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特許7507781土壌なしで植物生産物を栽培するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】土壌なしで植物生産物を栽培するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20240621BHJP
   A01G 31/06 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A01G31/00 611A
A01G31/06
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021555386
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 IB2020052273
(87)【国際公開番号】W WO2020183426
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】102019000003689
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521417347
【氏名又は名称】ゼーロ エセ エレ エレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッシオ アンドレーア
(72)【発明者】
【氏名】モデスト ダニエーレ
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-308410(JP,A)
【文献】特開2019-017321(JP,A)
【文献】特開2005-095035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 31/06
A01G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌なしで気耕施肥法で植物生産物を栽培するための方法であって、前記方法が、
a)1つの支持フレーム(19)、及び前記支持フレーム(19)に対して着脱容易に連結され、平行する位置で互いに略同一平面上に並んで配置されている、ポリマー材料から作製された複数の播種及び栽培バー(9)を含む少なくとも1つの栽培棚(7)を設けるステップであって、
前記播種及び栽培バー(9)がロッドであり、
前記播種及び栽培バー(9)が、それぞれの長手方向軸線(A)に沿って真っ直ぐに延在し、種子(SM)及び/又は前記種子(SM)を含む錠剤(P1)を収容するように適合された座部(10)を備え、
前記座部(10)が、前記植物生産物の栽培中に前記植物生産物の根部が通過し、かつ前記植物生産物の前記根部と直接接触したままとなるように構成された、それぞれの貫通開口部(12)を対応する底壁(11)に有する、凹状凹部によって形成されており、
前記座部(10)が、前記それぞれの播種及び栽培バー(9)に沿って、長手方向に、互いから離隔して順次配置され、内側に、前記植物生産物の前記根部を支持/把持するための層/基材を一切有しない、ステップと、
b)前記種子(SM)及び/又は錠剤(P1)が、前記種子(SM)及び/又は錠剤(P1)と前記座部(10)の前記貫通開口部(12)との間に支持層/基材を一切介在させることなく、前記座部(10)の内面に直接載置され、かつ接触するように、前記種子(SM)及び/又は前記種子(SM)を含む前記錠剤(P1)を各前記座部(10)内へと選択的に配置するステップと、
c)前記播種及び栽培バー(9)の前記座部(10)内に収容されている前記種子(SM)及び/又は前記錠剤(P1)に、肥料ベースの物質を気耕施肥システムによって施肥するステップと、を含むことを特徴とする、
土壌なしで植物生産物を栽培するための方法。
【請求項2】
前記種子(SM)及び/又は前記種子(SM)を含む前記錠剤(P1)を各前記座部(10)内へと選択的に配置する前記ステップを実行した後、前記座部(10)が、前記種子(SM)及び/又は前記錠剤(P1)のみを内部に収容し、前記種子(SM)及び/又は錠剤(P1)と前記貫通開口部(12)との間に支持層/基材を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の栽培密度に関連付けられた第1の栽培ステップにおいて、前記播種及び栽培バー(9)が事前設定された第1の距離を互いから置いて配置されるように、前記播種及び栽培バー(9)を第1の棚(7)の支持フレーム(19)に連結するステップと、
前記第1の栽培ステップの後に続く、前記第1の栽培密度よりも低い第2の栽培密度に関連付けられた第2の栽培ステップにおいて、前記第1の棚(7)の対応する前記支持フレーム(19)から前記播種及び栽培バー(9)を切り離して、前記播種及び栽培バー(9)を第2の棚(7)の前記支持フレーム(19)へと連結することにより、前記事前設定された第1の距離よりも長い事前設定された第2の距離を互いから置いて、前記播種及び栽培バー(9)を配置するステップと、を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の棚(7)の前記支持フレーム(19)から前記播種及び栽培バー(9)を選択的に切り離して、前記播種及び栽培バー(9)を第2の棚(7)の前記支持フレーム(19)へと連結する前記ステップが、自動機械システム(40)によって実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
互いから離隔している前記播種及び栽培バー(9)間に生じる間隙を覆うように、細長い長方形を有する蓋(34)を前記第2の棚(7)の前記支持フレーム(19)に連結するステップを含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記播種及び栽培バー(9)がモノリシックである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記播種及び栽培バー(9)の軸方向端部(9a)が、自身の長さが調整されるように、連結手段によって、別の前記播種及び栽培バー(9)の軸方向端部(9b)に固定的に連結され得る、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記錠剤(P1)が、前記種子(SM)を組み込んでいる、親水性ゼラチンから作製された、略球形/卵形の本体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記座部(10)が、前記錠剤(P1)の収容クレードルを形成するように、前記錠剤(P1)の形状に略相補的な形状である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記播種及び栽培バー(9)間の距離が、前記播種及び栽培バー(9)のの倍数値である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記座部(10)が略カップ形状であり、約0.7cmよりも小さい直径を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
土壌なしで気耕施肥法で植物生産物を栽培するためのシステムであって、前記システムが、
前記植物生産物のそれぞれの播種及び栽培中に、種子(SM)及び/又は前記種子を含む錠剤(P1)並びに/又は前記植物生産物を支持するように設計された1つ又は複数の栽培棚(7)が設けられている、少なくとも1つの栽培構造体(5)であって、
前記栽培棚(7)が、支持フレーム(19)、及びそれぞれの前記支持フレーム(19)に対して着脱容易に連結され、平行する位置で互いに略同一平面上に並んで配置されている、ポリマー材料から作製された複数の播種及び栽培バー(9)を含み、前記播種及び栽培バー(9)がロッドであり、
前記播種及び栽培バー(9)が、それぞれの長手方向軸線(A)に沿って真っ直ぐに延在し、種子(SM)及び/又は前記種子(SM)を含む錠剤(P1)を収容するように適合された座部(10)を備え、
前記座部(10)が、前記植物生産物の栽培中に前記植物生産物の根部が通過し、かつ前記植物生産物の前記根部と直接接触したままとなるように構成された、それぞれの貫通開口部(12)を対応する底壁(11)に有する、凹状凹部によって形成されており、
前記座部(10)が、前記それぞれの播種及び栽培バー(9)に沿って、長手方向に、互いから離隔して順次配置され、内側に、前記植物生産物の前記根部を支持/把持するための層/基材を一切有しない、少なくとも1つの栽培構造体(5)と、
前記種子(SM)及び/又は錠剤(P1)が、前記種子(SM)及び/又は錠剤(P1)と前記座部(10)の前記貫通開口部(12)との間に支持層/基材を一切介在させることなく、前記座部(10)の内面に直接載置され、かつ接触するように、前記種子(SM)及び/又は前記種子(SM)を含む前記錠剤(P1)を各前記座部(10)内へと選択的に配置するように構成された播種手段(32)と、
前記播種及び栽培バー(9)の前記座部(10)内に収容されている前記種子(SM)及び/又は前記錠剤(P1)に、肥料ベースの物質を施肥するための滴下気耕施肥手段(13)と、を備える、
土壌なしで植物生産物を栽培するためのシステム。
【請求項13】
前記播種及び栽培バー(9)が、第1の栽培密度に関連付けられた、事前設定された第1の距離を互いから置いて配置されるように、前記播種及び栽培バー(9)が第1の棚(7)の支持フレーム(19)に連結されており、
前記システムが、
前記第1の棚(7)の前記支持フレーム(19)から事前設定された前記播種及び栽培バー(9)を選択的に切り離して、前記播種及び栽培バー(9)を第2の棚(7)の前記支持フレーム(19)へと連結することにより、前記事前設定された第1の距離よりも長い事前設定された第2の距離を互いから置いて、前記播種及び栽培バー(9)を配置するように構成された自動機械システム(40)であって、前記第2の距離が、前記第1の栽培密度よりも低い第2の栽培密度に関連付けられている、自動機械システム(40)と、
前記自動機械システム(40)を駆動するように適合された電子制御手段と、をさらに備える、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記種子(SM)及び/又は前記種子(SM)を含む前記錠剤(P1)を、前記播種手段(32)を介して各前記座部(10)内へと選択的に配置する前記ステップを実行した後、前記播種及び栽培バー(9)の前記座部(10)が、前記種子(SM)及び/又は前記錠剤(P1)のみを内部に収容し、前記種子(SM)及び/又は錠剤(P1)と前記貫通開口部(12)との間に支持層/基材を含まない、請求項12又は13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記播種及び栽培バー(9)がモノリシックである、請求項12から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記播種及び栽培バー(9)の軸方向端部(9a)が、自身の長さが調整されるように、連結手段によって、別の前記播種及び栽培バー(9)の軸方向端部(9b)に固定的に連結され得る、請求項12から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記座部(10)が略カップ形状であり、約0.7cmよりも小さい直径を有する、請求項12から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記錠剤(P1)が、前記種子(SM)又は種子群を組み込んでいる、親水性ゼラチンから作製された、球形/卵形の本体を含む、請求項12から17のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年3月13日に出願されたイタリア特許出願第102019000003689号の優先権を主張し、その開示内容は参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、土壌なしで植物生産物を栽培するためのシステム及び方法に関する。具体的には、本発明は、水耕施肥法及び/又は気耕施肥法を用いて、土壌なし(垂直農法)で植物生産物を垂直栽培するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
周知のように、現行の垂直栽培システム、いわゆる無土壌又は地上栽培システムによって実施されている植物生産物を栽培するための方法では、いくつかの垂直高さに懸架され、積層された水平支持トレイ又は棚を使用する手段と、水耕施肥システム及び/又は気耕施肥システムによって、同植物生産物に肥料物質を制御可能に施肥する手段と、を設けている。
【0004】
図1を参照すると、上記の方法では、概して植物生産物PVの支持棚Rの上部を被覆している支持/把持層Sを使用する手段を設けている。非常に幅広い支持/把持層Sは、一方では播種作業中の種子の支持や発根に適しており、他方では、植物生産物の栽培中に根部を把持する役割を果たしているため、不織布層となっている。
【0005】
しかしながら、支持/把持層を使用する手段には、以下の技術的課題がある。
【0006】
第一に、支持/把持層は、発根作業及び栽培作業によって劣化するため、それぞれの生産サイクルの完了時に新しい支持/把持層に交換する必要がある。支持棚上の支持/把持層を交換する作業は、製造コストに大きく影響するという代償を伴う。
【0007】
第二に、播種後の栽培ステップ中の支持/把持層への根部の定着は、いわゆる「改植」作業を非常に複雑にし、その結果費用がかかるものになるが、これは、前記植物生産物の寸法が増大することに基づいてそれらの密度を制御するために、1つの栽培棚から他の栽培棚へと植物生産物を移植する手段を経るためである。
【0008】
その上、上記の栽培方法において支持/把持層、とりわけ不織布層を使用することは、前記植物生産物の栽培に支障をきたす恐れのある植物生成物の中で、図2の写真においてFBと称される望ましくない真菌及び細菌の増殖を引き起こすという技術的課題を有する。
【0009】
米国特許第4028847号明細書には、支持バーと、この支持バーに着脱可能に連結された一連の植物コンテナとを含むトレイを備える、従来型の水耕システムについて記載されている。各植物コンテナは、これに対して、植物を支持するように設計された支持ブロックを内部に収容している。この支持ブロックを、コンテナの内面に載置するように配置しており、使用時には、植物の根部が同ブロックを通過して同ブロックに着根する。
【0010】
米国特許第4028847号明細書に記載されているシステムの技術的課題題としては、トレイに使用される支持ブロックが、真菌、藻類、カビ及び細菌の増殖を促進することに加えて、各生産サイクルで交換及び処分を行う必要があることが原因で、植物生産物の総生産コストに影響を及ぼすことが挙げられる。
【0011】
米国特許第4028847号明細書に記載されているシステムの別の技術的課題は、支持バーに連結可能な植物コンテナを使用することが、総生産コストに影響を及ぼすことである。
【0012】
国際公開第208/117829(A1)号パンフレットには、ポリスチレン製の積層可能な浮動トレイを備える水耕システムについて記載されている。各トレイは、直線状に互いに対して平行に延在する溝を有する。各溝には基材が装填されており、この基材には複数の種子や植物生産物が植栽されている。
【0013】
国際公開第208/117829(A1)号パンフレットの技術的課題としては、これらの溝に設けている基材が、真菌、藻類、カビ及び細菌の増殖を促進することに加えて、各生産サイクルでこれらの溝への装填作業を必要とすることが原因で、植物生産物の総生産コストに影響を及ぼすことが挙げられる。
【0014】
その上、トレイ内の溝を、互いの間に一定距離を置いて配置しても、上記で詳述した、棚からの植物生産物の「改植」作業(移植)を行う際の複雑さの課題が、十分に解決されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第4028847号明細書
【文献】国際公開第208/117829(A1)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このために、本出願人は、上記の技術的課題を解決することができる解決策を特定する目的で、網羅的な研究を行った。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明の目的は、支持棚上に発生する望ましくない真菌及び細菌の増殖を低減し、播種後の様々な栽培ステップ中に行う当該生産物の密度を制御する作業を簡略化し、栽培層の使用に関連して生じるコストを解消することができる、垂直栽培システム及び方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
この目的は、本発明が、対応する添付の特許請求の範囲に定義されている、植物生産物を栽培するための垂直栽培システム及び方法に関するものであるという事実により、本発明によって達成される。次に、非限定的な実施例を示している添付の図面を参照しながら、本発明について説明する。
図1】最新技術による栽培棚の断面の概略図である。
図2】周知のタイプの栽培棚を被覆している栽培層上での真菌及び細菌の増殖を示す写真である。
図3】本発明に従って作製された、植物生産物を栽培するための垂直栽培システムの栽培モジュールの概略図である。
図4】本発明に従って作製された、垂直栽培システムで使用される栽培棚のバーを示す平面図である。
図5図4に示すバーの側面図である。
図6図4に示すバーの縦断面図である。
図7】種子が添加された、図4に示すバーのI-I線断面図である。
図8】本発明に従って作製された、複数のバーを備える栽培棚の斜視図である。
図9図8に示す栽培棚の平面図である。
図10】本発明に従って作製された、複数の離隔したバーを備える栽培棚の斜視図である。
図11】本発明による栽培方法における、同量の作業ステップを示す概略図である。
図12】本発明による栽培方法における、同量の作業ステップを示す概略図である。
図13】本発明による栽培方法における、同量の作業ステップを示す概略図である。
図14】本発明による栽培方法における、同量の作業ステップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、当業者が本発明を製造かつ使用できるようにするために、添付の図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。記載している実施形態に対する様々な修正は、当業者には直ちに明らかになり、また、記載している一般的原理は、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の保護範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途に適用され得る。したがって、本発明を、記載し、かつ例示している実施形態に限定されるものと考えるべきではなく、本明細書に記載し、かつ特許請求している原理及び特性に従って、最も広範な保護範囲を本発明が有することが意図される。
【0020】
図3に概略的に示す典型的な実施形態によれば、参照番号1は全体として、植物生産物を栽培するための垂直栽培システムを概略的に指す。システム1は、制御された環境条件下で植物生産物を集約的に栽培するために、垂直で無土壌の支持構造を備える人工栽培環境をその内部に境界付けている、栽培モジュール2を備える。
【0021】
栽培モジュール2は、例えば、上記の人工栽培環境をその内部に境界付け/収容する栽培コンテナ4を含み得る。「人工栽培環境」とは、当該栽培方法が実施される、無土壌/地上の生産(栽培領域)領域/空間を意味していると理解される。
【0022】
以下の説明では、「無土壌」の栽培システムという用語は、根部を支持/把持するように設計され、土壌/壌土及び/又は織物及び/又は無機粒状化合物などをベースとしている支持層/基材を使用せずに、植物生産物を栽培することを含むシステムを意味すると理解される。
【0023】
また、本発明による植物生産物という用語は、好ましくは、例えばサラダ、野菜、緑色野菜、又は芳香性ハーブ(例えば、バジル、ミント)などの食品用途のあらゆる植物生産物を意味することも理解される。ただし、上記の発明は、例示として上記のタイプの食品用途の植物生産物に限定されず、花、又は植物などの従来型の温室「土壌中」で一般的に栽培される、他のタイプの植物生産物の栽培にも同様に適用され得ることを理解されたい。
【0024】
栽培コンテナ4は閉鎖型であり、例えば、人工栽培空間/環境を内部に境界付ける、適切な平行六面体形状を有し得る。
【0025】
図3を参照すると、栽培モジュール2は、複数の栽培構造体5をさらに含む。好ましくは、これらの栽培構造体5は垂直構造を有する。栽培構造体5は、栽培コンテナ4の内部に配置され、栽培プロセス中に前記植物生産物及び/又はその種子を収容するように設計された、モジュール式栽培棚7を含む。栽培構造体5は、栽培トレイ又は栽培棚7が取り付けられる支持フレーム6を含む。例えば、その内部で、栽培棚7が上下に互いから距離を置いて懸架配置される一連の垂直柱を形成するように、栽培棚7はフレーム6上に配置され得る。
【0026】
栽培モジュール2は、栽培コンテナ4の内部に配置され、実施される栽培プロセスに関連付けられた所定の栽培パラメータを測定/検出するように構成された、センサシステム8(部分的かつ概略的に図示)をさらに含む。実行可能な一実施形態によれば、センサシステム8によって、例えばそのセンサを介して測定される栽培パラメータは、一例として湿度を示すパラメータ、温度を示すパラメータ、二酸化炭素を示すパラメータのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0027】
栽培モジュール2は、栽培コンテナ4の内部に配置され、肥料ベースの物質を、量及び/又は種類及び/又は施肥回数に関して選択的かつ制御された方法で栽培される植物生産物に施肥するように構成された、滴下施肥システム13(図2には、部分的かつ概略的にのみ図示)をさらに含む。好ましくは、この滴下施肥システム13は、それぞれの気耕/水耕装置を備える、滴下式気耕施肥システム及び/又は滴下式水耕施肥システムを含み得る。
【0028】
さらに、栽培モジュール2は、栽培コンテナ4の内部に配置された、照明システム16(図2には、部分的かつ概略的にのみ図示)を含み得る。照明システム16は、事前設定された照明パラメータに従って制御される方法で、栽培環境を照明するように構成されている。事前設定された照明パラメータは、光の強度及び/又は波長を示すことができる。照明システム16は、下にある栽培領域を照明するために、棚/トレイ7の近傍、例えばそれらの上方に配置された電気光源、例えばLED光源(図示せず)又は同様の電気光源を含み得る。
【0029】
図4図9を参照すると、栽培棚7は、1本又は複数のロッド、即ちプラスチック材料から作製された播種及び栽培バー9を含む。好ましくは、これらの播種及び栽培バー9は、リサイクル可能なポリマー材料から都合よく作製されている。好ましくは、このプラスチック材料は、食品等級のポリマー材料からなる。
【0030】
また、本出願人によれば、播種及び栽培バー9を作製するにあたり、とりわけ有利な材料が変性PPE樹脂から抽出できることが分かった。例えば、PPO樹脂(ポリフェニレンエーテル)とポリスチレンとの非晶質ブレンドからなるPPE樹脂を使用すると、有利である。例えば、本出願人によれば、NORLY(商標)製品グループに属する変性PPE樹脂を使用すると有利であることが分かった。
【0031】
播種及び栽培バー9にはそれぞれ、長手方向軸線Aに沿って延在し、種子を収容するように設計された複数の凹部又は座部10が設けられている。
【0032】
これらの座部10は、バー9の上面に作製され、長手方向軸線Aに沿って互いから離隔している。座部10は、植物生産物の栽培中に植物生産物の根部が通過し、かつ植物生産物のこれらの根部と直接接触したままとなるように構成された、貫通開口部12を底部11aに有する、凹部又は凹状空洞によって形成されている。好ましくは、座部10は略カップ形状を有する。好ましくは、座部10は、軸線Aに沿って互いに略等距離に配置されている。好ましくは、開口部12は十字形状を有し、カップ状座部の底壁11に形成されている。
【0033】
種子SMが配置される座部10の内面には、支持/把持層がない、即ち、被覆されていない。座部10は、その内側に支持層/基材を一切有しておらず、したがって種子SMは、座部10のポリマーをベースとした内面に載置されている、即ち、この内面に直接接触して配置されている。座部10には、前記植物生産物の前記根部を支持/把持するための層/基材/土壌/壌土がない、即ち一切存在しない。
【0034】
座部10の底壁に形成された開口部12は、その座部10の内側間隙と直接連通しており、その内面は完全に露出している、即ち、植物生産物を支持/把持するための層/基材/土壌/壌土で一切被覆されていない。
【0035】
使用時に、種子SMは、支持/把持層を一切介在させることなく、前記座部10の内面に載置される、即ち、前記座部10の内面に直接接触するように、座部10の内側に配置される(図7及び図11)。具体的には、これらの種子SMは、種子SMと開口部12との間に層/基材/壌土を一切介在させることなく、それぞれの開口部12と直接連通するように座部10に配置されている。
【0036】
本出願人によれば、底壁11に貫通開口部12が設けられた座部10を使用することにより、種子SMとバー9との間に中間支持/把持層を一切使用する必要がなく、一方ではバー9上に種子SMを収容することができ、他方では開口部12によって、前記バー9に対して根部を把持できることが分かった。
【0037】
さらに、本出願人によれば、開口部12の十字形状が、完全なる円形開口部、例えば孔とは異なっているために、座部10の底壁11に堆積する水の表面張力を高める技術的効果を有し、したがって、前記座部10に設けられた種子/生産物との接触面上で、高い水分含量を保持することが分かった。
【0038】
好ましくは、播種及び栽培バー9は、略平行六面体形状を有する略直線状である。好ましくは、バー9は、横方向に2つの垂直収容バンド14を有し、この垂直収容バンド14は、互いに、かつ軸線Aに対して平行に、好ましくはバー9の全長にわたって延在する、略細長い長方形状であり、座部10において対向するバンドとして配置されている。
【0039】
座部10は、これら2つの対向する収容バンド14によって横方向に境界付けられた中間アール部18、即ち、曲線部によって頂部で互いに連結されている。
【0040】
本出願人によれば、2つの側方バンド14によって境界付けられた中間曲線部18を使用することには、一方では清掃、具体的にはバー9及びその座部10の洗浄が容易になり、他方では、播種ステップ中に、座部10内の種子SMがセルフセンタリングするという技術的効果があることが分かった。
【0041】
図8及び図9を参照すると、栽培棚7は、播種及び栽培バー9が連結されている支持フレーム19を含む。好ましくは、バー9は、支持フレーム19に対して着脱容易に連結され、平行する位置で互いに略同一平面上に並んで配置されている。
【0042】
実行可能な一実施形態によれば、支持フレーム19は、互いに対して平行に配置され、バー9の両端部9a及び9bに挿入されて固定的に保持される、略C字形状で硬質材料製の、少なくとも2つの部分19aを含み得る。
【0043】
好ましくは、栽培棚7のバー9の長さ、幅及び高さは同じ寸法である。好ましくは、バー9の幅(軸線Aに対して横方向に測定)を、約1.2cmとすることができる。好ましくは、バー9の長さを、約18cm~約20cmの範囲、好ましくは19cmとすることができる。
【0044】
好ましくは、バー9を黒色とすることができる。好ましくは、バー9の少なくとも上面を、黒色とすることができる。本出願人によれば、少なくとも上部が黒色のバーを使用することには、棚7内のバー9の上面によって画定される下地の背景に関して、人工観察システム(図示せず)によって捕捉される、植物生産物の画像の解像度や分解能が上昇するという技術的効果があることが分かった。この黒色背景は、人工観察システムによって取得される写真に含まれる植物の識別を単純化するという、さらなる技術的効果を有する。
【0045】
好ましくは、バー9はそれぞれ、単一の本体、即ちモノブロックを含む。好ましくは、これらのバー9はモノリシックである。好ましくは、これらのバー9は、プラスチック材料射出成形法によって作製され得る。
【0046】
図4図6を参照すると、バー9の各軸方向端部9aは、好ましくは、軸線Aに沿った長さが調整され得るように、例えばねじなどの連結手段によって、別のバー9の軸方向端部9bに固定的に連結されるように成形され得る。
【0047】
このために、添付の図面に示す実施形態によれば、各バー9において対向する軸方向端部9a及び9bは、それぞれ上部矩形フラップ21を1つと、下部矩形フラップ22を1つ有する。これらの上部フラップ21及び22は、バー9に対向してあるそれぞれの端部9a、9bから片持ち梁状に突出し、使用時に、軸方向に隣接する2本のバー9の下部フラップ22及び上部フラップ21とそれぞれ重なるように構成され、かつ寸法決めされている。バー9の上部フラップ22の下面から、底部に向かってピン23が突出し、使用時に、下部フラップ22に形成されるそれぞれの孔24に挿入される。
【0048】
さらに、これら上部フラップ21及び下部フラップ22には、フラップが互いに上下に配置されたときに、互いに同軸の中心孔がそれぞれ設けられ、固定ねじ(図示せず)に係合する。フラップ21及び22のそれぞれの上面及び下面では、ギア歯23が軸線Aに対して横方向に方向付けられており、このギア歯23は少なくとも部分的に、2つのバンド14の上縁及び下縁にそれぞれ延在している。
【0049】
好ましくは、バー9は、支持フレーム19の寸法に依存する、ある長さに到達するまで延在するように、互いに軸方向に連結され得る。
【0050】
図9を参照すると、バー9及びそれぞれのフレーム19から構成された栽培棚7は、約70cmの幅L1と、約120cmの幅L2とを有するように寸法決めされ得る。
【0051】
図7及び図11を参照すると、一実施形態によれば、座部10に関しては、代わりに、各々が種子SM及び/又はこの種子SMを含む錠剤P1を収容するように成形され得る。好ましくは、この錠剤P1は、種子SM又は種子群を組み込んでいる、親水性ゼラチンから作製された、略球形/卵形の本体を含み得る。この錠剤P1が卵形である場合、その内径(即ち、その長手方向断面の短半径上で測定される)を0.7cm未満とすることができ、その外径(即ち、その長手方向断面の長半径上で測定される)を1.2cm超とすることができる。
【0052】
好ましくは、カップ形状の座部10を、前記錠剤P1の収容クレードルを形成するように、前記錠剤P1の形状に略相補的とすることができる。好ましくは、カップ形状の座部10は、軸線Aを横断する約0.7cm未満の内径と、軸線Aと同軸の、約1.2cmを超える外径と、軸線Aを横断して、開口部12の軸線上で測定される、約0.4cm未満の中央深さと、を含み得る。
【0053】
図11図14を参照しながら、本発明による植物生産物を栽培するための垂直栽培方法について、以下に説明する。ただし、その範囲の広範さを失することなく本発明の理解を深めることを唯一の目的として、栽培棚7のうちの1つによって実施される方法を説明かつ図示し、その際、以下に記載する同じ作業がシステム1の複数の棚7に対して反復されることが理解される。
【0054】
図11は、「播種」ステップを行うために配置された栽培棚7を示す概略図である。この栽培棚7は、第1の密度構成/状態K1(高密度)に従って構成され、バー9はそれぞれ、側方バンド14が隣接するバー9の側方バンド14と接触している状態で配置されている(図8及び図9に示す棚と同様に)。このようにして、座部10は、互いから最小距離Dminを置いて行及び列を形成するように、互いに位置合わせされている(図9)。好ましくは、別のバー9に直接隣接している座部10に対する各座部10間の最小距離Diminを、約1.2cmとすることができる。
【0055】
播種ステップにおいて、本方法は、座部10に錠剤P1を配置するステップを含む(図11)。好ましくは、この座部10における錠剤P1の位置決めは、位置決めシステム、例えば油圧又は空気圧システム32によって実行され得る(図11に概略的に示す)。
【0056】
播種ステップの完了後、栽培棚7は、栽培モジュール2内に設けられた発芽抑制範囲に配置される。本ステップでは、栽培棚7に向かって放射される光と、前記栽培棚7で施肥される物質とが発芽プログラムに基づいて制御されるように、滴下施肥システム13及び照明システム16が栽培プロセスの中央制御ユニット(図示せず)によって駆動されていることが理解される。
【0057】
栽培棚7に設けられた植物生産物の寸法のうちの少なくとも1つ、例えば幅が事前設定された閾値に到達すると、前記栽培棚7に設けられた当該生産物の密度を第1の密度から事前設定された第2の密度まで低下させる手順が実行される(いわゆる改植ステップ)。
【0058】
この密度低下の手順は、事前設定された播種及び栽培バー9を栽培棚7の支持フレーム19から選択的に切り離して、これらのバー9を別の栽培棚7の支持フレーム19へと連結することにより、事前設定された距離を互いから置いて、隣接する播種及び栽培バー9を配置する(図13の例に示すように)ステップを含み得る。この事前設定された距離は、植物生産物が到達する寸法、及び/又は前記栽培棚7における当該生産物の密度に依存し得る。当該密度は、1平方メートル当たりの植物生産物の数を意味していることが理解される。
【0059】
好都合には、バー9間の距離は、バー9の幅の倍数値とすることができる。実行可能な一実施形態によれば、栽培棚7の支持フレーム19からバー9を切り離し、これらのバー9をN個のグループに分割し、バー9のこれらのグループをそれぞれN個の栽培棚7へと連結する手順が実行される。
【0060】
これらのグループのN個数は、実行中の生育栽培ステップにおいて各棚7で必要とされる密度に応じて変化し得る。例えば、発芽ステップに続く生育栽培ステップでは、Nを2とすることができ、即ち、第1の棚7に設けられたN本のバー9は、N/2本のバー9を含む2つのグループに分割され、N/2本のバー9は、当該生産物の密度及び/又は寸法に基づいて事前設定された距離DBを置いて、それぞれの棚7の支持フレームに連結される(図11及び図13)。
【0061】
好ましくは、棚7において離隔しているバー7間の自由間隙は、前記棚7の支持フレーム19に連結されるように構成された、同数の細長い長方形蓋34によって覆われ得る(図10及び図13)。
【0062】
好ましくは、栽培棚7の支持フレーム19から事前設定された播種及び栽培バー9を選択的に切り離して、これらのバー9を別の栽培棚7の支持フレーム19へと連結するステップは、自動機械システム40によって実行され得る(図13)。自動機械システム40は、例えば、棚7の把持機構と、バー7を支持フレーム19から切り離すように構成された機構と、所与の本数のバー9を別の棚7の支持フレーム19内に挿入する機構と、を備え得る。
【0063】
棚7を低密度で配置した後、前記棚は、その修正された密度に関連付けられた、事前設定された栽培領域に配置される。
【0064】
それぞれの棚7におけるバー9間の距離はまた、高密度ステップの持続時間、低密度ステップの持続時間、N分の1分率で表される高密度に対する低密度の比、バー9の幅、開口部12の寸法、各バー9の座部10の数に依存し得る。
【0065】
本出願人によって実施された試験では、上記の方法が、迅速な栽培サイクル(2~5週間)で既製のサラダ(ベビーリーフサラダ)の栽培にとりわけ有利であることが分かった。上記の方法の利点はまた、以下の通りである。
【0066】
第一に、本方法では、植物生産物をそれらの開発段階(静的管理)に照らして、単純かつ費用効果の高い方法で再配置することができる。
【0067】
本方法は、栽培層を使用する必要性を排除している。栽培層を省略することにより、これに関連する欠点、即ち、購入、棚への設置及び組立て、棚からの取外し及び解体、洗浄及び廃棄に関するコストが解消される結果となる。具体的には、支持層及び/又は栽培層を省略し、リサイクル可能なタイプのプラスチック材料から作製されるバーを使用することにより、栽培中に生じる廃棄物の量を大幅に低減することができる。
【0068】
栽培層を省略することはまた、棚上の真菌及び細菌又は藻類の増殖を有意に減少させる結果をもたらす。
【0069】
栽培層を省略することはまた、水の蒸発を減少させ、したがって使用水量の最大化をもたらす。
【0070】
栽培層/支持層のないバーが有する別の技術的効果は、前記栽培層/支持層中に一般的に存在する汚染物質、例えば重金属及びアレルゲンの存在が排除されることである。
【0071】
生産サイクルの終了時におけるバー洗浄、滅菌及び清掃手順は、簡便に実施できるものである。70cmの長手方向バーは、迅速かつ簡単に管理することができる。上記の棚において、当該植物生産物による栄養素への唯一の接触は、座部の底部に形成された貫通開口部を介して行われ、この部分は種子錠剤から発生する根部によって占められることを強調すべきである。このため、これらの省略がなければ、通常は増殖の影響を受けることになる、棚において加湿されたり照明されたりする自由域が大幅に減少する。実際、高密度ステップでは、植物が急速に栽培棚の表面全体を覆い、増殖を防止している。低密度ステップでは、バー間の充填領域に栄養溶液が到達せず、その結果、真菌が定着することができなくなる。
【0072】
最後に、上記で説明かつ示した垂直栽培システム及び方法を、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、修正かつ変更できることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14