IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中外製薬株式会社の特許一覧 ▶ ジェネンテック, インコーポレイテッドの特許一覧

特許7507829PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を使用して癌を治療する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を使用して癌を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/145 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240621BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K31/145
A61K31/282
A61K31/517
A61K31/69
A61K45/00
C07K16/18
C12N15/13
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022169158
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2018203414の分割
【原出願日】2017-03-14
(65)【公開番号】P2023002720
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2016051424
(32)【優先日】2016-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 美香
(72)【発明者】
【氏名】加藤 淳彦
(72)【発明者】
【氏名】大友 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】足立 健児
(72)【発明者】
【氏名】木下 恭子
(72)【発明者】
【氏名】成田 義規
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/000883(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/122667(WO,A1)
【文献】Liver Cancer,2015年,4,pp.201-207
【文献】International Journal of Oncology,2009年,35,pp.741-749
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための医薬の製造における、抗GPC3抗体の使用であって、ここで、該医薬が、抗GPC3抗体を含み、医薬上許容される担体を含んでいてもよく、該治療が、PD-L1抗体および含んでいてもよい医薬上許容される担体を含む組成物と組み合わせた該医薬の投与を含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を投与することによって癌を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞癌は、報告によれば、世界中で癌による死亡の5番目の主因であり、毎年およそ600,000人の死亡に相当する(非特許文献1)。ほとんどの肝細胞癌の患者は、疾患を有すると診断された後1年以内に死亡する。残念ながら、肝細胞癌の症例は、治癒的療法に対して稀にしか応答しない後期で診断されることが頻繁にある。さらに、化学療法、化学塞栓療法、アブレーションおよび陽子線治療を含めた医学的処置は、このような患者には不十分にしか有効ではない。多数の患者が、血管進入および複数の肝内転移を伴う疾患の再発を示し、これは、進行期へと迅速に進行する。その5年生存率は、わずか7%である(非特許文献2)。局所病巣の摘出に適している肝細胞癌の患者は、その5年生存率は依然として15%および39%のレベルのままであるものの、比較的良好な予後を有する(非特許文献3)。したがって、当技術分野では、このような悪性疾患肝細胞癌の新規療法が求められてきた。
【0003】
肝細胞癌は、報告によれば、日本では、原発性肝癌の症例の90%超に相当する。このような肝細胞癌を治療するための医学的方法として、例えば、化学療法ベースの経カテーテル動脈塞栓(TAE)療法が挙げられ、これは、肝動脈(腫瘍への栄養供給経路として役立つ)へオイルベースの造影剤(リピオドール)、抗癌剤および閉塞物質(ゲルフォーム)の混合物を注入し、栄養動脈の閉塞をもたらすことによって、肝細胞癌の選択的壊死を誘導することを含む。さらに、経皮エタノール注入、経皮マイクロ波血液凝固療法および高周波アブレーションなどの侵襲的アプローチが使用される。また、治験が、フルオロウラシル(5-FU)、ウラシル-テガフール(UFT)、マイトマイシンC(MMC)、ミトキサントロン(DHAD)、アドリアマイシン(ADR)、エピルビシン(EPI)およびシスプラチン(CDDP)などの化学療法薬を、単独でまたはインターフェロン(IFN)と組み合わせて使用する全身化学療法で実施されている(非特許文献4)。
【0004】
一方、ソラフェニブの経口活性形態(ネクサバール、BAY43-9006)が承認されており、より有利なことに、これは、Raf/MEK/ERKシグナル伝達においてRafキナーゼを阻害し、一方で、VEGFR-2、VEGFR-3およびPDGFR-βチロシンキナーゼを標的化することによって血管新生抑制効果を発揮することによって癌細胞の増殖を阻止し、上記の化学療法薬よりも有効である。ソラフェニブの有効性は、進行肝細胞癌を標的とする2種の第III相多施設プラセボコントロール試験(ソラフェニブHCC評価無作為化プロトコール(SHARP)治験およびアジア-太平洋(Asia-Pacific)治験)において研究されている。ソラフェニブは、生存期間を延長すると確認され、これらの治験の両方において0.68のHRを有する。SHARP治験では、ソラフェニブは、生存期間をプラセボを用いた場合の7.9カ月に対して10.7カ月に延長した。アジア治験では、この薬剤は、生存期間をプラセボを用いた場合の4.2カ月に対して6.5カ月に延長した。しかし、この薬剤は、低い客観的奏効率を有しており、画像で腫瘍悪化までの時間を延長したが(欧州および米国の治験における2.8カ月に対して5.5カ月およびアジアの治験における1.4カ月に対して2.8カ月)、臨床症状悪化までの時間の延長を示さなかった。アジアのコホートは、おそらくは、その治療が、アジア領域では、欧州および米国と比較して、疾患プロセスの間のわずかに遅いステージで開始したために、短期間の延命を示した(非特許文献5および6)。
【0005】
肝癌が進行するにつれ、一般に、拒食症、体重減少、全身倦怠、触知できる右季肋部塊、右季肋部疼痛、腹部膨満感、発熱および黄疸などの肝臓機能障害と関連しているその特定の症状が観察される。しかし、化学療法薬(例えば、ソラフェニブ)は、下痢または便秘、貧血、感染または敗血症(致死的重症度を有する)を引き起こす免疫系の抑制、出血、心臓毒性、肝臓毒性、腎毒性、拒食症および体重減少などのその固有の有害反応を含めた克服されるべき合併症を有する。
【0006】
肝癌では、特に初期ステージの症状は最初に観察されないが、一般に、拒食症、体重減少、全身倦怠、触知できる右季肋部塊、右季肋部疼痛、腹部膨満感、発熱および黄疸などの肝臓機能障害と関連しているその特定の症状が、肝癌の進行につれて観察される。臨床観察結果によれば、このような症状は、化学療法薬の使用によって増強される。例えば、検出可能な肝癌細胞を有する患者における拒食症および拒食症と関連しているか、またはそれとは独立している体重減少などの症状は、患者への化学療法薬の投与によって、化学療法薬の使用を伴わない場合よりも増強され得る。いくつかの場合には、化学療法薬の使用は、このような症状を有する患者に対しては中止されなくてはならない。これらの増強される症状は、化学療法薬を用いる治療にとって障害である。したがって、例えば、治療効果の改善または治療されるべき患者のQOLの改善の観点から優れた療法の確立が求められてきた。
【0007】
グリピカン3(GPC3)は、肝癌において高レベルで発現されることが頻繁にあり、そのようなものとして、肝癌におけるその機能の同定において、または肝癌の治療もしくは診断標的として有用であると思われる。
【0008】
上記の状況下で、肝癌の治療標的としてGPC3を用いる薬物が開発中である。有効成分として抗GPC3抗体を含む肝癌薬が開発されており、抗体は、GPC3を発現する細胞に対して、抗体依存性細胞性細胞傷害(本明細書において以下、「ADCC」と呼ばれる)活性および/または補体依存性細胞傷害(本明細書において以下、「CDC」と呼ばれる)活性を有する(特許文献1)。また、有効成分としてADCC活性およびCDC活性を有するヒト化抗GPC3抗体を含むGPC3を標的とする薬物が開発されている(特許文献2)。さらなるGPC3を標的とする薬物が開発されており、これは、ADCC活性が増強されたヒト化抗GPC3抗体(特許文献3および4)またはADCC活性およびCDC活性を有し、ならびに血漿動態が改善された抗GPC3抗体(特許文献5)を含む。ソラフェニブなどの化学療法薬との併用療法におけるこれらの抗GPC3抗体は、例えば、化学療法薬(例えば、ソラフェニブ)の単独療法によって引き起こされる有害反応を減弱するとわかっており、また、これらの薬剤をベースとする相互作用を示すとわかった(特許文献6)。したがって、肝癌を治療するための優れた方法は、例えば、治療効果の改善または治療されるべき患者のQOLの改善の観点から、中軸としてGPC3を標的とする薬物を使用して確立されている過程にある。
【0009】
他方で、T細胞への2つの異なるシグナルの提供は、抗原提示細胞(APC)による休止Tリンパ球のリンパ球活性化についての広く受容されたモデルである。Lafferty等、Aust.J.Exp.Biol.Med.Sci 53:27~42(1975)。このモデルは、非自己からの自己の識別および免疫寛容をさらに提供する。Bretscher等、Science 169:1042~1049(1970);Bretscher、P.A.、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 96:185~190(1999);Jenkins等、J.Exp.Med.165:302~319(1987)。一次シグナル、または抗原特異的シグナルは、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)に関連して提示された外来抗原ペプチドの認識後にT細胞受容体(TCR)を介して伝達される。第2のまたは共刺激シグナルは、抗原提示細胞(APC)上に発現さ
れた共刺激分子によってT細胞に送達され、T細胞を誘導して、クローン増殖、サイトカイン分泌およびエフェクター機能を促進させる。Lenschow等、Ann.Rev.Immunol.14:233(1996)。共刺激の非存在下では、T細胞は、抗原刺激に対して不応性になり得、有効な免疫応答を開始せず、消耗、または外来抗原に対する寛容をさらに生じ得る。
【0010】
この2シグナルモデルでは、T細胞は、陽性および陰性の両方の二次共刺激シグナルを受ける。かかる陽性および陰性シグナルの調節は、免疫寛容を維持し、自己免疫を防止しつつ、宿主の防御免疫応答を最大化するために重要である。陰性二次シグナルは、T細胞寛容の誘導に必要であると思われるが、陽性シグナルは、T細胞活性化を促進する。単純な2シグナルモデルは、ナイーブリンパ球についての妥当な説明をなおも提供するが、宿主の免疫応答は、ダイナミックなプロセスであり、共刺激シグナルは、抗原曝露されたT細胞にも提供され得る。共刺激の機構は、治療的に興味を持たれるが、それは、共刺激シグナルの操作が、細胞ベースの免疫応答を増強または終結させるための手段を提供することが示されているからである。近年、T細胞機能不全またはアネルギーが、阻害受容体、誘導された持続性のプログラム死1ポリペプチド(PD-1)の発現と同時発生的に生じることが発見されている。結果として、PD-1、ならびにプログラム死リガンド1(PD-Ll)およびプログラム死リガンド2(PD-L2)などの、PD-1との相互作用を介してシグナル伝達する他の分子の治療的標的化は、強く興味を持たれる領域である。
【0011】
PD-L1は、多くの癌において過剰発現され、予後不良と関連する場合が多い(Okazaki T等、Intern.Immun.2007 19(7):813)(Thompson RH等、Cancer Res 2006、66(7):3381)。興味深いことに、腫瘍反応性T細胞上のPD-1の上方調節が、障害された抗腫瘍免疫応答に寄与し得ることを示す、正常組織中のTリンパ球および末梢血Tリンパ球とは対照的に、腫瘍浸潤性Tリンパ球の大部分は、PD-1を優勢に発現する(Blood 2009
114(8):1537)。これは、PD-1発現T細胞と相互作用するPD-L1発現腫瘍細胞により媒介されたPD-L1シグナル伝達の活用によるものである可能性があり、この結果T細胞の活性が弱まり、免疫監視は回避される(Sharpe等、Nat Rev 2002)(Keir ME等、2008 Annu.Rev.Immunol.26:677)。したがって、PD-L1/PD-1相互作用の阻害は、腫瘍のCD8+T細胞媒介性死滅化を増強し得る。
【0012】
PD-1、ならびにプログラム死リガンド1(PD-L1)およびプログラム死リガンド2(PD-L2)などの、PD-1との相互作用を介してシグナル伝達する他の分子の治療的標的化は、強く興味を持たれる領域である。PD-L1シグナル伝達の阻害は、癌(例えば、腫瘍免疫)ならびに急性および慢性(例えば、持続性)の両方の感染を含む感染の治療のためにT細胞免疫を増強するための手段として提唱されてきた。最適な治療的処置は、腫瘍増殖を直接阻害する薬剤によるPD-1受容体/リガンド相互作用の遮断を組み合わせ得る。種々の癌の発達を治療、安定化、予防および/または遅延させるための最適な療法が、なおも必要とされている。
【0013】
特許出願、特許公開およびUniProtKB/Swiss-Prot寄託番号を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献が出典明示により援用されると具体的かつ個々に示されるかのように、その全内容が本明細書に出典明示により援用される。
【0014】
本発明は、以下を提供する:
[1]PD-1系結合アンタゴニストと組み合せて使用するための、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための医薬組成物であって、有効成分として抗GPC
3抗体を含む、医薬組成物。
[2]抗GPC3抗体が、PD-1系結合アンタゴニストの投与の前に、PD-1系結合アンタゴニストの投与と同時に、またはPD-1系結合アンタゴニストの投与後に投与される、[1]に記載の医薬組成物。
[3]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[4]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニストである、[3]に記載の医薬組成物。
[5]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する、[4]に記載の医薬組成物。
[6]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L1との結合を阻害する、[5]に記載の医薬組成物。
[7]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L2との結合を阻害する、[5]に記載の医薬組成物。
[8]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L1およびPD-L2両方との結合を阻害する、[5]に記載の医薬組成物。
[9]PD-1結合アンタゴニストが抗体である、[5]に記載の医薬組成物。
[10]PD-1結合アンタゴニストが、ニボルマブ、ランブロリズマブ(ペムブロリズマブ)およびピディリズマブからなる群から選択される、[5]に記載の医薬組成物。
[11]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニストである、[2]に記載の医薬組成物。
[12]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のPD-1との結合を阻害する、[11]に記載の医薬組成物。
[13]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のB7-1との結合を阻害する、[11]に記載の医薬組成物。
[14]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1およびB7-1両方との結合を阻害する、[11]に記載の医薬組成物。
[15]PD-L1結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、[12]~[14]のいずれか一方に記載の医薬組成物。
[16]PD-L1結合アンタゴニストが、YW243.55.S70、アテゾリズマブ、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブおよびMEDI4736(デュルバルマブ)からなる群から選択される、[11]に記載の医薬組成物。
[17]抗PD-L1抗体が、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[15]に記載の医薬組成物。
[18]抗PD-L1抗体が、配列番号25または26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、[15]に記載の医薬組成物。
[19]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-L2結合アンタゴニストである、[3]に記載の医薬組成物。
[20]PD-L2結合アンタゴニストが、抗体である、[19]に記載の医薬組成物。
[21]PD-L2結合アンタゴニストが、イムノアドヘシンである、[19]に記載の医薬組成物。
[22]抗GPC3抗体が、配列番号34のHVR-H1配列、配列番号35のHVR-H2配列および配列番号36のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号37のHVR-L1配列、配列番号38のHVR-L2配列および配列番号39のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[1]~[21]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[23]抗GPC3抗体が、第2の抗体が結合し得るエピトープと結合可能であり、ここで、前記の第2の抗体が、配列番号42のHVR-H1配列、配列番号43のHVR-H2配列および配列番号44のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号45のHVR-L1配列、配列番号46のHVR-L2配列および配列番号47のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[1]~[21]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[24]抗GPC3抗体が、ヒト化抗体である、[1]~[23]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[25]抗GPC3抗体が、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、[24]に記載の医薬組成物。
[26]癌が、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌および前立腺癌からなる群から選択される、[1]~[25]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0015】
本発明はまた、以下を提供する:
[27]抗GPC3抗体と組み合せて使用するための、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための医薬組成物であって、有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストを含む、医薬組成物。
[28]抗GPC3抗体が、PD-1系結合アンタゴニストの投与の前に、PD-1系結合アンタゴニストの投与と同時に、またはPD-1系結合アンタゴニストの投与後に投与される、[27]に記載の医薬組成物。
[29]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、[27]または[28]に記載の医薬組成物。
[30]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニストである、[29]に記載の医薬組成物。
[31]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する、[30]に記載の医薬組成物。
[32]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L1との結合を阻害する、[31]に記載の医薬組成物。
[33]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L2との結合を阻害する、[31]に記載の医薬組成物。
[34]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L1およびPD-L2両方との結合を阻害する、[31]に記載の医薬組成物。
[35]PD-1結合アンタゴニストが抗体である、[31]に記載の医薬組成物。
[36]PD-1結合アンタゴニストが、ニボルマブ、ランブロリズマブ(ペムブロリズマブ)およびピディリズマブからなる群から選択される、[31]に記載の医薬組成物。
[37]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニストである、[28]に記載の医薬組成物。
[38]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のPD-1との結合を阻害する、[37]に記載の医薬組成物。
[39]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のB7-1との結合を阻害する、[37]に記載の医薬組成物。
[40]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1およびB7-1両方との結合を阻害する、[37]に記載の医薬組成物。
[41]PD-L1結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、[38]~[40]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[42]PD-L1結合アンタゴニストが、YW243.55.S70、アテゾリズマブ、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブおよびMEDI4736(デュルバルマブ)からなる群から選択される、[37]に記載の医薬組成物。
[43]抗PD-L1抗体が、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[41]に記載の医薬組成物。
[44]抗PD-L1抗体が、配列番号25または26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、[41]に記載の医薬組成物。
[45]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-L2結合アンタゴニストである、[29]に記載の医薬組成物。
[46]PD-L2結合アンタゴニストが、抗体である、[45]に記載の医薬組成物。
[47]PD-L2結合アンタゴニストが、イムノアドヘシンである、[45]に記載の医薬組成物。
[48]抗GPC3抗体が、配列番号34のHVR-H1配列、配列番号35のHVR-H2配列および配列番号36のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号37のHVR-L1配列、配列番号38のHVR-L2配列および配列番号39のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[27]~[47]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[49]抗GPC3抗体が、第2の抗体が結合し得るエピトープと結合可能であり、ここで、前記の第2の抗体が、配列番号42のHVR-H1配列、配列番号43のHVR-H2配列および配列番号44のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号45のHVR-L1配列、配列番号46のHVR-L2配列および配列番号47のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[27]~[47]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[50]抗GPC3抗体が、ヒト化抗体である、[27]~[49]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[51]抗GPC3抗体が、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、[50]に記載の医薬組成物。
[52]癌が、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌および前立腺癌からなる群から選択される、[27]~[51]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0016】
本発明はまた、以下を提供する:
[53]有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体の組合せを含んでなる、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための医薬組成物。
[54]配合剤である、[53]に記載の医薬組成物。
[55]抗GPC3抗体が、PD-1系結合アンタゴニストの投与の前に、PD-1系結合アンタゴニストの投与と同時に、またはPD-1系結合アンタゴニストの投与後に投与される、[53]に記載の医薬組成物。
[56]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、[53]または[55]に記載の医薬組成物。
[57]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニストである、[56]に記載の医薬組成物。
[58]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する、[57]に記載の医薬組成物。
[59]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L1との結合を阻害する、[58]に記載の医薬組成物。
[60]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L2との結合を阻害する、[58]に記載の医薬組成物。
[61]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L1およびPD-L2両方との結合を阻害する、[58]に記載の医薬組成物。
[62]PD-1結合アンタゴニストが抗体である、[58]に記載の医薬組成物。
[63]PD-1結合アンタゴニストが、ニボルマブ、ランブロリズマブ(ペムブロリズマブ)およびピディリズマブからなる群から選択される、[58]に記載の医薬組成物。
[64]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニストである、[55]に記載の医薬組成物。
[65]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のPD-1との結合を阻害する、[64]に記載の医薬組成物。
[66]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のB7-1との結合を阻害する、[64]に記載の医薬組成物。
[67]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1およびB7-1両方との結合を阻害する、[64]に記載の医薬組成物。
[68]PD-L1結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、[65]~[67]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[69]PD-L1結合アンタゴニストが、YW243.55.S70、アテゾリズマブ、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブおよびMEDI4736(デュルバルマブ)からなる群から選択される、[64]に記載の医薬組成物。
[70]抗PD-L1抗体が、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[68]に記載の医薬組成物。
[71]抗PD-L1抗体が、配列番号25または26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、[68]に記載の医薬組成物。
[72]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-L2結合アンタゴニストである、[56]に記載の医薬組成物。
[73]PD-L2結合アンタゴニストが、抗体である、[72]に記載の医薬組成物。
[74]PD-L2結合アンタゴニストが、イムノアドヘシンである、[72]に記載の医薬組成物。
[75]抗GPC3抗体が、配列番号34のHVR-H1配列、配列番号35のHVR-H2配列および配列番号36のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号37のHVR-L1配列、配列番号38のHVR-L2配列および配列番号39のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[53]~[74]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[76]抗GPC3抗体が、第2の抗体が結合し得るエピトープと結合可能であり、ここで、前記の第2の抗体が、配列番号42のHVR-H1配列、配列番号43のHVR-H2配列および配列番号44のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号45のHVR-L1配列、配列番号46のHVR-L2配列および配列番号47のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[53]~[74]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[77]抗GPC3抗体が、ヒト化抗体である、[53]~[76]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[78]抗GPC3抗体が、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、[77]に記載の医薬組成物。
[79]癌が、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌および前立腺癌からなる群から選択される、[53]~[78]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0017】
本発明はまた、以下を提供する:
[80]PD-1系結合アンタゴニストと組み合せて使用するための、個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強するための医薬組成物であって、有効成分として抗GPC
3抗体を含んでなる、医薬組成物。
[81]抗GPC3抗体と組み合わせて使用するための、個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強するための医薬組成物であって、有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストを含む、医薬組成物。
[82]有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体の組合せを含む、個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強するための医薬組成物。
[83]抗GPC3抗体が、PD-1系結合アンタゴニストの投与の前に、PD-1系結合アンタゴニストの投与と同時に、またはPD-1系結合アンタゴニストの投与後に投与される、[80]~[82]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[84]癌が、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌および前立腺癌からなる群から選択される、[80]~[83]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0018】
本発明はまた、以下を提供する:
[85]個体において癌を治療するまたはその進行を遅延する方法であって、個体に、有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を投与することを含む、方法。
[86]抗GPC3抗体が、PD-1系結合アンタゴニストの投与の前に、PD-1系結合アンタゴニストの投与と同時に、またはPD-1系結合アンタゴニストの投与後に投与される、[85]に記載の方法。
[87]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、[85]または[86]に記載の方法。
[88]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニストである、[87]に記載の方法。
[89]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のそのリガンド結合パートナーとの結合を阻害する、[88]に記載の方法。
[90]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L1との結合を阻害する、[89]に記載の方法。
[91]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L2との結合を阻害する、[89]に記載の方法。
[92]PD-1結合アンタゴニストが、PD-1の、PD-L1およびPD-L2両方との結合を阻害する、[89]に記載の方法。
[93]PD-1結合アンタゴニストが抗体である、[89]に記載の方法。
[94]PD-1結合アンタゴニストが、ニボルマブ、ランブロリズマブ(ペムブロリズマブ)およびピディリズマブからなる群から選択される、[89]に記載の方法。
[95]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニストである、[81]に記載の方法。
[96]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のPD-1との結合を阻害する、[95]に記載の方法。
[97]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のB7-1との結合を阻害する、[95]に記載の方法。
[98]PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1およびB7-1両方との結合を阻害する、[95]に記載の方法。
[99]PD-L1結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、[96]~[98]のいずれか1つに記載の方法。
[100]PD-L1結合アンタゴニストが、YW243.55.S70、アテゾリズマブ、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブおよびMEDI4736(デュルバルマブ)からなる群から選択される、[95]に記載の方法。
[101]抗PD-L1抗体が、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のH
VR-H2配列および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[99]に記載の方法。
[102]抗PD-L1抗体が、配列番号25または26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、[99]に記載の方法。
[103]PD-1系結合アンタゴニストが、PD-L2結合アンタゴニストである、[87]に記載の方法。
[104]PD-L2結合アンタゴニストが、抗体である、[103]に記載の方法。
[105]PD-L2結合アンタゴニストが、イムノアドヘシンである、[103]に記載の方法。
[106]抗GPC3抗体が、配列番号34のHVR-H1配列、配列番号35のHVR-H2配列および配列番号36のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号37のHVR-L1配列、配列番号38のHVR-L2配列および配列番号39のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[85]~[105]のいずれか1つに記載の方法。
[107]抗GPC3抗体が、第2の抗体が結合し得るエピトープと結合可能であり、ここで、前記の第2の抗体が、配列番号42のHVR-H1配列、配列番号43のHVR-H2配列および配列番号44のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号45のHVR-L1配列、配列番号46のHVR-L2配列および配列番号47のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、[85]~[105]のいずれか1つに記載の方法。
[108]抗GPC3抗体が、ヒト化抗体である、[85]~[107]のいずれか1つに記載の方法。
[109]抗GPC3抗体が、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、[108]に記載の方法。
[110]癌が、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌および前立腺癌からなる群から選択される、[85]~[109]のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
本発明はまた、以下を提供する:
[111]PD-1系結合アンタゴニストと併用し、個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する方法であって、前記組成物が有効成分として抗GPC3抗体を含む方法。
[112]抗GPC3抗体と併用し、個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強するための方法であって、有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストを含む、前記方法。
[113]有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体の組合せを含んでなる、個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強するための方法。
[114]抗GPC3抗体が、PD-1系結合アンタゴニストの投与の前に、PD-1系結合アンタゴニストの投与と同時に、またはPD-1系結合アンタゴニストの投与後に投与される、[111]~[113]のいずれか1つに記載の方法。
[115]癌が、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌および前立腺癌からなる群から選択される、[111]~[114]のいずれか1つに記載の方法組成物。
【0020】
本発明はまた、以下を提供する:
[116]PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を含む、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための組合せ。
[117]抗GPC3抗体が、PD-1系結合アンタゴニストの投与の前に、PD-1系結合アンタゴニストの投与と同時に、またはPD-1系結合アンタゴニストの投与後に投与される、[116]に記載の組合せ。
[118]癌が、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌および前立腺癌からなる群から選択される、[116]または[117]に記載の組合せ。
【0021】
本発明はまた、以下を提供する:
[119](1)有効成分として抗GPC3抗体を含む医薬組成物
(2)容器
(3)個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための、PD-1系結合アンタゴニストと組み合わせた医薬組成物の投与のための指示を含む添付文書またはラベルを含むキット。
[120]有効成分としてPD-1系結合アンタゴニストを含む第1の医薬組成物と、有効成分として抗GPC3抗体を含む第2の医薬組成物とを含むキット。
[121]癌が、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌および前立腺癌からなる群から選択される、[119]または[120]に記載のキット。
【0022】
本発明はまた、以下を提供する:
[122]個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための医薬の製造における、PD-1系結合アンタゴニストの使用であって、ここで、該医薬が、PD-1系結合アンタゴニストを含み、医薬上許容される担体を含んでいてもよく、該治療が、抗GPC3抗体および含んでいてもよい医薬上許容される担体を含む組成物と組み合わせた該医薬の投与を含む、使用。
[123]個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための医薬の製造における、抗GPC3抗体の使用であって、ここで、該医薬が、抗GPC3抗体を含み、医薬上許容される担体を含んでいてもよく、該治療が、PD-1系結合アンタゴニストおよび含んでいてもよい医薬上許容される担体を含む組成物と組み合わせた該医薬の投与を含む、使用。
【発明の概要】
【0023】
本発明者らは、抗GPC3抗体を、ヒトPD-1系結合アンタゴニストと組み合わせることによって、癌患者において、抗GPC3抗体またはヒトPD-1系結合アンタゴニストが単独で使用される場合よりも良好な治療効果が達成され得ることを発見した。
【0024】
一態様では、個体に、有効量のヒトPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を投与することを含む、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための方法が、本明細書において提供される。
【0025】
別の態様では、有効量の、PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を投与することを含む、癌を有する個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する方法が、本明細書において提供される。例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、マクロファージおよび多核巨細胞を含む免疫細胞の、腫瘍組織への浸潤が挙げられる。別の例については、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、腫瘍が浸潤したリンパ球(TIL)におけるCD45陽性リンパ球、CD3ε陽性リンパ球およびCD8陽性Tリンパ球の増大が挙げられる。
【0026】
別の一態様では、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させるための医薬の製造におけるヒトPD-1系結合アンタゴニストの使用であって、該医薬は、ヒトPD-1系結合アンタゴニストを含み、薬学的に許容される担体を含んでいてもよく、該治療は、抗GPC3抗体を含む組成物(組成物は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)と併用した該医薬の投与を含む、使用が、本明細書で提供される。
【0027】
別の一態様では、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させるための医薬の製造における抗GPC3抗体の使用であって、該医薬は、抗GPC3抗体を含み、薬学的に許容される担体を含んでいてもよく、該治療は、ヒトPD-1系結合アンタゴニストを含む組成物(組成物は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)と併用した該医薬の投与を含む、使用が、本明細書で提供される。
【0028】
別の一態様では、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させることに用いるための、ヒトPD-1系結合アンタゴニストを含む組成物(組成物は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)であって、該治療は、第2の組成物と併用した前記組成物の投与を含み、第2の組成物は、抗GPC3抗体を含み、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい、組成物が、本明細書で提供される。
【0029】
別の一態様では、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させることに用いるための、抗GPC3抗体を含む組成物(組成物は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)であって、該治療は、第2の組成物と併用した前記組成物の投与を含み、第2の組成物は、ヒトPD-1系結合アンタゴニストを含み、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい、組成物が、本明細書で提供される。
【0030】
別の一態様では、PD-1系結合アンタゴニストを含む医薬(医薬は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)と、抗GPC3抗体を含む組成物(組成物は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)と組み合わせて該医薬を投与するための指示を含む添付文書とを含む、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させるためのキットが、本明細書で提供される。
【0031】
別の一態様では、PD-1系結合アンタゴニストを含む第1の医薬(該医薬は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)、および抗GPC3抗体を含む第2の医薬(該医薬は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)を含むキットが、本明細書で提供される。一部の実施形態では、このキットは、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させるために第1の医薬および第2の医薬を投与するための指示を含む添付文書をさらに含む。
【0032】
別の一態様では、抗GPC3抗体を含む医薬(該医薬は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)と、PD-1系結合アンタゴニストを含む組成物(該組成物は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい)と組み合わせて該医薬を投与するための指示を含む添付文書とを含む、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させるためのキットが、本明細書で提供される。
【0033】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、抗体である。一部の実施形態では、この抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である。一部の実施形態では、この抗体は、抗原結合断片である。一部の実施形態では、この抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvおよびFvからなる群から選択される。
【0034】
一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、そのリガンド結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、PD-L1へのPD-1の結合を阻害する。一部の実施形態では、この
PD-1結合アンタゴニストは、PD-L2へのPD-1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、PD-L1およびPD-L2の両方へのPD-1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、抗体である。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ(Nivolumab))、MK-3475(ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、ラムブロリズマブ(Lambrolizumab))、CT-011(ピディリズマブ(Pidilizumab))、PDR001、REGN2810、BGBA317、SHR-1210、AMP-514(MEDI0680)およびAMP-224からなる群から選択される。
【0035】
一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、PD-1へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、B7-1へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、PD-1およびB7-1の両方へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストは、YW243.55.S70、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブ(Avelumab)およびMEDI4736(デュルバルマブ(Durvalumab))からなる群から選択される。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖;ならびに/または配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、配列番号25もしくは26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、本明細書に引用により援用されるWO2010/077634および米国特許第8,217,149号に記載される抗体YW243.55.S70の3つの重鎖HVR配列および/または抗体YW243.55.S70の3つの軽鎖HVR配列を含む。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、抗体YW243.55.S70の重鎖可変領域配列および/または抗体YW243.55.S70の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。
【0036】
いくつかの実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストは、PD-L2結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0037】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットのいくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvおよびFvからなる群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、GC33またはコドリツズマブである。一部の実施形態では、この抗GPC3抗体は、配列番号42のHVR-H1配列、配列番号43のHVR-H2配列および配列番号44のHVR-H3配列を含む重鎖;ならびに/または配列番号45のHVR-L1配列、配列番号46のHVR-L2配列および配列番号47のHVR-L3配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、この抗GPC3抗体は、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、この抗GPC3抗体は、
配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖および/または配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。任意の他の実施形態と組み合わされ得る一部の実施形態では、抗GPC3抗体は、GC33でもコドリツズマブでもない。
【0039】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体(例えば、PD-1系結合アンタゴニスト抗体または抗GPC3抗体)は、非グリコシル化部位変異を含む。一部の実施形態では、この非グリコシル化部位変異は、置換変異である。一部の実施形態では、この置換変異は、アミノ酸残基N297、L234、L235および/またはD265(EU番号付け)にある。一部の実施形態では、この置換変異は、N297G、N297A、L234A、L235AおよびD265Aからなる群から選択される。一部の実施形態では、この置換変異は、D265A変異およびN297G変異である。一部の実施形態では、この非グリコシル化部位変異は、この抗体のエフェクター機能を低減させる。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体)は、EU番号付けに従って297位においてAsnからAlaへの置換を有するヒトIgG1である。
【0040】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、この癌はGPC3陽性癌である。一部の実施形態では、この癌は、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌、前立腺癌、または本明細書に記載される他の癌である。一部の実施形態では、この個体は、癌を有する、または癌と診断されている。一部の実施形態では、この個体中の癌細胞は、PD-L1を発現する。
【0041】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、この治療、またはヒトPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体の投与は、治療の休止後に、個体において持続性の応答をもたらす。一部の実施形態では、この抗GPC3抗体は、PD-1系結合アンタゴニストの前に、PD-1系結合アンタゴニストと同時に、またはPD-1系結合アンタゴニストの後に投与される。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体は、同じ組成物中にある。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体は、別々の組成物中にある。
【0042】
上述および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストおよび/または抗GPC3抗体は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内または鼻腔内投与される。上記および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、この治療は、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させるための化学療法剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、個体は、PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体との併用治療の前に、化学療法剤で治療されている。一部の実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよび/または抗GPC3抗体の組合せによって治療された個体は、化学療法剤治療に対して難治性である。本出願を通じて記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態は、癌を治療するまたはその進行を遅延させるための化学療法剤を投与することをさらに含む。
【0043】
上記および本明細書に記載される方法、使用、組成物およびキットの一部の実施形態では、この個体中のCD8 T細胞は、この組合せの投与の前と比較して増強されたプライミング、活性化、増殖および/または細胞溶解活性を有する。一部の実施形態では、CD8 T細胞の数は、この組合せの投与の前と比較して上昇する。一部の実施形態では、このCD8 T細胞は、抗原特異的CD8 T細胞である。
【0044】
本明細書に記載される種々の実施形態の特性のうち1つ、一部または全てが組み合わされて、本発明の他の実施形態を形成し得ることを、理解すべきである。本発明のこれらおよび他の態様は、当業者に明らかとなる。本発明のこれらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明によってさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】溶媒対照、1mg/kgまたは5mg/kgのmGC33のいずれかで週3回処置された各マウスにおける、ヒトGPC3を発現するHepa1-6腫瘍体積変化を示す図である。矢印は、注射の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。
図2A】溶媒対照または5mg/kgのmGC33のいずれかで処置されたマウスから摘出された組織のヘマトキシリンおよびエオシン染色(HE)またはF4/80免疫組織化学的染色(IHC)の画像を示す図である。
図2B】溶媒対照または5mg/kgのmGC33のいずれかで処置されたマウスから摘出された組織のヘマトキシリンおよびエオシン染色(HE)またはPD-L1免疫組織化学的染色(IHC)の画像を示す図である。矢印は、浸潤免疫細胞の細胞膜において観察されたPD-L1免疫反応性を示す。
図3A】単独療法(mGC33または10F.9G2(抗PD-L1))または組合せ(mGC33+10F.9G2)のいずれかで処置された各マウスにおける、ヒトGPC3を発現するCT26腫瘍体積変化を示す図である。矢印は、注射の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。各群における腫瘍体積の平均およびSDバーをプロットした。
図3B】単独療法(mGC33または10F.9G2(抗PD-L1))または組合せ(mGC33+10F.9G2)のいずれかで処置された、CT26/hGPC3担癌マウスにおける無増悪生存率を示す図である。増悪は、腫瘍の大きさが100mm3超に達した場合に定義された。
図4A】単独療法または組合せのいずれかで処置された各マウスにおけるヒトGPC3を発現するCT26腫瘍体積変化を示す図である。矢印は、投与の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。各群における腫瘍体積の平均およびSDバーをプロットした。5mg/kgまたは25mg/kgのmGC33、10F.9G2、5mg/kgまたは25mg/kgのmGC33+10F.9G2の腫瘍増殖阻害値は、それぞれ、52%、58%、68%、75%および85%であった。
図4B】29日目の個体別の腫瘍体積を示す図である。各群における腫瘍体積の平均(*)もプロットした。
図5A】溶媒対照、1mg/kg、5mg/kgまたは25mg/kgのmGC33、10F.9G2または5mg/kgもしくは25mg/kgのGC33および10F.9G2の組合せのいずれかで処置された各マウスにおける、ヒトGPC3を発現するHepa1-6腫瘍体積変化を示す図である。矢印は、注射の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。
図5B】34日目の各処置群における個体別の腫瘍面積または腫瘍面積の平均+SDを示す図である。腫瘍面積(mm2)は、各マウスから摘出された腫瘍組織のHE染色後に(腫瘍組織の長径の長さ(mm))x(腫瘍組織の短径の長さ(mm))によって算出した。各腫瘍組織の病理学的評価の結果をグラフの下に加えた。疾患の病理学的な進行(pPD)は、「腫瘍の退縮が見られなかった」と定義した。病理学的な部分退縮(pPR)は、「免疫細胞浸潤を伴う腫瘍細胞の変性および/または壊死が見られた」と定義した。病理学的な完全退縮(pCR)は、「腫瘍移植部位に腫瘍細胞が見られなかった」と定義した。
図6A】図示された種々の用量段階およびスケジュールを用いた単独療法またはmGC33および6E11(抗PD-L1)の組合せのいずれかで処置された各マウスにおける、ヒトGPC3を発現するHepa1-6腫瘍体積変化を示す図である。矢印は、注射の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。
図6B】単独療法またはmGC33および6E11の組合せのいずれかで処置された各マウス群における、ヒトGPC3を発現するHepa1-6腫瘍体積変化の平均値を示す図である。組合せ群における腫瘍増殖は、GC33または6E11単独療法のいずれかで処置された群におけるものと比較して大幅に阻害された。矢印は、注射の日付を示す。各群あたり5匹のマウスを処置した。*:Wilcoxon(SAS Institute Inc.)によるP<0.05
図6C】ヒトGPC3を発現するHepa1-6担癌マウスの各処置群における体重変化の平均値を示す図である。SDバーを加えた。
図7】各群における皮下組織における腫瘍組織の顕微鏡写真を示す図である。灰色部分は、壊死を伴わない腫瘍部分またはリンパ/肉芽組織を示す。青色部分は、壊死を伴う腫瘍部分または肉芽組織を示す。点線は、腫瘤の境界を示す。Lはリンパ組織を表し、Gは肉芽組織を表し、pCRは病理学的な完全奏功(病理組織スライド上に腫瘍組織なし)を表し、MORは、腫瘍の進行による瀕死屠殺動物を表す。
図8A】各処置群における間質に適応する腫瘤辺縁部におけるHE染色された腫瘍組織の代表的な顕微鏡写真を示す図である。マクロファージ/多核巨細胞を含む免疫細胞の浸潤を伴う腫瘍の壊死が全ての処置群において見られる。病変の重症度は以下の順序である:mGC33 5mg/kg単回+6E11 q7dx3>mGC33 5mg/kg単回または6E11 q7dx3。Sは腫瘤に適応する間質を表し、Pは腫瘤の辺縁を表す。
図8B】各処置群における間質に適応する腫瘤の辺縁部における腫瘍組織のF4/80 IHCの代表的な顕微鏡写真を示す図である。溶媒では、F4/80陽性細胞は、主に間質で見られる。一方、全ての処置群において、マクロファージ/多核巨細胞を含むF4/80陽性免疫細胞の重症度の増大が、主に腫瘤の辺縁で見られる。陽性細胞浸潤の重症度は、以下の順序である:mGC33 5mg/kg単回+6E11 q7dx3>mGC33 5mg/kg単回または6E11 q7dx3。Sは腫瘤に適応する間質を表し、Pは腫瘤の辺縁部を表す。
図8C】各処置群における間質に適応する腫瘤の辺縁部における腫瘍組織のPD-L1 IHCの代表的な顕微鏡写真を示す図である。溶媒では、PD-L1陽性反応は、主に腫瘍細胞の細胞質において弱い強度で見られる。一方、マクロファージ/多核巨細胞を含む免疫細胞におけるPD-L1陽性反応の重症度の増大は、全ての処置群において、弱~中等度の強度で見られる。Sは腫瘤に適応する間質を表し、Pは腫瘤の辺縁部を表す。
図9】各処置群において腫瘍組織において観察されたマーカー陽性細胞のパーセンテージを示す図である。各グラフに、各群における個々の値および平均がプロットされ、平均値が示されている。
【発明の詳細な説明】
【0046】
本願におけるデータは、抗GPC3抗体の抗PD-L1免疫療法との組合せが、腫瘍増殖の阻害の増強、奏効率の増大および持続性応答をもたらしたことを示す。本発明者らは、2種の療法を組み合わせることの利益を実証した:GPC3発現腫瘍細胞に対する細胞傷害性活性は、T細胞抑制性PD-1/PD-L1シグナル伝達の阻害と一緒に、治療効果の増大および持続性の長期間反応をもたらす。
【0047】
一態様では、有効量のヒトPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を投与することを含む、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延するための方法、組成物および使用が本明細書において提供される。
【0048】
別の態様では、有効量のヒトPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を投与することを含む、癌を有する個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強するための方法、組成物および使用が、本明細書において提供される。例えば、腫瘍細胞に対する免
疫応答の増強として、マクロファージおよび多核巨細胞を含む免疫細胞の腫瘍組織への浸潤が挙げられる。別の例については、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるCD45陽性リンパ球、CD3ε陽性リンパ球およびCD8陽性Tリンパ球の増大が挙げられる。
【0049】
I.定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明が、特定の組成物または生物学的系に限定されず、当然変動し得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定を意図しないこともまた、理解すべきである。
【0050】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの(a)分子」に対する言及は、任意選択的に、2つ以上のかかる分子の組合せなどを含む。
【0051】
用語「約」とは、本明細書で使用する場合、本技術分野の当業者に容易に公知のそれぞれの値についての、通常の誤差範囲を指す。本明細書の「約」値またはパラメータに対する言及は、その値またはパラメータ自体に関する実施形態を含む(および記述する)。
【0052】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、その態様および実施形態を「含む」、それら「からなる」およびそれら「から本質的になる」ことを含むと理解される。
【0053】
用語「PD-1系結合アンタゴニスト」とは、PD-1シグナル伝達系に対するシグナル伝達から生じるT細胞機能不全を除去するように、PD-1系結合パートナーとその結合パートナーのうちいずれか1または複数との相互作用を阻害する分子を指し、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)を回復または増強させる結果となる。本明細書で使用する場合、PD-1系結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。
【0054】
用語「PD-1結合アンタゴニスト」とは、PD-1とPD-L1、PD-L2などのその結合パートナーのうち1または複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する分子を指す。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、その結合パートナーのうち1または複数へのPD-1の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、このPD-1結合アンタゴニストは、PD-L1および/またはPD-L2へのPD-1の結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストには、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびに他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を通したTリンパ球媒介性シグナル伝達上に発現される細胞表面タンパク質により媒介されるか、又はそのようなタンパク質を通したネガティブ同時刺激シグナルを低減させて、機能不全T細胞の非機能不全性を低下させる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な一態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な一態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMK-3475(ラムブロリズマブ)である。別の具体的な一態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるCT-011(ピディリズマブ)である。別の具体的な一態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるAM
P-224またはAMP-514(MEDI0680)である。別の特定の態様では、PD-1アンタゴニストは、本明細書に記載されるPDR001、REGN2810、BGB A317およびSHR-1210からなる群から選択される。
【0055】
用語「PD-L1結合アンタゴニスト」とは、PD-L1とPD-1、B7-1などのその結合パートナーのうちいずれか1または複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する分子を指す。一部の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L1の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、このPD-L1結合アンタゴニストは、PD-1および/またはB7-1へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L1結合アンタゴニストには、PD-L1とPD-1、B7-1などのその結合パートナーのうち1または複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびに他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を通したTリンパ球媒介性シグナル伝達上に発現される細胞表面タンパク質により媒介されるか、又はそのようなタンパク質を通したネガティブ同時刺激シグナルを低減させて、機能不全T細胞の非機能不全性を低下させる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。一部の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。具体的な一態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるYW243.55.S70またはアテゾリズマブである。別の具体的な一態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMDX-1105である。別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるアベルマブである。なお別の具体的な一態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMPDL3280Aである。なお別の具体的な一態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMEDI4736(デュルバルマブ)である。
【0056】
用語「PD-L2結合アンタゴニスト」とは、PD-L2とPD-1などのその結合パートナーのうちいずれか1または複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する分子を指す。一部の実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、その結合パートナーのうち1または複数へのPD-L2の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、このPD-L2結合アンタゴニストは、PD-1へのPD-L2の結合を阻害する。一部の実施形態では、このPD-L2アンタゴニストには、PD-L2とPD-1などのその結合パートナーのうちいずれか1または複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または干渉する抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびに他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、機能不全性T細胞をあまり機能不全でなくする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ように、PD-L2を介したシグナル伝達を媒介したTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される陰性共刺激シグナルを低減させる。一部の実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0057】
用語「機能不全」とは、免疫機能不全の文脈において、抗原性刺激に対する免疫応答性が低減した状態を指す。この用語は、消耗、および/または、抗原認識が生じ得るが、次の免疫応答が、感染または腫瘍増殖を制御するには効果がないアネルギーの、両方の共通要素を含む。
【0058】
用語「機能不全性」は、本明細書で使用する場合、抗原認識に対する耐性または不応答性、具体的には、抗原認識を下流のT細胞エフェクター機能、例えば、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)および/または標的細胞死滅へと転換する能力の障害もまた含む。
【0059】
用語「アネルギー」(anergy)とは、T細胞受容体を介して伝達される不完全または不十分なシグナル(例えば、ras活性化の非存在下での細胞内Ca+2増加)から生じる、抗原刺激に対する不応答性の状態を指す。T細胞アネルギーは、共刺激の非存在下での抗原による刺激の際にも生じ得、これによって、共刺激の情況であっても、抗原による引き続く活性化に対して耐性になる細胞を生じる。この不応答性状態は、インターロイキン-2の存在によってしばしば覆され得る。アネルギー性T細胞は、クローン増殖を受けず、および/またはエフェクター機能を獲得しない。
【0060】
用語「消耗」とは、多くの慢性感染および癌の間に生じる持続性のTCRシグナル伝達から生じるT細胞機能不全の状態としての、T細胞消耗を指す。これは、不完全なまたは欠損したシグナル伝達を介してではなく、持続性のシグナル伝達から生じるという点で、アネルギーから識別される。これは、乏しいエフェクター機能、阻害受容体の持続性の発現、および機能的エフェクターまたはメモリーT細胞のものとは異なる転写状態によって規定される。消耗は、感染および腫瘍の最適な制御を防止する。消耗は、外的陰性調節経路(例えば、免疫調節性サイトカイン)ならびに細胞固有の陰性調節(共刺激)経路(PD-1、B7-H3、B7-H4など)の両方から生じ得る。
【0061】
「T細胞機能を増強する」とは、持続性のもしくは増幅された生物学的機能を有するように、または消耗したもしくは不活性なT細胞を再生もしくは再活性化するようにT細胞を誘導する、そのようにさせるまたはそのように刺激することを意味する。T細胞機能を増強することの例には、以下が含まれる:介入前のそのレベルと比較した、CD8+T細
胞からのγ-インターフェロンの増加した分泌、増加した増殖、増加した抗原応答性(例えば、ウイルス、病原体または腫瘍のクリアランス)。一実施形態では、増強のレベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%である。この増強を測定する方法は、当業者に公知である。
【0062】
「T細胞機能不全性障害」は、抗原性刺激に対する応答性の減少によって特徴付けられる、T細胞の障害または状態である。特定の一実施形態では、T細胞機能不全性障害は、PD-1を介した不適切な増加したシグナル伝達と特異的に関連する障害である。別の一実施形態では、T細胞機能不全性障害は、T細胞が、アネルギー性であるか、またはサイトカインを分泌する能力、増殖する能力もしくは細胞溶解活性を実行する能力が減少している、障害である。具体的な一態様では、この減少した応答性は、免疫原を発現する病原体または腫瘍の、制御の効果がなくなる。T細胞機能不全によって特徴付けられるT細胞機能不全性障害の例としては、未解決の急性感染、慢性感染および腫瘍免疫が挙げられる。
【0063】
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識およびクリアランスを逃れるプロセスを指す。したがって、治療概念として、腫瘍免疫は、かかる回避が減弱され、腫瘍が免疫系によって認識および攻撃される場合に、「治療される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍収縮および腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0064】
「免疫原性」とは、特定の物質が免疫応答を誘発する能力を指す。腫瘍は、免疫原性であり、腫瘍免疫原性を増強させることは、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスを助ける。腫瘍免疫原性を増強させることの例には、PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体による治療が含まれる。
【0065】
「持続性の応答」とは、治療の休止後に腫瘍増殖を低減させることに対する持続性の効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して、同じまたはより小さいままであり得る。一部の実施形態では、この持続性の応答は、治療持続期間と少な
くとも同じ持続期間、治療持続期間の少なくとも1.5×、2.0×、2.5×または3.0×の長さの持続期間を有する。
【0066】
用語「医薬製剤」とは、活性成分の生物活性を有効にするような形態であり、その製剤が投与される対象に対して許容できないほどに毒性であるさらなる成分を含まない、調製物を指す。かかる製剤は、滅菌状態である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、使用される活性成分の有効用量を提供するために、対象哺乳動物に合理的に投与され得る賦形剤である。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「治療」とは、臨床病理学の過程の間に、治療される個体または細胞の天然の過程を改変するように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、疾患進行の速度を減少させること、病状を改善または緩和すること、および寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、癌に関連付けられる一又は複数の症状が緩和又は消去される場合、個体は成功裏に「治療」されたことになる。このような症状の緩和又は消去には、癌細胞の増殖の低減(又は癌細胞の破壊)、腫瘍増大の低減、疾患に起因する症状の低減、疾患罹患者の生活の質の上昇、疾患を治療するために必要な他の薬剤の用量の減少、および/または個体生存の延長が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書で使用する場合、「疾患の進行を遅延させる」とは、疾患(例えば、癌)の発達を延期する、邪魔する、減速する、遅らせる、安定化する、および/または先延ばしにすることを意味する。この遅延は、治療されている疾患および/または個体の履歴に依存して、変動する長さの時間であり得る。当業者に明らかなように、十分なまたは顕著な遅延は、個体が疾患を発達させないという点において、事実上、予防を包含し得る。例えば、後期癌、例えば、転移の発達が、遅延され得る。
【0069】
「有効量」は、特定の障害の測定可能な改善または予防をもたらすために必要とされる、少なくとも最小量である。本明細書では、有効量は、患者の病状、年齢、性別および体重、ならびに抗体が個体において所望の応答を惹起する能力などの因子に従って変動し得る。有効量は、治療的に有益な効果が治療の任意の毒性または有害な効果を上回る量でもある。予防的使用について、有益なまたは所望の結果には、リスクを排除もしくは低減させること、重症度を低下させること、または疾患、その合併症、および疾患の発達の間に示される中間の病理学的表現型の生化学的、組織学的および/もしくは行動学的症候を含む疾患の発病を遅延させることなどの結果が含まれる。治療的使用について、有益なまたは所望の結果には、疾患から生じる1もしくは複数の症候を減少させること、疾患に罹患している者の生活の質を増加させること、疾患を治療するために必要とされる他の薬物療法の用量を減少させること、標的化などを介した別の療法の効果を増強すること、疾患の進行を遅延させること、および/または生存を延長させることなどの臨床結果が含まれる。癌または腫瘍の場合、有効量の薬物は、癌細胞の数を低減させること;腫瘍サイズを低減させること;末梢臓器中への癌細胞浸潤を阻害すること(即ち、ある程度まで減速させること、または望ましくは停止させること);腫瘍転移を阻害すること(即ち、ある程度まで減速させること、または望ましくは停止させること);腫瘍増殖をある程度まで阻害すること;および/または障害と関連する症候のうち1もしくは複数をある程度まで軽減することにおいて、効果を有し得る。有効量は、1または複数の投与で投与され得る。本発明の目的のために、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、直接的または間接的のいずれかで予防的または治療的処置を達成するために十分な量である。臨床的状況において理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1または複数の治療剤を投与する観点から考慮されてよく、1または複数の他の薬剤と併せて所望の結果が達成され得るまたは達成される場合、単一の薬剤が有効量で与えられたとみ
なされ得る。
【0070】
本明細書で使用する場合、「~と併せて」とは、別の治療モダリティーに加えた、1つの治療モダリティーの投与を指す。このように、「~と併せて」とは、個体への他の治療モダリティーの投与の前、その間またはその後の、1つの治療モダリティーの投与を指す。
【0071】
「障害」は、哺乳動物を問題の障害に罹りやすくする病理学的状態を含む慢性および急性の障害または疾患が含まれるがこれらに限定されない、治療から利益を得る任意の状態である。
【0072】
用語「細胞増殖性疾患」および「増殖性疾患」とは、ある程度の異常な細胞増殖と関連する障害を指す。一実施形態では、この細胞増殖性疾患は、癌である。一実施形態では、この細胞増殖性疾患は、腫瘍である。
【0073】
「腫瘍」とは、本明細書で使用する場合、悪性であるか良性であるかに関わらない、全ての新生物性の細胞増殖(growth)および増殖(proliferation)、ならびに全ての前癌性および癌性の細胞および組織を指す。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」および「腫瘍」は、本明細書では、相互に排他的に言及されるわけではない。
【0074】
用語「癌」および「癌性」とは、典型的には調節されない細胞増殖によって特徴付けられる哺乳動物における生理的状態を指す、またはかかる状態を記述する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病またはリンパ系腫瘍が挙げられるがこれらに限定されない。かかる癌のより特定の例としては、扁平上皮癌(例えば、上皮性扁平細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺扁平上皮癌腫などの肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌および消化管間質癌を含む胃(gastric)または胃(stomach)癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、尿路の癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝細胞癌、肛門癌、陰茎癌、メラノーマ、表在性伸展メラノーマ、悪性黒子型メラノーマ、末端黒子型メラノーマ、結節性メラノーマ、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症と関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するもの)、メイグス症候群、脳、および頭頸部癌、ならびに関連する転移が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、本発明の抗体による治療に適した癌には、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、膠芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝癌、膵臓癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、頭頸部癌、卵巣癌、中皮腫および多発性骨髄腫が含まれる。一部の実施形態では、癌は、小細胞肺癌、神経膠芽腫、神経芽腫、メラノーマ、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)および肝細胞癌から選択される。さらに、一部の実施形態では、癌は、これらの癌の転移型を含む、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、神経膠芽腫、乳癌および肝細胞癌から選択される。
【0075】
用語「細胞傷害性剤」とは、本明細書で使用する場合、細胞にとって有害な(例えば、細胞死を引き起こす、増殖を阻害する、または細胞機能を他の方法で邪魔する)、任意の
薬剤を指す。細胞傷害性剤としては、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125
90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位
体);化学療法剤;増殖阻害性剤;酵素およびその断片、例えば核酸分解酵素;および毒素、例えば、低分子毒素、または、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素(それらの断片および/もしくは変異体を含む)が挙げられるがこれらに限定されない。例示的な細胞傷害性剤としては、抗微小管剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤、LDH-Aの阻害剤、脂肪酸生合成の阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、および癌代謝の阻害剤から選択され得る。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、タキサンである。一実施形態では、このタキサンは、パクリタキセルまたはドセタキセルである。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、白金剤である。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、EGFRのアンタゴニストである。一実施形態では、このEGFRのアンタゴニストは、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えば、エルロチニブ)である。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、RAF阻害剤である。一実施形態では、このRAF阻害剤は、BRAFおよび/またはCRAF阻害剤である。一実施形態では、このRAF阻害剤は、ベムラフェニブである。一実施形態では、この細胞傷害性剤は、PI3K阻害剤である。
【0076】
「化学療法薬」としては、ナイトロジェンマスタード類似体、アルキルスルホネート、エチレンイミン、ニトロソウレア、エポキシド、その他のアルキル化剤、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、その他の代謝拮抗剤、ビンカアルカロイドまたは類似体、ポドフィロトキシン誘導体、カンプトテカン(Camptothecan)類似体、コルヒチン誘導体、タキサン、その他の植物アルカロイドまたは天然物、アクチノマイシン、アントラサイクリンまたは関連物質、その他の細胞傷害性抗生物質、白金化合物、メチルヒドラジン、キナーゼ阻害剤、酵素、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、レチノイド、免疫チェックポイント阻害剤、抗体およびその他の分子標的薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
「化学療法剤」としてはまた、癌の治療において有用な化合物が挙げられる。化学療法剤の例としては、エルロチニブ(タルセバ(商標)、ジェネンテック/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(ベルケード(商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、エピガロカテキンガレート、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH-A)、フルベストラント(フェソロデックス(商標)、アストラゼネカ)、スニチニブ(スーテント(商標)、ファイザー/Sugen)、レトロゾール(フェマーラ(商標)、ノバルティス)、イマチニブメシル酸塩(グリベック(商標)、ノバルティス)、フィナスネート(finasunate)(バタラニブ(商標)、ノバルティス)、オキサリプラチン(エロキサチン(商標)、サノフィ)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(商標)、ワイス)、ラパチニブ(タイケルブ(商標)、GSK572016、グラクソスミスクライン)、ロナファルニブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(ネクサバール(商標)、バイエルラボ)、ゲフィチニブ(イレッサ(商標)、アストラゼネカ)、AG1478、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシトキサン(商標)シクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)およびウレドパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロメラミン(trimethylomelamine)などのエチレンイミンおよびメチルメラミン;アセ
トゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(トポテカンおよびイリノテカンなど);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビセレシン合成アナログなど);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);副腎皮質ステロイド(プレドニゾンおよびプレドニゾロンなど);シプロテロンアセテート;5α-レダクターゼ(フィナステリドおよびデュタステリドなど);ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタット ドラスタチン;アルデスロイキン、タルク デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1など);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロマファジン(chlomaphazine)、クロロホスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア類、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンγ1Iおよびカリケアマイシンω1I(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.1994 33:183~186);ダイネミシン(dynemicin)Aを含むダイネミシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連の色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルチノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン(calusterone)、ドロモスタノロンプロピアナート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン(bisantrene);エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォミチン(elfomithine);エリプチニウムアセタート(elliptinium acetate);エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレ
ア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシンおよびアンサミトシン(ansamitocin);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダムノール(mopidamnol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンAおよびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、タキソール(パクリタキセル;ブリストルマイヤーズスクイブ オンコロジー、Princeton、N.J.)、アブラキサン(商標)(cureモルホールフリー)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Ill.)およびタキソテール(商標)(ドセタキセル、ドキセタキセル(doxetaxel);サノフィアベンティス);クロラムブシル;ジェムザール(商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルビン(商標)(ビノレルビン);ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(ゼローダ(商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸および誘導体が挙げられる。
【0078】
化学療法剤としては、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(アバスチン(商標)、ジェネンテック);セツキシマブ(アービタックス(商標)、Imclone);パニツムマブ(ベクチビックス(商標)、アムジェン)、リツキシマブ(リツキサン(商標)、ジェネンテック/バイオジェン Idec)、ペルツズマブ(オムニターグ(商標)、2C4、ジェネンテック)、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標)、ジェネンテック)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)および抗体薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガミシン(マイロターグ(商標)、ワイス)などの抗体が挙げられる。本発明の化合物との併用薬剤としての治療可能性を有するさらなるヒト化モノクローナル抗体には、以下が含まれる:アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピニューズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ(cedelizumab)、セルトリズマブペゴル、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガミシン、イノツズマブオゾガミシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、パキセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レス
リズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トラリズマブ(toralizumab)、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、およびインターロイキン-12 p40タンパク質を認識するように遺伝的に改変された組換えの排他的にヒト配列の全長IgG1λ抗体である抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、ワイスリサーチおよびアボットラボラトリーズ)。
【0079】
「増殖阻害性剤」とは、本明細書で使用する場合、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の増殖を阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態では、増殖阻害性剤は、その抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を防止または低減させる増殖阻害性抗体である。別の一実施形態では、この増殖阻害性剤は、S期にある細胞の百分率を顕著に低減させる薬剤であり得る。増殖阻害性剤の例としては、細胞周期進行を(S期以外の場所で)ブロックする薬剤、例えば、G1停止およびM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。古典的なM期ブロッカーとしては、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、ならびにトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシドおよびブレオマイシンが含まれる。G1停止させる薬剤、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシルおよびara-Cは、S期停止にも波及する。さらなる情報は、MendelsohnおよびIsrael編、The Molecular Basis of Cancer、Chapter 1、Murakami等による表題「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」(W.B.Saunders、Philadelphia、1995)の、例えばp.13中に見出され得る。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、イチイの木から共に誘導される抗癌薬物である。ヨーロッパイチイから誘導されたドセタキセル(タキソテール(商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセルの半合成アナログ(タキソール(商標)、ブリストルマイヤーズスクイブ)である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリンダイマーからの微小管のアセンブリを促進し、脱重合を防止することによって微小管を安定化して、細胞における有糸分裂の阻害を生じる。
【0080】
「放射線療法」とは、正常に機能するその能力または細胞を完全に破壊するその能力を制限するような細胞への十分な損傷を誘導するための定方向のガンマ線またはベータ線の使用を意味する。投薬量および治療の持続期間を決定するための当該技術分野で公知の多くの方法が存在することが理解される。典型的な治療は、1回限りの投与として与えられ、典型的な投薬量は、1日当たり10から200単位(グレイ)までの範囲である。
【0081】
治療を目的とした「対象」または「個体」とは、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園動物、競技用動物または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、乳牛などを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましくは、この哺乳動物はヒトである。
【0082】
本明細書で、用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、それらが所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を具体的にカバーする。
【0083】
「単離された」抗体は、同定されており、かつその天然の環境の成分から分離および/または回収された抗体である。その天然の環境の夾雑物成分は、抗体についての研究、診断的または治療的使用に干渉する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。一部の実施形態では、抗体は、(1)例えばLowry法によって決定されるように、95重量%超の抗体まで、一部の実施形態では99重量%超まで;(2)例えばスピニングカップシークエネーターの使用によって、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を取得するのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーもしくは銀染色を使用して、還元もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって均質になるまで、精製される。抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、単離された抗体には、組換え細胞内のin situの抗体が含まれる。しかし、通常、単離された抗体は、少なくとも1回の精製工程によって調製される。
【0084】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ4量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合によって重鎖に連結されるが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖および軽鎖は、一定の間隔を空けた鎖内ジスルフィド架橋もまた有する。各重鎖は、一方の末端において1つの可変ドメイン(VH)を有し、その後にいくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の末
端において1つの可変ドメイン(VL)を有し、その他方の末端において1つの定常ドメ
インを有する;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインとアラインメントされ、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインとアラインメントされる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の接触面を形成すると考えられる。
【0085】
用語「定常ドメイン」とは、免疫グロブリンの他の部分、抗原結合部位を含む可変ドメインと比較してより保存されたアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメイン(集合的に、CH)、なら
びに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含む。
【0086】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と呼ばれ得る。軽鎖の可変ドメインは
、「VL」と呼ばれ得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の部分であり
、抗原結合部位を含む。
【0087】
用語「可変」とは、可変ドメインの特定の部分が、抗体間で配列において広範に異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメインの全体に均等に分布するわけではない。可変性は、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメイン中の、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高く保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、ベータ-シート構造を接続し、一部の場合にはベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続された、ベータ-シート立体配置を主として取る4つのFR領域を含む。各鎖中のHVRは、FR領域によって、他方の鎖由来のHVRとごく接近して一緒に維持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、National Institute of
Health、Bethesda、Md.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害における抗体の関与を示す。
【0088】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)と呼ばれる、2つの明らかに異なる型のうちの1つに割り当てられ得る。
【0089】
用語IgG「アイソタイプ」または「サブクラス」は、本明細書で使用する場合、それらの定常領域の化学的および抗原性特性によって規定される免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。
【0090】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2へとさらに分けられ得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γおよびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元立体配置は、周知であり、例えば、Abbas等
Cellular and Mol.Immunology、4th ed.(W.B.Saunders,Co.、2000)に、一般に記載されている。抗体は、抗体と1または複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的または非共有結合的会合によって形成される、より大きい融合分子の一部であり得る。
【0091】
用語「全長抗体」、「インタクトな抗体」および「全抗体」は、本明細書で相互交換可能に使用されて、その実質的にインタクトな形態での抗体を指し、以下に定義される抗体断片ではない。これらの用語は、特に、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0092】
本明細書の目的のために、「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分または放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0093】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部分を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvおよびFv断片;ディ
アボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0094】
抗体のパパイン消化は、各々が単一抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、およびその名称が容易に結晶化するその能力を反映している1つの残留「Fc」断片を生じる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、なおも抗原を架橋することが可能である、1つのF(ab’)2断片を生じる。
【0095】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施形態では、二鎖Fv種は、緊密に非共有結合的に会合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる。単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が、二鎖Fv種中のものと類似の「ダイマー」構造で会合し得るように、柔軟なペプチドリンカーによって共有結合的に連結され得る。「Fv」は、各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VLダイマーの表面上の抗原結合部を規定する、この立体配置にある。集合的に、6つのHVRが、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりもより低い親和性ではあるが、抗原を認識および結合する能力を有する。
【0096】
Fab断片は、重鎖および軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の
第1の定常ドメイン(CH1)もまた含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1または複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数残基の追加の分、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有する、Fab’についての本明細書での命名である。F(ab’)2抗体断片は、元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対とし
て産生された。抗体断片の他の化学カップリングも公知である。
【0097】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に、scFvが抗原結合にとって所望の構造を形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの総説については、Pluckthuen、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol.113、RosenburgおよびMoore編、(Springer-Verlag、New York、1994)、pp.269~315を参照のこと。
【0098】
用語「ディアボディ(diabody)」とは、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインとペアリングするようにさせられ、2つの抗原結合部位を創出する。ディアボディは、二価または二重特異性であり得る。ディアボディは、例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson等、Nat.Med.9:129~134(2003);およびHollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448(1993)中に、より完全に記載されている。トリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody)もまた、Hudson等、Nat.Med.9:129~134(2003)中に記載されている。
【0099】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用する場合、実質的に均一な抗体の集団から取得された抗体を指し、例えば、この集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除き、同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物ではない抗体の特性を示す。特定の実施形態では、かかるモノクローナル抗体には、典型的には、標的を結合するポリペプチド配列を含む抗体が含まれ、ここで、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって取得されたものである。例えば、この選択プロセスは、複数のクローン、例えば、ハイブリドーマクローン、ファージクローンまたは組換えDNAクローンのプールからの独自のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列は、例えば、標的に対する親和性を改善するため、標的結合配列をヒト化するため、細胞培養物中でのその産生を改善するため、そのインビボでの免疫原性を低減させるため、多重特異性抗体を創出するためなどに、さらに変更され得、変更された標的結合配列を含む抗体もまた、本発明のモノクローナル抗体であることを、理解すべきである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンが夾雑していないという点で、有利である。
【0100】
修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から取得されるという抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするとは解釈されるべきではな
い。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば以下を含む種々の技術によって作製され得る:ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilstein、Nature、256:495~97(1975);Hongo等、Hybridoma、14(3):253~260(1995)、Harlow等、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2nd ed.1988);Hammerling等、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563~681(Elsevier、N.Y.、1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)、ファージディスプレイテクノロジー(例えば、Clackson等、Nature、352:624~628(1991);Marks等、J.Mol.Biol.222:581~597(1992);Sidhu等、J.Mol.Biol.338(2):299~310(2004);Lee等、J.Mol.Biol.340(5):1073~1093(2004);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467~12472(2004);およびLee等、J.Immunol.Methods 284(1-2):119~132(2004)を参照のこと)、ならびにヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を産生するためのテクノロジー(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits等、Nature 362:255~258(1993);Bruggemann等、Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;米国特許第5,545,806号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;および米国特許第5,661,016号;Marks等、Bio/Technology 10:779~783(1992);Lonberg等、Nature 368:856~859(1994);Morrison、Nature 368:812~813(1994);Fishwild等、Nature Biotechnol.14:845~851(1996);Neuberger、Nature Biotechnol.14:826(1996);ならびにLonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.13:65~93(1995)を参照のこと)。
【0101】
本明細書のモノクローナル抗体には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残部が、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそれらが所望の生物活性を示す限りにおいてかかる抗体の断片が、具体的に含まれる(例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851~6855(1984)を参照のこと)。キメラ抗体には、抗体の抗原結合領域が、例えば目的の抗原を用いてマカクザルを免疫化することによって産生される抗体から誘導される、PRIMATTZED(商標)抗体が含まれる。
【0102】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有する、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化
抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練するために行われ得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものと対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。このヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンの一部を含んでいてもよい。さらなる詳細については、例えば、Jones等、Nature 321:522~525(1986);Riechmann等、Nature 332:323~329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596(1992)を参照のこと。例えば、VaswaniおよびHamilton、Ann.Allergy、Asthma & Immunol.1:105~115(1998);Harris、Biochem.Soc.Transactions 23:1035~1038(1995);HurleおよびGross、Curr.Op.Biotech.5:428~433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号および米国特許第7,087,409号もまた参照のこと。
【0103】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生され、および/または本明細書に開示されるようなヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された抗体のものと対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に排除する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野で公知の種々の技術を使用して産生され得る。HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marks等、J.Mol.Biol.、222:581(1991)。ヒトモノクローナル抗体の調製のために、Cole等、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、p.77(1985);Boerner等、J.Immunol.、147(1):86~95(1991)に記載される方法もまた、利用可能である。van Dijkおよびvan de Winkel、Curr.Opin.Pharmacol.、5:368~74(2001)もまた参照のこと。ヒト抗体は、抗原性曝露に応答してかかる抗体を産生するように改変されているが、その内因性の遺伝子座が無効化にされている、トランスジェニック動物、例えば、免疫ゼノマウスに抗原を投与することによって調製され得る(例えば、XENOMOUSE(商標)テクノロジーに関しては、米国特許第6,075,181号および米国特許第6,150,584号を参照のこと)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマテクノロジーを介して生成されるヒト抗体に関しては、Li等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557~3562(2006)もまた参照のこと。
【0104】
「種依存的抗体」は、第2の哺乳動物種由来の抗原のホモログに対して有する結合親和性よりも、第1の哺乳動物種由来の抗原に対してより強い結合親和性を有する抗体である。通常、この種依存的抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合する」(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原のホモログに対して、ヒト抗原に対するその結合親和性よりも、少なくとも約50分の1または少なくとも約500分の1または少なくとも約1000分の1弱い、結合親和性を有する。この種依存的抗体は、上に定義したような種々の型の抗体のいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化またはヒト抗体である。
【0105】
用語「超可変領域」、「HVR」または「HV」とは、本明細書で使用する場合、配列が超可変であるおよび/または構造的に規定されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含む;3つはVH中(H1、H2、H3)、3つはVL中(L1、L2、L3)。天然抗体では、H3およびL3は、6つのHV
Rのうち最大の多様性を示し、特に、H3は、抗体に優れた特異性を付与することにおいて独自の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu等、Immunity 13:37~45(2000);JohnsonおよびWu、Methods in Molecular Biology 248:1~25(Lo編、Human Press、Totowa、N.J.、2003)を参照のこと。実際、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科の抗体は、軽鎖の非存在下で、機能的かつ安定である。例えば、Hamers-Casterman等、Nature 363:446~448(1993);Sheriff等、Nature Struct.Biol.3:733~736(1996)を参照のこと。
【0106】
いくつかのHVR表現が使用されており、本明細書において包含される。カバット相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されるものである(Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。Chothiaは、代わりに、構造的ループの位置に言及している(ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901~917(1987))。AbM HVRは、カバットのHVRとChothiaの構造的ループとの間の妥協を示しており、Oxford MolecularのAbM抗体モデル化ソフトウェアによって使用されている。「contact」HVRは、入手可能な複雑な結晶構造の解析に基づく。これらのHVRの各々由来の残基は、以下に示される。
【化1】
【0107】
HVRは、以下のような「拡大HVR」を含み得る:VL中の24-36または24-34(L1)、46-56または50-56(L2)および89-97または89-96(L3)ならびにVH中の26-35(H1)、50-65または49-65(H2)および93-102、94-102または95-102(H3)。これらの可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat等、上記に従って番号付けされる。
【0108】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるようなHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0109】
用語「カバットの可変ドメイン残基番号付け」または「カバットのアミノ酸位置番号付け」およびそれらのバリエーションは、Kabat等における、上記中の抗体のコンパイルの重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのために使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮またはそれら中への挿入に対応する、より少ないまたはさらなるアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後の単一アミノ酸
挿入(カバットに従う残基52a)および重鎖FRの残基82の後の挿入された残基(例えば、カバットに従う残基82a、82bおよび82cなど)を含み得る。残基のカバット番号付けは、抗体の配列と「標準的な」カバット番号付けされた配列との相同性の領域におけるアラインメントによって、所与の抗体について決定され得る。
【0110】
このカバット番号付けシステムは、可変ドメイン中の残基(軽鎖のおよそ残基1-107および重鎖の残基1-113)に言及する場合に、一般に使用される(例えば、Kabat等、Sequences of Immunological Interest.5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EUインデックス」は、免疫グロブリン重鎖定常領域中の残基に言及する場合に、一般に使用される(例えば、上記Kabat等において報告されたEUインデックス)。「カバットのEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0111】
表現「直鎖状抗体」とは、Zapata等(1995 Protein Eng、8(10):1057~1062)に記載される抗体を指す。簡潔に述べると、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0112】
本明細書で使用する場合、用語「結合する」、「~に特異的に結合する」または「~に対して特異的である」とは、測定可能かつ再現性のある相互作用、例えば、標的と抗体との間の結合を指し、生体分子を含む分子の不均一な集団の存在下での標的の存在を決定する。例えば、標的(これはエピトープであり得る)に結合するまたは特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも、より大きい親和性、結合活性で、より容易に、および/またはより長い持続期間で、この標的を結合する抗体である。一実施形態では、無関係な標的への抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、標的への抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されたタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の一実施形態では、特異的結合は、排他的な結合を含み得るが、それを必要としない。
【0113】
II.PD-1系結合アンタゴニスト
有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を個体に投与することを含む、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させるための方法が、本明細書で提供される。また、個体に、有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を投与することを含む、癌を有する個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する方法も、本明細書において提供される。例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、マクロファージおよび多核巨細胞を含む免疫細胞の、腫瘍組織への浸潤が挙げられる。別の例については、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるCD45陽性リンパ球、CD3ε陽性リンパ球およびCD8陽性Tリンパ球の増大が挙げられる。例えば、PD-1系結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストが挙げられる。PD-1(プログラム死1)は、当該技術分野で、「プログラム細胞死1」、PDCD1、CD279およびSLEB2とも呼ばれる。PD-L1(プログラム死リガンド1)は、当該技術分野で、「プログラム細胞死1リガンド1」、PDCD1LG1、CD274、B7-HおよびPD-L1とも呼ばれる。PD-L2(プログラム死リガンド2)は、当該技術分野で、「プログラム細胞死1リガンド2」、PDCD1LG2、CD27
3、B7-DC、BtdcおよびPDL2とも呼ばれる。一部の実施形態では、PD-1、PD-L1およびPD-L2は、ヒトのPD-1、PD-L1およびPD-L2である。
【0114】
一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、そのリガンド結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、このPD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1および/またはPD-L2である。ある実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L1の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-L1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。ある一実施形態では、このPD-L2結合アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L2の結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-L2結合パートナーは、PD-1である。このアンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質またはオリゴペプチドであり得る。
【0115】
一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体)である。一部の実施形態では、この抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ラムブロリズマブ)およびCT-011(ピディリズマブ)からなる群から選択される。一部の実施形態では、このPD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224またはAMP-514(MEDI0680)である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001、REGN2810、BGB A317およびSHR-1210からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1結合アンタゴニストは、YW243.55.S70、アテゾリズマブ、MPDL3280A、MDX-1105、アベルマブおよびMEDI4736(デュルバルマブ)からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634に記載された抗PD-L1である。MDX-1105は、BMS-936559としても知られ、WO2007/005874に記載された抗PD-L1抗体である。アベルマブは、WO2013079174に記載された抗PDL1抗体である。MEDI4736(デュルバルマブ)は、WO2011/066389およびUS2013/034559に記載された抗PD-L1モノクローナル抗体である。ニボルマブは、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558およびOPDIVO(商標)としても知られ、WO2006/121168に記載された抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブは、MK-3475、Merck 3475、ラムブロリズマブ、キイトルーダ(商標)およびSCH-900475としても知られ、WO2009/114335に記載された抗PD-1抗体である。CT-011は、hBAT、hBAT-1またはピディリズマブとしても知られ、WO2009/101611に記載された抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られ、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されたPD-L2-Fc融合可溶型受容体である。
【0116】
一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間および/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することが可能である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFvおよび(Fab’)2
片からなる群から選択される抗体断片である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、ヒト抗体であ
る。
【0117】
本発明の方法のために有用な抗PD-L1抗体およびそれを作製するための方法の例は、本明細書に引用することにより援用される、PCT特許出願WO2010/077634、WO2007/005874、WO2011/066389および米国特許出願公開第2013/034559号に記載されている。本発明において有用な抗PD-L1抗体は、かかる抗体を含む組成物を含め、癌を治療するために抗GPC3抗体と組み合わせて使用され得る。
【0118】
抗PD1抗体
一部の実施形態では、この抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」の代替的名称としては、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558またはニボルマブが挙げられる。一部の実施形態では、この抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。なおさらなる一実施形態では、配列番号1由来の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域および/または配列番号2由来の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離された抗PD-1抗体が提供される。なおさらなる一実施形態では、重鎖および/または軽鎖配列を含む単離された抗PD-1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号1に記載の重鎖配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、
(b)この軽鎖配列は、配列番号2に記載の軽鎖配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。
【0119】
抗PD-L1抗体
一部の実施形態では、製剤中の抗体は、重鎖および/または軽鎖配列中に、少なくとも1つのトリプトファン(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つ)を含む。一部の実施形態では、アミノ酸トリプトファンは、抗体のCDR領域、フレームワーク領域および/または定常領域中にある。一部の実施形態では、この抗体は、CDR領域中に2つまたは3つのトリプトファン残基を含む。一部の実施形態では、製剤中の抗体は、抗PD-L1抗体である。PD-L1(プログラム死リガンド1)は、PD-L1、B7-H1、B7-4、CD274およびB7-Hとしても知られ、膜貫通タンパク質であり、PD-1とのその相互作用は、T細胞活性化およびサイトカイン産生を阻害する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に結合する。本明細書に記載される方法において使用され得る抗PD-L1抗体の例は、本明細書に引用することにより援用される、PCT特許出願WO2010/077634A1および米国特許第8,217,149号に記載されるアテゾリズマブまたは抗PD-L1抗体である。
【0120】
一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間および/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することが可能である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFvおよび(Fab’)2
片からなる群から選択される抗体断片である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。
【0121】
WO2010/077634A1および米国特許第8,217,149号に記載される抗PD-L1抗体は、本明細書に記載される方法において使用され得る。一部の実施形態では、この抗PD-L1抗体は、配列番号3の重鎖可変領域配列および/または配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む。なおさらなる一実施形態では、重鎖および/または軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号3に記載の重鎖配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、
(b)この軽鎖配列は、配列番号4に記載の軽鎖配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。
【0122】
一実施形態では、この抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列を含む重鎖可変領域ポリペプチドを含み、ここで、
(a)このHVR-H1配列は、GFTFSX1SWIH(配列番号5)であり;
(b)このHVR-H2配列は、AWIX2PYGGSX3YYADSVKG(配列番号6)であり;
(c)このHVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり;
ここでさらに、X1は、DまたはGであり;X2は、SまたはLであり;X3は、Tまた
はSである。具体的な一態様では、X1はDであり;X2はSであり、X3はTである。
【0123】
ある態様では、このポリペプチドは、式:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)に従う、HVR間に並べられた可変領域重鎖フレームワーク配列をさらに含む。なおある態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。さらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列のうち少なくとも1つは、以下である:
HC-FR1は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号8)であり
HC-FR2は、WVRQAPGKGLEWV(配列番号9)であり
HC-FR3は、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)であり
HC-FR4は、WGQGTLVTVSA(配列番号11)である。
【0124】
なおさらなる一態様では、この重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含む可変領域軽鎖とさらに組み合わされ、ここで、
(a)このHVR-L1配列は、RASQX456TX78A(配列番号12)であ
り;
(b)このHVR-L2配列は、SASX9LX10S(配列番号13)であり;
(c)このHVR-L3配列は、QQX11121314PX15T(配列番号14)であり;
ここで、X4は、DまたはVであり;X5は、VまたはIであり;X6は、SまたはNで
あり;X7は、AまたはFであり;X8は、VまたはLであり;X9は、FまたはTであり
;X10は、YまたはAであり;X11は、Y、G、FまたはSであり;X12は、L、Y、FまたはWであり;X13は、Y、N、A、T、G、FまたはIであり;X14は、H、V、P、TまたはIであり;X15は、A、W、R、PまたはTである。なおさらなる一態様では、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9
はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。
【0125】
なおさらなる一態様では、この軽鎖は、式:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)に従ってHVR間に並べられた可変領域軽鎖フレームワーク配列をさらに含む。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列のうち少なくとも1つは、以下である:
LC-FR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)であり
LC-FR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)であり
LC-FR3は、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)であり
LC-FR4は、FGQGTKVEIKR(配列番号18)である。
【0126】
別の一実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体または抗原結合断片が提供され、ここで、
(a)この重鎖は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3を含み、ここでさらに、
(i)このHVR-H1配列は、GFTFSX1SWIHであり;(配列番号5)
(ii)このHVR-H2配列は、AWIX2PYGGSX3YYADSVKG(配列番号6)であり
(iii)このHVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり、
(b)この軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含み、ここでさらに、
(i)このHVR-L1配列は、RASQX456TX78A(配列番号12)で
あり
(ii)このHVR-L2配列は、SASX9LX10Sであり;(配列番号13)か

(iii)このHVR-L3配列は、QQX11121314PX15Tであり;(配列番号14)
ここで、X1は、DまたはGであり;X2は、SまたはLであり;X3は、TまたはSで
あり;X4は、DまたはVであり;X5は、VまたはIであり;X6は、SまたはNであり
;X7は、AまたはFであり;X8は、VまたはLであり;X9は、FまたはTであり;X10は、YまたはAであり;X11は、Y、G、FまたはSであり;X12は、L、Y、Fまた
はWであり;X13は、Y、N、A、T、G、FまたはIであり;X14は、H、V、P、TまたはIであり;X15は、A、W、R、PまたはTである。具体的な一態様では、X1
Dであり;X2はSであり、X3はTである。別の一態様では、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。なお別の一態様では、X1はDであり;X2はSであり、X3はTであり、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり、X15はAである。
【0127】
さらなる一態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含み、かつ、
この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含む。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、配列番号8、9、10および11として示される。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、配列番号15、16、17および18として示される。
【0128】
なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0129】
なお別の一実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)およびRHWPGGFDY(配列番号21)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列をさらに含む、または
(b)この軽鎖は、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)およびQQYLYHPAT(配列番号24)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列をさらに含む。具体的な一態様では、この配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。
【0130】
ある態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含み、かつ、この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含む。ある態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、配列番号8、9、10および11として示される。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、I
I、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、配列番号15、16、17および18として示される。
【0131】
なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0132】
さらなる一実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PDL1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号25に記載の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、および/または
(b)この軽鎖配列は、配列番号4に記載の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
具体的な一態様では、この配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。ある態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含み、かつ、この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含む。更なる態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。さらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、配列番号8、9、10およびWGQGTLVTVSS(配列番号27)として示される。
なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、配列番号15、16、17および18として示される。
【0133】
なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、原核細胞における産生から生じる。
なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0134】
さらなる一態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含み、かつ、この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含む。なおさらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、以下である:
HC-FR1は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号29)であり、
HC-FR2は、WVRQAPGKGLEWVA(配列番号30)であり、
HC-FR3は、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)であり、
HC-FR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号27)である。
【0135】
なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、以下である:
LC-FR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)であり、
LC-FR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)であり、
LC-FR3は、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)であり、
LC-FR4は、FGQGTKVEIK(配列番号28)である。
【0136】
なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0137】
さらなる実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(c)この重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)およびRHWPGGFDY(配列番号21)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-
H3配列をさらに含み、
および/または
(d)この軽鎖は、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)およびQQYLYHPAT(配列番号24)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3配列をさらに含む。
具体的な一態様では、この配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。
【0138】
ある態様では、この重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含み、かつ、この軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)として、HVR間に並べられた1または複数のフレームワーク配列を含む。さらなる一態様では、これらのフレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、IIまたはIII配列に由来する。なおさらなる一態様では、この重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの重鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、配列番号8、9、10およびWGQGTLVTVSSASTK(配列番号31)として示される。
【0139】
なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、IIIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様では、これらの軽鎖フレームワーク配列のうち1または複数は、配列番号15、16、17および18として示される。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、このヒト定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な一態様では、このヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、このマウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる具体的な一態様では、この抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な一態様では、この最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。なおさらなる一実施形態では、このエフェクターなしFc変異は、定常領域中のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0140】
なおさらなる一実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号26に記載の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、または
(b)この軽鎖配列は、配列番号4に記載の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0141】
一部の実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なく
とも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、かつ、この重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖のN末端における1、2、3、4または5つのアミノ酸残基は、欠失、置換または改変され得る。
【0142】
なおさらなる一実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号32に記載の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、および/または
(b)この軽鎖配列は、配列番号33に記載の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
なおさらなる一実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)この重鎖配列は、配列番号55に記載の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、および/または
(b)この軽鎖配列は、配列番号33に記載の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0143】
一部の実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この重鎖配列は、配列番号32または55のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、この軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%
の配列同一性を有し、かつ、この重鎖配列は、配列番号32または55のアミノ酸配列と、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0144】
一部の実施形態では、この単離された抗PD-L1抗体は、非グリコシル化されている。抗体のグリコシル化は、典型的には、N-結合型またはO-結合型のいずれかである。N-結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への糖(炭水化物)部分の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖(炭水化物)部分の酵素的付加のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的グリコシル化部位を創出する。O結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうち1つの付加を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンもまた使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、上記トリペプチド配列(N結合グリコシル化部位について)のうち1つが除去されるようにアミノ酸配列を変更することによって、簡便には達成される。この変更は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリンまたはスレオニン残基の、別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニンまたは保存的置換)による置換によって行われ得る。
【0145】
本明細書の実施形態のいずれかでは、この単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot寄託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD-L1、またはその変異体に結合し得る。
【0146】
なおさらなる一実施形態では、本明細書に記載される抗体のいずれかをコードする単離された核酸が提供される。一部の実施形態では、この核酸は、以前に記載した抗PD-L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現に適切なベクターをさらに含む。なおさらなる具体的な一態様では、このベクターは、核酸の発現に適切な宿主細胞中にある。なおさらなる具体的な一態様では、この宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。なおさらなる具体的な一態様では、この真核細胞は、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0147】
抗体またはその抗原結合断片は、当該技術分野で公知の方法を使用して、例えば、以前に記載した抗PD-L1抗体または抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を発現に適切な形態で含む宿主細胞を、かかる抗体または断片を産生するのに適切な条件下で培養すること、およびこの抗体または断片を回収することを含むプロセスによって、作製され得る。
【0148】
III.抗GPC3抗体
有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を個体に投与することを含む、個体において癌を治療するまたはその進行を遅延させるための方法が、本明細書で提供される。また、個体に、有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を投与することを含む、癌を有する個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する方法も本明細書において提供される。例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、マクロファージおよび多核巨細胞を含む免疫細胞の、腫瘍組織への浸潤が挙げられる。別の例については、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるCD45陽性リンパ球、CD3ε陽性リンパ球およびCD8陽性Tリンパ球の増大が挙げられる。
【0149】
ヒトグリピカン3(GPC3)と結合する抗体が、本明細書において提供される。「GPC3」の別名として、SGB、DGSX、MXR7、SDYS、SGBS、OCI-5、SGBS1およびGTR2-2が挙げられる。用語「GPC3」とは、本明細書において、任意のヒト供給源由来の任意の天然GPC3を指す。この用語は、「全長」およびプロセシングされていないGPC3ならびに限定されるものではないが、GPC3のC末端ペプチドを含む、細胞におけるプロセシングに起因するGPC3の任意の形態(例えば、成熟タンパク質)を包含する。この用語はまた、GPC3の天然に存在する変異体およびアイソフォーム、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体を包含する。例えば、GPC3の説明および配列は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号P51654.1で提供されている。
【0150】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、GPC3と結合し、癌細胞の細胞増殖(cell proliferation)または増殖(growth)を阻害する。いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、コドリツズマブ(codrituzumab)である。
【0151】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体としては、細胞傷害性物質とコンジュゲートしている1G12抗体(WO2003/100429)(BioMosaics Inc.によってカタログ番号B0134Rの下で販売される)を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(WO2007/137170)を挙げることができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、WO2006/006693またはWO2007/047291に記載されたヒト化抗GPC3抗体である。
【0153】
いくつかの実施形態では、抗GPC3抗体は、WO2006/006693またはWO2009/041062に記載されたヒト化抗GPC3抗体を含む。いくつかの実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含むヒト化抗GPC3抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3を含み、さらに
(i)HVR-H1配列は、DYSMH(配列番号34)であり、
(ii)HVR-H2配列は、WINTETGEPTYADDFKG(配列番号35)であり、
(iii)HVR-H3配列は、LY(配列番号36)であり、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含み、さらに
(i)HVR-L1配列は、KSSQSLLHSDGKTFLN(配列番号37)であり、
(ii)HVR-L2配列は、LVSRLDS(配列番号38)であり、
(iii)HVR-L3配列は、CQGTHFPRT(配列番号39)である。
特定の態様では、抗GPC3抗体は、ヒト化されている。ヒト化抗GPC3抗体は、ヒト化の鋳型として、配列番号40によって表される重鎖フレームワーク配列または配列番号41によって表される軽鎖フレームワーク配列に対して高い配列同一性を有する適切に選択されたヒトフレームワーク配列を使用して調製され得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗GPC3キメラ抗体またはヒト化抗GPC3抗体が本明細書において提供され、ここで、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3を含み、さらに
(i)HVR-H1配列は、DYEMH(配列番号42)であり、
(ii)HVR-H2配列は、ALDPKTGDTAYSQKFKG(配列番号43)であり、
(iii)HVR-H3配列は、FYSYTY(配列番号44)であり、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含み、さらに、
(i)HVR-L1配列は、RSSQSLVHSNRNTYLH(配列番号45)であり、
(ii)HVR-L2配列は、KVSNRFS(配列番号46)であり、
(iii)HVR-L3配列は、SQNTHVPPT(配列番号47)である。
ヒト化抗GPC3抗体は、ヒト化の鋳型として、配列番号48によって表される重鎖フレームワーク配列または配列番号49によって表される軽鎖フレームワーク配列に対して高い配列同一性を有する適切に選択されたヒトフレームワーク配列を使用して調製され得る。
【0155】
さらなる実施形態では、第2の抗体が結合し得るエピトープと結合可能であり、前記の第2の抗体が、
重鎖および軽鎖可変領域配列を含み、ここで、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3を含み、さらに
(i)HVR-H1配列は、DYEMH(配列番号42)であり、
(ii)HVR-H2配列は、ALDPKTGDTAYSQKFKG(配列番号43)であり、
(iii)HVR-H3配列は、FYSYTY(配列番号44)であり、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2およびHVR-L3を含み、さらに、
(i)HVR-L1配列は、RSSQSLVHSNRNTYLH(配列番号45)であり、
(ii)HVR-L2配列は、KVSNRFS(配列番号46)であり、
(iii)HVR-L3配列は、SQNTHVPPT(配列番号47)である、
ヒト化抗GPC3抗体が、本明細書において提供される。
【0156】
さらなる実施形態では、配列番号50によって表される重鎖可変領域の群から選択される重鎖可変領域および配列番号51によって表される軽鎖可変領域を含むヒト化抗GPC3抗体が提供される。さらなる代替非制限態様では、配列番号50によって表される重鎖可変領域の群から選択される重鎖可変領域および配列番号52によって表される軽鎖可変領域の群から選択される軽鎖可変領域を含むヒト化抗GPC3抗体が提供される。
【0157】
さらなる実施形態では、配列番号53によって表される重鎖可変領域および配列番号54によって表される軽鎖可変領域を含むヒト化抗GPC3抗体が提供される。
【0158】
本発明の抗GPC3抗体の代替の例として、細胞傷害性活性を有する抗GPC3抗体が挙げられる。本発明では、細胞傷害性活性の限定されない例として、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性または抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)活性、補体依存性細胞傷害性(CDC)活性およびT細胞をベースとする細胞傷害性活性が挙げられる。本発明では、CDC活性は、補体系によって引き起こされる細胞傷害性活性を意味する。他方、ADCC活性は、標的細胞の細胞膜上に発現された膜分子と結合可能な抗原結合ドメインを含む抗原結合分子のFc領域との、免疫細胞上に発現されたFcγ受容体を介した免疫細胞の結合によって、例えば、免疫細胞によって標的細胞を損傷する活性を意味する。対象の抗原結合分子が、ADCC活性を有するか、またはCDC活性を有するか否かは、当技術分野で公知の方法によって決定され得る(例えば、Current protocols
in Immunology, Chapter 7. Immunologic studies in humans、Coligan等., ed. (1993))。
【0159】
いくつかの実施形態では、本発明の抗GPC3抗体の代替の例として、細胞傷害性物質とコンジュゲートしている抗GPC3抗体が挙げられる。このような抗GPC3抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、例えば、WO2007/137170において具体的に
開示されているが、本発明のコンジュゲートは、そこに記載されるものに限定されない。具体的には、細胞傷害性物質は、以下に列挙された化学療法薬のいずれかであり得るか、またはAlley等(Curr. Opin. Chem. Biol. (2010)
14、529-537)もしくはWO2009/140242において開示される化合物であり得る。抗原-結合分子は、適切なリンカーなどを介してこれらの化合物とコンジュゲートしている。
【0160】
いくつかの実施形態では、本発明の抗GPC3抗体の代替の例として、Fcγ受容体に対する天然ヒトIgGのFc領域の結合活性よりも高い、Fcγ受容体に対する結合活性を有するFcγR結合が改変されたFc領域を含む抗GPC3抗体が挙げられる。改変は、得られたFc領域が、Fcγ受容体に対する天然ヒトIgG Fc領域の結合活性よりも高い、Fcγ受容体に対する結合活性を有する限り、任意の位置でのアミノ酸修飾を含み得る。抗原結合分子が、ヒトFc領域としてヒトIgG1 Fc領域を含有する場合には、改変は、好ましくは、Fc領域が、位置297(EU番号付け)と結合している糖鎖として、フコース含有糖鎖を含有することを可能にし、Fcγ受容体に対する天然ヒトIgG Fc領域の結合活性よりも高い、Fcγ受容体に対する結合活性をもたらすために有効である。このようなアミノ酸改変は、例えば、国際公開公報番号WO2007/024249、WO2007/021841、WO2006/031370、WO2000/042072、WO2004/029207、WO2004/099249、WO2006/105338、WO2007/041635、WO2008/092117、WO2005/070963、WO2006/020114、WO2006/116260、WO2006/023403およびWO2014/097648において報告されている。
【0161】
いくつかの実施態様では、本発明によって提供される抗GPC3抗体中に含有されるFc領域としてはまた、高い割合のフコース欠損糖鎖がFc領域と結合するか、または高い割合の二分N-アセチルグルコサミンがFc領域と結合する糖鎖の組成においてFc領域に加えられるように改変されたFc領域を含み得る。WO2006/046751およびWO2009/041062は、高い割合のフコース欠損糖鎖がFc領域と結合するか、または高い割合の二分N-アセチルグルコサミンが、Fc領域と結合する糖鎖の組成においてFc領域に加えられるように改変されたFc領域を含む抗GPC3抗体の特定の実施例を開示する。
【0162】
いくつかの実施態様では、本発明において使用され得る抗GPC3抗体として、アミノ酸残基がその等電点(pI)を変更するように改変された抗GPC3抗体が挙げられる。抗GPC3抗体における「アミノ酸残基の電荷の変更」の好ましい実施例は、WO2009/041062に記載されている。
【0163】
いくつかの実施態様では、抗GPC3抗体は、抗GPC3抗体の一次構造を構成するポリペプチドの翻訳後修飾を受けている抗体の修飾された形態を含む。ポリペプチドの翻訳後修飾とは、ポリペプチド生合成の際に翻訳されたポリペプチドに与えられる化学修飾を指す。例えば、N末端グルタミンのピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を受けている抗GPC3抗体もまた、当然のことながら、本発明の抗GPC3抗体中に含まれる。また、例えば、2個の硫黄原子間で形成される共有結合を意味する「ジスルフィド結合」によって連結している重鎖および軽鎖または重鎖を含む翻訳後修飾された抗GPC3抗体も、本発明の抗GPC3抗体中に含まれる。アミノ酸システイン中に含有されるチオール基は、ジスルフィド結合を形成し得るまたは第2のチオール基と架橋し得る。一般に、IgG分子において、CH1およびCL領域は、ジスルフィド結合によって連結され、重鎖を構成する2つのポリペプチドは、EU番号付けに基づいて位置226および229のシステイン残基間のジスルフィド結合によって連結される。ジスルフィド結合によるこのような連結を有する翻訳後修飾された抗GPC3抗体もまた、本発明の抗GPC3抗
体中に含まれる。
【0164】
なおさらなる実施態様では、本明細書に記載される抗体のいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施態様では、核酸は、これまでに記載された抗GPC3抗体のいずれかをコードする核酸の発現に適したベクターをさらに含む。なおさらなる特定の態様では、ベクターは、核酸の発現に適した宿主細胞中にある。なおさらなる特定の態様では、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。なおさらなる特定の態様では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0165】
抗体またはその抗原結合断片は、例えば、発現に適した形態のこれまでに記載された抗GPC3抗体または抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を含有する宿主細胞を、このような抗体または断片を製造するのに適した条件下で培養することおよび抗体または断片を回収することを含むプロセスによって、当技術分野で公知の方法を使用して製造され得る。
【0166】
IV.抗体調製
本明細書に記載される抗体は、抗体を生成するために当該技術分野で利用可能な技術を使用して調製され、その例示的な方法は、以下のセクションに、より詳細に記載されている。
【0167】
この抗体は、目的の抗原(即ち、PD-L1(例えばヒトPD-L1)またはGPC3(例えばヒトグリピカン3))に対するものである。好ましくは、この抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物へのこの抗体の投与は、その哺乳動物において治療的利益を生じ得る。
【0168】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8Mから10-13M、例えば、10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0169】
一実施形態では、Kdは、以下のアッセイによって記載されるように、Fabバージョンの目的の抗体およびその抗原を用いて実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、標識されていない抗原の滴定系列の存在下で、最小濃度の(125I)標識された抗原によってFabを平衡化し、
次いで、抗Fab抗体でコートされたプレートを用いて結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen等、J.Mol.Biol.293:865~881(1999)を参照のこと)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)が、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コートされ、引き続いて、室温(およそ23℃)で2から5時間にわたってPBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンでブロッキングされる。非吸着剤プレート(Nunc#269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]-抗原が
、目的のFabの希釈系列と混合される。次いで、目的のFabは、一晩インキュベートされる;しかし、このインキュベーションは、平衡化が達成されることを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)にわたって継続し得る。その後、この混合物は、室温でのインキュベーション(例えば1時間にわたる)のために、捕捉プレートに移される。次いで、溶液が除去され、プレートが、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))で8回洗浄される。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MICROSCINT-20(商標);Packard)が添加され、
プレートは、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で10分間計数される。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度は、競合的結合アッセイにおける使用のために選択される。
【0170】
別の実施形態によれば、Kdは、約10反応単位(RU)で、固定化されている抗原CM5チップと共に25℃でBIACORE(商標)-2000またはBIACORE(商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給業者の指示書に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位(RU)のカップリングされたタンパク質を達成するために、5μl/分の流速での注入前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/ml(約0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、1Mエタノールアミンが、未反応の基をブロッキングするために注入される。反応速度論的な測定のため、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を有するPBS(PBST)中2倍希釈系列のFab(0.78nMから500nM)が、およそ25μl/分の流速で25℃で注入される。会合速度(association rate)(kon)および解離速度(koff)は、会合および解離センサーグラムを同時にフィットさせることによって
、単純な一対一Langmuir結合モデル(BIACORE(商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して計算される。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして計算される。例えば、Chen等、J.Mol.Biol.
293:865~881(1999)を参照のこと。会合速度(on-rate)が、上記表面プラズモン共鳴アッセイによって106-1-1を超える場合、この会合速度(o
n-rate)は、ストップフロー搭載分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定した場合、漸増濃度の抗原の存在下で、PBS、pH7.2中の20nM抗抗原抗体(Fab形態)の、25℃における蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、16nm帯域通過)における増加または減少を測定する蛍光消光技術を使用することによって、決定され得る。
【0171】
(i)抗原調製
可溶型抗原またはその断片は、他の分子にコンジュゲートされていてもよいが、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。膜貫通分子、例えば、受容体について、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)は、免疫原として使用され得る。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞が、免疫原として使用され得る。かかる細胞は、天然供給源(例えば、癌細胞株)から誘導され得るか、または膜貫通分子を発現するように組換え技術によって形質転換された細胞であり得る。抗体を調製するために有用な他の抗原およびその形態は、当業者に明らかである。
【0172】
(ii)特定の抗体ベースの方法
ポリクローナル抗体は、好ましくは、適切な抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射によって、動物において惹起される。二官能性または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2またはR1N=C=NR、式中、RおよびR1は、異なるアルキル基である、を使用して、免疫化される種において免疫原性で
あるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンまたはダイズトリプシン阻害因子に、適切な抗原をコンジュゲートさせることが有用であり得る。
【0173】
動物は、例えば、100μgまたは5μgのタンパク質またはコンジュゲート(それぞれ、ウサギまたはマウスについて)を、3容積の完全フロイントアジュバントと組み合わせ、この溶液を複数の部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲートまたは誘導体に対して免疫化される。1カ月後、動物は、完全フロイントアジュバント中で、元の量の1/5から1/10のペプチドまたはコンジュゲートにより、複数の部位における皮下注射によって追加免疫される。7から14日間後、動物は出血させられ、血清が、抗体価についてアッセイされる。動物は、力価がプラトーになるまで追加免疫される。好ましくは、この動物は、同じ抗原のコンジュゲートではあるが、異なるタンパク質におよび/または異なる架橋試薬を介してコンジュゲートされたコンジュゲートで、追加免疫される。コンジュゲートは、タンパク質融合物として組換え細胞培養物中でも作製され得る。また、凝集剤、例えばミョウバンが、免疫応答を増強するために適切に使用される。
【0174】
本発明のモノクローナル抗体は、Kohler等、Nature、256:495(1975)によって最初に記載され、例えば、Hongo等、Hybridoma、14(3):253~260(1995)、Harlow等、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2nd ed.1988);Hammerling等、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563~681(Elsevier、N.Y.、1981)、およびヒト-ヒトハイブリドーマに関するNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265~268(2006)中にさらに記載されたハイブリドーマ法を使用して作製され得る。さらなる方法としては、例えば、ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の産生に関する米国特許第7,189,826号に記載される方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマテクノロジー(トリオーマテクノロジー)は、VollmersおよびBrandlein、Histology and Histopathology、20(3):927~937(2005)ならびにVollmersおよびBrandlein、Methods and Findings in Experimental
and Clinical Pharmacology、27(3):185~91(2005)に記載されている。
【0175】
種々の他のハイブリドーマ技術については、例えば、米国特許出願公開第2006/258841号;米国特許出願公開第2006/183887号(完全ヒト抗体)、米国特許出願公開第2006/059575号;米国特許出願公開第2005/287149号;米国特許出願公開第2005/100546号;米国特許出願公開第2005/026229号;ならびに米国特許第7,078,492号および米国特許第7,153,507号を参照のこと。ハイブリドーマ法を使用してモノクローナル抗体を産生するための例示的なプロトコールは、以下に記載される。一実施形態では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターは、免疫化のために使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生することが可能なリンパ球を惹起するために免疫化される。抗体は、本発明のポリペプチドまたはその断片、およびアジュバント、例えば、モノホスホリルリピドA(MPL)/トレハロースジコリノミコラート(TDM)(Ribi Immunochem.Research,Inc.、Hamilton、Mont.)の複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射によって、動物において惹起される。本発明のポリペプチド(例えば、抗原)またはその断片は、当該技術分野で周知の方法、例えば組換え方法を使用して調製され得、そのうちいくつかは、本明細書にさらに記載される。免疫化した動物由来の血清が、抗抗原抗体についてアッセイされ、追加免疫が、投与されてもよい。抗抗原抗体を産生する動物からリンパ球が単離される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。
【0176】
次いで、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、適切な融剤、例えばポリエチレングリコールを使用して、骨髄腫細胞と融合される。例えば、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、pp.59~103(Academic Press、1986)を参照のこと。効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル産生を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性である骨髄腫細胞が、使用され得る。例示的な骨髄腫細胞としては、マウス骨髄腫株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、Calif.USAから入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍由来のもの、およびアメリカンタイプカルチャーコレクション、Rockville、Md.USAから入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫(heteromyeloma)細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている(Kozbor、J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeur等、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、pp.51~63(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987))。
【0177】
こうして調製されたハイブリドーマ細胞は、適切な培地、例えば、未融合の親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1または複数の物質を含む培地中で、播種および増殖される。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する物質、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む(HAT培地)。好ましくは、無血清ハイブリドーマ細胞培養法は、例えば、Even等、Trends in Biotechnology、24(3)、105~108(2006)に記載されるように、動物由来の血清、例えば、ウシ胎児血清の使用を低減させるために使用される。
【0178】
ハイブリドーマ細胞培養物の生産性を改善するためのツールとしてのオリゴペプチドが、Franek、Trends in Monoclonal Antibody Research、111~122(2005)に記載されている。具体的には、標準的な培地は、特定のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)が、またはタンパク質加水分解物画分が富化されており、アポトーシスは、3から6アミノ酸残基から構成される合成オリゴペプチドによって顕著に抑制され得る。これらのペプチドは、ミリモルまたはそれより高い濃度で存在する。
【0179】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地は、本発明の抗体に結合するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によって、またはインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合性免疫吸着検定法(ELISA)によって、決定され得る。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード解析によって決定され得る。例えば、Munson等、Anal.Biochem.、107:220(1980)を参照のこと。
【0180】
所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、それらのクローンは、限界希釈手順によってサブクローニングされ得、標準的な方法によって増殖され得る。例えば、Goding、上記を参照のこと。この目的のために適切な培地には、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が含まれる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖され得る。こ
れらのサブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培地、腹水または血清から適切に分離される。ハイブリドーマ細胞からのタンパク質の単離のための1つの手順は、米国特許出願公開第2005/176122号および米国特許第6,919,436号に記載されている。この方法は、結合プロセスにおいて、最小の塩、例えば、リオトロピックな塩を使用すること、および好ましくは、溶出プロセスにおいて少量の有機溶媒もまた使用することを含む。
【0181】
(iii)ライブラリー由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性(単数または複数)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、種々の方法が、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてかかるライブラリーをスクリーニングするために、当該技術分野で公知である。さらなる方法は、例えば、Hoogenboom等、Methods in Molecular Biology 178:1~37(O’Brien等編、Human Press、Totowa、NJ、2001)に概説され、例えば、McCafferty等、Nature 348:552~554;Clackson等、Nature 352:624~628(1991);Marks等、J.Mol.Biol.222:581~597(1992);MarksおよびBradbury、Methods in Molecular Biology 248:161~175(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003);Sidhu等、J.Mol.Biol.338(2):299~310(2004);Lee等、J.Mol.Biol.340(5):1073~1093(2004);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467~12472(2004);ならびにLee等、J.Immunol.Methods 284(1-2):119~132(2004)にさらに記載されている。
【0182】
特定のファージディスプレイ法では、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、Winter等、Ann.Rev.Immunol.、12:433~455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについて次いでスクリーニングされ得るファージライブラリーにおいてランダムに組換えられる。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして、抗体断片をディスプレイする。免疫化された供給源由来のライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対して高親和性の抗体を提供する。あるいは、ナイーブなレパートリーが、Griffiths等、EMBO J、12:725~734(1993)に記載されるように、いずれの免疫化もなしに、広範な非自己およびまた自己抗原に対する抗体の単一供給源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローニングされ得る。最後に、ナイーブなライブラリーは、HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381~388(1992)によって記載されるように、再編成されていないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングし、高度に可変性のCDR3領域をコードし、再編成をインビトロで達成するためにランダム配列を含むPCRプライマーを使用することによって、合成的にも作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリーを記載している特許公開には、例えば、以下が含まれる:米国特許第5,750,373号ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、米国特許出願公開第2005/0119455号、米国特許出願公開第2005/0266000号、米国特許出願公開第2007/0117126号、米国特許出願公開第2007/0160598号、米国特許出願公開第2007/0237764号、米国特許出願公開第2007/0292936号および米国特許出願公開第2009/0002360号。
【0183】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体断片は、本明細書で、ヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
【0184】
(iv)キメラ、ヒト化およびヒト抗体
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許4,816,567号;およびMorrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851~6855(1984))に記載されている。1つの例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えばサル由来の可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる一例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変化している「クラススイッチされた」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0185】
特定の実施形態では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持したまま、ヒトに対する免疫原性を低減させるためにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する、1または複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、ヒト定常領域の少なくとも一部分もまた含んでいてもよい。一部の実施形態では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復させるまたは改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0186】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、AlmagroおよびFransson、Front.Biosci.13:1619~1633(2008)に概説され、例えば、Riechmann等、Nature 332:323~329(1988);Queen等、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029~10033(1989);米国特許第5,821,337号、米国特許第7,527,791号、米国特許第6,982,321号および米国特許第7,087,409号;Kashmiri等、Methods 36:25~34(2005)(SDR(a-CDR)移植を記載している);Padlan、Mol.Immunol.28:489~498(1991)(「リサーフェイシング」を記載している);Dall’Acqua等、Methods 36:43~60(2005)(「FRシャッフリング」を記載している);ならびにOsbourn等、Methods 36:61~68(2005)およびKlimka等、Br.J.Cancer、83:252~260(2000)(FRシャッフリングのための「ガイドされた選択」手法を記載している)にさらに記載されている。
【0187】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、特に限定されないが:「ベストフィット」方法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims等 J.Immunol.151:2296(1993)を参照のこと);軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列由来のフレームワーク領域(例えば、Carter等 Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285(1992);およびPresta等 J.Immunol、151:2623(1993)を参照のこと);ヒト成熟(体細胞性に変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、AlmagroおよびFransson、Front.Biosci.13:1619~1633(2008)を参照のこと);ならびにFRライブラリーをスクリーニングすることから誘導されたフレームワーク領域(例えば、Baca等、J.Biol.Chem.272:10678~10684(1997)およびRosok等、J.Biol.Chem.271:22611~22618(1996)
を参照のこと)が挙げられる。
【0188】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の種々の技術を使用して産生され得る。ヒト抗体は、van Dijkおよびvan de Winkel、Curr.Opin.Pharmacol.5:368~74(2001)ならびにLonberg、Curr.Opin.Immunol.20:450~459(2008)に、一般に記載されている。
【0189】
ヒト抗体は、抗原性曝露に応答して、ヒト可変領域を有するインタクトなヒト抗体またはインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって、調製され得る。かかる動物は、典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含み、これが、内因性の免疫グロブリン遺伝子座に置き換わっているか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体中にランダムに組み込まれている。かかるトランスジェニックマウスでは、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を取得するための方法の概説については、Lonberg、Nat.Biotech.23:1117~1125(2005)を参照のこと。例えば、XENOMOUSE(商標)テクノロジーを記載している米国特許第6,075,181号および米国特許第6,150,584号;HUMAB(登録商標)テクノロジーを記載している米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)テクノロジーを記載している米国特許第7,041,870号、およびVELOCIMOUSE(登録商標)テクノロジーを記載している米国特許出願公開第2007/0061900号もまた参照のこと。かかる動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに改変され得る。
【0190】
ヒト抗体は、ハイブリドーマベースの方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、記載されている(例えば、Kozbor J.Immunol、133:3001(1984);Brodeur等、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、pp.51~63(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987);およびBoerner等、J.Immunol.、147:86(1991)を参照のこと)。ヒトB細胞ハイブリドーマテクノロジーにより生成されたヒト抗体は、Li等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557~3562(2006)にも記載されている。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載している)およびNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265~268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載している)に記載された方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマテクノロジー(トリオーマテクノロジー)は、VollmersおよびBrandlein、Histology and Histopathology、20(3):927~937(2005)ならびにVollmersおよびBrandlein、Methods
and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology、27(3):185~91(2005)にも記載されている。
【0191】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。次いで、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わされ得る。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術は、以下に記載される。
【0192】
(v)抗体断片
抗体断片は、伝統的手段、例えば酵素的消化によって、または組換え技術によって、生成され得る。ある特定の状況では、抗体全体ではなく抗体断片を使用することに利点がある。より小さいサイズの断片は、迅速なクリアランスを可能にし、固形腫瘍への改善されたアクセスをもたらし得る。特定の抗体断片の概説については、Hudson等(2003)Nat.Med.9:129~134を参照のこと。
【0193】
種々の技術が、抗体断片の産生のために開発されてきた。伝統的には、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化を介して誘導された(例えば、Morimoto等、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107~117(1992);およびBrennan等、Science、229:81(1985)を参照のこと)。しかし、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞によって直接産生され得る。Fab、FvおよびScFv抗体断片は全て、E.coli中で発現され得、E.coliから分泌され得、したがって、大量のこれらの断片の容易な産生を可能にする。抗体断片は、上で議論した抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収され得、F(ab’)2断片を形成するために化学カップリングされ得る(Carter等、Bio/Technology 10:163~167(1992))。別の手法によれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、増加したインビボ半減期を有するFabおよびF(ab’)2断片は、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技術は、熟練の施術者に明らかである。特定の実施形態では、抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号;および米国特許第5,587,458号を参照のこと。FvおよびscFvは、定常領域を欠く、インタクトな結合部位を有する唯一の種である;したがって、これらは、インビボでの使用の間の低減された非特異的結合に適切であり得る。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにおいて、エフェクタータンパク質の融合を生じるように、構築され得る。Antibody Engineering、編Borrebaeck、上記を参照のこと。この抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号などに記載される、「直鎖状抗体」でもあり得る。かかる直鎖状抗体は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0194】
(vi)単一ドメイン抗体
一部の実施形態では、本発明の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む単一ポリペプチド鎖である。特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.;例えば、米国特許第6,248,516号を参照のこと)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部分からなる。
【0195】
(vii)抗体変異体
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列改変(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物特性を改善することが望まれ得る。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な変化を導入することによって、またはペプチド合成によって、調製され得る。かかる改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、および/またはかかるアミノ酸配列中への残基の挿入、および/またはかかるアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。欠失、挿入および置換の任意の組合せが、最終コンストラクトが所望の特性を有することを条件として、最終コンストラクトに到達するために行われ得る。アミノ酸の変更は、配列が作製された時点で、対象抗体アミノ酸配列中に導入され得る。
【0196】
(viii)置換、挿入および欠失変異体
特定の実施形態では、1または複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換変異導入のための目的の部位には、HVRおよびFRが含まれる。保存的置換は、表1中に、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表1中に、「例示的置換」の見出しの下に提供され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、産物が、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングされ得る。
【表1】
【0197】
アミノ酸は、共通する側鎖特性に従ってグループ分けされ得る:
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0198】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0199】
1つの型の置換変異体には、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1または複数の超可変領域残基を置換することが関与する。一般に、さらなる研究のために選択される得られた変異体(複数可)は、親抗体と比較して、特定の生物特性(例えば、増加した親和性、低減された免疫原性)における改変(modifications)(例えば、改善)を有し、
および/または親抗体の特定の生物特性を実質的に保持している。例示的な置換変異体は、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して簡便に生成され得る、親和性成熟抗体である。簡潔に述べると、1または複数のHVR残基が変異され、変異体抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0200】
変更(alterations)(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HV
R中に行われ得る。かかる変更は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol.Biol.207:179~196(2008)を参照のこと)、および/またはSDR(a-CDR)において作製され得、得られた変異体のVHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築しそこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom等、Methods in Molecular Biology 178:1~37(O’Brien等編、Human Press、Totowa、NJ、(2001))中に記載されている。親和性成熟の一部の実施形態では、多様性が、種々の方法のいずれか(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリングまたはオリゴヌクレオチド特異的変異導入法)によって、成熟のために選択された可変遺伝子中に導入される。次いで、二次ライブラリーが創出される。次いで、このライブラリーは、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法には、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4-6残基)がランダム化される、HVR特異的な手法を含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入またはモデル化を使用して、具体的に同定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3が標的化される場合が多い。
【0201】
特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、かかる変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1または複数のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変更(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVR中に作製され得る。かかる変更は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側であり得る。上に提供される変異体VHおよびVL配列の特定の実施形態では、各HVRのいずれかは未変更であるか、または1、2もしくは3以下のアミノ酸置換を含む。
【0202】
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域の同定のための有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989)Science、244:1081~1085に記載されるように、「アラニンスキャニング変異導入法」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響されるかどうかを決定するために、標的残基(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lysおよびglu)の残基または群が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられる。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置において導入され得る。あるいは、またはさらに、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基および隣接残基は、置換のための候補として、標的化または排除され得る。変異体は、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するために、スクリーニングされ得る。
【0203】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体としては、酵素(例えば、ADEPTについて)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの、抗体のN末端またはC末端への融合が挙げられる。
【0204】
(ix)グリコシル化変異体
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変更される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1または複数のグリコシル化部位が創出または除去されるように、アミノ酸配列を変更することによって、簡便に達成され得る。
【0205】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が変更され得る。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-結合によって一般に結合された、分枝状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright等 TIBTECH 15:26~32(1997)を参照のこと。このオリゴ糖には、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトースおよびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。一部の実施形態では、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体変異体を創出するために、行われ得る。
【0206】
一実施形態では、Fc領域を含む抗体変異体が提供され、ここで、Fc領域に結合した炭水化物構造は、ADCC機能を改善し得るフコースが低減されている、またはフコースを欠く。具体的には、野生型CHO細胞において産生された同じ抗体上のフコースの量と比較して低減されたフコースを有する抗体が、本明細書で企図される。即ち、これらは、別のやり方で、天然CHO細胞(例えば、天然グリコシル化パターンを生じるCHO細胞、例えば、天然FUT8遺伝子を含むCHO細胞)によって産生される場合に有するフコースよりも低い量のフコースを有することによって特徴付けられる。特定の実施形態では、この抗体は、その上のN-結合グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%または5%未満がフコースを含む抗体である。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%から80%まで、1%から65%まで、5%から65%まで、または20%から40%までであり得る。特定の実施形態では、この抗体は、その上のN-結合グリカンのいずれもがフコースを含まない抗体であり、即ち、ここで、この抗体は、完全にフコースがない、またはフコースを有さない、またはアフコシル化されている。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析によって測定される場合、Asn297に結合した全ての糖構造体(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)の合計に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって、決定される。Asn297とは、Fc領域中の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指す;しかし、Asn297は、抗体における軽微な配列差異に起因して、297位の約±3アミノ酸上流または下流、即ち、294位と300位との間にも位置し得る。かかるフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例には、以下が含まれる:US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO200
3/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki等 J.Mol.Biol.336:1239~1249(2004);Yamane-Ohnuki等 Biotech.Bioeng.87:614(2004)。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例としては、以下が挙げられる:タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka等 Arch.Biochem.Biophys.249:533~545(1986);米国特許公開第2003/0157108号、Presta,L;およびWO2004/056312、Adams等、特に、実施例11)、およびノックアウト細胞株、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki等
Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.等、Biotechnol.Bioeng.、94(4):680~688(2006);およびWO2003/085107を参照のこと)。
【0207】
抗体変異体には、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分された、二分されたオリゴ糖が、さらに提供される。かかる抗体変異体は、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet等);米国特許第6,602,684号(Umana等);米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana等)、およびFerrara等、Biotechnology and Bioengineering、93(5):851~861(2006)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体もまた、提供される。かかる抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異体は、例えば、WO1997/30087(Patel等);WO1998/58964(Raju,S.);およびWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0208】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるFc領域を含む抗体変異体は、FcγRIIIに結合することが可能である。特定の実施形態では、本明細書に記載されるFc領域を含む抗体変異体は、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCC活性を有する、またはヒト野生型IgG1 Fc領域を含む他の点では同じ抗体と比較して、ヒトエフェクター細胞の存在下で増加したADCC活性を有する。
【0209】
(x)Fc領域変異体
特定の実施形態では、1または複数のアミノ酸改変が、本明細書で提供される抗体のFc領域中に導入され得、それによって、Fc領域変異体を生成する。このFc領域変異体は、1または複数のアミノ酸位置においてアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc領域)を含み得る。
【0210】
特定の実施形態では、本発明は、いくつかの、しかし全てではないエフェクター機能を有する抗体変異体を企図し、これにより、かかる抗体変異体は、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば、補体およびADCC)が不要または有害である応用のための、望ましい候補になる。インビトロおよび/またはインビボの細胞傷害性アッセイが、CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認するために実施され得る。例えば、抗体が、FcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能を保持することを確実にするために、Fc受容体(FcR)結合アッセイが実施され得る。ADCCを媒介するための初代細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、RavetchおよびKinet、A
nnu.Rev.Immunol.9:457~492(1991)のp464の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.等
Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059~7063(1986)を参照のこと)およびHellstrom,I等、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499~1502(1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.等、J.Exp.Med.166:1351~1361(1987)を参照のこと)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法が使用され得る(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性の細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View、CA;およびCytoTox 96(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI)を参照のこと)。かかるアッセイのために有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等 Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652~656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて、インビボで評価され得る。C1q結合アッセイもまた、抗体がC1qを結合することができず、したがってCDC活性を欠くことを確認するために、実施され得る。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402におけるC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実施され得る(例えば、Gazzano-Santoro等、J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.等、Blood 101:1045~1052(2003);ならびにCragg,M.S.およびM.J.Glennie、Blood 103:2738~2743(2004)を参照のこと)。FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期の決定もまた、当該技術分野で公知の方法を使用して実施され得る(例えば、Petkova,S.B.等、Int’l.Immunol.18(12):1759~1769(2006)を参照のこと)。
【0211】
低減されたエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327および329のうち1または複数の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc変異体には、残基265および297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうち2つ以上において置換を有するFc変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0212】
FcRへの改善または減退された結合を有する特定の抗体変異体が記載されている(例えば、米国特許6,737,056号;WO2004/056312およびShields等、J.Biol.Chem.9(2):6591~6604(2001)を参照のこと)。
【0213】
特定の実施形態では、抗体変異体は、ADCCを改善する1または複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位および/または334位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。例示的な一実施形態では、そのFc領域中に以下のアミノ酸置換を含む抗体:S298A、E333AおよびK334A。
【0214】
一部の実施形態では、変更された(即ち、改善された、または減退された、のいずれかの)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を生じる変更が、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642およびIdusogie等 J.Immunol.164:4178~4184(2000)に記載されるように、Fc領域中になされる。
【0215】
増加した半減期、および胎児への母体IgGの移行を担う新生児Fc受容体(FcRn)(Guyer等、J.Immunol.117:587(1976)およびKim等、J.Immunol.24:249(1994))に対する改善された結合を有する抗体は、US2005/0014934号(Hinton等)に記載されている。これらの抗体は、その中にFcRnへのFc領域の結合を改善する1または複数の置換を有するFc領域を含む。かかるFc変異体には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうち1または複数における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが含まれる(米国特許第7,371,826号)。Fc領域変異体の他の例については、DuncanおよびWinter、Nature 322:738~40(1988);米国特許5,648,260号;米国特許5,624,821号;ならびにWO94/29351もまた参照のこと。
【0216】
(xi)抗体誘導体
本発明の抗体は、当該技術分野で公知であり、容易に入手可能なさらなる非タンパク質性部分を含むように、さらに改変され得る。特定の実施形態では、抗体の誘導体化に適切な部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダム共重合体のいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコール(propropylene glycol)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して、製造における利点を有し得る。このポリマーは、任意の分子量のものであり得、分枝状または非分枝状であり得る。抗体に結合したポリマーの数は、変動し得、1つよりも多いポリマーが結合している場合、それらは、同じまたは異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または型は、特に限定されないが、改善すべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定された条件下で療法に使用されるかどうかなどを含む検討に基づいて、決定され得る。
【0217】
(xii)ベクター、宿主細胞および組換え方法
抗体は、組換え方法を使用しても産生され得る。抗抗原抗体の組換え産生のために、抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために、複製可能なベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定され得る。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分としては、一般に、特に限定されないが、シグナル配列、複製開始点、1または複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列のうち1または複数が挙げられる。
【0218】
(a)シグナル配列成分
本発明の抗体は、直接組換え産生され得るだけでなく、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても、産生され得、異種ポリペプチドは、好ましくはシグナル配列または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端において特異的切断部位を有する他のポリペプチドである。選択された異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識およ
びプロセシングされる(例えば、シグナルペプチターゼによって切断される)シグナル配列である。天然抗体シグナル配列を認識およびプロセシングしない原核宿主細胞のために、このシグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。酵母分泌のために、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、因子リーダー(SaccharomycesおよびKluyveromycesのα-因子リーダーを含む)、もしくは酸性ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー、またはWO90/13646に記載されるシグナルによって、置換され得る。哺乳動物細胞発現では、哺乳動物シグナル配列ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが、利用可能である。
【0219】
(b)複製開始点
発現およびクローニングベクターの両方が、1または複数の選択された宿主細胞においてベクターが複製するのを可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターでは、この配列は、宿主染色体DNAとは独立してベクターが複製するのを可能にするものであり、複製開始点または自律的に複製する配列を含む。かかる配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスについて周知である。プラスミドpBR322由来の複製開始点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適切であり、2μプラスミド開始点は、酵母に適切であり、種々のウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)が、哺乳動物細胞においてクローニングベクターとして有用である。一般に、複製開始点成分は、哺乳動物発現ベクターには必要でない(SV40開始点は、それが早期プロモーターを含むことのみに起因して、典型的に使用され得る)。
【0220】
(c)選択遺伝子成分
発現およびクローニングベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含み得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求性欠損を補完するタンパク質、または(c)複合培地からは利用可能でない必須栄養素を供給するタンパク質をコードする、例えば、BacilliのためのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子。
【0221】
選択スキームの一例は、宿主細胞の増殖を停止させる薬物を利用する。異種遺伝子で首尾よく形質転換された細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、したがって、選択レジメンを生き残る。かかる優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンを使用する。
【0222】
哺乳動物細胞に適切な選択マーカーの別の例は、抗体コード核酸を取り込む能力がある細胞の同定を可能にするもの、例えば、DHFR、グルタミンシンテターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-Iおよび-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどである。
【0223】
例えば、DHFR遺伝子で形質転換された細胞は、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含む培地中で形質転換体を培養することによって同定される。これらの条件下で、DHFR遺伝子は、任意の他の共形質転換された核酸と一緒に増幅される。内因性のDHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL-9096)が使用され得る。
【0224】
あるいは、GS遺伝子で形質転換された細胞は、GSの阻害剤であるL-メチオニンスルホキシイミン(Msx)を含む培地中で形質転換体を培養することによって同定される。これらの条件下で、GS遺伝子は、任意の他の共形質転換された核酸と一緒に増幅され
る。GS選択/増幅系は、上記DHFR選択/増幅系と組み合わせて使用してもよい。
【0225】
あるいは、目的の抗体、野生型DHFR遺伝子および別の選択マーカー、例えば、アミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列で形質転換または共形質転換された宿主細胞(特に、内因性のDHFRを含む野生型宿主)は、その選択マーカーのための選択剤、例えば、アミノグリコシド抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシンまたはG418を含む培地中での細胞増殖によって選択され得る。米国特許第4,965,199号を参照のこと。
【0226】
酵母での使用に適切な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等、Nature、282:39(1979))。このtrp1遺伝子は、トリプトファン中で増殖する能力を欠く酵母の変異体株、例えば、ATCC番号44076またはPEP4-1に対して選択マーカーを提供する。Jones、Genetics、85:12(1977)。次いで、酵母宿主細胞ゲノム中のtrp1病変の存在が、トリプトファンの非存在下での増殖によって形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC 20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を有する公知のプラスミドによって補完される。
【0227】
さらに、1.6μm環状プラスミドpKD1由来のベクターは、Kluyveromyces酵母の形質転換に使用され得る。あるいは、組換え仔ウシキモシンの大規模産生のための発現系が、K.lactisについて報告された。Van den Berg、Bio/Technology、8:135(1990)。Kluyveromycesの工業株による成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定な多コピー発現ベクターもまた、開示されている。Fleer等、Bio/Technology、9:968~975(1991)。
【0228】
(d)プロモーター成分
発現およびクローニングベクターは、一般に、宿主生物によって認識され、抗体をコードする核酸に動作可能に連結された、プロモーターを含む。原核生物宿主との使用に適切なプロモーターには、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにハイブリッドプロモーター、例えば、tacプロモーターが含まれる。しかし、他の公知の細菌プロモーターが適切である。細菌系における使用のためのプロモーターは、抗体をコードするDNAに動作可能に連結されたシャインダルガノ(S.D.)配列もまた含む。
【0229】
プロモーター配列は、真核生物について公知である。事実上全ての真核生物遺伝子が、転写が開始される部位からおよそ25から30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始から70から80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域であり、ここで、Nは任意のヌクレオチドであり得る。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端へのポリAテイルの付加のためのシグナルであり得るAATAAA配列がある。これらの配列は全て、真核生物発現ベクター中に適切に挿入される。
【0230】
酵母宿主との使用に適切なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼについてのプロモーターが挙げられる。
【0231】
増殖条件によって制御される転写のさらなる利点を有する誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC(isocytochrome C)、酸性ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトース利用を担う酵素についてのプロモーター領域である。酵母発現での使用に適切なベクターおよびプロモーターは、EP73,657にさらに記載されている。酵母エンハンサーもまた、酵母プロモーターと共に有利に使用される。
【0232】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの抗体転写は、例えば、ウイルス、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、シミアンウイルス40(SV40)のゲノムから、または異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから取得されたプロモーターによって制御され得るが、かかるプロモーターが宿主細胞系と適合性であることを条件とする。
【0233】
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、簡便には、SV40ウイルス複製開始点もまた含むSV40制限断片として取得される。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーター(immediate early promoter)は、簡便には、HindIII E制限断片として取得される。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して哺乳動物宿主においてDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の改変は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現については、Reyes等、Nature 297:598~601(1982)もまた参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復が、プロモーターとして使用され得る。
【0234】
(e)エンハンサーエレメント成分
高等真核生物による本発明の抗体をコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増加される。多くのエンハンサー配列が、現在、哺乳動物遺伝子から公知である(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテインおよびインスリン)。しかし、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用する。例としては、複製開始点(bp100-270)の後ろ側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後ろ側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げあられる。真核性プロモーターの活性化のための増強エレメントについては、Yaniv、Nature 297:17~18(1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体コード配列に対して5’側または3’側の位置においてベクター中に継ぎ合わされ得るが、好ましくは、プロモーターの5’側の部位に位置する。
【0235】
(f)転写終結成分
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)において使用される発現ベクターは、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列もまた含む。かかる配列は、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’非翻訳領域および時折3’非翻訳領域から、一般に入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分においてポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
【0236】
(g)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書のベクター中のDNAをクローニングまたは発現するために適切な宿主細胞は、上記原核生物、酵母または高等真核生物細胞である。この目的のために適切な原核生物には、真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、腸内細菌科、例えば、Escherichia、例えば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescans、およびShigella、ならびにBacilli、例えば、B.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266,710中に開示されたB.licheniformis 41P)、Pseudomonas、例えば、P.aeruginosa、およびStreptomycesが含まれる。1つの好ましいE.coliクローニング宿主は、E.coli 294(ATCC 31,446)であるが、他の株、例えば、E.coli B、E.coli X1776(ATCC 31,537)およびE.coli W3110(ATCC 27,325)が適切である。これらの例は、限定ではなく例示である。
【0237】
全長抗体、抗体融合タンパク質および抗体断片は、特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要ない場合、例えば、治療抗体が、腫瘍細胞破壊においてそれ自体有効性を示す細胞傷害性剤(例えば、毒素)にコンジュゲートされる場合、細菌において産生され得る。全長抗体は、循環におけるより長い半減期を有する。E.coliにおける産生は、より速く、よりコスト効率が高い。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号(Carter等)、米国特許第5,789,199号(Joly等)、発現および分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)およびシグナル配列を記載する米国特許第5,840,523号(Simmons等)を参照のこと。E.coliにおける抗体断片の発現を記載する、Charlton、Methods in Molecular Biology、Vol.248(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、N.J.、2003)、pp.245~254もまた参照のこと。発現後、抗体は、可溶型画分中のE.coli細胞ペーストから単離され得、例えば、アイソタイプに依存して、プロテインAまたはGカラムを介して精製され得る。例えばCHO細胞において発現された抗体を精製するためのプロセスと類似の最終精製が、実施され得る。
【0238】
原核生物に加えて、真核微生物、例えば、糸状菌または酵母は、抗体コードベクターに適切なクローニングまたは発現宿主である。Saccharomyces cerevisiaeまたは一般的なパン酵母は、下等真核宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかし、いくつかの他の属、種および株が、一般に入手可能であり、本明細書で有用である、例えば、Schizosaccharomyces pombe;Kluyveromyces宿主、例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotoleransおよびK.marxianusなど;yarrowia(EP402,226);Pichia pastoris(EP183,070);Candida;Trichoderma reesia(EP244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces、例えば、Schwanniomyces occidentalis;ならびに糸状菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladiumなど、およびAspergillus宿主、例えば、A.nidulansおよびA.niger。治療タンパク質の産生のための酵
母および糸状菌の使用を議論する概説については、例えば、Gerngross、Nat.Biotech.22:1409~1414(2004)を参照のこと。
【0239】
グリコシル化経路が「ヒト化」され、部分的にまたは完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の産生を生じる、特定の真菌および酵母株が選択され得る。例えば、Li等、Nat.Biotech.24:210~215(2006)(Pichia pastorisにおけるグリコシル化経路のヒト化を記載している);およびGerngross等、上記を参照のこと。
【0240】
グリコシル化された抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)からも誘導される。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス株および変種、ならびにSpodoptera frugiperda(イモムシ)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)およびBombyx moriなどの宿主由来の対応する許容される昆虫宿主細胞が、同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-1変異体およびBombyx mori NPVのBm-5株が、公に入手可能であり、かかるウイルスは、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、本発明に従って本明細書でウイルスとして使用され得る。
【0241】
ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、ウキクサ(Leninaceae)、アルファルファ(M.truncatula)およびタバコの植物細胞培養物もまた、宿主として利用され得る。例えば、米国特許第5,959,177号、米国特許第6,040,498号、米国特許第6,420,548号、米国特許第7,125,978号および米国特許第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)テクノロジーを記載している)を参照のこと。
【0242】
脊椎動物細胞が宿主として使用され得、培養物(組織培養物)中での脊椎動物細胞の増殖は、常套的手順になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞、Graham等、J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243~251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL
75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44~68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌株(Hep G2)である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub等、Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびに骨髄腫細胞株、例えば、NS0およびSp2/0が含まれる。抗体産生に適切な特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、YazakiおよびWu、Methods in Molecular Biology、Vol.248(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、N.J.、2003)、pp.2
55~268を参照のこと。
【0243】
宿主細胞は、抗体産生のために上記発現またはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて改変された従来の栄養培地中で培養される。
【0244】
(h)宿主細胞を培養する
本発明の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、種々の培地中で培養され得る。市販の培地、例えば、Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)およびダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞を培養するために適切である。さらに、Ham等、Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes等、Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;米国特許第4,657,866号;米国特許第4,927,762号;米国特許第4,560,655号;もしくは米国特許第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国再特許第30,985号に記載された培地のいずれかが、宿主細胞のための培地として使用され得る。これらの培地のいずれかには、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリンまたは上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、バッファー(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商標)薬物)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として規定される)、ならびにグルコースまたは等価なエネルギー供給源が補充され得る。任意の他の必要なサプリメントもまた、当業者に公知の適切な濃度で含まれ得る。培養条件、例えば、温度、pHなどは、発現のために選択された宿主細胞と共に以前に使用されたものであり、当業者に明らかである。
【0245】
(xiii)抗体の精製
組換え技術を使用する場合、抗体は、細胞内で産生され得、細胞周辺腔中に、または培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合、第1の工程として、宿主細胞または溶解された断片のいずれかの特定のデブリが、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter等、Bio/Technology 10:163~167(1992)は、E.coliの細胞周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順を記載している。簡潔に述べると、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、約30分にわたって解凍される。細胞デブリは、遠心分離によって除去され得る。抗体が培地中に分泌される場合、かかる発現系からの上清は、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して、最初に濃縮される。プロテアーゼ阻害剤、例えば、PMSFが、タンパク質分解を阻害するために、上述の工程のいずれか中に含まれ得、抗生物質が、偶発的な夾雑物の増殖を防止するために含まれ得る。
【0246】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製され得、アフィニティークロマトグラフィーが、典型的に好ましい精製工程の1つの中にある。親和性リガンドとしてのプロテインAの適切性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用され得る(Lindmark等、J.Immunol.Meth.62:1~13(1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に推奨される(Guss等、EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合さ
れるマトリックスは、アガロースである場合が最も多いが、他のマトリックスが利用可能である。機械的に安定なマトリックス、例えば、孔制御ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースを用いて達成できるものよりも、速い流速および短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が、精製に有用である。タンパク質精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)上のヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿もまた、回収される抗体に依存して利用可能である。
【0247】
一般に、研究、試験および臨床における使用のための抗体を調製するための種々の方法は、上記方法と一致して、および/または目的の特定の抗体のために当業者に適切と思われるように、当該技術分野で十分に確立されている。
【0248】
C.生物学的に活性な抗体を選択する
上記のように産生された抗体は、治療展望から有益な特性を有する抗体を選択するため、または抗体の生物活性を保持する製剤もしくは条件を選択するために、1または複数の「生物活性」アッセイに供され得る。抗体は、その抗体が惹起された抗原に結合するその能力について試験され得る。例えば、当該技術分野で公知の方法(例えば、ELISA、ウェスタンブロットなど)が使用され得る。
【0249】
例えば、抗PD-L1抗体について、抗体の抗原結合特性は、PD-L1に結合する能力を検出するアッセイにおいて評価され得る。一部の実施形態では、抗体の結合は、例えば、飽和結合;ELISA;および/または競合アッセイ(例えば、RIA)によって決定され得る。また、抗体は、例えば、治療剤としてのその効率を評価するために、他の生物活性アッセイに供され得る。かかるアッセイは、当該技術分野で公知であり、標的抗原および抗体についての目的の使用に依存する。例えば、抗体によるPD-L1遮断の生物学的効果は、例えば、米国特許第8,217,149号に記載されるように、CD8+T細胞、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)マウスモデルおよび/または同系腫瘍モデルにおいて評価され得る。
【0250】
目的の抗原上の特定のエピトープに結合する抗体(例えば、PD-L1への実施例の抗PD-L1抗体の結合をブロックするもの)についてスクリーニングするために、常套的クロスブロッキングアッセイ、例えば、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されるものが、実施され得る。あるいは、例えば、Champe等、J.Biol.Chem.270:1388~1394(1995)に記載されるようなエピトープマッピングが、目的のエピトープに抗体が結合するかどうかを決定するために実施され得る。
【0251】
D.医薬組成物および製剤
PD-1系結合アンタゴニストおよび/または活性成分として本明細書に記載される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗GPC3抗体)および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物および製剤もまた、本明細書で提供される。
【0252】
本明細書に記載される「組合せ」とは、併用のための有効成分の組合せを指し、投与の際に組合せ中に別個の物質が使用されるか、またはそれらが混合物(配合剤)として提供される両方の様式を含む。
【0253】
本明細書に記載されるような医薬組成物および製剤は、所望の程度の純度を有する活性成分(例えば、抗PD-L1抗体および/または抗GPC3抗体)を、1または複数の任意選択の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol,A.編(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製され得る。薬学的に許容される担体は、一般に、使用される投薬量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、特に限定されないが、バッファー、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンなどの抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンザルコニウムクロライド;ベンゼトニウムクロライド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;グルコース、マンノースまたはデキストリンなどの、単糖類、二糖類および他の糖(炭水化物);キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体としては、間質性薬物分散剤、例えば、可溶型中性-活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶型PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(商標)、Baxter International,Inc.)がさらに挙げられる。rHuPH20を含む、特定の例示的sHASEGPおよび使用の方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号および米国特許出願公開第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、1または複数のさらなるグリコサミノグリカナーゼ、例えばコンドロイチナーゼと組み合わされる。
【0254】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、ヒスチジンアセテートバッファーを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、約60mg/mLの濃度の抗体、約20mMの濃度のヒスチジンアセテート、約120mMの濃度のショ糖、および0.04%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤中にあり、この製剤は、約5.8のpHを有する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、約125mg/mLの濃度の抗体、約20mMの濃度のヒスチジンアセテート、約240mMの濃度のショ糖、および0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤中にあり、この製剤は、約5.5のpHを有する。
【0255】
本明細書の組成物および製剤は、治療されている特定の適応症にとって必要な場合には1つよりも多い活性成分、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的活性を有するもの、もまた含み得る。かかる活性成分は、意図した目的のために有効な量で組合せ中に適切に存在する。
【0256】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド状
薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に、封入され得る。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol,A.編(1980)に開示されている。
【0257】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、造形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。インビボ投与に使用される製剤は、一般に滅菌である。無菌状態は、例えば、滅菌濾過膜を介した濾過によって、容易に達成され得る。
【0258】
IV.治療の方法
有効量のヒトPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を個体に投与することを含む、個体において癌を治療する、防止するまたはその進行を遅延させる方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、この治療は、治療の休止後に、個体において持続性の応答をもたらす。本明細書に記載される方法は、増強された免疫原性が所望される状態を治療すること、例えば、癌の治療のために腫瘍免疫原性を増加させることにおける使用であると分かり得る。有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を個体に投与することを含む、癌を有する個体において腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する方法もまた、本明細書で提供される。例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、マクロファージおよび多核巨細胞を含む免疫細胞の、腫瘍組織への浸潤が挙げられる。別の例については、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるCD45陽性リンパ球、CD3ε陽性リンパ球およびCD8陽性Tリンパ球の増大が挙げられる。当該技術分野で公知のまたは本明細書に記載されるPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体のいずれかが、これらの方法において使用され得る。
【0259】
一部の実施形態では、この個体はヒトである。一部の実施形態では、この個体は、GPC3陽性癌を有する。一部の実施形態では、GPC3陽性癌は、肝癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、結腸癌、腎臓癌、食道癌または前立腺癌である。いくつかの実施態様では、この肝癌は、肝細胞癌腫である。一部の実施形態では、この乳癌は、乳房癌または乳腺癌である。一部の実施形態では、この乳房癌は、浸潤腺管癌である。一部の実施形態では、この肺癌は、肺腺癌である。一部の実施形態では、この結腸癌は、結腸直腸腺癌である。一部の実施形態では、個体中の癌細胞は、PD-L1を発現する。一部の実施形態では、個体中の癌細胞は、検出可能な(例えば、当該技術分野で公知の方法を使用して検出可能な)レベルでGPC3タンパク質を発現する。
【0260】
一部の実施形態では、この個体は、PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体との併用治療の前に、GPC3標的療法で治療されている。一部の実施形態では、このGPC3標的療法は、1または複数の低分子、例えばソラフェニブによる治療を含む。
【0261】
一部の実施形態では、本発明の併用療法は、PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体の投与を含む。このPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体は、当該技術分野で公知の任意の適切な様式で投与され得る。例えば、このPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体は、連続的に(異なる時点で)または同時発生的に(同時に)投与され得る。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、抗GPC3抗体とは別々の組成物中にある。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストは、抗GPC3抗体と同じ組成物中にある。
【0262】
このPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体は、同じ投与経路または異なる投与経路によって投与され得る。一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニ
ストは、静脈内で、筋肉内で、皮下で、局所で、経口で、経皮で、腹腔内で、眼窩内で、移植により、吸入により、髄腔内で、脳室内でまたは鼻腔内で投与される。一部の実施形態では、この抗GPC3抗体は、静脈内で、筋肉内で、皮下で、局所で、経口で、経皮で、腹腔内で、眼窩内で、移植により、吸入により、髄腔内で、脳室内でまたは鼻腔内で投与される。有効量のPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体が、疾患の予防または治療のために投与され得る。PD-1系結合アンタゴニストおよび/または抗GPC3抗体の適切な投薬量は、治療される疾患の型、PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体の型、疾患の重症度および過程、個体の臨床状態、個体の臨床歴および治療に対する応答、ならびに主治医の裁量に基づいて決定され得る。
【0263】
一般的な計画として、ヒトに投与される抗体の治療的有効量は、1回の投与によるものであれ複数回の投与によるものであれ、患者の体重1kg当たり約0.01から約50mgの範囲である。一部の実施形態では、使用される抗体は、例えば、毎日投与される約0.01から約45mg/kg、約0.01から約40mg/kg、約0.01から約35mg/kg、約0.01から約30mg/kg、約0.01から約25mg/kg、約0.01から約20mg/kg、約0.01から約15mg/kg、約0.01から約10mg/kg、約0.01から約5mg/kgまたは約0.01から約1mg/kgである。一部の実施形態では、この抗体は、15mg/kgで投与される。しかし、他の投薬レジメンが有用であり得る。一実施形態では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、21日サイクルの1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mgまたは約1400mgの用量でヒトに投与される。この用量は、点滴など、単一用量または複数用量(例えば、2または3用量)として投与され得る。併用治療で投与される抗体の用量は、単一治療と比較して低減され得る。この療法の進行は、従来の技術によって容易にモニタリングされる。
【0264】
一部の実施形態では、これらの方法は、さらなる療法をさらに含み得る。このさらなる療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘍摘出手術および乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または上述の組合せであり得る。このさらなる療法は、アジュバントまたはネオアジュバント療法の形態であり得る。一部の実施形態では、このさらなる療法は、低分子酵素阻害剤または抗転移剤の投与である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生および/または重症度を低下させるための目的の薬剤、例えば、抗悪心剤など)の投与である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、放射線療法である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、手術である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、放射線療法および手術の組合せである。一部の実施形態では、このさらなる療法は、ガンマ照射である。一部の実施形態では、このさらなる療法は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的化する療法、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤および/または化学防御剤である。このさらなる療法は、本明細書に記載される化学療法剤のうち1または複数であり得る。
【0265】
V.製造品またはキット
本発明の別の一実施形態では、PD-1系結合アンタゴニストおよび/または抗GPC3抗体を含む製造品またはキットが提供される。一部の実施形態では、この製造品またはキットは、個体において癌を治療するもしくはその進行を遅延させるため、または癌を有する個体の腫瘍細胞に対する免疫応答を増強するために、抗GPC3抗体と組み合わせてPD-1系結合アンタゴニストを求めるための指示を含む添付文書をさらに含む。例えば、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、マクロファージおよび多核巨細胞を含む免疫細胞の、腫瘍組織への浸潤が挙げられる。別の例については、腫瘍細胞に対する免疫応答の増強として、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるCD45陽性リンパ球、CD3ε陽
性リンパ球およびCD8陽性Tリンパ球の増大が挙げられる。本明細書に記載されるPD-1系結合アンタゴニストおよび/または抗GPC3抗体のいずれかが、この製造品またはキット中に含まれ得る。
【0266】
一部の実施形態では、このPD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体は、同じ容器中または別々の容器中にある。適切な容器としては、例えば、ビン、バイアル、バッグおよびシリンジが挙げられる。この容器は、種々の材料、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニルまたはポリオレフィン)または金属合金(例えば、ステンレス鋼またはハステロイ)から形成され得る。一部の実施形態では、この容器は、製剤を保持し、この容器上のまたはこの容器に関連したラベルが、使用のための指示を示し得る。この製造品またはキットは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジおよび使用のための指示を伴う添付文書を含む、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料を、さらに含み得る。一部の実施形態では、この製造品は、別の薬剤(例えば、化学療法剤および抗腫瘍剤)のうち1または複数をさらに含む。1または複数の薬剤に適切な容器には、例えば、ビン、バイアル、バッグおよびシリンジが含まれる。
【0267】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であるとみなされる。本明細書に示され記載されたものに加えた、本発明の種々の改変は、上述の説明から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲の範囲内である。本明細書で引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的のために、その全内容が本明細書に出典明示により援用される。
【実施例
【0268】
[実施例1]
ヒトグリピカン-3(GPC3)を発現するマウス細胞株
マウス癌細胞株、Hepa1-6(ATCC受託番号CRL-1830)およびCT26(ATCC受託番号CRL-2638)を、FuGENE6(Roche Diagnostics Corp)を用いヒトGPC3発現ベクター、pCXND2/hGPC3(FL)[Ishiguro T.等, Cancer Res. 2008; 68: 9832-9838]をトランスフェクトし、1mg/mLのG418(Invitrogen)を用いて選択した。G418の存在下でも増殖した細胞を集め、限界希釈によってコロニーを単離した。抗ヒトGPC3抗体、GC33[Ishiguro T.等, Cancer Res. 2008; 68: 9832-9838]を用いたFACSによってヒトGPC3の発現を確認した。代表的なコロニーを選択し、実験に使用した。
【0269】
[実施例2]
ヒトGPC3を発現するHepa1-6細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおける抗GPC3抗体の抗腫瘍活性
Hepa1-6/hGPC3細胞を、インキュベーター(37℃および5% CO2に設定した)中で細胞培養フラスコを使用して培養した。細胞を、トリプシンを用いてフラスコから剥離し、10%(v/v)FBS、0.6mg/mLのG418を含有するD MEMを用いて洗浄した。次いで、細胞をD-MEM(2×108個細胞/mL)に再懸
濁し、等容量のMatrigelを添加した。移植のための細胞濃度は、1×108個細
胞/mLとした。細胞を、各C57BL/6Jマウス(Charles River Laboratories Japan)の右側腹部に皮下接種した(1×107個細胞/
マウス)。ひとたび、触知できる腫瘍が確立されると、動物を、各群が試験開始時に同様の平均腫瘍体積を有するように試験群にランダム化した。PBSに希釈した、1または5mg/kgのマウスGC33抗ヒトGPC3モノクローナル抗体[WO2006/006693]のいずれかまたは溶媒対照としてのPBSを、腫瘍接種後14、21および28日目に静脈内に注射した。マウスGC33は、溶媒対照と比較して、用量依存的に腫瘍増殖の阻害を示した(図1)。
【0270】
[実施例3]
ヒトGPC3を発現するHepa1-6細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおいて抗GPC3抗体によって誘導された病理学的変化
マウスGC33治療によるHepa1-6腫瘍組織における変化を評価するために、マウスGC33抗体または溶媒対照いずれかの単回注射から3または7日後のいずれかで単離された腫瘍組織を、病理学的検査に使用した。腫瘍組織を4%パラホルムアルデヒド(PFA)によって固定し、AMeX法[Suzuki等, J Toxicol Sci. 2002; 27:165-172、Watanabe等, J Toxicol Pathol. 2015; 28: 43-49]によってパラフィン中に包埋した。3マイクロメートルパラフィン切片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(HE)を用いて、または免疫組織化学的(IHC)に染色した。IHC染色は、標識ストレプトアビジン-ビオチン(LSAB)法(RTUセイヨウワサビペルオキシダーゼストレプトアビジン)に従って実施した。F4/80に対する抗体(マウスマクロファージのマーカー抗原;A3-1、BioLegend)、PD-L1に対する抗体(マウスB7-H1/PD-L1のマーカー抗原;AF1019、R&D systems)を、一次抗体として使用した。ペルオキシダーゼ-ジアミノベンジジン反応によって陽性シグナルを可視化し、切片はヘマトキシリンを用いて対比染色した。
【0271】
マウスGC33注射によって、腫瘍組織の末梢領域における免疫細胞浸潤および腫瘍細胞死を観察した。また、マウスGC33によって治療された腫瘍組織では、腫瘍細胞死が観察された領域におけるF4/80陽性マクロファージ細胞の浸潤の増大も観察されたが、溶媒対照を用いた場合にはF4/80陽性細胞は、主に、腫瘍組織における間質領域において観察された(図2A)。その後、溶媒対照と比較して、特に、浸潤した免疫細胞で、マウスGC33によってPD-L1発現が増大され、これは、マウスGC33によって抗腫瘍活性を抑制するようにPD-L1が誘導され得ることを示唆した(図2B)。
【0272】
[実施例4]
ヒトGPC3を発現するCT26細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおける、抗GPC3抗体(GC33)および抗PD-L1抗体(10F.9G2)の併用における抗腫瘍活性
マウスCT26/hGPC3モデルにおける抗GPC3または抗PD-L1単独療法または併用の抗腫瘍活性を評価するために、1×106個のCT26/hGPC3細胞の皮
下接種後、3日目(早期治療モデル)または15日目(確立されたモデル)のいずれかに、マウスGC33抗体および/または500μgの抗マウスPD-L1ラット抗体、10F.9G2(BioXCellから購入した)のいずれかを注射した。早期治療モデルでは、5または25mg/kgのマウスGC33のいずれかを、3、6、10および13日目に静脈内に注射し、500μgの抗PD-L1抗体、10F.9G2を、単独または組合せとして同一スケジュールで注射した。確立モデルでは、5または25mg/kgのマウスGC33のいずれかを、15および18日目に静脈内に注射し、500μgの抗PD-L1抗体、10F.9G2を、単独または併用として同一スケジュールで注射した。
【0273】
両モデルにおいて、25mg/kgのGC33および10F.9G2の併用が、各単独療法によるものと比較して最も強力な抗腫瘍活性を示した(図3および4)。
【0274】
[実施例5]
ヒトGPC3を発現するHepa1-6細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおける、抗GPC3抗体(GC33)および抗PD-L1抗体(10F.9G2)の併用における抗腫瘍活性
週に1回1、5もしくは25mg/kgのマウスGC33抗体のいずれかを3週間、または200μgの抗マウスPD-L1ラット抗体、10F.9G2と、それに続き100
μgを週に1回を2週間、単独または併用として、上記と同様のHepa1-6を有するマウスに静脈内に注射した。上記の従来法を用いて調製したHE染色切片を用いて病理学的検査を実施した。IHCについては、各マーカーについて表2に列挙された一次抗体を使用し、上記のLSAB法またはENV+法のいずれかによって可視化した。各群から3匹の代表的な動物についてIHCを実施した。
【0275】
【表2】
【0276】
マウスGC33または10F.9G2は、溶媒対照と比較して、腫瘍増殖の阻害を示したが、マウスGC33および10F.9G2の併用は、最も強い抗腫瘍活性を示した(図5A)。3回目の注射の5日後、全てのマウスを剖検し、腫瘍組織を病理学的に評価した。調べた腫瘍組織では、PD-L1抗体と併用した25mg/kgのマウスGC33で処置された全てのマウスにおいて、およびPD-L1抗体と併用した5mg/kgのマウスGC33で治療された5匹のマウスのうち4匹において、生存した腫瘍細胞は観察されなかった(図5B)。
【0277】
病理学的検査によって、溶媒対照と比較すると、治療された腫瘍組織各々において、F4/80-陽性細胞数、腫瘍組織に浸潤した多核巨細胞(MNGC)およびCD3陽性細胞でのPD-L1発現の増大ならびにCD206、CD163およびCD11b陽性細胞数の減少および単核細胞(MNC)でのPD-L1発現が示された。併用によって、CD3陽性T細胞の浸潤は、各単独療法よりも増加し、これは、抗腫瘍活性と関連している傾向がある(表3)。
【0278】
【表3】
【0279】
[実施例6]
ヒトGPC3を発現するHepa1-6細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおける抗GPC3(GC33)および抗PD-L1抗体(6E11)の併用における抗腫瘍活性
1mg/kgまたは5mg/kgのマウスGC33を、Hepa1-6/hGPC3腫瘍が確立しているC57BL/6Jマウスに週に1回または3回静脈内に与えた(q7d×3)。10mg/kgの抗マウスPD-L1 mAb(クローン6E11、mIgG2A、D265AおよびN297A;Genentech[WO2015/095418])を静脈内に1回、続いて、5mg/kgを腹膜内に週に2回(q7d×3)与えた。
【0280】
併用療法は、いずれかの単独療法を用いる治療と比較して腫瘍増殖の阻害を増強した(図6A、B)。1mg/kg mGC33単回、5mg/kg mGC33単回、1mg/kgのmGC33 q7d×3、5mg/kgのmGC33 q7d×3、6E11 q7d×3、6E11 q7d×3+1mg/kgのmGC33単回、6E11 q7d×3+5mg/kgのmGC33単回および6E11 q7d×3+1mg/kgのmGC33 q7d×3、6E11 q7d×3+5mg/kgのmGC33 q7d×3の腫瘍増殖阻害値の最終測定は、それぞれ、73%、84%、73%、80%、88%、85%、95%、88%および104%であった。5mg/kgのmGC33 q7d×3群中の1匹のマウス、1mg/kgのmGC33 q7d×3群中の1匹のマウス、5mg/kg mGC33単回中の1匹のマウス、1mg/kgのmGC33単回群中の2匹のマウスを、腫瘍進行によって安楽死させた。投与期間の間に死亡したマウスはなく、重度の体重減少も観察されなかった(図6C)。
【0281】
組織病理学の結果から、mGC33、6E11およびそれらの併用投与によって壊死の重症度の増加を伴う、または伴わない腫瘍領域の減少が観察された(図7)。6E11 q7d×3+5mg/kgのmGC33単回またはq7d×3群では、5匹のマウスのうち1または2匹において、病理学的完全奏功(pCR;組織病理学スライド上に腫瘍組織なし)が観察された。さらに、全ての治療群においてマクロファージ/多核巨細胞を含む
免疫細胞の浸潤を伴う腫瘍の壊死が見られ、病変の重症度は、以下の順序であった:mGC33 5mg/kg単回またはq7d×3、6E11 q7d×3<mGC33 5mg/kg単回またはq7d×3+6E11 q7d×3(図8A)。図8Bに示されるように、腫瘍塊の周辺部において観察されたF4/80陽性細胞は、併用の場合に最も多く、次いで、mGC33または6E11 q7d×3および溶媒の順序であった(図8B)。溶媒では、PD-L1陽性応答は、腫瘍細胞の細胞質において主に見られ、弱い強度であった。他方、全ての治療群において、マクロファージ/多核巨細胞を含む免疫細胞におけるPD-L1陽性応答の強度の増大(弱いから中程度)および頻度の増大が見られた(図8C)。
【0282】
[実施例7]
ヒトGPC3を発現するHepa1-6細胞株を用いたシンジェニックマウスモデルにおける細胞傷害性T細胞の誘導
NK細胞およびマクロファージによる自然免疫性に加えて、細胞傷害性T細胞による獲得免疫の誘導は、腫瘍細胞を死滅させるために重要である。治療されたマウスにおける獲得免疫の誘導を評価するために、腫瘍組織中に浸潤したT細胞を評価した。ヒトGPC3を発現するHepa1-6細胞を、C57BL/6Jマウスに皮下接種した。ひとたび、触知できる腫瘍が確立すると、マウスを12群に割り当てた;3群はコントロールとし、3群は、腫瘍接種後13日目および20日目に2回、5mg/kgのマウスGC33によって治療し、3群は、腫瘍接種後13日目の10mg/kgの6E11および20日目の5mg/kgの6E11によって治療するか、または3群は、マウスGC33(腫瘍接種後13および20日目の2回)および6E11(腫瘍接種後13日目の10mg/kgの6E11および20日目の5mg/kgの6E11)の組合せで治療した。2回目の投与の1、3および8日後、腫瘍組織を単離し、細かく刻んだ。gentleMACS(商標)Octo Dissociatorによって消化した後、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーに使用して、CD45、CD3ε、CD4またはCD8陽性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を定量した。
【0283】
図9に示されるように、マウスGC33または6E11のいずれかを用いて治療されたマウスでは、CD45陽性リンパ球、CD3ε陽性およびCD8陽性Tリンパ球の増大は観察されたが、CD4陽性リンパ球の増加は観察されなかった。上記の抗腫瘍活性と同様に、マウスGC33および6E11の併用では、各単独療法よりもCD8陽性TILを含むリンパ球の強力な誘導が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0284】
本発明は、互いに組み合わせることによるPD-1系結合アンタゴニストまたは抗GPC3抗体の有効性の改善および治療されるべき患者のQOLの改善に貢献し、肝癌を含む癌の治療において有用である。

Sequence Listing Information:
DTD Version: V1_3
File Name: [最終] PCG-0075D 配列表.xml
Software Name: WIPO Sequence
Software Version: 2.1.2
Production Date: 2022-09-14
General Information:
Current application / Applicant file reference: PCG-0075D
Earliest priority application / IP Office: JP
Earliest priority application / Application number: 2016-051424
Earliest priority application / Filing date: 2016-03-15
Applicant name: 中外製薬株式会社
Applicant name / Language: ja
Applicant name / Name Latin: Chugai Seiyaku Kabushiki Kaisha
Invention title: PD-1系結合アンタゴニストおよび抗GPC3抗体を使用して癌を治療する方法 ( ja )
Sequence Total Quantity: 55
Sequences:
Sequence Number (ID): 1
Length: 440
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..440
> note, Synthetic Construct
- source, 1..440
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
QVQLVESGGG VVQPGRSLRL DCKASGITFS NSGMHWVRQA PGKGLEWVAV IWYDGSKRYY 60
ADSVKGRFTI SRDNSKNTLF LQMNSLRAED TAVYYCATND DYWGQGTLVT VSSASTKGPS 120
VFPLAPCSRS TSESTAALGC LVKDYFPEPV TVSWNSGALT SGVHTFPAVL QSSGLYSLSS 180
VVTVPSSSLG TKTYTCNVDH KPSNTKVDKR VESKYGPPCP PCPAPEFLGG PSVFLFPPKP 240
KDTLMISRTP EVTCVVVDVS QEDPEVQFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQFN STYRVVSVLT 300
VLHQDWLNGK EYKCKVSNKG LPSSIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSQEE MTKNQVSLTC 360
LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SRLTVDKSRW QEGNVFSCSV 420
MHEALHNHYT QKSLSLSLGK 440

Sequence Number (ID): 2
Length: 214
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..214
> note, Synthetic Construct
- source, 1..214
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
EIVLTQSPAT LSLSPGERAT LSCRASQSVS SYLAWYQQKP GQAPRLLIYD ASNRATGIPA 60
RFSGSGSGTD FTLTISSLEP EDFAVYYCQQ SSNWPRTFGQ GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP 120
SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT 180
LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC 214

Sequence Number (ID): 3
Length: 118
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..118
> note, Synthetic Construct
- source, 1..118
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS DSWIHWVRQA PGKGLEWVAW ISPYGGSTYY 60
ADSVKGRFTI SADTSKNTAY LQMNSLRAED TAVYYCARRH WPGGFDYWGQ GTLVTVSA 118

Sequence Number (ID): 4
Length: 108
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..108
> note, Synthetic Construct
- source, 1..108
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQDVS TAVAWYQQKP GKAPKLLIYS ASFLYSGVPS 60
RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YLYHPATFGQ GTKVEIKR 108

Sequence Number (ID): 5
Length: 10
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..10
> note, Synthetic Construct
- VARIANT, 6
> note, Xaa = Asp or Gly
- source, 1..10
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
GFTFSXSWIH 10

Sequence Number (ID): 6
Length: 18
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..18
> note, Synthetic Construct
- VARIANT, 4
> note, Xaa = Ser or Leu
- VARIANT, 10
> note, Xaa = Thr or Ser
- source, 1..18
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
AWIXPYGGSX YYADSVKG 18

Sequence Number (ID): 7
Length: 9
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..9
> note, Synthetic Construct
- source, 1..9
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
RHWPGGFDY 9

Sequence Number (ID): 8
Length: 25
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..25
> note, Synthetic Construct
- source, 1..25
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAAS 25

Sequence Number (ID): 9
Length: 13
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..13
> note, Synthetic Construct
- source, 1..13
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
WVRQAPGKGL EWV 13

Sequence Number (ID): 10
Length: 32
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..32
> note, Synthetic Construct
- source, 1..32
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
RFTISADTSK NTAYLQMNSL RAEDTAVYYC AR 32

Sequence Number (ID): 11
Length: 11
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..11
> note, Synthetic Construct
- source, 1..11
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
WGQGTLVTVS A 11

Sequence Number (ID): 12
Length: 11
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..11
> note, Synthetic Construct
- VARIANT, 5
> note, Xaa = Asp or Val
- VARIANT, 6
> note, Xaa = Val or Ile
- VARIANT, 7
> note, Xaa = Ser or Asn
- VARIANT, 9
> note, Xaa = Ala or Phe
- VARIANT, 10
> note, Xaa = Val or Leu
- source, 1..11
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
RASQXXXTXX A 11

Sequence Number (ID): 13
Length: 7
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..7
> note, Synthetic Construct
- VARIANT, 4
> note, Xaa = Phe or Thr
- VARIANT, 6
> note, Xaa = Tyr or Ala
- source, 1..7
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
SASXLXS 7

Sequence Number (ID): 14
Length: 9
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..9
> note, Synthetic Construct
- VARIANT, 3
> note, Xaa = Tyr, Gly, Phe or Ser
- VARIANT, 4
> note, Xaa = Leu, Tyr, Phe or Trp
- VARIANT, 5
> note, Xaa = Tyr, Asn, Ala, Thr, Gly, Phe or Ile
- VARIANT, 6
> note, Xaa = His, Val, Pro, Thr or Ile
- VARIANT, 8
> note, Xaa = Ala, Trp, Arg, Pro or Thr
- source, 1..9
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
QQXXXXPXT 9

Sequence Number (ID): 15
Length: 23
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..23
> note, Synthetic Construct
- source, 1..23
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITC 23

Sequence Number (ID): 16
Length: 15
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..15
> note, Synthetic Construct
- source, 1..15
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
WYQQKPGKAP KLLIY 15

Sequence Number (ID): 17
Length: 32
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..32
> note, Synthetic Construct
- source, 1..32
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
GVPSRFSGSG SGTDFTLTIS SLQPEDFATY YC 32

Sequence Number (ID): 18
Length: 11
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..11
> note, Synthetic Construct
- source, 1..11
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
FGQGTKVEIK R 11

Sequence Number (ID): 19
Length: 10
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..10
> note, Synthetic Construct
- source, 1..10
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
GFTFSDSWIH 10

Sequence Number (ID): 20
Length: 18
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..18
> note, Synthetic Construct
- source, 1..18
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
AWISPYGGST YYADSVKG 18

Sequence Number (ID): 21
Length: 9
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..9
> note, Synthetic Construct
- source, 1..9
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
RHWPGGFDY 9

Sequence Number (ID): 22
Length: 11
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..11
> note, Synthetic Construct
- source, 1..11
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
RASQDVSTAV A 11

Sequence Number (ID): 23
Length: 7
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..7
> note, Synthetic Construct
- source, 1..7
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
SASFLYS 7

Sequence Number (ID): 24
Length: 9
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..9
> note, Synthetic Construct
- source, 1..9
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
QQYLYHPAT 9

Sequence Number (ID): 25
Length: 118
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..118
> note, Synthetic Construct
- source, 1..118
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS DSWIHWVRQA PGKGLEWVAW ISPYGGSTYY 60
ADSVKGRFTI SADTSKNTAY LQMNSLRAED TAVYYCARRH WPGGFDYWGQ GTLVTVSS 118

Sequence Number (ID): 26
Length: 122
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..122
> note, Synthetic Construct
- source, 1..122
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS DSWIHWVRQA PGKGLEWVAW ISPYGGSTYY 60
ADSVKGRFTI SADTSKNTAY LQMNSLRAED TAVYYCARRH WPGGFDYWGQ GTLVTVSSAS 120
TK 122

Sequence Number (ID): 27
Length: 11
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..11
> note, Synthetic Construct
- source, 1..11
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
WGQGTLVTVS S 11

Sequence Number (ID): 28
Length: 10
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..10
> note, Synthetic Construct
- source, 1..10
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
FGQGTKVEIK 10

Sequence Number (ID): 29
Length: 30
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..30
> note, Synthetic Construct
- source, 1..30
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS 30

Sequence Number (ID): 30
Length: 14
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..14
> note, Synthetic Construct
- source, 1..14
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
WVRQAPGKGL EWVA 14

Sequence Number (ID): 31
Length: 15
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..15
> note, Synthetic Construct
- source, 1..15
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
WGQGTLVTVS SASTK 15

Sequence Number (ID): 32
Length: 447
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..447
> note, Synthetic Construct
- source, 1..447
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS DSWIHWVRQA PGKGLEWVAW ISPYGGSTYY 60
ADSVKGRFTI SADTSKNTAY LQMNSLRAED TAVYYCARRH WPGGFDYWGQ GTLVTVSSAS 120
TKGPSVFPLA PSSKSTSGGT AALGCLVKDY FPEPVTVSWN SGALTSGVHT FPAVLQSSGL 180
YSLSSVVTVP SSSLGTQTYI CNVNHKPSNT KVDKKVEPKS CDKTHTCPPC PAPELLGGPS 240
VFLFPPKPKD TLMISRTPEV TCVVVDVSHE DPEVKFNWYV DGVEVHNAKT KPREEQYAST 300
YRVVSVLTVL HQDWLNGKEY KCKVSNKALP APIEKTISKA KGQPREPQVY TLPPSREEMT 360
KNQVSLTCLV KGFYPSDIAV EWESNGQPEN NYKTTPPVLD SDGSFFLYSK LTVDKSRWQQ 420
GNVFSCSVMH EALHNHYTQK SLSLSPG 447

Sequence Number (ID): 33
Length: 214
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..214
> note, Synthetic Construct
- source, 1..214
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQDVS TAVAWYQQKP GKAPKLLIYS ASFLYSGVPS 60
RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YLYHPATFGQ GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP 120
SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT 180
LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC 214

Sequence Number (ID): 34
Length: 5
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..5
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
DYSMH 5

Sequence Number (ID): 35
Length: 17
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..17
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
WINTETGEPT YADDFKG 17

Sequence Number (ID): 36
Residues:
000


Sequence Number (ID): 37
Length: 16
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..16
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
KSSQSLLHSD GKTFLN 16

Sequence Number (ID): 38
Length: 7
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..7
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
LVSRLDS 7

Sequence Number (ID): 39
Length: 9
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..9
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
CQGTHFPRT 9

Sequence Number (ID): 40
Length: 111
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..111
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
QIQLEQSGPE LKKPGETVKI SCKASGYIFR DYSMHWVKQA PGKGLKWMGW INTETGEPTY 60
ADDFKGRFAF SLETSASTAY LQINNLKNED TATYFCTSLY WGQGTLVTVS A 111

Sequence Number (ID): 41
Length: 112
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..112
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
DVVMTQTPLT LSVTLGQPAS ISCKSSQSLL HSDGKTFLNW LLQRPGQSPK RLIYLVSRLD 60
SGVPDRFTGS GSGTDFTLKI SRVEAEDLGV YYCCQGTHFP RTFGGGTRLE IK 112

Sequence Number (ID): 42
Length: 5
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..5
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
DYEMH 5

Sequence Number (ID): 43
Length: 17
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..17
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
ALDPKTGDTA YSQKFKG 17

Sequence Number (ID): 44
Length: 6
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..6
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
FYSYTY 6

Sequence Number (ID): 45
Length: 16
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..16
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
RSSQSLVHSN RNTYLH 16

Sequence Number (ID): 46
Length: 7
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..7
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
KVSNRFS 7

Sequence Number (ID): 47
Length: 9
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..9
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
SQNTHVPPT 9

Sequence Number (ID): 48
Length: 115
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..115
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
QVQLQQSGAE LVRPGASVKL SCKASGYTFT DYEMHWVKQT PVHGLKWIGA LDPKTGDTAY 60
SQKFKGKATL TADKSSSTAY MELRSLTSED SAVYYCTRFY SYTYWGQGTL VTVSA 115

Sequence Number (ID): 49
Length: 112
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- source, 1..112
> mol_type, protein
> organism, Mus musculus
Residues:
DVVMTQTPLS LPVSLGDQAS ISCRSSQSLV HSNGNTYLHW YLQKPGQSPK LLIYKVSNRF 60
SGVPDRFSGS GSGTDFTLKI SRVEAEDLGV YFCSQNTHVP PTFGSGTKLE IK 112

Sequence Number (ID): 50
Length: 115
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..115
> note, modified antibody fragment
- source, 1..115
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT DYEMHWVRQA PGQGLEWMGA LDPKTGDTAY 60
SQKFKGRVTL TADKSTSTAY MELSSLTSED TAVYYCTRFY SYTYWGQGTL VTVSS 115

Sequence Number (ID): 51
Length: 112
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..112
> note, modified antibody fragment
- source, 1..112
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
DVVMTQSPLS LPVTPGEPAS ISCRSSQSLV HSNGNTYLHW YLQKPGQSPQ LLIYKVSNRF 60
SGVPDRFSGS GSGTDFTLKI SRVEAEDVGV YYCSQNTHVP PTFGQGTKLE IK 112

Sequence Number (ID): 52
Length: 112
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..112
> note, modified antibody fragment
- source, 1..112
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
DVVMTQSPLS LPVTPGEPAS ISCRSSQSLV HSNRNTYLHW YLQKPGQSPQ LLIYKVSNRF 60
SGVPDRFSGS GSGTDFTLKI SRVEAEDVGV YYCSQNTHVP PTFGQGTKLE IK 112

Sequence Number (ID): 53
Length: 115
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..115
> note, modified antibody fragment
- source, 1..115
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
QVQLVQSGAE VKKPGASVTV SCKASGYTFT DYEMHWIRQP PGEGLEWIGA IDPKTGDTAY 60
SQSFQDRVTL TADKSTSTAY MELSSLTSED TAVYYCTRFY SYTYWGQGTL VTVSS 115

Sequence Number (ID): 54
Length: 112
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..112
> note, modified antibody fragment
- source, 1..112
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
DIVMTQSPLS LPVTPGEPAS ISCRASESLV HSNRNTYLHW YQQKPGQAPR LLIYKVSNRF 60
SGVPDRFSGS GSGTDFTLTI SSLQAEDVGV YYCSQNTHVP PTFGQGTKLE IK 112

Sequence Number (ID): 55
Length: 448
Molecule Type: AA
Features Location/Qualifiers:
- REGION, 1..448
> note, Synthetic Construct
- source, 1..448
> mol_type, protein
> organism, synthetic construct
Residues:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS DSWIHWVRQA PGKGLEWVAW ISPYGGSTYY 60
ADSVKGRFTI SADTSKNTAY LQMNSLRAED TAVYYCARRH WPGGFDYWGQ GTLVTVSSAS 120
TKGPSVFPLA PSSKSTSGGT AALGCLVKDY FPEPVTVSWN SGALTSGVHT FPAVLQSSGL 180
YSLSSVVTVP SSSLGTQTYI CNVNHKPSNT KVDKKVEPKS CDKTHTCPPC PAPELLGGPS 240
VFLFPPKPKD TLMISRTPEV TCVVVDVSHE DPEVKFNWYV DGVEVHNAKT KPREEQYAST 300
YRVVSVLTVL HQDWLNGKEY KCKVSNKALP APIEKTISKA KGQPREPQVY TLPPSREEMT 360
KNQVSLTCLV KGFYPSDIAV EWESNGQPEN NYKTTPPVLD SDGSFFLYSK LTVDKSRWQQ 420
GNVFSCSVMH EALHNHYTQK SLSLSPGK 448
END
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9
【配列表】
0007507829000001.xml