(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電圧及び電流記録を使用する制御ロッド駆動機構診断ツール
(51)【国際特許分類】
G21C 17/10 20060101AFI20240621BHJP
G21C 7/14 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G21C17/10 700
G21C7/14
(21)【出願番号】P 2021550290
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2020020119
(87)【国際公開番号】W WO2020205106
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-31
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521219442
【氏名又は名称】ウェスティングハウス エレクトリック カンパニー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】WESTINGHOUSE ELECTRIC COMPANY LLC
【住所又は居所原語表記】1000 Westinghouse Drive, Suite 141, Cranberry Township, Pennsylvania 16066 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー イー. ファルヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム エス. ストリューザンスキ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース エー. ピー. ファーヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシリオス ザハリス
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05999583(US,A)
【文献】特開2007-198954(JP,A)
【文献】特開2002-267789(JP,A)
【文献】特開平09-054186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00-17/14
G21C 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の制御装置の駆動機構のコイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置であって、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、
前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうちの1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点を含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を実行させ
、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
時間の関数として、前記複数のコイルのうちの他のコイルの誘起電圧を検出することと、
前記誘起電圧を含む電子評価に基づいて、前記他のコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
をさらに実行させる、診断装置。
【請求項2】
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
前記電子評価に基づいて、前記駆動機構の摩擦レベルが適切なレベルであるのか過大なレベルであるのかを判断すること
を実行させる、請求項
1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
前記電子評価に基づいて、前記駆動機構のばねが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断すること
を実行させる、請求項1
又は2に記載の診断装置。
【請求項4】
原子炉の制御装置の駆動機構のコイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置であって、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、
前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうちの1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点を含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を実行させ
、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
電圧及び電流を記録することと、
診断試験手続中にコイル抵抗を測定することと、
をさらに実行させる、診断装置。
【請求項5】
原子炉の制御装置の駆動機構のコイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置であって、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、
前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうちの1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点を含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を実行させ
、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
前記1つのコイル内の温度の変化を記録することをさらに実行させ、
前記温度の変化は、前記1つのコイルの絶縁システムの状態を示す、診断装置。
【請求項6】
原子炉の制御装置の駆動機構のコイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置であって、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、
前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうちの1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点を含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を実行させ
、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
コイルの健全性を評価するために、電力供給されていないコイルの誘起電圧を記録することをさらに実行させる、診断装置。
【請求項7】
原子炉の制御装置の駆動機構のコイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置であって、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、
前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうちの1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点を含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を実行させ
、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
前記1つのコイルの絶縁抵抗を記録することをさらに実行させる、診断装置。
【請求項8】
診断装置を利用して原子炉の制御装置の駆動機構を診断する診断方法であって、前記診断装置はコイル積層体に電気的に接続されるように構成され、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、前記診断方法を実行させ、
前記診断方法は、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうち1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点の少なくとも1つを含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を備え
、
前記診断方法は、
時間の関数として、前記複数のコイルのうちの他のコイルの誘起電圧を検出することと、
前記誘起電圧を含む電子評価に基づいて、前記他のコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
をさらに備える、診断方法。
【請求項9】
前記電子評価に基づいて、前記駆動機構の摩擦レベルが適切なレベルであるのか過大なレベルであるのかを判断することをさらに備える、請求項
8に記載の診断方法。
【請求項10】
前記電子評価に基づいて、前記駆動機構のばねが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することをさらに備える、請求項
8又は9に記載の診断方法。
【請求項11】
診断装置を利用して原子炉の制御装置の駆動機構を診断する診断方法であって、前記診断装置はコイル積層体に電気的に接続されるように構成され、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、前記診断方法を実行させ、
前記診断方法は、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうち1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点の少なくとも1つを含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を備え
、
前記診断方法は、
電圧及び電流を記録することと、
診断試験手続中にコイル抵抗を測定することと、
をさらに備える、診断方法。
【請求項12】
診断装置を利用して原子炉の制御装置の駆動機構を診断する診断方法であって、前記診断装置はコイル積層体に電気的に接続されるように構成され、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、前記診断方法を実行させ、
前記診断方法は、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうち1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点の少なくとも1つを含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を備え
、
前記診断方法は、
前記1つのコイル内の温度の変化を記録することをさらに備え、
前記温度の変化は、前記コイルの絶縁システムの状態を示す、診断方法。
【請求項13】
診断装置を利用して原子炉の制御装置の駆動機構を診断する診断方法であって、前記診断装置はコイル積層体に電気的に接続されるように構成され、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、前記診断方法を実行させ、
前記診断方法は、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうち1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点の少なくとも1つを含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を備え
、
前記診断方法は、
コイルの健全性を評価するために、電力供給されていないコイルの誘起電圧を記録することをさらに備える、診断方法。
【請求項14】
診断装置を利用して原子炉の制御装置の駆動機構を診断する診断方法であって、前記診断装置はコイル積層体に電気的に接続されるように構成され、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、前記診断方法を実行させ、
前記診断方法は、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうち1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点の少なくとも1つを含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を備え
、
前記診断方法は、
前
記1つのコイルの絶縁抵抗を記録することをさらに備える、診断方法。
【請求項15】
診断装置を利用して原子炉の制御装置の駆動機構を診断する診断方法であって、前記診断装置はコイル積層体に電気的に接続されるように構成され、前記コイル積層体は少なくとも3つのコイルを有し、前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、前記診断方法を実行させ、
前記診断方法は、
所定の期間に亘って、前記少なくとも3つのコイルのそれぞれに、一度につき1つのコイルに、プログラム電圧を印加することであって、前記少なくとも3つのコイルのうちの1つに電力供給される間に、残りのコイルに電力供給されない、前記印加することと、
前記所定の期間に亘って、前記少なくとも3つのコイルのそれぞれ内の電流を監視することと、
監視済みの前記電流に基づいて、前記原子炉の前記制御装置の前記駆動機構のコンポーネントが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を備える、診断方法。
【請求項16】
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することをさらに備える、請求項
15に記載の診断方法。
【請求項17】
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点の間の経過時間を判断することをさらに備える、請求項
16に記載の診断方法。
【請求項18】
前記経過時間を所定時間と比較することと、
前記経過時間が前記所定時間よりも長い場合に、故障しているコイルがあるか又は摩擦が過剰であると判断することと、
前記経過時間が前記所定時間よりも短い場合に、破損又は故障したばねがあると判断することと、
をさらに備える、請求項1
7に記載の診断方法。
【請求項19】
隣接する電力供給されていないコイルの誘起電圧を判断することと、
前記誘起電圧が予測値である場合に、過剰摩擦が存在すると判断することと、
前記誘起電圧が前記予測値よりも低い場合に、電力供給済みコイルが故障しているコイルであると判断することと、
をさらに備える、請求項
15から
18のいずれか一項に記載の診断方法。
【請求項20】
原子炉の制御装置の駆動機構のコイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置であって、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、
前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうちの1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点を含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を実行させ
、
前記第1の変曲点は、増加する電流から減少する電流に変わる変化、又は、減少する電流から増加する電流に変わる変化に対応し、
前記第2の変曲点は、増加する電流から減少する電流に変わる変化、又は、減少する電流から増加する電流に変わる変化に対応する、診断装置。
【請求項21】
診断装置を利用して原子炉の制御装置の駆動機構を診断する診断方法であって、前記診断装置はコイル積層体に電気的に接続されるように構成され、前記コイル積層体は複数のコイルを有し、前記診断装置は、
電源と、
プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、
前記メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶し、
前記命令は、前記プロセッサにおいて実行される場合に、前記診断装置に、前記診断方法を実行させ、
前記診断方法は、
時間の関数として変化する電圧を前記複数のコイルのうち1つのコイルに印加することと、
時間の関数として前記1つのコイル内の電流を検出することと、
前記電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、
前記第1の変曲点及び前記第2の変曲点の少なくとも1つを含む電子評価に基づいて、前記1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、
を備え
、
前記第1の変曲点は、増加する電流から減少する電流に変わる変化、又は、減少する電流から増加する電流に変わる変化に対応し、
前記第2の変曲点は、増加する電流から減少する電流に変わる変化、又は、減少する電流から増加する電流に変わる変化に対応する、診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、(2019年2月28日に出願された、「電圧及び電流記録を使用する制御ロッド駆動機構診断ツール」と題する)米国特許仮出願第62/811,780号に対する米国特許法119条に基づく優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、制御ロッド駆動機構(CRDM)及び/又は制御要素駆動機構(CEDM)に関する問題を判定するために電圧及び電流記録を使用する、CRDM及び/又はCEDMのための診断ツールに関する。
【背景技術】
【0003】
加圧水型軽水炉のような発電用原子炉では、濃縮ウランのような核燃料の核分裂によって熱が発生し、炉心を流れる冷却材に送られる。炉心は、燃料集合体構造上に互いに近接して取り付けられた複数の細長い核燃料ロッドを含み、その中又はその上を冷却材が流れる。燃料ロッドは、同一の外延を有する平行な配列で互いに間隔を置いて配置されている。所定の燃料ロッド内の燃料原子の核崩壊時に放出される中性子や他の原子粒子の一部は、燃料ロッド間の空間を通過し、隣接する燃料ロッド内の核分裂性物質に衝突し、核反応、及び炉心による熱の発生をもたらす。
【0004】
可動制御ロッドは、燃料ロッド間を通過する中性子の一部を吸収することによって、核分裂の全体速度を制御できるように、核炉心全体にわたって分散される。さもなければ、核分裂反応を起こしてしまうであろう。制御ロッドは、一般に、中性子吸収材料からなる細長いロッドを含み、燃料ロッドの間を平行に延びる燃料集合体の長手方向開口部又は案内シンブルに嵌合する。制御ロッドをさらに炉心内に挿入すると、隣接する燃料ロッド内の核分裂を起こすことなく、より多くの中性子が吸収されるようになる。制御ロッドを後退させると、中性子吸収の程度が減少し、核反応の速度と炉心の出力が増加する。
【0005】
制御ロッドは、炉心に対して制御ロッド群を前進又は後退させるために移動可能なクラスタアセンブリ内に支持されている。この目的のために、制御ロッド駆動機構が、典型的には原子炉炉心の上方に配置された原子炉容器ヘッドの一部として設けられる。原子炉容器は、典型的には、高い内圧まで加圧され、制御ロッド駆動機構は、原子炉圧力容器の管状延長部である圧力ハウジング内に収容される。
【0006】
制御ロッドを位置決めするための一種の機構は、いわゆる磁気ジャックという、制御ロッドを炉心の内外へ少しの距離ずつ別個のステップで移動させるように動作可能な機構である。制御ロッド駆動機構は、3つ、4つ、又は5つの電磁コイル(以下、「コイル」)と、駆動ロッドシャフト及びシャフトに結合された制御ロッドクラスタアセンブリを昇降させるように協調して動作するアーマチュア又はプランジャとを有する。コイルは、圧力ハウジングの周囲及び外側に取り付けられている。3つのコイルのうちの2つは、コイルによって動力が供給されると駆動ロッドシャフトと係合するグリッパを作動させる。
【0007】
駆動ロッドシャフトは、グリッパ上のグリップラッチによって保持される軸方向に離間した円周方向溝を有し、グリッパは、駆動ロッドシャフトの周囲に円周方向に離間している。第3のコイルは、可動グリッパと固定点との間に結合されたリフトプランジャを作動させる。制御ロッド駆動機構への制御出力が失われると、2つのグリッパは共に解放され、制御ロッドは重力によってその最大核流束減衰位置に落下してしまう。制御電源が作動したままである限り、少なくとも1組のグリッパが駆動ロッドシャフトを常に保持する。
【0008】
コイルは、駆動シャフトの保持・移動を交互に行うために、決められた時間で、調整された方法で作動される。把持動作及び移動の順序は、段階的な移動が後退であるか前進であるかに応じて異なる。グリッパは実質的に交互に動作する一方、移動シーケンスの間、両方のグリッパが駆動シャフトに係合する。
【0009】
多数の特定のコイル機構及びグリッパ機構が考えられる。上述のような固定グリッパと可動グリッパとリフトコイルとを有するコイルジャッキ機構の例は、例えば、Kingらの米国特許第5307384号、Tessaroの米国特許第5066451号、及びTessaroの米国特許第5009834号に記載されており、これらの全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一態様では、本開示は、原子炉の制御装置の駆動機構のコイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置を提供する。コイル積層体は複数のコイルを有する。診断装置は、電源と、プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備える。メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶しており、当該命令は、プロセッサにおいて実行される場合に、診断装置に、時間の関数として変化する電圧を複数のコイルのうちの1つのコイルに印加することと、時間の関数として当該1つのコイル内の電流を検出することと、電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、第1の変曲点及び第2の変曲点を含む電子評価に基づいて、当該1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、を実行させる。
【0011】
別の態様では、本開示は、コイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置を利用して、原子炉の制御装置の駆動機構を診断するための診断方法を提供する。コイル積層体は複数のコイルを有する。診断装置は、電源と、プロセッサとメモリとを備える制御部と、を備え、メモリは、診断装置に診断方法を実行させる多数の命令を含む多数のルーティンを記憶しており、当該命令は、プロセッサにおいて実行される場合に、診断装置に診断方法を実行させる。方法は、時間の関数として変化する電圧を複数のコイルのうちの1つのコイルに印加することと、時間の関数として当該1つのコイル内の電流を検出することと、電流内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別することと、第1の変曲点及び第2の変曲点のうちの少なくとも1つを含む電子評価に基づいて、当該1つのコイルが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、を備える。
【0012】
別の態様では、本開示は、コイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置を利用して、原子炉の制御装置の駆動機構を診断するための診断方法を提供する。コイル積層体は少なくとも3つのコイルを含む。診断装置は、電源と、プロセッサとメモリを備える制御部と、を備え、メモリは、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶しており、当該命令は、プロセッサにおいて実行される場合に、診断装置に診断方法を実行させる。方法は、所定の期間に亘って、少なくとも3つのコイルのそれぞれに、一度につき1つのコイルに、プログラム電圧を印加することあって、少なくとも3つのコイルのうちの1つに電力供給される間に、残りのコイルに電力供給されない、電圧を印加することと、所定の期間に亘って、少なくとも3つのコイルのそれぞれ内の電流を監視することと、監視済みの電流に基づいて、原子炉の制御装置の駆動機構のコンポーネントが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断することと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下の図面は、本開示の特定の態様を例示するものであり、したがって、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。図面は、以下の説明における説明と併せて使用することを意図している。開示された態様は、添付の図面に関連して以下に記載され、同様の数字は、同様の要素を示す。
【0014】
図1は部分的に断面図で示される立面図であり、原子炉の炉心を示す図である。
【0015】
図2は部分的に切り取られた斜視図であり、3コイル型CRDMの制御ロッド駆動機構の固定グリッパ及び可動グリッパ及びリフティング機構を示す。
【0016】
図3は例示的な固定グリッパ及び可動グリッパを示す、より詳細な断面図である。
【0017】
図4は、本開示の少なくとも1つの態様による、原子炉のCRDM及び/又はCEDM機構のための診断ツールのハードウェアレイアウトを示す。
【0018】
図5は、本開示の少なくとも1つの態様による、診断システムによって作成され記録された、抵抗測定値のグラフである。
【0019】
図6は、本開示の少なくとも1つの態様による、固定グリッパコイルに電力が供給されている間の、3コイル制御ロッド駆動機構のリフトコイル及び可動グリッパコイル内の誘起電圧の測定値のグラフである。
【0020】
図7は、本開示の少なくとも1つの態様による、電圧が印加されているコイルを流れる電流のコイル電流測定値のグラフである。
【0021】
図8は、本開示の少なくとも1つの態様による、
図7に示される固定グリッパコイルドロップアウト変曲点の詳細図を示す。
【0022】
図9は、本開示の少なくとも1つの態様による、電力供給されている固定グリッパコイルの温度変化を示すグラフである。
【0023】
図10は、本開示の少なくとも1つの態様による、コイル積層体と電気的に接続されるように構成された診断装置を使用して、原子炉の制御装置の駆動機構を診断するための制御プログラム又は論理構成のプロセスを示す論理フロー図であり、コイル積層体は、複数のコイルを有する。
【0024】
図11は、本開示の少なくとも1つの態様による、コイル積層体と電気的に接続されるように構成された診断装置を使用して、原子炉の制御装置の駆動機構を診断するための制御プログラム又は論理構成のプロセスを示す論理フロー図であり、コイル積層体は、少なくとも3つのコイルを含む。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、いくつかの実用的な例示及び実施例を提供する。当業者は、記載された例の多くが、様々な適切な代替物を有することを認識するであろう。原子炉のためのCRDM及び/又はCEDM機構のための多くの様々な例示的な診断ツールが、添付の図面に加えて以下に提供される説明を使用して本明細書に開示される。本明細書で開示される態様のそれぞれは、独立して、又は本明細書で開示される他の態様のうちの1つ又は複数(たとえば、すべて)と組み合わせて使用され得る。
【0026】
図1は部分的に断面図で示される立面図であり、原子炉の炉心を示す。一態様では、本開示は、コンポーネントの故障だけでなく、経時的な性能の劣化を含む性能問題の検出を可能にする方法で診断ツールを利用して、一般的に
図1に示される核制御ロッド24のための電磁駆動機構22の動作を分析するための方法を提供する。コンポーネントの性能に関するデータを収集し、記憶し、現在の性能を以前に記憶された履歴データと比較することによって、診断ツールは、故障が実際に発生する前に、差し迫った問題を検出できる。一態様では、原子炉のためのCRDM及び/又はCEDM機構のための診断ツールは、診断システム100(
図4参照)を備えていてもよく、原子炉の炉心圧力容器34内に制御ロッド24のための電磁駆動機構22を展開する前に使用され得る。一態様では、診断システム100は、原子力発電所が停止状態にある間に原子炉容器ヘッドがヘッドスタンドにある間に、CRDM及び/又はCEDM機構を診断するために使用することができる。他の態様では、診断システム100は、原子力発電所が停止している間、原子炉容器上に原子炉容器ヘッドが設置された状態で使用することを意図している。これは、機構の寿命、製造、操作、又は故障後診断の任意の段階において機構に対して使用され得る。一態様では、診断システム100は携帯型であってもよい。
【0027】
図1に示すような制御ロッド24は、クラスタ26内に取り付けられており、各クラスタは、燃料ロッドアセンブリ36を含む炉心圧力容器34の垂直延長ハウジング32内に配置された駆動ロッド28によって通常は駆動される。制御ロッド24は燃料ロッドアセンブリ36内に前進するか、又は核流動の可変制動により燃料ロッドアセンブリ36から後退する。機構の可動部分は、原子炉の圧力エンベロープ内にあり、可動部分を駆動するための電磁コイル42が、それぞれの延長部分の周囲に、延長部分を中心にして配置されている。
【0028】
図2は、延長ハウジングを部分的に切り欠いた1つの駆動ロッド機構を示し、
図3は、駆動機構に関連するコイルが通電されたときに駆動ロッドと係合し、持ち上げ、及び/又は下降させるために順番に動作可能である例示的なグリッパを部分的に断面図で示す詳細図である。この構成は、Tessaroの米国特許第5,009,834号に実質的に米国特許に開示されているものであり、これは、制御ロッド駆動装置の機械的及び電磁的態様に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
駆動機構は、駆動ロッド28と係合するための固定グリッパ44及び可動グリッパ46と、可動グリッパが駆動ロッド28の長手方向軸に沿って持ち上げられるか又は降下することを可能にする持ち上げアーマチュア48と、を備える。各々は、対応する電磁コイル54、56、58によって作動される。グリッパは、電磁的に強制的に係合されないときに、駆動ロッド28を解放するように通常配置されており、例えば、駆動ロッド又は収縮するように付勢されたばねから離れて回動するように取り付けられている。従って、固定及び可動グリッパコイル54、56のいずれにも電力供給されない場合には、対応するグリッパ44、46は、重力によって降下する駆動ロッドの保持を解放し、制御ロッド24を炉心に落下させる。他の状態では、コイルは、駆動ロッド28及び関連する制御ロッド24を位置に保持するために、あるいは原子炉の出力レベルを調節する制御部(図示せず)からの信号に応答してそれらを上げ下げするために、付勢される。
図3は、可動グリッパの取り付け、特に径方向に内向きになりロッド28上のリッジ又は溝に係合するか、あるいは外向きになり当該リッジ又は溝から離れるために、駆動ロッド28の周りに円周方向に間隔をあけて配置された3つのグリッパのうちの1つの例示的な取り付けを示す。対応する要素を識別するために、図面全体を通して同じ参照番号が使用される。
【0030】
図4は、本開示の少なくとも1つの態様による、原子炉のCRDM及び/又はCEDM機構のための診断システム100のハードウェアレイアウトを示す。本明細書の簡潔さ及び明瞭さのために、以下では、「CRDM及び/又はCEDM機構」を「制御ロッド駆動機構」と呼ぶ。一般に、診断システム100は、
図2に示され、
図4では102、104、106、108、110として概略的に表される機構の各コイル54、56、58に電力を供給するように構成されてもよく、一方、コイルに印加されている電圧、コイルを流れる電流、及び電力供給されていないコイルにおける誘起電圧を記録する。診断システム100は、このデータを使用して、機構の特定の特性を判定し、劣化しているかどうかを判断する。また、診断システム100は、各コイル間、及び各コイルと地面との間に対して、500ボルト、60秒メガオームの絶縁抵抗試験を実施する。診断システム100の一実施例を以下に説明する。
【0031】
診断システム100は、Coil1~Coil5とラベル付けされた5つのコイル回路のコイル積層体112を規定する。コイル積層体112は、少なくとも3つのコイル回路Coil1、Coil2、及びCoil3を含むことができるが、
図4に示すように、診断システム100は、追加の第4のコイル回路Coil4及び/又は追加の第5のコイル回路Coil5を用いて動作するように適合及び構成することができる。コイル積層体112は、追加のコイル回路Cnを含むことができることが理解されるであろう。nは5より大きい整数である。Coil1~Coil5の各コイル回路は、2つの双極双投(DPDT)リレー128a、128b、130a、130b、132a、132b、134a、134b、136a、136bを介して検知回路に4線構成を介して取り付けられた、対応するコイル102、104、106、108、110を備える。検知回路のそれぞれは、検知電圧計114、116、118、120、122に結合された分圧器ネットワーク138、140、142、144、146、又は他の利得調整装置を備える。診断装置100はさらに、コイル102~110に電圧を印加する電源126と、電流I
1を測定するための分流抵抗器R
6及び分流検知電圧計124と、メガオーム計148と、コイル102~110から分流抵抗器R
6又はメガオーム計148のいずれかに電流を切り換えるための単極双投(SPDT)リレー150と、を備える。コイル102~110に電力を供給して、コイル102~110の状態を診断するためにコイル102~110の様々な電気パラメータを感知するために、診断システム100の様々な構成を採用してもよいことが理解されよう。リレー128a、128b、130a、130b、132a、132b、134a、134b、136a、136b、150は、機械的接点を有する機械的リレーとして概略的に描かれているが、代替的な態様において、リレー128a、128b、130a、130b、132a、132b、134a、134b、136a、136b、150は、ソリッドステートリレー(SSR)及び種々のタイプの電界効果トランジスタ(FET)のような他の代替品で実施することができる。SSR及びFETは、用途に適した経路抵抗、接点間の絶縁、動作電流、動作電圧の要件を満たすように選択する必要がある。他の適切な代替物が、限定なしに想定される。
【0032】
診断システム100は、電気バス154を介して相互接続されたコイル回路Coil1~Coil5、コイル102~110、リレー128a、b~136a、b、電源126、分流電圧計124、及びメガオーム計148に結合された埋め込み制御部152をさらに備える。埋め込み制御部152は、本明細書でより広く定義されるように、プロセッサ153、マイクロコントローラ、又は機械実行可能命令を処理するように構成されたメモリ155を有するマイクロプロセッサ、論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ回路(FPGA)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、又は前述の制御回路の組合せを備えることができる。埋め込み制御部152、プロセッサ153、及びメモリ155は、リレー128a、b~136a、bを回路の内外に切り換えて、コイル回路Coil1~Coil5に電源126を切り換え、電流I1(電圧V6)及び検知電圧V1-V5を測定し、リレー150を制御して、各コイル102~110のコイル間及びコイル-グランド間の電流I1あるいはメガオーム計を測定し、各コイル102~110の抵抗を測定し、受動コイル102~110を結合し、又は能動コイル102~110を結合するように構成することができる。
【0033】
電源電圧及び電流モニタ信号は、コイル回路Coil1~Coil5に結合されたデータ収集チャネルによって監視することができる。これらの測定値は、分圧器ネットワーク138~146における電圧、分流抵抗器R6及び分流検知電圧計124によって測定された電流I1と比較され、2つの測定値が分圧器ネットワーク138~146における電圧及び分流測定値と著しく異なる場合にエラーとなる。10:1の分圧器ネットワーク138~146を通して検知電圧計114~122のデータ収集チャネルによってコイル積層体112で監視される電源電圧は、計算及びトレースのための一次電圧測定値とみなされる。電源126に戻る電流I1は、分流抵抗器R6の電圧降下V6を使用して監視され、計算及びトレースのための一次電流計測値と見なされる。
【0034】
診断装置100は、各コイル102~110を流れる合成電流I1と、電源126によって電力供給されている各コイル102~110に印加される電圧V1-V5と、電力供給されていないコイル102~100内の電圧V1~V5と、を記録し、分析しながら、コイル積層体112のコイル102~110に順次供給されるプログラム電圧を生成するように構成される。電圧V1~V5は、対応する検知電圧計114~122によって測定され、結果として生じる電流I1は、分流電圧計124によって測定される分流抵抗器R6の分流電圧V6によって測定される。コイル102~110の各々は、一対の双極双投(DPDT)リレー128a、b~136a、bによって、電源126、検知電圧計114~122、分流検知電圧計124、及びメガオーム計148に接続されてもよい。処理は制御部152によって制御され、測定値はプロセッサ153によって記録され、メモリ155に記憶される。記憶された測定値は、プロセッサ153によって実行される1つ又は複数の制御アルゴリズムによって分析されて、機構の特定の特性を判定し、劣化しているかどうかを判断する。
【0035】
図4に示す例では、異なるテスト構成を実施するために、5つのコイル回路Coil1~Coil5が異なるリレー構成で示されている。しかしながら、当然、コイル回路Coil1~Coil5のうちのいずれか1つは、
図4に示される構成のうちのいずれか1つで構成されてもよい。一般に、コイル回路Coil1~Coil5は、制御部152によって一度に1つずつ構成され、試験されるが、診断システム100は、2つ以上のコイル回路Coil1~Coil5を同時に構成し、試験するように構成されてもよい。一旦構成されると、コイル102~110は、個別に一度に1つずつ、又は同時に試験され得る。
【0036】
図4に示す例では、コイル積層体112内のコイル回路Coil1は、コイル-グランド絶縁抵抗と呼ばれる、グランド166に対するコイル102の絶縁の電気抵抗を測定するように構成される。この試験は、一般に、メガー試験として知られている。メガオーム計148の第1の端子156は、DPDTリレー128bの接点168を介してコイル102の力負極(-)端子164に接続され、メガオーム計148の第2の端子158は、コイル102の正極(+)端子が回路から切り離されている間にグランド166に接続される。コイル間絶縁抵抗は、メガオーム計148の第1の端子156をコイル102の第1の端子164に接続して、コイル積層体112内の別のコイルの端子に接続することによって測定されてもよい。力正極(+)接点165と、DPDTリレー128aの検知正極(+)接点167と、DPDTリレー128bの検知負極(-)接点169と、が開いている。グランド166に対するコイル102の絶縁電気抵抗値V
1は、プロセッサ153によって記録され、メモリ155に記憶される。記憶された測定値V
1は、機構の特定の特徴を判断し、劣化が存在するかどうかを判断するために、プロセッサ153によって実行される制御アルゴリズムによって分析される。当然のことながら、他のコイル回路Coil2、Coil3、Coil4、及びCoil5のいずれも、コイル回路Coil1と同様に構成することができる。
【0037】
図4に示す例では、コイル積層体112内のコイル回路Coil2は、コイル積層体112内の他のコイルのコイル間及びコイル対グランド絶縁電気抵抗を測定するように構成される。コイル回路Coil2に示されるように、コイル104の負極(-)端子170は、DPDTリレー130bの力負極(-)接点172を介して電源の負極(-)端子162に結合される。DPDTリレー130aの力正極(+)接点171と検知正極(+)接点173と、DPDTリレー130bの検知負極(-)接点175とは、開いている。他のコイルのコイル間及びコイル対グランド間の絶縁電気抵抗値V
2は、プロセッサ153によって記録され、メモリ155に記憶される。記憶された計測値V
2は、制御ロッド駆動機構の特定の特性を決定し、劣化が存在するかどうかを判断するために、プロセッサ153によって実行される制御アルゴリズムによって解析される。当然のことながら、他のコイル回路Coil1、Coil3、Coil4、及びCoil5のいずれも、コイル回路Coil2と同様に構成することができる。
【0038】
図4に示す例では、コイル回路Coil3は、コイル106の電気抵抗を測定するように構成されている。この構成では、コイル106の正極(+)端子174は、DPDTリレー132aの力正極(+)接点178を介して電源126の正極(+)端子160に結合され、コイル106の負極(-)端子176は、DPDTリレー132bの力負極(-)接点184を介して電源126の負極(-)端子162に接続される。この構成では、電源126は、コイル106を介して電流I
1を供給する。コイル106の電気抵抗は、コイル106の正極(+)端子174と負極(-)端子176の間の電圧降下として表される。コイル106の電圧は、任意選択の分圧器ネットワーク142又は増幅器を介して電圧計118に結合され、電圧計118に対して適正なレベルに電圧を調整する。DPDTリレー132aの検知正極(+)接点180は、分圧器ネットワーク142の直列抵抗器R
1の上部に接続され、DPDTリレー132bの検知負極(-)接点182は、直列抵抗器R
2の下部に接続される。電圧計118は、分圧器ネットワーク142の中央ノードから抵抗R
2の底部までの検知された電圧V
3を測定する。検知された電圧V
3は、巻線106の耐電性に比例する。コイル106を流れる電流I
1は、分流抵抗器R
6の電圧V
6として電圧計124によって測定される。コイル106の電気抵抗は、出力電圧V
3として測定される。結果として生じるコイル106を通る電流I
1は、分流電圧V
6として測定される。V
3とV
6の両方は、プロセッサ153によって記録され、メモリ155に記憶される。記憶された計測値V
3、V
6は、制御ロッド駆動機構の特定の特性を決定し、劣化が存在するかどうかを判断するために、プロセッサ153によって実行される制御アルゴリズムによって解析される。当然のことながら、他のコイル回路Coil1、Coil2、Coil4、及びCoil5のいずれも、コイル回路コイル3と同様に構成することができる。
【0039】
図4に示す例では、コイル回路Coil4は、電力供給されていないコイル108内の誘起電圧を測定するように構成されている。この構成では、電源126の正極(+)端子160は、DPDTリレー134aの力正(+)接点190を接続解除することによって、コイル108の正極(+)端子186から接続解除される。電源126の負極(-)端子162は、DPDTリレー136bの力負極(-)接点196を介してコイル108の負極(-)端子188に接続される。コイル108に誘起された電圧は、分圧回路網144を通して電圧計120に結合される。DPDTリレー134aの検知正極(+)接点192は、分圧回路網142の直列抵抗器R
1の上部に接続され、DPDTリレー134bの検知負極(-)接点194は、直列抵抗器R
2の下部に接続される。電圧計120は、分圧回路網144の中央ノードと抵抗器R
2の下部との間の誘起電圧V
4を測定する。したがって、電気が供給されていないコイル108が、コイル積層体112内の近くのコイルによって生成された電磁場から結合された誘導電流I1を発生させると、結果として生じる誘起電圧V
4は、電圧計120に結合され、電圧計120によって測定される。結果として生じるコイル108を通る電流I
1は、分流電圧V
6として測定される。V
4とV
6の両方は、プロセッサ153によって記録され、メモリ155に記憶される。記憶された計測値V
4、V
6は、劣化が存在するかどうかを判断するために、プロセッサ153によって実行される制御アルゴリズムによって解析される。当然のことながら、他のコイル回路Coil1、Coil2、Coil3、及びCoil5のいずれも、コイル回路Coil4と同様に構成することができる。
【0040】
図4に示す例では、コイル回路Coil5は、コイル110を駆動し、コイル110に印加されている電圧及びコイル110を通る電流を記録するように構成される。この構成では、電源126の正極(+)端子160は、DPDTリレー136aの力正極(+)接点202を介してコイル110の正極(+)端子198に接続される。電源126の負極(-)端子162は、DPDTリレー136bの力負極(-)接点208を介してコイル110の負極(-)端子200に接続される。コイル110に印加された電圧は、分圧器ネットワーク146を通して電圧計122に結合される。DPDTリレー136aの検知正極(+)接点204は、分圧器ネットワーク146の直列抵抗器R
1の上部に接続され、DPDTリレー136bの検知負極(-)接点206は、直列抵抗器R
2の下部に接続される。電圧計122は、分圧器ネットワーク146の中央ノードと抵抗器R
2の下部との間の印加電圧V
5を測定する。したがって、電圧がコイル110に印加されるにつれて、得られた印加電圧V
5は、電圧計122に結合され、電圧計122によって測定される。V
5とV
6の両方は、プロセッサ153によって記録され、メモリ155に記憶される。記憶された計測値V
5、V
6は、制御ロッド駆動機構の特定の特性を決定し、劣化が存在するかどうかを判断するために、プロセッサ153によって実行される制御アルゴリズムによって解析される。当然のことながら、他のコイル回路Coil1、Coil2、Coil3、及びCoil4のいずれも、コイル回路Coil5と同様に構成することができる。
【0041】
診断システム100は、制御ロッド駆動機構を備えた原子炉容器ヘッドがヘッドスタンド又は原子炉容器上のいずれかにある間に使用されることが意図されている。一態様では、診断システム100は、原子力発電プラントが停止している間に使用するように意図されているが、他の様々な態様では、診断システム100は、その寿命、製造、操作、又は故障後診断の任意の段階中に機構において使用することができる。診断装置100の特徴は、制御ロッド駆動機構を作動させるために電源126からの診断用にプログラムされた電圧源を使用し、一方、制御ロッド駆動機構のコンポーネントであるコイル積層体112及びラッチアセンブリを分析するために電圧V1-V5及び電流I1(例えば分流電圧V6)を監視することである。この診断システム100は、制御ロッド駆動機構を作動させながらラッチアームを検査するためにボアスコープシステムを組み込むことができる。ボアスコープシステムは、診断システム100には必要とされないが、制御ロッド駆動機構を作動させながら診断システム100を利用することは、制御ロッド駆動機構の診断をさらに助ける。
【0042】
電源126によって印加された電圧及び記録された電流I1から、診断装置100は、被試験コイル102~110に関連する以下のパラメータ、すなわち、コイル抵抗、コイル温度、負荷下のコイル温度上昇、別のコイルに電力を供給している間の非電力供給コイル内の電磁誘起電圧、及び制御ロッド駆動機構内の個々のサブアセンブリを閉じる(作動させる)のに必要な電磁力を計算するように構成されてもよい。
【0043】
種々の態様において、診断システム100は、被試験コイル102~110に関連するパラメータの分析に基づいて、制御ロッド駆動機構内の以下の問題、すなわち故障又は劣化したコイル、不正確なコイル極性(配線)、制御ロッド駆動機構ラッチアセンブリ内の破損したバネ、腐食生成物又は破損したコンポーネントに起因する摩擦の増加を特定するように構成されてもよい。
【0044】
しかしながら、この診断システム100は、制御ロッド駆動機構上に配置される必要がある加速度計又は任意の追加のセンサに依存しない。したがって、有利には、すべての診断試験は、プログラムされた電圧を印加し、結果として生じる電流及び電圧を監視するによって実行されることができる。プログラム電圧によって生成された電流トレースを利用することによって、診断システム100は、コイル102~110の電流減衰、コイル102~110の健全性、及び制御ロッド駆動機構内の摩擦を、加速度計に基づくシステムで現在達成できるよりもより詳細に見ることができる。
【0045】
制御ロッド駆動ラッチアセンブリは、バネと摺動部品とを含む。コイル102~110の問題とラッチアセンブリの問題とを評価し分けることは困難である。ラッチアセンブリ内では、摩擦力及びバネ力の量を予測することも現在のプロファイルトレースを記録する現在の方法では非常に困難である。本明細書で「制御ロッド駆動機構」と称される3コイルCRDM及び4コイル及び5コイルCEDMシステムは、コイル102~110を流れる電流のシステムを使用して機械的ラッチアセンブリを作動させ、制御ロッド駆動ラインを動かす。
【0046】
一態様では、診断装置100は、コイル102~110内の電圧V1-V5及び電流I1を監視しながら、それぞれのコイル102~110のプログラム電圧制御を一度に1つずつ適用するように構成される。V1-V5及び電流I1のプロファイルとコイル102~110の既知の巻数とから、結果として生じる磁力を診断試験中に監視することができる。CRDMラッチアセンブリの作動(開閉)は、記録された電流において観測可能になる。ラッチアセンブリの作動が生じる電流及び電圧を記録することによって、内部摩擦及びばねに打ち勝つ力を決定して、CRDM及び/又はCEDM制御ロッドアセンブリの健全性を判定することができる。診断システム100は、また、試験期間中にコイル102~110の抵抗を監視するために、電流と電圧の関係を使用するであろう。試験期間中のコイル102-110の抵抗の変化から、コイル絶縁システムも監視することができる。診断システム100は、試験中の特定の時点の間電力供給されないコイル102~110内の誘起電圧を監視して電力供給されていないコイルの極性及び電力供給されていないコイル内の誘起電圧の相対強度を決定してコイルシステムの状態を判断するために、使用することができる。診断システム100は、制御ロッド駆動機構を収容する原子炉容器ヘッドがヘッドスタンド内にあり、駆動ロッド及び関連する制御アセンブリがラッチアセンブリによって動かされない場合に、使用されることが意図されており、最も正確であろう。原子炉容器に設置された原子炉ヘッドについても、やや精度を落とすものの同様のアプローチを用いることができる。
【0047】
種々の態様において、診断システム100の制御部152は、コイル積層体112内の各コイル102~110に一度に1つずつ入力として電圧制御プロファイルを適用するように電源126を制御する。次いで、診断システム100は、試験中に極面を閉じるために必要な力及びコイル102~110の抵抗を決定するために、電流及び電圧を記録する。診断システム100はまた、試験中のコイル102~110内の温度の変化を記録する。これは、温度がコイル102~110の抵抗の直接の機能であるため、コイル絶縁システムの状態を示す。診断システム100は、また、コイル102~110の健全性を評価するために、電力供給されていないコイルの誘起電圧を記録する。
【0048】
診断システム100は、制御ロッド駆動機構を駆動ラインから隔離して精度を高めるために、ヘッドスタンド内の原子炉容器と共に使用されることができる。診断システム100は完全に自動化されて、コイル積層体の試験を自動的に実行し、再現性と精度を改善する。
【0049】
診断システム100は、プラントに設置されたロッド制御装置に依存しない試験ユニットである。制御ロッド駆動機構は電気機械システムであるため、制御ロッド駆動機構をプラントロッド制御システムから分離することによって、診断システム100の精度をさらに高め、観察された特性が制御ロッド駆動機構コイル積層体112又はラッチアセンブリ内に由来するもののみであるように制限する。
【0050】
診断システム100は、制御ロッド駆動機構診断の分野において利点を提供する。診断システム100は、一般に、制御ロッド装置の駆動機構を作動させるコイル積層体112の継続的な作動可能性及び作業性を決定する。診断装置100は、可動部分に適用される加速度計を使用するのではなく、コイル積層体112の種々のコイル102~110における電流I1及び電圧V1~V5の純粋な電子評価を提供し、その後、コイル102~110が電力供給され、加速度計からの信号は、コイル積層体112の機能性を判断するために評価される。
【0051】
3つの異なるタイプのコイル積層体112があり、1つは3つのコイル(
図1~3に示すように)を有し、1つは4つのコイルを有し、1つは5つのコイルを有する。3つのコイル積層体112は、リフトコイル、可動グリッパコイル、及び固定グリッパコイルを備える。4つのコイル積層体112は、上部リフトコイル、上部グリッパコイル、下部リフトコイル、及び下部グリッパコイルを備える。5つのコイル積層体112は、リフトコイル、上部グリッパコイル、プルダウンコイル、荷重伝達コイル、及び下部グリッパコイルを備える。本開示及び添付の特許請求の範囲を限定することなく、コイル積層体112に追加のコイルを追加することができる。
【0052】
一態様では、本開示による診断システム100は、直流電源を備える電源126と、プロセッサ153装置及びメモリ155を備える制御部152と、コイル積層体112を制御部152に接続するための単一コネクタと、を提供する。コイル積層体112を動作させる直流電力がコイル102~110から切り離されると、コネクタは、診断システム100をコイル積層体112に接続するために使用可能である。制御部152のプロセッサ153は、電圧が線形、具体的には直線傾斜で増加するように、電源126に線形ランプ電圧を発生させるための制御装置を含む。電圧は、電源126とコイルコネクタとの間の測定損失を回避するために、電源126ではなく、コイルコネクタ自体への入力でチェックされる。別の態様では、電源126は、電圧が線形で減少するように、線形傾斜を生成するように制御されてもよい。
【0053】
電力供給されているコイル102~110のコネクタにおける電圧V1~V5を監視することに加えて、電力供給されているコイル102~110を流れる電流I1も測定される。加えて、コイル積層体112の他のコイル102~110のそれぞれに誘起される電圧も、時間の関数として測定される。
【0054】
電力供給されているコイル120~110に電源126によって印加される電圧が時間の関数として変化する(例えば増加又は減少する)につれ、電力供給されているコイルを流れる電流I
1は、コイル102~110の電磁力が、システム内のばね付勢及び摩擦に打ち勝ち、プランジャを動き始めさせるのに充分な電磁力をプランジャに与えるまで、時間の関数として同様に変化する(例えば増加又は減少する)。固定プランジャが動き始める時点まで、増加する電圧と電流によってコイルは帯電している。電流はこの時点まで増加する。しかしながら、プランジャが移動し始めると、電流は低下し、したがって、移動が開始される点で電流トレースに変曲点を生成する(例えば、
図6~8を参照)。電圧が上昇し続けると、プランジャは動き、プランジャが機械的に停止するまで電流は下がる。この時点で電流はそれ以上下がらなくなり、反対に増加する。したがって、電流曲線に2番目の変曲点が生成される。
【0055】
プランジャがあまりにも速く動き始める場合、すなわち、あまりにも低い電流で動き始める場合、これは、ばねの破壊又はそうでなければばねの故障を示す。プランジャがあまりにも遅く動く場合、すなわちあまりにも高すぎる電流で動く場合、これは、腐食などによるコイル102~110の故障あるいは付加的な摩擦のいずれかを示す。あるいは、2つの変曲点の間の所要時間が長すぎる場合、これも同様に、故障コイル102-110及び/又は過剰な摩擦の存在を示すことができる。いずれの場合も、電力供給されるコイルによって誘導される、隣接する(すなわち、電力供給されない)コイル102~110の電圧が測定される。もし電圧が予想通りであれば、これは問題が摩擦によるものであることを示しているだろう。一方、電力供給されていないコイルの電圧が予想される電圧よりも小さければ、これは、給電されているコイル102-110の故障を示すであろう。
【0056】
さらに、誘起電圧、すなわち、電力供給されていないコイルに誘起される電圧の評価に関して、極性を有する電圧が予想されたものであれば、そのようなコイルの配線の極性が正しいことを裏付ける。予想されたものとは異なる大きさの電圧、典型的には予想されたものより低い電圧を検出することは、電力供給されるコイルが故障しているか、故障の過程にあることを示す。1つのシナリオでは、コイル102~110は、その巻線をグランドに短絡させることによって故障する可能性があり、これは、コイルのワイヤ巻線のサブセットにのみ電流が流れていることを意味する。このため、コイルとその金属ケースとの間に高電圧を印加して、電流がグランドに漏れているかどうかを判定するメガオーム計148を利用した試験が、検出装置によって実行される他の試験の前に行われる。コイル102~110の別の故障形態は、ターン間短絡であり、コイル巻線の2つの隣接するターンが互いに短絡される。このようなタイプの短絡の1つでは、1つのターンが隣接するターンに短絡され得、これは、実際に300ターンを有するコイルが、実際の結果は299ターンとなることを意味する。別のこのようなタイプの短絡は、層間短絡であり、この場合、相当な数のターンがバイパスされ、その結果、300ターンを有する代わりに、おそらく200ターン又は199ターンなどの結果となる。いずれにしても、電力供給されていないコイルに誘導されていると検出される電圧の低下は、電力供給されているコイルが故障しているか、故障の過程にあることを示す。
【0057】
電力供給されたコイルから得られるデータ信号は、コイルの周囲で使用される絶縁の完全性に関するさらなる洞察を提供することができる。電気絶縁は、熱絶縁といくらか類似しており、絶縁の不具合は、通電されているコイルの熱特性から明らかになるであろう。コイルに固定電圧を印加すると、その固定電圧で電流を流すことによってコイルが発熱する。導体の抵抗は、既知の様式(銅など)で温度によって変更するので、コイルの温度の上昇は、抵抗の既知の変化をもたらし、したがって、コイルを流れている電流を変化させることになる。例えば、電圧を電流で割ると抵抗値となり、これは、(銅の場合)温度と固定的な関係を有し、したがって、経時的なコイルの温度は、経時的な抵抗から導出され得る。絶縁材が損傷しているコイルは、絶縁材が損傷していない場合よりも急速に熱くなる。
【0058】
診断システム100によって行うことができる抵抗、誘起電圧、電力供給される固定コイル電圧、固定コイル電流、固定グリッパ電圧、及び固定グリッパコイル温度上昇の測定の具体例を、ここでは
図5~9に関連して以下に説明する。
【0059】
図5は、本開示の少なくとも1つの態様による診断システム100によって行われ、記録された抵抗測定値のグラフ300である。第1の曲線302は、電圧及び電流(V/I)測定値に基づく抵抗をオームで表し、第2の曲線304は、一定期間306(T1)にわたる平均を表す。横軸は時間(Sec)を示す。左側の縦軸は、第1の曲線302の抵抗(オーム)スケールを示し、右側の縦軸は、第2の曲線304の抵抗(オーム)スケールを示す。このグラフ300は、ベースラインのコイル抵抗及び最終的なコイル抵抗(及び温度)がどのように計算され得るかの一例である。
【0060】
標準のデジタルマルチメータは、制御された電流と測定電圧を使用する。デジタルマルチメータは、電源回路によって制御できる電流よりもかなり小さい電流を使用し、通常、1ミリアンペア程度を供給することができる。診断システム100の電源126は、1アンペア以下の電流を供給し、結果として生じる電圧を測定することができる。
【0061】
コイル温度は、以下の部分に要約されるように、ASTM B193-16「電気伝導体材料の抵抗率の標準試験方法」に示される方法によってコイル抵抗から計算することができる。
【0062】
Rt=RT[1+α(t-T)]
【0063】
ここで、各パラメータは以下のとおりである。
【0064】
RT=基準温度Tでの抵抗。
【0065】
Rt=温度tで測定した抵抗。
【0066】
T=基準温度(単位:℃)。
【0067】
t=測定が行われる温度(単位:℃)。
【0068】
α=基準温度Tで測定される試験片の抵抗温度係数であり、ASTM B193によると0.00393である。
【0069】
図6は、本開示の少なくとも1つの態様による、固定グリッパコイルに電力が供給されている間の、3コイル制御ロッド駆動機構のリフトコイル及び可動グリッパコイル内の誘起電圧の測定値のグラフ400である。グラフ400は、可動グリッパコイル誘起電圧トレース402と、リフトグリッパコイル電圧トレース404と、固定グリッパコイル誘起電圧トレース406と、を示す。左側の縦軸は誘起電圧スケールであり、右側の縦軸は給電コイル電圧である。横軸は時間(Sec)を表す。
【0070】
固定グリッパコイルが給電されている間の3コイル制御ロッド駆動機構のリフト及び可動グリッパコイル内の誘起電圧トレース402、404、406は、コイルシステムの健全性及び状態のいくつかの態様を示す。誘起電圧の極性(+/-)はコイル線の極性を示す。コイルの極性が逆方向に配線される場合、誘起電圧トレース402、4004、406は、示される誘起電圧トレース402、404、406の(水平[x]軸を中心とした)鏡像となる。1つの態様において、4つのコイル及び5つのコイル制御ロッド駆動機構は、設計によって極性を交互に有して配線される。しかしながら、3つのコイル制御ロッド駆動機構は、設計によって同様の極性で配線される。誘起電圧トレース402、404、406の相対的振幅もまた、コイルの相対的位置を示す。
図6の誘起電圧トレース402、404、406は、固定グリッパコイル(底部コイル)に電力を供給することが、リフトコイル(上部コイル)よりも可動コイル(中部コイル)により大きく影響することを示している。
【0071】
また、誘起電圧トレース402、404、406の振幅は、コイルシステムの相対インダクタンスを示す。一方のコイルが他方の2つのコイルにより少ない誘起電圧を生成し、他方の2つのコイルから電力供給される時により少ない誘起電圧を生成するならば、そのコイルは劣化していると予想されるであろう。
【0072】
図7は、本開示の少なくとも1つの態様による、電圧が印加されているコイルを流れる電流のコイル電流測定値のグラフ500である。
図7に示すように、印加電圧によって電力が供給される固定グリッパコイルを流れる電流の電流トレース502は、一定の時間にわたって傾斜している。縦軸は電流(Amps)、横軸は時間(Sec)を表す。
【0073】
固定コイル電流トレース502は、2つの係合変曲点504、506及び2つのドロップアウト変曲点508、510を有する。第1係合変曲点504は、固定グリッパが閉じているときにコイルを流れる係合電流である。第2係合変曲点506は、固定グリッパ荷重伝達が閉じているときにコイルを流れる係合電流である。第1のドロップアウト変曲点508は、固定グリッパ荷重伝達が開いているときのコイルを流れるドロップアウト電流である。第2のドロップアウト変曲点510は、固定グリッパが開いているときのコイルを流れるドロップアウト電流である。残りのコイルは、1つの係合点と1つのドロップアウト点のみを有する。変曲が発生する振幅及び時間は、
図4に記載された診断システム100によって計算され、記録される。係合電流は、制御ロッド駆動機構内のばねの力(及び健全性)に正比例する。
【0074】
図8は、本開示の少なくとも1つの態様による、
図7に示される固定グリッパコイルドロップアウト変曲点508、510の詳細
図600を示す。左側の縦軸は、加速度計トレース602のためのスケールであり、右側の縦軸は、固定コイル電流トレース502のためのスケールである。横軸は時間(Sec)を示す。
図8はまた、加速度計トレース602を示しており、これは比較目的のためだけに示されている。前述したように、
図4に記載された診断システム100は、加速度計データを記録する能力を含まない。なぜなら、診断システム100は、制御ロッド駆動機構の特定の特性を決定し、劣化が存在するかどうかを判断するために加速度計を必要としないからである。
【0075】
図8は、ドロップアウトを完了する時間の測定値を示す。この時間は、ラッチアセンブリのサブコンポーネントとの摩擦量に正比例する。第1のドロップアウト変曲点508は、ドロップアウト運動の開始を示す。固定グリッパ荷重伝達の運動の終了は、変曲点608によって示される。ドロップアウト変曲点508と運動終了変曲点608との間の時間は、運動を完了するための時間である。加速度計トレース604は、運動の終了をマークして、
図4の診断システム100を用いて得られた結果を確認する。第1のドロップアウト変曲点508は、ドロップアウト運動の開始を示す。固定グリッパ荷重伝達の運動の終了は、運動終了変曲点608によって示される。ドロップアウト変曲点508と運動終了変曲点608との間の時間は、運動を完了するための時間である。加速度計トレース604は、運動の終了をマークして、
図4の診断システム100を用いて得られた結果を確認する。
【0076】
第2のドロップアウト変曲点510は、ドロップアウト運動の開始を示す。ギャップを完全に開放した固定グリッパラッチアームは、運動終了変曲点610によって示される。第2のドロップアウト変曲点510と運動終了変曲点610との間の時間は、運動を完了するための時間である。加速度計トレース606は、運動の端部をマークして、
図4の診断システム100を用いて得られた結果を確認する。
【0077】
図9は、本開示の少なくとも1つの態様による、電力供給される固定グリッパコイルの温度変化を示すグラフ700である。縦軸は温度スケール(°F)、横軸は時間(Sec)を表す。グラフ702は、100ボルトの印加電圧における、電力供給される固定グリッパコイルの温度上昇を示す。
図4に示すように、コイル積層体112のためのコイル電流プロファイルの全てが完了した後、各コイルのための温度上昇試験が、
図4の診断システム100を使用して実行される。各コイルは、コイル電圧及び抵抗を記録しながら、所定時間(例えば1分間)の間、最大プログラム電圧で電力供給される。コイル抵抗及び温度は、試験の間中、診断システム100によって計算され、監視され、記録される。
【0078】
コイル抵抗、係合電流、係合時間、完全な係合までの時間、及びコイル温度試験の計算は、本明細書に記載されるような診断システム100を使用して連続的に行うことができる。また、コイルインダクタンスの計算を行ってもよい。電源電圧の直線傾斜が減衰傾斜から差し引かれる場合、コイルドロップアウトが完了した後に減衰傾斜を使用することが可能な場合がある。減衰傾斜は、コイルの時定数を決定するために使用することができ、これは、コイルの時定数に等しい抵抗で割ったインダクタンスの関係からインダクタンスを計算するために使用することができる。
【0079】
図10は、本開示の少なくとも1つの態様による、コイル積層体と電気的に接続されるように構成された診断装置を使用して、原子炉の制御装置の駆動機構を診断するための制御プログラム又は論理構成のプロセスを示す論理フロー
図800であり、コイル積層体は、複数のコイルを有する。論理フロー
図800は、
図4の診断システム100に関連して記載される。
【0080】
次に、
図4及び
図10を参照すると、診断システム100は、原子炉の制御装置の駆動機構のコイル積層体112に電気的に接続されるように構成される。コイル積層体112は複数のコイル102~110を有する。診断システム100は、電源126と、プロセッサ153及びメモリ155を備える制御部152と、を含む。メモリ155は、その中に、多数の機械実行可能命令を含む多数の制御アルゴリズム又はルーティンを記憶している。命令がプロセッサ153において実行される場合、プロセッサ153は、
図4のコイル回路コイル5の構成のDPDTリレー136a、136bを設定し、SPDTリレー150の接点を分路抵抗R
6に結合して、複数のコイル102~110のうちのコイル110に時間の関数として変化する電圧を電源126に印加させる(802)。次に、プロセッサ153は、分流電圧計124に、時間の関数としてコイル110内の電流I
1を検出させる(804)。プロセッサ153は、電流I
1を読み取り、電流I
1内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別する(806)。プロセッサ153は、第1の変曲点及び第2の変曲点のうちの少なくとも1つを含む電子評価に基づいて、コイル110が、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断する(808)。
【0081】
別の態様では、プロセッサ153は、
図4に示すコイル回路コイル4の構成にDPDTリレー134a、134bをセットし、時間の関数として誘起電圧を複数のコイル102~110のうちの他のコイル108内で検出するための試験を行う。誘起電圧は、電圧計120によって検出され、プロセッサ153によってメモリ155に記録される。
【0082】
別の態様では、プロセッサ153は、電子評価に基づいて、駆動機構の摩擦レベルが適切なレベルであるのか過大なレベルであるのかを判断する。
【0083】
別の態様では、プロセッサ153は、電子評価に基づいて、駆動機構のばねが適切に機能しているのか少なくとも部分的に故障した状態にあるのかを判断する。
【0084】
別の態様では、プロセッサ153は、診断試験手順中、電圧及び電流を記録し、コイル抵抗を決定する。この構成では、プロセッサ153は、
図4に示すコイル回路コイル3の構成にDPDTリレー132a、132bをセットし、コイル106の抵抗を測定する試験を行う。コイル106の抵抗は、電圧計118によって測定され、プロセッサ153によってメモリ155に記録される。
【0085】
別の態様では、プロセッサ153は、コイル110内の温度の変化をメモリ155に記録し、温度の変化は、コイル110の絶縁システムの状態を示す。例として、
図9のグラフ700は、電力供給されているコイルの温度変化を示す。
【0086】
別の態様では、プロセッサ153は、コイルの健全性を評価するために、電力供給されていないコイルの誘起電圧をメモリ155に記録する。この構成では、プロセッサ153は、
図4に示すコイル回路コイル4の構成にDPDTリレー134a、134bをセットし、誘起電圧を測定する試験を行う。次に、プロセッサ153は、電圧計120は誘起電圧を測定し、誘起電圧をメモリ155に記録する。
【0087】
別の態様では、プロセッサ153は、コイルの絶縁抵抗をメモリ155に記録する。一構成では、プロセッサ153は、
図4に示すコイル回路Coil1の構成にDPDTリレー128a、128bをセットし、コイル102のコイル間絶縁抵抗を測定する試験を行う。次に、電圧計114がコイル102の絶縁抵抗を測定し、プロセッサ153が絶縁抵抗をメモリ155に記録する。別の構成では、プロセッサ153は、
図4に示すコイル回路Coil2の構成にDPDTリレー130a、130bをセットし、コイル104のコイル対グランド絶縁抵抗を測定する試験を行う。次に、電圧計116がコイル104の絶縁抵抗を測定し、プロセッサ153が絶縁抵抗をメモリ155に記録する。
【0088】
図11は、本開示の少なくとも1つの態様による、コイル積層体に電気的に接続されるように構成された診断装置を利用して、原子炉の制御装置の駆動機構を診断するための制御プログラム又は論理構成のプロセスを示す論理フロー
図900である。コイル積層体は、少なくとも3つのコイルを含む。論理フロー
図900は、
図4の診断システム100に関連して記載される。
【0089】
次に、
図4及び
図11を参照すると、診断システム100は、原子炉の制御装置の駆動機構のコイル積層体112に電気的に接続されるように構成される。コイル積層体112は少なくとも3つのコイル106、108、110を有する。診断システム100は、電源126と、プロセッサ153及びメモリ155を備える制御部152と、を含む。メモリ155は、多数の命令を含む多数のルーティンを記憶する。プロセッサ153において命令が実行されると、プロセッサ153は、
図4のコイル回路命令5の構成にDPDTリレー136a、136bをセットし、SPDTリレー150の接点を分流抵抗R
6に結合して、所定の時間に亘ってコイル110にプログラム電圧を電源126に印加させる(902)。コイル110に電力が供給されている間、他のコイル106、108には電力が供給されず、DPDTリレー132a、132b、134a、134bは、電力が供給されているコイル110によって電力が供給されないコイル106、108に誘導される電圧を測定するように構成される。次に、プロセッサ153は、所定の時間に亘って電力が供給されているコイル110内の電流I
1を分流電圧計124に監視させる(904)。プロセッサ153は、監視済みの電流I
1に基づいて、原子炉の制御装置の駆動機構のコンポーネントが、適切に機能しているのか、少なくとも部分的に故障した状態であるのか、を判断する(906)。
【0090】
別の態様では、プロセッサ153は、電流I1内の第1の変曲点及び第2の変曲点を識別し、第1の変曲点及び第2の変曲点の間の経過時間を決定する。プロセッサ153は、経過時間を所定時間と比較する。経過時間が所定時間よりも長い場合、プロセッサ153は、故障しているコイルが存在する及び/又は過剰摩擦が存在すると判断する。経過時間が所定時間未満である場合、プロセッサ153は、破損又は故障しているばねが存在すると判断する。プロセッサ153はまた、電力が供給されていない隣接するコイル106、108上の誘起電圧を決定する。電力供給されていないコイル106、108上の誘起電圧が予測値である場合、プロセッサ153は過剰摩擦が存在すると判断する。電力供給されていないコイル106、108上の誘起電圧が予測値を下回ると、プロセッサ153は、電力供給されているコイル110が故障しているコイルであると判断する。
【0091】
本明細書で使用されるように、プロセッサ又は処理ユニットは、何らかの外部データソース、通常はメモリ又は何らかの他のデータストリームに対して動作を実行する電子回路である。この用語は、本明細書では、いくつかの特殊な「プロセッサ」を組み合わせたシステム又はコンピュータシステム(特に、システムオンチップ(SoC))内の中央プロセッサ(中央処理装置)を指すために使用される。
【0092】
本明細書で使用されるように、システムオンチップ又はシステムオンチップ(SoC又はSOC)は、コンピュータ又は他の電子システムのすべてのコンポーネントを統合する集積回路(「IC」又は「チップ」としても知られる)である。これは、デジタル、アナログ、混合信号、及び大抵のばあい無線周波数機能をすべて単一の基板上に含むことができる。SoCは、マイクロコントローラ(又はマイクロプロセッサ)と、GPU(Graphics Processing Unit)、Wi-Fiモジュール、コプロセッサなどの高度な周辺装置を統合する。SoCは、内蔵メモリを含んでも含まなくてもよい。
【0093】
本明細書で使用されるように、マイクロコントローラ又はコントローラは、マイクロプロセッサを周辺回路及びメモリと一体化するシステムである。マイクロコントローラ(又はマイクロコントローラユニット用のMCU)は、単一の集積回路上の小型コンピュータとして実装されてもよい。これは、SoCと同様であってもよく、SoCは、そのコンポーネントの1つとしてマイクロコントローラを含み得る。マイクロコントローラは、メモリ及びプログラマブル入力/出力周辺装置と共に、1つ又は複数のコア処理ユニット(CPU)を含み得る。強誘電体RAM、NORフラッシュ又はOTP ROMの形態のプログラムメモリも、少量のRAMと同様に、チップ上に含まれることが多い。マイクロコントローラは、様々な個別チップからなるパーソナルコンピュータ又は他の汎用アプリケーションで使用されるマイクロプロセッサとは対照的に、埋め込みアプリケーションに使用することができる。
【0094】
本明細書で使用されるように、コントローラ又はマイクロコントローラという用語は、周辺装置とインターフェース接続するスタンドアローンIC又はチップデバイスであってもよい。これは、外部装置のコンピュータ又はコントローラの2つの部分間の接続であってもよく、外部装置はその装置の操作(及びその装置との接続)を管理する。
【0095】
本明細書で使用されるように、用語「コンポーネント」、「システム」、「モジュール」などは、電気機械デバイスに加えて、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組合せ、ソフトウェア、又は実行中のソフトウェアのいずれかのコンピュータ関連エンティティを指すことができる。例えば、コンポーネントは、プロセッサで実行中の処理、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、実行スレッド、プログラム、及び/又はコンピュータであってもよいが、これらに限定されない。説明のために、コンピュータにおいて実行されるアプリケーションとコンピュータとの両方をコンポーネントにすることができる。1つ又は複数のコンポーネントは、処理及び/又は実行スレッド内に存在することができ、コンポーネントは、1つのコンピュータにおいてローカライズされ、及び/又は2つ以上のコンピュータ間に分散されることができる。「例示的」という用語は、本明細書では、例、事例、又は例示としての役割を果たすことを意味するために使用される。「例示的」として本明細書で説明される任意の態様又は設計は、必ずしもそれが他の態様又は設計よりも好ましい、又は有利であると解釈されるべきではない。
【0096】
本明細書で使用されているように、制御回路という用語は、例えば、処理ユニット、プロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロコントローラユニット、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドPGA(FPGA)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、システムオンチップ(SoC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、グラフィックス処理ユニット(GPU)等のような任意のスタンドアローン電子回路又は組み合わせの電子回路であってもよい。様々な態様によれば、本明細書に記載されるプロセスフロー図は、制御回路などのデジタル装置によって実施されてもよい。
【0097】
本開示の様々な態様は、実行ユニット及び論理回路のコンテキストにおける命令処理及び分散を説明するが、本開示の他の態様は、機械可読な有形の媒体に記憶されたデータ及び/又は命令によって達成されることができ、これは機械によって実行された場合、その機械に少なくとも1つの態様と一致する機能を実行させる。一態様では、本開示の関連する機能は、機械実行可能命令で具現化される。命令は、命令でプログラムされた汎用又は専用プロセッサに、本開示で説明される機能のステップを実行させるために使用され得る。本開示の態様は、本開示の態様による1つ又は複数の操作を実行するようにコンピュータ(又は他の電子デバイス)をプログラムするために使用され得る命令を記憶した機械又は非一時的なコンピュータ可読媒体を含み得るコンピュータプログラム製品又はソフトウェアとして提供され得る。あるいは、本開示による機能は、機能を実行するための固定機能ロジックを含む特定のハードウェアコンポーネントによって、又はプログラムされたコンピュータコンポーネントと固定機能ハードウェアコンポーネントとの任意の組み合わせによって実行されてもよい。
【0098】
種々の開示された態様を実行するように論理をプログラムするために使用される命令は、DRAM、キャッシュ、フラッシュメモリ、又は他の記憶装置のような、システム内のメモリに記憶することができる。さらに、命令は、ネットワークを介して、又は他のコンピュータ可読媒体を介して分散することができる。したがって、機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ)が読み取ることができる形式で情報を記憶又は送信するための任意の機構、例えばフロッピーディスク、光ディスク、コンパクトディスク、読み取り専用メモリ(CD-ROM)、及び光磁気ディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、消去・プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM)、電子消去・プログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM)、磁気又は光カード、フラッシュメモリ、又は電気的、光学的、音響的又は他の形の伝搬信号(例えば、キャリア波、赤外線信号、デジタル信号など)を介してインターネット上で情報を送信する際に使用される有形の機械可読記憶装置を含み得るが、これらに限定されない。したがって、非一時的コンピュータ可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ)が読み取り可能な形式で電子命令又は情報を記憶又は送信するのに適した任意の種類の有形の機械可読媒体を含む。
【0099】
様々な例が、特定の開示された態様を参照して説明された。様々な態様は、例示の目的で提示されており、限定するものではない。当業者であれば、本開示の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更、適応、及び修正を行うことができることを理解するであろう。