(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】倉庫環境におけるリスクマッピングのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20240621BHJP
G06Q 10/08 20240101ALI20240621BHJP
【FI】
B65G1/00 511Z
G06Q10/08
(21)【出願番号】P 2023510308
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 IB2021055880
(87)【国際公開番号】W WO2022034389
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-04-13
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518072210
【氏名又は名称】エバーシーン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Everseen Limited
【住所又は居所原語表記】4th Floor, The Atrium, Blackpool Retail Park, Blackpool, Cork, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラン オハーリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョー アレン
(72)【発明者】
【氏名】ダン ペスカル
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095617(JP,A)
【文献】特開2018-180573(JP,A)
【文献】特開2003-003671(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2947604(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
G06Q 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
倉庫環境におけるリスクのある領域を識別し、管理するためのシステムであって、
1つ又は複数のビデオストリームを取り込み、1つ又は複数のビデオセンサーの視野に基づいて、前記倉庫環境における1つ又は複数の監視ゾーン、及び1つ又は複数の未監視ゾーンを生成するように構成された、1つ又は複数のビデオセンサーと、
前記1つ又は複数のビデオセンサーに通信可能に結合された中央処理装置であって、
前記1つ又は複数のビデオセンサーによって取り込まれた情報を格納するように構成された生のリスク情報収集ユニットと、
前記1つ又は複数のビデオストリームを処理・集約して、倉庫作業を行う間に倉庫オペレータによって横断されるオペレータルートに関連付けられたリスク識別情報を生成するように構成された処理・集約ユニットであって、前記リスク識別情報は、少なくとも1つのリスクゾーン、対応するリスクタイプ、及びリスクレベルを含み、前記少なくとも1つのリスクゾーンは、前記倉庫環境において、1つ又は複数のリスクインスタンスに対応する領域である、処理・集約ユニットと、
前記リスク識別情報に基づいてウェアハウスリスクマップを生成するように構成されたリスクマップ生成ユニットであって、前記ウェアハウスリスクマップは、少なくとも1つの識別されたリスクゾーンを倉庫マップに重ねることによって生成される、リスクマップ生成ユニットと、
前記ウェアハウスリスクマップに記録された少なくとも1つのリスクインスタンスに対し、前記リスクタイプ、前記リスクレベル、及び前記リスクゾーンの少なくとも1つが変化したことを条件に、前記ウェアハウスリスクマップをリアルタイムで更新するリスクマップ更新ユニットと
を含む中央処理装置と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記倉庫作業は、操作タスク、注文補充タスク、パレットのロード/アンロードタスク、及びラックの補充タスクのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記リスクは、重い荷物から生じる予め定義されたリスク、壊れやすい荷物から生じる予め定義されたリスク、及び発見的リスクのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記リスクゾーンに対する前記リスクレベルは、前記リスクゾーンにおいて特定のリスク事故が発生する確率に基づいて計算され、前記リスクレベルは、最近のリスクレベル、及びグローバルリスクレベルの2つの構成要素を含み、前記最近のリスクレベルは、前記リスクゾーンで最近発生したリスク事故の数を、前記リスクゾーンで行われた総作業数の割合として表現し、前記グローバルリスクレベルは、前記リスクゾーンで発生したリスク事故の総数を前記行われた総作業数の割合として表現する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記リスクマップ更新ユニットは、1つ又は複数の予め定義されたリスクの発生を自動的に検出し、前記ウェアハウスリスクマップ上に対応する定位をマークして、それによって対応するリスクインスタンスを定義するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記予め定義されたリスクは重い荷物から生じるリスクを含み、前記リスクの定位は在庫リストから抽出され、前記リスクマップ更新ユニットは、前記在庫リストが変更されるたびに、対応するリスクマップを更新するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理・集約ユニットは、前記1つ又は複数のビデオストリームに基づいて、前記倉庫環境において1つ又は複数の破損した荷物を識別するように構成されたパッケージインテグリティチェックAI(PICAI)コンポーネントを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記中央処理装置は、前記倉庫環境における1つ又は複数の発見的リスクを発見するためのニューエマージングリスクディスカバリー(NERD)コンポーネントを備え、前記NERDコンポーネントは、
前記ビデオセンサーから前記1つ又は複数のビデオストリームを受信し、バッファするように構成されたストリームバッファと、
各監視/未監視ゾーンにおけるオペレータの滞在時間、前記各監視/未監視ゾーンにおける物体操作の動きの監視、及び前記各監視/未監視ゾーンにおけるオペレータの作業パターンを決定するための人間検出及び追跡アルゴリズムを実装する検出器のセットと、
前記オペレータが費やした時間、前記物体操作の動き、及び前記オペレータの作業パターンを、前記オペレータが費やした対応する予め定義された時間、予め定義された物体操作の動き、及び予め定義された前記オペレータの作業パターンと比較することによって、1つ又は複数の発見的リスクを決定するように構成された推定ユニットと、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
倉庫環境におけるリスクのある領域を識別し、管理するための方法であって、
1つ又は複数のビデオストリームを取り込み、1つ又は複数のビデオセンサーの視野に基づいて、前記倉庫環境における1つ又は複数の監視ゾーン、及び1つ又は複数の未監視ゾーンを生成することと、
前記1つ又は複数のビデオセンサーによって取り込まれた情報を格納することと、
前記1つ又は複数のビデオストリームを処理・集約して、倉庫作業を行う間に倉庫オペレータによって横断されるオペレータルートに関連付けられたリスク識別情報を生成することであって、前記リスク識別情報は、少なくとも1つのリスクゾーン、対応するリスクタイプ、及びリスクレベルを含み、前記少なくとも1つのリスクゾーンは、前記倉庫環境において、1つ又は複数のリスクインスタンスに対応する領域であることと、
前記リスク識別情報に基づいてウェアハウスリスクマップを生成することであって、前記ウェアハウスリスクマップは、少なくとも1つの識別されたリスクゾーンを倉庫マップに重ねることによって生成されることと、
前記ウェアハウスリスクマップに記録された少なくとも1つのリスクインスタンスに対し、前記リスクタイプ、前記リスクレベル、及び前記リスクゾーンの少なくとも1つが変化したことを条件に、前記ウェアハウスリスクマップをリアルタイムで更新することと、
を備える、方法。
【請求項10】
前記倉庫作業は、操作タスク、注文補充タスク、パレットのロード/アンロードタスク、及びラックの補充タスクのうちの少なくとも1つから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リスクは、重い荷物から生じる予め定義されたリスク、壊れやすい荷物から生じる予め定義されたリスク、及び発見的リスクのうちの少なくとも1つから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記リスクゾーンに対する前記リスクレベルは、前記リスクゾーンにおいて特定のリスク事故が発生する確率に基づいて計算され、前記リスクレベルは、最近のリスクレベル、及びグローバルリスクレベルの2つの構成要素を含み、前記最近のリスクレベルは、前記リスクゾーンで最近発生したリスク事故の数を、前記リスクゾーンで行われた総作業数の割合として表現し、前記グローバルリスクレベルは、前記リスクゾーンで発生したリスク事故の総数を前記行われた総作業数の割合として表現する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
1つ又は複数の予め定義されたリスクの発生を自動的に検出し、前記ウェアハウスリスクマップ上に対応する定位をマークして、それによって対応するリスクインスタンスを定義することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記予め定義されたリスクは重い荷物から生じるリスクを含み、前記リスクの定位は在庫リストから抽出され、前記在庫リストが変更されるたびに、対応するリスクマップを更新するように構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ又は複数のビデオストリームに基づいて、前記倉庫環境において1つ又は複数の破損した荷物を識別することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記ビデオセンサーから前記1つ又は複数のビデオストリームを受信し、バッファすることと、
各監視/未監視ゾーンにおけるオペレータの滞在時間、前記各監視/未監視ゾーンにおける物体操作の動きを監視すること、及び前記各監視/未監視ゾーンにおけるオペレータの作業パターンを決定することと、
前記オペレータが費やした時間、前記物体操作の動き、及び前記オペレータの作業パターンを、前記オペレータが費やした対応する予め定義された時間、予め定義された物体操作の動き、及び予め定義された前記オペレータの作業パターンと比較することによって、1つ又は複数の発見的リスクを決定することと、
をさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
倉庫環境におけるリスクのある領域を識別し、管理するためのコンピュータプログラム可能製品であって、
非一時的コンピュータ可読媒体に格納された指令のセットを備え、前記指令セットは、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
1つ又は複数のビデオストリームを取り込み、1つ又は複数のビデオセンサーの視野に基づいて、前記倉庫環境における1つ又は複数の監視ゾーン、及び1つ又は複数の未監視ゾーンを生成することと、
前記1つ又は複数のビデオセンサーによって取り込まれた情報を格納することと、
前記1つ又は複数のビデオストリームを処理・集約して、倉庫作業を行う間に倉庫オペレータによって横断されるオペレータルートに関連付けられたリスク識別情報を生成することであって、前記リスク識別情報は、少なくとも1つのリスクゾーン、対応するリスクタイプ、及びリスクレベルを含み、前記少なくとも1つのリスクゾーンは、前記倉庫環境において、1つ又は複数のリスクインスタンスに対応する領域であることと、
前記リスク識別情報に基づいてウェアハウスリスクマップを生成することであって、前記ウェアハウスリスクマップは、少なくとも1つの識別されたリスクゾーンを倉庫マップに重ねることによって生成されることと、
前記ウェアハウスリスクマップに記録された少なくとも1つのリスクインスタンスに対し、前記リスクタイプ、前記リスクレベル、及び前記リスクゾーンの少なくとも1つが変化したことを条件に、前記ウェアハウスリスクマップをリアルタイムで更新することと、
を実行させる、コンピュータプログラム可能製品。
【請求項18】
前記リスクゾーンに対する前記リスクレベルは、前記リスクゾーンにおいて特定のリスク事故が発生する確率に基づいて計算され、前記リスクレベルは、最近のリスクレベル、及びグローバルリスクレベルの2つの構成要素を含み、前記最近のリスクレベルは、前記リスクゾーンで最近発生したリスク事故の数を、前記リスクゾーンで行われた総作業数の割合として表現し、前記グローバルリスクレベルは、前記リスクゾーンで発生したリスク事故の総数を前記行われた総作業数の割合として表現する、請求項17に記載のコンピュータプログラム可能製品。
【請求項19】
前記指令セットは、前記プロセッサによって実行されたときに、前記プロセッサに、1つ又は複数の予め定義されたリスクの発生を自動的に検出し、前記ウェアハウスリスクマップ上に対応する定位をマークして、それによって対応するリスクインスタンスを定義させる、請求項17に記載のコンピュータプログラム可能製品。
【請求項20】
前記指令セットは、前記プロセッサによって実行されたときに、前記プロセッサに、
前記ビデオセンサーから前記1つ又は複数のビデオストリームを受信し、バッファすることと、
各監視/未監視ゾーンにおけるオペレータの滞在時間、前記各監視/未監視ゾーンにおける物体操作の動きを監視すること、及び前記各監視/未監視ゾーンにおける前記オペレータの作業パターンを決定することと、
前記オペレータが費やした時間、前記物体操作の動き、及び前記オペレータの作業パターンを、前記オペレータが費やした対応する予め定義された時間、予め定義された物体操作の動き、及び予め定義された前記オペレータの作業パターンと比較することによって、1つ又は複数の発見的リスクを決定することと、
を実行させる、請求項17に記載のコンピュータプログラム可能製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、倉庫又は流通環境に関し、より具体的には、最もリスクの高い領域を特定し、文書化することによって倉庫管理の効率を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
流通システムにおいて、注文履行プロセスは、サプライチェーンを管理する上で重要なプロセスである。これは、顧客注文の生成、補充、配送及びサービスを含む。典型的な注文履行プロセスは、注文の受け取り、注文の採取、注文の梱包、注文の発送など、様々なサブプロセスを含む。受け取りとは、履行センターにおける入荷した在庫の受け入れと保管を指す。履行センターが在庫を受け取ると、アイテムはパレットなどの専用倉庫に保管され得る。パレットは、平坦で、荷物を運ぶことができる、可搬で剛性のある台である。採取のサブプロセスにおいて、採取チームは、アイテム、数量、及び施設での保管場所が記載された梱包票を受け取り、注文された製品をそれぞれのパレットから収集する。
【0003】
また、2つの特徴が、倉庫又は流通センターの作業効率に影響を及ぼす。これらの側面は、倉庫環境の動的性質、及び、パレット操作/注文採取プロセス中の人間のオペレータの動作に関連する。以上のことから、倉庫流通システムにおける注文履行効率の問題に対処し、荷物処理経路の再設計、及び注文履行中の荷物処理手順の最適化によって、より良い運用管理を可能にする必要性がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
概要、及び例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的な構造が図面に示されている。しかしながら、本開示は、本明細書に開示された特定の方法及び器具に限定されるものではない。さらに、当業者であれば、図面が縮尺通りでないことを理解するであろう。可能な限り、同様の要素は、同一の番号で示されている。
【0005】
【
図1】本発明の様々な実施形態が実践され得る、倉庫環境を示す図である。
【
図2A】本開示の実施形態による、倉庫環境を管理するための中央処理装置を示す図である。
【
図2B】本開示の実施形態による、ウェアハウスリスクマップを例示する図である
【
図3A】本開示の実施形態による、ウェアハウスリスクマップのコンタープロットを視覚化した例を示す図である。
【
図3B】本開示の実施形態による、3次元プロット形式でのウェアハウスリスクマップの出力を視覚化した例を示す図である。
【
図4A】本開示の実施形態による、第2の倉庫環境を示す図である。
【
図4B】第2の倉庫環境において発見的リスクを発見するためのニューエマージングリスクディスカバリー(NERD)コンポーネントを示す図である。
【
図5】本開示の実施形態による、倉庫環境におけるリスクの領域を特定し、管理するための方法を示すフローチャートである。
【0006】
添付図面において、下線付き番号は、下線付き番号が上に位置される項目又は下線付き番号が隣接する項目を表すために採用される。下線付きでない番号は、下線付きでない番号と項目とを結ぶ線によって識別される項目に関するものである。番号が下線付きでなく、関連する矢印を伴う場合、下線付きでない番号は、矢印が指し示す一般的な項目を特定するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(概要)
本開示の一態様では、倉庫環境におけるリスクのある領域を識別し、管理するためのシステムが提供される。システムは、1つ又は複数のビデオストリームを取り込み、1つ又は複数のビデオセンサーの視野に基づいて、倉庫環境における1つ又は複数の監視ゾーン、及び1つ又は複数の未監視ゾーンを生成するように構成された、1つ又は複数のビデオセンサーを含み得る。システムは、1つ又は複数のビデオセンサーに通信可能に結合された中央処理装置をさらに含み得る。中央処理装置は、1つ又は複数のビデオセンサーによって取り込まれた情報を格納するように構成された生のリスク情報収集ユニットと、1つ又は複数のビデオストリームを処理・集約して、倉庫作業を行う間に倉庫オペレータによって横断されるオペレータルートに関連付けられたリスク識別情報を生成するように構成された処理・集約ユニットと、を含み、リスク識別情報は少なくとも1つのリスクゾーン、及び対応するリスクタイプ、及びリスクレベルを含み、リスクゾーンは、倉庫環境で1つ又は複数のリスクインスタンスに対応する区域である。システムは、リスク識別情報に基づいてウェアハウスリスクマップを生成するように構成されたリスクマップ生成ユニットをさらに含み得、ウェアハウスリスクマップは、識別されたリスクゾーンを倉庫マップに重ね合わせることによって生成される。システムは、ウェアハウスリスクマップに記録された少なくとも1つのリスクインスタンスについて、リスクタイプ、リスクレベル、及びリスクゾーンの少なくとも1つが変化した場合に、ウェアハウスリスクマップをリアルタイムで更新するためのリスクマップ更新ユニットをさらに含み得る。
【0008】
本開示の別の態様では、倉庫環境におけるリスクのある領域を識別し、管理するための方法が提供される。本方法は、1つ又は複数のビデオセンサーの視野に基づいて、倉庫環境における1つ又は複数の監視ゾーン、及び1つ又は複数の未監視ゾーンを生成するために、その1つ又は複数のビデオストリームを取り込むことを含む。本方法は、1つ又は複数のビデオセンサーによって取り込まれた情報を格納することをさらに含み得る。本方法は、1つ又は複数のビデオストリームを処理・集約し、倉庫作業を行う間に倉庫オペレータによって横断されるオペレータルートに関連付けられたリスク識別情報を生成することをさらに含み得、リスク識別情報は、少なくとも1つのリスクゾーン、及び対応するリスクタイプ、及びリスクレベルを含み、リスクゾーンは、1つ又は複数のリスクインスタンスに対応する倉庫環境の区域である。本方法は、リスク識別情報に基づいてウェアハウスリスクマップを生成することをさらに含み得、ウェアハウスリスクマップは、識別されたリスクゾーンを倉庫マップに重ね合わせることによって生成される。本方法は、ウェアハウスリスクマップに記録された少なくとも1つのリスクインスタンスについて、リスクタイプ、リスクレベル、及びリスクゾーンの少なくとも1つが変化したときに、ウェアハウスリスクマップをリアルタイムで更新することをさらに含み得る。
【0009】
本開示のさらに別の態様では、倉庫環境におけるリスクの領域を識別及び管理するためのコンピュータプログラム可能製品が提供され、そのコンピュータプログラム可能製品は、指令のセットを含む。指令のセットは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、その1つ又は複数のビデオストリームを取り込み、1つ又は複数のビデオセンサーの視野に基づいて、倉庫環境における1つ又は複数の監視ゾーン、及び1つ又は複数の未監視ゾーンを生成し、1つ又は複数のビデオセンサーによって取り込まれた情報を格納し、倉庫作業を行う間に倉庫オペレータによって横断されるオペレータルートに関連付けられたリスク識別情報を生成するために1つ又は複数のビデオストリームを処理・集約させる。ここで、リスク識別情報は、少なくとも1つのリスクゾーン、及び対応するリスクタイプ、及びリスクレベルを含み、リスクゾーンは、1つ又は複数のリスクインスタンスに対応する倉庫環境内の区域であり、リスク識別情報に基づいてウェアハウスリスクマップを生成し、ウェアハウスリスクマップは、倉庫マップ上に識別されたリスクゾーンを重ねることによって生成され、ウェアハウスリスクマップに記録された少なくとも1つのリスクインスタンスについてリスクタイプ、リスクレベル及びリスクゾーンの少なくとも1つが変化すると、リアルタイムでウェアハウスリスクマップを更新する。
【0010】
本開示の様々な実施形態は、倉庫環境における空間的に定義されたリスクマップを生成及び更新するために、既知及び観察された潜在的に変化する環境及び人間のリスク要因の解析を実行する。リスク要因情報を空間情報に関連付けることにより、本開示は、観察されたパフォーマンス変化と倉庫環境内の特定の場所又はそれに近接する領域との間に原因相関を描くことを可能にする。リスクマップは、注文採取者のためのアクセス性が低いラック領域、例えば、物品がラックスペースの奥に積まれている、又はラックスペースの中で高く積まれている、流出領域、照度が低い領域、厄介なサイズ形状の製品が積まれやすい、又はひどく積まれている領域、注文採取者が減速しやすい領域、及びセキュリティリスクが大きい領域が含まれるが、それだけに限られない、現在及び将来のパフォーマンスに影響を及ぼす潜在的問題を検出及び識別するために使用され得る。また、リスクマップは、急速に変化するリスク要因に迅速に適応できるように、頻繁に、潜在的にはリアルタイムで更新され、急速に進化するシナリオの有害な影響を最小限に抑える。このように、リスクマップから得られる知見は、倉庫の環境設計を改善し、作業効率を高め、事故が発生したときにアラームを発することができる自動検出器を実装するために使用され得る。
【0011】
本開示の特徴は、添付の請求項によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わされることが可能であることが理解されるであろう。
【0012】
(例示的な実施形態の詳細な説明)
以下の詳細な説明は、本開示の実施形態及びそれらが実装されることができる方法を例示している。本開示を実行する最良の態様が開示されているが、当業者は、本開示を実行又は実践するための他の実施形態も可能であることを認識するであろう。
【0013】
図1は、本発明の様々な実施形態が実践されることができる倉庫環境100を示している。
【0014】
倉庫環境100は、第1及び第2の貯蔵ラック102a及び102bと、倉庫環境100内で物品を輸送するためのトロリー103と、を含む。本明細書では、2つの貯蔵ラックが示されているが、倉庫環境100が2つ以上のラック及びトロリーを含んでよいことは、当業者にとって明らかであろう。
【0015】
倉庫環境100は、第1及び第2のラック102a及び102bの上にそれぞれ固定的に取り付けられた第1及び第2のビデオセンサー104a及び104bをさらに含み得る。ビデオセンサー104a及び104bの例は、ビデオカメラを含むが、これらに限定されない。さもなければ、第1及び第2のビデオセンサー104a及び104bは、物体を隠すような障害物がない場合に物体の存在が検出され得る空間ボリュームに相当する視野106を有する。本開示の文脈では、視野106は、オペレータルートもカバーし、オペレータルートは、タスク期間中に倉庫オペレータによって横断される経路として定義され、タスク期間は、オペレータが監督者からタスクリストを受け取った瞬間からタスクリスト上のすべてのタスクを終了するまでの期間として定義される。タスクリスト上のタスクは、操作、注文補充、パレットのロード/アンロード、ラックの補充のような多様な作業を含み得ることに留意すべきである。
【0016】
倉庫環境100の作業効率は、倉庫環境100の動的性質、及びパレット操作/注文採取プロセス中の人間オペレータのパフォーマンスに依存する。様々な要因が、パレット操作/注文採取プロセスに影響を与える。これらの要因は、以下、リスクと呼ばれる。
【0017】
特定のタイプのリスクの発生率は、リスク事故の時間/日付又はオペレータもしくはフォークリフトトラックのアイデンティティ等のパラメータに従って、倉庫環境100の異なる場所で監視され得る。ビデオセンサー104a及び104bは、所定のリスク事故に関与するオペレータ又は取扱荷物のタイプに関するより詳細な情報を提供してもよい。これは、倉庫管理者がリスク事故のパターンを検出し識別することを支援し得、例えば、倉庫オペレータAは、第1のラック102aに近いパレットから物品をこぼす可能性が高く、それによって、倉庫管理者が適切な改善行動を行うことを可能にする。改善措置は、多くのリスク事故が発生するラックの近くの照明を改善すること、ラック間又はラックと壁との間の間隔を広げること、ラック又はパレットへの物品の持ち上げ又は積み重ねについて特定の倉庫オペレータに追加の訓練を提供すること、異なる(高い/低い)ラックスペースへの重い又は大きな物品の積み重ねに関する方針を変更することなどを含み得るが、これらに限らない。
【0018】
個々のリスクは、リスクインスタンスとして表現され得る。リスクインスタンスは、以下の属性:リスクの分類、関連するリスクが起こり得る倉庫環境100内の1つ又は複数のゾーン(それによってリスクインスタンスの定位が可能になる)、及びリスクレベル(リスクが関連するゾーン又は各ゾーンで発生する確率)を含む。簡潔のために、リスクが起こり得る倉庫環境100内の1つ又は複数のゾーンは、以後、リスクゾーンと呼ばれ得る。
【0019】
図2Aは、本開示の実施形態による、リスクの区域を識別し、文書化することによって倉庫環境を管理及び監視するためのシステム200を示す図である。
【0020】
システム200は、有線又は無線通信ネットワーク(図示せず)を介して第1及び第2のビデオセンサー104a及び104bに接続され、ビデオセンサー104a及び104bによって記録されたビデオストリームを処理する。
【0021】
システム200は、中央処理装置(CPU)201と、操作パネル203と、メモリ205と、を含む。CPU201は、操作パネル203、メモリ205などの各種構成要素の動作を制御するプロセッサ、コンピュータ、マイクロコントローラ、その他の回路である。CPU201は、例えば、メモリ205などの揮発性又は不揮発性のメモリに格納されるなどして、CPU201に提供されるソフトウェア、ファームウェア、及び/又はその他の指令を実行してもよい。CPU201は、1つ又は複数のシステムバス、ケーブル、又は他のインターフェースなどの有線又は無線接続を介して、操作パネル203、及びメモリ205に接続されてもよい。本開示の実施形態では、CPU201は、ローカルネットワーク上のすべてのカメラについて、リアルタイムの物体検出及び予測を提供するためのカスタムグラフィック処理ユニット(GPU)サーバソフトウェアを含み得る。
【0022】
操作パネル203は、ユーザーインターフェースであってよく、物理的なキーパッド又はタッチスクリーンの形態を取り得る。操作パネル203は、選択された機能、プリファレンス、及び/又は認証に関連する1人又は複数のユーザーからの入力を受信し得、視覚的及び/又は聴覚的に入力を提供及び/又は受信し得る。
【0023】
メモリ205は、CPU201によって使用するための指令とデータを格納することに加え、1人又は複数のユーザーに関連するユーザー情報も含み得る。例えば、ユーザー情報は、認証情報(例えば、ユーザー名/パスワードのセット)、ユーザー設定、及び他のユーザー固有の情報を含み得る。CPU201は、このデータにアクセスして、操作パネル203、及びメモリ205の動作に関連する制御機能(例えば、1つ又は複数の制御信号の送信及び/又は受信)の提供を支援し得る。
【0024】
本開示の一実施形態では、CPU201は、ビデオセンサー104a及び104bによって取り込まれた情報を受信し、その情報をストレージユニット210に格納するための生のリスク情報収集部202と、1つ又は複数のリスクインスタンスに関連付けられた1つ又は複数のトリガー条件の倉庫オペレータによる作業を検出するためにビデオストリームを処理・集約するように構成される処理・集約ユニット204と、を含む。トリガー条件の起動の検出時に、処理・集約ユニット204は、各リスクインスタンスの属性を識別し、文書化するように構成される。
【0025】
本開示の文脈では、リスクは、2つのクラス、すなわち、予め定義されたリスクと発見的リスクに大別され得る。予め定義されたリスクは、よく知られたリスクであり、倉庫環境の管理チームによって事前に定義され得るものである。これに対して、発見的リスクは、倉庫環境の観察によって発見され、学習されるものである。予め定義されたリスクには、重い荷物に起因するリスクが含まれ得る。予め定義されたリスクの別の例は、壊れやすい荷物から生じるリスクを含み、壊れやすい荷物の不適切な取り扱いは、在庫及び金銭的損失を引き起こす可能性があるためである。予め定義されたリスクは管理チームによって確立されるかもしれないが、当該予め定義されたリスクの発生場所は、倉庫環境の動的性質に起因して、時間と共に変化する場合がある。例えば、重い荷物や不格好な形状の荷物が保管棚に置かれる位置は、時間とともに変化し得る。
【0026】
所与のリスクインスタンスの定位は、異なる粒度で表現され得る。特に、粗いリスク定位が倉庫環境内のラックの識別子に依存し得るのに対し、細かい粒度のリスク定位は、より正確な位置情報を提供し得る。
【0027】
本開示の実施形態では、リスクレベルは、2つの構成要素、すなわち、最近のリスクレベルPrecent及びグローバルリスクレベルPglobalを含む。Precentは、リスクゾーンで実施された作業の総数に対する割合として、リスクゾーンで最近発生したリスク事故の数を表現する。Pglobalは、倉庫設立以来、リスクゾーンで発生したリスク事故の総数を、その期間にそのリスクゾーンで行われた作業の総数に対する割合で表したものである。PrecentとPglobalはそれぞれ、全体のリスクレベルの計算に75%と25%寄与する。
【0028】
より具体的には、以下の4式で表現される。
【0029】
【0030】
ここで、round関数は最も近い整数への丸めることを表し、count関数は考慮されたパラメータのインスタンス数のカウントを表し、incidenttはあるリスクゾーンで時刻tに発生したリスク事故を表し、operationtは、考慮されたリスクゾーンにおいて、時間tに倉庫オペレータ又はその他の人員によって行われた作業(例えば、ジョブフィリング、パレットアンロード又はラックスペースパッキング等)の数を表し、ΔTは、該当するリスク事故の発生を計算する時間間隔である(例えば、ΔT=今から計算された14日間、というのは過去14日間に発生したリスク事故の数を計算するために使用される)。
【0031】
中央処理装置201は、特定されたリスクインスタンスに基づいてウェアハウスリスクマップ210を生成するためのリスクマップ生成ユニット206をさらに含む(
図2Bに示されるように)。ウェアハウスリスクマップ210は、識別されたリスクゾーン212を、観察された倉庫環境の2次元マップ214(その中のすべてのラック及び作業空間を示す)に重ね合わせることによって生成される。ウェアハウスリスクマップ210は、倉庫環境について移動している間にオペレータによって取られたオペレータルート216を示してもよい。
【0032】
ウェアハウスリスクマップ210は、その集合的視野が各リスクインスタンスに関連するすべての場所をカバーするように、倉庫環境におけるビデオカメラの空間的展開を最適化するために使用される。
【0033】
中央処理装置201は、ストレージユニット210に格納され、所与のリスクタイプと特にリンクされている予め定義されたトリガーのセット(すなわち、リスクタイプ、リスクレベル、又はリスクゾーンのうちの少なくとも1つに変化があったとき)の1つ又は複数のセットにより、ウェアハウスリスクマップ210を更新するためのリスクマップ更新ユニット208を含む。例えば、重い荷物が別のラックに移動されると、各重い荷物に関連するリスクの位置は新しいラックに変更される。同様に、重い荷物が壊れやすいものに交換された場合、そのリスクインスタンスについてリスクのタイプが変更される。これにより、ウェアハウスリスクマップ210の更新が必要となる瞬間を細かくカスタマイズすることができる。効率化のために、すべてのリスク事故の発生がウェアハウスリスクマップ210の更新を引き起こすわけではない。さらに、リスクタイプ及び対応するトリガーのシステム設定は、倉庫管理者によって定期的に再設定され得る。
【0034】
本開示の実施形態では、リスクマップ更新ユニット208は、1つ又は複数のリスク事故の発生を自動的に検出し、それによってリスクインスタンスを例示するためにウェアハウスリスクマップ210上にそれらの位置をマークするように構成される。しかしながら、リスクインスタンスに関連する位置は時間と共に変化する可能性があるので、ウェアハウスリスクマップ210は、これらの変動を反映するために、リスク固有のトリガーに基づいて動的に更新されてよい。
【0035】
重い荷物から生じるリスク事故の例では、そのようなリスク事故の位置は、倉庫環境100の在庫リストから把握され得る。したがって、対応するリスクインスタンスのトリガーを更新するためのルールは、「在庫リストが変更されるたびにウェアハウスリスクマップ210を更新する」ことであり得る。同様に、壊れやすいパッケージに起因するリスク事故の場合、そのようなリスク事故の位置は、注文採取中の破損荷物の検出を通じて把握され得る。例えば、そのようなリスク事故の発生は、処理・集約ユニット204のパッケージインテグリティチェックAI(PICAI)コンポーネント(図示せず)によって検出され得る。したがって、このリスクインスタンスのトリガーを更新するためのルールは、「PICAIが破損した荷物を検出するたびにウェアハウスリスクマップ210を更新する」ことになり得る。
【0036】
PICAIは、ビデオセンサー104a及び104bによって取り込まれたビデオデータを処理することによって、荷物完全性ステータスを決定する。より具体的には、PICAIは、荷物が操作される倉庫環境を監視するように配置されたビデオカメラからのビデオストリームを処理するように適合された、訓練済みディープニューラルネットワーク分類器(図示せず)を含む。PICAI分類器は、視覚幾何学群(VGG)又は残差ニューラルネットワーク(Resnet)などのアーキテクチャを実装してもよく、2つのクラス、すなわち破損した荷物及び破損していない荷物にラベル付けされた画像のセットで訓練されてもよい。
【0037】
図3Aは、本開示の実施形態による、2つのラック102a及び102bと2つのドア302a及び302bとを含む倉庫環境における、ウェアハウスリスクマップのコンタープロットの視覚化300の一例を示している。コンタープロットの視覚化300は、倉庫環境内の所与の場所における個々のリスクタイプの累積発生に関する透視図を提供する、倉庫管理者向けの視覚出力インターフェースである。本実施例では、コンタープロットの視覚化300は、倉庫環境における6つのリスク事故ホットスポット(RI1-RI6)の存在を示している。このように、コンタープロットの視覚化300は、より高い数のリスク事故が観察された倉庫環境の領域に対する監視リソースのターゲティングを支援する。
【0038】
図3Bは、本開示の実施形態による、標高軸を通して倉庫環境における全体的なリスク視野を示す3次元プロット302の形態で、ウェアハウスリスクマップの出力の視覚化を示している。3次元プロット302は、
図3Aの倉庫環境における第1のラック102bに対するウェアハウスリスクマップの3次元視覚化の一例であり、第1のラック102bと接続された2つのリスク事故ホットスポット(RI3-RI4)を示している。
【0039】
図4Aは、本開示の実施形態による、第2の倉庫環境400を例示している。第1及び第2の倉庫環境100及び400が同じであり得ることは、当業者にとって明らかであろう。
【0040】
第2の倉庫環境400は、それぞれの視野を有した対応するビデオセンサー404a-404fによって監視される第1-第6の監視ゾーン(MZi)402a-402f(以下、集合的に監視ゾーン402と称する)を含む。監視ゾーンは実質的に長方形であり、その面積は対応する監視ビデオセンサー(すなわち、ビデオカメラ)の視野によって制限される。
【0041】
第2の倉庫環境400は、ビデオセンサー404aから404fまでが監視できない第1から第7の未監視ゾーン(UZj)406aから406g(以下、集合的に未監視ゾーン406と称する)を含む。未監視ゾーン(UZj)(jは集合[1...M]の要素である)は、Mがそのような未監視ゾーンの総数に等しく、2つの連続する監視ゾーンの間の開口(もしあれば)、又は監視ゾーンと倉庫の近接壁の間の開口であり得る。各連続する未監視ゾーンには、一意の識別子、例えば、倉庫管理の要件に従って1からインクリメントされるインデックスjが付与される。
【0042】
図4Bは、本開示の実施形態による、第2の倉庫環境400において発見的リスクを発見するためのニューエマージングリスクディスカバリー(NERD)コンポーネント408を示している。
【0043】
NERDコンポーネント408は、有線又は無線通信ネットワークのいずれかを介して、ビデオセンサーのセット(
図4Aの404aから404fまで)に通信可能に結合される。ビデオセンサーからの入力に基づいて、NERDコンポーネント408は、監視ゾーン(MZ
i)を横断するオペレータが費やした時間、未監視ゾーン(UZ
j)を横断するオペレータが費やした時間、監視ゾーン(MZ
i)及び/又は未監視ゾーン(UZ
j)における物体操作の動き(拾う/落とす)、監視ゾーン(MZ
i)及び/又は未監視ゾーン(UZ
j)内の同じ物体の複数操作の動き、オペレータ移動パターン(例えば、監視ゾーン(MZ
i)及び/又は未監視ゾーン(UZ
j)におけるオペレータの移動パターン(例えば、軌道セグメントのリスト)を決定するように構成される。
【0044】
本開示の一実施形態では、NERDコンポーネント408は、ビデオセンサー(
図4Aの404aから404fまで)からビデオストリームを受信して、バッファリングするためのストリームバッファ410と、第1から第kの検出器412aから412kのセットと、推定ユニット414を含む。NERDコンポーネント408は、ビデオセンサーのセット(
図4Aの404aから404fまで)に通信可能に結合された独立した構成要素であることが示されているが、NERDコンポーネント408が中央処理装置(
図2Aの201)の一部であってよいことは、当業者にとって明らかであろう。
【0045】
本開示の一実施形態では、第1から第kの検出器412aから412kは、ビデオセンサー(
図4Aの404aから404f)からビデオストリームを処理するように構成される。第1から第kの検出器412aから412kは、オペレータルート(
図4Aの420)に沿って倉庫の各場所でオペレータが費やした時間を決定するため、管理者のレポートを解析するため、及び倉庫の所与の場所で発生したリスク事故の数を決定するために、人間の検出及び追跡アルゴリズムを実装する1つ又は複数の検出器を含み得る。
【0046】
推定ユニット414は、倉庫の所与のゾーンでオペレータが費やした時間として表される「正常な」動作パラメータを学習し、新しいリスクタイプの発生を示唆する異常、例えば、当該ゾーンでオペレータが費やした時間が過剰であることを識別するように構成される。
【0047】
図4Aとともに
図4Bを参照すると、本開示の実施形態では、NERDコンポーネント408は、個々の監視ゾーン402からの結果を組み合わせて、それによって倉庫環境400のかなりの割合を監視するように構成される。本開示の実施形態では、倉庫についてのオペレータの作業は、オペレータルート420に沿った連続する監視ゾーン402を組み合わせることによって効果的に追跡され得る。したがって、オペレータによって取られるオペレータルート420は、N個の連続する監視ゾーン(MZ
i)(iは集合[1...N]の要素である)によって記述されてもよく、インデックスiは、ルートの開始時に1の値に設定され、オペレータルート420に沿って進行する間にオペレータによって入力された監視ゾーン(MZ
i)ごとに1ずつ増分される。オペレータルート420は、連続するビデオセンサー(404aから404f)の視野によってカバーされるので、視野がオペレータを取り込むビデオセンサーのアイデンティティを通じて、オペレータの位置が追跡されることができる。例えば、オペレータルート420をたどるオペレータは、ビデオセンサー404f、404d、404c、404a、404b、及び404eの視野を横切り得る。したがって、対応する監視ゾーン402a-402fは、所定のリスクインスタンス、すなわち、リスク事故に関与するオペレータを取り込んだビデオセンサーのID/ラベルに対応するリスク位置パラメータとリンクされ、それによってリスク事故と関連する監視ゾーン402a-402fがリンクされ得る。
【0048】
本開示の実施形態では、監視ゾーンは、それぞれの監視ゾーンにおいてビデオ映像を取り込むために位置決めされたビデオセンサーの識別子に基づく番号付けスキームを有し得る。あるいは、監視ゾーンは、倉庫管理者の要件に従って、(倉庫オペレータによって取られる経路とは無関係な)固定番号付けスキームを有し得る。
【0049】
全体として、NERDコンポーネント408は、ビデオセンサーのアレイ(404aから404fまで)によって取り込まれたビデオデータを処理し、新しい発見的リスクタイプを作成する。これを用いて、オペレータルートに沿った各モニタゾーン及び/又は未監視ゾーンにおける異なるプロセス異常の観察に基づいて、対応するリスクインスタンスを作成することができる。
【0050】
一例として、倉庫の特定のゾーンでオペレータによって費やされる時間が過剰であるというリスクは、オペレータルート420に沿った様々な監視ゾーン及び/又は未監視ゾーンでオペレータによって費やされる時間間隔を、関連する倉庫ゾーンで費やされる予想「正常な」時間間隔と比較することによって決定され得る。このリスクは、倉庫ゾーンで行われる作業/プロセスの減速を示し得る。倉庫ゾーンで費やされる「正常な」時間間隔は、過去に予め定義された週数の間にそこで費やされた時間間隔の平均として推定され得る。また、「正常な」時間間隔は、当該倉庫ゾーンで実行されるプロセスの予め定義された数のインスタンスを観察することによって推定され得る。あるいは、「正常な」時間間隔は、予め定義された過去の日数(N)の間に、オペレータルート420に沿った各監視ゾーン及び/又は未監視ゾーンで費やされた平均時間を計算することによって推定されてもよい。このリスクタイプの場合、トリガーを更新するためのルールは、「NERDコンポーネント408が監視ゾーン及び/又は未監視ゾーンで繰り返し費やされる過剰な時間を検出するたびに、
図2Bのウェアハウスリスクマップ210を更新する」ことであり得る。NERDコンポーネント408は、発見的リスクのリスクインスタンスを作成し、予め定義されたリスクについて説明したのと類似の方法で、トリガーの起動を通じて更新プロセスを実施する。上述の例の場合、トリガーは、所定の倉庫ゾーンでオペレータが費やした測定時間間隔に従って起動されることができる。
【0051】
別の例では、リスク事故が頻繁に発生する倉庫ゾーンは、監視ゾーン及び/又は未監視ゾーンにおける様々な未分類/未知の自己の発生によって引き起こされるプロセス中断の数の閾値を確立することによって発見され得る。このような事故は倉庫管理者から報告されることがあり、例えば、通路やラック間の間隔が狭く、ラックにしっかりと荷物を詰めることができず、荷物がラックから落下してしまうことが原因であり得る。このリスクタイプの場合、更新トリガーのルールは、「管理者が関連する監視ゾーン及び/又は未監視ゾーンで新しい事故を報告するたびに、ウェアハウスリスクマップ(
図2Bの210)を更新する」であり得る。NERDコンポーネント408は、自己が発生した倉庫ゾーンに従って報告された事故の数をカウントするために、管理者の報告を自動的に解析することによって、リスクを検出する。所定の倉庫ゾーンで報告された事故の数が多すぎることを検出すると、NERDコンポーネント408は、リスクタイプ属性を「バミューダトライアングル」に設定し、リスクの場所を関連する倉庫ゾーンの識別子に設定した新しいリスクインスタンスを作成する。そして、NERDコンポーネント408は、作成されたリスクインスタンスを含むようにウェアハウスリスクマップ(
図2Bの210)を更新する。
【0052】
このように、リスク領域の識別により、倉庫管理者/オペレータは、その原因に対処するための改善措置を迅速に取ることが与えられる。より重要なことは、リスク要因の影響を防止又は最小化するために倉庫の側面を再設計することを含む、事前対策に関する情報に基づく意思決定が行われ得ることである。再設計の側面は、操作手順の再定義及び/又は改善、倉庫環境の物理的及び物流的側面の再設計、梱包/積み付け基準の改善、より良い注文採取のルートの計画、(環境及びオペレータ)監視の強化等の実装などを含み得る。
【0053】
図5は、本開示の一実施形態にしたがって、
図1A及び
図4Aの倉庫環境におけるリスクの領域を識別及び管理するための方法を示すフローチャートである。本方法、及び本明細書に述べられる各方法は、本明細書に述べられるアーキテクチャによって、又は他のアーキテクチャによって実装され得る。本方法は、論理フローグラフのブロックの集合体として図示されている。ブロックのいくつかは、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせで実装されることができる動作を表している。ソフトウェアの文脈では、ブロックは、1つ又は複数のコンピュータ可読媒体に格納され、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、言及された動作を実行するコンピュータ実行可能な指令を表している。一般に、コンピュータ実行可能な指令は、特定の機能を実行し、特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。
【0054】
コンピュータ可読媒体は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含んでもよく、この記憶媒体には、ハードディスク、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROM、DVD、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、磁気又は光カード、固体メモリデバイス、又は電子指令を格納するのに適した他のタイプの記憶媒体を含み得る。さらに、いくつかの実装では、コンピュータ可読媒体は、一時的コンピュータ可読信号(圧縮形式又は非圧縮形式)を含み得る。コンピュータ可読信号の例としては、キャリアを使用して変調されているか否かにかかわらず、コンピュータプログラムをホスト又は実行するコンピュータシステムがアクセスするように構成され得る信号(インターネット又は他のネットワークを通じてダウンロードされた信号を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。最後に、動作が説明される順序は、限定として解釈されることを意図しておらず、説明される動作の任意の数は、プロセスを実施するために任意の順序で、及び/又は並行して組み合わされてよい。
【0055】
ステップ502において、倉庫環境に設置された1つ又は複数のビデオセンサーの各視野が、1つ又は複数の監視ゾーン、及び1つ又は複数の未監視ゾーンをそこに生成するために使用される。1つ又は複数のセンサーは、さもなくば、物体を隠すような障害物がない場合に物体の存在が検出され得る空間ボリュームに対応する視野を有する。本開示の文脈では、視野は、オペレータルートもカバーし、オペレータルートは、タスク期間中に倉庫オペレータによって横断される経路として定義され、タスク期間は、オペレータが監督者からタスクリストを受け取った瞬間からタスクリスト上の全てのタスクを終了するまでの時間期間として定義される。タスクリスト上のタスクは、操作、注文補充、パレットロード/アンロード、ラックの補充などの複数の作業を含み得ることに留意されたい。ステップ504において、各ビデオセンサーによって取り込まれたビデオストリームを含む情報が格納される。
【0056】
ステップ506において、ビデオストリームの各々が処理・集約され、倉庫作業を実行している間に倉庫オペレータによってたどられるオペレータルートに関連するリスクインスタンスに関する情報を生成し、リスク識別情報は、少なくとも1つのリスクゾーン、及び対応するリスクタイプ、及びリスクレベルを含み、リスクゾーンは1つ又は複数のリスクインスタンスに対応する倉庫環境内の区域である。本開示の一実施形態において、倉庫作業は、操作タスク、注文補充タスク、パレットロード/アンロードタスク、及びラック補充タスクのうちの少なくとも1つから選択される。リスクは、重い荷物から生じる予め定義されたリスク、壊れやすい荷物から生じる予め定義されたリスク、及び発見的リスクのうち少なくとも1つから選択される。本開示の一実施形態では、1つ又は複数の予め定義されたリスクの発生が検出され、各リスクの位置がウェアハウスリスクマップ上にマークされ、それによって対応するリスクインスタンスが例示される。一例では、予め定義されたリスクは、重い荷物から生じるリスクを含み、当該リスクの位置は、在庫リストから決定され、対応するウェアハウスリスクマップは、在庫リストが変化するたびに更新される。
【0057】
本開示の実施形態において、1つ又は複数の発見的リスクは、オペレータが費やした時間、物体操作の動き、及びオペレータの作業パターンを、オペレータが費やした対応する予め定義された時間、予め定義された物体操作の動き、及び予め定義されたオペレータ作業パターンと比較することによって決定される。
【0058】
ステップ508において、リスクインスタンス情報に基づいてウェアハウスリスクマップが生成され、ウェアハウスリスクマップは、観察された倉庫環境の2次元マップに識別されたリスクゾーンを重ね合わせることによって生成される。重ね合わせたリスクゾーンは、第1のラック及び第2のラックなどの2つの異なるリスクインスタンスに対応するマップ上の部分的に重なったゾーン(領域)である。ウェアハウスリスクマップは、その集合的視野が各リスクインスタンスに関連するすべての場所をカバーするように、倉庫環境におけるビデオカメラの空間的展開を最適化するために使用される。
【0059】
ステップ510において、ウェアハウスリスクマップは、ウェアハウスリスクマップに記録された少なくとも1つのリスクインスタンスについて、リスクタイプ、リスクレベル、及びリスクゾーンの少なくとも1つが変化したときにリアルタイムで更新される。本開示の実施形態では、リスクゾーンのリスクレベルは、特定のリスク事故がリスクゾーンで起こる確率に基づいて計算され、リスクレベルは、最近のリスクレベル、及びグローバルリスクレベルという2つの構成要素を含み、最近のリスクレベルは、リスクゾーンで最近起こったリスク事故の数をリスクゾーンで行われた総作業数の割合として表し、グローバルリスクレベルは、リスクゾーンでのリスク事故の発生回数の総数を行われた総作業数の割合として表している。
【0060】
上述の本開示の実施形態に対する変更は、添付の請求項によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく可能である。本開示を説明し主張するために使用される「含む」、「構成する」、「組み込む」、「からなる」、「有する」、「である」などの表現は、非排他的に解釈されることを意図しており、すなわち、明示的に説明されていないアイテム、構成要素又は要素も存在することを許容する。また、単数形への言及は、複数形への関連付けと解釈される。