合手段186は、ピン、位置合わせガイド、スライドロック等であり得る。ハウジング202は、電源モジュール110と、任意選択的なコントローラ212と、エネルギー変換器モジュール120と、エネルギー変換器モジュール120と共に移動経路145に沿って摺動可能な関係にあるエネルギー伝送面140とを含み得る。代わりに、エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120及び任意選択的に熱管理構造体220と連結されるか又はこれらの一部であり得、これらは、共にハウジング202又は眼治療デバイス200の他の部品に対して摺動可能な関係にあり得る。エネルギー伝送面140及び連結された部品の移動は、例えば、アクチュエータ182を用いて行われ得る。図3Aに示されるようないくつかの実施形態のエネルギー変換器モジュール120は、LEDエミッタ207、LEDレンズ208、熱管理構造体220及びエネルギー変換器モジュールドライバ209の1つ以上で形成されたLEDデバイスを含み得る。ハウジング202は、診断及び治療中の眼瞼辺縁の監視を強化するための可視化手段160と、内表面温度及び/若しくは外表面温度などの眼瞼の各種の温度を示すディスプレイ又はダッシュボード218と、データロガー214と、ボイスレコーダ213と、消費可能物の種類を特定し、消費可能物が適切に位置合わせされていることを確実にし、且つ/又は消費可能物の再使用を防ぐために、デバイスと消費可能回路226bとの間で通信するための回路226aとを更に含み得る。消費可能部分260は、眼系10(図1に示されるような)の敏感な解剖学的構造を覆うために眼瞼12、14と眼球20との間に配置され得る強膜シールド300を含み得る。例えば、強膜シールドは、強膜21及び角膜22の上に配置され得、虹彩24、瞳孔25、水晶体26などの眼の他の内部解剖学的構造並びに眼系10の他の光感受性の解剖学的構造に対する保護も提供し得る。強膜シールド300の使用により、安全性を高めることができ、エネルギー変換器モジュール120から放出される有害な光が、敏感な眼の解剖学的構造に到達して、これを損傷する可能性を低下させることができる。強膜シールド300は、エネルギー吸収材料から形成され得、且つ/又はエネルギー吸収前面302を有し得る。いずれの場合にも、強膜シールド300又はエネルギー吸収前面302によって吸収される、眼瞼を透過するエネルギーは、シールド又は前表面をそれぞれ加熱することができ、それにより眼瞼の内表面に暖かさを提供することができる。強膜シールド300の裏表面及び縁は、角膜又は他の敏感な眼の構造に対する損傷を生じさせることができないか若しくは損傷の可能性を低下させる滑らかでバリのない仕上げを確実にする材料及びプロセスで作成されることが好ましい。1つの好適な実施形態では、裏表面及び縁は、延伸テフロン(登録商標)(ePTFE)材料で覆われている。強膜シールド300は、温度を監視するための1つ以上の温度センサ310並びに眼瞼にかかる力又は圧力の量を監視するための力又は圧力センサ221も組み込み得る。ワイヤ420などの電気伝導体がセンサ310及びセンサ221をハウジング202内の回路に接続し得る。図3Bは、上述したように、眼瞼14の内側及び眼瞼の裏のマイボーム腺の観察を可能にする像変換部155を更に含む強膜シールド300の一実施形態を示す。いくつかの実施形態では、強膜シールド300は、データ伝送手段及び/又は内蔵電源を更に含み得、これらの両方について、図7Aなどのデータ伝送手段320及び内蔵電源330として以下でより詳細に説明する。更に明確には、強膜シールド300は、1つ以上のワイヤ420のように様々な手法でハウジング202に結合され得、このようなワイヤは、支持アーム262として機能するための十分な機械強度を備えた絶縁体を有する。更に、いくつかの実施形態は、デバイスと消費可能物との間で通信するための回路226a及び回路226bを有し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、LEDエミッタ207の上にLEDレンズなどのレンズ208が使用され得る。いくつかの実施形態では、LEDレンズ208は、所望の治療組織及び/又は強膜シールド300に対するLEDエミッタ207の方向及び強度を制御するために使用される特殊形状のレンズであり得る。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120又はLEDエミッタ207からのエネルギーを所望の治療領域に対して集束し、誘導するために、レンズとして機能し得るか、又はレンズと組み合わせて使用され得る。
【0060】
これら構成要素のそれぞれは、単独で又は本明細書に記載される実施形態のいずれかの他の構成要素と組み合わせにおけるものであるて。
【0061】
眼治療デバイス200は、眼治療デバイス200の各種の構成要素に電力を供給するための電源モジュール110を含むことができ、構成要素のいくつか又は全てに電気的に接続され得る。いくつかの実施形態では、電源モジュール110は、通常の電池又は充電システムに結合され得る充電式電池のいずれかを使用する電池駆動式である。他の実施形態では、電源モジュール110は、電気コンセント又は外部電池供給部などの外部電源に結合され得る。いくつかの実施形態では、電源モジュール110は、眼治療デバイス200の各種の構成要素に電気エネルギーを提供するための命令をコントローラ212から受信するためにコントローラ212と電気的に接続され得る。
【0062】
コントローラ212を有する特定の実施形態では、コントローラ212は、LEDエミッタ207から光を放出するために、(例えば、ボタン、スイッチ、タッチスクリーンなどのユーザインタフェースデバイス270、スマートフォンなどの別のモジュール又はデバイスからの音声コマンドを介して)使用者から入力命令を受け取ることができる。使用者の入力命令を受け取ると、コントローラ212は、エネルギー変換器モジュールドライバ209に又はエネルギー変換器モジュールドライバ209からエネルギーを送達するように電源モジュール110に指示することができる。エネルギー変換器モジュールドライバ209は、LEDエミッタ207が電源モジュール110からの電気エネルギーを別の形態の電磁エネルギー(光など)に変換することを可能にする。このようにして、エネルギー変換器モジュールドライバ209及びLEDエミッタ207は、電源モジュール110から受け取った電気エネルギーの変換器として機能することができる。
【0063】
エネルギー変換器モジュールドライバ209は、実際のプリント回路基板、集積回路又はディスクリートコンポーネントとして構成されているかどうかを問わず、任意のLED電力供給及び制御回路を含み得る。いくつかの実施形態では、エネルギー変換器モジュールドライバ209は、LEDドライバの機能を果たし、LEDエミッタ207を介してLED仕様の範囲内の制御された電流、電圧又は電力レベルを提供し、LEDエミッタ207から所望の照明強度を提供する。任意選択的に、LEDプリント回路基板は、パルス幅変調機能、PID回路又は眼瞼の標的部位の所望の加熱を実現するために有効放出強度を経時的に調整するための類似のスキームを含み得る。
【0064】
LEDエミッタ207は、1つの種類のエネルギー変換器モジュール120の一部であり、所望の治療に必要な適切な波長の光を放出するように構成され得る。治療としては、以下:内表面及び/若しくは外表面、眼瞼辺縁並びに/又は眼瞼の裏のマイボーム腺を照明することによる眼瞼12、14の診断;眼系10の標的組織部位(例えば、眼瞼12、14の裏のマイボーム腺)の加熱;並びに眼系10内の細菌を死滅させるための抗菌治療の1つ以上が挙げられ得る。本明細書中における様々なデバイス(眼治療デバイス200を含む)の記載は、例示的なものであり、限定的なものではないことに留意されたい。したがって、例えば、この詳細な説明では特定の機能を有する特定の要素及び回路に言及するが、これは、本開示をそれらの特定の実施形態に限定するものではない。例えば、LEDに言及するが、白熱光源、キセノン光源、ハロゲン光源、高輝度放電光源、冷陰極管光源、蛍光光源、レーザー光源などの他の光源並びに他の光源又はエネルギー源が使用され得る。同様に、コントローラ212及びエネルギー変換器モジュールドライバ209に言及するが、コントローラが光源のドライバ回路又はソリッドステート若しくは他の電源供給部の回路と統合され得ること又は所望の結果をもたらすために他の構成が使用され得ることが理解されるであろう。更に、コントローラ212によって処理又は制御されると記載されている機能のいくつか又は全ては、ディスクリート論理回路又はアナログ回路又はこれらの組み合わせを使用して実施され得る。更に、眼治療デバイス200などの様々な実施形態は、概略的に示されるが、これらは、任意選択的なグリップ面、操作及び制御構造等を備えた様々な手持型構成又は定置型構成で製作することができる。更に、本明細書に記載されるデバイスは、家庭での使用及び眼のケアの専門家のオフィス、診療所又は他の医療施設内での使用を含む複数の状況での使用のために設計され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、エネルギー変換器モジュール120は、代わりに、例えば白熱ランプ、キセノンランプ又はハロゲンランプなどの広域スペクトルランプであり得る。このような広域スペクトルランプは、エネルギー変換器モジュール120からのエネルギーの治療組織への印加中、眼の状態の治療に必要のない特定の波長を除去するために、又は眼系10の標的部位(例えば、マイボーム腺18)の治療組織に有害となり得る特定の波長を除去するために、1つ以上のカラーフィルタと共に使用され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、電源モジュール110から放出されたエネルギーは、可視光線に変換することができ、LEDエミッタ207によって放出され得る。いくつかの実施形態において、以下のように選択された波長を有する光を使用することが望ましい。a)眼瞼をマイボーム腺の深さ(例えば、特定の個人では通常約1~2mm)又は眼瞼内の他の隣接する標的組織の深さまで貫通し、そこで吸収され、b)眼瞼組織を越えて貫通する光の量が最小限になり、及びc)眼瞼の表面で生じる加熱の量が最小限になる。例えば、いくつかの実施形態では、LEDエミッタ207は、約400~700nmの範囲の波長を有する光を放出することができる。いくつかの実施形態では、LEDエミッタ207は、眼系10のマイボーム腺18の最適な治療のために選択された実質的に単色の光を放出することができる。いくつかの実施形態では、LEDエミッタ207は、様々な波長の光を放出することができ、波長は、患者の治療要件に基づいて又は複数工程の治療計画における特定の工程の所期の目的に基づいて選択可能である。
【0067】
いくつかの実施形態では、500~600nmの範囲の波長を放出する照明源が選択される。500~600nmの範囲の波長の選択において、複数の事項が考慮され得る。例えば、この範囲は、組織内の最大光線吸収を達成するために選択され得る。哺乳動物の皮膚に入射する光エネルギーは、反射、透過又は吸収される。反射は、皮膚の性質、波長及び入射角の関数である。表面の平面に直交して皮膚表面に到達する光線は、皮膚に斜角で到達する光線よりも少なく反射される。皮膚を通した光の透過は、内部散乱、波長及び吸収の関数である。内部散乱は、皮膚及び下の組織の化学的性質及び物理的性質の関数である。眼瞼の厚さ、ケラチノサイトの密度、コラーゲン及び脂肪が関与し得る。吸収は、主に、特定の波長の光を選択的に吸収する傾向がある発色団と呼ばれる特定の分子の濃度及び分布の関数である。ヒトの皮膚では、可視スペクトル内の光を吸収する主要発色団は、酸素ヘモグロビン、脱酸素ヘモグロビン、各種メラニン及びある程度の水である。水は、スペクトルの深い赤及び赤外部分まで光の波長を大きく吸収しない。メラニンは、可視スペクトルを相当に高度に吸収し、吸収は、波長が増加するにつれて徐々に減少する傾向がある。酸素ヘモグロビンの2つの吸収ピークは、約532nm及び577nmに見られる。脱酸素ヘモグロビンのピークは、約550nmである。
【0068】
様々な実施形態において、工学的制約も波長選択に影響を及ぼす。選択される波長は、デバイスによって放出され得るものである。このデバイスは、光エネルギーを眼瞼に送達するデバイスに適したワット数及び物理的パッケージを備える実用的な構成で容易に製作され得る。非常に高出力のLEDの場合、現在のところ、選択肢は、限られているが、将来的な改善は、考えられる。例えば、LED Engin Inc.(San Jose,Calif.)は、約523nmの名目中心/ピーク波長を有するLZ4-00G108などの10W版の緑色LEDを製作している。限定的な量であれば、約527及び532nmのピーク波長のものも利用可能である。
【0069】
様々な実施形態は、眼瞼を過度に透過すること(及びこれに続いて眼瞼を越える構造を不要に加熱すること)なく、且つ表面を過度に加熱することなく所望の組織加熱効果を生じさせるために、可視スペクトルの500~700nm部分内の波長を放出する。更に、可視光スペクトルのこの部分内の波長を放出すると、強膜シールドを組み込んでいない実施形態において望ましくない、紫外、赤外及び青色を含む電磁スペクトルの部分が避けられる。
【0070】
いくつかの実施形態では、組織内により深く貫通するために、より長い波長の光が使用される。例えば、700~1000nmの波長の「赤色」及び近赤外光(NIR)は、上述の波長範囲に比べて眼瞼をより容易に通過し、より深く貫通する。約800~900nmにヒトの組織の「光学窓」が存在し、光学窓では、発色団の吸収がその最低レベルにあるためにエネルギーが組織及び眼瞼を最も効率的に通過する。強膜シールドの使用を伴わない眼瞼への光治療の適用において、NIRの使用は、過度の光エネルギーが眼瞼を通過して眼に直接到達し、眼の敏感な組織に影響を及ぼす可能性があるために用いられないと考えられる。しかしながら、眼を保護するために強膜シールドを使用する場合、NIRは、眼瞼を通過するように有利に使用され得る。例えば、850nmのNIRは、眼瞼を通過し、強膜シールドによって吸収され得る。これにより、更に眼瞼の内表面上の隣接組織を加温することができる。説明を完全にするために、短波長赤外及び中間波長赤外(IR-B及びIR-Cと呼ばれることもある)の特定の波長は、上述した他の発色団の最大の吸収の組み合わせよりも、水によるより高い吸収レベルを有することに留意されたい。特に、3,000nmの波長は、そのようなより高い吸収を有することが示されている。したがって、強膜シールドを伴って又は伴わずに、帯域内のこの波長又は他の波長を安全に使用する実施形態が存在し得る。これらのより高い波長には、(800~900nmで言及した窓に加えて)他の「光学窓」も存在し、いくつかの実施形態における利用に有利となり得ることに留意されたい。
【0071】
いくつかの実施形態では、眼系10内の細菌を減少させ且つ/又は除去するために、400~450nmの範囲の青色又は紫色光を放出する照明源が使用され得る。可視光線、より具体的には青色又は紫色光の波長への暴露が特定の細菌種の不活性化を引き起こすことが知られている。一般的な細菌としては、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、バチルスオレロニウス(B.oleronius)及びアクネ菌(P.acnes)が挙げられる。400~450nmの範囲の波長の選択において、複数の事項が考慮され得る。例えば、放出源(LED)は、約400nm未満のエネルギーを顕著な量で放出しないことが重要である。約400nm未満のエネルギーは、UVAスペクトル内にあり、皮膚癌に関連し得る。
【0072】
別の実施形態では、ニキビダニの外骨格、内部構造又は卵によって優先的に吸収される1つ以上の波長の光は、死滅させるか、不活性化するか又は繁殖過程を中断するように選択され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、涙液膜の厚さ及び安定性を特徴付けるために照明源が使用され得る。例えば、エネルギー変換器モジュールは、コバルトブルー源を有することができ、可視化手段160(例えば、観察レンズ)は、黄色のラッタンフィルタを有することができ、患者には、フルオレセイン点眼薬が与えられ、それにより、臨床医は、ラッタンフィルタを通して眼の表面を観察することにより涙液破壊時間を測定することができる。代わりに、指示点眼薬を伴って又は伴わずに、様々な波長の光子エネルギーを眼の表面上に又は眼の表面にわたって照射することができ、直接目視観測又は画像捕捉及び処理のいずれかにより、涙液膜並びに/又は脂質層の安定性及び/若しくは厚さを決定し得る。
【0074】
照明源としてLEDを用いる別の実施形態では、LEDエミッタ207は、各LEDから異なる又は同じ波長の光を放出するために、1つ以上のマルチスペクトルLED又は複数のLEDを含み得る。いくつかの実施形態では、LEDエミッタ207の各LEDは、異なる波長の光を放出するように構成されている。LEDエミッタ207は、それぞれ異なる色のLEDから連続的に又は同時に光を放出することができる。例えば、いくつかの実施形態では、LEDエミッタ207は、可視光スペクトル及びIRスペクトル内の様々な波長の光を放出するために、赤色、緑色、青色(RGB)LEDシステム又は他のマルチスペクトルLEDシステムを含み得る。いくつかの実施形態では、LEDエミッタ207のLEDは、白色光を放出するために同時に動作するように構成され得る。代わりに、いくつかの実施形態では、使用者は、マルチスペクトルLEDから放出される光の波長を選択することができる。更に、入力電力に対して最も効率的な出力スペクトルを生成するために、特殊なリン光コーティングの使用を伴うLEDが製作され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、LEDエミッタ207は、高輝度LEDアレイを含み得る。LEDエミッタ207の一部としての高輝度LEDアレイは、いくつかの実施形態では約0.5~75Wの入力電力定格で動作し得るが、1~10Wの範囲内であることが好ましい。エネルギー変換器モジュール120の温度を機能的限界の範囲内に維持させるために、熱管理構造体220(ヒートシンク、他の実質的な熱質量など)がLEDエミッタ207に熱的に連結され得る。特定の実施形態では、高輝度LEDアレイは、約500~600nmの波長を有する光を放出し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、エネルギー変換器モジュール120は、上述のNIR帯域内などの赤外エネルギーの形態の電磁エネルギーを治療組織に提供することができる。例えば、LEDエミッタ207は、850nmのNIRを放出する、LED Engin,Inc.(San Jose)によって製造されているLZ4-00R408などの市販のLEDであり得る。更に、エネルギー変換器モジュール120は、LED光源ではなく、治療組織部位に赤外エネルギーを放出するように構成されている、例えば白熱ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、低温白熱ランプ又はハロゲン広域スペクトルランプなどの別の赤外エネルギー源であり得る。
【0077】
眼治療デバイス200は、反射器(以下の他の実施形態の反射器210など)を含み得る。反射器は、エネルギー変換器モジュール120から放出された電磁エネルギー(例えば、光)を誘導するための導波管として機能し得る。反射器は、例えば、LEDエミッタ207などの点光源からの電磁エネルギーを、均一にエネルギー伝送面140を通して患者の標的治療部位に誘導するように構成され得る。
【0078】
エネルギー変換器モジュール120は、所望の角度又は所望のパターンで所望の強度において眼瞼にエネルギーを誘導するために、LEDエミッタ207又は他の電磁エネルギー源と共に使用され得るLEDレンズ208を含み得る。
【0079】
図3Aに示されているのは、眼治療デバイス200の一部を形成するエネルギー伝送面140である。エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120に対し、移動経路145に沿って摺動可能な関係を有する。エネルギー伝送面140は、ハウジング202内の、エネルギー変換器モジュール120に対して遠位の位置に配置することができ、且つエネルギー変換器モジュール120と眼系10の組織治療部位との間に配置され得る。このように配置されることで、エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120から伝送された電磁エネルギーを通過させるか又は受信及び送信することができる。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面は、閉じられたときの眼瞼12、14の形状にエネルギー伝送面140が対応するように、(眼治療デバイス200に対して)凹形であり得る。エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120から発せられるあらゆる電磁エネルギーがエネルギー伝送面140を通過しなければならないような形状にされ得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、眼瞼12、14に隣接して配置され、眼瞼12、14に物理的に接触しないが、代わりに治療組織に熱を放射的に伝達する。エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120によって伝送される所望の電磁エネルギーに対して実質的に透明であり得、所望のエネルギー種類又は波長が治療組織に到達することを大きく妨げることなく、エネルギー変換器モジュール120からのエネルギーの伝送を可能にする。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、光学プラスチック、サファイア、ガラス、フッ化カルシウム又はガラス繊維で作製され得る。エネルギー伝送面140は、清掃が容易な外表面を有することができ、且つ耐引っかき性であり得る。任意選択的に、エネルギー伝送面140及び/又は眼瞼の外表面の温度フィードバックを提供するための温度センサ310がエネルギー伝送面140上、エネルギー伝送面140内又はエネルギー伝送面140に隣接して配置され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、望ましくない波長が眼系10の治療組織又は他の部分に到達しないようにフィルタリングするために、エネルギー変換器モジュール120と共に動作するように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、照明源は、IRスペクトル及び可視光スペクトル両方の電磁エネルギーを伝送し得る。エネルギー伝送面140を使用して、例えば可視光スペクトルのエネルギーの通過を可能にするものの、IRスペクトルのエネルギーを排除することができる。同様に、1つの色のエネルギーのみが治療組織に到達することが望ましい場合、エネルギー伝送面140は、バンドパスフィルタとして使用され得るか、又は所望の色以外の波長のエネルギーの通過を制限するためのフィルタと共に使用され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、眼瞼12、14と物理的に接触するように構成され得る。上述のように、いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120と移動経路145に沿って摺動可能な関係にあり得る。これにより、エネルギー伝送面140を前進させて眼瞼12、14と接触させることができる一方、エネルギー変換器モジュール120が眼瞼と固定関係にあることを可能にする。眼瞼12、14の外表面とエネルギー伝送面140と間の空間を低減するための別の手法が可能である。例えば、エネルギー変換器モジュール120とエネルギー伝送面140は、強膜シールド300が相対的に固定位置に留まったままの状態で眼瞼に向けて一緒に移動し得るか、又は強膜シールド300がデバイスの他の部品に対して移動し得る。いずれの場合にも、臨床医が触覚フィードバックをある程度測定することを可能にするために、移動は、臨床医により手動で行われることが好ましい。ある実施形態において、眼治療デバイス200は、エネルギー伝送面140を移動させるために、レバー、ボタン、ホイール、スライダ又はスイッチなどのアクチュエータ182を含み得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、図3Aに示すように、エネルギー伝送面140の少なくとも一部分は、単回使用のカバー要素又は外側眼瞼パッド147として構成され得る。好ましくは、このような外側眼瞼パッド147は、デバイスの消費可能部分260に組み込まれており、外側眼瞼パッド147は、消費可能部分がハウジング202に取り付けられると、自動的に位置合わせされ、エネルギー伝送面140上に載せられる。
【0084】
いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、治療組織に熱を伝導的に伝達するために加熱され得る。他の実施形態では、組織加熱の大部分は、エネルギー変換器モジュール120から組織及び/又は強膜シールド300に対する放射加熱の結果として起こり、所望の電磁エネルギーの実質的に全てがエネルギー伝送面140を通過し、エネルギー伝送面140は、ほとんど又は全く加熱されない。更なる他の実施形態では、組織加熱は、エネルギー伝送面140の予熱又は能動加熱により生じる伝導加熱と組織及び/又は強膜シールドの放射加熱との組み合わせの結果として行われ得る。エネルギー伝送面140は、眼瞼の外表面に接触する前に、光エネルギー又は他の手段により、例えば摂氏42度まで予熱され得るエネルギー吸収層又はパターンを組み込み得る。代わりに、エネルギー伝送面は、熱伝導性材料から作製され得、エネルギー伝送面140に熱的に連結されたヒータによって加熱され得る。エネルギー伝送面140が熱伝導性材料から作製されている場合、材料は、エネルギー変換器モジュール120から到来するエネルギー源(光など)に対して透過性であり得るか、又は材料は、中実であり得るか、不透明であり得るか、若しくはそうでなければ伝導加熱以外の別の形態のエネルギーに対して透過性がなくてもよい。エネルギー伝送面140が不透明又は不透過性である場合、エネルギー伝送面140は、銅又はアルミニウムなどの伝導性金属から作製され得、この場合、エネルギー伝送面140は、任意の熱質量加熱手段(抵抗ヒータなど)を含むエネルギー変換器モジュール120によって加熱され得、その後、眼瞼を伝導的に加熱するために眼瞼に押し付けられ得る。エネルギー伝送面140が別の形態のエネルギーに対して透過性があるばかりでなく、熱伝導性である場合、エネルギー伝送面140は、サファイア、フッ化カルシウム、ダイヤモンド、グラフェン等などの材料から製作され得る。1つの好適な実施形態では、以下の最大3つの加熱モードが同時に行われて得る。i)眼瞼の内表面が、エネルギー吸収強膜シールド300に伝送される赤色又は赤外線を使用して加温され、ii)眼瞼組織が、発色団により吸収される可視光線(例えば、緑色)によって放射的に加熱され、及びiii)眼瞼組織が、予熱されたエネルギー伝送面140を眼瞼の外表面に接触させることによって伝導的に加熱される。本明細書に記載される光ベースの加熱手法、具体的にはエネルギー吸収面の赤外線加熱を単独で又は他の2つの加熱モード(発色団の可視光線加熱及び組織の伝導加熱)と組み合わせて使用することの顕著な利点は、標的組織の加熱を外側眼瞼表面又は内側眼瞼表面の任意の従来の伝導加熱方法よりも著しく迅速に実施できることであることが理解されるであろう。具体的には、これらのモードの組み合わせにより、マイボーム腺組織は、1分未満で例えば摂氏約40~42度の温度になり得る。具体的には、いくつかの場合、マイボーム腺組織は、10、15、20、25、30又は45秒以内に摂氏約40~42度になり得る。
【0085】
図3Aに示すように、可視化デバイス又は手段160を使用して眼球20を観察し得る。いくつかの実施形態では、可視化手段160は、眼治療デバイス200の一部であり得る。他の実施形態では、可視化手段160は、別個の構成要素であり得る。可視化手段160は、例えば、拡大鏡、カメラ、顕微鏡、スリットランプ器具又は他の適切な可視化器具を含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、強膜シールド300は、眼瞼及びマイボーム腺の一部分の徹照像を観察することを可能にする像変換部155を更に含み得る。上述したように、像変換部は、例えば、1つ以上の反射面、鏡、ライトパイプ、プリズム、ファイバー束、イメージセンサ又は他の適切な像変換手段を含み得る。図3Aに示すように、像変換部155は、強膜シールド300に統合されているが、他の実施形態では、像変換部155は、別個の構成要素であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、望ましくない光子エネルギー(IR又は青色/紫色光など)が徹照要素から反射されて臨床医に戻ることを防ぐために、追加的な遮蔽要素258が使用され得る。例えば、遮蔽要素258は、加熱及び青色/紫色光治療モード中、臨床医を保護するために、像変換部155上且つ場合によりまたエネルギー変換器モジュール120又はエネルギー伝送面140上で所定の位置にスイングするか、裏返るか又は(図3Aに示されるように)摺動する(少なくとも可視青色及びIR光エネルギーを遮断する)薄い不透明のシールド又はフィルタであり得る。代わりに、像変換部155及び/又は可視化手段の一部分は、選択的光学フィルタ又はフォトクロミック要素を含み得、マイボーム腺の徹照像を評価するための眼瞼の低レベル照明中、にフォトクロミック要素が実質的に全ての光を通過させる一方、赤外エネルギー又は高レベルの可視光線が使用され得る加熱モード中、そのエネルギーの一部又は全てを減衰させ得ることにより、臨床医を被害から保護する。
【0088】
更なる分類の目的で、ここで、いくつかのクラスの実施形態について説明する。1つのクラスの実施形態では、デバイスは、典型的には家庭使用環境での個人による自己投与使用を意図している。このクラスでは、強膜シールドを使用することは、必ずしも現実的ではなく、したがって望ましくないエネルギー形態(特定の波長の光又は赤外エネルギーなど)が眼瞼を貫通して、眼の敏感な解剖学的構造に到達するより高いリスクが存在し得る。したがって、このクラスの実施形態は、ときに、450~700nmの範囲の可視光線などのより安全なエネルギー形態の使用に限定される場合がある。別のクラスの実施形態では、デバイスは、制御された医院環境内での眼のケアの専門家による使用を意図している。この場合、強膜シールド構成要素を有する治療システムをより安全に利用できると考えられる。このクラスでは、強膜シールドは、有害なエネルギーが敏感な眼の構造にほとんど又は全く到達しない可能性を高めるための形状及び材料で設計され得る。
【0089】
院内デバイス-院内デバイスの実施形態は、以下:マイボーム腺の診断、マイボーム腺の治療及び眼系の抗菌治療の1つ以上を含み得る。1つの好適な実施形態のセットでは、マイボーム腺の診断は、2つの手法で実行される。第一に、眼瞼の外表面に向けて誘導される、エネルギー変換器モジュールからの可視又はIR照明を使用し、可視化手段を用いて又は用いずに、像変換部を使用してマイボーム腺を観察及び評価する。第二に、眼瞼辺縁の観察中に眼瞼をわずかに圧縮することにより、マイボーム腺管からの脂性分泌物の量及び質を記録する。一実施形態のセットでは、治療のために、眼瞼は、加熱され、圧縮される。エネルギー変換器モジュールからのおよそ約800~900nmの近赤外光(NIR)エネルギーが眼瞼を透過して強膜シールドに達し、その後、眼瞼の内表面を加熱し、結果的に加温する。更に、エネルギー変換器モジュールからの約500~600nmの範囲(緑色光)の可視光線が眼瞼の外表面に誘導され、発色団の吸収によって組織を加熱する。その後、エネルギー伝送面は、エネルギー伝送面と強膜シールドとの間で眼瞼を圧縮するために、臨床医によって直接的又は間接的な手動制御により眼瞼に向けて移動される。任意選択的に、エネルギー伝送面は、治療中、外側眼瞼のいくらかの伝導加熱を提供するために、予加温及び/又は能動的に加温され得る。内側眼瞼表面及び/又は外側眼瞼表面の温度が測定され、臨床医に対して表示され得る。臨床医は、閉塞したマイボーム腺からのマイボーム腺分泌脂の圧出を最適化するために、眼瞼辺縁を視覚的に監視しながら加熱エネルギー及び圧縮力を加える。最後に、エネルギー変換器モジュールは、眼系10内の細菌を減少させ且つ/又は除去するために、約400~450nmの範囲の青色/紫色光を生成することができる。
【0090】
家庭用デバイス-家庭内デバイスの実施形態は、可視光線を使用する。可視光線は、発色団の吸収によって組織を加熱するために、エネルギー変換器モジュールからエネルギー伝送面を介して伝送され、眼瞼の外表面に向けられる。特定の好適な実施形態では、可視光線は、特定のフィルタを通過する高強度広域スペクトル(例えば、白色)LED光であり得るか、又はフィルタを伴わない緑色、緑がかった黄色若しくは緑がかった白色LED(500~600nm)であり得る。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面は、可視光線に対して透明であり、熱伝導性であり、眼瞼に表面を押し付ける前又は押し付ける間に(例えば、摂氏42度への)加温を可能にする(図2Aを参照されたい)。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面は、伸張要素143(図2B及び上述のような)を有し得、伸張要素143は、エネルギー変換器モジュールと眼瞼表面12、14との間に(例えば、眼瞼の受動的又は能動的な空気冷却を可能にするための)間隙を維持しながら、光エネルギーの大部分が伸張要素143を通過することを可能にする。エネルギー伝送面は、眼瞼の形状に合致し、眼瞼の表面に圧力をかけて、放射エネルギーの光路長を短縮することができる。いくつかの実施形態では、アイカップを用いて、隣接した治療領域から光が漏れることを防ぎ、デバイスの少なくとも一部分を眼瞼又は眼周囲領域から所定の距離に維持する。
【0091】
図4A図4Cは、眼治療デバイスの別の実施形態を表す。図4Aは、眼治療デバイス200の概略側面平面図である。図4Aに示される眼治療デバイス200は、眼球をMGD、眼瞼炎及び他の病態に関して治療するために眼球20に隣接して配置されている。簡略化のために、角膜、虹彩、瞳孔、水晶体及び隣接する要素などの敏感な眼の構造は、眼球前部構造27と呼ばれる単一要素として図4A図4D図5A図5B図6図11A図11B図12図13及び図15Aに示される。眼治療デバイス200は、眼治療デバイス200の動作時に有用な追加的な構成要素と共に、図2及び図3に示されるモジュールの構成を含み得る。眼治療デバイス200は、電源モジュール110と、コントローラ212と、エネルギー変換器モジュール120と、反射器210の形態のエネルギー導波管と、エネルギー伝送面140とを含み得る。いくつかの実施形態のエネルギー変換器モジュール120は、LEDエミッタ207、LEDレンズ208及びエネルギー変換器モジュールドライバ209の1つ以上で形成されたLEDデバイスを含み得る。これら構成要素のそれぞれは、単独で又は他の構成要素(本明細書に示されるか又は開示されない)と組み合わせることで、図2A図2Hに関連して記載したモジュールに対応し得るか、又は図2A図2Hに関連して記載したモジュールの一部となる。眼治療デバイス200の構成要素は、ハウジング202内に収容され得る。眼治療デバイス200の実施形態のいくつかは、図3及び図6に示すような消費可能部分260及び/又は強膜シールド300も含み得る。
【0092】
エネルギー変換器モジュールドライバ209は、実際のプリント回路基板、集積回路又はディスクリートコンポーネントとして構成されているかどうかを問わず、任意のLED電力供給及び制御回路を含み得る。いくつかの実施形態では、エネルギー変換器モジュールドライバ209は、LEDドライバの機能を果たし、LEDエミッタ207を介してLED仕様の範囲内の制御された電流、電圧又は電力レベルを提供し、LEDエミッタ207から所望の照明強度を提供する。任意選択的に、LEDプリント回路基板は、パルス幅変調機能、PID回路又は眼瞼の標的部位の所望の加熱を実現するために有効放出強度を経時的に調整するための類似のスキームを含み得る。
【0093】
エネルギー伝送面140は、ハウジング202に対し、エネルギー変換器モジュール120に対して遠位の位置に配置することができ、且つエネルギー変換器モジュール120と眼系10の組織治療部位との間に配置され得る。このように配置されることで、エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120から伝送された電磁エネルギーを通過させるか又は受信及び送信することができる。エネルギー伝送面は、閉じられたときの眼瞼12、14の形状にエネルギー伝送面140が対応し、眼球20を覆うように、凹形であり得る。エネルギー伝送面140は、ハウジング202の一体部品であり得、眼治療デバイス200の遠位端を実質的に封止し得る。更に、エネルギー伝送面140は、ハウジング202に対して単独で又はエネルギー変換器モジュール120と共に移動し得る。可動要素とハウジングとの間の境界面の汚染を防ぐために、ベローズ、ガスケット、Oリング又は類似の封止手段などの封止要素が使用され得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、眼瞼12、14に隣接して配置され、眼瞼12、14に物理的に接触しないが、代わりに治療組織に熱を放射的に伝達する。エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120によって伝送される所望の電磁エネルギーに対して実質的に透明であり得、所望のエネルギー種類又は波長が治療組織に到達することを大きく妨げることなく、エネルギー変換器モジュール120からの熱エネルギーの伝送を可能にする。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、光学プラスチック、サファイア、ガラス、フッ化カルシウム又はガラス繊維で作製され得る。エネルギー伝送面140は、清掃が容易な外表面を有することができ、且つ耐引っかき性であり得る。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、望ましくない波長が眼系10の治療組織又は他の部分に到達しないようにフィルタリングするために、エネルギー変換器モジュール120と共に動作するように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、照明源は、IRスペクトル及び可視光スペクトル両方の電磁エネルギーを伝送し得る。エネルギー伝送面140を使用して、例えば可視光スペクトルのエネルギーの通過を可能にするものの、IRスペクトルのエネルギーを排除することができる。同様に、1つの色のエネルギーのみが治療組織に到達することが望ましい場合、エネルギー伝送面140は、バンドパスフィルタとして使用され得るか、又は所望の色以外の波長のエネルギーの通過を制限するためのフィルタと共に使用され得る。代わりに、上述したように、エネルギー伝送面140は、単回使用の外側眼瞼パッド147を含み得る。このような外側眼瞼パッド147は、全ての関連する波長の光若しくは他の形態のエネルギーに対して透明であり得るか、又は望ましいフィルタリング特性を有し得、且つ温度又は圧力センサを更に含み得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、眼瞼12、14と物理的に接触するように構成することができ、治療組織に熱を伝導的に伝達し得る(又は以下に記載されるように眼瞼の冷却を促進し得る)。他の実施形態では、エネルギー変換器モジュール120からの放射加熱の結果として多数の組織加熱が行われ、所望の電磁エネルギーの実質的に全てがエネルギー伝送面140を通過し、組織によって吸収されることで、組織の加熱を生じさせ、エネルギー伝送面140は、ほとんど又は全く加熱しない。デバイスは、エネルギー伝送面140なしで構成され得ることが理解されるであろう。しかしながら、エネルギー伝送面140は、主要患者接触面の清掃の容易さ及びエネルギー伝送面140が眼瞼の外表面を所望の温度範囲内に維持することを促進し、且つ特定の安全センサのための便利な場所を提供する可能性など、特定の利点を提供する。単回使用の外側眼瞼パッド147がエネルギー伝送面140の一部又は全てとして使用される実施形態では、外側眼瞼パッド147は、温度センサを含み得るが、代わりに外側眼瞼パッド147の(ハウジングに対して)近位に配置される熱電対列又は焦電センサなどの非接触式温度センサが用いられることが好ましい。このような実施形態では、外側眼瞼パッド147は、非接触式温度センサが検知するように設計される赤外波長に対して透明であることが好ましい。
【0096】
図4Bは、眼治療デバイス200のエネルギー変換器モジュール120の概略正面平面図である。図4Bに示すように、LEDエミッタ207は、個々のLEDのアレイとして配置され得る。示されるように、LEDエミッタ207は、LEDの3×3アレイで配置されている(LED Engine,Inc.によって提供されるLZ9構成など)が、LEDエミッタ207は、この配置に限定されず、縦列及び横列の様々なアレイで配置された様々な数のLEDのアレイを含むことができ、いくつかの実施形態は、単一のLED又は他の種類の照明源を含み得る。反射器210がLEDエミッタ207からの光の放出を所望の手法で誘導することができるように、反射器210は、LEDエミッタ207を部分的に又は完全に包囲し得る。LEDレンズ208は、LEDエミッタ207上に配置することができ、且つ反射器210の内径内に配置することができる。
【0097】
図4Cは、デバイスが動作中であり、光211を眼系10及び治療組織に伝送している眼治療デバイス200の一実施形態の概略側面平面図である。図4Cでは、光211は、エネルギー変換器モジュール120から放出されている。最初に、光211の一部は、光が、補正なしでは、治療組織に通過させるためのエネルギー伝送面140に到達しないような角度で放射され得る。示されるように、反射器210は、角度のある光をエネルギー伝送面140に向けて反射又は案内することができ、それにより標的組織の加熱効率を向上させる。光211の一部はまた、エネルギー変換器モジュール120からエネルギー伝送面140に直接伝送され得る。
【0098】
図4Dは、眼治療デバイス200の別の実施形態の概略側面平面図である。この実施形態では、例えば特殊形状のレンズ、追加的なレンズ要素、ライトパイプ、内部全反射(TIR)要素、屈折要素、回折要素、鏡要素、拡散器等又はこれらの組み合わせなど、眼治療デバイス200の他の構成要素を使用して光211の方向及び強度を制御することができる場合、光211の伝送は、反射器210の補助なしで管理され得る。このようにして、光エネルギーがマイボーム腺などの眼瞼12、14内の標的組織内の深くまで貫通はするものの、この標的組織を大きく越えないように、光エネルギーの焦点及び強度を制御することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、レンズとして機能するか又はレンズを有するエネルギー伝送面140は、光211を所望の治療組織に対して集束及び誘導し、中心眼球軸から遠ざけて、眼球20の眼球前部構造27及び網膜などの眼の他の敏感な解剖学的構造を避けるように使用され得る。上眼瞼12と下眼瞼14とが接するところに沿う領域は、個人毎に異なる場合があり、ほとんどの個人では、この領域は、一般に、中心眼球軸より下であることが理解されるであろう。しかしながら、過度の光211が中心眼球軸において眼瞼を貫通するリスクを特定の実施形態がどのように軽減できるかを説明するために、中心眼球軸において接する眼瞼を有するという最悪の状況を示す。更に、眼瞼を貫通する光線の大部分が、一般により敏感でない強膜のみに到達するように被治療者の眼球を軸から外すことにより、過度の光線が眼瞼を貫通し、敏感な組織に到達することに付随するリスクの少なくとも一部を緩和できることが理解されるであろう。
【0099】
図4Eは、中心眼球軸を直接通過する光の量を最小限にしながら、眼瞼表面にわたる光エネルギーの分布を向上させるための追加的な光学要素を含む特定の実施形態を示す。エネルギー変換器モジュール120は、LED Engin Inc.によるLZ9などのLEDと、プリズム280と、成形レンズ282と、フェイスグラス284(本明細書に開示される他の実施形態のエネルギー伝送面140と類似の機能を果たす)とを含む。眼瞼12、14及び眼球20も光学要素に対して示されている。この特定の設計では、プリズムは、6つの研磨された表面と、LEDを収容するための半径3.5mmの1つの半球凹面とを有するガラス要素である。プリズムの表面にコーティングはない。入口面及び出口面は、効率を約5~6%増加させる反射防止コーティング(任意)を有することができる。図4F図4Hは、プリズム280の形状及び寸法の例示的な詳細を示す。材料は、BK7であり得、表面は、研磨されていることが好ましい。図4Fは、正面図であり、図4Gは、側面図であり、図4Hは、断面A-Aで取った断面図である。図4I図4Lは、成形レンズ282の形状及び寸法の例示的な詳細を示す。図4Iは、正面図であり、図4Jは、断面A-Aで取った断面図であり、図4Kは、側面図であり、図4Lは、斜視図である。図4M及び図4Nは、上記図4E図4Lに記載したシステムの理論上の光学性能を示す。図4Mは、眼瞼の表面上の放射照度(ワット/平方ミリメートル)として測定される配光を示し、配光は、(エネルギー変換器モジュール120のLEDを眼瞼に直接又は透明ガラスエネルギー伝送面を介して照射するのとは対照的に(この場合、光のほとんどは、瞼の中央に投射され、縁に到達するのは、非常にわずかである))相当に均一に示されている。計算総フラックスは、0.86ワットであり、最大放射照度は、2.2ミリワット/平方ミリメートルであり、均一性は、約80%であると推定される。図4Nは、眼に到達する(即ち眼瞼組織を通過する)放射照度の量を示す。計算総フラックスは、0.019ワットであり、最大放射照度は、0.18ミリワット/平方ミリメートルである。
【0100】
図5A及び図5Bは、眼治療デバイス200の一実施形態を表す。図5Aは、眼治療デバイス200の概略側面平面図であり、図5Bは、眼治療デバイス200の概略正面平面図である。眼治療デバイス200の実施形態は、電源モジュール110及びコントローラ212を含む、図4A図4Cに示されたものに類似する構成要素を含み得る。しかし、そのような構成要素は、図5A及び図5Bには図示されない。図5Aは、光211の方向を集束及び制御するために、エネルギー変換器モジュール120の異なる構成を提供する。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、複数のエネルギー変換器モジュール120を含み得る。そのため、電磁エネルギー(例えば、光211)を上眼瞼12内の標的組織に提供するために少なくとも1つのエネルギー変換器モジュール120aを眼治療デバイス200の上部領域内に配置することができ、電磁エネルギー(例えば、光211)を、下眼瞼14内にある標的組織に提供するために少なくとも1つのエネルギー変換器モジュール120bを眼治療デバイス200の下部領域内に配置することができる。眼治療デバイス200内に別々に配置された別個のエネルギー変換器モジュール120a、120bを有することで、眼治療デバイス200が上眼瞼12及び下眼瞼14内の標的組織に向けて光エネルギーを直接誘導することを可能にし、敏感な眼球前部構造27に向けて中心眼球軸30に沿って誘導され得る光の量が減少する。
【0101】
図5Aに示すように、MGD及び眼瞼炎などの眼の状態を治療するための眼治療デバイス200の使用は、眼治療デバイス200のエネルギー伝送面140を患者の閉じられた上眼瞼12及び下眼瞼14に隣接又は接触させて配置することを含み得る。眼治療デバイス200がこのように配置されることにより、上部エネルギー変換器モジュール120aを中心眼球軸30の上方に配置して、光211の形態の電磁エネルギーを上眼瞼12内のマイボーム腺18に提供することができ、下部エネルギー変換器モジュール120bを中心眼球軸30の下方に配置して、光211の形態の電磁エネルギーを下眼瞼14内のマイボーム腺18に提供することができる。眼治療デバイス200は、上部及び下部エネルギー変換器モジュール120の後ろに配置された、治療組織に任意の光を反射させて戻すための反射器210も含み得る。
【0102】
図5Aに図示されるように、上部及び下部エネルギー変換器モジュール120は、角度をなして傾けられ得る。そのそれぞれは、各眼瞼に入る光エネルギーの大半が眼球20の敏感な眼球前部構造27に到達する前に吸収されるように、各眼瞼の表面に対して実質的に斜角で誘導される中心光軸を有する。いくつかの実施形態では、上部及び下部エネルギー変換器モジュール120は、他の方向的な向きを有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、上部及び下部エネルギー変換器モジュール120は、照明源の各中心光軸が実質的に水平であるように配置することができる。したがって、このように構成されているエネルギー変換器モジュール120から伝送される光211は、エネルギー変換器モジュール120からエネルギー伝送面140に水平に移動することができ、その後、敏感な眼球前部構造27に到達する光の割合を最小化しつつ、眼瞼の標的領域における貫通、吸収及び加熱を最大化するように、治療組織に向けて角度をなして屈折、回折又は反射され得る。
【0103】
図5A及び図5Bに示される実施形態の眼治療デバイス200は、眼治療デバイス200の上部領域及び下部領域のそれぞれに2つ以上のエネルギー変換器モジュール120を含み得る。例えば、図5Bに示すように、眼治療デバイス200は、上部領域内に3つの別個のエネルギー変換器モジュール120a~c、下部領域内に3つの別個のエネルギー変換器モジュール120d~fを含み得る。眼治療デバイス200の上部領域及び下部領域のそれぞれにおいて、例えば2、4、5、6、7、8、9、10個等のエネルギー変換器モジュール120などの他の数のエネルギー変換器モジュール120も考えられる。眼治療デバイス200の上部領域及び下部領域内に複数のエネルギー変換器モジュール120を横方向に配置することで、上眼瞼12及び下眼瞼14の幅(横方向)にわたる電磁エネルギーの被覆範囲及び分布を標的組織(例えば、眼瞼12、14内のマイボーム腺)の全幅により良好に到達するように改良することを可能にする。また、図5Bに示すように、上部及び下部エネルギー変換器モジュール120a~c、206d~fは、眼球の上輪郭及び下輪郭に追従するように弧形パターンで配置され得る。
【0104】
図5Bには図示しないが、眼治療デバイス200の上部照明領域及び下部照明領域には、エネルギー変換器モジュール120の2つ以上の横列を取り付けることができるとも考えられる。例えば、図5Bでは、1つ以上の追加的なエネルギー変換器モジュール120が各エネルギー変換器モジュール120a~cの上方又は下方に配置され得る。エネルギー変換器モジュール120a~cの追加的な横列を含むことで、標的治療組織に誘導される電磁エネルギーの、追加的な垂直被覆範囲及び分布を提供することができる。更に、図示しないが、眼治療デバイス200は、双眼鏡のように構成された、患者の眼の両方に隣接して又は患者の眼の両方に対して同時に配置される、2セットのエネルギー変換器モジュール120、反射器210及びエネルギー伝送面204をハウジング内に含み得ると考えられる。このような実施形態のデバイスは、両眼を同時に治療することができるため、治療時間を加速させることができる。
【0105】
図5C図5Fは、図5A図5Bに示されるものに類似する8LED構成(単に6つではなく8つのLED120a、120bを有する)のそれぞれ側面図、上面図、正面図及び斜視図を示す。8つのLED120a、120bは、LED Engin,Inc.によるLZ1タイプのものであり得、球状曲面上に配置された状態で示される。球状曲面は、眼球20に隣接する眼瞼12、14の曲率にその形状が一致するフェイスグラス284の後ろに配置された回路基板又はエネルギー変換器モジュールドライバ209であり得る。図5Gは、総フラックスが2.7ワット、最大放射照度が10.7ミリワット/平方ミリメートルの、眼瞼12、14上における計算放射照度パターンを示す。図5Hは、総フラックスが0.07ワット、最大放射照度が0.6ミリワット/平方ミリメートルの、眼瞼を通過する計算放射照度を示す。図5G及び図5Hの放射照度のパターンは、図4N及び図4Pに示されるパターンに比べてあまり均一でないことが理解されるであろう。2つの設計間でのトレードオフは、デバイスのコンパクト性及び均一性である。図4E図4Lの設計は、幾分大きいプリズムを含むが、図C~Fの設計は、LED及びレンズ及びフェイスグラス以外のあらゆる光学要素を含まない。当業者であれば、デバイスのサイズをできる限りコンパクトに維持しつつ配光の均一性を最適化するために、例えば1つ以上のプリズム280、成形レンズ282又は拡散器、回折格子等のような他の要素を図5C図5Fの設計に追加することにより、この2つの手法を組み合わせることができる。
【0106】
図6は、図5Aに示される眼治療デバイス200などの眼治療デバイス200の概略側面平面図である。同じく図6に示されるのは、眼治療デバイス200と共に、安全性及び有効性が増した、標的組織を治療するシステムを提供することができる強膜シールド300である。強膜シールド300は、敏感な眼球前部構造27を覆うために、眼瞼12、14の下に、患者の眼球20に隣接して配置され得る。例えば、強膜シールドは、強膜21及び角膜22の上に配置され得(図1を参照されたい)、虹彩24、瞳孔25、水晶体26などの眼の他の内部解剖学的構造並びに眼系10の他の光感受性の解剖学的構造に対する保護も提供し得る。
【0107】
図6を再度参照すると、強膜シールド300は、コンタクトレンズと同様の円板形状のものであり得るか、又は角膜全体と、任意選択的に強膜の少なくとも一部(従来の角膜シールドの場合のように)を覆うように大幅に大きくし得るか、又はマストローラパドルの瞼下用部分に類似する部分的に円板若しくはパドル形状を有し得る。シールド300は、眼治療デバイス200による治療前に眼内に配置され得るか、又は眼治療デバイス200と一体であり得、したがって治療中に眼内若しくは瞼下に配置され得る。強膜シールド300は、基本的な安全性の利点をもたらすことに加えて、眼治療デバイス200の有効性を高めることも可能にし得る。例えば、いくつかの状況では、敏感な眼の解剖学的構造に対する損傷を防ぐために、エネルギー変換器モジュール120から発せられるエネルギーの強度を調整しなければならない。しかし、強膜シールド300の使用によって眼の解剖学的構造が保護される場合、エネルギー変換器モジュール120から誘導される電磁エネルギーの強度を増加させることができる。図7E図7Gに示すように、強膜シールド300は、散乱した光子エネルギーが角膜、水晶体、虹彩及び瞳孔に到達することを防ぐシールドの上部湾曲部264を含み得る。図6では、強膜シールド300は、図5A及び図5Bに関連して記載した眼治療デバイス200の実施形態と共に使用されるように示されているが、当業者であれば、強膜シールド300は、本明細書に開示される眼治療デバイス200の実施形態のいずれかと共に使用され、眼疾患の安全且つ効果的な治療のためのシステムを作成できることを理解するであろう。
【0108】
更に、強膜シールド300は、デバイスに更により多くの利点をもたらす特徴を含み得ることが理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態の強膜シールド300は、眼球から遠ざかる方に内側眼瞼に向けてエネルギーを反射するように構成されており、内側眼瞼に加熱を提供する。いくつかの実施形態では、強膜シールド300は、上述したような像変換部155も含み得る。像変換部155は、眼瞼14の内側の観察及び眼瞼の裏からのマイボーム腺の徹照を可能にする。いくつかの実施形態では、強膜シールド300は、エネルギー吸収材料で作製され得るか、又は治療中に眼瞼の裏からマイボーム腺を加熱するためにエネルギー伝送面を前面302上に有し得る。エネルギー吸収材料は、黒色プラスチックで作製されるか又は黒色物質で被覆された(このいずれも、(例えば、5%以上の)カーボンブラック又は赤色光及びNIRなどの光エネルギーを吸収する他の材料を含有し得る)可視光線又はIR吸収材料又は表面であり得る。
【0109】
更に、図7A図7Hの強膜シールド300の概略正面平面図に示すように、シールド300は、シールド300の前表面又は裏表面上に1つ以上の温度センサ310を組み込み得る。シールド300は、眼の敏感な組織が別の所定閾値を超えないようにすると共に、眼瞼の内表面が所定閾値を超えることなく目標温度に到達し得るように治療セッションを監視又は調整するために、温度データが眼治療デバイス200に送信され得るようにデータ伝送手段320も含み得る。図7Aの実施形態などのいくつかの実施形態では、シールド300は、内蔵電源330と、一連の温度センサ310と、データ伝送手段320とを有し、データ伝送手段320は、データを外部質問機400(眼治療デバイス200に組み込まれ得る)にRFなどによって無線で送信する。いくつかの実施形態では、データ伝送手段320は、シールド300に内蔵されたアンテナを含む。図7Bに示される実施形態などの別の実施形態では、シールド300は、受動式(電源330がない)であり得、RFを使用して、外部質問機400(眼治療デバイス200に組み込まれ得る)により照会されるように構成され得る。例えば、図7Bに概略的に示される外部質問機400は、シールド300内の回路に温度を測定するために適した電力を供給するように構成され得、質問機400は、送信機に、温度データを質問機400に返送するための電力も供給し得る。図7Cの実施形態などの更に別の実施形態では、シールド300は、完全受動式であり得、1つ以上の温度センサ310を共振回路内に含み得、この共振回路の共振点は、温度センサ310の変化(抵抗など)によって調整され、この共振回路の共振点は、例えば、図7Cに概略的に示される外部RF掃引機410を使用して外部RF電界を掃引し、インピーダンス又は電界の他の特徴を監視することによって検出することができる。図7Dの実施形態などの更なる実施形態では、シールド300は、シールド300から外部デバイスに延びるワイヤ又はワイヤアレイ420を介して質問機又は(例えば、図3Aの)眼治療デバイス200などの外部デバイスに物理的に連結され得る。このような外部デバイスは、シールド300内の能動要素に電力を供給することができ、データをシールド300に送信し、データをシールド300から受信することができる。ワイヤ又はワイヤアレイ420は、薄壁絶縁体を有する従来のストランド状若しくはソリッドワイヤ導体を含み得るか、又はよりしっかりとした構造の絶縁体内に埋め込まれ得る。
【0110】
図7E及び図7Eは、温度センサ310を中央に有し、1本のワイヤ420がシールドの各側から出ているシールド300の概略側面図及び正面平面図である。患者の角膜、水晶体、虹彩及び瞳孔を光又はIRエネルギーから保護するためにシールドの上湾曲部264が使用される。治療セッションを監視又は調整し、眼の敏感な組織が別の所定閾値を超えないようにすると共に、眼瞼の内表面が所定閾値を超えることなく所望の温度範囲に到達するようにするために、温度センサ310からの温度データは、ワイヤ420を介して眼治療デバイス200に送信され得る。
【0111】
図7G及び図7Hは、温度センサ310を中央に有し、1本のワイヤ420がシールドの各側から出ているシールド300の概略側面図及び正面平面図である。これらの実施形態では、強膜シールド300は、1つ以上の支持アーム262によってハウジング202に結合され得、1つ以上の支持アーム262は、ワイヤがアーム上又はアーム内に配置されており、特定の実施形態では、支持アーム262の構造的部分は、ワイヤ又はワイヤアレイ420の伝導性部分を取り囲むか又はそうでなければ通す絶縁材料から作製されている。
【0112】
図8は、眼治療デバイス200の別の実施形態の側面図を示す。現在示されている実施形態などのいくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、眼の組織を損傷又は不快感から一層保護するために、一度に1つの眼瞼にエネルギーを印加するように構成されている。このような構成では、ハウジング202内のエネルギー変換器モジュール120は、1つの眼瞼、例えば図1の上眼瞼12又は図1の下眼瞼14のマイボーム腺及び周囲組織を標的とするような大きさにされ、エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120と移動経路145に沿って摺動可能な関係にある。このような実施形態では、エネルギー伝送面140は、一度に1つの眼瞼に沿って配置するための大きさにもされている。使用時、このような眼治療デバイス200を使用する患者は、眼を大きく開くように指示され得る。これにより、眼瞼が敏感な眼球前部構造及び中心眼球軸から相対的に遠く離れることを確実にする。
【0113】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、眼治療デバイス200が眼瞼に対して安全且つ適切に配置されるようにすることを補助するための1つ以上の特徴を含む。例えば、いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、瞳孔位置合わせガイド242を含む。瞳孔位置合わせガイド242は、例えば、円、X、的又は他の標的マークを有する鏡であり得る。使用時、患者は、瞳孔位置合わせガイド242を覗き、鏡内で自身の瞳孔の反射を観察し、瞳孔を標的マークと位置合わせすることにより、自身の眼を適切に位置決めすることができる。更に又は代わりに、いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、ディスプレイ244を含み、ディスプレイ244は、画面、デジタルディスプレイ又は他の光学ディスプレイであり得る。ディスプレイは、例えば、使用中に患者が凝視するための画像、残りの治療時間をカウントダウンするタイマー及び/又は「顔を上げて下さい」(以下で説明する)などのリマインダメッセージを提示し得る。ディスプレイ244は、診断及び治療中に眼瞼辺縁の監視を強化するための可視化手段160も含み得る。
【0114】
図8の眼治療デバイス200は、本明細書に示される他の実施形態に関連して記載される特徴の一部又は全部を含み得る。例えば、図示される実施形態では、エネルギー変換器モジュール120は、赤外LEDアレイである。しかしながら、一度に1つの眼瞼にエネルギーを印加するように構成されている他の実施形態を含む他の実施形態では、エネルギー変換器モジュール120として、可視光スペクトルの光を放出するLED、レーザー、白熱ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光ランプ、高輝度放電ランプ又はガス放電ランプが挙げられ得る。眼治療デバイス200は、強膜シールド300を更に含み得、強膜シールド300は、エネルギー吸収材料で作製されているか、又は治療中に熱を吸収若しくは伝送し、眼瞼の内表面を加温するためのエネルギー吸収若しくはエネルギー伝送面を前面302上に有する。強膜シールド300は、治療セッションを監視し、眼瞼の内表面が所望の温度に到達すること及び/又は所定閾値を超えないことを確実とするために1つ以上の温度センサ310も組み込み得る。強膜シールド300は、眼瞼の裏のマイボーム腺の観察を可能にする、強膜シールドに内蔵された像変換部155を更に含み得る。図8の眼治療デバイス200は、本明細書に示される様々な実施形態に関連して記載されるような他の構成要素と共に、好ましくはまた電源モジュール110と、任意選択的にコントローラ212とを含む。更に、図8の眼治療デバイス200は、反射器210を含む。図示される実施形態では、反射器210は、バレルと背板とで形成されており、バレルと背板とは、遠位方向以外の全てにおいてエネルギー変換器モジュール120を共に取り囲む。
【0115】
様々な実施形態の眼治療デバイス200は、デバイスの少なくとも一部分を冷却するように構成されている1つ以上の熱管理構造体も含む。いくつかの実施形態では、熱管理構造体は、エネルギー変換器モジュール120の熱を管理し、眼治療デバイス200を過熱から防ぐために設けられている。更に又は代わりに、いくつかの実施形態では、熱管理構造体は、眼瞼の表面を冷却し、治療中の不快感を制限するために、且つ眼瞼組織の損傷を回避するために設けられている。図8では、例えば、眼治療デバイス200は、熱管理構造体220(フィン状ヒートシンクとして示される)と、熱電(ペルチェ)モジュール224と、受動的又は能動的に冷却される1つ以上の熱伝導性表面とを含む。いくつかの実施形態では、熱電モジュール224を必要とすることなく、エネルギー変換器モジュール120から周囲環境に熱を放散するための適切な熱管理構造体220として受動ヒートシンクが設けられ得る。いくつかの実施形態は、熱電モジュール224又はエネルギー伝送面140から熱を指向的に伝達除去することにより、エネルギー変換器モジュール120を冷却するように設計された他の種類の冷却器(小型蒸気圧縮冷却器など)を含む。図8では、熱電モジュール224がエネルギー変換器モジュール120から熱管理構造体220に向けて熱を送出し、放散させるために、熱電モジュール224と熱管理構造体220とが結合されている。更に又は代わりに、いくつかの実施形態は、1つ以上の熱伝導性表面を含む。例えば、図8では、反射器210のバレル及び背板は、熱伝導性であり、エネルギー伝送面140及び熱電モジュール224の両方に結合されている。更に、エネルギー伝送面140は、熱伝導性である。その結果、眼瞼の表面及びエネルギー伝送面140からの熱を熱電モジュール224に向けて引き、眼瞼に対する快適な温度の維持を促進することができる。エネルギー伝送面140の能動的な冷却は、熱治療期間だけでなく、熱治療前、熱治療後又は断続的に眼瞼の冷却手段として行われ得る。このような機能は、MGD及び眼瞼炎に付随することの多い灼熱感及びかゆみ感の緩和をもたらすことができるだけでなく、眼瞼の炎症の軽減ももたらすことができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、例えば、1つ以上の熱管理構造体と共に使用される非接触式温度センサ232を含む。非接触式温度センサ232は、遠隔読取り式IR温度計又は他の適切な温度センサであり得る。非接触式温度センサ232は、眼の特定の関心領域に集束することができる。例えば、図8では、非接触式温度センサ232は角膜の下縁に集束され、このため、角膜の縁の温度の読取値を提供する。いくつかの実施形態では、コントローラ212が非接触式温度センサ232から高温の読取値を受け取ったことに応答して、エネルギー変換器モジュール120を調整若しくは停止するように又は1つ以上の熱管理構造体を起動させるように、非接触式温度センサ232は、コントローラ212に動作的に結合され得る。いくつかの実施形態では、非接触式温度センサ232が、加熱されている眼瞼の部分の直後の位置で眼(強膜)の温度を測定することを可能にするために、ディスプレイ244は、熱が(例えば)下眼瞼に印加されている間、患者に「顔を上げる」ように指示し得る。このようにして、眼治療デバイス200は、眼球が過熱されていないことを定期的に確認しながら、眼瞼の加熱を継続することができる。図8に示されるデバイス構成は、例えば、ディスプレイ244及び位置合わせ要素をそれらの直立(可読)姿勢に保ちながらエネルギー送達要素の向きを反転することにより、上眼瞼を治療するように容易に適応され得ることが理解されるであろう。
【0117】
図9は、1つ以上の熱管理構造体220を有する眼治療デバイス200の別の実施形態の側面図を示す。図8又は図9を参照して記載した熱管理構造体220のいずれも、本明細書に記載される眼治療デバイス200実施形態のいずれかでの使用に適しており、本明細書に記載される眼治療デバイス200実施形態のいずれかでの使用が特に考えられる。エネルギー変換器モジュール120が所望の温度範囲内に留まり、エネルギー変換器モジュール120の効率を維持するように、熱管理構造体220は、エネルギー変換器モジュール120から熱を除去するように構成されている任意の適切な構造体を含み得る。いくつかの実施形態では、熱管理構造体220は、電源モジュール110及び他の内部構成要素と共に、少なくとも部分的に眼治療デバイス200のハウジング202内に配置されている。いくつかの実施形態では、以下の熱管理構造体220、即ちヒートシンク(例えば、図8に示される熱管理構造体220のフィン状ヒートシンク実施形態)、熱電(ペルチェ)モジュール(例えば、図8の熱電モジュール224)、小型蒸気圧縮モジュール及びファンの1つ以上がハウジング202内に提供される。いくつかの実施形態では、熱管理構造体220は、ハウジング202を、触れると冷たい状態に保つように熱を誘導し、分配する。
【0118】
更に、いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、表面下の標的組織が加熱されている間、眼瞼表面を不快感又は損傷が生じる時点まで加熱することを防ぐように設計されている表面冷却システムを含む。表面冷却システムは、全ての実施形態に必要とされるわけではなく、例えばいくつかの実施形態では、選択されたエネルギー変換器モジュール120は、眼瞼内の標的組織部位又は強膜シールドのエネルギー吸収部に吸収される波長の光エネルギーを放出するように構成されており、眼瞼の表面組織の加熱は、最小限である。表面冷却システムが存在する実施形態では、表面冷却システムは、標的組織部位にエネルギーを送達する前、その間又はその後、患者の眼瞼の表面を、体温に若しくは体温未満に、又は標的組織の温度未満の温度に、又は不快感の閾値未満に冷却するように構成され得る。表面冷却システムは、眼瞼の表面を冷却するように及び/又はエネルギー伝送面140を冷却するように構成されている任意の適切な構造体を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、表面冷却システムは、ファンなどの能動冷却要素を含む。いくつかのそのような実施形態では、エネルギー伝送面140は、エネルギー伝送面140と眼瞼の少なくとも一部分との間に空気ギャップが存在するような形状にされている。図2Bは、この目的のために適切に構造化された実施形態を示す。このような実施形態では、眼瞼の表面にわたって空気ギャップ内に空気が吹き込まれ得る。他の実施形態では、エネルギー伝送面140は、エネルギー伝送面140内に延びるか又はエネルギー伝送面140に沿って延びる1つ以上の穴又はチャネルを有し得、この1つ以上の穴又はチャネルを通して空気が吹き込まれ得る。いくつかの実施形態では、空気は、眼瞼の表面にわたって吹き込まれる前に冷却される。空気は、例えば、熱電冷却器、圧縮器、氷又は他のチリング要素を使用して冷却され得る。
【0119】
他の実施形態では、眼瞼の表面が次いで蒸発物質と接触するように、水又はアルコールなどの蒸発物質がエネルギー伝送面140に適用され得る。更に又は代わりに、蒸発物質は、眼治療デバイス200による治療前、中又はその直後に眼瞼の表面に適用され得る。蒸発物質の結果として蒸発が眼瞼の表面上で発生すると、患者は、冷却及び緩和感を経験し得る。更なる他の実施形態では、眼治療デバイス200は、エネルギー伝送面140と眼瞼の表面との間に配置されている冷却袋を含み得る。袋に冷水又はゲルを充填することができ、袋が眼瞼の表面に接触すると、患者に冷却及び緩和感を提供することができる。別の非限定的な例として、表面冷却システムは、エネルギー伝送面140自体を含み得る。いくつかのそのような実施形態では、エネルギー伝送面140は、例えば、ダイヤモンド、サファイア、フッ化カルシウム又はグラフェンなどのエネルギー吸収材料から形成され得、より大きい熱質量に熱的に連結され得る。そのような大きい熱質量は、加熱に長時間かかり、したがって治療期間中に大幅に加熱される可能性がない。したがって、大きい熱質量は、治療期間中、エネルギー伝送面140から放熱することができる。更に、大きい熱質量は、治療期間前若しくは中に冷却され得、またエネルギー伝送面140と同じ材料からその一部として形成され得るか、又は大きい熱質量は、銅、アルミニウム若しくは他のエネルギー吸収若しくは伝導性材料などの材料から別個の要素として形成され得る。
【0120】
上述の熱管理構造体220及び表面冷却システムに加えて、少なくともいくつかの眼治療デバイス200は、例えば、眼治療デバイス200のパラメータを監視するために又は患者の安全を確保するために1つ以上の安全センサ230を含む。図10は、1つ以上の安全センサ230を有する眼治療デバイス200の一例を提供する。図10を参照して説明される安全センサ230及び関連のコントローラ212のいずれも、本明細書に記載される眼治療デバイス200実施形態のいずれかでの使用が特に考えられる。任意の特定の眼治療デバイス200は、1つ以上の種類の安全センサ230を含み得る。図10に提供されている安全センサ230の第1セットは、温度を検知するように構成されている。このような安全センサ230は、非接触式温度センサ232及び熱電対又はサーミスタ234を含む。非接触式温度センサ232は、遠隔読取り式IR温度計(熱電対列又は焦電又はマイクロボロメータなど)又は他の適切な非接触式センサであり得る。非接触式温度センサ232は、例えば、治療期間中、1つ以上の眼瞼の表面温度を監視するために照明のフルフィールドから温度データを収集するように設計され得るか、又は特定の領域に集束し、その領域の温度読取値を提供するように設計され得る。例えば、非接触式温度センサ232は、例えば、図8に示されるように、角膜、強膜又は眼の他の領域の一部分の温度読取値を、こうした組織が過熱されて損傷しないようにするために提供するように配置及び構成され得る。
【0121】
更に又は代わりに、いくつかの実施形態は、エネルギー変換器モジュール120上に若しくはその近傍に配置された熱電対又はサーミスタ234(又はRTD)を含む。このような配置により、エネルギー変換器モジュール120の温度を監視することができるように、熱電対又はサーミスタ234がエネルギー変換器モジュール120の温度を検出することを可能にする。エネルギー変換器モジュール120が熱くなりすぎれば、それは、非効率になり且つ/又は破損する可能性がある。更に又は代わりに、熱電対又はサーミスタ234は、エネルギー伝送面140上、エネルギー伝送面140内又はエネルギー伝送面140に隣接して配置され得る。このような配置により、熱電対又はサーミスタ234がエネルギー伝送面140及び/又は眼瞼の表面の温度を検出することを可能にする。このような表面の温度の監視は、患者が眼治療デバイス200の使用による著しい不快感又は損傷を受けないようにするのに役立ち得る。ある実施形態において、様々な温度センサ232、234がコントローラ212に動作的に結合されている。コントローラ212は、温度を所定の目標範囲内にするか又は所定の目標範囲内に維持するために、エネルギー変換器モジュール120又は1つ以上の熱管理構造体若しくは表面冷却システムの出力を調整するようにプログラムされ得る。また、温度センサ232、234からの温度入力が所定の範囲を上回る場合、コントローラ212は、エネルギー変換器モジュール120からの出力をオフにし得る。更に又は代わりに、温度センサ232、234は、眼瞼の内表面及び/又は眼の表面の温度を監視するために強膜シールド300(本図には示さず)と結合され得る。更に、使用者によって眼瞼に加えられる圧力又は力を監視するために、圧力センサ又はセンサ221は、強膜シールド300及び/若しくはエネルギー伝送面140上、強膜シールド300及び/若しくはエネルギー伝送面140内又は強膜シールド300及び/若しくはエネルギー伝送面140に隣接して配置され得る。
【0122】
図10にある安全センサ230の第2セットは、患者の眼瞼に対する眼治療デバイス200の位置を検知するために提供される。エネルギー伝送面140内、エネルギー伝送面140上又はエネルギー伝送面140の近傍にある光センサ236は、光を検出するように構成されている。眼治療デバイス200の様々な構成では、エネルギー伝送面140が1つ又は2つの眼瞼に適切に隣接して配置されると、構成に応じて、光センサ236に到達することができる周囲光の量を大幅に減少させるはずである。いくつかの実施形態では、閾値範囲を超える光がエネルギー伝送面140内、エネルギー伝送面140上又はエネルギー伝送面140の近傍で検出された場合、エネルギー伝送面140が適切に配置されていないことを示唆する。同様に、エネルギー伝送面140内又はエネルギー伝送面140上に接触センサ238が存在し得る。各接触センサ238は、例えば、接触センサ238がヒトの皮膚の近傍にあるときに生じる静電容量の変化などの静電容量の変化を検出するように構成され得る。代わりに、接触センサ238は、わずかな直流又は交流マイクロカレントを印加し、皮膚との接触の結果としてのインピーダンスの変化を検知する電極を含み得る。代わりに、接触センサ238は、マイクロスイッチ又は力若しくは圧力センサを含み得、これらは、全てエネルギー伝送面140が皮膚に接すると信号特性の変化を生じる。したがって、センサ238を使用して、眼治療デバイス200の配置の決定に役立てることができる。眼治療デバイス200が閉じられた眼に対して適切に配置された場合、上部接触センサ238及び下部接触センサ238は、それぞれ眼瞼の皮膚に接触し、静電容量(又はインピーダンス、スイッチの状態、力、圧力等)の変化を検知するはずである。様々な実施形態では、光センサ236及び/又は接触センサ238は、コントローラ212に動作的に結合されている。いくつかのそのような実施形態では、コントローラ212が、センサ236、238からの信号を介して、眼治療デバイス200が閉じられた眼に適切に隣接して配置されていることを検出するまで、コントローラ212は、エネルギー変換器モジュール120の起動を阻止するようにプログラムされている。更に、いくつかの実施形態では、センサ236、238から受信された信号が、眼治療デバイス200が閉じられた眼に対してもはや適切に配置されていないことを示す場合、コントローラ212は、エネルギー変換器モジュール120を停止するようにプログラムされている。更に又は代わりに、エネルギー伝送面上、エネルギー伝送面内又はエネルギー伝送面に隣接する熱電対又はサーミスタ234を使用して、デバイスが患者の眼に適切に隣接して配置されたときに示し得る。例えば、熱電対又はサーミスタ234は、デバイスを眼に隣接させて配置する前に室温を記録し得、(直接接触が望ましい実施形態において)エネルギー伝送面140が眼瞼の皮膚と接触すると、熱電対又はサーミスタ234は、体温に近い値を記録し、それにより適切な配置を確認する。更に、上眼瞼及び下眼瞼の両方を治療する実施形態において複数の熱電対が使用される場合、熱電対又はサーミスタ234からのデータを使用して、眼が開いているか閉じているかを決定し得る。眼が閉じていることを確認するために、反射又は色センサ237もデバイスに組み込まれ得る。このようなセンサ237は、センサ237の前方の光場の領域の色を決定することができるか、又は反射若しくは色センサ237の前方の表面の反射度を決定することができるかのいずれかである。いずれの場合にも、センサ237は、眼瞼の皮膚(例えば、肌色且つ湿性又は光沢がない)又は眼組織(白又は虹彩色且つ湿性及び光沢がある)のように見える組織があるか否かを示すデータを提供する。
【0123】
いくつかの実施形態では、接触センサ238は、可撓性の封止された表面の後ろに埋め込まれたマイクロスイッチを含む。他の実施形態では、接触センサ238は、エネルギー伝送面140によって眼瞼に加えられる力又は圧力の量の表示を提供するセンサを含む。このような表示は、治療中に過度の力を加えることを回避するために、又は初期診断時、マイボーム腺分泌物の評価を可能にするために眼瞼がわずかに圧縮されることになるときに特定の範囲内の力を加えるために有用であり得る。臨床医によって1つ以上の眼瞼に加えられるエネルギー伝送面140の力は、調整されるか又は調整されないかのいずれかであり得ることが理解されるであろう。更に、院内デバイスでは、マイボーム腺及び管からマイボーム腺分泌脂を出すことを補助するために、力は、転がり又はアンギュラ構成要素によって加えられ得る。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面及び/又は強膜シールドは、エネルギー伝送面が眼瞼をシールドに対して圧縮するとき、最初にマイボーム腺の下部領域がより強く圧縮され、圧縮が増すにつれて上部領域に徐々に移行して、マイボーム腺分泌脂を下部領域から上部領域に移動させ、その後、マイボーム腺管から出すように、湾曲した若しくは角度のある形状の表面を有し得るか、又は揺動要素を有し得る。
【0124】
図11A及び図11Bは、電源モジュール110からの電気エネルギーを超音波エネルギーに変換するように構成されたエネルギー変換器205を有する眼治療デバイス200の更なる実施形態の側面図を示す。超音波エネルギー変換器205は、圧電セラミック、ポリマー又は複合材などの任意の適切な材料から形成され得る。上述の様々な実施形態では、超音波エネルギー変換器205を光エネルギー変換器モジュール120と併用し得る。
【0125】
図11Aにおいて、眼治療デバイス200は、非集束超音波を放出するように構成されている平坦ピエゾ超音波エネルギー変換器205を含む。波の方向は、集束されていないが、それでも、超音波エネルギーの波長は、組織の特定領域を標的とするように操作することができる。超音波エネルギーにより、波長が長くなるほど貫通が深くなる。したがって、いくつかの実施形態では、短い高周波である20~100MHz、50~100MHz若しくは任意の部分範囲又はこれらの間の個々の値が放出される。このような周波数の超音波は、眼瞼の組織を1~3mm貫通することができる。有利には、このような貫通深さにおいて、眼内を著しく加熱することなく、マイボーム腺及び他の周囲標的組織を加熱することができる。他の実施形態では、100MHzを超える波長が超音波エネルギー変換器205から放出され得る。
【0126】
図11Bの眼治療デバイス200は、集束超音波を生成するように構成されている1つ以上の湾曲ピエゾ超音波エネルギー変換器205を含む。いくつかの実施形態では、超音波は、標的組織部位を、標的組織部位内に又はそれに隣接して位置するマイボーム腺内のマイボーム腺分泌脂を融解するのに十分に選択的に加熱するように指向的に集束される。いくつかのそのような実施形態では、超音波は、焦点を有する成形又は湾曲変換器の使用によって標的を定められ、誘導される。図11Bは、このような実施形態の1つを示す。他の実施形態では、超音波は、成形された個々の超音波要素のアレイを使用して標的を定められ、誘導される。超音波要素の2つ以上のアレイが存在し得、例えば、1つのアレイは、下眼瞼に向けられ得、別のアレイは、上眼瞼に向けられ得る。標的組織に超音波エネルギーを効率的に伝送するために、エネルギー伝送面140は、適切な材料から作製されていなければならないことが理解されるであろう。低周波数の超音波に関して、シリコーン又は他のポリマー及びエラストマーなどの従来の材料が用いられ得る。ある実施形態において、所定閾値を超えることを防ぐために、超音波エネルギーが印加される際に眼瞼の表面を冷却することが望ましい場合がある。このような場合、エネルギー伝送面140は、超音波エネルギーを通すことができるだけでなく、(本明細書に上述した冷却手法を適用できるように)熱伝導性でもある材料から作製され得る。高周波数の超音波エネルギーを通すことができるのみならず、適切な熱伝導性を提供することができる材料の例としては、ダイヤモンド又はグラフェンが挙げられる。
【0127】
超音波は、組織加熱効果を提供することに加えて、前述したニキビダニを撹乱させるか、破壊するか又は更に死滅させ得ることが理解されるであろう。したがって、MGD、眼瞼炎及び関連疾患に対する最良の全体的治療を達成するために、光及び超音波などのエネルギー形式を組み合わせると有益であり得る。
【0128】
標的組織部位を加熱することに加えて、特定の実施形態の眼治療デバイス200は、標的組織部位を含む領域に振動エネルギーを送るようにも構成され得る。図12は、振動エネルギーを生成するように構成されている眼治療デバイス200の一例を提供する。図12に関連して記載される振動機構250実施形態は、本明細書に記載される眼治療デバイス200実施形態のいずれかでの使用が特に考えられる。図12の眼治療デバイス200は、ハウジング202の一部分内に振動機構250を含む。任意の適切な振動機構250を使用し得る。様々な実施形態では、振動機構250は、特定の振動パターンを発生させるように構成されている。例えば、振動機構250を有する眼治療デバイス200は、患者の眼瞼に押し付けられると、中心眼球軸30と平行な軸に沿って前方及び後方に振動し得る。他の実施形態では、眼治療デバイス200は、中心眼球軸30に直交する方向に左右又は上下に振動し得る。更なる他の実施形態では、眼治療デバイス200は、円形パターン、例えば中心眼球軸30に直交する円形パターンで振動し得る。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、複数の振動パターンを選択することができるように複数の設定を含み得る。振動パターンは、標的組織部位に熱を送達する前、その間又はその後に眼瞼に適用され得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、振動の周波数は、約1Hz~約20KHzであるが、20MHz以下の超音波周波数範囲に及び得、任意の部分範囲又はこれらの間の個々の値を含み得る。この周波数範囲内の振動は、マイボーム腺内で濃化した又は詰まったマイボーム腺分泌脂の圧出の補助に役立ち得る。更に、振動パターンにより、ニキビダニを撹乱させるか又は破壊することができ、それによりそれらの繁殖を減少させる。振動及び/又は超音波エネルギー印加の組み合わせを用いて、組織及びマイボーム腺分泌脂の加熱、マイボーム腺分泌脂の振動及び圧出並びにダニの破壊を含む最も有効な全体的治療を生じさせ得ることが理解されるであろう。
【0130】
図12に更に示されるように、いくつかの実施形態では、振動機構250は、ハウジング202の遠位部203に配置されている。いくつかのそのような実施形態では、振動の力が近位部201で減衰されるように、振動隔離要素252がハウジング202の遠位部203とハウジング202の近位部201との間に配置されている。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200のハンドル又は把持部は、近位部201に位置している。したがって、振動隔離要素252は、使用中、使用者の手の振動を制限するのに役立つ。他の実施形態では、隔離要素252は、存在しない。更なる他の実施形態では、振動機構250は、ハウジング202の近位部201内に配置されており、振動機構250と遠位部203との間に並進リンク機構を有する。
【0131】
前述の特定の実施形態は、例示であり、本開示は、これらの特定の実施形態の他に多数の変形形態を包含することを強調されたい。ここで、これらのいくつかについて更に詳細に説明する。
【0132】
エネルギー変換器モジュール120がLEDエミッタ207である場合、いくつかの実施形態は、好ましくは、高輝度を有する1つ以上のLEDの使用を含む。例えば、1つ以上のLEDは、少なくとも10ワット、好ましくは少なくとも約15ワットの合計電力出力又は更に20ワット以上の合計電力出力を有する。これらのLEDの合計輝度は、有利には、少なくとも約20、30、40、50、75、100、150、200、250、300、400、500、1000、2000ルーメン以上であり得る。眼瞼を対象とする場合、適用される光量の連続輝度は、好ましくは、約0.02~2ワット/平方センチメートルであり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、LEDは、緑色LEDであり得る。緑色は、組織を約0.5~2mmの深さまで貫通して加熱し、これを超えると大幅に減衰されるという点で有利である。これにより、光エネルギーがマイボーム腺にあるか又はマイボーム腺に隣接する組織を含む治療領域まで貫通することを可能にし、眼に伝送される光は限定される。いくつかの好ましい光の波長は、495~570nm、500~600nm、より好ましくは約510~540nm又は520~530nmであり得る。いくつかの実施形態では、赤外放射源は、700~1000nm、好ましくはヒトの組織の「光学窓」である約800~900nm、より好ましくは約850nmであり得る。波長が増加するにつれて組織中の水による吸収が大きくなることを潜在的に利用すると、より長い波長も機能するであろう。例えば、3,000nmの赤外は、眼球及び敏感な構造の貫通及び加熱が最小限で、眼瞼組織の理想的な加熱を提供でき得る。他の実施形態では、LEDは、青色、黄色、赤色、白色又は前述のいずれかの組み合わせであり得る。
【0134】
代わりに、エネルギー変換器モジュール120は、白熱ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、冷陰極管、蛍光管等などの広域又は狭域スペクトルランプを含むことができる。照明源は、ランプのスペクトルの強度を低下させるための又はランプのスペクトルから特定の望ましくない波長を実質的に除去するためのスペクトル制限要素を更に含み得る。これらのスペクトル制限要素としては、色フィルタ、ダイクロイックフィルタ、IRカットオフフィルタ、回折格子、バンドパスフィルタ、プリズム又は回折格子などのスペクトル分離要素等が挙げられ得る。赤外ランプ又は加熱要素も使用することができる。眼瞼に到達させる主波長は、LEDに関して上述したように選択され得るか、又は主に赤外放射に限定され得る。
【0135】
照明源によって放出され、患者に送達されるエネルギーは、低デューティサイクルの高強度パルス光(IPLなど)とは対照的に、連続的に送達される(必要に応じてパルス幅又は他の形態の変調を伴って)ことが好ましい。治療期間は、複数秒又は複数分、例えば5、7、10、12、15、18、20、15、30、40、45、50、60秒若しくは1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20又は更に30分以上であることが好ましい。
【0136】
いくつかの実施形態では、エネルギー変換器モジュール120からの可視光線送達は、加熱モダリティとして機能する別のエネルギー変換器によって促進され得るか、又は加熱モダリティとして機能する別のエネルギー変換器と置換され得る。これらは、例えば、超音波変換器又は高周波エミッタを含み得る。超音波変換器が使用される場合、それは、集束又は非集束のいずれかであり得る。加熱の深さを制限するために、マイボーム腺を含むか又はマイボーム腺に隣接する標的組織領域に加熱を集中させるために、且つ領域内の眼球又は他の組織に対する作用を減少させるか又は除去するために高周波が好ましい。好ましい周波数は、50~100MHz又は100MHz~250MHz超である。例えば、方向集束を容易にするために位相管理されたアレイを含む複数の変換器又は限定された焦点領域を有する成形変換器を使用した集束超音波が特に好ましい。光エネルギーと同様に、パルス送達で行うことができるような比較的連続的な送達が使用され得る。
【0137】
高周波エミッタが使用される場合、局所加熱を提供することが判明している周波数が好ましい。有利には、電気外科手術で使用される300KHz~4MHzなどの周波数を使用することができる。そのような一実施形態では、眼瞼に接触し、加熱の位置及び深さの制御を可能にする双極電極がエネルギー伝送面140内又はエネルギー伝送面140上に提供される。
【0138】
代わりに、5MHz~10MHz範囲のより高周波数の電波を、組織におけるそれらの減衰率がより高いために使用することができ、したがって貫通深さの慎重な選択及び組織の所望の領域に対する加熱の制限が可能になる。例えば、約245MHzを超える周波数は、ヒトの皮膚及び組織を約1~3mmの深さまで貫通し、この深さは、眼瞼の外側と標的組織(即ちマイボーム腺及び隣接組織)との間の典型的な距離に一致する。
【0139】
エネルギー導波管モジュール130は、変換器又は発生器からのエネルギーをエネルギー伝送面140に伝送し、エネルギー伝送面140から標的組織に伝送するように設計されている。例えば、光エネルギーをLED又は小型ランプなどの小型源から生成する場合、エネルギー導波管モジュール130は、この源から標的組織ゾーンに均一な照明を誘導することができる。いくつかの実施形態では、光を眼の中心眼球軸に沿って誘導することなく、光を眼瞼及び標的組織に向けて誘導するための導波管構造体を含むことが望ましい場合がある。したがって、これにより、より接線角であったとしても、光を眼瞼になお誘導しつつ、角膜及び眼を貫通する光の量を減少させることができる。この目的を達成するために適した構造体としては、ライトパイプアレイ、屈折要素、反射要素、回折要素、内部全反射要素(TIR)及び拡散器が挙げられる。例えば、光ファイバー、鏡、レンズ、プリズム等を使用して、光を誘導し、その入射角を(例えば、中心眼球軸を回避するために)標的表面上に変更することができる。いくつかの実施形態では、上述のように、眼瞼14の内側を観察するために、且つ/又は眼瞼の裏のマイボーム腺を加熱するために、光を強膜シールド300及び像変換部155に向けて誘導することが望ましい場合がある。
【0140】
別の実施形態では、エネルギー導波管モジュール130は、超音波エネルギーを反射して、超音波エネルギーを所望の領域、例えば標的組織部位上に誘導及び/又は集束する表面を有する超音波導波管である。同様に、既知の設計のマイクロ波又は他のRF導波管を使用して、RFエネルギーを所望の領域に誘導することができる。
【0141】
エネルギー伝送面140は、眼治療デバイス200の内部と患者との間に置かれ、それらの間にバリアを提供する。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、窓と想定することができ、この窓を通してエネルギーが患者に送達される。エネルギー伝送面140は、患者の眼瞼に直接接触するように、又は治療中、眼瞼から0.5mm~12mmなど、眼瞼からわずかな距離を空けるように構成され得る。好ましくは、エネルギー伝送面の外部表面は、滑らかであり、清掃が容易である。いくつかの実施形態では、患者間の交差汚染を防ぐために、単回使用の外側眼瞼パッド147がエネルギー伝送面140上に配置され得る。外側眼瞼パッド147は、所望の構造的性質及び光学的性質を得るために、ガラス、パイレックス(登録商標)、石英、マイカ若しくはポリカーボネートなどのポリマーなどの任意の適切な材料から製作され得るか、又は他の光学的に透明な材料若しくはこれらの組み合わせを使用することができる。いくつかの実施形態では、a)治療及び撮像中の光子エネルギーの漏出を最小限にするために、及びb)必要に応じて、マイボーム腺の評価又は圧出中に眼瞼に圧縮力を加えるために、エネルギー伝送面140を1つ以上の眼瞼に押し付けることができるようにするために、エネルギー伝送面140は、エネルギー変換器モジュール120、又は強膜シールド300、又はハウジング202のいずれかに対し、移動経路145に沿って摺動可能な関係にあり得る。
【0142】
光エネルギーを使用して標的組織部位を加熱する場合、エネルギー伝送面140は、有利には、必要に応じて可視光線又は赤外線に対して透明である。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140は、可視光線又は緑色光など、治療に使用されるピーク又は所望の波長に対して透明であるが、赤外線は、遮断するため、眼瞼のIR加熱は、減少する。ガラス、パイレックス(登録商標)、石英、マイカ若しくはポリカーボネートなどのポリマー又は他の光学的に透明な材料を使用することができる。
【0143】
標的組織部位を超音波又はRFで加熱する場合、可視光線に対する透明性は、必要なく、代わりに超音波透明又はRF透明材料が使用され得る。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面140を冷却することにより眼瞼の冷却を促進するために、その材料は、熱伝導性であることが望ましい。ダイヤモンド、サファイア及びグラフェンは、好適な熱伝導性材料である。別の実施形態では、エネルギー伝送面140の全体又は少なくともその窓のいずれかは、本明細書に開示される安全センサに対して透明である。例えば、眼瞼の外側の温度を検知するために非接触式赤外温度センサが使用される場合、IR透過性材料は、有利には、エネルギー伝送面140の全て又は少なくとも関連する1つ以上の領域に使用される。
【0144】
眼治療デバイス200から眼瞼に加熱エネルギーを印加する場合、いくつかの実施形態は、エネルギー伝送面140を冷却することによる眼瞼の表面の冷却を含む。標的組織部位に光、超音波又はRFエネルギーを照射する間に眼瞼の外側が冷却される場合、標的組織の最適な加熱によって有効性を最大化しつつ、患者の快適性を向上させることができる。エネルギー伝送面140は、以下によって冷却され得る。エネルギー伝送面140の内部を横断する空気流;エネルギー伝送面140の内側に対する、冷却剤又は水などの蒸発物質の適用;エネルギー伝送面140内又はエネルギー伝送面140上のチャネルを介した冷却液の循環;又はエネルギー伝送面と、冷却モダリティに連結された熱電(ペルチェ接合)部又はヒートシンクとの接触。代わりに、エネルギー伝送面140は、患者の治療中、眼瞼から十分な熱を除去して眼瞼を所望の温度範囲内に維持するために十分に大きい熱質量を有し得る(又はこのような熱質量と接触し得る)。熱質量は、治療前に予冷却され得るか、又は単純に周囲温度で開始され得る。エネルギー伝送面140及び/又は眼瞼の他の冷却方法としては、エネルギー伝送面と眼瞼の皮膚との間に、水が充填された袋などのリザーバを組み込むことが挙げられる。袋は、例えば、袋に冷水を循環させることにより、又は熱電デバイス、圧縮器、冷却剤などのチリング要素若しくは他のチリング要素を使用することにより、予冷却され得るか、又は処置中に能動的に冷却され得る。
【0145】
別の実施形態では、エネルギー伝送面140は、エネルギー伝送面140と眼瞼との間における比較的冷たい空気、ミスト、水等の冷却液の通過を可能にするために、眼瞼からわずかな距離を空けられている。例えば、冷たい空気は、眼瞼の表面及びエネルギー伝送面140を横断する方向に流れるように生じさせることができるか、又はエネルギー伝送面140は、冷却液を眼瞼上に誘導するための穴若しくはチャネルを含み得る。冷却液は、周囲温度であり得るか、又は例えば冷凍、氷等によって予冷却され得る。
【0146】
振動機構250が使用される場合、振動機構250は、例えば、電気機械ソレノイド等などの往復動要素、モータシャフトに結合された偏心錘などの回転偏心錘又は回転カムを含み得る。好ましくは、振動機構は、眼瞼に振動的に結合されるが、患者又は臨床医が握る可能性のある任意のハンドル領域を含む、眼治療デバイス200の近位端などの他の患者又は臨床医接点からは振動的に分離される。
【0147】
本デバイス及び方法において、患者の安全性及び快適性は、重要事項である。したがって、有利には、安全センサ及び警告をデバイスに組み込むことができる。これらには、皮膚の過熱を防ぐためのセンサ、デバイスの望ましくない起動を防ぐためのセンサ及び患者へのエネルギーの送達を監視するセンサを含む。いくつかの実施形態では、保護用強膜シールド300を有する消費可能部分260が正しい位置にあることを、エネルギー変換器モジュール120をオンにする前に確認するための安全センサが用いられ得、それにより眼系10の損傷を防ぐ。
【0148】
図10に示されるように、本明細書に記載されるセンサのいずれかによって検知された安全でない状態を患者に知らせるために、安全警告装置240がデバイスに組み込まれ得る。これには、閃光灯、点滅警告、音声警報音、ピクチャ、振動パターン又は安全でない状態の可能性若しくは安全でない状態の存在を示す言葉を含み得る。
【0149】
図10を再度参照すると、安全センサ232、234の第1セットは、エネルギー伝送面140上、エネルギー伝送面140内、エネルギー伝送面140の後ろ又はそうでなければエネルギー伝送面140の近傍に好ましくは位置している。両方のセンサは、外側眼瞼表面の加熱を検出し、その過熱を防ぐように構成されている。センサ232は、好ましくは、焦電センサ(例えば、株式会社村田製作所によるIRA-E700ST0)若しくは熱電対列(Dexter Research、Dexter,Mich.によるST25T0-18など)などの非接触式センサ又は熱電対、サーミスタ、光ファイバー熱センサ若しくはデジタル温度センサ(Dallas SemiconductorのDS-18620など)などの従来の温度監視デバイスである。温度センサ232及び温度センサ234に加えて、図3図7A図7H及び図8に示すように、強膜シールド300の前表面又は裏表面上において、それぞれ内側眼瞼の表面温度及び眼球温度を監視するための温度センサ310が取り付けられ得る。40℃、45℃又は50℃などの閾値温度が眼治療デバイス200にプログラムされ得る。いくつかの実施形態では、閾値温度に到達するか又は閾値温度を超えると、安全センサは、眼治療デバイス200を停止させるように構成され得、且つ/又は治療を停止するように、安全警告装置240を介して、光、警告音若しくは他の通知手段を使用して使用者若しくは臨床医に知らせるように構成され得る。いくつかの実施形態では、任意の特定の位置において閾値温度に到達するか又は閾値温度を超えると、コントローラ212(又は任意のコントローラから独立したディスクリート回路)を使用して、この閾値温度を超える眼瞼の加熱を防ぐことができる。これは、例えば、眼治療デバイス200を停止させることにより、送達されるエネルギーを低減すること(例えば、光の強度の低減、LEDのパルス幅変調、超音波又はRFエネルギーの電源入力の低減等)又は眼瞼の温度を低下させるための冷却手段を起動させることによって達成され得る。
【0150】
第2の種類の安全センサも図10に示される。これは、単一センサ又は複数のセンサを含み得る。第2の種類の安全センサの目的は、治療の起動前に眼治療デバイス200が眼瞼に対して適切に配置されていることを確実にするためである。第2の種類の安全センサは、以下のセンサの1つ以上を含み得る。1つのセンサは、光センサ236であり得る。デバイスが眼瞼に対して配置されると、周囲光が遮断される。したがって、このような光の欠如を検出することができる。代わりに、光源が遠位に誘導され、同じく遠位に照準を定めるセンサと結合される反射性のオプトカプラ型デバイスが使用され得る。これにより、患者までの距離の概算値と共に、患者の存在を検出することを可能にする。眼治療デバイス200が適切に配置されているとき、光源とオプトカプラ型デバイスとの間の距離に応じて、光検出は、最大化されるか又は排除されるかのいずれかである。別の光検出方式は、患者に向かって遠位に面しているものの、治療光の経路の外側にある光センサ236を提供することである。眼治療デバイス200が眼瞼から離れているとき、反射した治療光は、センサ236に到達することができるが、適切に配置されているとき、このような光の大部分は、センサ236から遮断される。光センサ手法は、温度センサの1つからのデータと結合され、光及び皮膚温をデバイスの配置の表示として同時に検出することができる。光検出実施形態のいずれにおいても、周囲光レベルを測定し、眼瞼に対する近接性の光学検出を容易にするために、周囲光センサ236を眼治療デバイス200に組み込むことができる。同様に、温度センサを第2の種類のセンサと併せて使用する場合、周囲光センサ236は、特に高温環境において、眼治療デバイス200が皮膚に接したときの判定を容易にすることができる。超音波値範囲検出モジュールなどの他の距離又は接触検出要素も使用することができる。いくつかの実施形態では、エネルギー伝送面上、エネルギー伝送面内又はエネルギー伝送面に隣接する熱電対又はサーミスタ234を使用して、デバイスが患者の眼に適切に隣接して配置されたときに示し得る。例えば、熱電対又はサーミスタ234は、デバイスを眼に隣接させて配置する前に室温を記録し得、熱電対又はサーミスタ234は、エネルギー伝送面140が眼瞼の皮膚の近傍に到来した際、体温に近い値を記録し、それにより適切な配置を確認する。眼が閉じていることを確認するために、反射又は色センサ237もデバイスに組み込まれ得る。上述のように、このようなセンサ237は、眼瞼の皮膚(例えば、肌色且つ湿性又は光沢がない)又は眼組織(白又は虹彩色且つ湿性及び光沢がある)のように見える組織があるか否かを示すデータを提供することができる。
【0151】
別の実施形態では、第2の種類のセンサは、眼治療デバイス200が顔面に触れると検出するタッチセンサであり得る。タッチセンサは、2つの電極を用い、皮膚を通るマイクロカレントを検知する抵抗センサ又は従来の抵抗タッチセンサであり得る。代わりに、静電容量センサを使用して、眼治療デバイス200が皮膚に触れたときに検出することができる。これは、単一のセンサ又はより良好な信号のために、複数のセンサのいずれかであり得、治療を進められるようにするために、複数のセンサの全て又は部分集合を起動させなければならない。最終的に、タッチセンサは、電気スイッチ(マイクロスイッチなど)又はデバイスが皮膚に押し付けられると起動されるひずみゲージを含み得る。例えば、マイクロスイッチは、可撓性の封止された表面の後ろに埋め込まれ得るか、又はマイクロスイッチは、眼治療デバイス200の第1部分を眼治療デバイス200の第2部分に対して移動させるために十分な圧力が加えられると起動され得る。
【0152】
眼治療デバイス200において、所定のパラメータ内における適切な動作を確実とするようにエネルギー送達変換器を監視するために、第3の種類の安全センサも使用され得る。同じく、これは、以下の1つ以上を含む単一のセンサ又はセンサの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、安全センサは、変換器モニタ246として図10に示すような変換器に印加される電流及び/又は電圧を測定することができる。したがって、変換器が1つ以上のLEDエミッタ207である場合、LEDの駆動電流又は順方向電圧を監視することができ、予め設定されたパラメータからの逸脱は、LED若しくはLEDドライバの故障又は安全でない動作状況を示す可能性がある。RF又は超音波変換器の電圧も、同様に、RF又は超音波変換器に供給される電流が監視され得るように変換器モニタ246によって監視され得る。別の実施形態では、図10でエネルギー変換器モジュール120に隣接して示される熱電対又はサーミスタ234などの熱センサは、変換器要素の内部又は外部温度を監視するように構成され得、過熱は、安全でない動作又は要素の故障を示す可能性があり、加熱の不足も動作故障を示す可能性がある。
【0153】
いくつかの実施形態では、コントローラ212は、自動制御を伴わない手動操作のための自律ディスクリートアナログ及びデジタル回路を有する手動又は開ループ系であり得る。手動操作は、眼治療デバイス200をオン及びオフにすることと、安全及びフィードバック情報を受け取ることとを含み得る。この場合、眼治療デバイス200は、使用者又は臨床医が眼治療デバイス200をオンにし、フィードバックを使用して眼瞼の所望の治療を評価し、評価に応じてプロセスを調整することにより、コントローラなしに手動で操作される。オン/オフ、光若しくは警告音、温度データ、圧力データ、安全性データ又は使用者若しくは臨床医によるプロセスの評価を補助することができる他のデータなどのフィードバック機能により、使用者又は臨床医に状態を知らせ得る。いくつかの実施形態では、コントローラ212は、直接作用閾値検出器を含み得、安全のために回路を停止し得る。いくつかの実施形態では、コントローラ212は、フィードバック機能によってプロセスを監視するように構成されたプロセッサ又は集中型コントローラを含み得、フィードバックの一部は、安全でない状態においてシステムをオフにするなど、安全のためにコントローラに戻される。
【0154】
コントローラ212の機能ブロックは、両方の動作機能を含むと共に実施し、意図した動作及び安全機能を指示し、様々な安全センサ230とインターフェースする。コントローラ212は、全機能を制御する単一のプロセッサ、即ち図3及び図4Aに示されるような1つのコントローラ212であり得るか、又は当業者に周知のように、第1コントローラに対する監視役として機能する副安全コントローラを有する主コントローラなどの2つ以上のコントローラを含み得る。具体的には、副安全コントローラは、主コントローラの機能を監視するように設計され得る。即ち、1つ以上のパラメータが、主コントローラ212が適切に機能できていないことを示す場合、副安全コントローラは、エネルギー変換器及び/又は眼治療デバイス200全体の電源を切るように構成されている。コントローラ212に関連する機能は、関連ソフトウェアを有するマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラなどのコントローラによって実現され得るが、特定の実施形態は、コントローラを伴わず、代わりにプログラマブルゲートアレイ、論理アレイ、アナログ回路、デジタル回路要素又は前述の任意の組み合わせの1つ以上を用いて動作することが好ましい場合がある。
【0155】
1つの単純な実施形態では、副安全コントローラは、プロセッサを伴わず、アナログ又はデジタル回路要素のアレイを含む。例えば、互いに配線された又は論理回路、オペアンプ及び/若しくはリレーと配線された光学スイッチ、温度スイッチ及び/又は圧力スイッチは、センサが所定の状態にある場合にのみ、デバイスの初期の又は継続的な動作を可能にするように構成されている。完全プロセッサ制御を示す別の実施形態では、全てのセンサは、第2の安全コントローラの機能を実施するために、且つ所定のパラメータ外での動作を阻止するために又は眼治療デバイス200の能動要素の動作がこれらのパラメータ内に留まるように調整するために、1つ以上のプログラムされたプロセッサへのデジタル又はアナログデジタル変換器(ADC)入力を介して監視される。
【0156】
安全機能に加えて、コントローラ212は、眼治療デバイス200の通常動作を指示し得る。例えば、コントローラ212は、ユーザインタフェース270を介して使用者とインターフェースすることができ、ユーザインタフェース270としては、制御ボタン、ロータリーエンコーダ、タッチスクリーン、音声コマンド又は任意の他の従来のユーザインタフェースが挙げられ得る。コントローラ212は、電源管理部を制御することができ、エネルギー変換器への電流を誘導又は中断し、その出力を調整することができ、振動装置の動作を開始又は停止することができ、安全警告を開始又は無効化することができ、表面冷却装置の動作を開始、調整又は停止することができ、熱管理部を介してエネルギー変換器の冷却を監視及び調整することができる。コントローラ212又はディスクリート回路代替品は、眼治療デバイス200内のこれらシステムのいくつか又は全てに動作的に連結され得る。更に、コントローラ212は、所定の動作期間後又は第1、第2若しくは第3の種類の安全センサからの信号に応答してエネルギー変換器を自動的に停止し、したがって眼瞼への加熱又は振動エネルギーの送達を中断するためのタイマー機能を含み得る。
【0157】
電源モジュール110は、眼治療デバイス200への電力の供給を容易にするように設計されている。電源モジュール110は、外部電源と相互接続されているコード又はケーブルなどの外部電力インターフェースを含み得る。好適な実施形態では、電源管理部は、内部電源供給部を含む。いくつかの実施形態では、電源管理部は、充電式電池又は電池パックを含む。これには、ニッケル水素電池、リチウムイオン若しくはリチウムポリマー電池、ニッケルカドミウム電池又は任意の他の適切な充電式若しくは非充電式電池を含み得る。電池は、1~5アンペア、好ましくは少なくとも3アンペアのサージ電流などの高電流容量を好ましくは提供し、そのような高電流を1、2、3、4、5分間以上にわたって送達する能力を有する。いくつかの実施形態では、内部電池は、3、4、5、6、7、8、9、10又は12ボルト以上を送達する。電池の容量は、設計荷重によって決定され、例えば少なくとも200、300、400、500、1000、2000、2500mA時以上の容量を有する電池パックであり得る。所望の電圧は、低電圧電池を直列に接続して所望の電圧を達成することにより、又はDC:DCコンバータを使用して低電圧を所望の電圧に昇圧させることにより実現され得る。いくつかの実施形態では、電池は、エネルギー変換器の電源供給部に必要な電圧よりも低い電圧を供給し、エネルギー変換器に対して電圧が昇圧される一方、低電圧、例えば5V若しくは3.3Vはコントローラ212又は別のディスクリート回路に供給される。
【0158】
1つの好適な実施形態では、エネルギー変換器は、LED Engin,Inc.によって作成されているものに類似する高出力LEDであり得、具体的には、エネルギー変換器は、最大照明のために約12~14Vの順方向電圧及び最大2.4アンペアを要する、3セットの3列の並列エミッタとして配置された非標準構成の9つの緑色エミッタを有して構成されるLZ9であり得る。この実施形態では、750mA時の容量を有し、7.2Vの始動電圧を提供する3つのRCR123 LiFePO4セル又は類似物を直列に用い得る。LEDを駆動するために必要な電圧を提供するために、電圧を約2倍昇圧させるDC-DCコンバータ回路が含まれる。
【0159】
電力管理機能は、充電器、電池状態モニタ及び/又は温度モニタを含み得る。これらの機能は、別個の回路によって実施され得るか、又は全体的に若しくは部分的にコントローラ212に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、電力管理部は、外部電源供給部への誘導結合によって給電される充電器を含み、これにより眼治療デバイス200を密閉することを可能にでき、容易な清掃を可能にし、水分又は埃の侵入を防ぐ。いくつかの実施形態では、誘導結合は、充電クレードル又は電気的に分離された主電源接続を使用し得る。誘導結合は、非常に近接した(1つがクレードル内にあり、1つがデバイス内にある)2つの誘導コイル又は同じ周波数で共振するように調整された2つのコイルを含み得る(共振誘導結合又は電気力学的誘導)。
【0160】
熱管理も多くの好適な実施形態の重要な要素であり、いくつかの場合、LED又はLEDアレイなどのエネルギー変換器からの熱の除去を含む。LEDの場合、接合部温度を摂氏135度などの所定閾値未満に維持することが重要である。他の変換器も同様に、最高許容構成要素温度を有し、適切な熱管理は、これらの構成要素を許容温度内に維持するのに役立つ。例えば、エネルギー変換器要素、ファン、放熱器、冷却液等に熱的に結合されたヒートシンクが用いられ得る。好適な実施形態では、眼治療デバイス200は、密閉されており、図9に示すような熱管理構造体220が過剰な熱を眼治療デバイス200の外部表面に誘導する。これにより、通気口のない密閉されたデバイスを可能にする。他の実施形態では、強制空冷(図示又は図8のように)又は液体冷却式放熱器などによってデバイスから熱を除去するために、デバイス内部の熱管理部から冷却液が誘導される。
【0161】
更なる技術の態様では、眼治療デバイス200は、デバイスを較正するのに有用な要素を含み得、広範な眼瞼の厚さにわたって標的組織に所望の量の加熱を提供する。これは、重要である。なぜなら、こうした較正がなければ、治療中に標的組織部位近傍の温度が測定されない限り、標的組織部位(例えば、マイボーム腺及び隣接組織)で生じる加熱の量が変化する可能性があるからである。前述したように、標的組織部位の監視は、温度センサが備えられた強膜シールド等の使用によって実現され得る。しかしながら、デバイスの使用者にとって、デバイスを使用する度に強膜シールドを挿入することは不便な場合がある。したがって、各デバイスを個人の特定の解剖学的構造に合わせて較正すると有用となり得る。これを実現するために、デバイスは、最初に、好ましくは眼のケアの専門家のオフィス環境で強膜シールドを外部モニタ及び較正器と併せて使用することによって較正され得る。
【0162】
例えば、図13を参照すると、眼治療デバイス200が眼瞼にエネルギーを印加する際、強膜シールド300は、外部モニタ及び較正器500に(有線接続又は無線接続のいずれかを介して)温度データを送信する。外部モニタ及び較正器500は、経時的な温度上昇率を観測し、それにより患者の眼瞼の加熱プロファイルを特徴付ける。その後、外部モニタ及び較正器500は、そのデータを用いて、標的組織を所望の温度範囲に加熱するように眼治療デバイス200をプログラムすることができる。単純な実施形態では、外部モニタ及び較正器500は、エネルギー変換器をオンにし、標的組織が所望の温度に到達するために必要な時間量を測定し、その後、エネルギー変換器をオフにし、その同じ時間量にわたりエネルギーを印加するように眼治療デバイス200をプログラムする。代わりに、眼治療デバイス200は、標的組織を好ましい時間内で所望の温度に加熱するために、増加又は減少させた量のエネルギーを提供するようにプログラムされ得る。ほとんどの個人では、上眼瞼及び下眼瞼並びに右眼及び左眼の眼瞼の厚さは、同様であるが、外部モニタ及び較正器は、各眼瞼の適切な加熱を確実にするために、それぞれ個々の眼瞼に特定のエネルギー量を印加するようにデバイスを別々に測定し、別々にプログラムし得ることが理解されるであろう。更に、エネルギー変換器及び関連回路を実装するために用いられる構成要素の性能にばらつきがある可能性があり、適切な較正がなければ、あるデバイスは、別のデバイスよりも大きい又は小さいエネルギーを生成する可能性があることが理解されるであろう。これに対する解決策の1つは、いずれの眼治療デバイス200も所与のコマンドレベルに対して同量のエネルギーを出力するように、コントローラからの所与のコマンドレベルに対する実際のエネルギー出力を工場で測定し、コントローラ内に較正表を組み込むことである。代わりに及び更に、こうしたばらつきは、外部モニタ及び較正器500を用いて、上述の手順によって補償することもできる。眼治療デバイス200の最終目標は、標的組織を所望の温度まで加熱することであり、各眼治療デバイス200は、各特定の患者(及び任意選択的に各特定の眼瞼)に対してこれを行うようにプログラムされている(構成要素のばらつきを問わず)。
【0163】
ここで、図14A及び図14Bを参照すると、強膜シールド300の一実施形態では、温度変換器310のアレイがシールドに内蔵されている。シールドが実際には眼をエネルギーから遮蔽するために使用されず、代わりに温度を測定するために使用されるこの用途において、シールド300は、エネルギー変換器から放出されるエネルギーに対して実質的に透明な材料で作製され得る。特定の例として、エネルギー変換器が光源である場合、シールド300は、エネルギー変換器によって放出される波長の光を通過させるクリアな材料で作製され得る。好ましくは、シールド300は、患者の不快感を最低限にして眼瞼下に快適に置くことができ、したがって組織の加熱に対して及ぼす影響が最低限であるように可能な限り薄く且つしなやかでもあり、鋭利な特徴がない。図14A及び図14Bに示される実施形態では、6つの温度センサ310のアレイがシールド300の前面302上にあり、センサのアレイが背面304上にある一例が示される。この構成により、前方を向いた312は、マイボーム腺がある眼瞼の内側表面上の組織の温度をより直接的に測定する一方、後方を向いたセンサ314が、最も敏感な眼組織が名目上位置する中心眼球軸の正中に沿って眼の表面の温度をより直接的に測定することを可能にする。温度センサは、シールド300に内蔵されたディスクリート要素(非常に細いワイヤから作成された熱電対又は小型のサーミスタなど)であり得るか、又は温度センサは、シールド300の中間層上に適切な金属の薄膜を堆積させることにより形成された熱電対であり得る。いくつかの実施形態では、シールド300に好ましい種類の材料は、シリコーン、ポリウレタン及びコンタクトレンズに用いられているものと同様の様々なヒドロゲルなどの軟質で可撓性のある生体適合性材料である。
【0164】
上記の実施形態は、外部モニタ及び較正器500を有する構成について説明するが、眼治療デバイス200自体が同じ性能を組み込むことができ、この場合、強膜シールド300は、温度データを眼治療デバイス200に直接伝え、眼治療デバイス200は、その特定の患者(及び任意選択的に個々の眼及び眼瞼)に対する適正な治療プロファイルを提供するように、それ自体をプログラムすることが理解されるであろう。このような実施形態では、眼治療デバイス200は、高性能なユーザインタフェース270を有し、高性能なユーザインタフェース270は、臨床医が、較正シーケンスを実行するように眼治療デバイス200に命令すること及び任意選択的にいずれの眼及び/又は眼瞼が較正されるかについて眼治療デバイス200に指示することを可能にする。眼治療デバイス200が、個々に較正された治療を各眼又は眼瞼に提供するように較正される場合、眼治療デバイス200は、(一連の光若しくは英数字又はグラフィカルディスプレイにより)次にいずれの眼又は眼瞼が治療されるかを患者に示すことができる必要があることが理解されたい。
【0165】
代わりに又は更に、較正要素は、眼治療デバイス200のエネルギー出力を測定するために使用され得る。エネルギー変換器が光源である実施形態について、較正要素は、例えば、光束、ルーメン又は放射束を測定するための露出計であり得る。エネルギー源が超音波変換器である実施形態について、較正要素は、超音波エネルギーメータであり得る。較正要素は、眼治療デバイス200が許容限度内で動作しているか否かを決定するために使用され得、また眼治療デバイス200を所望の性能範囲に戻すための特定のパラメータ(エネルギー準位又は治療時間など)の調整を可能にするためのデータを提供し得る。較正要素は、デバイスが許容性能範囲内で動作し続けるように眼治療デバイス200に最新の較正データを再プログラムするために、眼治療デバイス200と直接的に又は眼治療デバイス200と(例えば、PCを介して)間接的にも通信し得ることが理解されるであろう。
【0166】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、院内デバイスについて、温度表示機能又はダッシュボード218を更に含み得る。温度表示機能又はダッシュボード218は、瞼内側の温度及び瞼外側の温度を含み得る。温度表示機能は、絶対温度又は最高温度に対する相対温度のみを表示し得る。例えば、温度は、棒グラフ形式において又は1つ以上のライトによって表示され得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、治療の態様を記録する(例えば、時間、日付、使用パラメータ、温度、写真、映像等)ように構成されたデータロガー214を更に含み得る。いくつかの実施形態では、臨床医が、いくつのマイボーム腺(MG)が健康であるか、閉塞しているか、萎縮しているか等の口頭観察記録を時間、日付及び患者の氏名と共に記録することができるように、眼治療デバイス200は、ボイスレコーダ213を更に含み得る。これにより、臨床医が手でノートを取る必要なく及び/又は助手を伴う必要なく処置を実行することを可能にする。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、データ、音声記録、カメラ画像又は映像クリップをダウンロードするために外部PC、タブレット又はスマートフォンと接続するように構成された通信手段を更に含み得る。
【0168】
図15A図15Dは、眼瞼14をMGD、眼瞼炎及び他の病態に関して治療するために眼球20に対して配置される眼治療デバイス200の別の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、図3Aの実施形態と同様に、眼治療デバイス200は、眼瞼を圧縮している間に眼瞼の内表面及び/又は外表面を加熱するように構成されている。眼治療デバイス200からの熱が眼系10、特にマイボーム腺18などの治療組織に伝達されるにつれて、熱により、マイボーム腺分泌脂を軟化させることができ、それによりマッサージ又は眼の運動中にマイボーム腺分泌脂をより容易に圧出することを可能にする。眼治療デバイス200は、眼治療デバイス200の動作時に有用な追加的な構成要素と共に、図2A図2H及び図3Aに示されるモジュールの構成を含み得る。
【0169】
眼治療デバイス200は、ハウジング202を含み得る。ハウジング202は、近位部201と、取り外し可能又は消費可能部分260と結合された遠位部203とを有する。ハウジング202は、電源モジュール110と、コントローラ212と、エネルギー変換器モジュール120と、エネルギー伝送面140とを含み得る。いくつかの実施形態のエネルギー変換器モジュール120は、LEDエミッタ207、熱管理構造体220及びエネルギー変換器モジュールドライバ209の1つ以上で形成されたLEDデバイスを含み得る。エネルギー伝送面140及びLEDエミッタ207は、ハウジング202の遠位部203の近傍に配置されており、アクチュエータ182を用いてエネルギー変換器モジュール120と共に移動経路145に沿って摺動可能な関係にあり、これによりエネルギー伝送面140がLEDエミッタ207と共に同時に移動することを可能にする。
【0170】
ハウジング202は、診断及び治療中の眼瞼辺縁の監視を強化するための可視化手段160と、内表面温度及び/又は外表面温度などの眼瞼の各種の温度を示すディスプレイ又はダッシュボード218と、データロガー214及び/又はボイスレコーダ213と、消費可能物の種類を特定し、消費可能物が適切に位置合わせされていることを確実にし、且つ/又は消費可能物の再使用を防ぐために、デバイスと消費可能回路との間で通信するための回路とを更に含み得る。
【0171】
上述したように、消費可能部分260は、眼系10(図1に示されるような)の敏感な解剖学的構造を覆うために眼瞼12、14と眼球20との間に配置され得る強膜シールド300を含み得る。強膜シールド300は、1つ以上の支持アーム262によってハウジング202に結合され得、1つ以上の支持アーム262は、ワイヤがアーム上又はアーム内に配置されており、特定の実施形態では、支持アーム262の構造的部分は、ワイヤ又はワイヤアレイ420の伝導性部分を取り囲むか又はそうでなければ通す絶縁材料から作製されている。
【0172】
眼治療デバイス200は、眼治療デバイス200の各種の構成要素に電力を供給するための電源モジュール110を含むことができ、電源モジュール110は、構成要素のいくつか又は全てに電気的に接続され得る。コントローラ212を有する特定の実施形態では、コントローラ212は、LEDエミッタ207から光を放出するために、(例えば、ボタン、スイッチ、タッチスクリーンなどのユーザインタフェースデバイス270、スマートフォンなどの別のモジュール又はデバイスからの音声コマンドを介して)使用者から入力命令を受け取ることができる。
【0173】
LEDエミッタ207は、1つの種類のエネルギー変換器モジュール120の一部であり、所望の治療に必要な適切な波長の光を放出するように構成され得る。治療としては、以下:内表面及び/若しくは外表面、眼瞼辺縁並びに/又は眼瞼の裏のマイボーム腺を照明することによる眼瞼12、14の診断;眼系10の標的組織部位(例えば、眼瞼12、14の裏のマイボーム腺)の加熱;並びに眼系10内の細菌を死滅させるための抗菌治療の1つ以上が挙げられ得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、望ましくない光子エネルギー(IR又は青色/紫色光など)が徹照要素から反射されて臨床医に戻ることを防ぐために、追加的な遮蔽要素258が使用され得る。
【0175】
本明細書に開示される実施形態の多くの特徴は、臨床医が熱の印加及び圧縮中に眼瞼辺縁を観察し得ることである。辺縁を観察することにより、臨床医は、内容物が存在する場合、どのような内容物がマイボーム管から絞り出されているかを見ることができ、それにより閉塞したマイボーム腺の詰まりを最適に取るために、治療される眼瞼に印加される加熱及び圧縮の量を調整することができる。例として、臨床医は、治療の開始時、治療される眼瞼の部分の特定のマイボーム腺が透明脂性分泌物(これは、正常な腺を示唆する)を有することを観察し得る。これに対し、いくつかの腺は、濁った脂性分泌物又は少量の濃い歯磨き粉状の脂質(これらは、両方とも機能不全の腺を示唆する)を分泌する場合がある。臨床医が治療される眼瞼の部分に熱及び圧縮を加える際、機能不全の腺を更に観察すると、濁った又は濃い分泌物が透明に変化し、分泌物の量が突如増加し得ることが示される場合がある。これは、1つ以上の腺の詰まりが取れたことを示す。こうした時点において、治療により閉塞した腺の詰まりを取ることに成功したため、臨床医は、その領域に印加する熱及び圧縮を減少させ得る。臨床医は、この連続的な視覚的フィードバックなしに、標準的な治療計画の適用に任せる可能性があるが、これは、特定の患者の特定の閉塞した腺に対して刺激が弱すぎるか又は強すぎる場合がある。
【0176】
参考として、少なくとも図2D図2E図2F図2G図2H図3A図3B図15A図15B及び図15Dは、治療中に視覚的に監視するために眼瞼辺縁が臨床医に対して露出される実施形態の例をそれぞれ示す。臨床医は、治療される眼の前方に位置する。
【0177】
ここで、図16Aを参照すると、エネルギー伝送面140、眼瞼辺縁14aを有する眼瞼14、強膜シールド300及び光路175を有する可視化手段160の側断面図が示される。この実施形態は、像変換部155がないこと以外、図2Eに示されるものと同じである。図16Aの実施形態では、可視化手段は、眼瞼辺縁14a上、より具体的にはマイボーム管19上に直接集束される。
【0178】
図16Bは、眼瞼14がエネルギー伝送面140と強膜シールド300との間で圧縮され、臨床医が前方から眼瞼辺縁14aを視認できる例を示す、図16Aと同じ実施形態の正面斜視図である。この実施形態は、像変換部155がなければ、図2Fに示されるものと同じである。
【0179】
図16Cは、支持アーム262を付加した、図16Aに示されるものと類似の実施形態である。支持アーム262は、図3A図3B図7H図7G及び図15Bに示されるものと同じである。
【0180】
図16Dは、強膜シールド300に結合された支持アーム262の対を示す、図16Cに示される実施形態の正面斜視図である。例として、しかし限定されることなく、眼瞼辺縁14aは、露出しており、支持アーム262の下縁に隣接している。図16Eは、図16Dと同じであるが、太い矩形点線によって強調される眼瞼辺縁14aを観察するためのアパーチャ440を有する。図16Fは、図16D及び図16Eの実施形態の頂面図であり、眼瞼を強膜シールド300に対して圧縮しているエネルギー伝送面140を示し、眼瞼辺縁14が視覚的監視のために露出している。図16Gは、図16Fと同じであるが、太い矩形点線によって強調される眼瞼辺縁14aを観察するためのアパーチャ440を有する。一実施形態では、アーム間の距離は、0.2インチ~1.2インチである。一実施形態では、2つのアームと背板との間の取付点によって画定される線と、2つのアームと圧縮要素との間の取付点によって画定される線との間の距離は、少なくとも0.04インチである。
【0181】
図16Hは、特定の好適な実施形態におけるアパーチャ440の境界部を更に画定する、図16Cの実施形態のより詳細な側断面図である。図において、線1は、アパーチャの下(水平)境界部を示し、線2は、上(垂直)境界部を画定する。角度1は、線1と線2との間の角度であり、理論上では約90度であるが、頬骨及び眉構造の解剖学的構造のばらつきにより、これらの境界部のばらつきが生じる可能性がある。図16Iは、アパーチャ440の好ましい下境界部が線4として示され、アパーチャ440の好ましい上境界部が線6として示される、図16Hの実施形態をより詳細に示すものである。角度2は、水平線3と線4との間の角度であり、好ましくは約5~約20度である一方、角度4は、線3と線6との間であり、好ましくは約60~80度である。角度3は、線3と線5との間の角度であり、アパーチャ440を通した眼瞼辺縁14aの観察に好ましい角度であり、好ましくは約25~50度である。
【0182】
図16Jは、エネルギー伝送面140が図16Hに示されるものよりも短く、それにより眼瞼辺縁14aに隣接する眼瞼14の上部をより多く露出させること以外、16Hに類似する実施形態を示す。この実施形態では、アパーチャ440は、より大きいが、線7及び線8によって画定される外境界部は、図16Hの線1及び線2によって画定されるものに平行であり、したがって線7と線8との間の角度5も約90度である。
【0183】
図16Kは、強膜シールド300が上眼瞼及び下眼瞼の両方の後ろに延び、上眼瞼12だけでなく、下眼瞼14に隣接するエネルギー伝送面140の部分が存在すること以外、16Jに示される実施形態に類似する。この実施形態では、下眼瞼だけでなく、上眼瞼及び下眼瞼の両方が加熱及び圧縮される。示されるように、支持アーム262は、強膜シールド300に連結されており、エネルギー伝送面140は、アパーチャ440を通した上眼瞼辺縁及び下眼瞼辺縁の両方の観察を可能にするように構成されている。線9及び線10は、アパーチャ440のおおよその下限及び上限を示し、それにより角度6を画定し、角度6は、好ましくは、約10~150度、より好ましくは約20~120度である。本明細書に開示される実施形態に対する多くの修正形態が可能であり、そのいくつかでは、光路を変更する場合があり、したがってアパーチャに関連する角度が変化する場合があることが理解されるであろう。アパーチャを通して眼瞼辺縁の像を臨床医に対して反射、案内又は変換する他の手段を用いることができるように、例えば図2Eに示されるものなどの像変換部を用い得る。代わりに、アパーチャは、構造要素内の光学的透過性のある窓であり得る。例えば、図16Kでは、エネルギー伝送面140は、治療される上眼瞼及び下眼瞼の部分の両方を完全に覆うことができ、眼瞼辺縁の近傍に開口部がある代わりに、エネルギー伝送面140の少なくともあるセグメントが、臨床医が眼瞼辺縁を観察できるように十分に透明であり得る。更に、イメージセンサ、光ファイバー束又はライトパイプを眼瞼辺縁に隣接させて又は眼瞼辺縁に向けて取り付けることができ、眼瞼辺縁の像がエネルギー伝送面140の外の地点に電子的又は光学的に伝送され得る。これら代替的実施形態及び当業者の明らかなその他は、全て本開示の範囲内に含まれる。
【0184】
図16Lは、図16Kの実施形態を正面斜視図で示す。示されるように、2つの支持アーム262が強膜シールド300に連結されており、上眼瞼12及び下眼瞼14に隣接する2つのエネルギー伝送面140が示されている。示されるように、上眼瞼辺縁12a及び下眼瞼辺縁14aがそれぞれ見え、マイボーム管19も見える。図16Mは、図16Lと同じであり、アパーチャ440は、示される太い矩形点線によって概ね画定される。
【0185】
図16Nは、図16Lの実施形態に類似するが、1つの支持アーム262を有する。図16Oは、図16Nの実施形態と同じであるが、上部エネルギー伝送面140と下部エネルギー伝送面140との間並びに中央支持アーム262の右側及び左側の間隙によって画定される2つのアパーチャ440を強調する。1つ若しくは複数の支持アームの他の組み合わせ又は1つ若しくは複数のアパーチャを有する他の構造体が当業者に考えられ得る。
【0186】
図16A図16Oは、治療される眼瞼の部分への熱の印加及び圧縮中、一方又は両方の眼瞼辺縁を観察することを可能にするアパーチャ440を画定する、エネルギー伝送面140、強膜シールド300及び支持アーム262の固有の構成を示すことが理解されるであろう。多くの他の構成も可能であり、革新的概念を示すために、本明細書にはいくつかの例示的実施形態のみを記載している。
【0187】
ここで、図17Aを参照すると、図3Aに示される実施形態の一部分に類似するアセンブリが示される。エネルギー変換器モジュール120は、エネルギー導波管モジュール130の近位端に隣接して配置されている。エネルギー導波管モジュール130の遠位端は、フェイスグラス284(図17Cに示される)と、単回使用のカバー要素部品147a及び単回使用のカバー要素部品147bとで構成されたエネルギー伝送面140に隣接している。部品147bは、眼瞼14に当接する。図17Bは、2つの赤外LED120aと4つのライム放出LED120bとからなり、これらが全て基板上に取り付けられているエネルギー変換器モジュール120の正面図である。図17Cは、エネルギー導波管モジュール130の内側表面のコールアウト130aを含む、図17A図17Bに記載されているものと同じ構成要素の分解図である。いくつかの実施形態では、エネルギー導波管モジュール130は、エネルギー変換器モジュール120と固定関係にあり得るが、他の実施形態では、エネルギー導波管モジュール130は、エネルギー変換器モジュール120に対して摺動し得、その他では、エネルギー変換器モジュール120は、130に対して摺動し得る。好適な実施形態では、エネルギー変換器モジュール120は、固定されており、エネルギー導波管モジュール130は、エネルギー変換器モジュール120の周りで往復して摺動する。このような好適な実施形態では、エネルギー導波管モジュール130を完全に前進させると、エネルギー導波管モジュール130は、エネルギー伝送面140を眼瞼14(又は上眼瞼を治療している場合には眼瞼12)に押し付ける。
【0188】
エネルギー変換器モジュール120からエネルギー伝送面140に光エネルギーを伝送する効率を最大化するために、エネルギー導波管モジュール130の内表面は、エネルギー変換器モジュール120によって放出される波長に対して高反射性の材料でコーティング又はライニングされ得る。例として、エネルギー導波管モジュール130の内表面は、保護された銀材料でコーティングされ得るか、又はFusion OptixによるWRF-150などのフィルム若しくは3MによるESRフィルムでライニングされ得る。これらは、全て500nm~900nmの波長の97%超の反射を提供するように設計されている。
【0189】
ある実施形態において、単回使用のカバー要素部品147aは、500~880nm範囲の光エネルギーを透過するプラスチック又はガラスから製作され得る。アクリルは、単回使用のカバー要素部品147aに許容可能な材料の一例である。単回使用のカバー要素部品147bは、眼瞼の表面に押し付けるための柔らかい表面を提供するために、シリコーンなどの低デュロメータ材料であることが好ましい。大半のシリコーンは、赤外エネルギーに対して完全には透明でないため、エネルギー損失を最小限にするために、単回使用のカバー要素147bの厚さを約0.02~0.06インチの範囲内に維持することが好ましい。
【0190】
図17Dは、モジュールを完全に前進させた(その遠位端は、赤外LEDレンズの最高点から約0.5インチにある)ときに眼瞼14を透過する赤外エネルギーの分布を示す。左上に示されるグラフを参照すると、より暗い領域は、最大放射照度(ワット/平方ミリメートル)のエリアであり、より明るい領域は、最小放射照度である。示されるように、最大放射照度は、中央の近傍で生じ、放射照度は、縁に向かって急激に低下する。眼瞼組織を一方の縁から他方の縁まで均一に加熱することが望ましいため、X軸にわたる非対称分布は、理想的ではない。マイボーム腺内で起こる閉塞の大半は、開口部又は管の近傍であるため、Y軸方向においてある程度の非対称性が望ましい。下眼瞼が治療され、エネルギー伝送面140の上縁が下眼瞼の上縁と位置合わせされる場合、眼瞼の全体を加温しながら、放射照度プロファイル(したがって組織加熱プロファイル)を上縁の方に偏倚させることが好ましい。
【0191】
赤外線の放射照度の分布を向上させるために、部分反射性コーティング196は、図17Eに示すように、部品である単回使用のカバー要素部品147aの表面に適用され得る。一実施形態では、このコーティングは、アポダイゼーションコーティングであり、820~880nm範囲のエネルギーの約33%を透過し、約67%を反射する。図17Fは、コーティングパターンのより詳細な図を示し、2つのゾーン196a及びゾーン196bが示される。図17Gは、アポダイゼーションコーティングが用いられている場合に眼瞼を通して得られる放射照度の分布を示す。示されるように、最大放射照度ゾーンは、大幅に広くなり、上縁の方に歪み、上縁に沿った右端及び左端に向けて放射照度の低下が大幅に少なくなっている。したがって、(下眼瞼を治療する場合)眼瞼の上半分に沿って組織の優先加熱が存在し、眼瞼にわたる左から右の加熱は、より均一である。
【0192】
アポダイゼーションコーティング196がライム色領域(500~600nm)の波長も反射する場合、眼瞼の所望の部分に到達するライム色光は、非常にわずかであり、したがって、ライム色光エネルギーの発色団の吸収による眼瞼組織の加熱は、少なくなる。これに対処するために、一実施形態では、コーティング領域196aについて、唯一赤外にのみ部分反射性であり(820~880nmについて67%が反射性、33%が透過性、500~600nmのライム色について90%超が透過性)、コーティング領域196bついて、赤外(820~880nm)及びライム色(500~600nm)の両方に部分反射性(67%が反射性、33%が透過性)であることが好ましい。
【0193】
図17Hは、上述のようなアポダイゼーションコーティングを有する(ゾーン196aは、ライム色を透過し、赤外を部分反射し、ゾーン196bは、両方を部分反射する)一実施形態における眼瞼の表面上のライム色放射照度分布プロットを示す。示されるように、放射照度パターンは、眼瞼の上半分に優先的に歪んでおり、右端から左端まで良好に分布し、放射照度の顕著な低下はない。
【0194】
本明細書に開示されるコーティング種類及び堆積パターンの例は、単なる実例であり、別の構成が所望のスペクトルにおけるより均一な放射照度の分布をもたらす場合があることが理解されるであろう。例えば、眼瞼の加熱パターンを形成する別の方法は、(図3Bに示すような)強膜シールド300のエネルギー吸収面302の堆積パターン又は特性を変更することである。例えば、放射照度パターンが図17Dに示すようなものである場合、強膜シールドの加熱を均一にするために、強膜シールド300の表面の右部分及び左部分を強膜シールド300の中央部分に比べてより高密度にエネルギー吸収材料でコーティングし得る。更に、加熱を眼瞼の上部分に向けて歪ませるために、強膜シールドの表面の上部分をエネルギー吸収材料でより高密度にコーティングすることができる。エネルギー伝送経路内の要素上のコーティングの組み合わせ並びに強膜シールドの表面のエネルギー反射特性及び吸収特性の変更は、全て本開示の範囲内に含まれる。
【0195】
図18A及び図18Bは、眼治療デバイス200の別の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、眼のケアの専門家(ECP)による使用のために構成され得る。例えば、眼治療デバイス200は、ECPが眼瞼12、14(図18A図18Bには図示せず)に局所的な熱及び圧力を加えることを可能にし得る。いくつかの実施形態では、システムは、眼瞼12、14の後ろに配置される滅菌使い捨て構成要素260に結合されるように構成された手持式器具1800を含み得る。例えば、滅菌使い捨て構成要素260は、単回使用、取り外し可能又は消費可能であり得る。いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、手持式器具1800に着脱可能に取り付けることができ、手持式器具1800は、使い捨て部分解放ボタン1805を含み得る。いくつかの実施形態では、手持式器具1800は、電源ボタン1807も含む。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200デバイスは、ECPが内蔵カメラなどの可視化デバイス又は可視化手段160を介して眼瞼辺縁を観察することを可能にし得る。その後、眼治療デバイス200は、開口部を遮断しているマイボーム腺分泌脂を融解させるなどのために、眼瞼組織を目標温度範囲まで加温することができる。実施形態では、目標温度範囲は、約40℃~約42℃である。眼治療デバイス200は、融解したマイボーム腺分泌脂を、開口部を通して圧出するなどのために眼瞼12、14に対して圧縮を更に加えることができる。いくつかの実施形態では、加えられる熱及び圧力の量は、常時、ECPの直接制御下にあり、ECPは、治療中に腺の応答及び患者の快適性を監視することができる。
【0196】
図18A図18Bに示すように、眼治療デバイス200は、電子式手持式器具1800を含み得る。手持式器具1800は、例えば、眼瞼12、14に熱及び圧力を加えるための滅菌使い捨て構成要素260と共に使用され得る。眼治療デバイス200は、8’’(長さ)×1 1/2’’(幅)×2 1/4’’(高さ)の概算寸法を有し得る。眼治療デバイス200は、本開示の範囲から逸脱することなく他の寸法を有し得る。いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、少なくとも2つのラッチ1801によって手持式器具1800に固定され得る。少なくとも2つのラッチ1801は、少なくとも1つの取付タブ2203(図示せず)を捕捉することができる。滅菌使い捨て構成要素260は、使い捨て部分解放ボタン1805を押すことにより手持式器具1800から解放され得る。眼治療デバイス200は、内側眼瞼パッド300及び外側眼瞼パッド147内の温度センサ310を読み取る電子回路を含み得る。電子回路は、内側及び外側眼瞼温度を表す温度を測定するために使用され得る。加温は、手持式器具1800内のLEDから放出される光エネルギーを使用して実施され得る。手持式器具1800内の機構は、圧縮制御ボタン1822に加えられる指圧力を用いて外側眼瞼パッド147の動きを制御することにより、オペレータが眼瞼に圧力を加えることを可能にし得る。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、治療中など、手持式器具1800を操作するために使用される情報を表示するように構成されたグラフィック画面又はディスプレイ244も含み得る。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、治療中にオペレータが眼瞼辺縁を観察することを可能にするように構成された可視化デバイス又は可視化手段160を含み得る。
【0197】
眼瞼温度は、外側眼瞼パッド147内の2つのセンサ及び内側眼瞼パッド300内の2つのセンサを含む、滅菌使い捨て構成要素260内のセンサ310を使用して測定され得る。例えば、これらのセンサは、同じく一連のコンタクトパッドを有し得るフレキシブルプリント回路基板(PCB)上に取り付けられ得る。滅菌使い捨て構成要素260が手持式器具1800に取り付けられると、シュラウド2100(図示せず)の下に取り付けられたばね荷重式ピンは、滅菌使い捨て構成要素260内の外側眼瞼パッド140及び内側眼瞼パッド300に電気接続することができる。いくつかの実施形態では、手持式器具1800内の電子回路がセンサを読み取り、温度を迅速に、例えば1秒間に20回超決定することができる。温度測定システムの精度は、±1℃であり得る。いくつかの実施形態では、電子回路は、センサが適切に動作することを確実にするために、セルフテストチェックを実施する。例えば、電子回路が故障を検出した場合、エラーコードが表示され得、熱源は、無効化され得る。
【0198】
眼治療デバイス200のいくつかの実施形態では、眼瞼に加えられる圧力は、ECPにより、例えばECPが自身の母指又は指を使用して圧縮制御ボタン1822を押下することによって制御され得る。圧縮制御ボタン1822のこの押下により、反対側にある内側眼瞼パッド300に向けて外側眼瞼パッド147を移動させることができる。いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260が手持式器具1800に取り付けられると、外側眼瞼パッド147は、シュラウド2100の前部に自動的に取り付けられる。シュラウド2100は、可動であり得、加温用LEDを内包し、眼瞼に向けて光を案内する構成要素であり得る。いくつかの実施形態では、圧縮制御ボタン1822は、シュラウド2100に接続されており、それにより臨床医が母指又は指の力を使用して外側眼瞼パッド147を前進させることを可能にする。例えば、加えられた力は、圧縮制御ボタン1822の機構内に取り付けられたセンサによって測定することができ、1~9の相対数としてディスプレイ画面244上に表示され得る。表示された値は、臨床医のための相対的な基準値であり得る。加えられる実際の力は、治療される眼瞼の状態及び応答並びに患者の感受性を考慮した臨床的判断によって決定されるべきである。
【0199】
いくつかの実施形態では、眼瞼組織は、手持式器具1800内のLEDによって生成され、クリア外側眼瞼パッド300を透過する光エネルギーによって加温され得る。LEDは、シュラウド2100の開端部にあるクリア窓の後ろに位置し得る。例えば、2つの光の波長:ライムグリーン及び近赤外が使用され得る。眼瞼中の発色団は、光エネルギーを吸収することができ、それにより周囲組織を加熱することができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、圧縮制御ボタン1822の頂面は、ヒータ制御スイッチ1802を有する。ヒータ制御スイッチ1802は、オペレータの母指又は人差指によって前方に摺動させることができ、それにより加温用LEDをオンにする。このヒータ制御スイッチ1802は、ヒータ制御スイッチ1802が解放されるか又はオペレータの母指若しくは人差指が緩められると、ヒータ制御スイッチ1802がその通常の「オフ」位置に戻るように、ばね復帰機能を有し得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、光への意図しない暴露から眼を保護するように設計され得る。例えば、内側眼瞼パッド300及び眼シールドは、光211が治療中に眼に直接照射されることを阻止することができる。いくつかの実施形態では、手持式器具1800は、有効な滅菌使い捨て構成要素260が手持式器具1800に取り付けられていない場合又は外側眼瞼パッド147が内側眼瞼パッド300から6mm超にある場合、LEDの加温を無効化することができる。
【0202】
図19は、外側眼瞼パッド147として使用される前板又は力パッドの一例を示す。外側眼瞼パッド147は、眼治療デバイス200と患者の眼瞼12、14との間にバリアを提供するなどのために、眼治療デバイス200と患者の眼瞼12、14との間に置かれ得る。いくつかの実施形態では、外側眼瞼パッド147は、窓として機能し得る透明外側眼瞼パッド147であり得る。この窓を通して、エネルギーは、眼瞼12、14に送達され得る。例えば、透明外側眼瞼パッド147は、所望の構造的性質及び光学的性質を得るために、ガラス、パイレックス(登録商標)、石英、マイカ若しくはポリカーボネートなどのポリマーなどの任意の適切な材料又は他の光学的に透明な材料或いはこれらの組み合わせから製作され得る。実施形態では、外側眼瞼パッド147は、患者の眼瞼12、14に直接接触するように構成され得る。他の実施形態では、外側眼瞼パッド147は、治療中、眼瞼から例えば0.5mm~12mmなど、眼瞼12、14からわずかな距離を空けるように構成され得る。好ましくは、外側眼瞼パッド147の外部表面は、滑らかであり、清掃が容易であるように構成されている。例えば、透明外側眼瞼パッド147を眼瞼12、14に押し付けることができるようにするために、透明外側眼瞼パッド147は、エネルギー変換器モジュール120、又は強膜シールド300、又はハウジング202のいずれかに対し、移動経路145に沿って摺動可能な関係にあり得る。眼瞼12、14に対する透明外側眼瞼パッド147の圧力は、治療及び/又は撮像中の光子エネルギーの漏出を最小限にするように、且つ必要に応じてマイボーム腺の評価及び/又は圧出中に眼瞼12、14に圧縮力を加えるように機能し得る。
【0203】
図19は、外側眼瞼に向けて配置された温度センサ310のセットを含む外側眼瞼パッド147の一実施形態を示す。いくつかの実施形態では、温度センサ310のセットは、外側眼瞼パッド147に内蔵又は配置されたディスクリート要素(例えば、非常に細いワイヤから作成された熱電対、小型のサーミスタ等)であり得る。更に及び/又は代わりに、温度センサ310のセットは、外側眼瞼パッド147の中間層上に適切な金属の薄膜を堆積させることにより形成された熱電対であり得る。いくつかの実施形態では、外側眼瞼パッド147に好ましい種類の材料は、シリコーン、ポリウレタン及びコンタクトレンズに用いられているものと同様の様々なヒドロゲルなどの軟質で可撓性のある生体適合性材料である。
【0204】
実施形態では、外側眼瞼パッド147は、温度センサ310のセットのための空隙を作成するなどのために眼瞼対向表面上に複数の隆起も含み得る。
【0205】
温度センサ310のセットは、患者の眼瞼12、14に対する眼治療デバイス200の位置を検知するように構成され得る。温度センサ310のセットは、デバイス内に眼瞼を配置する前に室温を測定する温度センサであり得る。温度センサ310のセットが眼瞼の皮膚の近傍に配置されると、温度センサ310のセットは、体温に近い値を記録し、それにより適切な配置を確認する。温度センサ310のセットが、1つのセンサが室温を示し、他のセンサが眼瞼温度を示すなど、整合しない場合、眼瞼が治療のために眼治療デバイス200内に適切に配置されていないことを示している可能性がある。
【0206】
図19は、眼瞼温度を測定するように設計されたセンサ310を有する前板又は外側眼瞼パッド147の一実施形態を示す。赤外線波が皮膚に当たると、光の一部は、反射してセンサ310に向けて戻り、センサ310を加熱し得る。これは、眼瞼温度の読み取りが不正確になる原因となり得る。いくつかの実施形態では、センサ310の不要な光加熱を防止するために、センサ310を覆うように反射性及び/又は白色塗料が使用され得る。
【0207】
図19を再度参照すると、赤外線波が皮膚に当たると、それらは、吸収され、光からのエネルギーは、熱に伝達され、それにより皮膚を加温する。一般に、暗い皮膚色は、明るい皮膚色に比べてより多くの赤外線を吸収する。したがって、暗い皮膚は、より多くの光を熱に変換するため、より早く熱くなることを意味する。
【0208】
眼治療デバイス200は、この知識を使用して、皮膚色素沈着の差を検出し、それに応じて治療を調整することができ得る。例えば、眼治療デバイス200は、前板及び固定された背板上において、加熱中に内側眼瞼表面温度及び外側眼瞼表面温度を測定するためのセンサ310を有し得る。外側眼瞼表面が迅速に加温されれば、暗い皮膚色を示唆する可能性があり、それとは逆に外側皮膚表面がゆっくりと加温されれば、明るい皮膚色を示唆する可能性がある。
【0209】
いくつかの実施形態では、この異なるレベルの皮膚色素沈着に対する加温速度の差を補償するために、眼治療デバイス200は、内側皮膚と外側皮膚とが同じ速度で加温されるように光を調整することができる。例えば、内側眼瞼と外側眼瞼とが同じ速度で加温されるように、加温が遅い表面について、例えば加温スピードを増加させるために光の周波数を調整し得る。内側眼瞼皮膚により多くの加温が必要であれば、眼治療デバイス200は、緑色光を強め、赤外線を弱めることができる。他の実施形態では、使用される光は、板間で調整し、加温を同じに維持するために、複数の波長であり得る。
【0210】
眼治療デバイス200のいくつかの実施形態は、透明外側眼瞼パッド147の表面上に配置され得る、外側眼瞼表面の温度を監視するために外側眼瞼に対向しているセンサの第1セットと、強膜シールド300と結合され得る、眼瞼表面の温度を監視するために内側眼瞼に対向している表面上にあるセンサの第2セットとを含み得る。このような配置により、熱電対又はサーミスタが眼瞼の外表面及び/又は内表面の温度を検出することを可能にし得る。例えば、センサの第1セット及びセンサの第2セットは、コントローラ212に結合することができ、センサは、外側眼瞼表面及び/又は内側眼瞼表面の温度を検出し、温度情報をコントローラ212にリレーするように構成され得る。このような表面の温度の監視は、患者が眼治療デバイス200の使用による著しい不快感又は損傷を受けないようにするのに役立ち得る。
【0211】
いくつかの実施形態では、センサの第1セット及びセンサの第2セットは、安全センサであり得る。センサの第1セット及びセンサの第2セットは、好ましくは、焦電センサ(例えば、株式会社村田製作所によるIRA-E700ST0)若しくは熱電対列(例えば、Dexter Research,Dexter,Mich.によるST25T0-18)などの非接触式センサ又は熱電対、サーミスタ、光ファイバー熱センサ若しくはデジタル温度センサ(Dallas SemiconductorのDS-18B20など)などの従来の温度監視デバイスであり得る。いくつかの実施形態では、センサの第1セット及びセンサの第2セットは、外側眼瞼パッド147(例えば、ポケット内など)及び/又は強膜シールド300に内蔵されたディスクリート要素(例えば、非常に細いワイヤから作成された熱電対又は小型のサーミスタ等など)であり得る。いくつかの実施形態では、センサの第1セット及びセンサの第2セットは、外側眼瞼パッド147並びに/又は強膜シールド300の表面層及び/若しくは中間層上に適切な金属の薄膜を堆積させることにより形成され得る。
【0212】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、LED機能を監視するための電流検知回路を含み得る。電流検知回路は、電流検知回路を通過してLEDに到達する電流を検知するように構成された回路であり得る。例えば、電流検知回路は、接続問題及び/又はLEDの問題に起因し得る電流路の短絡又は開回路などの故障状態を検出するように構成され得る。このような電流検知回路では、状態を検出するだけでなく、検出回路自体の安全な動作を確実にすることも重要である。故障が検出された場合、システムは、故障回路を停止させ得、且つ/又は眼治療デバイス200を停止させ得る。このような例では、故障状態を使用者又は臨床医に通知するために画面内にエラーコードを表示させ得る。
【0213】
いくつかの実施形態では、眼瞼12、14の温度が治療温度などの目標温度範囲に到達した後、眼瞼が目標温度範囲内にどの程度の時間留まるかを使用者又は臨床医が認識していることが望ましい場合がある。例えば、目標温度範囲は、眼の状態を治療するために必要な最低温度と、この温度を超えると眼又は眼瞼に不快感若しくは熱的損傷が生じる可能性がある最高温度との間であり得る。いくつかのこのような実施形態では、目標温度範囲は、摂氏約40~約80度である。いくつかの実施形態では、目標温度範囲は、摂氏50度~摂氏80度である。いくつかの実施形態では、目標温度範囲は、摂氏60度~摂氏80度である。いくつかの実施形態では、目標温度範囲は、摂氏70度~摂氏80度である。いくつかの実施形態では、目標温度範囲は、摂氏40度~摂氏70度である。いくつかの実施形態では、目標温度範囲は、摂氏40度~摂氏60度である。いくつかの実施形態では、目標温度範囲は、摂氏40度~摂氏50度である。いくつかの実施形態では、目標温度範囲は、摂氏40度~摂氏45度である。
【0214】
図20に示すように、眼治療デバイス200は、眼瞼12、14が目標温度範囲内にある時間をカウントするように構成された融解時間インジケータを含み得る。融解時間は、手持式デバイス1800のディスプレイ244上に示され得る。例えば、タイマーは、眼瞼温度が最低温度に到達したらカウンタを始動させることができ、眼瞼温度が最低温度を下回るまでカウントし続けることができる。いくつかの実施形態では、タイマーは、測定時間における実際の測定温度を使用し得、他の実施形態では、タイマーは、事前設定した時間を使用し得る。
【0215】
図20は、眼治療デバイス200の状態を表示するように構成されたディスプレイ画面244のダッシュボード218の一実施形態を示す。例えば、ダッシュボード218は、内表面温度及び/又は外表面温度などの眼瞼の各種の温度を測定するように構成された温度測定デバイス又は手段と、データロガー214と、ボイスレコーダ213と、ダッシュボードの構成要素に給電するように構成されている電池と、電池充電手段と、コントローラと、プリント回路基板及び/又は強膜シールド300とエネルギー変換器205との間の通信回路とを含み得る。
【0216】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、内側眼瞼温度及び外側眼瞼温度を表示するように構成されたディスプレイ画面244を更に含み得る。例えば、温度表示機能は、絶対温度を表示し得るか、又は最高温度に対する相対温度を表示し得る。例えば、温度は、棒グラフ形式において又は1つ以上のライト等によって表示され得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200の使用中、内側眼瞼表面及び/又は外側眼瞼表面の温度は、測定され、ディスプレイ画面244上で臨床医に対して表示され得る。例えば、臨床医は、眼瞼に加熱エネルギーを印加することができ、眼瞼温度が治療温度に到達すると、臨床医は、閉塞したマイボーム腺からのマイボーム腺分泌脂の圧出を最適化するなどのために、眼瞼辺縁を視覚的に監視しながら圧縮力を加えることができる。
【0218】
図21A及び図21Bは、眼治療デバイス200の別の実施形態を示す。図3Aは、眼治療デバイス200が動作中であり、光211を眼球20及び治療組織に伝送している図21A図21Bの眼治療デバイス200の実施形態の概略側面平面図である。いくつかの実施形態では、光211をエネルギー伝送面140に向けて反射又は案内し、それにより標的組織の加熱効率を向上させるために、内部反射面を有する可動ライトパイプ又はシュラウド2100が使用され得る。図21Aは、引き込まれた位置にあるシュラウド2100を示し、図21Bは、前進した位置にあるシュラウド2100を示す。例えば、シュラウド2100は、エネルギー変換器モジュール120から放出された光211が、治療組織に通過させるためのエネルギー伝送面140に補正なしでは光211が到達しないような角度で最初に放射された光211の一部を含む場合に使用され得る。可動ライトパイプ又はシュラウド2100は、これを補正し、光211を治療組織に向けて集束させるために使用され得る。
【0219】
いくつかの実施形態では、可動反射器、ライトパイプ又はシュラウド2100は、熱源LEDを取り囲む摺動アセンブリであり得、眼瞼に向けて光211を案内する。例えば、使用者又は臨床医は、シュラウド2100に接続された圧縮制御ボタン1822を押すことによってシュラウド2100の動きを制御することができる。いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260が手持式器具1800に取り付けられると、外側眼瞼パッド147は、シュラウド2100の前部に自動的に取り付けられ得る。臨床医が圧縮制御ボタン1822を押すと、シュラウド2100及び外側眼瞼パッド147は、眼瞼に向けて前進することができる。いくつかの実施形態では、外側眼瞼パッド147は、圧縮を伴わずに眼瞼を加熱するために眼瞼表面に配置される。他の実施形態では、眼瞼は、外側眼瞼パッド147と、固定された背板との間で圧縮される。例えば、臨床医が圧縮制御ボタン1822を自身の指又は母指で押下すると、シュラウド2100及び外側眼瞼パッド147は、固定された背板に向けて前進する。したがって、加えられる熱及び圧力の量は、腺の応答及び患者の快適性を監視することができる臨床医の直接制御下にあり得る。
【0220】
いくつかの実施形態では、シュラウド2100の内壁表面は、壁から反射されるときの光211の散乱を回避するか又は最小限にするなどのために、滑らかであり得、且つ/又は研磨され得る。例えば、壁は、光211が側壁に当たったときでも光211の反射がシュラウド2100内に維持されるように、鏡状の表面を有し得る。実施形態では、シュラウド2100が光211を導く能力を更に高めるために、壁の鏡面は、例えば、銀被覆、アルミニウム被覆若しくは鏡面フィルムによる積層又は他の種類の鏡仕上げなどの任意の既知の手段を使用して反射層を堆積させることにより得られ得る。
【0221】
図22及び図23は、眼治療デバイスの前パッドの一実施形態を示す。例えば、外側眼瞼パッド147は、眼治療デバイス200の光源と患者の外側眼瞼との間に置かれ得る。シュラウド2100が治療のために延ばされると、外側眼瞼パッド147は、シュラウド2100に係合するように構成され得る。シュラウド2100は、治療中に暖かくなり得るため、外側眼瞼パッド147は、外側眼瞼パッド147が加温されないようにするなどのために、シュラウド2100の壁に係合する周囲フレームを含み得る。
【0222】
いくつかの実施形態では、外側眼瞼パッド147は、熱エネルギーから眼を保護するために使用されなくてよく、代わりに温度を測定するために使用され得る。例えば、外側眼瞼パッド147は、エネルギー変換器から放出されるエネルギーに対して実質的に透明な材料で作製され得る。特定の例として、エネルギー変換器が光源である場合、外側眼瞼パッド147は、エネルギー変換器によって放出される光の波長を妨げないクリアな材料で作製され得る。
【0223】
図22は、滅菌使い捨て構成要素260の実施形態を示す。実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、以下の例示的な構成要素:内側眼瞼パッド300と、外側眼瞼パッド147と、眼シールド264と、シリコーンカバー2201と、取付タブ2203と、案内部2204と、支持アーム2205とを含む。
【0224】
内側眼瞼パッド300は、手持式器具1800内の光ベースの熱源によって加熱されるように構成されたプラスチックで作製され得る。実施形態では、プラスチック部品は、軟質の生体適合性シリコーンカバー2201によって囲まれ得る。実施形態では、内側眼瞼パッド300内に位置する、眼瞼の内表面の温度を測定することができる2つの温度センサ310がある。内側眼瞼パッド300は、背板とも呼ばれる。
【0225】
外側眼瞼パッド147は、プラスチックフレーム上に取り付けられたクリアな生体適合性シリコーンパッドとして構成され得る。実施形態では、プラスチックフレームは、温度センサ310の位置において最小厚さ0.010’’を有する。いくつかの実施形態では、外側眼瞼パッド147は、治療中、患者に接触している。滅菌使い捨て構成要素260が手持式器具1800に取り付けられると、フレームは、手持式器具1800のシュラウド2100に取り付けられ得る。手持式器具1800内の熱源からの光は、外側眼瞼パッド147を通して照射され、眼瞼組織を加熱することができる。いくつかの実施形態では、外側眼瞼パッド147内に位置する、眼瞼の外表面の温度を測定することができる2つの温度センサ310がある。
【0226】
眼シールド264は、手持式器具1800から放出される光を遮断することができ、それにより加熱を意図されていない眼の部分を保護することができる。実施形態では、内側眼瞼パッド300及び眼シールド264の一部分は、軟質の生体適合性シリコーン構成要素又はシリコーンカバー2201で覆われ得る。例えば、シリコーンカバー2210は、温度センサ310の位置では最小厚さ0.010’’を有し得る。いくつかの実施形態では、シリコーンカバー2201は、治療中、患者に接触している。
【0227】
滅菌使い捨て構成要素260は、取付タブ2203によって手持式器具1800に固定され得る。例えば、滅菌使い捨て構成要素260が手持式デバイス1800に取り付けられると、ばね荷重式ラッチが各取付タブ2203の開口部と結合することができ、それにより滅菌使い捨て構成要素260を手持式器具1800に固定する。案内部2204は、手持式器具1800に対する滅菌使い捨て構成要素260の位置合わせを補助することができる。支持アーム2205は、内側眼瞼パッド300を滅菌使い捨て構成要素260の本体に接続することができる。これら支持アーム2205は、内側眼瞼パッド300を眼瞼の後ろに挿入するための、適切な深さまでの案内部としての役割を果たす。
【0228】
図23は、外側眼瞼パッド147上の温度センサ310の一実施形態を示す、滅菌使い捨て構成要素260の分解図である。図23に示されるパッドはいずれも複数の部品で形成され得るか又は1つの一体部品であり得る。実施形態では、温度センサ310は、外側眼瞼温度を測定するように設計され得る。使用中、光211は、温度センサ310のセットの後部に当たる場合がある。これが起こった場合、温度センサ310は、眼瞼温度ではなく、光の温度を読み取る可能性がある。これを防ぐために、温度センサ310の後部は、加熱されない材料で被覆され得る。例えば、温度センサ310の後部は、光211を温度センサ310から遠ざける方に反射し、温度センサ310の後部を加熱することのない反射性コーティングで被覆され得る。
【0229】
図23は、単回使用のために設計されており、再利用されるべきではない滅菌使い捨て構成要素260の一実施形態を示す。いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、使用回数を記録するために、カスタム治療パラメータを含むオンボードメモリを含み得る。例えば、カスタム治療パラメータは、単回使用滅菌使い捨て構成要素260などの有効使用回数を含むことができ、この情報を眼治療デバイス200に伝達する。眼治療デバイス200が治療に使用されると、その再使用をカスタム治療パラメータが許可することは全くない。いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260が取り付けられたら、使用情報もディスプレイ244上に表示され得る。したがって、使用者は、滅菌使い捨て構成要素260を単回使用において使用できることを認識する。
【0230】
いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、複数回使用のために設計され得る。例えば、オンボードメモリは、使用回数を記録することができ、最大使用回数に到達すると、眼治療デバイス200は、滅菌使い捨て構成要素260での治療を許可しない。この情報は、滅菌使い捨て構成要素260が取り付けられたときにディスプレイ244上に表示され得、有効残り使用回数を示す。眼治療デバイス200が最大可能使用回数まで治療に使用されたら、この再使用をカスタム治療パラメータが許可することは全くない。
【0231】
図23及び図24は、固定された背板又は固定式内側眼瞼パッド300の一実施形態を示す。実施形態では、眼系10の敏感な解剖学的構造を覆い、光211が眼球20に接触することを防止するなどのために、固定式内側眼瞼パッド300は、眼瞼12、14と眼球20との間に配置されるように構成され得る。例えば、固定式内側眼瞼パッド300は、光211を受け、加温のために光211を内側眼瞼表面に向けて反射させるように構成された反射面を含み得る。
【0232】
いくつかの実施形態では、固定式内側眼瞼パッド300は、内側眼瞼に向けて配置される温度センサ310のセットを含み得る。例えば、温度センサ310のセットは、固定式内側眼瞼パッド300に内蔵又は配置されたディスクリート要素(例えば、非常に細いワイヤから作成された熱電対、小型のサーミスタ等)であり得る。いくつかの実施形態では、温度センサ310のセットは、固定式内側眼瞼パッド300の中間層上に適切な金属の薄膜を堆積させることにより形成された熱電対であり得る。
【0233】
実施形態では、固定式内側眼瞼パッド300が温度センサ310のセットを加温又は加熱することを防ぐために、固定式内側眼瞼パッド300のエネルギー吸収面又は反射面は、センサ窓を含み得る。温度センサ310のセットは、センサ窓を通して延び、それにより内側眼瞼表面に直接接触する。
【0234】
図19及び図24は、前板又は外側眼瞼パッド147及び背板又は内側眼瞼パッド300の実施形態の詳細を示す図である。いくつかの実施形態では、温度センサ310のセットは、冗長性のため及び精度の向上のために並置された冗長センサである。温度センサ310の各セットは、眼瞼温度の一次測定及び二次測定を提供することができる。眼瞼温度の二次測定は、温度感知精度及び信頼性を向上させるために、一次眼瞼温度測定と併せて使用され得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、2つ以上の眼瞼温度読取値を取得すると、冗長性が促進される。本開示の一態様は、温度センサ310のセットの両方のセンサが動作しているかどうかを決定するなどのために、一次眼瞼温度読取値と二次眼瞼温度読取値とを比較する工程を含む。
【0236】
温度センサ310のセットは、機械的応力及び/又は熱応力に曝される可能性があり、温度センサ310のセットの1つが運転停止する可能性がある。冗長な温度センサ310のセットを有することで、システムが温度センサ310の第2セットを使用して、処置を完了するために必要な温度情報を提供することを可能にし得る。
【0237】
いくつかの実施形態では、内側及び外側眼瞼温度センサ310のセットは、冗長温度センサ310であり得る。例えば、温度センサ310の各セットは、内側眼瞼表面温度又は外側眼瞼表面温度を測定し得る。温度センサ310のセットの両方は、同じ温度を読み取るべきである。温度センサ310のセットによって提供された温度が一致しない場合、治療が眼瞼上に適切に配置されていないこと又は問題があり、システムを停止すべきであることを意味している可能性がある。
【0238】
図23及び図24は、識別(ID)チップを含む滅菌使い捨て構成要素260の一実施形態を示す。IDチップは、純正の滅菌使い捨て構成要素260が治療に使用されることを確実とすることにより、模造使い捨て部分から保護することができる。IDチップは、滅菌使い捨て構成要素260の使用及び使い捨て部分の最大使用回数のガイドラインに対するアドヒアランスを追跡することにより、自動治療追跡を提供することもできる。更に、IDチップは、供給と在庫をリアルタイムで管理することによる、直接購入及び委託のための在庫視認性の維持に役立ち得る。
【0239】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、認証方法及び/又はプロトコルを使用して、滅菌使い捨て構成要素260が模造品であるかどうかを判定することができる。例えば、眼治療デバイス200は、許可された滅菌使い捨て構成要素260と無許可のクローンとの間で区別する能力を提供するように構成された通信プロトコルを含み得る。通信プロトコルは、滅菌使い捨て構成要素260が無許可のクローンであると判定された場合、眼治療デバイス200がこれを拒否することを可能にするように更に構成され得る。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、滅菌使い捨て構成要素260の使用を制限し、且つ/又は滅菌使い捨て構成要素260の使用回数をカウントする機構も含み得、最大可能使用及び/又は使用回数を超える場合、眼治療デバイス200が滅菌使い捨て構成要素260を拒否することを可能にし得る。
【0240】
いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、使用される滅菌使い捨て構成要素260の種類に専用のカスタム治療パラメータを含むオンボードメモリを含む。例えば、滅菌使い捨て構成要素260が眼治療デバイス200に取り付けられると、眼治療デバイス200は治療パラメータを読み取り、カスタムパラメータに合致するように治療を調整することができる。
【0241】
いくつかの実施形態では、眼の治療中、異なる滅菌使い捨て構成要素260が使用される。したがって、カスタム治療パラメータは、それぞれの異なる滅菌使い捨て構成要素260に対する光設定を含む可能性がある。例えば、滅菌使い捨て構成要素260のいくつかは、異なる背板設計を有する場合があり、したがって異なる治療設定を必要とする場合がある。いくつかの実施形態では、背板は、エネルギー吸収部を含み得る。エネルギー吸収部は、加温され、その後、熱を内側眼瞼に伝達する。他の実施形態では、背板は、加熱のために光エネルギーを反射させて眼瞼上に戻す反射面を有し得る。
【0242】
いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、眼瞼の写真を撮影するために使用され得、カスタムパラメータは、光が照射されないことを確実とするように構成された光排除機能を含み得る。
【0243】
いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、治療及び映像撮影両方のために使用され得る。例えば、映像が不鮮明にならないように、治療パラメータは、映像クリップのインターリービング及び光ベースの加熱を含み得る。
【0244】
図19図22図23及び図24は、滅菌単回使用構成要素であり、患者の眼瞼に接触することが意図された全ての部品を含む滅菌使い捨て構成要素260を示す実施形態である。滅菌使い捨て構成要素260は、使用前に包装から取り出され、手持式器具1800に取り付けられる。
【0245】
手持式器具1800は、滅菌使い捨て構成要素260と接触している眼瞼の部分をECPが観察し、加熱し、圧縮することを可能にする手持式眼治療デバイス200である。加熱源は、手持式器具1800内のライムグリーンLED及び赤外LEDによって生成される光学的放射である。
【0246】
いくつかの実施形態では、内部充電式リチウムイオン電池は、手持式器具1800を動作させるための電力を提供する。例えば、電池は、AC電源供給部によって給電される別個の充電スタンドに手持式器具1800を置くことにより充電され得る。
【0247】
図22に、滅菌使い捨て構成要素260の主要部品が示される。いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、1 1/2’’(長さ)×1’’(幅)×1’’(高さ)の概算寸法を有し得る。滅菌使い捨て構成要素260は、本開示の範囲から逸脱することなく異なる寸法を有し得る。実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、1人の患者の治療に使用され、その後廃棄される滅菌構成要素であり得る。例えば、治療中、内側眼瞼パッド300は、眼瞼の結膜円蓋の後ろに挿入することができ、粘膜内層(即ち眼瞼結膜)と接触することになり得る。内側眼瞼パッド300に対向する外側眼瞼パッド147は、眼瞼の外表面の皮膚に接触することができる。手持式器具1800によって生成される光211は、クリア外側眼瞼パッド147を通して伝送され、眼瞼組織を加温することができる。外側眼瞼パッド147は、手持式器具1800内の機構によって内側眼瞼パッド300に向けて移動させることにより、眼瞼に圧力を加えるために使用することができる。外側眼瞼パッド147及び内側眼瞼パッド300内の温度センサ310は、治療中に眼瞼温度を監視することができる。
【0248】
図19図23及び図24に示される滅菌使い捨て構成要素260の実施形態は、薬物溶出性前部パッド及び/又は後部パッドを更に含み得る。薬物溶出性前部パッド及び/又は後部パッドは、眼瞼に接触し、薬物を外側眼瞼表面及び/又は内側眼瞼表面に移すことができる。薬物は、いくつかの状態を治療することができる。例えば、薬物溶出性パッドは、以下:例えば、治療中に痛み又は不快感を覚えないように眼瞼の神経を遮断するための痺れ薬;例えば炎症を減少させ、症状をより迅速に減少させるための眼瞼炎の治療のための抗生物質;及び/又は例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、脂漏症、接触性皮膚炎等を含む炎症性皮膚状態の治療のためのステロイドの1つ以上を含み得る。眼瞼の皮膚を透過させるために、イオントフォレシスなどによる追加的な補助を必要とし得る治療薬物がいくつか存在する。
【0249】
イオントフォレシスは、低強度電流を使用した、電荷を帯びた分子の移動に基づく眼瞼の皮膚への非侵襲的な経皮的薬物送達方法である。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、イオントフォレシスにより媒介される薬物注入を介して眼瞼に薬物を送達し得る。例えば、使い捨てパッドは、薬物を含むことができ、イオントフォレシスにより媒介される薬物注入では、弱電流を用いて薬物担持イオンを刺激し、眼瞼の皮膚を透過させることができる。電流は、滅菌使い捨て構成要素260又は手持式器具1800によって提供され得る。いくつかの場合、痛みを怖がる患者の眼瞼の治療には局所麻酔が必要な場合がある。これらの場合、イオントフォレシスにより媒介される薬物注入を使用して、リドカインを眼瞼に送達することができる。
【0250】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、麦粒腫及び/又は霰粒腫を治療するように構成され得る。霰粒腫及び麦粒腫(ものもらい)は、突然発症する眼瞼の限局性の腫脹である。霰粒腫は、非感染性のマイボーム腺閉塞により生る一方、麦粒腫は、通常、感染により生じる。両方の状態は、初期に眼瞼の充血及び浮腫、腫脹並びに痛みを引き起こす。
【0251】
麦粒腫を治療するために、内側眼瞼パッド300及び/又は外側眼瞼パッド147は、ものもらい又は面皰に圧力を集中させ、眼瞼を圧迫し、麦粒腫を排出するための特徴を含み得る。霰粒腫を治療するために、内側眼瞼パッド300及び/又は外側眼瞼パッド147は、閉塞したマイボーム腺に圧力を集中させ、腺を開くための特徴を有し得る。
【0252】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、可視化手段160として内蔵カメラを含み得る。例えば、内蔵カメラ又は内蔵可視化手段160は、治療前、中又は後のいずれかに治療がどの程度進んでいるかを使用者が判定することを可能にし得る。いくつかの実施形態では、内蔵可視化手段160は、前表面、裏表面及び眼瞼辺縁を含む眼瞼の異なる領域を観察するための固定光学系、補償光学系及び/又は能動光学系を含み得る。例えば、補償光学系及び能動光学系は、像若しくは標的領域上に集束及び/又はズーミングするように構成され得る。内蔵可視化手段160では、眼瞼辺縁を観察すると、腺の圧出を観察することができる。内蔵可視化手段160では、眼瞼の前面に光を照射した状態で眼瞼の裏を観察すると、眼瞼の内部腺構造を観察することができる。
【0253】
いくつかの実施形態では、内蔵可視化手段160は、眼瞼の映像及び/又は静止画像を提供し得る。内蔵可視化手段160は、画像を外部デバイスに記録及び/又は送信するなどのために電子機器に更に結合され得る。いくつかの実施形態では、内蔵可視化手段160は、電子機器を含み得る。いくつかの実施形態では、内蔵可視化手段160は、デバイスコントローラに結合することができ、コントローラは、静止画像及び/又は映像を記憶及び/又は送信することができる。
【0254】
哺乳動物の眼瞼は、曲面であり、この曲率は、曲率に適応する(再集束する)眼の自然な能力により、観察による直接目視観測の重大な障害とならない。しかしながら、写真用カメラを使用する場合、フィールド曲率が焦点ぼけ誤差を誘発し、これは、重大になり得る。フィールド曲率を補正するための1つの手法は、最終集束系の前方のみに単一の薄レンズを配置することによるものである。パラメータの適切な選択により、薄レンズは、視野を平坦にする一方、非常に低い収差を誘発する。いくつかの実施形態では、湾曲した像を平坦化するためにフィールドフラットナーが使用され得る。例えば、フィールドフラットナーは、視野の全体を通してより高い集束を提供することができる。
【0255】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、オンボード映像ディスプレイの機能を有し得る。いくつかの実施形態では、映像は、デバイス内のメモリに記録され得るか、又は映像は、マイクロSDなどのポータブルドライブに記録され得る。処置が完了すると、ポータブルドライブは、取り出され、次の処置のために空のものと交換され得る。
【0256】
治療中に内蔵可視化手段160が映像を撮影する場合、加熱のために使用される光211により、撮影した映像又は写真が不鮮明になる可能性がある。解決策の1つは、映像と光ベースの加熱をインターリーブすることである。図25は、例えば、光がオフであり、カメラがオンであるとき及び光がオンになり、カメラがオフになるときの光源及び内蔵可視化手段160のパルシングを示す。これにより、光211に阻害されることなく映像を撮影することを可能にし得る。
【0257】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、治療前及び治療後に眼瞼の写真を撮影するなどのために特殊感光性使い捨て部分を含み得る。例えば、感光性使い捨て部分は、滅菌使い捨て構成要素260に類似し得るが、固定された背板300の代わりにスペーサを用いて、眼瞼を適切な位置に配置し得る。光211は、オンにされず、眼に向けて照射されないため、特殊感光性使い捨て部分は、背板300を含まない。使用時、感光性使い捨て部分は、治療前に最初に写真撮影するために使用され得る。その後、感光性使い捨て部分は、滅菌使い捨て構成要素260に交換され得る。治療が完了すると、滅菌使い捨て構成要素260は、取り外され、感光性使い捨て部分に交換され得る。
【0258】
いくつかの実施形態では、感光性使い捨て部分は、カメラの設定をカスタマイズするためのパラメータを有するメモリを含み得る。例えば、感光性使い捨て部分は、写真撮影設定に応じて、使用される光の種類を制御するように構成され得る。例えば、設定の1つは、可視化のために眼瞼に白色光を照射するように眼治療デバイス200に指示することができ、別の設定は、写真撮影のために赤外線を使用することを含み得る。
【0259】
いくつかの実施形態では、感光性使い捨て部分は、光路を変更するための回折面を含み得る。屈折は、表面を移動する光が角度を変える際に起こる。回折面は、光ビームを狭くするか、光ビームを広くするか、又は光ビームを散乱させる場合がある。いくつかの実施形態では、眼瞼上の所望の治療領域上で集束させるために、光をナロービームに回折させることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、眼瞼上の治療領域を広くするために光ビームを広くすることが望ましい場合がある。いくつかの場合、治療領域をより均一に被覆するために光を回折することが望ましい場合がある。
【0260】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、内蔵可視化手段160を使用して映像をストリームするように構成され得る。例えば、内蔵可視化手段160及び/又は眼治療デバイス200は、観察用外部モニタなどの外部デバイスに映像を送信するための、又はコンピュータなどの別の外部デバイスに映像をストリームするための無線リンクを含み得る。いくつかの実施形態では、モニタ上により多くの治療情報をリレーするために映像ライブストリームにメタデータを追加し得る。例えば、メタデータは、内側及び/又は外側眼瞼温度、眼瞼に加えられた圧力及び/又は力、光の強度、光の周波数等に関する情報などのセンサ読取値を含み得る。日付及び時間、患者の氏名又は医療記録番号、臨床医の氏名又は治療に関連する他の情報などの他のデータも含まれ得る。
【0261】
マイボグラフィは、眼瞼12、14の徹照によりマイボーム腺のシルエットを観察することによってマイボーム腺の形態学的特徴に関する情報を得る手法である。マイボグラフィの種類の1つは、患者の不快感を伴わずにマイボーム腺の構造の非接触の観察を可能にする非接触型赤外マイボグラフィ法である。マイボグラフィは、上眼瞼及び下眼瞼のマイボーム腺の画像を捕捉するために赤外LED光を組み込む。マイボグラフィは、蛇行の増加を有するか、又は機能停止した結果、マイボーム腺が欠落している腺を含む、マイボーム腺構造の詳細な画像を提供する。非接触型マイボグラフィシステムは、内蔵可視化手段160、外部モニタ及び/又は記録デバイスを含み得る。画像は、赤外光源を用いて得られ得る。このようなマイボグラフィシステムは、患者に不快感を生じさせることなく、上眼瞼及び下眼瞼の両方のマイボーム腺構造の容易な観察を可能にし得る。
【0262】
徹照法は、いくつかの手法の1つにおいてマイボーム腺を画像化するために使用され得る。1つの変形形態では、照明光は、眼瞼の外表面に角度を付けて誘導することができ、画像化も眼瞼の外表面から行われる。これは、傾斜照明と呼ばれる。第2の変形形態では、光は、眼瞼の後ろから眼瞼を通して誘導することができ、画像化は、眼瞼の外表面を介して行われる。第3の変形形態では、表面は、記録される画像を光源が部分的に遮断するような状態で前方から照明され、複数の画像の平均化、追加又はそうでなければ結合を用いて、完全な画像を生成する。各例では、マイボーム腺は、眼瞼組織を透過する光を使用して腺を目視検査するために照明される。その後、眼瞼は、静止画又は動画(可視光線、NIR若しくはIR又は他の適切な光波長)を使用して上述したものに類似する手法で画像化され得る。
【0263】
腺を観察する方法の1つは、瞼を徹照し、内蔵可視化手段160で観察することによるものである。例えば、ライトを眼瞼の一方の側に配置することができ、その後、内蔵可視化手段160を使用して、眼瞼の他方の側でマイボーム腺のシルエットを観察することができる。この方法は、マイボーム腺の形態及び物理的特徴に関する情報を提供することができる。測定され得る情報の一部としては、腺の数及び腺の欠落の程度又はマイボーム腺欠損の面積等が挙げられ得る。
【0264】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、涙液膜破壊時間を観察することによりドライアイの重症度を評価するために使用され得る。涙液膜破壊時間は、涙液膜の安定性を判定し、涙液蒸発亢進型ドライアイについて検査するための方法である。涙液膜破壊時間は、涙液膜の安定性、したがってマイボーム腺機能不全の重症度の評価において有用であり得る。涙液膜破壊時間に関する試験では、眼にフルオレセイン色素を添加し、眼瞼を開いたままにする。小さいドライスポットが現れるまで、即ち涙液膜破壊まで患者が瞬きをしないようにしている間に拡大鏡を使用して涙液膜を観察する。その後、涙液膜破壊時間を測定する。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、涙液膜破壊時間の測定値を記録するように構成されている時間測定機能を有し得る。短い涙液膜破壊時間は、不良涙液膜の徴候であり、長い涙液膜破壊時間は、より安定な涙液膜を示唆する。例えば、10秒超は、正常な涙液膜破壊時間と考えられ、5~10秒は、限界であるとみなされ、5秒超は、低いとみなされる。
【0265】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、皮膚色素沈着測定のために使用され得、治療パラメータを色素沈着に基づいて適応させるように調整され得る。例えば、内蔵可視化手段160は、光が皮膚から反射される際の皮膚を観察及び/又は記録し得る。異なる皮膚タイプ間で反射の差が生じる。この認識を用いて、眼治療デバイス200は、光反射測定によって示された皮膚色素沈着に基づいて治療パラメータを適応させることができる。一般に、暗い皮膚色は、明るい皮膚色に比べてより多くの赤外線を吸収する。したがって、この皮膚は、より多くの光が熱に変換されるため、より早く熱くなる。したがって、眼治療デバイス200は、光の周波数を色素沈着測定に基づいて調整することにより治療パラメータを適応させるように構成され得る。
【0266】
皮膚の色素沈着は、表皮のケラチノサイト中のメラニンの量に関連する。様々なメラニンの含有量により、広範なヒトの皮膚色が見られる。光が皮膚に当たると、光の一部は、メラニンによって反射され、この反射を用いて、皮膚の色素沈着レベルを検出することができる。
【0267】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、皮膚に光211を照射することができ、内蔵可視化手段160は、光211が皮膚から反射する際の皮膚を観察及び/又は記録することができる。異なる皮膚タイプ又は皮膚色素沈着間において反射差が生じるため、内蔵可視化手段160を使用して色素沈着を検出することができる。
【0268】
分光学は、物質が光をどのように吸収、透過又は反射するかについての学問である。分光学を用いて、皮膚色素沈着を検出することができる。異なる皮膚色素沈着は固有の反射率特性を有することから、光の反射率特性を分析することによって皮膚色素沈着を決定することができる。
【0269】
いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200は、眼瞼が治療のための正しい位置に適切に捕捉されているかどうかを検出するように構成されている。いくつかの実施形態では、適切な眼瞼捕捉の検出は、拡大鏡1804又は内蔵可視化手段160を使用するなどの視覚的手段によって実施され得る。いくつかの実施形態では、適切な眼瞼捕捉の検出は、1つ以上の接触センサ238を使用して行われ得る。内蔵可視化手段160は、眼瞼の直接可視化のために使用され得、眼瞼が所望の治療又は処置のために適切に配置されているかどうかを決定するために使用され得る。更に、眼治療デバイス200は、内蔵可視化手段160からの画像を使用して、眼瞼が適切な位置にあるかどうかを決定することができる画像認識機能を含み得る。接触センサ238は、眼治療デバイス200を停止するように構成され得、且つ/又は眼治療デバイス200は、光、警告音若しくは他の通知手段を使用して、使用者若しくはECPに治療を停止するように知らせて得る。例えば、接触センサ238は、1つ以上の出力からの信号を使用して使用者又はECPに情報を提供するように構成され得る。出力は、光を1つ以上の色で又は音を1つ以上のトーンで表すように構成され得る。出力は、異なる光パターン若しくは音パターンを表すように構成することができるか、光若しくは音の強度を変化させるように構成することができるか、光と音の組み合わせを提供するように構成することができるか、又はそうでなければ眼瞼捕捉の異なる状態若しくはモードを示すように構成することができる。実施形態では、接触センサ238は、眼瞼捕捉情報を他の医療デバイス及び/又は通信デバイスに伝達するように構成され得る。
【0270】
図26Aは、閉塞したマイボーム腺を検出するために眼瞼の表面及び眼瞼辺縁を撮影するために使用される内蔵可視化手段160の一実施形態を示す。マイボーム腺を評価する際に考慮すべきいくつかの因子がある。これらの因子としては、不全の腺の割合、霰粒腫の存在及び眼瞼辺縁内に存在する腺の数が挙げられる。
【0271】
写真は、マイボーム腺スコアリング(MGスコアリング)のために使用され得る。MGスコアリングは、破壊面積に比例的に対応し得る。スコアリングは、0~3の範囲であり得、0は、眼瞼辺縁が不全の又は欠損した腺を有しないことを示し、1は、眼瞼辺縁面積の33%未満が罹患していることを示し、2は、罹患している眼瞼辺縁の面積が33%~66であることを示し、又は3は、罹患した面積が眼瞼辺縁の66%超であることを示す。上眼瞼及び下眼瞼に対して得られた数値を合計し、0~6の範囲のスコアを得る。
【0272】
いくつかの実施形態では、内蔵可視化手段160は、腺が眼治療デバイス200によって加熱され、圧迫される際の腺からのマイボーム腺分泌脂圧出物を記録するためにも治療中に使用され得る。圧出されたマイボーム腺分泌脂は、以下のように格付けされ得る。即ち、0は、クリアなマイボーム腺分泌脂が容易に圧出されたことを示し、1は、濁ったマイボーム腺分泌脂が緩やかに圧出されたことを示し、2は、濁ったマイボーム腺分泌脂を、中程度を超える圧力で圧出させることができたことを示し、3は、マイボーム腺分泌脂を高い圧力でも圧出させることができなかったことを示す。圧出されたマイボーム腺分泌脂物質は、眼瞼炎、異常瞼辺縁、瞼辺縁不整、瞼辺縁肥厚、腺の不全及び/又は腺の欠落等などの他の状態を診断するために使用され得る。
【0273】
いくつかの実施形態では、内蔵可視化手段160は、IR光を使用してマイボーム腺を位置特定し、腺がその周囲の組織と異なるNIR応答を有し得る物質で満たされているかどうかも決定し得る。例えば、高性能の高解像度NIRカメラを使用すると、組織の領域と腺の領域との間の識別に十分であろう。NIRカメラに使用される波長及び光学系は、マイボーム腺の適切な画像化を提供するように選択すべきであり、実験によって最適化することができる。更に、様々な組織のNIR応答間で区別するために、得られた画像をデジタル処理し、コントラストレベルを高め、且つ/又は配色を割り当てると有利であり得る。
【0274】
画像増強技術は、画像の主観的品質が人間の解釈において重要となる画像処理用途の多くで広く使用されている。コントラストは、画像品質のあらゆる主観的評価における重要な因子である。コントラストは、2つの隣接表面から反射された輝度の差によって生じる。換言すると、コントラストは、物体を他の物体及び背景から識別可能にする視覚的性質の差である。視覚認知において、コントラストは、物体の、他の物体との色及び明るさの差によって決定される。コントラスト増強を実現するための多くのアルゴリズムが開発され、画像処理における課題に適用されている。1つは、画像コントラストを増加させるために使用することができ、明度も向上させることができるストレッチアルゴリズムである。
【0275】
眼瞼を観察のために反転させると、それは、曲面を有する。曲面の写真を撮影すると、領域のいくつかに焦点が合うが、他の部分に焦点が合わない。1つの選択肢は、湾曲した眼瞼表面を物理的に平らにすることである。別の選択肢は、曲面に対して異なる撮影技術を使用することである。眼瞼を物理的に平らにするために、ガラスなどのクリア平坦要素が使用され得る。眼瞼が反転されると、クリア平坦要素を眼瞼表面に押し付け、眼瞼をカメラに対して平らにすることができる。反転した眼瞼の曲面の写真を撮影する方法の1つは、焦点合成である。焦点合成は、異なる焦点距離で撮影された複数の画像を組み合わせて、個々のソース画像のいずれよりも深い被写界深度を有する生成画像を得るデジタル画像処理技術である。焦点合成の開始点は、異なる焦点深度で捕捉された一連の画像である。各画像では、反転した眼瞼の異なる領域に焦点が合っている。これらの画像のいずれも、完全に焦点が合っているサンプルを有しないが、これらは、眼瞼の全部分に焦点が合った画像を生成するために必要な全てのデータを集合的に含んでいる。各画像の焦点が合っている領域は、例えば、エッジ検出若しくはフーリエ解析により自動的に検出され得るか又は手動で選択され得る。その後、焦点が合ったパッチを互いにブレンドして、眼瞼の最終的な画像を生成する。
【0276】
医療診断プロセスの一部としての画像解釈の一般的手法は、視覚的解釈である。視覚的解釈は、プロセスを観察者に依存させる。ヒトの画像視覚認知は、少数の画像特性セット:明るさ、コントラスト、鮮明度、彩度及びダイナミクスに依存する。画像の可読性を向上させ、且つ情報抽出及び認知に影響を及ぼす因子を低減するために、画像は、増強される。画像増強は、生成画像が元の画像に比べて、特定の用途により適するように、デジタル画像を向上させるか又は修正する手法を指す。画像増強プロセス中、画像の1つ以上の属性が修正される。修正される属性のセット、修正方法及び可能な属性値の範囲は、所与のタスクに固有である。画像増強の1つの手法は、ハイダイナミックレンジ(HDR)イメージングである。HDRイメージング法は、複数のピクチャを異なる露出レベルで撮影し、それらを互いにつなぎ合わせることにより細部欠損を補償し、暗領域及び明領域の両方において最も多数の細部を示す画像を作成する。画像増強の別の手法は、疑似カラーである。疑似カラーリングの目的は、画像、例えば眼瞼の画像からより多くの情報を抽出するために、ヒトの視覚システムの知覚能力を利用することである。「疑似カラー」又は「擬色」という用語は、モノクロ画像に色を指定するプロセスと、トゥルーカラー画像に関連するプロセスとを区別するために使用される。疑似カラープロセスは、認識さることがなかったはずの画像の詳細を提供することにより、画像内の薄い特徴、構造及びパターンの検出能を大幅に向上させることができる。
【0277】
図26Bは、眼瞼14の内側の観察及び眼瞼14の裏からのマイボーム腺の徹照を可能にする固定式内側眼瞼パッド300の一実施形態を示す。いくつかの実施形態では、固定式内側眼瞼パッド300の反射面も、眼瞼14の内表面を可視化手段160によって観察させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、眼瞼14の内表面の観察には、眼瞼14及びマイボーム腺の徹照を含む。像変換部155は、眼瞼14の内側の観察及び眼瞼14の裏からのマイボーム腺の徹照を可能にする。
【0278】
例えば、可視光線又は赤外線であり得る照明エネルギー170は、固定式内側眼瞼パッド300の反射面から反射される際、眼瞼14を通過し、したがってマイボーム腺18を通過し、最終的に眼瞼辺縁14aの上方で出る。このようにして、反射面は、眼瞼14を反転させる必要なく、直接可視化下において又は可視化デバイス若しくは可視化手段160として集合的に示される拡大要素若しくはカメラを用いて、眼瞼14の内側の徹照像190を観察することを可能にする。図2Fは、マイボーム腺の徹照像190を示す、図26Bに示される実施形態の正面図である。
【0279】
いくつかの医療デバイスは、感染又は交差汚染につながるおそれのある細菌を運ぶ可能性がある。眼治療デバイス200上の、抗生物質又は銀粒子などの抗菌コーティングは、感染のリスクを低下させることができる。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200及び/又は滅菌使い捨て構成要素260は、交差汚染又は細菌の拡散を防止するための1種以上の抗菌コーティングを含む。
【0280】
いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260は、患者の両眼を治療するために使用される。眼間において、滅菌使い捨て構成要素260は、眼間での交差汚染を防止するために消毒薬で処理される。眼間で滅菌使い捨て構成要素260を拭き取ると、滅菌使い捨て構成要素260からあらゆる流体又は眼瞼圧出物も除去する。
【0281】
いくつかの実施形態では、デバイスは、患者の眼球20又は眼瞼14に対する眼治療デバイス200の位置を検知するために、静電容量センサ若しくは接触センサ238又は他の近接センサを含む。いくつかの実施形態では、接触センサ238は、接触センサ238が眼球20若しくは眼瞼14に触れた際の静電容量及び/又は静電容量の変化を検知するように構成されている1つ以上の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、接触センサ238は、マイクロスイッチ又は力若しくは圧力接触センサ238を含み得、これらは、全て眼球20又は眼瞼14の皮膚に触れると信号特性の変化を生じる。したがって、接触センサ238を使用して、眼治療デバイス200の配置の決定に役立てることができる。
【0282】
内側眼瞼パッド300は、内側眼瞼の治療のために内側眼瞼表面と接触すべきである。これを検出するために、眼治療デバイス200のいくつかの実施形態は、内側眼瞼パッド300が内側眼瞼又は眼球に触れているかどうかを検出するための静電容量センサ又は接触センサ238を含む。接触センサ238が眼球を検出した場合又は眼球に接近しすぎている場合、眼治療デバイス200は、眼瞼に向けて更に外向きに引くように使用者に知らせることができる。眼瞼に触れていることを接触センサ238が検出した場合、眼治療デバイス200は、治療のための正しい位置にある。
【0283】
いくつかのそのような実施形態では、コントローラが、接触センサ238からの信号を介して、眼治療デバイス200が内側眼瞼に適切に隣接して配置されていることを検出するまで、コントローラは、眼治療デバイス200の起動を阻止するようにプログラムされている。更に、いくつかの実施形態では、接触センサ238から受信された信号が、眼治療デバイス200が眼瞼に対してもはや適切に配置されていないことを示す場合、コントローラは、エネルギーを停止するようにプログラムされている。
【0284】
固定式内側眼瞼パッド300を眼瞼の後ろに挿入するために、多くの人は、睫毛を引っ張って眼瞼を眼球から引き離し、内側眼瞼パッド300を挿入する。多くの場合、この方法では睫毛が抜け、痛みを引き起こす。
【0285】
いくつかの実施形態では、吸引デバイスを眼瞼の外表面に取り付けることができ、眼瞼を引き上げて、内側眼瞼パッド300のための空間を作ることができる。内側眼瞼パッド300が所定の位置に置かれたら、吸引デバイスを引き離し、取り外すことができる。例えば、吸引デバイスによる眼瞼の持ち上げは、吸引デバイスの吸引部を外側眼瞼上に置くことと、外側眼瞼の皮膚に係合させるために吸引力を発生させることと、眼瞼を眼球から引き離すことと、内側眼瞼パッド300が眼瞼の後ろに挿入されたら、吸引力を解除し、吸引デバイスを取り外すこととを含み得る。
【0286】
いくつかの実施形態では、湾曲した又はかぎ状の先端を有する引張りデバイスを眼瞼の後ろに摺動させ、眼瞼を眼球から引き離し、内側眼瞼パッド300のための空間を作ることができる。内側眼瞼パッド300が所定の位置に置かれたら、引張りデバイスを取り外すことができる。
【0287】
いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260又は内側眼瞼パッド300は、眼瞼を眼球から持ち上げて離すために、湾曲した先端、フックなどの持ち上げ機能又は他の類似の機能を有し得る。持ち上げ機能は、内側眼瞼パッド300の設計に組み込むことができるか又は追加部品であり得る。持ち上げデバイスによる眼瞼の持ち上げは、持ち上げデバイスの遠位端にある持ち上げ機能を眼瞼の後ろに摺動させることと、眼瞼を眼球から持ち上げて離すことと、内側眼瞼パッド300が眼瞼の後ろに挿入されたら、持ち上げデバイスを取り外すこととを含み得る。
【0288】
いくつかの実施形態では、滅菌使い捨て構成要素260又は内側眼瞼パッド300は、眼瞼を観察するための例えば徹照法又はマイボグラフィのための光源を含み得る。徹照法において、使用者が眼瞼内の腺を観察できるように、例えば滅菌使い捨て構成要素の照明機能により、内側眼瞼などの眼瞼の一方の側に光を照射することができる。いくつかの実施形態では、反転した瞼上に又は反転した瞼を通して赤外線を投影し、IR高感度カメラを使用してマイボーム腺を観察する。マイボグラフィにおいて、滅菌使い捨て構成要素260は、画像がカメラで捕捉されるように、眼瞼上に照射する赤外LED光源を含むことができる。マイボグラフィは、眼瞼の全てのマイボーム腺の像を提供する。いくつかの実施形態では、光源は、細菌を減少させ且つ/又は除去するために、400~450nmの範囲の青色又は紫色光を放出する。
【0289】
図27は、眼系10の敏感な解剖学的構造を覆い、光が眼に接触することを防止するために、眼瞼14と眼球20との間に配置され得る反射性の内側眼瞼パッド300の一実施形態を示す。内側眼瞼パッド300は、眼瞼14を透過する光エネルギーを受け、加温のために光エネルギーを眼瞼内表面に反射させて戻すように設計されている。
【0290】
反射性の内側眼瞼パッド300は、内側眼瞼に向けて配置される温度センサ310のセットを含み得る。センサは、内側眼瞼パッド300に内蔵若しくは配置されたディスクリート要素(非常に細いワイヤから作成された熱電対又は小型のサーミスタなど)であり得るか、又はセンサは、内側眼瞼パッド300の中間層上に適切な金属の薄膜を堆積させることにより形成された熱電対であり得る。
【0291】
反射性の内側眼瞼パッド300がセンサを加温又は加熱することを防ぐために、エネルギー反射面は、センサ窓を含む。センサは、センサ窓を通して延び、内側眼瞼表面に直接接触する。
【0292】
いくつかの実施形態では、反射性の内側眼瞼パッド300は、可視化手段による眼瞼14の内側の観察及び眼瞼の裏からのマイボーム腺の徹照を可能にするための鏡として機能し得る。いくつかの実施形態では、内側眼瞼パッド300の反射面から反射された光は、眼瞼及びマイボーム腺の徹照のために使用され得る。
【0293】
図27は、内側眼瞼を加温するためのエネルギー吸収前面302を含み得る内側眼瞼パッド300を有する滅菌使い捨て構成要素260の一部分も示す。エネルギー吸収前面302は、加熱のための光源を含み得る。いくつかの実施形態では、光源は、内側眼瞼パッド300上にあり得、内側眼瞼に誘導され、腺を加温することができる。例えば、光源は、組織内の最大光線吸収を達成するなどのために、約500nm~約600nmの範囲の波長を放出することができる。
【0294】
いくつかの実施形態では、エネルギー吸収前面302は、ライトパイプ及び/又は他の屈折要素を含み得る。ライトパイプ及び/又は他の屈折要素は、加熱光を内側眼瞼パッド300に向けて誘導し、内側眼瞼に光を照射し、眼瞼の裏のマイボーム腺を加熱するように構成されている。
【0295】
いくつかの場合、マイボーム腺が炎症を起こしているか又は機能不全になっている場合があるため、分析のためにマイボーム腺分泌脂のサンプルを採取することが望ましい場合がある。例えば、マイボーム腺は、オメガ6必須脂肪酸の組成が増加したマイボーム腺分泌脂の産生により炎症を起こす場合がある。更に及び/又は代わりに、マイボーム腺中に細菌が存在する可能性があり、炎症を引き起こす可能性がある。これらの場合、眼治療デバイス200又は滅菌使い捨て構成要素260は、サンプル受け部を含むことができ、サンプル受け部は、マイボーム腺分泌脂サンプルが圧出されている際にこれを採取するように構成されている。例えば、サンプル受け部分は、マイボーム腺分泌脂を受け入れる、滅菌使い捨て構成要素260内のマイボーム腺分泌脂リザーバであり得る。いくつかの実施形態では、各眼瞼に対して1つなどの複数のサンプル受け部分が存在し得る。マイボーム腺分泌脂サンプルは、採取されたら、試験され得る。実施形態では、試験は、マイボーム腺分泌脂を、色を用いて細菌の存在を示す感色マーカと接触させることを含み得る。細菌が存在する場合、ECPは、治療計画を指示することができる。更に及び/又は代わりに、マイボーム腺分泌脂サンプルの採取においてカメラが有用であり得る。例えば、カメラは、圧出される際のマイボーム腺分泌脂を写真又は映像撮影のいずれかにおいて撮影し、マイボーム腺分泌脂サンプルの捕捉を記録に残すことができる。
【0296】
眼及び眼瞼の大きさは子供から成人まで様々である。これに適応するために、使い捨て内側眼瞼パッド300は、様々な大きさで作製され得る。例えば、子供用サイズ、小柄な成人用サイズ、中柄な成人用サイズ及び大柄な成人用サイズが存在し得る。
【0297】
図28A及び図28Bは、眼治療デバイス200の別の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、眼治療デバイス200及び滅菌使い捨て構成要素260の両方は、下眼瞼の治療と上眼瞼の治療との間で180度回転させることができる。これと共に、上眼瞼を治療するときにコントロールが上下逆になるように、眼治療デバイス200上の全てのコントロールも回転する。これは、一部の使用者にとって課題となり得る。図28A及び図28Bに示すように、この潜在的課題を回避するための1つの選択肢は、眼治療デバイス200が1つの位置にある一方、滅菌使い捨て構成要素260が2つの位置にあり得るように、手持式器具1800を固定したままで滅菌使い捨て構成要素260を180度回転させることである。
【0298】
いくつかの実施形態では、眼瞼を圧迫することなくマイボーム腺を加温又は加熱することが望ましい場合がある。例えば、眼治療デバイス200は、IR LEDを使用する非接触式赤外線加熱デバイスとして設計することができ、眼瞼を圧迫することなく眼瞼内のマイボーム腺を加熱するように構成され得る。
【0299】
本開示を要約する目的で特定の態様、利点及び特徴を本明細書に記載してきた。任意の特定の実施形態によれば、そうした利点の全てを必ずしも達成できるものではないことを理解されたい。したがって、本開示のデバイス及び方法は、本明細書で教示又は提案され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されるような1つの利点又は利点の群を達成又は最適化するような手法で具現化又は実行できる。
【0300】
本開示を、実用的な実施形態であると目下考えられるものに関連して説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正形態及び変更形態がなされ得ることが当業者に理解されるであろう。一実施形態における部品の組み合わせは、他の実施形態で交換可能であり、図示実施形態の1つ以上の部品は、任意の組み合わせで他の図示実施形態に含まれ得ることも当業者に理解されるであろう。例えば、本明細書に記載され且つ/又は図に示される各種の構成要素のいずれも組み合わせることができるか、交換することができるか、又は他の実施形態から除外することができる。本明細書における実質的にあらゆる複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈及び/又は用途に適切となるように、複数形から単数形に及び/又は単数形から複数形に翻訳することができる。本明細書では、明確にするために、様々な単数形/複数形の置換が明記されている場合がある。
【0301】
本開示では、特定の例示的実施形態を記載したが、本開示は、開示される実施形態に限定されるものではなく、逆に添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に含まれる様々な修正形態及び均等な構成を包含するものであることを理解されたい。
図1A-1B】
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F-4H】
図4I-4L】
図4M
図4N
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A-15B】
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H-16I】
図16J-16K】
図16L
図16M
図16N
図16O
図17A-17C】
図17D
図17E
図17F
図17G
図17H
図18A
図18B
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27
図28A
図28B