(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】中継伝送における送信電力制御を実行する通信装置、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/38 20090101AFI20240621BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240621BHJP
【FI】
H04W52/38
H04W16/26
(21)【出願番号】P 2023097212
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2020061035の分割
【原出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】津町 直人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩輔
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-109914(JP,A)
【文献】国際公開第2020/032580(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置として動作する第1の機能と、基地局装置として動作する第2の機能とを用いて他の装置と接続して通信可能な通信装置であって、
前記第1の機能によって接続されている上流装置から受信した下りリンクの
第1の信号
に関する第1の品質を取得し、前記第2の機能によって接続されている下流装置から受信した上りリンクの
第2の信号
に関する第2の品質を取得する取得手段と、
前記第1の品質と前記第2の品質との第1の差が所定値を超えるか否かを判定する判定手段と、
前記第1の差が前記所定値を超える場合に、前記上流装置に対して下りリンクの信号の送信電力を制御させるための送信電力制御コマンドを送信する送信手段と、
を有
し、
前記判定手段は、さらに、前記上流装置において下りリンクの信号の送信電力が制御された場合の前記第1の品質と前記第2の品質との第2の差が前記所定値を超えるか否かを判定し、
前記送信手段は、前記第2の差が前記所定値を超える場合に、前記下流装置に対して上りリンクの信号の送信電力を制御させるための送信電力制御コマンドを送信する、ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記送信手段は、前記送信電力制御コマンドに、電力を増加させるべき量または電力を低減させるべき量の指示を含めて送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記電力を増加させるべき量または電力を低減させるべき量の指示は、電力の増加量または電力の低減量の複数の段階の中から選択された1つの量を示す、ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記上流装置に対して下りリンクの信号の送信電力を制御させるための送信電力制御コマンドは、物理上りリンク制御チャネルに含められる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
端末装置として動作する第1の機能と、基地局装置として動作する第2の機能とを用いて他の装置と接続して通信可能な通信装置によって実行される制御方法であって、
前記第1の機能によって接続されている上流装置から受信した下りリンクの第1の信号に関する第1の品質を取得し、前記第2の機能によって接続されている下流装置から受信した上りリンクの第2の信号に関する第2の品質を取得する取得工程と、
前記第1の品質と前記第2の品質との第1の差が所定値を超えるか否かを判定する判定工程と、
前記第1の差が前記所定値を超える場合に、前記上流装置に対して下りリンクの信号の送信電力を制御させるための送信電力制御コマンドを送信する送信工程と、
を含み、
前記判定工程において、さらに、前記上流装置において下りリンクの信号の送信電力が制御された場合の前記第1の品質と前記第2の品質との第2の差が前記所定値を超えるか否かを判定し、
前記送信工程において、前記第2の差が前記所定値を超える場合に、前記下流装置に対して上りリンクの信号の送信電力を制御させるための送信電力制御コマンドを送信する、ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
端末装置として動作する第1の機能と、基地局装置として動作する第2の機能とを用いて他の装置と接続して通信可能な通信装置に備えられたコンピュータに、
前記第1の機能によって接続されている上流装置から受信した下りリンクの第1の信号に関する第1の品質を取得し、前記第2の機能によって接続されている下流装置から受信した上りリンクの第2の信号に関する第2の品質を取得させ、
前記第1の品質と前記第2の品質との第1の差が所定値を超えるか否かを判定させ、
前記第1の差が前記所定値を超える場合に、前記上流装置に対して下りリンクの信号の送信電力を制御させるための送信電力制御コマンドを送信させ、
前記上流装置において下りリンクの信号の送信電力が制御された場合の前記第1の品質と前記第2の品質との第2の差が前記所定値を超えるか否かを判定させ、
前記第2の差が前記所定値を超える場合に、前記下流装置に対して上りリンクの信号の送信電力を制御させるための送信電力制御コマンドを送信させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継伝送システムにおける通信品質の改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)において、第5世代(5G)の無線通信ネットワークにおいて、端末装置がネットワークへアクセスする手法をバックホールリンクに応用して使用可能とする技術が検討されている(非特許文献1参照)。この技術は、Integrated Access and Backhaul(IAB)と呼ばれる。IABノードと呼ばれる中継装置が、例えば5Gの基地局装置(IABドナー)との間で無線リンクを用いて接続を確立する。このとき、IABノードは、IABドナーと無線リンクを確立して直接接続してもよいし、IABドナーと直接又は間接的に接続が確立されている他のIABノードと無線リンクを確立して、間接的にIABドナーと接続を確立してもよい。このとき、IABノードは、基地局装置に接続する端末装置として機能することにより、このようなIABドナー側の他装置(上流装置)との間の無線接続を確立する。また、IABノードは、IABドナーとの接続が確立された後に、そのIABドナーと接続しようとする他のIABノードとの接続を確立することができる。この場合、IABノードは、基地局装置と同様に動作して、端末装置として動作する他のIABノード(下流装置)との無線接続を確立する。このように、IABノードは、端末機能(MT、Mobile Termination)と、基地局装置と同様の動作を行う機能(DU、Distributed Unit)とを有し、これらを用いて、上流装置と下流装置との間の通信を中継することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP、TR38.874、V16.0.0、2018年12月
【文献】3GPP、RP-193251、2019年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3GPP Release 16では、IABノードによる中継伝送が時分割で行われることになっている。例えば、IABノードは、あるタイムスロットにおいて、上流装置から信号を受信し、次のタイムスロットでその信号を下流装置へ転送する。同様に、IABノードは、例えば、あるタイムスロットにおいて、下流装置から信号を受信し、次のタイムスロットでその信号を上流装置へ転送する。これに対して、3GPP Release 17では、周波数分割多重や空間分割多重などによって信号を多重化させることが想定されている(非特許文献2参照)。
【0005】
このような多重化環境では、IABノードは、MTとDUとの両方で信号を同時に受信することがありうる。また、IABノードは、例えば、MTのアンテナとDUのアンテナとが十分に距離を離して配置できない場合やMTとDUとでアンテナを共有する場合に、MT宛の信号とDU宛の信号とが混ざった信号を受信しうる。また、IABノードにおいて、MTとDUがRF(Radio Frequency)回路やベースバンド回路を共有することや、または、MT用の回路とDU用の回路とが別個に用意されていても、それらの回路が相互に影響することが想定されうる。このとき、MT宛の信号とDU宛の信号の電力差が大きくない場合には、例えば周波数分割多重が用いられている場合には帯域通過フィルタを用いることによって、また、例えば空間分割多重が用いられている場合には適切なアンテナウェイトが設定されることにより、これらの信号を適切に分離することができる。一方で、これらの信号の電力差が大きい場合、フィルタやアンテナウェイトでの分離を試みても、通信品質が劣化してしまいうる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下りリンクの信号と上りリンクの信号が同時に受信されうる中継伝送システムにおける通信品質の改善技術を提供する。
【0007】
本発明の一態様による通信装置は、端末装置として動作する第1の機能と、基地局装置として動作する第2の機能とを用いて他の装置と接続して通信可能な通信装置であって、前記第1の機能によって接続されている上流装置から受信した下りリンクの第1の信号に関する第1の品質を取得し、前記第2の機能によって接続されている下流装置から受信した上りリンクの第2の信号に関する第2の品質を取得する取得手段と、前記第1の品質と前記第2の品質との第1の差が所定値を超えるか否かを判定する判定手段と、前記第1の差が前記所定値を超える場合に、前記上流装置に対して下りリンクの信号の送信電力を制御させるための送信電力制御コマンドを送信する送信手段と、を有し、前記判定手段は、さらに、前記上流装置において下りリンクの信号の送信電力が制御された場合の前記第1の品質と前記第2の品質との第2の差が前記所定値を超えるか否かを判定し、前記送信手段は、前記第2の差が前記所定値を超える場合に、前記下流装置に対して上りリンクの信号の送信電力を制御させるための送信電力制御コマンドを送信する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下りリンクの信号と上りリンクの信号が同時に受信されうる中継伝送システムにおける通信品質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】IABノードのハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】IABノードによって実行される処理の流れの例を示す図である。
【
図5】IABノードによって実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(システム構成)
図1に、本実施形態の無線通信システムの構成例を示す。本実施形態に係る無線通信システムは、3GPPで規定されたIntegrated Access and Backhaul(IAB)による中継伝送システムであり、中継伝送を実行するIABノード101を含んで構成される。
【0012】
IABノード101は、端末装置としての機能であるMT(Mobile Termination)102により、基地局装置(IABドナー111)と接続して通信可能な通信装置である。なお、ここでは、MT102の機能によってIABドナー111に接続する場合の例を示しているが、これに限られず、例えば、IABドナーと直接的又は間接的に接続された他のIABノード(不図示)と、MT102の機能によって接続してもよい。このように、IABノード101は、MT102の機能により、直接的に又は間接的に、基地局装置として動作するIABドナー111と接続することができる。また、IABノード101は、IABドナー111との接続後に、基地局装置の一部として、すなわち、基地局装置のDU(Distributed Unit)103として機能する。そして、IABノード101は、DU103の機能により、端末装置(不図示)との接続を確立し、その端末装置とIABドナー111との間の通信を中継する。
【0013】
IABノード101は、さらに、DU103の機能により、端末装置として動作する他のIABノード121と接続を確立して通信可能でもある。この場合、他のIABノード121は、MTの機能により、IABノード101との接続を確立することとなる。このように、IABノード101は、IABドナー111等の中継経路における基地局装置側の装置(上流装置)と接続するのと並行して、他のIABノード121等のその中継経路における基地局装置側とは反対側の装置(下流装置)と接続する。なお、IABノード101は、例えばDU103の機能により、複数の他のIABノードと接続してもよい。
【0014】
IABノード101は、例えば、IABドナー111へ上りリンクの信号を送信しながら、他のIABノード121へ下りリンクの信号を送信することができる。同様に、IABノード101は、例えば、IABドナー111から下りリンクの信号を受信しながら、他のIABノード121から上りリンクの信号を受信することができる。なお、IABノード101は、信号の送信と信号の受信とを同時に実行可能に構成されてもよい。IABノード101は、信号の送信及び受信のために、一般に、アンテナやRF(Radio Frequency)回路、ベースバンド回路等を含んで構成される。さらに、IABノード101は、MT102及びDU103の各機能を実現するための専用のハードウェア回路やプログラムを含んで構成される。
【0015】
IABノード101は、アンテナやRF回路や、ベースバンド回路等を、MTとDUとのために共用することができる。この場合、上流装置からの第1の受信信号と下流装置からの第2の受信信号は、少なくともこれらの共用されている部分において合算された信号として扱われることになる。ここで、アンテナやRF回路が共用される場合、第1の受信信号と第2の受信信号との電力差が大きいと、電力の大きい方の信号が支配的となり、例えば、増幅器のダイナミックレンジが十分に大きくないと、電力の小さい方の信号が十分に増幅されず、場合によっては復調・復号するのが困難となってしまいうる。一方で、IABノード101が多数配置されることを想定すると、全てのIABノード101に対してダイナミックレンジが十分に大きい増幅器等を用意するのは現実的ではない。また、例えば、第1の受信信号と第2の受信信号とが周波数分割多重されている場合、帯域通過フィルタによっていずれか一方の信号のみを通過させることができるが、他方の信号の成分がその一方の信号の周波数帯域に漏れ込むことが想定される。このとき、例えば両者の信号の電力差が大きいと、電力の小さい方の信号に対して電力大きい方の信号の帯域外成分が与える影響が大きくなることが想定される。そして、IABドナー111と他のIABノード121などの異なる装置間では、局部発振器の周波数にずれがあるのが一般的であり、これらの信号が十分に直交性を担保できないことが想定される。この結果、電力の小さい方の信号の受信性能が大幅に劣化してしまいうる。同様に、空間分離がされる場合でも、伝送路推定誤差により、電力の大きい方の信号が電力の小さい方の信号に強く影響してしまいうる。
【0016】
そこで、本実施形態では、IABノード101が、IABドナー111からの第1の受信信号と他のIABノード121からの第2の受信信号の電力差が所定値以下となるような制御を実行する。
【0017】
例えば、IABノード101は、MT102の機能を介して、IABドナー111に対して送信電力制御コマンドを送信可能とする。IABノード101は、例えば、IABドナー111からの第1の受信信号の電力から他のIABノード121からの第2の受信信号の電力を減じた値が所定値を超える場合に、IABドナー111に対して、信号の送信電力を下げることを指示する信号を送信する。また、IABノード101は、例えば、他のIABノード121からの第2の受信信号の電力からIABドナー111からの第1の受信信号の電力を減じた値が所定値を超える場合に、IABドナー111に対して、信号の送信電力を上げることを指示する信号を送信する。これにより、第1の受信信号と第2の受信信号との電力差が大きい状況において、その電力差を縮小し、各信号の受信品質を向上させることができる。なお、IABノード101は、例えば、IABドナー111から送信された信号に対する確認応答(ACK)と共に、PUCCH(物理上りリンク制御チャネル)において送信電力制御コマンドを送信しうる。また、IABノード101は、例えば、IABドナー111から送信されたPDCCH(物理下りリンク制御チャネル)に応答するPUSCH(物理上りリンク共有チャネル)において、送信電力制御コマンドを送信してもよい。
【0018】
また、IABノード101は、IABドナー111への送信電力制御コマンドの送信に加え又はこれに代えて、DU103の機能を介して、他のIABノード121に対して送信電力制御コマンドを送信可能とする。IABノード101は、例えば、IABドナー111からの第1の受信信号の電力から他のIABノード121からの第2の受信信号の電力を減じた値が所定値を超える場合に、他のIABノード121に対して、信号の送信電力を上げることを指示する信号を送信する。また、IABノード101は、例えば、他のIABノード121からの第2の受信信号の電力からIABドナー111からの第1の受信信号の電力を減じた値が所定値を超える場合に、他のIABノード121に対して、信号の送信電力を下げることを指示する信号を送信する。これにより、第1の受信信号と第2の受信信号との電力差が大きい状況において、その電力差を縮小し、各信号の受信品質を向上させることができる。なお、IABノード101は、例えば、他のIABノード121へ送信するPDCCH(物理下りリンク制御チャネル)やPDSCH(物理下りリンク共有チャネル)において、送信電力制御コマンドを送信しうる。
【0019】
なお、上りリンク及び下りリンクで送信される送信電力制御コマンドは、例えば、送信電力の増加量・低減量を示す情報を含んでもよい。IABノード101は、この増加量・低減量を任意に決定してもよいし、増加量・低減量を示す複数の段階のうちの1つを選択してもよい。複数の段階の中から1つ選択される場合、その選択結果を示す情報が送信電力制御コマンドに含められる。IABドナー111や他のIABノード121は、IABノード101から受信した送信電力制御コマンドにおいて電力の増加量・低減量が指定されていた場合は、その指定された量だけ送信電力を増加・低減させる。なお、送信電力制御コマンドにおいて電力の増加量・低減量が指定されない場合には、IABドナー111や他のIABノード121は、送信電力コマンドを受信したことに応じて一定量だけ送信電力を増加・低減させうる。同様に、IABノード101も、IABドナー111や他のIABノード121から送信電力制御コマンドを受信した場合には、そのコマンドに応じて上りリンクの送信電力や下りリンクの送信電力を変更しうる。
【0020】
なお、IABノード101は、例えば、IABドナー111からの第1の受信信号の電力と他のIABノード121からの第2の受信信号の電力との差が所定値以下の場合であっても、第1の受信信号の受信電力が第1の所定値を超えている場合に、送信電力を下げるように、IABドナー111へ送信電力制御コマンドを送信しうる。同様に、IABノード101は、例えば、第1の受信信号の電力と第2の受信信号の電力との差が所定値以下の場合であっても、第1の受信信号の受信電力が第2の所定値を下回る場合に、送信電力を上げるように、IABドナー111へ送信電力制御コマンドを送信しうる。また、IABノード101は、例えば、第1の受信信号の電力と第2の受信信号の電力との差が所定値以下でも、第2の受信信号の受信電力が第3の所定値を超える場合に、送信電力を下げるように、他のIABノード121へ送信電力制御コマンドを送信しうる。また、IABノード101は、例えば、第1の受信信号の電力と第2の受信信号の電力との差が所定値以下でも、第2の受信信号の受信電力が第4の所定値を下回る場合に、送信電力を上げるように、他のIABノード121へ送信電力制御コマンドを送信しうる。
【0021】
IABノード101は、IABドナー111と他のIABノード121との両方に対して送信電力制御コマンドを送信することができる。このとき、IABノード101は、下流装置である他のIABノード121に対しては、割り当てる無線リソースの量を調整することにより、送信電力を調整することができるが、上流装置であるIABドナー111に対してはそのような調整ができない。このため、IABドナー111の送信電力を優先的に調整し、その後に他のIABノード121の送信電力を制御するようにする。このため、例えば、IABノード101は、IABドナー111に対して送信電力制御を実行し、その送信電力制御によってIABドナー111からの受信信号の電力が変更されるという前提の下で、他のIABノード121において送信電力制御が必要かを判定しうる。これにより、送信電力制御の自由度が相対的に低い下りリンクの送信電力制御を優先的に行うことができ、上りリンクと下りリンクとで適切な送信電力の調整を行うことが可能となる。なお、他のIABノード121の送信電力を先に調整し、その後にIABドナー111の送信電力を制御するようにしてもよい。
【0022】
以上のようにして、本実施形態では、IABノードが、上流装置からの下りリンク信号と下流装置からの上りリンク信号の受信電力の差分が所定値以下となるように、送信電力制御コマンドを上流装置と下流装置との少なくともいずれかへ送信する。これにより、IABノードによって受信される下りリンク信号と上りリンク信号との受信電力の差が所定値以下となることで、それぞれの信号の受信品質を向上させることができる。
【0023】
(装置構成)
続いて、上述のような処理を実行するIABノード101の構成について説明する。
図2に、IABノード101のハードウェア構成例を示す。IABノード101は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を有する。IABノード101では、例えばROM202、RAM203及び記憶装置204のいずれかに記録された、上述のようなIABノード101の各機能を実現するコンピュータが可読のプログラムがプロセッサ201により実行される。なお、プロセッサ201は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。
【0024】
IABノード101は、例えばプロセッサ201により通信回路205を制御して、相手装置(例えば、IABノード111や他のIABノード121等)との間の通信を行う。なお、
図2では、IABノード101は、1つの通信回路205を有するような概略図を示しているが、これに限られない。例えば、IABノード101は、IABドナー111との通信用の通信装置と、他のIABノード121との通信用の通信装置とを有してもよい。なお、IABドナー111と他のIABノード121との通信のために別個の通信装置を有する場合であっても、例えば、アンテナが配置されている位置が近いこと等により、IABドナー111からの下りリンク信号と他のIABノード121からの上りリンク信号とが、相互に影響しうる状態であるものとする。
【0025】
図3に、IABノード101の機能構成例を示す。この機能構成の一部又は全部は、例えばプロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。また、この機能構成を実現する専用のハードウェアが用意されてもよい。また、例えば、通信回路205内に含まれるプロセッサが専用のプログラムを実行することによって、
図3の機能構成を実現してもよい。なお、
図3は、IABノード101の機能のうち、本実施形態に係る機能群のみを抽出して描画したものであり、IABノード101は、これらの機能以外のIABノードとしての機能を当然に有する。また、
図3の機能の一部が省略され、又は、
図3の機能が同様の能力を有する他の機能によって置き換えられてもよい。
【0026】
IABノード101は、上述のように端末装置として機能するMTと基地局装置として機能するDUとを含んで構成される。MTは、例えば、下りリンク受信電力測定部301、下りリンク電力制御コマンド送信部302を有し、DUは、例えば、上りリンク受信電力測定部311、上りリンク電力制御コマンド送信部312を有する。また、IABノード101は、受信電力密度比較部321を有する。
【0027】
下りリンク受信電力測定部301は、上流装置(IABドナー111)から送信された信号の受信時の電力密度(P1)を測定する。上りリンク受信電力測定部311は、下流装置(他のIABノード121)から送信された信号の受信時の電力密度(P2)を測定する。受信電力密度比較部321は、下りリンク受信電力測定部301と上りリンク受信電力測定部311とにおける受信信号の電力測定結果の差分を算出し、その差の大きさが所定値を超えているか否かを判定する。すなわち、受信電力密度比較部321は、各受信電力の差の絶対値|P1-P2|が、閾値電力Pthを超えているか否かを判定する。そして、受信電力密度比較部321は、比較結果を、下りリンク電力制御コマンド送信部302と上りリンク電力制御コマンド送信部312とへ出力する。そして、下りリンク電力制御コマンド送信部302と上りリンク電力制御コマンド送信部312は、その比較結果に基づいて、必要に応じて送信電力制御コマンドを送信する。下りリンク電力制御コマンド送信部302は、上流装置へ送信電力制御コマンドを送信する。上りリンク電力制御コマンド送信部312は、下流装置へ送信電力制御コマンドを送信する。なお、IABノード101は、下りリンク電力制御コマンド送信部302と上りリンク電力制御コマンド送信部312とのいずれかを有しなくてもよい。また、受信電力密度比較部321は、下りリンク電力制御コマンド送信部302と上りリンク電力制御コマンド送信部312とのいずれに送信電力制御コマンドを送信させるかを比較結果に基づいて決定してもよい。
【0028】
例えば、P1-P2>Pthの場合、下りリンク電力制御コマンド送信部302が、上流装置へ、送信電力を下げて、P1を下げるように送信電力制御コマンドを送信するようにしうる。また、P1-P2>Pthの場合に、上りリンク電力制御コマンド送信部312が、下流装置へ、送信電力を上げて、P2を上げるように送信電力制御コマンドを送信するようにしてもよい。このとき、受信電力密度比較部321は、例えば、P1が第1の基準値より大きい場合は、下りリンクの送信電力制御を行うことを決定し、P2が第2の基準値より小さい場合は、上りリンクの送信電力制御を行うように決定しうる。すなわち、十分に受信電力が小さい信号について送信電力が下げられないようにし、十分に受信電力が大きい信号について送信電力が上げられないようにしうる。
【0029】
同様に、P2-P1>Pthの場合、下りリンク電力制御コマンド送信部302が、上流装置へ、送信電力を上げて、P1を上げるように送信電力制御コマンドを送信するようにしうる。また、P2-P1>Pthの場合に、上りリンク電力制御コマンド送信部312が、下流装置へ、送信電力を下げて、P2を下げるように送信電力制御コマンドを送信するようにしてもよい。このとき、受信電力密度比較部321は、例えば、P1が第3の基準値より小さい場合は、下りリンクの送信電力制御を行うことを決定し、P2が第4の基準値より大きい場合は、上りリンクの送信電力制御を行うように決定しうる。
【0030】
また、受信電力密度比較部321は、例えば、下りリンクの送信電力制御を優先して行うようにしてもよく、その際に、上りリンクの送信電力制御をも実行するかを決定してもよい。なお、送信電力制御コマンドにおいて、電力の増加量/低減量を指定するようにしてもよいし、このような指定を行わずに、電力の増加/低減のみを指示するようにしてもよい。
【0031】
IABノード101は、さらに、上流装置や下流装置からの送信電力制御コマンドに従って、自装置が送信する信号の送信電力を設定しうる。このために、IABノード101は、例えば、上りリンク電力制御コマンド受信部303、上りリンク電力制御部304、下りリンク電力制御コマンド受信部313、及び、下りリンク電力制御部314を有する。上りリンク電力制御コマンド受信部303が、上流装置から送信電力制御コマンドを受信すると、その内容が上りリンク電力制御部304へ通知され、上りリンク電力制御部304は、上流装置へ送信する上りリンク信号の送信電力を制御する。また、下りリンク電力制御コマンド受信部313が、下流装置から送信電力制御コマンドを受信すると、その内容が下りリンク電力制御部314へ通知され、下りリンク電力制御部314は、下流装置へ送信する下りリンク信号の送信電力を制御する。これらの電力制御は、コマンドに従って送信電力を変更する処理であり、例えば電力の上昇指示/低減指示を受けると、一定電力だけ送信電力を上昇/低減する制御が実行される。また、例えば電力の上昇量の指示/低減量の指示を受けた場合、その指示された量だけ送信電力を上昇/低減するような制御が実行されうる。
【0032】
(処理の流れ)
図4を用いて、IABノード101が実行する処理の流れの例について説明する。なお、ここでは、IABノード101が他の装置へ送信電力制御コマンドを送信する際の処理の流れを説明する。すなわち、IABノード101は、他の装置からの送信電力制御を受けた場合に、自装置の送信電力を変更するように動作するが、その動作についての説明は省略する。なお、本処理は、一例に過ぎず、その処理ステップの一部が省略され、又は実行される順序が変更されてもよい。
【0033】
本処理では、まず、IABノード101は、下りリンクの受信信号の受信電力密度(P1)と、上りリンクの受信信号の受信電力密度(P2)とを測定によって特定する(S401、S402)。なお、これらの特定は、例えば、それぞれの信号の参照信号を測定することによって行われ、処理の実行順序は逆であってもよい。その後、IABノード101は、測定された受信電力密度の差|P1-P2|が、所定値(Pth)を超えるか否かを判定する(S403)。そして、IABノード101は、この差が所定値を超えないと判定した場合(S403でNO)、何もせず、
図4の処理を終了する。一方、IABノード101は、この差が所定値を超えると判定した場合(S403でYES)、上流装置と下流装置との少なくともいずれかへ、送信電力制御コマンドを送信し(S404)、その差が所定値以内となるようにする。このときに、上流装置と下流装置とのいずれに送信電力制御コマンドを送信するか、また、送信電力制御コマンドの内容については上述の通りであるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0034】
このようにして、受信電力差が所定値を超える場合には、その電力差が小さくなるように送信電力制御コマンドが送信される。これにより、上りリンクの信号と下りリンクの信号を同時に受信した際の受信品質を改善することが可能となる。
【0035】
図5に、IABノード101が実行する処理の第2の例について説明する。本処理は、上りリンクと下りリンクの両方において送信電力制御を実行可能である場合の処理の一例である。なお、測定された受信電力密度の差|P1-P2|が、所定値(Pth)を超えるか否かの判定までは
図4と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0036】
IABノード101は、測定された受信電力密度の差|P1-P2|が、所定値(Pth)を超えると判定した場合、まず、上流装置へ送信電力制御コマンドを送信する(S501)。例えば、P1-P2>Pthである場合は、IABノード101は、下りリンクの送信電力を下げることを支持する送信電力制御コマンドを上流装置へ送信する。また、P2-P1>Pthである場合は、IABノード101は、下りリンクの送信電力を上げることを支持する送信電力制御コマンドを上流装置へ送信する。
【0037】
そして、IABノード101は、上流装置において送信電力制御を行った場合の電力密度の変化をgとしたときに、その送信電力制御後の電力差||P1-P2|-g|が、所定値を超えるかを判定する(S502)。そして、IABノード101は、上流装置における送信電力制御後の電力差が、依然として所定値を超える場合(S502でYES)、下流装置へ送信電力制御コマンドを送信する(S503)。一方、IABノード101は、上流装置における送信電力制御後の電力差が所定値を超えない場合(S502でNO)、下流装置へ送信電力制御コマンドを送信せずに処理を終了する。このように、上流装置が優先的に送信電力制御を行うようにすることができる。なお、
図5において、上流装置と下流装置とを入れ替えることにより、下流装置の方が優先的に送信電力制御を行うようにすることもできる。
【0038】
このようにして、上りリンクと下りリンクの送信電力制御を並行して実行可能な場合に、受信電力差を小さくすることにより、上りリンクの信号と下りリンクの信号を同時に受信した際の受信品質を改善することが可能となる。
【0039】
なお、上述の例では、送信電力を上げる場合と下げる場合との判定基準となる所定値として共通の値が用いられる場合の例について説明したが、これに限られない。例えば、上述のS403において、P1-P2>Pth1の場合に、P1を下げる/P2を上げる制御を実行し、P2-P1>Pth2の場合(Pth1≠Pth2)に、P1を上げる/P2を下げる制御を実行するようにしてもよい。このようにして、より柔軟な制御を実行することが可能となる。
【0040】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。