(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】光分解を低減したLEDのDBR構造
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20240621BHJP
H01L 33/10 20100101ALI20240621BHJP
H01L 33/08 20100101ALI20240621BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240621BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20240621BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/10
H01L33/08
H01L33/50
H01L33/62
G09F9/33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168551
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2021576926の分割
【原出願日】2020-06-26
【審査請求日】2022-12-15
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500507009
【氏名又は名称】ルミレッズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シミズ,ケン
(72)【発明者】
【氏名】増井 久志
(72)【発明者】
【氏名】ワンゲンスティーン,テッド
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/122709(WO,A1)
【文献】特開2007-087994(JP,A)
【文献】特開2015-072992(JP,A)
【文献】特開2006-286758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/46
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)デバイスであって、
基板と、
前記基板
に面する側とは反対
側に位置付けられる第1の光出力表面を含む、前記基板上
に配置される半導体ダイオード構造と、
前記半導体ダイオード構造に隣接して前記基板上
に配置されるDBR構造と、を含み、
前記DBR構造は、
酸化チタン(TiO
2)を含む高屈折率層と、
高炭素領域と、前記高屈折率層と接触する少なくとも1つの低炭素領域とを有する、低屈折率層と、を含む、
LEDデバイス。
【請求項2】
前記半導体ダイオード構造上に配置され、前記半導体ダイオード構造の前記第1の光出力表面
に面する側とは反対
側に位置付けられる第2の光出力表面を含む
、波長変換層を更に含む、請求項1に記載のLEDデバイス。
【請求項3】
前記半導体
ダイオード構造に隣接し、前記DBR構造を含む、側壁を更に含み、
前記DBR構造は、前記半導体ダイオード構造
から放射される光を前記波長変換層内に反射し且つ/或いは前記波長変換層
によって変換される光を
前記波長変換層の外方に反射するように構成される、
請求項2に記載のLEDデバイス。
【請求項4】
前記半導体ダイオード構造に隣接して前記基板上に配置される第2のDBR構造を
更に含み、
前記第2のDBR構造は、
酸化チタン(TiO
2)を含む第2の高屈折率層と、
第2の高炭素領域と、前記第2の高屈折率層と接触する第2の低炭素領域とを有する、第2の低屈折率層とを含む、
請求項3に記載のLEDデバイス。
【請求項5】
当該LEDデバイスは、50ミクロン以下の幅を有する、請求項1に記載のLEDデバイス。
【請求項6】
前記高屈折率層及び前記低屈折率層の複数の層が、10ミクロン未満の厚さに積層され、前記高屈折率層及び前記低屈折率層のそれぞれの層の各々は、0.2ミクロン未満の厚さを有する、請求項1に記載のLEDデバイス。
【請求項7】
前記低屈折率層は、Al
2O
3及びSiO
2のうちの少なくとも1つを含み、前記低屈折率層の前記高炭素領域は、有機金属
を前駆体
として使用して形成され
たAl
20
3を更に含む、請求項1に記載のLEDデバイス。
【請求項8】
前記高屈折率層は、前記低屈折率層と第2の低屈折率層との間にあり、前記低屈折率層の前記少なくとも1つの低炭素領域と前記第2の低屈折率層の第2の低炭素領域との間にあり、且つ前記第2の低炭素領域と直接的に接触する、請求項1に記載のLEDデバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの低炭素領域は、前記低屈折率層の両側にある2つの低炭素領域を含む、請求項1に記載のLEDデバイス。
【請求項10】
発光ダイオード(LED)アレイであって、
基板と、
複数のLEDと、を含み、
前記LEDの各々は、
前記基板
に面する側とは反対
側に位置付けられる第1の光出力表面を含む、前記基板上
に配置される半導体ダイオード構造と、
前記半導体ダイオード構造に隣接して前記基板上
に配置される1つ以上のDBR構造と、を含み、
前記1つ以上のDBR構造は、
酸化チタン(TiO
2)を含む高屈折率層と、
高炭素領域と、前記高屈折率層と接触する少なくとも1つの低炭素領域とを有する、低屈折率層と、を含む
LEDアレイ。
【請求項11】
前記半導体ダイオード構造上に配置され、前記半導体ダイオード構造の前記第1の光出力表面
に面する側とは反対
側に位置付けられる第2の光出力表面を含む
、波長変換層を更に含む、請求項
10に記載のLEDアレイ。
【請求項12】
前記LEDの間で前記半導体
ダイオード構造に隣接し、前記DBR構造を含む、側壁を更に含み、
前記DBR構造は、前記半導体ダイオード構造
から放射される光を前記波長変換層内に反射し且つ/或いは前記波長変換層
によって変換される光を
前記波長変換層の外方に反射するように構成される、
請求項
11に記載のLEDアレイ。
【請求項13】
前記半導体ダイオード構造に隣接して前記基板上に配置される第2のDBR構造を
更に含み、
前記第2のDBR構造は、
酸化チタン(TiO
2)を含む第2の高屈折率層と、
第2の高炭素領域と、前記第2の高屈折率層と接触する第2の低炭素領域とを有する、第2の低屈折率層とを含む、
請求項
10に記載のLEDアレイ。
【請求項14】
前記LEDの各々は、50ミクロン以下の幅を有し、10ミクロン以下のレーンによって互いから離間される、請求項
10に記載のLEDアレイ。
【請求項15】
前記高屈折率層及び前記低屈折率層の複数の層が、10ミクロン未満の厚さに積層され、前記高屈折率層及び前記低屈折率層のそれぞれの層の各々は、0.2ミクロン未満の厚さを有する、請求項
10に記載のLEDアレイ。
【請求項16】
前記低屈折率層は、Al
2O
3及びSiO
2のうちの少なくとも1つを含み、前記低屈折率層の前記高炭素領域は、有機金属
を前駆体
として使用して形成され
たAl
20
3を更に含む、請求項
10に記載のLEDアレイ。
【請求項17】
前記高屈折率層は、前記低屈折率層と第2の低屈折率層との間にあり、前記低屈折率層の前記少なくとも1つの低炭素領域と前記第2の低屈折率層の第2の低炭素領域との間にあり、且つ前記第2の低炭素領域と直接的に接触する、請求項
10に記載のLEDアレイ。
【請求項18】
前記複数のLEDは、個々にアドレス指定可能なピクセルであり、当該LEDアレイは、モノリシックである、請求項
10に記載のLEDアレイ。
【請求項19】
発光ダイオード(LED)デバイスであって、
サファイアを含む基板と、
前記基板
に面する側とは反対
側に位置付けられる第1の光出力表面を含む、前記基板上
に配置される半導体ダイオード構造と、
前記半導体ダイオード構造に隣接
して前記基板上
に配置されるDBR構造と、を含み、
前記DBR構造は、
酸化チタン(TiO
2)を含む高屈折率層と、
高炭素領域と、前記高屈折率層と接触する少なくとも1つの低炭素領域とを有する、低屈折率層と、を含み、前記高炭素領域は、
有機金属を前駆体として形成されたAl
2
0
3
を含み、前記低炭素領域
は、ハロゲン化物を前駆体
として形成されたAlCl
3
を含む、
LEDデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
この出願は、2019年6月27日に出願された米国特許出願第16/455,051号に対する優先権の利益を主張し、その全文を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般的には、分散型ブラッグ反射器(DBR:distributed Bragg reflectors)の構造及び製造、具体的には、LEDパッケージ内のDBRに関する。反射器の品質を向上させるために、低炭素前駆体(low carbon precursors)の特定のセットが使用される。
【背景技術】
【0003】
(本明細書において「LED」と総称する)半導体発光ダイオード及びレーザダイオードは、現在利用可能な最も効率的な光源の1つである。LEDの発光スペクトルは、典型的には、デバイスの構造によって並びにデバイスを構成する半導体材料の組成によって決定される波長で単一の狭いピークを示す。デバイス構造及び材料系の適切な選択によって、LEDは、紫外、可視又は赤外波長で作動するように設計されることがある。LEDは、LEDによって放射される光を吸収し、応答してより長い波長の光を放射する、1つ以上の波長変換材料(本明細書では一般的に「蛍光体(phosphors)」と呼ぶ)と組み合わされることがある。そのようなデバイスは、蛍光体変換LED(「pcLED(phosphor-converted LED)」)と呼ばれることがある。
【0004】
有用な光抽出効率を向上させるために光を方向変更することができる光反射側壁を有するLEDを製造することは一般的である。例えば、側壁は、バインダと反射性粒子との様々な組み合わせで被覆されることができる。1つの頻繁に使用される反射器は、Ti02ナノ粒子を充填したシリコーンバインダに基づく。残念ながら、粒子サイズ及び光の相互作用の故に、そのような反射性コーティングは、コーティング内で吸収されるか或いは吸収をもたらす方向に方向変更される過剰な迷光を依然として生じ得る。
【0005】
側壁及び基板は、反射性金属で被覆されることもできる。Ti02ナノ粒子と比較して反射率を向上させることができるが、製造の難しさは増大し、LEDパッケージへの比較的大量の金属の導入に起因する損傷の可能性は金属反射器の広範な使用を制限する。
【0006】
より良い反射器は、非金属分散型ブラッグ反射器(DBR:distributed Bragg reflector)によって提供される。原子層蒸着を用いて、正確な厚さ並びに交互の低屈折率材料及び高屈折率材料の複数の層を作り出すことができる。1つの一般的な多層スタックは、低屈折率アルミナ(AI2O3)と高屈折率酸化チタン(Ti02)に基づく。これらの層は、従来のLED処理温度及び180℃の典型的なALD処理温度の両方に適合する。追加的な利点として、AI2O3のためのトリメチルアルミニウム及びTiO2層形成のためのTiCL4/H2Oを含む、様々な有機金属又はハロゲン化物前駆体が使用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
残念ながら、そのようなALDプロセスによって作り出されるT1O2のアモルファス層は、光触媒性である。LED及び熱によって生成される青色光の存在の下で、Ti02層は、有機金属前駆体からの炭素汚染と反応して黒鉛を作り出すことができる。時間の経過と共に、これはLEDデバイスにおける有意な吸収損失につながる。この損傷を最小限に抑えるためには、炭素含有量を低減する非炭素前駆体及び低炭素膜製造技術が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によれば、基板上のDBR構造が、酸化チタン(TiO2)を含む高屈折率層と、高炭素領域と、高屈折率層と接触する少なくとも1つの低炭素領域とを有する、低屈折率層とを含む。高屈折率層及び低屈折率層の複数の層は積層される。典型的には、高屈折率層及び低屈折率層の複数の層は10ミクロン未満の厚さに積層される。例えば、LEDアレイ内の2つのピクセルは、高屈折率層及び低屈折率層の多層を含む10ミクロン未満の厚さのDBR構造を備える側壁によって分離されてよい。高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれの層の各々は、0.2ミクロン未満の厚さを有することができる。
【0009】
1つの実施形態において、低屈折率層は、トリメチルアルミニウムのような有機金属前駆体から形成されることができるAI2O3を含む。炭素は、前駆体であり、低屈折率層の高炭素領域をもたらす。
【0010】
低屈折率層の接触する低炭素領域は、AlCl3のようなハロゲン化物前駆体から形成されるAI2O3を含むことができる。炭素を含まない前駆体の使用は、低屈折率層の低炭素領域をもたらす。
【0011】
幾つかの実施態様において、基板は、サファイアであるが、代替的に、GaN、ガラスもしくは誘電体構造、又は炭化ケイ素のような、半導体材料であることができる。
【0012】
1つの実施形態では、基板の上にDBR構造を形成するALDプロセスが、高炭素領域を有する第1の低屈折率層を堆積させるステップと、高炭素領域と接触する低炭素領域を備える第1の低屈折率層を堆積させるステップと、第1の低屈折率層の低炭素領域と接触する酸化チタン(TiO2)を含む高屈折率層を堆積させるステップと、高屈折率層と接触する低炭素領域を備える第2の低屈折率層を堆積させるステップと、高炭素領域を有する第2の低屈折率層を堆積させるステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の非限定的かつ非網羅的な実施形態が以下の図を参照して記載され、図において、同等の参照番号は、特に断りのない限り、様々な図を通じて同等の部品を指している。
【0014】
【
図1】例示的なpcLEDの概略断面図を示している。
【0015】
【
図2A】pcLEDのアレイの断面概略図を示している。
【
図2B】pcLEDのアレイの断面頂面図を示している。
【
図2C】pcLEDのモノリシックアレイの斜視図を示している。
【0016】
【
図3A】pcLEDのアレイを実装することがある電子機器基板(electronics board)の概略頂面図を示している。
【
図3B】
図3Aの電子基板(electronic board)上に実装されたpcLEDのアレイを同様に示している。
【0017】
【
図4A】導波管及び投影レンズに関して配置されたpcLEDのアレイの概略断面図を示している。
【0018】
【
図5】pcLEDの例示的アレイの概略断面図を示している。
【0019】
【
図6】取り付けられた高信頼性の分散型ブラッグ反射器を有するLED基板側壁の1つの実施形態を図示している。
【0020】
【
図7】高温動作寿命(HTOL)試験中の改良された性能を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な記述は、図面を参照して読まれるべきであり、図面において、同一の参照番号は、異なる図を通じて同等の要素を指している。必ずしも縮尺通りではない図面は、選択的な実施形態を描いており、本発明の範囲を限定するものではない。詳細な記述は、本発明の原理を限定の目的ではなく例示の目的のために例示している。
【0022】
図1は、基板104上に配置された半導体ダイオード構造102(LED)と、LED上に配置された蛍光体層又は蛍光体構造106とを含む、個々のpcLED100(phosphor-converted LED)の例を示している。半導体ダイオード構造102は、典型的には、n型層とp型層との間に配置された活性領域(アクティブ領域)を含む。ダイオード構造に亘る適切な順方向バイアスの印加は、活性領域からの光の放射をもたらす。放射される光の波長は、活性領域の組成及び構造によって決定される。
【0023】
LEDは、例えば、青色光、紫色光又は紫外光を放射するIll-窒化物LEDであってよい。任意の他の適切な材料系から形成され且つ任意の他の適切な波長の光を放射するLEDが使用されてもよい。他の適切な材料系は、例えば、III-リン化物材料、III-アルセニド材料、及びII-VI材料を含む。
【0024】
pcLEDからの所望の光出力に依存して、任意の適切な蛍光体材料が使用されてよい。
【0025】
図2A及び
図2Bは、それぞれ、基板202上に配置されたpcLED100のアレイ200の断面図及び頂面図を示している。そのようなアレイは、任意の適切な方法で配置された任意の適切な数のpcLEDを含んでよい。図示の例において、アレイは、共有基板上にモノリシックに形成されたように描かれているが、代替的に、pcLEDのアレイは、別個の個々のpcLEDから形成されてよい。基板202は、任意的に、LEDを駆動するためのCMOS回路構成を含んでよく、任意の適切な材料から形成されてよい。
【0026】
図3A及び
図3Bに示すように、pcLEDアレイ200は、電力及び制御モジュール302と、センサモジュール304と、LED取付け領域306とを含む、電子機器基板300(electronics board)上に取り付けられてよい。電力及び制御モジュール302は、外部ソースから電力及び制御信号を受信し、センサモジュール304からの信号を受信し、それに基づいて、電力及び制御モジュール302は、LEDの動作を制御する。センサモジュール304は、任意の適切なセンサ、例えば、温度センサ又は光センサから信号を受信してよい。代替的に、pcLEDアレイ200は、電力及び制御モジュール並びにセンサモジュールとは別の基板(図示せず)に取り付けられてよい。
【0027】
個々のpcLEDは、任意的に、蛍光体層に隣接して或いは蛍光体層上に配置されるレンズ又は他の光学素子との組み合わせにおいて組み込まれてよく或いは配置されてよい。図示されていないそのような光学素子を「一次光学素子(primary optical element)」と呼ぶことがある。加えて、
図4A及び4Bに示すように、(例えば、電子機器基板300上に取り付けられる)pcLEDアレイ200は、意図される用途における使用のための導波管、レンズ、又はそれらの両方のような、二次光学素子(secondary optical elements)と組み合わせにおいて配置されてよい。
図4Aにおいて、pcLED100によって放射される光は、導波管402によって集光され、投影レンズ404に向けられる。投影レンズ404は、例えば、フレネルレンズであってよい。この構成は、例えば、自動車ヘッドライトにおける使用に適することがある。
図4Bにおいて、pcLED100によって放射される光は、介在する導波管の使用を伴わないで、投影レンズ404によって直接的に集光される。この構成は、pcLEDを互いに十分に近接して離間させ得るときに特に適することがあり、自動車のヘッドライトにおいて並びにカメラのフラッシュ用途において使用されてもよい。マイクロLEDディスプレイ用途は、例えば、
図4A及び4Bに描く光学構成に類似する光学構成を使用してよい。一般的に、光学素子の任意の適切な構成は、所望の用途に依存して、本明細書に記載するpcLEDとの組み合わせにおいて使用されてよい。
【0028】
図2A及び
図2Bを再び参照すると、これらの図は、9個のpcLEDの3×3アレイを示しているが、そのようなアレイは、例えば、数十個、数百個又は数千個のLEDを含んでよい。個々のLED(ピクセル)は、例えば、1ミリメートル(mm)以下、500ミクロン以下、100ミクロン以下又は50ミクロン以下のアレイの平面内に幅(例えば、側面長(side lengths))を有してよい。そのようなアレイにおけるLEDは、例えば、数百ミクロン、100ミクロン以下、50ミクロン以下、10ミクロン以下又は5ミクロン以下のアレイの平面内の幅を有するストリート(street)又はレーン(lane)によって互いに離間させられてよい。図示の例は、対称マトリクス内に配列された矩形ピクセルを示しているが、ピクセル及びアレイは、任意の適切な形状を有してよい。
【0029】
約50ミクロン以下のアレイの平面内の寸法(例えば、側面長)を有するLEDは、典型的には、マイクロLED(microLED)と呼ばれ、そのようなマイクロLEDのアレイは、マイクロLEDアレイ(microLED array)と呼ばれることがある。
【0030】
LEDのアレイ又はそのようなアレイの部分は、個々のLEDピクセルがトレンチ及び/又は絶縁材料によって互いに電気的に隔離されたセグメント化されたモノリシック構造(segmented monolithic structure)として形成されてよい。
図2Cは、そのようなセグメント化されたモノリシックアレイ1100の一例の斜視図を示している。このアレイ内のピクセルは、n-コンタクト1140(n-contact)を形成するように充填されるトレンチ1130によって分離される。モノリシック構造は、基板1114上に成長又は配置される。各ピクセルは、p-コンタクト1113、p-GaN半導体層1112、活性領域1111、及びn-GaN半導体層1110を含む。波長コンバータ材料1117が、半導体層1110(又は他の適用可能な層)上に堆積されてよい。パッシベーション層1115が、n-コンタクト1140の少なくとも一部分を半導体の1つ以上の層から分離するために、トレンチ1130内に形成されてよい。n-コンタクト1140又はトレンチ内の他の材料は、n-コンタクト1140又は他の材料がピクセル間に完全な又は部分的な光分離1120(optical isolation)を提供するように、コンバータ材料1117内に延びてよい。
【0031】
LEDアレイ内の個々のLED(ピクセル)は、個々にアドレス指定可能であってよく、アレイ内のピクセルのグループ又はサブセットの一部としてアドレス指定可能であってよく、或いはアドレス指定可能でなくてよい。従って、発光ピクセルアレイは、光分布の微細粒子強度(fine-grained intensity)、空間的及び時間的制御を必要とする、或いはそれらから利益を受ける、任意の用途に有用である。これらの用途は、ピクセルブロック又は個々のピクセルから放射される光の正確な特別なパターン化を含むが、これらに限定されない。用途に依存して、放射される光は、スペクトル的に別個であってよく、経時的に適応的であってよく、且つ/或いは環境応答的であってよい。発光ピクセルアレイは、様々な強度、空間的又は時間的パターンで予めプログラムされた光分布を提供してよい。放射される光は、少なくとも部分的に受信するセンサデータに基づいてよく、光無線通信のために使用されてよい。関連する電子機器(エレクトロニクス)及び光学(optics)は、ピクセル、ピクセルブロック、又はデバイスレベルで別個であってよい。
【0032】
図5は、基板530上に配置された半導体ダイオード構造500(LED)と、LED上に配置された蛍光体層又は構造510とを備える、LEDアレイの一例を示している。各半導体ダイオード構造500は、反射器又は側壁520によって他のピクセルから分離された個々のLED又はピクセルである。側壁520は、半導体ダイオード構造500からの光を上方に蛍光体層510内に反射することがあり、蛍光体層510によって変換された光を上方に反射することがあるので、それは観察者によって見えるように放射されることがある。側壁520は、DBR側壁であってよい。反射器は、後方散乱光が吸収又は誤った方向への放射によってデバイス内で失われるのを防止するように、半導体ダイオード構造の下方に配置されてもよい。例えば、基板530は、反射器であってよく、或いは反射器で被覆されてよく、その場合、反射器は、DBRである。すなわち、ピクセル又はLEDアレイ内のDBR反射器又は側壁は、半導体ダイオード構造500の左側及び右側に限定される必要はなく、所望の出力に依存して、半導体ダイオード構造500の上方又は下方に配置されてよい。LEDアレイ内のDBR反射器は、以下に記載する反射器と類似するか或いは同じであってよい。
【0033】
発光ピクセルアレイは、広範囲の用途を有する。発光ピクセルアレイ照明器具(luminaires)は、選択的ピクセル活性化及び強度制御に基づいて異なる照明パターンを投影するようにプログラムされることができる光固定具(light fixtures)を含むことができる。そのような照明器具は、可動部品を使用しない単一の照明デバイスから複数の制御可能なビームパターンを送達することができる。典型的には、これはID又は2Dアレイ内の個々のLEDの輝度(brightness)を調整することによって行われる。光学系は、共有であれ個々であれ、任意的に、光を特定の標的領域に向けることができる。
【0034】
発光ピクセルアレイは、改良された視覚ディスプレイのために或いは照明コストを低減するために建物又は領域を選択的かつ適応的に照明するために使用されてよい。加えて、発光ピクセルアレイは、装飾的な動き又はビデオ効果のためにメディアファサード(media facades)を投影するために使用されてよい。追跡センサ及び/又はカメラと共に、歩行者の周囲の領域の選択的照明も可能なことがある。スペクトル的に異なるピクセルが、照明の色温度を調節するために並びに波長特異な園芸照明をサポートするために使用されてよい。
【0035】
街路照明は、発光ピクセルアレイの使用から大きな利益を得ることがある重要な用途である。単一タイプの発光アレイが、様々な街路照明タイプを模倣して、例えば、選択されるピクセルの適切な活性化又は非活性化によって、タイプI直線街路光とタイプIV半円街路光との間の切り替えを可能にするように使用されてよい。加えて、街路照明のコストが、環境条件又は使用時間に従って光強度又は分布面積を調整することによって低下させることがある。例えば、光強度及び分布面積は、歩行者がいないときに減少させられてよい。発光ピクセルアレイのピクセルがスペクトル的に別個であるならば、光の色温度は、それぞれの昼光(daylight)、薄明(twilight)又は夜間条件に従って調整されてよい。
【0036】
発光アレイは、直接又は投影ディスプレイを必要とする用途をサポートするのにも適している。例えば、警告、緊急、又は情報標識は、全て、発光アレイを用いて表示又は投影されてよい。これは、例えば、変化する色又は閃光を放つ出口標識が投影されることを可能にする。発光アレイが多数のピクセルから構成されるならば、テキスト又は数値情報が提示されてよい。指向性矢印又は類似のインジケータが提供されてもよい。
【0037】
車両用ヘッドランプは、大きなピクセル数及び高いデータリフレッシュ速度を必要とする発光アレイ用途である。道路の選択された部分のみを能動的に照らす自動車ヘッドライトは、対向車の運転手のグレア(glare)又は眩しさ(dazzling)に関連する問題を軽減するために使用されることができる。赤外線カメラをセンサとして用いて、発光ピクセルアレイは、道路を照明するために必要とされるピクセルのみをアクティブ化させる一方で、歩行者又は対向車両の運転手を眩しくさせることがあるピクセルを非アクティブ化させる。加えて、一般道路外の歩行者、動物、又は標識は、運転手の環境意識を向上させるために選択的に照明されてよい。発光ピクセルアレイのピクセルがスペクトル的に別個であるならば、光の色温度は、それぞれの昼光、薄明又は夜間条件に従って調整されてよい。幾つかのピクセルは、光無線車両間通信のために使用されてよい。
【0038】
典型的には、LED、LEDのアレイ、pcLED、及びpcLEDのアレイについての上記用途は、LED内の光生成及びLEDからの光抽出の改良された効率から利益を得る。これらの用途は、典型的には、光が活性領域から放射される方向及び光がLEDから抽出される方向のより大きな制御からも利益を得る。これらの利点は、典型的には、デバイスが波長変換構造を含むか否かに拘わらず生じる。
【0039】
図6は、取り付けられた高信頼性の分散型ブラッグ反射器を備えるLED基板側壁600の1つの実施形態を示している。図のように、サファイア基板602は、交互の低屈折率層及び高屈折率層から形成された取り付けられたDBR側壁を有する。半導体、炭化ケイ素、ガラス、又はDBRミラーの取り付けから利益を得ることができる他の誘電体基板を含む他の基板を使用することもできる。
【0040】
図6はまた、サファイア基板602に取り付けられた高炭素領域を有する第1の低屈折率層610も示している。高炭素領域が存在するのは、有機金属前駆体が製造に使用されるからである。1つの実施形態において、高炭素領域を有する低屈折率層610は、前駆体としてトリメチルアルミニウムを用いて作られたアルミナ(AI
2O
3)である。代替的に、有機金属前駆体で形成されたSiO
2を使用することができる。低炭素領域620を有する第1の低屈折率層は、低屈折率層610の高炭素領域と接触する。例えば、低炭素領域620は、高炭素領域よりも低い炭素含有量を有する。1つの実施形態では、低炭素領域620を備える低屈折率層を、AlCl
3のようなハロゲン化アルミニウム前駆体から形成することができる。低炭素層620を備えるこの低屈折率層は、次に、酸化チタン(TiO
2)を含む高屈折率層612と接触する。低炭素領域622を備える第2の低屈折率層が、高屈折率層612と接触し、次に、高炭素領域614(例えば、別のアルミナ層)を有する第2の低屈折率層、及び低炭素層624を備える別の低屈折率層と接触する。中間の低屈折率層及び低炭素層を用いて高屈折率層から高炭素低屈折率層を分離することによって炭素媒介劣化を防止して、交互の低屈折率層及び高屈折率層(例えば、TiO
2と交互するAI
2O
3又はS1O
2)のこのパターンを複数回繰り返すことができる。これは様々な記載された層における相対的な炭素量を示す関連する炭素レベルグラフによって図示されている。
【0041】
幾つかの実施態様において、TiCl4(又は他のTiハロゲン化物)及びH2Oは、TiO2層形成のための前駆体である。TiO2層内のAlCl3(又は他のAlハロゲン化物)及びH2Oを用いて、TiO2層内の結晶化傾向が減少した薄い(lnmの)AI2O3を形成することができる。典型的には、結果として得られるDBRは、従来的なALD処理を用いて形成される高屈折率層(TiO2)及び低屈折率層(Al2O3)の3~5umの多層スタックである。ALDは、180℃で操作されることができ、TiCl4、H2O(又はオゾン)、及びAlCl3、H2O及びTMA、H2Oのパルスを、順次チャンバ内に放出して、1つずつ単一原子層を生成することができる。(基板、半導体ダイ、及び蛍光体プレートレットを含む)LEDは、ALDチャンバが150~200℃に加熱される間に、テープキャリアによって所定の場所に保持されることができる。これらの温度で、TiO2は、AlCl3(又は他の不均一酸化物)の置換層がアモルファス膜を確実にする合金状構造を形成することなく結晶化する。炭素捕捉(carbon entrapment)は、TiO2層の付近又は隣に堆積される層のための非炭素前駆体の使用によって解消される。
【0042】
上述の交互層は重要である。何故ならば、トリメチルアルミニウムで成長させた如何なるAI2O3の高炭素領域もないAlCl3で完全に成長させたAI2O3層は、亀裂及び剥離することが観察されたからである。すなわち、一貫して低炭素であるAlCl3で成長させた隣接するAI2O3層は、高応力のマイナス面を経験する。本発明の実施形態は、アルミナの高炭素領域で低炭素領域の高い応力の均衡を取る一方で、劣化が少ないか劣化がない低炭素領域でアルミナの高炭素領域によって引き起こされる劣化の均衡を取る。
【0043】
図7は、高温動作寿命(HTOL:high temperature operating life)試験中の改良された性能を示している。グラフから明らかなように、改良された低炭素DBR前駆体から形成されたLEDは、従来的な有機金属DBR前駆体から形成された側壁を有するLEDよりも一層低い故障率を有する。
【0044】
発光ピクセルアレイ(すなわち、アドレス指定可能なLEDセグメント)は、記載の低炭素ALD DBR側壁コーティングから特に利益を得ることがある。嵩張るシリコーンバインダ及びTi02ナノ粒子側壁と比較して、ALD DBR側壁は、効率を向上させ、正確な光投影と干渉する可能性があり且つ極めて薄い(例えば、10ミクロン未満)可能性があるピクセルクロストーク間の効率を大幅に低下させて、密接にパックされた発光ピクセルアレイにおける使用を可能にする。
【0045】
記載の改良されたDBR側壁を備える発光ピクセルアレイは、低クロストーク、微細粒子強度、光分布の改良された空間的及び時間的な制御から利益を得る用途をサポートすることがある。これは、ピクセルブロック又は個々のピクセルから放射される光の正確な空間パターン化を含むことがあるが、これに限定されない。用途に依存して、放射される光は、スペクトル的に別個であることがあり、経時的に適応的であることがあり、且つ/或いは環境応答性であることがある。発光ピクセルアレイは、様々な強度、空間的又は時間的パターンにおいて予めプログラムされた光分布を提供することがある。放射される光は、少なくとも部分的には、受信されるセンサデータに基づいてよく、光無線通信のために使用されてよい。関連する光学(optics)は、ピクセル、ピクセルブロック、又はデバイスレベルで別個であってよい。例示的な発光ピクセルアレイは、関連する共通のレンズ(optic)を備える高強度ピクセルの共通に制御される中央ブロックを有するデバイスを含むことがあるのに対し、エッジピクセルは、個々の光学を有することがある。改良されたDBR側壁を備える発光ピクセルアレイによってサポートされる一般的な用途は、カメラフラッシュ、自動車ヘッドライト、建築及び領域照明、街路照明、及び情報ディスプレイを含む。
【0046】
改良されたDBR側壁を備える発光ピクセルアレイは、モバイルデバイス用のカメラフラッシュ用途に良く適している。典型的には、高輝度LEDからの光の強い短時間のフラッシュが、画像キャプチャをサポートするために使用される。残念なことに、従来的なLEDフラッシュでは、光の殆どは、既に十分に照明されているか或いはさもなければ照らされる必要のない領域の照明に浪費される。発光ピクセルアレイの使用は、一定の時間の間、シーンの部分の制御された照明を提供することがある。これは、カメラフラッシュが、例えば、ローリングシャッタキャプチャの間に撮像される領域のみを照明し、キャプチャされる画像に亘る信号対雑音比を最小限に抑え且つ人間もしくは標的物体上の又は人間もしくは標的物体に亘る影を最小限に抑える均一な照明を提供し、且つ/或いは影を強調する高コントラスト照明を提供することを可能にすることがある。発光ピクセルアレイのピクセルがスペクトル的に別個であるならば、フラッシュ照明の色温度は、所望の色調(color tones)又は暖かみ(warmth)を提供するように動的に調整されることがある。
【0047】
道路の選択されたセクションのみを能動的に照らす自動車ヘッドライトも改良されたDBR側壁を備える発光ピクセルアレイによってサポートされる。赤外線カメラをセンサとして用いて、発光ピクセルアレイは、道路を照らすのに必要なピクセルのみをアクティブ化させる一方で、歩行者又は対向車両の運転手を眩しくさせることがあるピクセルを非アクティブ化させる。加えて、一般道路外の歩行者、動物又は標識は、運転手の環境意識を向上させるために、選択的に照らされてよい。発光ピクセルアレイのピクセルがスペクトル的に別個であるならば、光の色温度は、それぞれの昼光、薄明又は夜間条件に従って調整されてよい。幾つかのピクセルは、光無線車両間通信のために使用されてよい。
【0048】
建築照明及び領域照明も、改良されたDBR側壁を備える発光ピクセルアレイから利益を得ることがある。発光ピクセルアレイは、改良された視覚ディスプレイのために或いは照明コストを低減するために建物又は領域を選択的かつ適応的に照明するために使用されてよい。加えて、発光ピクセルアレイは、装飾的な動き又はビデオ効果のためにメディアファサードを投影するために使用されてよい。追跡センサ及び/又はカメラと共に、歩行者の周囲の領域の選択的照明が可能なことがある。スペクトル的に別個のピクセルは、照明の色温度を調整するために並びに波長特異的な園芸照明をサポートするために使用されてよい。
【0049】
街路照明は、改良されたDBR側壁を備える発光ピクセルアレイの使用から大きな利益を得ることがある重要な用途である。単一タイプの発光アレイは、様々な街路光タイプを模倣するために使用されて、例えば、選択されるピクセルの適切なアクティブ化又は非アクティブ化によってタイプI直線街路光とタイプIV半円街路光との間の切り替えが可能にされてよい。加えて、環境条件又は使用時間に従って光ビーム強度又は分布を調整することによって、街路照明コストが低下されることがある。例えば、歩行者が存在しないとき、光強度及び分布面積は削減されてよい。発光ピクセルアレイのピクセルがスペクトル的に別個であるならば、光の色温度は、それぞれの昼光、薄明又は夜間条件に従って調整されてよい。
【0050】
改良されたDBR側壁を備える発光アレイは、直接又は投影ディスプレイを必要とする用途をサポートするのも良く適している。例えば、警告、緊急、又は情報標識は、全て、発光アレイを用いて表示又は投影されてよい。これは、例えば、色を変えること、又は閃光する出口標識を投影することを可能にする。改良されたDBR側壁を備える発光アレイが多数のピクセルから構成されるならば、テキスト情報又は数値情報が提供されてよい。方向矢印又は類似のインジケータが提供されてもよい。
【0051】
本発明を詳細に記載したが、当業者は、本開示を考慮して、本明細書に記載する発明的な概念の精神から逸脱することなく、本発明に修正が加えられる場合があることを理解するであろう。従って、本発明の範囲が図示及び記載される特定の実施形態に限定されることは意図されていない。