(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】二次電池用セパレータの製造方法、それによって製造されるセパレータ、及びそれを備える二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240621BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20240621BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/457
H01M50/426
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/403 D
H01M50/429
(21)【出願番号】P 2022568929
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2021013392
(87)【国際公開番号】W WO2022075658
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0128921
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジン-ヒュン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-ボク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン-ウク・スン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ユン・イ
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-187702(JP,A)
【文献】特表2014-511554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の一面に位置し、多数の無機物粒子及び第1バインダー高分子を含む第1コーティング層と、
前記多孔性高分子基材の他面に位置し、多数の無機物粒子及び第1バインダー高分子を含む第2コーティング層と、
前記多孔性高分子基材と前記第1コーティング層との間及び前記多孔性高分子基材と前記第2コーティング層との間の少なくともいずれか一方に位置し、第2バインダー高分子を含む第3コーティング層と、を含み、
前記第2バインダー高分子は、非湿潤性高分子を含
み、
前記第3コーティング層の含量が、前記第1コーティング層または第2コーティング層の100重量部に対して0.066重量部~0.166重量部である、二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記非湿潤性高分子が、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシ、エチレンテトラフルオロエチレン、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項
1に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記第2バインダー高分子は、第3バインダー高分子をさらに含み、
前記第3バインダー高分子は、接着性バインダー高分子である、請求項1
または2に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記第3バインダー高分子が、スチレンブタジエンゴム、アクリル系共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項
3に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記第1バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、ポリイミド、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の二次電池用セパレータ。
【請求項6】
多孔性高分子基材を用意する段階(S1)と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に第2バインダー高分子を含むコーティング液をコーティング及び乾燥して予備セパレータを製造する段階(S2)と、
前記予備セパレータの一面及び他面に、無機物粒子、第1バインダー高分子、及び前記第1バインダー高分子に対する溶媒を含むスラリーを順次にコーティングする段階(S3)と、
前記(S3)の結果物を乾燥する段階(S4)と、を含み、
前記第2バインダー高分子は、前記第1バインダー高分子に対する溶媒に対して不透過性を有する非湿潤性高分子を含
み、
前記コーティング液のローディング量が、0.01~0.015g/m
2
である、二次電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
前記非湿潤性高分子が、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシ、エチレンテトラフルオロエチレン、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項
6に記載の二次電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
前記コーティング液は、第3バインダー高分子をさらに含み、
前記第3バインダー高分子は、接着性バインダー高分子を含む、請求項
6または7に記載の二次電池用セパレータの製造方法。
【請求項9】
前記第3バインダー高分子が、スチレンブタジエンゴム、アクリル系共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項
8に記載の二次電池用セパレータの製造方法。
【請求項10】
前記(S2)段階におけるコーティングが、前記コーティング液を気体または微細液滴の形態で前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に噴射してコーティングする段階を含む、請求項
6から
9のいずれか一項に記載の二次電池用セパレータの製造方法。
【請求項11】
前記第1バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、ポリイミド、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項
6から
10のいずれか一項に記載の二次電池用セパレータの製造方法。
【請求項12】
前記(S3)段階で前記予備セパレータの一面及び他面に前記スラリーを順次にコーティングする方法が、グラビアロールコーティング法、バーコーティング法、スロットダイコーティング法、ブレードコーティング法、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項
6から
11のいずれか一項に記載の二次電池用セパレータの製造方法。
【請求項13】
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在されたセパレータを含み、
前記セパレータは、請求項1から
5のいずれか一項に記載の二次電池用セパレータである、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月6日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0128921号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、二次電池用セパレータの製造方法、それによって製造されるセパレータ、及びそれを備える二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、電気化学素子の研究と開発に対する努力が益々具体化されている。電気化学素子はこのような面から最も注目されている分野であり、なかでも充放電可能な二次電池の開発には関心が集まっている。近年はこのような電池の容量密度及び比エネルギーを向上させるために新たな電極と電池の設計に関連する研究開発が行われている。
【0004】
このような二次電池は、一般に、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、電解質塩と有機溶媒を含む非水電解液、正極と負極との間に介在されてこれらを電気的に絶縁させるセパレータを含む。
【0005】
しかし、二次電池のセパレータとして通常使用されるポリオレフィン系多孔性基材は、材料的特性と延伸を含む製造工程上の特性のため、100℃以上の温度で甚だしい熱収縮挙動を見せることで、正極と負極との間の短絡を起こす問題がある。
【0006】
このような二次電池の安全性問題を解決するため、多孔性高分子基材の少なくとも一面に無機物粒子及びバインダー高分子を含むスラリーをコーティングして多孔性コーティング層を形成したセパレータが提案され、近年自動車電池用として多孔性高分子基材の両面に多孔性コーティング層が形成されたセパレータが主に使用されている。
【0007】
多孔性高分子基材の両面に多孔性コーティング層を形成する方法としては、一般に、多孔性高分子基材を無機物粒子及びバインダー高分子を含むスラリーに浸漬して多孔性コーティング層を同時に形成するディップコーティング法(dip coating)が挙げられる。しかし、ディップコーティング法は、作業速度に限界があり、浸漬装置を外部と完全に遮断し難いため、工程中に浸漬装置の溶媒が持続的に蒸発して固形分の変化が発生するなどの技術的限界を有する。そこで、コーティング工程性及び生産性がさらに優れた順次コーティング方式が近年多く用いられている。
【0008】
順次コーティング方式は、多孔性高分子基材の一面に無機物粒子及びバインダー高分子を含むスラリーをコーティングした後、多孔性高分子基材の他面に前記スラリーをコーティングする方式を意味する。しかし、順次コーティング方式には、コーティングされた一面と他面との物性差の問題があり、このような物性差は特に電池の組み立て工程性に影響を及ぼす。これは多孔性高分子基材の他面にスラリーをコーティングするとき、一面にコーティングされたスラリー内のバインダー高分子が乾燥されていない状態であるため、前記バインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透するようになって一面に必要なバインダー高分子の絶対量が減少するからである。
【0009】
したがって、順次コーティングにおいて、セパレータの一面と他面との物性差を最小化することができる技術が強く求められている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、無機物粒子及びバインダー高分子を含むスラリーを順次コーティング方式で多孔性高分子基材にコーティングするとき、多孔性高分子基材の気孔内に浸透する前記バインダー高分子の量を最小化することで、熱的安全性に優れるとともにセパレータの一面と他面との物性差を最小化することができる二次電池用セパレータの製造方法、それによって製造されるセパレータ、及びそれを備える二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例の二次電池用セパレータが提供される。
【0012】
第1具現例は、
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の一面に位置し、多数の無機物粒子及び第1バインダー高分子を含む第1コーティング層と、
前記多孔性高分子基材の他面に位置し、多数の無機物粒子及び第1バインダー高分子を含む第2コーティング層と、
前記多孔性高分子基材と前記第1コーティング層との間及び前記多孔性高分子基材と前記第2コーティング層との間のうちの少なくとも一方に位置し、第2バインダー高分子を含む第3コーティング層と、を含み、
前記第2バインダー高分子は、非湿潤性(non-wetting)高分子を含むことを特徴とする二次電池用セパレータに関する。
【0013】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記第3コーティング層の含量が、前記第1コーティング層または第2コーティング層の100重量部に対して0.066重量部~0.166重量部であり得る。
【0014】
第3具現例によれば、第1具現例または第2具現例において、
前記非湿潤性高分子が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0015】
第4具現例によれば、第1具現例~第3具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記第2バインダー高分子が、第3バインダー高分子をさらに含み、
前記第3バインダー高分子が、接着性バインダー高分子であり得る。
【0016】
第5具現例によれば、第4具現例において、
前記第3バインダー高分子が、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル系共重合体、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0017】
第6具現例によれば、第1具現例~第5具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記第1バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、ポリイミド、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0018】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例の二次電池用セパレータの製造方法が提供される。
【0019】
第7具現例は、
多孔性高分子基材を用意する段階(S1)と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に第2バインダー高分子を含むコーティング液をコーティング及び乾燥して予備セパレータを製造する段階(S2)と、
前記予備セパレータの一面及び他面に、無機物粒子、第1バインダー高分子、及び前記第1バインダー高分子に対する溶媒を含むスラリーを順次にコーティングする段階(S3)と、
前記(S3)の結果物を乾燥する段階(S4)と、を含み、
前記第2バインダー高分子は、前記第1バインダー高分子に対する溶媒に対して不透過性を有する非湿潤性高分子を含むことを特徴とする二次電池用セパレータの製造方法に関する。
【0020】
第8具現例によれば、第7具現例において、
前記コーティング液のローディング量が、0.01~0.015g/m2であり得る。
【0021】
第9具現例によれば、第7具現例または第8具現例において、
前記非湿潤性高分子が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0022】
第10具現例によれば、第7具現例~第9具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記コーティング液が、第3バインダー高分子をさらに含み、
前記第3バインダー高分子が、接着性バインダー高分子であり得る。
【0023】
第11具現例によれば、第10具現例において、
前記第3バインダー高分子が、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル系共重合体、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0024】
第12具現例によれば、第7具現例~第11具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記(S2)段階におけるコーティングが、前記コーティング液を気体または微細液滴の形態で前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に噴射してコーティングする段階を含み得る。
【0025】
第13具現例によれば、第7具現例~第12具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記第1バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、ポリイミド、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0026】
第14具現例によれば、第7具現例~第13具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記(S3)段階で前記予備セパレータの一面及び他面に前記スラリーを順次にコーティングする方法が、グラビアロールコーティング法、バーコーティング法、スロットダイコーティング法、ブレードコーティング法、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0027】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例のリチウム二次電池が提供される。
【0028】
第15具現例は、
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在されたセパレータを含み、
前記セパレータは、第1具現例~第6具現例のうちの一具現例による二次電池用セパレータであることを特徴とする二次電池に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様による二次電池用セパレータは、多孔性高分子基材と第1コーティング層との間及び多孔性高分子基材と第2コーティング層との間のうちの少なくとも一方に位置し、非湿潤性(non-wetting)高分子を含む第3コーティング層を含むことで、多孔性高分子基材の気孔内に浸透する第1バインダー高分子の量を最小化できるため、セパレータの一面と他面との物性差を最小化することができる。
【0030】
また、本発明の一態様による二次電池用セパレータは、第3コーティング層の含量を調節することで、非湿潤性高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止できるとともに、セパレータの一面と他面との物性差を最小化することができる。
【0031】
本発明の一態様による二次電池用セパレータの製造方法は、第1バインダー高分子に対する溶媒に不透過性を有する非湿潤性高分子を含むコーティング液を多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングすることで、無機物粒子及び第1バインダー高分子を含むスラリーを多孔性高分子基材の一面及び他面に順次にコーティングするにもかかわらず、多孔性高分子基材の気孔内に浸透する第1バインダー高分子の量を最小化できるため、コーティング工程性及び生産性に優れ、最終的に製造されるセパレータの一面と他面との物性差を最小化することができる。
【0032】
また、本発明の一態様による二次電池用セパレータの製造方法は、コーティング液のローディング量を調節することで、非湿潤性高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止できるとともに、最終的に製造されるセパレータの一面と他面との物性差を最小化することができる。
【0033】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態による二次電池用セパレータの製造方法を概略的に示したフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態による二次電池用セパレータの製造方法において、無機物粒子及び第1バインダー高分子を含むスラリーを順次にコーティングする装置を例示的に示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態による二次電池用セパレータを概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0036】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0037】
従来、コーティング工程性及び生産性の向上のため、無機物粒子及びバインダー高分子を含むスラリーを多孔性高分子基材の一面にコーティングした後、前記スラリーを多孔性高分子基材の他面に順次にコーティングし乾燥してセパレータを製造している。
【0038】
しかし、このような方式には、前記スラリーを多孔性高分子基材の一面にコーティングした後、多孔性高分子基材の他面にコーティングするとき、一面にコーティングされたスラリー内のバインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透して、多孔性高分子基材の一面に最終的に存在するバインダー高分子の含量が減少するという問題がある。これにより、最終的に製造されるセパレータの一面と他面との間に物性差が生じる。
【0039】
そこで、本発明者らは、無機物粒子及びバインダー高分子を含むスラリーを多孔性高分子基材の一面及び他面に順次にコーティングできるとともに、前記スラリー内のバインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透せず、最終的に製造されるセパレータの一面と他面との物性差を最小化することができるセパレータの製造方法、及びそれによって製造されるセパレータを開発して本発明の完成に至った。
【0040】
本発明の一実施形態による二次電池用セパレータの製造方法は、
多孔性高分子基材を用意する段階(S1)と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に第2バインダー高分子を含むコーティング液をコーティング及び乾燥して予備セパレータを製造する段階(S2)と、
前記予備セパレータの一面及び他面に、無機物粒子、第1バインダー高分子、及び前記第1バインダー高分子に対する溶媒を含むスラリーを順次にコーティングする段階(S3)と、
前記(S3)の結果物を乾燥する段階(S4)と、を含み、
前記第2バインダー高分子は、前記第1バインダー高分子に対する溶媒に対して不透過性を有する非湿潤性高分子を含むことを特徴とする。
【0041】
図1は、本発明の一実施形態による二次電池用セパレータの製造方法を概略的に示したフロー図である。
【0042】
以下、本発明による二次電池用セパレータの製造方法を、要部を中心にして説明する。
【0043】
まず、多孔性高分子基材を用意する(S1)。前記多孔性高分子基材としては、通常二次電池用セパレータの素材として使用可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。このような多孔性高分子基材は、高分子材料が含まれた薄膜であり、前記高分子材料の非制限的な例としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレートのような高分子樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含み得る。また、前記多孔性高分子基材は、前記高分子材料から形成された不織布、多孔性高分子フィルム、またはこれらのうちの二つ以上の積層物などが使用され得る。具体的には、前記多孔性高分子基材は、下記のa)~e)のうちのいずれか一つであり得る。
【0044】
a)高分子樹脂を溶融及び押出して成膜した多孔性フィルム
b)前記a)の多孔性フィルムが2層以上積層された多層膜
c)高分子樹脂を溶融/紡糸して得たフィラメントを集積して製造された不織布ウェブ
d)前記c)の不織布ウェブが2層以上積層された多層膜
e)前記a)~d)のうちの二つ以上を含む多層構造の多孔性膜
【0045】
前記多孔性高分子基材は、上述した物質から優れた通気性及び孔隙率を確保するため、当業界に公知の通常の方法、例えば溶媒、希釈剤または気孔形成剤を使用する湿式法、または、延伸方法を使用する乾式法を通じて気孔を形成することで製造され得る。
【0046】
その後、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に第2バインダー高分子を含むコーティング液をコーティング及び乾燥して予備セパレータを製造する(S2)。前記コーティング液は、前記多孔性高分子基材の一面のみにコーティングされてもよく、前記多孔性高分子基材の両面ともにコーティングされてもよい。
【0047】
前記第2バインダー高分子は、前記第1バインダー高分子に対する溶媒に対して不透過性を有する非湿潤性高分子を含む。
【0048】
本発明において、非湿潤性(non-wetting)高分子とは、後述する無機物粒子、第1バインダー高分子、及び前記第1バインダー高分子に対する溶媒を含むスラリーにおいて、前記第1バインダー高分子に対する溶媒に対して不透過性を有する高分子を意味する。前記予備セパレータにおいて、前記非湿潤性高分子を含むコーティング液がコーティング及び乾燥された部分は、前記第1バインダー高分子に対する溶媒の拡がりに対して最小限の親和性を呈する。例えば、前記第1バインダー高分子に対する溶媒は、前記予備セパレータの前記非湿潤性高分子を含むコーティング液がコーティング及び乾燥された部分で90゜以上の接触角を有する球状の滴を形成し得る。前記接触角は、前記予備セパレータ及び前記第1バインダー高分子に対する溶媒が蒸気環境下にあるとき、第1バインダー高分子に対する溶媒-蒸気の界面と第1バインダー高分子に対する溶媒-予備セパレータの界面との間の角に対応する。
【0049】
前記非湿潤性高分子が前記第1バインダー高分子に対する溶媒に対して不透過性であるため、前記第1バインダー高分子に対する溶媒に溶解された第1バインダー高分子が、前記非湿潤性高分子を含むコーティング液がコーティング及び乾燥された予備セパレータの表面を通過できず、前記第1バインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止することができる。これにより、最終的に製造されるセパレータの一面と他面との物性差を最小化することができる。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記非湿潤性高分子は、水系溶媒に対して不透過性であり得る。前記非湿潤性高分子が水系溶媒に対して不透過性であると、水系溶媒に溶解または分散した第1バインダー高分子を含むスラリーが、前記非湿潤性高分子を含むコーティング液がコーティング及び乾燥された予備セパレータの表面を通過できず、前記スラリー内の第1バインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止することができる。
【0051】
本発明の他の実施形態において、前記非湿潤性高分子は、有機溶媒に対して不透過性であり得る。前記非湿潤性高分子が有機溶媒に対して不透過性であると、有機溶媒に溶解または分散した第1バインダー高分子を含むスラリーが、前記非湿潤性高分子を含むコーティング液がコーティング及び乾燥された予備セパレータの表面を通過できず、前記スラリー内の第1バインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止することができる。
【0052】
本発明の一実施形態において、前記非湿潤性高分子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。前記非湿潤性高分子にポリフッ化ビニリデン(PVdF)は含まれない。
【0053】
本発明の一実施形態において、前記非湿潤性高分子は、前記コーティング液の含量100重量%を基準にして90~99.9重量%、または92~98重量%で含まれ得る。前記非湿潤性高分子が上述した範囲で前記コーティング液に含まれる場合、後述するスラリー内の第1バインダー高分子が、前記非湿潤性高分子を含むコーティング液がコーティング及び乾燥された予備セパレータの表面を通過することをより容易に防止することができる。
【0054】
本発明の一実施形態において、前記コーティング液は第3バインダー高分子をさらに含み得、前記第3バインダー高分子は、接着性バインダー高分子であり得る。
【0055】
前記第3バインダー高分子は、接着性が非常に低い前記非湿潤性高分子を補完するためのものである。前記第3バインダー高分子は、前記非湿潤性高分子とともに混合されてコーティング液を形成可能なものであれば、特に制限されない。
【0056】
本発明の一実施形態において、前記第3バインダー高分子は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル系共重合体、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0057】
前記アクリル系共重合体は、エチルアクリレート-アクリル酸-N,N-ジメチルアクリルアミド共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-N,N-ジエチルアクリルアミド共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート共重合体、またはこれらのうちの二つ以上を含み得るが、これらに制限されない。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記第3バインダー高分子の含量は、前記コーティング液100重量%を基準にして0.1重量%~5重量%、または1重量%~2重量%で含まれ得る。前記第3バインダー高分子の含量が上述した範囲であると、後述するスラリー内の第1バインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止できるほどの十分な量の非湿潤性高分子が前記コーティング液に含まれるとともに、前記非湿潤性高分子の非常に低い接着性をより容易に補完可能である。
【0059】
本発明の一実施形態において、前記コーティング液は、非湿潤性高分子が有機溶媒に溶解された溶液であり得る。前記コーティング液が溶液であるとき、前記有機溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などであり得る。
【0060】
本発明の他の実施形態において、前記コーティング液は懸濁液であり得る。
【0061】
本発明のさらに他の実施形態において、前記コーティング液はエマルションであり得る。前記コーティング液がエマルションであるとき、前記コーティング液は分散媒を含み、界面活性剤が溶解されている連続相にガス状の非湿潤性高分子の単量体を添加して収得したものであり得る。このとき、前記分散媒は水などであり得る。
【0062】
前記界面活性剤は、アンモニウムペルフルオロカルボキシレート、アンモニウムペルフルオロカプリレート、アンモニウムペルフルオロオクタノエート、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0063】
前記界面活性剤は、前記コーティング液の含量100重量%を基準にして0.02重量%~2重量%、または0.5重量%~1重量%で含まれ得る。前記界面活性剤が上述した範囲で含まれる場合、前記コーティング液に十分な乳化安全性を付与することができる。
【0064】
前記コーティング液は、40℃~80℃で1~12時間製造され得る。
【0065】
本発明の一実施形態において、前記コーティング液のローディング量は、0.01~0.015g/m2、または0.012~0.014g/m2であり得る。前記コーティング液のローディング量が上述した範囲を満足する場合、前記非湿潤性高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止できるとともに、第1バインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透することをより容易に防止することができる。
【0066】
また、前記コーティング液のローディング量が上述した範囲を満足する場合、非湿潤性高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象をより容易に防止できるため、最終的に製造されるセパレータの通気度がさらに改善できる。
【0067】
前記コーティング液は、当業界で周知の通常の方法によって前記多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングされ得る。前記コーティング液を前記多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングする方法は、当業界で周知の通常の方法であり得る。
【0068】
本発明の一実施形態において、前記(S2)段階におけるコーティングは、前記コーティング液を気体または微細液滴の形態で前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に噴射してコーティングする段階を含み得る。具体的には、前記コーティング液が噴射器によってスプレー方式で多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングされ得る。前記コーティング液が気体または微細液滴の形態で噴射されてコーティングされれば、前記コーティング液が多孔性高分子基材の全体に比較的に薄くコーティングされるため、前記コーティング液内の非湿潤性高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象をより容易に防止することができる。
【0069】
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングされたコーティング液は、当業界で周知の通常の方法によって乾燥され得る。本発明の一実施形態において、前記乾燥は40℃~90℃または65℃~75℃で、10分~1時間または30分~50分間行われ得る。
【0070】
本発明の一実施形態において、前記乾燥は、1日以上常温で自然に乾燥する段階をさらに含み得る。
【0071】
その後、前記予備セパレータの一面及び他面に、無機物粒子、第1バインダー高分子、及び前記第1バインダー高分子に対する溶媒を含むスラリーを順次にコーティングする(S3)。
【0072】
前記無機物粒子は、電気化学的に安定さえすれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用可能な無機物粒子は、適用される電池の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0~5V)で酸化及び/または還元反応が起きないものであれば特に制限されない。
【0073】
本発明の一実施形態において、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上、または10以上の高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、またはこれらの混合物を含み得る。誘電率定数が5以上の無機物粒子の非制限的な例としては、BaTiO3、BaSO4、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、Mg(OH)2、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、SiO2、Al2O3、γ-AlOOH、Al(OH)3、SiC、TiO2などをそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用可能であるが、これらに限定されない。
【0074】
本発明の一実施形態において、前記無機物粒子のサイズは制限されないが、約0.01~約10μmまたは約0.05~約1.0μmの範囲の平均粒径を有し得る。前記無機物粒子のサイズがこのような範囲を満足する場合、分散性が維持されてセパレータの物性を調節し易く、機械的物性を改善することができる。また、過度に大きい気孔によって電池の充放電時に内部短絡が起きる確率を減少させることができる。
【0075】
このとき、前記無機物粒子の平均粒径は、D50粒径を意味し、「D50粒径」は、粒径に応じた粒子個数累積分布の50%地点での粒径を意味する。前記粒径は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定可能である。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、マイクロトラックS3500)に導入し、粒子がレーザービームを通過するとき、粒子のサイズに応じた回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径に応じた粒子個数累積分布の50%になる地点での粒子径を算出することで、D50粒径を測定し得る。
【0076】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、ポリイミド、またはこれらのうちの二つ以上を含み得るが、これらに限定されない。
【0077】
本発明の一実施形態において、前記無機物粒子と第1バインダー高分子との重量比は、20:80~99.9:0.1、50:50~99.5:0.5、または70:30~80:20であり得る。前記無機物粒子と第1バインダー高分子との重量比が上述した範囲である場合、無機物粒子同士の間の十分な接着力を確保するとともに無機物粒子同士の間に形成される空き空間を充分に確保することができる。
【0078】
前記第1バインダー高分子に対する溶媒は、第1バインダー高分子の種類に応じて第1バインダー高分子を溶解させる溶媒の役割をしてもよく、第1バインダー高分子を溶解させずに分散させる分散媒の役割をしてもよい。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子に対する溶媒は、水系溶媒であり得る。例えば、前記第1バインダー高分子に対する溶媒は、水であり得る。前記第1バインダー高分子に対する溶媒が水系溶媒であるとき、前記非湿潤性高分子は水系溶媒に対して不透過性である。
【0080】
本発明の他の実施形態において、前記第1バインダー高分子に対する溶媒は、有機溶媒であり得る。例えば、前記第1バインダー高分子に対する溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、シクロヘキサン、またはこれらのうちの二つ以上であり得る。前記第1バインダー高分子に対する溶媒が有機溶媒であるとき、前記非湿潤性高分子は有機溶媒に対して不透過性である。
【0081】
本発明の一実施形態において、前記スラリーは、無機物粒子及び第1バインダー高分子の他に、分散剤をさらに含み得る。
【0082】
本発明の一実施形態において、前記分散剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、シアノレジン、またはこれらのうちの二つ以上を含むものであり得る。
【0083】
本発明の一実施形態において、前記分散剤は、前記無機物粒子100重量部を基準にして0.1~2重量部、または0.5~1.5重量部で含まれ得る。
【0084】
本発明の一実施形態において、前記スラリーは、第1バインダー高分子を前記第1バインダー高分子に対する溶媒に溶解または分散させた後、無機物粒子を添加し、これを分散させて製造し得る。無機物粒子は、予め所定の平均粒径を有するように破砕された状態で添加されてもよく、第1バインダー高分子を溶解または分散させた溶液に無機物粒子を添加した後、無機物粒子をボールミル法などを用いて所定の平均粒径を有するように制御しながら破砕して分散させてもよい。
【0085】
本発明において、前記(S3)段階は、前記スラリーが前記予備セパレータの一面にコーティングされた後、前記スラリーが前記予備セパレータの他面に順次にコーティングされる段階である。すなわち、前記(S3)段階は、前記スラリーが前記予備セパレータの一面にコーティングされる段階、及び前記予備セパレータの他面に前記スラリーがコーティングされる段階を含む。前記スラリーが前記予備セパレータの他面にコーティングされるとき、前記予備セパレータの一面にコーティングされたスラリーは乾燥前の状態である。すなわち、前記予備セパレータの一面にコーティングされたスラリーが乾燥される前に前記予備セパレータの他面に前記スラリーがコーティングされる。
【0086】
図2は、本発明の一実施形態による二次電池用セパレータの製造方法において、無機物粒子及び第1バインダー高分子を含むスラリーを順次にコーティングする装置を例示的に示した図である。
【0087】
図2を参照すると、前記コーティング装置100は、予備セパレータ200を供給する供給ロール110と、前記予備セパレータ200の一面Aに前記スラリーをコーティングするための第1コーティング部120と、前記予備セパレータ200の他面Bに前記スラリーをコーティングするための第2コーティング部130と、前記予備セパレータ200の一面A及び他面Bのいずれか一面に接触しながら摩擦力によって前記予備セパレータ200を移動させる回転ローラー140と、両面がコーティングされた予備セパレータ200を乾燥する乾燥器150と、を含み得る。
【0088】
本発明の一実施形態において、前記(S3)段階で前記予備セパレータの一面及び他面に前記スラリーを順次にコーティングする方法は、グラビアロールコーティング法、バーコーティング法、スロットダイコーティング法、ブレードコーティング法、またはこれらのうちの二つ以上を含むものであり得る。
【0089】
本発明の一実施形態において、前記(S3)段階で相分離過程が行われ得る。前記相分離過程とは、当業界で公知の相分離現象によって気孔構造を形成する過程を意味する。例えば、前記相分離過程は、加湿相分離または浸漬相分離方式で行われ得る。
【0090】
前記相分離のうち、加湿相分離について説明すれば次のようである。
【0091】
加湿相分離とは、セパレータが前記第1バインダー高分子に対する非溶媒雰囲気に晒されて相分離が起きることを意味する。このとき、前記非溶媒は気体状態で導入され得る。前記非溶媒は、第1バインダー高分子を溶解させず、前記第1バインダー高分子に対する溶媒と部分相溶性があるものであれば特に制限されず、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、またはこれらのうちの2種以上であり得る。前記加湿相分離は、15℃~70℃または20℃~50℃、及び15%~80%の相対湿度または30%~50%の相対湿度の条件で行われ得る。
【0092】
前記相分離のうち、浸漬相分離について説明すれば次のようである。
【0093】
前記スラリーがコーティングされた予備セパレータを、前記第1バインダー高分子に対する非溶媒を含む凝固液に所定時間浸漬する。この過程で第1バインダー高分子が固化しながら、予備セパレータにコーティングされたスラリーが多孔化する。その後、水洗することで凝固液を除去し、乾燥する。前記浸漬相分離において、前記非溶媒は良好な多孔構造を形成し、生産性を向上させるという点から、凝固液100重量%に対して60重量%以上で含まれ得る。
【0094】
その後、前記(S3)の結果物を乾燥する段階を行う(S4)。前記(S3)段階では、前記予備セパレータの一面にコーティングされたスラリーが乾燥されていない状態で前記予備セパレータの他面に前記スラリーがコーティングされる。前記予備セパレータの他面に前記スラリーがコーティングされた後、まだ乾燥されていない前記予備セパレータの一面にコーティングされたスラリー及び前記他面にコーティングされたスラリーが前記(S4)段階で一緒に乾燥される。
【0095】
本発明の一実施形態において、前記乾燥は、通常のセパレータ製造時の乾燥方法で行われ得る。例えば、前記乾燥は、30℃~100℃、または40℃~70℃で行われ得る。また、前記乾燥は、空気によって3~45秒または5~40秒間行われ得る。乾燥時間が上記の範囲内に行われると、生産性を阻害しないとともに、残留溶媒または分散媒を除去する効果を果たすことができる。
【0096】
本発明による二次電池用セパレータの製造方法を用いれば、第1バインダー高分子に対する溶媒に不透過性を有する非湿潤性高分子を含むコーティング液を多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングすることで、無機物粒子及び第1バインダー高分子を含むスラリーを前記コーティング液がコーティングされた予備セパレータの一面及び他面に順次にコーティングする方式を使用しても、多孔性高分子基材の気孔内に浸透する第1バインダー高分子の量を最小化できるため、前記スラリーのコーティング工程性及びセパレータの生産性に優れるとともに、最終的に製造されるセパレータの一面と他面との物性差を最小化することができる。
【0097】
本発明の一実施形態による二次電池用セパレータは、
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の一面に位置し、多数の無機物粒子及び第1バインダー高分子を含む第1コーティング層と、
前記多孔性高分子基材の他面に位置し、多数の無機物粒子及び第1バインダー高分子を含む第2コーティング層と、
前記多孔性高分子基材と前記第1コーティング層との間及び前記多孔性高分子基材と前記第2コーティング層との間のうちの少なくとも一方に位置し、第2バインダー高分子を含む第3コーティング層と、を含み、
前記第2バインダー高分子は、非湿潤性(non-wetting)高分子を含むことを特徴とする。
【0098】
図3は、本発明の一実施形態による二次電池用セパレータを概略的に示した図である。
【0099】
図3を参照すると、二次電池用セパレータ1は、多孔性高分子基材10を備える。
【0100】
前記多孔性高分子基材10については上述した内容を参照できる。
【0101】
本発明の一実施形態において、前記多孔性高分子基材10の厚さは5μm~50μmであり得る。多孔性高分子基材の厚さが上述した範囲に特に限定されることはないが、上述した範囲であると、電池使用中にセパレータが損傷され易い問題を防止できるとともに、エネルギー密度を確保することができる。一方、前記多孔性高分子基材に存在する気孔サイズ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.01μm~50μm及び10%~95%であり得る。
【0102】
本発明において、前記多孔性高分子基材10の気孔度及び平均気孔サイズは、走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、水銀ポロシメーター(mercury porosimeter)、キャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometer)、または細孔分布測定装置(porosimetry analyzer;Bell Japan、Belsorp-II mini)を使用して窒素ガス吸着フローによってBET6点法で測定し得る。
【0103】
図3を参照すると、二次電池用セパレータ1は、前記多孔性高分子基材10の一面に多数の無機物粒子及び第1バインダー高分子を含む第1コーティング層20を備える。
【0104】
また、前記二次電池用セパレータ1は、前記多孔性高分子基材10の他面に多数の無機物粒子及び第1バインダー高分子を含む第2コーティング層20’を備える。
【0105】
前記第1コーティング層20及び第2コーティング層20’は、多数の無機物粒子(図示せず)、及び前記無機物粒子同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着(すなわち、第1バインダー高分子が無機物粒子同士の間を連結及び固定)させる第1バインダー高分子(図示せず)を含み、前記第1バインダー高分子によって無機物粒子と多孔性高分子基材10及び/または後述する第3コーティング層とが結着した状態を維持できる。
【0106】
前記第1コーティング層20及び第2コーティング層20’は、前記無機物粒子によって前記多孔性高分子基材10が高温で甚だしい熱収縮挙動を見せることを防止してセパレータの安全性を向上させることができる。
【0107】
本発明による二次電池用セパレータ1は、多孔性高分子基材の一面に第1コーティング層20及び他面に第2コーティング層20’を備えることで、セパレータの一面のみに無機物粒子及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層を形成する場合よりもセパレータの安全性を一層向上させることができる。
【0108】
前記無機物粒子及び第1バインダー高分子については上述した内容を参照できる。
【0109】
本発明の一実施形態において、前記第1コーティング層20及び/または第2コーティング層20’は、前記無機物粒子が充填されて互いに接触した状態で前記第1バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機物粒子同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が形成され、前記無機物粒子同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって気孔を形成する構造を備え得る。
【0110】
本発明の一実施形態において、前記第1コーティング層20及び/または第2コーティング層20’は、1μm~50μm、2μm~30μm、または2μm~20μmの範囲の厚さを有し得る。
【0111】
本発明の一実施形態において、前記第1コーティング層20及び/または第2コーティング層20’の平均気孔サイズは、0.001~10μmまたは0.001~1μmの範囲であり得る。
【0112】
また、第1コーティング層20及び/または第2コーティング層20’の気孔度は、5~95%、10~95%、20~90%、または30~80%の範囲であり得る。前記気孔度は、前記第1コーティング層20及び/または第2コーティング層20’の厚さ、横長及び縦長から計算した体積から、前記第1コーティング層20及び/または第2コーティング層20’の各構成成分の重さと密度から換算した体積を引き算(Subtraction)した値に該当する。
【0113】
本発明において、前記第1コーティング層20及び/または第2コーティング層20’の気孔度及び平均気孔サイズは、走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、水銀ポロシメーター、キャピラリーフローポロメトリー、または細孔分布測定装置(Bell Japan、Belsorp-II mini)を使用して窒素ガス吸着フローによってBET6点法で測定し得る。
【0114】
図3を参照すると、二次電池用セパレータ1は、前記多孔性高分子基材10と前記第1コーティング層20との間に第3コーティング層30を備え得る。
【0115】
本発明の他の実施形態において、二次電池用セパレータ1は、前記多孔性高分子基材10と前記第2コーティング層20’との間に第3コーティング層30を備え得る。
【0116】
本発明の他の実施形態において、二次電池用セパレータ1は、前記多孔性高分子基材10と前記第1コーティング層20との間及び前記多孔性高分子基材10と前記第2コーティング層20’との間に第3コーティング層30を備え得る。前記第3コーティング層30が多孔性高分子基材10の両面、すなわち多孔性高分子基材10と前記第1コーティング層20との間及び多孔性高分子基材10と前記第2コーティング層20’との間に全て位置する場合、第1コーティング層20及び第2コーティング層20’の第1バインダー高分子が多孔性高分子基材10の気孔内に浸透する現象を一層効果的に防止することができる。
【0117】
図3には、多孔性高分子基材10と第1コーティング層20との間に第3コーティング層30が位置することが図示されているが、前記第3コーティング層は、先に形成される、多数の無機物粒子及び第1バインダー高分子を含むコーティング層と多孔性高分子基材との間に位置するのであれば、前記多孔性高分子基材10と第1コーティング層20との間、及び/または、前記多孔性高分子基材10と第2コーティング層20’との間に位置してもよい。
【0118】
前記第3コーティング層30は、非湿潤性(non-wetting)高分子を含む。前記非湿潤性高分子については上述した内容を参照できる。前記第3コーティング層30は、非湿潤性高分子を含むことで、第1コーティング層20及び第2コーティング層20’の少なくともいずれか一つのコーティング層の第1バインダー高分子が多孔性高分子基材10の気孔内に浸透する現象を防止することができる。
【0119】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子は第3バインダー高分子をさらに含み得、前記第3バインダー高分子は、接着性バインダー高分子であり得る。前記第3バインダー高分子は、前記第3コーティング層30が第1コーティング層20及び第2コーティング層20’のうちの少なくともいずれか一つ、及び/または、多孔性高分子基材10とそれぞれ結着した状態を維持させるためのものである。前記非湿潤性高分子はかなり低い接着力を有するが、前記第3バインダー高分子によって第3コーティング層30が第1コーティング層20及び第2コーティング層20’のうちの少なくともいずれか一つ、及び/または、多孔性高分子基材10とそれぞれ結着した状態を維持し易くなる。
【0120】
前記第3バインダー高分子の種類及び含量については上述した内容を参照する。
【0121】
本発明の一実施形態において、前記第3コーティング層30の含量は、前記第1コーティング層または第2コーティング層の100重量部に対して0.066重量部~0.166重量部、または0.1重量部~0.166重量部であり得る。前記第3コーティング層30の含量が上述した範囲を満足する場合、第3コーティング層30内の非湿潤性高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止できるとともに、非湿潤性高分子によって第1バインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透することをより容易に防止することができる。
【0122】
また、前記第3コーティング層30の含量が上述した範囲を満足する場合、第3コーティング層30内の非湿潤性高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止することがより容易になり、最終的にセパレータの通気度をさらに改善することができる。
【0123】
本発明の一実施形態において、前記第3コーティング層30の厚さは0.01μm~0.1μm、または0.05~0.1μmであり得る。前記第3コーティング層30の厚さが上述した範囲であると、前記非湿潤性高分子が多孔性高分子基材10の気孔内に浸透する現象を防止できるとともに、第1コーティング層20及び/または第2コーティング層20’の第1バインダー高分子が多孔性高分子基材10の気孔内に浸透する現象もより容易に防止することができる。
【0124】
本発明の一実施形態による二次電池用セパレータは、多孔性高分子基材の少なくとも一面に非湿潤性高分子を含む第3コーティング層30が位置し、第1コーティング層及び/または第2コーティング層の第1バインダー高分子が多孔性高分子基材の気孔内に浸透する現象を防止することができる。これにより、セパレータの一面及び他面のすべてに前記第1バインダー高分子が十分な量で存在することができ、セパレータの一面と他面との物性差を最小化することができる。
【0125】
本発明の一実施形態による二次電池用セパレータは、前記第1バインダー高分子が十分な量でセパレータの一面及び他面のすべてに存在し、前記セパレータの一面と電極との接着力と他面と電極との接着力との差を最小化できる。
【0126】
また、前記第1バインダー高分子が十分な量でセパレータの一面及び他面のすべてに存在し、セパレータの一面及び他面で無機物粒子が多孔性高分子基材から脱離することを防止することができる。セパレータの両面ともに電極接着力を確保することもできる。
【0127】
前記二次電池用セパレータを正極と負極との間に介在して二次電池を製造し得る。
【0128】
本発明の二次電池は、望ましくはリチウム二次電池であり得る。前記リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含み得る。
【0129】
本発明の二次電池用セパレータとともに適用される電極としては、特に制限されず、当業界で周知の通常の方法で電極活物質を電流集電体に結着した形態で製造し得る。
【0130】
前記二次電池がリチウム二次電池である場合、前記電極活物質のうちの正極活物質の非制限的な例としては、従来のリチウム二次電池の正極に使用される通常の正極活物質が使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を使用することが望ましい。
【0131】
前記二次電池がリチウム二次電池である場合、負極活物質の非制限的な例としては、従来のリチウム二次電池の負極に使用される通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素、グラファイト、またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。
【0132】
正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0133】
前記二次電池がリチウム二次電池である場合、本発明の一実施形態によれば、リチウム二次電池で使用される電解液は、A+B-のような構造の塩であり、A+はLi+、Na+、K+のようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、B-はPF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩を、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトン、またはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものであるが、これらに限定されることはない。
【0134】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び求められる物性に応じて、電池製造工程のうち適切な段階において行えばよい。すなわち、電池組み立ての前または電池組み立ての最終段階などにおいて注入すればよい。
【0135】
本発明の具体的な一実施形態によれば、前記二次電池用セパレータを電池に適用する工程としては、一般的な工程である巻取(winding)の他にも、セパレータと電極との積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0136】
本発明の具体的な一実施形態によれば、前記二次電池用セパレータは、二次電池の正極と負極との間に介在され得、複数のセルまたは電極を組み合わせて電極組立体を構成するときは隣接するセルまたは電極同士の間に介在され得る。前記電極組立体は、単なるスタック型、ゼリー・ロール型、スタック-フォールディング型、ラミネーション-スタック型などの多様な構造を有し得る。
【0137】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0138】
実施例1
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)水分散体(デュポン社製、Teflon(登録商標))97重量部、界面活性剤(エタノール5重量%、水95重量%)1重量部、及び第3バインダー高分子としてアクリル系共重合体(ゼオン社製、PX-LP17)2重量部を混合してコーティング液を製造した。
【0139】
前記コーティング液0.014g/m2をポリエチレン多孔性基材(SEMOORP社、厚さ:9μm)の両面にスプレー噴射でコーティングして予備セパレータを製造した後、70℃で30分間乾燥して水分を除去した。その後、前記予備セパレータを常温で一日間自然乾燥した。
【0140】
無機物粒子としてAl2O3(住友社製、平均粒径:500nm)78重量部、第1バインダー高分子としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)21重量部(ソルベイ社製)、分散剤としてシアノレジン(信越社製)1重量部をアセトン100重量部に混合してスラリーを製造した後、これを前記予備セパレータの一面にバーコーターを用いてコーティングした(ローディング量:7.5g/m2)。
【0141】
その後、前記一面にコーティングされたスラリーが乾燥する前に、前記予備セパレータの他面に前記スラリーをコーティングした(ローディング量:7.5g/m2)後、これを相対湿度50%の条件で50℃で5分間乾燥して二次電池用セパレータを製造した。
【0142】
実施例2
実施例1で製造したコーティング液1.48g/m2をポリエチレン多孔性基材の一面(SEMOORP社、厚さ:9μm)にバーコーターを用いてコーティングし、無機物粒子としてAl2O3(住友社製、平均粒径:500nm)78重量部、第1バインダー高分子としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)21重量部(ソルベイ社製)、分散剤としてシアノレジン(信越社製)1重量部をアセトン100重量部に混合してスラリーを製造したことを除き、実施例1と同一にセパレータを製造した。
【0143】
比較例1
無機物粒子としてAl2O3(住友社製、平均粒径:500nm)78重量部、第1バインダー高分子としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)21重量部(ソルベイ社製)、分散剤としてシアノレジン(信越社製)1重量部をアセトン100重量部に混合してスラリーを製造した後、これをポリエチレン多孔性基材(SEMOORP社、厚さ:9μm)の一面にバーコーターを用いてコーティングした(ローディング量:7.5g/m2)。
【0144】
その後、前記一面にコーティングされたスラリーが乾燥する前に、前記予備セパレータの他面に前記スラリーをコーティングした(ローディング量:7.5g/m2)後、これを相対湿度50%の条件で50℃で5分間乾燥して二次電池用セパレータを製造した。
【0145】
評価例:セパレータ両面の物性測定
実施例1、2、及び比較例1でそれぞれ製造したセパレータ両面の厚さ、通気度、剥離強度、及び電極との接着力を測定して下記の表1に示した。
【0146】
(1)セパレータ両面の通気度の測定
前記セパレータ両面の通気度は、ASTM D726-94方法によって測定した。このとき、前記通気度の値は、100mlの空気が12.2 in H2Oの圧力下で、実施例1、2及び比較例1でそれぞれ製造したセパレータ1in2の断面を通過するのにかかる時間(秒)、すなわち通気時間で示した。
【0147】
(2)セパレータ両面の剥離強度の測定
前記セパレータ両面の剥離強度は、実施例1、2及び比較例1でそれぞれ製造したセパレータを両面テープを用いてガラス板上に固定し、露出したセパレータの一面の第1コーティング層及び他面の第2コーティング層のそれぞれにテープ(3M透明テープ)を堅固に貼り付けた後、引張強度測定装置を用いてテープを引き離すのに必要な力(gf/15mm)で測定した。
【0148】
(3)セパレータ両面の電極接着力の測定
前記セパレータ両面の電極との接着力は、実施例1、2及び比較例1でそれぞれ製造したセパレータの一面及び他面をそれぞれ電極と対向させて配置し、温度60℃、圧力6.5mPaのプレスに通過させた後、電極とセパレータとを剥離するのに必要な剥離力で測定した。
【0149】
前記電極は、下記のように製造した。
【0150】
天然黒鉛、SBR、CMC及び導電材(重量比で90:2.5:2.5:5)を水に投入して負極スラリーを収得し、前記負極スラリーを銅薄膜(厚さ20μm)上に5mg/cm2のローディング量で塗布した後、乾燥した。これを90℃、8.5MPa条件で圧延して60mm(長さ)×25mm(幅)に切断して負極を製造した。
【0151】
【0152】
表1から、実施例1及び実施例2で製造したセパレータの一面と他面との間の、剥離強度及び電極接着力の差が比較例1に比べて遥かに小さいことが確認できる。
【0153】
特に、実施例1で製造したセパレータの一面と他面との間の剥離強度及び電極接着力の差が、実施例2に比べてもかなり小さいことが確認できる。また、通気度も最も優れることが確認できる。
【0154】
一方、比較例1で製造したセパレータは、セパレータの一面と他面との間の剥離強度及び電極接着力の差が非常に大きいことが確認できる。