(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20240621BHJP
A45D 40/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B65D83/00 C
A45D40/04 Z
(21)【出願番号】P 2024026118
(22)【出願日】2024-02-26
【審査請求日】2024-02-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524072673
【氏名又は名称】石神 敬将
(73)【特許権者】
【識別番号】524072684
【氏名又は名称】風岡 翔太
(73)【特許権者】
【識別番号】524072695
【氏名又は名称】瀬尾 慎介
(73)【特許権者】
【識別番号】524072709
【氏名又は名称】佐藤 颯良
(73)【特許権者】
【識別番号】524072710
【氏名又は名称】須田 隆ノ介
(73)【特許権者】
【識別番号】524072721
【氏名又は名称】舩戸 祐汰
(73)【特許権者】
【識別番号】524072732
【氏名又は名称】村上 和優
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】弁理士法人Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石神 敬将
(72)【発明者】
【氏名】風岡 翔太
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 慎介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 颯良
(72)【発明者】
【氏名】須田 隆ノ介
(72)【発明者】
【氏名】舩戸 祐汰
(72)【発明者】
【氏名】村上 和優
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188182(JP,A)
【文献】実公昭50-40703(JP,Y1)
【文献】実公昭50-40702(JP,Y1)
【文献】特開2005-271940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
A45D 40/04
A45D 40/24
B43M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びた雄ネジ部を外周側面に有する内筒部と、
前記内筒部の筒内に配設され、雌ネジ部を内周側面に有する内受皿部と、
前記内筒部の筒内に配設され、軸線方向に延びた雄ネジ部を外周側面に有し前記内受皿部が螺合しているネジ杆部と、
前記内筒部の外周囲に配設された外筒部と、
前記内筒部と前記外筒部の間に配設され、雌ネジ部を内周側面に有し前記内筒部に螺合していると共に、前記外筒部に係合している外受皿部と、
前記ネジ杆部の軸線方向の基端部に一体化している底部と、
前記内筒部の軸線方向の基端部に一体化し、前記外筒部と前記底部との間に介在している鍔部と
を具備し、
前記内筒部と前記内受皿部と前記ネジ杆部の間に形成された内側収容空間に径小な第1塗布固形物が収容され、前記内筒部と前記外筒部と前記外受皿部の間に形成された外側収容空間に径大な第2塗布固形物が収容されることを特徴とする繰出容器。
【請求項2】
前記内筒部は、その内周側面に前記軸線方向に延びた突起状または溝状の案内部を有し、前記内受皿部は、その外周側面に前記案内部に嵌合した嵌合部を有することを特徴とする請求項1に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スティック糊、リップクリーム、口紅等の塗布に使用される繰出容器に関するもので、特に、細塗りと太塗りを可能とする繰出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙類等の貼り付けを行う糊付けには、例えば、指やヘラ等で糊付け位置に塗り付けたり、チューブから押出して糊付け位置に塗布したりするでんぷん糊や、ボトル状の容器の先端に設けたスポンジやシリコンラバーから滲出させて糊付け位置に塗布する液状のり(水のり)や、繰り出し式の容器からスティック状の固形糊を繰り出して糊付け位置に塗布するスティック糊があるが、速乾性や貼り付けの仕上がりの綺麗さを求める場合には、水分が少なくて乾燥しやすく、糊付け対象の紙類等に皺、凹凸を生じさせ難いスティック糊が好適とされている。
【0003】
ところが、従来のスティック糊の製品は、その直径、塗り幅が特定の径であることから、1本のスティック糊の製品で、大きな面積に素早く塗ることと、細かい部分に食み出すことなく塗ることに対応していない。
即ち、スティック糊の製品の直径、塗り幅より細かい狭幅部分への糊付けを行う際には、糊が食み出して周囲を汚す恐れがあり、糊が食み出してもよいように不要な紙等を糊付け部の下に敷いたり、食み出した不要な糊を拭いたりする手間を要する。食み出した糊が無駄になることも多い。また、細かい部分への糊付けに、繰り出したスティック状の固形糊の先端の周縁部を塗布、使用すると、周縁部の形が崩れて、繰り出した固形糊を容器内に戻した際に、容器の先端開口縁から食み出した固形糊が容器の外面に付着して、容器を汚したり、容器の開口に被せるキャップを汚したり、キャップと容器を接着してしまい次回キャップを外すときに力を要することになったりとキャップの着脱に支障をきたしたりすることもある。更に、スティック糊の製品の直径、塗り幅が小さいものでは、大きな面積のものに塗布する場合、手間、時間を要する。一方、用途に応じたサイズのものを複数準備しておくとなると、ペンケース等に入れる持ち運びや保管に場所を採ることになる。
【0004】
ここで、特許文献1には、後端面を閉塞した筒状の圧縮可能なのり容器本体の前部外側面に該本体の長手方向に直線上に摺動可能に塗り巾切替部材を設け、該切替部材の摺動・係止により、容器本体前端部において、太塗ノズルと細塗ノズルの各先端部を切替え位置せしめて、該切替部材の片手操作により、のり塗布巾を太巾・細巾切替可能にしたことを特徴とする太巾・細巾切替塗布用のり容器の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、ノズルによる塗布であることから液体糊用であり、スティック状の固形糊に対応できないものである。
【0007】
そこで、本発明は、細塗りと太塗りを可能とする繰出容器の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の繰出容器は、軸線方向に延びた雄ネジ部を外周側面に有する内筒部と、前記内筒部の筒内に配設され、雌ネジ部を内周側面に有する内受皿部と、前記内筒部の筒内に配設され、軸線方向に延びた雄ネジ部を外周側面に有し前記内受皿部が螺合しているネジ杆部と、前記内筒部の外周囲に配設された外筒部と、前記内筒部と前記外筒部の間に配設され、雌ネジ部を内周側面に有し前記内筒部に螺合していると共に、前記外筒部に係合している外受皿部と、前記ネジ杆部の軸線方向の基端部に一体化している底部と、前記内筒部の軸線方向の基端部に一体化し、前記外筒部と前記底部との間に介在している鍔部とを具備し、前記内筒部と前記内受皿部と前記ネジ杆部により形成された内側収容空間に径小な第1塗布固形物が収容され、前記内筒部と前記外筒部と前記外受皿部により形成された外側収容空間に径大な第2塗布固形物が収容されるものである。
【0009】
上記内筒部は、軸線に沿って延びる円筒状または角筒状等の筒状を成し、その側面の外周面(外周壁面)に雄ネジが螺刻されているもの、即ち、軸線方向に沿って螺旋状に溝や突起が設けられているものである。なお、螺旋状に形成された溝や突起は、そこに螺合した外受皿部が軸線方向に沿って相対的に移動可能であれば、軸線方向に沿って螺旋状に連続しているものに限定されず、不連続になっていてもよい。
【0010】
上記内受皿部は、中央にネジ杆部が挿通されている孔を有し、その孔を形成している内周面(内周壁面)に雌ネジが螺刻されており、ネジ杆部の外周壁面に螺刻されている雄ネジとの螺接によりネジ杆部に螺合しているものである。この内受皿部は、内筒部と内受皿部とネジ杆部により形成される内側収容空間に第1塗布固形物が収容された際に、第1塗布固形物の軸方向の一端面(基端面、後端面)側を支持する。
【0011】
上記ネジ杆部は、略軸状を成し、その側面の外周面に雄ネジが螺刻されているもの、即ち、軸線方向に沿って螺旋状に溝や突起が設けられているものであり、内受皿部の孔に挿通され内受皿部が螺合しているものである。また、その軸線方向の基端部(後端部)には、底部が一体化されているものである。
【0012】
上記外筒部は、内筒部の外周囲に内筒部から所定間隔を空けて配設され、軸線に沿って延びる円筒状または角筒状等の筒状を成すものである。この外筒部は、その内周壁面等に外受皿部と係合する係合部を有し、外受皿部と係合しているものである。上記係合は、外筒部と外受皿部で動きが連動する関係であればよい。例えば、外筒部の内周側面と外受皿部の外周側面とに凹凸を設けてそれらの嵌合により外筒部と外受皿部を係合させることができる。
【0013】
上記外受皿部は、中央に内筒部が挿通されている孔を有し、その孔を形成している内周面に雌ネジが螺刻されており、内筒部の外周面に螺刻されている雄ネジとの螺接により内筒部に螺合しているものである。また、上記外受皿部は、その外周側面等に外筒部の内周面に係合する係合部を有し、外筒部と係合しているものである。この外受皿部は、内筒部と外筒部の間に形成される外側収容空間に第2塗布固形物が収容された際に、第2塗布固形物の軸方向の一端面(基端面、後端面)側を支持する。
【0014】
上記底部は、ネジ杆部の軸方向の基端部(後端部)に一体に設けられており、回動自在に鍔部に連結しているものである。
上記鍔部は、内筒部の軸方向の基端部に一体に設けられており、外筒部と底部との間に介在するものである。
【0015】
上記内側収容空間は、内筒部、内受皿部、及びネジ杆部により画成されているものであり、第2塗布固形物よりも径小な(幅狭な、細い)第1塗布固形物が充填、収容されるものである。
上記第1塗布固形物としては、例えば、軸状(スティック状)の固形糊、リップクリーム、口紅等が挙げられる。
【0016】
上記外側収容空間は、内筒部、外受皿部、及び外筒部により画成されているものであり、第1塗布固形物よりも径大な(幅狭な、太い)第2塗布固形物が充填、収容されるものである。
上記第2塗布固形物としては、例えば、軸状の固形糊、リップクリーム、口紅等が挙げられ、第1塗布固形物と同種のものであってもよいし、異種のものであってもよい。
【0017】
請求項2の発明の繰出容器の前記内筒部は、その内周側面に前記軸線方向に延びた突起状または溝状の案内部を有し、前記内受皿部は、その外周側面に前記案内部に嵌合した溝状または突起状の嵌合部を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係る繰出容器によれば、軸線方向に延びる雄ネジ部を外周側面に有する内筒部の筒内に、軸線方向に延びる雄ネジ部を外周側面に有するネジ杆部と、雌ネジ部を内周側面に有しネジ杆部に螺合した内受皿部とを配設して、内筒部、内受皿部、ネジ杆部との間に径小な第1塗布固形物を収容する内側収容空間を形成している。また、内筒部の外周囲に外筒部を配設し、更に、雌ネジ部を内周側面に有し内筒部に螺合すると共に、外筒部に係合した外受皿部を外筒部及び内筒部の間に配設して、外筒部、外受皿部、及び内筒部の間に径大な第2塗布固形物を収容する外側収容空間を形成している。そして、ネジ杆部の軸方向の基端部には底部が一体化され、また、内筒部の軸方向の基端部には鍔部が一体化されて当該鍔部が底部と外筒部の間に介在している。
【0019】
よって、底部を回動させると、底部に一体化しているネジ杆部が回動し、ネジ杆部に螺合している内受皿部がネジ杆部の軸線方向に沿ってネジ杆部上を移動する。これより、内筒部、内受皿部、及びネジ杆部の間に形成されている内側収容空間に収容される径小な第1塗布固形物が内筒部から繰出自在である。
また、外筒部を回動させると、外筒部に係合していると共に内筒部に螺合している外受皿部が回動し内筒部の軸線方向に沿って内筒部上を移動する。これより、内側収容空間の外周囲で、内筒部、外受皿部、及び外筒部の間に形成されている外側収容空間に収容される径大な第2塗布固形物が外筒部と内筒部の間から繰出自在である。
こうして、底部の回動により径小な第1塗布固形物が内筒部から突出自在であり、一方、外筒部の回動により、径大な第2塗布固形物が外筒部から突出自在である。
【0020】
したがって、底部のみを回転させて内受皿部をネジ杆部に対しその軸線方向の先端部側に移動させることで、径小な第1塗布固形物のみを内筒部から繰り出して、第1塗布固形物の径小な先端部の塗布面で塗布を行うこともできるし、外筒部のみを回転させて外受皿部を内筒部に対しその軸線方向の先端部側に移動させることで、径大な第2塗布固形物のみを内外筒部から繰り出して、第2塗布固形物の径大な先端部の塗布面で塗布を行うこともできるし、底部と外筒部を回転させて、径小な第1塗布固形物と径大な第2塗布固形物とを内筒部及び外筒部から繰り出してそれら第1塗布固形物の径小な先端部の塗布面及び第2塗布固形物の径大な先端部の塗布面を合わせて、塗布を行うこともできる。よって、幅広な塗布面と幅狭な塗布面とに切替えることができ、塗布面の形状面積を変化できる。即ち、細塗りと太塗りを可能とする。また、径小な第1塗布固形物と径大な第2塗布固形物とで異種の塗布固形物を収容することもでき、異種の塗布固形物を別々にまたは同時に塗布することが可能となる。
【0021】
請求項2の発明に係る繰出容器によれば、前記内筒部は、その内周側面に前記軸線方向に延びる突起状または溝状の案内部を有し、前記内受皿部は、その外周側面に前記案内部に嵌合した嵌合部を有し、内筒部の案内部に内受皿部の嵌合部が嵌合していることにより、ネジ杆部に螺合している内受皿部が内筒部の案内部に案内されながらネジ杆部の軸線方向に沿って移動する。よって、底部及びネジ杆部の回動で、それに螺合している内受皿部自体が回動することなく、即ち、空回りすることなく内受皿部をネジ杆部の軸線方向に沿って確実に移動させることが可能となる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、使い勝手が良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器の全体構成を説明するための斜視図である。
【
図2】
図2は本発明の実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器の容器本体の構成を説明するための縦断面図である。
【
図4】
図4は本発明の実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器の容器本体の構成を説明するための分解斜視図である。
【
図5】
図5(a)は本発明の実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器において第1固形糊を繰り出した状態を説明する斜視図、
図5(b)は本発明の実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器において第2固形糊を繰り出した状態を説明する斜視図、
図5(c)は本発明の実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器において第1固形糊及び第2固形糊を繰り出した状態を説明する斜視図である。
【
図6】
図6(a)は本発明の実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器において第1固形糊を繰り出した状態を説明する縦断面図、
図6(b)は本発明の実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器において第2固形糊を繰り出した状態を説明する縦断面図、
図6(c)は本発明の実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器において第1固形糊及び第2固形糊を繰り出した状態を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は、実施の形態中の同一または相当する機能部分を意味するものであるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0024】
[実施の形態]
本発明の実施の形態に係る繰出容器について、
図1乃至
図6を参照して説明する。本発明の実施の形態は、本発明の繰出容器をスティック糊容器に適用した例で示すものである。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態の繰出容器としてのスティック糊容器1は、樹脂(例えば、ポリプロピレン等の硬質樹脂)等からなり全体として略円筒状を成す容器本体2と、樹脂(例えば、ポリプロピレン等の硬質樹脂)等からなり容器本体2の先端部の開口部に対して着脱自在に嵌合(被嵌)し当該開口部を開閉自在とする有頂短円筒状のキャップ3とを備える。
【0026】
図1乃至
図6に示すように、容器本体2は、筒状の内筒部11と、内筒部11の筒内に配設された内受皿部12と、内筒部11の筒内に配設され内受皿部12を貫通しているネジ杆部13と、内筒部11の外周囲に配設された筒状の外筒部21と、内筒部11と外筒部21の間に配設された外受皿部22と、ネジ杆部13の軸方向の一端部に一体化している底部31と、内筒部11の軸線O方向の一端部に一体化し、外筒部21と底部31との間に介在した鍔部41とを備え、内筒部11と内受皿部12とネジ杆部13の間に第1固形糊Sが収容される内側収容空間10が形成され、また、内筒部11と外筒部21と外受皿部22との間に第2固形糊Lが収容される外側収容空間20が形成されている。
【0027】
内筒部11は、略円筒状を成し、外周側面(径方向外側の面、外周側壁面)に雄ネジが螺刻されており、当該外周側面にネジ溝・ネジ山が螺旋状に形成された雄ネジ部115を有する。また、内筒部11の内周側面(径方向内側の面、内周側壁面)には、その軸線O方向に延びた突条部116が周方向に所定間隔で複数形成(
図3においては、周方向に等間隔で4本形成)されている。なお、突条部116は、軸線O方向に延びたリブ状のもので、後述の内受皿部12の外周側面に形成されている縦溝部126と嵌合し、内受皿部12がネジ杆部13に対しその軸線O方向に移動するのを案内する。更に、内筒部11の軸線O方向の一端部側である基端部側には、その外周側面に径方向外側に延びる鍔状の環状凸部117が形成されており、環状凸部117は、後述する外筒部21の軸線O方向の一端部側である基端部側の内周側面に形成した環状凹部217と嵌合している。
【0028】
内受皿部12は、有底短筒状の皿部12a及びその中央に形成され孔を有する短筒状の挿通部12bからなり、挿通部12bの内周側面に雌ネジが螺刻されており、当該内周側面にネジ溝及びネジ山が螺旋状に形成された雌ネジ部125を有する。また、内受皿部12の外周側面には、内筒部11の内周側面に形成された突条部116に対応して、上下方向(軸線O方向)に延びた縦溝部126が周方向に所定間隔で複数形成(
図3においては、周方向に等間隔で4本形成)されている。なお、内受皿部12は、その横断面の外形が略円形を成しているものである。
【0029】
そして、内受皿部12は、その外周側面に形成された縦溝部126と内筒部11の内周側面に形成された突条部116との嵌合により内筒部11と係合しており、また、挿通部12bの孔にネジ杆部13が通され挿通部12bの内周側面に形成された雌ネジ部125と後述のネジ杆部13の外周側面に形成された雄ネジ部135との螺接により、ネジ杆部13に対しその軸線O方向に移動自在に螺合している。
【0030】
ネジ杆部13は、軸状、詳しくは、横断面外形が略円形の棒状を成し、外周側面に雄ネジが螺刻されており、当該外周側面にネジ溝・ネジ山が螺旋状に形成された雄ネジ部135を有する。また、ネジ杆部13の軸線O方向の基端部には、鍔状の環状凸部137が設けられている。この鍔状の環状凸部137は、ネジ杆部13の外周側面から径方向外側に突き出すように設けられたものである。更に、ネジ杆部13の軸線O方向の基端部側には後述する底部31が一体に設けられている。そして、後述するように、ネジ杆部13の鍔状の環状凸部137が、内筒部11の軸線O方向の基端部側に一体化している短円筒状の鍔部41においてその内周側面に沿って環状に形成された環状凹部47と嵌合していることにより、ネジ杆部13の軸線O方向の基端部側に一体化している底部31が、内筒部11の軸線O方向の基端部側に一体化している鍔部41に対し回動自在に装着、固定されている。なお、内筒部11の筒内で内受皿部12の中央部の孔に挿通されているネジ杆部13は、外筒部21及び内筒部11の軸線O上にあり、また、鍔部41の軸線O上で内筒部11の筒内に向かって突設しているものである。
【0031】
内受皿部12とネジ杆部13は、内受皿部12の挿通部12bの孔にネジ杆部13が通されており、内受皿部12の挿通部12bの内周側面に形成された雌ネジ部125とネジ杆部13の外周側面に形成された雄ネジ部135との螺合(噛合)によって、内受皿部12がネジ杆部13に取付けられている。
また、内筒部11と内受皿部12は、内筒部11の内周側面に突設した突条部116と内受皿部12の外周側面に溝設した縦溝部126との嵌合により、係合している。
なお、突条部116と縦溝部126の形状は特に問われず、例えば、突条部116は、内筒部11の径方向の中心に向かって内筒部11の内周面側から突出して先端部に向かって幅狭く(細く)した形状とし、また、それに対応する縦溝部126も、その底部に向かって幅狭とした形状とすることができる。突条部116は、例えば、突出長さが0.4~2mm程度、幅が0.4mm~3mm程度であり、縦溝部126は、例えば、深さが0.5~2.5mm程度、幅が0.5mm~3.5mm程度である。
【0032】
なお、ネジ杆部13の先端部は、径小な突起部13aを設けてもよいし、先端面に向かって縮径したテーパ状、尖頭状としても良いし、先端面が分割された凹部を有していても良い。これにより、内側収容空間10に収容される径小な軸状の第1固形糊Sとの係合力が高まり、第1固形糊Sを容器本体2から長く繰り出したときでも第1固形糊Sを安定して支持できる。
【0033】
外筒部21は、内筒部11よりも径大な円筒状を成し、内筒部11から所定間隔を空けて内筒部11の側面側周囲を囲むように内筒部11の外周囲に配設されたものであり、その内周面には、軸線O方向に延びた突条部216が周方向に所定間隔で複数形成(
図3においては、周方向に等間隔で4本形成)されている。なお、突条部216は、外筒部21の軸線O方向に延びたリブ状のもので、後述の外受皿部22の外周面に形成されている縦溝部226との嵌合している。
また、外筒部21の軸線O方向の一端部側である基端部側には、その内周側面側に環状凹部217が形成されており、環状凹部217は、内筒部11の軸線O方向の一端部側である基端部側の外周側面側に形成した鍔状の環状凸部117と嵌合している。
【0034】
なお、外筒部21の先端部は、基端部よりも縮径して肉薄に形成され、キャップ3の側面の厚みに相当する分の段差面が形成されており、外筒部21と面一にキャップ3が嵌合(外嵌め)自在となっている。更に、外筒部21の先端部には、外周面から径方向外側に向かって突出したリブ2aを周方向に沿って設けてもよい。これより、容器本体2へのキャップ3の外嵌時にリブ2aがキャップ3の内周面に密接することで、緊密な嵌合となり、密閉性を高め、固形糊S,Lの乾燥をより防止できる。また、キャップ3に、径方向内方に向かって突出したリブ(図示せず)を周方向に沿って設けることでも容器本体2へのキャップ3の外嵌時に当該リブが外筒部21の外周面に密接して、緊密な嵌合となり、密閉性を高め、固形糊S,Lの乾燥をより防止できる。
また、本発明を実施する場合には、外筒部21の外周側面にはローレット加工等により軸線O方向に延びる縦溝部または縦突起部を周方向に沿って所定間隔で形成してもよい。これにより、外筒部21の外周の側面を把持しやすくなり、外筒部21を回転させやすくできて操作性を良くできる。また、転がり難くできる。
【0035】
外受皿部22は、有底短筒状の皿部22a及びその中央に形成され孔を有する短筒状の挿通部22bからなり、挿通部22bの内周側面に雌ネジが螺刻され、当該内周側面にネジ溝及びネジ山が螺旋状に形成された雌ネジ部225を有する。また、外受皿部22の外周側面には、外筒部21の内周側面に形成された突条部216に対応して、軸線O方向に延びた縦溝部226が周方向に所定間隔で複数形成(
図3においては、周方向に等間隔で4本形成)されており、外筒部21の突条部216と嵌合している。なお、外受皿部22は、その横断面の外形が円形を成しているものであり、その外形が内受皿部12の外形よりも径大なものである。
【0036】
外筒部21と外受皿部22は、外筒部21の内周側面に形成された突条部216と外受皿部22の外周側面に形成された縦溝部226との嵌合により、係合している。
また、外受皿部22は、挿通部22bの孔に内筒部11が通されており、外受皿部22の内周側面に形成された雌ネジ部225と内筒部11の外周側面に形成された雄ネジ部115との螺接によって、内筒部11に螺合して内筒部11に取付けられている。
即ち、外受皿部22は、その外周側面に形成された縦溝部226と外筒部21の内周側面に形成された突条部216との嵌合により外筒部21に係合し、また、内周側面に形成された雌ネジ部225と内筒部11の外周側面に形成された雄ネジ部115との螺接により、内筒部11に対しその軸線O方向に移動自在に螺合している。
なお、突条部216と縦溝部226の形状も特に問われず、例えば、突条部216は、外筒部21の径方向の中心に向かって外筒部21の内周面側から突出して先端部に向かって幅狭く(細く)した形状とし、また、それに対応する縦溝部226も、その底部に向かって幅狭とした形状とすることができる。突条部216は、例えば、突出長さが0.4~2mm程度、幅が0.4mm~3mm程度であり、縦溝部226は、例えば、深さが0.5~2.5mm程度、幅が0.5mm~3.5mm程度である。
【0037】
外筒部21と内筒部11とは、外筒部21の軸線O方向の一端部側である基端部側に形成した環状凹部217と、内筒部11の軸線O方向の一端部側である基端部側に形成した環状凸部117とが嵌合していることで、ガタツクことなく互いに回動自在である。
【0038】
また、外筒部21及び内筒部11の軸線O方向の一端部側には、鍔部41が設けられている。
鍔部41は、内筒部11の軸線O方向の一端部である基端部に一体に形成されたもので、外筒部21と底部31との間に介装したものであり、内筒部11の内径と略同一径の貫通孔を中央に有する短円筒状のものである。鍔部41は、内筒部11の軸線O方向の基端部側でその径方向外側に突出して形成され、その外径は、外筒部21の外径と略同一である。鍔部41は、その内部の内周面側に、ネジ杆部13の軸線O方向の基端部において径方向外側に突出して形成された鍔状の環状凸部137が嵌合する環状凹部47が形成されている。なお、ネジ杆部13の雄ネジ部135の基端側の端末は、環状凸部137から所定距離離れた位置とし、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12が環状凸部137から所定距離離れた位置で、即ち、環状凸部137に触れない位置で、その移動が停止されるようになっている。
【0039】
更に、容器本体2において、鍔部41の外筒部21及び内筒部11側とは反対側で、底部31が設けられている。
底部31は、その横断面外形が略円形で有頂短円筒状であり、その外径が外筒部21の外径と略同一で、ネジ杆部13の軸線O方向の一端部である基端部に一体に形成されているものである。底部31の外周の側面にはローレット加工等により縦(軸線O方向)に延びる縦溝部31aが周方向に沿って所定間隔で形成されている。これより底部31の外周の側面が凹凸となることにより、底部31の外周の側面を指で摘まんで把持しやすくなり、底部31を回転させやすく、操作性を良くしている。
【0040】
底部31及び鍔部41とは、底部31と一体化しているネジ杆部13の鍔状の環状凸部137が鍔部41の環状凹部47に嵌合していることより、互いに回動自在に固定されている。即ち、底部31と一体化しているネジ杆部13の軸線O方向の基端部に設けた鍔状の環状凸部137が鍔部41の内周面に凹設された環状凹部47に嵌め込まれていることにより、底部31と鍔部41は、相対的に、抜け止め状態で且つ回動自在に連結されている。
【0041】
そして、容器本体2において、これら外筒部21及び内筒部11と、鍔部41と、底部31とは互いに相対的に回動自在に連結固定されている。本実施の形態では、内筒部11及び外筒部21の筒部と、鍔部41と、底部31とは、互いに近接して設けられている。なお、キャップ3と、外筒部21と、鍔部41と、底部31とは、全て略同じ大きさの円形の断面外形を有し、円筒状に形成され、容器本体2の外周面は面一となっている。
【0042】
こうした構成のスティック糊容器1では、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により軸状の第1固形糊Sを収容する内側収容空間10を形成し、また、外筒部21、外受皿部22、及び内筒部11により別の軸状の第2固形糊Lを収容する外側収容空間20を形成している。
よって、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により画成された内側収容空間10に軸状の第1固形糊Sが収容され、外筒部21、外受皿部22、及び内筒部11により画成された外側収容空間20に軸状の第2固形糊Lが収容される。
【0043】
即ち、内筒部11の内面側、内受皿部12の凹部、及びネジ杆部13の外面側により形成された内側収容空間10と、内筒部11の外面側、外筒部21の内面側、及び外受皿部22の凹部により形成された外側収容空間20とは、内筒部11により隔壁されており、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により形成された内側収容空間10と、内筒部11、外筒部21、及び外受皿部22により形成された外側収容空間20とで、別々に固形糊S,Lを収容する。
【0044】
なお、第1固形糊Sの内側収容空間10への収容及び第2固形糊Lの外側収容空間20への収容は、例えば、内筒部11に対応させる筒状の型(図示せず)を用意し、その筒状の型の上方から粘流体状の糊を流し込んで内筒部11内に充填し、冷却して固化させた後、脱型することにより行われる。
また、第2固形糊Lの外側収容空間20への収容についても、例えば、外筒部21及び内筒部11の間に対応させる筒状の型(図示せず)を用意し、その筒状の型の上方から粘流体状の糊を流し込んで内筒部11及び外筒部21の間に充填し、冷却して固化させた後、脱型することによって行われる。
【0045】
このとき、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により形成された内側収容空間10に収容される径小な軸状の第1固形糊Sは、その軸方向の一端部が内受皿部12により支持され、内筒部11、外筒部21、及び外受皿部22により形成された外側収容空間20に収容される径大な軸状の第2固形糊Lは、その軸方向の一端部が外受皿部22により支持される。
なお、内側収容空間10に収容される第1固形糊Sに対し、その軸線中心にネジ杆部13が位置することになる。更に、外側収容空間20に収容される第2固形糊Lに対し、その筒内に径方向外側から内側に向かって順に内筒部11、第1固形糊S、及びネジ杆部13が位置することになる。即ち、第1固形糊Sの内周側面側にネジ杆部13が位置し、また、第2固形糊Lの内周側面側に内筒部11が位置した状態にある。
【0046】
こうして、本実施の形態のスティック糊容器1は、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により形成された径小な内側収容空間10に収容される第1固形糊Sと、内筒部11、外筒部21、及び外受皿部22により形成された径大な外側収容空間20に収容されて第1固形糊Sの外周囲に配設される第2固形糊Lとが内筒部11により隔壁された2層構造で収容されるものであり、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により形成された内側収容空間10と、内筒部11、外筒部21、及び外受皿部22により形成された外側収容空間20とによって径の大きさ(細さ、太さ)の異なる固形糊S,Lを収容でき、また、種類(成分、配合等)の異なる、即ち、別種の固形糊S,Lを収容することも可能である。なお、固形糊S,Lには乾燥により透明となる着色剤を含有させ、塗布直後は着色剤の色によって塗布領域が容易に判別できるものを用いてもよい。
【0047】
即ち、本実施の形態のスティック糊容器1では、外筒部21の内側に内筒部11が配設しており、内筒部11が外筒部21よりも径小であることによって、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により形成された内側収容空間10に充填され内側収容空間10内で固化した略円柱状(略円筒状)の第1固形糊Sは、内筒部11、外筒部21、及び外受皿部22により形成された外側収容空間20に充填され外側収容空間20内で固化した略円柱状(略円筒状)の第2固形糊Lよりも径小な(細い)ものとなる。
換言すれば、内筒部11の外周囲に外筒部21が配設しており、外筒部21が内筒部11よりも径大であることにより、内筒部11、外筒部21、及び外受皿部22により形成された外側収容空間20に充填され外側収容空間20内で固化した第2固形糊Lは、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により形成された内側収容空間10に充填され内側収容空間10内で固化した第1固形糊Sよりも径大な(太い)ものとなる。
【0048】
したがって、本実施の形態のスティック糊容器1によれば、径の大きさ(細さ、太さ)の異なる固形糊S,Lを収容できることで、後述するように、径の大きさ(細さ、太さ)の異なる固形糊S,Lを別々にまたは一緒に繰り出して使用できる。また、内側収容空間10と、内筒部11を介して内側収容空間10の外周囲に形成された外側収容空間20とで固形糊S,Lの収容空間を2つ有することにより、種類の異なる固形糊S,Lを別々に収容することも可能であるから、異なる種類の固形糊S,Lを別々にまたは一緒に繰り出して使用することも可能である。
【0049】
このように、本実施の形態のスティック糊容器1では、内筒部11の筒内に、ネジ杆部13とネジ杆部13に螺合した内受皿部12とが設けられ、ネジ杆部13の軸線O方向の基端部に底部31が一体化されている。また、内筒部11の外周囲に外筒部21が設けられ、外筒部21と内筒部11の間に設けた外受皿部22が内筒部11と螺合し、かつ、外筒部21と係合している。さらに、内筒部11の軸線O方向の一端部に鍔部41が一体化され、外筒部21と底部31の間に鍔部41が介在している。
【0050】
よって、底部31を回動させると、それと一体のネジ杆部13が回動し、その回動によりネジ杆部13に螺合している内受皿部12がネジ杆部13上をその軸線O方向に沿って移動する。即ち、底部31を特定方向に回転させると、同方向にネジ杆部13が回転し、その回転により内受皿部12がネジ杆部13上をその軸線O方向の一方向に移動する。また、底部31を逆回転させると、ネジ杆部13も逆回転し、その回転により内受皿部12がネジ杆部13上をその軸線O方向の反対方向に移動する。
【0051】
また、外筒部21を回動させると、外筒部21の内周側面に形成された突条部216に外受皿部22の外周側面に形成された縦溝部226が係合していることにより外受皿部22が回動し、外受皿部22が内筒部11に螺合していることで、内筒部11上をその軸線O方向に外受皿部22が移動する。即ち、外筒部21を特定方向に回転させると、同方向に外受皿部22が回転し、その回転により外受皿部22が内筒部11上をその軸線O方向の一方向に移動する。また、外筒部21を逆回転させると、外受皿部22も逆回転し、その回転により外受皿部22が内筒部11上をその軸線O方向の反対方向に移動する。
【0052】
したがって、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により画成された内側収容空間10に収容される径小な軸状の第1固形糊Sは、その底面が内受皿部12で支持され、内受皿部12がネジ杆部13に螺合していることにより、ネジ杆部13の軸線O方向の基端部に一体化された底部31の回動によりネジ杆部13が回動すると、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12がネジ杆部13に対しその軸線O方向に移動し、それに伴い、内受皿部12によって支持される第1固形糊Sが軸線O方向に移動する(昇降する)。よって、底部31の回動により、内側収容空間10に収容される第1固形糊Sが容器本体2から繰り出し自在である。
【0053】
また、内筒部11、外筒部21、及び外受皿部22により画成された外側収容空間20に収容される径大な軸状の第2固形糊Lは、その底面が外受皿部22で支持され、外受皿部22が外筒部21と係合していることにより、外筒部21の回動により外受皿部22が回動すると、内筒部11に螺合している外受皿部22が内筒部11に対し軸線O方向に移動し、それに伴い、外受皿部22によって支持される第2固形糊Lが軸線O方向に移動する(昇降する)。よって、外筒部21の回動により、外側収容空間20に収容される第2固形糊Lが容器本体2から繰り出し自在である。
【0054】
即ち、底部31を特定方向に回転させると、底部31と一体に形成されたネジ杆部13が内筒部11の筒内で回転し、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12が、その外周面に設けた溝部126において内筒部11の内周面に設けた突条部116に案内されて、ネジ杆部13の軸線O方向に沿って内筒部11の先端部側に向かって移動する。これより、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により画成された内側収容空間10に収容され軸方向の一端部が内受皿部12で支持される径小な第1固形糊Sが、内筒部11の先端部の開口から押し出される。よって、第1固形糊Sを内筒部11の先端部から突出させて塗布に使用できる。
また、底部31を反対方向に回転させると、底部31と一体に形成されたネジ杆部13が内筒部11の筒内で反対方向に回転し、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12が、その外周面に設けた溝部126において内筒部11の内周面に設けた突条部116に案内されて、ネジ杆部13の軸線O方向に沿って内筒部11の基端部側に向かって移動する。これより、径小な第1固形糊Sを内筒部11内に引っ込めることができる。
【0055】
一方、外筒部21を特定方向に回転させると、外筒部21と内筒部11の間に配設し内筒部11に螺合していると共に、外筒部21に係合した外受皿部22が回転することによって、内筒部11に螺合している外受皿部22が、内筒部11の軸線O方向に沿って外筒部21の先端部側に向かって移動する。これより、内筒部11、外受皿部22、及び外筒部21により画成された外側収容空間20に収容され軸方向の一端部が外受皿部22で支持される径大な第2固形糊Lが、内筒部11と外筒部21の間の先端部の開口から押し出される。よって、第2固形糊Lを内筒部11及び外筒部21間でその先端部から突出させて塗布に使用できる。
また、外筒部21を反対方向に回転させると、外筒部21と内筒部11の間に配設し内筒部11に螺合していると共に、外筒部21に係合した外受皿部22が回転することによって、内筒部11に螺合している外受皿部22が、内筒部11の軸線O方向に沿って外筒部21の基端部側に向かって移動する。これより、径大な第2固形糊Lが内筒部11及び外筒部21の間でその内側に引っ込めることができる。
【0056】
こうして、本実施の形態のスティック糊容器1では、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により径小な第1固形糊Sを収容する内側収容空間10を形成し、内筒部11、外筒部21、及び外受皿部22により径大な第2固形糊Lを収容する外側収容空間20を形成しており、底部31の回動により、底部31と一体化したネジ杆部13が回動することによって、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12がネジ杆部13上をその軸線O方向に移動するから、内受皿部12で支持する径小な第1固形糊Sが軸線O方向に移動自在であり、また、外筒部21の回動により、外筒部21と係合している外受皿部22が回動することで、内筒部11に螺合している外受皿部22が内筒部11上をその軸線O方向に移動するから、外受皿部22で支持する径大な第2固形糊Lが軸線O方向に移動自在である。よって、底部31の回動により径小な第1固形糊Sを容器本体2から繰出自在(出没自在)であり、また、外筒部21の回動により径大な第2固形糊Lを容器本体2から繰出自在であり、径小な第1固形糊Sと径大な第2固形糊Lとを別々に容器本体2から繰出自在である。
【0057】
即ち、本実施の形態のスティック糊容器1では、底部31を回動させると内筒部11内のネジ杆部13が回動することで、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12がネジ杆部13の外周面上をその軸線O方向に移動自在であり、また、外筒部21を回動させると外筒部21と内筒部11の間に配設し外筒部21に係合すると共に内筒部11に螺合している外受皿部22が回動することで、外受皿部22が内筒部11の外周面上をその軸線O方向に移動自在であるが、内受皿部12と外受皿部22がそれぞれ独立して昇降自在となっている。内受皿部12と内筒部11とでは、内筒部11の内周側面に形成された縦の突条部116と内受皿部12の外周側面に形成された縦溝部126とが嵌合していることで、底部31を回動させたときに、底部31の回動によりネジ杆部13が回動しても、ネジ杆部13に螺合した内受皿部12自体は回動することなく、内筒部11の突条部116によってネジ杆部13の軸線O方向への移動が案内される。よって、底部31を回動させても、内受皿部12及び内筒部11は回動しないことにより、内筒部11の外周側に螺合している外受皿部22が回動することはない。また、外筒部21を回動したときでも、外筒部21に係合している外受皿部22が回動しても、外受皿部22が螺合している内筒部11は回動することなく、当然、内筒部11内の内受皿部12が回動することもない。
したがって、内側収容部10に収容した第1固形糊Sと外側収容部20に収容した第2固形糊とが連動することなくそれぞれ独立して、内筒部11及び外筒部21の先端部から繰出自在である。
【0058】
よって、幅狭な部分、細かい部分に糊を塗布したい場合には、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、底部31のみを回転させることにより、径小な(細い)第1固形糊Sのみを容器本体2から繰り出して、径小な第1固形糊Sのみを塗布できるから、幅狭な部分、細かい部分、例えば、直角の角部分や直線状の端部付近等であっても、食み出し難い塗布を可能とし、また、糊の無駄使いやムラのない塗布を可能とし、糊の塗布作業の労力や時間を軽減できる。即ち、幅狭な部分、細かい部分への塗布に対し、第2固形糊Lの径のような太い固形糊を塗布する場合には、被塗布部分から食み出しを生じさせたり、その頂面側の縁を使用し何度も被塗布面に擦り付けなければならず、被塗布面に糊が重複して塗布量にムラができたり、無駄を生じさせたりしやく、糊の塗布作業に労力や時間を要するのに対し、径小な第1固形糊Sを使用すれば食み出し難い塗布が可能であり、更に、同じ場所を何度も塗布する作業を繰り返す必要性が生じ難く、また、塗り残しやムラも生じ難くて、糊を無駄なく使用でき、塗布作業も容易となる。加えて、幅狭な部分、細かい部分への塗布に対し、太い固形糊を塗布する場合、固形糊の先端の周縁部の角部を使用して塗布することにより、容器から糊が食み出し容器を汚したりキャップの着脱に支障をきたしたりする事態が生じることがあるが、径小な第1固形糊Sを使用すればそのような事態を防止できる。
【0059】
一方で、幅広な部分、広面積部分に糊を塗布したい場合には、
図5(c)及び
図6(c)に示すように、底部31を回転させることにより、径小な(細い)第1固形糊Sを容器本体2から繰り出し、また、外筒部21を回転させることにより、径大な(太い)第2固形糊Lを容器本体2から繰り出し、径小な(細い)第1固形糊Sと径大な(太い)第2固形糊Lを合わせた幅で糊の塗布が可能であるから、幅広な部分、広面積部分であっても、短時間で塗布でき、塗布作業を容易とする。更に、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、外筒部21のみを回転させることにより、径大な(太い)第2固形糊Lのみを容器本体2から繰り出し、径大な第2固形糊Lのみを塗布することも可能であり、被塗布部の寸法形状よっては、径大な第2固形糊Lのみの使用により、食み出し難い塗布を可能とし、また、塗布作業性を良好として短時間での塗布を可能とする。
【0060】
こうして、本実施の形態に係るスティック糊容器1によれば、糊を塗布する場所、用途等に応じて、底部31及び/または外筒部21を回動し、細塗できる細幅の第1固形糊S及び/または太幅の第2固形糊Lを外筒部21及び内筒部11から繰り出して使用することができ、底部31及び/または外筒部21の回動操作により、固形糊の塗布幅を切替えできるものである。底部31及び/または外筒部21の回動操作により固形糊の塗布幅の切替えを行うものであるから、固形糊の塗布幅の切替え操作を容易にできるものである。特に、底部31と外筒部21とは、鍔部41を介在させているから、底部31と外筒部21とでそれぞれ独立して回動させる操作が容易であり、また使用者にとって分かりやすいものである。即ち、公知のスティック糊の容器と同様の使い方でもあるから、分かりやすく、底部31及び/または外筒部21の回動操作により、棒状の固形糊S,Lの容器本体2に対する出没を軽い力で容易にできる。
【0061】
因みに、本実施の形態のスティック糊容器1では、ネジ杆部13の外周面の雄ネジ部135と内筒部11の外周面の雄ネジ部115とでネジ切りの方向を同一としている。そして、本実施の形態のスティック糊容器1は、底部31と一体化しているネジ杆部13に内受皿部12が螺合していることにより、底部31の回動で内受皿部12がネジ杆部13の軸線O方向に沿ってネジ杆部13上を移動するのに対し、内筒部11の外周面側に螺合している外受皿部22が外筒部21に係合していることにより、外筒部21の回動で外受皿部22が内筒部11の軸線O方向に沿って内筒部11上を移動するものである。よって、
図5に示すように、底部31と外筒部21とは互いに反対方向の回転により、固形糊S,Lが容器本体2から繰り出したり引っ込んだりする。即ち、第1固形糊Sを容器本体2から繰り出すときの底部31の回転方向とは逆方向の外筒部21の回転で、第2固形糊Lを容器本体2から繰り出すことができる。また、繰り出した第1固形糊Sを容器本体2内に引っ込めるときの底部31の回転方向とは逆方向の外筒部21の回転で、繰り出した第2固形糊Lを容器本体2内に引っ込めることができる。しかし、本発明を実施する場合には、ネジ杆部13の外周面の雄ネジ部135と内筒部11の外周面の雄ネジ部115とでネジ切りの方向を互いに反対方向にしてもよい。この場合には、第1固形糊Sを容器本体2から繰り出すときの底部31の回転方向と、第2固形糊Lを容器本体2から繰り出すときの外筒部21の回転方向が一致し、また、第1固形糊Sを容器本体2内に引っ込めるときの底部31の回転方向と、第2固形糊Lを容器本体2内に引っ込めるときの外筒部21の回転方向が一致する。
【0062】
なお、固形糊S,Lを使用するときには、公知のものと同様、キャップ3を容器本体2から外して容器本体2の上方を開放し、第1固形糊S及び第2固形糊Lを露出させ、底部31及び/または外筒部21を回動させることで、第1固形糊S及び/または第2固形糊Lを外筒部21や内筒部11の先端部から繰り出して、塗布に供する。
そして、本実施の形態に係るスティック糊容器1は、内筒部11と内受皿部12とネジ杆部13により形成される内側収容空間10に径小な軸状の第1塗布固形物としての第1固形糊Sが収容され、内筒部11と外筒部21と外受皿部22により形成される外側収容空間20に径大な軸状の第2塗布固形物としての第2固形糊Lが収容されるもので、第1固形糊Sと第2固形糊Lが内側(中央側)及びそれを囲む外側の二層構造で収容されるものであり、容器本体2の外筒部21の外周側面を把持し、底部31や外筒部21の回転により内筒部11や外筒部21の先端部側から突出させた第1固形糊Sや第2固形糊Lを被塗布面に当てて塗布(糊付け)するものである。こうしたスティック糊容器1は、固形糊S,Lを収容し塗布に用いるものであるから、デンプン糊や液体糊と比較して、糊を適切な量で綺麗に塗布できるものである。また、公知の固形糊と同様、それを使用しないときには、キャップ3を容器本体2に外嵌して装着し、キャップ3により固形糊S,Lを被覆して固形糊S,Lの乾きを防止する。
【0063】
このように、本実施の形態のスティック糊容器1によれば、外筒部21の基端部側で内筒部11の基端部に一体に設けた鍔部41に対し回転自在に装着されている底部31を回動させると、底部31の軸線O上で内筒部11の筒内に向かって突設したネジ杆部13が内筒部11内で回動する。これにより、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12がネジ杆部13の軸線O方向に沿って移動する。よって、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により画成された内側収容空間10に収容され軸方向の基端部側が内受皿部12で支持される小径の第1固形糊Sが内筒部11の軸線O方向の先端部側から繰出自在(出没自在)である。このとき、内筒部11の内壁面から突設し軸線O方向に延びた突条部116と内受皿部12の外壁面に溝設したに縦溝部126とが嵌合していることにより、内受皿部12の軸線O方向への移動が内筒部11の突状部116により案内されるから、ネジ杆部13に対しその軸周りで内受皿部12が回動するのが規制されつつネジ杆部13上をその軸線O方向に沿って移動(昇降)する。
【0064】
即ち、外筒部21の基端部側で内筒部11の基端部に一体に設けた鍔部41に対し回転自在に装着されている底部31の回動により、底部31と一体に形成されたネジ杆部13を内筒部11の筒内で回動させることによって、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12が、その外周面に設けた溝部12において内筒部11の突条部116に案内されながらネジ杆部13の軸線O方向に沿って移動する。よって、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13により画成された内側収容空間10に収容され一端部が内受皿部12で支持される径小な第1固形糊Sを、底部31の回動により、内筒部11の先端部の開口から突出自在である。
【0065】
また、外筒部21を回動させると、外筒部21の内周面側に係合し、かつ、内筒部11の外周面に螺合している外受皿部22が回動する。これにより、外受皿部22が内筒部11の軸線O方向に沿って移動する。よって、内筒部11、外受皿部22、及び外筒部21により画成された外側収容空間20に収容され軸方向の基端部側が外受皿部22で支持される大径の第2固形糊Lが外筒部21の軸線O方向の先端部側から繰出自在(出没自在)である。
【0066】
即ち、外筒部21の回動により、外筒部21と内筒部11の間に配設し内筒部11に螺合していると共に、外筒部21に係合している外受皿部22を回動させることによって、内筒部11に螺合している外受皿部22が内筒部11の軸線O方向に沿って移動する。よって、外筒部21の回動により、内筒部11、外受皿部22、及び外筒部21により画成された外側収容空間20に収容され一端部が外受皿部22で支持される径大な第2固形糊Lを、外筒部21の先端部の開口から突出自在である。
【0067】
こうして、内側収容空間10に収容され内受皿部12により保持される第1固形糊Sは、底部31の回転により内筒部11の先端から繰り出して塗布(糊付け)に使用することができる。また、外側収容空間20に収容され外受皿部22により保持される第2固形糊Lは、外筒部21の回転により外筒部21の先端から繰り出して塗布に使用することができる。
第1固形糊Sや第2固形糊Lの塗布に際しては、容器本体2の軸線O方向を被塗布面に対して略垂直方向に一致させて、第1固形糊Sや第2固形糊Lの軸線O方向の先端面(頂面)を被塗布面に当て、略平行にスライドさせることで、被塗布面に第1固形糊Sや第2固形糊Lを塗布してもよいし、容器本体2の軸線O方向を被塗布面に対して傾斜させて、第1固形糊Sや第2固形糊Lの軸線O方向の先端面の周縁角部を被塗布面に略平行にスライドさせることで、第1固形糊Sや第2固形糊Lを塗布してもよい。
【0068】
なお、ネジ杆部13の外周面の雌ネジ部135の螺旋状に形成されているネジ溝・ネジ山の先端末は、ネジ杆部13の先端部から所定距離離れた位置にあり、底部31の回転によりネジ杆部13が回転することでそれに螺合している内受皿部12がネジ杆部13の軸線O方向に沿って移動したときに、雌ネジ部135の先端縁まで至ると内受皿部12の移動が終了し、内受皿部12が内筒部11及び外筒部21の先端から殆ど突出しない構成となっている。また、内筒部11の外周面の雌ネジ部115の螺旋状に形成されているネジ溝・ネジ山の先端末についても、内筒部11の先端部から所定距離離れた位置にあり、外筒部21の回動により外受皿部22が回転することで、外受皿部22が螺合している内筒部11の軸線O方向に沿って外受皿部22が移動したときに、雌ネジ部115の先端縁まで至ると外受皿部22の移動が終了し、外受皿部22が内筒部11及び外筒部21の先端から殆ど突出しない構成となっている。これより、第1固形糊Sや第2固形糊Lの残量が少なくなり長さが短くなったときでも、内筒部11及び外筒部21の先端から長く突出させないから、第1固形糊Sや第2固形糊Lが塗布時に撓んだり折れたりし難く、スムーズな塗布を可能とする。
【0069】
ところで、第1固形糊Sの直径をd
1、第1固形糊Sの応力をσ1、第2固形糊Lの直径をd
2、第2固形糊Lの応力をσ2、内筒部11の周壁の板厚をtとし(
図6参照)、第1固形糊Sと第2固形糊Lとで同じ材料を用いたとき、第1固形糊Sと第2固形糊Lの応力が同じとなる条件は、d
2=√2(d
1+√2t)となるところ、市販の細幅スティック糊の細幅が、例えば、最小で6mmであることから、仮に、第1固形糊Sの直径d
1=6mm、内筒部11の周壁の板厚t=2mmとすると、上記式により第2固形糊Lの直径d
2=12.5mmとなり、第2固形糊Lの直径d
2が12.5mm以上であれば、折れにくい強度が確保される。そして、市販の細幅スティック糊の太幅が、例えば、20mm程度であるため、径小な第1固形糊Sと径大な第2固形糊Lの2層構造の収容としても、市販の従来のスティック糊の外形サイズと同程度に抑えることできる。よって、本実施の形態に係るスティック糊容器1によれば、スマートな外観で、保管や収納に場所を採らず、従来の市販のスティック糊と同様、筆箱、ペンケース等に入れた持ち運びを可能とする。
【0070】
例えば、外筒部21を従来の市販の太いスティック糊の製品と同様のサイズ(例えば、第2固形糊Lの直径d2=26mm)に設計し、外筒部21の筒内に配設する内筒部11を従来の細いスティック糊製品と同様のサイズ(例えば、第1固形糊Sの直径d1=13mm)に設計することで、1本のスティック糊容器1で、細い第1固形糊Sのみを内筒部11から繰り出して塗布することができるし、太い第2固形糊Lのみを内筒部11及び外筒部21の間から繰り出して塗布することもできるし、細い第1固形糊Sと太い第2固形糊Lの両方を内筒部11及び外筒部21から同程度の長さ繰り出して同時に塗布することもできる。そして、幅狭な細かい被塗布部分では細い第1固形糊Sを用いることで、第1固形糊Sであれば径小で塗布面が幅狭であることで、塗布時の糊の食み出しを少なくでき、糊の無駄使いを少なくできる。また、小面積部分や角部等の塗布に対しても、満遍なく塗布することを可能とし、接着不良を防止できる。一方、幅広な部分では、細い第1固形糊Sと太い第2固形糊Lの両方を同等長さで内筒部11及び外筒部21から繰り出して用いることで、短時間で幅広な被塗布部分に糊を塗布することが可能である。よって、利便性に優れるものである。勿論、従来のスティック糊の製品と同程度のサイズであれば、外観のスマートなスティック糊容器1であり、場所を採らず、筆箱等に入れての持ち運びも容易である。
【0071】
こうして、本実施の形態のスティック糊容器1は、内筒部11と内受皿部12とネジ杆部13により形成される内側収容空間10に径小な軸状の第1塗布固形物としての第1固形糊Sが収容され、内筒部11と外筒部21と外受皿部22により形成される外側収容空間20に径大な軸状の第2塗布固形物としての第2固形糊Lが収容されるもので、第1固形糊S及び第2固形糊Lはそれぞれ独立して、容器本体2から繰出自在である。即ち、底部31の回転により第1固形糊Sを内筒部11から繰り出すことができ、また、外筒部21の回転により第2固形糊Lを内筒部11及び外筒部21の間から繰り出すことができる。よって、被塗布部分の面積、材質等に応じて、第1固形糊Sのみの使用、第2固形糊Lのみの使用、または第1固形糊Sと第2固形糊Lを同時に使用が可能であり、第1固形糊Sと第2固形糊Lを使い分けることができる。
【0072】
そして、本実施の形態のスティック糊容器1では、このように、第1固形糊Sを内層に第2の固形糊Lを外層とする2層で収容するものであり、種類(成分、配合等)の異なる固形糊S,Lを1つの容器に収容することも可能である。即ち、種類の異なる第1固形糊Sと第2の固形糊Lを収容できる。よって、例えば、細幅用の第1固形糊Sでは、硬いものを使用し、第2固形糊Lでは、柔らかいもの、緩いものを使用して、被塗布物において角部や端部等では細幅用の硬い第1固形糊Sの使用で食み出しを抑えた塗布を可能としつつ、角部や端部で囲まれた中央部、大面積部分、食み出しを考慮しなくてもよい部分等では、柔らかい第2固形糊Lのみ或いは第2固形糊Lと第1固形糊Sとの併用で、素早く幅広い塗布を可能とし、塗布効率を上げることができる。
【0073】
以上、説明してきたように、本実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器1は、軸線O方向に延びた雄ネジ部115を外周側面に有する内筒部11と、内筒部11の筒内に配設され、雌ネジ部125を内周側面に有する内受皿部12と、内筒部11の筒内に配設され、軸線O方向に延びた雄ネジ部135を外周側面に有し内受皿部12が螺合しているネジ杆部13と、内筒部11の外周囲に配設された外筒部21と、内筒部11と外筒部21の間に配設され、雌ネジ部225を内周側面に有し内筒部11に螺合していると共に、外筒部21に係合している外受皿部22と、ネジ杆部13の軸線O方向の基端部に一体化している底部31と、内筒部11の軸線O方向の基端部に一体化し、外筒部21と底部31との間に介在している鍔部41とを具備し、内筒部11と内受皿部12とネジ杆部13の間に形成される内側収容空間10に径小な軸状の第1塗布固形物としての第1固形糊Sが収容され、内筒部11と外筒部21と外受皿部22により形成される外側収容空間20に径大な軸状の第2塗布固形物としての第2固形糊Lが収容されるものである。
【0074】
即ち、本実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器1によれば、軸線O方向に延びた雄ネジ部115を外周側面に有する内筒部11の筒内に、軸線O方向に延びた雄ネジ部135を外周側面に有するネジ杆部13と、雌ネジ部125を内周側面に有しネジ杆部13に螺合した内受皿部12とを配設して、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13との間に径小な第1塗布固形物としての第1固形糊Sを収容する内側収容空間10を形成している。また、内筒部11の外周囲に外筒部21を配設し、更に、雌ネジ部225を内周側面に有し内筒部11に螺合すると共に、外筒部21に係合した外受皿部22を外筒部21と内筒部11との間に配設して、外筒部21、外受皿部22、及び内筒部11の間に径大な第2塗布固形物としての第2固形糊Lを収容する外側収容空間20を形成している。そして、ネジ杆部13の軸方向の基端部には底部31が一体化され、また、内筒部11の軸方向の基端部には鍔部41が一体化されて当該鍔部41が底部31と外筒部21の間に介在している。
【0075】
よって、底部31を回動させると、底部31に一体化しているネジ杆部13が回動し、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12がネジ杆部13の軸線O方向に沿って移動する。これより、内筒部11、内受皿部12、及びネジ杆部13の間に形成された内側収容空間10に収容される径小な第1塗布固形物としての第1固形糊Sが内筒部11及びネジ杆部13の間から繰出自在である。
また、外筒部21を回動させると、外筒部21に係合すると共に内筒部11に螺合した外受皿部22が内筒部11の軸線O方向に沿って移動する。これより、内側収容空間10の外周囲で、内筒部11、外受皿部22、及び外筒部21の間に形成された外側収容空間20に収容される径大な第2塗布固形物としての第2固形糊Lが内筒部11から繰出自在である。
こうして、底部31の回動により径小な第1塗布固形物としての第1固形糊Sが内筒部11から突出自在であり、一方、外筒部21の回動により、径大な第2塗布固形物としての第2固形糊Lが外筒部21から突出自在である。
【0076】
したがって、底部31のみを回転させて内受皿部12をネジ杆部13に対しその軸線O方向の先端部側に移動させることで、径小な第1塗布固形物としての第1固形糊Sのみを内筒部11から繰り出して、第1固形糊Sの径小な先端部の塗布面を使用した塗布を行うこともできるし、外筒部21のみを回転させて外受皿部22を内筒部11に対しその軸線O方向の先端部側に移動させることで、第2固形糊Lのみを外筒部21から繰り出して、第2固形糊Lの径大な先端部の塗布面を使用した塗布を行うこともできるし、底部31を回転させ、また外筒部21を回転させて、即ち、底部31と外筒部21を別々に回転させて、第1固形糊Sと第2固形糊Lとを内筒部11及び外筒部21から繰り出してそれら第1固形糊Sの径小な先端部の塗布面及び第2固形糊Lの径大な先端部の塗布面を合わせた塗布を行うこともできる。
【0077】
こうして、本実施の形態に係る繰出容器としてのスティック糊容器1によれば、幅広な塗布面と幅狭な塗布面とに切替えることができ、塗布面の形状面積を変化できる。即ち、細塗りと太塗りを可能とする。よって、径小な(細い)第1固形糊Sの単独使用により幅狭部分、細かい部分でも食み出し難い塗布を可能とする一方、径大な(太い)第2固形糊Lの単独使用または第1固形糊S及び第2固形糊Lの同時使用(併用)により、幅広部分、広面積の部分でも短時間での塗布を可能とする。細塗りと太塗りを使い分けることができるから、食み出しや重ね塗りで生じる糊の無駄やムラも防止でき、また、塗布作業の手間や時間を軽減でき、利便性が高いものである。
また、異種の塗布固形物としての固形糊S,Lを収容することができ、異種の塗布固形物としての固形糊S,Lを別々にまたは同時に塗布することが可能である。
【0078】
更に、上記実施の形態の繰出容器としてのスティック糊容器1によれば、内筒部11は、その内周側面に軸線O方向に延びる突起状の案内部としての突起部116を有し、内受皿部12は、その外周側面に突起部116に嵌合する嵌合部としての縦溝部126を有しているから、内筒部11の案内部としての突起部116と内受皿部12の嵌合部としての縦溝部126とが嵌合していることにより、ネジ杆部13に螺合している内受皿部12が内筒部11の案内部としての突起部116に案内されながらネジ杆部13の軸線O方向に沿って移動する。よって、底部31及びネジ杆部13の回動で、それに螺合している内受皿部12自体が回動することなく、即ち、空回りすることなく内受皿部12をネジ杆部13の軸線O方向に沿って確実に移動させることが可能である。よって、使い勝手が良いものとなる。
【0079】
なお、上記実施の形態では、外筒部21の内周側面に突条部(凸部)216を設け、外受皿部22の外周面に溝部(凹部)226を設けて両者の嵌合により外筒部21と外受皿部22とが係合し、連動する関係である説明としたが、本発明を実施する場合には、凹凸(溝状と突起状)の形成を逆にし、外受皿部22の外周側面側に突条部(凸部)設け、外筒部21の内周側面側に溝部を設けて、両者の嵌合により外筒部21と外受皿部22とが係合し、連動する関係としてもよい。
また、内筒部11の内周側面の案内部としての突条部(凸部)116と、内受皿部12の外周側面の嵌合部としての溝部(凹部)126についても、凹凸(溝状と突起状)の形成を逆にし、内受皿部12の外周側面側に突条部(凸部)設け、内筒部11の内周側面側に溝部を設けるようにしてもよい。
【0080】
本発明を実施する場合には、内筒部11や外筒部21は断面が略新円(正円)状の円筒状のものに限定されず、断面が楕円(長円)形状のものである円筒状であってもよいし、断面が三角形、四角形等の多角形、即ち、非円形の多角形である多角筒状であってもよい。また、上記軸線O方向とは、中心軸線Oに沿う方向の上下方向をいい、上記径方向は、軸線Oと直交する直線に沿う方向を径方向をいい、上記周方向は、軸線Oを周回する方向をいい、上記縦断面は、軸線Oを含む断面を縦断面をいい、上記横断面は、当該縦断面に垂直な断面をいう。
【0081】
ところで、上記実施の形態においては、スティック糊を収容する繰出容器として、接着を要する部位等に塗布する固形糊塗布具であるスティック糊容器の例で説明したが、本発明を実施する場合には、繰出容器に収容されるものは、軸状(棒状、筒状、柱状等)のスティック糊に限定されず、塗布可能な固形状のものであればよく、軸状(棒状、筒状、柱状等)の口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧品や、クレヨン等であってもよい。即ち、本発明の繰出容器は、軸状(スティック状)の口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー、クレヨン等を収容する容器に適用することができる。特に、塗布固形物を2層式で収容するものであり、異種の塗布固形物を別々にまたは同時に塗布することが可能であるから、異なる色の塗布固形物を用いた場合、2色を別々にまたは同時に塗布することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 スティック糊容器(繰出容器)
10 内側収容空間
11 内筒部
12 内受皿部
13 ネジ杆部
20 外側収容空間
21 外筒部
22 外受皿部
31 底部
41 鍔部
【要約】 (修正有)
【課題】細塗りと太塗りが可能なこと。
【解決手段】スティック糊容器1は、雄ネジ部115を外周面に有する内筒部11と、内筒部11内に配設され雌ネジ部125を内周面に有する内受皿部12と、内筒部11内に配設され雄ネジ部135を外周面に有し内受皿部12が螺合しているネジ杆部13と、内筒部11の外周囲に配設された外筒部21と、内筒部11と外筒部21の間に配設され雌ネジ部225を内周面に有し内筒部11に螺合していると共に、外筒部21に係合している外受皿部22と、ネジ杆部13の基端部に一体化している底部31と、内筒部11の基端部に一体化し外筒部21と底部31の間に介在している鍔部41とを具備し、内筒部11と内受皿部12とネジ杆部13の間の内側収容空間10に第1固形糊が収容され、内筒部11と外筒部21と外受皿部22の間の外側収容空間20に第2固形糊が収容される。
【選択図】
図2