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特許7507774骨障害治療のためのGIP及びGLP-2受容体を標的とするペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】骨障害治療のためのGIP及びGLP-2受容体を標的とするペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/00 20060101AFI20240621BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 5/18 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
A61K38/16
A61P19/00
A61P19/10
A61P19/08
A61P35/00
A61P1/02
A61P21/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P5/18
A61P3/00
A61L27/54
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021549182
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020054604
(87)【国際公開番号】W WO2020169792
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】19305210.7
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512259891
【氏名又は名称】ユニベルシテ アンジェ
(73)【特許権者】
【識別番号】521367363
【氏名又は名称】サントル オスピタリエ ユニベルシテール ダンジェ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム マビロー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ ミエチコウスカ
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169171(JP,A)
【文献】特表2004-508410(JP,A)
【文献】特表2002-526554(JP,A)
【文献】国際公開第2018/069442(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00
A61K 38/16
A61L 27/54
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-配列HGEGSFGSDMSIALDKLAARDFVNWLLQTKITD(配列番号3)のGL-0001;
-配列HGEGSFGSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH (配列番号4)のGL-0007;
-配列HGEGSFGSDMSIALDKLAARDFVNWLLQTKITDGAADDDDDD(配列番号5)のGL-0001-タグ;
-配列HGEGSFVSDMSIVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH (配列番号6)のGL-0002;
-配列HGEGSFVSEMSIVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH (配列番号7)のGL-0003;
-配列HGEGSFVSDMSVVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH (配列番号8)のGL-0004;
-配列HGEGSFVSDLSVVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH (配列番号9)のGL-0005;
-配列HGEGSFVSDFSVVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH (配列番号10)のGL-0006;
-配列HGEGSFTSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH (配列番号11)のGL-0008;及び
-配列HGEGSFVSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH (配列番号12)のGL-0009
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離されたペプチド。
【請求項2】
C末端リシンがアミド化される、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
C末端にペプチドタグをさらに含む、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
ペプチドが、ペプチド:
-配列HGEGSFGSDMSIALDKLAARDFVNWLLQTKITD(配列番号3)のGL-0001;
-配列HGEGSFGSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号4)のGL-0007;
-配列HGEGSFGSDMSIALDKLAARDFVNWLLQTKITDGAADDDDDD(配列番号5)のGL-0001-タグ;
-配列HGEGSFVSDMSIVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号6)のGL-0002;
-配列HGEGSFVSEMSIVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号7)のGL-0003;
-配列HGEGSFVSDMSVVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号8)のGL-0004;
-配列HGEGSFVSDLSVVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号9)のGL-0005;
-配列HGEGSFVSDFSVVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号10)のGL-0006;
-配列HGEGSFTSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号11)のGL-0008;及び
-配列HGEGSFVSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号12)のGL-0009
からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のペプチド
【請求項5】
配列HGEGSFGSDMSIALDKLAARDFVNWLLQTKITD(配列番号3)のペプチドGL-0001である、請求項記載のペプチド。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に定義されるペプチドを含む医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に定義されるペプチドを含む移植可能な医療機器。
【請求項8】
対象の骨障害を治療及び/又は予防すための、請求項1~のいずれか項に記載のペプチド
【請求項9】
骨障害が、原発性又は二次性の骨粗鬆症(閉経後、グルココルチコイド誘発性、固定化誘発性及び老人性骨粗鬆症を含む)、骨減少症、糖尿病性骨疾患、骨軟化症及びくる病、骨の骨ジストロフィー、骨のパジェット病悪性腫瘍の高カルシウム血症、骨転移による骨減少症、骨肉腫、ユーイング腫瘍、骨軟骨腫、癌治療によって引き起こされる骨異常、骨形成不全症、骨髄炎軟骨無形成症、無血管性骨壊死、骨大理石症、骨化性筋炎、歯周病、副甲状腺機能亢進症、関節リウマチにおける関節周囲びらん、強直性脊椎炎における骨びらん、及び神経性無食欲症における骨減少症から選択される、請求項に記載のペプチド
【請求項10】
骨障害が骨形成不全症である、請求項8に記載ペプチド
【請求項11】
骨障害が代謝障害又はホルモン障害の骨における発現である、請求項に記載ペプチド
【請求項12】
対象の骨障害を治療及び/又は予防するための、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項13】
骨障害が、原発性又は二次性の骨粗鬆症(閉経後、グルココルチコイド誘発性、固定化誘発性及び老人性骨粗鬆症を含む)、骨減少症、糖尿病性骨疾患、骨軟化症及びくる病、骨の骨ジストロフィー、骨のパジェット病、悪性腫瘍の高カルシウム血症、骨転移による骨減少症、骨肉腫、ユーイング腫瘍、骨軟骨腫、癌治療によって引き起こされる骨異常、骨形成不全症、骨髄炎、軟骨無形成症、無血管性骨壊死、骨大理石症、骨化性筋炎、歯周病、副甲状腺機能亢進症、関節リウマチにおける関節周囲びらん、強直性脊椎炎における骨びらん、及び神経性無食欲症における骨減少症から選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
骨障害が骨形成不全症である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
骨障害が、代謝障害又はホルモン障害の骨における発現である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~のいずれか一項に定義されるペプチドを含む骨充填生体材料。
【請求項17】
骨再生に使用する請求項16に記載の骨充填材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、骨脆弱性は重要な公衆衛生問題である。実際、人口の高齢化に伴い、骨折数は絶えず増加しており(2013年にフランスで37万7000件の骨折)、社会経済的に影響がある。
【0003】
骨組織は、機械的ストレス(重力、運動など)に適応するだけでなく、代謝ストレス(カルシウム、リン酸、タンパク質などの放出又は貯蔵)にも適応するために永久的にリモデリングされる組織であり、骨形成と骨吸収の間のバランスのとれたシステムを表す。骨のリモデリングは、リン酸カルシウム代謝ホルモン、機械的負荷、又は局所因子などのいくつかの因子に依存する。
【0004】
骨脆弱性は、骨形成及び骨吸収活性の不均衡、骨リモデリング中、又は骨細胞活性の害時に起こる。これにより、骨組織の量が減少したり、骨基質の質が変化したり、骨基質の質が変化したりし、骨の脆弱性が増加し、骨折のリスクが高くなる。
【0005】
骨脆弱性を治療するためのいくつかの治療溶液が存在するか(ビタミンD、ビスフォスフォネート、抗RANKL、組換えカルシトニン、組換えパラソルモンの間欠注射、エストロゲン受容体のモジュレーター)、又は市販されようとしている(抗カテプシンK、抗スクレロスチン、PTHrP類似体)。しかしながら、これらの分子は使用制限を示し、骨脆弱性に苦しむ全ての患者に投与することはできない。さらに、これらの分子のいくつかは副作用(下顎骨壊死、大腿骨の非定型骨折、癌のリスク)を有し、患者の厳格なモニタリングと定期的なフォローアップを必要とする。さらに、これらの分子の効率は依然として中等度であり、それらの使用にもかかわらず、骨脆弱性骨折のわずか50%が進行中の治療の場合に予防されると推定され、新しい治療経路を見出す必要性が確認された。
【0006】
本発明は、この必要性を満たす。
【0007】
最近、腸内の食器の侵入後に放出される腸内ホルモンが骨リモデリングに作用することが示された。
【0008】
消化管から分泌される多量の生理活性ペプチドの中で、インクレチンと呼ばれる一群のペプチドがエネルギー代謝の重要な調節因子として浮上してきた。インクレチンは、グルコースに応答して腸から分泌され、グルコース依存的にインスリン放出を刺激するホルモンである。インスリン親和性作用を有するいくつかのホルモンは腸から分泌されるが、グルコース依存性インスリン親和性ポリペプチド(GIP)及びグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、これまでに同定された唯一の2つの生理学的インクレチンである。最近、ノックアウト前臨床動物モデルに基づいて、GIPとGLP-1の両方が糖尿病誘発骨脆弱性に有益である可能性が強調されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、特別に設計されたコンセンサス配列を有するペプチドが、それぞれのGIP及びGLP-2天然ペプチドと同様にグルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)受容体及びグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)受容体の両方に結合し、活性化し、それによって骨リモデリングを制御することができるという、本発明者らによる予想外の発見から生じる。特に、本発明者らは、この二重標的ペプチドが、各天然ペプチドよりも高いレベルで骨芽細胞によって産生されるコラーゲンマトリックスの酵素的架橋を増加させ、生成された破骨細胞の数を、各天然ペプチドよりも重要な方法で減少させることを示す。
【0010】
したがって、本発明は、配列番号1:
HGEGSFXSDX10SX1213LDKLAARDFVNWLLQTK(配列番号1)
のコンセンサスアミノ酸配列を含む単離されたペプチドに関し、ここで、Xは任意のアミノ酸残基であり、X10は任意のアミノ酸残基であり、X12は任意のアミノ酸残基であり、X13は任意のアミノ酸残基である。
【0011】
本発明はまた、本発明のペプチドを含む医薬組成物に関する。
【0012】
本発明は、さらに、特に本発明のペプチドでコーティングされた、移植可能な医療装置に関する。
【0013】
本発明の別の目的は、移植可能な医療機器をコーティングするための本発明のペプチドのインビトロでの使用である。
【0014】
本発明のさらなる目的は、対象における骨障害を治療及び/又は予防する方法で使用するための本発明のペプチド又は本発明の医薬組成物に関する。
【0015】
特定の実施態様において、前記骨障害は、骨における代謝性又はホルモン性障害の発現である。
【0016】
本発明はまた、本発明のペプチドを含む骨充填生体材料に関する。
【0017】
本発明は、骨再生のための使用のために本発明のペプチドを含む骨充填生体材料に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1:二重GIP/GLP-2類似体の設計のためのインシリコ戦略。最終目標は、配列とヒトGIP1-30orヒトGLP-2との間に少なくとも50%の相同性を有するコンセンサス配列を得ることであった。ステップ3における小文字は、n:負に荷電したアミノ酸、p:極性アミノ酸及びa:脂肪族アミノ酸を表す。
図2図2~3:GIP及びGLP-2の関節投与がコラーゲン成熟度及び破骨細胞数に及ぼす影響。図2:溶媒(CTRL)、又は200nM[D-Ala]-GIP1-30NH2(GIP)、[Gly]-GLP-2(GLP-2)、又は両方の分子(GIP+GLP-2)の存在下で、MC3T3-E1培養物中のコラーゲン成熟度を評価した。:p<0.05、及び***:p<0.001対溶媒処理培養物;$$:p<0.01対[D-Ala]GIP1-30NH2-処理培養物;及び#:p<0.05対[Gly]-GLP-2処理培養物。
図3図3:ウェルあたりの新たに生成された破骨細胞数(N.Oc/ウェル)が、健常人から分離され、25ng/mlのヒトM-CSF及び50ng/mlのヒト可溶性RANKL(MR)の存在下で培養されたヒト末梢血単核細胞において評価した。このパラメータはまた、1nM[D-Ala]-GIP1-30NH2(GIP)、[Gly]-GLP-2(GLP-2)又は両方の分子(GIP+GLP-2)を補充したMR処理培養で評価した。***:p<0.001対MR;$:p<0.05、及び$$$:p<0.001対[D-Ala]GIP1-30NH2-処理培養物、並びに###:p<0.001対[Gly]-GLP-2処理培養物。
図4図4:骨芽細胞死に対するGL-0001の作用。マウスMC3T3-E1細胞を、生理食塩水、種々の濃度のGL-0001又は10-6Mロシグリタゾンの存在下で24時間培養した。*p<0.05対生理食塩水処理培養。
図5図5:インビトロでのコラーゲン成熟に及ぼす二重類似体の影響。点線はコラーゲン成熟の基礎レベルに相当する。
図6図6:インビトロでのコラーゲン成熟に及ぼす二重類似体の影響。点線はコラーゲン成熟の基礎レベルに相当する。
図7図7:インビトロでのコラーゲン成熟に及ぼす二重類似体の影響。点線はコラーゲン成熟の基礎レベルに相当する。
図8図8:GL-0001又はGL-0007が体重に及ぼす影響。卵巣摘出動物の体重を、賦形剤(OVX+Veh)、25nmole/kg/日GL-0001(OVX+GL-0001)、25nmole/kg/日GL-0007(OVX+GL-0007 25)、100nmole/kg/日GL-0007(OVX+GL-0007 100)、又は100μg/kg/日ゾレドロン酸(OVX+Zol)のいずれかで処置した場合、8週間の治療終了時に提示する。:p<0.05及び**:p<0.01対OVX+Veh。
図9図9:皮質骨強度に対するGL-0001又はGL-0007の影響。卵巣摘出動物において、ビヒクル(OVX+Veh)、25nmol/kg/日GL-0001(OVX+GL-0001)、25nmol/kg/日GL-0007(OVX+GL-0007 25)、100nmoles/kg/日GL-0007(OVX+GL-0007 100)又は100μg/kgゾレドロン酸(OVX+Zol)のいずれかで処置した動物において、3点屈曲試験により皮質骨強度を評価した。:p<0.05及び**:p<0.01対OVX+Veh。
図10図10:皮質骨微細構造に対するGL-0001又はGL-0007の効果。皮質骨マイクロアーキテクチャを、遠位大腿骨成長プレート(3Dモデル上の白色長方形)の4mm上のマイクロコンピュータX線断層撮影により評価した。動物を溶媒(OVX+Veh)、25nmole/kg/日のGL-0001(OVX+GL-0001)、25nmoles/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 25)、100nmoles/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 100)、又は100μg/kgのゾレドロン酸(OVX+Zol)で処理した。研究した特徴は、Tt.Ar:全断面積、Ct.Th:皮質厚さ、Ma.Ar:髄質面積、J:慣性極性モーメント、Ct.Ar:皮質骨面積、Ct.Ar/Tt.At:皮質面積分率、Iap:前後軸に関する慣性断面モーメント、Iml:中外側軸に関する慣性断面モーメントであった。:p<0.05及び**:p<0.01対OVX+Veh。
図11図11:皮質骨微細構造に対するGL-0001又はGL-0007の効果。皮質骨マイクロアーキテクチャを、遠位大腿骨成長プレート(3Dモデル上の白色長方形)の4mm上のマイクロコンピュータX線断層撮影により評価した。動物を溶媒(OVX+Veh)、25nmole/kg/日のGL-0001(OVX+GL-0001)、25nmoles/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 25)、100nmoles/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 100)、又は100μg/kgのゾレドロン酸(OVX+Zol)で処理した。研究した特徴は、Tt.Ar:全断面積、Ct.Th:皮質厚さ、Ma.Ar:髄質面積、J:慣性極性モーメント、Ct.Ar:皮質骨面積、Ct.Ar/Tt.At:皮質面積分率、Iap:前後軸に関する慣性断面モーメント、Iml:中外側軸に関する慣性断面モーメントであった。:p<0.05及び**:p<0.01対OVX+Veh。
図12図12:骨梁強度及び微細構造に対するGL-0001又はGL-0007の影響。第2腰椎の椎体の圧迫試験によって骨梁の強度を評価した。
図13】第5腰椎の椎体における骨梁微細構造を評価した。動物を溶媒(OVX+Veh)、25nmole/kg/日のGL-0001(OVX+GL-0001)、25nmole/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 25)、100nmoles/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 100)、又は100μg/kgのゾレドロン酸(OVX+Zol)で処理した。検討した特徴は、BV/TV:骨体積分率、Tb.N:骨梁数、Tb.Th:骨梁厚、Tb.Sp:骨梁分離であった。:p<0.05及び**:p<0.01対OVX+Veh。
図14図14:骨マトリックス組成に及ぼすGL-0001又はGL-0007の影響。組織材料特性を、大腿骨中央軸の後方四分円におけるフーリエ変換赤外イメージング(FTIRI)により評価した。動物を溶媒(OVX+Veh)、25nmole/kg/日のGL-0001(OVX+GL-0001)、25nmole/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 25)、100nmole/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 100)、又は100μg/kgのゾレドロン酸(OVX+Zol)で処理した。CCL:コラーゲン成熟度、XST:鉱物結晶度、Crystal size:結晶サイズ指数、P/A:リン酸塩/アミド比、C/P:炭酸塩/リン酸塩比及びAcP:リン酸塩含量。各パラメータの平均値と不均一性(幅)を表す。:p<0.05及び**:p<0.01対OVX+Veh。
図15図15:骨マトリックス組成に及ぼすGL-0001又はGL-0007の影響。組織材料特性を、大腿骨中央軸の後方四分円におけるフーリエ変換赤外イメージング(FTIRI)により評価した。動物を溶媒(OVX+Veh)、25nmole/kg/日のGL-0001(OVX+GL-0001)、25nmole/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 25)、100nmole/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 100)、又は100μg/kgのゾレドロン酸(OVX+Zol)で処理した。CCL:コラーゲン成熟度、XST:鉱物結晶度、Crystal size:結晶サイズ指数、P/A:リン酸塩/アミド比、C/P:炭酸塩/リン酸塩比及びAcP:リン酸塩含量。各パラメータの平均値と不均一性(幅)を表す。:p<0.05及び**:p<0.01対OVX+Veh。
図16図16~18:GIPrとGLP-2rの活性化。図16:HEK-293細胞を、ヒトGIPrをコードするプラスミドでトランスフェクトした。サイクリックAMPの産生をH74プローブを用いてFRETにより記録した。FRET比470/530nmの増加は、より高いcAMPを示す。[D-Ala]GIP1-30NH2、[Gly]GLP-2、GL-0001又はビヒクルを培養物に添加し、cAMPのレベルを30分後に記録した。***:p<0.001対溶媒;###:p<0.001対[Gly]GLP-2。
図17図17:HEK-293細胞を、ヒトGLP-2rをコードするプラスミドでトランスフェクトした。サイクリックAMPの産生をH74プローブを用いてFRETにより記録した。FRET比470/530nmの増加は、より高いcAMPを示す。[D-Ala]GIP1-30NH2、[Gly]GLP-2、GL-0001又はビヒクルを培養物に添加し、cAMPのレベルを30分後に記録した。**:p<0.01及び***:p<0.001対溶媒;$:p<0.05及び$:p<0.01対[D-Ala]GIP1-30NH2
図18図18:HEK-293細胞を、ヒトGIPr及びヒトGLP-2rをコードするプラスミドでトランスフェクトした。サイクリックAMPの産生をH74プローブを用いてFRETにより記録した。FRET比470/530nmの増加は、より高いcAMPを示す。[D-Ala]GIP1-30NH2、[Gly]GLP-2、GL-0001又はビヒクルを培養物に添加し、cAMPのレベルを30分後に記録した。***:p<0.001対溶媒;###:p<0.001対[Gly]GLP-2;$$$:p<0.001対[D-Ala]GIP1-30NH2
図19図19:本発明のペプチドとWO2018/069442に開示されているペプチドとの間の配列アラインメント。
図20図20:ペプチド濃度の関数としてのコラーゲン成熟度指数。点線は、ペプチドを含まない培養物で観察されたコラーゲン成熟度指数を示す。
図21図21:コラーゲン成熟の用量範囲にわたる組み合わせ指数(CI)の変化。
図22図22:いくつかの濃度の二重GIP/GLP-2類似体に曝露した未処理264.7細胞の破骨細胞形成応答。破線は、IC50を計算するために使用される半値最大効果を表す。
図23図23:二重GIP/GLP-2類似体の阻害作用の用量反応。破線は半分の最大効果(EC50)を示す。
図24図24:GIPのEC50における結合指数(CI)及び破骨細胞形成のためのGLP-2。点線の中の灰色の部分は、加法性を示すCI値を表す。灰色の領域を超える値は拮抗作用を示唆し、灰色の領域を下回る値は相乗作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本発明の文脈において、用語「ペプチド」は、天然ペプチド(タンパク質分解産物又は合成ペプチドのいずれか)を指し、さらに、ペプチド擬態物、例えばペプチドアナログであり、例えば、体内での間にペプチドをより安定にする改変、又はより免疫原性を有することができるペプチド及びセミペプトイドを指す。そのような修飾は、限定されるものではないが、環化、N末端修飾、C末端修飾、アシル化、ペグ化、ペプチド結合修飾を含み、限定されるものではないが、CH-NH、CH-S、CH-S=O、O=C-NH、CH-O、CH-CH、S=C-NH、CH=CH又はCF=CH、主鎖修飾及び残基修飾を含む。ペプチド模倣化合物を調製する方法は、当該分野で周知であり、定量的薬物設計(CA. Ramsden Gd., Chapter 17.2, F. Choplin Pergamon Press (1992))に明記されている。
【0020】
本発明のペプチドは、好ましくは、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも31個のアミノ酸、少なくとも32個のアミノ酸又は少なくとも33個のアミノ酸、好ましくは50個未満のアミノ酸からなる。特定の実施形態では、本発明のペプチドは、さらに、少なくとも30、31、32又は33アミノ酸に加えて、以下に定義されるペプチドタグを含む。
【0021】
本明細書中で使用する場合、用語「アミノ酸」は、20の天然アミノ酸、すなわちアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、及びバリン;ヒドロキシプロリン、ホスホセリン及びホスホスレオニンのような生体内で見出され得る翻訳後修飾を有するアミノ酸;ならびに2-アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、又はバリン、又はロイシン及びオルニチンを含むがこれらに限定されない他の異常なアミノ酸を含むと理解される。さらに、用語「アミノ酸」は、両方のD-及びL-アミノ酸を含む。
【0022】
「非極性アミノ酸」とは、本明細書において、可変R-基が主として炭化水素からなるアミノ酸のクラスを意味する。非極性アミノ酸には、グリシン、アラニン、プロリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン及びフェニルアラニンが含まれる。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「単離されたペプチド」は、その合成方法にかかわらず、天然に存在するタンパク質配列から局所的に異なる任意のペプチドを指す。
【0024】
ペプチド
上述し、下記の実施例に示されるように、本発明者らは、この配列を有するペプチドが、それぞれのGIP及びGLP-2天然ペプチドと同様に、グルコース依存性インスリン親和性ポリペプチド(GIP)受容体及びグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)受容体の両方に結合し、活性化することができるように、特にコンセンサスアミノ酸配列を設計した。
【0025】
従って、本発明は、配列番号1:
HGEGSFXSDX10SX1213LDKLAARDFVNWLLQTK(配列番号1)
のコンセンサスアミノ酸配列を含むか又はそれからなる単離されたペプチドに関し、ここで、Xは任意のアミノ酸残基であり、X10は任意のアミノ酸残基であり、X12は任意のアミノ酸残基であり、X13は任意のアミノ酸残基である。
【0026】
特定の実施形態では、Xは、グリシン、バリン、スレオニン及びセリンからなる群から選択されるアミノ酸であり、好ましくはグリシン、バリン及びスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0027】
別の特定の実施形態では、X10は、メチオニン、ロイシン及びフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0028】
別の特定の実施形態では、X12は、イソロイシン、バリン及びスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、好ましくはイソロイシン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0029】
別の特定の実施形態では、X13は非極性アミノ酸、好ましくはアラニン、バリン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、特にアラニン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0030】
特定の実施形態では、Xはグリシン、バリン、スレオニン及びセリンからなる群から選択されるアミノ酸であり、X10はメチオニン、ロイシン及びフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、X12はイソロイシン、バリン及びスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、X13は非極性アミノ酸である。
【0031】
別の特定の実施形態では、Xはグリシン、バリン、スレオニン及びセリンからなる群から選択されるアミノ酸であり、X10はメチオニン、ロイシン及びフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、X12はイソロイシン、バリン及びスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、X13はアラニン、バリン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0032】
別の特定の実施形態では、Xはグリシン、バリン及びスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、X10はメチオニン、ロイシン及びフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、X12はイソロイシン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸であり、X13はアラニン及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0033】
好ましい態様において、本発明のペプチドのC末端リシンはアミド化される。
【0034】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号2:
HGEGSFXSDX10SX1213LDKLAARDFVNWLLQTKITD(配列番号2)
のコンセンサスアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、ここで、X、X10、X12及びX13は、上述の通りである。
【0035】
特定の実施形態では、本発明のペプチドにおいて、K16及び/又はK30は、さらに修飾、典型的には翻訳後修飾を有する。より具体的な実施形態では、本発明のペプチドにおいて、K16及び/又はK30は、アシル化又はペグ化される。
【0036】
本発明によるペプチドは、さらに、そのN末端又はC末端、特にそのC末端にペプチドタグを含んでもよい。
【0037】
本発明では、種々の技術分野で認識されたペプチドタグのいずれかを使用することができる。例えば、適当なペプチドタグは、FLAGペプチド、短いFLAGペプチド、ヒスチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ブドウ球菌タンパク質G、カルモジュリン結合ペプチド、チオレドキシン、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールセチルトランスフェラーゼS-ペプチド(リボヌクレアーゼA、残基1~20)、ミオシン重鎖、DsbA、ビオチンサブユニット、アビジン、ストレプトアビジン、Sfrp-タグ、c-Myc、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、CKS、ポリシステイン、ポリフェニルアラニン、lacリプレッサー、成長ホルモンのN-末端、マルトース結合タンパク質、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ、カルロース結合ドメイン、ヘモリシンA、TφLEを含む。プロテインキナーゼ部位、BAIエピトープ、Btag、ブルータングウイルスのVP7領域、緑色蛍光タンパク質、又は任意の蛍光色素。
【0038】
ペプチドタグは、1つ以上の特異的プロテアーゼ切断部位を含むことができる。
【0039】
好ましい態様において、ペプチドタグは、配列GADDDDD(配列番号13)からなるペプチドである。
【0040】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、下記のペプチドからなる群から選択される:
-配列HGEGSFGSDMSIALDKLAARDFVNWLLQTKITD(配列番号3)のGL-0001;
-配列HGEGSFGSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号4)のGL-0007;
-配列HGEGSFGSDMSIALDKLAARDFVNWLLQTKITDGAADDDDDD(配列番号5)のGL-0001-タグ;
-配列HGEGSFVSDMSIVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号6)のGL-0002;
-配列HGEGSFVSEMSIVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号7)のGL-0003;
-配列HGEGSFVSDMSVVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号8)のGL-0004:
-配列HGEGSFVSDLSVVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号9のGL-0005;
-配列HGEGSFVSDFSVVLDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号10)のGL-0006;
-配列HGEGSFTSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号11)のGL-0008;及び
-配列HGEGSFVSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号12)のGL-0009。
【0041】
好ましい態様において、本発明のペプチドは、以下のペプチド中からなる群から選択される:
-配列HGEGSFGSDMSIALDKLAARDFVNWLLQTKITD(配列番号3)のGL-0001及び
-HGEGSFGSDFSIALDKLAARDFVNWLLQTK-NH(配列番号4)のGL-0007。
【0042】
特定の実施形態では、本発明のペプチドは、HGEGSFGSDMSIALDKLAARDFVNWLLQTKITD(配列番号3)のペプチドGL-0001である。
【0043】
特定の実施形態では、本発明のペプチドは、非修飾ペプチドと比較して、その安定性、特にインビボ、及び/又はその循環時間が増加するように修飾される。実施可能な修飾としては、上述の「ペプチド」の項で定義されたもの、例えば、PEG化、アシル化、ビオチン化、アセチル化、ホルミル化、ユビキチン化、アミド化、酵素標識、又は放射標識が挙げられる。例えば、種々の程度のPEG化を用いてペプチドの半減期を変化させることができ、増加したPEG化は増加した半減期に対応する。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ末端又はカルボキシ末端を含むペプチド上の任意の位置で起こり得る。
【0044】
一実施形態では、本発明のペプチドは、ペプチドの送達に一般的に使用され、かつ短いペプチドのインビボ投与を容易にすることが知られている周知のペプチドであるTAT(トランス活性化転写活性化アクチベーター)ペプチドの添加によって修飾することができる。
【0045】
別の態様において、本発明のペプチドは、抗体のFcドメインの添加によって修飾され得る。抗体のFcドメインは、抗原結合よりもむしろ生物学的活性に関与する比較的定常な領域である。ポリペプチドの半減期を増加させるため、又は特定の受容体に結合する能力などの特定の生物学的機能を組み込むために、Fcドメインを用いて種々の治療用ポリペプチドが作製されている。本発明のペプチドへのFcドメインの結合は、ペプチドの半減期を増加させる可能性が高い。Fcドメインは、消化された、天然に存在する抗体の部分を含むことができ、又はそれは組換え抗体又はヒト化抗体に由来することができる。
【0046】
本発明のペプチドは、GIP及びGLP-2受容体の両方を活性化することができる。
【0047】
「GIP」又は「グルコース依存性インスリン親和性ポリペプチド」とは、インクレチンのクラスに属し、インスリン分泌を刺激するホルモンのセクレチンファミリーの阻害ホルモンを意味する。これは、ヒトにおいてGIP遺伝子によりコードされ、生物学的に活性な42-アミノ酸ペプチドとして循環する153-アミノ酸プロタンパク質に由来する。K細胞は、十二指腸の粘膜や消化管の空腸に存在する。
【0048】
「GIP受容体」又は「GIP-R」とは、本明細書において、ヒトにおいて、膵臓のβ細胞上に見出されるGタンパク質共役受容体のクラスである7膜貫通タンパク質ファミリーのメンバーであるGIPR遺伝子によりコードされるタンパク質を意味する。
【0049】
「GIP受容体の活性化」とは、本明細書において、GIP-Rへのペプチドの結合は、環状アデノシン一リン酸(cAMP)の増加などの細胞内シグナル伝達経路の活性化をもたらすが、これに限定されないことを意味する。
【0050】
GIP受容体の活性化は、当業者から周知の任意の技術によって検出することができる。特に、GIP受容体の活性化は、酵素結合免疫吸着アッセイ又はフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)などの生化学的及び/又はイメージングアッセイによってcAMPを評価することによって検出することができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
「GLP-2」又は「グルカゴン様ペプチド2」とは、本明細書において、関連するグルカゴン様ペプチド-1を放出するプロセスにおいてプログルカゴンの特異的翻訳後タンパク質分解切断によって作製される33アミノ酸ペプチドを意味する。GLP-2は、腸内分泌L細胞及び中枢神経系の種々のニューロンによって産生される。
【0052】
「GLP-2受容体」又は「GLP-2R」とは、ヒトにおいて、GLP1受容体に密接に関連するGタンパク質共役受容体ファミリーのメンバーであるGLP2R遺伝子によりコードされるタンパク質を意味する。
【0053】
「GLP-2受容体の活性化」とは、本明細書において、ペプチドのGLP2-Rへの結合が、cAMPの増加などの細胞内シグナル伝達経路の活性化をもたらすが、これに限定されないことを意味する。
【0054】
GLP-2受容体の活性化は、当業者から周知の任意の技術によって検出することができる。特に、GLP-2受容体の活性化は、酵素結合免疫吸着アッセイ又はフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)などの生化学的及び/又はイメージングアッセイによってcAMPを評価することによって検出することができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
医薬成物及び医療機器
本発明はまた、上記のセクション「ペプチド」として定義されるペプチド、及び場合により薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0056】
用語「薬学的に許容される」とは、薬理学的又は毒性学的観点から対象に投与することが許容される特性及び/又は物質を指す。さらなる「薬学的に許容される」とは、製剤化、安定性、患者の受容性及びバイオアベイラビリティのような因子を指し、これらは物理的/化学的観点から製造薬学者に知られるであろう。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」とは、活性成分とは異なる医薬組成物中の任意の物質を指す。前記賦形剤は、液体、例えば、ガソリン、動物、植物又は合成に由来するものを含む水及び油のように、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油、及び類似のように、崩壊剤、湿潤剤、可溶化剤、酸化防止剤、抗菌剤、等張剤、安定化剤又は希釈剤であり得る。適切なアジュバント及び/又は薬学的担体は、E.W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0058】
本発明の医薬組成物は、非経口的、例えば、静脈内、皮内、脳室内、皮下、筋肉内、腹腔内、経口(例えば、頬、吸入、鼻及び肺スプレー)、皮内、経皮(局所)、経粘膜又は眼内投与のために製剤化することができる。
【0059】
本発明のペプチドは、とりわけ、骨内でのそれらの統合を増加及び改善することを可能にするので、移植可能な医療装置と共に使用される場合に特に有用である。
【0060】
従って、本発明はまた、本発明のペプチドを特にコーティングした移植可能な医療装置に関する。
【0061】
本明細書中で使用される「移植可能な医療機器」とは、外科的又は医学的に、対象の身体内に、又は自然開口部内への医学的介入によって、全部又は一部導入され、処置後もそこにとどまることを意図される、任意のタイプの機器を指す。埋植期間は、本質的に永続的であってもよく、すなわち、対象の残存寿命の間、デバイスが生分解するまで、又はデバイスが物理的に除去されるまで、所定の位置に維持されることを意図していてもよい。移植可能な医療機器の例としては、整形外科用プロテーゼ及び歯科用インプラントが挙げられる。
【0062】
本発明は、さらに、上述のように、移植可能な医療装置をコーティングするための本発明のペプチドのインビトロでの使用に関する。
【0063】
医学的適応
本発明者らは、本発明のペプチドが、GIP及びGLP-2よりも高いレベルで骨芽細胞により産生されるコラーゲンマトリックスの酵素的架橋を増加させ、生成された破骨細胞の数をGIP及びGLP-2よりも重要な方法で減少させることを実証した。従って、本発明のペプチドは、骨障害を治療するために特に興味深い。
【0064】
従って、本発明は、上記の「ペプチド」の項に定義されるペプチド、又は被験者の骨障害を治療及び/又は予防する方法で使用するための上記の「医薬組成物」の項に定義される医薬組成物にも関する。
【0065】
また、本発明は、骨障害を治療及び/又は予防することを意図した医薬の製造のために、上記の「ペプチド」の項で定義されるペプチドの使用、又は上記の「医薬組成物」の項で定義される医薬組成物の使用に関する。
【0066】
また、本発明は、対象における骨障害を治療及び/又は予防するための方法に関し、それを必要とする対象に、上記の「ペプチド」の項に定義される治療有効量のペプチド、又は上記の「医薬組成物」の項に定義される医薬組成物を投与することを含む。
【0067】
「骨障害」とは、本明細書において、骨形成、沈着、又は吸収が異常である障害を意味する。骨障害には、あらゆる種類の原発性又は続発性骨粗鬆症(閉経後、グルココルチコイド誘発性、固定化誘発性、老人性)、骨減少症、糖尿病性骨疾患、骨軟化症及びくる病、骨の骨ジストロフィー、骨のパジェット病、悪性腫瘍の高カルシウム血症、骨転移による骨減少症、骨肉腫、ユーイング腫瘍、骨軟骨腫、癌治療によって引き起こされる骨異常、骨形成不全症、骨髄炎、軟骨無形成症、無血管性骨壊死、骨大理石症、骨化性筋炎、歯周病、副甲状腺機能亢進症、関節リウマチにおける関節周囲びらん、強直性脊椎炎における骨びらん、及び神経性無食欲症における骨減少が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
したがって、特定の実施形態では、前記骨障害は、原発性又は続発性の骨粗鬆症(閉経後、グルココルチコイド誘発性、固定化誘発性及び老人性骨粗鬆症を含む)、骨減少症、糖尿病性骨疾患、骨軟化症及びくる病、骨の骨ジストロフィー、骨のパジェット病などの骨ジストロフィー、悪性腫瘍、骨肉腫、骨肉腫、ユーイング腫瘍、骨軟骨腫、癌治療によって引き起こされる骨異常、骨形成不全症、骨髄炎、軟骨形成不全症、軟骨無形成症、無血管性骨壊死、骨大理石症、骨化性筋炎、歯周病、副甲状腺機能亢進症、関節リウマチにおける関節周囲びらん、強直性脊椎炎における骨びらん、及び神経性無食欲症における骨減少から選択される。
【0069】
より特定の実施態様において、前記骨障害は、骨形成不全症である。
【0070】
特定の実施態様において、前記骨障害は、骨における代謝性又はホルモン性障害の発現である。
【0071】
「代謝障害」又は「代謝性疾患」とは、本明細書において、正常な代謝過程を変化させる体内の異常な化学反応によって誘発される障害又は疾患を意味する。代謝異常には、酸塩基平衡異常、代謝性脳疾患、カルシウム代謝異常、DNA修復欠損症、糖代謝異常、糖代謝異常、乳酸高値症、鉄代謝異常、脂質代謝異常、吸収不良症候群、メタボリックシンドロームX、先天性代謝異常、ミトコンドリア疾患、リン代謝異常、ポルフィリン症、プロテオスタシス欠損症、代謝性皮膚疾患、消耗症候群、水電解質平衡異常などがある。
【0072】
好ましくは、代謝障害は、カルシウム代謝障害、グルコース代謝障害、及びリン代謝障害からなる群から選択される。
【0073】
「ホルモン障害」又は「ホルモン性疾患」とは、本明細書では、血流中を循環することによってその産生部位から離れたところで作用し、かつ若年の健康な無病哺乳動物のそれより下又は上であるインスリン、グルカゴン、エストロゲン、テストステロン、及び/又は性ホルモン結合グロブリン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、線維芽細胞成長因子23、カルシトリオールの血清濃度と関連する、又は関連する、任意の可溶性分子の過剰産生及び/又は過少産生に起因して哺乳動物に生じる状態、障害又は疾患を意味する。ホルモン障害には、糖尿病、低血糖症及びグルカゴノーマなどのグルコース恒常性障害;甲状腺腫、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺炎及び甲状腺ホルモン抵抗性などの甲状腺障害;カルシウム恒常性障害及び副甲状腺疾患、骨粗鬆症、変形性骨炎、くる病及び骨軟化症などの代謝性骨疾患;尿崩症及び下垂体機能低下症などの下垂体障害がある。
【0074】
好ましくは、ホルモン障害は、糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺炎、甲状腺ホルモン抵抗性、カルシウムホメオスタシス障害、副甲状腺障害、骨粗鬆症、変形性骨炎、くる病及び骨軟化症からなる群から選択される。
【0075】
本発明のペプチドは、骨充填生体材料と共に使用される場合に特に有用である。なぜなら、それは、とりわけ、骨におけるその統合を増加させ、改善することを可能にするからである。
【0076】
従って、本発明はまた、本発明のペプチドを含む骨充填生体材料に関する。
【0077】
「骨充填生体材料」とは、本明細書では、初期段階(例えば、液体又はペースト)で骨欠損を充填することができ、時間の経過とともに硬化(例えば、凝固又は半凝固)される生体材料を意味する。そして、「骨充填材」とは、溶融、吸収、置換、組織化等により、材料が置かれた骨に、骨欠陥の充填(骨接合促進、骨増強等の骨改善も含む)を行うことができる材料である。
【0078】
本発明は、骨再生のための使用のために本発明のペプチドを含む骨充填生体材料に関する。
【0079】
特定の実施態様において、前記骨充填生体材料は、神経外科手術、整形外科手術又はソケット/骨欠損充填に使用されるが、これらに限定されない。
【0080】
特定の実施態様において、本発明の前記ペプチドは、骨再生のために使用される場合、前記骨充填材料の骨統合を改善する。
【0081】
「対象」とは、本明細書において、げっ歯類、ネコ、イヌ、又は霊長類のような哺乳類を意味する。好ましくは、本発明による対象はヒトである。
【0082】
特定の実施形態では、対象は、人工器官などの移植可能な医療機器を有する。
【0083】
本発明の文脈において、用語「治療」又は「治療」は、そのような用語が適用される障害又は状態、又はそのような障害又は状態の1つ以上の症状を逆転、軽減、抑制することを意味する。
【0084】
本発明の文脈において、用語「予防」又は「予防」は、対象が状態を発現する確率の低下又は状態の発現の遅延をもたらす状態を発現するリスクがある対象の予防的治療を指す。
【0085】
本発明のペプチド又は医薬組成物の「治療有効量」とは、特定の疾患を治療又は予防するのに十分な量のペプチド又は組成物を意味し、いずれかの医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比である。しかしながら、本発明のペプチド又は組成物の一日当たりの総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。特定の対象のための特定の治療有効用量レベルは、治療される疾患及び疾患の重症度、使用される特定のペプチド又は組成物の活性、使用される特定の組み合わせ、年齢、体重、一般健康、性別及び食事、投与時間、使用される特定のペプチドの投与経路及び排泄速度、治療の期間、使用される特定のペプチドと組み合わせて使用されるか又は同時に使用される薬物、及び医学分野で周知の類似の因子を含む種々の因子に依存するであろう。例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルでペプチドの用量を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、当業者の範囲内である。
【0086】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量及びレジメンは、治療又は予防される状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重、及び性別などに自然に依存する。
【0087】
本発明のペプチド及び医薬組成物は、任意の適切な経路、特に、静脈内、皮内、脳室内、皮下、筋肉内、腹腔内、口腔内(例えば、頬、吸入、鼻及び肺スプレー)、皮内、経皮(局所)、経粘膜又は眼内経路によって投与することができる。
【0088】
本出願を通して、用語「含む」は、特に言及された全ての特徴、並びに任意の、追加の、特定されていない特徴を包含するものとして解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「含む」の使用は、具体的に言及された特徴以外の特徴が存在しない(すなわち、「からなる」)実施形態も開示する。
【0089】
本発明は、以下の図及び実施例によってさらに説明される。
【0090】
【表1】
【実施例
【0091】
実施例1:本発明のペプチドの設計
材料及び方法
すべてのステップの詳細を図1に示す。ヒトGIP(受託番号:P09681)及びヒトGLP-2(受託番号:P01275.3)のアミノ酸配列を、NCBIウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov/protein)から収集した。既知のGLP-2類似体、すなわち、Teduglutide(PubChem CID:16139605)、Elsiglutide、ZP1848及びFE203799のアミノ酸配列も収集した(Wisniewski et al. (2016) J. Med. Chem. 59:3129-3139)。Word 2013ソフトウェアを用いて、タンパク質配列を手動で整列させた。相同性パーセンテージの分析は、Needleman-Wunschアルゴリズムを用いてMatlab R2016bで行った。バリデーションのための配列相同性の閾値は、GIP1-30又はGLP-2のいずれかとの>50%の相同性に設定した。
【0092】
結果
図1は、二重GIP/GLP-2類似体を設計するために使用されるインシリコ戦略を示す。
【0093】
ステップ1では、ヒトGIP1-30とヒトGLP-2との間の配列アラインメントをWord 2013で手動で行い、同じ配列位置の同じアミノ酸に対応するコンセンサス配列1(CS1)の生成に導いた。CS1は、それぞれ、Ala、Gly、Phe、Asp15、Asp21、Phe22、Asn24、Trp25、Leu26、及びLys30で構成される。
【0094】
ステップ2において、コンセンサス配列2(CS2)を確立するために、4つの既知のGLP-2類似体、すなわちテデュグルチド、エルシグルチド、ZP1848及びFE203799も手動で配列整列させた。CS2は、His、Gly、Gly、Phe、Ser、Glu、Thr12、Ile13、Leu14、Asp15、Leu17、Ala18、Ala19、Arg20、Asp21、Phe22、Ile23、Trp25、Leu26、Ile27、Thr29、Lys30、Ile31、Thr32及びAsp33で構成される。
【0095】
ステップ3において、ヒトGIP1-30及びヒトGLP-2を手動で配列整列させて、CS1の欠損位置におけるアミノ酸のクラスを決定した。同じクラスのアミノ酸が同じ位置の両方の配列に出会った場合、そのクラスは配列コンセンサス3(CS3)に示された。3、5、9、11、13、14、17、23、27及び29位の両方のペプチド配列において、それぞれ、負に荷電した、極性の、負に荷電した、極性の、脂肪族の、脂肪族の、脂肪族の、脂肪族の、脂肪族の、脂肪族の、及び極性のアミノ酸が見出された。
【0096】
ステップ4では、GLP-2類似体に導く配列を確立するために、進歩者らはCS1とCS2を比較した。この比較からHis、Gly、Phe、Ser、Glu、Thr12、Ile13、Leu14、Asp15、Leu17、Ala18、Ala19、Arg20、Asp21、Phe22、Ile23、Asn24、Trp25、Leu26、Ile27、Thr29、Lys30、Ile31、Thr32、Asp33を含む配列コンセンサス4(CS4)を構築した。
【0097】
ステップ5において、発明者らは、3、5、9、11、13、14、17、23、27及び29位のアミノ酸が正しいクラスのものであるか否かを検証するために、CS4をCS3と整列させた。その後、CS4の妥当性が確認された。
【0098】
次に、ヒトGIP1-30とCS4との間の一方からの配列相同性、及びヒトGLP-2とCS4との間の他方からの配列相同性の分析を、ステップ6において実施した。本発明者らは、CS4がヒトGLP-2(76%)と大きな配列相同性を有するが、ヒトGIP1-30(27%)との相同性が低いことを証明した。
【0099】
次に、CS4を2、3、5、8、10、11、16、28位で調整し、コンセンサス配列7(CS7)、His、Gly、Glu、Gly、Thr、Phe、Ser、Ser、Glu、Ser11、Thr12、Ile13、Leu14、Asp15、Lys16、Leu17、Ala18、Ala19、Arg20、Asp21、Phe22、Ile23、Asn24、Trp25、Leu26、Ile27、Ala28、Thr29、Lys30、Ile31、Thr32及びAsp33をもたらした。Glyがジペプチジルペプチダーゼ-4耐性を付与するために選択されたことは注目に値する。
【0100】
ここでも、発明者らはヒトGIP1-30andヒトGLP-2との配列相同性をチェックし、それぞれ45%及び76%を見出した。しかし、彼らの目標は両ヒト分子と少なくとも50%の相同性を得ることであったため、ヒトGIP1-30との相同性を高めるためにCS7を改良した。修正は、5、7、9、12、13、23、27、28及び31~33位で行った。この結果、末端アミド化を伴うHis、Gly、Glu、Gly、Ser、Phe、Ser、Asp、Ser11、Leu14、Asp15、Lys16、Leu17、Ala18、Ala19、Arg20、Asp21、Phe22、Val23、Asn24、Trp25、Leu26、Leu27、Asn28、Thr29及びLys30である共通配列9(CS9)が得られた。文献から、Lys30をアミド化すると、Ile31、Thr32及びAsp33は不要と思われた(Wisniewski et al. (2016) J. Med. Chem. 59:3129-3139)。また、7位、10位、12位、13位では、受容体結合能及び生物学的活性に作用するために、任意のアミノ酸である可能性があることも判明した。
【0101】
次に、CS9をヒトGIP1-30andヒトGLP-2と比較し、両分子について50%以上の相同性を認め、CS9の妥当性が確認された。
【0102】
実施例2:本発明のペプチドが骨リモデリングに及ぼす影響
材料及び方法
1.試薬
すべての類似体は純度>95%(Dudelange,Luxembourg)のGeneCust Europeから購入した。純度は、質量分析により検証された高速液体クロマトグラフィー及びペプチド組成により検証された。マウスMC3T3-E1サブクローン4、マウス未変化体264.7及びヒトHEK-293細胞を、米国型培養コレクション(ATCC,Teddington,UK)から購入した。健常者からバフィーコートをエタブリセメント・フランサイス・ドゥ・サン(フランス、アンガース)から入手した。核因子kBリガンド(RANKL)及びヒトマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)のヒト及びマウス受容体アクチベーターをR&D Systems Europe(Abingdon,UK)から購入した。ヒトGIP受容体及びヒトGLP-2受容体cDNAは、それぞれAddgene(プラスミド14942、B.Thorensが親切に提供)及びPlasmid IDリポジトリ(プラスミドHsCD00346244)から購入した。他のすべての化学物質は、特に断らない限り、Sigma-Aldrich(フランス、リヨン)から入手した。
【0103】
2.細胞培養
マウスMC3T3-E1サブクローン4細胞を、5%ウシ胎児血清(FBS)、5%ウシ血清、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを添加したα最小必須培地(αMEM)を含む増殖培地中で、37℃、5%COで富化した加湿雰囲気中で増殖及び増殖させた。
【0104】
マウス未処理264.7及びヒトHEK-293細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含む増殖培地中で、37℃で5%COを濃縮した加湿雰囲気中で増殖及び拡大した。
【0105】
3.細胞死試験
細胞死中に起こる細胞膜透過性の増加は、生きている細胞から除外され、死を迎えている細胞に取り込まれる色素トリパンブルーを用いて可視化することができる(Bellido and Plotkin (2008) Methods Mol. Biol. 455:51-75)。
【0106】
簡単に説明すると、MC3T3-E1細胞を24ウェルプレートに平板培養し、生理食塩水、種々の濃度のGL-0001又は骨細胞死を増大させることが知られている10-6Mロシグリタゾンの存在下で培養した(Mieczkowska et al. (2012) J. Biol. Chem 287:23517-23526)。24時間後、浮遊細胞を含む細胞培養上清を回収し、以前に標識したエッペンドルフチューブに入れた。各ウェルをPBS中で洗浄した後、トリプシンを添加して接着細胞を分離した。分離した接着細胞を含有する混合物を収集し、細胞培養上清を含有するエッペンドルフ中にプールした。細胞を1,500回転/分(rpm)で10分間遠心し、上清を注意深く除去し、細胞をトリパンブルー0.04%でインキュベートし、血液サイトメーターに移した。生きている(透明)細胞及び死んだ(青色)細胞を光学顕微鏡検査下で計数し、以下のように各条件について死滅細胞のパーセンテージを測定した。
死細胞率=100×(死細胞数)/(死細胞数+生細胞数)
【0107】
4.破骨細胞試験
Mabilleau and Sabokbar (2009) PLoS One 4:e4173に記載されるEtablissement Francais du Sang (Angers, France)で得られた3つの軟膜からヒト末梢血単核細胞を単離した。
【0108】
血液をα-最小必須培地(MEM)(Invitrogen,Paisley,UK)中で1:1に希釈し、Histopaque上に層状にして、20分間遠心分離した(700×g)。界面層をMEMに再懸濁し(600×g)、さらに10分間遠心分離し、その後、得られた細胞を、10%加熱不活化ウシ胎児血清(FCS、Invitrogen、Paisley、英国)を添加した培地に再懸濁し、5%(v/v)酢酸溶液を用いて赤血球を溶解した後、血球計数器で計数した。
【0109】
破骨細胞形成の程度を評価するために、分離されたヒトPBMCを、100UI/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン及び10%FCS(破骨細胞培地)を含有するMEM中の24ウェルプレート中で培養した(Mabilleau et al. (2011) J Biol Chem 286:3242-3249)。2時間のインキュベーション後、培養物を培地中で激しくすすぎ、非接着性細胞を除去し、次いで、25ng/mlの組換えヒトM-CSF、50ng/mlの組換えヒトsRANKL(7日目に添加)及び種々の濃度の消化管ホルモン類似体(7日目に添加)を含む1mlのMEM/FCS中に維持した。14日後に培養を終了し、破骨細胞形成の程度を評価した(後述のTRAcP染色)。全ての因子は2~3日ごとに補充された。
【0110】
マウス原料264.7細胞をプラスチック皿から取り出し、1.25×10細胞/cmの密度でプレートし、10ng/ml可溶性マウスRANKLで富化した増殖培地中で増殖させた。110時間後、細胞をホルマリン(PBS緩衝液中10%)で10分間固定し、TRAcP染色前に蒸留水中で洗浄した。
【0111】
5.TRAcP染色
酒石酸塩耐性酸性ホスファターゼ(TRAcP)は、基質としてナフトールAS-BI-リン酸と、暗所で37℃で90分間ジアゾニウム塩としてファストバイオレットBを用いた同時カップリング反応により組織化学的に明らかにした。培養物を蒸留水中で3回すすぎ、残留活性を4%NaFで30分間阻害した。次いで、細胞を蒸留水中でリンスし、DAPIで20分間対比染色し、そして水性媒体を用いてマウントする前に乾燥させた。3個以上の核を有するTRAcP陽性細胞を破骨細胞として同定した。新たに発生した数は光学顕微鏡検査を用いて評価した。
【0112】
6.コラーゲン成熟度試験
コラーゲン成熟度アッセイのために、細胞をトリプシン-EDTAで分離し、1.5×10細胞/cmの密度で平板培養し、増殖培地中でコンフルエンスになるまで増殖させた。コンフルエンス時に、増殖培地を、5%FBS、5%ウシ血清、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、50μg/mLアスコルビン酸、及び種々の濃度の類似体を添加したαMEMを含む分化培地に置き換えた。この日を1日目とみなした。分化培地は2日ごとに補充した。
【0113】
14日目に、骨芽細胞培養物を、0.1%トリトンX100を含有する0.2Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中で4時間、軌道振盪器上でインキュベーションすることにより脱細胞化した。培養物をミリQ水で少なくとも6回すすぎ、無水エタノール中で固定し、培養皿から取り出し、BaF2ウィンドウに移し、そこで風乾した。
【0114】
得られたフーリエ変換赤外スペクトルと市販のコラーゲンのスペクトルを比較することにより、コラーゲン細胞外マトリックスの完全性を検証した。
【0115】
Bruker Vertex 70分光計(Bruker optics,Ettlingen,Germany)を用いてスペクトル分析を行い、標準的な単一元素のMercury Cadmium Telluride(MCT)検出器を備えたBruker Hyperion 3000赤外顕微鏡とインターフェースした。赤外スペクトルは4cm-1の分解能で記録され、伝送モードでは平均32スキャンであった。背景スペクトル画像を、各実験の開始時と終了時に同じBaF2ウィンドウから同一条件下で収集し、装置の安定性を確保した。各条件について少なくとも20のスペクトルを取得し、Matlab R2016b(Mathworks,Natick,MA)の実験室製ルーチンスクリプトを用いて分析した。コラーゲン成熟度指数は、アミドIピークの1660cm-1及び1690cm-1に位置するそれぞれのサブバンドを用いて、成熟ピリジニウムの未成熟デヒドロキシリシノノロロイシンコラーゲン架橋に対する比として決定した。
【0116】
7.結合アッセイ
ヒトHEK-293細胞を、10cmペトリ皿中で2×10細胞/cmの濃度で平板培養した。24時間後、ヒトGIP受容体又はヒトGLP-2受容体のいずれかをコードする15μgのプラスミドDNAを用いて、最適化リン酸カルシウム法で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、トランスフェクションを受けた細胞を分離し、透明底を有する黒色96ウェルプレート(Ibidi GmbH, Martinsried,Germany)中の6×10細胞/cmの密度で平板培養した。24時間後、種々の濃度の類似体を、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充したαMEM中の10-7M Fam-[D-Ala]-GIP1-30又は10-6M Fam-[Gly]-GLP-2のいずれかの存在下、各ウェルに添加した。平衡結合を37℃で一晩達成し、次いで、細胞をアッセイ緩衝液で2回洗浄し、0.1M NaOHに可溶化した。
【0117】
蛍光をM2マイクロプレートリーダー(Molecular devices,Wokingham,UK)で読み、励起波長を490nmに設定し、発光波長を525nmに設定した。
【0118】
ヒトGIP受容体又はヒトGLP-2受容体への結合は、GraphPad Prism 6.0における非線形回帰分析によって達成された。
【0119】
8.サイクリックAMPアッセイ
ヒトHEK-293細胞を、4ウェルマイクロスライド(ibidi GmbH、Martinsried、ドイツ)中で2×10細胞/cmの密度で平板培養した。24時間後、細胞を、ヒトGIP受容体又はヒトGLP-2受容体のいずれかをコードする10μgのプラスミドDNA、及びmTurquoise-EPAC-cp173Venus-Venus H74プローブをコードする5μgのプラスミドDNAを用いて最適化リン酸カルシウム法でトランスフェクトした。同時トランスフェクション実験において、細胞を、ヒトGIP受容体をコードする5μgのプラスミドDNA、ヒトGLP-2受容体をコードする5μgのプラスミドDNA、及びH74プローブをコードする5μgのプラスミドDNAでトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、トランスフェクションした細胞をリン酸緩衝生理食塩水中で洗浄し、Leica撮像システム(SP8共焦点ヘッドを装着したDMI6000逆顕微鏡)及び制御された雰囲気(37℃、5%CO)を含むチャンバー中で、HEPES緩衝生理食塩水(140mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl、1mM CaCl、10mMグルコース、10mM HEPESを含む)中でインキュベートした。画像取得は、63×、1.4N.A.油浸対物レンズ及びHybrid(登録商標)検出器(Leica)を用いて行い、30分後に画像を収集した。458nmのArレーザーを用いてドナー励起を行い、それに応じてSP8分光計を設定することにより、ドナー発光を460~505nmの間に集め、アクセプタ発光を520~600nmの間に集めた。FRETは、ドナーシグナルとアクセプターシグナルとの比として表した。実験開始時にFRET値を1に設定した。溶媒、10-9M[D-Ala]-GIP1-30、10-9M[Gly]-GLP-2又は10-9M GL-0001をアッセイ培地に添加し、FRETシグナルを上記のように測定した。
【0120】
9.動物
BALB/c(BALB/cJRj)マウスをJanvier Labs(フランス、Saint-Berthevin)から入手した。すべての動物実験は、フランス高等教育研究イノベーション省により、ライセンス6154-201607211130415v1の下で承認された。
【0121】
マウスは、施設内の動物実験室(Agreement E49007002)でケージ当たり4匹の動物を24℃±2℃で12時間の明暗サイクルで飼育し、頸部脱臼により屠殺するまで、水道水と通常の食餌(Diet A04、Safe、Augy、France)を自由に与えた。全ての手順は、French Animal Scientific Procedures Act 2013-118に従って実施した。
【0122】
両側卵巣摘出術(OVX)を、β2アドレナリン受容体作動薬を補充した全身麻酔下12週齢のBALB/cマウス40匹で行った。16週齢で、下の生理食塩水又はペプチドを充填したALZET浸透圧ポンプ(モデル番号2006、Durect Corp.、カリフォルニア州Cupertino)を、32匹のマウスにおいて全身麻酔下で2つの肩甲骨の間に皮下移植した。ポンプの充填が成功したことを、充填前後にポンプを重み付けすることにより確認した。20週齢時に、ALZET浸透圧ポンプを同様のポンプに置き換え、4週間の供給を確実にした。マウスを4群に無作為に割り付けた。
(i)ビヒクル、毎日(OVX+Veh、n=8)、
(ii)25nmole/kg/日のGL-0001(OVX+GL-0001、n=8)、
(iii)25nmole/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 25、n=8)、
(iv)100nmole/kg/日のGL-0007(OVX+GL-0007 100、n=8)。
【0123】
これらの用量の類似体は、消化管ホルモン類似体に関する本発明者の広範な知識に基づいていた(Mabilleau et al. (2014) Bone 63:61-68; Mansur et al. (2015) J Cell Physiol 230:3009-3018; Mieczkowska et al. (2015) Bone 74:29-36; Mabilleau et al. (2016) Bone 91:102-112; Mansur et al. (2016) Bone 87:102-113; Pereira et al. (2017) Front Endocrinol (Lausanne) 8:327; Mabilleau et al. (2018) J Endocrinol.)。残念ながら、25nmole/kg/日のマウスは浸透圧ポンプ置換中に死亡した。
【0124】
さらに8匹のOVXマウスを陽性対照(OVX+Zol)として用い、100μg/kgのゾレドロン酸(参照番号6111、バッチ番号1A/203523、Tocris Bioscience、英国ブリストル)を尾静脈に単回静脈内注射した。このゾレドロン酸の用量及びレジメンは、ヒトの閉経後骨粗鬆症の治療に承認された5mgの注入と同等であった。
【0125】
体重は、精密スケール(Adventurer(商標)Pro,Ohaus,Nanikon,Switzerland)で週1回モニターした。すべてのマウスにカルセイン(10mg/kg;ip)を12及び2日間投与し、24週齢で殺処分した。剖検後、大腿骨、第2及び第5腰椎、肝臓及び膵臓を採取し、以下に詳述するように処理した。
【0126】
10.生体力学的試験
剖検では、大腿骨及び第2腰椎(L2)を軟組織で洗浄し、直ちに-20℃で生理食塩水に浸したガーゼで凍結させ、骨を4℃で一晩解凍した後、大腿骨で3点屈曲実験を行った。
【0127】
大腿骨長さは、デジタルキャリパ(Mitutoyo,Roissy en France,France)で測定した。大腿骨長の有意差は群間で観察されなかった。
【0128】
サーボ油圧材料試験システム(Instron 5942,Instron,Elancourt,France)を用いて、大腿骨を2mm/分で3点曲げで破損するまで装填した。下部スパン長は10mmであった。大腿骨は、前方四分円が下向きになり、引張荷重を受けるように配向した。上部クロスヘッドの荷重及び変位は、100Hzのサンプリング速度でデジタル的に記録され、500Nロードセル(Instron)を用いて測定された。剛性、終局荷重、降伏荷重、降伏後変位(PYD)、及び仕事対破壊を荷重-変位曲線から計算した。PYDは、破壊時の変位から降伏時の変位を引いたものと定義した。降伏は、剛性の0.2%低下を表す回帰が荷重-変位曲線と交差する点と定義した。
【0129】
圧縮実験をL2で行った。簡単に説明すると、椎体を注意深く切開し、プレキシグラスプレート上にシアノアクリレート接着剤で接着し、次いで翌日まで生理食塩水中で4℃でインキュベートした。L2椎体は、Instron 5942デバイスを用いて1mm/分の変位速度で破壊まで圧縮した。上部プラトーの荷重と変位を100Hzのサンプリング速度で記録した。荷重-変位曲線から最大荷重と剛性を計算した。
【0130】
11.マイクロコンピュータX線断層撮影
Skyscan 1076マイクロトモグラフィー(Bruker MicroCT,Kontich, Belgium)を50kV、200μA、2000ms積分時間で操作し、大腿骨中央部のマイクロCT分析を行った。等方性画素サイズを9μmに固定し、0.5°で回転ステップを行い、0.5mmアルミニウムフィルタで露光した。各3D再構成画像データセットは、大域的閾値化を用いて2値化した。関心のある皮質体積(VOI)は、遠位成長プレートの4mm上に位置し、さらに1mm上方に延長した。
【0131】
第5腰椎(L5)の椎体の分析を、85kV、220μA、1000ms積分時間で手術したNanotomナノトモグラフィー(Phoenix、GE、米国)を用いて行った。等方性画素サイズを4μmに固定し、回転ステップを0.25°にし、露光を0.1mm銅フィルターで行った。各3D再構成画像データセットは、大域的閾値化を用いて2値化した。関心のある小柱体積を、L5椎体の冠状断面上でコンピュータ化した。骨梁VOIは、前皮質壁及び後皮質壁からの最初と最後の80μmを除いて、椎体全体に広がった。すべてのmicroCT/NanoCTパラメータは、American Society for Bone and Mineral Researchによって提案されたガイドライン及び命名法に従って決定した(Bouxsein et al., 2010)。
【0132】
12.骨組成評価
3点曲げ実験の後、大腿骨を4℃でpMMA中に脱灰せずに埋め込み、大腿骨中央部の1マイクロメートル断面をBaF2光学窓の間にサンドイッチし、後方象限でフーリエ変換赤外イメージング(FTIRI)評価を行った。FTIRIは、Hyperion 3000顕微鏡とインターフェースした頂点70分光計(Bruker,Ettlingen,Germany)と、180×180μmの視野をカバーする焦点面アレイ検出器(64×64画素)を用いて実施した。十分な骨を分析できるように、9つの視野を一緒に縫い合わせた。8cm-1のスペクトル分解能(スペクトル領域900~2000cm-1)で切片を走査した。各スペクトルは、pMMA減算に供する前に、RMieS-EMSC v5アルゴリズム(英国マンチェスター大学Peter Gardner教授の種類贈与)を用いてMie散乱に対して補正した。
【0133】
スペクトル画像の評価は、Aguado et al. (2017) Calcif Tissue Int 100:332-340に記載されているように、Matlab R2016b(Mathworks,Natick,MA)の実験室製ルーチンスクリプトを用いて行った。
【0134】
FTIR骨パラメータ(Paschalis (2012) Methods Mol Biol 816:517-525)を計算した:(1)リン酸塩/アミド比(v1,v3リン酸塩/面積アミド1);(2)酸性リン酸塩含有量(強度比1127cm-1/1096cm-1)(Spevak et al. (2013) Calcif Tissue Int 92:418-428);(3)結晶サイズと完全性を反映する無機結晶度(強度比1030cm-1/1020cm-1);(4)結晶サイズ指数(強度比1075cm-1/1055cm-1)であり、結晶サイズを002、211、200、及び202方向に表す(Gadaleta et al. (1996) Calcif Tissue Int 58:9-16);及び(5)コラーゲン成熟度(強度比1660cm-1/1690cm-1)。
【0135】
炭酸塩/リン酸塩比(約1415cm-1/1030cm-1に位置する強度v3炭酸塩)は、有機マトリックススペクトルを差し引いた後に計算した(Ou-Yang et al. (2001) J Bone Miner Res 16:893-900)。各組成パラメータについて、画素分布の半値最大における平均及び全幅(ゼロバックグラウンド値を除く)を計算し、平均及び不均一性として表した。
【0136】
13.組織学
剖検時に肝臓及び膵臓を採取し、直ちにホルマリンで固定した。パラフィン包埋後、厚さ4μmの切片を切断し、ヘマトキシリン/フロキシン染色で染色した。組織異常の有無を評価するために、訓練を受けた組織学者によって組織学的観察が行われている。
【0137】
14.統計解析
図2-3のコラーゲン成熟度及び破骨細胞数の差、ならびに図16~18のcAMPレベルを比較するために、Holm-Sidakの多重比較検定と単一の統合分散を用いた一元配置分散分析を用いた。
【0138】
OVX+Veh群、OVX+GL-0001群、OVX+GL-0007 25群、OVX+GL-0007 100群の有意性を検定するため、Dunnett多重比較検定を用いた一元配置分散分析を行った。
【0139】
pが0.05以下の場合は有意差とみなした。
【0140】
結果
実施例1に開示されているように得られたコンセンサス配列に基づいて、以下のペプチドを本発明者らが試験した。
【0141】
【表2】
【0142】
1.GIPとGLP-2の併用がコラーゲン成熟度と破骨細胞数に及ぼす影響
図2は、ビヒクル(CTRL)、[D-Ala]-GIP1-30NH2、[Gly]-GLP-2又は[D-Ala]-GIP1-30NH2及び[Gly]-GLP-2の併用投与がコラーゲン成熟度に及ぼす影響を示す。
【0143】
[D-Ala]-GIP1-30NH2又は[Gly]-GLP-2は、それぞれ約82%(p=0.074)又は111%(p=0.0246)までコラーゲン成熟度を増加させることができた。[D-Ala]-GIP1-30NH2と[Gly]-GLP-2の同時投与は、このパラメータにおいて有意な増加(255%,p<0.001)をもたらした。この増加は、[D-Ala]GIP1-30NH2又は[Gly]-GLP-2単独で観察されたものよりも有意に大きかった。
【0144】
図3は、インビトロでのヒト破骨細胞形成に対するビヒクル(CTRL)、[D-Ala]-GIP1-30NH2、[Gly]-GLP-2又は[D-Ala]-GIP1-30NH2と[Gly]-GLP-2の併用投与の影響を示す。ここでも、[D-Ala]-GIP1-30NH2及び[Gly]-GLP-2は、それぞれ16%(p<0.001)及び34%(p<0.001)の破骨細胞形成を有意に低下させた。これらの分子の同時投与は破骨細胞形成の有意な66%減少をもたらした(p<0.001)。
【0145】
2.骨芽細胞死に対するGL-0001の作用
図4は、ビヒクル、GL-0001又はロシグリタゾンの存在下でのMC3T3-E1細胞死に関する結果を示す。本発明者らは以前に、ロシグリタゾン投与が細胞死を増加させることを示し、それ自体がこのアッセイにおいて細胞死の正のインダクターとして使用されることを示した。
【0146】
この図から、GL-0001は10-6Mの高濃度では、ロシグリタゾンとは反対に細胞死を誘発しないことがわかる。
【0147】
3.ヒトGIP受容体とそれらのIC50における二重類似体の結合親和性。
本発明者らは、[D-Ala]GIP1-30NH2又は上記表1に開示された二重類似体ペプチドのヒトGIP受容体における結合親和性を決定した。各化合物について決定された対応するIC50は、以下の通りであった。
【0148】
【表3】
【0149】
IC50値から、試験された異なる類似体の効力は、GL-0005>GL-0003>GL-0008>[D-Ala]GIP1-30NH2>GL-0007>GL-0001>GL-0002>GL-0006>GL-0009>GL-0004と見られた。
【0150】
4.ヒトGLP-2受容体とそれらのそれぞれのIC50における二重類似体の結合親和性。
本発明者らは、ヒトGLP-2受容体における[Gly]GLP-2又は上記表1に開示された二重類似体ペプチドの結合親和性を測定した。各化合物について決定された対応するIC50は、以下の通りであった。
【0151】
【表4】
【0152】
IC50値から、試験された異なる類似体の効力は、GL-0004>[Gly]GLP-2>GL-0001>GL-0007>GL-0006>GL-0008>GL-0005>GL-0002>GL-0003>GL-0009と見られた。
【0153】
5.インビトロでの破骨細胞形成に及ぼす二重類似体の影響とそれぞれのIC50。
本発明者らは、[D-Ala]-GIP1-30NH2、[Gly]-GLP-2又は表1に開示される二重類似体ペプチドが、インビトロでのRaw264.7細胞媒介性破骨細胞形成に及ぼす影響を決定した。
【0154】
各化合物について決定された対応するIC50は、以下の通りであった。
【0155】
【表5】
【0156】
IC50値から、試験された異なる類似体の効力は、GL-0006>GL-0005>GL-0004>GL-0008>GL-0001>[GL-0001]>[GLP-2>GL-0007>[D-Ala]GIP1-30NH2>GL-0009>GL-0002>GL-0001-Tag>GL-0003と見られた。
【0157】
6.インビトロでのコラーゲン成熟に及ぼす二重類似体の影響
図5~7は、表1に開示された[D-Ala]-GIP1-30NH2、[Gly]-GLP-2又は二重類似体ペプチドが、インビトロでのMC3T3-E1培養物中のコラーゲン成熟度に及ぼす影響を示す。点線は基礎コラーゲン成熟度に相当する。
【0158】
類似体のいくつかは二相性プロファイル、すなわちGL-0001-Tag、GL-0002、GL-0004を示した。
【0159】
本発明者らは以前に、コラーゲンの最大成熟度が100~200pM[D-Ala]GIP1-42の濃度で得られることを示した(Mieczkowska et al. (2015) Bone 74:29-36このように、100~200pMの濃度間の平均コラーゲン成熟度を各類似体について決定し、これらの分子の効力は、GL-0007>GL-0001>[GL-0001]>[GL-2>GL-0008>GL-0006及びGL-0009>[D-Ala]GIP1-30NH2>GL-0001-Tag>GL-0002>GL-0004及びGL-0005>GL-0003であった。
【0160】
試験した各ペプチドで陽性の効果が観察されたが、本発明者らは、ペプチドGL-0001及びGL-0007を特に興味深いペプチドとして同定した。インビトロでの破骨細胞形成とインビトロでのコラーゲン成熟に基づいて、GL-0001とGL-0007は、各天然ペプチドより優れた効力を有する唯一の2つのペプチドであり、従って、以下の実験のために選択された。
【0161】
7.GL-0001又はGL-0007が体重に及ぼす影響
図8は、8週間の投与期間終了時の動物の体重を示したものである。ゾレドロン酸を注射した動物は、約1.3~1.5gの重量のALZETポンプ移植を受けなかったことに注目するに値する。溶媒と比較して、いずれの投与も体重の有意な変化をもたらさなかった。
【0162】
8.皮質骨強度に対するGL-0001又はGL-0007の影響
図9は、閉経後骨粗鬆症のモデルとしてのマウスにおける卵巣摘出誘発性骨喪失における虫垂骨格の皮質骨強度に関するデータを示す。卵巣摘出動物を、賦形剤、25nmol/kg/日のGL-0001、25nmol/kg/日のGL-0007又は100nmol/kg/日のGL-0007で処理した。閉経後骨粗鬆症の治療に最も使用される分子の1つであるゾレドロン酸を、単回静脈内投与(100μg/kg)後の陽性対照として使用した。
【0163】
二重類似体又はゾレドロン酸はいずれも最終荷重、降伏荷重又は剛性の修飾に強力ではなかったが、GL-0001は最終変位(34%,p=0.047),降伏後変位(70%,p=0.038)及び仕事対骨折(37%,p=0.022)を有意に増加させることができ、後者は骨折に必要なエネルギーを表す。ワーク・トゥ・フラクチャーが高いほど、より抵抗性の高い骨を意味する。100nmole/kg/日でのGL-0007は最終変位(33%,p=0.054)と収量後変位(62%,p=0.074)を増加させ,最終的に仕事-骨折における有意な増加をもたらした(33%,p=0.049)。
【0164】
9.皮質骨微細構造に対するGL-0001又はGL-0007の作用。
図10-11は、卵巣摘出マウスにおける虫垂骨格の皮質骨微細構造に関するデータを示している。動物を溶媒、25nmol/kg/日 GL-0001、25nmol/kg/日 GL-0007、100nmol/kg/日GL-0007又はゾレドロン酸(100μg/kg iv)で処理した。遠位成長板の4mm上の大腿骨で皮質骨微細構造を調べた。ビヒクル、ダブルアナログ、ゾレドロン酸はいずれも皮質骨微細構造に影響を及ぼさなかった。
【0165】
10.骨梁強度及び微細構造に対するGL-0001又はGL-0007の効果
図12-13は、体軸骨格、より正確には腰椎における骨梁の特徴に関するデータを報告している。第2腰椎の骨梁強度を圧迫試験により評価した(図12)。賦形剤投与動物と比較して、GL-0001、GL-0007は、両方の濃度及びゾレドロン酸で骨剛性を有意に低下させた。圧迫試験は破壊的であるため、第5腰椎で小柱の微細構造が研究された(図13)。予想通り、ゾレドロン酸は骨梁骨量(BV/TV)を15%増加させ(p=0.013)、骨梁数を12%増加させた(p=0.036)。25nmol/kg/日の濃度のGL-0007は、小柱間隔を17%減少させたが、わずかではあるが有意な減少(p=0.009)をもたらした。
【0166】
11.骨基質組成に及ぼすGL-0001又はGL-0007の影響
図14-15は、二重アナログ投与が虫垂骨の皮質骨の組織材料特性に及ぼす影響を調べたものである。溶媒と比較して、GL-0001は平均コラーゲン成熟度(10%,p=0.017)、コラーゲン成熟度不均一性(28%,p=0.008)、酸性リン酸含量不均一性(21%、p=0.016)を有意に増加させ、平均リン酸/アミド比を減少させた(6%,p=0.016)。100nmole/kg/日でのGL-0007は平均リン酸/アミド比を有意に低下させ(5%、p=0.031)、酸性リン酸含量不均一性を増加させた(18%、p=0.044)。ゾレドロン酸は、ミネラル結晶度の不均一性のみが有意に増大したので(21%、p=0.002)、わずかな効果を示した。
【0167】
12.肝臓と膵臓の構造の組織学的調査
本発明者らは、肝臓及び膵臓において組織学的分析を行った。肝臓及び膵臓を処理、包埋、切片化、染色し、賦形剤25nmol/kg/日GL-0001又は25nmol/kg/day GL-0007の存在下で浮腫、炎症又は壊死のあらゆる徴候について検査した。形態学的変化又は壊死の徴候は3群間で観察されなかった。
【0168】
13.GIPr及びGLP-2rの活性化
本発明者らは、ビヒクル、[D-Ala]GIP1-30NH2、[Gly]GLP-2又はGL-0001に応答するcAMPレベルの上昇を研究した。ヒトGIPrのみをトランスフェクトしたHEK293細胞において、[D-Ala]GIP1-30NH2及びGL-0001は、cAMPの細胞内レベルを増加させたが、ビヒクル又は[Gly]GLP-2は増加させなかった(図16)。ヒトGLP-2rのみをトランスフェクトしたHEK293細胞において、[Gly]GLP-2及びGL-0001は、ビヒクル又は[D-Ala]GIP1-30NH2ではなく、cAMPの細胞内レベルを増加させた(図17)。ヒトGIPr及びヒトGLP-2rと同時トランスフェクトしたHEK293細胞では、[D-Ala]GIP1-30NH2、[Gly]GLP-2及びGL-0001は、cAMPの細胞内レベルを増加させたが、ビヒクルでは増加させなかった(図18)。同時トランスフェクションされた細胞におけるcAMP上昇の大きさは、各天然ペプチドよりもGL-0001で大きかったことに注目すべきである。
【0169】
結論
これらすべてのデータは、本発明のペプチドが、骨芽細胞により産生されるコラーゲンマトリックスの酵素的架橋を、インビトロ及びインビボにおいて、各天然ペプチドよりも高いレベルで増加させ、生成された破骨細胞の数を、各天然ペプチドよりも重要な方法で減少させ、骨折に対する骨抵抗性を、ゴールドスタンダードのゾレドロン酸よりも良好に増加させ、従って、骨障害を治療するための強力な薬剤であることを確認する。
【0170】
実施例3:本発明のペプチドと先行技術のペプチドとの比較
本研究の目的は、本発明の二重GIP/GLP-2類似体、特にGL-0001及びGL-0007、ならびに特許出願WO2018/069442からの3つのペプチド、すなわち、配列HADGTFISDYSTILDNLAARDFINWLIQTKITD(配列番号14)のペプチドCo-3、配列HAEGTFISDYSIAMDKLAARDFINWLIQTKITD(配列番号15)のペプチドCo-7、及び配列HADGTFISDYSTILDNLAARDFINWLIQTKGKK(配列番号16)のペプチドCo-19の可能性を比較することであった。
【0171】
ペプチドCo-3、Co-7及びCo-19は、WO2018/069442において二重GIP/GLP-2類似体として引用された。しかしながら、骨芽細胞による骨マトリックスの沈着及び成熟(すなわち、コラーゲン成熟)に関するデータは提供されなかった。このプロトコールにより、本発明は、相乗的、相加的又は拮抗的なGIP/GLP-2類似体の作用を評価することが可能となった。
【0172】
材料及び方法
1.ペプチド配列
すべてのペプチドは、フランス、ボインズのGeneCustによるFmoc合成によって作製された。高速液体クロマトグラフィーと質量分析により、純度とペプチド組成を検証した。ペプチド配列、ロット番号及び純度を下の表5に示す。
【0173】
【表6】
【0174】
2.配列相同性
本発明のペプチドとWO2018/069442に開示されたペプチドとの間の相同性のパーセンテージを決定するために、ペプチド配列をMatlab R2016b(nwalign機能)におけるNeedleman-Wunschアルゴリズムと整列させた。
【0175】
3.データ
簡単に説明すると、MC3T3-E1サブクローン4細胞は、5%ウシ胎児血清(FBS)、5%ウシ血清(BCS)、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを添加したα-MEM中で、37℃、5%COで富化した加湿雰囲気中で増殖させ、増殖させた。
【0176】
コラーゲン成熟度アッセイのために、細胞を0.05%トリプシン-EDTAで分離し、1.5×10細胞/cmの密度で平板培養し、5%FBS、5%BCS、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを補充したα-MEM中でコンフルエンスまで増殖させた。コンフルエンス時に、培養培地を、5%FBS、5%BCS、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、50μg/mLアスコルビン酸及び種々の濃度のGIP、GLP-2又は二重GIP/GLP-2類似体を添加したα-MEMを含む分化培地に置き換えた。この日を1日目とみなした。分化培地は2日ごとに補充した。14日目に、骨芽細胞培養物を、0.1%トリトンX100を含有する0.2Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中で4時間、軌道振盪器上でインキュベーションすることにより脱細胞化した。培養物をミリQ水で少なくとも6回すすぎ、無水エタノール中で固定し、培養皿から取り出し、BaF2ウィンドウに移し、そこで風乾した。得られたフーリエ変換赤外スペクトルと市販のコラーゲンのスペクトルを比較することにより、コラーゲン細胞外マトリックスの完全性を検証した。Bruker Vertex 70分光計(Bruker optics,Ettlingen,Germany)を用いてスペクトル分析を行い、標準的な単一元素のMercury Cadmium Telluride(MCT)検出器を備えたBruker Hyperion 3000赤外顕微鏡とインターフェースした。赤外分光光度計の校正は、ポリスチレンフィルム標準(Bruker光学系)を用いて週1回行う。赤外スペクトルは4cm-1の分解能で記録され、伝送モードでは平均32スキャンであった。背景スペクトル画像を、各実験の開始時と終了時に同じBaF2ウィンドウから同一条件下で収集し、装置の安定性を確保した。各条件について少なくとも5つのスペクトルを収集し、Matlab R2016b(Mathworks,Natick,MA)の実験室製ルーチンスクリプト(バージョン2.0)を用いて分析した。コラーゲン成熟度指数は、アミドIピークの1660cm-1及び1690cm-1に位置するそれぞれのサブバンドを用いて、成熟3価及び未成熟2価コラーゲン架橋の相対比として決定した。
【0177】
GIP及びGLP-2データセットについては、本発明者らは、以前に収集及び分析されたコラーゲン成熟度データを使用した。
【0178】
4.相乗作用の評価
まず、対照培養物、すなわち二重GIP/GLP-2類似体非存在下で得られたコラーゲン成熟度を平均し、全データセットに差し引いた。二重GIP/GLP-2類似体の投与の効果を決定するために、変換されたデータセットを未処理培養物の平均値で割った。ペプチドの各濃度について、平均、SD及び事象数を計算した。その後、これらのデータをGraphPad Prism(バージョン8.0)にエクスポートし、さらなる分析を行った。GraphPad Prism解析は、(1)薬物濃度の対数(濃度)での変換、(2)ガウス分布、刺激された用量反応(4つのパラメータ)、2つのガウス関数又は6次多項式関数の和、(3)薬物ごとのEC50及びEmaxの推定から構成された。
【0179】
さらに、相乗効果を検討するために、本発明者らは、GIP及びGLP-2に遭遇するEC50の固定用量、ならびにEC50 GIP/GLP-2の0.2、0.4、0.8、0.9、1.0、1.2及び1.5倍のGIP/GLP-2の二重GIP/GLP-2類似体の効果を推定した。各濃度で、Chou & Talalayモデル(Chou & Talalay (1983) Trends Pharmacol Sci 4: 450-454)を用いて、以下のように組み合わせ指数を計算した。
CI=(EGIP+EGLP2-(EGIP×EGLP2))/EDA
ここで、EGIP、EGLP2及びEDAは、それぞれGIP単独、GLP-2単独又は二重アゴニストで観察された効果を表す。本発明者らは以前に、GIP及びGLP-2はコラーゲン成熟度に対して異なる最大効果を示したが、それぞれのEC50はほぼ同じであることを観察した。
【0180】
5.統計解析
EC50と1.5xEC50の組み合わせ指数の差を、両側t検定を用いて1.0±0.15の値として定義した加算性と比較した。P値<0.05を有意とみなした。データは平均値±標準偏差で表す。
【0181】
結果
1.本発明のペプチドとペプチドとの間の配列相同性は、WO2018/069442に開示されている。
配列相同性のパーセンテージはコンピュータ化され、下記の表6に示されている。GL-0001とGL-0007との間の配列アラインメント、及びWO2018/069442に開示されているペプチドも下記の表6に示されている。
【0182】
WO2018/069442由来のペプチドCo-7は、GL-0001及びGL-0007の両方との最大配列相同性を示す。データは、アルカリホスファターゼ上のペプチドCo-3及びCo-19を有するWO2018/069442に提供されたので、本発明者らは、さらなる比較のためにこれら2つのペプチドも選択した。
【0183】
【表7】
【0184】
本発明のペプチドとWO2018/069442ペプチドのペプチドとの間の同一位置におけるアミノ酸組成(同一又は同一クラス)の相違を図19に要約した。
【0185】
GL-0001では、ペプチドCo-3、Co-7及びCo-19との主な相違点は、7、12、13、31、32及び33位である。GL-0007では、ペプチドCo-3、Co-7及びCo-19との主な相違点は、7、12、13、31、32及び33位である。
【0186】
2.ペプチド濃度の関数としてのコラーゲン成熟度
3価成熟/2価成熟コラーゲン架橋の比として得られたコラーゲン成熟指数を細胞外マトリックス中で測定した。図20は、本発明のペプチド及びWO2018/069442のペプチドがこのパラメーターに及ぼす影響を表す。
【0187】
予想されたように、かつ以前のデータを確認すると、GL-0001及びGL-0007は、ペプチドの非存在下で観察された指標(点線)を上回るコラーゲン成熟度を増加させた。興味深いことに、ペプチドCo-3、Co-7及びCo-19の効果は、コラーゲン成熟指数を上昇させるのに非常に適度であった。
【0188】
3.コラーゲン成熟度に対するGIP/GLP-2二重類似体の用量-効果曲線
各二重GIP/GLP-2アナログについて用量-効果曲線をプロットした。各ダブルGIP/GLP-2アナログの最適モデルを表7に示す。
【0189】
【表8】
【0190】
4.コラーゲン成熟度に対するGIP/GLP-2類似体倍加EC50
各二重GIP/GLP-2類似体のEC50を用量-効果曲線から同定した。相互EC50を表8に示す。
【0191】
【表9】
【0192】
すでに述べたように、[D-Ala]-GIP1-30及び[Gly]-GLP-2は同様のEC50を示し、したがって結合指数の決定には平均EC50が69pMであった。興味深いことに、すべての二重GIP/GLP-2類似体は同じ範囲でEC50を示し、同じ濃度で最大効果の半分を達成することができることを示唆している。しかし、GL-0001及びGL-0007はWO2018/069442ペプチドで観察された最大効果のほぼ2倍であることから、最大効果(Emax)の項において明確な差異が観察された。
【0193】
5.コラーゲン成熟度に対するGIP/GLP-2類似体の2種類の組み合わせ指数
Chou & Talalayモデルに基づいて、GIP及びGLP-2の平均EC50の0.2倍、0.4倍、0.8倍、0.9倍、1.0倍、1.2倍、及び1.5倍、すなわち14、27、54、61、69、82倍、及び100pMで組み合わせ指数を算出した。図21は、用量に対するCIの進展を示すために、濃度に対する組み合わせインデックスをプロットしたものである。
【0194】
表9及び表10は、EC50及び1.5×EC50における各二重GIP/GLP-2類似体のそれぞれの組み合わせ指数を示す。
【0195】
【表10】
【0196】
【表11】
【0197】
CI>10:非常に強い拮抗作用;CI3.3-10:強い拮抗作用;CI1.45-3.3:拮抗作用;CI1.15-1.45:中等度の拮抗作用;CI0.85-1.15:相加作用;CI0.85-0.65:中等度の相乗作用;CI0.3-0.65:相乗作用;CI0.1-0.3:強い相乗作用;CI<0.1:非常に強い相乗作用。
【0198】
データは、5~13回の実験の平均±SDとして提示されている。両側t検定を用いて、CIが加法性(1.0±0.15)と比較して有意差があるかどうかを評価した。
【0199】
L-0001及びGL-0007は、69pM及び100pMで、強い相乗作用を示唆する組み合わせ指数を示した。以前に、本発明者らは、GL-0001及びGL-0007の相乗作用を支持する結合指数と同様の挙動を既に示した。本研究は、以前に得られたデータと一致している。
【0200】
興味深いことに、Co-3、Co-7及びCo-19ペプチドのいずれも相乗特性を示さなかったが、濃度に依存して相加的又は拮抗性を示した。
【0201】
EC50と1.5×EC50の組み合わせ指数に基づくと、GL-0001とGL-0007のみが相乗作用の良好な候補であると思われる。
【0202】
結論
本研究は、本発明の二重GIP/GLP-2類似体及びWO2018/069442特許出願に開示されたペプチドの効果を比較した。
【0203】
本発明のペプチドであるGL-0001及びGL-0007は、コラーゲン成熟及び破骨細胞形成に対する作用の観点から、それらが最良の妥協点を表すものとして選択された。WO2018/069442ペプチドとの配列アラインメントは、ペプチドCo-7がGL-0001及びGL-0007に最も近いペプチドであることを示した。アルカリホスファターゼに関するデータは、ペプチドCo-3及びペプチドCo-19を用いてWO2018/069442に提供されたので、本発明者らは、一方でGL-0001及びGL-0007の作用を、他方でCo-3、Co-7及びCo-19のペプチドと頭部対頭部で比較することを決定した。すべてのペプチドは同様のEC50を示したが、最大効果の大きさに明らかな差があった。これは、同じ用量のペプチドについて、コラーゲン成熟度に対する効果は、本発明のペプチドにより大きくなるであろうことを意味する。さらに、二重GIP/GLP-2類似体の背後にある薬理学的メカニズムを解明し、本発明のペプチドは強い相乗作用を示したが、WO2018/069442ペプチドは相加作用又は拮抗作用様式を示した。
【0204】
実施例4:本発明のペプチドと先行技術のペプチドとの比較
本研究の目的は、本発明の二重GIP/GLP-2類似体、すなわちGL-0001及びGL-0007、ならびに特許出願WO2018/069442からの3つのペプチド、すなわち、インビトロでの破骨細胞形成に関するペプチドCo-3、Co-7及びCo-19の可能性を比較することであった。
【0205】
材料及び方法
1.ペプチド配列
ペプチドは実施例3に開示されたとおりであった。
【0206】
2.細胞及び増殖方法
マウス264.7細胞を、37℃で5%COを濃縮した加湿雰囲気中で、10%ウシ胎児血清(FBS-Lonza)、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシン(Gibco)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM-Gibco)を含む増殖培地中で増殖・拡大し、生264.7細胞を解凍後の第1継代を継代1とみなした。細胞を継代8まで使用した。
【0207】
3.破骨細胞形成試験
マウス原料264.7細胞をプラスチック皿から取り出し、1.25×10細胞/cmの密度でプレートし、10ng/ml可溶性マウスRANKL(Bio-Techne、参考文献462-TEC-010)で富化した増殖培地中で増殖させた。110時間後、細胞をホルマリン(PBS緩衝液中10%)で10分間固定し、酒石酸塩耐性酸性ホスファターゼ(TRAcP)染色前に蒸留水中で洗浄した。
【0208】
TRAcPは、基質としてナフトールAS-BI-リン酸塩(Sigma Aldrich)及び暗所で37℃で90分間ジアゾニウム塩としてファストバイオレットB(Sigma-Aldrich)を用いた同時カップリング反応により組織化学的に明らかにした。培養物を蒸留水中で3回すすぎ、残留活性を4%NaF(Sigma-Aldrich)で30分間阻害した。次いで、細胞を蒸留水中でリンスし、乾燥させた。3個以上の核を有するTRAcP陽性細胞を破骨細胞として同定した。新たに発生した破骨細胞の数は、治療介入について盲検化された組織学者による光学顕微鏡検査を用いて評価した。本例では、(D-Ala)GIP1-30及び(Gly)GLP-2で以前に取得したデータセットを、比較及び組み合わせインデックス計算のために使用した。
【0209】
4.データの評価
2倍のGIP/GLP-2類似体で得られた破骨細胞数は、ペプチド非存在下(RANKL単独)で観察された破骨細胞数のパーセンテージとして最初に報告された。ペプチドの各濃度について、平均、SD及び事象数を計算した。その後、これらのデータをGraphPad Prism(バージョン8.0)にエクスポートし、さらなる分析を行った。GraphPad Prism解析は、(1)log(濃度)における薬物濃度の変換、(2)3パラメータLog(阻害剤)対応答モデル(トップ制約100)との曲線適合、(3)各薬物のIC50の推定で構成された。
【0210】
さらに、相乗効果を検討するために、本発明者らは、破骨細胞形成のパーセンテージを100に減じることにより、破骨細胞形成データを抑制効果に変換した。次いで、これらのデータをGraphPad Prismにエクスポートし、(1)log(濃度)における薬物濃度の変化、(2)3パラメータLog(アゴニスト)対応答モデル(下限0)による曲線フィッティング、(3)各薬物のEC50とEmaxの推定からなる解析を行った。GIP及びGLP-2(36.8pM)に遭遇したEC50での二重GIP/GLP-2類似体の効果は、以前に実施された実験から使用され、組み合わせ指数は、以下のようにChou & Talalay(Chou & Talalay (1983) Trends Pharmacol Sci 4: 450-454)に従って計算された。:
CI=(EGIP+EGLP2-(EGIP×GLP2))/EDA
ここで、EGIP、EGLP2及びEDAは、それぞれGIP単独、GLP-2単独又は二重アゴニストで観察された効果を表す。
【0211】
結果
1.破骨細胞形成
すべてのペプチドは、最高濃度で新たに生成された破骨細胞の量を減少させた。破骨細胞応答の曲線フィッティングをすべてのペプチドについて図22に示す。IC50は曲線フィッティングから推定し、表11に示した。
【0212】
【表12】
【0213】
ND:最大効果が50%阻害に達しなかったため、測定しなかった。:これまでの実験から決定された。
【0214】
興味深いことに、(D-Ala)GIP1-30と(Gly)GLP-2は同様のIC50を示した。両側t検定によりこの所見が確認された。このように、36.8pMの中間IC50を用いて、二重GIP/GLP-2類似体の「相乗」特性を調べた。
【0215】
2.GIP/GLP-2二重類似体の破骨細胞形成及び薬理学的機序に対する用量反応阻害作用
各二重GIP/GLP-2類似体の応答を評価するために、本発明者らは破骨細胞形成阻害のパーセンテージとしてデータを変換した。次いで、データを曲線フィットさせ、各曲線フィッティングのR値を表12に示す。
【0216】
【表13】
【0217】
各二重GIP/GLP-2アナログについて用量-効果曲線をプロットし、図23に示す。EC50及び最大阻害作用(Emax)は、それぞれの二重GIP/GLP-2類似体について計算され、表13に示されている。
【0218】
【表14】
【0219】
データは、5つの個々の実験の平均±SDを表す。以前の実験で得られたデータ。
【0220】
二重GIP/GLP-2類似体で観察された破骨細胞応答が、(D-Ala)GIP1-30と(Gly)GLP-2の両方の関節投与と同等か、より高いか、より低いかを決定することは興味深いと思われた。この疑問に答えるために、Chou & Talalayによる結合指数が計算され、表14に報告されている。さらに、(D-Ala)GIP1-30及び(Gly)GLP-2のEC50における結合指数を図24にプロットした。
【0221】
【表15】
【0222】
CI>10:非常に強い拮抗作用;CI3.3-10:強い拮抗作用;CI1.45-3.3:拮抗作用;CI1.15-1.45中等度の拮抗作用;CI0.85-1.15:相加作用;CI0.85-0.65:中等度の相乗作用;CI0.3-0.65:相乗作用;CI0.1-0.3:強い相乗作用;CI<0.1:非常に強い相乗作用。
【0223】
両側t検定を用いて、CIが加法性(1.0±0.15)と比較して有意差があるかどうかを評価した。
【0224】
結論
本研究は、本発明のペプチド、特にGL-0001及びGL-0007が、従来技術のペプチドよりも低いEC50を示したことを示す。このことは、低用量のGL-0001及びGL-0007を用いて、破骨細胞形成を50%阻害することができることを示唆している。さらに、GL-0001及びGL-0007のEmax値は、両ペプチドが(Gly)GLP-2単独よりも高い破骨細胞生成の85%以上の抑制を達成することを示した。GL-0001及びGL-0007の作用の背後にある薬理学的機序は、中等度の相乗作用から相加作用までの範囲である。興味深いことに、WO2018/069442に開示されたペプチド、すなわち、ペプチドCo-3、Co-7及びCo-19は、(D-Ala)GIP1-30又は(Gly)GLP-2単独と比較して、等しいか又はより高いEC50を示し、これは、同じ用量又はより高い用量が、破骨細胞形成の50%を阻害するために必要であることを示唆する。さらに、これら3つのペプチドで遭遇する最大の阻害効果はせいぜい約62.4%であり、(Gly)GLP-2又は(D-Ala)GIP1-30単独で観察された効果よりも低かった。さらに、これら3つのペプチドの薬理学的作用様式は、拮抗作用から非常に強い拮抗作用までの範囲に及んだ。
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【配列表】
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