(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ユーザに口腔ケアフィードバックを与えるための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A46B 15/00 20060101AFI20240621BHJP
A61C 17/22 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A46B15/00 K
A61C17/22 A
(21)【出願番号】P 2023525465
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2021079438
(87)【国際公開番号】W WO2022090097
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-11-30
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ティドボール ブライアン イーズリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラー デュラン ホセ マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ファレル ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ディキメン グール
(72)【発明者】
【氏名】ピブス ロベルト ヨセフ リー
(72)【発明者】
【氏名】ラバディ レサマ イヴォンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ チェルシー
(72)【発明者】
【氏名】シュタルケ エリザベス ミヒャエル
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/202054(WO,A1)
【文献】特開2017-060661(JP,A)
【文献】特開2014-205063(JP,A)
【文献】特表2018-515248(JP,A)
【文献】特表2019-534081(JP,A)
【文献】特表2020-533149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/200746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B15/00
A61C17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時間期間の間、口腔ケアデバイスを使用して口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促す
システムの作動方法であって、
前記システムは、処理ユニット、記録ユニット及びフィードバックユニットを備え、前
記方法は、
前記記録ユニットが、過去の口腔ケアセッション
ごとに口腔ケア時間を記録するステップであって、前記
過去の口腔ケアセッションは、前記ユーザが前記口腔ケアセッションを開始した後に、前記所定の時間期間が経過する前に終了する少なくとも1つの口腔ケアセッションを含む、口腔ケア時間を記録するステップと、
前記処理ユニットが、前記
過去の口腔ケアセッションに基づいて口腔ケア時間特性を計算するステップと、
前記処理ユニットが、口腔ケアセッションについて、前記口腔ケア時間特性に基づいて前記ユーザにフィードバックを与えるための、前記ユーザが口腔ケアルーチンを実行することを開始した
ときから後の時点を決定するステップと、
前記フィードバックユニットが、前
記口腔ケアセッション中に、決定された前記時点において前記ユーザにフィードバックを与え
るステップと
を有する
、方法。
【請求項2】
前記フィードバックが、
光と、
音と、
触
覚と、
電
気と
のうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記
過去の口腔ケアセッションについての前記口腔ケア時間を記録するステップは、
前記口腔ケアデバイスがオンにされたときにタイマーを始動し、前記口腔ケアデバイスがオフにされたときに前記タイマーを停止することによって前記口腔ケア時間を自動的に記録するステップと、
前記口腔ケアデバイスの動きセンサーによって得られた動き信号に基づいて前記口腔ケア時間を決定するステップと、
前記口腔ケアデバイスの圧力センサーによって得られた圧力信号に基づいて前記口腔ケア時間を決定するステップと、
前記口腔ケアデバイスの近傍のマイクロフォンによって得られた音信号に基づいて前記口腔ケア時間を決定するステップと
のうちの
1つを有する、請求項1又は2に記載
の方法。
【請求項4】
前記口腔ケアセッションに基づいて前記口腔ケア時間特性を更新するステップをさらに有する、請求項1から3のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項5】
前記口腔ケア時間特性を更新するステップが、
各口腔ケアセッションに基づいて移動平均を計算するステップを有する、請求項4に記載
の方法。
【請求項6】
所定の時間期間の間、口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すためのシステムであって、前記システムは、
口腔ケアデバイスと、
請求項1から5のいずれか一項に記載
の方法を実行する処理ユニットと、
前記
過去の口腔ケアセッションを記録するための、前記処理ユニットと通信している記録ユニットと、
決定された前記時点において前記ユーザにフィードバックを与えるための、前記処理ユニットと通信している前記フィードバックユニットと
を備える、システム。
【請求項7】
前記処理ユニット、前記記録ユニット及び前記フィードバックユニットが前記口腔ケアデバイスに組み込まれた、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記口腔ケアデバイスが、
電動歯ブラシと、
電動ブラッシングマウスピースと、
電動フロッシングデバイスと、
電動歯ホワイトニングデバイスと
のうちの1つ又は複数を備える、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記記録ユニットが、
タイマーと、
動きセンサーと、
圧力センサーと、
マイクロフォンと
のうちの1
つを備える、請求項6から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理ユニットが
、スマートデバイスに組み込まれ、
前記口腔ケアデバイスが、前記処理ユニットと通信している通信ユニットをさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記フィードバックユニットが前記スマートデバイスにさらに組み込まれるか、
前記フィードバックユニットが前記口腔ケアデバイスに組み込まれ、前記フィードバックユニットが前記通信ユニットと通信しているか、又は
前記フィードバックユニットが充電ユニットに組み込まれ、前記充電ユニットが前記口腔ケアデバイスを充電する、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記記録ユニットが前記スマートデバイスに組み込まれるか、
前記記録ユニットが前記口腔ケアデバイスに組み込まれ、前記記録ユニットが前記通信ユニットと通信しているか、又は
前記記録ユニットが充電ユニットに組み込まれ、前記充電ユニットが前記口腔ケアデバイスを充電する、
請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記フィードバックユニットが、
光源と、
スピーカーと、
触覚フィードバックユニットと、
電気信号生成器と
のうちの1つ又は複数を備える、請求項7から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
請求項6から13のいずれか一項に記載のシステムで実行されたときに、前記システムに請求項1から5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法のすべてのステップを実行させるコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔ケアの分野に関し、より詳細には、口腔ケア監視の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシ及び他の口腔ケアデバイスのユーザは、口腔ケアルーチンを実行するための推奨される時間長に達する前にルーチンをやめることがよくある。例えば、電動歯ブラシの場合、ユーザは、推奨される2分間の歯磨きルーチンが終わる前に歯磨きセッションを終えることが多い。特に、日常的に、一貫して、推奨される2分間の歯磨きルーチンを完了しないユーザがいる。口腔ケアルーチンを実行するための推奨される時間長に達する前にルーチンを終えることは、不完全な口腔ケアの範囲、及び口腔衛生上の厄介な問題につながり得る。
【0003】
多くの既存の電動歯ブラシは、一定の間隔でアクティブ化される様々なタイプのインジケータによって時間の経過を示すシステムを有し、それらのインジケータは、口の異なる領域をいつ切り替えるべきかをユーザに示す。
【0004】
一定の間隔でのフィードバックの提供にもかかわらず、多くのユーザは、依然として、電動歯ブラシを使用するときに、推奨される2分間の歯磨きルーチンを完了しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、日常的に口腔ケアルーチンを実行するための推奨される時間長を完了するユーザの数を増やす手段が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は請求項によって定義される。
【0007】
本発明の一態様による例によれば、所定の時間期間の間、口腔ケアデバイスを使用して口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すための方法であって、本方法は、
複数の前の口腔ケアセッションを記録するステップであって、前の口腔ケアセッションは、ユーザが口腔ケアセッションを開始した後に、所定の時間期間が経過する前に終了する少なくとも1つの口腔ケアセッションを含む、複数の前の口腔ケアセッションを記録するステップと、
複数の前の口腔ケアセッションに基づいて口腔ケア時間特性を計算するステップと、
後続の口腔ケアセッションについて、口腔ケア時間特性に基づいてユーザにフィードバックを与えるための、ユーザが口腔ケアルーチンを実行することを開始した後の時点を決定するステップと、
後続の口腔ケアセッション中に、決定された時点においてユーザにフィードバックを与えるステップと
を有する方法が提供される。
【0008】
本方法はコンピュータ実装される。複数の前の口腔ケアセッションの記録は、口腔ケア時間を記録することを伴う。
【0009】
本方法は、ユーザが口腔ケアルーチンを実行する時間長に基づいて、ユーザに個人化されたフィードバックを与えるための手段を提供する。
【0010】
このようにして、所定の時間期間の間、口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すために、後続の口腔ケアセッション中に最適な時間にユーザにフィードバックが与えられる。
【0011】
フィードバックのタイミングはユーザ固有ベースで決定されるので、フィードバックは、所定の時間期間の間、口腔ケアルーチンを実行することを個々のユーザにうまく促す可能性が高くなる。
【0012】
一実施形態では、フィードバックは、
光信号と、
音信号と、
触覚信号と、
電気信号と
のうちの1つ又は複数を含む。
【0013】
このようにして、任意の好適な手段を使用してユーザにフィードバックが与えられる。
【0014】
一実施形態では、前の口腔ケアセッションについての口腔ケア時間を記録するステップは、
口腔ケアデバイスがオンにされたときにタイマーを始動し、口腔ケアデバイスがオフにされたときにタイマーを停止することによって口腔ケア時間を自動的に記録するステップと、
口腔ケアデバイスの動きセンサーによって得られた動き信号に基づいて口腔ケア時間を決定するステップと、
口腔ケアデバイスの圧力センサーによって得られた圧力信号に基づいて口腔ケア時間を決定するステップと、
口腔ケアデバイスの近傍のマイクロフォンによって得られた音信号に基づいて口腔ケア時間を決定するステップと
のうちの1つ又は複数を有する。
【0015】
このようにして、ユーザが口腔ケアデバイスをタイマー、圧力センサー、動きセンサー又はマイクロフォンとして使用する際に、前の口腔ケアセッションの記録が自動的に収集される。口腔ケアセッションを自動的に記録することによって、本方法は、効果を発揮するためにユーザからのいかなる能動的な入力も必要としない。
【0016】
一実施形態では、本方法は、後続の口腔ケアセッションに基づいて口腔ケア時間特性を更新するステップをさらに有する。
【0017】
このようにして、最適なフィードバックのタイミングを維持するために、後続の口腔ケアセッション中にユーザにフィードバックが与えられる時点が変更される。
【0018】
さらなる一実施形態では、口腔ケア時間特性を更新するステップは、各後続の口腔ケアセッションに基づいて移動平均を計算するステップを有する。
【0019】
このようにして、ユーザの最適な口腔ケア時間を記述する口腔ケアセッションのみが、フィードバックのタイミングを決定するために使用される。
【0020】
本発明の一態様による例によれば、処理システムを有する計算デバイス上で実行されたときに、その処理システムに、上記で説明した方法のすべてのステップを実行させるコンピュータプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラムが提供される。
【0021】
本発明の一態様による例によれば、所定の時間期間の間、口腔ケアデバイスを使用して口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すための処理ユニットであって、本処理ユニットは、
前の口腔ケアセッションの複数の記録を得ることであって、前の口腔ケアセッションは、ユーザが口腔ケアセッションを開始した後に、所定の時間期間が経過する前に終了する少なくとも1つの口腔ケアセッションを含む、前の口腔ケアセッションの複数の記録を得ることと、
複数の前の口腔ケアセッションに基づいて口腔ケア時間特性を計算することと、
後続の口腔ケアセッションについて、口腔ケア時間特性に基づいてユーザにフィードバックを与えるための、ユーザが口腔ケアルーチンを開始した後の時点を決定することと、
後続の口腔ケアセッション中に、決定された時点においてユーザにフィードバックを与えるための信号を生成することと
を行う、処理ユニットが提供される。
【0022】
本発明の一態様による例によれば、所定の時間期間の間、口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すためシステムであって、本システムは、
口腔ケアデバイスと、
上記で説明した処理ユニットと、
複数の前の口腔ケアセッションを記録するための、処理ユニットと通信している記録ユニットと、
決定された時点においてユーザにフィードバックを与えるための、処理ユニットと通信しているフィードバックユニットと
を備える、システムが提供される。
【0023】
一実施形態では、処理ユニット、記録ユニット及びフィードバックユニットが口腔ケアデバイスに組み込まれる。
【0024】
一実施形態では、口腔ケアデバイスは、
電動歯ブラシと、
電動ブラッシングマウスピースと、
電動フロッシングデバイスと、
電動歯ホワイトニングデバイスと
のうちの1つ又は複数を備える。
【0025】
一実施形態では、記録ユニットは、
タイマーと、
動きセンサーと、
マイクロフォンと、
圧力センサーと
のうちの1つ又は複数を備える。
【0026】
一実施形態では、処理ユニットは、
スマートフォン、
スマートウォッチ、及び
スマートホームデバイス
など、スマートデバイスに組み込まれ、
口腔ケアデバイスは、処理ユニットと通信している通信ユニットをさらに備える。
【0027】
一実施形態では、
フィードバックユニットがスマートデバイスにさらに組み込まれるか、
フィードバックユニットが口腔ケアデバイスに組み込まれ、そのフィードバックユニットが通信ユニットと通信しているか、又は
フィードバックユニットが充電ユニットに組み込まれ、その充電ユニットが口腔ケアデバイスを充電する。
【0028】
一実施形態では、
記録ユニットがスマートデバイスに組み込まれるか、
記録ユニットが口腔ケアデバイスに組み込まれ、その記録ユニットが通信ユニットと通信しているか、又は
記録ユニットが充電ユニットに組み込まれ、その充電ユニットが口腔ケアデバイスを充電する。
【0029】
一実施形態では、フィードバックユニットは、
光源と、
スピーカーと、
触覚フィードバックユニットと、
電気信号生成器と
のうちの1つ又は複数を備える。
【0030】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下で説明する実施形態から明らかになり、それらの実施形態を参照すれば解明されよう。
【0031】
本発明のより良い理解のために、及び本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、次に、単に例として添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】所定の時間期間の間、口腔ケアデバイスを使用して口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すための方法を示す図である。
【
図2】本発明の一態様による、口腔ケアデバイスとしての電動歯ブラシの概略表現を示す図である。
【
図3】本発明の一態様による、口腔ケアシステムの概略表現を示す図である。
【
図4】本発明のさらなる一態様による、口腔ケアシステムの概略表現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明について図を参照しながら説明する。
【0034】
発明を実施するための形態及び具体例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、単に例示の目的のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより良く理解されよう。図は概略にすぎず、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。また、図全体にわたって同じ又は同様の部分を示すために同じ参照番号が使用されることを理解されたい。
【0035】
本発明は、所定の時間期間の間、口腔ケアデバイスを使用して口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すための方法を提供する。本方法は、複数の前の口腔ケアセッションを記録するステップであって、前の口腔ケアセッションは、ユーザが口腔ケアセッションを開始した後に、所定の時間期間が経過する前に終了する少なくとも1つの口腔ケアセッションを含む、複数の前の口腔ケアセッションを記録するステップを有する。複数の前の口腔ケアセッションに基づいて口腔ケア時間特性が計算され、後続の口腔ケアセッションについて、口腔ケア時間特性に基づいてユーザにフィードバックを与えるための、ユーザが口腔ケアルーチンを実行することを開始した後の時点が決定される。ユーザは、次いで、後続の口腔ケアセッション中に、決定された時点においてフィードバックを与えられる。
【0036】
図1は、所定の時間期間の間、口腔ケアデバイスを使用して口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すための方法100を示している。
【0037】
口腔ケアデバイスは、電動歯ブラシと、電動ブラッシングマウスピースと、電動フロッシングデバイスと、電動歯ホワイトニングデバイスとのうちの1つ又は複数を含み得る。本方法が口腔ケア環境においてどのように実施されるかの例示的な一例を与えるために、電動歯ブラシのコンテキストにおいて
図1の方法について説明する。しかしながら、本明細書で説明する方法は、上記に記載した口腔ケアデバイスのいずれか、又は実際には、任意の好適な電動口腔ケアデバイスに適用され得ることに留意されたい。
【0038】
本方法は、ステップ110において、複数の前の口腔ケアセッション、特に口腔ケア時間を記録するために記録ユニットを使用することによって開始し、前の口腔ケアセッションは、ユーザが口腔ケアセッションを開始した後に、所定の時間期間が経過する前に終了する少なくとも1つの口腔ケアセッションを含む。
【0039】
例えば、口腔ケアデバイスが電動歯ブラシである場合、ユーザが電動歯ブラシを使用してユーザの歯を磨くたびに、歯磨きセッションが口腔ケアセッションとして記録される。複数の記録された口腔ケアセッションにわたって、所与のユーザの一般的な歯磨き、又は口腔ケア、挙動を識別することが可能である。
【0040】
例えば、ユーザが、常に、少なくとも推奨される2分間の時間期間の間、ユーザの歯を磨く場合、ユーザは、所定の時間期間の間、口腔ケアルーチンを実行するためにさらなる促進を必要としない。口腔ケアセッションの記録は、ユーザが口腔ケアルーチンを実行するための所定の時間期間を維持することを保証するために行われている。
【0041】
しかしながら、ユーザが、所定の時間期間が経過する前に口腔ケアセッションを実際に終えた場合、ユーザは、所定の時間期間の完了まで口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すためのフィードバックを受信することから恩恵を受ける。
【0042】
複数の前の口腔ケアセッションを記録するステップはいくつかのやり方で実行され得る。例えば、前の口腔ケアセッションについての口腔ケア時間を記録するステップは、口腔ケアデバイスがオンにされたときにタイマーを始動し、口腔ケアデバイスがオフにされたときにタイマーを停止することによって口腔ケア時間を自動的に記録するステップと、口腔ケアデバイスの動きセンサーによって得られた動き信号に基づいて口腔ケア時間を決定するステップと、口腔ケアデバイスの圧力センサーによって得られた圧力信号に基づいて口腔ケア時間を決定するステップと、口腔ケアデバイスの近傍のマイクロフォンによって得られた音信号に基づいて口腔ケア時間を決定するステップとのうちの1つ又は複数を有する。
【0043】
ステップ120では、複数の前の口腔ケアセッションに基づいて口腔ケア時間特性が計算される。
【0044】
口腔ケア時間特性は、口腔ケアセッションの時間に関する任意の特性である。例えば、口腔ケア時間特性は、口腔ケアルーチンを実行することに費やされる最小時間、口腔ケアルーチンを実行することに費やされる平均時間、口腔ケアルーチンを実行することに費やされる時間の分散、口腔ケアルーチンが実行される平均時刻、口腔ケアルーチンが実行される頻度などのうちの1つ又は複数を含む。
【0045】
口腔ケア時間特性は各後続の口腔ケアセッションを用いて更新されることに留意されたい。例えば、口腔ケア時間特性を更新するステップは、各後続の口腔ケアセッションに基づいて口腔ケアルーチンを実行することに費やされる移動平均時間など、移動平均を計算するステップを有する。
【0046】
ステップ130では、後続の口腔ケアセッションについて、口腔ケア時間特性に基づいてユーザにフィードバックを与えるための、ユーザが口腔ケアルーチンを実行することを開始した後の時点が決定される。
【0047】
例えば、最小口腔ケア時間に達する前に、又は最小口腔ケア時間に達したときに、フィードバックが与えられるべきであることが決定される。代替的に、平均口腔ケア時間に達する前に、又は平均口腔ケア時間に達したときに、フィードバックが与えられるべきであることが決定される。さらに、口腔ケアルーチンが一定の時刻に実行されるときに、平均口腔ケア時間は、口腔ケアルーチンが実行される他の時刻とは異なることがあり、そのことは、後続の口腔ケアルーチンが実行される時刻に基づいて後続の口腔ケアセッション中の異なる点においてフィードバックが与えられることを意味することが決定され得る。ユーザが朝及び夕方にユーザの歯を磨く例では、ユーザは、夕方の口腔ケアセッション中の時点とは異なる、朝の口腔ケアセッション中の時点においてフィードバックを必要とすることがある
【0048】
このようにして、ユーザは、通常、ユーザの歯を磨くことなどの口腔ケアルーチンを終える前に、その口腔ケアルーチンを継続することをユーザに促すためのフィードバックを受信し、それにより、ユーザが、依然として口腔ケアルーチンを実行しながらフィードバックを受信することが保証される。
【0049】
ユーザにフィードバックを与えるための時点の決定は、任意の好適なアルゴリズムを使用して計算される。さらに、口腔ケア時間特性は、出力としてのフィードバックを与えるために推奨される時点を生成するために、入力として機械学習アルゴリズムに与えられる。
【0050】
機械学習アルゴリズムは、出力データを生成又は予測するために入力データを処理する任意の自己トレーニングアルゴリズムである。ここで、入力データは口腔ケア時間特性を含み、出力データは、ユーザにフィードバックを与えるための推奨される時点を含む。
【0051】
本発明において採用するための好適な機械学習アルゴリズムが当業者に明らかになろう。好適な機械学習アルゴリズムの例としてはデシジョンツリーアルゴリズム及び人工ニューラルネットワークがある。ロジスティック回帰(logistic regression)、サポートベクターマシン又はナイーブ(Naive)ベイズモデルなどの他の機械学習アルゴリズムが好適な代替である。
【0052】
人工ニューラルネットワーク(又は単にニューラルネットワーク)の構造は人間の脳から着想を得ている。ニューラルネットワークはレイヤから構成され、各レイヤは複数のニューロンを含む。各ニューロンは数学演算を含む。特に、各ニューロンは、単一のタイプの変換の異なる重み付けされた(例えば、同じタイプの変換、シグモイド変換など、ただし重み付けが異なる)組合せを含み得る。入力データを処理するプロセスにおいて、各ニューロンの数学演算は、数値出力を生成するために入力データに対して実行され、ニューラルネットワークにおける各レイヤの出力は、順次、次のレイヤ中に供給される。最終レイヤは出力を与える。
【0053】
機械学習アルゴリズムをトレーニングする方法はよく知られている。一般に、そのような方法は、トレーニング入力データエントリと、対応するトレーニング出力データエントリとを含む、トレーニングデータセットを得るステップを有する。予測される出力データエントリを生成するために、初期化された機械学習アルゴリズムが各入力データエントリに適用される。予測される出力データエントリと、対応するトレーニング出力データエントリとの間の誤差は、機械学習アルゴリズムを修正するために使用される。このプロセスは、誤差が収束し、予測される出力データエントリがトレーニング出力データエントリに十分に類似する(例えば±1%)まで繰り返され得る。このことは、一般的に教師あり(supervised)学習技法として知られている。
【0054】
例えば、機械学習アルゴリズムがニューラルネットワークから形成される場合、誤差が収束するまで、各ニューロンの数学演算(の重み付け)が修正される。ニューラルネットワークを修正する知られている方法は、勾配降下(gradient descent)アルゴリズム、バックプロパゲーションアルゴリズムなどを含む。
【0055】
トレーニング入力データエントリは例示的な口腔ケア時間特性に対応する。トレーニング出力データエントリは、ユーザにフィードバックを与えるための推奨される時点に対応する。
【0056】
ステップ140では、後続の口腔ケアセッション中に、決定された時点においてユーザにフィードバックを与えるために、フィードバックユニットが制御される。フィードバックは、光信号と、音信号と、触覚信号と、電気信号とのうちの1つ又は複数を含み得る。フィードバックユニットは、以下で説明するように処理ユニットによって与えられる信号によって制御される。
【0057】
図2は、所定の時間期間の間、口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すためのシステムの少なくとも一部を形成する、口腔ケアデバイスとしての電動歯ブラシ200の概略表現を示している。電動歯ブラシは本体部分210とブラシヘッド部分220とを備え、ブラシヘッド部分は、口腔ケアルーチンを実行するためにユーザの口に与えられるように適応される。電動歯ブラシ200の本体部分210は、バッテリー230と、ブラシヘッド部分220を動作させるための駆動ユニット240とを備える。
【0058】
図2に示された例では、電動歯ブラシ200は、所定の時間期間の間、口腔ケアデバイスを使用して口腔ケアルーチンを実行することをユーザに促すための処理ユニット250を備える。処理ユニットは、
図1を参照しながら上記で説明した方法を実施するように適応される。
【0059】
より詳細には、処理ユニット250は、前の口腔ケアセッションの複数の記録を得ることであって、前の口腔ケアセッションは、ユーザが口腔ケアセッションを開始した後に、所定の時間期間が経過する前に終了する少なくとも1つの口腔ケアセッションを含む、前の口腔ケアセッションの複数の記録を得ることと、複数の前の口腔ケアセッションに基づいて口腔ケア時間特性を計算することと、後続の口腔ケアセッションについて、口腔ケア時間特性に基づいてユーザにフィードバックを与えるための、ユーザが口腔ケアルーチンを開始した後の時点を決定することと、後続の口腔ケアセッション中に、決定された時点においてユーザにフィードバックを与えるための信号を生成することとを行う。
【0060】
図2に示された例では、電動歯ブラシは、複数の前の口腔ケアセッションを記録するように適応された記録ユニット260と、決定された時点においてユーザにフィードバックを与えるように適応されたフィードバックユニット270とを備える。
【0061】
記録ユニット260は、タイマーと、動きセンサーと、圧力センサーと、マイクロフォンとのうちの1つ又は複数を備える。
【0062】
例えば、記録ユニットはタイマーを備え、タイマーは、ユーザが口腔ケアデバイスをオンにしたときに口腔ケアセッションを計時することを開始し、ユーザが口腔ケアデバイスをオフにしたときに口腔ケアセッションを計時することを停止するように適応される。
【0063】
さらなる一例では、記録ユニットは、加速度計、ジャイロスコープ及び/又は慣性測定ユニットなど、動きセンサーを備える。記録ユニットが動きセンサーを備える場合、記録ユニットは、ユーザが口腔ケアデバイスとやり取りすることに対応する動きが検出されたときに、口腔ケアセッションを記録することを開始するように適応される。記録ユニットは、10秒など、所定の時間長の間、動きセンサーがもはやいかなる動きも検出しないときに、口腔ケアセッションを記録することを停止する。
図2に示された例では、動きセンサーは電動歯ブラシ内の任意の点に位置し得る。
【0064】
さらなる一例では、記録ユニットは圧力センサーを備え、その場合、記録ユニットは、ユーザが口腔ケアデバイスとやり取りすることに対応する圧力の変化が検出されたときに、口腔ケアセッションを記録することを開始するように適応される。例えば、圧力センサーがブラシ本体210中に位置する場合、圧力の変化は、ユーザがブラシ本体を握ることに対応する。代替的に、圧力センサーがブラシヘッド220内に位置する場合、圧力の変化は、ブラシヘッドがユーザの口に入ることに対応する。さらなる代替例では、圧力センサーがブラシ本体の基部に位置する場合、圧力の変化は、口腔ケアデバイスが取り上げられることに対応する。記録ユニットは、圧力センサーが、セッションが開始する前に記録されたレベルまで圧力読取値を回復させる圧力の変化を感知したときに、例えば、ユーザが口腔ケアデバイスを放したとき、口腔ケアデバイスがユーザの口から離れたとき、又は口腔ケアデバイスが下に置かれたときに、口腔ケアセッションを記録することを停止する。
【0065】
またさらなる一例では、記録ユニットはマイクロフォンを備え、その場合、記録ユニットは、口腔ケアセッションに関連する音が検出されたときに口腔ケアセッションを記録することを開始するように適応される。音は、駆動ユニットの音、又は歯を磨く音など、任意の好適なトリガ音であり得る。代替的に、ユーザは、口腔ケアセッションの記録を開始するように意図された、マイクロフォンによって検出されるべきコマンドワードを話す。記録ユニットは、マイクロフォンがトリガ音を検出しなくなったときに、又はユーザが、口腔ケアセッションの記録を終了するように意図されたコマンドワードを話したときに、口腔ケアセッションを記録することを停止する。
【0066】
フィードバックユニット270は、光源と、スピーカーと、触覚フィードバックユニットと、電気信号生成器とのうちの1つ又は複数を備える。
【0067】
例えば、フィードバックユニットが光源を備える場合、フィードバックは、定常光、点滅光、光色の変化などのうちの1つ又は複数を含む。フィードバックユニットがスピーカーを備える場合、フィードバックは、短い可聴音、引き伸ばされた可聴音、繰り返す可聴音、複数の可聴音などのうちの1つ又は複数を含む。フィードバックユニットが、振動ユニットなど、触覚フィードバックユニットを備える場合、フィードバックは、短い触覚信号、引き伸ばされた触覚信号、繰り返す触覚信号、複数の触覚信号などのうちの1つ又は複数を含む。フィードバックユニットが電気信号生成器を備える場合、フィードバックは、例えば、ユーザにフィードバックを与えるために口腔ケアデバイスの挙動を変更するように適応された電気信号を含む。例えば、電気信号生成器は、ユーザにフィードバックを与えるために駆動ユニットの挙動を一時的に変更するための信号を生成する。
【0068】
フィードバックユニットが、上記で説明したフィードバック手段のうちの2つ以上を備える場合、ユーザはユーザの好ましいフィードバックタイプを選択し得る。
【0069】
図3は口腔ケアシステム300の概略表現を示しており、口腔ケアデバイス310は、
図2を参照しながら上記で説明した記録ユニットなど、記録ユニット315を備える電動歯ブラシである。
【0070】
図3に示された例では、口腔ケアシステム300は、口腔ケアデバイス310を受け、口腔ケアデバイス310を充電するように適応された、充電ユニット320を備える。さらに、充電ユニット320は処理ユニット330とフィードバックユニット340とを備える。処理ユニット及びフィードバックユニットは、
図2を参照しながら上記で説明したように実装される。言い換えれば、処理ユニット及びフィードバックユニットは、口腔ケアデバイス自体の中にではなく、口腔ケアシステムの充電ユニット中に与えられる。口腔ケアデバイスの記録ユニットは、口腔ケアデバイスが充電ユニットに接触させられたときに処理ユニットと通信させられる。
【0071】
代替的に、処理ユニットは口腔ケアデバイス中に与えられ、フィードバックユニットは充電ユニット中に与えられるか、又は処理ユニットは充電ユニット中に与えられ、フィードバックユニットは口腔ケアデバイス中に与えられる。口腔ケアデバイス及び充電ユニットは、それらが物理的に接続されていないときに口腔ケアデバイスと充電ユニットとの間のワイヤレス通信を確立するための通信ユニットを備え得る。
【0072】
さらに、充電ユニットは、上記で説明した圧力センサー又はマイクロフォンなど、記録ユニット350を備える。代替的に、記録ユニットは、ユーザが口腔ケアデバイスを充電ユニットから取り外したときに口腔ケアセッションを計時することを開始し、ユーザが口腔ケアデバイスを充電ユニットに戻したときに口腔ケアセッションを計時することを停止するように適応されたタイマーを備える。
【0073】
図4は、口腔ケアシステム400の概略表現を示しており、口腔ケアデバイス410は、スマートデバイス420とワイヤレス通信している通信ユニット415を備える電動歯ブラシである。
【0074】
図4に示された例では、スマートデバイス420はスマートフォンであるが、スマートデバイスは、スマートフォンと、スマートウォッチと、スマートホームデバイスとのうちの1つ又は複数を含む。
【0075】
処理ユニットと、フィードバックユニットと、記録ユニットとのうちの1つ又は複数がスマートデバイスに組み込まれ得る。
【0076】
例えば、記録ユニットは、
図2を参照しながら上記で説明したように口腔ケアデバイスに組み込まれる。記録された口腔ケア時間は、次いで、通信ユニット415を介して、処理ユニットとフィードバックユニットとを備えるスマートデバイスに与えられる。スマートデバイスは、ディスプレイを介して与えられる光信号、スピーカーを介して与えられる可聴信号、例えば振動を生成することによる触覚信号、及び電気信号など、上記で説明したように任意の好適なタイプのフィードバックを生成し、そのフィードバックは、口腔ケアデバイスの挙動を変更するために口腔ケアデバイスの通信ユニットに通信されるか、又はフィードバックをユーザに通信するためにスマートデバイスの態様を変更するために使用される。
【0077】
代替的に、スマートデバイスは、上記で説明したようにマイクロフォンを備える記録ユニットを備える。さらに、スマートデバイスがスマートウォッチである場合、スマートデバイスは、動きセンサーを備える記録ユニットを備える。
【0078】
図2~
図4において説明した実施形態の任意の組合せも達成され得ることに留意されたい。例えば、記録ユニットは口腔ケアデバイスに組み込まれ、処理ユニットはスマートデバイスに組み込まれ、フィードバックユニットは充電ユニットに組み込まれ、各構成要素は1つ又は複数の通信ユニットによってリンクされる。
【0079】
開示された実施形態の変形形態は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解され、実施され得る。特許請求の範囲では、「を備える」又は「を有する」という単語は他の要素又はステップを除外せず、単数形の要素は複数を除外しない。
【0080】
単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載されたいくつかの項目の機能を実現する。
【0081】
相互に異なる従属請求項において一定の測定値が具陳されたという単なる事実は、これらの測定値の組合せを有利に使用することができないことを示すものではない。
【0082】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体など、好適な媒体上で記憶/配布され得るが、インターネット又は他のワイヤード若しくはワイヤレス電気通信システムを介してなど、他の形態でも配布され得る。
【0083】
「ように適応される」という用語が特許請求の範囲又は本明細書で使用される場合、「ように適応される」という用語は「ように構成される」という用語と等価であることが意図されることに留意されたい。
【0084】
請求項中のいかなる参照符号もその範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。