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特許7507814四級アンモニウム化合物を含有する消毒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】四級アンモニウム化合物を含有する消毒組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20240621BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20240621BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240621BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20240621BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
A01N59/00 A
A01N33/12 101
A01P1/00
A01P3/00
A61L2/18
A61L2/18 102
A61L101:22
【請求項の数】 29
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022113572
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2020097046の分割
【原出願日】2015-09-08
(65)【公開番号】P2022145703
(43)【公開日】2022-10-04
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】62/047,806
(32)【優先日】2014-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520061734
【氏名又は名称】アークサーダ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ARXADA, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイ、デキン
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー、フィリップ
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-134303(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00087049(EP,A1)
【文献】特開2006-328170(JP,A)
【文献】米国特許第06534075(US,B1)
【文献】米国特許第06436445(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第1393629(EP,A1)
【文献】特表2000-503662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺生物性第四級アンモニウム化合物、過酸化水素、及び少なくとも1つの酸、その塩、
又はそれらの任意の混合物を含む消毒剤組成物であって、
前記第四級アンモニウム化合物は、式:
【化1】

を有する化合物であり、
式中、Rは、任意選択的に置換されているベンジル基、又は任意選択的に置換されているアルキルもしくはアリール置換アルキル基であり;
及びRは独立して、任意選択的に置換されているアルキル基であり;
は、任意選択的に置換されているアルキル又はアリール置換アルキル基、ベンジル基、及び-[(CH-O]-R(式中、nは、1~20の整数であり、かつRは、水素、フェニル、及びアルキル置換フェニルからなる群から選択される)からなる群から選択され;並びに
m-は、塩素イオン、臭素イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、又は硝酸イオンであり、かつ
上記少なくとも1つの酸又はその塩が、クエン酸、リン酸、グルタル酸、コハク酸、乳酸、S,S-エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP)、ジピコリン酸(DPA)、メタンスルホン酸(MSA)、酢酸、酒石酸、アジピン酸、シュウ酸、スルファミン酸、安息香酸、ギ酸、グリコール酸、ポリ(コ-アクリル酸-マレイン酸)、フィチン酸、ホスホノ酢酸、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、及びN-(ホスホノメチル)イミノ二酢酸又はその塩からなる群から選択され、
上記消毒剤組成物が、0.5重量%~10重量%の第四級アンモニウム化合物、1重量%~10重量%の過酸化水素、及び1重量%~重量%の少なくとも1つの酸、その塩、又はそれらの任意の混合物を含む希釈可能組成物であり、かつ
濃縮された希釈可能組成物のpHが1.6~5であり、
但し上記消毒剤組成物は、ヘキサフルオロシリケート及びオルトリン酸を含まない、
上記消毒剤組成物。
【請求項2】
及びRは、同じベンジル基、又はC1~22アルキルもしくはアリール置換アルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
及びRはC1~22アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
及びRはC10アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
及びRはC~Cアルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
及びRはメチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
及びRはC1~22アルキルであり、かつR及びRはメチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第四級アンモニウム化合物は、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド及び/又はC~C18アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの酸又はその塩は、C1~C8カルボン酸又はその塩である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの酸又はその塩は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、それらの塩、又はそれらの任意の混合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記酸の塩が、前記酸のアルカリ金属塩の形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第四級アンモニウム化合物の濃度が前記組成物の約2重量%~約5重量%である希釈可能組成物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
過酸化水素の濃度が前記組成物の約3重量%~約8重量%である希釈可能組成物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記酸又はその塩の濃度が前記組成物の約2重量%~約4重量%である希釈可能組成物である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第四級アンモニウム化合物、前記過酸化水素、及び前記少なくとも1つの酸又はその塩の組合せは、前記過酸化水素又は前記第四級アンモニウム化合物のみと比較して抗菌効能を高める、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
安定化剤、溶媒、又は添加物をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記溶媒が存在し、かつ該溶媒が、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、及びジプロピレングリコールメチルエーテルからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
キレート剤及び/又は腐食防止剤をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、過酸化水素安定化剤、色素、芳香剤、泡止め剤、pHバッファ、pH調整剤、及び/又はそれらの混合物をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物を表面に塗布することを含む、表面上の微生物を殺すか、又はその増殖を阻止する方法。
【請求項21】
前記微生物は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、ウィルス、菌類、カビ、又は糸状菌の1つ又は複数を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記微生物は、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、肝炎ウィルス、ロタウィルス、ライノウィルス、又はマイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)の1つ又は複数を含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
表面を消毒する方法であって、前記表面に請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物を塗布することを含む、上記方法。
【請求項24】
表面上の微生物を殺すか、又はその増殖を阻止するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項25】
表面を消毒するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項26】
クエン酸、リン酸、グルタル酸、コハク酸、乳酸、S,S-エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP)、ジピコリン酸(DPA)、メタンスルホン酸(MSA)、酢酸、酒石酸、アジピン酸、シュウ酸、スルファミン酸、安息香酸、ギ酸、グリコール酸、ポリ(コ-アクリル酸-マレイン酸)、フィチン酸、ホスホノ酢酸、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、及びN-(ホスホノメチル)イミノ二酢酸からなる群から選択される少なくとも2つの酸又はその塩を含む、請求項1~19いずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、約5分の微生物との接触時間内で最低でも5logの微生物数の減少を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも2つの酸又はその塩が、クエン酸、コハク酸、リン酸、グルタル酸、ジピコリン酸(DPA)、及び乳酸からなる群から選択される少なくとも1つの酸と、S,S-エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、又はそのアルカリ塩、1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP)、及びメタンスルホン酸(MSA)からなる群から選択される少なくとも1つの酸とを組み合わせて含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
水で請求項1に記載の組成物を希釈し、次に得られた希釈組成物を表面に塗布することを含む、表面上の微生物を殺すか、又はその増殖を阻止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年9月9日出願の米国特許出願第62/047806号明細書に対する優先権を主張し、この出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、殺生物性四級アンモニウム化合物および過酸化水素を含む消毒組成物に関する。組成物の実施形態は、殺生物性四級アンモニウムクロリド化合物を過酸化水素/水溶液中に含む。また、組成物は酸をさらに含んでよい。本開示はまた、これを用いて微生物、例えば細菌、ウィルス、菌類、カビ、および糸状菌を殺すか、またはその増殖を阻害する方法を提供する。本開示はまた、本発明の消毒組成物を表面に塗布することを含む、表面、例えば硬い表面を消毒する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
病原性生物、例えば細菌、菌類、およびウィルスは、ヒトならびに家畜およびペットにおいて感染を引き起こし続けている。近年、食物媒介性病原体およびその食物連鎖を汚染する潜在性に対する懸念が特に増大してきた。病原性生物を減らすかまたは駆除し、それに応じて感染速度を引き下げるための消毒製剤がここ数十年にわたって開発されてきた。床、壁、調理台、窓、窓の下枠、シンク、蛇口、ごみ容器、電気器具、およびキャビネットの表面を含む字義通りに任意の硬い表面は、汚染されるおそれがある。病院、療養所、学校、および家庭で用いられる硬い表面を処理するための消毒剤が開発されてきた。
【0004】
殺生物剤としての四級アンモニウム化合物(quat)の使用が周知である(例えばKirt-Othmer’s Encyclopedia of Chemical technology,3rd Ed.,Vol.7,pp.793-832、特にpp.815-818参照)。
【0005】
しかしながら、四級アンモニウム化合物(すなわち、ジアルキル四級アンモニウム化合物(DDAC)およびドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(ADBAC))は、安価かつ有効な殺生物剤であるが、制限がある。例えば、硬水に曝されると、効能は激しく引き下げられる。相殺するには、水不溶性カチオンを分離するためのキレート剤の使用が通常必要とされる。
【0006】
典型的な四級アンモニウム化合物は、アニオン対イオンとしてクロリドを利用し、これは、金属、例えば鋼、スズ、およびアルミニウムが存在する場合、腐食を引き起こすおそれがある。相殺するには、場合により腐食防止剤の使用が必要である。
【0007】
抗菌活性を評価し、かつ支持するために用いられる提唱されている標準的な定量化法が、quat含有式について種々のレベルにおいて偏りを実証することが示されてきた。
【0008】
炭酸/重炭酸ジデシルジメチルアンモニウム化合物(DDABC)は、先に記載される硬水問題および腐食問題の軽減を促進する(ただし、完全に除外するわけではない)。しかしながら、この化合物によっても依然として制限要因がある。殆どのクロリド含有quatが大半のpHスケールにわたって安定する一方で、DDABCはアルカリ系に制限される。中性系または酸系においてDDABC分子を利用しようと試みると、炭酸イオン/重炭酸イオンが反応して、炭酸ガスが不所望に放出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、微生物に対する効能が高い組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この技術的問題の解決策が、特許請求の範囲において特徴付けられる実施形態によって提供される。
【0011】
一態様において、本開示は、抗微生物効能が高い殺生物性四級アンモニウム化合物および過酸化水素を含む消毒組成物を提供する。組成物の実施形態は、殺生物性四級アンモニウムクロリド化合物を過酸化水素/水溶液中に含む。また、組成物は酸をさらに含んでよい。
【0012】
一態様において、本開示は、抗微生物効能が高い殺生物性四級アンモニウムクロリド化合物を提供する。
【0013】
一態様において、本開示は、微生物に対する効能が高い四級アンモニウムクロリド化合物、酸、および過酸化水素を含む別の消毒組成物を提供する。
【0014】
一態様において、四級アンモニウムクロリド化合物は、ジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよび/またはC~C18アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドを含む。
【0015】
一態様において、酸はリン酸を含む。他の態様において、酸は、C~C有機酸、モノ、ジ、およびトリカルボン酸、ならびにヒドロキシ酸、例えば酢酸、リン酸、酒石酸、アジピン酸、シュウ酸、スルファミン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、安息香酸、ポリマー酸、例えばポリ(コ-アクリル酸-マレイン酸)、ギ酸、クエン酸、グリコール酸、ならびにそれらの混合物の1つまたは複数を含む。
【0016】
一態様において、本開示はまた、これを用いる方法を提供する。
【0017】
本開示はまた、本発明の消毒組成物を表面に塗布することを含む、表面、好ましくは硬い表面を消毒する方法を提供する。
【0018】
一態様において、新規の消毒組成物および新規の消毒活性物質は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、およびマイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)に対する効能が高い。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示がさらに記載される前に、本開示は、以下に記載される本開示の特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。なぜなら、特定の実施形態の変形形態がなされてよく、この変形形態も依然として添付の特許請求の範囲内にあり得るからである。利用される専門用語は、特定の実施形態を説明することを目的としており、限定することが意図されないことも理解されるべきである。その代わりとして、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が別途明らかに規定しない限り、複数への言及を含む。別途定義されない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解される意味と同じである。
【0021】
本開示は、一態様において、抗微生物効能が高い、四級アンモニウムクロリド化合物および過酸化水素を含む消毒組成物を特徴とする。組成物の実施形態は、四級アンモニウムクロリド化合物を過酸化水素/水溶液中に含む。また、組成物は酸をさらに含んでよい。さらなる実施形態において、組成物は、四級アンモニウムクロリド化合物、過酸化水素、および酸から本質的になる。別の実施形態において、組成物は、四級アンモニウムクロリド化合物、過酸化水素、および酸からなる。
【0022】
一態様において、本開示は、抗微生物効能が高い四級アンモニウムクロリド化合物を提供する。一態様において、四級アンモニウムクロリド、過酸化水素、および任意選択的に酸の組合せが相乗的に作用する。
【0023】
本発明に有用な四級アンモニウム化合物として、式(I):
【化1】

を有するものが挙げられるが、これに限定されず、
式中、Rはベンジル基、C~C22アルキル、または任意選択的にアリール置換アルキル基であり;
およびRは独立して、任意選択的に置換されているC~C22アルキル基であり;
は、C~C22アルキルまたはアリール置換アルキル基、ベンジル基、および-[(CH-O]-R(式中、nは、1~20の整数であり、かつRは、水素、フェニル、アルキル、およびアルキル置換フェニルからなる群から選択される)からなる群から選択され;および
は、塩素、臭素、ならびにリン酸イオン、硫酸イオン、および硝酸イオンである。
【0024】
一態様において、Rは、置換ベンジル基、またはC1~22アルキルもしくはアリール置換アルキル基である。
【0025】
一態様において、Rは、C1~20アルキルまたはアリール置換アルキル基、ベンジル基、および-[(CH-O)-Rからなる群から選択され、式中、nは、1~20の整数であり、かつRは、水素、フェニル、アルキル、およびアルキル置換フェニルからなる群から選択される。
【0026】
一態様において、RおよびRは、同じベンジル基、またはC1~22アルキルもしくはアリール置換アルキル基である。
【0027】
一態様において、RおよびRはC1~22アルキルである。
【0028】
一態様において、RおよびRはC10アルキル、好ましくはn-デシルである。
【0029】
一態様において、RおよびRは独立して、C1~22アルキルである。
【0030】
一態様において、RおよびRは同じC1~22アルキル基である。一態様において、RおよびRはC~Cアルキルである。一態様において、RおよびRはメチルである。
【0031】
ここでおよび以下では、表現「C1~22アルキル」は、メチル、エチル、および3~22個の炭素原子を有する全ての線状または分枝状アルキル基を含むことが理解されるべきである。したがって、表現「C3~22アルキル」は、3~22個の炭素原子を有する全ての線状または分枝状アルキル基を含むことが理解されるべきである。
【0032】
用語「アリール置換アルキル基」は、1つまたは複数の芳香族炭素環によって置換されたアルキル基の水素原子を指す。同様に、用語「アリール置換C~C22アルキル基」は、1つまたは複数の芳香族炭素環によって置換されたC~C22アルキル基の水素原子を指す。
【0033】
表現「アルキル置換フェニル」は、1~5個のアルキル基、特にC1~20、好ましくはC1~8アルキル基を置換基として有する任意のフェニル基を含むことが理解されるべきである。
【0034】
本発明の実施形態において、組成物は、水で希釈して直ちに使用できる溶液とすることができる濃縮溶液である。
【0035】
一実施形態において、濃縮組成物は、1つまたは複数の四級アンモニウム化合物を約0.1重量%~約25重量%含む。別の実施形態において、濃縮組成物は、1つまたは複数の四級アンモニウム化合物を約0.5~約10重量%含む。特定の実施形態において、濃縮組成物は、1つまたは複数の四級アンモニウム化合物を約1重量%~約8重量%含む。好ましい実施形態において、濃縮組成物は、1つまたは複数の四級アンモニウム化合物を約2重量%~約5重量%含む。
【0036】
さらなる実施形態において、直ちに使用できる組成物は、1つまたは複数の四級アンモニウム化合物を約0.01重量%~約2.5重量%含む。さらなる実施形態において、直ちに使用できる組成物は、1つまたは複数の四級アンモニウム化合物を約0.03重量%~約2重量%、好ましくは1つまたは複数の四級アンモニウム化合物を0.1重量%~1.5重量%含む。
【0037】
一態様において、濃縮組成物は、過酸化水素を約0.5重量%~約25重量%含んでよい。別の態様において、濃縮組成物は、過酸化水素を約1重量%~約10重量%含んでよい。好ましい態様において、濃縮組成物は、過酸化水素を約3重量%~約8重量%含んでよい。
【0038】
さらなる態様において、直ちに使用できる組成物は、過酸化水素を約0.01重量%~約5重量%含んでよい。さらなる実施形態において、直ちに使用できる組成物は、過酸化水素を約0.06重量%~約2重量%含んでよい。好ましい態様において、直ちに使用できる組成物は、過酸化水素を約0.1重量%~約1.5重量%含んでよい。
【0039】
本発明の実施形態において、組成物は、少なくとも1つの酸またはその塩を含む。酸は、無機酸であっても有機酸であってもよい。好ましい実施形態において、酸は、C1~C8のカルボン酸である。より好ましい実施形態において、酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、またはそれらの混合物である。さらなる実施形態において、酸は、ヒドロキシ酸、芳香族酸、またはそれらの混合物である。別のさらなる実施形態において、酸は、メタンスルホン酸、リン酸、エチドロン酸、フィチン酸、ホスホノ酢酸、N-(ホスホノメチル)イミノ二酢酸、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、S,S-エチレンジアミン-N’N’-ジコハク酸、それらのアルカリ塩、またはそれらの任意の混合物である。
【0040】
一部の実施形態において、酸は、クエン酸、リン酸、コハク酸、乳酸、S,S-エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP)、ジピコリン酸(DPA)、メタンスルホン酸(MSA)、それらのアルカリ塩、またはそれらの任意の混合物である。
【0041】
好ましい実施形態において、酸は、酸の混合物である。一部の実施形態において、酸は、以下の有機酸:クエン酸、コハク酸、リン酸、および乳酸の1つまたは複数を含む。別の実施形態において、酸は、以下の酸:クエン酸、コハク酸、リン酸、および乳酸の1つまたは複数を、別の酸と組み合わせて含む。例えば、クエン酸は、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、もしくはそのアルカリ塩、HEDP、および/またはMSAと組み合わせて用いられてよい。別の例として、コハク酸は、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、もしくはそのアルカリ塩、HEDP、および/またはMSAと組み合わせて用いられてよい。別の例として、リン酸は、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、もしくはそのアルカリ塩、HEDP、および/またはMSAと組み合わせて用いられてよい。別の例として、乳酸は、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、もしくはそのアルカリ塩、HEDP、および/またはMSAと組み合わせて用いられてよい。
【0042】
一態様において、濃縮組成物は、酸または酸の混合物を約0.01重量%~約25重量%含んでよい。特定の濃縮組成物において、酸または酸の混合物を約0.05重量%~約14重量%含んでよい。好ましい態様において、濃縮組成物は、酸または酸の混合物を約1重量%~約5重量%含んでよい。
【0043】
さらなる態様において、直ちに使用できる組成物は、酸または酸の混合物を約0.01重量%~約10重量%含んでよい。別の態様において、直ちに使用できる組成物は、酸または酸の混合物を約0.05重量%~約6重量%含んでよい。より好ましくは、直ちに使用できる組成物は、酸または酸の混合物を約0.5~約4重量%含んでよい。
【0044】
別の態様において、直ちに使用できる組成物は、有機酸、例えばクエン酸、コハク酸、リン酸、乳酸、またはそれらの任意の混合物を約1重量%~約5重量%含んでよい。好ましい態様において、直ちに使用できる組成物は、有機酸、例えばクエン酸、コハク酸、リン酸、乳酸、またはそれらの任意の混合物を約2重量%~約4重量%含んでよい。
【0045】
さらなる態様において、直ちに使用できる組成物は、有機酸、例えばクエン酸、コハク酸、リン酸、乳酸、またはそれらの任意の混合物を約1重量%~約5重量%、別の酸と組み合わせて含んでよい。別の態様において、直ちに使用できる組成物は、有機酸、例えばクエン酸、コハク酸、リン酸、乳酸、またはそれらの任意の混合物を約1重量%~約5重量%、別の酸約0.05重量%~約5重量%と組み合わせて含んでよい。好ましい態様において、直ちに使用できる組成物は、有機酸、例えばクエン酸、コハク酸、リン酸、乳酸、またはそれらの任意の混合物を約2重量%~約4重量%、別の酸、例えばエチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸もしくはそのアルカリ塩、HEDP、および/またはMSA約0.1重量%~約4重量%と組み合わせて含んでよい。
【0046】
組成物は、所望される任意の方法で製造されてよい。例えば、成分は任意の順序で混合されてよい。限定するものではないが、消毒組成物を製造する方法の1つが、四級アンモニウムクロリドを、過酸化水素の添加前に、酸(鉱酸または有機酸)と混合することを含む。過酸化水素は、任意選択的に、四級アンモニウム化合物および酸とは別に、エンドユーザーに提供されてよい。すなわち、組成物は、二部組成物としてエンドユーザーに提供されてよく、エンドユーザーは、二部を一緒に混合する。また、エンドユーザーは、付属の水を組成物に加えて、組成物を直ちに使用できる組成物に調整することもできる。
【0047】
一態様において、本開示はまた、微生物を殺すか、またはその増殖を阻害する組成物を用いる方法を提供する。一態様において、組成物の四級アンモニウム化合物、過酸化水素、および任意選択的に少なくとも1つの酸が一緒に塗布される。一態様において、組成物の四級アンモニウム化合物、過酸化水素、および任意選択的に少なくとも1つの酸が別々に塗布される。
【0048】
一態様において、組成物は、潜在的に有害であるか、または疾患を引き起こすことができる種々の微生物、例えばグラム陽性菌およびグラム陰性菌、ウィルス、菌類、カビ、および糸状菌に対する微生物効能が高い。そのような微生物は、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、肝炎、ロタウィルス、ライノウィルス、およびマイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)を含む。一態様において、組成物は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、大腸菌(E.coli)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、および緑膿菌(P.aeruginosa)、とりわけマイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)に対する微生物効能が高い。
【0049】
殺生物的効能の増大を判定する適切な方法が、当該技術分野において知られている。殺生物的効能は、組成物との特定の接触時間後の殺生物ターゲットの殺パーセンテージの増大として測定され得る(例えば効能パーセンテージ)。EPAは、様々な表面について必要とされる接触時間、かつまた試験に受け入れられる調節プロトコルに関する規則を有し、それらは当業者に知られている。別の実施形態において、殺生物的効能の増大は、組成物の殺時間、例えば特定の接触時間後に表面上の殺生物ターゲットの少なくとも99.9%を殺すのに必要な時間量の減少として測定され得る。EPAに認可された工業規格接触時間は、バケツ希釈可能組成物について、主な殺生物ターゲット、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等に使用希釈試験を用いると、10分である。
【0050】
組成物の実社会での使用に近付けるために、消毒剤組成物の例えば作業表面との接触時間をより短くする必要が存在する。したがって、OECD Quantitative Method for Evaluating Bacterial Activity of Microbiocides Used on Hard Non-Porous Surfacesによって判定されると、本発明の組成物は、微生物接触殺時間が約10分未満、好ましくは微生物接触殺時間が約5分未満である。より好ましい実施形態において、本発明の組成物は、微生物接触殺時間が約3分以下、代わりに約2分以下、代わりに約1分以下、代わりに約30秒以下である。
【0051】
さらなる実施形態において、本発明の組成物は、約5分の接触時間内で最低でも4logの微生物数の減少を実証する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、約3分の接触時間内で、代わりに約2分の接触時間内で、代わりに約1分の接触時間内で、代わりに約30秒の接触時間内で、最低でも4logの微生物数の減少を実証する。
【0052】
さらなる実施形態において、本発明の組成物は、約5分の接触時間内で最低でも5logの微生物数の減少を実証する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、約3分の接触時間内で、代わりに約2分の接触時間内で、代わりに約1分の接触時間内で、代わりに約30秒の接触時間内で、最低でも5logの微生物数の減少を実証する。
【0053】
予想外にも、本明細書に開示される四級アンモニウムクロリド化合物、過酸化水素、および酸を含む組成物、例えば以下に記載される実施例5~7の組成物は、2つの主な殺生物ターゲット、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)において、3分の接触時間内で、5 logを超える減少を実証した。加えて、本明細書に開示される、硬水中で希釈された四級アンモニウムクロリド化合物、過酸化水素、および酸を含む直ちに使用できる組成物、例えば以下に記載される実施例8~11の組成物は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)において、1分の接触時間内で、5logを超える減少を実証した。直ちに使用できる組成物、例えば以下に記載される実施例11の組成物中の過酸化水素の濃度を1%に上げると、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)において、30秒の接触時間内で、5logを超える驚くべき減少が生じた。
【0054】
本発明の貯蔵安定組成物はまた、組成物の貯蔵寿命安定性を維持し、特に、過酸化水素の安定性を維持することで、酸素が溶液から容易に放出されないpHを有する。本発明の組成物は、45℃の温度に制御されたオーブン内で4週間安定したままであることが実証された。これは、正常な貯蔵条件下での1年の貯蔵寿命に等しい。本発明の濃縮組成物は、pHが約1.6~約5である。本発明の直ちに使用できる組成物は、pHが約1.8~約6である。
【0055】
別の実施形態において、それの濃縮物および直ちに使用できる溶液は、過酸化水素の分解を引き起こすおそれがある不純物を非活化する安定化剤をさらに含んでよい。安定化剤は、製剤の貯蔵中に構成要素が保管中に早期に分解するのを防止するために加えられてよい。酸性の過酸化水素溶液を安定化させるのに用いられる安定化剤として、有機封鎖剤および無機封鎖剤、すなわち、スタンネートおよびホスフェート、ならびに有機化合物、有機金属塩、および金属キレータのスタンネートおよびホスフェートとの組合せ、またはスタンネートおよびホスフェートなしでの組合せが挙げられる。一実施形態において、安定化剤は、リン酸、リン酸の誘導体、1-ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、フィチン酸、アミノホスフェート、ホスホネートおよびグルタミン酸ナトリウム、NaH2PO4、トリポリリン酸Na、オルガノホスホン酸、アミノホスホン酸、クエン酸二水素銀、ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリ(メチレンリン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンリン酸)、2-ヒドロキシエチルイミノビス(エチレンリン酸)、クエン酸、ジピコリン酸、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、メチルグリシン二酢酸、およびそれらのアルカリ塩、ニトリロ三酢酸(NTA)、2-ヒドロキシエチルイミノ-二酢酸(HEIDA)、およびそれらの塩、シクロヘキサン-1,2-ジアミノテトラキスメチレンホスホン酸もしくは水-ゾル、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、コロイドスタンネート、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、クエン酸塩、没食子酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、オキサロ酢酸塩、シュウ酸塩、ピルビン酸塩、コハク酸塩、またはそれらの混合物であってよい。過酸化水素安定化剤は、先に記載されるリン酸の誘導体およびキレート剤の単一の構成要素であっても混合物であってもよい。任意の安定化剤の、濃縮物中の量は、約0.01%~約5w/w%、好ましくは0.05%~2w/w%、より好ましくは0.1%~1.0w/w%であってよい。他の実施形態において、安定化剤は存在しない。
【0056】
本開示はまた、組成物または四級アンモニウムクロリド化合物を表面に塗布することを含む、表面を消毒する方法を提供する。一態様において、組成物の四級アンモニウム化合物、過酸化水素、および任意選択的に酸が一緒に塗布される。一態様において、組成物の四級アンモニウム化合物、過酸化水素、および任意選択的に酸が別々に塗布される。
【0057】
一実施形態において、消毒組成物は溶媒をさらに含む。一実施形態において、溶媒は水であってよい。別の実施形態において、溶媒は、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、イソプロパノール、または他のアルコールの混合液であってよい。別の実施形態において、溶媒は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ならびに/またはエチレングリコールもしくはプロピレングリコールのアルキルグリコールエーテルおよびジアルキルグリコールエーテル、例えばジエチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、DEGモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、およびジプロピレングリコールブチルエーテルの混合物であってよい。別の実施形態において、溶媒は、グリコールエーテル、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤、ならびにキレート剤であってよい。例えば、グリコールエーテルは、DOWANOL(商標)DPnPグリコールエーテルであってよい。組成物中の溶媒の量は、約0.5%~約20w/w%、好ましくは約1%~約5w/w%であってよい。他の実施形態において、溶媒は存在しない。
【0058】
任意選択的に、界面活性剤が消毒組成物に同様に添加されてよい。適切な界面活性剤として、両性界面活性剤、双性イオン界面活性剤、または非イオン性界面活性剤、例えば、アミンオキシド、線状アルコールエトキシレート、二級アルコールエトキシレート、エトキシレートエステル、ベタミン、およびアルキルポリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、界面活性剤は、STEPANETEX(登録商標)DA-6であってよい。他の実施形態において、界面活性剤は存在しない。
【0059】
本発明の組成物はまた、添加物、例えばキレート剤、ビルダー塩、色素、芳香剤、過酸化水素安定化剤、腐食防止剤、泡止め剤、pHバッファ、pH調整剤、非イオン性界面活性剤、湿潤剤、およびペルフルオロ界面活性剤、例えばクリーニング溶液および消毒溶液の技術分野において一般的に用いられるものを含んでよい。本発明の組成物はまた、添加物、例えば均展剤、例えばコーティングまたは塗料の技術分野において一般的に用いられるものを含んでよい。組成物はまた、キレート剤がなくてもよい。組成物はまた、ビルダー塩、色素、芳香剤、過酸化水素安定化剤、腐食防止剤、泡止め剤、pHバッファ、pH調整剤、非イオン性界面活性剤、湿潤剤、ペルフルオロ界面活性剤、および均展剤の1つまたは複数がなくてもよい。
【0060】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、キレート剤および/または腐食防止剤をさらに含む。任意の既知のキレート剤も腐食防止剤も用いられ得る。組成物はまた、キレート剤および/または腐食防止剤がなくてもよい。
【0061】
本開示はまた、カチオンポリマーを含まない消毒組成物を提供する。組成物から好ましくは除外されるカチオンポリマーは、以下の構造を有し得る。
【化2】
【0062】
この構造に関して、R1は独立して、H(水素)またはメチル(CH3)から選択されてよく;R2は独立して、H(水素)、ハライド(フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨード)、C1~C6アルキルまたはアルコキシ、アリール、線状もしくは分枝状オリゴマーまたは線状もしくは分枝状ポリマーのジメチルシロキサンから選択されてよく;R3は独立して、ヒドロキシル、アルキルアミン、ジアルキルアミン、またはポリエーテルから選択されてよく;R4は独立して、H(水素)、C1~C6アルキル、またはベンジルから選択されてよく;Zは独立して、O(酸素)またはNHから選択されてよく;Wは独立して、C1~C6アルキルから選択されてよく;およびXは独立して、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨード、メト硫酸イオン、またはエト硫酸イオンから選択されてよい。その代わりに、下付きの「n」によって表されるモノマーは、ビニルピロリジノンであってよい。m、n、およびpの値は、同じであっても異なってもよい。m、n、およびpの値は整数であり、数平均分子量を1000~100,000g/molの範囲内にするように選択される。
【0063】
一態様において、組成物から好ましくは除外されるカチオンポリマーの例として、極性のある水溶性モノマー、疎水性のシリコーン含有モノマー、およびそのようなモノマーの混合物からなる群から選択される別のモノマーと組み合わされる(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドモノマーを含むカチオンポリマーが挙げられる。極性のある水溶性モノマーは、ビニルピロリジノン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N’-ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、およびN-イソプロピルアクリルアミドから選択されてよい。疎水性のシリコーン含有モノマーは、非置換もしくは置換ビニル基または非置換もしくは置換エチニル基ターミネーテッドシロキシ化合物から選択されてよく、これは、モノメタクリルオキシプロピルターミネーテッドポリジメチルシロキサン、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)、およびメタクリルオキシプロピルターミネーテッドT-構造シロキサンを含む。
【0064】
別の態様において、組成物から好ましくは除外されるカチオンポリマーの例として、極性のある水溶性モノマー、疎水性のシリコーン含有モノマー、およびそのようなモノマーの混合物からなる群から選択される別のモノマーと組み合わされる[2-アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドモノマーを含むカチオンポリマーが挙げられる。極性のある水溶性モノマーは、ビニルピロリジノン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N’-ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、およびN-イソプロピルアクリルアミドから選択されてよい。疎水性のシリコーン含有モノマーは、非置換もしくは置換ビニル基または非置換もしくは置換エチニル基ターミネーテッドシロキシ化合物から選択されてよく、これは、モノメタクリルオキシプロピルターミネーテッドポリジメチルシロキサン、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)、およびメタクリルオキシプロピルターミネーテッドT-構造シロキサンを含む。
【0065】
国際公開第2012/090100号パンフレットに従えば、カチオンポリマーは、潜在的に有害な微生物を殺し、かつその増殖を防止する耐久性および持続性のある活性を提供することが示される。国際公開第2012/090100号パンフレットのカチオンポリマーは、好ましくは、本発明の組成物中に存在しない。
【0066】
適切な表面として、硬い表面または食品コンテナが挙げられるが、これらに限定されない。一態様において、表面は硬い表面である。さらなる実施形態において、硬い表面は、家庭または工業環境もしくは施設環境において見出される任意の硬い表面である。別の実施形態において、硬い表面は、床、壁、調理台、電気器具、または装備品である。
【0067】
組成物で消毒されてよい表面として、乳製品工場、家庭、保健医療施設、スイミングプール、缶詰工場、食品加工プラント、レストラン、病院、施設、および工業(二次油回収を含む)に位置する表面が挙げられるが、これらに限定されない。硬い表面、例えばガラスおよび磨かれたアルミニウムが塗布に特に適している。塗布の標的とされる具体的な領域として、家庭内の硬い表面、例えば台所調理台、キャビネット、電気器具、ごみ入れ、洗濯エリア、厨芥バケツ、バスルーム装備品、トイレ、水タンク、蛇口、鏡、鏡台、タブ、およびシャワーが挙げられる。組成物はまた、床、壁、家具、鏡、トイレット装備品、窓、および木材表面、例えばフェンスレール、ポーチレール、デッキ、屋根、壁板、窓フレーム、およびドアフレームを清潔にするのに用いられ得る。組成物の四級アンモニウムクロリド化合物および消毒活性物質は、間接的食品接触表面、例えばまな板、調理具、コンテナ、皿、洗面台、電気器具、および調理台上への塗布に特によく適している。組成物または四級アンモニウムクロリド化合物は、乳業プラント装置、搾乳マシン、乳桶、およびタンクトラック等を清潔にするのに用いられ得る。病院エリアとして、ベッド、ガーニー、テーブル、コンテナ、トイレ、ごみ入れ、スタンド、キャビネット、シャワー室、床、壁、または任意の他の無孔表面が挙げられるであろう。
【0068】
表面を処理するのに用いられる組成物の量は、殺生物有効量、すなわち表面を清潔にし、または消毒する量である。殺生物有効量は、意図される用途によって決まり、詳細な本開示を考慮して当業者によって決定され得る。
【0069】
典型的には、消毒組成物は、希釈可能な濃縮形態で供給されてもよく、または直ちに使用できる形態で供給されてもよい。典型的な希釈可能な濃縮物は、全組成物の100重量%に基づいて、約2重量%~約5重量%の四級アンモニウム化合物、約3%~約8%の過酸化水素、および約1重量%~約5重量%の酸を含む。本発明の希釈可能濃縮物は、水で希釈可能であってよい。典型的な直ちに使用できる製剤は、全組成物に基づいて、約10ppm~約10000ppmの四級アンモニウム化合物、約0.1重量%~約1.5重量%の過酸化水素、および約0.5重量%~約4重量%の酸を含む。水は、構成要素の所望のppmを達成するように添加される。
【0070】
表面の処理は、当業者に知られている任意の手段によって達成され、浸漬、ソーキング、ブラッシング、スプレー、モップ掛け、または洗浄等が挙げられるが、これらに限定されない。必要とされる処理の長さは処理条件に従って変化し、その選択は当業者に知られている。
【0071】
特に有用な一塗布法は、四級アンモニウムクロリド化合物、過酸化水素、および任意選択的に酸を含む消毒組成物をワイプ担体中に含浸させるものである。この実施形態において、ワイプは、消毒組成物が含浸され、かつワイプをユーザーに分配するコンテナ内に貯蔵される単回使用ワイプである。ワイプを有するコンテナは、単一のワイプまたはいくつかのワイプを含有することができる。適切なコンテナとして、単一のワイプ、例えば湿った小タオルを含有し、ユーザーによって破られて開けられるポーチが挙げられ、または再シール可能な開口部を有し、単一のワイプを開口部から一枚ずつ取り出すことができるように、いくつかのワイプを積み重ねてロールにするか、もしくは他の適切な構成で含有するポーチがあり得る。ポーチは通常、流体不浸透性の材料、例えばフィルム、コーティングされた紙もしくはホイル、または他の類似した流体不浸透性の材料から調製される。本発明のワイプを分配する別の方法として、コンテナ内のワイプにアクセスするための開口部を有する流体不浸透性コンテナ内にワイプを配置するものがある。コンテナは、流体不浸透性である蓋を有する成形プラスチックコンテナであってよい。通常、蓋は、コンテナ内のワイプにアクセスするための開口部を有する。コンテナ内のワイプは、インタリーブ配置で積み重ねられてよく、ワイプがコンテナから取り出されると、次のワイプは、ユーザーが次のワイプを取り出せるようにコンテナの開口部内に位置が定められる。その代わりに、ワイプは、連続した材料であって、個々のワイプ間にミシン目が入った連続した材料であってよい。ミシン目が入った連続ワイプ材料は、折り畳まれた形態であってもよく、またはロールされた形態であってもよい。通常、ロールされた形態において、ワイプ材料は、ロールされた材料の中心から供給される。インタリーブ配置されたスタックと同様に、ワイプがコンテナから取り出されると、次のワイプは、必要に応じて次のワイプを取り出すのに用いられる開口部内に位置が定められる。
【0072】
使い捨てワイプは、他の塗布ビークル、例えば再利用できるスポンジまたはラグ等を上回る利点を提供する。繰り返し用いられるスポンジおよびラグ等とは異なり、含浸されたワイプは、一度用いられると廃棄される。先に言及されるように、スポンジまたはラグは、消毒組成物によって容易に殺されない微生物を保有するおそれがあるため、再利用されるスポンジまたはラグは問題となる。さらに、消毒組成物は、スポンジまたはラグ中に存在する多孔質の柔らかい表面ではなく、硬い表面を処理するように配合される。
【0073】
消毒組成物は、ワイプが予め濡らされて、処理される表面をワイプが走るにつれて消毒組成物が表面上に搾り出されるか、または放出されるように、ワイプ中に含浸されてよい。通常、消毒組成物は、ワイプがワイピング作用によって表面に消毒組成物を放出するように、ワイプ中で飽和する。ワイプ担体に応じて、飽和は通常、飽和されるワイプ担体の1重量部あたり約3重量部の使用消毒組成物を用いて達成された。通常、消毒組成物は、ワイパー担体の1重量部あたり約4重量部~6重量部が用いられる。この範囲において、担体の完全な飽和が達成され得る。なお、消毒溶液の量は、特定のワイプ担体に応じて、ワイプ担体の完全な飽和を達成するように増減されてよい。
【0074】
適切なワイプ担体として、織布または不織布が挙げられる。本質的には、任意の不織ウェブ材が用いられ得る。例示的な不織布として、メルトブローン、コフォーム、スパンボンド、エアレイド、水流交絡不織布、スパンレース、接合カードウェブ、およびそれらの積層体が挙げられ得るが、これらに限定されない。任意選択的に、不織布は、フィルム材料が同様に積層されてもよい。ワイプ担体を調製するのに用いられる繊維は、セルロース繊維、熱可塑性繊維、およびそれらの混合物であってよい。繊維は、連続繊維、非連続繊維、ステープル繊維、およびそれらの混合物であってもよい。不織ウェブのベース重量は、1平方メートルあたり約12グラム~1平方メートルあたり200グラムまたはそれを超えて変化してよい。
【0075】
一実施形態において、ワイプは、許容可能な耐性レベル内で活性成分および不活性成分の両方を含有する液体構成要素が含浸され、ワイプから搾り出される消毒組成物は、許容可能な耐性レベル内の活性物質成分を含有する。表面に塗布されると、抗菌性消毒組成物は一定期間にわたり表面上に残ることができる。抗菌性組成物は、表面に塗布されて乾燥されてもよく、または代わりに乾式ワイプまたはワイプデバイスによって表面を拭くことによって乾燥されてもよいが、これは好ましくは用いられない。
【0076】
以下の実施例は、本開示のある態様を説明するのに役立ち、本開示を限定することは意図されない。
【実施例
【0077】
実施例1
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する殺生物活性。
例示した組成物の殺生物活性を、OECD Quantitative Method for Evaluating Bacterial Activity of Microbiocides Used on Hard Non-Porous Surfacesを用いて判定した。
【0078】
原材料、50%過酸化水素、クエン酸(CA)、85%リン酸、グルタル酸(GA)、50%1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP)、スズ酸ナトリウム、ジピコリン酸(DPA)、およびS,S-エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸三ナトリウム塩(EDDS)をAldrich-Sigmaから購入した。Lonzaの50%ジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよび10%エタノールを含有するBardac 2250を配合に用いた。
【0079】
表1に示す結果は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(Sa)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(Pa)に曝したときの組成物の抗菌効能を実証している。組成物を生産するために用いた過酸化水素の量に基づいて算出した過酸化水素のレベルを試験するために、375ppm硬水でサンプルを希釈することにより、表1に記載する組成物を試験した。
【0080】
結果は、過酸化水素のみおよびBardac 22のみでは両方とも、5分以内の接触時間でSaおよびPaの両方に対して効果がないことを実証している。サンプル1およびサンプル2において示すように、0.5%および6%の過酸化水素のみによる処理は、PaおよびSaに対してそれぞれ5分の接触時間後、<1.6および<3.2logの減少のみを達成した。サンプル3が示すように、5000ppmのBardac 22のみによる処理は、5分の接触時間後、PaおよびSaに対して<3.3logの減少をもたらした。
【0081】
しかしながら、サンプル4に示す3000ppmの過酸化水素と2000ppmのBardac 22との組合せは、5分の接触時間内でPaおよびSaに対して4logを超える減少を達成した。
【0082】
【表1】
【0083】
表2に示す結果は、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、過酸化水素、ならびにリン酸および/または有機ホスホン酸、例えばHEDPを含む本開示の組成物が、PaおよびSaの両方に対する抗菌活性の相乗効果の有意な増進を示すことをさらに実証している。例えば、サンプル5およびサンプル6は、両方の組成物が0.5%Hおよび0.3%Bardac 22のレベルにおいて、3分の接触時間内でPaおよびSaに対して5logを超える減少を達成したことを実証している。また、0.1%Hおよび0.06%Bardac 22を含有する組成物は、10分の接触時間内でPaおよびSaの両方に対して5logを超える減少を達成した。
【0084】
結果は、追加の有機酸を含有する組成物が、サンプル7、8、9、10、および11において示されるように、抗菌活性のさらなる増進を提供することをさらに実証する。特に、サンプル8の0.5%H、0.3%Bardac 22および1.5%クエン酸を含む製剤は、1分の接触時間内でPaおよびSaの両方に対して>5Logの減少を達成した。より具体的には、1.0%過酸化水素を含む組成物11は、僅か30秒の接触時間内でPaおよびSaに対して>5logの減少を達成した。比較として、サンプル5に示すクエン酸のない同製剤は、1分の接触時間内でPaおよびSaに対して僅か<1.6logの減少のみを達成した。
【0085】
【表2】
【0086】
さらに、結果は、0.5%過酸化水素、2%クエン酸、0.3%Bardac 22および0.05%EDDSを含む組成物が、OECD Quantitative methods for Evaluating the activity of Mycobactericidal used on hard Non-Porous Surfaces(2012年10月30日立案)によって判定すると、5分の接触時間内でマイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)ATCC 15755に対して4.6Logの減少という優れた活性を示すことを実証している。
【0087】
実施例2
枯草菌(Bacillus subtilis)に対する殺生物活性。
例示した組成物の殺生物活性を、OECD Quantitative Suspension Test for the Evaluation of Sporicidal Activity of Chemical Disinfectants used in Food, Industrial;Domestic and institutional areasを用いて判定した。中和を、リンス流体として1%カタラーゼを有するD/E Brothを用いた膜濾過によって実行した。試験を、干渉物質として0.3g/lウシアルブミンを用いて、20℃で60分間にわたり実行した。
【0088】
以下の原料を用いた:50%過酸化水素、クエン酸(CA)、乳酸、50%1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP)、スズ酸ナトリウム、ジピコリン酸(DPA)、STEPANETEX(登録商標)DA-6、DOWANOL(商標)DPnP、水酸化ナトリウム(NaOH)、メタンスルホン酸(MSA)、NOVEL(登録商標)1012-6エトキシレート、ウシアルブミン、イソプロパノール、D/Eブロス、およびカタラーゼ。Lonzaの50%ジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよび10%エタノールを含むBardac 2250を配合に用いた。
【0089】
表3に示す結果は、枯草菌(Bacillus subtilis)に曝したときの組成物の抗菌効能を実証している。組成物を生産するために用いた過酸化水素の量に基づいて算出した過酸化水素のレベルを試験するために、脱イオン水でサンプルを希釈することによって、表3に記載する組成物を試験した。
【0090】
【表3】
【0091】
これらの結果は、アルコール系溶媒を含む組成物が枯草菌(Bacillus subtilis)に対して有効な抗菌活性を示したことを実証している。
【0092】
さらに、結果は、2.0%過酸化水素、4.0%乳酸、0.6%Bardac 22、0.5%MSA、1.6%1012-6エトキシレート、2.0%イソプロパノールおよび0.10%HEDPを含む組成物(pH約1.76)が、60秒の接触時間内に枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC 6633(胞子)に対して4.7Logの減少という優れた活性を示すことを実証している。
【0093】
本明細書における全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが具体的にかつ個々に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。何れの参考文献の引用も出願日前の開示についてであり、本開示が、以前の発明によってその参考文献に先行する権利はないという承認として解釈されるべきでない。
【0094】
先に記載される要素のそれぞれまたは2つ以上が一緒に、先に記載される種類と異なる他の種類の方法において有用な用途が見出される場合もあることが理解されよう。さらなる分析がなくとも、前述の記載が本開示の趣旨を完全に明らかにするため、他者は、現在の知識を利用することによって、先行技術の見地から、添付の特許請求の範囲に示される本開示の包括的または具体的な態様の不可欠な特性を適正に構成する特徴を省くことなく、本開示の趣旨を種々の用途に容易に適応させることができるであろう。前述の実施形態は、一例としてのみ示され、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。