(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】最適化された設計およびアーキテクチャを有する宇宙航空機
(51)【国際特許分類】
B64G 1/14 20060101AFI20240621BHJP
B64G 1/00 20060101ALI20240621BHJP
B64C 5/02 20060101ALI20240621BHJP
B64C 5/06 20060101ALI20240621BHJP
B64C 7/02 20060101ALI20240621BHJP
B64C 1/38 20060101ALI20240621BHJP
B64C 9/32 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B64G1/14
B64G1/00 S
B64C5/02
B64C5/06
B64C7/02
B64C1/38
B64C9/32
(21)【出願番号】P 2021572475
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 FR2020050962
(87)【国際公開番号】W WO2020245549
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-24
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517310463
【氏名又は名称】アリアングループ・エス・ア・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・プランポリーニ
(72)【発明者】
【氏名】アレクシ・ブルゴワン
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/092013(WO,A2)
【文献】西独国特許出願公開第02618644(DE,A1)
【文献】仏国特許発明第1112264(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/14
B64G 1/00
B64C 5/02
B64C 5/06
B64C 7/02
B64C 1/38
B64C 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体(3)および前記胴体(3)の両側に配置された2つの翼(4A,4B)を備える宇宙航空機(1)であって、前記翼(4A,4B)は、それぞれの前縁(15A,15B)が前記胴体(3)の長手方向軸(X-X)に沿った第1の長手方向位置(P2)と呼ばれる位置に位置するように配置され、前記宇宙航空機(1)はまた、前記翼(4A,4B)の端部(6A,6B)に配置された2つのナセル(7A,7B)を備え、これらのナセル(7A,7B)のそれぞれは、水平尾翼ユニット(8A,8B)および垂直尾翼ユニット(9A,9B)を支持し、
前記胴体(3)が前記胴体(3)の前記長手方向軸(X-X)に沿って可変の大きさの横断面を有する、つまり、前記長手方向軸(X-X)に沿って前記宇宙航空機(1)の前から後へ前記胴体(3)の前記横断面の大きさが最大横断面(C1)まで増加し、そして減少し、
前記最大横断面(C1)が前記長手方向軸(X-X)に沿った第2の長手方向位置(P1)と呼ばれる位置にあり、前記第2の長手方向位置(P1)は、前記第1の長手方向位置(P2)の前方に位置し、
各前記ナセル(7A,7B)は、前記胴体(3)の前記長手方向軸(X-X)に沿って可変の大きさの横断面を有し、前記長手方向軸(X-X)に沿って前から後へ各前記ナセル(7A,7B)の前記横断面の大きさが最大横断面(CM)まで増加し、そして減少し、前記最大横断面(CM)は、前記長手方向軸(X-X)に沿った位置(P3)にあり、前記位置(P3)は、前記翼(4A,4B)の後縁(16A,16B)、および考慮されるナセル(7A,7B)の前記水平尾翼ユニット(8A,8B)の前縁(17A,17B)の間に位置することを特徴とする宇宙航空機。
【請求項2】
前記最大横断面(C1)の前記第2の長手方向位置(P1)の後方で、前記胴体(3)は、前記長手方向軸(X-X)に対して7°以下の角度(α)を有するような形状の外面(S)を有する、請求項1に記載の前記宇宙航空機。
【請求項3】
各前記ナセル(7A,7B)において、前記垂直尾翼ユニット(9A,9B)および前記水平尾翼ユニット(8A,8B)は、前記垂直尾翼ユニット(9A,9B)の最大横断面が長手方向において前記水平尾翼ユニット(8A,8B)の最大横断面の後方に位置するように考慮されるナセル(7A,7B)上に配置されている、請求項1~
2のいずれか一項に記載の宇宙航空機。
【請求項4】
各前記ナセル(7A,7B)において、前記垂直尾翼ユニット(9A,9B)および前記水平尾翼ユニット(8A,8B)は、前記垂直尾翼ユニット(9A,9B)の中間面(JA,JB)、および前記水平尾翼ユニット(8A,8B)の中間面(KA,KB)が互いに対して実質的に90°の角度を形成するように配置されている、請求項1~
3のいずれか一項に記載の宇宙航空機。
【請求項5】
- 前記宇宙航空機(1)の機首(14)に配置されたアビオニクスシステムおよび加圧システム(20)、
- 前記ナセル(7A,7B)の前方において前記ナセル(7A,7B)内に配置された航空推進ユニット(23A,23B)、
- 前記宇宙航空機(1)の後方(22)に配置された少なくとも1つのロケットエンジン(21)、および
- 前記胴体(3)の近くで前記宇宙航空機(1)の前記翼(4A,4B)内に配置された燃料タンク(25A,25B)、
の少なくともいくつかのシステムを備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載の宇宙航空機。
【請求項6】
前記航空推進ユニット(23A,23B)が前記宇宙航空機(1)の前記翼(4A,4B)のツイストライン(27A-27B)の前方に配置されている、請求項
5に記載の宇宙航空機。
【請求項7】
前記ナセル(7A,7B)のスパン方向の位置は、前記宇宙航空機(1)のロケットエンジン(21)の排ガスの膨張プロファイル(13)を越えた位置にある、請求項1~
6のいずれか一項に記載の宇宙航空機。
【請求項8】
前記胴体(3)が軸対称である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の宇宙航空機。
【請求項9】
前記翼(4A,4B)が中央平面に配置されている、請求項1~
8のいずれか一項に記載の宇宙航空機。
【請求項10】
前記ナセル(7A,7B)が前記翼(4A,4B)の中間面(XY)に配置されている、請求項1~
9のいずれか一項に記載の宇宙航空機。
【請求項11】
各前記垂直尾翼ユニット(9A,9B)が固定フィン(10A,10B)およびラダー(11A,11B)を備え、前記ラダー(11A,11B)は、2つの独立した可動ラダーフラップ(12A,12B,13A,13B)を備えるスプリット型ラダーであり、各前記ラダーフラップ(12A,12B,13A,13B)は、前
記ラダー(11A,11B)が前記ラダーフラップ(12A,12B,13A,13B)が互いに表面接触するいわゆる閉位置(P1)と、前記ラダーフラップ(12A,12B,13A,13B)が互いに対して特定の開き角(θ1,θ2)を有するいわゆる開位置(P2,P3)とを含む任意の異なる位置をとることができように、個別に操舵可能であり、
前記航空機(1)は、各前記ラダー(11A,11B)の前記ラダーフラップ(12A,12B,13A,13B)の操舵を制御するよう構成された制御システム(14)をさらに備える、請求項1~
10のいずれか一項に記載の宇宙航空機。
【請求項12】
各前記垂直尾翼ユニット(9A,9B)は、前記ナセル(7A,7B)から前記固定フィン(10A,10B)の上端部への方向において前記航空機(1)の外側に傾けることによって、対応する固定フィン(10A,10B)の中間面(JA,JB)が前記ナセル(7A,7B),の垂直面(IA,IB)に対して7°~13°の角度(γ)を有するように、対応するナセル(7A,7B)に配置されている、請求項
11に記載の宇宙航空機。
【請求項13】
回収可能モジュールを備えるビークル、特に宇宙打ち上げビークル、観測ロケット、または類似の実験ビークルであって、前記回収可能モジュールが請求項1~
12のいずれか一項に記載の宇宙航空機(1)である、ビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙航空機、すなわち、大気圏再突入、すなわち、飛行中の地球への帰還が可能な最適化された設計およびアーキテクチャを有する宇宙航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
排他的ではないが、本発明による宇宙航空機は、特に宇宙モジュール、すなわち、宇宙打ち上げビークル、観測ロケットまたは同様の実験ビークルの一部を形成する航空機であり得る。このようなモジュールは、特に推進アセンブリを備え、宇宙打ち上げビークル、観測ロケットなどの実験ビークルがミッションを完了した後、地球上で回収される。
【0003】
特許文献1から、宇宙打ち上げビークル用のそのような回復可能な宇宙モジュールが知られている。このモジュールは、推進アセンブリ、加圧システム、航空電子工学、発電手段など、再利用が非常に有利な高コストのコンポーネントで構成されている。
【0004】
大気圏再突入中、このような宇宙船またはモジュールは、特に衝撃波の生成および境界層の分離を介して、特に安定性の問題を引き起こす高速にさらされることが知られている。
【0005】
特に、翼の中央で衝撃波が発生すると、流れが大幅に分離し、航空機の長手方向と横方向の両方の安定性が失われる可能性がある。
【0006】
このような状況は不満足である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の欠点を克服することを可能にし、長手方向および横方向の安定性の喪失を回避する宇宙航空機に関する。宇宙航空機は、胴体とその胴体の両側に配置された2つの翼とを備えるタイプであり、前記翼は、それぞれの前縁が前記胴体の長手方向軸に沿った第1の長手方向位置と呼ばれる位置に位置するように配置されている。宇宙航空機はまた、翼の端に配置された2つのナセルを備え、これらのナセルはそれぞれ垂直尾翼ユニットと水平尾翼ユニットを搭載している。
【0009】
本発明によれば、前記胴体は、前記胴体の長手方向軸に沿って可変サイズの横断面を有し、宇宙航空機の前部から後部まで長手方向軸に沿って、胴体の横断面は、最大横断面まで増加し、その後減少し、最大横断面は、前記長手方向軸に沿った第2の長手方向位置と呼ばれる位置に位置し、この第2の長手方向位置は、前記第1の長手方向位置の前方に位置する(胴体の翼の前縁の位置に対応する)。
【0010】
宇宙航空機の胴体の最大横断面の位置は、遷音速衝撃波の長手方向位置をほぼ決定する。したがって、翼の前縁の前方に最大横断面を配置すると、遷音速領域で翼の前縁の前に第1の衝撃波が配置され、翼の中央の第2の衝撃波が回避または少なくとも制限される。これにより、前述のように大きな流れの剥離が発生するのを防ぎ、これらの条件下で宇宙航空機の長手方向の安定性が失われるのを防ぐ。
【0011】
胴体に対して横方向のナセル上の尾翼ユニットの配置は、宇宙航空機の質量の中心の周りに各尾翼ユニットによって及ぼされるモーメントを増加させ、したがって、宇宙航空機を安定させる際の尾翼ユニットの効率を増加させる。
【0012】
さらに、宇宙航空機は、特に宇宙航空機が胴体の後端にロケットエンジンを有する場合、好ましくは中央尾翼を持たない(すなわち、胴体上に、典型的には胴体の後端に配置される)。
【0013】
以下で明らかになるように、本発明の範囲内で採用された宇宙航空機設計戦略は、面積規則が満たされることを可能にし、空力中心の変位が、典型的な大気圏再突入中の宇宙航空機が遭遇するマッハ数範囲全体にわたって制御されることを可能にする。
【0014】
有利には、最大横断面の前記第2の長手方向位置の後方で、胴体は、長手方向軸に対して7°以下である角度(好ましくは可変)を有するような形状の外面を有する。これにより、最大横断面の後方での胴体からの突然の流れの剥離を防ぐ。
【0015】
さらに、有利には、前記ナセルのそれぞれは、前記胴体の長手方向軸に沿って可変サイズの横断面を有する。前から後へ、長手方向軸に沿って、各ナセルの横断面のサイズは、最大横断面まで増加し、その後減少し、最大横断面は、前記長手方向軸に沿った位置にあり、これは、翼の後縁と、考慮されるナセルの水平尾翼の前縁の間にある。
【0016】
上記の特性により、遷音速の飛行領域で衝撃波の乱れが発生しないように、ナセルと主翼の操縦翼面の上流で、最大横断面の近くに遷音速衝撃波を有利に配置することができる。
【0017】
さらに、有利なことに、ナセルおよび翼のフェアリングは、遷音速流の剥離に対する堅牢性を局所的に高めるように構成される。
【0018】
一実施形態では、前記ナセルのそれぞれにおいて、特に宇宙航空機の遷音速飛行体制において、操縦翼面間の干渉を最小限に抑えるために、垂直尾翼ユニットおよび水平尾翼ユニットは、垂直尾翼ユニットの最大横断面が水平尾翼ユニットの最大横断面の長手方向において後方に位置するように考慮されるナセル上に配置される。
【0019】
その上、有利には、宇宙航空機は、以下のシステムの少なくともいくつかを含む:
- 宇宙航空機の機首に配置されたアビオニクスシステムおよび与圧システム
- ナセルの前方にある、ナセルに配置された航空推進ユニット
- 宇宙航空機の後方に配置された少なくとも1つのロケットエンジン
- 胴体近くの宇宙航空機の翼に配置された燃料タンク
【0020】
好ましくは、航空推進ユニットは、宇宙航空機の翼のツイストラインの前方に配置される。
【0021】
さらに、有利には、ナセルのスパン方向の位置は、宇宙航空機の後方のロケットエンジンの排気ガスの最大膨張プロファイルを超えて配置され、このような最大プロファイルは、通常、推進段階の終わりに大気圏外で得られる。
【0022】
その上、有利には、宇宙航空機の主要なシステムは互いに分離されている。
【0023】
さらに、有利には、
- 胴体は軸対称である、および/または
- 翼は、中央平面に配置されている、および/または
- ナセルは、翼の中間面に配置されている。
【0024】
さらに、有利には、前記垂直尾翼ユニットのそれぞれは、固定フィンおよびラダーを備え、ラダーは、2つの独立した可動ラダーフラップを備えるスプリット型ラダーであり、ラダーは、2つの独立した可動ラダーフラップを含むスプリットラダーであり、それぞれの前記ラダーフラップは、ラダーフラップが互いに表面接触しているいわゆる閉位置、およびラダーフラップが互いに対して特定の開き角度を有するいわゆる開位置を含む、異なる位置のいずれかをスプリットラダーがとることができるように、個別に操縦可能であり、航空機はさらに、各ラダーのラダーフラップの操縦を制御するように構成された制御システムを備えている。
【0025】
このようなラダーは、効率が良いため、宇宙航空機の空力プロファイルが亜音速に最適化されている場合でも、宇宙航空機を超音速で操縦する最適な機能を提供する。
【0026】
好ましくは、前記垂直尾翼ユニットのそれぞれは、宇宙航空機の外側または内側に向かって傾けることによって固定フィンの中間面がナセルの垂直面に対して7°から13°の間、さらにより好ましくは実質的に10°に等しい角度を有するようにナセル上に配置される。この角度は、宇宙航空機の後方にあるロケットエンジンの排気ガスによって生成される環境によって生成される音響および放射の相互作用を低減する。
【0027】
さらに、有利には、前記ナセルのそれぞれにおいて、垂直尾翼ユニットおよび水平尾翼ユニットは、垂直尾翼ユニットの固定フィンの中間面および水平尾翼ユニットの中間面が互いに対して実質的に90°の角度を形成するように配置される。
【0028】
本発明はまた、回収可能モジュールを含む、宇宙打ち上げビークル、観測ロケットまたは同様の実験ビークルなどの車両に関し、前記回収可能モジュールは、上記のような宇宙航空機に対応する。
【0029】
添付の図は、本発明をどのように行うことができるかを明らかにするであろう。これらの図では、同一の参照は類似の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の1つの好ましい実施形態による宇宙航空機の概略上面図である。
【
図2】本発明の1つの好ましい実施形態による宇宙航空機の概略斜視図である。
【
図5】本発明の好ましい特性による、宇宙航空機の形状に関連する衝撃波の位置を示す部分的な概略上面図である。
【
図6】宇宙航空機の後方の部分上面図であり、ロケットエンジンによって生成された排気ガスの膨張プロファイルを示す。
【
図8】
図1および
図2の宇宙航空機のナセルの斜視図であり、ラダーのラダーフラップの最大操舵角を示している。
【
図9】ラダーフラップス操舵を示すナセル部分の非常に概略的な斜視図である。
【
図10】ラダーのラダーフラップの操舵制御システムの概略斜視図である。
【
図11】本発明の1つの好ましい実施形態による宇宙航空機の主要機器の配置を詳述する概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1および
図2の1つの特定の実施形態で概略的に表されている宇宙航空機1は、特に大気圏再突入の状況において、特に高速で飛行できるように構成されている。宇宙航空機1は、無人宇宙航空機が望ましい。
【0032】
好ましい用途(以下の説明で考慮される)として、この宇宙航空機1は、宇宙打ち上げビークル、観測ロケットまたは同様の実験ビークルの回収可能な部分を表す飛行モジュール(またはビークル)に対応する。
【0033】
より一般的には、宇宙航空機はその任務の後に地球上で回収される。したがって、この航空機は、大気圏再突入が通常行われる困難な条件下で、大気圏再突入を実行する必要があり、また、着陸帯へのアプローチとその着陸帯への着陸も可能である必要がある。本願において、宇宙航空機1は、コストが高く、再利用が非常に有利な、以下に示すコンポーネントとシステムで構成されている。
【0034】
図1および
図2に示されるように、宇宙航空機1は、胴体3を形成する、長手方向軸X-Xを有する主中央本体2を備える。宇宙航空機1の飛行方向Fは、
図1および
図2において矢印で示されている。本発明の文脈において、「前部」および「後部」という用語は、それぞれ、宇宙航空機1の前方および後方に関して定義され、後方から前方への方向は、宇宙航空機1の飛行方向Fに従って定義される。
【0035】
以下の説明を容易かつ単純にするために、胴体3に関して宇宙航空機1の両側に配置される同様の要素は、同一の参照符号によって識別される。ただし、検討する側に応じて、文字A(宇宙航空機1の飛行方向Fの右側の要素の場合)または文字B(宇宙航空機1の飛行方向Fの左側の要素の場合)がこれらの数値参照に追加される。
【0036】
図1および
図2に示される好ましい実施形態では、宇宙航空機1は、長手方向軸XXの両側に、それぞれ端部5A、5Bによって胴体3に取り付けられた2つの翼4Aおよび4Bを備えている。
【0037】
宇宙航空機1はまた、(翼4Aおよび4Bの)端部5Aおよび5Bの反対側の端部6Aおよび6Bのそれぞれに、細長いオジーブ(ogive)の一般的な形状の細長いナセル7A、7Bを備えている。ナセル7Aの長手方向軸はLA-LA、ナセル7Bの長手方向軸はLB-LBである。これらの長手方向軸LA-LAおよびLB-LBは、長手方向軸X-Xに略平行である。したがって、ナセル7Aおよび7Bは、胴体3の長手方向に略平行に、胴体3の両側に配置される。胴体3の横方向のこのナセル7Aおよび7Bの配置は、さまざまな打ち上げビークルまたは観測ロケットまたは同様の実験ビークル、および/またはさまざまなロケットエンジン(単一または複数のロケットエンジンを含む)と特に互換性がある。
【0038】
さらに、前記ナセル7Aおよび7Bのそれぞれは、水平尾翼ユニット8A、8Bおよび垂直尾翼ユニット9A、9Bを備えている。一般的に、尾翼ユニットは、特に、ヨー軸(垂直尾翼ユニット9A、9Bの場合)およびピッチ軸(水平尾翼ユニット8A、8Bの場合)の周りの宇宙航空機の安定性と制御を保証する。
【0039】
垂直尾翼ユニット9Aおよび9Bのそれぞれは、
図2に示されるように、2つの部分、すなわち、ナセル7A、7Bに取り付けられるフィン10A、10Bと呼ばれる固定部分、およびフィン10A、10Bに移動可能に取り付けられたラダー11A、11Bと呼ばれる可動部分を有する。垂直尾翼ユニット9A、9Bの機能は、ヨー軸を中心とした宇宙航空機1の安定性と制御を確保することである。この効果に対する効率は、ナセル7A、7Bに偏心して配置されているため最適であり、中央尾翼ユニットと比較して、航空機の質量の中心の周りにかかるモーメントを増やすことができる。
【0040】
さらに、水平尾翼ユニット8Aおよび8Bのそれぞれは、
図1に示されるように、ナセル7A、7Bに直接取り付けられるエレベータと呼ばれる可動部分12A、12Bを備える。これらの水平尾翼ユニット8Aおよび8Bは、このようにピッチにおける宇宙航空機1の安定性と制御に貢献する。また、以下に説明するように、エレベータ12A、12Bのそれぞれは一体型であり、水平尾翼ユニット8Aおよび8Bに飛行エンベロープ全体にわたって期待される効率を提供する。
【0041】
翼、およびナセルとそれらが担持する要素は、宇宙航空機1の垂直対称面XZ(
図4)に対して対称である。特にこれらの特性により、さらに以下に指定するように、宇宙航空機1は、上昇段階でゼロ入射リフトを示さない。
【0042】
本発明によれば、特に
図3に示されているように、宇宙航空機1の胴体3は、長手方向軸XXに沿って可変サイズの横断面を有する。胴体3には前方に機首14が設けられている。宇宙航空機1の前部(機首14から開始)から後部に向かって、矢印Eで示される方向に、長手方向軸X-Xに沿って、胴体3の横断面のサイズが(距離D1にわたって)最大横断面C1、つまり最大表面積を持つ横断面まで増加し、その後減少する(距離D2にわたって)。横断面は、長手方向軸X-Xに垂直な平面YZ(
図4)の胴体3の断面に対応する。
【0043】
さらに、本発明によれば、最大横断面C1は、長手方向軸X-Xに沿った長手方向位置P1に位置している。この長手方向位置P1は、胴体3の翼4Aおよび4Bの前縁15Aおよび15Bの位置、すなわち翼根、すなわち
図3の例の翼4B前縁15Bの位置に対応する長手方向位置P2の前方に位置している。
【0044】
したがって、最大横断面C1の長手方向位置P1は、翼4Aおよび4Bの前縁15Aおよび15B(長手方向位置P2)の前方に最大横断面C1(長手方向位置P1)を配置することによって、遷音速衝撃波の長手方向位置を決定するため、第1の衝撃波O1は、
図5に示されるように、遷音速領域において翼4Aおよび4Bの前縁15Aおよび15Bの前に配置され、これにより、翼4Aと4Bの中央における第2の衝撃波を回避するか、または最小限に抑える。この特性により、大きな流れの剥離の発生を防ぎ、長手方向の静的安定性の損失を回避する。
【0045】
最大横断面C1の長手方向位置P1の後方で、胴体3は、長手方向軸X-Xに対して、好ましくは可変角度αを有するように成形された外面Sを有する。この局所角度αは、表面の局所接線と長手方向軸X-Xとの間の角度として定義され(
図3では例えば外面Sの延長としての線Siと長手方向軸X-Xに平行な線Hiの間)、7°以下である。これは、胴体3の流れが突然剥離するのをできるだけ避けるためである。
【0046】
最大横断面C1は、可変形状である場合があり、円形である場合とそうでない場合がある。
【0047】
本発明の範囲内で、領域ルールを検証するための設計戦略が実施される。この戦略を適用する目的は、局所的な境界層の剥離を避けるために、外面Sを7°まで制限したまま、胴体3の横断面を増加させて、翼4Aおよび4Bの前縁15Aおよび15Bの前方に最大横断面C1を得ることである。
【0048】
胴体3の形状と翼4Aおよび4Bの位置が設定されると、上記の設計戦略に従って、以下の特性を考慮してナセル7Aおよび7Bが定義される。
【0049】
ナセル7Aおよび7Bのそれぞれは、考慮されるナセル7Aおよび7Bのそれぞれの長手方向軸LA-LAおよびLB-LBに沿って可変サイズの横断面を有する。前から後ろへ、長手方向軸X-Xに沿って、ナセル7Aと7Bのそれぞれの横断面のサイズは最大横断面CM(
図5)まで増加し、その後減少する。
図5のナセル7Aについて表されるように、最大横断面CMは、長手方向軸LA-LA、LB-LBに沿った位置P3にあり、それは、ナセル7A、7Bにおける翼4Aの後縁16A、16Bとナセル7A、7Bに取り付けられた水平尾翼ユニット8A、8Bの前縁17A、17Bの間に位置している。これにより、第2の遷音速衝撃波O2を操縦面と揚力面から離して配置することができる。
【0050】
したがって、上記の特性により、最大横断面C1およびCMに近い、操縦面および揚力面から離れた、遷音速衝撃波O1およびO2の有利な配置が得られる。これにより、遷音速飛行体制において衝撃波の乱れが可能な限りなくなる。
【0051】
したがって、ミッションの大気圏再突入飛行コリドー全体でマッハ数と入射角の関数としての空力中心の長手方向の位置は、ほとんど変化せず、スムーズかつ連続的に変化する。
【0052】
さらに、ある特定の実施形態では、胴体3は、最大横断面C1の前方の位置P4(
図3)に、宇宙航空機1に搭載される場合の宇宙打ち上げビークル、観測ロケットまたは同様の実験ビークルのタンクを取り付けるためのインターフェースゾーン18を有する。前記インターフェースゾーン18の横断面C2は、有利には円形である。軸X-Xに沿った胴体3の断面のコースは、亜音速マッハゾーンがこの円形断面の前方にとどまるようなものである。これにより、インターフェースゾーン18が遷音速の大きな流れの影響を受けるのを防ぐ。
【0053】
宇宙航空機1は、空力中心の変位が、宇宙航空機1のマッハ数の範囲全体にわたって制御されることを可能にする。
【0054】
長手方向の空力特性に関しては、大気圏再突入および発射場への戻り中に遭遇するマッハ数の範囲全体、マッハ0.25からマッハ25の範囲にわたって、滑らかで連続的な長手方向の空力中心変位が達成される。この有利な挙動は、任務を遂行するために必要な迎え角の全範囲にわたって達成される。
【0055】
さらに、横方向の空力特性に関しては、大気圏再突入および発射場への戻り中に遭遇するマッハ数の範囲全体にわたって、滑らかで連続的な横方向の空力中心変位が達成される。この有利な挙動は、任務を遂行するために必要な迎え角と横滑りの全範囲にわたっても達成される。
【0056】
以下の点に留意されたい。
a)宇宙航空機1は、静的に長手方向および横方向に安定しており、再突入段階の間、飛行制御の必要性は最小限に抑えられ、再突入段階の一部は、純粋に受動的なモードで実行することができる。
b)固有の静的安定性により、初期の再突入姿勢の制御を緩和できる。これにより、相対風に対する宇宙航空機の姿勢が自動的に再方向付けされる。この特性は、消耗部品の分離段階の後に追加の堅牢性を提供する。つまり、必要な大気圏外の姿勢制御の必要性を低減する。
c)再突入時に小さな自然な機首上げ(機首上げ制御なし)が発生する可能性がある。この特性は、システムに堅牢性を提供し、制御手段に必要な電力を削減するのに役立つ。
【0057】
さらに、
図6に示される1つの好ましい実施形態では、(長手方向軸X-Xの両側の)ナセル7Aおよび7Bの横方向の位置およびそれらの長手方向の配置(後方)は、噴射ガス、すなわち宇宙航空機1の後方のロケットエンジン21によって生成される噴射ガスの膨張プロファイル13に対応するように構成されている。これは、ナセル7Aおよび7Bが、作動中の噴射ガス流の外側に位置するか、または噴射ガスの膨張プロファイル13の中心から少なくとも十分に離れており、このような噴射ガスの近くに広がる厳しい条件に耐えることを意味すると理解されるべきである。したがって、宇宙航空機1の構造、特にナセル7Aおよび7Bは、噴出ガスにさらされないため、噴出ガスによって妨害されない。
【0058】
さらに、1つの好ましい実施形態では、水平尾翼ユニット8A、8Bは、軸X-Xに沿って可変の横断面を有する。同様に、垂直尾翼ユニット9A、9Bも軸X-Xに沿って可変の横断面を有する。さらに、水平尾翼ユニット8A、8Bと垂直尾翼ユニット9A、9Bの最大横断面は、遷音速飛行体制中の有害な相互作用を可能な限り回避するために、長手方向(軸X-Xに沿って)および角度方向に分離されており、宇宙航空機1の完全な飛行体制にわたって横方向および長手方向の制御を維持することができる。
【0059】
この目的のために、垂直尾翼ユニット9A、9Bの最大横断面は、水平尾翼ユニット8A、8Bの最大横断面の後方に(宇宙航空機1の飛行Fの方向において)配置されるため、操縦翼面間の空力干渉は、特に前記遷音速飛行体制において最小限に抑えることができる。この分離は、垂直尾翼(ラダー)と水平尾翼(エレベータ)の操縦翼面を操縦する場合にも効果的である。
【0060】
さらに、垂直尾翼ユニット9A、9Bは、横滑り安定性によって誘発される好ましいロールのために、
図7に示されるように、翼4A、4Bを通過する宇宙航空機1の水平対称面NA、NBの上に配置される。
【0061】
また、好ましい一実施形態では、垂直尾翼ユニット9Aおよび9Bのそれぞれにおいて、ラダー11A、11Bは、いわゆるスプリットラダーである。このようなスプリットラダー11A、11Bは、
図8および
図9に示すように、2つのラダーフラップ、すなわちラダーフラップ112A、112Bとラダーフラップ113A、113Bで構成され、これらは個別に移動可能で独立している。
【0062】
したがって、各ラダー11A、11B、すなわち空力操縦翼面を表す垂直尾翼ユニット9A、9Bのそれぞれの可動部分は、2つの独立した自由度を有するスプリットラダーに対応する。
【0063】
これらのスプリットラダー11Aおよび11Bの各ラダーフラップ112A、112B、113A、113Bは、軸Cを中心に個別に操舵することができ(
図8~
図10)、各スプリットラダー11A、11Bは次のいずれかの位置を想定することができる。
- ラダー11Bの
図8の細い線で示されているように、ラダーフラップ112Bおよび113Bが互いに表面接触している閉位置POS1
- 複数の開位置のうちの1つであり、ラダーフラップ112Bおよび113Bは、互いに対して開き角θ(非ゼロ)を有する。例えば
図8では開き角θ1の特定の開位置POS2、および
図10では、開き角θ2の特定の開位置POS3の太線として示されるように、例えば、20°のオーダーである。
【0064】
ラダーの2つのラダーフラップ(ラダー11Aのラダーフラップ112Aおよび113A、またはラダー11Bのラダーフラップ112Bおよび113B)の操舵を以下のように実行することができる。
- ラダーフラップ112Bと113Bの両方で同じ値の角度展開(反対方向)で中立位置Hに関して対称的に。
図8に示すように、中立位置Hに対するラダーフラップ112Bの角度展開(または偏差)は、矢印θ1a(展開の方向および対応する角度を示す)によって示され、中立位置Hに対するラダーフラップ113Bの角度展開は、矢印θ1bによって示され、偏向角θ1bは偏向角θ1aに等しく、開き角θ1は、関係式θ1=θ1a+θ1bを満たす。
- または非対称に。つまり、一方のラダーフラップが他方よりも中立位置Hから操舵される。
図10に示すように、中立位置Hに対するラダーフラップ112Bの角度展開は、矢印θ2aで示され、中立位置Hに対するラダーフラップ113Bの角度展開は、矢印θ2bによって示され、偏向角θ2bは、偏向角θ2aとは異なり、開き角θ2は、関係式θ2=θ2a+θ2bを満たす。
【0065】
さらに、中立位置は、例えば、
図10に示すように、位置H(対応する垂直尾翼ユニットの固定フィンの中間面の位置に対応する)から位置H0まで変更することができる。
【0066】
航空機1はまた、各ラダー11Aおよび11Bのラダーフラップ112A、112B、113Aおよび113Bの操舵を制御するように構成された制御システム114を含む。
【0067】
この制御システム114は、ラダー11Bについて
図10に概略的に示されるように、ラダーフラップを旋回させるための作動システム115、およびこの作動システム115を(リンク116Aを介して)制御するための制御ユニット116を備える。
【0068】
一般的に言えば、このようなスプリットラダーは、特に安全な着陸を可能にするために、宇宙航空機の空力プロファイルが亜音速に最適化されていることが好ましいとしても、効率の向上により、超音速でも宇宙航空機を操縦する最適な能力を提供する。
【0069】
このようなスプリットラダーを使用することで、宇宙航空機は胴体の後方に中央尾翼ユニットを持たないようにすることもできる。これは、以下で明らかになるように、ロケットエンジンが胴体の後方に配置されている場合に特に有利である。
【0070】
さらに、1つの好ましい実施形態では、垂直尾翼ユニット9A、9Bのそれぞれは、
図7の矢印EA、EBで示すように、ナセル7A、7Bから固定フィン10A、10Bの上端に向かう方向に、宇宙航空機1の外側に向かって傾斜させることによって垂直尾翼ユニット9A、9Bのフィンの中間面JA、JBが、ナセル7A、7Bの垂直面IA、IBに対して非ゼロ角度γを有するように、ナセル7A、7Bに配置される。この角度γ(例えば、7°から13°の範囲)は、好ましくは10°のオーダーである。この角度γ(比較的小さい値)により、特にロケットエンジン21によって生成される(
図6)宇宙航空機1の後方の排気ガスによる、ナセル間の音響および放射相互作用を低減することができる。
【0071】
1つの好ましい実施形態では、ナセル7Aおよび7Bのそれぞれにおいて、垂直尾翼ユニット9A、9Bおよび水平尾翼ユニット8A、8Bは、フィン10A、10Bの中間面JA、JBおよび水平尾翼ユニット8A、8Bの中間面KA、KBが、
図7に示されるように、互いに対して実質的に90°の角度を形成するように配置される。したがって、垂直尾翼ユニット9A、9Bの前述の配置により、各水平尾翼ユニット8A、8Bは、垂直尾翼ユニット9A、9Bに対して90°に近い角度分離をとるため、翼4Aおよび4Bの平面NA、NBに対して下向きの角度をとる。
【0072】
翼4A、4Bの平面形状は、生産と熱保護を考慮して、可能な限り単純に選択されている。さらに、
図11に示すように、翼4Aおよび4Bは、直線の前縁15Aおよび15Bと後縁16Aおよび16Bを含む。スイープによる亜音速揚力の損失を最小限に抑えるために、30°の角度(翼弦の25%において)の適度なスイープが採用されている。
【0073】
その上、宇宙航空機1は、アビオニクスシステムならびにロケットエンジン推進システムのための加圧システムを含むアセンブリ20を備えている。このアセンブリ20は、
図11に示すように、宇宙航空機1の機首14の前方に配置されている。
【0074】
この前方位置は、宇宙航空機1の重心CGの前方変位に寄与し、さらに、
- 水平尾翼ユニットと垂直尾翼ユニットの空力レバレッジアームを増加する。
- 特にメンテナンスのための、胴体3の前方のアセンブリ20の要素へのアクセスを促進する。
【0075】
機首14の形状は、大気圏再突入中にエネルギーを放散するように設計されている。この目的のために、丸みを帯びた(鈍い)機首14が設けられ、比較的高い極超音速/超音速の空力抵抗を生成する。
【0076】
さらに、宇宙航空機1は、ロケットエンジン21(
図11)などの推進アセンブリを備え、宇宙打ち上げロケットの打ち上げを実行するか、または少なくとも宇宙打ち上げロケットの打ち上げを支援する。ロケットエンジン21は、胴体3の後端22に配置されている。1つの特定の実施形態(図示せず)では、宇宙航空機1は、複数のロケットエンジンを備え得る。
【0077】
宇宙航空機1はまた、その戻り飛行を生成するための従来の手段、特に、任意のタイプの航空推進ユニット23Aおよび23Bを備えた航空推進システム、例えば、プロペラ24Aおよび24Bが
図11に概略的に示されているプロペラ駆動ターボプロップエンジンを備える。宇宙航空機1は、さらに説明されていない通常の制御および操縦手段をさらに備え、これにより、宇宙航空機1は、特に大気圏再突入を実施し、滑走路に着陸するまでの回復操作とそれに続く巡航飛行を実行することができる。
【0078】
図11に示されるように、航空推進ユニット23Aおよび23Bは、ナセル7Aおよび7Bに、ナセル7Aおよび7Bの前方に配置されている。
【0079】
航空推進システムの航空推進ユニット23Aおよび23Bは、ナセル7Aおよび7Bの前方に配置されているので、以下が可能である。
- 宇宙航空機1の重心CGを前方に移動できる。
- 航空推進システムをロケットエンジン21の排気ガスから、および胴体3に含まれるすべての宇宙システムから可能な限り遠ざけることができる。
- いくつかの重要な飛行条件(マッハ数と動的圧力)の下で空力(空力弾性)フラッピング減らすための好ましい特性を提供することができる。
- 機首上げ操作中、特に大気圏再突入後に実施される回復段階中の翼付根の曲げモーメントを低減することができる。
- 航空推進ユニット23Aおよび23Bの最適な動作を確保することができる。これにより、プロペラおよび吸気口の上流の流れが妨げられないという効果が得られる。
【0080】
その上、宇宙航空機1はまた、航空推進システムの航空推進ユニット23Aおよび23Bのための燃料タンク25Aおよび25Bを含む。これらの燃料タンク25Aおよび25Bは、宇宙航空機1の翼4Aおよび4Bに配置されている。好ましくは、燃料タンク25Aと25Bは、
- 翼4Aおよび4Bのスイープを考慮に入れて、重心CGの前方位置決めに寄与する胴体3の近く、および
- 亜音速再突入巡航飛行中に燃料(燃料タンク25Aおよび25Bに含まれる)を消費する場合の重心CGの変位を最小化するために、重心CGの近く
に配置される。
【0081】
このようにして、ミッションの飛行中に実質的に変化することなく、宇宙航空機1の適切な長手方向のセンタリングが達成される。特に、燃料をすべて消費する場合、重心CGの位置は、宇宙航空機1の着陸段階での着陸や着陸復行に必要な長手方向の調整や横方向の制御に適している。
【0082】
宇宙航空機1の重心CGに可能な限り近い2つの翼桁の間の翼根に、それぞれが例えば約300kgを保持することができる燃料タンク25Aおよび25Bを配置することは、燃料を消費する場合に重心CGの変位を最小限に抑えることができる。ただし、接地時の重心CGは、接地フレア時の長手方向の静的マージンを最小限に抑えるため、わずかに後方に変位する。
【0083】
その上、着陸を実行できるようにするために、宇宙航空機1は、展開可能な着陸装置26A、26B、および26Cのセットを備えている。着陸装置26Aおよび26Bは、それらの配置に利用可能な体積および着陸時の重心の位置を考慮して、宇宙航空機1の胴体3の近くに配置されている。前脚26Cは、胴体のX-X軸上で可能な限り前方に収納され、
- 格納位置では、重心CGの前方位置決めに貢献し、
- 展開位置では、航空分野の標準的な慣行に従って、着陸装置26A、26B、および26Cの間で支持が分散されるようにする。
【0084】
宇宙航空機1は、着陸装置26A、26Bを端部5A、5Bに近いフェアリングに、ブレーキなし、油圧装置なし、前輪誘導なしからなる特に簡略化された着陸装置のセットの着陸装置26Cを胴体内に配置することに適合している。
【0085】
したがって、宇宙航空機1は、前述の特性を組み合わせ、高レベルの機能を実施するための全体的な一貫性を有する、独特で有利なアーキテクチャを有する。
【0086】
上記のような宇宙航空機1の利点は、以下により詳細に特定される。
【0087】
宇宙航空機1は、
図6を参照して上に示したように、上昇中のロケットエンジン21の排気ガスの膨張に適合している。この目的のために、その要素とシステムは、上昇中のロケットエンジン21の排気ガスの膨張プロファイル13の外側に配置されている。これにより、単一のロケットエンジン21との幾何学的な排気の互換性が保証される。この幾何学的構造の原理は、あらゆるタイプのロケットエンジン、およびマルチロケットエンジンランチャー構成で同様に実現できる。
【0088】
さらに、宇宙航空機1は、熱負荷を最小化することに寄与する追加の特性を有し得る。特に、ある特定の実施形態では、宇宙航空機1は、翼4Aおよび4Bならびに垂直尾翼ユニット9Aおよび9Bの厚い後縁に熱保護を含む。
【0089】
さらに、1つの特定の実施形態では、宇宙航空機1は、各垂直尾翼ユニット9A、9Bに追加の局所保護(図示せず)を備えることができる。好ましくは、この局所保護は、ロケットエンジン21を停止するときに排出可能であり得る保護層を含む。
【0090】
さらに、上記のように、宇宙航空機1には、全任務中の重心CG(
図11)の位置および空力弾性を制御するために、適切かつ有利な質量分布が実施されている。
【0091】
そのために、宇宙航空機1システムの主質量は、重心CGの有利な位置を得て、大気圏再突入の開始から着陸までこの位置を制御するために、最も前方の位置に配置される。
【0092】
1つの好ましい実施形態では、各航空推進ユニット23A、23Bの質量は、
図11に示されるように、対応する翼4A、4Bのツイストライン27A~27Bの前方に配置され、それによって、特に、遷音速飛行体制においてフラッターの傾向を最小化する。
【0093】
さらに、翼端のナセル7A、7B内の各航空推進ユニット23A、23Bの配置は、特に再突入時の機首上げ操作中の翼4A、4Bの曲げモーメントを最小化することを可能にする。
【0094】
さらに、各翼4A、4Bの表面積は、約250kg/m2の翼面荷重での再突入、巡航飛行、着陸段階に対応するように選択されている。
【0095】
さらに、
図11に示されるように、宇宙航空機1の主要システム間の分離(または距離)が提供される。
【0096】
特に、ロケットエンジン21、航空推進ユニット23Aおよび23B、ならびに制御装置は切り離されている。このようにして、主要システム間のネガティブな相互作用を回避するために、主要システムの適切な分散を実現できる。特に、宇宙システムはアビオニクスシステムから分離されており、ロケットエンジン21は、再突入段階の間、宇宙航空機1の後方に保護されている。さらに、アビオニクスおよび加圧システム20は、燃料タンク25Aおよび25Bとのインターフェースを備えた宇宙航空機1の前方に配置されている。
【0097】
その上、宇宙航空機1の一般的な形状は、上昇段階の間、ゼロ入射角でゼロリフトを可能にする。そのために、以下が設けられる。
- 平面XYに対して対称胴体であえる軸対称胴体3
- 翼4Aおよび4Bの中央平面位置
- 翼4Aおよび4Bの平面XYに配置された航空推進ユニット23A、23Bを受け入れるためのナセル7A、7B(
図4)
- 垂直および水平尾翼ユニットは、上昇段階での抗力および妨害モーメントを最小限に抑えるように構築および配置されている。
【0098】
また、前述のように、ロケットエンジン21の排気ガスとの音響的および熱的相互作用を低減するために、各垂直尾翼ユニット9A、9Bは10°のオーダーで傾斜している(
図7)。
【0099】
他方、再突入段階は、宇宙航空機1の正面形状の選択に影響を及ぼさない。
【0100】
さらに、宇宙航空機1の長手方向および横方向の安定性に寄与するために、前述の特性に加えて追加の特性が提供される。
特に:
- 翼4Aおよび4Bの平面形状は、翼のスイープが30°から空力平均翼弦の25%の適切な翼のアスペクト比(翼幅の2乗と翼の表面積の比率)を提供することで、遷音速ノーズアップの傾向を制限する。
- 各翼4A、4Bのプロファイルの厚い後縁により、遷音速境界層でのプロファイルの堅牢性を高めることができる。
- ナセル7Aと7Bのフェアリングおよび翼4Aと4は、遷音速流剥離に対する堅牢性を局所的に高めるように構成されている。
- 翼のエルロンはスプリットタイプであり、各エルロンは、2つの独立した可動要素を備えて、各可動要素は個別に操縦することができ、長手方向の安定性とロール制御能力の両方を向上させることができる。
【0101】
さらに、翼4Aおよび4Bと水平尾翼ユニット8Aおよび8Bとの間の機能の可能な移動を含む、操縦翼面の適切な偏向を実施して、遷音速飛行体制における時折の空力弾性問題を改善することができる。例として、遷音速段階での各翼4A、4Bの外側エルロンの約10°の偏向が考えられる。
【0102】
さらに、各水平尾翼ユニット8A、8Bについて、以下の特性が好ましくは提供される。
- エレベータ12A、12Bは、適切な超音速、遷音速、亜音速の効率を実現する一体型である。
- ヒンジラインは、ヒンジモーメントを最小限に抑えるために、翼弦の約50%に配置するのが有利である。
- 各水平尾翼ユニット8A、8Bのプロファイルは、遷音速および亜音速の飛行体制に適している。
【0103】
さらに、水平尾翼ユニット8Aおよび8Bは、宇宙航空機1のロール制御にも使用することができる。
【0104】
さらに、宇宙航空機1は、大気圏再突入時の効率的な超音速減速、遷音速飛行体制での効率的な回復操作、発射場への帰還時の効率的な亜音速巡航飛行など、強化された空力性能を有する。
【0105】
次の要素は、再突入時(低入射角で)の効率的な減速(超音速弾道係数の増加)に貢献する。
- 胴体3の鈍い(丸みを帯びた)機首14は、亜音速マッハゾーンが断面C2の前方に留まる(
図3)ような胴体3の長手方向軸に沿ったコースを有する。これにより、インターフェースゾーン18が遷音速の大きな流れの影響を受けるのを防ぐ。
- 各ナセル7A、7Bの鈍い(丸みを帯びた)機首。これは、航空推進ユニット23A、23Bの配置に適合する。
- 各翼4A、4Bの厚い前縁15A、15B。これにより、特にナセル7A、7Bに近接した衝撃/衝撃相互作用領域で、熱流が局所的に減少し、超音速抗力が増加する。
【0106】
さらに、次の要素は、遷音速飛行体制(マッハ0.8付近)での効率的な機首上げ操作に貢献する。
- 各水平尾翼ユニット8A、8Bの一体型構造
- 垂直尾翼ユニット9A、9Bと水平尾翼ユニット8A、8Bの間の水平方向の分離。
【0107】
さらに、宇宙航空機1は、短くて丸い胴体と同じオーダーの翼幅を有するコンパクトな構成を有しており、発射場に戻る際の効率的な亜音速巡航飛行を可能にする。
【0108】
より具体的には
- 翼のアスペクト比がより有利になり、亜音速の揚抗比(fineness ratio)が向上する。これにより、航空推進ユニット23A、23Bの電力と質量の要件、および航空推進段階の燃料消費量が直接かつ具体的に削減され、滑空降下率も削減され、航空推進システムの点火(または開始)シーケンスを実行する時間が可能になり、最初の試みが失敗した場合に、航空推進システムを再開するための2回目の試みが可能となる。
- 相対的な厚さが10%を超える厚いプロファイルの使用は、前縁および/または後縁に可動式の高揚力発生装置を使用せずに、効率的な亜音速巡航飛行、アプローチおよび着陸に合致する。
- 着陸フレアで最大揚力係数を達成する水平尾翼ユニット8A、8Bの効率。
- 亜音速領域での翼エルロン(図示せず)を介したロール制御。
- 通常の三輪着陸装置に適合する翼面荷重。
【0109】
さらに、航空推進ユニット23Aおよび23Bの下流の操縦翼面の配置は、以下に指定されるように、プロペラの適切な回転方向で、(プロペラ航空推進ユニットで推進される)飛行段階中の追加の亜音速性能を提供する。
【0110】
その上、宇宙航空機1は、航空推進システムの有利な統合を含む。この有利な空力推進力は、折り畳み可能でターボプロップエンジンの一部を形成するプロペラ24A、24Bをそれぞれ含む航空推進ユニット23A、23Bに基づく。
【0111】
(プロペラターボプロップの)折りたたみ式プロペラ24A、24Bをナセル7A、7Bのノーズに統合することにより、上昇中の低い抗力、発射場に戻る飛行中(航空推進ユニット23Aおよび23Bによって推進される)の保護されたプロペラ、および低燃料消費が可能になる。
【0112】
ナセル7Aおよび7Bの前方への航空推進ユニット23Aおよび23Bの配置はまた、以下の利点を有する:
- 航空推進ユニット23Aおよび23Bが二重反転プロペラ24Aおよび24Bを含む場合、翼4Aおよび4Bでは揚力が大幅に増加する可能性がある。
- 水平尾翼ユニット8Aおよび8Bで効率を高め、トリム(またはバランス)の偏向を減らす必要がある。
- このような構成は、揚抗比への積極的な貢献に加えて、宇宙航空機の周りに適切な対称流を生成し、垂直尾翼ユニット9Aおよび9Bの横方向のバランス要件をさらに低減する。
- 航空推進ユニット23Aおよび23Bに二重反転プロペラ24Aおよび24Bがない場合、長手方向および横方向にバランスの取れた飛行を実現するために、局所的および非対称の空力操縦面の偏向を実装することができる。
【0113】
ナセル7Aおよび7B内の航空推進ユニット23Aおよび23Bの配置は、対応するプロペラ24A、24Bが展開される場合のフェアリング(図示せず)を含み得る。
このフェアリングは、
- プロペラ24A、24Bのハブの空力損失を低減する。
- プロペラ24A、24Bの空力推力に積極的に貢献する。
- プロペラブレード24A、24B上に適切な空気の流れを生成する。
【0114】
さらに、宇宙航空機1上の有利な質量分布は、(航空推進ユニット23Aおよび23Bを支持する)ナセル7Aおよび7Bが翼端4Aおよび4Bに配置されているという事実により、再突入回復操縦の際に端部5Aおよび5Bの曲げおよびねじれモーメントを低減させることができる。
【0115】
さらに、ナセル7Aおよび7B(航空推進ユニット23Aおよび23Bを支持する)が、翼4Aおよび4Bの端部に配置され、航空推進ユニット23Aおよび23Bが翼4Aおよび4Bのツイストライン27A、27Bの前方に配置されているという事実による宇宙航空機1上の有利な重量分布は、翼4Aおよび4Bの空力弾性フラッターの傾向の低減を生成する。
【符号の説明】
【0116】
1 宇宙航空機
3 胴体
4 翼
7 ナセル
8 水平尾翼ユニット
9 垂直尾翼ユニット
10 固定フィン
11 ラダー
12 エレベータ
13 膨張プロファイル
14 機首
15 前縁
16 後縁
18 インターフェースゾーン
20 アセンブリ
21 ロケットエンジン
23 航空推進ユニット
24 プロペラ
25 燃料タンク
26 着陸装置
27 ツイストライン
112 ラダーフラップ
113 ラダーフラップ
114 制御システム
115 作動システム
116 制御ユニット