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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】放射線防護用カバー
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/10 20060101AFI20240621BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61B6/10 502
G21F3/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023075354
(22)【出願日】2023-04-30
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】509013703
【氏名又は名称】公立大学法人福島県立医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000154761
【氏名又は名称】株式会社保科製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】福田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】保田 明宏
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0220206(US,A1)
【文献】特開2013-121451(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0333220(US,A1)
【文献】特開2019-184443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
G21F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状遮蔽材の半面に透視画像表示用の目印となる切欠部が形成され、当該シート状遮蔽材を折り畳むことにより厚みが相違する面を有する目印付シート状遮蔽材を具えることを特徴とする放射線防護用カバー。
【請求項2】
寝台上に載置される腕固定台に取付可能となる放射線防護用カバーにおいて、シート状遮蔽材の半面に透視画像表示用の目印となる切欠部が形成され、当該シート状遮蔽材を折り畳むことにより厚みが相違する面を有する目印付シート状遮蔽材を具えることを特徴とする放射線防護用カバー。
【請求項3】
寝台上に載置される腕固定台に取付可能となる放射線防護用カバーにおいて、シート状遮蔽材の半面に透視画像表示用の格子状模様を呈する切欠部が形成され、当該切欠部が形成される半面に半身シート状遮蔽材を載置接着し、当該半身シート状遮蔽材が接着された当該シート状遮蔽材を折り畳むことにより厚みが相違する面を有する目印付シート状遮蔽材を具えることを特徴とする放射線防護用カバー。
【請求項4】
寝台上に載置される腕固定台に取付可能となる放射線防護用カバーにおいて、前記目印付シート状遮蔽材がシート状表面部材に密封内蔵され、当該シート状表面部材を袋体とすることにより腕固定台の平板部に対して着脱自在に取付可能となることを特徴とする請求項2又は請求項3の何れかに記載した放射線防護用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線透視・撮影を用いた手技における放射線被ばくを防止するための放射線防護用カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血管撮影や血管内治療におけるカテーテル使用の便宜等のため寝台に対して並行に回動する腕置台等が使用されているが、当該腕置台には放射線防護機能が備わっておらず、患者のみならず、寝台に接近して治療作業を行う施行医をはじめとする作業者に対する放射線防護効果はほとんど見られなかった。
【0003】
一方、カテーテル検査においては、臓器を様々な方向から撮影することが必要となり、血管撮影装置に対向配置されるX線管とX線検出器が患者の身体近くを各方向にわたり稼働するため、放射線防護を考慮して、例えば仰臥位の患者身体の高さを越えて立設する腕固定台を配置した場合、かかる腕固定台がX線管とX線検出器間において干渉し、撮影の障害となるおそれが懸念された。
【0004】
また、血管撮影装置には、通常、患者のX線照射量を自動的に調整し、最適な画像を提供するための自動露出機構が搭載されており、これは受像機に入るX線量を一定に保つことで達成される。
【0005】
したがって、X線照射域において、立設する腕固定台が干渉した場合、血管撮影装置の自動露出機構を通じてX線照射量は増加することになり、患者および作業者の被ばく増加や、装置の劣化を招来するおそれがあった。
【0006】
さて、患者が横臥する寝台に載置されるL字形状アクリル板の立設板に鉛シートを内包するカバー部材を被覆させるX線防護具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002‐253547号公報
【0008】
しかしながら、全体が画一の面体を呈する一般の鉛シートからなる鉛遮蔽材を介しては、血管撮影などにおいて腕固定台にX線が照射された場合であっても、照射状況が透視画像に明確に映し出されることは困難であった。
【0009】
したがって、施行医をはじめとする作業者は、上記自動露出機構を通じて腕固定台に出力が増加したX線が照射されていることを適時に認識することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、透視画像において明確に表示される目印を具える目印付放射線遮蔽シートを採用することにより、施行医をはじめとする作業者に対しX線照射状況を適切に伝達することが可能となる放射線防護用カバーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、請求項1に記載のように、シート状遮蔽材の半面に透視画像表示用の目印となる切欠部が形成され、当該シート状遮蔽材を折り畳むことにより厚みが相違する面を有する目印付シート状遮蔽材を具えることを特徴とする放射線防護用カバーに係るものである。
【0012】
本発明は、請求項2に記載のように、寝台上に載置される腕固定台に取付可能となる放射線防護用カバーにおいて、シート状遮蔽材の半面に透視画像表示用の目印となる切欠部が形成され、当該シート状遮蔽材を折り畳むことにより厚みが相違する面を有する目印付シート状遮蔽材を具えることを特徴とする放射線防護用カバーに係るものである。
【0013】
本発明は、請求項3に記載のように、寝台上に載置される腕固定台に取付可能となる放射線防護用カバーにおいて、シート状遮蔽材の半面に透視画像表示用の格子状模様を呈する切欠部が形成され、当該切欠部が形成される半面に半身シート状遮蔽材を載置接着し、当該半身シート状遮蔽材が接着された当該シート状遮蔽材を折り畳むことにより厚みが相違する面を有する目印付シート状遮蔽材を具えることを特徴とする放射線防護用カバーに係るものである。
【0014】
本発明は、請求項4に記載のように、寝台上に載置される腕固定台に取付可能となる放射線防護用カバーにおいて、前記目印付シート状遮蔽材がシート状表面部材に密封内蔵され、当該シート状表面部材を袋体とすることにより腕固定台の平板部に対して着脱自在に取付可能となることを特徴とする請求項2又は請求項3の何れかに記載した放射線防護用カバーに係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、請求項1乃至請求項4に記載のように、例えば、寝台に載置される腕固定台に取付可能となる放射線防護カバーのシート状遮蔽材として、厚みが相違する面を有する目印付シート状遮蔽材を採用することにより、当該厚みの変化に基づき、血管撮影装置の透視画像に明確に表示されうる目印として作用し、施行医をはじめとする作業者に対しX線照射状況を適切に伝達することが可能となる放射線防護用カバーを提供することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の放射線防護用カバーにおける目印付シート状遮蔽材の一実施例を示す平面図である。
図2】本発明の放射線防護用カバーの一実施例を示す側面断面図である。
図3】本発明の放射線防護用カバーの一実施例を示す平面図である。
図4】本発明の放射線防護用カバーにおける目印付シート状遮蔽材と半身シート状遮蔽材の製造工程を示す説明図である。
図5】本発明の放射線防護用カバーにおけるシート状表面部材の製造工程を示す説明図である。
図6】本発明の放射線防護用カバーを取付ける腕固定台を寝台に設置した状態を示す説明図である。
図7】本発明の放射線防護用カバーを腕固定台の立設板部に取付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る放射線防護用カバーに関して詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る放射線防護用カバーXの基本的構成は、全体形状が平面視において矩形状を呈するシート状の遮蔽材の半面に透視画像表示用の目印となる切欠部が形成される目印付シート状遮蔽材と、当該目印付シート状遮蔽材を密封内蔵するシート状表面部材とから構成されるものである。
【0019】
なお、本願における遮蔽材は、放射線防護機能を達成しうる遮蔽材を広く含み、例えば、無鉛素材や含鉛素材を適宜使用するものである。
【0020】
以下、本発明に係る放射線防護用カバーXにおける一つの実施例に関する製造工程に即して各構成を説明する。
【0021】
最初の工程として、矩形状を呈するシート状遮蔽材の半面に正方形状の切欠部Cを縦横に整列配置した格子状切欠部が形成される目印付シート状遮蔽材Sを製造する。
【0022】
例えば、図示した実施例における目印付シート状遮蔽材Sは、横幅490mm、縦長470mmのシート状遮蔽材の半面に、一辺15mmの正方形状切欠部Cを横方向に19個、縦方向に9個整列的に配し、各切欠部縦横間の間隔は10mm、上辺との間隔は10mm、側辺との間隔は12mmとしている。
【0023】
第二の工程として、長方形状の半身シート状遮蔽材HSを前記切欠部上面に載置し、目印付シート状遮蔽材Sに対し、接着剤などを介して接着する(図4参照)。
【0024】
例えば、図示した実施例における半身シート状遮蔽材HSは、横幅480mm、縦長230mmとし、切欠部全面を被覆することが可能となる。
【0025】
第三の工程として、半身シート状遮蔽材HSを接着した目印付シート状遮蔽材Sを、2枚の長方形状のシート状表面部材間Fに挟むように配置し、重ね合わされた2枚のシート状表面部材Fの四辺の周縁部をウェルダー加工等により溶着する。
【0026】
例えば、図示した実施例におけるシート状表面部材Fは、横幅520mm、縦長490mmとし、2枚のシート状表面部材間に目印付シート状遮蔽材を内包することが可能となる。
【0027】
第四の工程として、周縁部が溶着されたシート状表面部材Fをその中心線、すなわち、中央横幅辺を折り曲げ辺とし、内包される目印付シート状遮蔽材の一方半面に形成された切欠部が他方の半面に重なり合うように折り畳む(図5参照)。
【0028】
第五の工程として、折り畳んだシート状表面部材Fの両側辺縁部をウェルダー加工等により溶着する。
【0029】
上記の製造工程を経ることにより、半身シート状遮蔽材HSが接着された目印付シート状遮蔽材Sがシート状表面部材Fに密封内蔵されると共に、シート状表面部材Fは一方長辺部が開口部となり袋体を呈することになる。
【0030】
袋体とすることにより、目印付シート状遮蔽材を内蔵するシート状表面部材が腕固定台の平板部上部に対し開口部から被覆可能となり、必要に応じて着脱自在に取付可能となる。
【0031】
例えば、本発明に使用するシート状遮蔽材及び半身シート状遮蔽材を含鉛遮蔽材とし、その鉛当量を、0.25mmPbと想定すると、上述した製造工程において示す実施例においては、半身シート状遮蔽材を切欠部に接着したシート状鉛遮蔽材を折り畳むことにより、目印付シート状遮蔽材としての鉛当量は,切欠部において0.5mmPb、切欠部以外において0.75mmPbとなる。
【0032】
鉛遮蔽材として上記鉛当量にて充分の放射線防護効果を期待できるが、本発明に使用される目印付シート状遮蔽材の鉛当量は上記量に限定されるものではない。
【0033】
なお、上述した製造過程及び切欠部の態様は、本発明に係る放射線防護用カバーの一つの実施例に関するものであり、放射線防護機能を維持し、目印としての機能を果たすための厚みの変化が形成される構成であれば製造方法は特定されるものではない。
【0034】
上述のように、本発明に使用される目印付シート状遮蔽材は、切欠部を半面に形成したシート状遮蔽材を折り畳むことにより、切欠部が形成される一方の半面と、切欠部が形成されていない他方の半面とを重ね合わせ、シート状遮蔽材を同一の厚みからなる画一面ではなく、厚みが相違する目印付シート状遮蔽材とすることが特徴的構成となる。
【0035】
すなわち、遮蔽材の厚さに変化をつけることで、透視画像にはっきりと遮蔽材を写すことができ,医師は本発明に係る放射線防護用カバーが使用される腕固定台を移動させたり,放射線防護用カバーを取り外すことで過剰なX線照射を防止することが可能となる。
【0036】
本発明に係る放射線防護用カバーが使用される腕固定台Lは、例えば、矩形状基板部と当該基板部の一辺から立設される矩形状平板部からなる全体形状L字形を呈する構成が典型的であり、当該基板部を寝台上に敷設されたマットと寝台の間に挿入配置して使用される(図6参照)。
【0037】
上記のように配置された腕固定台Lは、基板部の上面に仰臥位の患者の身体が載せられることにより安定的に設置され、立設される平板部が患者の腕の外側に配置されることになり、施行医をはじめとする作業者の放射線を防護すると共に、患者の寝台からの落下を防止することが可能となる。
【0038】
そして、本発明に係る放射線防護用カバーXは、上記の腕固定台Lの平板部に取付けて使用されるものである(図7参照)。
【0039】
取付の具体的態様は、例えば、袋体を呈する放射線防護用カバーが平板部全体を被覆する態様のほか、面ファスナーを介して貼り付ける態様や、ひっかける態様などが想定される。
【0040】
上述のとおり、本発明に係る放射線防護用カバーは腕固定台の平板部に対し着脱自在となるため、例えば、血管撮影において、放射線防護用カバーが被覆された平板部に増加したX線が照射されていることが透視画像によって認知された場合、放射線防護用カバーを取り外し、通常のX線照射量に補正することが可能となる。
【0041】
シート状表面部材は、例えば、水洗いなどの洗浄に適する表面加工等を施した各種の熱可塑性樹脂など適宜選択するものであり、縁部は、ウェルダー加工のほか、各種の熱融着、縫着や接着剤などを適宜選択して目印付シート状遮蔽材部を密封加工するものとする。
【符号の説明】
【0042】
X 放射線防護用カバー
S 目印付シート状遮蔽材
HS 半身シート状遮蔽材
F シート状表面部材
C 切欠部
L 腕固定台
【要約】
【課題】X線透視・撮影を用いた手技における放射線被ばくを防止するため、透視画像において明確に表示される目印を具える目印付放射線遮蔽シートを採用することにより、施行医をはじめとする作業者に対しX線照射状況を適切に伝達することが可能となる放射線防護用カバーを提供するものである。
【解決手段】寝台上に載置される腕固定台に取付可能となる放射線防護用カバーにおいて、厚みが相違する面を有する目印付シート状遮蔽材がシート状表面部材に密封内蔵され、当該シート状表面部材を袋体とすることにより腕固定台に対して着脱自在に取付可能となることを特徴とする放射線防護用カバー。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7