(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】デッキスラブの設計方法、情報処理装置、プログラムおよび情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240621BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20240621BHJP
G06F 119/14 20200101ALN20240621BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/23
G06F119:14
(21)【出願番号】P 2024051202
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小橋 資子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 鐘悟
(72)【発明者】
【氏名】関 勝輝
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-126293(JP,A)
【文献】特開2023-177314(JP,A)
【文献】特開2022-111782(JP,A)
【文献】特開2003-261981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0282234(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第117235871(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第117232756(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキスラブの設計方法であって、
第1演算情報と、第2演算情報と、第3演算情報と、第4演算情報と、第5演算情報と、第6演算情報と、判定情報と、を取得する取得ステップと、
前記第1演算情報に基づいてデッキスラブの断面性能を示す指標を算出する第1演算ステップと、
前記第2演算情報に基づいてデッキスラブに作用する等分布荷重を算出する第2演算ステップと、
前記第3演算情報に基づいてデッキスラブの上に載置された物体によってデッキスラブに作用する集中荷重
を含む特殊荷重を算出する第3演算ステップと、
前記第4演算情報と、前記第3演算ステップにて算出した特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブに特殊荷重が作用した際にデッキスラブが荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出する第4演算ステップと、
前記第5演算情報と、前記第2演算ステップにて算出した等分布荷重の算出結果と、前記第3演算ステップにて算出した特殊荷重の算出結果と、前記第4演算ステップにて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出する第5演算ステップと、
前記第6演算情報と、前記第1演算ステップにて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、前記第4演算ステップにて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、前記第5演算ステップにて算出した荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブの構造計算を行う第6演算ステップと、
前記第6演算ステップによって算出された前記構造計算の結果が、前記判定情報と、前記第1演算ステップにて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定ステップと、を含み、
前記第1演算情報は、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレートの高さに関する情報と、デッキプレートの板厚に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、
前記第2演算情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの高さに関する情報と、前記デッキプレートの板厚に関する情報と、デッキプレートの材質に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、デッキプレートが複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブに作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブに作用する固定荷重に関する情報と、を含み、
前記第3演算情報は、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ上を走行する車両によりデッキスラブに作用する荷重に関する情報と、車両の車輪間隔に関する情報と、車両のホイールベースに関する情報と、車両の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、
前記第4演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレートの敷設方向ならびに大梁および小梁の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブを設置する躯体に関する情報と、デッキプレートと梁との接合方法に関する情報と、を含み、
前記第5演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を含み、
前記第6演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、
前記判定情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブの許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、
前記第6演算ステップは、前記構造計算として、前記デッキスラブに生じる正方向の最大曲げモーメントと、前記デッキスラブに生じる負方向の最大曲げモーメントと、前記デッキスラブに生じる最大たわみ量と、のうち少なくとも一つを算出するステップを含む、
設計方法。
【請求項2】
請求項1に記載のデッキスラブの設計方法であって、
前記取得ステップにおいて、第7演算情報を更に取得し、
前記第7演算情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの板厚に関する情報と、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、
前記第7演算情報に基づいてデッキスラブの許容剪断応力を算出する第7演算ステップを更に有し、
前記第6演算ステップは、前記構造計算として、前記支持間距離に関する情報と、前記前記第4演算ステップにて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、前記第5演算ステップにて算出した荷重データ対の算出結果と、に基づいて算出される前記デッキスラブに作用する最大剪断力を算出するステップを更に含み、
前記判定ステップは、前記第1演算ステップにて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、前記第6演算ステップにて算出した最大剪断力の算出結果と、前記第7演算ステップにて算出した許容剪断応力の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定するステップを更に含む、
設計方法。
【請求項3】
請求項1に記載のデッキスラブの設計方法であって、
前記特殊荷重は、更に分布荷重を含み、
集中荷重かつ移動荷重が作用する要素として第1の種類が設定され、前記第1の種類は、フォークリフトおよび車両のうち、少なくとも一つが該当し、
集中荷重かつ静荷重が作用する要素として第2の種類が設定され、前記第2の種類は、車両のアウトリガーが該当し、
分布荷重かつ移動荷重が作用する要素として第3の種類が設定され、前記第3の種類は、クローラークレーン車およびキャタピラ車のうち、少なくとも一つが該当し、
分布荷重かつ静荷重が作用する要素として第4の種類が設定され、前記第4の種類は、設備基礎、書架、移動書架およびサーバラックのうち、少なくとも一つが該当し、
前記第3演算ステップは、前記第1の種類乃至第4の種類のそれぞれの質量、位置、寸法、作用する力およびアウトリガーの位置のうち、少なくとも一つに関する情報を用いて前記集中荷重または前記分布荷重へと等価換算することにより、前記第1の種類乃至第4の種類のそれぞれの前記特殊荷重を算出するステップを含む、
設計方法。
【請求項4】
請求項1に記載のデッキスラブの設計方法であって、
前記第1演算ステップと、前記第2演算ステップと、前記第3演算ステップと、前記第4演算ステップと、前記第5演算ステップと、前記第6演算ステップと、は、有限要素法を用いて実行されることを特徴とする、
設計方法。
【請求項5】
デッキスラブの構造計算を実行するための情報処理装置であって、
通信ネットワークを介して接続された情報処理端末から送信された情報であって、第1演算情報と、第2演算情報と、第3演算情報と、第4演算情報と、第5演算情報と、第6演算情報と、判定情報と、のうち少なくとも一つを含む情報を受け付ける入力受付部と、
記憶部と、
前記第1演算情報に基づいてデッキスラブの断面性能を示す指標を算出し、前記第2演算情報に基づいてデッキスラブに作用する等分布荷重を算出し、前記第3演算情報に基づいてデッキスラブの上に載置された物体によってデッキスラブに作用する集中荷重
を含む特殊荷重を算出し、前記第4演算情報と、前記特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブに前記特殊荷重が作用した際にデッキスラブが荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出し、前記第5演算情報と、前記等分布荷重の算出結果と、前記特殊荷重の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出し、前記第6演算情報と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブの構造計算を行い、前記第6演算情報と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記判定情報と、に基づいて、前記構造計算の結果が前記判定情報に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定処理を行い、前記構造計算の結果および前記判定処理の結果が含まれる演算結果を前記記憶部に記憶する演算部と、
前記記憶部に記憶された前記演算結果を前記通信ネットワークを介して前記情報処理端末に送信する出力部と、を備え、
前記第1演算情報は、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレートの高さに関する情報と、デッキプレートの板厚に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、
前記第2演算情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの高さに関する情報と、前記デッキプレートの板厚に関する情報と、デッキプレートの材質に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、デッキプレートが複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブに作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブに作用する固定荷重に関する情報と、を含み、
前記第3演算情報は、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ上を走行する車両によりデッキスラブに作用する荷重に関する情報と、車両の車輪間隔に関する情報と、車両のホイールベースに関する情報と、車両の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、
前記第4演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレートの敷設方向ならびに大梁および小梁の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブを設置する躯体に関する情報と、デッキプレートと梁との接合方法に関する情報と、を含み、
前記第5演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を含み、
前記第6演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、
前記判定情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブの許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、
前記演算部で行われる前記デッキスラブの前記構造計算は、前記デッキスラブに生じる正方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブに生じる負方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブに生じる最大たわみ量の計算と、のうち少なくとも一つを含む計算を実行する処理が含まれ、
前記演算部で行われる前記判定処理は、算出した正方向の最大曲げモーメントと、最大負方向の最大曲げモーメントと、最大たわみ量と、のうち少なくとも一つが前記判定情報に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する処理が含まれる、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記入力受付部は、前記通信ネットワークを介して接続された前記情報処理端末から送信された、第7演算情報を受け付け、
前記第7演算情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、
前記演算部は、前記構造計算として、前記第7演算情報に基づいて前記デッキスラブの許容剪断応力の計算を行い、前記支持間距離に関する情報と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて前記デッキスラブに作用する最大剪断力の計算を行い、前記最大剪断力の計算の結果が、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記許容剪断応力の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する前記判定処理を行い、前記演算結果を前記記憶部に記憶する、ことを特徴とする、
情報処理装置。
【請求項7】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記特殊荷重は、更に分布荷重を含み、
集中荷重かつ移動荷重が作用する要素として第1の種類が設定され、前記第1の種類は、フォークリフトおよび車両のうち、少なくとも一つが該当し、
集中荷重かつ静荷重が作用する要素として第2の種類が設定され、前記第2の種類は、車両のアウトリガーが該当し、
分布荷重かつ移動荷重が作用する要素として第3の種類が設定され、前記第3の種類は、クローラークレーン車およびキャタピラ車のうち、少なくとも一つが該当し、
分布荷重かつ静荷重が作用する要素として第4の種類が設定され、前記第4の種類は、設備基礎、書架、移動書架およびサーバラックのうち、少なくとも一つが該当し、
前記演算部は、前記第1の種類乃至第4の種類のそれぞれの質量、位置、寸法、作用する力およびアウトリガーの位置のうち、少なくとも一つに関する情報を用いて前記集中荷重または前記分布荷重へと等価換算することにより、前記第1の種類乃至第4の種類のそれぞれの前記特殊荷重を算出する、
情報処理装置。
【請求項8】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記演算部は、有限要素法を用いて前記構造計算を行うことを特徴とする、
情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータにデッキスラブの構造計算を実行させるためのプログラムであって、
第1演算情報と、第2演算情報と、第3演算情報と、第4演算情報と、第5演算情報と、第6演算情報と、判定情報と、のうち少なくとも一つを含む情報を受け付ける入力受付ステップと、
前記第1演算情報に基づいてデッキスラブの断面性能を示す指標を算出し、前記第2演算情報に基づいてデッキスラブに作用する等分布荷重を算出し、前記第3演算情報に基づいてデッキスラブの上に載置された物体によってデッキスラブに作用する集中荷重
を含む特殊荷重を算出し、前記第4演算情報と、前記特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブに前記特殊荷重が作用した際にデッキスラブが荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出し、前記第5演算情報と、前記等分布荷重の算出結果と、前記特殊荷重の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出し、前記第6演算情報と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブの構造計算を行い、前記第6演算情報と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記判定情報と、に基づいて、前記構造計算の結果が前記判定情報に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定処理を行い、前記構造計算の結果および前記判定処理の結果が含まれる演算結果を記憶部に記憶する演算ステップと、
前記記憶部に記憶された前記演算結果を出力する出力ステップと、を情報処理装置に実行させるプログラムであり、
前記第1演算情報は、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレートの高さに関する情報と、デッキプレートの板厚に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、
前記第2演算情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの高さに関する情報と、前記デッキプレートの板厚に関する情報と、デッキプレートの材質に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、デッキプレートが複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブに作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブに作用する固定荷重に関する情報と、を含み、
前記第3演算情報は、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ上を走行する車両によりデッキスラブに作用する荷重に関する情報と、車両の車輪間隔に関する情報と、車両のホイールベースに関する情報と、車両の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、
前記第4演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレートの敷設方向ならびに大梁および小梁の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブを設置する躯体に関する情報と、デッキプレートと梁との接合方法に関する情報と、を含み、
前記第5演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を
含み、
前記第6演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、
前記判定情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブの許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、
前記デッキスラブの前記構造計算は、前記デッキスラブに生じる正方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブに生じる負方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブに生じる最大たわみ量の計算と、のうち少なくとも一つを含む計算を実行する処理が含まれ、
前記判定処理は、算出した正方向の最大曲げモーメントと、最大負方向の最大曲げモーメントと、最大たわみ量と、のうち少なくとも一つが前記判定情報に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する処理が含まれる、
プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムであって、
前記入力受付ステップにおいて、第7演算情報を更に取得し、
前記第7演算情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、
前記演算ステップにおける前記構造計算は、前記第7演算情報に基づいて実行する前記デッキスラブの許容剪断応力の計算と、前記支持間距離に関する情報と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて実行する前記デッキスラブに作用する最大剪断力の計算と、を更に含み、
前記判定情報は、前記断面性能の指標の算出結果と、前記許容剪断応力の算出結果と、を更に含み、
前記演算ステップにおける前記判定処理は、前記デッキスラブに作用する最大剪断力の算出結果が前記判定情報に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する前記判定処理を更に含む、ことを特徴とする、
プログラム。
【請求項11】
請求項9に記載のプログラムであって、
前記特殊荷重は、更に分布荷重を含み、
集中荷重かつ移動荷重が作用する要素として第1の種類が設定され、前記第1の種類は、フォークリフトおよび車両のうち、少なくとも一つが該当し、
集中荷重かつ静荷重が作用する要素として第2の種類が設定され、前記第2の種類は、車両のアウトリガーが該当し、
分布荷重かつ移動荷重が作用する要素として第3の種類が設定され、前記第3の種類は、クローラークレーン車およびキャタピラ車のうち、少なくとも一つが該当し、
分布荷重かつ静荷重が作用する要素として第4の種類が設定され、前記第4の種類は、設備基礎、書架、移動書架およびサーバラックのうち、少なくとも一つが該当し、
前記演算ステップは、前記第1の種類乃至第4の種類のそれぞれの質量、位置、寸法、作用する力およびアウトリガーの位置のうち、少なくとも一つに関する情報を用いて前記集中荷重または前記分布荷重へと等価換算することにより、前記第1の種類乃至第4の種類のそれぞれの前記特殊荷重を算出するステップを含む、
プログラム。
【請求項12】
請求項9に記載のプログラムであって、
前記構造計算は、有限要素法を用いて実行されることを特徴とする、
プログラム。
【請求項13】
表示装置を有する情報処理端末と、前記情報処理端末と通信ネットワークを介して接続されたサーバと、を備えた情報処理システムであって、
前記情報処理端末は、
システム利用者から入力される、第1演算情報と、第2演算情報と、第3演算情報と、第4演算情報と、第5演算情報と、第6演算情報と、判定情報と、のうち少なくとも一つを含む情報を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた情報を前記通信ネットワークを介して前記サーバに送信する送信部と、
前記通信ネットワークを介して前記サーバから送信された情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した情報を表示装置に表示させる表示制御部と、を備え、
前記サーバは、
前記通信ネットワークを介して接続された前記情報処理端末から送信された情報であって、前記第1演算情報と、前記第2演算情報と、前記第3演算情報と、前記第4演算情報と、前記第5演算情報と、前記第6演算情報と、前記判定情報と、のうち少なくとも一つを含む情報を受け付ける入力受付部と、
記憶部と、
前記第1演算情報に基づいてデッキスラブの断面性能を示す指標を算出し、前記第2演算情報に基づいてデッキスラブに作用する等分布荷重を算出し、前記第3演算情報に基づいてデッキスラブの上に載置された物体によってデッキスラブに作用する集中荷重
を含む特殊荷重を算出し、前記第4演算情報と、前記特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブに前記特殊荷重が作用した際にデッキスラブが荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出し、前記第5演算情報と、前記等分布荷重の算出結果と、前記特殊荷重の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出し、前記第6演算情報と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブの構造計算を行い、前記第6演算情報と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記判定情報と、に基づいて、前記構造計算の結果が前記判定情報に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定処理を行い、前記構造計算の結果および前記判定処理の結果が含まれる演算結果を前記記憶部に記憶する演算部と、
前記記憶部に記憶された前記演算結果を前記通信ネットワークを介して前記情報処理端末に送信する出力部と、を備え、
前記第1演算情報は、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレートの高さに関する情報と、デッキプレートの板厚に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、
前記第2演算情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの高さに関する情報と、前記デッキプレートの板厚に関する情報と、デッキプレートの材質に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、デッキプレートが複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブに作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブに作用する固定荷重に関する情報と、を含み、
前記第3演算情報は、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ上を走行する車両によりデッキスラブに作用する荷重に関する情報と、車両の車輪間隔に関する情報と、車両のホイールベースに関する情報と、車両の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、
前記第4演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレートの敷設方向ならびに大梁および小梁の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブを設置する躯体に関する情報と、デッキプレートと梁との接合方法に関する情報と、を含み、
前記第5演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を
含み、
前記第6演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、
前記判定情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブの許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、
前記演算部で行われる前記構造計算は、前記デッキスラブに生じる正方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブに生じる負方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブに生じる最大たわみ量の計算と、のうち少なくとも一つを含む計算を実行する処理が含まれ、
前記演算部で行われる前記判定処理は、算出した正方向の最大曲げモーメントと、最大負方向の最大曲げモーメントと、最大たわみ量と、のうち少なくとも一つが前記判定情報に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する処理が含まれ、
前記受信部は、前記出力部が送信した、前記送信部が送信した情報に基づいて前記演算部が実行した前記演算結果を前記通信ネットワークを介して受信し、
前記表示制御部は、前記受信部が受信した前記演算結果を表示装置に表示させる、
情報処理システム。
【請求項14】
請求項13に記載の情報処理システムであって、
前記入力受付部は、前記通信ネットワークを介して接続された前記情報処理端末から送信された第7演算情報を受け付け、
前記第7演算情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、
を含み、
前記演算部は、前記構造計算として、前記第7演算情報に基づいて前記デッキスラブの許容剪断応力の計算を行い、前記支持間距離に関する情報と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて前記デッキスラブに作用する最大剪断力の計算を行い、前記最大剪断力の計算の結果が、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記許容剪断応力の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する前記判定処理を行い、前記演算結果を前記記憶部に記憶する、ことを特徴とする、
情報処理システム。
【請求項15】
請求項13に記載の情報処理システムであって、
前記特殊荷重は、更に分布荷重を含み、
集中荷重かつ移動荷重が作用する要素として第1の種類が設定され、前記第1の種類は、フォークリフトおよび車両のうち、少なくとも一つが該当し、
集中荷重かつ静荷重が作用する要素として第2の種類が設定され、前記第2の種類は、車両のアウトリガーが該当し、
分布荷重かつ移動荷重が作用する要素として第3の種類が設定され、前記第3の種類は、クローラークレーン車およびキャタピラ車のうち、少なくとも一つが該当し、
分布荷重かつ静荷重が作用する要素として第4の種類が設定され、前記第4の種類は、設備基礎、書架、移動書架およびサーバラックのうち、少なくとも一つが該当し、
前記演算部は、前記第1の種類乃至第4の種類のそれぞれの質量、位置、寸法、作用する力およびアウトリガーの位置のうち、少なくとも一つに関する情報を用いて前記集中荷重または前記分布荷重へと等価換算することにより、前記第1の種類乃至第4の種類のそれぞれの前記特殊荷重を算出する、
情報処理システム。
【請求項16】
請求項13に記載の情報処理システムであって、
前記演算部は、有限要素法を用いて前記構造計算を行うことを特徴とする、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキスラブの設計方法、情報処理装置、プログラムおよび情報処理システムに関し、例えば、車両や設備等による集中荷重、移動荷重、および繰返し荷重等が作用するデッキスラブの設計方法、情報処理装置、プログラムおよび情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デッキスラブは主に、鉄骨造建築物の床の標準仕様として普及している。床部材としてのデッキスラブには、常時作用する荷重(静荷重)以外にも車両や設備等による集中荷重、移動荷重、および繰返し荷重(動荷重)等が作用する場合があることから、デッキスラブを設計する際には、これらの荷重を考慮してデッキスラブの構造計算を行う必要がある。例えば、特許文献1に、例えば、建築物の構造計算を行う構造計算支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デッキスラブに作用する車両や設備等といった、デッキスラブの上に載置された物体によってデッキスラブに作用する集中荷重、移動荷重、および繰返し荷重等(以下、「特殊荷重」とも称する。)は、設定すべき条件が多岐にわたることから、特殊荷重に対するデッキスラブの構造計算には時間を要する。
そのため、特殊荷重の計算にあたっては、設定すべき条件に一定の制約を設けることにより、算出結果が安全側となるような簡略的な構造計算の方法が一般に用いられている。
【0005】
また、特殊荷重にはデッキスラブを使用した建築物の完成後に作用する荷重のみならず、建築物の建設段階において生じる荷重もあり、建設の段階毎の特殊荷重に対するデッキスラブの構造計算を行う必要がある。
しかし、これまでに知られている建築物の構造計算を行う構造計算支援システムでは、デッキスラブに作用する特殊荷重の計算にあたって、上記したような簡略的な構造計算の方法が用いられていることから、個別具体的な設定条件に応じた特殊荷重に基づいた合理的な構造計算を行うことはできない。また、これまでに知られている建築物の構造計算を行う構造計算支援システムでは、デッキスラブを使用した建築物の建設段階において生じる特殊荷重を算出することはできない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、個別具体的な設定条件に応じた特殊荷重に基づいた合理的な構造計算や、建築物の建設段階においてデッキスラブに作用する個別具体的な設定条件に応じた特殊荷重を考慮したデッキスラブの設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施の形態に係るデッキスラブの設計方法は、デッキスラブの設計方法であって、第1演算情報と、第2演算情報と、第3演算情報と、第4演算情報と、第5演算情報と、第6演算情報と、判定情報と、を取得する取得ステップと、前記第1演算情報に基づいてデッキスラブの断面性能を示す指標を算出する第1演算ステップと、前記第2演算情報に基づいてデッキスラブに作用する等分布荷重を算出する第2演算ステップと、前記第3演算情報に基づいてデッキスラブの上に載置された物体によってデッキスラブに作用する集中荷重である特殊荷重を算出する第3演算ステップと、前記第4演算情報と、前記第3演算ステップにて算出した特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブに特殊荷重が作用した際にデッキスラブが荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出する第4演算ステップと、前記第5演算情報と、前記第2演算ステップにて算出した等分布荷重の算出結果と、前記第3演算ステップにて算出した特殊荷重の算出結果と、前記第4演算ステップにて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出する第5演算ステップと、前記第6演算情報と、前記第1演算ステップにて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、前記第4演算ステップにて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、前記第5演算ステップにて算出した荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブの構造計算を行う第6演算ステップと、前記第6演算ステップによって算出された前記構造計算の結果が、前記判定情報と、前記第1演算ステップにて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定ステップと、を含み、前記第1演算情報は、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレートの高さに関する情報と、デッキプレートの板厚に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、前記第2演算情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの高さに関する情報と、前記デッキプレートの板厚に関する情報と、デッキプレートの材質に関する情報と、鉄筋の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、デッキプレートが複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブに作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブに作用する固定荷重に関する情報と、を含み、前記第3演算情報は、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ上を走行する車両によりデッキスラブに作用する荷重に関する情報と、車両の車輪間隔に関する情報と、車両のホイールベースに関する情報と、車両の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、前記第4演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレートの敷設方向ならびに大梁および小梁の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブを設置する躯体に関する情報と、デッキプレートと梁との接合方法に関する情報と、を含み、前記第5演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を含み、前記第6演算情報は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記判定情報は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレートの材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、コンクリートの仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブの許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記第6演算ステップは、前記構造計算として、前記デッキスラブに生じる正方向の最大曲げモーメントと、前記デッキスラブに生じる負方向の最大曲げモーメントと、前記デッキスラブに生じる最大たわみ量と、のうち少なくとも一つを算出するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、建築物の建設段階から完成後の段階においてデッキスラブに作用する具体的な特殊荷重を考慮したデッキスラブの設計を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る特殊荷重計算システムの構成例および情報処理装置の機能ブロック構成を示す図である。
【
図2】情報処理装置の記憶部が有する情報の一例を示す図である。
【
図3】情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る特殊荷重計算システムの構成例およびクライアント端末装置の機能ブロック構成を示す図である。
【
図5】クライアント端末装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図6】本発明の設計対象となるデッキスラブの一例を示す図である。
【
図7】特殊荷重の例であるフォークリフトの平面図である。
【
図9】デッキスラブの有効幅と一点当たり集中荷重の関係に関する実験結果の一例を示す図である。
【
図10】デッキスラブ延在方向とフォークリフト走行方向が一致する場合におけるデッキスラブとフォークリフトの位置関係を示す平面図である。
【
図11A】
図10において作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
【
図11B】
図10において作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントおよび負方向曲げモーメントを示す図である。
【
図12】デッキスラブ延在方向とフォークリフト走行方向が直交する場合におけるデッキスラブとフォークリフトの位置関係を示す平面図である。
【
図13A】
図12において作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
【
図13B】
図12において作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントおよび負方向曲げモーメントを示す図である。
【
図14】デッキスラブにより構築された駐車場を示す平面図である。
【
図15】駐車場に配置される車両の位置の例を示す平面図である。
【
図16】集中荷重に対するデッキスラブ有効幅の大きさの関係を示す図である。
【
図17】駐車区域に車両を配置した場合の車両の位置の例を示す図である。
【
図19】走行区域に車両を配置した場合の車両の位置の例を示す図である。
【
図21】大梁および小梁に囲まれた領域に設置したデッキスラブに発生する曲げモーメントを示す斜視図である。
【
図22A】単純支持の一方向デッキスラブに作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
【
図22B】両端固定のデッキスラブに作用する荷重および発生する曲げモーメントを示す図である。
【
図23A】一方向デッキスラブに作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
【
図23B】二方向デッキスラブに作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
【
図24】有限要素法による特殊荷重計算を行う対象となるデッキスラブの一部を抽出した斜視図の例である。
【
図25】有限要素法による発生モーメント計算を行ったデッキスラブの解析結果の一例である。
【
図26A】集中荷重が作用する計算対象となるデッキスラブの単純支持モデル図である。
【
図26B】分布荷重が局所的に作用する計算対象となるデッキスラブの単純支持モデル図である。
【
図27】本発明の実施の形態に係るデッキスラブの設計方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、各実施の形態における構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0011】
〔1〕本発明の一態様に係るデッキスラブ(1)の設計方法は、第1演算情報(112A)と、第2演算情報(112B)と、第3演算情報(112C)と、第4演算情報(112D)と、第5演算情報(112E)と、第6演算情報(112F)と、判定情報(112H)と、を取得する取得ステップ(S1)と、前記第1演算情報(112A)に基づいてデッキスラブ(1)の断面性能を示す指標を算出する第1演算ステップ(S2)と、前記第2演算情報(112B)に基づいてデッキスラブ(1)に作用する等分布荷重を算出する第2演算ステップ(S3)と、前記第3演算情報(112C)に基づいてデッキスラブ(1)の上に載置された物体によってデッキスラブ(1)に作用する集中荷重である特殊荷重を算出する第3演算ステップ(S4)と、前記第4演算情報(112D)と、前記第3演算ステップ(S4)にて算出した特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブ(1)に特殊荷重が作用した際にデッキスラブ(1)が荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出する第4演算ステップ(S5)と、前記第5演算情報(112E)と、前記第2演算ステップ(S3)にて算出した等分布荷重の算出結果と、前記第3演算ステップ(S4)にて算出した特殊荷重の算出結果と、前記第4演算ステップ(S5)にて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出する第5演算ステップ(S6)と、前記第6演算情報(112F)と、前記第1演算ステップ(S2)にて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、前記第4演算ステップ(S5)にて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、前記第5演算ステップ(S6)にて算出した荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブ(1)の構造計算を行う第6演算ステップ(S7)と、前記第6演算ステップ(S7)によって算出された前記構造計算の結果が、前記判定情報(112H)と、前記第1演算ステップ(S2)にて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定ステップ(S10)と、を含み、前記第1演算情報(112A)は、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレート(2)の高さに関する情報と、デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、鉄筋(4)の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記第2演算情報(112B)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の高さに関する情報と、前記デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、デッキプレート(2)の材質に関する情報と、鉄筋(4)の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、デッキプレート(2)が複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブ(1)に作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブ(1)に作用する固定荷重に関する情報と、を含み、前記第3演算情報(112C)は、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ(1)上を走行する車両(20、30)によりデッキスラブ(1)に作用する荷重に関する情報と、車両(20、30)の車輪間隔(WI)に関する情報と、車両(20、30)のホイールベース(WB)に関する情報と、車両(20)の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、前記第4演算情報(112D)は、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレート(2)の敷設方向ならびに大梁(52)および小梁(53)の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブ(1)を設置する躯体に関する情報と、デッキプレート(2)と梁との接合方法に関する情報と、を含み、前記第5演算情報(112E)は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を含み、前記第6演算情報(112F)は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記判定情報(112H)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブ(1)の許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記第6演算ステップ(S7)は、前記構造計算として、前記デッキスラブ(1)に生じる正方向の最大曲げモーメントと、前記デッキスラブ(1)に生じる負方向の最大曲げモーメントと、前記デッキスラブ(1)に生じる最大たわみ量と、のうち少なくとも一つを算出するステップを含むことを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1)の設計方法は、前記取得ステップ(S1)において、第7演算情報(112G)を更に取得し、前記第7演算情報(112G)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記第7演算情報(112G)に基づいてデッキスラブ(1)の許容剪断応力を算出する第7演算ステップ(S8)を更に有し、前記第6演算ステップ(S7)は、前記構造計算として、前記支持間距離に関する情報と、前記前記第4演算ステップ(S5)にて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、前記第5演算ステップ(S6)にて算出した荷重データ対の算出結果と、に基づいて算出される前記デッキスラブ(1)に作用する最大剪断力を算出するステップを更に含み、前記判定ステップ(S10)は、前記第1演算ステップ(S2)にて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、前記第6演算ステップ(S7)にて算出した最大剪断力と、前記第7演算ステップ(S8)にて算出した許容剪断応力の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定するステップを更に含むことが好ましい。
【0013】
〔3〕上記〔1〕乃至〔2〕に記載のデッキスラブ(1)の設計方法は、前記特定の荷重に関する情報は、車両のアウトリガーの位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、設備基礎の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、書架および移動式書架ならびにサーバラックなど高重量設備の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0014】
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕に記載のデッキスラブ(1)の設計方法は、前記第1演算ステップ(S2)と、前記第2演算ステップ(S3)と、前記第3演算ステップ(S4)と、前記第4演算ステップ(S5)と、前記第5演算ステップ(S6)と、前記第6演算ステップ(S7)と、は、有限要素法を用いて実行されることが好ましい。
【0015】
〔5〕本発明の一態様に係る情報処理装置(100)は、デッキスラブ(1)の構造計算を実行するための情報処理装置(100)であって、通信ネットワーク(300)を介して接続された情報処理端末(200)から送信された情報であって、第1演算情報(112A)と、第2演算情報(112B)と、第3演算情報(112C)と、第4演算情報(112D)と、第5演算情報(112E)と、第6演算情報(112F)と、判定情報(112H)と、のうち少なくとも一つを含む情報を受け付ける入力受付部(111)と、記憶部(112)と、前記第1演算情報(112A)に基づいてデッキスラブ(1)の断面性能を示す指標を算出し、前記第2演算情報(112B)に基づいてデッキスラブ(1)に作用する等分布荷重を算出し、前記第3演算情報(112C)に基づいてデッキスラブ(1)の上に載置された物体によってデッキスラブ(1)に作用する集中荷重である特殊荷重を算出し、前記第4演算情報(112D)と、前記特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブ(1)に前記特殊荷重が作用した際にデッキスラブ(1)が荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出し、前記第5演算情報(112E)と、前記等分布荷重の算出結果と、前記特殊荷重の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出し、前記第6演算情報(112F)と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブ(1)の構造計算を行い、前記第6演算情報(112F)と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記判定情報(112H)と、に基づいて、前記構造計算の結果が前記判定情報(112H)に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定処理を行い、前記構造計算の結果および前記判定処理の結果が含まれる演算結果(112I)を前記記憶部(112)に記憶する演算部(113)と、前記記憶部(112)に記憶された前記演算結果(112I)を前記通信ネットワーク(300)を介して前記情報処理端末に送信する出力部(114)と、を備え、前記第1演算情報(112A)は、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレート(2)の高さに関する情報と、デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、鉄筋(4)の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記第2演算情報(112B)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の高さに関する情報と、前記デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、デッキプレート(2)の材質に関する情報と、鉄筋(4)の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、デッキプレート(2)が複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブ(1)に作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブ(1)に作用する固定荷重に関する情報と、を含み、前記第3演算情報(112C)は、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ(1)上を走行する車両(20、30)によりデッキスラブ(1)に作用する荷重に関する情報と、車両(20、30)の車輪間隔(WI)に関する情報と、車両(20、30)のホイールベース(WB)に関する情報と、車両(20)の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、前記第4演算情報(112D)は、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレート(2)の敷設方向ならびに大梁(52)および小梁(53)の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブ(1)を設置する躯体に関する情報と、デッキプレート(2)と梁との接合方法に関する情報と、を含み、前記第5演算情報(112E)は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を含み、前記第6演算情報(112F)は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記判定情報(112H)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブ(1)の許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記演算部(113)で行われる前記デッキスラブの前記構造計算は、前記デッキスラブ(1)に生じる正方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブ(1)に生じる負方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブ(1)に生じる最大たわみ量の計算と、のうち少なくとも一つを含む計算を実行する処理が含まれ、前記演算部(113)で行われる前記判定処理は、算出した正方向の最大曲げモーメントと、最大負方向の最大曲げモーメントと、最大たわみ量と、のうち少なくとも一つが前記判定情報(112H)に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する処理が含まれることを特徴とする。
【0016】
〔6〕上記〔5〕に記載の情報処理装置(100)は、前記入力受付部(111)は、前記通信ネットワーク(300)を介して接続された前記情報処理端末(200)から送信された、第7演算情報(112G)を受け付け、前記第7演算情報(112G)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記演算部(113)は、前記構造計算として、前記第7演算情報(112G)に基づいて前記デッキスラブ(1)の許容剪断応力の計算を行い、前記支持間距離に関する情報と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて前記デッキスラブ(1)に作用する最大剪断力の計算を行い、前記最大剪断力の計算の結果が、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記許容剪断応力の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する前記判定処理を行い、前記演算結果(112I)を前記記憶部(112)に記憶することが好ましい。
【0017】
〔7〕上記〔5〕乃至〔6〕に記載の情報処理装置(100)は、前記特定の荷重に関する情報は、車両のアウトリガーの位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、設備基礎の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、書架および移動式書架ならびにサーバラックなど高重量設備の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0018】
〔8〕〕上記〔5〕乃至〔7〕に記載の情報処理装置(100)は、前記演算部(113)が、有限要素法を用いて前記構造計算を行うことが好ましい。
【0019】
〔9〕本発明の一態様に係るプログラム(102A)は、デッキスラブ(1)の構造計算を実行させるためのプログラム(102A)であって、第1演算情報(112A)と、第2演算情報(112B)と、第3演算情報(112C)と、第4演算情報(112D)と、第5演算情報(112E)と、第6演算情報(112F)と、判定情報(112H)と、のうち少なくとも一つを含む情報を受け付ける入力受付ステップと、前記第1演算情報(112A)に基づいてデッキスラブ(1)の断面性能を示す指標を算出し、前記第2演算情報(112B)に基づいてデッキスラブ(1)に作用する等分布荷重を算出し、前記第3演算情報(112C)に基づいてデッキスラブ(1)の上に載置された物体によってデッキスラブ(1)に作用する集中荷重である特殊荷重を算出し、前記第4演算情報(112D)と、前記特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブ(1)に前記特殊荷重が作用した際にデッキスラブ(1)が荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出し、前記第5演算情報(112E)と、前記等分布荷重の算出結果と、前記特殊荷重の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出し、前記第6演算情報(112F)と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブ(1)の構造計算を行い、前記第6演算情報(112F)と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記判定情報(112H)と、に基づいて、前記構造計算の結果が前記判定情報(112H)に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定処理を行い、前記構造計算の結果および前記判定処理の結果が含まれる演算結果(112I)を記憶部(112)に記憶する演算ステップと、前記記憶部(112)に記憶された前記演算結果(112I)を出力する出力ステップと、を情報処理装置(100)に実行させるプログラム(102A)であり、前記第1演算情報(112A)は、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレート(2)の高さに関する情報と、デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、鉄筋(4)の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記第2演算情報(112B)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の高さに関する情報と、前記デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、デッキプレート(2)の材質に関する情報と、鉄筋(4)の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、デッキプレート(2)が複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブ(1)に作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブ(1)に作用する固定荷重に関する情報と、を含み、前記第3演算情報(112C)は、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ(1)上を走行する車両(20、30)によりデッキスラブ(1)に作用する荷重に関する情報と、車両(20、30)の車輪間隔(WI)に関する情報と、車両(20、30)のホイールベース(WB)に関する情報と、車両(20)の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、前記第4演算情報(112D)は、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレート(2)の敷設方向ならびに大梁(52)および小梁(53)の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブ(1)を設置する躯体に関する情報と、デッキプレート(2)と梁との接合方法に関する情報と、を含み、前記第5演算情報(112E)は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を含み、前記第6演算情報(112F)は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記判定情報(112H)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブ(1)の許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記デッキスラブの前記構造計算は、前記デッキスラブ(1)に生じる正方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブ(1)に生じる負方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブ(1)に生じる最大たわみ量の計算と、のうち少なくとも一つを含む計算を実行する処理が含まれ、前記判定処理は、算出した正方向の最大曲げモーメントと、最大負方向の最大曲げモーメントと、最大たわみ量と、のうち少なくとも一つが前記判定情報(112H)に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する処理が含まれることを特徴とする。
【0020】
〔10〕上記〔9〕に記載のプログラム(102A)は、前記入力受付ステップにおいて、第7演算情報(112G)を更に取得し、前記第7演算情報(112G)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記演算ステップにおける前記構造計算は、前記第7演算情報(112G)に基づいて実行する前記デッキスラブ(1)の許容剪断応力の計算と、前記支持間距離に関する情報と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて実行する前記デッキスラブに作用する最大剪断力の計算と、を更に含み、前記判定情報は、前記断面性能の指標の算出結果と、前記許容剪断応力の算出結果と、を更に含み、前記演算ステップにおける前記判定処理は、前記デッキスラブ(1)に作用する最大剪断力の算出結果が前記判定情報に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する前記判定処理を更に含むことが好ましい。
【0021】
〔11〕上記〔9〕乃至〔10〕に記載のプログラム(102A)は、前記特定の荷重に関する情報は、車両のアウトリガーの位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、設備基礎の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、書架および移動式書架ならびにサーバラックなど高重量設備の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0022】
〔12〕上記〔9〕乃至〔11〕に記載のプログラム(102A)は、前記構造計算が有限要素法を用いて実行されることが好ましい。
【0023】
〔13〕本発明の一態様に係る情報処理システム(10)は、表示装置(215)を有する情報処理端末と、前記情報処理端末(200)と通信ネットワーク(300)を介して接続されたサーバ(100)と、を備えた情報処理システム(10)であって、前記情報処理端末(200)は、システム利用者から入力される、第1演算情報(112A)と、第2演算情報(112B)と、第3演算情報(112C)と、第4演算情報(112D)と、第5演算情報(112E)と、第6演算情報(112F)と、判定情報(112H)と、のうち少なくとも一つを含む情報を受け付ける受付部(211)と、前記受付部(211)が受け付けた情報を前記通信ネットワーク(300)を介して前記サーバ(100)に送信する送信部(212)と、前記通信ネットワーク(300)を介して前記サーバ(100)から送信された情報を受信する受信部(213)と、前記受信部(213)が受信した情報を表示装置(215)に表示させる表示制御部(214)と、を備え、前記サーバ(100)は、前記通信ネットワーク(300)を介して接続された情報処理端末(200)から送信された情報であって、前記第1演算情報(112A)と、前記第2演算情報(112B)と、前記第3演算情報(112C)と、前記第4演算情報(112D)と、前記第5演算情報(112E)と、前記第6演算情報(112F)と、前記判定情報(112H)と、のうち少なくとも一つを含む情報を受け付ける入力受付部(111)と、記憶部(112)と、前記第1演算情報(112A)に基づいてデッキスラブ(1)の断面性能を示す指標を算出し、前記第2演算情報(112B)に基づいてデッキスラブ(1)に作用する等分布荷重を算出し、前記第3演算情報(112C)に基づいてデッキスラブ(1)の上に載置された物体によってデッキスラブ(1)に作用する集中荷重である特殊荷重を算出し、前記第4演算情報(112D)と、前記特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブ(1)に前記特殊荷重が作用した際にデッキスラブ(1)が荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出し、前記第5演算情報(112E)と、前記等分布荷重の算出結果と、前記特殊荷重の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出し、前記第6演算情報(112F)と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブ(1)の構造計算を行い、前記第6演算情報(112F)と、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記判定情報(112H)と、に基づいて、前記構造計算の結果が前記判定情報(112H)に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定処理を行い、前記構造計算の結果および前記判定処理の結果が含まれる演算結果(112I)を前記記憶部(112)に記憶する演算部(113)と、前記記憶部(112)に記憶された前記演算結果(112I)を前記通信ネットワーク(300)を介して前記情報処理端末(200)に送信する出力部(114)と、を備え、前記第1演算情報(112A)は、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレート(2)の高さに関する情報と、デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、鉄筋(4)の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記第2演算情報(112B)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の高さに関する情報と、前記デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、デッキプレート(2)の材質に関する情報と、鉄筋(4)の仕様に関する情報と、を含み、前記前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、デッキプレート(2)が複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブ(1)に作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブ(1)に作用する固定荷重に関する情報と、を含み、前記第3演算情報(112C)は、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ(1)上を走行する車両(20、30)によりデッキスラブ(1)に作用する荷重に関する情報と、車両(20、30)の車輪間隔(WI)に関する情報と、車両(20、30)のホイールベース(WB)に関する情報と、車両(20)の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、前記第4演算情報(112D)は、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレート(2)の敷設方向ならびに大梁(52)および小梁(53)の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブ(1)を設置する躯体に関する情報と、デッキプレート(2)と梁との接合方法に関する情報と、を含み、前記第5演算情報(112E)は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を含み、前記第6演算情報(112F)は、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記判定情報(112H)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブ(1)の許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記演算部(113)で行われる前記構造計算は、前記デッキスラブ(1)に生じる正方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブ(1)に生じる負方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブ(1)に生じる最大たわみ量の計算と、のうち少なくとも一つを含む計算を実行する処理が含まれ、前記演算部(113)で行われる前記判定処理は、算出した正方向の最大曲げモーメントと、最大負方向の最大曲げモーメントと、最大たわみ量と、のうち少なくとも一つが前記判定情報(112H)に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する処理が含まれ、前記受信部(213)は、前記出力部(114)が送信した、前記送信部(212)が送信した情報に基づいて前記演算部(113)が実行した前記演算結果(112I)を前記通信ネットワーク(300)を介して受信し、前記表示制御部(214)は、前記受信部(213)が受信した前記演算結果(112I)を表示装置(215)に表示させることを特徴とする。
【0024】
〔14〕上記〔13〕に記載の情報処理システム(10)は、前記入力受付部(111)は、前記通信ネットワーク(300)を介して接続された前記情報処理端末(200)から送信された第7演算情報(112G)を受け付け、前記第7演算情報(112G)は、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート(2)の板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート(3)の仕様に関する情報と、を含み、前記演算部(113)は、前記構造計算として、前記第7演算情報(112G)に基づいて前記デッキスラブ(1)の許容剪断応力の計算を行い、前記支持間距離に関する情報と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて前記デッキスラブ(1)に作用する最大剪断力の計算を行い、前記最大剪断力の計算の結果が、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記許容剪断応力の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する前記判定処理を行い、前記演算結果(112I)を前記記憶部(112)に記憶することが好ましい。
【0025】
〔15〕上記〔13〕乃至〔14〕に記載の情報処理システム(10)は、前記特定の荷重に関する情報は、車両のアウトリガーの位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、設備基礎の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、書架および移動式書架ならびにサーバラックなど高重量設備の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0026】
〔16〕上記〔13〕乃至〔15〕に記載の情報処理システム(10)は、前記演算部(113)が、有限要素法を用いて前記構造計算を行うことが好ましい。
【0027】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0028】
≪特殊荷重計算システム≫
図1は、本発明の実施の形態に係る特殊荷重計算システムの構成例および情報処理装置の機能ブロック構成を示す図である。
図2は、情報処理装置の記憶部が有する情報の一例を示す図である。
【0029】
同図に示される情報処理システム10は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算を支援するためのシステムである。以下、情報処理システム10を「特殊荷重計算システム10」とも称する。
具体的には、特殊荷重計算システム10は、デッキスラブ1を用いた特定の建築物の設計を行う際に、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重について、システム利用者が指定した条件に基づいて計算し、デッキスラブ1が設計上の要求を満たしているか否かを確認するためのシステムである。
【0030】
図1に示すように、特殊荷重計算システム10は、情報処理装置100と、クライアント端末装置200とを備えている。情報処理装置100とクライアント端末装置200とは、ネットワーク300に接続され、ネットワーク300を介して情報処理装置100とクライアント端末装置200との間でデータの送受信が可能となっている。
なお、
図1では、特殊荷重計算システム10において、1つのクライアント端末装置200がネットワーク300に接続されている場合が示されているが、複数のクライアント端末装置200がネットワーク300に接続されてもよい。ネットワーク300は、例えばローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)である。
【0031】
なお、以下の説明において、情報処理装置100を単に「サーバ100」とも称する。また、以下の説明において、サーバ100を操作するユーザを「システム利用者」とも称する。
【0032】
先ず、サーバ100のハードウェア構成について説明する。
【0033】
図3は、情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【0034】
サーバ100は、ハードウェア資源として、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F(Interface)装置104、出力装置105、およびバス106を備えている。
【0035】
演算装置101は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって構成されている。記憶装置102は、演算装置101に各種のデータ処理を実行させるためのプログラムと、演算装置101によるデータ処理で利用されるパラメータや演算結果等のデータとを記憶する記憶領域を有し、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD、およびフラッシュメモリ等から構成されている。
【0036】
ここで、プログラム102Aは、コンピュータをサーバ100として機能させるための特殊荷重計算プログラムを含み、例えば、記憶装置102にあらかじめインストールされている。
【0037】
また、データ102Bは、特殊荷重計算プログラム用データとして、演算情報112A~112Gおよび判定情報112H等を含む。
【0038】
なお、プログラムおよびデータは、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、CD-ROM等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0039】
入力装置103は、外部から情報の入力を検出する機能部であり、例えばキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、またはタッチパネル等から構成されている。I/F装置104は、外部との情報の送受を行う機能部であり、有線または無線によって通信を行うための通信制御回路や入出力ポート、アンテナ等から構成されている。
【0040】
出力装置105は、演算装置101によるデータ処理によって得られた情報等を出力する機能部である。出力装置105としては、SSDやHDD等の外部記憶装置や、コンソールユニット等の表示装置を例示することができる。バス106は、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F装置104、および出力装置105を相互に接続し、これらの装置間でデータの授受を可能にする機能部である。
【0041】
サーバ100において、各演算装置101が各記憶装置102に記憶されたプログラムおよびデータにしたがって演算を実行し、各サーバにおける記憶装置102、入力装置103、I/F装置104、出力装置105、およびバス106を制御することにより、サーバ100における各機能ブロック(入力受付部111、演算部113、出力部114、および記憶部112)が実現される。
【0042】
次に、サーバ100の各機能ブロックについて詳細に説明する。
【0043】
図1に示すように、サーバ100は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算を支援するための機能ブロックとして、入力受付部111、演算部113、出力部114、および記憶部112を有する。
これらの機能ブロックは、サーバ100を構成するハードウェア資源とソフトウェアとの協働によって実現される。
【0044】
上記ソフトウェアは、本実施の形態に係るデッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算の支援(ネイティブアプリケーション)を実現するためのプログラムであって、例えば、あらかじめ外部機器(例えば外部記憶媒体)からダウンロードされて、サーバ100内の記憶装置(例えば記憶部112)に記憶されている。
【0045】
なお、上記プログラムは、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、CD-ROMやフラッシュメモリ等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0046】
入力受付部111は、システム利用者が
図3における入力装置103を介して入力したデータや、サーバ100の外部から入力されたデータを受け付ける機能部である。具体例として、入力受付部111は、ネットワーク300を介して接続されたクライアント端末装置200から送信されたリクエストを受け付け、受け付けたリクエストに応じた処理の実行をサーバ100内の各機能部に対して指示する。
【0047】
例えば、入力受付部111は、ネットワーク300を介して接続されたクライアント端末装置200から送信された演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを受け付け、当該演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを記憶部112に記憶させる。
また、例えば、入力受付部111は、システム利用者が
図3における入力装置103を介して入力した演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを受け付け、当該情報112A~112Hを記憶部112に記憶させる。
なお、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hはシステム管理者によってあらかじめを記憶部112に記憶させておくことができる。
【0048】
また、例えば、入力受付部111は、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hによって指定されたデッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算の実行を指示するリクエストを受け付けた場合に、演算部113に対してデッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算の実行を指示するとともに、出力部114に対して演算部113による計算結果をレスポンスとしてクライアント端末装置200に出力するよう指示する。
【0049】
記憶部112は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算の支援に係る各種データを記憶する機能部である。
例えば、記憶部112には、入力受付部111が受け付けた演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hと、演算部113による演算結果112Iとが記憶される。
【0050】
第1演算情報112Aは、あらかじめシステム管理者等によって用意された、デッキスラブ1の断面性能を示す指標の算出に関わる情報を含む。例えば、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレート2の高さに関する情報、デッキプレート2の板厚に関する情報、鉄筋4の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリート3の仕様に関する情報が含まれるが、これらに限られるものではない。
コンクリート3の仕様に関する情報には、コンクリート3の種類に関する情報、コンクリート3の厚さに関する情報、コンクリート3の強度に関する情報、コンクリート3の剛性に関する情報が含まれる。また、これらに加えて、コンクリート3の耐久性に関する情報を含めてもよい。
【0051】
第2演算情報112Bは、あらかじめシステム管理者等によって用意された、デッキスラブ1に作用する等分布荷重の算出に関わる情報を含む。例えば、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート2の高さに関する情報と、前記デッキプレート2の板厚に関する情報と、デッキプレート2の材質に関する情報と、鉄筋4の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート3の仕様に関する情報と、を含み、デッキプレート2が複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブ1に作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブ1に作用する固定荷重に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
なお、デッキプレート2の材質に関する情報には、デッキプレート2の表面処理に関する情報を含めてもよい。例えば、デッキプレート2の表面処理に関する情報として、めっきの種類、付着量に関する情報を含めてもよい。
鉄筋4の仕様に関する情報には、鉄筋4の種類(異形鉄筋、鉄線、丸鋼、溶接金網、異形鉄線溶接金網、鉄筋金網、鋼板、樹脂製の棒部材等)に関する情報が含まれる。より具体的には、鉄筋4の材質、径、鉄筋4のデッキスラブ1内における位置、鉄筋4同士のピッチに関する情報が含まれる。
積載荷重とは、建築物の床の上に積載される単位面積あたりの荷重である。
仕上げ荷重とは、積載荷重に含まれない床仕上げや天井等の質量によって発生する荷重である。
固定荷重とは、デッキプレート、および、コンクリート等の質量によって発生する荷重である。なお、固定荷重には、積載荷重および仕上げ荷重は含まれていないことに留意する。
【0052】
第3演算情報112Cは、あらかじめシステム管理者等によって用意された、デッキスラブ1の上に載置された物体によってデッキスラブ1に作用する集中荷重である特殊荷重の算出に関連する情報を含む。例えば、デッキスラブ1上を走行する車両20、30によりデッキスラブ1に作用する荷重に関する情報(位置および寸法ならびに作用する力に関する情報を含む)と、車両20、30の車輪間隔WIに関する情報と、車両20、30のホイールベースWBに関する情報と、車両20の前輪23に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部が含まれるが、これらに限られるものではない。
デッキスラブ1に作用する荷重に関する情報には、車両20、30がデッキスラブ1のどの位置を走行するか、配置されるかに関する情報が含まれる。
なお、集中荷重は、当該集中荷重が作用する面積や、作用する速度に関する情報を含めることも可能である。また、集中荷重が作用する回数、期間、頻度に関する情報を含めることも可能である。
【0053】
第4演算情報112Dは、あらかじめシステム管理者等によって用意された、デッキスラブ1に特殊荷重が作用した際にデッキスラブが荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅の算出に関わる情報を含む。例えば、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレート2の敷設方向ならびに大梁52および小梁53の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブ1を設置する躯体に関する情報と、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
デッキスラブ1を設置する躯体に関する情報には、鉄骨造であるか否か、RC造であるか否か、木造であるか否かに関する情報や、柱や梁(大梁52および小梁53を含む)の情報(寸法、材質、合成梁)等が含まれる。
デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報には、スタッド溶接であるか否か(頭付きスタッドを含む)、焼抜き栓溶接であるか否か、打込み鋲による接合であるか否か、スポット溶接やボルト接合、ドリルねじ接合等であるか否か、デッキプレートののみこみによるものであるか、定着筋によるものであるか、に関する情報が含まれる。また、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報には、デッキプレート2と梁との固定度に関する情報を含めることができる。
支持間距離付加情報には、デッキプレート2の延在方向に支持されているか否か、デッキプレート2の幅方向に支持されているか否か、大梁52や小梁53との距離に関する情報が含まれる。
【0054】
第5演算情報112Eは、あらかじめシステム管理者等によって用意された特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対の算出に関わる情報を含む。例えば、第5演算情報112Eには、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
特定の条件とは、第5演算情報112Eに基づいて指定されるデッキスラブ1の固定方法に関する条件であり、かつデッキスラブ1に対して特定の荷重が作用する場合に、曲げモーメントやたわみ量、剪断力等の算出に必要となる条件である。具体的には、両端ピン支持梁構造であるか、両端固定支持梁構造であるか、後述するデッキスラブ1の固定度といった情報が含まれる。
荷重データ対とは、第5演算情報112Eに基づいて、指定された特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせのことを指す。例えば、荷重データ対は、例えば、積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcと単位幅あたり有効輪荷重PA(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせや、重畳に作用する積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PA(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせや、積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcと単位幅あたり有効輪荷重PB(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせや、重畳に作用する積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PB(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせや、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEA、PEB(作用位置に関する情報を含む)、デッキスラブ1に作用する等分布荷重WS、WF(作用位置に関する情報を含む)、デッキスラブ1に作用する集中荷重PC(作用位置に関する情報を含む)とデッキスラブ1に作用する固定荷重Wd(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせに関する情報と、が挙げられるが、これらに限られるものではない。
特定の荷重とは、後述する複数の種類の荷重要素のうち、選択された一つの荷重要素によって発生する荷重を指す。複数の種類の荷重要素には、例えば、フォークリフト20、車両30、クローラークレーン車、キャタピラ車、高所作業車、乗用車、トラック、設備基礎、移動書架の質量、寸法や、車両(クローラークレーン車、キャタピラ車、トラック等)のアウトリガーの位置および寸法ならびに作用する力に関する情報や、設備基礎の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報や、書架および移動式書架ならびにサーバラックなど高重量設備の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報が含まれる。
【0055】
第6演算情報112Fは、あらかじめシステム管理者等によって用意された、デッキスラブ1の構造計算に関わる情報を含む。例えば、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
なお、これらの情報は、条件に応じていずれか一方のみを含めることとしてもよい。
【0056】
第7演算情報112Gは、あらかじめシステム管理者等によって用意された、デッキスラブ1の許容剪断応力の算出に関わる情報を含む。例えば、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート2の板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート3の仕様に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0057】
判定情報112Hは、あらかじめシステム管理者等によって用意された、基準値の算出に関わる情報を含む。例えば、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート2の材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート3の仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブ1の許容応力度に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
なお、これらの情報は、条件に応じていずれか一つのみを含めることとしてもよい。
基準値とは、判定情報112Hと、後述する演算結果112Iに含まれている断面性能を表す指標の算出結果と、後述する演算結果112Iに含まれている構造計算の結果と、に基づいてパラメータ毎に設定される値である。
具体的には、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントに対する基準値は、デッキスラブ1の正方向の許容応力度である。また、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントに対する基準値は、デッキスラブ1の負方向の許容応力度である。また、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量に対する基準値は、デッキスラブ1の許容たわみ量である。また、デッキスラブ1に作用する最大剪断力に対する基準値は、デッキスラブ1の許容剪断応力である。
デッキスラブ1の許容応力度には、長期許容応力度と中期許容応力度、短期許容応力度、一時使用時の許容応力度等に関する情報が含まれる。
【0058】
なお、記憶部122に記憶される演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hには、システム利用者が入力した情報のみならず、システム管理者等によって事前に用意された情報が含まれていてもよい。
【0059】
演算結果112Iは、記憶部112の一部を構成する情報であり、演算部113において算出された、デッキスラブの断面性能を示す指標、デッキスラブに作用する等分布荷重、デッキスラブに作用する特殊荷重、デッキスラブ有効幅、荷重データ対、デッキスラブ1の構造計算結果であるデッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメント、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメント、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量およびデッキスラブ1に作用する最大剪断力の算出結果と、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメント、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメント、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量およびデッキスラブ1に作用する最大剪断力が基準値(デッキスラブ1の正方向の許容応力度、デッキスラブ1の負方向の許容応力度、デッキスラブ1の許容たわみ量、デッキスラブ1の許容剪断応力)以下であるか否かを判定する判定結果を含む。
【0060】
演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算に係る各種演算を行う機能部である。
具体的には、演算部113は、記憶部112に記憶された演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hに基づいて、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算を実行する。
【0061】
例えば、演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、第1演算情報112Aに基づいてデッキスラブ1の断面性能を示す指標を算出し、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
また、例えば、演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、第2演算情報112Bに基づいてデッキスラブ1に作用する等分布荷重を算出し、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
また、例えば、演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、第3演算情報112Cに基づいてデッキスラブ1の上に載置された物体によってデッキスラブ1に作用する集中荷重である特殊荷重を算出し、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
また、例えば、演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、第4演算情報112Dと、演算結果112Iに含まれているデッキスラブ1に作用する特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブ1に特殊荷重が作用した際にデッキスラブ1が荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅VWを算出し、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
また、例えば、演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、第5演算情報112Eと、演算結果112Iに含まれている等分布荷重の算出結果と、演算結果112Iに含まれている特殊荷重の算出結果と、演算結果112Iに含まれているデッキスラブ有効幅VWの算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出し、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
また、例えば、演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、第6演算情報112Fと、演算結果112Iに含まれている断面性能を表す指標の算出結果と、演算結果112Iに含まれているデッキスラブ有効幅VWの算出結果と、演算結果112Iに含まれている荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブの構造計算を行い、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
また、例えば、演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、第7演算情報112Gに基づいて、デッキスラブ1の許容剪断応力を算出し、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
【0062】
また、例えば、演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、第6演算情報112Fと、演算結果112Iに含まれている断面性能を表す指標の算出結果と、演算結果112Iに含まれているデッキスラブ有効幅VWの算出結果と、演算結果112Iに含まれている荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量と、を算出し、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
また、例えば、演算部113は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、前記支持間距離に関する情報と、演算結果112Iに含まれているデッキスラブ有効幅VWの算出結果と、演算結果112Iに含まれている荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブ1に作用する最大剪断力を算出し、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
【0063】
また、演算部113は、判定情報112Hと、演算結果112Iに含まれている断面性能を表す指標の算出結果と、演算結果112Iに含まれている構造計算の結果と、に基づいて基準値(デッキスラブ1の正方向の許容応力度、デッキスラブ1の負方向の許容応力度、デッキスラブ1の許容たわみ量、デッキスラブ1の許容剪断応力)を算出し、当該算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
また、例えば、演算部113は、演算結果112Iに含まれているデッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量と、デッキスラブ1に作用する最大剪断力と、が基準値以下であるか否かを判定する判定処理を行う。更に、演算部113は、上記判定処理による判定結果を演算結果112Iに含め、記憶部112に記憶させる。
【0064】
演算部113は、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントを後述する式(1)乃至(87)乃至有限要素法に基づいて算出する。
また、演算部113は、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントを後述する式(1)乃至(87)乃至有限要素法に基づいて算出する。
また、演算部113は、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量を後述する式(1)乃至(87)乃至有限要素法に基づいて算出する。
また、演算部113は、デッキスラブ1に作用する最大剪断力を後述する式(1)乃至(87)乃至有限要素法に基づいて算出する。
また、演算部113は、デッキスラブ1の正方向の許容応力度を後述する式(1)乃至(87)に基づいて算出する。
また、演算部113は、デッキスラブ1の負方向の許容応力度を後述する式(1)乃至(87)に基づいて算出する。
また、演算部113は、デッキスラブ1の許容たわみ量を後述する式(1)乃至(87)に基づいて算出する。
また、演算部113は、デッキスラブ1の許容剪断応力を後述する式(1)乃至(87)に基づいて算出する。
【0065】
出力部114は、データをサーバ100の外部に出力する機能部である。具体例として、出力部114は、演算結果112Iに記憶されている演算結果を、ネットワーク300を介してクライアント端末装置200に送信する。また、例えば、出力部114は、
図3における出力装置105を介してシステム利用者に演算結果を表示させる。
なお、演算結果112Iには、デッキスラブの断面性能を示す指標、デッキスラブに作用する等分布荷重、デッキスラブに作用する特殊荷重、デッキスラブ有効幅、荷重データ対、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメント、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメント、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量およびデッキスラブ1に作用する最大剪断力の算出結果と、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメント、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメント、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量およびデッキスラブ1に作用する最大剪断力が基準値(デッキスラブ1の正方向の許容応力度、デッキスラブ1の負方向の許容応力度、デッキスラブ1の許容たわみ量、デッキスラブ1の許容剪断応力)以下であるか否かを判定する判定結果との全てが含まれていてもよいし、何れか一つが含まれていてもよい。
【0066】
次に、クライアント端末装置200のハードウェア構成について説明する。
【0067】
図5は、クライアント端末装置のハードウェア構成を示す図である。
【0068】
クライアント端末装置200は、ハードウェア資源として、演算装置201、記憶装置202、入力装置203、I/F(Interface)装置204、出力装置205、およびバス206を備えている。
【0069】
演算装置201は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって構成されている。記憶装置202は、演算装置201に各種のデータ処理を実行させるためのプログラムと、演算装置201によるデータ処理で利用されるパラメータや演算結果等のデータとを記憶する記憶領域を有し、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD、およびフラッシュメモリ等から構成されている。
【0070】
ここで、プログラムは、コンピュータをクライアント端末装置200として機能させるためのOSやブラウザ等のプログラムを含み、例えば、記憶装置202にあらかじめインストールされている。
【0071】
入力装置203は、外部から情報の入力を検出する機能部であり、例えばキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、またはタッチパネル等から構成されている。I/F装置204は、外部との情報の送受を行う機能部であり、有線または無線によって通信を行うための通信制御回路や入出力ポート、アンテナ等から構成されている。
【0072】
出力装置205は、演算装置201によるデータ処理によって得られた情報等を出力する機能部である。出力装置205としては、SSDやHDD等の外部記憶装置や、LCD(Liquid Crystal Display)および有機EL(Electro Luminescence)等の表示装置を例示することができる。バス206は、演算装置201、記憶装置202、入力装置203、I/F装置204、および出力装置205を相互に接続し、これらの装置間でデータの授受を可能にする機能部である。
【0073】
クライアント端末装置200は、演算装置201が記憶装置202に記憶されたプログラムにしたがって演算を実行し、記憶装置202、入力装置203、I/F装置204、出力装置205、およびバス206を制御することにより、
図4に示したクライアント端末装置200の各機能ブロック(受付部211、送信部212、受信部213、表示制御部214)が実現される。
【0074】
例えば、受付部211、送信部212、受信部213および表示制御部214は、クライアント端末装置200にあらかじめインストールされたOS(Operating System)とブラウザのプログラムによって実現される。つまり、ブラウザは、例えば、あらかじめ外部機器(例えばインターネット上のサーバ)からダウンロードされて、後述するクライアント端末装置200内の記憶装置202に記憶されている。
【0075】
次に、クライアント端末装置200の各機能ブロックについて詳細に説明する。
【0076】
図4は、本発明の実施の形態に係る特殊荷重計算システムの構成例およびクライアント端末装置の機能ブロック構成を示す図である。
【0077】
クライアント端末装置200は、デッキプレートの構造計算結果等の取得を希望するシステム利用者が使用する情報処理装置(プログラム処理装置)である。
図4に示すように、クライアント端末装置200は、受付部211、送信部212、受信部213、表示制御部214および表示装置215を有する。
これらの機能部は、クライアント端末装置200を構成するハードウェア資源とソフトウェアとの協働によって実現される。
【0078】
受付部211は、システム利用者による各種データの入力と各種指示を受け付ける機能部である。
【0079】
具体的には、受付部211は、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hの入力を受け付ける。例えば、受付部211は、Webブラウザによって表示装置215に表示されるWebページの入力フォームにシステム利用者によって入力された値等を演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hとして受け付ける。
【0080】
また、受付部211は、入力された演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hに基づくデッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算として、演算情報112A~112Gによって指定されたデッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算の実行の指示を受け付ける。更に、受付部211は、算出した特殊荷重が、判定情報112Hと、演算結果112Iに含まれている断面性能を表す指標の算出結果と、演算結果112Iに含まれている構造計算の結果と、に基づいて設定される基準値(例えば、算出した特殊荷重がデッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントである場合における、デッキスラブ1の正方向の許容応力度の値)を満たすか否かを判定する判定処理の実行の指示を受け付ける。例えば、受付部211は、表示装置215の画面に表示されるWebブラウザの実行ボタンが選択(クリック)された場合に、特殊荷重の計算や判定処理の実行の指示を受け付ける。
【0081】
送信部212は、システム利用者が受付部211を介して入力した指示に応じたリクエストと各種データをサーバ100に送信する機能部である。例えば、送信部212は、システム利用者が受付部211を介して入力した指示に応じて、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hに基づく処理(特殊荷重の計算および判定処理)の実行の指示を含むリクエストをネットワーク300を介してサーバ100に送信する。
【0082】
受信部213は、サーバ100から送信された各種データを受け付ける機能部である。具体的には、受信部213は、送信部212から出力されたリクエストに応じたレスポンスをネットワーク300を介してサーバ100から受け付ける。例えば、クライアント端末装置200がWebブラウザを介してサーバ100にアクセスした場合に、受信部213は、サーバ100から送信されたHTMLファイルを受信し、表示制御部214に与える。表示制御部214は、受信したHTMLファイルに基づくWebページを表示装置215の画面に表示させる。また、受信部213は、送信部212から出力されたリクエストに応じたレスポンスとして、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算や判定処理の結果を受信し、表示制御部214に与える。表示制御部214は、受信したデッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算や判定処理の結果を表示装置215に表示させる。
【0083】
表示制御部214は、各種情報を表示するよう表示装置215に指示する機能部である。表示制御部214は、例えば、WebブラウザによってWebページを表示するよう表示装置215に指示する。また、表示制御部214は、送信部212が送信したリクエストに応じて、サーバ100の出力部114から送信されたレスポンスに含まれる情報を表示するよう表示装置215に指示する。
【0084】
表示制御部214は、表示装置215を制御することにより、各種情報を表示装置215の画面に表示させる機能部である。表示制御部214は、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重の計算や判定処理の結果を表示装置215の画面に描画させる。
なお、表示装置215は、本実施の形態のようにクライアント端末装置200と一体となってもよいし、クライアント端末装置200とは別の構成としてもよい。
【0085】
<<設計要素>>
本発明の実施の形態に係るデッキスラブの設計に必要となる要素について、以下に示す。
図6は、本発明の設計対象となるデッキスラブの一例を示す図である。
【0086】
この例におけるデッキスラブ1は、図示しない梁材料の上に敷設されたデッキプレート2の上部に鉄筋を配置し、コンクリート3を打設することにより得られる。
デッキプレート2、コンクリート3および鉄筋4からなるデッキスラブ1は、Z方向において所定の寸法を有しており、
図6において、デッキプレート2の高さがTS、デッキプレート2の板厚がTD、コンクリート3の厚さがTCとなっている。なお、ここでは山谷型のデッキプレートを例示したが、上面がフラットなタイプのデッキプレートや鉄筋トラスが装着されたタイプのデッキプレートを使用したスラブも本発明の設計対象のデッキスラブに含まれる。
本発明は、このデッキスラブ1に作用する特殊荷重についての算出を行う。
【0087】
図7は、特殊荷重の例であるフォークリフトの平面図である。
【0088】
まず、デッキスラブ1に作用する特殊荷重の一例として、フォークリフト20による集中荷重の算出を行う。
【0089】
フォークリフト20は、本体部21とフォーク部22を有する。
本体部21は、原動機を有しており、人がフォークリフト20の操作を行う運転席を有する機能部である。
フォーク部22は、パレット等に積載された貨物を保持する機能部である。
また、本体部21は、左右にそれぞれ2つずつ前輪23と後輪24を有する。
フォークリフト20は、前輪23と後輪24の車軸間の距離であるホイールベースWBを有し、また、左右の前輪23間の距離である車輪間隔WIを有する。
本発明では、フォークリフト20の質量は2950N、ホイールベースWBは1100mm、車輪間隔WIは870mmとしての設計例を示す。
【0090】
フォークリフト20の前輪23によりデッキスラブ1に作用する荷重とフォークリフト20の後輪24によりデッキスラブ1に作用する荷重は、不均一であることが知られている。
そのため、デッキスラブ1の設計にあたっては、フォークリフト20全体によりデッキスラブ1に作用する荷重のうち、フォークリフト20の前輪23によりデッキスラブ1に作用する荷重の割合LRを考慮する必要がある。
本発明では、フォークリフト20の前輪23によりデッキスラブ1に作用する荷重の割合LRは0.8として、フォークリフト20による集中荷重の算出を行う。
【0091】
また、フォークリフト20が走行することによりデッキスラブ1に作用する荷重のうち、走行中にデッキスラブ1に作用する荷重と走行開始時にデッキスラブ1に作用する荷重は不均一であり、一般に走行開始時にデッキスラブ1に作用する荷重の方が大きくなる。
そのため、フォークリフト20の走行開始時にデッキスラブに作用する荷重は、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数ICを考慮する必要がある。
本発明では、衝撃係数ICは1.3として、フォークリフト20による集中荷重の算出を行う。
<<デッキスラブ有効幅の算出>>
【0092】
図8は、デッキスラブの有効幅を示す図である。
図9は、デッキスラブの有効幅と一点当たり集中荷重の関係に関する実験結果の一例を示す図である。
以下では、演算部113によるデッキスラブの有効幅の算出方法の一例を述べる。
【0093】
図8では、X方向に支持間距離Lで敷設されたデッキスラブ1に対して、集中荷重Pが作用している。デッキスラブ1に対して集中荷重Pが作用する場合、デッキスラブ1のY方向(幅方向)において集中荷重Pが負担できる範囲には制限が生じる。デッキスラブ1の幅方向において集中荷重Pが負担できる範囲の幅のことをデッキスラブ有効幅VW(あるいは有効幅VW)と称する。
【0094】
図9は、デッキスラブ1の有効幅VWE1と一点当たり集中荷重Pの関係に関する実験結果E1を示す図であり、
図9においては、横軸方向に一点あたり集中荷重Pの値(単位:t)、縦軸方向に有効幅VWE1の値(単位:mm)が示されている。
実験結果E1では、一点あたり集中荷重Pが1.0t(=9800N)のときには有効幅VWE1が2100mm、一点あたり集中荷重Pが3.0t(=29400N)のときには有効幅VWE1が1500mmとなっている。
【0095】
本発明では、支持間距離Lの3分の2の大きさと、実験結果E1の値を比較し、より小さな値をデッキスラブ有効幅VWの値として採用し、フォークリフト20による集中荷重の算出を行う。
【0096】
つまり、デッキスラブ有効幅VWは、一点あたり集中荷重Pが1.0t以下の値である場合には、以下の関係式から求められる。
【0097】
VW=MIN(2L/3,2100)…(1)
なお、MAX(2L/3,2100)とは、2L/3と2100の値のうち、より小さい値を採用することを意味している。
【0098】
また、デッキスラブ有効幅VWは、一点あたり集中荷重Pが1.0tを超える値である場合には、以下の関係式から求められる。
【0099】
VW=MIN{2L/3,―300(P―1)+2100}…(2)
なお、MIN{2L/3,―300(P―1)+2100}とは、2L/3と―300(P―1)+2100の値のうち、より小さい値を採用することを意味している。
【0100】
<<演算部によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)>>
次に、デッキスラブ1の延在方向にフォークリフト20が走行する場合における作用荷重の算出を行う。
図10は、デッキスラブ延在方向とフォークリフト走行方向が一致する場合におけるデッキスラブとフォークリフトの位置関係を示す平面図である。
図11Aは、
図10において作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
図11Bは、
図10において作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントおよび負方向曲げモーメントを示す図である。
図11Cは、
図10において作用する荷重および剪断力を示す図である。
以下では、演算部113による荷重データ対と、デッキスラブに生じる正方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブに生じる負方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブに生じる最大たわみ量と、デッキスラブに作用する最大剪断力と、の算出方法の一例を述べる。
【0101】
本一例においては、デッキプレート2の高さTSは75mm、デッキプレート2の板厚TDは1.2mm、コンクリート3の厚さTCは80mm、コンクリート3の種類はコンクリート密度が23.0kN/m3の普通コンクリート、コンクリート3の設計基準強度Fcは24N/mm2、デッキプレート2の材質は普通鋼、デッキプレート2の表面処理(亜鉛めっき等)はZ12、鋼材の設計基準強度(降伏点)Ftは235N/mm2、鉄筋4の仕様として鉄筋径がφ6かつ鉄筋の設置間隔が100×100mm、デッキプレート2の支持間距離Lは2250mm、デッキスラブ1に作用する積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wc(ただし、積載荷重Wlとフォークリフト20により作用する荷重は、同時に作用しないものとし、Wcは0N/m2として仮定する)は820N/m2、デッキスラブ1に作用する固定荷重Wdは2930N/m2として設計を行う。
なお、鋼材には、デッキプレートのみならず、鉄筋、溶接金網、補強筋等も含まれる。
【0102】
図10において、デッキスラブ1の延在方向にフォークリフト20が走行し、X軸方向において、デッキスラブ1の支持間距離Lの中間地点L/2とフォークリフト20の前輪23が重なるようにフォークリフト20が静止している状態を表している。
フォークリフト20の前輪23によりデッキスラブ1に作用する荷重の割合LRと、衝撃係数ICの値を考慮すると、デッキスラブ1の延在方向にフォークリフト20が走行する場合に、フォークリフト20によりデッキスラブ1に作用する荷重が最大となるのは、デッキスラブ1の支持間距離Lの中間地点L/2とフォークリフト20の前輪23が重なる地点である。
【0103】
図10において、対称軸ASを中心とすると、Y軸方向においてデッキスラブ1およびフォークリフト20は対称となっていることが分かる。
また、フォークリフト20の片側の前輪23による荷重が作用する範囲であるデッキスラブ有効範囲25は、X軸方向においては、デッキスラブ1の支持間距離Lの長さを有しており、Y軸方向においては、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)におけるデッキスラブ有効幅VW1の長さを有している。
フォークリフト20の片側の前輪23によってデッキスラブ有効範囲25に作用する荷重が、デッキスラブ1の延在方向にフォークリフト20が走行する場合に、フォークリフト20によりデッキスラブ1に作用する最大の荷重PFLである。
【0104】
ここで、フォークリフト20によりデッキスラブ1に作用する最大の荷重PFLを演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)におけるデッキスラブ有効幅VW1で除することにより求められる単位幅あたり有効輪荷重PAを用いれば、構造計算を簡易に行うことができるため、単位幅あたり有効輪荷重PAの算出を行うこととする。
単位幅あたり有効輪荷重PAは、以下の関係式から求められる。
【0105】
PA=PFL/VW1…(3)
【0106】
上記式(3)から、単位幅あたり有効輪荷重PAの算出にあたっては、フォークリフト20によりデッキスラブ1に作用する最大の荷重PFLおよび演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)におけるデッキスラブ有効幅VW1の具体的な値を算出する必要があることが分かる。
【0107】
図10に示すように、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)におけるデッキスラブ有効幅VW1は、デッキスラブ有効幅VWおよび車輪間隔WIとの関係において、以下の関係式が成立する。
【0108】
VW1=(VW+WI)/2…(4)
【0109】
ここで、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)におけるデッキスラブ有効幅VW1の具体的な値を求めるためには、フォークリフト20の片側の前輪23により作用する荷重PFLの値を求める必要があることから、上記式(1)乃至(2)に基づいて、荷重PFLの算出を行う。
【0110】
フォークリフト20の質量が2950kgであることから、フォークリフト20の片側の前輪23により作用する荷重PFLは、以下の関係式から求められる。
【0111】
PFL=2950×9.8×LR×IC/2…(5)
【0112】
上記式(5)において、フォークリフト20の前輪23によりデッキスラブ1に作用する荷重の割合LRは0.8、衝撃係数ICは1.3であることから、フォークリフト20の片側の前輪23により作用する荷重PFLは15033Nと求められる。
【0113】
荷重PFLの値である15033Nは、t換算すると、1.53tであることから、上記式(2)に基づいて、デッキスラブ有効幅VWは1500mmと求められる。
【0114】
よって、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)におけるデッキスラブ有効幅VW1は、上記式(2)に基づいて、1185mmと求められる。
【0115】
上記式(2)および(5)により、フォークリフト20の片側の前輪23により作用する荷重PFLと、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)におけるデッキスラブ有効幅VW1の具体的な値を得られたことから、上記式(3)に基づいて単位幅あたり有効輪荷重PAが12690N/mとなることが分かる。
【0116】
次に、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxおよび最大たわみ量δmaxを算出する。
【0117】
図11Aに示すように、両端ピン支持梁構造を有するデッキスラブ1には、等分布荷重として積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wd、集中荷重として単位幅あたり有効輪荷重PAが作用している。これらの荷重がデッキスラブ1に作用することにより、デッキスラブ1には正方向曲げモーメントMfおよびたわみδが生じる。
デッキスラブ1に生じる正方向曲げモーメントMfのうち、正方向の最大曲げモーメントMfmaxは、デッキスラブ1の支持間距離Lの中間地点、言い換えると、X方向においてLA=LAとなる地点(LA=L/2)において生じる。
デッキスラブ1の設計にあたっては、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxがデッキスラブ1の正方向の許容応力度FStおよびFScよりも小さくなることと、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxがデッキスラブ1の許容たわみ量よりも小さくなることを確認する必要がある。
そこで、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxと、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxと、デッキスラブ1の許容応力度FStおよびFScと、デッキスラブ1の許容たわみ量δaの算出方法について述べる。
【0118】
まずは、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxと、デッキスラブ1の許容応力度FStおよびFScの算出方法について述べる。
積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdが作用することにより、デッキスラブ1に生じる曲げモーメントMfdは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
【0119】
Mfd={(Wd+Wc+Wl)×(L^2)}/8…(6)
【0120】
また、単位幅あたり有効輪荷重PAが作用することにより、デッキスラブ1に生じる曲げモーメントMfpは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
【0121】
Mfp=(PA×L)/4…(7)
【0122】
デッキスラブ1には積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PAが重畳に作用することから、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxは、以下の関係式から求められる。
Mfmax=Mfd+Mfp…(8)
【0123】
デッキスラブ1の正方向の許容応力度は、デッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStおよびデッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScの2種類がある。
デッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStは、デッキスラブ1の鋼材側断面係数をcZtとすると、以下の不等式を満たす必要がある。
【0124】
FSt≧Mfmax/cZt…(9)
【0125】
デッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScは、デッキスラブ1のコンクリート3側断面係数をcZcとすると、以下の不等式を満たす必要がある。
【0126】
FSc≧Mfmax/cZc…(10)
【0127】
また、デッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStは、鋼材の設計基準強度(降伏点)をFt、安全率を1.5とすると、以下の関係式から求められる。
【0128】
FSt=Ft/1.5…(11)
【0129】
また、デッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScは、コンクリート3の設計基準強度をFc、安全率を3とすると、以下の関係式から求められる。
【0130】
FSc=Fc/3…(12)
【0131】
上記式(9)および(11)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxの値はデッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0132】
Mfmax/cZt≦Ft/1.5…(13)
【0133】
上記式(10)および(12)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxの値はデッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0134】
Mfmax/cZc≦Fc/3…(14)
【0135】
ここで、デッキプレート2の支持間距離Lを2250mmとすると、上記式(6)よりデッキスラブ1に生じる曲げモーメントMfdは2370N・m/m、上記式(7)よりデッキスラブ1に生じる曲げモーメントMfpは7140N・m/mとなり、上記式(8)よりデッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxは、9510N・m/mとなる。
【0136】
また、デッキスラブ1の鋼材側断面係数cZtを120.0×103mm3/m、デッキスラブ1のコンクリート側断面係数cZcを3210×103mm3/mとすると、上記式(9)よりMfmax/cZtは79.3N/mm2/mとなり、上記式(10)よりMfmax/cZcは3.0N/mm2/mとなる。
したがって、上記式(13)は79.3N/mm2/m≦156.7N/mm2/m、上記(14)は3.0N/mm2/m≦8.0N/mm2/mとなることから、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxの値は、デッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStの値以下となり、デッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0137】
次に、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxと、デッキスラブ1の許容たわみ量δaの算出方法について述べる。
積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdが作用することにより、デッキスラブ1に生じるたわみ量δdは、デッキプレート2の支持間距離をL、鋼材のヤング係数をE、デッキスラブ1の断面二次モーメントをI、鋼材とコンクリート3のヤング係数比をnとすると、以下の関係式から求められる。
なお、鋼材のヤング係数Eは205GPa、デッキスラブ1の断面二次モーメントIは17900×104×mm4/m、ヤング係数比nは15とする。
また、鋼材には、デッキプレートのみならず、鉄筋、溶接金網、補強筋等も含まれる。
【0138】
δd={5×(Wd+Wc+Wl)×(L^4)×n}/(384×E×I)…(15)
【0139】
単位幅あたり有効輪荷重PAが作用することにより、デッキスラブ1に生じるたわみ量δpは、デッキプレート2の支持間距離をL、鋼材のヤング係数をE、デッキスラブ1の断面二次モーメントをIとすると、以下の関係式から求められる。
【0140】
δp={PA×(L^3)×n}/(48×E×I)…(16)
【0141】
デッキスラブ1には積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PAが重畳に作用することから、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxは、以下の関係式から求められる。
【0142】
δmax=δd+δp…(17)
【0143】
デッキスラブ1の許容たわみ量δaは、変形増大係数Kを1.5とすると、建築基準法施行令第82条第1項第4号および平成12年建設省告示第1459号に基づいて、以下の関係式から求められる。
【0144】
δa=L/(250×K)…(18)
【0145】
上記式(17)および(18)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxの値はデッキスラブ1の許容たわみ量δaの値以下となるよりも小さくなることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0146】
δmax≦δa…(19)
【0147】
上記式(15)よりデッキスラブ1に生じるたわみ量δdは0.512mm、上記式(16)よりデッキスラブ1に生じるたわみ量δpは1.731mmなり、上記式(17)よりデッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxは、2.243mmとなる。
また、上記式(18)よりデッキスラブ1の許容たわみ量δaは6mmとなる。
したがって、上記式(19)は2.243mm≦6mmとなることから、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxは設計上の条件を満たしていると言える。
【0148】
次に、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxを算出する。
【0149】
図11Bに示すように、両端固定支持梁構造デッキスラブ1には、等分布荷重として積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wc、集中荷重として単位幅あたり有効輪荷重PAが作用している。これらの荷重がデッキスラブ1に作用することにより、デッキスラブ1には正方向曲げモーメントMfnだけでなく、負方向曲げモーメントMnが生じる。
デッキスラブ1には負方向曲げモーメントMnのうち、負方向の最大曲げモーメントMnmaxは、デッキスラブ1の端部において生じる。
デッキスラブ1の設計にあたっては、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxがデッキスラブ1の負方向の許容応力度FScnよりも小さくなることを確認する必要がある。なお、両端固定支持梁構造デッキスラブ1の場合、両端ピン支持梁構造を有するデッキスラブ1の場合の正方向の最大曲げモーメントMfmaxよりも正方向の最大曲げモーメントMfnmaxは小さくなることから、正方向の最大曲げモーメントMfnmaxの算出は省略する。また、両端固定支持梁構造デッキスラブ1の場合、両端ピン支持梁構造を有するデッキスラブ1の場合よりもたわみ量は小さくなることから、たわみδの算出は省略する。
そこで、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxと、デッキスラブ1の負方向の許容応力度FScnの算出方法について述べる。
【0150】
積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcが作用することにより、デッキスラブ1に生じる曲げモーメントMndは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
【0151】
Mnd={(Wc+Wl)×(L^2)}/12…(20)
【0152】
また、単位幅あたり有効輪荷重PAが作用することにより、デッキスラブ1に生じる曲げモーメントMnpは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
【0153】
Mnp=(PA×L)/8…(21)
【0154】
デッキスラブ1には積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcと単位幅あたり有効輪荷重PAが重畳に作用することから、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxは、以下の関係式から求められる。
Mnmax=Mnd+Mnp…(22)
【0155】
デッキスラブ1の負方向の許容応力度は、デッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnおよびデッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnの2種類がある。
デッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnは、デッキスラブ1の鋼材側断面係数をcZtとすると、以下の不等式を満たす必要がある。
【0156】
FStn≧Mnmax/cZt…(23)
【0157】
デッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnは、デッキスラブ1のコンクリート側断面係数をeZtとすると、以下の不等式を満たす必要がある。
【0158】
FScn≧Mnmax/eZt…(24)
【0159】
また、デッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnは、鋼材の設計基準強度(降伏点)をFt、座屈による低減を考慮した低減係数をα(本一例においては、αは1.5とする)とすると、以下の関係式から求められる。
【0160】
FStn=Ft/α…(25)
【0161】
また、デッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnは、コンクリート3の設計基準強度をFcとすると、以下の関係式から求められる。
【0162】
FScn=0.62×{(Fc)^(1/2)}…(26)
【0163】
上記式(23)および(25)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxの値はデッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0164】
Mnmax/cZt≦Ft/1.5…(27)
【0165】
上記式(24)および(26)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxの値はデッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0166】
Mnmax/eZt≦0.62×{(Fc)^(1/2)}…(28)
【0167】
ここで、デッキプレート2の支持間距離Lを2250mmとすると、上記式(20)よりデッキスラブ1に生じる曲げモーメントMndは350N・m/m、上記式(21)よりデッキスラブ1に生じる曲げモーメントMnpは3570N・m/mとなり、上記式(22)よりデッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxは、3920N・m/mとなる。
【0168】
また、デッキスラブ1の鋼材側断面係数cZtを120.0×103mm3/m、デッキスラブ1のコンクリート側断面係数をeZtを3860×103mm3/mとすると、上記式(23)よりMnmax/cZtは32.7N/mm2/mとなり、上記式(24)よりMnmax/eZtは1.02N/mm2/mとなる。
したがって、上記式(27)は32.7N/mm2/m≦156.7N/mm2/m、上記(28)は1.02N/mm2/m≦3.04N/mm2/mとなることから、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxの値は、デッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnの値以下となり、デッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0169】
次に、デッキスラブ1に生じる最大剪断応力τmaxを算出する。
【0170】
図11Cに示すように、両端ピン支持梁構造デッキスラブ1には、等分布荷重として積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wc、集中荷重として単位幅あたり有効輪荷重PAが作用している。これらの荷重がデッキスラブ1に作用することにより、デッキスラブ1には剪断力Qが作用する。
デッキスラブ1には剪断力Qのうち、最大剪断力Qmaxは、デッキスラブ1の端部において作用する。
デッキスラブ1の設計にあたっては、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxがデッキスラブ1の許容剪断応力τaよりも小さくなることを確認する必要がある。
そこで、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxと、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxと、デッキスラブ1の許容剪断応力τaの算出方法について述べる。
【0171】
積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcが作用することにより、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
【0172】
Qmax=PA+{(Wc+Wl)×L}/2…(29)
【0173】
デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxは、デッキスラブ1の断面一次モーメントをS、デッキスラブ1の断面二次モーメントをIとすると、以下の関係式から求められる。
なお、デッキスラブ1の断面一次モーメントSは、1560×103×mm3/m、デッキスラブ1の断面二次モーメントIは、17900×104×mm4/mとする。
【0174】
τmax=Qmax×S/I…(30)
【0175】
上記式(30)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxの値はデッキスラブ1の許容剪断応力τaの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
なお、デッキスラブ1の許容剪断応力τaの値は、185.0N/mm/mとする。
【0176】
τmax≦τa…(31)
【0177】
ここで、デッキプレート2の支持間距離Lを2250mmとすると、上記式(29)よりデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは13610N・m/m、上記式(30)よりデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxは118.6N/mm/mとなる。
したがって、上記(31)は118.6N/mm/m≦185.0N/mm/mとなることから、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxと、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxは設計上の条件を満たしていると言える。
【0178】
<<演算部によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)>>
次に、デッキスラブ1の延在方向に対して直交する方向にフォークリフト20が走行する場合における作用荷重の算出を行う。
図12は、デッキスラブ延在方向とフォークリフト走行方向が直交する場合におけるデッキスラブとフォークリフトの位置関係を示す平面図である。
図13Aは、
図12において作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
図13Bは、
図12において作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントおよび負方向曲げモーメントを示す図である。
図13Cは、
図12において作用する荷重および剪断力を示す図である。
以下では、演算部113による荷重データ対と、デッキスラブに生じる正方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブに生じる負方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブに生じる最大たわみ量と、デッキスラブに作用する最大剪断力と、の算出方法の、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)とは異なる一例を述べる。
【0179】
本一例においても、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)と同様に、デッキプレート2の高さTSは75mm、デッキプレート2の板厚TDは1.2mm、コンクリート3の厚さTCは80mm、コンクリート3の種類はコンクリート密度が23.0kN/m3の普通コンクリート、コンクリート3の設計基準強度Fcは24N/mm2、デッキプレート2の材質は普通鋼、デッキプレート2の表面処理(亜鉛めっき等)はZ12、鋼材の設計基準強度(降伏点)Ftは235N/mm2、鉄筋4の仕様として鉄筋径がφ6かつ鉄筋の設置間隔が100×100mm、デッキプレート2の支持間距離Lは2250mm、デッキスラブ1に作用する積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wc(ただし、積載荷重Wlとフォークリフト20により作用する荷重は、同時に作用しないものとし、Wcは0N/m2として仮定する)は820N/m2、デッキスラブ1に作用する固定荷重Wdは2930N/m2として設計を行う。
なお、鋼材には、デッキプレートのみならず、溶接金網や鉄筋、補強筋等も含まれる。
【0180】
図12において、デッキスラブ延在方向と直交する方向(Y軸方向)にフォークリフト20が走行し、X軸方向においては、デッキスラブ1の支持間距離Lの中間地点L/2であって、Y軸方向においては、フォークリフト20の前輪23による荷重が作用する範囲であるデッキスラブ有効範囲25にフォークリフト20が静止し、フォークリフト20の後輪24はデッキスラブ有効範囲25の外にある状態を表している。
フォークリフト20の前輪23によりデッキスラブ1に作用する荷重の割合LRと、衝撃係数ICの値を考慮すると、デッキスラブ1の延在方向にフォークリフト20が走行する場合に、フォークリフト20によりデッキスラブ1に作用する荷重が最大となるのは、デッキスラブ1の支持間距離Lの中間地点L/2とフォークリフト20の中心軸が重なる場合である。
具体的には、X軸方向においてデッキスラブ1を支持する梁の中心とフォークリフト20の車輪23,24との距離を表すLB2が、デッキスラブ1の支持間距離Lと、フォークリフト20のX軸方向の大きさであるLB1との間で、以下の関係式が成立する場合である。
【0181】
LB2=(L―LB1)/2…(32)
【0182】
図12において、フォークリフト20の前輪23による荷重が作用する範囲であるデッキスラブ有効範囲25は、X軸方向においては、デッキスラブ1の支持間距離Lの長さを有しており、Y軸方向においては、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)におけるデッキスラブ有効幅VW2の長さを有している。
デッキスラブ1の延在方向と直交する方向(Y軸方向)にフォークリフト20が走行し、デッキスラブ1の支持間距離Lの中間地点L/2とフォークリフト20の中心軸が重なる場合にフォークリフト20の前輪23によってデッキスラブ有効範囲25に作用する荷重が、フォークリフト20によりデッキスラブ1に作用する最大の荷重PFLである。PFLは、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)と同様である。
【0183】
ここで、フォークリフト20によりデッキスラブ1に作用する最大の荷重PFLを演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)におけるデッキスラブ有効幅VW2で除することにより求められる単位幅あたり有効輪荷重PBを用いれば、構造計算を簡易に行うことができるため、単位幅あたり有効輪荷重PBの算出を行うこととする。
単位幅あたり有効輪荷重PBは、以下の関係式から求められる。
【0184】
PB=PFL/VW2…(33)
【0185】
上記式(33)から、単位幅あたり有効輪荷重PBの算出にあたっては、フォークリフト20によりデッキスラブ1に作用する最大の荷重PFLおよび演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)におけるデッキスラブ有効幅VW2の具体的な値を算出する必要があることが分かる。
【0186】
図12に示すように、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)におけるデッキスラブ有効幅VW2は、デッキスラブ有効幅VWおよびホイールベースWBとの関係において、以下の関係式が成立する。
【0187】
VW2=(VW+WB)/2…(34)
【0188】
ここで、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)におけるデッキスラブ有効幅VW2の具体的な値を求めるためには、フォークリフト20の片側の前輪23により作用する荷重PFLの値を求める必要があることから、上記式(1)乃至(2)に基づいて、荷重PFLの算出を行う。
【0189】
フォークリフト20の質量が2950kgであることから、フォークリフト20の片側の前輪23により作用する荷重PFLは、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)と同様にして求められる。以下の関係式から求められる。つまり、フォークリフト20の片側の前輪23により作用する荷重PFLは15033Nと求められる。
また、デッキスラブ有効幅VWも演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)と同様に1500mmと求められる。
【0190】
よって、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)におけるデッキスラブ有効幅VW2は、上記式(34)に基づいて、1300mmと求められる。
【0191】
フォークリフト20の片側の前輪23により作用する荷重PFLと、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)におけるデッキスラブ有効幅VW2の具体的な値を得られたことから、上記式(33)に基づいて単位幅あたり有効輪荷重PBが11560N/mとなることが分かる。
【0192】
次に、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxおよび最大たわみ量δmaxを算出する。
【0193】
図13Aに示すように、両端ピン支持梁構造を有するデッキスラブ1には、等分布荷重として積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wd、集中荷重として単位幅あたり有効輪荷重PB(2点)が作用している。これらの荷重がデッキスラブ1に作用することにより、デッキスラブ1には正方向曲げモーメントMfおよびたわみδが生じる。
デッキスラブ1に生じる正方向曲げモーメントMfのうち、正方向の最大曲げモーメントMfmaxは、上記式(32)が成立する場合において生じる。
デッキスラブ1の設計にあたっては、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxがデッキスラブ1の正方向の許容応力度FStおよびFScよりも小さくなることと、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxがデッキスラブ1の許容たわみ量よりも小さくなることを確認する必要がある。
そこで、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxと、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxと、デッキスラブ1の許容応力度FStおよびFScと、デッキスラブ1の許容たわみ量δaの算出方法について述べる。
【0194】
まずは、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxと、デッキスラブ1の許容応力度FStおよびFScの算出方法について述べる。
積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdが作用することにより、デッキスラブ1に生じる曲げモーメントMfdは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
【0195】
Mfd={(Wd+Wc+Wl)×(L^2)}/8…(35)
【0196】
また、単位幅あたり有効輪荷重PBが作用することにより、デッキスラブ1に生じる曲げモーメントMfpは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
【0197】
Mfp=PB×[1―{(LB1)/(2×L)}]×{(L/2)―(LB1/4)}…(36)
【0198】
デッキスラブ1には積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PBが重畳に作用することから、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxは、以下の関係式から求められる。
Mfmax=Mfd+Mfp…(37)
【0199】
デッキスラブ1の正方向の許容応力度は、デッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStおよびデッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScの2種類がある。
デッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStは、デッキスラブ1の鋼材側断面係数をcZtとすると、以下の不等式を満たす必要がある。
【0200】
FSt≧Mfmax/cZt…(38)
【0201】
デッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScは、デッキスラブ1のコンクリート3側断面係数をcZcとすると、以下の不等式を満たす必要がある。
【0202】
FSc≧Mfmax/cZc…(39)
【0203】
また、デッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStは、鋼材の設計基準強度(降伏点)をFt、安全率を1.5とすると、以下の関係式から求められる。
【0204】
FSt=Ft/1.5…(40)
【0205】
また、デッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScは、コンクリート3の設計基準強度をFc、安全率を3とすると、以下の関係式から求められる。
【0206】
FSc=Fc/3…(41)
【0207】
上記式(38)および(40)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxの値はデッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0208】
Mfmax/cZt≦Ft/1.5…(42)
【0209】
上記式(39)および(41)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxの値はデッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0210】
Mfmax/cZc≦Fc/3…(43)
【0211】
ここで、デッキプレート2の支持間距離Lを2250mmとすると、上記式(35)よりデッキスラブ1に生じる曲げモーメントMfdは2370N・m/m、上記式(36)よりデッキスラブ1に生じる曲げモーメントMfpは8460N・m/mとなり、上記式(37)よりデッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxは、10830N・m/mとなる。
【0212】
また、デッキスラブ1の鋼材側断面係数cZtを120.0×103mm3/m、デッキスラブ1のコンクリート側断面係数cZcを3210×103mm3/mとすると、上記式(38)よりMfmax/cZtは90.3N/mm2/mとなり、上記式(39)よりMfmax/cZcは3.4N/mm2/mとなる。
したがって、上記式(42)は90.3N/mm2/m≦156.7N/mm2/m、上記(43)は3.4N/mm2/m≦8.0N/mm2/mとなることから、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxの値は、デッキスラブ1の引張材により定まる正方向の許容応力度FStの値以下となり、デッキスラブ1の圧縮材により定まる正方向の許容応力度FScの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0213】
次に、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxと、デッキスラブ1の許容たわみ量δaの算出方法について述べる。
積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdが作用することにより、デッキスラブ1に生じるたわみ量δdは、デッキプレート2の支持間距離をL、鋼材のヤング係数をE、デッキスラブ1の断面二次モーメントをI、鋼材とコンクリート3のヤング係数比をnとすると、以下の関係式から求められる。
なお、鋼材のヤング係数Eは205GPa、デッキスラブ1の断面二次モーメントIは17900×104×mm4/m、ヤング係数比nは15とする。
また、鋼材には、デッキプレートのみならず、溶接金網や鉄筋、補強筋等も含まれる。
【0214】
δd={5×(Wd+Wc+Wl)×(L^4)×n}/(384×E×I)…(44)
【0215】
単位幅あたり有効輪荷重PBが作用することにより、デッキスラブ1に生じるたわみ量δpは、デッキプレート2の支持間距離をL、鋼材のヤング係数をE、デッキスラブ1の断面二次モーメントをIとすると、以下の関係式から求められる。
【0216】
δp=[PB×{3×(L^2)―4×(LB2^2)}×n]/(24×E×I)…(45)
【0217】
デッキスラブ1には積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PBが重畳に作用することから、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxは、以下の関係式から求められる。
【0218】
δmax=δd+δp…(46)
【0219】
デッキスラブ1の許容たわみ量δaは、変形増大係数Kを1.5とすると、建築基準法施行令第82条第1項第4号および平成12年建設省告示第1459号に基づいて、以下の関係式から求められる。
【0220】
δa=L/(250×K)…(47)
【0221】
上記式(46)および(47)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxの値はデッキスラブ1の許容たわみ量δaの値以下となるよりも小さくなることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0222】
δmax≦δa…(48)
【0223】
上記式(44)よりデッキスラブ1に生じるたわみ量δdは0.512mm、上記式(45)よりデッキスラブ1に生じるたわみ量δpは2.615mmなり、上記式(46)よりデッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxは、3.127mmとなる。
また、上記式(47)よりデッキスラブ1の許容たわみ量δaは6mmとなる。
したがって、上記式(48)は3.127mm≦6mmとなることから、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxは設計上の条件を満たしていると言える。
【0224】
次に、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxを算出する。
【0225】
図13Bに示すように、両端固定支持梁構造デッキスラブ1には、等分布荷重として積載荷重Wl、仕上げ荷重Wc、集中荷重として単位幅あたり有効輪荷重PB(2点)が作用している。これらの荷重がデッキスラブ1に作用することにより、デッキスラブ1には正方向曲げモーメントMfnだけでなく、負方向曲げモーメントMnが生じる。
デッキスラブ1には負方向曲げモーメントMnのうち、負方向の最大曲げモーメントMnmaxは、デッキスラブ1の端部において生じる。
デッキスラブ1の設計にあたっては、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxがデッキスラブ1の負方向の許容応力度FScnよりも小さくなることを確認する必要がある。なお、両端固定支持梁構造デッキスラブ1の場合、両端ピン支持梁構造を有するデッキスラブ1の場合の正方向の最大曲げモーメントMfmaxよりも正方向の最大曲げモーメントMfnmaxは小さくなることから、正方向の最大曲げモーメントMfnmaxの算出は省略する。また、両端固定支持梁構造デッキスラブ1の場合、両端ピン支持梁構造を有するデッキスラブ1の場合よりもたわみ量は小さくなることから、たわみδの算出は省略する。
そこで、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxと、デッキスラブ1の負方向の許容応力度FScnの算出方法について述べる。
【0226】
積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcが作用することにより、デッキスラブ1に生じる曲げモーメントMndは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
【0227】
Mnd={(Wc+Wl)×(L^2)}/12…(49)
【0228】
また、単位幅あたり有効輪荷重PBが作用することにより、デッキスラブ1に生じる曲げモーメントMnpは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
【0229】
Mnp={PB×(L^2)}×[{LB2×(LB1+LB2)^2}+{(LB2^2)×(LB1+LB2)}]…(50)
【0230】
デッキスラブ1には積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcと単位幅あたり有効輪荷重PBが重畳に作用することから、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxは、以下の関係式から求められる。
Mnmax=Mnd+Mnp…(51)
【0231】
デッキスラブ1の負方向の許容応力度は、デッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnおよびデッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnの2種類がある。
デッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnは、デッキスラブ1の鋼材側断面係数をcZtとすると、以下の不等式を満たす必要がある。
【0232】
FStn≧Mnmax/cZt…(52)
【0233】
デッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnは、デッキスラブ1上端の断面係数をeZtとすると、以下の不等式を満たす必要がある。
【0234】
FScn≧Mnmax/eZt…(53)
【0235】
また、デッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnは、鋼材の設計基準強度(降伏点)をFt、座屈による低減を考慮した低減係数をα(本一例においては、αは1.5とする)とすると、以下の関係式から求められる。
【0236】
FStn=Ft/α…(54)
【0237】
また、デッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnは、コンクリート3の設計基準強度をFcとすると、以下の関係式から求められる。
【0238】
FScn=0.62×{(Fc)^(1/2)}…(55)
【0239】
上記式(52)および(54)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxの値はデッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0240】
Mnmax/cZt≦Ft/1.5…(56)
【0241】
上記式(53)および(55)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxの値はデッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0242】
Mnmax/eZt≦0.62×{(Fc)^(1/2)}…(57)
【0243】
ここで、デッキプレート2の支持間距離Lを2250mmとすると、上記式(49)よりデッキスラブ1に生じる曲げモーメントMndは350N・m/m、上記式(50)よりデッキスラブ1に生じる曲げモーメントMnpは5530N・m/mとなり、上記式(51)よりデッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxは、5880N・m/mとなる。
【0244】
また、デッキスラブ1の鋼材側断面係数cZtを120.0×103mm3/m、デッキスラブ1上端の断面係数をeZtを3860×103mm3/mとすると、上記式(52)よりMnmax/cZtは49.0N/mm2/mとなり、上記式(53)よりMnmax/eZtは1.52N/mm2/mとなる。
したがって、上記式(56)は49.0N/mm2/m≦156.7N/mm2/m、上記(57)は1.52N/mm2/m≦3.04N/mm2/mとなることから、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxの値は、デッキスラブ1の引張材により定まる負方向の許容応力度FStnの値以下となり、デッキスラブ1の圧縮材により定まる負方向の許容応力度FScnの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0245】
次に、デッキスラブ1に生じる最大剪断応力τmaxを算出する。
【0246】
図13Cに示すように、両端ピン支持梁構造のデッキスラブ1には、等分布荷重として積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wc、集中荷重として単位幅あたり有効輪荷重PB(2点)が作用している。これらの荷重がデッキスラブ1に作用することにより、デッキスラブ1には剪断力Qが作用する。
なお、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)においては、デッキスラブ1には剪断力Qのうち、最大剪断力Qmaxは、単位幅あたり有効輪荷重PB(2点)のうち、少なくとも単位幅あたり有効輪荷重PBの1点がデッキスラブ1の端部に作用した場合に、デッキスラブ1の端部において作用する。
デッキスラブ1の設計にあたっては、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxがデッキスラブ1の許容剪断応力τaよりも小さくなることを確認する必要がある。
そこで、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxと、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxと、デッキスラブ1の許容剪断応力τaの算出方法について述べる。
【0247】
積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcが作用することにより、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは、デッキプレート2の支持間距離をLとすると、以下の関係式から求められる。
なお、LB3は、デッキスラブ1の支持間距離Lからフォークリフト20のX軸方向の大きさであるLB1を差し引くことによって得られる値である。
【0248】
Qmax=PB×{2―(LB1/L)}+{(Wc+Wl)×L}/2…(58)
【0249】
デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxは、デッキスラブ1の断面一次モーメントをS、デッキスラブ1の断面二次モーメントをIとすると、以下の関係式から求められる。
なお、デッキスラブ1の断面一次モーメントSは、1560×103×mm3/m、デッキスラブ1の断面二次モーメントIは、17900×104×mm4/mとする。
【0250】
τmax=Qmax×S/I…(59)
【0251】
上記式(59)から、以下の不等式を満たせば、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxの値はデッキスラブ1の許容剪断応力τaの値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
なお、デッキスラブ1の許容剪断応力τaの値は、185.0N/mm/mとする。
【0252】
τmax≦τa…(60)
【0253】
ここで、デッキプレート2の支持間距離Lを2250mmとすると、上記式(58)よりデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは19570N・m/m、上記式(59)よりデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxは170.6N/mm/mとなる。
したがって、上記(60)は170.6N/mm/m≦185.0N/mm/mとなることから、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxと、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxによって生じる最大剪断応力τmaxは設計上の条件を満たしていると言える。
【0254】
≪演算部によるデッキスラブの構造計算の一例(その3)≫
次に、デッキスラブ1に車両30が走行する場合における作用荷重の算出を行う。
図14は、デッキスラブにより構築された駐車場を示す平面図である。
図15は、駐車場に配置される車両の位置の例を示す平面図である。
以下では、演算部113による荷重データ対と、デッキスラブに生じる正方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブに作用する最大剪断力と、の算出方法の、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)および演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)とは異なる一例を述べる。
【0255】
図14には、支持間距離L、スラブ幅XWを有するデッキスラブ1が敷設された駐車場が示されている。この駐車場は、走行区域Z1と駐車区域Z2の2つの区域から構成される。
図15には、車間距離ID1、隣間距離ID2を保持した状態であって、4本のタイヤTYを有し、車幅CW、ホイールベースWB2を有する車両30が3台示されている。
本変形例1においては、走行区域Z1および駐車区域Z2を走行する車両30によりデッキスラブ1に作用する荷重についての算出を行う。
【0256】
まず、走行区域Z1を走行する車両30および駐車区域Z2に駐車された車両30によりデッキスラブ1に作用する荷重の算出にあたっての、各種条件について述べる。
【0257】
図16は、集中荷重に対するデッキスラブ有効幅の大きさの関係を示す図である。
図16においては、横軸方向に梁と協力して荷重を負担できるデッキスラブ1の幅である有効幅CPWの値(単位:m)、縦軸方向に一点あたり集中荷重Pの値(単位:kN)が示されている。
デッキスラブ1の有効幅CPWは一点あたり集中荷重Pの値によって変化することが知られており、演算部によるデッキスラブの構造計算の一例(その3)においては
図16の表に基づいて有効幅CPWの値を定める。
【0258】
図16では、一点あたり集中荷重Pが30kNのときには有効幅CPWが1.5m、一点あたり集中荷重Pが10kNのときには有効幅CPWが2.1mとなっている。
有効幅CPWは、一点あたり集中荷重Pが10kN以下の値である場合には、2.1mであり、一点あたり集中荷重Pが10kNを超える値である場合には、以下の関係式から求められる。
【0259】
CPW=―0.03×(P―10)+2.1…(61)
【0260】
よって、演算部によるデッキスラブの構造計算の一例(その3)においては、一点あたり集中荷重Pが10kNを超える値である場合には、上記式(61)を用いて有効幅CPWの値を定める。
演算部によるデッキスラブの構造計算の一例(その3)においては、車両30の走行区域Z1におけるタイヤTYあたりの集中荷重(輪圧)PE1は、9000N、車両30の駐車区域Z2におけるタイヤTYあたりの集中荷重(輪圧)PE2は、8500Nとして設計を行うことから、いずれの場合においても有効幅CPWは2.1mとして設計を行う。
【0261】
有効幅CPW以外の主な条件は、以下の通りである。
演算部によるデッキスラブの構造計算の一例(その3)においては、デッキプレート2の高さTSは75mm、デッキプレート2の板厚TDは1.6mm、コンクリート3の厚さTCは80mm、コンクリート3の種類はコンクリート密度が23.0kN/m3の普通コンクリート、コンクリート3の設計基準強度Fcは21N/mm2、デッキプレート2の材質は普通鋼、デッキプレート2の表面処理(亜鉛めっき等)はZ12、鋼材の設計基準強度(降伏点)Ftは235N/mm2、デッキスラブ1の鋼材側断面係数cZtは156.0×103mm3/m、デッキスラブ1の下フランジ側断面係数Zteは52.7×103mm3、デッキスラブ1の断面一次モーメントSは1900×103×mm3/m、デッキスラブ1の断面二次モーメントIは21800×104×mm4/m、デッキスラブ1の許容剪断応力τaは231N/mm/m、鉄筋4の仕様として鉄筋径がφ6かつ鉄筋の設置間隔が100×100mm、デッキプレート2の支持間距離Lは3300mm、デッキスラブ1の固定荷重WDLは2910N/m2として設計を行う。
また、車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の許容応力度FSZ1は、鋼材の設計基準強度(降伏点)Ftは235N/mm2に対して安全率1.5を考慮した157N/mm2とし、車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の許容応力度FSZ2は、185N/mm2として設計を行う。
また、車両30の車幅CWは1.5m、ホイールベースWB2は3.6m、車間距離ID1は1.8m、隣間距離ID2は1.2mとして設計を行う。
【0262】
車両30によりデッキスラブ1に作用する荷重の算出に先立ち、デッキスラブ1の固定荷重WDLによって生じるモーメントMDLを算出する。
デッキスラブ1の固定荷重WDLは、各梁間における支持間距離Lとする2連続両端ピン支持梁構造を有するデッキスラブ1の全体に亘って等分布荷重として作用することから、デッキスラブ1の固定荷重WDLによって生じるモーメントMDLは、以下の関係式から求められる。
【0263】
MDL={9×WDL×(L^2)/128}…(62)
【0264】
上記式(62)よりデッキスラブ1の固定荷重WDLによって生じるモーメントMDLは2230N・mとなる。
【0265】
次に、駐車区域Z2に駐車された車両30によりデッキスラブ1に作用する荷重の算出を行う。
図17は、駐車区域に車両を配置した場合の車両の位置の例を示す図である。
図18は、
図17において作用する荷重の例を示す図である。
【0266】
図17において、隣間距離ID2を保持した状態であって、車幅CWを有する車両30が2台示されている。
駐車区域Z2において駐車された車両30によるデッキスラブ1に作用する荷重の算出にあたっては、
図15に示された車両30のうち、
図17に示された2台の車両30の位置関係に基づいて算出を行う。
【0267】
まず、車両30の駐車区域Z2におけるタイヤTYあたりの集中荷重PE2をデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAに変換する。
デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAは、以下の関係式から求められる。
【0268】
PEA=2×PE2/(CW+ID2)…(63)
【0269】
上記式(63)よりデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAは6300Nとなる。
【0270】
図18において、車間距離ID1を有した2台の車両30により、上記式(63)より算出されたデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAの2点がデッキスラブ1に作用していることを示している。これは、デッキプレート2の支持間距離Lと、車間距離ID1およびホイールベースWB2の関係から、実質的にデッキスラブ1の延在方向に作用する車両30のタイヤTYの数量(2本)を考慮していることを示している。
【0271】
次に、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAによってデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントMmaxの算出方法について述べる。
デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAによってデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントMmaxは、以下の関係式から求められる。
【0272】
Mmax=PEA×[1―{(ID1)/(2×L)}]×{(L/2)―(ID1/4)}…(64)
【0273】
上記式(64)よりデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAによってデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントMmaxは5500N・mとなる。
【0274】
車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の最大応力度FZ2は、デッキプレート2の下フランジ側断面係数をZte、デッキスラブ1の鋼材側断面係数をcZtとすると、以下の関係式から求められる。
【0275】
FZ2=(MDL/Zte)+(Mmax/cZt)…(65)
【0276】
上記式(65)より車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の最大応力度FZ2は77.6N/mm2となる。
【0277】
上記式(65)から、以下の不等式を満たせば、車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の最大応力度FZ2の値は車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の許容応力度FSZ2の値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0278】
FZ2≦FSZ2…(66)
【0279】
車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の許容応力度FSZ2は、185N/mm2であることから、上記式(66)は77.6N/mm2≦185N/mm2となり、車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の最大応力度FZは設計上の条件を満たしていると言える。
【0280】
次に、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAが作用することにより、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxの算出方法について述べる。
デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAが作用することにより、車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1のデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは、以下の関係式から求められる。
【0281】
Qmax=PEA×(2―ID1/L)…(67)
【0282】
上記式(67)よりデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAが作用することにより、車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1のデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは9160Nとなる。
【0283】
車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の許容剪断力QS2は、デッキスラブ1の許容剪断応力をτa、デッキスラブ1の断面一次モーメントをS、デッキスラブ1の断面二次モーメントをIとすると、以下の関係式から求められる。
【0284】
QS2=τa×I/S…(68)
【0285】
上記式(68)より車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の許容剪断力QS2は26600Nとなる。
【0286】
上記式(67)および(68)から、以下の不等式を満たせば、車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1のデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxの値は車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1の許容剪断力QS2の値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0287】
Qmax≦QS2…(69)
【0288】
上記式(69)は9160N≦26600Nとなり、車両30の駐車区域Z2におけるデッキスラブ1のデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは設計上の条件を満たしていると言える。
【0289】
次に、走行区域Z1を走行する車両30によりデッキスラブ1に作用する荷重の算出を行う。
図19は、走行区域に車両を配置した場合の車両の位置の例を示す図である。
図20は、
図19において作用する荷重の例を示す図である。
【0290】
図19において、車間距離ID1を保持した状態であって、ホイールベースWB2を有する車両30が2台示されている。
走行区域Z1を走行する車両30によりデッキスラブ1に作用する荷重の算出にあたっては、
図15に示された車両30のうち、
図19に示された2台の車両30の位置関係に基づいて算出を行う。
【0291】
まず、車両30の走行区域Z1におけるタイヤTYあたりの集中荷重PE2をデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBに変換する。
集中荷重PE2から等価集中荷重PEBへの変換に先立ち、車両30間の等価距離ID4を算出する。
車両30間の等価距離ID4は、以下の関係式から求められる。
【0292】
ID4=(7×WB2/12)+ID1…(70)
【0293】
デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBは、以下の関係式から求められる。
【0294】
PEB=2×PE2/ID4…(71)
【0295】
上記式(71)よりデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBは4620Nとなる。
【0296】
図20において、車間距離ID1を保持した状態であって、ホイールベースWB2を有した2台の車両30により、上記式(71)より算出されたデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBの3点がデッキスラブ1に作用していることを示している。これは、デッキプレート2の支持間距離Lと、隣間距離ID2および車幅CWの関係から、実質的にデッキスラブ1の延在方向に作用する車両30のタイヤTYの数量(3本)を考慮していることを示している。
【0297】
次に、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBによってデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントMmaxの算出方法について述べる。
デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBによってデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントMmaxは、以下の関係式から求められる。
【0298】
Mmax=PEB×[(3×L/4)―{(CW+ID2)/2}]…(72)
【0299】
上記式(72)よりデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBによってデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントMmaxは5198N・mとなる。
【0300】
車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の最大応力度FZ1は、デッキプレート2の下フランジ側断面係数をZte、デッキスラブ1の鋼材側断面係数をcZtとすると、以下の関係式から求められる。
【0301】
FZ1=(MDL/Zte)+(Mmax/cZt)…(73)
【0302】
上記式(73)より車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の最大応力度FZ1は75.6N/mm2となる。
【0303】
上記式(72)および(73)から、以下の不等式を満たせば、車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の最大応力度FZ1の値は車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の許容応力度FSZ1の値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0304】
FZ1≦FSZ1…(74)
【0305】
車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の許容応力度FSZ1は、157N/mm2であることから、上記式(74)は75.6N/mm2≦157N/mm2となり、車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の最大応力度FZ1は設計上の条件を満たしていると言える。
【0306】
次に、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBが作用することにより、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxの算出方法について述べる。
デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBが作用することにより、車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1のデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは、以下の関係式から求められる。
【0307】
Qmax=PEB×[3―{3×(CW+ID2)}/(2×L)]…(75)
【0308】
上記式(75)よりデッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBが作用することにより、車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1のデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは8190Nとなる。
【0309】
車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の許容剪断力QS1は、デッキスラブ1の許容剪断応力をτa、デッキスラブ1の断面一次モーメントをS、デッキスラブ1の断面二次モーメントをIとすると、以下の関係式から求められる。
【0310】
QS1=τa×I/S…(76)
【0311】
上記式(76)より車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の許容剪断力QS2は26600Nとなる。
【0312】
上記式(75)および(76)から、以下の不等式を満たせば、車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1のデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxの値は車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1の許容剪断力QS1の値以下となることから、設計上の条件を満たしていると言える。
【0313】
Qmax≦QS1…(77)
【0314】
上記式(77)は8190N≦26600Nとなり、車両30の走行区域Z1におけるデッキスラブ1のデッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxは設計上の条件を満たしていると言える。
【0315】
≪デッキスラブの固定度を考慮した演算部によるモーメント計算の一例≫
次に、演算部113によりデッキスラブ1に作用する荷重により生じるモーメントを算出する場合における、設計上の考慮事項について述べる。
まず、デッキスラブ1の固定度の算出方法について述べる。
図21は、大梁および小梁に囲まれた領域に設置したデッキスラブに発生する曲げモーメントを示す斜視図である。
図22Aは、単純支持の一方向デッキスラブに作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
図22Bは、両端固定のデッキスラブに作用する荷重および発生する曲げモーメントを示す図である。
【0316】
図21には、柱51および大梁52に囲まれたXY平面にデッキスラブ1が敷設されていることが示されている。X軸方向において敷設されている1組の大梁52の間には、小梁53が3点敷設されている。
また、X軸方向においては、デッキスラブ1は両端固定支持梁が連続する構造を有することから、デッキスラブ1の自重等(固定荷重、仕上げ荷重、積載荷重等を含む)により発生する等分布荷重がデッキスラブ1に作用することにより、曲げモーメント55Aが生じている。Y軸方向においては、デッキスラブ1は両端固定支持梁構造を有することから、デッキスラブ1の自重等(固定荷重、仕上げ荷重、積載荷重等を含む)により発生する等分布荷重がデッキスラブ1に作用することにより、曲げモーメント55Bが生じている。
【0317】
従来、
図21に示されたデッキスラブ1であっても、デッキスラブ1に作用する荷重により生じる曲げモーメントの算出を行う際は、両端ピン支持梁構造とみなして算出を行っていた。
すなわち、
図22Aに示すように、支持間距離Lを有するデッキスラブ1に作用する等分布荷重WSにより正方向曲げモーメントMSが生じるとみなし、X軸方向において支持間距離Lの中間地点にて発生する正方向最大曲げモーメントMSmaxに対してデッキスラブ1は十分な許容応力度を有しているか否かの判定を行っていた。
【0318】
しかし、
図21に示すように、デッキスラブ1は大梁52や小梁53に対して固定されていることが通常であり、
図21に示されたデッキスラブ1は、
図22Bに示すように両端固定支持梁構造を有していると考えてよい。
すなわち、
図22Bに示すように、支持間距離Lを有するデッキスラブ1に作用する等分布荷重WFにより正方向曲げモーメントMF1および負方向曲げモーメントMF2が生じるとみなし、X軸方向において支持間距離Lの中間地点にて発生する正方向最大曲げモーメントMF1maxおよびX軸方向の端部にて発生する負方向最大曲げモーメントMF2maxに対してデッキスラブ1は十分な許容応力度を有しているか否かの判定を行えばよい。
【0319】
図22Aに示したX軸方向において支持間距離Lの中間地点にて発生する正方向最大曲げモーメントMSmaxの大きさは、以下の関係式から求められる。
【0320】
MSmax={WS×(L^2)}/8…(78)
【0321】
一方、
図22Bに示したX軸方向において支持間距離Lの中間地点にて発生する正方向最大曲げモーメントMF1maxおよびX軸方向の端部にて発生する負方向最大曲げモーメントMF2maxは、以下の関係式から求められる。
【0322】
MF1max={WF×(L^2)}/24…(79)
【0323】
MF2max={WF×(L^2)}/12…(80)
【0324】
上記式(78)乃至(80)においてデッキスラブ1に作用する等分布荷重WSと等分布荷重WFが等しいとすると、以下の関係式が成立する。
【0325】
MF1max=MSmax/3…(81)
【0326】
MF2max=2×MSmax/3…(82)
【0327】
また、支持間距離Lを有するデッキスラブ1に作用する等分布荷重WSによりデッキスラブ1にはたわみが生じるが、鋼材のヤング係数をE、ヤング係数比をn、デッキスラブ1の断面二次モーメントをIとすると、
図22Aの条件において最大たわみ量δSmaxは、以下の関係式から求められる。
【0328】
δSmax={5×WS×(L^4)×n}/(384×E×I)…(83)
【0329】
支持間距離Lを有するデッキスラブ1に作用する等分布荷重WFによりデッキスラブ1にはたわみが生じるが、鋼材のヤング係数をE、ヤング係数比をn、デッキスラブ1の断面二次モーメントをIとすると、
図22Bの条件において最大たわみ量δFmaxは、以下の関係式から求められる。
【0330】
δFmax={WF×(L^4)×n}/(384×E×I)…(84)
【0331】
上記式(83)乃至(84)においてデッキスラブ1に作用する等分布荷重WSと等分布荷重WFが等しいとすると、以下の関係式が成立する。
【0332】
δFmax=δSmax/5…(85)
【0333】
上記式(81)、(82)、(85)から、両端ピン支持梁構造と両端固定支持梁構造で比較した場合には、最大曲げモーメントの絶対値は両端固定支持梁構造の場合には両端ピン支持梁構造の3分の2、最大たわみ量は両端固定支持梁構造の場合には両端ピン支持梁構造の5分の1となることが分かる。
図21のデッキスラブ1の場合、両端ピン支持梁構造よりも両端固定支持梁構造の方がより実態に近い構造であることから、上記式(78)乃至(85)を用いることでより合理的な構造計算を行うことができる。
【0334】
ただし、
図21に示したデッキスラブ1の周辺に吹き抜けや開口部が存在する場合や、大梁52や小梁53の曲げ剛性やねじり剛性が小さい場合には、大梁52、小梁53とデッキスラブ1との固定度が低下し、曲げモーメントの分布が変化する。大梁52、小梁53とデッキスラブ1との固定度が低下することにより、特定の条件は、両端固定支持梁構造から両端ピン支持梁構造へと近づくようになる。これは鉄骨造の場合に特に顕著である。一方で鉄骨造に比べて鉄筋コンクリート造の場合は梁と床の固定度が大きいため、周囲の条件による固定度の低下度合いが緩和される。また、デッキスラブ1を構築した後に当該デッキスラブ1に開口部を設けたりすることもあることから、建築物の建設段階と完成後の段階とでデッキスラブ1が敷設されている環境が変化し、これらの曲げモーメントの分布が異なることがある。そのような場合には、上記式(78)乃至(85)を単純に適用するのみでは、実態に即した構造計算を行うことができない。
そこで、デッキスラブ1を設置する躯体に関する情報、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報、支持間距離付加情報を考慮し、有限要素法による発生モーメント計算の計算を行うことで、デッキスラブ1の固定度を考慮することが可能となることから、実態に即した構造計算を行うことができ、更に合理的な構造計算を行うことができる。
具体的なデッキスラブ1を設置する躯体に関する情報としては、構造種別(鉄骨造、鉄筋コンクリート造、木造、その他の構造)、柱や梁(大梁52および小梁53を含む)の情報(寸法、材質、構成部材、合成梁であるか否か)、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報としては、には、スタッド溶接であるか否か(頭付きスタッドを含む)、焼抜き栓溶接であるか否か、打込み鋲による接合であるか否か、スポット溶接やボルト接合、ドリルねじ接合等であるか否か、デッキプレートののみこみであるか否か、鉄筋による定着であるか否か、に関する情報、支持間距離付加情報としては、デッキプレート2の延在方向に支持されているか否か、デッキプレート2の幅方向に支持されているか否か、大梁52や小梁53との距離に関する情報が挙げられる。
【0335】
≪一方向デッキスラブと二方向デッキスラブの発生モーメントの相違点≫
次に、演算部113によるモーメント計算を実施する場合における、一方向デッキスラブと二方向デッキスラブの発生モーメントの違いについて述べる。
図23Aは、一方向デッキスラブに作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
図23Bは、二方向デッキスラブに作用する荷重および発生する正方向曲げモーメントを示す図である。
従来、
図21に示されたデッキスラブ1は、一方向スラブ構造とみなして算出を行っていた。
すなわち、
図23Aに示すように、支持間距離Lを有するデッキスラブ1においては、X軸方向にのみ荷重が作用するとみなし、正方向曲げモーメントMXのみが発生するとした上でデッキスラブ1は十分な許容応力度を有しているか否かの判定を行っていた。
【0336】
しかし、
図21に示すように、デッキスラブ1は大梁52や小梁53によって囲まれた領域に敷設されており、
図21に示されたデッキスラブ1は、X軸方向にのみならず、Y軸方向にも荷重が作用すると考えてよい。
すなわち、
図23Bに示すように、デッキスラブ1は直交する交差梁の上に敷設されているとみなし、支持間距離Lを有するデッキスラブ1に作用する等分布荷重WSによりX軸方向の支持間距離LXの間には正方向曲げモーメントMXが生じ、Y軸方向の支持間距離LYの間には正方向曲げモーメントMYが生じるとみなした上で、算出を行えばよい。
上記のように、X軸方向に正方向曲げモーメントMXが生じ、Y軸方向に正方向曲げモーメントMYが生じるとみなすことで、デッキスラブ1は延在方向(X軸方向)のみならず、幅方向(Y軸方向)の荷重を負担することが可能となることから、実態に即した、より合理的な構造計算を行うことができる。
【0337】
しかし、デッキスラブ1が山谷形状である合成スラブ用デッキを用いた合成スラブ構造である場合は延在方向と幅方向では断面性能(合成)が異なることから、等厚スラブと同様の手法では二方向スラブとしての算出を行うことができない。
そこで、支持間距離付加情報を考慮し、有限要素法による発生モーメント計算の計算を行うことで、デッキスラブ1の幅方向の正確な剛性を考慮することが可能となることから、実態に即した構造計算を行うことができ、更に合理的な構造計算を行うことができる。
具体的な支持間距離付加情報としては、デッキプレート2の延在方向に支持されているか否か、デッキプレート2の幅方向に支持されているか否か、支持躯体の種類とスラブとの接合接合方法、デッキスラブ1の延在方向と幅方向の剛性比、大梁52や小梁53との距離に関する情報が挙げられる。
【0338】
≪有限要素法を用いた演算部によるデッキスラブの構造計算の一例≫
次に、演算部113によりデッキスラブ1の有限要素法による構造計算を行った結果について述べる。
図24は、有限要素法による特殊荷重計算を行う対象となるデッキスラブの一部を抽出した斜視図の例である。
図25は、有限要素法による発生モーメント計算を行ったデッキスラブの解析結果の一例である。
図24において、有限要素法による構造計算の対象となるデッキスラブ1の構造解析モデル60が示されている。
構造解析モデル60は、構造物を複数の有限個の要素に分割されたメッシュから構成されている。
【0339】
有限要素法(FEM:Finite Element Method)による構造解析においては、構造解析対象となる構造物を構造解析モデル60のようにモデル化し、構造解析モデル60の構成要素を有限個の要素に分割する。有限個の要素に分割された、構成要素の集合体はメッシュと称される。
構造解析対象となる構造物を、小さな領域から構成される構成要素の集合体であるメッシュに切り分け、構成要素のそれぞれに対して関数や方程式等を用いた単純計算を繰り返すことで、解析対象となるメッシュ全体の静的解析、動的解析が可能となる。
また、構造解析モデル60に作用させる荷重は任意に設定することが可能である。
【0340】
先述したように、デッキスラブ1を設置する躯体に関する情報、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報、支持間距離付加情報を考慮し、有限要素法による発生モーメント計算の計算を行うことで、デッキスラブ1の固定度を考慮することが可能となることから、
図21のデッキスラブ1の実態に即した構造計算を行うことができ、具体的な条件に応じて、より正確に構造計算を行うことができる。
また、支持間距離付加情報を考慮し、有限要素法による発生モーメント計算の計算を行うことで、デッキスラブ1の幅方向の剛性を考慮することが可能となることから、
図21のデッキスラブ1の実態に即した構造計算を行うことができ、具体的な条件に応じて、より正確に構造計算を行うことができる。
【0341】
図25において、有限要素法により、構造解析モデル60に発生するモーメント計算を行った解析結果の一例が示されている。
この例では、
図25中、構成要素61に最大曲げモーメントが発生している。
構成要素61に発生した曲げモーメントの大きさを確認することにより、デッキスラブ1は十分な許容応力度を有しているか否かをより正確に確認することが可能である。
【0342】
≪デッキスラブに作用する荷重の分類方法および等価換算方法≫
次に、デッキスラブ1に作用する荷重の種類と種類毎の荷重の算出事項について述べる。
図26Aは、集中荷重が作用する計算対象となるデッキスラブの単純支持モデル図である。
図26Bは、分布荷重が局所的に作用する計算対象となるデッキスラブの単純支持モデル図である。
以下では、演算部113によりデッキスラブ1の構造計算を行う場合における荷重の分類方法および等価換算方法の一例を述べる。
【0343】
これまで、デッキスラブ1に作用する荷重として、主にフォークリフト20や車両30による荷重についての算出を行ってきた。
しかし、デッキスラブ1に作用する荷重として、集中荷重あるいは分布荷重へと等価換算できれば、フォークリフト20や車両30以外の要素によって作用する荷重についても、本発明による構造計算を適用することが可能である。
【0344】
例えば、荷重の種類を次の4種類に分類し、これらの分類に属する荷重が作用する要素であれば、どのような要素であっても本発明による構造計算を適用することが可能である。
荷重の種類は、まず集中荷重と分布荷重の2種類に大きく大別できる。また、集中荷重と分布荷重の各々について、移動荷重と静荷重の2種類に分類できる。
つまり、第1の種類として集中荷重かつ移動荷重、第2の種類として集中荷重かつ静荷重、第3の種類として分布荷重かつ移動荷重、第4の種類として分布荷重かつ静荷重に分類することができる。
なお、移動荷重については、当該荷重がデッキスラブ1に作用する回数を想定した上で、繰り返し荷重(回数、期間、頻度等に関する情報を含む)として算出することも可能である。
【0345】
第1の種類である集中荷重かつ移動荷重が作用する要素としては、先述したフォークリフト20や車両30(乗用車等)以外にも高所作業車やトラック等が該当する。
第2の種類である集中荷重かつ静荷重が作用する要素としては、車両(クローラークレーン車、キャタピラ車、高所作業車、トラック等)のアウトリガーによる反力が該当する。
第3の種類である分布荷重かつ移動荷重が作用する要素としては、クローラークレーン車、キャタピラ車等が該当する。
第4の種類である分布荷重かつ静荷重が作用する要素としては、設備基礎や書架および移動書架ならびにサーバラックといった高重量設備が該当する。
【0346】
移動荷重に該当する第1の種類および第3の種類の荷重については、移動中にデッキスラブ1に作用する荷重と移動開始時にデッキスラブ1に作用する荷重が不均一であり、一般に移動開始時にデッキスラブ1に作用する荷重の方が大きくなることから、フォークリフト20以外であっても静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数ICを考慮することとしてもよいし、考慮しなくてもよいことに留意すべきである。
【0347】
第1の種類乃至第4の種類に該当する荷重が作用する要素については、質量、位置、寸法、作用する力、アウトリガーの位置、寸法、作用する力に関する情報を取得することで、デッキスラブ1に作用する集中荷重あるいは分布荷重へと等価換算することが可能である。
これらの要素には、建築物の建設段階でのみ使用する要素も存在することから、当該荷重がデッキスラブ1に作用する具体的な回数を想定した繰り返し荷重として算出することも可能である。
【0348】
デッキスラブ1に作用する集中荷重および分布荷重をデッキスラブ1において最大曲げモーメントや最大たわみ量が生じる箇所に作用させた際に、最大曲げモーメントや最大たわみ量がデッキスラブ1の許容応力度や許容たわみ量以下の値となっていれば、設計上の条件を満たしていると言える。
【0349】
図26Aに示すように、デッキスラブ1に作用する集中荷重PCは、主にデッキスラブ1の支持間距離Lの中間地点において最大曲げモーメントや最大たわみ量が生じる。
また、
図26Bに示すように、デッキスラブ1に作用する分布荷重WDは、主にデッキスラブ1の支持間距離Lの中間地点L/2と分布荷重WDの中心点が重なる場合に最大曲げモーメントや最大たわみ量が生じる。
具体的には、X軸方向においてデッキスラブ1の支持間距離Lと、分布荷重WDの作用する幅LD1と、デッキスラブ1の支持間距離Lのうち、分布荷重WDが作用しない領域の幅であるLD2およびLD3との間で、以下の関係式が成立する場合である。
【0350】
L=LD1+LD2=LD3…(86)
【0351】
LD2=LD3…(87)
【0352】
しかし、デッキスラブ1に作用する集中荷重あるいは分布荷重によって生じるモーメントやたわみは、デッキスラブ1の条件、集中荷重あるいは分布荷重の条件、梁の条件等によりモーメント分布が変わるため、必ずしもデッキスラブ1の支持間距離Lの中間地点にて最大曲げモーメントや最大たわみ量が生じるとは言えない。
そこで、デッキスラブ1に作用する集中荷重あるいは分布荷重についても、先述した有限要素法による構造計算を行うことにより、最大曲げモーメントや最大たわみ量が生じる位置と大きさを算出することができる。
なお、デッキスラブ1の振動性能を評価する場合は、デッキスラブ1の固有振動数を解析することより振幅が最大となる位置に集中荷重あるいは分布荷重を作用させることで、デッキスラブ1の強度や居住性能に問題ないかを確認することも可能である。
【0353】
<<デッキスラブの設計方法>>
本発明の実施の形態に係るデッキスラブの設計方法について、以下に示す。
図27は、本発明の実施の形態に係るデッキスラブの設計方法を示すフローチャートである。
【0354】
本発明の実施の形態に係るデッキスラブの設計方法の実施例として、情報処理装置100による設計方法の一例を以下に示す。
まず、入力受付部111は、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを取得する(ステップS1)。
また、入力受付部111は、受け付けた演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを記憶部112に記憶させる。
演算情報は、第1演算情報112Aと、第2演算情報112Bと、第3演算情報112Cと、第4演算情報112Dと、第5演算情報112Eと、第6演算情報112Fと、第7演算情報112Gと、が含まれる。
演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hには、先述したようにデッキスラブ1の設計に必要な情報が含まれている。
【0355】
第1演算情報112Aには、例えば、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレート2の高さに関する情報と、デッキプレート2の板厚に関する情報と、鉄筋4の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリート3の仕様に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0356】
また、第2演算情報112Bには、例えば、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート2の高さに関する情報と、前記デッキプレート2の板厚に関する情報と、デッキプレート2の材質に関する情報と、鉄筋4の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート3の仕様に関する情報と、を含み、デッキプレート2が複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブ1に作用する積載荷重および仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブ1に作用する固定荷重に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0357】
また、第3演算情報112Cには、例えば、デッキスラブ1上を走行する車両20、30によりデッキスラブ1に作用する荷重に関する情報と、車両20、30の車輪間隔WIに関する情報と、車両20、30のホイールベースWBに関する情報と、車両20の前輪23に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0358】
また、第4演算情報112Dには、例えば、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレート2の敷設方向ならびに大梁52および小梁53の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブ1を設置する躯体に関する情報と、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0359】
また、第5演算情報112Eには、例えば、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0360】
また、第6演算情報112Fには、例えば、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
なお、これらの情報は、条件に応じていずれか一方のみを含めることとしてもよい。
【0361】
また、第7演算情報112Gには、例えば、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート2の板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート3の仕様に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0362】
また、判定情報112Hには、例えば、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート2の材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート3の仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブ1の許容応力度に関する情報と、が含まれるが、これらに限られるものではない。
なお、これらの情報は、条件に応じていずれか一つのみを含めることとしてもよい。
【0363】
次に、演算部113は、第1演算情報112Aに基づいてデッキスラブ1の断面性能を示す指標を算出する(ステップS2)。ステップS2は、第1演算ステップとも称する。
また、演算部113は、算出したデッキスラブ1の断面性能を示す指標を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
デッキスラブ1の断面性能を示す指標には、デッキスラブ1の断面係数、断面一次モーメントおよび断面二次モーメントが含まれる。
例えば、デッキスラブ1の断面係数、断面一次モーメントおよび断面二次モーメントは、デッキプレート2の高さTS、デッキプレート2の板厚TD、コンクリート3の厚さTCに基づいて、公知の計算方法によって算出される。
また、デッキスラブ1の断面係数、断面一次モーメントおよび断面二次モーメントは、あらかじめ記憶部112に記憶されたデッキプレート2やコンクリート3の仕様(デッキプレート2の高さTS、デッキプレート2の板厚TD、コンクリート3の厚さTC)に基づいて公知の計算方法によってデッキスラブ1の断面係数、断面一次モーメントおよび断面二次モーメントは算出してもよい。
【0364】
次に、演算部113は、第2演算情報112Bに基づいてデッキスラブ1に作用する等分布荷重を算出する(ステップS3)。ステップS3は、第2演算ステップとも称する。
また、演算部113は、算出したデッキスラブ1に作用する等分布荷重の算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
デッキスラブ1に作用する等分布荷重は、例えば、先述したように、積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdの合計や、積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcの合計や、デッキスラブ1の固定荷重WDLや、支持間距離Lを有するデッキスラブ1に作用する等分布荷重WSや、支持間距離Lを有するデッキスラブ1に作用する等分布荷重WFや、デッキスラブ1に作用する分布荷重WDが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0365】
次に、演算部113は、第3演算情報112Cに基づいてデッキスラブ1の上に載置された物体によってデッキスラブ1に作用する集中荷重である特殊荷重を算出する(ステップS4)。ステップS4は、第3演算ステップとも称する。
また、演算部113は、算出したデッキスラブ1に作用する特殊荷重の算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
デッキスラブ1に作用する特殊荷重は、例えば、先述したように、単位幅あたり有効輪荷重PAや、単位幅あたり有効輪荷重PBや、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAや、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBや、デッキスラブ1に作用する集中荷重PCが挙げられるが、これらに限られるものではない。
次に、演算部113は、第4演算情報112Dと、ステップS4にて算出した特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブ1に特殊荷重が作用した際にデッキスラブ1が荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅VWを算出する(ステップS5)。ステップS5は、第4演算ステップとも称する。
また、演算部113は、算出したデッキスラブ有効幅VWの算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
デッキスラブ有効幅VWは、例えば、先述したように、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)におけるデッキスラブ有効幅VW1や、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)におけるデッキスラブ有効幅VW2が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0366】
次に、演算部113は、第5演算情報112Eと、ステップS3にて算出した等分布荷重の算出結果と、ステップS4にて算出した特殊荷重の算出結果と、ステップS5にて算出したデッキスラブ有効幅VWの算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出する(ステップS6)。ステップS6は、第5演算ステップとも称する。
また、演算部113は、算出した荷重データ対の算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
特定の条件は、例えば、先述したように、両端ピン支持梁構造であるか、両端固定支持梁構造であるか、デッキスラブ1の固定度に関する情報が挙げられるが、これらに限られるものではない。
荷重データ対は、例えば、先述したように、積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcと単位幅あたり有効輪荷重PA(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせや、重畳に作用する積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PA(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせや、積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcと単位幅あたり有効輪荷重PB(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせや、重畳に作用する積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PB(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせや、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEA、PEB(作用位置に関する情報を含む)、デッキスラブ1に作用する等分布荷重WS、WF(作用位置に関する情報を含む)、デッキスラブ1に作用する集中荷重PC(作用位置に関する情報を含む)とデッキスラブ1に作用する固定荷重Wd(作用位置に関する情報を含む)の組み合わせに関する情報と、が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0367】
次に、演算部113は、第6演算情報112Fと、ステップS2にて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、ステップS5にて算出したデッキスラブ有効幅VWの算出結果と、ステップS6にて算出した荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブの構造計算を行う(ステップS7)。ステップS7は、第6演算ステップとも称する。
また、演算部113は、算出したデッキスラブの構造計算の結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
ステップS7で行われるデッキスラブの構造計算は、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントと、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量と、が含まれる。
ただし、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントの算出と、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントの算出と、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量の算出と、は、条件に応じていずれか一つのみを行うこととしてもよい。
デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxと、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxと、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxと、の具体的な計算は、上記(1)乃至(87)に基づいて行われる。
ステップS1において取得した第4演算情報112Dにおいて、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報として「焼抜き栓溶接」または「打込み鋲による接合」が選択されない場合、例えば、「頭付きスタッド溶接」が選択された場合(ステップS8:No)には、ステップS9に進む。
【0368】
なお、ステップS1において取得した第4演算情報112Dにおいて、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報として「焼抜き栓溶接」または「打込み鋲による接合」が選択された場合には、ステップS7において、前記支持間距離に関する情報と、ステップS5にて算出したデッキスラブ有効幅VWの算出結果と、ステップS6にて算出した荷重データ対の算出結果と、に基づいてデッキスラブ1に作用する最大剪断力を算出する。デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxの具体的な計算は、上記(1)乃至(87)に基づいて行われる。
【0369】
次に、ステップS1において取得した第4演算情報112Dにおいて、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報として「焼抜き栓溶接」または「打込み鋲による接合」が選択された場合、演算部113は、第7演算情報112Gに基づいて、デッキスラブ1の許容剪断応力を算出する(ステップS9)。ステップS9は、第7演算ステップとも称する。
また、演算部113は、算出したデッキスラブ1の許容剪断応力の算出結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
デッキスラブ1の許容剪断応力は、例えば、先述したように、デッキスラブ1の許容剪断応力τaが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0370】
次に、演算部113は、第6演算ステップによって算出された前記構造計算の結果が、判定情報112Hと、前記第1演算ステップにて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、前記第6演算ステップにて算出した構造計算の結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する(ステップS10)。基準値は、上記(1)乃至(87)に基づいて設定される。
また、演算部113は、判定結果を演算結果112Iとして記憶部112に記憶させる。
基準値は、例えば、先述したように、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxに対するデッキスラブ1の正方向の許容応力度FStおよびFScや、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxに対するデッキスラブ1の負方向の許容応力度FStnおよびFScnや、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxに対するデッキスラブ1の許容たわみ量δaや、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxに対するデッキスラブ1の許容剪断応力τaが挙げられるが、これらに限られるものではない。
構造計算の結果が基準値よりも大きな値となった場合(ステップS10:No)、設計条件を見直す必要があることから、再度、入力受付部111は、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを取得し直す(ステップS1)。取得し直した演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hに基づいて、再度ステップS2~S9を実行し、構造計算の結果が基準値以下の値となるまで繰り返す。
構造計算の結果が基準値以下の値となった場合(ステップS10:Yes)、ステップS1にて取得した演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hが設計上の要求を満たすことが確認できたため、設計が完了となる。
【0371】
以上の方法により、デッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重を考慮したデッキスラブ1の設計が可能となる。
【0372】
以上、本実施の形態に係るデッキスラブ1の設計方法は、上述したように第1演算情報112Aと、第2演算情報112Bと、第3演算情報112Cと、第4演算情報112Dと、第5演算情報112Eと、第6演算情報112Fと、判定情報112Hと、を取得する取得ステップS1と、前記第1演算情報112Aに基づいてデッキスラブ1の断面性能を示す指標を算出する第1演算ステップS2と、前記第2演算情報112Bに基づいてデッキスラブ1に作用する等分布荷重を算出する第2演算ステップS3と、前記第3演算情報112Cに基づいてデッキスラブの上に載置された物体によってデッキスラブに作用する集中荷重である特殊荷重を算出する第3演算ステップS4と、前記第4演算情報112Dと、前記第3演算ステップS4にて算出した特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブ1に特殊荷重が作用した際にデッキスラブ1が荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出する第4演算ステップS5と、前記第5演算情報112Eと、前記第2演算ステップS3にて算出した等分布荷重の算出結果と、前記第3演算ステップS4にて算出した特殊荷重の算出結果と、前記第4演算ステップS5にて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出する第5演算ステップS6と、前記第6演算情報112Fと、前記第1演算ステップS2にて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、前記第4演算ステップS5にて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、前記第5演算ステップS6にて算出した荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブ1の構造計算を行う第6演算ステップS7と、前記第6演算ステップS7によって算出された前記構造計算の結果が、前記判定情報112Hと、前記第1演算ステップS2にて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定ステップS10と、を含み、前記第1演算情報112Aは、引張材の物性的性質および断面積に関する情報である引張材仕様情報として、デッキプレート2の高さに関する情報と、デッキプレート2の板厚に関する情報と、鉄筋4の仕様に関する情報と、を含み、圧縮材の物性的性質および断面積に関する情報である圧縮材仕様情報として、コンクリート3の仕様に関する情報と、を含み、前記第2演算情報112Bは、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート2の高さに関する情報と、前記デッキプレート2の板厚に関する情報と、デッキプレート2の材質に関する情報と、鉄筋4の仕様に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート3の仕様に関する情報と、を含み、デッキプレート2が複数の梁によって支持される間隔を示す支持間距離に関する情報と、デッキスラブ1に作用する積載荷重、仕上げ荷重に関する情報と、デッキスラブ1に作用する固定荷重に関する情報と、を含み、前記第3演算情報112Cは、前記特殊荷重の算出に関連する情報である特殊荷重関連情報として、デッキスラブ1上を走行する車両20、30によりデッキスラブ1に作用する荷重に関する情報と、車両20、30の車輪間隔WIに関する情報と、車両20、30のホイールベースWBに関する情報と、車両20の前輪に作用する荷重の割合に関する情報と、静荷重に対する動荷重の比を表した係数である衝撃係数に関する情報と、のうち少なくとも一部を含み、前記第4演算情報112Dは、前記支持間距離に関する情報と、デッキプレート2の敷設方向ならびに大梁52および小梁53の距離に関する情報である支持間距離付加情報と、デッキスラブ1を設置する躯体に関する情報と、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報と、を含み、前記第5演算情報112Eは、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、を含み、前記第6演算情報112Fは、前記支持間距離に関する情報と、前記支持間距離付加情報と、前記躯体に関する情報と、前記接合方法に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記判定情報112Hは、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート2の材質に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、コンクリート3の仕様に関する情報と、を含み、前記支持間距離に関する情報と、デッキスラブ1の許容応力度に関する情報と、のうち少なくとも一つを含み、前記第6演算ステップS7は、前記構造計算として、前記デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントと、前記デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントと、前記デッキスラブ1に生じる最大たわみ量と、のうち少なくとも一つを算出するステップを含む。
【0373】
これによれば、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを取得した上で、第1演算情報112Aに基づいてデッキスラブ1の断面性能を示す指標として、例えば、デッキスラブ1の断面係数、断面一次モーメントおよび断面二次モーメントを算出することができる。
また、第2演算情報112Bに基づいてデッキスラブ1に作用する等分布荷重として、例えば、積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdの合計や、積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcや、デッキスラブ1の固定荷重WDLや、支持間距離Lを有するデッキスラブ1に作用する等分布荷重WSや、支持間距離Lを有するデッキスラブ1に作用する等分布荷重WFや、デッキスラブ1に作用する分布荷重WDを算出することができる。
また、第3演算情報112Cに基づいてデッキスラブ1の上に載置された物体によってデッキスラブ1に作用する集中荷重である特殊荷重として、例えば、単位幅あたり有効輪荷重PAや、単位幅あたり有効輪荷重PBや、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEAや、デッキスラブ1の1m幅当たりの等価集中荷重PEBや、デッキスラブ1に作用する集中荷重PCを算出することができる。
また、第4演算情報112Dと特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブ有効幅として、例えば、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その1)におけるデッキスラブ有効幅VW1や、演算部113によるデッキスラブの構造計算の一例(その2)におけるデッキスラブ有効幅VW2を算出することができる。
また、第5演算情報112Eと、等分布荷重の算出結果と、特殊荷重の算出結果と、デッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて荷重データ対として、例えば、両端ピン支持梁構造であるか、両端固定支持梁構造であるか、デッキスラブ1の固定度に関する情報と、積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcと単位幅あたり有効輪荷重PAの組み合わせや、重畳に作用する積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PAの組み合わせや、積載荷重Wlおよび仕上げ荷重Wcと単位幅あたり有効輪荷重PBの組み合わせや、積載荷重Wl、仕上げ荷重Wcおよび固定荷重Wdと単位幅あたり有効輪荷重PBの組み合わせに関する情報を算出することができる。
また、第6演算情報112Fと、断面性能を表す指標の算出結果と、デッキスラブ有効幅の算出結果と、荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブ1の構造計算として、例えば、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxや、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxや、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxを算出することができる。
また、判定情報112Hと、断面性能を表す指標の算出結果と、に基づいて設定される基準値として、例えば、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントMfmaxの値がデッキスラブ1の正方向の許容応力度FStおよびFScの値以下であるか否か、デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントMnmaxの値がデッキスラブ1の負方向の許容応力度FStnおよびFScnの値以下であるか否か、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量δmaxの値がデッキスラブ1の許容たわみ量δaの値以下であるか否かを判定することができる。
そのため、建築物の建設段階から完成後の段階においてデッキスラブ1に作用する具体的な特殊荷重として、荷重データ対毎にデッキスラブ1に作用する等分布荷重、集中荷重によりデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントと、デッキスラブ1に生じる最大たわみ量が基準値以下であるか否かを考慮したデッキスラブ1の設計を行うことができる。
【0374】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1の設計方法は、前記取得ステップS1において、第7演算情報112Gを更に取得し、前記第7演算情報112Gは、前記引張材仕様情報として、前記デッキプレート2の板厚に関する情報と、を含み、前記圧縮材仕様情報として、前記コンクリート3の仕様に関する情報と、を含み、前記第7演算情報112Gに基づいてデッキスラブ1の許容剪断応力を算出する第7演算ステップS8を更に有し、前記第6演算ステップS7は、前記構造計算として、前記支持間距離に関する情報と、前記前記第4演算ステップS5にて算出したデッキスラブ有効幅の算出結果と、前記第5演算ステップS6にて算出した荷重データ対の算出結果と、に基づいて算出される前記デッキスラブ1に作用する最大剪断力を算出するステップを更に含み、前記判定ステップS10は、前記第1演算ステップS2にて算出した断面性能を表す指標の算出結果と、前記第6演算ステップS7にて算出した最大剪断力と、前記第7演算ステップにて算出した許容剪断応力の算出結果と、に基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定するステップを更に含む。
【0375】
これによれば、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントと、負方向の最大曲げモーメントと、最大たわみ量を算出することに加えて、デッキスラブ1に作用する最大剪断力を算出することができる。
そのため、例えば、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxの値がデッキスラブ1の許容剪断力QS1,QS2の値以下であるか否かを確認することや、デッキスラブ1に作用する最大剪断力Qmaxに基づいてデッキスラブ1に生じる最大剪断応力τmaxの値がデッキスラブ1の許容剪断応力τaの値以下であるか否かを判定することができることから、デッキスラブの設計精度を高めることができる。
【0376】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1の設計方法は、前記特定の荷重に関する情報は、車両のアウトリガーの位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、設備基礎の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、書架および移動式書架ならびにサーバラックなど高重量設備の位置および寸法ならびに作用する力に関する情報と、のうち少なくとも一つを含む。
【0377】
これによれば、荷重要素を集中荷重あるいは分布荷重へと等価換算することによって、デッキスラブ1に作用する荷重として、構造計算を実施することができる。
そのため、様々な荷重データ対を想定したデッキスラブの設計を行うことができ、デッキスラブの設計精度を高めることができる。
【0378】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1の設計方法は、前記第1演算ステップS2と、前記第2演算ステップS3と、前記第3演算ステップS4と、前記第4演算ステップS5と、前記第5演算ステップS6と、前記第6演算ステップS7と、は、有限要素法を用いて実行される。
【0379】
これによれば、有限要素法を用いて、デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントと、負方向の最大曲げモーメントと、最大たわみ量と、デッキスラブ1に作用する最大剪断力と、を算出することにより、デッキスラブ1が十分な許容応力度を有しているか否かをより正確に確認することができる。これにより、更に合理的なデッキスラブ1の設計を実施することができる。
【0380】
また、本実施の形態に係る情報処理装置100は、デッキスラブ1の構造計算を実行するための情報処理装置100であって、通信ネットワーク300を介して接続された情報処理端末200から送信された演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを受け付ける入力受付部111と、記憶部112と、前記第1演算情報112Aに基づいてデッキスラブ1の断面性能を示す指標を算出し、前記第2演算情報112Bに基づいてデッキスラブ1に作用する等分布荷重を算出し、前記第3演算情報112Cに基づいてデッキスラブ1の上に載置された物体によってデッキスラブ1に作用する集中荷重である特殊荷重を算出し、前記第4演算情報112Dと、前記特殊荷重の算出結果と、に基づいてデッキスラブ1に前記特殊荷重が作用した際にデッキスラブ1が荷重を負担する範囲の幅であるデッキスラブ有効幅を算出し、前記第5演算情報112Eと、前記等分布荷重の算出結果と、前記特殊荷重の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、に基づいて特定の条件の下で作用する荷重の組み合わせである荷重データ対を算出し、前記第6演算情報112Fと、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記デッキスラブ有効幅の算出結果と、前記荷重データ対の算出結果と、に基づいて、デッキスラブ1の構造計算を行い、前記第6演算情報112Fと、前記断面性能を表す指標の算出結果と、前記判定情報112Hと、に基づいて、前記構造計算の結果が前記判定情報112Hに基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する判定処理を行い、前記構造計算の結果および前記判定処理の結果が含まれる演算結果112Iを前記記憶部112に記憶する演算部113と、前記記憶部112に記憶された前記演算結果112Iを前記通信ネットワーク300を介して前記情報処理端末に送信する出力部114と、を備え、前記演算部113で行われる前記構造計算は、前記デッキスラブ1に生じる正方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブ1に生じる負方向の最大曲げモーメントの計算と、前記デッキスラブ1に生じる最大たわみ量の計算と、のうち少なくとも一つを含む計算を実行する処理が含まれ、前記演算部113で行われる前記判定処理は、算出した正方向の最大曲げモーメントと、最大負方向の最大曲げモーメントと、最大たわみ量と、のうち少なくとも一つが前記判定情報112Hに基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定する処理を含む。
【0381】
これによれば、システム利用者が情報処理端末200にて演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを入力することにより、情報処理装置100はデッキスラブ1の断面性能を示す指標と、デッキスラブ1に作用する等分布荷重と、デッキスラブ1に作用する集中荷重と、デッキスラブ有効幅と、荷重データ対と、を算出した上で、これらの情報に基づいてデッキスラブ1の構造計算を行い、構造計算の結果が判定情報112Hに基づいて設定される基準値以下であるか否かを判定し、当該構造計算の結果と判定結果を含んだ演算結果112Iを、クライアント端末装置200に送信する。そのため、システム利用者は、デッキスラブ1に作用する特殊荷重の計算を正確かつ迅速に実行することができる。
【0382】
また、本実施の形態に係る情報処理システム10は、表示装置215を有する情報処理端末と、前記情報処理端末200と通信ネットワーク300を介して接続されたサーバ100と、を備えた情報処理システム10であって、前記情報処理端末200は、受付部211と、送信部212と、受信部213と、表示制御部214と、を備え、前記サーバ100は、入力受付部111と、記憶部112と、演算部113と、出力部114と、を備える。
【0383】
これによれば、システム利用者は、自らが保有するクライアント端末装置200において演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを入力することにより、情報処理装置100は、デッキスラブ1に作用する特殊荷重の計算を実行する。そのため、システム利用者は、情報処理装置100から送信された、演算結果112Iを、クライアント端末装置200の表示画面においてタイムリーに確認することが可能である。
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0384】
例えば、
図27に示したデッキスラブの設計方法では、ステップS9において構造計算の結果が基準値よりも大きな値となった場合、再度、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hを取得し直した上で(ステップS1)、取得し直した演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hに基づいて、再度ステップS2~S9を実行することとしているが、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hの全ての情報を取得する必要はなく、一部の情報のみを取得することとしてもよい。
また、演算情報112A~112Gおよび判定情報112Hのうち、一部の情報のみを取得した場合には、取得した一部の情報によって計算結果が変わらない演算ステップ(ステップS2~S7)は省略することとしてもよい。
【0385】
例えば、
図27に示したデッキスラブの設計方法におけるステップS8では、ステップS1において取得した第4演算情報112Dは、デッキプレート2と梁との接合方法に関する情報として「焼抜き栓溶接」または「打込み鋲による接合」が選択されたか否かを判定することとしているが、ステップS8の判定処理を省略して、第6演算ステップの処理の直後に第7演算ステップ(ステップS9)を実行することとしてもよい。
あるいは、ステップS8の判定処理および第7演算ステップ(ステップS9)を省略して、第6演算ステップによって算出された前記構造計算の結果が基準値以下であるか否かの判定(ステップS10)を実行することとしてもよい。
【0386】
例えば、本発明の実施の形態に係る特殊荷重計算システム10はネットワーク300に接続された情報処理装置100とクライアント端末装置200により実現されているが、ネットワーク300は、ローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)に限らず、例えばインターネットに代表される広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)であってもよい。
すなわち、特殊荷重計算システム10を提供する事業者が所有する情報処理装置100に対し、特殊荷重計算システム10を利用するシステム利用者は、自らが所有するクライアント端末装置200をインターネットを経由して接続し、特殊荷重計算システム10の機能を利用することとしてもよい。
これによれば、特殊荷重計算システム10を利用するシステム利用者は、容易かつ適切に特殊荷重の算出を実施することができる。
【0387】
なお、システム利用者が、特殊荷重の計算に関する専門知識を有していないことにより所定の情報の全てを入力できない場合が考えられる。
その場合には、情報処理装置100に特殊荷重計算プログラム102Aに対応した自動会話プログラム(チャットボット)をインストールしておくことで、特殊荷重の計算に必要となる情報のうち、不足している情報を情報処理装置100からシステム利用者に対して能動的に問い合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0388】
1 デッキスラブ
2 デッキプレート
3 コンクリート
4 鉄筋
10 特殊荷重計算システム
20 フォークリフト
21 本体部
22 フォーク部
23 前輪
24 後輪
25 デッキスラブ有効範囲
30 車両
51 柱
52 大梁
53 小梁
55 曲げモーメント
60 有限要素法による構造解析モデル
61 最大曲げモーメントが発生した構成要素
100 特殊荷重計算情報処理装置
200 クライアント端末装置
300 ネットワーク
WB ホイールベース
WI 車輪間隔
VW デッキスラブ有効幅
Z1 走行区域
Z2 駐車区域
CW 車幅
ID1 車間距離
ID2 隣間距離
TY タイヤ
WB2 ホイールベース
【要約】
【課題】建築物の建設段階においてデッキスラブに作用する個別具体的な設定条件に応じた特殊荷重を考慮したデッキスラブの設計を支援する。
【解決手段】デッキスラブ1の設計方法は、第1演算情報112Aと、第2演算情報112Bと、第3演算情報112Cと、第4演算情報112Dと、第5演算情報112Eと、第6演算情報112Fと、判定情報112Hと、を取得し、前記情報に基づいてデッキスラブ1の断面性能を示す指標と、デッキスラブ1に作用する等分布荷重と、デッキスラブ1に作用する特殊荷重と、デッキスラブ有効幅と、荷重データ対と、を算出した上で、デッキスラブ1の構造計算を行い、設定された基準値以下であるか否かを判定することを特徴とする。
【選択図】
図1