(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】接着層を含む二次電池用分離膜、及び前記分離膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240621BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240621BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/403 D
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/42
H01M50/457
H01M50/446
H01M50/443 B
H01M50/443 E
(21)【出願番号】P 2022563197
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 KR2021013952
(87)【国際公開番号】W WO2022075823
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0130401
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン-ヒュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】キュン-リュン・カ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ-ジン・クォン
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002366(WO,A1)
【文献】特表2018-530860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の少なくとも一つの側面に形成された無機物コーティング層を含み、
前記無機物コーティング層は、高密度無機物粒子、低密度無機物粒子及び粒子状バインダー樹脂を含み、
前記高密度無機物粒子に対する前記バインダー樹脂の密度(バインダー樹脂密度/高密度無機物粒子)の比は、0.2以上0.33未満であり、前記低密度無機物粒子に対する前記バインダー樹脂の密度(バインダー樹脂密度/低密度無機物粒子の密度)の比は、0.33以上0.5以下であ
り、
前記無機物コーティング層は、分離膜基材に近い第1層、前記第1層の表面に形成された第2層、及び前記第2層の表面に形成された電極接着部を含み、前記第1層は、高密度無機物粒子の含有量が最も高く、前記第2層は、前記低密度無機物粒子の含有量が最も高く、電極接着部は、前記粒子状バインダー樹脂の含有量が最も高く、
前記第2層は、前記第1層に比べて厚さが厚い、
電気化学素子用分離膜。
【請求項2】
前記無機物コーティング層は、前記高密度無機物粒子、低密度無機物粒子及び粒子状バインダー樹脂の間に形成された間隙容量によって形成された気孔による多孔性特性を有する、請求項
1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項3】
前記粒子状バインダー樹脂は、粒径(D
50)が300nm~500nmである、請求項1
または2に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項4】
前記低密度無機物粒子は、粒径(D
50)が500nm~1,000nmの範囲から選択され、前記高密度無機物粒子は、粒径(D
50)が300nm~700nmの範囲から選択されるものであって、前記低密度
無機物粒子の粒径(D
50)に比べて高密度
無機物粒子の粒径(D
50)がさらに小さい、請求項1から
3のいずれか一項に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項5】
前記粒子状バインダー樹脂がアクリル系バインダー樹脂を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項6】
前記低密度無機物粒子は、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)及びMg(OH)
2の中から選択された1種以上を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項7】
前記高密度無機物粒子は、ベーマイト(AlOOH)、アルミナ(Al
2O
3)及びBaTiO
3の中から選択された1種以上を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項8】
前記無機物コーティング層における無機物粒子100wt%に対する低密度
無機物粒子の含有量は40wt%~80wt%である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の分離膜を製造する方法であって、
前記分離膜の製造方法は、
分離膜基材のいずれか一つの側面に無機物コーティング層形成用水系スラリーを塗布し、乾燥させる方法を含み、
前記水系スラリーは、前記粒子状バインダー樹脂、低密度無機物粒子及び高密度無機物粒子を含み、
溶媒として水を用いるものであり、
前記水系スラリーの塗布後に乾燥する間に沈降速度の差によって第1層/第2層/電極接着部が形成されて最終的に得られる分離膜の無機物コーティング層は、3層構造を示すものである、電気化学素子用分離膜の製造方法。
【請求項10】
前記水系スラリーの粘度が100cp以下である、請求項
9に記載の電気化学素子用分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月8日に出願された韓国特許出願第10-2020-0130401号に基づく優先権を主張する。本発明は、抵抗が低く、電極との接着力が高い電気化学素子用分離膜、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、正極/負極/分離膜/電解液を基本として構成され、化学エネルギーと電気エネルギーが可逆的に変換されることで充放電が可能なエネルギー密度の高いエネルギー貯蔵体であって、携帯電話、ノートパソコンなどの小型電子装備に幅広く使用されたが、最近では、環境問題、高油価、エネルギー効率及び貯蔵のための対応として、複合電気自動車(hybrid electric vehicles、HEV)、プラグ電気自動車(Plug-in EV)、電動自転車(e-bike)及びエネルギー貯蔵システム(Energy storage system、ESS)への応用が急速に拡大している。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、分離膜により絶縁されている安定した電気化学素子であるが、内部又は外部の電池異常現象や衝撃によって正極と負極の短絡が発生して発熱及び爆発の可能性があるので、絶縁体としての分離膜の熱的/化学的安全性の確保は最も重要に考慮されるべき事項である。
【0004】
リチウム二次電池で商業的に多く用いられるポリオレフィン系分離膜は、正極と負極の電気的な短絡を防止しつつ、チウムイオンの通路となる気孔を提供する機能を果たす多孔性フィルムであって、ポリエチレンやポリプロピレンなどを主要素材として使用している。
【0005】
一般に、フィルム延伸という工程を介して製造されたポリオレフィン系多孔性分離膜は、根本的に、100℃以上の内部又は外部刺激によって電池が高温に上昇する場合、分離膜の収縮又は溶融などの体積変化を回避することができなくなり、これによる正極/負極間の電気的な短絡による爆発などが発生するおそれがある。また、電池内部でデンドライト成長(dendrite growth)に起因して分離膜が破裂する場合も、内部短絡による電池爆発を誘導するおそれがあるという問題もある。このような高温による熱収縮及びデンドライトによる電池の不安定性を抑制するために、このような多孔性分離膜基材の一面又は両面に無機物粒子をバインダーと共にコーティングすることにより、無機物粒子が基材の収縮率を抑制する機能を付与するとともに、無機物コーティング層によってさらに安全な分離膜を付与するコーティング分離膜が開示されている。
【0006】
韓国特許第10-0775310号公報には、有機溶媒にバインダー樹脂と無機物粒子が含まれているスラリー(PVDF-CTFE/BaTiO3又はPVDF-CTFE/Al2O3)をコーティングした有機/無機コーティング多孔性分離膜の製造方法が開示されている。このようなスラリーは、多孔性基材と無機物コーティング層、並びに無機物コーティング層内の無機物粒子同士間の相互連結性を提供する。このような方法で製造された分離膜は、電池組立及び駆動時に相互連結性を失うことなく発熱による多孔性分離膜の収縮と外部の物理的衝撃(event)に耐えることができる。
【0007】
しかし、このような場合、多孔質基材の気孔内部へ、有機溶媒に溶解したバインダー溶液が浸透することができ、これにより、無機物粒子と多孔性基材の表面との十分な接着力を示すために、バインダーの量が十分に必要であるか或いは溶媒が揮発することによりゲル(gel)が形成される過程を経る。これにより、溶媒が閉じ込められる(solvent-impermeable)空間が発生して無機物コーティング層に不均衡が発生する原因となり、このような現象により電池特性が低くなるおそれがある。また、スラリー内のバインダー濃度が高くなる場合、スラリー粘度が非常に高くなるため、薄膜の有機/無機複合層の製造を困難にし、乾燥過程で高い温度を必要とすることもあり、スラリー粘度を低く維持する場合は、多孔性基材との接着力或いは無機物間の接着力が低くなって無機物粒子が容易に脱離してしまう現象が発生する。このような理由から、溶媒に一定の大きさで分散したエマルジョン又は懸濁液状態のバインダーを用いる例が多く、有機溶媒(油系)に一定の大きさで分散したバインダーを用いる例もあり、特に水系(水)に一定の大きさで分散したバインダーを用いて無機物粒子をコーティングする際に、環境にやさしく、工程上の利点が多いため好まれている。しかし、水系溶媒に分散したバインダーのみでは、無機物粒子間又は無機物粒子と多孔性基材との十分な接着力を示すことができないという問題がある。
【0008】
一方、多孔性基材とコーティング層との接着力を向上させるための方法として、韓国公開特許第10-2012-0052100号公報では、スチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシルメチルセルロース(CMC)を有機溶媒としてのアセトンに溶解させたスラリーをポリエチレン多孔性膜にキャスティングして、有機/無機複合層を形成した後、その上にさらに高分子溶液を電気紡糸して2つのコーティング層を形成したコーティング分離膜を製造する技術が開示されている。しかし、このような方法で有機/無機複合層を形成する場合にも、前述した有機溶媒を用いたコーティングにおける問題点を回避することができず、基材との接着力が低いため無機物脱離による問題点を解決しようと、無機物コーティング層上に紡糸を施して3層にコーティング分離膜を製造する技術も提示された。しかし、この場合、放射による膜の形成は、コーティング分離膜の薄膜化が求められている時点で、コーティング層の厚さ調節に対する限界を克服することが困難であるだけでなく、気孔の均一性が低いため電池適用の際に電流が均一に分布して流れず、一部分に集中して部分的な発熱、劣化及び爆発が発生する可能性があるので、有機/無機コーティング分離膜の根本的な技術的解決策を提示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、耐熱性を確保するとともに、低い抵抗、適切な気孔度及び十分な電解液保持性を有する二次電池用分離膜を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の特徴を有する二次電池用分離膜を製造する方法を提供することを他の目的とする。さらに、これ以外の本発明の別の目的及び利点は、特許請求の範囲に記載された手段又は方法、及びこれらの組み合わせによって実現できることが容易に分かるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面は、電気化学素子用分離膜に関するものであって、前記分離膜は、多孔性の分離膜基材、及び前記分離膜基材の少なくとも一つの側面に形成された無機物コーティング層を含み、前記無機物コーティング層は、高密度無機物粒子、低密度無機物粒子及び粒子状バインダー樹脂を含み、前記高密度無機物粒子に対する前記バインダー樹脂の密度(バインダー樹脂密度/高密度無機物粒子)の比は、0.2以上0.33未満であり、前記低密度無機物粒子に対する前記バインダー樹脂の密度(バインダー樹脂密度/低密度無機物粒子の密度)の比は、0.33以上0.5以下である。
【0011】
本発明の第2の側面は、前記第1の側面において、前記無機物コーティング層は、分離膜基材に近い第1層、前記第1層の表面に形成された第2層、及び前記第2層の表面に形成された電極接着部を含み、前記第1層は、高密度無機物粒子の含有量が最も高く、第2層は、前記低密度無機物粒子の含有量が最も高く、電極接着部は、前記粒子状バインダー樹脂の含有量が最も高い。
【0012】
本発明の第3の側面は、前記第1又は第2の側面において、前記無機物コーティング層は、前記高密度無機物粒子、低密度無機物粒子及び粒子状バインダー樹脂の間に形成された間隙容量によって形成された気孔による多孔性特性を有する。
【0013】
本発明の第4の側面は、前記第1~第3の側面のいずれかにおいて、前記粒子状バインダー樹脂は、粒径(D50)が300nm~500nmである。
【0014】
本発明の第5の側面は、前記第1~第4の態様のいずれかにおいて、前記低密度無機物粒子は、粒径(D50)が500nm~1,000nmの範囲から選択され、前記高密度無機物粒子は、粒径(D50)が300nm~700nmの範囲から選択されるものであって、前記低密度粒子の粒径(D50)に比べて高密度粒子の粒径(D50)がさらに小さい。
【0015】
本発明の第6の側面は、前記第1~第5の側面のいずれかにおいて、前記粒子状バインダー樹脂がアクリル系バインダー樹脂を含む。
【0016】
本発明の第7の側面は、前記第1~第6の側面のいずれかにおいて、前記低密度無機物粒子が、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)及びMg(OH)2の中から選択された1種以上を含む。
【0017】
本発明の第8の側面は、前記第1~第7の側面のいずれかにおいて、前記高密度無機物粒子が、ベーマイト(AlOOH)、アルミナ(Al2O3)及びBaTiO3の中から選択された1種以上を含む。
【0018】
本発明の第9の側面は、前記第1~第8の側面のいずれかにおいて、前記無機物コーティング層における無機物粒子100wt%に対する低密度粒子の含有量は40wt%~80wt%である。
【0019】
本発明の第10の側面は、前記第1~第9の側面のいずれかに記載の分離膜を製造する方法に関するものであって、前記分離膜の製造方法は、分離膜基材のいずれか一つの側面に無機物コーティング層形成用水系スラリーを塗布し、乾燥させる方法を含み、
【0020】
前記水系スラリーは、前記粒子状バインダー樹脂、低密度無機物粒子及び高密度無機物粒子を含み、溶媒として水を用いるものであり、前記水系スラリーの塗布後に乾燥する間に沈降速度の差によって第1層/第2層/電極接着部が形成されて最終的に得られる分離膜の無機物コーティング層は、3層構造を示すものである。
【0021】
本発明の第11の側面は、前記第10の側面において、前記水系スラリーの粘度が100cp以下である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、分離膜の表面にバインダーの含有量が高い電極接着部が形成されることにより、電極との結着力が高いため、電池製造時の工程性が向上し、電極と分離膜との間がよく密着して間隙が発生しないので、抵抗特性が改善されるという効果がある。また、本発明による分離膜は、多孔性基材の表面に無機物コーティング層が配置されており、前記無機物コーティング層は、無機物粒子間の間隙容量による多孔性構造を持つため、分離膜が適切な気孔度及び十分な電解液保持性を持つようにするという効果がある。本発明は、また、多孔性基材の表面に無機物コーティング層が形成されることにより、分離膜の耐熱性が確保されて電池の内部温度が上昇しても分離膜の収縮が防止されるという効果がある。一方、本発明による電気化学素子用分離膜の製造方法は、無機物粒子とバインダー樹脂粒子の密度を用いて一つの工程を介して無機物コーティング層が形成され、その表面に電極接着部が形成されるものであって、工程便宜性の面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書に添付される以下の図面は、本発明の好適な実施形態を例示するものであり、前述した発明の内容及び下記の好適な実施形態の詳細な説明と共に本発明の技術思想及び原理をさらに理解させる役割を果たすものであるので、本発明は、そのような図面に記載されている事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【0024】
【
図1】本発明の一態様による分離膜の断面を概略的に図式化して示すものであって、多孔性基材の表面に無機物コーティング層が形成されており、前記無機物コーティング層は、表面にバインダー樹脂の含有量が高い電極接着部が形成されている形状を有する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語又は単語は、通常的又は辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術思想に合致する意味と概念で解釈されるべきである。したがって、本明細書に記載された実施例に記載され且つ図面に示されている構成は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の技術思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替することができる様々な均等物及び変形例があり得ることを理解すべきである。
【0026】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、別の構成要素を除外するのではなく、別の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0027】
また、本明細書全体で使用される用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値で又はその数値に近接した意味で使用され、本明細書の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用するのを防止するために使用される。
【0028】
本願明細書全体において、「A及び/又はB」の記載は、「A又はB又はこれらの両方」を意味する。
【0029】
以下の発明の詳細な説明で使用された特定の用語は、便宜のためのものであり、限定的なものではない。さらに、上、下、左、右、前、後、内部、外部などの方向を示す単語は、参照された図面における方向を示すか、或いはそれぞれ指定された装置、システム及びそれらの部材の幾何学的中心に向かうか、或いはそれから離れる方向を示す。
【0030】
本発明の一側面による電気化学素子用分離膜は、電気化学素子、好ましくは二次電池の分離膜として用いられるものであって、単位セル(unit cell)に含まれる一構成要素である。前記二次電池は、反復的な充電と放電が可能なものであって、リチウムイオン電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池などを包括する概念である。
【0031】
前記分離膜は、多孔性の分離膜基材と、前記分離膜基材の少なくとも一側の表面に形成された無機物コーティング層と、を含み、前記無機物コーティング層は、表面に所定の厚さで接着部が形成されている。前記接着部は、バインダー樹脂の含有量の無機物コーティング層の他の領域よりも高い部分を、これと対面する電極との結着力を提供する役割を果たす。
【0032】
前記分離膜基材とは、負極と正極との電気的接触を遮断しながらイオンを通過させるイオン伝導性バリア(porous ion-conducting barrier)で内部に複数の気孔が形成された基材を意味する。これらの気孔は、互いに相互連結された構造で出来ており、基材の一方の面から他方の面に気体又は液体が通過可能である。
【0033】
このような分離膜基材を構成する材料は、電気絶縁性を有する有機材料或いは無機材料のいずれも使用することができる。特に、基材にシャットダウン機能を付与する観点からは、基材の構成材料として熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。ここで、シャットダウン機能とは、電池温度が高くなった場合に、熱可塑性樹脂が溶解して多孔性基材の孔を閉鎖することによりイオンの移動を遮断して、電池の熱暴走を防止する機能をいう。熱可塑性樹脂としては、溶融温度(融点)200℃未満の熱可塑性樹脂が適切であり、特にポリオレフィンが好ましい。
【0034】
また、この他にも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポレフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレンなどの高分子樹脂のうちの少なくとも1種をさらに含むことができる。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記分離膜基材は、前述した高分子材料を含むものであって、不織布及び/又は多孔性の高分子フィルムであってもよく、これらの材料が1種又は2種以上含まれてもよい。
【0036】
本発明の具体的な一実施形態において、前記分離膜基材は、電気化学素子に用いられる平面状の多孔性高分子フィルム又は不織布であれば、いずれも使用可能である。例えば、高いイオン透過度と機械的強度を有し、孔径は一般に0.01μm~0.10μmであり、厚さは一般に3μm~20μm又は4μm~15μmである薄い絶縁性薄膜が使用できる。一方、本発明の一実施形態において、前記分離膜基材の気孔度は30%~70%であることが好ましい。
【0037】
前記無機物コーティング層は、無機物粒子及び粒子状のバインダー樹脂を含むことができる。
図1は、多孔性基材の表面に無機物コーティング層が形成されている形状を概略的に図式化して示すものであって、前記無機物コーティング層は、粒子状のバインダー樹脂、低密度無機物粒子及び高密度無機物粒子が層状構造で積層されている形状を有することができる。
図1に示すように、無機物コーティング層の上部表面は、粒子のバインダー樹脂が主に分布している所定厚さの電極接着部を有する断面構造を持つ。前記無機物コーティング層は、後述するように、無機物粒子と粒子状バインダー樹脂を水系溶媒に投入して形成された水系スラリーを介して形成され、前記水系スラリーに含まれている固形成分(スラリー中の溶媒を除いた残りの成分)の密度差を利用して多層の層状構造が実現されたものであって、前記電極接着部の厚さは、分離膜全面に対して均一でなくてもよい。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記無機物コーティング層は、無機物コーティング層100重量%に対して無機物粒子が50重量%以上又は65重量%以上を含むことができる。一方、前記無機物コーティング層中のバインダー樹脂は、無機物コーティング層100重量%に対して50重量%以下の範囲で含まれる。一方、本発明において、前記無機物コーティング層は、前記無機物粒子として、高密度粒子と、前記高密度粒子に比べて相対的に密度が小さい低密度粒子とを含み、無機物コーティング層の下部には、高密度粒子が主に分布し、その上部には低密度粒子が主に分布する。本明細書において、多孔性基材の表面と直接接し且つ前記高密度粒子が主に分布する層を第1層とし、前記低密度粒子が主に分布する層を第2層とする。本発明において、「主に含む/主に分布する」という意味は、他の成分に比べて主に含まれる成分が重量比で50%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは90%以上含まれるものである。本発明の具体的な一実施形態において、前記バインダー樹脂粒子、前記高密度無機物粒子、前記低密度無機物粒子の分布において、前記第1層は、前記低密度無機物粒子の含有量が最も高く、前記第2層は、前記低密度無機物粒子の含有量が最も高く、電極接着部は、前記粒子状バインダー樹脂の含有量が最も高い。
【0039】
本発明において、前記密度は、真密度(True density)を意味することができる。前記真密度は、粒子と粒子間の間隙又は開気孔(open pore)を除いた完全に材料で満たされた部分のみの密度である。前記真密度は、アルキメデス法によって測定できる。例えば、前記真密度は、真密度測定器(Gas Pycnometer、G PYC―100、PMI、USA)によって測定でき、サンプルにヘリウムなどのガスを吸着させ、吸着したガスの体積減少による圧力変化を測定することにより、真密度値を得ることができる。具体的に、試料サンプルが投入されるサンプルチャンバーの体積Vcと、単に体積を増やす基準チャンバーの体積Vrを測定する。ガス入り口バルブを開いてサンプルチャンバー内にヘリウムガスを注入すると、サンプルチャンバー内の平衡圧力はP1となり、体積はVc-Vsとなる。このとき、Vsは試料の体積である。次いで、拡張バルブが開かれると、新しい平衡圧力はP2となり、体積はVc-Vs+Vrとなる。これを簡単な数式で表すと、P1(Vc-Vs)=Ps(Vc-Vs+Vr)となる。それぞれの平衡圧力P1及びP2は圧力センサー(pressure transducer)で測定し、2チャンバーの体積Vc及びVrは既に知っているので、容易にVsを測定することができる。このとき、試料の重さをバランス(balance)で測定して入力すると、密度計算が可能である。測定された試料の体積は、試料に存在する全ての開気孔(open pore)を除いた純粋な試料のみの体積なので、真密度値を得ることができる。
【0040】
一方、第1層及び第2層は、無機物粒子と共に粒子状のバインダー樹脂が一緒に含まれており、前記無機物粒子は、前記バインダー樹脂によって互いに結着して無機物コーティング層を形成する。また、前記バインダー樹脂粒子は、無機物コーティング層が多孔性基材と結着するように結着力を提供する役割を果たす。
【0041】
すなわち、本発明の好適な一実施形態において、前記分離膜は、分離膜基材と、前記分離膜基材の少なくとも一側の表面に形成された無機物コーティング層と、を含み、前記無機物コーティング層は、分離膜基材と接する第1層、前記第1層の上面に形成された第2層と、前記第2層の上面に形成された電極接着部とを含む。前記第1層は、密度の高い高密度粒子が主に含まれており、第2層は、前記高密度粒子に比べて相対的に密度の低い低密度粒子が主に含まれており、前記電極接着部は、主にバインダー樹脂粒子を含む。前記バインダー樹脂粒子の密度は、前記高密度粒子の密度及び低密度粒子の密度に比べて相対的に低い。後述するように、前記各層は、無機物コーティング層形成用スラリーうち、各粒子の密度による沈降程度によって層が区別される形状に形成されるものであって、各層の境界及び成分の区別が完全にはっきりしないことがあり、当該層に他の層の主要成分が混入されていてもよい。本発明の一実施形態において、前記第1層及び第2層は、前記バインダー樹脂粒子が所定量混入されてもよく、前記混入されているバインダー樹脂粒子によって無機物粒子が相互に結着して各層から無機物粒子が脱離せずに層構造が安定的に維持されることができる。
【0042】
本発明の具体的な一実施形態において、前記無機物コーティング層は、無機物粒子間、前記バインダー樹脂粒子間、及び前記無機物粒子とバインダー樹脂粒子との間に形成された間隙容量(interstital volume)により形成される気孔によって多孔性特性を持つ。前記間隙容量は、それらの粒子が充填された構造で実質的に面接触する粒子によって限定される空間を意味する。
【0043】
本発明において、前記高密度粒子に対する前記バインダー樹脂の密度の比(密度比A)(バインダー樹脂の密度/高密度粒子の密度)は0.2以上0.33未満であり、前記低密度粒子に対するバインダー樹脂の密度の比(密度比B)(バインダー樹脂の密度/低密度粒子の密度)は、0.33以上0.5以下である。上記の範囲を満たす場合、後述する分離膜製造工程において密度による沈降程度が互いに異なって所望の層状構造の多孔性コーティング層が実現できる。
【0044】
一方、本発明の具体的な一実施形態において、前記密度比の範囲A及び密度比Bを満たす範囲内で、前記高密度粒子は、密度が2~10g/cm3であり、前記低密度粒子は、密度が1~7g/cm3であり得る。また、前記バインダー樹脂の密度は0.5~5g/cm3であり得る。しかし、各粒子の密度は、前記密度比A及び密度比Bを満たす限り、上記の範囲のみに限定されるものではない。
【0045】
一方、本発明の具体的な一実施形態において、前記無機物コーティング層における無機物粒子総100wt%に対する前記低密度粒子の含有量は、40wt%~80wt%であり得る。上記の範囲内で、前記低密度粒子の含有量は、55重量%以上又は60重量%以上であり得る。このように低密度粒子の含有量がさらに高い場合、第2層が第1層に比べてさらに厚く形成でき、高い気孔度の確保及び抵抗特性の確保の面で有利である。
【0046】
また、前記低密度粒子は、粒径(D50)が500nm~1,000nmであり、前記高密度粒子は、粒径(D50)が300nm~700nmであることが好ましい。低密度粒子と高密度粒子が上記の範囲を有する場合、第1層で粒子間に形成される空隙の大きさが低密度粒子の粒径よりも小さくなって低密度粒子が第1層の気孔に混入するのが防止され、本発明で所望する層状構造の実現が容易である。一方、前記粒子状バインダー樹脂は、粒径(D50)が300nm~500nmであることが好ましい。密度の差異によって、バインダー樹脂は、第1層及び/又は第2層よりも上層に位置する比率が高いが、第1層及び第2層に形成される空隙の大きさよりも小さいので、バインダー粒子が第1層及び第2層に流入することができる。これにより、第1層及び第2層にバインダー粒子が配置されることができ、これにより、無機物コーティング層中の粒子同士が相互に結着して外形を維持するのに有利である。
【0047】
本発明において、前記粒径D50は、粒径分布の50%基準での粒径と定義することができる。本発明の一実施形態において、前記粒径D50は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。
【0048】
一方、本発明の具体的な一実施形態において、前記第2層は、前記第1層に比べて厚さが厚くてもよい。すなわち、粒径の大きい低密度粒子を主に含む第2層の比率を高くして無機コーティング層の気孔度を高めることができる。また、第1層は、無機物粒子の粒径が小さいため、多孔性基材と無機コーティング層との接触面積を広げて剥離力を高めることができる。
【0049】
本発明の具体的な一実施形態において、前記低密度粒子は、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)及びMg(OH)2の中から選択された1種以上を含むことができ、前記高密度粒子は、ベーマイト(AlOOH)、アルミナ(Al2O3)、BaTiO3の中から選択された1種以上を含むことができる。無機物粒子が上記の成分に限定されるものではないが、上記の組成が適用される場合、前述した密度比率を実現するのに有利である。
【0050】
本発明の具体的な一実施形態において、前記無機物粒子は、電気化学的に安定であり、前記無機物コーティング層の密度範囲に合致するものであれば、上述した成分に限定されるものではない。すなわち、本発明で使用することができる無機物粒子は、適用される電池の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+を基準に0~5V)で酸化及び/又は還元反応が起こらないものであって上記の条件を満たすものであれば、特に制限されない。前記無機物粒子の非制限的な例としては、Al2O3、AlOOH、Al(OH)3、AlN、BN、MgO、Mg(OH)2、SiO2、ZnO、TiO2、BaTiO3又はこれらの混合物などがある。
【0051】
一方、本発明の一実施形態において、前記バインダー樹脂は、水系溶媒に粒子状に分散できるものであれば、特別な成分に限定されるものではない。前記バインダー樹脂としては、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyethylhexyl acrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetatebutyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetatepropionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
一方、本発明の一実施形態において、前記無機物コーティング層は、前記分離膜基材の一面を基準として、0.01μm~20μmの範囲を有することができる。
【0053】
次に、前記無機物コーティング層の形成方法について説明する。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、前記分離膜は、高密度粒子、低密度粒子及びバインダー樹脂を適切な水系溶媒と混合して無機物コーティング層形成用スラリーを製造した後、これを分離膜基材の表面に塗布及び乾燥させることにより得られる。前記塗布方法は、ディップ(Dip)コーティングやスロットダイコーティング法、マイクログラビアコーティング法、ワイヤーコーティング法、ドクターブレードコーティング法などの公知の塗布方法のうち、適切な1つ以上の方法を選択して適用することができる。本発明の一実施形態において、前記スラリー中の溶媒を除いた残りの成分(固形分)の含有量は、約25wt%~40wt%の範囲で含まれることができる。
【0055】
前記乾燥は、80℃~100℃の温度条件下で行われることができ、例えば、コンベクションオーブンなどの対流条件で行われることができる。
【0056】
前記溶媒は、高分子樹脂を分散させることができる水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒は、水、イソプロピルアルコール、プロパノールなどを例として挙げることができ、それらのうちの1種又は2種以上の混合物を含むことができる。
【0057】
上述したように密度の差異によって各成分の沈降速度が異なり、これにより無機物コーティング層が層状構造を持つ。すなわち、分離膜基材の表面に高密度無機物粒子が最も先に沈降して第1層を形成し、その上部に低密度粒子が沈降して第2層を形成する。一方、バインダー樹脂は、密度が低いため沈降速度が最も遅いので、前記第2層の表面に集積されて電極接着部を形成する。一方、前記バインダー樹脂は、粒子のサイズが最も小さいため、第2層及び第1層の空隙に流入することにより、各層に結着力を付与する役割を果たすことができる。
【0058】
一方、本発明の具体的な一実施形態において、前記スラリーは、粘度が100cp以下であることが好ましい。粘度が上記の範囲を超える場合には、低密度粒子、高密度粒子及びバインダー樹脂粒子の密度による相分離が不明であって層状構造を実現することが困難であり、これにより電極と分離膜との接着力の確保が難しい。
【0059】
このように本発明による分離膜の製造方法は、粒子の沈降速度を利用して、一つの単一工程で分離膜の表面に一体不可分の形態で電極接着部を形成するので、工程便宜性の面で非常に有利である。また、粒子状バインダー樹脂を用いて無機物粒子を結着させており、無機物粒子間の間隙容量が空き空間に維持されて気孔を形成するため、無機物コーティング層の気孔度が高くて電解液含浸性が改善されるという効果が発揮できる。また、電極接着部によって電極と分離膜との結着力が増加するので、電極と分離膜との界面抵抗が減少するという効果がある。
【0060】
本発明の他の実施形態によれば、前記分離膜を正極と負極との間に含む電極組立体、及び前記電極組立体を含む電気化学素子が提供される。
【0061】
本発明において、正極は、正極集電体及び前記集電体の少なくとも一側の表面に正極活物質、導電材及びバインダー樹脂を含む正極活物質層と、を備える。前記正極活物質は、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4、LiMnO2など)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物であって1種又はそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiFe3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B又はGaであり、xは0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、MはCo、Ni、Fe、Cr、Zn又はTaであり、xは0.01~0.1である)又はLi2Mn3MO8(ここで、MはFe、Co、Ni、Cu又はZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3のうちの1種又は2種以上の混合物を含むことができる。
【0062】
本発明において、前記負極は、負極集電体及び前記集電体の少なくとも一側の表面に、負極活物質、導電材及びバインダー樹脂を含む負極活物質層を備える。前記負極は、負極活物質として、リチウム金属酸化物、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の第1族、第2族、第3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物の中から選択された1種又は2種以上の混合物を含むことができる。
【0063】
本発明の具体的な一実施形態において、前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維又は金属繊維、金属粉末、導電性ウィスカー、導電性金属酸化物、活性炭(activated carbon)及びポリフェニレン誘導体よりなる群から選択された1種又は2種以上の導電性材料の混合物であり得る。さらに具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、スーパーP(super-p)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、デンカブラック、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム及び酸化チタンよりなる群から選択された1種又は2種以上の導電性材料の混合物であり得る。
【0064】
前記集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用できる。
【0065】
前記バインダー樹脂としては、当該分野で電極に通常用いられる高分子を使用することができる。このようなバインダー樹脂の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyethylhexyl acrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetatebutyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetatepropionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0066】
上述のように準備された電極組立体は、適切なケースに装入し、電解液を注入して電池を製造することができる。本発明において、前記電解液は、A+B-のような構造の塩であって、A+は、Li+、Na+、K+などのアルカリ金属カチオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含み、B-は、PF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-などのアニオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(γ-ブチロラクトン)又はこれらの混合物よりなる有機溶媒に溶解又は解離したものがあるが、これに限定されるものではない。
【0067】
また、本発明は、前記電極組立体を含む電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。前記デバイスの具体的な例としては、電池的モータによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電動自転車(E-bike)、電動スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0068】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は、以下に説明する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当技術分野における通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0069】
実施例1
水に高密度粒子としてアルミナ(Al2O3、D50:500m、密度:4g/cm3)及び低密度粒子としてAl(OH)3(D50:800nm、密度:2.4g/cm3)を投入し、バインダー樹脂としてスチレンアクリレート(ゲル含有量98%、pH3、粒径(D50:380nm))を投入し、ペイントシェーカー(タングステンビーズ)を用いて2時間撹拌して分散させることにより、固形分濃度30wt%の無機物コーティング層形成用スラリーを準備した。前記高密度粒子、低密度粒子及びバインダーの含有量比は35:35:30の比率(wt%)であった。前記スラリーをバーコーターを用いて分離膜基材(ポリエチレン、東レ社製、厚さ9μm、通気時間90秒/100cc)に塗布し、約80℃~90℃の温度条件で乾燥させて分離膜を得た。
【0070】
実施例2
水に高密度粒子としてアルミナ(Al2O3、D50:500m、密度:4g/cm3)及び低密度粒子としてAl(OH)3(D50:800nm、密度:2.4g/cm3)を投入し、バインダー樹脂としてスチレンアクリレート(ゲル含有量98%、pH3、D50380nm、密度:1.02g/cm3)を投入し、ペイントシェーカー(タングステンビーズ)を用いて2時間撹拌して分散させることにより、固形分濃度30wt%の無機物コーティング層形成用スラリーを準備した。前記高密度粒子、低密度粒子及びバインダーの含有量比は、25:45:30の比率(wt%)であった。前記スラリーをバーコーターを用いて分離膜基材(ポリエチレン、東レ社製、厚さ9μm、通気時間90秒/100cc)に塗布し、約80℃~90℃の温度条件で乾燥させて分離膜を得た。
【0071】
実施例3
水に高密度粒子としてアルミナ(Al2O3、D50:500m、密度:4g/cm3)及び低密度粒子としてAl(OH)3(D50:800nm、密度:2.4g/cm3)を投入し、バインダー樹脂としてスチレンアクリレート(ゲル含有量98%、pH3、粒径(D50)380nm、密度:1.02g/cm3)を投入し、ペイントシェーカー(タングステンビーズ)を用いて2時間撹拌して分散させることにより、固形分濃度30wt%の無機物コーティング層形成用スラリーを準備した。前記高密度粒子、低密度粒子及びバインダーの含有量比は、15:55:30の比率(wt%)であった。前記スラリーをバーコーターを用いて分離膜基材(ポリエチレン、東レ社製、厚さ9μm、通気時間90秒/100cc)に塗布し、約80℃~90℃の温度条件で乾燥させて分離膜を得た。
【0072】
実施例4
水に高密度粒子としてアルミナ(Al2O3、D50:500m、密度:4g/cm3)及び低密度粒子としてAlOOH(D50:200~300nm、密度:3g/cm3)を投入し、バインダー樹脂としてスチレンアクリレート(ゲル含有量98%、pH3、粒径(D50)380nm、密度:1.02g/cm3)を投入し、ペイントシェーカー(タングステンビーズ)を用いて2時間撹拌して分散させることにより、固形分濃度30wt%の無機物コーティング層形成用スラリーを準備した。前記高密度粒子、低密度粒子及びバインダーの含有量比は、15:55:30の比率(wt%)であった。前記スラリーをバーコーターを用いて分離膜基材(ポリエチレン、東レ社製、厚さ9μm、通気時間90秒/100cc)に塗布し、約80℃~90℃の温度条件で乾燥させて分離膜を得た。
【0073】
比較例1
水にアルミナ(Al2O3、D50:500m、密度:4g/cm3)及びスチレンアクリレート(ゲル含有量98%、pH3、粒径(D50)380nm、密度:1.02g/cm3)を投入し、ペイントシェーカー(タングステンビーズ)を用いて2時間撹拌して分散させることにより、固形分濃度30wt%の無機物コーティング層形成用スラリーを準備した。前記無機物粒子及びバインダーの含有量比は、70:30の比率(wt%)であった。前記スラリーをバーコーターを用いて分離膜基材(ポリエチレン、東レ社製、厚さ9μm、通気時間90秒/100cc)に塗布し、約80℃~90℃の温度条件で乾燥させて分離膜を得た。
【0074】
比較例2
水にAlOOH(D50:200nm~300m、密度:3g/cm3)及びスチレンアクリレート(ゲル含有量98%、pH3、粒径(D50)380nm、密度:1.02g/cm3)を投入し、ペイントシェーカー(タングステンビーズ)を用いて2時間攪拌して分散させることにより、固形分濃度30wt%の無機物コーティング層形成用スラリーを準備した。前記無機物粒子及びバインダーの含有量比は70:30の比率(wt%)であった。前記スラリーをバーコーターを用いて分離膜基材(ポリエチレン、東レ社製、厚さ9μm、通気時間90秒/100cc)に塗布し、約80℃~90℃の温度条件で乾燥させて分離膜を得た。
【0075】
比較例3
水にAl(OH)3(D50:800m、2.4g/cm3)及びスチレンアクリレート(ゲル含有量98%、pH3、粒径(D50)380nm、1.02g/cm3)を投入し、ペイントシェーカー(タングステンビーズ)を用いて2時間撹拌して分散させることにより、固形分濃度30wt%の無機物コーティング層形成用スラリーを準備した。前記無機物粒子及びバインダーの含有量比は70:30の比率(wt%)であった。前記スラリーをバーコーターを用いて分離膜基材(ポリエチレン、東レ社製、厚さ9μm、通気時間90秒/100cc)に塗布し、約80℃~90℃の温度条件で乾燥させて分離膜を得た。
【0076】
【0077】
前記表1によれば、実施例1~実施例4の分離膜は、分離膜の無機コーティング層ローディング量に対するパッキング密度(packing density)が、比較例2及び比較例3の分離膜に比べて高い。これにより、熱収縮率特性に優れるうえ、適正な抵抗値を示している。比較例1の場合は、実施例による分離膜に比べて、同一厚さに対するパッキング密度は高いが、これによりガーレー値と抵抗がかなり高いことが確認された。したがって、本発明による分離膜は、ガーレー値(Gurley value)、熱収縮率及び抵抗特性の面で均一に優れた特性を示すことが確認された。
【0078】
評価方法
(1)通気時間(ガーレー値)
通気度測定器(製造社:旭精工社、製品名:EG01-55-1MR)を用いて一定圧力(0.05MPa)で100mlの空気が分離膜を通過するのにかかる時間(sec)を測定した。サンプルの左/中/右各1ポイントずつ合計3ポイント測定して平均を記録した。
【0079】
(2)抵抗の測定
各実施例及び比較例で得られた分離膜をSUSの間に介在させ、コインセルを製造した。前記コインセルの電解液としては、エチレンカーボネート:エチルメチルカルボネートを1:2(体積比)で混合し、LiPF6を1M濃度で添加した。各コインセルに対して分析装置(VMP3、Bio-Logic Science Instrument)を用いて、25℃で振幅10mV及びスキャン範囲0.1hz~1Mhzの条件で電気化学インピーダンス分光分析結果を介して抵抗を測定した。
【0080】
(3)熱収縮率の測定
各実施例及び比較例で得られた分離膜を5cm×5cmのサイズに裁断して試験片を製作し、これをそれぞれ150℃の条件で0.5時間(hr)維持した後、収縮した長さを最初の長さと比較した。TD及びMD方向は、分離膜基材を基準とした。