(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電池システム、その使用方法、およびそれを含む電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240621BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240621BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240621BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240621BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240621BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240621BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M4/134
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/44 P
(21)【出願番号】P 2022514578
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(86)【国際出願番号】 KR2020012772
(87)【国際公開番号】W WO2021060803
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0117068
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジェ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ウ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】イェ・リン・キム
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0263342(US,A1)
【文献】特開2005-340109(JP,A)
【文献】特開2005-150038(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190260(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/029907(WO,A1)
【文献】韓国特許第10-2010015(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0039001(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 4/134ー4/62
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系活物質を含む負極、前記負極に対向する正極、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータ、および電解質を含む1つ以上の二次電池と、
前記二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲を設定する制御ユニットとを含み、
前記制御ユニットにより設定された前記二次電池の最大駆動電圧は4.00V~4.08Vであり、前記二次電池の最小駆動電圧は
3.03V~
3.06Vである、電池システム。
【請求項2】
前記シリコン系活物質はSiである、請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に形成された負極活物質層とを含み、
前記負極活物質層は、前記シリコン系活物質、バインダー、および導電材を含む、請求項1に記載の電池システム。
【請求項4】
前記バインダーは、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、およびポリアクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項3に記載の電池システム。
【請求項5】
前記シリコン系活物質は、前記負極活物質層中に60重量%~90重量%で含まれ、
前記バインダーは、前記負極活物質層中に5重量%~30重量%で含まれ、
前記導電材は、前記負極活物質層中に5重量%~20重量%で含まれる、請求項3に記載の電池システム。
【請求項6】
前記負極活物質層の厚さは35μm~50μmである、請求項3に記載の電池システム。
【請求項7】
前記二次電池の下記数学式1により計算されるN/P比は1.5~3.5である、請求項1に記載の電池システム:
[数学式1]
N/P比=負極の単位面積当たりの放電容量/正極の単位面積当たりの放電容量。
【請求項8】
前記正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含み、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルト、マンガン、およびアルミニウムからなる少なくとも1種の遷移金属とリチウムとを含む、請求項1に記載の電池システム。
【請求項9】
1つ以上の二次電池、および前記二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲を設定する制御ユニットを含む電池システムを製造するステップと、
前記制御ユニットを介して、前記二次電池の最大駆動電圧が4.00V~4.08V、最小駆動電圧が
3.03V~
3.06Vとなるように駆動電圧範囲を設定し、前記二次電池を少なくとも1つのサイクルで充電および放電を行うステップとを含み、
前記二次電池は、シリコン系活物質を含む負極、前記負極に対向する正極、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータ、および電解質を含む、電池システムの使用方法。
【請求項10】
請求項1から8の何れか一項に記載の電池システムを含む電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月23日付けの韓国特許出願第10-2019-0117068号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
本発明は、電池システム、その使用方法、およびそれを含む電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、携帯電話、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、スマートパッドなどのモバイルデバイスだけでなく、電気により駆動される自動車(EV、HEV、PHEV)や、大容量電力貯蔵装置(ESS)など、多様な分野に広く活用されている。
【0003】
通常、電池は、1つまたはそれ以上の電池モジュールまたは電池パックとして機器や装置に取り付けられることができる。かかる電池には1つ以上の二次電池が備えられ、二次電池の他に、BMS(Battery Management system)などの電装品やケースをさらに備えることができる。前記二次電池は、充電が不可能な一次電池とは異なり、充放電が可能な電池を意味する。特に、種々の二次電池の中でも、リチウム二次電池は、軽量で且つ高エネルギー密度を有しており、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これにより、リチウム二次電池の性能を向上させるための研究開発に対する努力が活発に行われている。
【0004】
一般的に、リチウム二次電池は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ、電解質、有機溶媒などを含む。また、正極および負極は、集電体上に正極活物質または負極活物質を含む活物質層が形成されることができる。前記正極には、一般的にLiCoO2、LiMn2O4などのリチウム含有金属酸化物が正極活物質として用いられ、これにより、負極には、リチウムを含有しない炭素系活物質、シリコン系活物質が負極活物質として用いられている。
【0005】
特に、負極活物質の中でも、シリコン系活物質は、炭素系活物質に比べて約10倍程度の高い容量を有するという点で注目されており、高い容量により薄い電極によっても高いエネルギー密度を実現できるという長所がある。しかし、シリコン系活物質は、充放電に応じた体積の膨張、それによる寿命特性の低下という問題を有するため、汎用的に用いられていない。
【0006】
したがって、シリコン系活物質の高い容量、エネルギー密度を実現しながらも、寿命特性を向上させることができる二次電池の開発が求められる状況である。
【0007】
韓国公開特許第10-2017-0074030号公報は、リチウム二次電池用の負極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池に関し、多孔性シリコン-炭素複合体を含む負極活物質を開示しているが、前述した問題を解決するには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0074030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一課題は、二次電池の駆動電圧範囲を調節し、向上した容量、エネルギー密度、寿命特性を示す電池システムを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の課題は、二次電池の駆動電圧範囲を調節し、向上した容量、エネルギー密度、寿命特性を示す電池システムの使用方法を提供することにある。
また、本発明のまた他の課題は、前記電池システムを含む電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シリコン系活物質を含む負極、前記負極に対向する正極、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータ、および電解質を含む1つ以上の二次電池と、前記二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲を設定する制御ユニットとを含み、前記制御ユニットにより設定された前記二次電池の最大駆動電圧は4.00V~4.08Vであり、前記二次電池の最小駆動電圧は2.98V~3.07Vである、電池システムを提供する。
【0012】
また、本発明は、1つ以上の二次電池、および前記二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲を設定する制御ユニットを含む電池システムを製造するステップと、前記制御ユニットを介して、前記二次電池の最大駆動電圧が4.00V~4.08V、最小駆動電圧が2.98V~3.07Vとなるように駆動電圧範囲を設定し、前記二次電池を少なくとも1つのサイクルで充電および放電を行うステップとを含み、前記二次電池は、シリコン系活物質を含む負極、前記負極に対向する正極、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータ、および電解質を含む、電池システムの使用方法を提供する。
また、本発明は、前述した電池システムを含む電池パックを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電池システムは、シリコン系活物質を含む二次電池と、前記二次電池の駆動電圧範囲を特定の範囲に設定可能な制御ユニットとを含み、前記制御ユニットにより設定された駆動電圧範囲で二次電池を充電および放電させることができる。これにより、本発明の電池システムは、シリコン系活物質の体積の膨張を好ましいレベルで防止して寿命性能が向上するとともに、高いエネルギー密度を有することができる。
【0014】
また、本発明の電池システムの使用方法によると、シリコン系活物質を含む二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲を特定のレベルに調節することで、シリコン系活物質の体積の膨張程度を適したレベルに低減させて寿命性能が顕著に向上するとともに、高いエネルギー密度を発揮することができるように電池システムの駆動が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1~3および比較例1~7の二次電池の容量維持率を評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0017】
本明細書で用いられている用語は、単に例示的な実施形態を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとするものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに他を意味しない限り、複数の表現を含む。
【0018】
本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除するものではないことを理解しなければならない。
【0019】
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%に該当する粒径に定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザ回折法は、一般的にサブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性および高分解性の結果を得ることができる。
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
<電池システム>
本発明は、電池システムに関し、具体的には、リチウム二次電池用の電池システムに関する。
【0021】
具体的に、本発明の電池システムは、シリコン系活物質を含む負極、前記負極に対向する正極、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータ、および電解質を含む1つ以上の二次電池と、前記二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲を設定する制御ユニットと含み、前記制御ユニットにより設定された前記二次電池の最大駆動電圧は4.00V~4.08Vであり、前記二次電池の最小駆動電圧は2.98V~3.07Vである。
【0022】
一般的に、二次電池は、4.3~2.5Vの領域における電圧範囲で充電および放電されることで作動することができる。しかし、シリコン系活物質を含む負極および二次電池の使用において、前記範囲で充電および放電を行う場合、シリコン系活物質の体積の膨張/収縮程度が大きすぎて急激な寿命性能の低下をもたらし得る。これを防止するために二次電池の充電および放電時に電圧範囲を狭くする場合には、求められるエネルギー密度を満たすことができない。
【0023】
そこで、本発明は、二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲を特定の範囲に設定することで、シリコン系活物質の体積の膨張/収縮を適したレベルで防止して電池の寿命性能を顕著に向上させるとともに、高いエネルギー密度を達成することができる。
【0024】
前記二次電池は、シリコン系活物質を含む負極、前記負極に対向する正極、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータ、および電解質を含む。
前記負極は、シリコン系活物質を含み、後述する充電および放電時の駆動電圧範囲が調節されることで、シリコン系活物質の体積の膨張/収縮を防止しながらも、シリコン系活物質が有する高い容量およびエネルギー密度を好ましく発揮することができる。
【0025】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に形成された負極活物質層とを含むことができ、前記負極活物質層は、前記シリコン系活物質を含むことができる。
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されない。具体的に、前記負極集電体としては、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。
【0026】
前記負極集電体の厚さは3~500μm、好ましくは、シリコン系活物質含有負極の薄膜実現のために5~50μm、より好ましくは、7~20μmであってもよい。
前記負極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよい。例えば、前記負極集電体は、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0027】
前記シリコン系活物質は、SiOx(0≦x<2)で表される化合物を含んでもよい。SiO2の場合、リチウムイオンと反応しないのでリチウムを貯蔵することができないため、xは前記範囲内であることが好ましい。
【0028】
具体的に、前記シリコン系活物質はSiであってもよい。従来、Siは、シリコン酸化物(例えば、SiOx(0<x<2))に比べて容量が約2.5~3倍高いという面で有利であるが、Siの充放電に応じた体積の膨張/収縮程度がシリコン酸化物の場合よりも非常に大きいため、商用化がさらに容易ではない。しかし、本発明の場合、二次電池の駆動電圧範囲が上述した範囲に調節されることで、Siの体積の膨張/収縮が最小化されて寿命特性の劣化問題を効果的に解消することができ、Siが有する高い容量、エネルギー密度、レート特性の長所をさらに好ましく実現することができる。
【0029】
前記シリコン系活物質の平均粒径(D50)は、充放電時の活物質の構造的安定を図り、電気伝導性を維持するための伝導性ネットワークをさらに円滑に形成可能にするか、または活物質および集電体を結着させるためのバインダーとの接近性をさらに容易にするという面で1μm~10μm、好ましくは1.5μm~4μmであってもよい。
【0030】
前記シリコン系活物質は、シリコン系活物質の体積の膨張/収縮が電池に及ぼす影響を最小化しつつ、シリコン系活物質が有する高い容量を二次電池に十分に実現するという面で、前記負極活物質層中に60重量%~90重量%、好ましくは70重量%~80重量%で含まれてもよい。
【0031】
前記負極活物質層は、前記シリコン系活物質とともに、導電材および/またはバインダーをさらに含んでもよい。
前記バインダーは、前記負極活物質層と後述する負極集電体との接着力を向上させるか、またはシリコン系活物質間の結着力を向上させるために用いられてもよい。
【0032】
具体的に、前記バインダーは、電極接着力をさらに向上させ、シリコン系活物質の体積の膨張/収縮に十分な抵抗力を付与可能であるという面で、スチレンブタジエンゴム(SBR:styrene butadiene rubber)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitrile butadiene rubber)、アクリルゴム(acrylic rubber)、ブチルゴム(butyl rubber)、フッ素ゴム(fluoro rubber)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)、ポリアクリル酸(PAA:polyacrylic acid)、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)、ポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)、およびポリアクリルアミド(PAM:polyacryl amide)からなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0033】
好ましくは、前記バインダーは、高い強度を有し、シリコン系活物質の体積の膨張/収縮に対する優れた抵抗性を有し、優れた柔軟性をバインダーに付与して電極の歪み、撓みなどを防止可能であるという面で、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、およびポリアクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1種、好ましくは、ポリビニルアルコールおよびポリアクリル酸を含んでもよい。前記バインダーがポリビニルアルコールおよびポリアクリル酸を含む場合、ポリビニルアルコールおよびポリアクリル酸は、前述した効果をさらに向上させるという面で50:50~90:10の重量比、好ましくは55:45~80:20の重量比で前記バインダーに含まれてもよい。
【0034】
前記バインダーは、負極活物質層を形成するためのスラリーの製造時に水などの水系溶媒にさらによく分散されるようにし、活物質をさらに円滑に被覆して結着力を向上させるという面で、バインダー中の水素がLi、Na、またはCaなどで置換されたものを含んでもよい。
【0035】
前記バインダーは、前記負極活物質層中に5重量%~30重量%、好ましくは10重量%~20重量%で含まれてもよく、前記範囲である際、シリコン系活物質をさらによく結着させて活物質の体積の膨張問題を最小化できるとともに、負極活物質層を形成するためのスラリーの製造時にバインダーの分散が容易となるようにし、コーティング性およびスラリーの相安定性を向上させることができる。
【0036】
前記導電材は、二次電池に導電性を補助および向上させるために用いられてもよく、化学的変化を誘発せず且つ導電性を有するものであれば特に制限されない。具体的に、前記導電材は、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;カーボンナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;およびポリフェニレン誘導体からなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよく、好ましくは、高い導電性を実現するという面でカーボンブラックを含んでもよい。
【0037】
前記導電材は、負極活物質層を形成するためのスラリーの製造時に導電材の分散を容易にし、電気伝導度をさらに向上させるという面で、導電材の比表面積が80m2/g~200m2/g、好ましくは100m2/g~150m2/gであってもよい。
【0038】
前記導電材は、前記負極活物質層中に5重量%~20重量%、好ましくは7重量%~15重量%で含まれてもよく、前記範囲である際、バインダーによる抵抗の増加を緩和させながらも優れた導電性ネットワークを形成可能であるという面で好ましい。
前記負極活物質層の厚さは、薄膜電極の実現、高いエネルギー密度の実現の面で35μm~50μm、好ましくは36μm~45μmであってもよい。
【0039】
前記負極のエネルギー密度は575Wh/L以上、好ましくは600Wh/Lであってもよい。本発明の電池システムは、前述した最大駆動電圧および最小駆動電圧の調節により、シリコン系活物質が有する体積の膨張/収縮問題を解決しながらも、高いエネルギー密度の実現が可能である。
【0040】
前記負極は、前記負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダー、導電材、および負極スラリー形成用溶媒を含む負極スラリーをコーティングした後、乾燥および圧延して製造されてもよい。
【0041】
前記負極スラリー形成用溶媒は、例えば、負極活物質、バインダーおよび/または導電材の分散を容易にするという面で、蒸留水、エタノール、メタノール、およびイソプロピルアルコールからなる群から選択された少なくとも1種、好ましくは、蒸留水を含んでもよい。
【0042】
前記負極スラリー形成用溶媒は、負極スラリーの粘度、コーティング性、分散性などを考慮して、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む固形分の濃度が15重量%~45重量%、好ましくは20重量%~30重量%、より好ましくは24重量%~27重量%となるように前記負極スラリーに含まれてもよい。
【0043】
前記正極は、前記負極に対向する。
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含むことができる。
【0044】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されない。具体的に、前記負極集電体としては、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。
前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有してもよい。
【0045】
前記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよい。例えば、前記負極集電体は、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0046】
前記正極活物質層は、正極活物質を含むことができる。
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物として、具体的には、ニッケル、コバルト、マンガン、およびアルミニウムからなる少なくとも1種の遷移金属と、リチウムとを含む、リチウム遷移金属複合酸化物を含んでもよい。
【0047】
具体的に、前記リチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4など)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMnYO2(ここで、0<Y<1)、LiMn2-zNizO4(ここで、0<Z<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1O2(ここで、0<Y1<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2O2(ここで、0<Y2<1)、LiMn2-z1Coz1O4(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NipCoqMnr1)O2(ここで、0<p<1、0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)またはLi(Nip1Coq1Mnr2)O4(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+q1+r2=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr3MS2)O2(ここで、MはAl、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、およびMoからなる群から選択され、p2、q2、r3、およびs2は、それぞれ独立した元素の原子分率として、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1である)など)などが挙げられ、これらの何れか1つまたは2つ以上の化合物が含まれてもよい。中でも、電池の容量特性および安全性の向上が可能であるという点で、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物(例えば、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2、またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2など)、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2など)などであってもよく、リチウム遷移金属複合酸化物を形成する構成元素の種類および含量比の制御に応じた改善効果の顕著さを考慮すると、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2、またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2などであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0048】
より具体的に、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルト、およびマンガンを含む遷移金属とリチウムとを含むことができ、この場合、後述する電池システムの駆動電圧範囲で寿命特性およびエネルギー密度が顕著に向上することができる。
【0049】
前記正極活物質は、正極活物質の十分な容量発揮などを考慮して、正極活物質層中に80重量%~99重量%、好ましくは92重量%~98.5重量%で含まれてもよい。
前記正極活物質層は、前述した正極活物質とともに、バインダーおよび/または導電材をさらに含んでもよい。
【0050】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結着と集電体に対する結着に助力をする成分であり、具体的に、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、およびフッ素ゴムからなる群から選択された少なくとも1種、好ましくは、ポリビニリデンフルオライドを含んでもよい。
【0051】
前記バインダーは、正極活物質など、成分間の結着力を十分に確保するという面で、正極活物質層中に1重量%~20重量%、好ましくは1.2重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0052】
前記導電材は、二次電池に導電性を補助および向上させるために用いられてもよく、化学的変化を誘発せず且つ導電性を有するものであれば特に制限されない。具体的に、前記導電材は、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;カーボンナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;およびポリフェニレン誘導体からなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよく、好ましくは、導電性の向上の面でカーボンブラックを含んでもよい。
【0053】
前記導電材は、正極活物質層を形成するためのスラリーの製造時に導電材の分散を容易にし、電気伝導度をさらに向上させるという面で、導電材の比表面積が80m2/g~200m2/g、好ましくは100m2/g~150m2/gであってもよい。
前記導電材は、電気伝導性を十分に確保するという面で、正極活物質層中に1重量%~20重量%、好ましくは1.2重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0054】
前記正極活物質層の厚さは、負極と正極の容量バランスを考慮し、負極内のシリコン系活物質の体積の膨張/収縮による影響を最小化するという面で30μm~400μm、好ましくは50μm~110μmであってもよい。
【0055】
前記正極は、前記正極集電体上に正極活物質、および選択的にバインダー、導電材、および正極スラリー形成用溶媒を含む正極スラリーをコーティングした後、乾燥および圧延して製造されてもよい。
【0056】
前記正極スラリー形成用溶媒は、NMP(N-methyl-2-pyrrolidone)などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含む際に好ましい粘度となる量で用いられてもよい。例えば、前記正極スラリー形成用溶媒は、正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%となるように前記正極スラリーに含まれてもよい。
【0057】
前記二次電池は、下記数学式1により計算されたN/P比(ratio)が1.5~3.5、より好ましくは1.8~2.3であってもよい。
【0058】
[数学式1]
N/P比=負極の単位面積当たりの放電容量/正極の単位面積当たりの放電容量。
本発明において、前記「単位面積当たりの放電容量」は、負極または正極の1番目のサイクルにおける単位面積当たりの放電容量を意味する。
【0059】
前記負極の単位面積当たりの放電容量は、次のような方法により得ることができる。具体的に、負極活物質を含む負極サンプルと、前記負極サンプルに対向する対極(例えば、リチウム金属電極)をもってハーフ-セル(half-cell)を製造する。前記ハーフ-セルを充電および放電して測定された放電容量を負極活物質の重さで割って「負極活物質の単位重さ当たりの負極サンプルの放電容量」を求める。前記ハーフ-セルで用いられた負極活物質と同一の負極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極をもって二次電池を製造する。前記「負極活物質の単位重さ当たりの負極サンプルの放電容量」に前記二次電池に含まれた負極活物質の重さをかけ、それを前記二次電池に含まれた負極の面積で割って前記負極の単位面積当たりの放電容量を得ることができる。
【0060】
前記正極の単位面積当たりの放電容量は、次のような方法により得ることができる。具体的に、正極活物質を含む正極サンプルと、前記負極サンプルに対向する対極(例えば、リチウム金属電極)をもってハーフ-セル(half-cell)を製造する。前記ハーフ-セルを充電および放電して測定された放電容量を正極活物質の重さで割って「正極活物質の単位重さ当たりの正極サンプルの放電容量」を求める。前記ハーフ-セルで用いられた正極活物質と同一の正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極をもって二次電池を製造する。前記「正極活物質の単位重さ当たりの正極サンプルの放電容量」に前記二次電池に含まれた正極活物質の重さをかけ、それを前記二次電池に含まれた正極の面積で割って前記正極の単位面積当たりの放電容量を得ることができる。
【0061】
本発明の二次電池のN/P比(正極と負極の放電容量の割合)が前記範囲に調節される場合、負極の放電容量が正極の放電容量よりも特定のレベルにさらに大きく設計されるものであり、正極からのリチウムが負極に注入される際、前記リチウムが負極内のシリコン系活物質全体に占める割合を減少させることができる。そこで、負極内におけるシリコン系活物質の使用割合を特定のレベルに減少させ、これにより、全体電池レベルで、負極における体積の膨張による寿命特性の劣化を最小化することができる。また、N/P比を上述したレベルに調節することで、上述した体積の膨張による電池の寿命特性の劣化を最小化するとともに、シリコン系活物質による高いエネルギー密度、レート特性、および容量特性を有する二次電池の実現が可能である。
【0062】
前記セパレータは、負極と正極を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして用いられるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、且つ、電解液含湿能力に優れることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するためにセラミック成分または高分子物質を含むコーティングがされたセパレータが用いられてもよく、選択的に単層または多層構造として用いられてもよい。
【0063】
また、本発明で用いられる電解質としては、二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0064】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含んでもよい。
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割をすることができるものであれば特に制限されずに用いられてもよい。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル系溶媒;ジブチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(RはC2~C20の直鎖状、分岐状、または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが用いられてもよい。この中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能の向上が可能な高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートなど)との混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して用いることで、優れた電解液性能を示すことができる。
【0065】
前記リチウム塩としては、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンの提供が可能な化合物であれば特に制限されずに用いられてもよい。具体的に、前記リチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが用いられてもよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で用いることが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適した伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0066】
前記二次電池は、1つ以上で前記電池システムに含まれてもよい。
例えば、前記二次電池は、1つの二次電池からなる二次電池セル、または複数の二次電池の集合体である二次電池モジュールの形態で、前記電池システムに含まれてもよい。
前記二次電池は、通常の二次電池の製造方法により、上述した負極と正極との間にセパレータを介在させた後、電解液を注入して製造されてもよい。
【0067】
前記制御ユニットは、前記二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲を設定することができる。これにより、前記制御ユニットにより設定された二次電池の駆動電圧範囲で、二次電池の充電および放電が行われることができる。
【0068】
前記制御ユニットは、二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲の制御が可能なものであれば特に制限されず、例えば、電気化学充放電器であってもよい。具体的に、前記制御ユニットは、電池パック内に含まれるBMS(Battery Management System)内に内蔵されてもよい。
【0069】
前記制御ユニットにより設定された前記二次電池の最大駆動電圧は4.00V~4.08Vであり、前記二次電池の最小駆動電圧は2.98V~3.07Vである。前記設定された最大駆動電圧から最小駆動電圧までの範囲で、二次電池の充電および放電が行われることができる。
【0070】
前記最大駆動電圧が4.00V未満である場合には、駆動電圧範囲が狭くなることにより、エネルギー密度が求められるレベルに達成されることができず、前記最大駆動電圧が4.08V超過である場合には、活物質に発揮される容量が多くなることにより、シリコン系活物質の体積の膨張が十分に制御されないため、寿命性能が急激に低下し得る。
【0071】
前記最小駆動電圧が2.98V未満である場合には、活物質の収縮に応じた粒子間の脱離が発生し、活物質間の導電性連結が切れる恐れがあるため、寿命性能が急激に低下し得るし、前記最小駆動電圧が3.07V超過である場合には、駆動電圧範囲が狭くなることにより、エネルギー密度が求められるレベルに達成されなくなり得る。
【0072】
具体的に、前記制御ユニットにより設定された前記二次電池の最大駆動電圧は4.03V~4.07Vであり、前記二次電池の最小駆動電圧は3.03V~3.06Vであってもよく、前記範囲である際、前述した寿命特性およびエネルギー密度の同時向上効果をさらに好ましく実現することができる。
【0073】
<電池システムの使用方法>
本発明は、電池システムの使用方法、より具体的には、前述した電池システムの使用方法を提供する。具体的に、前記電池システムの使用方法は、リチウム二次電池用の電池システムの使用方法であってもよい。
【0074】
具体的に、本発明の電池システムの使用方法は、1つ以上の二次電池、および前記二次電池の充電および放電時の駆動電圧範囲を設定する制御ユニットを含む電池システムを製造するステップと、前記制御ユニットを介して、前記二次電池の最大駆動電圧が4.00V~4.08V、最小駆動電圧が2.98V~3.07Vとなるように駆動電圧範囲を設定し、前記二次電池を少なくとも1つのサイクルで充電および放電を行うステップとを含み、前記二次電池は、シリコン系活物質を含む負極、前記負極に対向する正極、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータ、および電解質を含む。
【0075】
本発明の電池システムの使用方法は、制御ユニットを介して最大駆動電圧および最小駆動電圧を上述したレベルに設定し、設定された最大駆動電圧から最小駆動電圧まで二次電池を充電および放電することにより電池システムを作動させる。上述したレベルに駆動電圧範囲を調節して充電および放電が行われた二次電池は、シリコン系活物質の体積の膨張/収縮を最小化して寿命性能を向上させながらも、高いエネルギー密度を達成することができる。
前記二次電池、前記制御ユニットは、前述した二次電池、制御ユニットと同様であってもよい。
【0076】
<電池パック>
また、本発明は、前述した電池システムを含む電池パックを提供する。
前記電池パックは、前述した二次電池、制御ユニットの他にも、当分野で公知の構成、例えば、BMS(Battery Management System)、冷却システムなどをさらに含んでもよい。
【0077】
本発明に係る電池システムまたは電池パックは、携帯電話、ノートブック型コンピュータ、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車の分野などに有用である。前記電池システムまたは電池パックは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、電力貯蔵装置などのように高出力、大容量が求められる動力源に好ましく適用されることができる。
【0078】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例について詳しく説明する。但し、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0079】
<製造例>
製造例1:二次電池の製造
<負極の製造>
負極活物質としてシリコン系活物質Si(平均粒径(D50):3.5μm)、導電材としてカーボンブラック(製品名:Super C65、製造会社:Timcal)、バインダーとしてポリビニルアルコールおよびポリアクリル酸を重量比66:34で混合した混合物(重量平均分子量:約360,000g/mol)を75:10:15の重量比で、負極スラリー形成用溶媒として蒸留水に添加し、負極スラリーを製造した(固形分の濃度25重量%)。
【0080】
負極集電体として銅集電体(厚さ:8μm)の一面に前記負極スラリーを68.4mg/25cm2のローディング量でコーティングし、圧延(roll press)し、130℃の真空オーブンで10時間乾燥して負極活物質層(厚さ:44μm)を形成し、負極を製造した(負極の厚さ:52μm)。
【0081】
<正極の製造>
正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(平均粒径(D50):10μm)、導電材としてカーボンブラック(製品名:Super C65、製造会社:Timcal)、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)を97:1.5:1.5の重量比で、正極スラリー形成用溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加し、正極スラリーを製造した(固形分の濃度72重量%)。
【0082】
正極集電体としてアルミニウム集電体(厚さ:12μm)の一面に前記正極スラリーを459.4mg/25cm2のローディング量でコーティングし、圧延(roll press)し、130℃の真空オーブンで10時間乾燥して正極活物質層(厚さ:110μm)を形成し、正極を製造した(正極の厚さ:122μm)。
【0083】
<二次電池の製造>
上記で製造された負極と正極との間にポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンセパレータを介在し、電解質を注入して製造例1の二次電池を製造した。電解質としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジエチルカーボネート(DMC)を30:70の体積比で混合した有機溶媒にビニレンカーボネートを電解質の全体重量を基準に3重量%で添加し、リチウム塩としてLiPF6を1Mの濃度で添加したものを用いた。
【0084】
<N/P比の測定>
上記で製造された負極を一定大きさに切断して負極サンプルを製造した。前記負極サンプルと同一の大きさのリチウム金属電極を準備し、それを前記負極サンプルに対向させた。前記負極サンプルと前記リチウム金属電極との間にポリエチレンセパレータを介在した後、電解液を注入してコイン型ハーフ-セルを製造した。前記電解液としては、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを50:50の体積比で混合した有機溶媒に、リチウム塩としてLiPF6を1Mの濃度で添加したものを用いた。前記コイン型ハーフ-セルを0.1Cで充/放電して得た放電容量を負極サンプルに含まれた負極活物質の重さで割り、負極活物質の単位重さ当たりの負極サンプルの放電容量を求めた。
【0085】
また、上記で製造された正極を一定大きさに切断して正極サンプルを製造した。前記正極サンプルと同一の大きさのリチウム金属電極を準備し、それを前記正極サンプルに対向させた。前記正極サンプルと前記リチウム金属電極との間にポリエチレンセパレータを介在した後、電解液を注入してコイン型ハーフ-セルを製造した。前記電解液としては、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを50:50の体積比で混合した有機溶媒に、リチウム塩としてLiPF6を1Mの濃度で添加したものを用いた。前記コイン型ハーフ-セルを0.1Cで充/放電して得た放電容量を正極サンプルに含まれた正極活物質の重さで割り、正極活物質の単位重さ当たりの正極サンプルの放電容量を求めた。
【0086】
上記で測定された、負極活物質の単位重さ当たりの負極サンプルの放電容量に製造例1で製造された二次電池の負極活物質の重さをかけ、負極の面積で割って製造例1の負極の単位面積当たりの放電容量を求めた。また、正極活物質の単位重さ当たりの正極サンプルの放電容量に製造例1で製造された二次電池の正極活物質の重さをかけ、正極の面積で割って製造例1の正極の単位面積当たりの放電容量を求めた。
前記負極の単位面積当たりの放電容量を前記正極の単位面積当たりの放電容量で割って2.0のN/P比を求めた。
【0087】
製造例2:二次電池の製造
<負極の製造>
製造例1における負極スラリーを負極集電体として銅集電体(厚さ:8μm)の一面に88.8mg/25cm2のローディング量でコーティングし、圧延(roll press)し、130℃の真空オーブンで10時間乾燥して負極活物質層(厚さ:57μm)を形成し、負極を製造した(負極の厚さ:65μm)。
【0088】
<正極の製造>
製造例1で製造された正極を用いた。
【0089】
<二次電池の製造>
上記で製造された負極および正極を用いたことを除いては、製造例1と同様の方法により製造例2の二次電池を製造した。
【0090】
<N/P比>
製造例1と同様の方法により製造例2の二次電池のN/P比(=2.6)を測定した。
【0091】
<実施例>
実施例1~3および比較例1~7
<電池システムの製造>
上記で製造された製造例1および製造例2の二次電池を電気化学充放電器に連結した。
下記表1のように二次電池の種類、制御ユニットに設定された最大駆動電圧および最小駆動電圧を下記のように調節し、実施例1~3および比較例1~7の電池システムを製造した。
【0092】
【0093】
実験例
実験例1:フル充電時の厚さ膨脹率
実施例1~3、比較例1~7で製造された電池システムを0.5Cで前記表1の最大電圧までCC/CVモードで充電(表1の最大電圧、0.05C電流cut-off)し、下記数学式2によるフル充電時の負極厚さ膨脹率を測定した。
【0094】
[数学式2]
フル充電時の負極厚さ膨脹率(%)={(da2-da1)/da1}×100
前記数学式2中、da2はフル充電時の負極活物質層の厚さであり、da1は充電前の負極活物質層の厚さである。その結果を下記表2に示した。
【0095】
実験例2:フル充電/フル放電の厚さ変化差
実施例1~3、比較例1~7で製造された電池システムを下記条件で充電および放電し、下記数学式3によるフル充電/フル放電の厚さ変化差(%)を計算した。
【0096】
<充電および放電条件>
充電:0.5Cで前記表1の最大電圧までCC/CVモードで充電(表1の最大電圧、0.05C電流cut-off)
放電:0.5Cで前記表1の最小電圧までCCモードで放電(表1の最小電圧においてcut-off)
【0097】
[数学式3]
フル充電/フル放電の厚さ変化差(%)={(db2-db1)/db1}×100
前記数学式3中、db2はフル充電時の負極活物質層の厚さであり、db1はフル放電時の負極活物質層の厚さである。その結果を下記表2に示した。
【0098】
実験例3:容量維持率
実施例1~3および比較例1~7で製造された電池システムの容量維持率を評価した。
二次電池を下記の充電および放電条件で200番目のサイクルまで充電および放電を行った。下記数学式4により容量維持率を評価した。その結果を
図1および表2に示す。
【0099】
<充電および放電条件>
充電:0.5Cで前記表1の最大電圧までCC/CVモードで充電(表1の最大電圧、0.05C電流cut-off)
放電:0.5Cで前記表1の最小電圧までCCモードで放電(表1の最小電圧においてcut-off)
【0100】
[数学式4]
容量維持率(%)={(200番目サイクルにおける放電容量)/(1番目のサイクルにおける放電容量)}×100
【0101】
実験例4:エネルギー密度
実施例1~3および比較例1~7で製造された電池システムにより、下記の充電および放電条件で1回の充電および放電を行った。
【0102】
<充電および放電条件>
充電:0.5Cで前記表1の最大電圧までCC/CVモードで充電(表1の最大電圧、0.05C電流cut-off)
放電:0.5Cで前記表1の最小電圧までCCモードで放電(表1の最小電圧においてcut-off)
【0103】
その後、実施例1~3および比較例1~7の電池システム内の負極のエネルギー密度を下記数学式5により測定および計算した。
[数学式5]
エネルギー密度(Wh/L)={1番目のサイクルにおける放電容量(Ah)×平均電圧(V)}/(1番目のサイクルにおける充電完了時の負極の体積(L))
【0104】
前記数学式5中、平均電圧は、最小電圧に達して放電が終わった時点における電圧、電流、および放電実行時間をかけてWh(Watt-hour)を求め、それを1番目のサイクルにおける放電容量で割って得た。
【0105】
【0106】
表2を参照すると、本発明に係る電池システムを用いた実施例1~3の場合、寿命特性およびエネルギー密度が同時に向上していることを確認することができる。
【0107】
これに対し、本発明の最大および最小駆動電圧で充放電が行われていない比較例1~7の場合、シリコン系活物質の十分な容量発揮が難しいためエネルギー密度が過度に下がるか、またはシリコン系活物質の体積の膨張を制御し難いため寿命特性が過度に下がることを確認することができる。