(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】エチレンの(共)重合
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20240621BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
(21)【出願番号】P 2022557675
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2021059253
(87)【国際公開番号】W WO2021204979
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-09-22
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】スメリン ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ヴァフテリ マルック
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03533776(EP,A1)
【文献】特表2015-503646(JP,A)
【文献】特表2017-538026(JP,A)
【文献】国際公開第2019/129797(WO,A1)
【文献】特表2021-507974(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067081(WO,A1)
【文献】特開2010-150516(JP,A)
【文献】特開2010-001420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/654
C08F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの重合段階において
、気相反応器中
、チーグラー・ナッタ触媒の存在下での、任意選択でC
3~C
20-α-オレフィンから選択されるコモノマ
ーとのエチレンの重合を含む重合プロセスにおいてエチレンポリマーを製造する方法であって、
前記チーグラー・ナッタ触媒は、
(A)固体チーグラー・ナッタ触媒成分と、
(B)共触媒と
を含み、
前記固体チーグラー・ナッタ触媒成分(A)は、
(a)固体マグネシウムアルコキシド化合物を、
a-i
)4価のチタン化合物、及び
a-ii)固体触媒前駆体を得るための第1の内部電子供与体化合物
と接触させる工程であって
、前記マグネシウムアルコキシド化合物は、式Mg(OR)
2で表され、式中、RはC
1~4-アルキルである工程と、
(b)任意選択で、工程(a)の固体触媒前駆体を洗浄する工程と、
(c)工程(a)又は工程(b)の固体触媒前駆体を、
c-i
)第2
の4価のチタン化合物、及び
c-ii)第2の内部電子供与体化合物
と接触させる工程と、
(d)工程(c)の生成物を洗浄する工程と、
(e)前記固体チーグラー・ナッタ触媒成分を回収する工程と
を含む方法によって得られる方法。
【請求項2】
前記固体チーグラー・ナッタ触媒成分が、
i. 式Mg(OR)
2のマグネシウムジアルコキシドの固体粒子であって、各Rは独立
にC
1~3-アルキルであるマグネシウムジアルコキシドの固体粒子と、
ii. 式Ti(OR)
4-yX
yの第1のチタン化合物であって、Rは炭素原子数1~6のアルキル基であり、Xはハロゲ
ンであり、yは1~4の整数である第1のチタン化合物と、
iii. 1つ以上のエーテル基を含むエーテルから選択される第1の内部電子供与体と、
iv. 式Ti(OR)
4-yX
yの第2のチタン化合物であって、Rは炭素原子数1~6のアルキル基であり、Xはハロゲ
ンであり、yは1~4の整数であり、前記第1及び第2のチタン化合物は、同じであってもよいし異なっていてもよ
い第2のチタン化合物と、
v. 第2の内部電子供与
体と
を含む配合物から得られる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体マグネシウムアルコキシド化合物が、マグネシウムジメトキシド及びマグネシウムジエトキシドから選択さ
れる請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体チーグラー・ナッタ触媒成分が、体積分布に基づくメジアン粒子サイズ(D
[v,0.5])が3~100μ
mであり、相対スパン((D
[v,0.9]-D
[v,0.1])/D
[v,0.5])によって定義される粒子サイズ分布(PSD)が、2以
下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記固体マグネシウムアルコキシド化合物が、芳香族炭化水素中の懸濁液として提供される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記
4価のチタン化合物が
、TiCl
4である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記内部電子供与体が、1つ以上のエーテル基を含む直鎖状、分枝状又は環状のエーテル、並びにこれらの誘導体及び混合物から選択される請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記内部電子供与体が、式(I)~式(VI)のエーテル化合物から選択され、
【化1】
式(I)中、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、O及びN(R
5)から選択され、
R
1は、H、C
1~3-アルキル、及び酸素含有複素環からなる群から選択され
、
R
2は、H及びメチルから選択され、
R
3及びR
4は、独立に、C
1~4-アルキルから選択され
、
R
5は、H、直鎖状、分枝状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され
、
【化2】
式(II)中、
R
21は、C
4~10-アルキルであり
、
R
22及びR
23は、それぞれ独立に、C
1~3-アルキルであり、
【化3】
式(III)中、
R
31~R
35は同一でもよく異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分枝状のC
1~C
8-アルキル基、若しくはC
3~C
8-アルキレン基であってもよく、又はR
31~R
35の2つ以上が環を形成していてもよく
、
【化4】
式(IV)中、
R
41は、H、C
1~3-アルキル、-CH
2OR
42及び酸素含有複素環からなる群から選択され、
R
42は、直鎖状又は分枝状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され
、
【化5】
式(V)中、
R
51は、-C(O)-R
52、及び酸素含有複素環(Het)からなる群から選択され、R
52はC
1~6-アルキルであり
、
【化6】
式(VI)中、
R
61は、直鎖状又は分枝状のC
2~C
6-アルキル
基である
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記内部供与体化合物が、1,3-ジメトキシプロパン、1,3-ジメトキシ-2-メチルプロパン、2,2-ジメチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(1,3-ジメトキシプロパン-2-イル)テトラヒドロフラン、2-(1,3-ジメトキシプロパン-2-イル)フラン、2-(1,3-ジメトキシ-2-メチルプロパン-2-イル)テトラヒドロフラン、2-(1,3-ジメトキシ-2-メチルプロパン-2-イル)フラン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン、2-(3-メチルブチル)-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(3-メチルブチル)-2-イソプロピル-1,3-ジエトキシプロパン、2-ノニル-2-イソプロピル-1,3-ジエトキシプロパン、ジ(2-テトラヒドロフリル)メタン、1,1-ジ(2-テトラヒドロフリル)エタン、トリス(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン、酪酸テトラヒドロフルフリル、2-(テトラヒドロフルフリルオキシ)テトラヒドロピラン、3-(テトラヒドロフルフリルオキシ)テトラヒドロピラン、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン及び2,2-ジ-(2-フラン)-プロパン、並びに任意のこれらの混合物からなる群から選択される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記内部供与体が、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、又は2,2-ジ-(2-フラン)-プロパ
ンである請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
最終の固体触媒成分が、
1~1
5のMg/Tiモル/モル比、
5~3
0のCl/Tiモル/モル比、
0.005~1
0のTi/供与体モル/モル
比
を有する請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(P-a)チーグラー・ナッタ触媒成分(A)を重合反応器に導入する工程と、
(P-b)前記チーグラー・ナッタ触媒成分を活性化することができる共触媒(B)を前記重合反応器に導入する工程と、
(P-c)エチレン、任意選択でC
3~C
20α-オレフィンコモノマー、及び任意選択で水素を前記重合反応器に導入する工程と、
(P-d)前記重合反応器を、エチレンのホモポリマー又はコポリマーを生成するような条件に維持する工程と
を含む請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
エチレン重合が、オレフィンポリマーを生成するための少なくとも1つの気相反応器を含む多段階重合プロセスで達成される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
オレフィン重合が、少なくとも1つのスラリー反応器
、及び1つの気相反応器を含む多段階重合プロセスで達成される請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1つの気相重合を含む少なくとも2つの重合段階を含む多段階重合プロセスでの、任意選択でC
3~20-コモノマーとのエチレン(共)重合における、固体触媒成分(A)、及び共触媒(B)を含むチーグラー・ナッタ触媒の使用であって、前記固体触媒成分(A)は、
(a)固体マグネシウムアルコキシド化合物を、
a-i
)4価のチタン化合物、及び
a-ii)固体触媒前駆体を得るための第1の内部電子供与体化合物
と接触させる工程であって
、前記マグネシウムアルコキシド化合物は、式Mg(OR)
2で表され、式中、RはC
1~4-アルキルである工程と、
(b)任意選択で、工程(a)の固体触媒前駆体を洗浄する工程と、
(c)工程(a)又は工程(b)の固体触媒前駆体を、
c-i
)第2
の4価のチタン化合物、及び
c-ii)第2の内部電子供与体化合物
と接触させる工程と、
(d)工程(c)の生成物を洗浄する工程と、
(e)固体チーグラー・ナッタ触媒成分を回収する工程と
を含む方法によって調製され、
前記固体チーグラー・ナッタ触媒成分(A)は、前記工程を含む方法によって得られる使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合プロセス、とりわけエチレン(コ)ポリマーを得るために特定のチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒成分を利用して、特に、とりわけ改善された分子量(Mw)能力及びコモノマー応答に関して所望の利益を有し、さらに重合段階間の活性バランスが改善され、(コ)ポリマーの構造的完全性が改善される多段階プロセスにおいてエチレン(コ)ポリマーを製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ(ZN)型ポリオレフィン触媒は、エチレン(コ)ポリマー等のポリオレフィンを製造する分野で周知である。一般に、この触媒は、周期表(IUPAC,Nomenclature of Inorganic Chemistry(無機化合物の命名法),2005)の第4~6族の遷移金属化合物、周期表(IUPAC)の第1~3族の金属化合物、任意選択で周期表(IUPAC)の第13族の化合物、及び典型的には内部供与体から形成される触媒成分を少なくとも含む。ZN触媒は、共触媒及び任意選択で外部供与体等のさらなる触媒成分(複数種可)も含んでもよい。
【0003】
エチレン(コ)ポリマー等のポリオレフィンの製造に使用される触媒組成物は、とりわけポリマーの特性を決定する。従って、触媒組成物によって、製造される樹脂の特性を「調節する(仕立てる)」ことが可能である。
【0004】
国際公開第2016097193号パンフレットは、MgCl2
*mROH付加物の固体担体粒子から調製され、粒子上にアルミニウム化合物、内部電子供与体及びチタン化合物を担持するエチレン(共)重合のための触媒成分を記載する。
【0005】
国際公開第2014004396号パンフレットは、低いXS(高いアイソタクチシティ)及び高いMFRを有するポリプロピレンを提供するプロピレン重合のためのZN触媒を記載する。
【0006】
東邦(Toho)の欧州特許出願公開第1061088号明細書及び欧州特許出願公開第1283222号明細書は、プロピレン重合に使用するための固体ZN触媒を記載する。触媒は、固体マグネシウムジアルコキシド、チタン化合物及び内部電子供与体、とりわけフタル酸及びマレイン酸のエステルから調製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016097193号パンフレット
【文献】国際公開第2014004396号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第1061088号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1283222号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、チーグラー・ナッタ触媒の存在下で、任意選択でC3~C20-α-オレフィンから選択されるコモノマーとのエチレンの重合を含む重合プロセスにおいてエチレンポリマーを製造するプロセスであって、従来技術よりも改善された特性及び性能を提供するプロセスを提供することである。本発明に係るプロセスにおいて使用される触媒は、環境的に持続可能であり、(コ)ポリマーの望ましい分子量及び改善された構造的完全性を有するエチレン(コ)ポリマーの調製を支える。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の目的は、独立請求項に記載されるものによって特徴付けられる、特定のチーグラー・ナッタ触媒の存在下で、任意選択でC3~C20-α-オレフィンから選択されるコモノマーとのエチレンの重合を含む重合プロセスにおけるエチレンポリマーの製造プロセスによって達成される。本開示の好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下、本開示は、
図1~
図4の添付の図面を参照して、好ましい実施形態によってより詳細に説明される。
【0011】
【
図1】
図1は、比較の触媒及び本発明の触媒を用いてエチレン-ヘキセン共重合体を製造するための多段反応器構成の異なる反応器におけるエチレン濃度並びにそれらの生産性を示す。
【
図2】
図2は、比較の触媒及び本発明の触媒を用いてエチレン-ヘキセン共重合体を製造するための多段反応器構成のGPR反応器における水素応答を示す。
【
図3】
図3は、比較の触媒及び本発明の触媒を用いてエチレン-ヘキセン共重合体を製造するための多段反応器構成のGPR反応器における1-ヘキセン(コモノマー)応答を示す。
【
図4】
図4は、比較の触媒及び本発明の触媒を用いて多段反応器構成のGPR反応器で製造されたエチレン-ヘキセンコポリマーの粒子サイズ分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
驚くべきことに、特定の固体チーグラー・ナッタ触媒成分を含むチーグラー・ナッタ触媒の使用は、特に、エチレン(コ)ポリマーを製造するための多段階プロセスで利用される場合、触媒の優れた性能、増加した分子量(Mw)能力、コモノマー応答をもたらし、さらに、重合段階間の活性バランスが改善され、(コ)ポリマーの構造的完全性が改善されることが今回見出された。この特定の固体チーグラー・ナッタ触媒成分は、本明細書に記載され、特許請求される方法によって得ることができ、好ましくは得られる。
【0013】
本明細書では、少なくとも1つの重合段階において溶液反応器中、スラリー反応器中、若しくは気相反応器中、又はこれらの組み合わせで実施される重合条件下での、チーグラー・ナッタ触媒の存在下での、任意選択でC3~C20-α-オレフィンから選択されるコモノマー、好ましくはC4~C10-α-オレフィンから選択されるコモノマーとのエチレンの重合を含む重合プロセスにおいてエチレンポリマーを製造する方法であって、
上記チーグラー・ナッタ触媒は、
(A)固体チーグラー・ナッタ触媒成分と、
(B)共触媒
とを含み、
固体チーグラー・ナッタ触媒成分(A)は、
(a)固体マグネシウムアルコキシド化合物を、
a-i)IUPAC周期表の第4~6族の遷移金属の第1の化合物、好ましくは4価のチタン化合物、及び
a-ii)固体触媒前駆体を得るための第1の内部電子供与体化合物
と接触させる工程と、
(b)任意選択で、工程(a)の固体触媒前駆体を洗浄する工程と、
(c)工程(a)又は工程(b)の固体触媒前駆体を、
c-i)IUPAC周期表の第4~6族の遷移金属の第2の化合物、好ましくは4価のチタン化合物、及び
c-ii)第2の内部供与体化合物
と接触させる工程と、
(d)工程(c)の生成物を洗浄する工程と、
(e)固体チーグラー・ナッタ触媒成分を回収する工程と
を含む方法によって得られる方法が提供される。
【0014】
(A)固体チーグラー・ナッタ触媒成分
用語「チーグラー・ナッタ触媒成分」は、本明細書中でこれまで及びこれ以降に使用する場合、チーグラー・ナッタ触媒又はチーグラー・ナッタ触媒系(これらは本出願において同じ意味を有する)の前駆触媒(触媒前駆体)を指し、このチーグラー・ナッタ触媒又はチーグラー・ナッタ触媒系は、その前駆触媒、すなわち、第4~6族の遷移金属の化合物と、第1~3族の金属、好ましくはマグネシウム、の化合物と、本明細書で定義される内部電子供与体とを含む本発明のチーグラー・ナッタ触媒成分を含む。
本明細書中では、IUPAC周期表は、周期表(IUPAC,Nomenclature of Inorganic Chemistry,2005)を指す。
特に、チーグラー・ナッタ触媒成分は、マグネシウムアルコキシド化合物、第4族金属の化合物、とりわけTi化合物、及び内部電子供与体から形成される触媒成分を指す。
【0015】
当該固体チーグラー・ナッタ触媒成分は、好ましくは、
i. 式Mg(OR)2のマグネシウムジアルコキシドの固体粒子であって、各Rは独立にC1~4-アルキル、好ましくはC1~3-アルキルであるマグネシウムジアルコキシドの固体粒子と、
ii. 式Ti(OR)4-yXyの第1のチタン化合物であって、Rは炭素原子数1~6のアルキル基であり、Xはハロゲン、好ましくはClであり、yは1~4の整数である第1のチタン化合物と、
iii. 1つ以上のエーテル基を含むエーテルから選択される第1の内部電子供与体と、
iv. 式Ti(OR)4-yXyの第2のチタン化合物であって、Rは炭素原子数1~6のアルキル基であり、Xはハロゲン、好ましくはClであり、yは1~4の整数であり、第1及び第2のチタン化合物は、同じであってもよいし異なっていてもよく、好ましくは同じである第2のチタン化合物と、
v. 第2の内部電子供与体であって、好ましくは、第1の内部供与体と同じである第2の内部供与体と
を含む配合物から調製される。
【0016】
i. Mg(OR)2の固体粒子
当該固体チーグラー・ナッタ触媒成分は、ZN触媒成分の基礎担体を形成するMg(OR)2の固体粒子を含む。
【0017】
Mg(OR)2の固体粒子は、ハロゲン又はハロゲン化金属化合物の存在下で、マグネシウム金属をエタノールのようなアルコール(ROH)と反応させることによって得られてもよい。このような固体マグネシウムジアルコキシド粒子を調製するプロセスは、例えば、東邦キャタリスト(Toho Catalyst)の欧州特許出願公開第106108号明細書及び欧州特許出願公開第1283222号明細書に開示されている。
【0018】
Mg(OR)2の固体粒子は、当該固体触媒成分(A)を調製するために、顆粒状、好ましくは球状で使用されてもよい。
【0019】
Mg(OR)2の固体粒子は、体積分布に基づくメジアン粒子サイズ(D[v,0.5])が3~100μm、好ましくは5~70μm、より好ましくは5~50μm、さらにより好ましくは5~20μmであってもよい。相対スパン(Relative Span)((D[v,0.9]-D[v,0.1])/D[v,0.5])で定義される粒子サイズ分布(PSD)は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらにより好ましくは1.0以下である。
【0020】
Mg(OR)2基において、RはC1~4-アルキル基から選択される。これらのアルキル基は同じであることが好ましい。好ましくは、Mg(OR)2は、マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド及びマグネシウムジプロポキシドから選択される。最も好ましくは、Mg(OR)2はマグネシウムジエトキシドである。Mg(OR)2の固体粒子は、他の化合物と接触する場合、炭化水素溶媒中、好ましくは芳香族炭化水素溶媒中の懸濁液として適切に提供されてもよい。
実験部に記載される方法によって測定され揮発物含有量を除いて再計算される(乾燥触媒成分基準)、最終触媒成分中のMgの量は、10~25重量%の範囲、典型的には11~20重量%の範囲、例えば12~18重量%の範囲である。
【0021】
ii.及びiv. チタン化合物
第1及び第2のチタン化合物は、好ましくは、式Ti(OR)4-yXyのハロゲン含有チタン化合物であって、Rは炭素原子数1~6のアルキル基であり、Xはハロゲンであり、yは1~4の整数であるハロゲン含有チタン化合物である。好ましくは、XはClである。最も好ましくは、ハロゲン化チタン化合物はTiCl4である。好ましくは、ii.及びiv.は両方とも四塩化チタン(TiCl4)である。
【0022】
実験部に記載される方法によって測定し、揮発物含有量を除いて再計算される(乾燥触媒成分基準)、固体チーグラー・ナッタ触媒成分中のチタン化合物ii.及びiv.の合計量は、好ましくは、Ti含有量が、チーグラー・ナッタ触媒成分に対して総重量の1.0~10.0重量%、好ましくは1.5~8.5重量%、より好ましくは4.0~8.0重量%の範囲になるような量である。
【0023】
iii.及びv. 内部電子供与体化合物
用語「内部電子供与体」及び「内部供与体」は、本願においては同じ意味を有する。内部供与体は、本明細書中でこれまで及びこれ以降に使用する場合、チーグラー・ナッタ触媒成分の一部である化合物、すなわち当該チーグラー・ナッタ触媒成分の合成中に添加され、典型的には固体チーグラー・ナッタ触媒系において電子供与体として作用する化合物を指す。
【0024】
本発明に従って使用される内部供与体は、エーテル、これらの誘導体及び混合物から選択される。本発明の触媒成分は、好ましくは直鎖状、分枝状又は環状のエーテルから選択される内部電子供与体を含む。このエーテルは、1つ以上のエーテル基を含む。従って、エーテルは、1つ、2つ以上、例えば3つのエーテル基を含む。内部電子供与体として使用されるエーテルは、健康及び環境の観点から有害な化合物として知られるものであるべきではない。従って、例えばTHF(テトラヒドロフラン)は、本発明の触媒成分において使用される望ましいエーテルではない。
【0025】
固体チーグラー・ナッタ触媒成分中の内部供与体の量は、内部供与体の分子量に依存する。例示的な例として、供与体が2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンである場合、供与体の量は、チーグラー・ナッタ触媒成分の総重量に対して好ましくは2.0~25.0重量%、好ましくは4.0~20.0重量%、より好ましくは6.0~15.0重量%である。内部供与体の上記量は、実験部に記載される方法に基づき、揮発物含有量を除いて再計算される(乾燥触媒成分基準)。
【0026】
より好ましい実施形態によれば、内部供与体化合物は、式(I)~(VI)の化合物のエーテルから選択される。
【0027】
式(I)の化合物
第1の例では、内部供与体内部供与体化合物は、式(I)の化合物
【化1】
から選択され、式(I)中、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、O及びN(R
5)から選択され、
R
1は、H、C
1~3-アルキル、及び酸素含有複素環からなる群から選択され、好ましくは、H、メチル、テトラヒドロフリル及びフリルからなる群から選択され、
R
2は、H及びメチルから選択され、
R
3及びR
4は、独立に、C
1~4-アルキルから選択され、好ましくは独立に、C
1~2-アルキルから選択され、より好ましくはR
3及びR
4はメチルであり、
R
5は、H、直鎖状、分枝状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され、チーグラー・ナッタ触媒における内部供与体として、好ましくはH、直鎖又は分枝状のC
1~4-アルキル基からなる群から選択される。
【0028】
1つの好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物
【化2】
から選択され、式(I-a)中、
R
1は、H、C
1~3-アルキル、及び酸素含有複素環からなる群から選択され、好ましくはH、メチル、テトラヒドロフリル及びフリルからなる群から選択され、より好ましくはH、メチル、2-テトラヒドロフリル及び2-フリルからなる群から選択され、
R
2は、H及びメチルから選択される。
【0029】
式(II)の化合物
第2の例では、内部供与体化合物は、式(II)の化合物
【化3】
から選択され、式(II)中、
R
21はC
4~10-アルキルであり、
R
22及びR
23は、それぞれ独立に、C
1~3-アルキルである。
【0030】
好ましくは、R21は直鎖又は分枝状のC5~9-アルキルである。より好ましくは、R21は3-メチルブチル及びノニルからなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、R22及びR23は、それぞれ独立に、メチル又はエチルである。より好ましくは、R22及びR23は同じであり、メチル及びエチルから選択される。
【0032】
特定の例では、式(II)の化合物は、2-(3-メチルブチル)-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(3-メチルブチル)-2-イソプロピル-1,3-ジエトキシプロパン及び2-ノニル-2-イソプロピル-1,3-ジエトキシプロパンからなる群から選択される。
【0033】
式(III)の化合物
第3の例では、内部供与体化合物は、式(III)の化合物
【化4】
から選択され、式(III)中、
R
31~R
35は同一でもよく異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分枝状のC
1~C
8のアルキル基、若しくはC
3~C
8-アルキレン基であってもよく、又はR
31~R
35の2つ以上が環を形成していてもよい。
【0034】
好ましい直鎖状又は分枝状のC1~C8-アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル及びヘキシル基である。
【0035】
好ましいC3~C8-アルキレン基の例はペンチレン基及びブチレン基である。
【0036】
2つのR31は、好ましくは同じであり、直鎖状のC1~C4-アルキル基であり、より好ましくはメチル若しくはエチルであるか、又は、2つのR31は、それらが結合する炭素原子とともに3~7個の炭素原子を有する環、好ましくはシクロペンチル環若しくはシクロヘキシル環を形成する。最も好ましくは、両方のR31はメチルである。
【0037】
R32~R35は同一でもよく異なっていてもよく、好ましくはH若しくはC1~C2-アルキル基であり、又は2つ以上のR32~R35残基が環を形成していてもよい。1つ以上の環が残基R32~R35によって形成される場合、これらは、より好ましくはR35とR34及び/又はR34とR35によって形成される。
【0038】
好ましくは、残渣R32~R35は環を形成せず、より好ましくは、残渣R32~R35のうちの多くとも2つがメチルであり、他はHである。最も好ましくは、R32~R35は、すべてHである。
【0039】
従って、式(III)の化合物は、好ましくは2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、又は2,2-ジ-(2-フラン)-プロパン、より好ましくは2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンである。
【0040】
式(IV)の化合物
第4の例では、内部供与体内部供与体化合物は、式(IV)の化合物
【化5】
から選択され、式(IV)中、
R
41は、H、C
1~3-アルキル、-CH
2OR
42及び酸素含有複素環からなる群から選択され、
R
42は、直鎖状又は分枝状又は環状のC
1~8-アルキル基からなる群から選択され、
好ましくは、R
41は、H、C
1~3-アルキル及びテトラヒドロフリルからなる群から選択され、より好ましくは、R
41は、H、メチル及び2-テトラヒドロフリルからなる群から選択される。
【0041】
特定の例では、式(IV)の化合物は、ジ(2-テトラヒドロフリル)メタン(DTHFM)、1,1-ジ(2-テトラヒドロフリル)エタン(DTHFE)、及びトリス(テトラヒドロフラン-2-イル)メタン(FFHFM)からなる群から選択される。
【0042】
式(V)の化合物
第5の例では、内部供与体化合物は、式(V)の化合物
【化6】
から選択され、式(V)中、
R
51は、-C(O)-R
52及び酸素含有複素環(Het)からなる群から選択され、
R
52はC
1~6-アルキルである。
【0043】
好ましくは、R51は、-C(O)-R52(式中、R52はC2~4-アルキルである)及び飽和酸素含有複素環からなる群から選択される。より好ましくは、R51は、R52がプロピルである-C(O)-R52、及びテトラヒドロピラニルからなる群から選択される。
【0044】
チーグラー・ナッタ触媒成分の第1の例では、式(V)の化合物は、式(V-a)の化合物
【化7】
から選択され、式(V-a)中、
R
52はC
1~6-アルキルである。
【0045】
好ましくは、R52は直鎖状C1~6-アルキルである。より好ましくは、R52はC2~4-アルキルである。さらにより好ましくは、R52はプロピルである。
【0046】
チーグラー・ナッタ触媒成分の第2の例では、式(V)の化合物は、式(V-b)の化合物
【化8】
から選択され、式(V-b)中、
Hetは酸素含有複素環である。
【0047】
好ましくは、Hetは飽和酸素含有複素環である。より好ましくは、Hetはテトラヒドロピラニルである。さらにより好ましくは、Hetは、2-テトラヒドロピラニル、3-テトラヒドロピラニル及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
特定の例では、式(V)の化合物は、酪酸テトラヒドロフルフリル、2-(テトラヒドロフルフリルオキシ)テトラヒドロピラン及び3-(テトラヒドロフルフリルオキシ)テトラヒドロピランからなる群から選択される。
【0049】
式(VI)の化合物
第6の例では、内部供与体内部供与体化合物は、式(VI)の化合物
【化9】
から選択され、式(VI)中、
R
61は、直鎖状又は分枝状のC
2~C
6-アルキル基、好ましくは直鎖状又は分枝状のC
2~C
4-アルキル基、最も好ましくはエチル基である。
【0050】
従って、式(VI)の化合物は、好ましくはエチルテトラヒドロフルフリルエーテル、n-プロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、イソプロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、n-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、sec-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、tert-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテルであるか、又はこれらの混合物である。最も好ましくは、式(V)の化合物はエチルテトラヒドロフルフリルエーテルである。
【0051】
固体チーグラー・ナッタ触媒成分の製造方法
本発明の固体触媒成分の好ましい製造方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。
【0052】
ジアルコキシマグネシウムの懸濁液は、以下の工程を含む方法によって調製される。
(a-i)固体ジアルコキシマグネシウムをトルエン等の芳香族炭化水素化合物に懸濁させ、この懸濁液をハロゲン化チタン、最も好ましくは四塩化チタン、及び上述の内部電子供与体と接触させる工程、
(a-ii)工程(a-i)の混合物を加熱し、70~120℃で数時間、例えば1~4時間反応させ、これにより固体反応生成物、すなわち触媒前駆体を得る工程、
(b)工程(a-ii)の固体反応生成物を芳香族炭化水素溶媒、例えばトルエンで洗浄する工程、
(c)ハロゲン化チタン、好ましくは四塩化物、上述の内部供与体、及び芳香族炭化水素溶媒、例えばトルエンを工程(b)の生成物に添加し、反応混合物を70~120℃に加熱し、0.5~2時間等の好適な時間反応させる工程、
d)工程(c)の得られた生成物を、常温で液体である炭化水素溶媒、好ましくは脂肪族炭化水素溶媒で数回洗浄する工程、並びに
(e)固体チーグラー・ナッタ触媒成分を回収する工程。
【0053】
望まれ必要な場合、四塩化チタンとの接触を繰り返して、触媒の特性及び性能を改変(調整)することができる。
【0054】
任意選択で、追加の化合物が触媒合成に添加されて、触媒がさらに修飾されてもよい。
【0055】
固体触媒成分の調製に使用される化合物の比率は、プロセス、並びに用いられる化合物、すなわちチタン化合物及び内部電子供与体のタイプに基づいて変化するので、一般的に規定することができない。
【0056】
例えば、四塩化チタン化合物の合計量は、マグネシウム化合物1モルに対して0.5~100モル、好ましくは0.5~50モル、さらにより好ましくは1~10モルの量で使用されてもよく、
電子供与体化合物は、マグネシウム化合物1モルに対して0.01~10モル、好ましくは0.01~1モル、さらにより好ましくは0.02~0.6モルの量で使用されてもよい。
【0057】
内部供与体化合物は、工程(a)において第1のチタン化合物と同時に又はその後のいずれかで固体Mgジアルコキシド粒子と接触させてもよい。
【0058】
上記固体チーグラー・ナッタ触媒成分において、Mg/Tiモル/モル比は、典型的には1~15、好ましくは2~8、より好ましくは3~7、さらにより好ましくは4~6.5であり、Cl/Tiモル/モル比は5~30、好ましくは10~20である。
【0059】
Tiに対する内部供与体のモル比(Ti/供与体モル/モル)は、好ましくは0.005~10.0モル/モル、より好ましくは0.01~10.0モル/モル、さらにより好ましくは0.05~5.0モル/モルである。
【0060】
Mgに対する内部供与体のモル比(Mg/供与体)は、好ましくは5~20モル/モル、より好ましくは8~15モル/モル、さらにより好ましくは8.5~13.5モル/モルである。
【0061】
好ましくは、最終固体チーグラー・ナッタ触媒成分粒子は、使用された固体Mgジアルコキシ粒子とほぼ同じ粒子サイズ(粒径)を有する。固体チーグラー・ナッタ触媒成分の平均粒子サイズ(すなわち、メジアン(中央)粒子サイズ、D[v,0.5])は、3~100μm、好ましくは5~70μm、より好ましくは5~50μm、さらにより好ましくは5~20μmの範囲にある。体積分布の相対スパン((D[v,0.9]-D[v,0.1])/D[v,0.5])で定義される触媒成分の粒子サイズ分布(PSD)は、できるだけ狭いことが好ましく、従って2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。
【0062】
チーグラー・ナッタ触媒
示されるように、本発明のチーグラー・ナッタ触媒は、
(A)本明細書に規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分と、
(B)周期表(IUPAC、2005)の第13族の金属化合物から選択される共触媒と
を含む。
【0063】
(B)共触媒
チーグラー・ナッタ触媒成分は、典型的には、活性化剤としても知られる共触媒と一緒に使用される。適切な共触媒は、周期表(IUPAC、2005)の第13族金属の化合物、典型的には、第13族金属C1~16-アルキル化合物、とりわけアルミニウムC1~16-アルキル化合物である。これらの化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム及びトリ-n-オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライドなどが挙げられる。とりわけ好ましい活性化剤はトリアルキルアルミニウムであり、その中でもトリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムが特に用いられる。
【0064】
共触媒の使用量は、特定の触媒及び共触媒に依存する。典型的には、例えばトリエチルアルミニウムは、Al/Ti等の遷移金属に対するアルミニウムのモル比が、1~1000、好ましくは3~100、特に約5~約30モル/モルとなるような量で使用される。
【0065】
本発明のチーグラー・ナッタ触媒は、任意選択で、外部供与体も含んでもよい。外部供与体は固体触媒成分の一部ではないが、重合プロセスに別個の化合物として添加される。外部供与体は、典型的には、従来技術から公知であるように、エーテル化合物、テトラヒドロフラン、シロキサン又はシランタイプの外部ドナー及び/又はハロゲン化アルキルが挙げられる。シランは、外部供与体として一般に使用される。
【0066】
エチレンの重合
本明細書で規定される本発明のチーグラー・ナッタ触媒成分、特に本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒は、任意選択でC3~20コモノマーとともにエチレンを重合することを意図している。
【0067】
従って、本明細書で提供されるのは、任意選択で1種以上のC3~20コモノマーとのエチレン(共)重合における、本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒の使用である。
【0068】
さらには、本明細書に提供されるのは、オレフィン重合、特にエチレン(共)重合の方法であって、重合反応器に本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分を含むチーグラー・ナッタ触媒を導入する工程を含む方法である。
【0069】
エチレン重合において一般に使用されるC3~20-コモノマーは、α-オレフィンコモノマー、好ましくは1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン及び1-デセン等のC4~10-α-オレフィンから選択されるα-オレフィンコモノマー、並びにブタジエン、1,7-オクタジエン及び1,4-ヘキサジエン等のジエン、又はノルボルネン等の環状オレフィン、並びにこれらの任意の混合物である。最も好ましくは、C3~20-コモノマーは1-ブテン及び/又は1-ヘキセンである。
【0070】
本発明のチーグラー・ナッタ触媒は、広範囲のポリエチレン(コ)ポリマーの製造を可能にする。従って、高密度、中密度、及び低密度のエチレン(コ)ポリマーの製造が可能である。
【0071】
コポリマーが所望の最終生成物である場合、エチレンコポリマーのコモノマー含有量は、所望のポリマー特性に応じて広い範囲で変化することができる。従って、コモノマー含有量は、0.1重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~15重量%、より好ましくは1.0重量%~10重量%の範囲で変化してもよい。
【0072】
特定の例では、エチレンのホモポリマー又はコポリマーを製造する当該プロセスは、
(P-a)本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分(A)を重合反応器に導入する工程と、
(P-b)上記チーグラー・ナッタ触媒成分を活性化することができる共触媒(B)を重合反応器に導入する工程と、
(P-c)エチレン、任意選択でC3~C20のα-オレフィンコモノマー、及び任意選択で水素を上記重合反応器に導入する工程と、
(P-d)上記重合反応器を、エチレンのホモポリマー又はコポリマーを生成するような条件に維持する工程と
を含む。
【0073】
上記触媒は、当該技術分野で公知の任意の手段で重合ゾーンに移送されてもよい。従って、上記触媒を希釈剤に懸濁させ、それを均質なスラリーとして維持することが可能である。国際公開第2006/063771A1号パンフレットに開示されているように、希釈剤として20~1500mPa・sの粘度を有する油を使用することがとりわけ好ましい。上記触媒をグリース及び油の高粘性混合物と混合し、得られたペーストを重合ゾーンに供給することも可能である。なおさらに、例えば欧州特許出願公開第0428054A1号明細書に開示されているようにして、上記触媒を沈降させ、このようにして得られた触媒泥の一部を重合ゾーンに導入することが可能である。
【0074】
スラリーでの重合は、通常、不活性希釈剤、典型的にはメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等、又はそれらの混合物などの炭化水素希釈剤の中で行われる。好ましくは、希釈剤は、炭素原子数1~4の低沸点炭化水素、又はそのような炭化水素の混合物である。とりわけ好ましい希釈剤はプロパンであり、場合によっては少量のメタン、エタン及び/又はブタンを含む。
【0075】
スラリー重合の温度は、通常40~115℃、好ましくは60~110℃、特に70~100℃である。圧力は、1~150バール(bar)、好ましくは10~100バールである。
【0076】
スラリー重合は、スラリー重合に使用される任意の公知の反応器で実施されてもよい。このような反応器としては、連続撹拌槽反応器及びループ反応器が挙げられる。ループ反応器で重合を行うことがとりわけ好ましい。当該技術分野で公知であるように、ポリマーの分子量を制御するために、任意選択で水素が反応器に供給される。
【0077】
さらには、ポリマー生成物の密度及びモルホロジーを制御するために、1種以上のα-オレフィンコモノマーが反応器に添加されてもよい。このような水素及びコモノマーの実際の供給量は、得られるポリマーの所望のメルトインデックス(又は分子量)及び密度(又はコモノマー含有量)に依存する。
【0078】
気相での重合は、流動床反応器、高速流動床反応器、固定床反応器、又はこれらの任意の組み合わせで行われてもよい。
【0079】
典型的には、流動床重合反応器又は固定床重合反応器は、50~100℃、好ましくは65~90℃の範囲内の温度で運転される。圧力は、好適には10~40バール、好ましくは15~30バールである。
【0080】
加えて、必要に応じて、スラリー反応器及び/又は気相反応器に帯電防止剤(複数種可)が導入されてもよい。
【0081】
当該プロセスは、前反応器及び後反応器をさらに含んでいてもよい。
【0082】
重合工程の前には、予備重合工程があってもよい。予備重合工程は、スラリー中又は気相中で行われてもよい。好ましくは、予備重合はスラリー中で、とりわけループ反応器中で行われる。予備重合工程の温度は、通常0~90℃、好ましくは20~80℃、より好ましくは30~70℃である。
【0083】
圧力は臨界的意義を有さず、通常は1~150バール、好ましくは10~100バールである。
【0084】
重合は連続的に行われてもよいし、バッチ式(回分式)で行われてもよいが、好ましくは、重合は連続的に行われる。
【0085】
本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分を使用する利点は、とりわけ、エチレン(コ)ポリマーを製造するための多段階プロセスにおいて見ることができる。従って、好ましくは、本発明に係るプロセスは、少なくとも2つの重合段階を含む多段階プロセスであり、各段階は少なくとも1つの重合反応器を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、当該プロセスは、スラリー相重合段階及び気相重合段階を含む。1つの好適な反応器構成は、1つ~2つのスラリー反応器、好ましくはループ反応器及び1つの気相反応器を含む。このような重合構成は、例えばBorealis(ボレアリス)の国際公開第92/12182A1号パンフレット、国際公開第96/18662A1号パンフレット及び国際公開第2010054732号パンフレット等の特許文献に記載されており、Borstar技術として公知である。
【0086】
本発明のプロセスの第1の例では、オレフィンの重合は、エチレン(コ)ポリマーを生成するための少なくとも1つの気相反応器を含む多段階重合プロセスで達成される。
【0087】
本発明のプロセスの第2の例では、本明細書で論じられるコモノマーとのエチレンの重合は、少なくとも1つのスラリー反応器、例えば1つ又は2つのスラリー反応器、好ましくは2つのスラリー反応器、及び1つの気相反応器を含む多段階重合プロセスで達成される。
【0088】
従って、とりわけ好ましい実施形態によれば、本発明は、以下の工程を含むエチレンコポリマーの製造プロセスに関する。
(P-a)本明細書で規定されるチーグラー・ナッタ触媒成分(A)を第1の重合反応器R1に導入する工程と、
(P-b)上記チーグラー・ナッタ触媒成分を活性化することができる共触媒(B)を重合反応器R1に導入する工程と、
(P-c)エチレン及び任意選択でC4~C10α-オレフィンコモノマー、及び任意選択で水素を重合反応器R1に導入する工程と、
(P-d)上記重合反応器R1を、エチレンのホモポリマー又はコポリマーP1を生成するような条件に維持する工程と、
(P-e)工程(P-d)のポリマーP1を第2の重合反応器R2に導入する工程と、
(P-f)追加のエチレン、任意選択でC4~C10α-オレフィンコモノマー、及び任意選択で水素を重合反応器R2に導入する工程と、
(P-g)ポリマーP1と反応器R2内で生成されたポリマーとの反応器混合物であるエチレンのホモポリマー又はコポリマーP2を生成するような条件に、上記重合反応器R2を維持する工程と、
(P-h)工程(P-g)のポリマーP2を第3の重合反応器R3に導入する工程と、
(P-i)追加のエチレン、C4~C10α-オレフィンコモノマー、及び任意選択で水素を重合反応器R3に導入する工程と、
(P-j)ポリマーP2と反応器R3内で生成されたポリマーとの反応器混合物であるエチレンコポリマーP3を生成するような条件に、上記重合反応器R3を維持する工程。
上記工程において、反応器R1及びR2はスラリーループ反応器であり、反応器R3は気相反応器である。
【0089】
予備重合反応器R0が反応器R1に先行する場合、反応器R1は反応器R0及び上記の反応器R1の組み合わせである。
【0090】
ポリマー特性
本発明のチーグラー・ナッタ触媒成分を利用することによって、特に当該プロセスに従ってそれを使用することによって、実施例によって示されるように、生産性を良好なレベルで、かつ反応器間の所望の活性バランス内に維持しながら、所望のMw及びコモノマー含有量を有するエチレン(コ)ポリマーを生成することが可能である。
【0091】
とりわけ、モル質量変動性、コモノマー応答、及び反応器間の活性バランス及び全生産性、並びに(コ)ポリマーの改善された構造完全性の最適な組み合わせは、チーグラー・ナッタ触媒における当該内部供与体の利用を、ポリエチレンを製造するために非常に魅力的なものにする。
【0092】
MFR値(2.16kg、5kg又は21.6kgの荷重を伴い190℃でISO1133に従って測定される)は、目標とする最終用途の必要性に基づいて多種多様な範囲内で変動してもよい。最終ポリマーのMFRは、当該技術分野で周知のように、例えば、プロセス中の水素の量を制御することによって調節されてもよい。典型的には、最終ポリマーは、所望の最終用途の必要性に応じて、900~965kg/m3の密度を有する。ポリエチレンの密度は、例えばコモノマーの組み込みを制御することによって調節されてもよい。
【実施例】
【0093】
実験
分析方法
ICP-OESによる触媒成分中のAl、Mg、Ti含有量
触媒成分の乾燥粉末からなる試料を、代表的な試験部分を採取できるように混合する。不活性雰囲気中で約20~50mgの材料を20mL容量のバイアル瓶に採取し、粉末の正確な重量を記録する。
【0094】
既知の体積(V)の試験溶液を以下のようにメスフラスコで調製する。冷却したバイアル瓶の中で、少量の脱イオンし蒸留した(DI)水(Vの5%)を加え、続いて濃硝酸(65%HNO3、Vの5%)を加えて試料の消化を行う。この混合物をメスフラスコに移す。この溶液をDI水で最終体積Vまで希釈し、2時間放置して安定させる。
【0095】
得られた水性試料の元素分析は、Thermo Elemental iCAP 6300誘導結合プラズマ-発光分光分析装置(ICP-OES)を用いて、室温で行う。装置は、ブランク(5%HNO3溶液)、及び5%HNO3 DI水溶液中のAl、Ti並びにMgの0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppm、100ppm及び300ppmの6種の標準試料を用いて、Al、Ti及びMgについて検量線を作成する。検量線には、曲線フィッティング及び1/濃度の重み付けを使用する。
【0096】
分析の直前に、ブランク及び300ppmのAl、100ppmのTi、Mgの標準試料を用いて、検量線の検証及び調整を行う(装置の機能名「re-slope(傾き再調整)」)。品質管理試料(QC;DI水に5%の硝酸を溶かした溶液に20ppmのAl及びTi、50ppmのMgを溶かしたもの)を実行し、re-slopeを確認する。このQC試料は、5回ごとの試料の後と、予定された分析セットの最後にも実行する。
【0097】
マグネシウムの含有量は285.213nmの線で、チタンの含有量は336.121nmの線でモニターする。アルミニウムの含有量は、試験部分のAl濃度が0~10重量%の場合は167.079nmの線、10重量%を超えるAl濃度については396.152nmの線でモニターする。
【0098】
報告する値は、同一試料から連続して採取した3つの分液の結果の平均であり、試験部分の元の重量と希釈量をソフトウェアに入力することで、元の触媒試料に関連づけられている。
【0099】
電位差滴定による触媒成分中のCl含有量
触媒成分の塩化物含有量は、硝酸銀を用いた滴定により決定する。触媒成分の50~200mgの試験部分をセプタムシールしたバイアル瓶に入れ、窒素下で秤量する。濃HNO3(68%、分析グレード)1部及び蒸留した(DI)水4部の溶液を、シリンジを用いて2.5mLの分量で試料に加える。反応が完了し、触媒成分物質が溶解した後、過剰のDI水を用いて溶液を滴定カップに移す。その後、この溶液を、Mettler Toledo(メトラー・トレド)T70自動滴定装置を用いて、市販の認証済みの0.1M AgNO3溶液で直ちに滴定する。滴定終点は、Ag電極を用いて決定する。滴定から全塩化物量を算出し、元の試料重量と関連付ける。
【0100】
GC-MSによる触媒成分中の揮発物及びDTHFP含有量
触媒成分の粉末40~60mgの試験部分を用いた試験溶液を、試料及び内部標準を水及びジクロロメタンで液液抽出することで調製する。まず、試験部分に10mLのジクロロメタンを加え、続いて精密マイクロシリンジを用いて1mlの内部標準溶液(脱イオン水中の0.71体積%のピメリン酸ジメチル)を加える。この懸濁液を30分間超音波処理し、相分離のために、乱さないように放置する。試験溶液の一部分を有機相から取り出し、0.45μmのシリンジフィルターを用いて濾過する。
【0101】
検量線作成のために、分析対象物の濃度が異なる5種の標準ストック溶液を、分析対象物の標準物質の量を5段階で増やして正確にメスフラスコに入れ、目盛りまでメタノールを満たすことにより調製する。検量線作成試料の準備のために、上記ストック溶液から200μLの分量を、試料と同じ体積比でISTD水溶液及びジクロロメタンで抽出する。最終的な検量線作成試料中の分析対象物の量は0.1mg~15mgの範囲である。
【0102】
標準DTHFP材料(TCIから得た)及びさらにメソ異性体濃縮DTHFP材料(Thomas Swan & Co.Ltd(トーマス・スワン)から得た)中のrac-DTHFP対メソ-DTHFPの比を、1H-NMR及びGC-FID技術によって別々に確認し、データを質量バランス(物質収支)、異性体ピーク保持及び溶出順序を計算するために使用した。
【0103】
測定は、Agilent(アジレント) 5977A質量分析計検出器を備えたAgilent 7890Bガスクロマトグラフを用いて行う。分離は、ZB-XLB-HT Inferno 60m×250μm×0.25μmカラム(Phenomenex(フェノメネックス))を用い、3チャネルの補助EPC及び3m×250μm×0μmのプレカラム制限キャピラリを介してミッドポイントバックフラッシュを行って達成する。オーブンの初期温度は50℃で、ホールド時間は2分である。オーブンランプは、5℃/分で150℃までの第1ステージと、30℃/分で300℃までの第2ステージで構成され、その後、300℃で1分間のポストランバックフラッシュを行う。
【0104】
注入口はスプリットモードで動作する。注入量は1μLであり、注入口の温度は280℃であり、セプタムパージは3mL/分であり、総流量は67.875mL/分であり、スプリット比は50:1である。キャリアガスは99.9996%Heであり、プレカラムの流量は1.2721mL/分であり、バックフラッシュEPCから分析カラムへの追加流量は2mL/分である。MS検出器のトランスファーラインは300℃に保たれている。MSDは、70eVの電子衝撃モード及び15~300m/zのスキャンモードで動作する。
【0105】
シグナルの識別は、保持時間(ヘプタン4.8、トルエン6.3、rac-DTHFP23.4、メソ-DTHFP23.0、ピメリン酸ジメチル23.2)及びターゲットイオンのm/z(ヘプタン71.1、トルエン91.1、rac-DTHFP71.1、メソ-DTHFP71.1、ピメリン酸ジメチル157.1)によって決定する。加えて、同定の確認のためにクォリファイアイオンを使用する(ヘプタン、トルエン)。各分析対象物及び内部標準のターゲットイオンのシグナルを積分し、5つの検量線作成試料を用いて各ランの最初に設定した検量線と比較する。応答比の検量線は、試料濃度の重み付けをしなくても直線的になる。標準化を確認するために、各ランで品質管理試料を使用する。すべての試験溶液は2回の反復ランで実行する。試験部分の質量は、両方の反復物における試料中の分析対象物濃度の計算に使用し、結果は平均値として報告する。
【0106】
触媒成分粉末の粒子サイズ分布
本発明の触媒成分の粒子サイズ分布は、レーザー回折粒子サイズ分析器Malvern(マルバーン) Mastersizer 3000を使用して測定する。試料分散:乾燥粉末。
【0107】
以下の粒子サイズ及び粒子サイズ分布の指標を実験で使用する:D
[v,0.1]、D
[v,0.5]、D
[v,0.9]及び相対スパン。
相対スパン(PSD指数とも呼ばれる)は、以下の式によって定義される。
【数1】
式中、D
[v,0.5]は、体積分布のメジアン粒径を表し、D
[v,0.9]は、集団の90%がD
[v,0.9]直径を下回る粒径を表し、D
[v,0.1]は、集団の10%がD
[v,0.1]直径未満である粒径を表す。
【0108】
ポリマー粉末の粒子サイズ分布
粒子サイズ分布は、Coulter(コールター) LS 200粒子サイズ分析器を用いてISO 13320-1に従って測定する。この装置は、0.4~2000μmの範囲の粒子サイズ分布を測定することができる。この方法は、通り抜けキュベットの中を移動する試料にレーザービームを照射するレーザー回折法である。n-ヘプタンを試料流体として使用する。
ポリマー試料を、まず、2mmより大きい粒子をふるい分けることによって前処理する。ふるい分けした試料をイソプロパノールと混合し、粒子を互いに分離するために超音波装置に入れる。次いで、前処理した試料を試料ユニットに入れ、分析する。結果は、機器に備えられるコンピュータプログラムを使用して計算される。
以下の粒子サイズ及び粒子サイズ分布の指標を実験で使用する:D[v,0.1]、D[v,0.5]、D[v,0.9]及び上記で定義した相対スパン。
【0109】
メルトインデックス(MI)又はメルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に従って決定し、g/10分で示す。MFRは、ポリマーの溶融粘度の指標である。MFRは、PEについては190℃で測定する。メルトフローレートが決定される際の荷重は通常下付き文字として示し、例えば、MFR2は2.16kg荷重下で測定し、MFR5は5kg荷重下で測定し、MFR21は21.6kg荷重下で測定する。
【0110】
ポリマー密度
ポリマーの密度は、ISO 1183-2/1872-2Bに従って測定する。
【0111】
実施例
本発明の触媒成分例1 - ICE1、東邦チタニウム(Toho Titanium)によって提供される触媒
本発明の固体触媒成分の調製
撹拌機を備え、内部雰囲気を窒素ガスで充分に置換した500mlフラスコに、20g(174.8ミリモル)のジエトキシマグネシウム、200mlのトルエン、60mlの四塩化チタン、2.2ml(11.9ミリモル)の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンを投入した。この混合物を90℃に加熱した。次いで、この混合物を90℃で120分間反応させた。反応終了後、得られた反応生成物をトルエン200mlで4回洗浄した。160mlのトルエン、2.6ml(14.1ミリモル)の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン及び60mlの四塩化チタンを添加した後、混合物を80℃に加熱し、60分間撹拌し、反応させた。その後、この混合物をn-ヘプタン200mlで7回洗浄し、固体触媒成分を得た。この固体触媒成分を固液分離した。本発明の触媒成分の分析結果を表1に開示する。ICE1の体積分布に基づくメジアン粒子サイズ(D[v,0.5])は15μmであり、D[v,0.9]は23μmであり、D[v,0.1]は10μmであった。相対スパン((D[v,0.9]-D[v,0.1])/D[v,0.5])は0.9であった。
【0112】
比較触媒成分例1 - CCE1:比較固体触媒成分の調製。国際公開第2016097193号パンフレットに記載されたものと同様の調製手順に従って比較触媒成分を調製する。
【0113】
比較触媒成分調製の手順
不活性雰囲気のグローブボックス内で、2つのゴム製セプタ、温度計、及びメカニカルスターラーを備えた乾燥した300mLの4口丸底フラスコに、40mLのヘプタンに溶解した0.56gの2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP/Mg=0.1モル/モル)(TCIから入手した)と、7.01g(30ミリモルのMg)の粒状21μm(D[v,0.5])のMgCl2
*3EtOH担体(Grace(グレース)から入手した)を投入した。このフラスコをグローブボックスから取り出し、窒素の入口及び出口を接続した。このフラスコを冷却槽に入れ、0℃で約10分間、335rpmで調質(テンパリング)を行った。ヘプタン中のトリエチルアルミニウム10重量%溶液(107.55g、94.2ミリモルのAl、Al/EtOH=1.0モル/モル)を、反応混合物の温度を5℃未満に保ちながら、1時間以内に撹拌した懸濁液に滴下して加えた。得られた懸濁液を20分以内に80℃に加熱し、この温度でさらに30分間、335rpmで維持した。この懸濁液を80℃で5分間放置して沈降させ、上澄み液をカニューレで除去した。得られた前処理済みの担体材料を、室温で70mLのトルエンで2回洗浄した(トルエンを加え、250rpmで15~120分撹拌し、5分間沈降させ、液相を吸い取った)。
【0114】
室温で、70mLのトルエンを前処理した担体材料に加えた。335rpmで撹拌したこの懸濁液に、ニート(無希釈)のTiCl4(3.3mL、30ミリモル;Ti/Mg=1.0モル/モル)を滴下して加え、反応混合物の温度を25~35℃に維持した。得られた懸濁液を20分以内に90℃に加熱し、この温度でさらに60分間、335rpmで撹拌した。この懸濁液を90℃で5分間放置して沈降させ、上澄み液をカニューレで除去した。得られた触媒成分を、90℃で70mLのトルエンで2回、室温で70mLのヘプタンで1回洗浄した(各洗浄では、トルエン又はヘプタンを加え、335rpmで15分間撹拌し、5分間沈降させ、液相を吸い取った)。この触媒成分を70℃で30分間、真空中で乾燥させた。
【0115】
分析結果を表1に開示する。結果は、揮発物を含む組成物に基づく。
【0116】
【0117】
重合例
比較重合例1~5(CE1~CE5)及び本発明の重合例1~4(IE1~IE4)。
15モル/モルのAl/Ti比のTEAL(トリエチルアルミニウム)と共に本発明の触媒成分例1(ICE1)及び比較触媒成分例1(CCE1)の手順に従って調製した触媒成分を、予備重合反応器、2つのスラリーループ反応器及び1つの気相反応器を含む多段階反応器構成におけるエチレン-ヘキセン共重合に使用した。予備重合反応器の温度は60℃であり、スラリー反応器の温度は95℃であり、気相反応器の温度は85℃であった。重合条件及び結果を表2に開示する。
【0118】
【0119】
上記の結果から、並びに
図1、
図2及び
図3において、以下が分かる。
本発明のプロセスにおいて、ループと気相反応器(GPR)との間の改善された活性バランスが達成され、高Mwコポリマーの生成に有利であった。気相反応器中のエチレン分圧(モル濃度)が高いほど、より低いH
2/C
2比に達することができ、その比はより安定である。発明例では、気相反応器中のエチレンモル濃度は、比較例よりもほぼ3倍高いが、総触媒生産性は同じレベルのままである。
さらに、気相反応器において改善されたMw能力(より低い水素応答)及び改善された1-ヘキセン応答が達成され、高Mwコポリマーの生成に有利であった。加えて、上記の結果から、及び
図4において、以下が分かる。
本発明のプロセスにおいて、ポリマーの改善された構造的完全性が、連続操作に有利に達成された。具体的には、100μm未満の微粉量の減少及びより狭い相対スパンが比較例と比較して観察され、加えて、気相反応器におけるかさ密度が比較例と比較して有意に増加した。