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特許7507817彎曲したレッグを有する周期多次元原子対象閉込め装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】彎曲したレッグを有する周期多次元原子対象閉込め装置
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20240621BHJP
【FI】
G06N10/40
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022130751
(22)【出願日】2022-08-18
(65)【公開番号】P2023029308
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】63/235,007
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/810,082
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522047446
【氏名又は名称】クオンティニュアム エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ランガー
(72)【発明者】
【氏名】カーティス・ヴォリン
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-530148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0068839(US,A1)
【文献】特表2016-514896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0299766(US,A1)
【文献】Mark Webber et al.,Efficient Qubit Routing for a Globally Connected Trapped Ion Quantum Computer,arXiv [online],2020年08月19日,pp.1-13,[検索日 2023.09.28],インターネット <URL: https://arxiv.org/abs/2002.12782>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00-10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子対象閉込め装置であって、
複数のレッグであって、前記複数のレッグの個々のレッグが一次元トラップセグメントを画定する、複数のレッグと、
複数のジャンクションであって、前記複数のジャンクションの個々のジャンクションが前記複数のレッグのうちの少なくとも2つのレッグを接続する、複数のジャンクションと
を備え、
前記複数のレッグおよび前記複数のジャンクションが、接続された一次元トラップセグメントの周期または準周期アレイを形成するように配置され、
前記周期アレイは、アレイのトポロジおよび/またはジオメトリが定義された周期で反復するアレイであり、前記準周期アレイは、1つまたは複数の次元においてかき乱される周期性を有し、
前記周期アレイまたは準周期アレイが1つまたは複数の最も小さいアレイ要素を備え、
前記最も小さいアレイ要素は、前記接続された一次元トラップセグメントの周期または準周期アレイのレイアウトタイル張りするために、または前記接続された一次元トラップセグメントの周期または準周期アレイのレイアウトのテセレーションを形成するために使用されるレッグおよびジャンクションの最も小さいグループであり、
前記1つまたは複数の最も小さいアレイ要素の個々の最も小さいアレイ要素が少なくとも1つの彎曲したレッグを備える、
原子対象閉込め装置。
【請求項2】
前記アレイが、前記複数のレッグのうちの第1の点におけるレッグに対して接線接触状態で引かれた直線が、前記複数のレッグのうちの前記アレイの周期性または前記アレイの前記周期性の分周における追加レッグに対して接線接触状態であり、また、前記複数のレッグのうちの残りのレッグについて、前記直線が、(a)前記複数のレッグのうちの前記残りのレッグのそれぞれのレッグと前記それぞれのレッグの離散点で交わるか、あるいは(b)前記複数のレッグのうちの前記残りのレッグの前記それぞれのレッグと交わらないかのいずれかであるように構成される、請求項1に記載の原子対象閉込め装置。
【請求項3】
前記アレイが、
前記複数のレッグのうちの第1の点におけるレッグに対して接線接触状態で引かれた第1の直線が、前記複数のレッグのうちの前記アレイの周期性または前記アレイの前記周期性の分周における第1のセットの追加レッグに対して接線接触状態であり、また、記複数のレッグのうちの残りのレッグについて、前記第1の直線が、(a)前記複数のレッグのうちの前記残りのレッグのそれぞれのレッグと前記それぞれのレッグの離散点で交わるか、あるいは(b)前記複数のレッグのうちの前記残りのレッグの前記それぞれのレッグと交わらないかのいずれかである、
前記複数のレッグのうちの第2の点におけるレッグに対して直角に引かれた第2の直線が、前記複数のレッグのうちの前記アレイの前記周期性または前記アレイの前記周期性の分周における第2のセットの追加レッグのそれぞれのレッグに対して直角である、
前記アレイの前記周期性または前記アレイの前記周期性の分周における前記複数のレッグうちのレッグのグループに対して接線接触状態で引かれた第3の直線が、レッグの前記グループに沿った他のどの点においても、レッグの前記グループのうちのどのレッグとも交わらない、
前記複数のレッグのうちの第4の点におけるレッグに対して接線接触状態で引かれた第4の直線が前記レッグからの前記アレイの所与の数の周期内における前記複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではない、または、
前記複数のレッグのうちの第5の点におけるレッグに対して直角に引かれた第5の直線が、(a)前記複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではなく、また、(b)前記レッグからの前記アレイの所与の数の周期内における前記複数のレッグのうちの別のレッグの点に対しても直角ではない、
のうちの少なくとも1つを満足するように構成される、請求項1に記載の原子対象閉込め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月19日に出願した米国出願第63/235,007号の優先権を主張するものであり、この出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
様々な実施形態は、彎曲したレッグを有する多次元原子対象閉込め装置、および彎曲したレッグを有する多次元イオントラップ装置を含むシステムに関する。例えば様々な実施形態は、彎曲したレッグを含むレッグの周期および/または準周期アレイを有する多次元原子対象閉込め装置に関し、これらのレッグはジャンクションによって接続される。
【背景技術】
【0003】
イオントラップは、電界および磁界の組合せを使用して、ポテンシャル井戸の中の複数のイオンを捕獲することができる。イオンは多くの目的のためにトラップすることができ、これらの目的には、例えばトラップされたイオンについての質量分析、研究、および/または量子状態の制御を含むことができる。様々なシナリオでは、多次元(例えば二次元)イオントラップを使用して複数のイオンをトラップすることができる。通常、多次元イオントラップは、1つまたは複数のジャンクションを介して互いに接続される複数の一次元トラップセグメントを備えている。したがって、努力、創意および革新を通して、本発明の実施形態に従って構造化される解決法を開発することによってこのような従来のイオントラップ、およびこのようなイオントラップを組み込んだシステムの多くの欠陥が解決されており、本明細書においては、これらの本発明の実施形態のうちの多くの例が詳細に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例示的実施形態は、ジャンクションを介して接続された一次元閉込めセグメントの周期または準周期アレイから形成される多次元原子対象閉込め装置、および/または多次元原子対象閉込め装置を備えるシステムを提供する。様々な実施形態では、周期または準周期アレイは、本明細書においてはレッグと呼ばれる彎曲している一次元閉込めセグメントを備える。例えば彎曲したレッグは、正弦関数または余弦関数、奇関数または偶関数、および/または任意の他の彎曲した一次元セグメントの形態を取ることができる。様々な実施形態では、原子対象閉込め装置は、イオントラップ、または複数の原子対象を閉じ込めるように構成された他の閉込め装置である。様々な実施形態では、原子対象は、イオン、原子、多イオンまたは多原子属またはクリスタル、中性またはイオン分子、および/または等々である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、原子対象閉込め装置は複数のレッグを備え、これらの複数のレッグの個々のレッグは一次元トラップセグメントを画定し、また、原子対象閉込め装置は複数のジャンクションを備え、これらの複数のジャンクションの個々のジャンクションは複数のレッグのうちの少なくとも2つのレッグを接続する。複数のレッグおよび複数のジャンクションは、接続された一次元トラップセグメントの周期または準周期アレイで配置される。周期アレイまたは準周期アレイは、1つまたは複数の最も小さいアレイ要素を備える。これらの1つまたは複数の最も小さいアレイ要素の個々の最も小さいアレイ要素は少なくとも1つの彎曲したレッグを備える。
【0006】
例示的実施形態では、少なくとも1つの彎曲したレッグは、第1のジャンクションに配置された第1の端部、および第2のジャンクションに配置された第2の端部を有し、少なくとも1つの彎曲したレッグの長さは、第1のジャンクションと第2のジャンクションの間の直線距離より長い。
【0007】
例示的実施形態では、複数のレッグの個々のレッグは彎曲したレッグである。
【0008】
例示的実施形態では、アレイは、複数のレッグのうちの第1の点におけるレッグに対して接線接触状態で引かれた直線が、複数のレッグのうちのアレイの周期性またはアレイの周期性の分周における追加レッグに対して接線接触状態であり、また、(a)離散点で交わるか、あるいは(b)複数のレッグのうちの残りのレッグと交わらないかのいずれかであるように構成される。
【0009】
例示的実施形態では、アレイは、複数のレッグのうちのあるレッグに対して直角であり、また、アレイの周期性またはアレイの周期性の分周における追加レッグに対して直角である直線が引かれるように構成される。
【0010】
例示的実施形態では、アレイは、アレイの周期性またはアレイの周期性の分周におけるレッグのグループに対して接線接触状態で直線が引かれ、レッグのグループは行または列を形成し、また、上記直線は、レッグに沿った他のどの点においても、レッグのグループのうちのどのレッグとも交わらないように構成される。
【0011】
例示的実施形態では、アレイは、複数のレッグのうちのあるレッグに対して接線接触状態で引かれた直線が、そのレッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではないように構成される。
【0012】
例示的実施形態では、アレイは、複数のレッグのうちの何らかの点におけるレッグに対して直角に引かれた直線が、(a)複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではなく、また、(b)上記レッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの別のレッグの点に対しても直角ではないように構成される。
【0013】
例示的実施形態では、1つまたは複数の最も小さいアレイ要素の個々の最も小さいアレイ要素は少なくとも1つのまっすぐなレッグを備える。
【0014】
例示的実施形態では、アレイは、(i)複数のレッグのうちの第1の点におけるレッグに対して接線接触状態で引かれた第1の直線が、複数のレッグのうちのアレイの周期性またはアレイの周期性の分周における第1のセットの追加レッグに対して接線接触状態であり、また、(a)離散点で交わるか、あるいは(b)複数のレッグのうちの残りのレッグと交わらないかのいずれかであり、(ii)上記レッグに対して直角であり、また、複数のレッグのうちのアレイの周期性またはアレイの周期性の分周における第2のセットの追加レッグに対して直角の第2の直線が引かれ、(iii)アレイの周期性またはアレイの周期性の分周におけるレッグのグループに対して接線接触状態で第3の直線が引かれ、レッグのグループは行または列を形成し、また、第3の直線は、上記レッグに沿った他のどの点においても、レッグのグループのうちのどのレッグとも交わらない、(iv)上記レッグに対して接線接触状態で引かれた第4の直線が上記レッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではない、または(v)何らかの点におけるレッグに対して直角に引かれた第5の直線が、(a)複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではなく、また、(b)上記レッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの別のレッグの点に対しても直角ではない、のうちの少なくとも1つを満足するように構成される。
【0015】
例示的実施形態では、アレイは、(i)複数のレッグのうちの第1の点におけるレッグに対して接線接触状態で引かれた第1の直線が、複数のレッグのうちのアレイの周期性またはアレイの周期性の分周における第1のセットの追加レッグに対して接線接触状態であり、また、(a)離散点で交わるか、あるいは(b)複数のレッグのうちの残りのレッグと交わらないかのいずれかであり、(ii)上記レッグに対して直角であり、また、複数のレッグのうちのアレイの周期性またはアレイの周期性の分周における第2のセットの追加レッグに対して直角の第2の直線が引かれ、(iii)アレイの周期性またはアレイの周期性の分周におけるレッグのグループに対して接線接触状態で第3の直線が引かれ、レッグのグループは行または列を形成し、また、第3の直線は、上記レッグに沿った他のどの点においても、レッグのグループのうちのどのレッグとも交わらない、(iv)上記レッグに対して接線接触状態で引かれた第4の直線が上記レッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではない、または(v)何らかの点におけるレッグに対して直角に引かれた第5の直線が、(a)複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではなく、また、(b)上記レッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの別のレッグの点に対しても直角ではない、のうちの少なくとも2つを満足するように構成される。
【0016】
別の態様によれば、量子コンピュータが提供される。例示的実施形態では、量子コンピュータはコントローラおよび原子対象閉込め装置を備える。コントローラは、1つまたは複数の電圧信号を原子対象閉込め装置のそれぞれの電極に印加するように構成される。原子対象閉込め装置は複数のレッグを備え、これらの複数のレッグの個々のレッグは一次元トラップセグメントを画定し、また、原子対象閉込め装置は複数のジャンクションを備え、これらの複数のジャンクションの個々のジャンクションは複数のレッグのうちの少なくとも2つのレッグを接続する。複数のレッグおよび複数のジャンクションは、接続された一次元トラップセグメントの周期または準周期アレイで配置される。周期アレイまたは準周期アレイは、1つまたは複数の最も小さいアレイ要素を備える。これらの1つまたは複数の最も小さいアレイ要素の個々の最も小さいアレイ要素は少なくとも1つの彎曲したレッグを備える。
【0017】
例示的実施形態では、コントローラは、原子対象閉込め装置によって閉じ込められた原子対象に対して(概ねおよび/またはほぼ)並列の操作を実施するように構成される。
【0018】
例示的実施形態では、(概ねおよび/またはほぼ)並列の操作は、1つまたは複数の最も小さいアレイ要素のうちの第1の最も小さいアレイ要素の中で実施される第1の操作、および1つまたは複数の最も小さいアレイ要素のうちの第2の最も小さいアレイ要素の中で実施される第2の操作を含み、第1の操作および第2の操作は、同じビーム経路に沿って伝搬する1つまたは複数のマニピュレーション信号によって実施される。
【0019】
例示的実施形態では、量子コンピュータは、コントローラによって制御されて、1つまたは複数のマニピュレーション信号を生成するように構成される1つまたは複数のマニピュレーション源をさらに備える。
【0020】
例示的実施形態では、少なくとも1つの彎曲したレッグは、第1のジャンクションに配置された第1の端部、および第2のジャンクションに配置された第2の端部を有し、少なくとも1つの彎曲したレッグの長さは、第1のジャンクションと第2のジャンクションの間の直線距離より長い。
【0021】
例示的実施形態では、複数のレッグの個々のレッグは彎曲したレッグである。
【0022】
例示的実施形態では、1つまたは複数の最も小さいアレイ要素の個々の最も小さいアレイ要素は少なくとも1つのまっすぐなレッグを備える。
【0023】
例示的実施形態では、アレイは、(i)複数のレッグのうちの第1の点におけるレッグに対して接線接触状態で引かれた第1の直線が、複数のレッグのうちのアレイの周期性またはアレイの周期性の分周における第1のセットの追加レッグに対して接線接触状態であり、また、(a)離散点で交わるか、あるいは(b)複数のレッグのうちの残りのレッグと交わらないかのいずれかであり、(ii)上記レッグに対して直角であり、また、複数のレッグのうちのアレイの周期性またはアレイの周期性の分周における第2のセットの追加レッグに対して直角の第2の直線が引かれ、(iii)アレイの周期性またはアレイの周期性の分周におけるレッグのグループに対して接線接触状態で第3の直線が引かれ、レッグのグループは行または列を形成し、また、第3の直線は、上記レッグに沿った他のどの点においても、レッグのグループのうちのどのレッグとも交わらない、(iv)上記レッグに対して接線接触状態で引かれた第4の直線が上記レッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではない、または(v)何らかの点におけるレッグに対して直角に引かれた第5の直線が、(a)複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではなく、また、(b)上記レッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの別のレッグの点に対しても直角ではない、のうちの少なくとも1つを満足するように構成される。
【0024】
例示的実施形態では、アレイは、(i)複数のレッグのうちの第1の点におけるレッグに対して接線接触状態で引かれた第1の直線が、複数のレッグのうちのアレイの周期性またはアレイの周期性の分周における第1のセットの追加レッグに対して接線接触状態であり、また、(a)離散点で交わるか、あるいは(b)複数のレッグのうちの残りのレッグと交わらないかのいずれかであり、(ii)上記レッグに対して直角であり、また、複数のレッグのうちのアレイの周期性またはアレイの周期性の分周における第2のセットの追加レッグに対して直角の第2の直線が引かれ、(iii)アレイの周期性またはアレイの周期性の分周におけるレッグのグループに対して接線接触状態で第3の直線が引かれ、レッグのグループは行または列を形成し、また、第3の直線は、上記レッグに沿った他のどの点においても、レッグのグループのうちのどのレッグとも交わらない、(iv)上記レッグに対して接線接触状態で引かれた第4の直線が上記レッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではない、または(v)何らかの点におけるレッグに対して直角に引かれた第5の直線が、(a)複数のレッグのうちの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではなく、また、(b)上記レッグからのアレイの所与の数の周期内における複数のレッグのうちの別のレッグの点に対しても直角ではない、のうちの少なくとも2つを満足するように構成される。
【0025】
例示的実施形態では、量子コンピュータは少なくとも1つの電圧源をさらに備え、少なくとも1つの電圧源は、コントローラによって制御されて1つまたは複数の電圧信号を生成するように構成される。
【0026】
さらに別の態様によれば、多次元原子対象閉込め装置が提供される。多次元原子対象閉込め装置は、多次元周期アレイで配置された複数のレッグを備える。複数のレッグは、周期アレイの周期性に従ってそれぞれ配置される彎曲したレッグを備える。
【0027】
以上、本発明について大まかに説明したが、以下、必ずしもスケール通りに描かれていない添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】例示的実施形態による原子対象閉込め装置の例示的アレイレイアウトを示す図である。
図2】様々な例示的実施形態による、複数の周期および準周期アレイレイアウトを示す図である。
図3A】例示的実施形態による、原子対象閉込め装置の例示的レイアウトおよび量子プロセッサのいくつかの例示的ビーム経路を示す略図である。
図3B】従来のまっすぐなレッグ原子対象閉込め装置を示す略図である。
図4】例示的実施形態による原子対象閉込め装置の一部の略図である。
図5】様々な実施形態による、多次元原子対象閉込め装置を備え、かつ、多次元原子対象閉込め装置の少なくとも1つのジャンクションを介して多原子対象クリスタルを輸送するように構成された例示的量子計算システムを示す略図である。
図6】様々な実施形態による、1つまたは複数の決定論的再整形および/または並び替え機能を実施するように構成された量子コンピュータの例示的コントローラの略図である。
図7】例示的実施形態に従って使用することができる量子コンピュータシステムの例示的計算実体の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について、すべてではないが本発明のいくつかの実施形態が示されている添付の図面を参照してより完全に説明する。実際、本発明は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書において示されている実施形態に本発明を限定するものとして解釈してはならず、そうではなく、これらの実施形態は、本開示が適用可能な正当な要求事項を満足することになるように提供されている。「または(あるいは)」(同じく「/」で表される)という用語は、本明細書においては、特記なき場合、代替および接続の両方の意味で使用されている。「例証的」および「例示的」という用語は、品質レベルの指示がない実例になるように使用されている。「一般に」および「ほぼ」という用語は、特記なき場合、工学および/または製造限界内であること、および/またはユーザ測定能力内であることを意味している。同様の数字は全体を通して同様の要素を表している。
【0030】
様々な実施形態では、多次元原子対象閉込め装置が提供される。多次元原子対象閉込め装置は複数のレッグを備えている。これらの複数のレッグの個々のレッグは、原子対象を実質的に一次元トラッピング領域にトラップするように構成された一次元閉込めセグメントである。多次元原子対象閉込め装置は、ジャンクションを介して接続された複数のレッグによって形成された周期または準周期アレイを備えている。複数のレッグは彎曲したレッグを備えている。例えば彎曲したレッグは、正弦関数または余弦関数、奇関数または偶関数、および/または任意の他の彎曲した一次元セグメントの形態を取ることができる。例示的実施形態では、複数のレッグは、彎曲したレッグではなく、1つまたは複数の彎曲していない、すなわちまっすぐなレッグをさらに備えている。例示的実施形態では、複数のレッグの個々のレッグは彎曲したレッグである。例えば様々な実施形態では、周期または準周期アレイは、1つまたは複数の最も小さいアレイ要素から形成され、個々の最も小さいアレイ要素は少なくとも1つの彎曲したレッグを備えている。
【0031】
様々な実施形態は、多次元原子対象閉込め装置を備えたシステムを提供する。例えば様々な実施形態は、ジャンクションによって接続されたレッグの周期または準周期アレイを備えた多次元原子対象閉込め装置を備えた量子プロセッサまたは量子コンピュータを提供し、これらのレッグのうちの少なくともいくつかは彎曲している。このような実施形態では、量子プロセッサまたは量子コンピュータのキュービット(例えば量子ビット)は、多次元原子対象閉込め装置内に閉じ込められた原子対象である。原子対象は、様々な実施形態ではイオン、原子、イオン属またはクリスタル、および/または等々である。様々な実施形態では、トラッピングおよび/または輸送(TT)電極マニピュレーション信号の共有セットをレッグ全体にわたって同様のタイプのTT電極間で共有することができるようにするためには、同じ幾何構造を有するレッグの周期アレイが有用であり、それにより信号の総数を少なくし、また、制御の複雑性を緩和することができる。さらに、様々な実施形態では、システムによる並列処理の実施を可能にするために、多原子対象閉込め装置のレッグは彎曲している。例えばシステムは、量子回路の実行時間を短くし、それにより量子プロセッサのキュービット(例えば量子ビット)の可干渉時間内により深い量子回路を実現することができるよう、並列操作を実施するように構成された量子プロセッサであってもよい。
【0032】
大規模量子コンピュータは、化学、材料科学および生物学の分野などにおける今日の技術では、今のところ手に負えない問題を解決することが期待されている。このような問題を解決することは、深い量子回路を使用して実現される量子アルゴリズムを使用した計算を必然的に伴うことになる。これらの深い量子回路を実施することは、量子プロセッサが十分な数のキュービットを利用することができること、また、深い量子回路の操作(例えばキュービットの輸送、キュービットのクーリング、キュービットのゲーティング、等々を含む)をキュービットの可干渉時間内に実施することができることを要求することになる。キュービットの可干渉時間によって画定される時間期間内に量子プロセッサがより大量の操作(例えば深い量子回路)を実施することができるよう、様々な実施形態は、操作の(概ねおよび/またはほぼ)並列化を可能にするように構成された多次元原子対象閉込め装置を提供する。例えば様々な実施形態の多次元原子対象閉込め装置は、複数の操作を概ねおよび/またはほぼ並列に実施することができるように構成されている。様々な実施形態では、マニピュレーション信号が原子対象閉込め装置全体にわたって伝搬すると、概ねおよび/またはほぼ並列の操作が原子対象閉込め装置内の異なる点で逐次実施される。本明細書において使用されているように、操作という用語は、1つまたは複数の原子対象の量子状態がキュービットとして制御された展開(例えばクーリング、ゲーティング、シェルビング、リーディング、等々)を引き起こすよう、複数の原子対象に対するマニピュレーション信号(例えばレーザビーム、マイクロ波信号、磁界、および/または等々)の印加を意味している。様々な実施形態では、原子対象は、多次元原子対象閉込め装置内で同じく並列に輸送することができる。
【0033】
さらに、多次元原子対象閉込め装置の彎曲したレッグによれば、逐次であれ、あるいは並列であれ、複数の操作領域にアドレスするための共有マニピュレーション信号(例えばレーザビーム)を使用することができる。したがって操作を実施するために必要なマニピュレーション源の数が少なくなり、また、マニピュレーション信号引渡しシステムの複雑性が同じく緩和される。また、総レーザパワー使用量を同じく少なくすることができる(例えば必要なビーム経路がより少なくなり、ビームステアリングハードウェアが除去され、および/または等々)。さらに、多次元原子対象閉込め装置の彎曲したレッグによれば、原子対象をジャンクションを介して輸送する必要なく、原子対象を対応するビーム経路の中へ移動させることができ、あるいはビーム経路の外へ移動させることができ、したがってこのような原子対象輸送を実施するために必要な時間、および輸送された原子対象に対する後続するクーリングに必要な時間が短くなる。
【0034】
したがって様々な実施形態は、深い量子回路を実施する量子プロセッサのキュービットの可干渉時間内に非常に多くの操作を実施しなければならない深い量子回路を実施する方法に関連する技術的な問題に対する技術的解決法を提供する。例えば様々な実施形態は、様々な操作および/または原子対象輸送の並列実施を可能にし、いくつかの輸送事象の結果として必要な原子対象のクーリングを低減し、また、マニピュレーション源の数を低減し、かつ、マニピュレーション信号引渡しシステムの複雑性を緩和するように構成される原子対象閉込め装置を提供することにより、原子対象閉込め装置および量子コンピュータ、および/または原子対象閉込め装置を備えたプロセッサの分野に対する改善を提供する。
【0035】
上で言及したように、様々な実施形態は、ジャンクションを介して接続された複数のレッグによって形成された周期または準周期アレイを個々に備える多次元原子対象閉込め装置を提供し、複数のレッグは彎曲したレッグを備えている。例えば個々の最も小さいアレイ要素の少なくとも1つのレッグは、様々な実施形態では彎曲したレッグである。本明細書において使用されているように、原子対象閉込め装置の最も小さいアレイ要素は、原子対象閉込め装置のレイアウトをタイル張りするために、および/または原子対象閉込め装置のレイアウトのテセレーションを形成するために使用することができるレッグおよびジャンクションの最も小さいグループである。例示的実施形態では、原子対象閉込め装置の複数のレッグの個々のレッグは彎曲したレッグである。例示的実施形態では、原子対象閉込め装置の最も小さいアレイ要素は、まっすぐなレッグおよび/または非彎曲レッグを備えている。
【0036】
通常、原子対象閉込め装置の個々のレッグは、1つまたは複数の無線周波数レールおよび/または電極(本明細書においてはRFレールと呼ばれる)、および少なくとも1つのシーケンスまたはシリーズのトラッピングおよび/または輸送(TT)電極によって画定される。無線周波数電圧信号がRFレールに印加されると、原子対象を一次元トラッピング領域内にトラップし、および/または閉じ込めるように構成されるトラッピング電位が生成される。詳細には、無線周波数電圧信号をRFレールに印加すると疑似電位が生成される。一次元トラッピング領域は無線周波数ヌルを備えている。この無線周波数ヌルは、最も弱い疑似電位勾配の方向によって画定される一次元経路である。無線周波数ヌルに沿ったいくつかの点では、疑似電位は実質的にゼロに等しい。したがって無線周波数ヌルは安定した一次元トラッピング領域をもたらす。原子対象閉込め装置のレッグは、実質的に無線周波数ヌルによって画定される。彎曲したレッグでは、無線周波数ヌルは、原子対象閉込め装置のレッグ内にトラップされ、および/または閉じ込められた原子対象を対応するレッグの無線周波数ヌルに沿って輸送することができるよう、レッグと同じ方法で彎曲している。TT電極は、一連の電圧信号がTT電極に印加されるように構成されており、この一連の電圧信号の時間展開は(少なくとも部分的には低域通過フィルタの使用による)、RFレールに印加される無線周波数電圧信号の時間展開と比較すると遅い。例示的実施形態では、遅いという用語は、振幅が実質的に非ゼロの最も高い周波数フーリエ成分がRFレールに印加される信号の周波数より遅いことを意味している。
【0037】
図1は、本明細書において使用されている彎曲したレッグおよび/または彎曲したレッグを備えたアレイが何を意味しているかを示したものである。図1は、例示的実施形態による、アレイ205への原子対象閉込め装置のレッグ208の例示的配置を示したものである。図1に示されている例示的アレイ205は彎曲したレッグ208の周期アレイである。個々のレッグ208は、第1のジャンクション202Aの少なくとも一部に隣接する、第1のジャンクション202Aの少なくとも一部と隣り合う、および/または第1のジャンクション202Aの少なくとも一部を形成している第1の端部209Aから、第2のジャンクション202Bの少なくとも一部に隣接する、第2のジャンクション202Bの少なくとも一部と隣り合う、および/または第2のジャンクション202Bの少なくとも一部を形成している第2の端部209Bまで延在している。第1のジャンクション202Aと第2のジャンクション202Bの間の最短距離(例えば直線距離および/またはユークリッド距離)はアレイ距離lである。彎曲したレッグ208の長さはアレイ距離lより長い。例示的実施形態では、彎曲したレッグ208の長さは少なくとも1.05l、1.10l、1.15l、および/または等々である。
【0038】
図1は、線150A、150B、150C、150Dおよび150Eによって示されている彎曲したレッグ基準を有する5アレイをさらに示している。彎曲したレッグ基準を有するアレイを説明するために本明細書において使用されているように、「接線接触状態(tangent)」および「直角(perpendicular)」という用語は、原子対象閉込め装置の平面(例えば図1に示されている二次元投影の平面)における角度を意味している。
【0039】
様々な実施形態では、個々の最も小さいアレイ要素の中に少なくとも1つの彎曲したレッグを含むレッグの周期または準周期アレイは、彎曲したレッグ基準を有する5アレイのうちの少なくとも1つを満足する。例示的実施形態では、個々の最も小さいアレイ要素の中に少なくとも1つの彎曲したレッグを含むレッグの周期または準周期アレイは、彎曲したレッグ基準を有するすべての5アレイを満足する。
【0040】
彎曲したレッグ基準を有する第1のアレイは線150Aによって示されている。線150Aは、何らかの点における少なくとも1つのレッグ208に対して接線接触状態であり、また、原子対象閉込め装置の周期性(または何らかの分周周期性)におけるアレイの追加レッグに対して同じく接線接触状態であり、かつ、離散点でのみアレイの他のレッグと交わる(または全く交わらない)直線である。線150Aに沿った円は、線150Aがそれぞれのレッグ208に対して接線接触状態である領域を示している。
【0041】
彎曲したレッグ基準を有する第2のアレイは線150Bによって示されている。線150Bは、少なくとも1つのレッグに対して直角であり、また、アレイの何らかの分周周期性における追加レッグに対して同じく直角である直線である。
【0042】
彎曲したレッグ基準を有する第3のアレイは線150Cによって示されている。線150Cは、アレイの周期性におけるレッグのうちのいくつかに対して接線接触状態であり、および/またはアレイの列または行に沿ったアレイの何らかの分周周期性におけるレッグのうちのいくつかに対して接線接触状態であるが、これらのレッグに沿った何らかのアウトポイントにおけるこれらの同じレッグとは交わらない直線である。
【0043】
彎曲したレッグ基準を有する第4のアレイは線150Dによって示されている。線150Dは、何らかの点におけるレッグに対して接線接触状態であり、また、アレイの所与の数の周期にわたって何らかのレッグの他のどの部分に対しても接線接触状態ではない直線である。例えば彎曲したレッグが周期長さに対応する周期関数によって画定される場合、線150Dは、直線が上記点において接線接触状態であるレッグ150Dからの周期長さの所与の数の倍数の距離内の何らかのレッグの他のどの部分に対しても接線接触状態ではない。
【0044】
彎曲したレッグ基準を有する第5のアレイは線150Eによって示されている。線150Eは、何らかの点におけるレッグに対して直角であり、また、(a)アレイの他のどのレッグに対しても接線接触状態ではなく、また、(b)アレイの所与の数の周期内にわたって、アレイの他の周期におけるレッグの同じ点に対して直角ではない直線である。例えば彎曲したレッグが周期長さに対応する周期関数によって画定される場合、線150Eは、直線150Eが上記点において直角であるレッグからの周期長さの所与の数の倍数の距離内のアレイの他の周期におけるレッグの同じ点に対して直角ではない。
【0045】
上で言及したように、原子対象閉込め装置は、ジャンクションを介して、周期または準周期アレイで接続された複数のレッグを備えている。本明細書において使用されているように、周期アレイは、全体としてのアレイよりも小さい最も小さいアレイ要素をそのために画定することができるアレイである。例えば最も小さいアレイ要素を使用して、タイル張りおよび/またはテセレーションによってアレイを生成することができる(例えば最も小さいアレイ要素の1回または複数回の回転および/または平行移動によって)。言い換えると、周期アレイは、アレイのトポロジおよび/またはジオメトリが定義された周期でそのために反復するアレイである。準周期アレイは、アレイの周期性が全体的なひずみによってかき乱されるアレイである。言い換えると、準周期アレイは概ね周期的であるが、その周期性が1つまたは複数の次元においてかき乱される。
【0046】
したがって様々な実施形態は、ジャンクションを介して接続され、かつ、周期または準周期アレイで配置される1つまたは複数の彎曲したレッグを含む複数のレッグを備える原子対象閉込め装置(および/またはこのような装置を備えるシステム)を提供する。彎曲したレッグおよび/または周期または準周期アレイは、そのアレイが彎曲したレッグ基準を有する1つまたは複数のアレイを満足するように構成される。例えば彎曲したレッグおよび/または周期または準周期アレイは、原子対象閉込め装置を使用して、原子対象閉込め装置によって閉じ込められた原子対象に対して周期操作を実施し、および/またはこれらの原子対象を輸送することができるように構成することができる。
【0047】
図2は、様々な例示的実施形態による、原子対象閉込め装置のレッグを配置することができる複数の可能周期または準周期アレイ205(例えば205A~L)を示したものである。最も小さいアレイ要素の中に少なくとも1つの彎曲したレッグを含み、および/または彎曲したレッグ基準を有するアレイのうちの少なくとも1つを満足する様々な他のアレイ205を様々な他の実施形態に使用することができる。水平方向および垂直方向、および/または行および列などの用語の使用は、これらのアレイが対応する図の中で示されている様子を意味していることを理解されたい。アレイは、トラップ法線(例えばトラップの表面に対する法線であり、この法線は図3Aに示されているようにz方向である)の周りに任意の角度だけ回転させることができることを理解されたい。
【0048】
第1のアレイ205Aは正方形のアレイであり、個々のレッグは周期奇関数または偶関数の1周期である。例えばジャンクションは周期奇関数または偶関数の分周および/または周期に配置されている。例えば第1のアレイ205Aは、それぞれが正弦関数の1周期であるレッグの行、およびそれぞれが正弦関数の1周期であるレッグの列(例えばこれらのレッグの行に対して90度回転している)を備えている。第1のアレイ205Aの最も小さいアレイ要素は、2つのレッグ208の接続されたグループによって形成されており、これらの2つのレッグ208はジャンクション202によって接続されている。
【0049】
例えば例示的実施形態では、原子対象閉込め装置200は複数のレッグ208を備えている。これらの複数のレッグの個々のレッグは、正弦関数(x=[0,2π)に対するsin(x))の1周期によって実質的に記述される彎曲したレッグである。これらの複数のレッグは、4方向ジャンクションを備えた第1のアレイ205Aで配置されており、ジャンクション202で終わっているレッグ208は、そのジャンクションの少なくとも1つの他のレッグに対して実質的に直角である。言い換えると、第1のアレイ205Aは、実質的に直角の行および列で配置されているレッグを接続するジャンクション202を備えている。原子対象閉込め装置のこの例示的実施形態は、図1に示されている、彎曲したレッグ基準を有するアレイのうちのすべての5つを満足している。
【0050】
第2のアレイ205Bは交互ひずみアレイであり、個々のレッグは、周期奇関数または偶関数の1/2周期であり、交互行および/または列が反転されている。例えば個々の行および個々の列は周期関数(例えば周期奇関数または偶関数)であり、ジャンクションは周期関数の個々の1/2周期に配置されている。例えば行290Aは、正弦関数の個々の1/2周期であるレッグを備えており、ジャンクションは周期奇関数または偶関数(ここでは、示されているように正弦関数である)の1/2周期に配置されている。行290Aに隣接し、および/または隣り合う行290Bは、行290Aに対して反転されている(例えば水平方向の軸/線に対して裏返しにされている)。行290Cであって、行290Bが行290Aと290Cの間に配置された唯一の行であるように行290Bに隣接し、および/または隣り合う行290Cは、行290Bに対して反転されており(例えば水平方向の軸/線の周りに裏返しにされている)、実質的に行290Aと同じである。同様に、列292Aは、正弦関数の個々の1/2周期であるレッグを備えており、ジャンクションは周期奇関数または偶関数(ここでは、示されているように正弦関数である)の1/2周期に配置されている。列292Aに隣接し、および/または隣り合う列292Bは、列292Aに対して反転されている(例えば垂直方向の軸/線に対して裏返しにされている)。列292Cであって、列292Bが列292Aと292Cの間に配置された唯一の列であるように列292Bに隣接し、および/または隣り合う列292Cは、列292Bに対して反転されており(例えば垂直方向の軸/線の周りに裏返しにされている)、実質的に列292Aと同じである。第2のアレイ205Bの最も小さいアレイ要素は、行290A、290B、290Cが列292A、292B、292Cと交差することによって形成された9個のジャンクションを介して接続されている12個のレッグの接続されたグループによって形成されている。
【0051】
第3のアレイ205Cおよび第4のアレイ205Dは、彎曲したレッグとまっすぐなレッグの両方を含むアレイの例である。示されているように、第3のアレイ205Cおよび第4のアレイ205Dの水平方向のレッグは、トラップ法線(例えばトラップの表面に対する法線であり、この法線は図3Aに示されているようにz方向である)の周りに任意の角度で回転した周期関数である。第3のアレイ205Cおよび第4のアレイ205Dの垂直方向のレッグはまっすぐなレッグであり、ジャンクションは関数の周期性で配置されている。ジャンクションは、垂直方向のレッグに沿って任意の所望の間隔で配置することができる。言い換えると、垂直方向のレッグは、意図された用途に適した任意の所望の長さを有することができる。第3のアレイ205Cは、回転していない関数cos(x)+cos(2x)によって記述される水平方向のレッグを備えており、また、水平方向のレッグを記述している関数の周期性と一致する長さを有する垂直方向のレッグを備えている。さらに、アレイ205Dは、トラップ法線の周りに16度回転した関数cos(x)によって記述される水平方向のレッグを備えており、また、水平方向のレッグを記述している関数の周期性と一致する長さを有する垂直方向のレッグを備えている。第3のアレイ205Cまたは第4のアレイ205Dの最も小さいアレイ要素は、ジャンクションによって接続された、2つの接続されたレッグによって形成されている。
【0052】
第5のアレイ205Eおよび第6のアレイ205Fは奇関数アレイの例である。レッグは、対応するジャンクションにおけるトラップ法線の周りに任意の角度だけ回転した任意の奇周期関数または偶周期関数によって記述される。レッグは、レッグを記述している奇関数または偶関数の周期性に対応する長さを有している。アレイは、水平方向の軸または線と交わる交差軸線を反射することによって形成されている。例えば第5のアレイ205Eのレッグは、トラップ法線の周りに45度回転したsin(x)によって記述される。第5のアレイ205Eまたは第6のアレイ205Fの最も小さいアレイ要素は、2つのジャンクションによって接続された、4つの接続されたレッグによって形成されている。
【0053】
第7のアレイ205Gは異方性交互ひずみアレイである。水平方向のレッグは、トラップ法線の周りに任意の角度だけ回転した任意の周期関数である。水平方向のレッグは、それぞれ、水平方向のレッグを記述する周期関数の周期性に対応する長さを有している。垂直方向のレッグは、意図された用途に適した任意の所望の長さを有する直線である。例えばジャンクションは、垂直方向のレッグに沿って任意の所望の間隔で配置することができる。隣接する、隣り合う、および/または交互する水平方向のレッグの行は反転されている(例えば水平方向の軸または線の周りに裏返しにされている)。示されている第7のアレイは、トラップ法線の周りに回転していないcos(x)によって記述される水平方向のレッグを備えており、また、水平方向のレッグを記述している関数の周期と一致する長さを有する垂直方向のレッグを備えている。
【0054】
第8のアレイ205Hは星形の交差アレイであり、個々のレッグは周期奇関数または偶関数の1/2周期である。例えば個々の行および個々の列は周期関数(例えば周期奇関数または偶関数)であり、ジャンクションは周期関数の個々の1/2周期に配置されている。第2のアレイ205Bと同様、隣接する行/列は互いに対して反転されている(例えば水平方向/垂直方向の軸または線の周りに裏返しにされている)。同じく第2のアレイ205Bと同様、第8のアレイ205Hの最も小さいアレイ要素は、3つの隣接する行が3つの隣接する列と交差することによって形成された4つのジャンクションを介して接続されている8つのレッグの接続されたグループによって形成されている。
【0055】
第9のアレイ205I、第10のアレイ205Jおよび第11のアレイ205Kは周期アレイを示しており、ジャンクションは3つのレッグを合体させることによって形成されている。第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8のアレイ205A~Hは、それぞれ周期アレイを示しており、ジャンクションは4つのレッグを合体させることによって形成されている。
【0056】
例えば第9のアレイ205Iの場合、最も小さいアレイ要素は、180度回転対称を有する不規則六角形から構成されている。六角形の1つまたは複数の辺は、結果として得られるアレイが彎曲したレッグを備えるよう、彎曲関数に置き換えられている。
【0057】
別の例では、第10のアレイ205Jの場合、最も小さいアレイ要素は正六角形から構成されており、個々のレッグは同じ奇関数または偶関数に置き換えられている(関数は、レッグの中心の周りに奇関数または偶関数である)。例えば正六角形は、六角形の中心点の周りに60度回転対称を有している。示されている実施形態では、正六角形の辺は、正弦関数によって記述される彎曲したレッグに置き換えられており、周期は六角形の辺の長さと一致している。
【0058】
第11のアレイ205Kの場合、最も小さいアレイ要素は、x軸とy軸の両方にわたって折畳み対称を有する六角形から構成されており、垂直方向のレッグはまっすぐであり、また、他のレッグは、奇関数または偶関数によって記述される彎曲したレッグである。これは第5のアレイ205Eに類似しているが、個々の4方向ジャンクションが短いまっすぐなレッグによって接続された一対の3方向ジャンクションに置き換えられている。3方向、4方向および/または5方向以上のジャンクションを有する様々な他の八角形、六角形、正方形および/または他の格子を彎曲したレッグと適合させて、彎曲したレッグを有する周期アレイを提供することができることを理解されたい。
【0059】
第12のアレイ205Lは、4方向ジャンクションを有する準周期アレイである。第12のアレイ205Lでは、準周期アレイを提供するために、アレイの周期性が全体的なひずみによって二次元でかき乱されている。
【0060】
図3Aは、原子対象閉込め装置200の例示的アレイ205を示したものである。図に示されている、y方向に引かれたビーム経路220は、示されている実施形態では、ビーム(例えばレーザビームおよび/または他のマニピュレーション信号)が原子対象閉込め装置200のより狭い寸法を横切って伝搬することができる様子を示している。様々な実施形態では、ビーム経路は、マニピュレーション信号が依然として良好に平行化されている間に(例えばマニピュレーション信号のビーム断面の半値全幅がせいぜい特定の幅である)、ビーム経路に沿って伝搬するマニピュレーション信号が原子対象閉込め装置を横切るよう、原子対象閉込め装置のより狭い寸法を実質的に横切って(またはいくつかの実例では対角線に沿って)画定されている。ぬりつぶされたドットは、アレイ205内における位置であって、原子対象がその位置に配置されると、ビーム経路220に沿って伝搬するビームが原子対象のその位置(位置210)における対応するレッグの無線周波数ヌルに対して実質的に平行に原子対象に入射することになり、あるいは原子対象のその位置(位置212)における対応するレッグの無線周波数ヌルに対して実質的に直角に原子対象に入射することになる位置を示している。したがってアレイ205およびビーム経路220は、単一のマニピュレーションビームが複数の原子対象に同時に入射することができるように構成されている。さらに、その単一のマニピュレーションビームは、それぞれの原子対象の位置におけるそれぞれのレッグの無線周波数ヌルに対して実施的に平行に、また、無線周波数ヌルに対して実施的に直角に、同時に原子対象に入射することができる。原子対象閉込め装置200のこの特徴により、例えば原子対象閉込め装置200を備えた量子プロセッサによる多くの並列操作を実施することができる。この特徴によれば、さらに、単一のマニピュレーション源を使用して複数の操作領域および/または原子対象にアドレスすることができ、それによりマニピュレーション源電力および/またはマニピュレーション源の数を低減することができ、および/またはマニピュレーション源および/またはマニピュレーション信号引渡しシステムの複雑性を緩和することができる。さらに、個々のレッグは、ジャンクションを介して輸送する必要なく、原子対象をビーム経路220の経路から運び出すことができる、ぬりつぶされていないドット214などの位置を備えている。これにより、ジャンクション輸送および後続するクーリングの時宜にかなった実施を必要とすることなく、原子対象を並列操作から除去することができる。
【0061】
図3Aは、原子対象閉込め装置200が概ねおよび/またはほぼ並列の操作を実施することができる様子をさらに示している。例えばビーム経路220Aに沿って、位置250A、250Bに原子対象を配置することができる。位置250Bに配置された原子対象は、マニピュレーション信号が印加されて、位置250Aに配置された原子対象に対する並列操作を実施する際に、位置250Bの近傍に配置された原子対象の運動状態および/または内部状態がかき乱されないよう、ビーム経路220Aの外へ移動させることができる(ジャンクション202を横切る必要なく)。次に、原子対象を元の位置へ戻すことができ、マニピュレーション信号が印加されて、位置250Bに配置された原子対象に対する並列操作を実施する際に、位置250Aの近傍に配置された原子対象の運動状態および/または内部状態がかき乱されないよう、位置250Aに配置された原子対象をビーム経路220Aの外へ移動させることができる(ジャンクション202を横切る必要なく)。
【0062】
したがって様々な実施形態によれば、資源を最少化することができ(例えばゲートするために必要なビームの数を最少化することができ)、その一方で操作の完全な並列化を許容しない局所トラップおよびビーム特性の変化(例えばレーザビームの発散およびクリッピング、トラップ電位の変化、等々)を補償することができる。例えば原子対象に入射する総マニピュレーション信号電束(J/mm)に比例する原子対象の内部状態を変化させるゲートを取り上げる。マニピュレーション信号がすべての4つの原子対象(位置250A、250Bに配置されている原子対象)に入射すると、マニピュレーション信号(例えばレーザビーム)の発散は、個々の原子対象が異なる光強度(W/mm)に遭遇し、したがってゲート操作がわずかに異なったものになることを意味する。この効果は、個々の原子対象に対するゲートを逐次実施し、個々のレーザパルスの長さを調整して、個々のマニピュレーション信号に対して等しい総電束を達成することによって補償することができる。マニピュレーション信号のビームウエストが生じ、および/またはマニピュレーション信号のビームウエストが厳密に位置250A同士の間の中間点、および/または位置250B同士の間の中間点に配置される場合、部分的に並列の実例が可能である(位置250A、250Bを使用して上で説明したように)。この場合、位置250Aに配置された原子対象は同じ光強度に遭遇する。また、位置250Bに配置された原子対象は、位置250Aに配置された原子対象とは同じではないが、同じく同じ光強度に遭遇する。
【0063】
図3Bは、すべてまっすぐであり(例えば彎曲していない、および/またはアレイ距離lに等しい長さを有する)、かつ、ジャンクション2で結合された複数のレッグ8を備えた従来のまっすぐなレッグアレイ5を示したものである。ビーム線20は、従来のまっすぐなレッグアレイ5における、ビーム経路20が位置10における無線周波数ヌルに対して実質的に平行であるように位置10に入射するようにビーム経路が意図されている場合に、一連のレッグ8全体がビーム経路20によって照明される様子を示している。ビーム経路20によって照明される位置10と同じ一連のレッグ8に沿っているが、原子対象がビーム経路20によって照明されてはならない位置6に原子対象が配置される場合(例えばその位置に対して実施される、ビーム経路20によって実施される操作を有していない)、ジャンクション2を介して原子対象を位置14へ輸送しなければならない。ジャンクション2を介した原子対象の輸送は、同様の長さのレッグに沿って原子対象を輸送するプロセスよりも遅いプロセスであり、また、場合によっては輸送が生じた後の原子対象の有意なクーリングが必要である。したがってジャンクション2を介した原子対象の輸送を最少化することが望ましい。さらに、ビーム経路20が位置12における無線周波数ヌルに対して実質的に直角になるように位置12を照明することが望ましい場合、異なるビーム経路20を使用しなければならない。言い換えると、単一のビーム経路20では、ビーム経路20が無線周波数ヌルに対して実質的に平行である位置10、およびビーム経路20が無線周波数ヌルに対して実質的に直角である位置12の両方を照明することはできない。したがって追加光学ラインが必要である。図3Aに示されている彎曲したレッグを備えた周期アレイの例示的実施形態と、図3Bに示されているまっすぐなレッグを備えた従来の周期アレイを比較すると分かるように、原子対象閉込め装置200の様々な実施形態は、従来の装置に優る有意な技術的利点を提供する。
【0064】
図4は、例示的原子対象閉込め装置200の一部の略上面図を示したものである。この例示的原子対象閉込め装置200は、周期アレイ205で配置され、かつ、ジャンクション202を介して接続されている彎曲したレッグを含む複数のレッグ208を備えている。例示的実施形態では、原子対象閉込め装置200は、複数の原子対象(例えばイオン、イオンクリスタル、および/または等々)を中にトラップするように構成された多次元(例えば二次元または三次元)表面イオントラップ、表面Paulトラップ、および/または等々である。原子対象閉込め装置200の個々のレッグ208は、2つのそれぞれの端部209A、209Bの間のそれぞれの長さにわたって延在している。通常(例えば場合によっては原子対象閉込め装置200の縁に沿って)、個々のレッグ208の個々の端部209は、ジャンクション202によって少なくとも1つの他のレッグ208に接続されている。通常、原子対象閉込め装置200のレッグ208は、原子対象閉込め装置200の一次元セグメントおよび/または部分である。詳細には、原子対象閉込め装置200のレッグ208は、原子対象を閉じ込めることができる実質的に一次元の閉込め領域を画定している。通常、ジャンクション202は、2つ以上のレッグ208を合体させ、結合し、および/または当接させることによって形成される。2つ以上のレッグのうちの少なくとも2つのレッグ208は、少なくともジャンクションの近傍に互いに横方向の一次元閉込め領域を画定する。例えばレッグ208Aは、少なくともジャンクション202Aの近傍でレッグ208Bおよび208Dに対して横方向である。
【0065】
様々な実施形態では、原子対象閉込め装置200は、彎曲したレッグを含み、また、周期または準周期アレイで配置されている複数のレッグ208を備えている。2つの隣接するジャンクション202の間の最短距離(例えば直線距離および/またはユークリッド距離)(例えば2つの隣接するジャンクションの間の最短経路は他のどのジャンクションも通過せず、および/または他のどのジャンクションも含まない)はアレイ距離lである。2つの隣接するジャンクション202(例えば2つの隣接するジャンクションのうちの一方に第1の端部209Aを有し、また、これらの2つの隣接するジャンクションのうちのもう一方に第2の端部209Bを有する)の間に配置されたレッグ208は、そのレッグに沿った経路長がアレイ距離lより長い場合、彎曲したレッグである。例示的実施形態では、彎曲したレッグ208の長さは少なくとも1.05l、1.10l、1.15l、および/または等々である。
【0066】
様々な実施形態では、原子対象閉込め装置200は、彎曲したレッグを含み、また、上で説明したようにアレイ205が彎曲したレッグ基準を有する少なくとも1つのアレイを満足するように周期または準周期アレイで配置されている複数のレッグ208を備えている。
【0067】
例示的実施形態では、原子対象閉込め装置200は、原子対象閉込め装置チップの部品として製造され、および/または原子対象閉込め装置パッケージの部品として製造されている。例示的実施形態では、原子対象閉込め装置200は、多数の無線周波数(RF)レール230によって少なくとも部分的に画定されている。様々な実施形態では、原子対象閉込め装置200は、トラッピングおよび/または輸送(TT)電極235の多数のシーケンスによって少なくとも部分的に画定されている。様々な実施形態では、様々なTT電極幾何構造、配置、レイアウト、および/または等々を使用することができる。示されているTT電極235幾何構造、配置、レイアウト、および/または等々は例証目的で提供されており、様々な実施形態では、原子対象閉込め装置200の意図された用途に基づいて決定され、および/または構成されることになる。様々な実施形態では、原子対象閉込め装置200の上部表面は平坦化されたトポロジを有している。例えば多数のRFレールの個々のRFレール230の上部表面、およびTT電極の多数のシーケンスの個々のTT電極235の上部表面は実質的に共面であってもよい。例示的実施形態では、原子対象閉込め装置200の表面は平らではなく、また、原子対象閉込め装置200の「表面」の上方の原子対象の高さが測定される平面が画定されている。
【0068】
様々な実施形態では、原子対象閉込め装置200のレッグ208の各々は、多数の(例えば1つまたは複数の)RFレール230を備えており、および/または多数の(例えば1つまたは複数の)RFレール230によって少なくとも部分的に画定されている。例示的実施形態では、原子対象閉込め装置200のレッグ208は、実質的に平行の縦方向の軸を使用して形成されている。例えばレッグ208が2つ以上のRFレール230によって画定される場合、これらの2つ以上のRFレール230は、レッグ208の長さに沿って互いに実質的に平行に延在する。本明細書において使用されているように、実質的に平行とは、互いに実質的に平行であるRFレール230は互いに交わらない、すなわち交差しないことを示している。例えばRFレール230は、長方形の幾何構造で開始し、次に、キンク、ベンド、および/または等々を加えることによってこの幾何構造をかき乱すことによって形成することができる。
【0069】
様々な実施形態では、縦方向のギャップ231によって2つの隣接するRFレール230を互いに分離する(例えば絶縁する)ことができる。例えば縦方向のギャップは、原子対象閉込め装置200の閉込め通路すなわち領域を画定することができ(一次元または二次元で)、原子対象閉込め装置内の様々な場所で、この通路すなわち領域に1つまたは複数の原子対象を閉じ込め、および/またはトラップすることができる。様々な実施形態では、このように画定された縦方向のギャップは、対応するレッグ208の長さに沿って、隣接するRFレール230に対して実質的に平行に延在することができる。例示的実施形態では、縦方向のギャップは、絶縁材料(例えば誘電材料)で少なくとも部分的に充填することができる。様々な実施形態では、誘電材料は、二酸化ケイ素(例えば熱酸化によって形成された)および/または他の誘電および/または絶縁材料であってもよい。様々な実施形態では、縦方向のギャップは、ほぼ40μmないし500μmの幅(例えば隣接するRFレール230間の距離)を有している。様々な実施形態では、縦方向のギャップ内に1つまたは複数のシーケンスのTT電極236.2が配置および/または形成されている。
【0070】
様々な実施形態では、原子対象閉込め装置200(および/またはレッグ208および/またはそれらのジャンクション202)は、それぞれ複数のTT電極235を備えた多数のシーケンスのTT電極236(例えば236.1、236.2、236.3)によって少なくとも部分的に画定することができる。例示的実施形態では、レッグ208と関連付けられ、および/またはレッグ208を少なくとも部分的に画定する個々のシーケンスのTT電極236が形成され、レッグ208の長さの少なくとも一部に沿ってそれぞれのレッグ208を少なくとも部分的に画定している1つまたは複数のRFレール230に対して実質的に平行に延在している。例えば3つのシーケンスのTT電極236.1、236.2および236.3は、図4に示されているレッグ208Cの部分を少なくとも部分的に画定している。3つのシーケンスのTT電極236.1、236.2および236.3の各々は複数のTT電極235を備えている。様々な実施形態では、個々のレッグ208を少なくとも部分的に画定している多数のシーケンスのTT電極236は、2つ、3つ、4つおよび/または他の数のシーケンスのTT電極を備えている。例示的実施形態では、原子対象閉込め装置200は複数の数のシーケンスのTT電極236を備えており、個々の数のシーケンスのTT電極は原子対象閉込め装置200のレッグ208および/またはジャンクション202を少なくとも部分的に画定している。いくつかの実施形態では、TT電極235の各々は、RFレール230の上部表面と実質的に共面である実質的に共面の上部表面を使用して形成されている。
【0071】
例示的実施形態では、隣り合う、および/または隣接するTT電極235の間に横方向のギャップを存在させることができる。例示的実施形態では、この横方向のギャップは空空間であってもよく、および/または隣り合う、および/または隣接する電極235間の電気連絡を防止するために誘電材料で少なくとも部分的に充填することができる。例示的実施形態では、隣り合う、および/または隣接する電極235間の横方向のギャップは、ほぼ1~10μの範囲であってもよい。
【0072】
例示的実施形態では、縦方向のギャップが一連のTT電極236と、隣り合う、および/または隣接するRFレール230との間に存在している。例示的実施形態では、この縦方向のギャップは、上記一連のTT電極236のTT電極235とRFレール230の間の電気連絡を防止するために、誘電材料および/または絶縁材料で少なくとも部分的に充填することができる。例示的実施形態では、隣り合う、および/または隣接する電極間の縦方向のギャップは、ほぼ1~10μの範囲であってもよい。
【0073】
例示的実施形態では、第1の一連のTT電極236.1と第3の一連のTT電極236.3の間に多数の(例えば一対の)RFレール230を形成し、RFレール230同士の間の縦方向の通路201に沿って第2の一連のTT電極236.2を延在させることができる。例えば特定のレッグ208の個々の一連のTT電極236は、その特定のレッグ208の長さの少なくとも一部に沿って、対応するRFレール230に対して実質的に平行の方向に延在することができる。様々な実施形態では、TT電極235の上部表面は、RFレール230の上部表面と実質的に共面である。
【0074】
様々な実施形態では、周期電圧信号(例えば無線周波数周期性を有する電圧信号)をRFレール230に印加して、原子対象閉込め装置200内に閉じ込められ、および/またはトラップされた原子対象を維持するように作用する電界および/または磁界を生成することができる。例えば少なくとも部分的に特定のレッグ208を画定するRFレール230は、原子対象を原子対象閉込め装置200の対応する一次元セグメントおよび/または部分に対して横方向にその特定のレッグ208内に閉じ込め、および/またはトラップする電気疑似電位を生成する。例えばRFレール230は、RFレール230に周期電圧信号が印加されると、図4にダッシュ線で示されている一次元セグメントに沿って原子対象を閉じ込め、および/またはトラップする疑似電位を生成するように構成されている。例えばレッグ208に沿った無線周波数ヌルは、そのレッグに沿って輸送経路を画定し、この輸送経路に沿って、レッグ208の長さに沿って原子対象を輸送することができる。
【0075】
様々な実施形態では、TT電極235は、レッグ208に対する輸送経路に沿って(例えばRFヌルに沿って)原子対象が輸送されることになる時間依存電位界をTT電極235が生成するよう、制御電圧信号がTT電極235に印加されるように構成されている。例えばいくつかの一連のTT電極236の特定のレッグ208のTT電極235に印加される制御電圧信号によって少なくとも部分的に生成される電界および/または磁界は、少なくとも1つの原子対象を第2の一連のTT電極(例えばレッグ208Cに対する236.2)の上部表面の上方のポテンシャル井戸、および/またはそれぞれのレッグ208Cの縦方向のギャップ201の中にトラップすることができる。さらに、電極235に印加される制御電圧信号は、原子対象がレッグ208C内に配置されると、第2の一連のTT電極236.2の上部表面の上方のポテンシャル井戸、および/または縦方向のギャップ201内に閉じ込められ、および/またはトラップされた原子対象が対応するレッグ208Cに対するRFヌルを実質的に追従し、および/またはこのRFヌルに沿う軌道を横切らせることができる。
【0076】
様々な実施形態では、TT電極235も同じくジャンクション202内に配置されている。様々な実施形態では、ジャンクション202の近傍に配置されたTT電極235は、制御電圧信号がジャンクション202の近傍のTT電極235に印加されると、ジャンクション202を通る輸送経路に沿って原子対象を輸送させるように構成された電界および/または磁界をTT電極235が生成するように構成されている。
【0077】
様々な実施形態では、TT電極235に印加される制御電圧信号およびRFレール230に印加される周期電圧信号は、リード線を介して接続されている1つまたは複数のデバイス(例えば図5に示されているコントローラ30、および/または等々)によって制御されている。例えばコントローラ30は、電圧源50および/または他の電圧ドライバを制御して、原子対象閉込め装置200によってトラップされ、および/または閉じ込められた原子対象を規定された輸送経路に沿って輸送させ、および/または規定された位置に保持させる時間依存電位(例えば時間で展開する電位)を生成するよう、これらの電圧源50および/またはドライバに制御電圧信号をTT電極235に印加させることができる。
【0078】
少なくとも1つの原子対象および/または多原子対象クリスタルの原子対象に対する電荷、および/または電界および/または磁界(例えばRFレール230に周期電圧信号を印加し、また、TT電極235に制御電圧信号を印加することによって生成される)を組み合わせた形状および/または大きさなどの要因に応じて、原子対象閉込め装置200の上部表面(例えばTT電極235およびRFレール230の共面上部表面)の上方の特定の距離(例えばほぼ20μmないしほぼ200μm)で原子対象を安定化させることができる。所望の軌道に沿った原子対象の通過の制御にさらに寄与するために、様々な実施形態では、124ケルビン未満(例えば100ケルビン未満、50ケルビン未満、10ケルビン未満、5ケルビン未満、および/または等々)の温度に原子対象閉込め装置を冷却することができる極低温および/または真空チャンバ内で原子対象閉込め装置200を動作させることができる。
【0079】
技術的利点
様々な実施形態は、原子対象閉込め装置における(概ねおよび/またはほぼ)並列の操作の実施を可能にする技術的な問題に対する技術的解決法を提供する。例えば原子対象閉込め装置を量子プロセッサの部品として使用し、および原子対象閉込め装置によってトラップされ、および/または閉じ込められた原子対象を量子プロセッサのキュービットとして使用する、などの様々な用途においては、(概ねおよび/またはほぼ)並列の操作を実施することができると、量子プロセッサは、より深い量子回路およびより複雑な量子計算を実施することができる。
【0080】
例えば同じ幾何構造を有する複数のレッグを含むレッグの周期アレイにより、異なるレッグの対応するTT電極間で共有される小さい共通のセットのTT電極制御信号を使用して、アレイ全体にわたる原子対象のグローバルな輸送を可能にすることができ、レッグ内の同じタイプの個々のTT電極は、他のレッグの同じタイプの他のTT電極と同じ信号によってマニピュレートされる。それにより、TT電極マニピュレーション信号、原子対象閉込め装置を備えたチップ上のピン数、真空貫通(例えばワイヤを極低温および/または真空チャンバの内部へ貫通させることができる)を実質的に低減することができ、また、原子対象閉込め装置システムの制御の複雑性を実質的に軽減することができる。
【0081】
例えば原子対象閉込め装置の周期または準周期アレイの彎曲したレッグにより、単一のビーム経路に沿って放出されるマニピュレーション信号は、入射するマニピュレーション信号がそのビーム経路に沿った同じ位置における無線周波数ヌルに対して実質的に平行に伝搬し、また、そのビーム経路に沿った他の位置における無線周波数ヌルに対して実質的に直角に伝搬する複数の原子対象に対する操作を実施することができる。したがって原子対象閉込め装置の彎曲したレッグは、様々な操作を実施するために必要なマニピュレーション源(例えばレーザ)の数を少なくする。さらに、原子対象がビーム経路に沿って配置され、しかしながらそのビーム経路に沿って伝搬するマニピュレーション信号がその原子対象に入射しないことが望ましい場合、ジャンクションを通してその原子対象を輸送する必要なく、その原子対象をビーム経路外へ輸送することができ、これは、このような輸送操作、および輸送された原子対象の後続するクーリングを実施するために必要な時間を短くする。
【0082】
様々な実施形態によって提供される追加技術利点には、共有マニピュレーション信号ビーム経路に沿った操作ゾーンを有することを含むことができ、必要なマニピュレーション信号をより少なくすることができ、電力、コストを低減し、また、複雑性を軽減することができる。並列操作のための共有マニピュレーション信号の使用については既に説明されている。並列操作に加えて、低減されたレーザパワー、コストおよび軽減された複雑性は、並列操作が実施されない実施形態においても存在する追加利点である。様々な実施形態によって提供される別の技術利点は、接線接触状態作用領域および直角作用領域(例えばゲート操作を実施することができる領域)の両方を同じビーム経路に沿って同時に有する原子対象閉込め装置によれば、デバイスを再構成して、軸方向のゲートまたは半径方向のゲート、および/または必要に応じて両方を使用することができることを含む。軸方向のゲートは、TT電極に利用することができる電圧源の雑音がRFレール源に対して小さいため、場合によっては様々なシナリオに対して好ましい。半径方向のゲートは、RFレール源の雑音が十分に小さい場合、より高い周波数運動モードを提供し、誤差および電力要求事項を低減するため、場合によっては様々なシナリオにおいて好ましい。両方のオプションを備えた原子対象閉込め装置を有することにより、量子コンピュータを再構成して、より良好なRF源が利用可能になると、将来的に最良の操作ゾーンを使用することができ、また、このような小さい雑音のRF源を利用することができない場合、軸方向のゲートを使用することができる。
【0083】
したがって様々な実施形態は、従来の二次元原子対象閉込め装置およびこのような二次元原子対象閉込め装置を備えたシステムに優る技術利点を提供する。
【0084】
原子対象閉込め装置を備えた例示的量子コンピュータ
上で説明したように、原子対象閉込め装置200は、量子コンピュータの量子プロセッサの部品であってもよい。例えば原子対象閉込め装置200によってトラップされ、および/または閉じ込められた原子対象は、量子プロセッサのキュービットとして使用することができる。彎曲したレッグを周期または準周期アレイで含む原子対象閉込め装置200の複数のレッグの構造により、量子プロセッサによって並列操作を有効に実施することができる。図5は、例示的実施形態による、原子対象閉込め装置200(例えばイオントラップ)を備えた例示的量子コンピュータシステム100の略図を示したものである。様々な実施形態では、量子コンピュータシステム100は計算実体130および量子コンピュータ110を備えている。様々な実施形態では、量子コンピュータ110はコントローラ30および量子プロセッサ115を備えている。様々な実施形態では、量子プロセッサ115は、低温保持装置および/または真空チャンバ40の中に密閉された原子対象閉込め装置200、1つまたは複数の電圧源50、1つまたは複数のマニピュレーション源60、および/または等々を備えている。
【0085】
例示的実施形態では、1つまたは複数のマニピュレーション源60は、1つまたは複数のレーザ(例えば光レーザ、マイクロ波源、および/または等々)を備えている。様々な実施形態では、1つまたは複数のマニピュレーション源60は、原子対象閉込め装置200内の1つまたは複数の原子対象の制御された量子状態展開をマニピュレートし、および/または制御された量子状態展開をもたらすように構成されている。例えば例示的実施形態では、1つまたは複数のマニピュレーション源60は1つまたは複数のレーザを備えており、レーザは、極低温および/または真空チャンバ40内の閉込め装置に1つまたは複数のレーザビームを提供することができる。レーザビームを使用して、1つまたは複数の原子対象に対して、1つまたは複数の量子ゲートの制定、シンパシティッククーリング、および/または等々などの様々な操作(例えば並列操作)を実施することができる。様々な実施形態では、マニピュレーション源60は、コントローラ30のそれぞれのドライバコントローラ要素615(図6参照)によって制御されている。
【0086】
様々な実施形態では、量子コンピュータ110は1つまたは複数の電圧源50を備えている。例えば電圧源50は、複数のTT電圧ドライバおよび/または電圧源、および/または少なくとも1つのRFドライバおよび/または電圧源を備えることができる。電圧源50は、例示的実施形態では、原子対象閉込め装置200の対応する電位発生要素(例えばTT電極235、RFレール230)に電気結合することができる。例えば電圧源50は、周期電圧信号をRFレール230に提供し、また、制御電圧信号をTT電極235に提供するように構成されている。様々な実施形態では、電圧源50は、コントローラ30のそれぞれのドライバコントローラ要素615によって制御されている。
【0087】
様々な実施形態では、計算実体130は、ユーザが(例えば計算実体130のユーザインタフェースを介して)量子コンピュータ110に入力を提供することができ、また、量子コンピュータ110からの出力についての受け取り、ビュー、および/または同様の行為をすることができるように構成されている。計算実体130は、1つまたは複数の有線または無線ネットワーク120を介して、および/または直接有線通信および/または直接無線通信を介して量子コンピュータ110のコントローラ30と通信することができる。例示的実施形態では、計算実体130は、情報/データ、量子回路、量子計算アルゴリズム、および/または等々をコントローラ30が理解し、および/または実現することができる計算言語、実行可能命令、コマンドセット、および/または等々に翻訳し、構成し、フォーマット化し、および/または等々を実施することができる。
【0088】
様々な実施形態では、コントローラ30は、電圧源50、極低温および/または真空チャンバ40内の温度および圧力を制御する極低温システムおよび/または真空システム、マニピュレーション源60、および/または極低温および/または真空チャンバ40内の様々な環境条件(例えば温度、圧力、および/または等々)を制御する他のシステムを制御するように構成されており、および/または閉込め装置内の1つまたは複数の原子対象の量子状態の制御された展開をマニピュレートし、および/または制御された展開をもたらすように構成されている。例えばコントローラ30は、閉込め装置内の1つまたは複数の原子対象の量子状態の制御された展開をもたらして量子回路および/またはアルゴリズムを実行することができる。様々な実施形態では、閉込め装置内に閉じ込められた原子対象は量子コンピュータ110のキュービットとして使用される。例えば量子プロセッサ115は、量子プロセッサのキュービット原子対象として使用される第1の原子対象、および同じ多原子対象クリスタルのキュービット原子対象の冷却に使用するためのシンパシティッククーリング原子対象として使用される第2の原子対象を個々に含む複数の多原子対象クリスタルを含むことができる。
【0089】
例示的コントローラ
様々な実施形態では、原子対象閉込め装置は量子コンピュータ110の中に組み込まれている。様々な実施形態では、量子コンピュータ110は、量子コンピュータ110の様々な要素を制御するように構成されたコントローラ30をさらに備えている。例えばコントローラ30は、電圧源50、極低温および/または真空チャンバ40内の温度および圧力を制御する極低温システムおよび/または真空システム、マニピュレーション源60、および/または極低温および/または真空チャンバ40内の環境条件(例えば温度、湿度、圧力、および/または等々)を制御する他のシステムを制御するように構成することができ、および/または閉込め装置内の1つまたは複数の原子対象の量子状態の制御された展開をマニピュレートし、および/または制御された展開をもたらすように構成することができる。
【0090】
図6に示されているように、様々な実施形態では、コントローラ30は、処理要素および/またはデバイス605、メモリ610、ドライバコントローラ要素615、通信インタフェース620、アナログ-デジタル変換器要素625、および/または等々を含む様々なコントローラ要素を備えることができる。例えば処理要素および/またはデバイス605は、プログラマブル論理デバイス(CPLD)、マイクロプロセッサ、共処理実体、特定用途向け命令セットプロセッサ(ASIP)、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、書替え可能ゲートアレイ(FPGA)、プログラマブル論理アレイ(PLA)、ハードウェアアクセラレータ、他の処理デバイスおよび/または回路機構、および/または等々、および/またはコントローラを備えることができる。回路機構という用語は、完全なハードウェア実施形態、またはハードウェアとコンピュータプログラム製品の組合せを意味することができる。例示的実施形態では、コントローラ30の処理要素および/またはデバイス605はクロックを備えており、および/またはクロックと通信している。例えば処理要素および/またはデバイス605は、量子プロセッサ115に並列(例えば同時)操作を使用して量子回路を実施させる方法を決定し、次に、量子コンピュータの様々な態様を制御して(例えばそれぞれのドライバコントローラ要素615に命令を提供することによって)、量子プロセッサ115に並列操作を使用して量子回路を実施させるように構成されている。
【0091】
例えばメモリ610は、ハードディスク、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリ、RAM、DRAM、SRAM、FPM DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、キャッシュメモリ、レジスターメモリ、および/または等々のうちの1つまたは複数などの揮発性および/または不揮発性メモリ記憶装置などの非一時的メモリを備えることができる。様々な実施形態では、メモリ610は、量子コンピュータのキュービットに対応するキュービット記録を記憶することができ(例えばキュービット記録データ記憶装置、キュービット記録データベース、キュービット記録テーブル、および/または等々に)、また、校正テーブル、実行可能キュー、コンピュータプログラムコード(例えば1つまたは複数のコンピュータ言語、専用コントローラ言語、および/または等々で)、1つまたは複数のライブラリ、1つまたは複数の波形シリーズおよび関連するメタデータ、および/または等々を記憶することができる。例示的実施形態では、メモリ610に記憶されているコンピュータプログラムコードの少なくとも一部を実行することにより(例えば処理要素および/またはデバイス605によって)、コントローラ30は、本明細書において説明されている1つまたは複数のステップ、操作、プロセス、手順、および/または等々を実施して、原子システム内の原子対象および/または多原子対象クリスタルの位相、位置、および/または等々を追跡し、それにより1つまたは複数のマニピュレーション源、および/またはその1つまたは複数のマニピュレーション源によって生成される信号の位相を調整することになる。
【0092】
様々な実施形態では、ドライバコントローラ要素610は、1つまたは複数のドライバ、および/またはそれぞれ1つまたは複数のドライバを制御するように構成されたコントローラ要素を含むことができる。様々な実施形態では、ドライバコントローラ要素615はドライバおよび/またはドライバコントローラを備えることができる。例えばドライバコントローラは、1つまたは複数の対応するドライバがコントローラ30によって(例えば処理要素および/またはデバイス605によって)計画され、かつ、実行される実行可能命令、コマンド、および/または等々に従って動作されることになるように構成することができる。様々な実施形態では、ドライバコントローラ要素615により、コントローラ30はマニピュレーション源60を動作させることができる。様々な実施形態では、ドライバは、レーザドライバ、真空構成要素ドライバ、TT電極、RFレール、および/または原子対象閉込め装置のトラッピング電位を維持し、および/または制御するために使用される他の電極に印加される電流の流れおよび/または電圧を制御し、および/または1つまたは複数の原子対象の輸送をもたらすためのドライバ、極低温および/または真空システム構成要素ドライバ、および/または等々であってもよい。例えばドライバは、TTおよび/またはRF電圧ドライバ、および/または電圧および/または電気信号(例えば周期電圧信号および/または制御電圧信号)をTT電極235および/またはRFレール230に提供する電圧源50を制御し、および/または備えることができる。様々な実施形態では、コントローラ30は、原子対象閉込め装置200によってトラップされ、および/または閉じ込められた原子対象によって生成された光信号を捕獲し、検出し、測定し、および/または等々を実施するように構成された光収集システムのカメラ、MEMsカメラ、CCDカメラ、フォトダイオード、光電子増倍管、および/または等々などの1つまたは複数の光受信機構成要素に信号を通信し、および/またはこれらから信号を受け取るための手段を備えている。例えばコントローラ30は、1つまたは複数の光受信機構成要素、校正センサ、および/または等々から信号を受け取るように構成された1つまたは複数のアナログ-デジタル変換器要素625を備えることができる。
【0093】
様々な実施形態では、コントローラ30は、計算実体130とインタフェースし、および/または通信するための通信インタフェース620を備えることができる。例えばコントローラ30は、計算実体130から実行可能命令、コマンドセット、および/または等々を受け取り、また、量子コンピュータ110から(例えば光収集システムから)受け取った出力、および/または計算実体130への出力を処理した結果を提供するための通信インタフェース620を備えることができる。様々な実施形態では、計算実体130およびコントローラ30は、直接有線および/または無線接続、および/または1つまたは複数の有線および/または無線ネットワーク120を介して通信することができる。
【0094】
例示的計算実体
図7は、本発明の実施形態と共に使用することができる例示的計算実体130の略図を示したものである。様々な実施形態では、計算実体130は、ユーザが量子コンピュータ110に入力を提供し(例えば計算実体130のユーザインタフェースを介して)、かつ、量子コンピュータ110から出力を受け取り、表示し、解析し、および/または等々を実施することができるように構成されている。
【0095】
図7に示されているように、計算実体130は、アンテナ712、送信機704(例えば無線)、受信機706(例えば無線)、およびそれぞれ送信機704に信号を提供し、また、受信機706から信号を受け取る処理要素708を含むことができる。それぞれ送信機704に提供され、また、受信機706から受け取る信号は、コントローラ30、他の計算実体130、および/または等々などの様々な実体と通信するために適用することができる無線システムのエアーインタフェース規格に基づくシグナリング情報/データを含むことができる。この点に関して、計算実体130は、1つまたは複数のエアーインタフェース規格、通信プロトコル、変調タイプおよびアクセスタイプを使用して動作することができる。例えば計算実体130は、ファイバ分散データインタフェース(FDDI)、デジタル加入者回線(DSL)、イーサネット、非同期転送モード(ATM)、フレームリレー、データオーバーケーブルサービスインタフェース仕様(DOCSIS)、または任意の他の有線伝送プロトコルなどの有線データ送信プロトコルを使用して通信を受け取り、および/または提供するように構成することができる。同様に、計算実体130は、汎用パケット無線サービス(GPRS)、ユニバーサル移動遠隔通信システム(UMTS)、符号分割多重アクセス2000(CDMA2000)、CDMA2000 1X(1xRTT)、広帯域符号分割多重アクセス(WCDMA)、移動通信のための広域システム(GSM)、GSMエボリューションのための強化データ転送速度(EDGE)、時分割同期符号分割多重アクセス(TD-SCDMA)、ロングタームエボリューション(LTE)、エボルブドユニバーサルテレストリアル無線アクセスネットワーク(E-UTRAN)、エボリューション-データ最適化(EVDO)、高速パケットアクセス(HSPA)、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、Wi-Fiダイレクト、802.16(WiMAX)、超広帯域(UWB)、赤外線(IR)プロトコル、近距離場通信(NFC)プロトコル、Wibree、Bluetoothプロトコル、無線ユニバーサルシリアルバス(USB)プロトコル、および/または任意の他の無線プロトコルなどの様々なプロトコルのうちの任意のプロトコルを使用した無線外部通信ネットワークを介して通信するように構成することができる。計算実体130は、このようなプロトコルおよび規格を使用して、ボーダーゲートウェイプロトコル(BGP)、動的ホスト構成プロトコル(DHCP)、ドメイン名システム(DNS)、ファイル転送プロトコル(FTP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)、TLS/SSL/Secureを介したHTTP、インターネットメッセージアクセスプロトコル(IMAP)、ネットワーク時間プロトコル(NTP)、シンプルメール転送プロトコル(SMTP)、テルネット、トランスポートレイヤーセキュリティ(TLS)、セキュアソケットレイヤー(SSL)、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、データグラム輻輳制御プロトコル(DCCP)、ストリーム制御伝送プロトコル(SCTP)、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)、および/または等々を使用して通信することができる。
【0096】
計算実体130は、これらの通信規格およびプロトコルを介して、非構造化補足サービス情報/データ(USSD)、ショートメッセージサービス(SMS)、多重媒体メッセージ発信サービス(MMS)、二重トーン多重周波数信号発信(DTMF)および/または加入者識別モジュールダイアラー(SIMダイアラー)などの概念を使用して様々な他の実体と通信することができる。また、計算実体130は、例えば変更、アド-オンおよび更新をそのファームウェア、ソフトウェア(例えば実行可能命令、アプリケーション、プログラムモジュールを含む)およびオペレーティングシステムに同じくダウンロードすることができる。
【0097】
また、計算実体130は、1つまたは複数のユーザ入力/出力インタフェースを備えたユーザインタフェースデバイス(例えば処理要素708に結合されたディスプレイ716および/またはスピーカ/スピーカドライバ、および処理要素708に結合されたタッチスクリーン、キーボード、マウスおよび/またはマイクロホン)を同じく備えることができる。例えばユーザ出力インタフェースは、アプリケーション、ブラウザ、ユーザインタフェース、インタフェース、ダッシュボード、スクリーン、ウェブページ、ページ、および/または本明細書において交換可能に使用されている、情報/データの表示または可聴提示をもたらし、また、1つまたは複数のユーザ入力インタフェースを介して対話するために、計算実体130上で実行する、および/または計算実体130を介してアクセスすることができる同様の語を提供するように構成することができる。ユーザ入力インタフェースは、キーパッド718(ハードまたはソフト)、タッチディスプレイ、音声/会話または運動インタフェース、スキャナ、リーダまたは他の入力デバイスなどのデータを計算実体130が受け取ることができる任意の数のデバイスを備えることができる。キーパッド718を含む実施形態では、キーパッド718は、従来の数値(0~9)および関連するキー(#、*)、および計算実体130を動作させるために使用される他のキーを含むことができ(あるいはそれらの表示をもたらすことができ)、また、アルファベットキーの完全なセット、または英数字キーの完全なセットを提供するために起動することができるキーのセットを含むことができる。ユーザ入力インタフェースは、入力の提供に加えて、例えばスクリーンセーバおよび/またはスリープモードなどの特定の機能を起動し、あるいは不能にするために使用することができる。計算実体130は、このような入力を介して情報/データ、ユーザ対話/入力、および/または等々を収集することができる。
【0098】
また、計算実体130は、揮発性記憶装置すなわちメモリ722、および/または不揮発性記憶装置すなわちメモリ724を同じく含むことができ、これらは埋設することができ、および/または除去することができる。例えば不揮発性メモリは、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリ、および/または等々であってもよい。揮発性メモリは、RAM、DRAM、SRAM、FPM DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、キャッシュメモリ、レジスターメモリ、および/または等々であってもよい。揮発性および不揮発性記憶装置すなわちメモリは、データベース、データベースインスタンス、データベース管理システム実体、データ、アプリケーション、プログラム、プログラムモジュール、スクリプト、ソースコード、オブジェクトコード、バイトコード、コンパイル済みコード、翻訳済みコード、機械コード、実行可能命令、および/または等々を記憶して、計算実体130の機能を実現することができる。
【0099】
結論
上記説明および関連する図面で提示された教示の利点を有する、本発明に関連する当業者には、本明細書において説明された本発明の多くの変更態様および他の実施形態が思いつくことであろう。したがって本発明は、開示された特定の実施形態に限定されないこと、また、変更態様および他の実施形態には、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書においては特定の用語が使用されているが、それらは、制限の目的のためではなく、一般的な、説明的な意味でのみ使用されている。
【符号の説明】
【0100】
2 ジャンクション
5 レッグアレイ
6 位置
8 レッグ
10 位置
12 位置
14 位置
20 ビーム線、ビーム経路
30 コントローラ
40 低温保持装置および/または真空チャンバ
50 電圧源
60 マニピュレーション源
100 量子コンピュータシステム
110 量子コンピュータ
115 量子プロセッサ
120 有線または無線ネットワーク
130 計算実体
150A、150B、150C、150D、150E 線
200 原子対象閉込め装置
201 縦方向の通路
202 ジャンクション
202A 第1のジャンクション
202B 第2のジャンクション
205 アレイ
205A~L アレイ
208、208A、298B、208C、208D レッグ
209A 第1の端部
209B 第2の端部
210 位置
212 位置
214 ぬりつぶされていないドット
220 ビーム経路
230 無線周波数(RF)レール
231 縦方向のギャップ
235、236、236.1、236.2、236.3 トラッピングおよび/または輸送(TT)電極
250A、250B 位置
290A、290B、290C 行
292A、292B、292C 列
605 処理要素および/またはデバイス
610 メモリ
615 ドライバコントローラ要素
620 通信インタフェース
625 アナログ-デジタル変換器要素
704 送信機
706 受信機
708 処理要素
712 アンテナ
716 ディスプレイ
718 キーパッド
722 揮発性記憶装置
724 不揮発性記憶装置
l アレイ距離
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7