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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】物理的キャリブレーションスライド
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20240621BHJP
   G02B 21/36 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
G02B21/34
G02B21/36
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021538320
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 US2020045178
(87)【国際公開番号】W WO2021026338
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】62/883,585
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503293765
【氏名又は名称】ライカ バイオシステムズ イメージング インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Leica Biosystems Imaging, Inc.
【住所又は居所原語表記】1360 Park Center Dr., Vista, CA 92081, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユンルー ゾウ
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0227937(US,A1)
【文献】特開2009-104136(JP,A)
【文献】特開2012-247743(JP,A)
【文献】特開2014-003550(JP,A)
【文献】特開2006-145755(JP,A)
【文献】特開2008-281481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0080737(US,A1)
【文献】特開2004-333315(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101738305(CN,A)
【文献】R1L3S5P - 分解能ならびに歪み測定一体型ポジターゲット 76.2 mm x 25.4 mm カタログ,2013年11月26日,https://www.thorlabs.co.jp/thorproduct.cfm?partnumber=R1L3S5P
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
G03B 43/00 - 43/02
G01M 11/00 - 11/08
H04N 13/00 - 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の辺に沿った長軸と第2の辺に沿った短軸とを有する物理的キャリブレーションスライドであって、前記物理的キャリブレーションスライドは、
複数のエッチングされた特徴部を備え、前記複数のエッチングされた特徴部は、
前記長軸および前記短軸に対して平行ではない少なくとも1組の平行線を備える第1のルーリング特徴部と、
前記第1のルーリング特徴部に隣接するように位置決めされており、前記長軸および前記短軸に対して平行ではない少なくとも1組の平行線を備える第2のルーリング特徴部と、
前記第2のルーリング特徴部に隣接するように位置決めされたクリア領域と、
前記クリア領域に隣接するように位置決めされており、前記長軸に対して平行な少なくとも1組の平行線を備える第3のルーリング特徴部と、
前記第3のルーリング特徴部に隣接するように位置決めされており、前記短軸に対して平行な少なくとも1組の平行線を備える第4のルーリング特徴部と、
を備える物理的キャリブレーションスライド。
【請求項2】
前記物理的キャリブレーションスライドは、
複数のウェッジ対を有する円を備えるスターターゲット特徴部であって、前記複数のウェッジ対のそれぞれがエッチングされたウェッジとエッチングされていないウェッジとを備えるスターターゲット特徴部と、
少なくとも1つのクロスヘアを備えるクロスヘア特徴部と、
円を備えるO字型特徴部と、
1つまたは複数の分解能ターゲットを備える分解能ターゲット特徴部と、
ブルズアイの2次元アレイを備えるブルズアイ特徴部と、
少なくとも1つの二等辺三角形を備えるトライアングル特徴部と、
L型に配列された対称の2組の幾何学的図形を備える対称コーナー特徴部と、
のうちの1つ以上をさらに備える、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項3】
前記物理的キャリブレーションスライドは、
複数のウェッジ対を有する円を備えるスターターゲット特徴部であって、前記複数のウェッジ対のそれぞれがエッチングされたウェッジとエッチングされていないウェッジとを備えるスターターゲット特徴部と、
少なくとも1つのクロスヘアを備えるクロスヘア特徴部と、
円を備えるO字型特徴部と、
1つまたは複数の分解能ターゲットを備える分解能ターゲット特徴部と、
ブルズアイの2次元アレイを備えるブルズアイ特徴部と、
少なくとも1つの二等辺三角形を備えるトライアングル特徴部と、
L型に配列された対称の2組の幾何学的図形を備える対称コーナー特徴部と、
を備える、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項4】
前記物理的キャリブレーションスライドは、幅25mmおよび長さ75mmを有する、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項5】
前記第1のルーリング特徴部の前記少なくとも1組の平行線は、前記短軸に対して第1の角度で傾斜し、前記第2のルーリング特徴部の前記少なくとも1組の平行線は、第2の角度で傾斜し、
前記第1の角度は、95°であり、前記第2の角度は、5°である、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項6】
前記物理的キャリブレーションスライドは、複数のウェッジ対を有する円を備えるスターターゲット特徴部をさらに備え、前記スターターゲット特徴部において、前記円は、中心ドットを有するエッチングされたコアを備える、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項7】
前記スターターゲット特徴部は、外側円内に内側円を備える、
請求項6記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項8】
前記物理的キャリブレーションスライドは、クロスヘア特徴部をさらに備え、前記クロスヘア特徴部は、中心クロスヘアを囲む外側長方形ボックスと、前記中心クロスヘアより小さく、前記外側長方形ボックスの1つのコーナーに位置決めされたオフセットクロスヘアと、を有し、前記中心クロスヘアおよび前記オフセットクロスヘアのそれぞれは、2つの直交する二等分線を含む、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項9】
前記物理的キャリブレーションスライドは、マクロおよびマイクロ焦点調整のための複数の分解能ターゲットをさらに備える、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項10】
前記物理的キャリブレーションスライドは、ブルズアイの2次元アレイを備える分解能ターゲットをさらに備え、各ブルズアイは、その中心にドットを有する円を備える、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項11】
前記ブルズアイのアレイは、1000×1000のブルズアイのアレイを備える、
請求項10記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項12】
前記物理的キャリブレーションスライドは、45°の二等辺三角形を備えたトライアングル特徴部をさらに備える、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項13】
前記物理的キャリブレーションスライドは、L型に配列された対称の2組の幾何学的図形を備えた対称コーナー特徴部をさらに備える、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項14】
前記対称コーナー特徴部において、前記幾何学的図形は、ドットを備える、
請求項13記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項15】
前記対称コーナー特徴部において、前記幾何学的図形は、正方形を備える、
請求項13記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項16】
前記対称コーナー特徴部において、幾何学的図形のそれぞれの組は、最大の図形と、前記最大の図形から2つの直交する方向に延在する2つ以上のより小さい図形と、を備え、それぞれの方向において、前記2つ以上のより小さい図形のサイズは、前記最大の図形から最も近いところから最も遠いところへ向かって小さくなる、
請求項13記載の物理的キャリブレーションスライド。
【請求項17】
前記複数の特徴部は、クロムからエッチングされている、
請求項1記載の物理的キャリブレーションスライド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月6日出願の米国仮特許出願第62/883585号の優先権を主張し、この特許出願は、恰も全体が記載されているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
さらに、本出願は以下の出願、すなわち
2016年9月23日出願の国際特許出願第PCT/US2016/053581号、
2017年4月20日出願の国際特許出願第PCT/US2017/028532号、
2018年11月30日出願の国際特許出願第PCT/US2018/063456号、
2018年11月30日出願の国際特許出願第PCT/US2018/063460号、
2018年11月30日出願の国際特許出願第PCT/US2018/063450号、
2018年11月30日出願の国際特許出願第PCT/US2018/063461号、
2018年11月27日出願の国際特許出願第PCT/US2018/062659号、
2018年11月30日出願の国際特許出願第PCT/US2018/063464号、
2018年10月4日出願の国際特許出願第PCT/US2018/054460号、
2018年11月30日出願の国際特許出願第PCT/US2018/063465号、
2018年10月4日出願の国際特許出願第PCT/US2018/054462号、
2018年11月30日出願の国際特許出願第PCT/US2018/063469号、
2018年10月4日出願の国際特許出願第PCT/US2018/054464号、
2018年8月17日出願の国際特許出願第PCT/US2018/046944号、
2018年10月4日出願の国際特許出願第PCT/US2018/054470号、
2018年9月28日出願の国際特許出願第PCT/US2018/053632号、
2018年9月28日出願の国際特許出願第PCT/US2018/053629号、
2018年9月28日出願の国際特許出願第PCT/US2018/053637号、
2018年11月28日出願の国際特許出願第PCT/US2018/062905号、
2018年11月29日出願の国際特許出願第PCT/US2018/063163号、
2017年12月29日出願の国際特許出願第PCT/US2017/068963号、
2019年3月1日出願の国際特許出願第PCT/US2019/020411号、
2017年12月29日出願の米国特許出願公開第29/631492号、
2017年12月29日出願の米国特許出願公開第29/631495号、
2017年12月29日出願の米国特許出願公開第29/631499号、および
2017年12月29日出願の米国特許出願公開第29/631501号、
に関連しており、これらの出願はすべて、恰も全体が記載されているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本明細書に記載された本実施形態は、一般に較正に関し、より詳細には、スライド走査システムを較正するために使用できる物理的キャリブレーションスライドに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
物理的キャリブレーションスライドが開示されている。一実施形態では、物理的キャリブレーションスライドは、長辺に沿った長軸と短辺に沿った短軸とを有し、複数のエッチングされた特徴部を備え、複数のエッチングされた特徴部は、長軸と短軸とに対して傾斜した少なくとも1組の平行線を備える傾斜ロンキールーリング特徴部、長軸または短軸のいずれかに対して平行な少なくとも1組の平行線を備えるストレートロンキールーリング特徴部、複数のウェッジ対を有する円を備えるスターターゲット特徴部であって、複数のウェッジ対のそれぞれがエッチングされたウェッジとエッチングされていないウェッジとを備える、スターターゲット特徴部、少なくとも1つのクロスヘアを備えるクロスヘア特徴部、クリア領域、円を備えるO字型特徴部、1つもしくは複数の分解能ターゲットを備える分解能ターゲット特徴部、ブルズアイの2次元アレイを備えるブルズアイ特徴部、少なくとも1つの二等辺三角形を備えるトライアングル特徴部、またはL型に配列された対称の2組の幾何学的図形を備える対称コーナー特徴部、のうちの2つ以上を備える。一実施態様では、物理的キャリブレーションスライドは、傾斜ロンキールーリング、ストレートロンキールーリング、スターターゲット特徴部、クロスヘア特徴部、O字型特徴部、分解能ターゲット特徴部、ブルズアイ特徴部、トライアングル特徴部、および対称コーナー特徴部のそれぞれを備える。物理的キャリブレーションスライドは、幅25mmおよび長さ75mmを有しうる。複数の特徴部は、クロムからエッチングすることができる。
【0005】
傾斜ロンキールーリング特徴部は、短軸に対して第1の角度で傾斜した第1の組の平行線と、短軸に対して第1の角度と異なる第2の角度で傾斜した第2の組の平行線とを備えることができる。第1の角度は95°で、第2の角度は5°でありうる。
【0006】
ストレートロンキールーリング特徴部は、長軸に対して平行な第1の組の平行線と、第1の組の平行線に対して直交し短軸に対して平行な第2の組の平行線とを備えることができる。
【0007】
スターターゲット特徴部において、円は、中心ドットを有するエッチングされたコアを備えることができる。スターターゲット特徴部は、外側円内に内側円を備えることができる。
【0008】
クロスヘア特徴部は、中心クロスヘアと、中心クロスヘアより小さいオフセットクロスヘアとを備えることができ、中心クロスヘアは、複数の特徴部の座標系の中心を表す。クロスヘア特徴部は、中心クロスヘアとオフセットクロスヘアとの周りに長方形ボックスを備えることができ、中心クロスヘアは長方形ボックスの中心にある。
【0009】
分解能ターゲット特徴部は、マクロおよびマイクロ焦点調整のために複数の分解能ターゲットを備えることができる。複数の分解能ターゲットのうちの1つもしくは複数は、円によって囲まれうる。
【0010】
ブルズアイ特徴部において、ブルズアイの2次元アレイは、1000×1000のブルズアイのアレイを備えることができ、それぞれのブルズアイは、その中心にドットを有する円を備える。
【0011】
トライアングル特徴部は、45°の二等辺三角形を備えることができる。
【0012】
対称コーナー特徴部において、幾何学的図形は、ドットを備えることができる。対称コーナー特徴部において、幾何学的図形は、正方形を備えることができる。対称コーナー特徴部において、幾何学的図形のそれぞれの組は、最大の図形と、最大の図形から2つの直交する方向に延在する2つ以上のより小さい図形とを備えることができ、それぞれの方向において、2つ以上のより小さい図形のサイズが、最大の図形から最も近いところから最も遠いところへ向かって小さくなる。
【0013】
本発明の詳細は、その構造および動作の両方に関して、添付の図面を検討することによって部分的に収集することができる。図面では、同様の参照番号は同様の部品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】一実施形態による、本明細書に記載された様々な実施形態に関連して使用することができる、プロセッサ対応可能デバイスの例を示す図である。
図1B】一実施形態による、単一のリニアアレイを有するライン走査カメラの例を示す図である。
図1C】一実施形態による、3つのリニアアレイを有するライン走査カメラの例を示す図である。
図1D】一実施形態による、複数のリニアアレイを有するライン走査カメラの例を示す図である。
図2A】実施形態による物理的キャリブレーションスライドを示す図である。
図2B】実施形態による物理的キャリブレーションスライドを示す図である。
図3】一実施形態による傾斜ロンキールーリング特徴部を示す図である。
図4A】一実施形態によるストレートロンキールーリング特徴部を示す図である。
図4B】様々な実施形態による、ストレートロンキールーリング特徴部を用いた様々なテストを示す図である。
図4C】様々な実施形態による、ストレートロンキールーリング特徴部を用いた様々なテストを示す図である。
図4D】様々な実施形態による、ストレートロンキールーリング特徴部を用いた様々なテストを示す図である。
図4E】様々な実施形態による、ストレートロンキールーリング特徴部を用いた様々なテストを示す図である。
図5A】様々な実施形態によるスターターゲット特徴部を示す図である。
図5B】様々な実施形態によるスターターゲット特徴部を示す図である。
図6】一実施形態によるクロスヘア特徴部を示す図である。
図7】一実施形態によるO字型特徴部を示す図である。
図8】一実施形態による分解能ターゲット特徴部を示す図である。
図9A】一実施形態によるブルズアイ特徴部を示す図である。
図9B】様々な実施形態によるブルズアイ特徴部を用いた様々なテストを示す図である。
図9C】様々な実施形態によるブルズアイ特徴部を用いた様々なテストを示す図である。
図9D】様々な実施形態によるブルズアイ特徴部を用いた様々なテストを示す図である。
図9E】様々な実施形態によるブルズアイ特徴部を用いた様々なテストを示す図である。
図10】一実施形態によるトライアングル特徴部を示す図である。
図11】実施形態による対称コーナー特徴部の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、走査システムを較正するための物理的キャリブレーションスライドの実施形態を説明する。本明細書を読むことにより、様々な代替実施形態および代替用途で本発明を実施する方法が当業者に明らかになるであろう。しかし、本発明の様々な実施形態を本明細書に記載するが、これらの実施形態は単なる例および説明として提示されており、限定するものではないことが理解される。したがって、様々な実施形態の詳細なこの説明は、添付の特許請求の範囲に示されるように、本発明の範囲または広がりを限定するものと解釈されるべきではない。
【0016】
1.例示的な走査システム
図1Aは、本明細書に記載された様々な実施形態に関連して使用できる、例示的なプロセッサ対応可能スライド走査システム100を示すブロック図である。当業者に理解されるように、走査システム100の代替形態も使用することができる。図示の実施形態では、走査システム100は、1つもしくは複数のプロセッサ104、1つもしくは複数のメモリ106、1つもしくは複数のモーション制御装置108、1つもしくは複数のインタフェースシステム110、それぞれが1つもしくは複数の試料116を有する1つもしくは複数のスライドガラス114を支持する1つもしくは複数の可動ステージ112、試料116を照明する1つもしくは複数の照明システム118、光軸に沿って進行する光路122をそれぞれ定める1つもしくは複数の対物レンズ120、1つもしくは複数の対物レンズポジショナ124、1つもしくは複数の任意の落射照明システム126(例えば、蛍光走査の実施形態に含まれる)、1つもしくは複数の焦点調整光学系128、1つもしくは複数のライン走査カメラ130、および/または1つもしくは複数のエリア走査カメラ132を備えるデジタル撮像デバイスとして提示されており、これらは、それぞれ試料116および/またはスライドガラス114上に別個の視野134を定める。走査システム100の様々な要素は、1つもしくは複数の通信バス102を介して通信可能に結合されている。走査システム100の様々な要素のそれぞれの複数が存在する可能性があるが、以下の説明の簡略化のために、これらの要素は、適切な情報を伝えるために複数で説明する必要がある場合を除き、単数で説明される。
【0017】
プロセッサ104は、例えば、中央演算処理装置(CPU)と、命令を並行して処理可能な別個のグラフィックス処理装置(GPU)、または命令を並行して処理可能なマルチコアプロセッサとを含むことができる。また、追加の別個のプロセッサを設けて、特定の構成要素の制御または画像処理などの特定の機能を実行してもよい。例えば、追加のプロセッサとしては、データ入力を管理するための補助プロセッサ、浮動小数点の数学演算を行うための補助プロセッサ、信号処理アルゴリズムの高速実行に適したアーキテクチャを有する特殊目的プロセッサ(例えば、デジタルシグナルプロセッサ)、メインプロセッサに従属するスレーブプロセッサ(例えば、バックエンドプロセッサ)、ライン走査カメラ130、ステージ112、対物レンズ120、および/またはディスプレイ(例えば、走査システム100に一体化されたタッチパネルディスプレイを備えるコンソール)を制御するための追加のプロセッサが挙げられる。そのような追加のプロセッサは、別個の離散プロセッサであってよく、または単一のプロセッサと一体化されていてもよい。
【0018】
メモリ106は、プロセッサ104によって実行可能なプログラムのためのデータおよび命令の記憶を提供する。メモリ106は、データおよび命令を記憶する1つもしくは複数の揮発性および/または不揮発性のコンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。これらの媒体としては、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスクドライブ、リムーバブルストレージドライブ(例えば、フラッシュメモリを含む)などが挙げられる。プロセッサ104は、メモリ106に記憶された命令を実行し、通信バス102を介して走査システム100の様々な要素と通信し、走査システム100の全体的な機能を実行するように構成されている。
【0019】
通信バス102は、アナログ電気信号および/またはデジタルデータを伝えるように構成することができる。したがって、通信バス102を介したプロセッサ104、モーション制御装置108、および/またはインタフェースシステム110からの通信は、電気信号およびデジタルデータの両方を含むことができる。プロセッサ104、モーション制御装置108、および/またはインタフェースシステム110はまた、無線通信リンクを介して走査システム100の様々な要素のうちの1つもしくは複数と通信するように構成することができる。
【0020】
モーション制御システム108は、ステージ112のX、Yおよび/またはZの移動(例えば、X-Y平面において)、対物レンズ120のX、Yおよび/またはZの移動(例えば、対物レンズポジショナ124によって、X-Y平面に対して直交するZ軸に沿って)、本明細書の他の箇所に記載されているカルーセルの回転運動、本明細書の他の箇所に記載されているプッシュ/プルアセンブリの横方向の移動、および/または走査システム100の任意の他の移動構成要素を正確に制御および調整するように構成される。例えば、落射照明システム126を用いる蛍光走査の実施形態では、モーション制御システム108は、落射照明システム126内の光学フィルタなどの移動を調整するように構成することができる。
【0021】
インタフェースシステム110によって、走査システム100は、他のシステムおよび人間のオペレータとのインタフェースを形成することが可能になる。例えば、インタフェースシステム110は、グラフィカルユーザインタフェースを介してオペレータに直接に情報を提供し、および/またはタッチセンサを介してオペレータからの直接の入力を可能にするコンソール(例えば、タッチパネルディスプレイ)を含むことができる。インタフェースシステム110はまた、走査システム100と、当該走査システム100に直接に接続された1つもしくは複数の外部デバイス(例えば、プリンタ、リムーバブル記憶媒体など)、および/または例えば1つもしくは複数のネットワークを介して走査システム100に間接的に接続された1つもしくは複数の外部デバイス(例えば、画像記憶システム、Scanner Administration Manager(SAM)サーバおよび/または他の管理サーバ、オペレータステーション、ユーザステーションなど)との間の通信およびデータ転送を容易にするように構成可能である。
【0022】
照明システム118は、試料116の少なくとも一部を照明するように構成される。照明システム118は、例えば、1つもしくは複数の光源および照明光学系を含むことができる。光源は、光出力を最大化するための凹型反射鏡と、熱を抑制するためのKG-1フィルタとを有する可変輝度ハロゲン光源を備えることができる。光源は、任意のタイプのアークランプ、レーザ、または他の光源を備えることができる。一実施形態では、照明システム118は、透過モードで試料116を照明し、これにより、ライン走査カメラ130および/またはエリア走査カメラ132は、試料116を透過する光エネルギをセンシングする。代替的または追加的に、照明システム118は、反射モードで試料116を照明するように構成することができ、それにより、ライン走査カメラ130および/またはエリア走査カメラ132は、試料116から反射された光エネルギをセンシングする。照明システム118は、光学顕微鏡の任意の既知のモードにおいて、試料116の検査に適するように構成することができる。
【0023】
一実施形態では、走査システム100は、蛍光走査のために走査システム100を最適化する落射照明システム126を含む。蛍光走査が走査システム100によってサポートされない場合、落射照明システム126は省略可能であることを理解されたい。蛍光走査とは、特定の波長(つまり、励起)の光を吸収できる光子感応性分子である蛍光分子を含む試料116を走査することである。また、これらの光子感応性分子は、より高い波長の光を放射する(つまり、発光する)。このフォトルミネッセンス現象の効率は非常に低いため、放射される光の量は、多くの場合非常に少ない。この放射量の少なさが、典型的には、試料116を走査してデジタル化するための従来技術(例えば、透過モード顕微鏡)を妨げている。
【0024】
有利には、蛍光走査を利用する走査システム100の一実施形態では、複数のリニアセンサアレイを含むライン走査カメラ130(例えば、時間遅延積分(TDI)ライン走査カメラ)を使用すると、ライン走査カメラ130の複数のリニアセンサアレイのそれぞれに対して試料116の同じ領域が露光されることによって、ライン走査カメラ130の光に対する感度が向上する。これは特に、放射される光レベルが低い微弱な蛍光試料を走査するときに有用である。したがって、蛍光走査の実施形態では、ライン走査カメラ130は、好ましくは、モノクロのTDIライン走査カメラである。モノクロ画像は、試料116上に存在する様々なチャネルからの実信号のより正確な表現を提供するので、蛍光顕微鏡検査において理想的である。当業者に理解されるように、蛍光試料は、異なる波長の光を放射する複数の蛍光染料で標識可能であり、これらは「チャネル」とも呼ばれる。
【0025】
さらに、様々な蛍光試料のローエンドおよびハイエンドの信号レベルは、ライン走査カメラ130がセンシングするための広い波長のスペクトルを示すので、ライン走査カメラ130がセンシングできるローエンドおよびハイエンドの信号レベルも同様に広いことが望ましい。したがって、蛍光走査の実施形態では、ライン走査カメラ130は、モノクロ10ビット64リニアアレイのTDIライン走査カメラを備えることができる。このような実施形態で使用するために、ライン走査カメラ130に様々なビット深度を採用できることに留意すべきである。
【0026】
可動ステージ112は、プロセッサ104またはモーション制御装置108の制御下で正確なX-Y移動をするように構成される。また、可動ステージ112は、プロセッサ104またはモーション制御装置108の制御下でZ移動をするように構成することができる。可動ステージ112は、ライン走査カメラ130および/またはエリア走査カメラ132による画像データの取り込み中に、試料116を所望の位置に位置決めするように構成される。また、可動ステージ112は、試料116を走査方向に実質的に一定速度に加速して、ライン走査カメラ130による画像データ取り込み中、実質的に一定速度を維持するように構成される。一実施形態では、走査システム100には、高精度かつ厳密に調整されたX-Yグリッドを採用し、可動ステージ112上の試料116の位置を補助することができる。一実施形態では、可動ステージ112は、X軸およびY軸の両方に採用された高精度エンコーダを有するリニアモータベースのX-Yステージである。例えば、非常に正確なナノメートルエンコーダを、走査方向の軸と、走査方向に対して垂直方向かつ走査方向と同一平面にある軸とで使用することができる。また、ステージ112は、試料116が配置されたスライドガラス114を支持するように構成される。
【0027】
試料116は、光学顕微鏡で検査できる任意のものであってよい。例えば、顕微鏡スライドガラス114は、組織および細胞、染色体、デオキシリボ核酸(DNA)、タンパク質、血液、骨髄、尿、細菌、ビーズ、生検材料、または死亡しているかもしくは生存しているか、染色されているかもしくは染色されていないか、標識されているかもしくは標識されていないかのいずれであってもよい任意の他のタイプの生物学的材料または物質を含む検体のための観察基板として頻繁に使用される。また、試料116は、相補的DNA(cDNA)もしくはリボ核酸(RNA)などの任意のタイプのDNAもしくはDNA関連物質、または任意のタイプのスライドもしくは油性基板上に堆積されたタンパク質の、一般的にマイクロアレイとして知られる任意およびすべての試料を含むアレイであってもよい。試料116は、マイクロタイタープレート(例えば、96ウェルプレート)でありうる。試料116の他の例には、集積回路基板、電気泳動レコード、ペトリ皿、フィルム、半導体材料、法医学材料、および機械加工部品が含まれる。
【0028】
対物レンズ120は、対物ポジショナ124に取り付けられ、一実施形態では、非常に正確なリニアモータを採用して、対物レンズ120を、対物レンズ120によって定められた光軸に沿って移動させる。例えば、対物レンズポジショナ124のリニアモータは、50ナノメートルのエンコーダを含むことができる。X、Y、および/またはZ軸におけるステージ112および対物レンズ120の相対位置は、走査システム100の全体的な動作のためのコンピュータ実行可能なプログラムされたステップを含む情報および命令を記憶するためのメモリ106を採用するプロセッサ104の制御下で、モーション制御装置108を用いて閉ループ方式で調整かつ制御される。
【0029】
一実施形態では、対物レンズ120は、透過モード照明顕微鏡、反射モード照明顕微鏡、および/または落射照明モード蛍光顕微鏡(例えば、オリンパス製40X、0.75NAまたは20X、0.75NA)に適したおよび/または落射モードの蛍光顕微鏡に適した平面アポクロマート(「APO」)無限遠補正対物レンズである。有利には、対物レンズ120は、色収差および球面収差を補正することが可能である。対物レンズ120は無限遠補正されているので、対物レンズ120を通過する光ビームが平行化された光ビームとなる対物レンズ120の上方の光路122に、焦点調整光学系128を配置することができる。焦点調整光学系128は、対物レンズ120によって取り込まれた光信号を、ライン走査カメラ130および/またはエリア走査カメラ132の光応答素子上にフォーカスさせるものであり、フィルタ、倍率変更レンズなどの光学部品を含むことができる。対物レンズ120は、焦点調整光学系128と組み合わせて、走査システム100の総合倍率を提供する。一実施形態では、焦点調整光学系128は、チューブレンズおよび任意の2xの倍率変更器を包含することができる。有利には、2Xの倍率変更器によって、20xの対物レンズ120は、40xの倍率で試料116を走査することが可能になる。
【0030】
ライン走査カメラ130は、画素142(「ピクセル」)の少なくとも1つのリニアアレイを備える。ライン走査カメラ130は、モノクロまたはカラーでありうる。カラーのライン走査カメラは、典型的には少なくとも3つのリニアアレイを有し、モノクロのライン走査カメラは、単一のリニアアレイまたは複数のリニアアレイを有することができる。また、カメラの一部としてパッケージされているか、撮像電子モジュールにカスタム統合されているかにかかわらず、任意のタイプの単一または複数のリニアアレイを使用することができる。例えば、3つのリニアアレイ(「赤-緑-青」すなわち「RGB」)のカラーライン走査カメラ、または96個のリニアアレイモノクロTDIを使用することもできる。TDIライン走査カメラは典型的には、検体のこれより前に撮像された範囲からの輝度データを合計することによって、出力信号に実質的に良好な信号対雑音比(「SNR」)を提供し、積分ステージ数の平方根に比例するSNRの向上をもたらす。TDIライン走査カメラは、複数のリニアアレイを備える。例えば、24個、32個、48個、64個、96個、またはそれより多いリニアアレイを有するTDIライン走査カメラが利用可能である。走査システム100もまた、512ピクセルを有するもの、1024ピクセルを有するもの、および4096ピクセルも有する他のものを含む様々なフォーマットで製造されたリニアアレイをサポートしている。同様にまた、様々なピクセルサイズのリニアアレイを走査システム100で使用することができる。任意のタイプのラインスキャンカメラ130を選択するための重要な必要条件としては、ステージ112の動きをライン走査カメラ130のライン速度と同期させることができ、その結果、試料116のデジタル画像取り込み中、ステージ112がライン走査カメラ130に対して動き続けることができることである。
【0031】
一実施形態では、ライン走査カメラ130によって生成された画像データは、メモリ106の一部に記憶され、プロセッサ104によって処理され、試料116の少なくとも一部の連続したデジタル画像を生成する。この連続したデジタル画像は、プロセッサ104によってさらに処理することができ、処理された連続したデジタル画像もメモリ106に記憶することができる。
【0032】
2つ以上のライン走査カメラ130を有する一実施形態では、ライン走査カメラ130のうちの少なくとも1つは、撮像センサとして機能するように構成された他のライン走査カメラ130のうちの少なくとも1つと組み合わせて動作する、焦点調整センサとして機能するように構成することができる。焦点調整センサは、撮像センサと同一の光軸上に論理的に位置決めすることができ、または焦点調整センサは、走査システム100の走査方向に対して撮像センサの前もしくは後に、論理的に位置決めすることができる。少なくとも1つのライン走査カメラ130が焦点調整センサとして機能するこのような実施形態では、焦点調整センサによって生成された画像データがメモリ106の一部に記憶され、プロセッサ104によって処理されてフォーカス情報が生成され、走査システム100により試料116と対物レンズ120との間の相対的な距離が調節されて、走査中の試料116のフォーカスが維持可能となる。さらに、一実施形態では、焦点調整センサとして機能する少なくとも1つのライン走査カメラ130を、焦点調整センサの複数の個別のピクセル142のそれぞれが光路122に沿って異なる論理的高さに位置決めされるように配向することができる。
【0033】
動作中、走査システム100の様々な構成要素およびメモリ106に記憶されたプログラムされたモジュールによって、スライドガラス114上に配置された試料116の自動走査およびデジタル化が可能になる。スライドガラス114は、試料116を走査するために、走査システム100の可動ステージ112上に固定されるように配置される。プロセッサ104の制御下で、可動ステージ112は、ライン走査カメラ130によるセンシングのために試料116を実質的に一定速度に加速し、ステージ112の速度は、ライン走査カメラ130のライン速度と同期する。画像データのストライプを走査した後、可動ステージ112は減速し、試料116を実質的に完全に停止させる。可動ステージ112は次いで、走査方向に対して直角に移動し、画像データの後続のストライプ(例えば、隣接するストライプ)の走査のために試料116を位置決めする。試料116のすべての部分またはすべての試料116が走査されるまで、追加のストライプが続いて走査される。
【0034】
例えば、試料116のデジタル走査中、試料116の連続したデジタル画像は、共に組み合わされて画像ストライプを形成する複数の連続した視野として取得することができる。複数の隣接する画像ストライプも同様に共に組み合わされて、試料116の一部または全体の連続したデジタル画像を形成する。試料116の走査は、垂直画像ストライプまたは水平画像ストライプの取得を含むことができる。試料116の走査は、上から下、下から上、またはその両方(つまり、双方向)のいずれであってもよく、試料116上の任意の点で開始することができる。代替的に、試料116の走査は、左から右、右から左、またはその両方(つまり、双方向)のいずれであってもよく、試料116上の任意の点で開始することができる。画像ストライプは、隣接または連続した方式で取得する必要はない。さらに、試料116の結果として生じる画像は、試料116の全体の画像、または試料116の一部のみの画像でありうる。
【0035】
一実施形態では、コンピュータ実行可能命令(例えば、プログラムされたモジュールおよびソフトウェア)がメモリ106に記憶されており、実行時、走査システム100が本明細書に記載された様々な機能(例えば、グラフィカルユーザインタフェースの表示、開示された処理の実行、走査システム100の構成要素の制御など)を実行することを可能にする。本明細書では、用語「コンピュータ可読記憶媒体」は、プロセッサ104による実行のために、走査システム100にコンピュータ実行可能命令を記憶し、提供するために使用される任意の媒体を指すために使用される。これらの媒体の例は、メモリ106および走査システム100と、直接に(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、無線通信プロトコルなどを介して)、または間接的に(例えば、有線および/または無線ネットワークを介して)通信可能に結合された任意のリムーバブル記憶媒体(図示せず)または外部記憶媒体(図示せず)を含む。
【0036】
図1Bは、電荷結合素子(「CCD」)アレイとして実装可能な、単一のリニアアレイ140を有するライン走査カメラ130を示す。単一のリニアアレイ140は、複数の個別のピクセル142を備える。図示の実施形態では、単一のリニアアレイ140は、4096個のピクセル142を有する。代替実施形態では、リニアアレイ140は、より多くのまたはより少ないピクセルを有することができる。例えば、リニアアレイの一般的なフォーマットは、512個、1024個、および4096個のピクセルを含む。ピクセル142は、線形に配列され、リニアアレイ140の視野134を定める視野134のサイズは、走査システム100の倍率にしたがって変化する。
【0037】
図1Cは、3つのリニアアレイ140を有するライン走査カメラ130を示しており、それぞれはCCDアレイとして実装することができる。3つのリニアアレイ140は、組み合わせてカラーアレイ150を形成する。一実施形態では、カラーアレイ150内のそれぞれの個別のリニアアレイは、例えば、赤、緑または青を含む異なる色の輝度を検出する。カラーアレイ150内のそれぞれの個別のリニアアレイ140からのカラー画像データは、組み合わされて、カラー画像データの単一の視野134を形成する。
【0038】
図1Dは、複数のリニアアレイ140を有するライン走査カメラ130を示しており、それぞれCCDアレイとして実現することができる。複数のリニアアレイ140は、組み合わされてTDIアレイ160を形成する。有利には、TDIライン走査カメラは、検体のこれより前に撮像された範囲からの輝度データを合計することによって、その出力信号に実質的に良好なSNRを提供し、リニアアレイ140の数の平方根に比例するSNRの向上をもたらすことができる(積分ステージとも呼ばれる)。TDIライン走査カメラは、より多様な数のリニアアレイ140を備えることができる。例えば、TDIライン走査カメラの一般的なフォーマットは、24個、32個、48個、64個、96個、120個およびさらに多くのリニアアレイ140を含む。
【0039】
2.物理的キャリブレーションスライド
開示された物理的キャリブレーションスライドは、ドイツ国ヌスロッホ在のライカバイオシステムズ(登録商標)によって製造された明視野スライド(blight-field slide)スキャナなどの走査システム100のセットアップ、位置合わせ、および較正のために使用することができる。一実施形態では、物理的キャリブレーションスライドは、25ミリメートル(mm)×75mm×1mmの物理的寸法を有するスライドガラス(例えば、スライドガラス114のような)でありうる。しかし、他のサイズも可能であることを理解されたい。
【0040】
物理的キャリブレーションスライドは、複数の特徴部を備えることができ、各特徴部は1つもしくは複数の較正動作をターゲットとする。走査システム100は、物理的キャリブレーションスライド上の複数の特徴部のうちの1つもしくは複数を自動的にまたは手動介入で走査することができる。走査システム100は、次いで、走査された各特徴部の画像を使用して、較正パラメータの計算、カメラ130および/または132の位置合わせなどの較正動作を(例えば、プロセッサ104によって)実行することができる。計算された任意の較正パラメータは、走査システム100の設定ファイル(例えば、メモリ106内)に記憶され、走査システム100の各初期化中にロードされて再利用することができる。
【0041】
2.1.概要
図2Aは、一実施形態による物理的キャリブレーションスライド200を示す。図示の実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、幅(つまり短軸に沿って)25mmおよび長さ(つまり長軸に沿って)75mmを有する。図示の実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200の短軸および長軸は、それぞれ走査システム100のX軸およびY軸に対応していることを理解されたい。しかし、代替実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200の短軸および長軸は、それぞれY軸およびX軸に対応することができる。物理的キャリブレーションスライド200は、ラベル領域210と特徴部ボックス220とを備えることができる。
【0042】
ラベル領域210は、物理的キャリブレーションスライド200の目的(例えば、「セットアップ‐キャリブレーションスライド」)、物理的キャリブレーションスライド200の型式(例えば、型式番号、リビジョン番号など)、物理的キャリブレーションスライド200または物理的キャリブレーションスライド200の使用が意図されている走査システム100の製造業者などを識別するテキストおよび/または画像を備えることができる。ラベル領域210は、サイズおよび位置において、デジタル病理学に使用される典型的なスライドガラス114のラベル領域(例えば、バーコードを備える)に対応することができる。
【0043】
特徴部ボックス220は、較正に使用される座標系の境界またはスケーリングファクタを定める線によって区別することができる。一実施形態では、特徴部ボックス220は、48mm×22mmであり、50マイクロメートル(μm)の太さの明確な境界線(例えば、クロムエッチング)によって描くことができる。特徴部ボックス220は、複数の特徴部222を備える。各特徴部222は、走査システム100によって実行される1つもしくは複数の較正動作をターゲットとする。1つもしくは複数の(潜在的にすべてを含む)特徴部222は、クロムエッチングによって作成されたパターンを備えることができる。例えば、クロムは、物理的キャリブレーションスライド200のガラス基板上に堆積させてよく、特徴部222を表すパターンを、任意の周知の方法を用いて、堆積したクロムにエッチングすることができる。代替実施形態では、特徴部を表すパターンを作成するために、クロムエッチングではなく油性の技術を使用することができる。このような技術には、限定するものではないが、レーザ書込み、電子ビーム書込みなどが含まれる。しかし、このような技術は、より高い精度を提供することができるが、一般により高価である。
【0044】
図2Bは、一実施形態による、物理的キャリブレーションスライド200の特定の例を示す。特徴部222の特定の選択および配列が図2Bに示されているが、特徴部222の異なる選択および/または配列を使用することもできる。特徴部222の1つもしくは複数は、物理的キャリブレーションスライド200の両軸(つまり、短軸および長軸)に沿って走査するように設計することができる。注目すべき1つの例外としては、走査軸(例えば、物理的キャリブレーションスライド200の長軸または短軸のいずれかに対応しうる)に有利になるように配向することができる、ロンキールーリング特徴部(傾斜および/またはストレート)でありうる。
【0045】
物理的キャリブレーションスライド200にエッチングされた様々な線(例えば、特徴部ボックス220、特徴部222のパターンなどを形成するための)は、特に明記しない限り、すべて一般に均一な太さでありうる。好ましい実施形態では、線はすべて一般に50μmの太さである。代替実施形態では、線はすべて一般に100μmの太さでありうる。しかし、特定の設計およびコスト目標に応じて、異なる線の異なる太さを含む、異なる線の太さを使用することもできる。
【0046】
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200にはカバースリップは使用されない。カバースリップは、不均一な接着および経年劣化による気泡および/または接着剤の亀裂によって、物理的キャリブレーションスライド200全体に撮像のばらつきをもたらすおそれがある。このようなばらつきは、走査システム100のテストの一部に影響を与える。しかし、スキャナがカバースリップされた試料を走査するために最適化されている場合には、変調伝達関数(MTF)テストのためにカバースリップを追加することができる。
【0047】
2.2.傾斜ロンキールーリング
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、傾斜ロンキールーリング特徴部222Aおよび222Bを備える。傾斜ロンキールーリング特徴部222Aおよび222Bは、MTFテストの実行および/または走査システム100の分析モデルの分析のために、走査システム100によって使用することができる。図3は、一実施形態による、傾斜ロンキールーリング特徴部222Aおよび222Bの一部のクローズアップを示す。図示のように、傾斜ロンキールーリング特徴部222Aは、物理的キャリブレーションスライド200の短軸に対して95°傾斜した平行ロンキールーリングを備え、一方、傾斜ロンキールーリング特徴部222Bは、短軸に対して5°傾斜した平行ロンキールーリングを備える。一実施形態では、傾斜ロンキールーリング特徴部222Aおよび/または222Bの分解能は、19.68ライン対/ミリメートル(LP/mm)または500LP/インチでありうる。傾斜ロンキールーリング特徴部222Aおよび222Bのそれぞれは4mm×20mmであり、長い方の寸法が物理的キャリブレーションスライド200の長軸と平行でありうる。
【0048】
2.3.ストレートロンキールーリング
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、ストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび222Dを備える。ストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび222Dは、走査システム100の位置合わせ、モーションテスト、色収差テスト、フォーカスチェック、振動テスト、左右のフォーカステスト、および/またはマクロフォーカス(MF)リミットセットアップによって使用することができる。一方のストレートロンキールーリング特徴部222Cは、物理的キャリブレーションスライド200の長軸に対して平行に延在する平行線を備えることができ、他方のストレートロンキールーリング特徴部222Dは、物理的キャリブレーションスライド200の短軸に対して平行に延在する平行線を備えることができる。換言すれば、別個のストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび222Dは、互いに直交しうる。ストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび/または222Dの分解能は、100LP/mmでありうる。ストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび222Dのそれぞれは4mm×20mmであってよく、長い方の寸法が物理的キャリブレーションスライド200の長軸と平行である。
【0049】
上述したように、ストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび222Dは、フォーカスのチェックに使用することができる。例えば、図4Aは、左から右に、同一のストレートロンキールーリング特徴部222Cのフォーカスが合っている状態とフォーカスが合っていない状態との両方を示している。
【0050】
上述したように、ストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび222Dは、振動テスト(例えば、測定)に使用することができる。例えば、図4Bは、左から右に、同一のストレートロンキールーリング特徴部222Cの振動がない状態と振動がある状態との両方を示している。図示のように、隣接する平行なロンキー線間の可変距離(variable distance)を用いて、走査システム100における振動の影響を測定することができる。例えば、影響は、物理的キャリブレーションスライドの走査画像の隣接する平行なロンキー線間の距離と、物理的キャリブレーションスライド200上の当該隣接する平行なロンキー線間の既知の実際距離との差に基づいて計算される誤差として表すことができる。
【0051】
上述したように、ストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび222Dは、色収差テストに使用することができる。例えば、図4Cは、ストレートロンキールーリング特徴部222Cを用いた横方向色収差テストを示す。
【0052】
上述したように、ストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび222Dは、モーションテストに使用することができる。例えば、図4Dは、ストレートロンキールーリング特徴部222Dを用いた、走査速度テストおよび3線センサ間隔(trilinear sensor spacing)テストを示す。左側は、正しい走査速度で取得したストレートロンキールーリング特徴部222Dの画像を示し、一方、右側は、誤った走査速度で取得した同一のストレートロンキールーリング特徴部222Dの画像を示す。正しい画像のアスペクト比を実現するために、走査システム100の走査速度(例えば、ステージ112の速度)は、ライン走査カメラ130のライン速度と同期されるべきである。色ずれは、ライン走査カメラ130のライン空間補正パラメータを調節することで補正することができるが、画像のアスペクト比は不正確となる。
【0053】
上述したように、ストレートロンキールーリング特徴部222Cおよび222Dは、位置合わせに使用することができる。例えば、図4Eは、ストレートロンキールーリング特徴部222Dを用いたライン走査カメラ130の短軸上のカメラの回転の検出を示す。左側は一方向の回転を示し、右側は逆方向の回転を示し、中央は位置合わせされている状態(つまり、回転なし)を示す。
【0054】
2.4.スターターゲット
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、スターターゲット特徴部222Eを備える。スターターゲット特徴部222Eは、位置合わせマークとして、また、走査システム100による焦点調整テストのターゲットとして使用することができる。例えば、図5Aは、一実施形態による、スターターゲット特徴部222Eのクローズアップを示す。図示のように、スターターゲット特徴部222Eは、36個のウェッジ対、つまり合計72個のウェッジを有する円510を備える。各ウェッジ対は、完全にエッチングされたウェッジ520Aとクロムのウェッジ520Bとの両方を備え、各ウェッジは円510の5°を表す。さらに、円510は、コア530を備えることができる。一実施形態では、円510の外径は2mmであり、円510のコア530は、0.030mmの直径で完全にエッチングされる。製造可能な分解能に応じて、異なる数およびサイズのウェッジ520および/または異なるサイズのコア540(例えば、0.001mmの直径)が使用可能であることを理解されたい。
【0055】
図5Aに示されているように、スターターゲット特徴部222Eは、コア530と円510の周囲との間に1つもしくは複数のエッチングされた内側円540を備えることができる。例えば、少なくとも1つの内側円540は、18LP/mm相当のマクロ画像分解能のために、0.637mmの内径で50μmの線の太さを有することができる。マクロフォーカスでの位置合わせ中、スターターゲット特徴部222Eは、この内側円540の外側で分解可能であるべきである。したがって、この内側円540は、マクロ撮像の合否テストに使用できる。
【0056】
図5Bは、一実施形態による、スターターゲット特徴部222Eのコア530のクローズアップを示す。一実施形態では、スターターゲット特徴部222Eのコア530は、スターターゲット特徴部222Eの中心にドット550(例えば、クロム)を備えることができる。例えば、ドット550は、1.3μmの直径を有することができる。コア530および/またはドット550は、微細な位置合わせ、位置決め、および/または登録(例えば、マクロコーナーインデックスの位置合わせ)に使用することができる。
【0057】
2.5.クロスヘア
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、クロスヘア特徴部222Fを備える。例えば、図6は、一実施形態による、クロスヘア特徴部222Fのクローズアップを示す。図示のように、クロスヘア特徴部222Fは、外側長方形610をほぼ満たす中心クロスヘア620を囲む外側長方形610を備えることができる。さらに、より小さい、オフセットクロスヘア630を、外側長方形610内の1つのコーナー(例えば、右下のコーナー)に配置することができる。各クロスヘア620、630は、直交する2つの二等分線を備えることができる。外側長方形610および/または中心クロスヘア620の線は50μmの太さであってよく、一方、オフセットクロスヘア630の線は10μmの太さであってよい(例えば、0.26μm/ピクセルの分解能で約38ピクセルに相当する)。中心クロスヘア620は3mm×9mmであってよく、一方、オフセットクロスヘア630は1.5mm×2mmであってよい。一実施形態では、外側長方形610は、幅(つまり、短軸に沿って)4mmを有する。
【0058】
クロスヘア特徴部222Fの中心クロスヘア620は、マクロ撮像における座標系の中心を定義することができ、例えば、特徴部ボックス220の正確な中心に位置することができる。オフセットクロスヘア630は、高分解能カメラ(例えば、ライン走査カメラ130および/または焦点調整カメラ132の撮像センサ)間の微細な位置合わせに使用することができる。
【0059】
2.6.クリア領域
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、クリア領域特徴部222Gを備える。クリア領域特徴部222Gは、照明補正のために使用可能なブランクまたはクリア領域(例えば、完全にエッチングされたもの)を備える。図示のように、傾斜ロンキールーリング特徴部222Bとストレートロンキールーリング特徴部222Cとの間の範囲を、特徴部222Gのクリア領域として使用することができる。一例として、クリア領域特徴部222Gは、4mm×10mmであってよく、長い方の寸法が物理的キャリブレーションスライド200の長軸と平行である。
【0060】
2.7.O字型
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、O字型特徴部222Hを備える。O字型特徴部222Hは、マクロ撮像のための「O」字型を備える。図7は、一実施形態によるこうした「O」字型を示す。O字型特徴部222Hは、回転対称であり、走査軸から独立でありうる。「O」字型の線の太さは、300μm以上(例えば、350μm)であってよく、識別を容易にするために約20ピクセルであってよく、「O」字型の直径は3mmであってよい。「O」字型は、「O」字型の線にクロムが残るように、クロムエッチングによって形成することができる。有利には、「O」字型のエッジはマクロ焦点調整の判定に使用できる。
【0061】
2.8.分解能ターゲット
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、分解能ターゲット特徴部222Iを備える。分解能ターゲット特徴部222Iは、マクロおよび/またはマイクロ撮像のための1つもしくは複数の分解能ターゲットを備えることができる。図8に示す実施形態では、分解能ターゲット特徴部222Iは、米国国立標準技術研究所(NIST)および米国国立標準局(NBS)の1010A規格に準拠した7つの分解能ターゲットを備える。これらの分解能ターゲットとしては、位置標識として8.0サイクル/mmターゲット(例えば、線幅が62.5μm)、マクロ撮像用の14.0、16.0、18.0サイクル/mmターゲット(例えば、各線幅が約2ピクセルを表す)、4x撮像用の101.2サイクル/mmターゲット、10x撮像用の255.2サイクル/mmターゲット(例えばベストエフォートのため)、20x撮像用の510.0サイクル/mm(または500.0サイクル/mm、または510.2サイクル/mm)ターゲット(例えば1μmの線幅)が挙げられる。
【0062】
一実施形態では、分解能ターゲット特徴部222Iの分解能ターゲットの1つもしくは複数を、拡大画像上での識別を容易にするために円で囲むことができる。例えば、図8に示されているように、510.0サイクル/mmおよび255.2サイクル/mmの分解能ターゲットの両方の周りに円をエッチングすることができる。
【0063】
2.9.ブルズアイ
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、ブルズアイ特徴部222Jを備える。ブルズアイ特徴部222Jは、歪みテスト、スティッチングエラーテスト、カメラウォークオフテスト、エリアカメラ回転テスト、および/またはストライプ位置合わせテストに使用することができる。ブルズアイ特徴部222Jは、ブルズアイの海(つまり、ブルズアイの2次元アレイ)を備えることができる。海は、密集したブルズアイの1000×1000の正方形(つまり、100万個のブルズアイ)でありうる。しかし、設計やコストの制約に応じて、他の寸法も可能である。図9Aは、一実施形態によるブルズアイの海の7×11の部分を示す。各ブルズアイは、20μmの円の中心にある5μmのドットを備えてよく、ブルズアイ特徴部222Jのブルズアイの海全体は、両軸に沿って(つまり、物理的キャリブレーションスライド200の短軸および長軸の両方に沿って)対称な20mm×20mmの正方形でありうる。
【0064】
上述したように、ブルズアイ特徴部222Jは、歪みテストに使用することができる。図9Bは、ブルズアイの海を用いた1次元および2次元の歪みの例を示す。
【0065】
上述したように、ブルズアイ特徴部222Jは、スティッチングエラーテストに使用することができる。図9Cは、ブルズアイの海の一部を用いた上下スティッチングエラーと左右スティッチングエラーとの例を示す。
【0066】
上述したように、ブルズアイ特徴部222Jは、カメラウォークオフテスト(例えば、走査システム100が複数のカメラ130および/または132を備える場合、同期していないカメラをテストするため)に使用することができる。図9Dは、ブルズアイの海を用いたカメラウォークオフテストの一例を示す。
【0067】
上述したように、ブルズアイ特徴部222Jは、エリア走査カメラ132の回転を検出するために使用することができる。図9Eは、エリアカメラの回転テストの一例を示す。左側は一方向の回転を示し、右側は逆方向の回転を示し、中央は位置合わせされている状態(つまり、回転なし)を示す。
【0068】
2.10.トライアングル
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、少なくとも1つのトライアングル特徴部222Kを備える。トライアングル特徴部222Kは、2つのカメラ130(例えば、主撮像センサおよび焦点調整センサ)および/または132間の視野(FOV)を一致させるため、および/またはマクロ画像焦点調整のために使用することができる。図10に示すように、一実施形態によれば、トライアングル特徴部222Kは、45°の二等辺三角形を備えることができる。一例として、トライアングルは、幅3mmの底面、3.6mmの高さを有し、太さ50μmの線で形成することができる(例えば、13μm/ピクセルのマクロ画像分解能で4ピクセルを用いて解決される)。一実施形態では、(例えば、物理的キャリブレーションスライド200の短軸に沿って特徴部222Fの反対側に)互いに90°に配向された2つのトライアングル特徴部222Kが設けられてもよい。
【0069】
2.11.対称コーナー
一実施形態では、物理的キャリブレーションスライド200は、物理的キャリブレーションスライド200の短軸および長軸の両方に沿って対称な、「L」パターンで配列されたドットおよび/または正方形のアレイなどの、1つもしくは複数の組の対称コーナー特徴部222を備える。各コーナー特徴部222は、剛体の(例えば、横方向および/または回転方向)アライメント、つまり微細な位置合わせにおける感度の向上のために使用することができる。
【0070】
図11は、コーナー特徴部222の2つの例を示す。物理的キャリブレーションスライド200は、これらの例の一方、両方、またはどちらもない状態を含むことができる。両方の例において、コーナー特徴部222は、ボックスの対向する2つのコーナーにある完全にエッチングされた2組の幾何学的図形を備え、幾何学的図形の組は、ボックスの両方の対角線に対して互いに対称である。各コーナーにおいて、幾何学的図形は、最大の図形がコーナーに配列され、追加の図形が、コーナーからサイズが小さくなりながら「L」パターンで延在する。図形の中心間は互いに0.5mmで離間し、全体で0.7mmのFOVをカバーすることができる。
【0071】
左側の例では、幾何学的図形は、コーナーの正方形と、それぞれが離間し(例えば、中心間0.05mm)、コーナーの正方形から直交する方向に延在する正方形の2つのアレイとを有する正方形である。コーナーの正方形は100μmの幅を有してよく、両方のアレイの正方形は、コーナーの正方形から最も遠いところからコーナーの正方形に最も近いところへ向かって、それぞれ5μm、10μm、25μm、50μmの幅を有することができる。
【0072】
右側の例では、幾何学的図形は、ドットと、それぞれが離間し(例えば、中心間0.05mm)、コーナーのドットから直交する方向に延在するドットの2つのアレイとを有するドットである。コーナーのドットは100μmの直径を有してよく、両方のアレイのドットは、コーナーのドットから最も遠いところからコーナーのドットに最も近いところへ向かって、それぞれ5μm、10μm、25μm、50μmの直径を有することができる。同一のコーナー特徴部222内の異なる図形を含めて、ドットまたは正方形以外の異なる幾何学的図形が使用可能であることを理解されたい。
【0073】
一実施形態では、コーナー特徴部222は、カラーセンサ(例えば、ライン走査カメラ130の主撮像センサ)と、第2のセンサ(例えば、ライン走査カメラ130および/またはエリア走査カメラ132の焦点調整センサ)との両方に対するセンサの垂直性をチェックするために使用することができる。特に、コーナー特徴部222の走査画像によって、それぞれのセンサが傾いている(つまり、垂直でない)か否かを実証できる。
【0074】
一実施形態では、コーナー特徴部222は、ライン走査カメラ130および/またはエリアカメラ132の主撮像センサおよび焦点調整センサなどの2つのカメラの位置合わせに使用することができる。特に、両方のカメラからのコーナー特徴部222の画像を互いに重ね合わせることができる。暈けている場合は、2つのカメラは位置合わせされていない。次に、2つの重ね合わせた画像が位置合わせされる(つまり、暈けがなくなる)まで、カメラの横方向のシフトおよび/または回転を実行することができる。
【0075】
開示した実施形態の上記の説明は、当業者が本発明を製造または使用することを可能にするために提供されているものである。これらの実施形態に対する様々な修正は当業者にとって容易に明らかであり、本明細書に記載された全般的な基本方式は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用することができる。したがって、本明細書で提示される説明および図面は、本発明の現時点での好ましい実施形態を表し、したがって、本発明によって広く考慮される主題を表すことが理解される。本発明の範囲が当業者にとって明白である他の実施形態を完全に包含すること、ならびに本発明の範囲がこれにより限定されないことをさらに理解されたい。
【0076】
「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの1つもしくは複数」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つもしくは複数」、および「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」などの本明細書に記載された組み合わせは、A、Bおよび/またはCの任意の組み合わせを含み、かつ複数のA、複数のB、または複数のCを含むことができる。特に、「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの1つもしくは複数」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つもしくは複数」、および「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」などの組み合わせは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはA、BおよびCであってよく、任意のそのような組み合わせは、その構成要素A、B、および/またはCの1つもしくは複数のメンバを含むことができる。例えば、AおよびBの組み合わせは、1つのAおよび複数のB、複数のAおよび1つのB、または複数のAおよび複数のBを含むことができる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11