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特許7507856生産システム、プログラム、制御方法および生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】生産システム、プログラム、制御方法および生産方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20240621BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
A01K63/04 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022524545
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2021019262
(87)【国際公開番号】W WO2021235534
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2020089171
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519309681
【氏名又は名称】株式会社プラントフォーム
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイコフ 尚江
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201935(JP,A)
【文献】特開平03-160934(JP,A)
【文献】特表2019-516414(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138269(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01K 63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物を養殖するための少なくとも1つの養殖水槽と、
植物を水耕栽培するための少なくとも1つの水耕栽培水槽と、
前記養殖水槽からの排水を処理して、処理水を前記水耕栽培水槽に供給する水処理装置と、を備え、
前記水処理装置は、
前記養殖水槽からの排水に含まれる不純物から前記植物の栄養分を生成し、前記生成した栄養分が前記植物の水耕栽培に必要な栄養分として過剰な場合に、過剰になる栄養分を貯留タンクに貯留することにより、前記水耕栽培水槽への栄養分の供給量を制御する、生産システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生産システムにおいて、
前記水処理装置は、
前記生成した栄養分が前記植物の水耕栽培に必要な栄養分として過剰な場合に、過剰になる栄養分を前記貯留タンクに貯留するとともに、前記生成した栄養分が前記植物の水耕栽培に必要な栄養分として不足する場合に、前記貯留タンクから補充することにより、前記水耕栽培水槽への栄養分の供給量を制御する、生産システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生産システムにおいて、
第1タンク及び第2タンクを更に備え、
前記第1タンクは、前記水耕栽培水槽からの排水を貯留し、貯留した水を前記水耕栽培水槽及び前記第2タンクの少なくとも一方に供給し、
前記第2タンクは、前記第1タンクからの水及び前記水処理装置からの処理水の少なくとも一方を貯留し、貯留した水を前記養殖水槽に供給する、生産システム。
【請求項4】
請求項3に記載の生産システムにおいて、
前記第1タンクから前記第2タンクを経由して前記養殖水槽に供給される水に対して、脱塩処理及び殺菌処理の少なくとも一方を含む水処理が実施される、生産システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の生産システムにおいて、
前記水処理装置は、前記水耕栽培水槽で水耕栽培する植物の種類および前記植物の生育状況の少なくとも一方に基づき、前記水耕栽培水槽に供給される栄養分およびその含有量を制御する、生産システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の生産システムにおいて、
複数の水耕栽培水槽を備えており、
前記複数の水耕栽培水槽にそれぞれ対応して設けられた複数の第3タンクであって、それぞれが前記水処理装置からの処理水を貯留し、貯留した水を対応する水耕栽培水槽に供給し、対応する前記水耕栽培水槽からの水を貯留する、前記複数の第3タンクを更に備え、
前記水処理装置によって生成された栄養分が前記複数の第3タンクのそれぞれに供給されるとともに、前記第3タンクごとに栄養分の供給量が独立して制御されることによって、前記複数の水耕栽培水槽のそれぞれへの栄養分の供給量が独立して制御される、生産システム。
【請求項7】
水生生物を養殖するための養殖水槽からの排水を処理して、処理水を、植物を水耕栽培するための水耕栽培水槽に供給する水処理装置に、
前記養殖水槽からの排水に含まれる不純物から前記植物の栄養分を生成し、前記生成した栄養分が前記植物の水耕栽培に必要な栄養分として過剰な場合に、過剰になる栄養分を貯留タンクに貯留することにより、前記水耕栽培水槽への栄養分の供給量を制御する処理を実行させる、プログラム。
【請求項8】
水生生物を養殖するための養殖水槽と、植物を水耕栽培するための水耕栽培水槽とを備える生産システムの制御方法であって、
前記養殖水槽からの排水を処理して、処理水を前記水耕栽培水槽に供給するステップと、
前記養殖水槽からの排水に含まれる不純物から前記植物の栄養分を生成し、前記生成した栄養分が前記植物の水耕栽培に必要な栄養分として過剰な場合に、過剰になる栄養分を貯留タンクに貯留することにより、前記水耕栽培水槽への栄養分の供給量を制御するステップと、を含む制御方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の生産システムによる植物用肥料の生産方法であって、
前記養殖水槽からの排水から不純物を分離するステップと、
前記分離した不純物から栄養分を生成し、前記生成した栄養分が前記植物の水耕栽培に必要な栄養分として過剰な場合に、過剰になる栄養分を貯留タンクに貯留するステップと、を含む生産方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年5月21日に日本国において提出された特願2020-089171号の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、生産システム、プログラム、制御方法および生産方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、魚介類などの水生生物を養殖するための養殖水槽を備える養殖部と、植物を水耕栽培するための水耕栽培部と、養殖水槽からの排水を曝気処理する浄化部と、を備えるシステムが記載されている。このシステムでは、養殖水槽からの排水に含まれる水生生物の糞および食べ残し餌などの有機物を浄化部による曝気処理により分解し、水耕栽培される植物の窒素源として吸収させることで水を浄化して養殖水槽に再び供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-42492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなシステムでは、養殖される水生生物の成長度合いあるいは水生生物の水揚げによる生育量の変化などにより、養殖水槽からの排水の水質(糞および食べ残し餌の量など)が変化する。特許文献1に記載のシステムでは、養殖水槽からの排水の水質の変化に関わらず、養殖水槽からの排水が浄化部で処理されてそのまま水耕栽培部に供給される。そのため、水耕栽培に対する栄養分の供給度合いが安定せず、植物を安定的・効率的に水耕栽培することができない。また、水耕栽培に対する栄養分の供給度合いを安定させるために、養殖される水生生物の生育量などを調整する方法も考えられるが、この方法では、水生生物を効率的に養殖することができない。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、水生生物の養殖および植物の水耕栽培の効率化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る生産システムは、水生生物を養殖するための養殖水槽と、植物を水耕栽培するための水耕栽培水槽と、前記養殖水槽からの排水を処理して、処理水を前記水耕栽培水槽に供給する水処理装置と、を備え、前記水処理装置は、前記養殖水槽からの排水に含まれる不純物から前記植物の栄養分を生成し、前記生成した栄養分が過剰な場合に、過剰になる栄養分を貯留タンクに貯留することにより、前記水耕栽培水槽への栄養分の供給量を制御する。
【0008】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、水生生物を養殖するための養殖水槽からの排水を処理して、処理水を、植物を水耕栽培するための水耕栽培水槽に供給する水処理装置に、前記養殖水槽からの排水に含まれる不純物から前記植物の栄養分を生成し、前記生成した栄養分が過剰な場合に、過剰になる栄養分を貯留タンクに貯留することにより、前記水耕栽培水槽への栄養分の供給量を制御する処理を実行させる。
【0009】
本開示の一実施形態に係る制御方法は、水生生物を養殖するための養殖水槽と、植物を水耕栽培するための水耕栽培水槽とを備える生産システムの制御方法であって、前記養殖水槽からの排水を処理して、処理水を前記水耕栽培水槽に供給するステップと、前記養殖水槽からの排水に含まれる不純物から前記植物の栄養分を生成し、前記生成した栄養分が過剰な場合に、過剰になる栄養分を貯留タンクに貯留することにより、前記水耕栽培水槽への栄養分の供給量を制御するステップと、を含む。
【0010】
本開示の一実施形態に係る生産方法は、上述した生産システムによる植物用肥料の生産方法であって、前記養殖水槽からの排水から不純物を分離するステップと、前記分離した不純物から栄養分を生成し、前記生成した栄養分が過剰な場合に、過剰になる栄養分を貯留タンクに貯留するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態によれば、水生生物の養殖および植物の水耕栽培の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1の実施形態に係る生産システムの構成の一例を示す図である。
図2図1に示す水処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図3図1に示す栄養分調整部の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図1に示す水処理装置の構成の別の一例を示す図である。
図5図1に示す水処理装置の構成のさらに別の一例を示す図である。
図6】本開示の第2の実施形態に係る生産システムの構成の一例を示す図である。
図7】本開示の第3の実施形態に係る生産システムの構成の一例を示す図である。
図8図7に示す生産システムの動作の一例を示す図である。
図9】第3の実施形態の変形例に係る生産システムの構成の一例を示す図である。
図10図7に示す生産システムの動作の一例を示す図である。
図11】本開示の第4の実施形態に係る生産システムの構成の一例を示す図である。
図12図11に示す生産システムの要部の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して例示説明する。各図中、同一符号は、同一または同等の構成要素を示している。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る生産システム1の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る生産システム1は、魚介類などの水生生物の養殖と、植物の水耕栽培との間で水を循環させるシステムである。
【0015】
図1に示す生産システム1は、少なくとも1つの養殖水槽10と、少なくとも1つの水耕栽培水槽20と、水処理装置30とを備える。
【0016】
養殖水槽10は、魚介類などの水生生物を養殖するための水槽である。養殖水槽10と水処理装置30とは配管51を介して接続される。養殖水槽10で養殖された水生生物の糞および食べ残し餌などの不純物を含む排水が配管51を介して水処理装置30に供給される。
【0017】
水耕栽培水槽20は、植物を水耕栽培するための水槽である。水耕栽培水槽20と水処理装置30とは配管52を介して接続され、水耕栽培水槽20と養殖水槽10とは配管53を介して接続される。水耕栽培水槽20は、後述する水処理装置30による処理後の処理水が供給される。また、水耕栽培水槽20は、水処理装置30から水耕栽培される植物のための栄養分が供給される。水耕栽培水槽20からの排水は、配管53を介して養殖水槽10に供給される。
【0018】
生産システム1を構成する水処理装置30は、配管51を介して供給された、養殖水槽10からの排水を処理して、配管52を介して処理水を水耕栽培水槽20に供給する装置である。水処理装置30は、養殖水槽10からの排水に含まれる不純物から植物の栄養分を生成し、水耕栽培水槽20に供給する。また、水処理装置30は、水耕栽培水槽20への栄養分の供給を制御する。
【0019】
図1に示す生産システム1によれば、養殖水槽10からの排水から不純物が除去された処理水が水耕栽培水槽20に供給されるとともに、除去された不純物から栄養分が生成され、水耕栽培水槽20に供給される。水耕栽培水槽20に供給された栄養分は植物の根から吸収される。したがって、水耕栽培水槽20から養殖水槽10には、浄化された水が供給されるので、水の循環により節水が可能となり、また、清掃および水の入れ替え作業の手間の削減を図ることができる。また、水生生物の糞などから水耕栽培する植物の栄養分を生成するため、コスト削減を図ることができる。さらに、水耕栽培水槽20への栄養分の供給を制御することで、必要な量の栄養分を水耕栽培水槽20に適宜、供給することができるので、植物の水耕栽培の効率化を図ることができる。また、水耕栽培水槽20に供給する栄養分に応じて養殖する水生生物の生育量などを調整する必要がないので、水生生物の養殖の効率化を図ることができる。したがって、水生生物の養殖および植物の水耕栽培の効率化を図ることができる。
【0020】
次に、水処理装置30の構成について、図1を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、水処理装置30は、固液分離部31と、液肥生成手段としての液肥生成部32と、液肥貯留タンク33と、制御手段としての栄養分調整部34とを備える。
【0022】
固液分離部31は、配管51を介して供給された、養殖水槽10からの排水を、水生生物の糞および食べ残し餌などの不純物と、不純物を除去した処理水とに固液分離するろ過装置である。固液分離部31は、配管52を介して処理水を水耕栽培水槽20に供給する。固液分離部31は、処理水を水耕栽培水槽20に供給する前に、UVライトなどによる紫外光の照射又はオゾンの供給などの殺菌処理により、処理水の殺菌を行ってもよい。固液分離部31は、分離した不純物を液肥生成部32に供給する。固液分離部31としては、フィルタあるいは膜といった公知のろ過装置を用いることができる。固液分離部31としてフィルタあるいは膜を用いる場合、固液分離部31のメンテナンス(洗浄)は、定期的に(例えば、1~12時間ごとなど、任意の時間間隔で)、空気圧による逆洗により行われる。空気圧による逆洗により固液分離部31を洗浄することで、フィルタ清掃の手間を軽減することができる。
【0023】
液肥生成部32は、固液分離部31から供給された不純物を分解して、植物の栄養分である液肥を生成する装置である。液肥生成部32は、例えば、サイズの大きい不純物は粉砕した上で、バクテリアなどの好気性菌による生物処理により、不純物に含まれる窒素分を硝酸塩などの肥料成分にする。液肥の生成の際には、好気性菌が活動しやすいようにエアレーションが行われる。しかしながら、液肥生成部32は、好気性菌に限られず、嫌気性菌による生物処理により肥料成分を生成してもよい。本実施形態においては、生物処理により液肥を生成する例を用いて説明したが、本開示はこれに限られるものではなく、不純物から液肥を生成することができれば、任意の方法・技術を用いることができる。液肥生成部32は、生成した液肥を液肥貯留タンク33に供給する。
【0024】
液肥貯留タンク33は、液肥生成部32により生成された液肥を貯留するタンクである。液肥貯留タンク33に貯留された液肥は、水耕栽培水槽20に供給される。液肥貯留タンク33に貯留された液肥は、水耕栽培水槽20に供給されるだけでなく、適宜、販売などされてもよい。液肥貯留タンク33内では、液肥生成部32と同じ状態を維持することができるように、エアレーションが行われてもよい。
【0025】
栄養分調整部34は、液肥貯留タンク33に貯留された液肥、すなわち、液肥生成部32により生成された液肥の水耕栽培水槽20への供給を制御する。具体的には、栄養分調整部34は、水耕栽培水槽20に供給される、植物の水耕栽培に必要な栄養分の量(液肥の添加量)を制御する。栄養分調整部34は、例えば、窒素、リン、カリウム、マグネシウム、カルシウムあるいは鉄分を制御対象として、その添加量を制御する。栄養分調整部34は、これらの成分の一部だけを制御対象としてもよく、これらの成分以外の成分を制御対象に加えてもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係る水処理装置30の動作について説明する。図2は、本実施形態に係る水処理装置30の動作の一例を示すフローチャートであり、水処理装置30の制御方法を説明するための図である。
【0027】
固液分離部31は、養殖水槽10からの排水を処理して(不純物を除去して)(ステップS11)。除去された不純物は液肥生成部32に供給される。液肥生成部32は、固液分離部31から供給された不純物から植物の栄養分(液肥)を生成して、液肥貯留タンク33に貯留し、栄養分調整部34は、水耕栽培水槽20への栄養分の供給を制御する(ステップS12)。なお、本実施形態では、液肥生成部32が生成する栄養分は液肥であるものとして説明するが、生成する栄養分は固体でもよい。ただし、水耕栽培に用いるうえでは液肥として生成するほうが好ましい。
【0028】
次に、栄養分調整部34による水耕栽培水槽20への栄養分の供給の制御について、図3を参照して説明する。
【0029】
栄養分調整部34は、水耕栽培水槽20で水耕栽培される植物に必要な栄養量(必要栄養量)を算出する(ステップS21)。野菜に必要な栄養素とその量として、野菜の種類とpHとに応じた必要量が知られている。例えば、野菜を水耕栽培する場合、pH6~7であるとすると、硝酸塩濃度が40ppm~160ppmの範囲となるのがよいことが知られている。また、好ましくは、野菜の味および養殖される水生生物(魚)の状態をよりよくするために、硝酸塩濃度が40ppm~80ppmの範囲となるのがよいことが知られている。栄養分調整部34は、例えば、このような情報に基づき必要栄養量を算出する。また、栄養分調整部34は、水耕栽培される植物の生育状況に基づき、水耕栽培水槽20に供給される栄養分およびその含有量を制御してもよい。
【0030】
次に、栄養分調整部34は、液肥貯留タンク33に貯留された液肥の栄養含有量を測定する(ステップS22)。そして、栄養分調整部34は、液肥の栄養含有量が必要栄養量を満たす(必要栄養量を充足する)か否かを判定する(ステップS23)。
【0031】
液肥が必要栄養量を充足すると判定した場合(ステップS23:Yes)、栄養分調整部34は、必要量だけ液肥を水耕栽培水槽20に供給する(ステップS24)。
【0032】
液肥が必要栄養量を充足しないと判定した場合(ステップS23:No)、栄養分調整部34は、足りない栄養分を液肥に補充した上で(ステップS25)、必要量だけ液肥を水耕栽培水槽20に供給する。栄養分調整部34は、例えば、液肥が必要栄養量を充足しないと判定した場合、液肥貯留タンク33から供給する液肥の量を増やすことで、必要栄養量を充足するようにする。また、栄養分調整部34は、栄養分の量としては十分であっても、特定の栄養分(例えば、カリウム)が不足している場合、その不足している栄養分を補充した上で、液肥を水耕栽培水槽20に供給する。
【0033】
このように本実施形態においては、水処理装置30は、水耕栽培水槽20で水耕栽培する植物の種類および植物の生育状況の少なくとも一方に基づき、水耕栽培水槽20に供給される栄養分およびその含有量を制御する。
【0034】
水生生物の養殖と植物の水耕栽培とで水を循環させる生産システムでは、養殖水槽からの排水に含まれる不純物の量および不純物に含まれる成分は、水生生物の養殖量および水生生物の活動量(季節および生育状況などによって変動する)などによって変動する。そのため、養殖水槽からの排水に含まれる不純物の量が少なくなると、水耕栽培される植物に必要な栄養量を確保することができない場合がある。
【0035】
従来は、水耕栽培される植物に必要な栄養量を確保することができるように、必要以上の水生生物を養殖することが行われていた。そのため、時期などにより、栄養分が過剰になる場合があったり、あるいは、過剰にならないように養殖したり、出荷などにより生育数が変動したりするために、時期などにより、水生生物が不足する場合があったりした。
【0036】
一方、本実施形態に係る生産システム1では、不純物から生成した液肥を液肥貯留タンク33で貯留しておくため、保存が可能となり、かつ、必要量を適宜、水耕栽培水槽20に供給することができる。例えば、生成した液肥が水耕栽培水槽20で過剰となる場合に、過剰になる栄養分を液肥貯留タンク33に貯留してもよい。また、生成した液肥が水耕栽培水槽20で不足する場合に、液肥貯留タンク33から液肥を補充してもよい。そのため、生成される液肥の過剰・不足に関わりなく、水耕栽培水槽20への液肥の供給量を調整することができる。したがって、水耕栽培される植物に対する必要量よりも多くの水生生物を養殖した場合、また、養殖される水生生物が少なくなった場合にも、必要な量の栄養分を水耕栽培水槽20に供給することができる。すなわち、水耕栽培水槽20に供給する栄養分に応じて養殖する水生生物の生育量を調整する必要がないので、水生生物の養殖および植物の水耕栽培の効率化を図ることができる。
【0037】
また、養殖される水生生物の餌に含まれる成分などによって、生成される液肥に含まれる栄養分が変わり得る。そのため、液肥に含まれる栄養分の含有量(栄養含有量)を測定し、足りない栄養分がある場合には、その栄養分を補充して、水耕栽培水槽20に液肥を供給することで、水耕栽培の効率化を図ることができる。
【0038】
足りない栄養分を補充する場合、補充する栄養分は水に溶けやすいものであることが好ましい。水に溶けにくい栄養分を加えても、効果がないだけでなく、水耕栽培水槽20の排水を養殖水槽10に循環した場合に、養殖される水生生物に健康被害を及ぼす可能性があるからである。
【0039】
そこで、外部から調達した栄養分を液肥に補充する場合、図4に示すように、水処理装置30は、水質測定部35をさらに備えることが好ましい。
【0040】
水質測定部35は、水耕栽培水槽20から養殖水槽10に供給される水の水質を測定し、測定結果を栄養分調整部34に出力する。
【0041】
栄養分調整部34は、水質測定部35の測定結果に基づき、栄養分の補充により、養殖される水生生物への影響がでないように、水耕栽培水槽20に供給する栄養分を調整してよい。
【0042】
また、本実施形態に係る水処理装置30は、図5に示すように、pH調整部36をさらに備えてよい。
【0043】
pH調整部36は、養殖水槽10の水および水耕栽培水槽20の水の少なくとも一方のpHを調整する。
【0044】
養殖水槽10からの排水は、水処理装置30および水耕栽培水槽20を経由する間に、pHが下がる。例えば、養殖水槽10からの排水のpHと、水処理装置30の処理水のpHとはほぼ同じ値(処理水のpHの方がやや低い程度)であるが、水処理装置30で生成された液肥のpHは、養殖水槽10からの排水のpHよりも0.2程度下がる場合がある(下がり幅は、気温あるいは排水に含まれる不純物の状況などにより異なる)。そのため、処理水と液肥とが供給される水耕栽培水槽20の水は、養殖水槽10からの排水と比べてpHが下がることがある。
【0045】
また、水耕栽培水槽20からの排水のpHも、処理水のpHよりも低くなり、水耕栽培水槽20からの排水が循環して養殖水槽10に供給されることで、養殖水槽10の水のpHも低下する。
【0046】
そこで、pH調整部36により、養殖水槽10の水および水耕栽培水槽20の水の少なくとも一方のpHを調整することで、養殖水槽10の水および水耕栽培水槽20の水のpHを適切な範囲に保つことができる。pHの調整は、公知の方法により行うことができる。pHを調整する方法としては、例えば、pH調整剤(薬剤)を添加する方法がある。添加されるpH調整剤としては、養殖される水生生物および水耕栽培される植物の生育にとっては自然由来のものが好ましいため、例えば、牡蠣殻(炭酸カルシウム)などを用いることが好ましい。
【0047】
pH調整部36によるpHの調整は、養殖水槽10の水および水耕栽培水槽20の水の一方に対して行えばよい。ただし、養殖される水生生物の方がpHの影響をより強く受けるため、養殖水槽10の水を対象としてpHを調整することが好ましい。なお、養殖している水生生物と、水耕栽培される植物とで適切なpHが異なる場合には、養殖水槽10の水のpHと水耕栽培水槽20の水のpHとを個別に調整してもよい。また、上述した例では、pH調整部36によりpHを上げる例を用いて説明したが、水槽(養殖水槽10および水耕栽培水槽20)内の水のpHが上がる場合には、pH調整部36は、pHを下げるように調整を行えばよい。また、図5に示す水処理装置30が、水質測定部35をさらに備えてもよい。
【0048】
このように本実施形態においては、生産システム1は、水生生物を養殖するための養殖水槽10と、植物を水耕栽培するための水耕栽培水槽20と、養殖水槽10からの排水を処理して、処理水を水耕栽培水槽20に供給する水処理装置30と、を備える。水処理装置30は、養殖水槽10からの排水に含まれる不純物から植物の栄養分を生成し、水耕栽培水槽20への栄養分の供給を制御する。
【0049】
養殖水槽10からの排水に含まれる不純物から栄養分を生成し、水耕栽培水槽20への栄養分の供給を制御することで、必要な量の栄養分を水耕栽培水槽20に適宜、供給することができるので、植物の水耕栽培の効率化を図ることができる。また、水耕栽培水槽20に供給する栄養分に応じて養殖する水生生物の生育量などを調整する必要がないので、水生生物の養殖の効率化を図ることができる。したがって、水生生物の養殖および植物の水耕栽培の効率化を図ることができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図6は、本開示の第2の実施形態に係る生産システム1Aの構成例を示す図である。図6において、図1と同様の構成には同じ符号を付す。
【0051】
図6に示す生産システム1Aは、養殖水槽10と、水耕栽培水槽20と、水処理装置30と、水貯留タンク40とを備える。すなわち、本実施形態に係る生産システム1Aは、図1に示す生産システム1と比較して、水貯留タンク40を追加した点が異なる。
【0052】
水貯留タンク40は、配管52から分岐した配管54を介して、水処理装置30と接続される。水処理装置30により生成された処理水のうち、一部は水耕栽培水槽20に供給され、残りは配管54に流れる。配管54は、水貯留タンク40と接続するとともに、養殖水槽10と接続する配管55と接続する。配管54に流れた処理水のうち、一部は水貯留タンク40に供給され、残りは配管55を介して養殖水槽10に供給される。水貯留タンク40は、配管56を介して養殖水槽10と接続されるとともに、配管57,58を介して水耕栽培水槽20と接続される。水貯留タンク40は、配管52および配管54を介して水処理装置30から供給された処理水を貯留する。また、水貯留タンク40は、配管58を介して、水耕栽培水槽20から供給された排水を処理水として貯留する。水貯留タンク40は、貯留した処理水を、配管56を介して養殖水槽10に供給するとともに、配管57を介して水耕栽培水槽20に供給する。
【0053】
このように本実施形態に係る生産システム1Aは、貯留した処理水を水耕栽培水槽20に供給する水貯留タンク40を備える。また、本実施形態に係る生産システム1Aは、水処理装置30からの処理水を養殖水槽10に供給する配管55(第1の配管)と、水耕栽培水槽20からの排水を水貯留タンク40に供給する配管58(第2の配管)とを備える。
【0054】
水貯留タンク40に貯留された処理水を養殖水槽10および水耕栽培水槽20に供給することで、養殖水槽10および水耕栽培水槽20の水量調整が容易となる。
【0055】
また、本実施形態に係る生産システム1Aにおいては、養殖水槽10と水処理装置30との間で水を循環させる系統(第1の系統)と、水耕栽培水槽20と水処理装置30との間で水を循環させる系統(第2の系統)とを分離して(2つの系統を独立して)、運転することができる。
【0056】
例えば、養殖水槽10での水生生物の養殖量と、水耕栽培水槽20での植物の栽培量とバランスが悪い場合、2つの系統を分離して運転してもよい。また、外部から栄養分を補充する場合、養殖される水生生物への影響を低減するために、2つの系統を分離して運転してもよい。すなわち、図6に示す生産システム1Aでは、状況に応じて、図1に示す生産システム1と同様に、第1の系統と第2の系統とを連携して運転することができるとともに、第1の系統と第2の系統とを分離して運転することができる。
【0057】
2つの系統を独立して運転することができることで、清掃などのために一方の系統を停止させる場合でも、他方の系統を安定して稼働することができる。また、それぞれの系統に設けるポンプを小型化することができるので、すなわち、2台の小型ポンプで運転することができるので、設備費・ランニングコストの低減を図ることができる。また、一方の系統に設けられたポンプが故障した場合でも、他方の系統は稼働を継続することができるので、一方の系統の故障が他方の系統に影響を及ぼすリスクを低減することができる。
【0058】
また、上述したように、生産システム1Aにおいては、2つの系統の連携と分離とを状況に応じて切り替えてもよい。2つの系統の連携と分離とを切替可能とすることで、水生生物の養殖と植物の水耕栽培とのバランスを維持できる範囲では、生産システム1A全体で(第1の系統と第2の系統とで)水を循環させ、バランスが悪くなると、第1の系統と第2の系統とを個別に運転させてもよい。
【0059】
なお、図6に示す生産システム1Aを構成する水処理装置30が、水質測定部35およびpH調整部36の少なくとも一方を備えていてもよい。
【0060】
(第3の実施形態)
図7は、本開示の第3の実施形態に係る生産システム1Bの構成例を示す図である。図7において、図1と同様の構成には同じ符号を付す。
【0061】
図7に示す生産システム1Bは、養殖水槽10と、水耕栽培水槽20と、水処理装置30と、液肥貯留タンク33と、栄養分調整部34と、水処理部37と、2つの水貯留タンク40A及び40Bと、とを備える。概略として、本実施形態に係る生産システム1Bは、第1の実施形態に係る生産システム1と比較して、液肥貯留タンク33及び栄養分調整部34が水処理装置30から分離された点、及び、水貯留タンク40A及び40Bを追加した点が異なる。なお、液肥貯留タンク33及び栄養分調整部34は、図1に示す生産システム1と同様に、水処理装置30に含まれてもよい。
【0062】
水貯留タンク40Aは、水貯留タンク40Bからの水及び水処理装置30の固液分離部31からの処理水の少なくとも一方を貯留し、貯留した水を養殖水槽10に供給するタンクである。図7に示す例では、水貯留タンク40Aは、配管59及び60を介して、水処理装置30の固液分離部31と接続される。固液分離部31からの処理水の少なくとも一部は、配管59及び60を介して水貯留タンク40Aに供給され得る。また水貯留タンク40Aは、配管64を介して、養殖水槽10に接続される。水貯留タンク40Aに貯留された水は、配管64を介して養殖水槽10に供給される。また水貯留タンク40Aは、配管67を介して、水貯留タンク40Bに接続される。水貯留タンク40Bに貯留された水は、配管67を介して、水貯留タンク40Aに供給される。
【0063】
水貯留タンク40Bは、水耕栽培水槽20からの排水を貯留し、貯留した水を水耕栽培水槽20及び水貯留タンク40Aの少なくとも一方に供給するタンクである。図7に示す例では、水貯留タンク40Bは、配管59及び61を介して、水処理装置30の固液分離部31と接続される。固液分離部31からの処理水の少なくとも一部は、配管59及び61を介して水貯留タンク40Bに供給される。また水貯留タンク40Bは、配管62及び63を介して、水耕栽培水槽20と接続される。水貯留タンク40Bに貯留された水は、配管62を介して水耕栽培水槽20に供給される。水耕栽培水槽20からの排水は、配管63を介して水貯留タンク60Bに供給される。したがって、水貯留タンク40Bと水耕栽培水槽20との間で水が循環可能である。また水貯留タンク40Bは、上述したように配管67を介して水貯留タンク40Aに接続される。水貯留タンク40Bに貯留された水は、配管67を介して、水貯留タンク40Aに供給される。なお、水耕栽培水槽20、水貯留タンク40A及び40Bの接続関係は、上記のように水を供給することができれば、任意の構成とすることができる。例えば、図1に示す生産システム1と同様に水耕栽培水槽20から養殖水槽10への配管53を設け、配管53から分岐させた配管を経由して、水貯留タンク40A及び40Bに水を供給してもよい。
【0064】
水処理部37は、それぞれ所定の水処理を実施する1つ以上の水処理装置である。ここで「所定の水処理」は、例えば脱塩処理、殺菌処理、pH調整処理、溶存酸素濃度の調整処理、及び溶存二酸化炭素濃度の調整処理などを含むが、これらに限られず、水質を調整する任意の水処理を含んでもよい。所定の水処理が脱塩処理を含む場合、例えば養殖水槽10及び水耕栽培水槽20の一方の水質を海水とし、他方の水質を淡水とすることも可能である。所定の水処理がpH調整処理を含む場合、水処理部37は、水処理装置としてpH調整部36を含んでもよい。各水処理装置は、例えば水処理を実施する対象となる水の水質を検出するセンサを備えてもよい。例えば、水処理部37は、当該センサとして水質測定部35を備えてもよい。水処理部37に含まれる各水処理装置は、生産システム1Bに含まれる任意の配管、水槽、又はタンク内の水に対して水処理を実施可能となるように、生産システム1B内に配置されてもよい。例えば、水処理部37は、配管59、60、61、63、64、及び67のそれぞれを流れる水に対して水処理を実施可能であってもよい。
【0065】
また、水処理部37は、各配管を流れる水の全量に対して水処理を実施してもよく、水処理装置の処理能力等に応じて、各配管を流れる水の一部に対して水処理を実施してもよい。例えば、脱塩装置によっては塩基物以外の成分(ミネラル分、バクテリア等)までも除去してしまう場合がある。そのため、例えば配管を分岐させて一部の水のみが脱塩装置を経由するようにし、当該配管を通過する水の全量に対する水質が調整されるようにしてもよい。
【0066】
また例えば、水処理部37は、固液分離部31から水貯留タンク40A及び40Bに供給される処理水(例えば、配管59を流れる水)に対して、殺菌処理を実施してもよい。水処理部37は、水貯留タンク40Bから水耕栽培水槽20に供給される水(例えば、配管62を流れる水)に対して、溶存酸素濃度を増加させる処理を実施してもよい。水処理部37は、水貯留タンク40Bから水貯留タンク40Aに供給される水(例えば、配管67を流れる水)に対して、脱塩処理及び殺菌処理の少なくとも一方を実施してもよい。脱塩処理が実施される場合、水耕栽培水槽20から水貯留タンク40Bを経由して水貯留タンク40Aに供給される排水に含まれ得る、水生生物にとって有益でない成分(例えばFe、Mg、及びCaなど)が除去され得る。水処理部37は、水貯留タンク40A内の水に対して、溶存二酸化炭素濃度を減少させる処理を実施してもよい。水処理部37は、水貯留タンク40Aから養殖水槽10に供給される水(例えば、配管64を流れる水)に対して、溶存酸素濃度を増加させる処理を実施してもよい。水処理部37は、養殖水槽10内の水に対して、溶存二酸化炭素濃度を減少させる処理を実施してもよい。
【0067】
また本実施形態において、配管62を流れる水、すなわち水貯留タンク40Bから水耕栽培水槽20に供給される水に対して液肥が供給される。図7に示す例では、液肥は、配管62に対して、液肥生成部32及び液肥貯留タンク33の少なくとも一方から供給される。しかしながら、液肥は、配管62ではなく水貯留タンク40Bに供給されてもよい。この場合には、水貯留タンク40Bの水が、水貯留タンク40A、配管67及び配管64を経由して養殖水槽10に供給される間の任意の位置で、水処理部37による所定の水処理を行うのが好ましく、あるいは、水貯留タンク40B内の水質に応じて、適切な水処理を行うようにしてもよい。また本実施形態において、配管52を流れる水、すなわち固液分離部31から水耕栽培水槽20に供給される処理水に対して、液肥生成部32及び液肥貯留タンク33の少なくとも一方から液肥が供給されてもよい。
【0068】
また、生産システム1Bは、水貯留タンク40A及び配管64の少なくとも一方に、例えばフィルタなどのろ過装置を備えてもよい。当該ろ過装置は、水貯留タンク40Aを介して養殖水槽10に供給される水に含まれる不純物を除去する。
【0069】
このように、本実施形態に係る生産システム1Bでは、養殖水槽10に水を供給する水貯留タンク40Aと、水耕栽培水槽20に水を供給する水貯留タンク40Bとが独立して設けられている。このため、例えば水貯留タンク40Aを介して養殖水槽10に供給される水に対しては水生生物の養殖に適した水処理を実施しつつ、水貯留タンク40Bを介して水耕栽培水槽20に供給される水に対しては植物の水耕栽培に適した水処理を実施することができる。
【0070】
また本実施形態に係る生産システム1Bは、1つ以上の任意の配管に止水弁などの止水手段を備えてもよい。例えば、配管52、59、60、61、及び67のそれぞれに止水手段が設けられてもよい。
【0071】
図8は、生産システム1Bの配管60及び61が止水された状態を示す。止水する位置は、配管60及び61の双方を止水してもよく、上流の配管59で止水してもよい。図8に示す状態においても、固液分離部31からの処理水は、図1に示す生産システム1と同様に、配管52を介して水耕栽培水槽20に供給される。また、図7に示す状態(すなわち、いずれの配管も止水されていない状態)から図8に示す状態になると、水処理部37は、実施する水処理の種類及び内容を変化させてもよい。例えば、水処理部37は、図8に示すように配管60及び61が止水されると、水貯留タンク40Bから水貯留タンク4
0Aを介して養殖水槽10に供給される水(例えば、配管67、水貯留タンク40A、又は配管64内の水)に対して、脱塩処理及び殺菌処理の両方を実施してもよい。図8に示す状態(すなわち、配管60及び61が止水された状態)になっても、生産システム1Bは継続的に稼働することができる。したがって、例えば図9に示すように、第3の実施形態の変形例として生産システム1Cも実現可能である。生産システム1Cは、上述した生産システム1Bと比較して、配管59、60、及び61を備えない点が異なる。生産システム1Cは、上述した生産システム1Bよりも低コストで設置可能である。
【0072】
また図10は、生産システム1Bの配管52、61、及び67が止水された状態を示す。図10に示す状態においては、固液分離部31からの処理水は、水耕栽培水槽20及び水貯留タンク40Bの何れにも供給されず、水耕栽培水槽20と水貯留タンク40Bとの間で水が循環する。一方、水耕栽培水槽20及び水貯留タンク40Bの水は、養殖水槽10及び水貯留タンク40Aの何れにも供給されず、養殖水槽10、水処理装置30、及び水貯留タンク40Aの間で水が循環する。このように、図10に示す状態にすることで、養殖水槽10、水処理装置30、及び水貯留タンク40Aの間で水を循環させる系統と、水耕栽培装置20及び水貯留タンク40Bの間で水を循環させる系統とを分離してシステム1Bを運用可能である。かかる構成によれば、例えば生産システム1Bに対して清掃等の保守作業を実施する場合、当該2つの系統の一方だけを停止すればよい。したがって、生産システム1Bに対して保守作業を実施する際に生産システム1B全体を停止する必要がないので、保守作業の実施による生産システム1Bの運用効率の低下が抑制可能である。
【0073】
(第4の実施形態)
図11及び図12は、本開示の第4の実施形態に係る生産システム1Dの構成例を示す図である。図11及び図12において、図7と同様の構成には同じ符号を付す。概略として、生産システム1Dは、図7に示す生産システム1Bと比較して、複数の水耕栽培水槽20と、複数の調整タンク41と、を備える点が異なる。なお図11では、2つの水耕栽培水槽20A及び20Bと、2つの調整タンク41A及び41Bとが図示されているが、生産システム1Dは、3つ以上の水耕栽培水槽20及び3つ以上の調整タンク41を備えてもよい。図12に示す配管52A及び52Bのそれぞれは、図11に示す配管52の下流側が分岐した配管である。同様に、配管62A及び62Bのそれぞれは配管62の下流側が分岐した配管であり、配管63A及び63Bのそれぞれは配管63の上流側が分岐した配管である。
【0074】
複数の調整タンク41は、複数の水耕栽培水槽20にそれぞれ対応して設けられた複数のタンクである。各調整タンク41は、水処理装置30の固液分離部31からの処理水及び水貯留タンク40Bからの水の少なくとも一方を貯留し、貯留した水を対応する水耕栽培水槽20に供給する。各調整タンク41は、対応する水耕栽培水槽20からの水を貯留してもよい。図11及び図12に示す例では、調整タンク41Aは、配管52及び52Aを介して、水処理装置30の固液分離部31と接続される。固液分離部31からの処理水は、配管52及び52Aを介して調整タンク41Aに供給される。また調整タンク41Aは、配管62及び62Aを介して、水貯留タンク40Bと接続される。水貯留タンク40Bからの水は、配管62及び62Aを介して調整タンク41Aに供給される。また調整タンク41Aは、配管65A及び66Aを介して、対応する水耕栽培水槽20Aと接続される。調整タンク41Aに貯留された水は、配管65Aを介して水耕栽培水槽20Aに供給される。水耕栽培水槽20Aからの排水の少なくとも一部は、配管66Aを介して調整タンク41Aに供給される。したがって、対応する調整タンク41Aと水耕栽培水槽20Aとの間で水が循環可能である。水耕栽培水槽20Aは、配管63及び63Aを介して、水貯留タンク40Bと接続される。水耕栽培水槽20Aからの排水の少なくとも一部は、配管63及び63Aを介して水貯留タンク40Bに供給される。
【0075】
なお、水耕栽培水槽20Aから調整タンク41Aに水を供給する配管66Aは省略されてもよい。かかる場合、調整タンク41Aと水耕栽培水槽20Aとの間で水は循環せず、水耕栽培水槽20Aからの排水は水貯留タンク40Bにのみ供給される。
【0076】
また、調整タンク41B及び水耕栽培水槽20Bは、調整タンク41A及び水耕栽培水槽20Aと同様である。
【0077】
また、複数の養殖水槽10を設けてもよい。この場合には、配管64の下流側を分岐させて各養殖水槽10に接続し、各養殖水槽10に水貯留タンク40Aからの水を供給する。また、配管51の上流側を分岐させて各養殖水槽10に接続し、水処理装置30に各養殖水槽10からの排水を供給する。
【0078】
本実施形態では、水処理装置30の液肥生成部32によって生成された液肥が複数の調整タンク41のそれぞれに供給されるとともに、調整タンク41ごとに液肥の供給量が栄養分調整部34によって独立して制御される。その結果、複数の水耕栽培水槽20のそれぞれへの液肥の供給量が独立して制御される。なお、図11に図示されている栄養分調整部34の数は1つであるが、生産システム1Dが備える栄養分調整部34の数は2つ以上であってもよい。例えば、生産システム1Dは、複数の調整タンク41にそれぞれ対応する複数の栄養分調整部34を備えてもよい。かかる場合、複数の栄養分調整部34のそれぞれは、対応する調整タンク41に対する液肥の供給量を制御する。
【0079】
このように、本実施形態に係る生産システム1Dは、複数の水耕栽培水槽20を備える。そして、複数の水耕栽培水槽20のそれぞれへの液肥の供給量が独立して制御される。このため、例えば種類の異なる複数の植物を並行して栽培可能である。
【0080】
本開示を諸図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段およびステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。前述したところは本開示の一実施形態にすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えてよいことは言うまでもない。
【0081】
また、上述した実施形態において、水処理装置30によって実現される各種の手段をソフトウェア構成として説明したが、これらのうち少なくとも一部の手段は、ソフトウェア資源および/またはハードウェア資源を含む概念であってもよい。
【0082】
また、上述した実施形態に係る水処理装置30として機能させるために、コンピュータまたは携帯電話などの装置を用いることができる。当該装置は、実施形態に係る水処理装置30の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該装置のメモリに格納し、当該装置のプロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させることによって実現可能である。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B,1C,1D 生産システム
10 養殖水槽
20,20A,20B 水耕栽培水槽
30 水処理装置
31 固液分離部
32 液肥生成部(液肥生成手段)
33 液肥貯留タンク
34 栄養分調整部(制御手段)
35 水質測定部
36 pH調整部
37 水処理部
40,40A,40B 水貯留タンク
41,41A,41B 調整タンク
51~67 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12