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特許7507793オフ共鳴アーチファクト補正を伴うスパイラルMR撮像
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】オフ共鳴アーチファクト補正を伴うスパイラルMR撮像
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240621BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20240621BHJP
   G01R 33/565 20060101ALI20240621BHJP
   G01R 33/48 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61B5/055 374
G01N24/00 530A
G01N24/00 530B
G01R33/565
G01R33/48
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021571885
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020065273
(87)【国際公開番号】W WO2020245144
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】19178061.8
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ボルネート ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ソマー カルステン
(72)【発明者】
【氏名】シュルケ クリストフ ミハエル ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブリンク ヨハン サムエル
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0147588(US,A1)
【文献】米国特許第05617028(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0058368(US,A1)
【文献】特開2017-064175(JP,A)
【文献】特表2015-531251(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109242924(CN,A)
【文献】KUESTNER et al.,SIMULTANEOUS DETECTION AND IDENTIFICATION OF MR ARTIFACT TYPES IN WHOLE-BODY IMAGING,PROCEEDINGS OF THE INTERNATIONAL SOCIETY FOR MAGNETIC RESONANCE IN MEDICINE,JOINT ANNUAL MEETING ISMRM-ESMRMB,2018年06月16日,1-3,https://cds.ismrm.org/protected/18MProceedings/PDFfiles/0430.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRデバイスの検査ボリューム内に位置付けられた対象のMR撮像の方法であって、前記方法は、
少なくとも1つのRF励起パルスと変調された磁場勾配とを含む撮像シーケンスを前記対象に施すステップと、
少なくとも1つの非デカルトk空間軌道に沿ってMR信号を取得するステップと、
取得された前記MR信号からMR画像を再構成するステップと、
前記MR画像における 不均一性に誘起された不十分なk空間サンプリングによって生じる1つ又は複数の不良サンプリングアーチファクトを、深層学習ネットワークを使用して検知するステップと
を有する、方法において、
前記深層学習ネットワークは、前記MR画像からアーチファクトマップを導出するように訓練され、前記アーチファクトマップは、少なくとも1つの検知された前記不良サンプリングアーチファクトのみの図的表現である、方法
【請求項2】
前記非デカルトk空間軌道は、スパイラルk空間軌道である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再構成された前記MR画像は、残存する不良サンプリングアーチファクトを前記検知するステップの前に、Bマップに基づいてぼけ除去される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記深層学習ネットワークは、その出力においてモデル化されたアーチファクトマップのセットによって、及びその入力においてそれぞれのモデル化された前記アーチファクトマップと訓練MR画像との重畳によって訓練される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
モデル化された前記アーチファクトマップは、使用された前記撮像シーケンスに関して計算された単一又は複数のボクセルのオフ共鳴の点広がり関数を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
検知された前記不良サンプリングアーチファクトは、前記深層学習ネットワークによって、再構成された前記MR画像から導出された前記アーチファクトマップに基づいて補正される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数の不良サンプリングアーチファクトを検知するステップは、予め定められた画像領域及び/又は前記 不均一性又は主磁場の局所的な変化の程度が所与の閾値を超えることをBマップが示す画像領域に制限される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
マップが、前記不良サンプリングアーチファクトの検知中に前記深層学習ネットワークの更なる入力として使用される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記深層学習ネットワークは畳み込みネットワークである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
検査ボリューム内に均一な静的磁場を生成するための少なくとも1つの主電磁コイルと、前記検査ボリューム内で種々の空間的方向におけるスイッチされた磁場勾配を生成するためのいくつかの勾配コイルと、前記検査ボリューム内にRFパルスを生成するため及び/又は前記検査ボリュームに位置付けられた対象からのMR信号を受信するための少なくとも1つのRFコイルと、時間的に連続するRFパルス及びスイッチされた磁場勾配を制御するための制御ユニットと、受信された前記MR信号からMR画像を再構成するための再構成ユニットとを含むMRデバイスであって、前記MRデバイスは、
少なくとも1つのRF励起パルスと変調された磁場勾配とを含む撮像シーケンスを前記対象に施すことと、
少なくとも1つの非デカルトk空間軌道に沿ってMR信号を取得することと、
取得された前記MR信号からMR画像を再構成することと、
前記MR画像における 不均一性に誘起された不十分なk空間サンプリングによって生じる1つ又は複数の不良サンプリングアーチファクトを、深層学習ネットワークを使用して検知することと
を実施する、MRデバイスにおいて、
前記深層学習ネットワークは、前記MR画像からアーチファクトマップを導出するように訓練され、前記アーチファクトマップは、少なくとも1つの検知された前記不良サンプリングアーチファクトのみの図的表現である、MRデバイス
【請求項11】
非デカルトk空間サンプリングを使用して取得されたMR信号からMR画像を再構成することと、
前記MR画像における 不均一性に誘起された不十分なk空間サンプリングによって生じる1つ又は複数の不良サンプリングアーチファクトを、深層学習ネットワークを使用して検知することと
のための命令を含む、コンピュータプログラムにおいて、
前記深層学習ネットワークは、前記MR画像からアーチファクトマップを導出するように訓練され、前記アーチファクトマップは、少なくとも1つの検知された前記不良サンプリングアーチファクトのみの図的表現である、コンピュータプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)撮像の分野に関する。本発明は、対象のMR撮像の方法に関連する。本発明は、MRデバイスと、MRデバイス上で実行されるコンピュータプログラムとにも関連する。
【背景技術】
【0002】
2次元又は3次元画像を形成するために磁場と核スピンとの間の相互作用を利用する画像形成MR方法は、今日、広く使用されており、それらは、軟組織の撮像に関して、他の撮像方法よりも多くの観点において優れており、電離放射線を必要とせず、通常は侵襲的でないので、医療診断の分野において顕著である。
【0003】
MR方法によると、通常、対象、例えば検査されるべき患者の身体は、強い均一な磁場(B)であって、同時にその方向は測定が基づく座標系の軸(通常はz軸)を定める磁場(B)に配置される。磁場は、定められた周波数(いわゆるラーモア周波数又はMR周波数)の交番電磁場(RF場)の印加によって励起(スピン共鳴)され得た磁場強度に基づいて個々の核スピンについて異なるエネルギーレベルを生む。巨視的な観点から見ると、個々の核スピンの分布は、適切な周波数の電磁パルス(RFパルス)の印加によって平衡状態から外れ得る全体的な磁化を生み、磁化は、z軸の周りで歳差運動を行う。歳差運動は、その開口角度がフリップ角と称されるコーンの面を表す。フリップ角の大きさは、印加された電磁パルスの強度及び持続期間に依存する。いわゆる90°パルスの場合、スピンはz軸から横断面へと外れる(フリップ角90°)。
【0004】
RFパルスの停止後に、磁化は元の平衡状態に戻るように緩和され、z方向における磁化は、第1の時間定数T(スピン格子又は緩和時間)において再び構築され、z方向に直交する方向における磁化は、第2の時間定数T(スピン-スピン又は緩和時間)において緩和される。磁化の変化は、z軸に直交する方向において磁化の変化が測定されるようにMRデバイスの検査ボリューム内で配置され、方向付けられた受信RFコイルによって検知され得る。例えば90°パルスの印加後に、横方向磁化の減衰は、同一位相の秩序状態から全ての位相角が均一に分布した状態(ディフェージング)への(局所的な磁場の不均一性によって誘起された)核スピンの遷移を伴う。ディフェージングは、リフォーカスパルス(例えば180°パルス)によって補償され得る。このことは、受信コイルにおいてエコー信号(スピンエコー)を生む。
【0005】
身体における空間解像度を実現するために、3つの主軸に沿って延びる一定の磁場勾配が、均一な磁場に重畳され、これは、スピン共鳴周波数の線形の空間依存性につながる。すると、受信コイルにおいてピックアップされる信号は、身体におけ種々の場所に関連付けられ得る種々の周波数の成分を含む。受信コイルを介して得られる信号データは、k空間と呼ばれる空間的周波数ドメインに対応する。k空間データは、通常、異なる位相符号化によって取得された複数のラインを含む。各ラインは、いくつかのサンプルを収集することによってデジタル化される。k空間データのセットは、画像再構成アルゴリズムによってMR画像に変換される。
【0006】
不均一性及び組織に誘起される磁化率のバリエーションに起因して生じるオフ共鳴効果は、MR画像において非常に一般的なアーチファクトの主な原因の代表例である。Th.KuestnerらによるISMRM-2019のアブストラクト「Simultaneous detection and identification of MR artefact types in whole body imaging」、ISMRM-2018(abstract430)は、T重み付き又はT重み付きFSEシーケンスによって取得された磁気共鳴画像における運動又は場の不均一性から生じるアーチファクトのCNNに基づく検知について言及している。デカルトk空間軌道に沿ったMR信号取得では、B不均一性が、画像品質に、一般的には重大な影響を与えない幾何学的歪みを増加させることがよく知られている。しかしながら、スパイラル撮像におけるような非デカルトk空間軌道では、オフ共鳴が、通常、理想的な画像のぼけとして現れ、画像の診断上の妥当性に深刻な影響を与え得る。B不均一性によって起こるアーチファクトの程度は、主磁場の強度とともに増大又は低下する。
【0007】
スパイラル撮像は、効率的なk空間カバレッジ及びフローアーチファクトに対する感度の低さから恩恵を受ける迅速なMR撮像技術である。しかしながら、これは、長い取得間隔が使用されるときに(例えば、シングルショットスパイラル撮像において)、B不均一性から特に影響を受けやすい。パラレルイメージング技術と組み合わされたこのような長い取得間隔は、可能な限り高い空間解像度を得るために欠かせないものである。このことは、生理学的な及び患者の運動の問題を緩和するために、機能的MR撮像イメージング(fMRI)において、及び拡散強調イメージング(DWI)においても興味深い。
【0008】
スパイラルMR撮像のためのぼけ除去方法が当技術分野において知られている。例えば、Bマップを取得し、Bマップに基づいてB不均一性効果についてMR信号データを補正することが知られている(例えば、Ahunbayらの「Rapid method for de-blurring spiral MR images」、Magn.Reson.Med.2000、vol.44、491~494ページ;Suttonらの「Fast,iterative image reconstruction for MRI in the presence of field inhomogeneities」、IEEE Trans.Med.Imaging.2003、vol.22、178~188ページ;Nayakらの「Efficient off-resonance correction for spiral imaging」、Magn.Reson.Med.2001、vol.45、521~524ページを参照)。
【0009】
しかしながら、前述のタイプのぼけ除去方法を適用した後でも、アーチファクトは、しばしば、非常に強い磁化率誘起の磁場勾配の画像領域に残存する。スパイラルk空間軌道の場合、このようなアーチファクトは、特徴的なリンギングアーチファクトとして、再構成及びぼけ除去されたMR画像に現れ、関心対象の解剖学的細部に重畳し得、又はこれを覆い得る。このような残存するアーチファクトの理由は、強い(典型的には磁化率によって誘起された)局所的な磁場勾配の場合、スパイラルk空間軌道の形状が、それぞれのボクセルについて理論的なスパイラル形状から相応に大きく外れるからである。これは、図4の2次元k空間図において示されている。図4aは、完全に均一な主磁場Bが存在する状態においてk及びk方向において正弦波変調された磁場勾配の適用によって得られる「理想的な」スパイラルk空間軌道を図示する。しかしながら、図4bにおいては、x方向における強い勾配によってBは不均一であり、対応するボクセル位置は、理想的なスパイラル形状から著しく外れた歪んだk空間軌道になる。この効果の結果、k空間サンプリングが不十分になり、k空間のいくつかの部分においてナイキスト基準に違反する。図4bにおいては、k空間の多くの部分から不十分な信号データがサンプリングされる。これらの効果によって、容易には補正できない強い局所的なオフ共鳴の場所において、局所的な勾配に誘起された不十分なk空間サンプリングによって生じる不所望の残存アーチファクト(以下において不良サンプリングアーチファクトと称される)がもたらされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のことから、向上されたMR撮像技術に対する需要があることが容易に理解される。本発明の目的は、上述された限界に対処し、強いB不均一性/強いB勾配がある状況においても、効率的で高品質な非デカルトMR撮像を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、MRデバイスの検査ボリュームに位置付けられた対象のMR撮像の方法が開示される。方法は、
少なくとも1つのRF励起パルスと変調された磁場勾配とを含む撮像シーケンスを対象に施すステップと;
少なくとも1つの非デカルトk空間軌道に沿ってMR信号を取得するステップと;
取得されたMR信号からMR画像を再構成するステップと;
不均一性に誘起された不十分なk空間サンプリングによって生じる1つ又は複数の不良サンプリングアーチファクトを、深層学習ネットワークを使用して検知するステップと
を有する。
【0012】
再構成された非デカルト(特には、スパイラル)MR画像において残存する不良サンプリングアーチファクトの原因を、深層学習ネットワークを使用して自動的に特定することが本発明の要旨である。不良サンプリングアーチファクトが検知されると、それらは、目標とされたやり方において、適切なアルゴリズムによって補正され得る。
【0013】
好ましい実施形態において、再構成されたMR画像は、不良サンプリングアーチファクトを検知するステップの前に、Bマップに基づいてぼけ除去され、例えば、これは、MR画像を再構成するステップに統合される。従来のBマップに基づくぼけ除去を残余の不良サンプリングアーチファクトを検知する深層学習と組み合わせることによって、強い磁化率効果及び急峻な局所磁場勾配がある場合でも、特に高品質なMR画像が取得され得る。
【0014】
更なる好ましい実施形態において、深層学習ネットワークは、MR画像からアーチファクトマップを導出するように訓練され、アーチファクトマップは、検知された不良サンプリングアーチファクトのみの図的表現である。これを達成するために、深層学習ネットワークは、好ましくは、その出力(最後のネットワーク層)においてモデル化されたアーチファクトマップのセットによって、及びその入力(最初のネットワーク層)においてそれぞれのモデル化されたアーチファクトマップと訓練MR画像との重畳によって訓練される。例えば、モデル化されたアーチファクトマップは、種々のオフ共鳴周波数において計算された単一又は複数のボクセルのオフ共鳴の点広がり関数を含み得る。換言すれば、本発明の手法は、不良サンプリングアーチファクトを、それらの最も単純な形態において、強い局所的なオフ共鳴が存在する状態における点広がり関数(使用された非デカルトk空間サンプリングスキームに対応する)として模倣し、これらを、深層学習ネットワークを訓練するために使用することである。より現実的な外観のために、不良サンプリングアーチファクトは、種々の点広がり関数の小さな、畳み込まれた局所的な集合体としてモデル化され、その各々は僅かに異なるオフ共鳴周波数におけるものであるが空間的に接近している。アーチファクトモデルのなおも更なる改善のために、オフ共鳴ボクセルのより複雑な局所的集合体も考慮するように小さな幾何学的歪曲が点広がり関数に付与され得る。こうして、深層学習ネットワークは、(ネットワークの出力において)予想される不良サンプリングアーチファクトのみを示す画像としてのモデル化されたアーチファクトマップによって訓練され、それに加えて、(ネットワークの入力において)それぞれの不良サンプリングアーチファクト及び(アーチファクトのない)訓練MR画像の対応する重畳によって訓練される。この手法は、「残余学習」の概念を採用する。これは、複雑で大きなMR画像データに適用され得る。
【0015】
深層学習ネットワークの出力としてアーチファクトマップが使用できるようになると、検知された不良サンプリングアーチファクトは、例えば、再構成された(及び、任意選択的には、ぼけ除去された)MR画像からアーチファクトマップを減算することによって、容易に補正され得る。
【0016】
更なる好ましい実施形態において、補正は、予め定められた画像領域及び/又は不均一性又は主磁場の局所的な変化(勾配)の程度が所与の閾値を超えることをBマップが示す画像領域に制限される。画像品質を最適化するために、Bマップにおける情報が、アーチファクト減算処理を、アーチファクトの潜在的な原因であることが明白である画像領域に適切に制限又は制約するために使用され得る。このようにして、不良サンプリングアーチファクトに対して構造的類似性を示す解剖学構造が除去されて、MR画像における重要な診断情報を潜在的に損なうことが自動的に回避される。可能な実施形態において、Bマップ情報は、アーチファクト検知をガイドするために深層学習ネットワークを訓練する処理において直接的に使用される。ネットワークの入力として残余の不良サンプリングアーチファクトとともにMR画像のみを使用する代わりに、Bマップもネットワークに対してその入力として供給される。このようにして、深層学習ネットワークは、Bマップ情報を自動的に考慮に入れ、それによって、有用な画像構造をアーチファクトとして間違って特定することを回避する。
【0017】
更なる実施形態において、解剖学的地図が撮像データ(好ましくは、ボリュメトリックデータ、例えば、3D又はマルチスライスデータ)に適用され得、不良サンプリングアーチファクトの外観(例えば、頭部においては、眼の前頭皮質近くの領域又は内耳空洞など)に本質的な予め定められた画像領域の特定を可能とする。これは、例えばBマップが使用できない場合に、1つ又は複数の不良サンプリングアーチファクトの検知を制限するために使用され得る。このようなイベントにおいて、特定されたアーチファクトの補正も、これらの予め定められた領域に制限される。
【0018】
なおも別の好ましい実施形態において、深層学習ネットワークは畳み込みネットワークである。いわゆるF-Netネットワークアーキテクチャ(Brosch T、Saalbach Aの「Foveal Fully Convolutional Nets for Multi-Organ Segmentation」、Proceedings of the SPIE、volume10574、2018を参照)が使用され得、これは複数の解像度レベルに依存して高レベル及び低レベルの特徴を抽出する。代替的に、他のネットワークアーキテクチャが用いられてよい。例えば、いわゆるU-Netアーキテクチャ(Ronneberger,O、Fischer,P、Brox,Tの「U-net:Convolutional networks for biomedical image segmentation」、International Conference on Medical image computing and computer-assisted intervention、234~241ページ、2015を参照)が使用されてもよい。もしもBマップ及び入力MR画像が、非常に異なる解像度を有するならば、調整されたY-Netアーキテクチャ(Mohammed,Aらの「Y-Net:A deep Convolutional Neural Network for Polyp Detection」、arXiv preprint arXiv:1806.01907、2018を参照)が適切である。このアーキテクチャにおいて、しばしばより小さな解像度を有するBマップの符号化パスが、より少ない層及び/又はチャンネルを使用して実現され得、それによって、ネットワークの全体的なサイズが低減される。
【0019】
ここまでに説明された本発明の方法は、検査ボリューム内に均一な静的磁場を生成するための少なくとも1つの主電磁コイルと、検査ボリューム内で種々の空間的方向におけるスイッチされた磁場勾配を生成するためのいくつかの勾配コイルと、検査ボリューム内にRFパルスを生成するため及び/又は検査ボリュームに位置付けられた対象からのMR信号を受信するための少なくとも1つのRFコイルと、時間的に連続するRFパルス及びスイッチされた磁場勾配を制御するための制御ユニットと、受信されたMR信号からMR画像を再構成するための再構成ユニットとを含むMRデバイスによって実行され得る。本発明の方法は、例えば、MRデバイスの再構成ユニット及び/又は制御ユニットの対応するプログラミングによって実現され得る。
【0020】
本発明の方法は、現在の臨床的使用においてほとんどのMRデバイスにおいて有利に実行され得る。このためには、ただ単に、MRデバイスが上に説明された発明の方法のステップを実施するようにMRデバイスを制御するコンピュータプログラムを利用することが必要なだけである。コンピュータプログラムは、データ記憶媒体に存在してよく、又はMRデバイスの制御ユニットへのインストールのためにダウンロードされるようにデータネットワークに存在してよい。
【0021】
更には、本発明の不良サンプリングアーチファクトの検知及び補正の手法は、診断ワークステーションにインストールされる遡及的なアーチファクト除去ソフトウェアツールとして実現され得る。
【0022】
添付の図面は、本発明の好ましい実施形態を開示する。しかしながら、図面は例示のみを目的とするものと企図されており、本発明の限界を定めるものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の方法を実行するためのMRデバイスを図示する。
図2】Bマップ並びに再構成及びぼけ除去されたMR頭部画像を種々の局所的なオフ共鳴のためにモデル化された点広がり関数のセットとともに図示する。
図3】スパイラルMR頭部画像における不良サンプリングアーチファクト補正のための本発明の手法を示す。
図4】スパイラルMR撮像の例における不良サンプリングアーチファクトの原因を示すk空間の図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照すると、MRデバイス1が概略的に図示されている。デバイスは、略均一で時間的に一定な主磁場が検査ボリュームを通ってz軸に沿って生成されるように、超電導又は抵抗性の主磁石コイル2を備える。
【0025】
磁気共鳴生成及び操作システムは、MR撮像を実施するために、一連のRFパルス及びスイッチされた磁場勾配を印加して、核磁気スピンを反転若しくは励起すること、磁気共鳴を誘起すること、磁気共鳴をリフォーカスさせること、磁気共鳴を操作すること、空間的に若しくは他のやり方で磁気共鳴を符号化すること、スピンを飽和させることなどを行う。
【0026】
より具体的には、勾配パルス増幅器3は、検査ボリュームのx、y及びz軸に沿った全身勾配コイル4、5、及び6のうちの選択された1つに電流パルスを印加する。デジタルRF周波数送信器7は、送信/受信スイッチ8を介して、RFパルス又はパルスパケットを全身ボリュームRFコイル9に送信して、検査ボリューム内にRFパルスを送信する。典型的なMR撮像シーケンスは、持続時間の短いRFパルスセグメントのパケットから構成され、これらは、互いとともに及び任意の印加された磁場勾配とともに、核磁気共鳴の選択された操作を達成する。RFパルスは、共鳴を飽和、励起し、磁化を反転し、共鳴をリフォーカスさせ、又は共鳴を操作し、検査ボリューム内に位置付けられた身体10の一部分を選択するために使用される。MR信号は全身ボリュームRFコイル9によってもピックアップされる。
【0027】
身体10の限られた領域のMR画像の生成のために、局所アレイRFコイル11、12、13のセットが、撮像のために選択された領域に隣接して配置される。アレイコイル11、12、13は、身体コイルRF送信によって誘起されたMR信号を受信するために使用され得る。
【0028】
結果的なMR信号は、全身ボリュームRFコイル9及び/又はアレイRFコイル11、12、13によってピックアップされ、好ましくはプレ増幅器(図示せず)を含む受信器14によって復調される。受信器14は、送信/受信スイッチ8を介してRFコイル9、11、12及び13に接続される。
【0029】
ホストコンピュータ15は、本発明によるスパイラルk空間軌道に沿ったMR信号を取得するために、勾配パルス増幅器3及び送信器7を制御して、エコー平面撮像(EPI)、エコーボリューム撮像、勾配及びスピンエコー撮像、高速スピンエコー(TSE)撮像などの複数のMR撮像シーケンスのうちの任意のものを生成する。選択されたシーケンスについて、受信器14は、各RF励起パルスに続いて、単一の又は複数のMRデータをそれぞれのk空間軌道に沿って迅速に連続して受信する。データ取得システム16は、受信された信号のアナログ-デジタル変換を実施し、更なる処理に適したデジタルフォーマットに各MR信号を変換する。最新のMRデバイスにおいては、データ取得システム16は、未加工画像データの取得に特化された別個のコンピュータである。
【0030】
最終的に、デジタル未加工画像データは、フーリエ変換又は他の適切な再構成アルゴリズムを適用する再構成プロセッサ17によって画像表現に再構成される。MR画像は、患者を通る平面スライス、平行平面スライスのアレイ、3次元ボリュームなどを表現する。次いで、画像は、画像メモリに記憶され、画像メモリにおいて、画像は、画像表現のスライス、投影又は他の部分を、例えば結果的なMR画像の人間が読み取り可能な表示を提供するビデオモニタ18を介した視覚化のための適切なフォーマットに変換するためにアクセスされる。
【0031】
MRデバイス1は、例えばホストコンピュータ15及び再構成プロセッサ17の適切なプログラミングによって、本明細書において上記及び下記に説明される本発明の撮像方法を実施するように構成される。
【0032】
引き続き図1を参照するとともに更に図2及び図3を参照すると、本発明の撮像手法の実施形態が説明されている。
【0033】
例示的な実施形態において、スピンエコーT重み付きスパイラル撮像が実施される。60msのエコー時間における50msの取得窓中に、ただ1つのスパイラル軌道が取得される。リダクションファクタ(reduction factor)R=3のパラレルイメージングが使用される。反復的なスパイラルSENSE画像再構成及び適切なBマップに基づくぼけ除去を使用して、スパイラルスピンエコー(SE)MR画像(図2における上段右の画像を参照)が得られる。また、ぼけ除去のために使用される(別個に取得された)B磁場マップが図2に図示されている(上段左の画像)。スキャン効率と、Bマップにおいて現れ得る高い、変化の激しい局所的な場の不均一性とを最適化するために選ばれた長い取得窓に起因して、Bマップに基づいたオフ共鳴補正(ぼけ除去)の後にも、再構成されたMR画像には未補正の不良サンプリングアーチファクトが残存している。残存している不良サンプリングアーチファクトは、矢印によって示されるリンギングタイプの構造として現れる。図2の下段の行において、計算された点広がり関数(単一ボクセル信号表現)が、Hzの単位で与えられた種々のオフ共鳴周波数について、及びMR信号取得において使用される所与のスパイラルk空間軌道について図示される。上段右のMR画像における内耳に近い場所について、Bマップは、約250Hzの逸脱を予測している。画像において、点広がり関数の対応する内側リング寸法が重ね合されている。この点広がり関数は、マークされた場所(小さい円)の中央のボクセル又はボクセルの集合体から生じる信号の寄与を模倣し、これは、強い局所的な勾配の存在によって認識できないほどに歪んでおり、Bマップに基づいてこれ以上の補正を行うことはできない。不良サンプリングアーチファクトは、1つのボクセルからもたらされるだけではない。異なる強度を有するいくつかの互いに接近したボクセルの小集合体から不良サンプリングアーチファクトがもたらされ得、これは実際の局所的な不均一性の程度が異なり、より複雑な、歪んだ、非回転的な又は捩れたアーチファクトパターンをもたらす。上述されたように、計算された点広がり関数が、深層学習ネットワークを訓練するためのモデルアーチファクトマップとして使用される。図示される実施形態において、複数の解像度レベルに依存して高レベル及び低レベルの両方の特徴を抽出するF-Netアーキテクチャが使用される。それぞれが2つの畳み込み層を有する3つの異なる解像度レベルが用いられる。
【0034】
図3において示されるように、訓練された深層学習ネットワークは、不良サンプリングアーチファクトを含むスパイラルMR画像(上段左の画像)を分析する。ネットワークは、MR画像からアーチファクトマップを導出し、このアーチファクトマップは、MR画像における不良サンプリングアーチファクトの推定である。検知されたアーチファクトは、MR画像からアーチファクトマップを減算することで、アーチファクトマップに基づいて補正される。補正されたMR画像は、図3における下段の画像である。アーチファクトマップにおける矢印は、深層学習ネットワークの解釈の誤りに基づいて間違って検知された不良サンプリングアーチファクトを示す。Bマップを使用して、強い不均一性及び急峻な勾配を有する領域が特定され得る。残余の不良サンプリングアーチファクトは、MR画像のこれらの領域にのみ生じるものと予想され得る。従って、導出されたアーチファクトマップに基づくMR画像の補正は、これらの領域にのみ許可される。Bマップからの情報は、対応する減算マスクを導出するために使用され得、この減算マスクは、強い不均一性及び鋭い勾配がある場所において「1」であり、疑わしさがない場所、すなわち局所的な不均一性変化が臨界閾値よりも低く、オフ共鳴勾配に誘起された不十分なサンプリングに起因するアーチファクトが予想され得ない場所において、滑らかに「0」まで下がる。
【0035】
更なる実施形態において、解剖学的地図が撮像データ(好ましくは、ボリュメトリックデータ、例えば、3D又はマルチスライスデータ)に適用され得、このようなアーチファクトの外観(頭部においては、眼の前頭皮質近くの領域又は内耳空洞など)に本質的な、強い局所的な磁化率勾配のある領域の特定を可能とし、磁場マップ情報が使用できない場合に、この重み付きアーチファクト減算を支援する。
【0036】
このようにして、アーチファクトに対して類似性を示す解剖学的特徴が誤って除去されて、画像の臨床的価値に影響を与えることが自動的に回避される。
図1
図2
図3
図4a)】
図4b)】