(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】基板の選択的な蒸気コーティングのための装置および方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20240624BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C23C14/50 F
C23C14/50 B
C23C14/04 A
(21)【出願番号】P 2020552386
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2019058087
(87)【国際公開番号】W WO2019185914
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】102018107606.1
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516082866
【氏名又は名称】エリコン サーフェス ソリューションズ アーゲー、 プフェフィコン
【住所又は居所原語表記】Churerstrasse 120 8808 Pfeffikon SZ CH
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】メイラー,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】バーケイン,クリストフ
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-211311(JP,A)
【文献】特開平11-247613(JP,A)
【文献】実開昭57-106758(JP,U)
【文献】特表2009-501278(JP,A)
【文献】特表2003-504219(JP,A)
【文献】特表2018-511702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0149450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/50
C23C 14/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング作業に使用するための固定治具(1)であって、中心軸(L)の周りを回転可能なカルーセルの形状をしており、
シールドが固定される支持構造体(5)を含み、
前記シールドは、多数のリテーナー開口部(19)を有し、それぞれが
前記リテーナー開口部(19)のそれぞれを介して、処理される物体を貼りつけることにより、
各物体の第1部分は、前記シールドからコーティング蒸着領域内に延び、
各物体の第2部分は、前記シールドからコーティング蒸着が行われ得ないシールド領域に延びるように設計され、
前記シールド領域は、複数の第2部分を共同で収容する共通の中空空間(13)であり、
前記支持構造体(5)は、中央管(6)から延びる第1フランジ(7)および第2フランジ(8)を含み、前記フランジ(7、8)が前記シールドまたはシールドプレート(2)を取り付けるためのベースを形成し、
前記シールドは、複数のシールドプレート(2)によって形成されており、前記シールドプレート(2)が蒸着動作の準備ができた位置にあるときに、直接隣接するシールドプレート(2)の横方向のフランジによって、前記シールド領域を前記共通の中空空間(13)の形状
で密封し、
前記フランジ(7、8)が、前記シールドプレートに直接接触す
る支持バー(9)によって相互に連結され、前記支持バー(9)とともに、前記複数のシールドプレート(2)うちの1つの裏面をそれぞれ受け入れるための長方形の枠を形成し、半径方向の蒸気の侵入を防ぐことを特徴とする、固定治具(1)。
【請求項2】
前記支持構造体(5)は、前記シールドによって囲まれ、それとともに前記共通の中空空間(13)の形状で前記シールド領域を一緒に閉じ込める前記中央管(6)を有することを特徴とする、請求項1に記載の固定治具(1)。
【請求項3】
前記シールドプレート(2)は平板であることを特徴とする、請求項1または2に記載の固定治具(1)。
【請求項4】
前記フランジ(7、8)の円周は、前記シールドプレート(2)を取り付けるための多数の平坦なベースを有する多角形を形成することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の固定治具(1)。
【請求項5】
前記シールド
プレート(2)は、多数の窓を有するベースキャリアと、アダプタープレート(27)に設けられた前記リテーナー開口部(19)を除いて前記窓を閉じるように前記ベースキャリア(26)に取り付けられた多数の前記アダプタープレートとを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の固定治具(1)。
【請求項6】
アダプタープレート(27)は、ベース
キャリアに異なる回転位置で固定され得、その目的のために前記アダプタープレート(27)の外周が円形であることを特徴とする、請求項5に記載の固定治具(1)。
【請求項7】
リテーナー開口部(19)には、前記リテーナー開口部(19)を介して動けなくなった前記物体を固定するように設計されたばね要素(22)が割り当てられていることを特徴とする、請求項5または6に記載の固定治具(1)。
【請求項8】
前記ばね要素(22)は、少なくとも張力がかかっているときには、前記ばね要素(22)が、前記ベースキャリア(26)に対して、前記アダプタープレート(27)と同様に、コーティングされる前記物体の固定化に寄与するような方法で、前記ベースキャリア(26)に固定されることを特徴とする、請求項7に記載の固定治具(1)。
【請求項9】
前記シールドまたはシールドプレート(2)または前記アダプタープレート(27)は、各リテーナー開口部(19)のベゼル部分を形成するフロントプレートと各リテーナー開口部(19)のリテーナー部分を形成する背面プレートとをサンドイッチ状に形成したものであり、前記フロントプレートと前記背面プレートとの間の接触領域が密閉されており、それにより破片または洗浄剤が前記プレート間に侵入しないことを特徴とする、請求項5または6に記載の固定治具(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の固定治具(1)を備えた物理蒸着コーティング装置。
【請求項11】
基板を保持するために請求項1~
9のいずれか1項に記載の固定治具(1)が使われ、コーティングされる前記基板はまず前記シールドプレート(2)を介して貼り付けられ、その後、前記基板は、前記シールドプレート(2)に保持された状態で洗浄プロセスに供され、次に、前記基板を保持した前記シールドプレート(2)を前記固定治具(1)に取り付け、これは順番に蒸着室内に配置されるかまたは配置されることになり、その後、物理蒸着が行われることを特徴とする、物理蒸着コーティングのための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルによる物理蒸着コーティングプロセスで使用するための固定治具に関するものである。部分的なコーティングのみを必要とする基板の同時コーティング用に設計されている。このようなプロセスは、好ましくは、PVDコーティング装置の蒸着室内で行われる。
【0002】
さらに、本発明は、このような治具を備えたPVDコーティング装置、および本発明の治具を用いたPVDコーティング方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
航空機、ヘリコプター、およびオフロード車のガスタービンエンジンは、ガスタービンコンプレッサーのローターブレードおよびステーターベーン(総称して「タービンブレード」と呼ばれる)が砂のような侵食性の媒体にさらされる埃っぽい環境で運転されることがよくある。これは、成層圏領域直下のジェット気流によって流される火山灰の上昇を管理しなければならない民間航空機にも関係する。このような場合には、不利益な機械的侵食が発生し得る。また、下流側のタービンブレードが高温の燃焼ガスに過度にさらされることがある。そのため、それらは熱過負荷および/または腐食が発生しやすくなる。
【0004】
改善策として、例えば、TiN、TiCN、TiZrN、TiZrCN、TiAlN、およびTiAlCNのような耐侵食性硬質材料コーティングおよび/または熱負荷および/または腐食を低減するコーティングが、個々のタービンブレードに適用される。このような硬質材料コーティングを適用するための代表的な方法の1つは、あらゆる全種類のカソードアーク物理蒸着である。
【0005】
タービンブレードは通常、2つの部分、すなわち真の空気箔を形成する第1部分とソケット部分と呼ばれる第2部分に分割することができる。それは、エンジンのディスク部分またはローター部分にタービンブレードを取り付けるために使用される。ソケット部分は典型的には、エンジンのディスク部分またはローター部分の相補的なアリ溝スロットに入れ子にされるためのアリ溝を形成する。アリ溝領域は、空気の流れまたは熱負荷に十分にさらされない。したがって、不利益な侵食性、熱性または腐食性の影響からアリ溝領域を保護する必要はない。一方で、アリ溝壁は、長時間の使用または高速回転の後、フレッティングと呼ばれる疲労現象が発生する。フレッティングは、空気箔部分に塗布されたコーティングによって悪化することがわかった。そのため、前記タービンブレードのソケット部分がコーティングから解放されたままになるように、前記タービンブレードを選択的にコーティングする必要性がある。
【0006】
タービンブレード以外の他の基板についても、同様に選択的コーティングの需要があり得る。
【0007】
(従来技術)
コーティングされるタービンブレードのソケット部分をシールドしながら、空気箔上に所望のコーティング蒸着を提供するために、EP1907598は、以下を提案する。
【0008】
1または複数のシールドが提供される。各シールドは、リテーナー開口部のそれぞれを介してタービンブレードを貼り付けることができるように設計された多くのリテーナー開口部を有する。その結果、各タービンブレードの空気箔は、シールドからコーティング蒸着領域内に延びており、各タービンブレードのソケット部分は、コーティング蒸着が行われないシールド内のシールド領域内に延びている。
【0009】
EP1907598は、各ソケット部分について、シールド領域が個別の完全に締結された区画として設計されていることを教示する。前記区画は、シールド内の完全な中空空間であり、その壁は、単一のソケット部分を完全に包含している。
【0010】
そのために、シールドは、少なくとも
図1で図示されるように、トリプルサンドイッチとして設計されている。トリプルサンドイッチは、個別区画の閉底部を形成するベースプレートと、区画の側壁を形成する窓状のリテーナー開口部を有する中間プレートと、ソケット部分を遮光する空気箔部分の出口を有する区画のカバーを形成するベゼルプレートとにより構成される。
【0011】
前記シールドは、
図2に示すように、カルーセルの形をした固定治具に取り付けられる。その結果、カルーセルは、
図2でも図示されるコーティング装置のプロセス室内に配置されている。コーティング装置の部屋の側壁に固定された円形のターゲットが容易に視認され得る。カソードとして作用するターゲットおよびアノードとして作用する部屋の壁の間、または少なくとも1つの独立したアノードでアークが燃焼している。アークによって蒸発した材料は、(通常は負のバイアスの下で)基板を運ぶカルーセルに半径方向内向きに加速され、その後、基板上で凝縮する。蒸発した材料は、これらが完全に閉鎖されているので、ソケットを収容する中空空間のそれぞれに侵入することができない。
【0012】
このようにして、非常に信頼性の高いシールドを持つ精密なコーティングが実現される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(発明の目的)
本発明の目的は、このような選択的コーティングを実行するための固定治具を教示することであり、この固定治具はより簡単であり、したがってそれ自体がより経済的である一方で、より短いプロセスサイクルを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この問題を解決するために、コーティング作業に使用するための固定治具、好ましくは中心軸の周りを回転可能なカルーセルの形状の固定治具が提案される。固定治具は、シールドが着脱可能に固定された支持構造体を含む。
【0015】
シールドには、複数の保持治具のリテーナー開口部が設けられている。リテーナー開口部、好ましくはすべてのリテーナー開口部は、それぞれのリテーナー開口部を介して単一の基板を貼り付けることができるように設計されている。各基板の第1部分は、シールドからコーティング蒸着領域内に延びる。コーティングされる隣接する基板から分離したリテーナー開口部でも保持される。そうすれば、非常に均一なコーティングが保証される。
【0016】
各物体の第2部分は、シールドからシールドの後方、すなわちシールドの裏側に位置するシールド領域内に延びる。シールドの後方とは、シールドの表面が1または複数のターゲットに対向して配置されているシールドの表面に対して背けられているシールドのその側面に配置されていることを意味する。「シールド領域」であるシールドの背後に位置する当該領域では、コーティング蒸着は行われない。
【0017】
前記シールド領域は、中空空間である。好ましくは、シールド領域は、1つの単一の中空空間-大部分は、少なくとも0.03m3の連続容積を有する-である。
【0018】
一方の基板の第2部分を収容し、シールドに形成されたベゼルによって不要な蒸着物に対して締め付けられるシールドの裏側の各凹部は、その中空空間に属する。割り当てられたリテーナー開口部の最大の明確な断面と等しいかまたはそれよりも大きい至る所である最小の明確な断面を介して、中空空間の残りの部分と連結する。
【0019】
それぞれの場合、中空空間は、第2部分が互いに壁によって分割されたり、個別に「箱詰め」されたりすることなく、複数の第2部分を共同で収容する。
【0020】
個別に「箱詰め」とは、第2部分が、第2部分のすべての側面が壁で囲まれた状態で、互いに離れて保持されていることを意味する。
【0021】
典型的には、単一の中空空間は、管状の形状を有する。好ましくは、管状の形状の長手方向軸は、カルーセルの長手方向軸がある場合には、カルーセルの長手方向軸と同軸または少なくとも平行に延びる。この管状の形状は、シールドの裏面によって閉じ込められる。シールドは、その円周方向では無限である。
【0022】
複数の第2部分が1つの同じシールドされた中空空間内に収容されているので、基板のローディングおよびアンローディングは、従来技術によって教示された基板の各第2部分の個々の「箱詰め」と比較して、はるかに迅速に達成され得る。
【0023】
さらに、シールドまたはシールドプレートの複雑性を低減することができる。
【0024】
最後に、例えばサンドブラスト中に基板を所定の位置に保持するために、基板準備段階ですでにシールドを使用することが可能になる。これは、本発明によるよりシンプルな構造が、残留サンドブラスト粒が意図せずにコーティング室内に入り込む危険性がはるかに低いことを担うからである。これにより、サンドブラスト用とコーティング用の別のクリーンな治具にまたはその治具から基板をローディングおよびアンローディングする必要がなくなるため、プロセスを大幅に短縮することができる。
【0025】
(本発明の進歩のための選択肢)
好ましい実施形態では、支持構造体が中央管を有することを提供する。前記管は、円形でない場合、多角形である断面を有するのが最も良い場合がある。管は、(外側の)シールドによって囲まれる、すなわちガードされる。それは、(外側の)シールドおよび中央管との間の間隙を形成する共通の中空空間の形で、シールドと共に、前記シールド領域を閉じ込める。すなわち、この場合、中央管はシールドの一部であり、中空空間を不要な蒸着からシールドする。
【0026】
好ましくは、支持構造体は、中心管から半径方向に延びる第1フランジおよび第2フランジを含む。前記フランジは、マルチパートシールドを形成するシールドまたはシールドプレートを取り付けるためのベースを形成する。このようにして、シールドまたはそれを形成するシールドプレートの取り付けが、非常に素早く、常に気密に行えるようになった。
【0027】
ほとんどの場合、フランジは多数の支持バーによって相互に接続されている。支持バー自体が直接シールドに接触する。このようにして、着脱可能なシールドまたはシールドプレートのしっかりとした幾何学的に正確な支持体が提供される。これにより、各サイクルに1回必要なシールドまたはシールドプレートの取り付けおよび取り外しの手間を省くことができる。
【0028】
複数のシールドプレートによって形成することが非常に好ましい。典型的には-蒸着操作のための準備ができた位置にあるとき-支持バーの関与の有無にかかわらず、円周方向に直接隣接する2つのシールドプレートの横方向のフランジは、共同で前記中空空間をシールしている。シーリングとは、中空空間へのコーティング蒸着を妨げることを意味する。
【0029】
好ましくは、シールドプレートは、-理想的には両方の主面上に-平面パネルであり、完全にまたは少なくとも本質的に平面パネルである。
【0030】
本質的には、平坦な支持面が形成されている限り、局所的な突起は無関係であることを意味する。
【0031】
前記フランジの前述の円周が、シールドプレートを取り付けるための多くの平坦なベース/支持体を有する多角形を形成する場合、有利である。
【0032】
非常に好ましい解決策は、多くの窓を有するベースキャリアを含むシールドを提案する。前記ベースキャリアには、多くの交換可能なアダプタープレートが取り付けられている。アダプタープレートは、アダプタープレートに設けられたリテーナー開口部を除き、ベースキャリアの窓を部分的に閉じる役割を担う。アダプタープレートは、シールドを異なる基板形状に非常に効果的に適応させることができる。全く新しいシールドを製造する必要はもうない。カスタマイズされたリテーナー開口部を有するアダプタープレートを提供することで十分である。
【0033】
好ましくは、アダプタープレートは、ベースプレートに対してまたはベースプレートからツールレスで、理想的には異なる回転位置に取り付けられ、取り付けられなかったりされ得る。ツールレスとは、溶接、はんだ付け、またはリベットのない状態を意味し、理想的にはネジまたはプレスツールの作動がない状態を意味する。狭い意味でのツールレスとは、ペンチ(pincer)以外のものを持っていない「素手」のことを意味する。
【0034】
そのためには、アダプタープレートの外周は丸みを帯びていることが好ましい。そのようにして、アダプタープレートを非常に異なる位置に取り付けることができる。これにより、基板の第1部分を最適な方向、すなわち、蒸着結果に関して最適を保証する方向に配置することが容易になる。アダプタープレートの円周が四角、三角、または六角形のものは、汎用性が低くても、この目的のために検討され得る。
【0035】
リテーナー開口部にばね要素を割り当てることが好ましい。ばね要素は、リテーナー開口部を介して貼り付けられた基板の固定化に寄与するように設計される。その目的は、基板をリテーナー開口部に対して相対的に固定化することである。
【0036】
非常に好ましい変形例は、ばね要素の特別なアンカーを提供する。ベースプレートへのアンカーは、ばね要素が、ベースキャリアに対するアダプタープレートの固定化だけでなく、コーティングされる基板の固定化にも寄与するように設計される。それは、異なる基板の小さな連続体をコーティングしなければならない場合には、基板の配置を加速させる。
【0037】
好ましくは、シールドまたはシールドプレートまたは前記コンポーネントのアダプタープレートは、各リテーナー開口部のベゼル部分を形成するフロントプレートと各リテーナー開口部のリテーナー部分を形成するバックプレートとをサンドイッチ状に形成したものである。
【0038】
好ましくは、フロントプレートおよびバックプレートの間の接触領域は、破片または固体/流動性洗浄剤(サンドブラスト粉のような)がプレート間に侵入しないようにシールされる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図のリスト
【
図2】従来技術による固定治具を備えた蒸着室を示す。
【
図3】シールドまたはシールドプレートを備えていない、本発明による支持構造体の実施形態を示す。
【
図4】1つの例示的なシールドプレートが取り付けられようとしている
図3による支持構造体を示す。
【
図5】シールドプレートを完全に備えた、すなわち、コーティングの蒸着のために準備ができた状態にある、
図3による支持構造体を示す。
【
図6】
図5による支持構造体によって搬送されるシールドプレートの裏側の拡大図である。
【
図7】
図6に示すシールドプレートの表側の上部の拡大図である。
【
図8】本発明によるシールドプレートの代替的な第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0040】
(第1の好ましい実施形態)
概要
図3から
図5を参照して、本発明の固定治具1の全体像を説明する。
【0041】
固定治具1は、ここでは多くのシールドプレート2で構成されたシールドを搬送する。シールドプレート2のそれぞれは、
-好ましくは-多くのタービンブレード3を搬送する。タービンブレード3のそれぞれからは、真の空気箔4のみが見え、これは、いわゆる第1部分を形成し、蒸着によるコーティングの準備ができて、蒸着室内に半径方向外向きに延びている。
【0042】
図3~
図5では示されていないが、タービンブレード3のソケットは、蒸着物に対してシールドされる、いわゆる第2部分を形成するものである。タービンブレード3のような基板を搬送するこの固定治具1は、従来技術の
図2を用いて既に説明したのと同様に設計されて動作することができる蒸着機の蒸着室内に配置されている。
【0043】
支持構造体
図3は、シールドプレート2が取り付けられ得る支持構造体5を示す。
【0044】
支持構造体5は、好ましくは、回転可能なカルーセルとして設計される。支持構造体5は、中央管6を含む。通常、中央管6は、少なくとも本質的には完全に閉じた円周表面を有する。固定目的で使用されるような小さな局所的な穴は、不利益ではない。
【0045】
好ましくは、中央管の内側には、ベアリングと、その長手方向軸Lの周りに固定治具1全体を回転させるためのドライブとが収容され得る。このようにして、ベアリングおよびドライブは、もしあれば、不利益な蒸着物から保護される。
【0046】
中央管6からは、少なくとも第1フランジ7および第2フランジ8が半径方向外向に延びる。管6の両端には、フランジ7、8が取り付けられている。
【0047】
前記フランジ7、8は、閉じたプレートとして設計され得るが、それは必須ではない。この特定のケースでは、フランジ7、8は、材料および重量を節約するために、窓11とともに設計される。このような窓11の存在は、蒸気の侵入領域から外れた位置に配置されている限り、不利益なものではない。
【0048】
一見するとわかるように、各フランジ7、8の円周は、好ましくは多角形、または理想的には六角形または八角形として設計される。なぜこれが好ましいのかは、以下で明らかになる。
【0049】
フランジ7および8は、支持バー9によって相互に連結され得る。通常、支持バーは、それらが蒸着の準備ができていることを意味するそれらの作業位置に置かれたときに、シールドプレート2に接触する。好ましくは、支持バー9とともに、フランジ7、8の円周の平面12は、多くの場合、シールドプレート2の裏面を締め付けるように受けるための長方形の枠を形成する。「締め付けるように」という表現は、気密性の高い締め付けという意味ではない。半径方向の蒸気の侵入に対する気密性で十分である。スロットであっても、それが半径方向の直線経路を遮断する一種の迷宮を形成するならば、そのような気密性を提供し得る。
【0050】
図3または
図4から分かるように、1または複数の中間支持体10を設けることができる。中間支持体は、支持バー9が不利益に振動しやすい状態になることを回避する。中間支持体10は、
図3または
図4に示すように、棒状に設計され得る。そのようなものが好ましい。
【0051】
あるいは、中間支持体10は、その中に窓がなくても、連続プレートとして設計され得る。そのようにして、それらは、「仕切り」の方法で中空空間13を-例えば-2つのサブセクションに分割し、それぞれが多くの第2部分を収容する。そのようなものはここには示されておらず、そのようなものは好ましくないが、迂回されるのを避けるために言及されている。
【0052】
図3および
図4を比較することによって最もよくわかるように、固定治具1は、半径方向に突出したフットプレート14aを備えてもよく、また、おそらくは、比較可能なヘッドプレート14bを備えてもよい。前記プレートは、もしあれば、シールドプレート2の固定または位置決めに寄与し得る。
【0053】
支持構造体5を構成する材料としては、好ましくは、例えばEN1.4301のようなオーステナイト系鋼、または例えばEN 1.4622のような耐食性フェライト系鋼が使用される。
【0054】
ジョイント中空空間のシールド
これまで説明してきたことに照らして、中央管6の周りに円周方向に密接にグループ化されたシールドプレート2が、中央管6と共に(フランジ7、8の間の領域で)ジョイント中空空間13を閉じ込めていることを認識する。この中空空間は、ここではシールドプレート2および中央管6の間の半径方向の間隙である。
【0055】
前記中空空間は、蒸気の侵入に対してシールドされる。
【0056】
それは共同で、処理中の基板の複数または、ここでのように、すべての第2部分(タービンブレードの場合には、コーティングを受けることが許されていないすべてのそのソケット)を収容する。
【0057】
好ましくは、前記中空空間(前記2つの前記フランジ7、8の間に割り当てられている)は、0.01m3超の体積を有する。多くの場合、体積は0.03m3~1m3の範囲の中空空間である。典型的には、中空空間は、(完全にまたは本質的に)管状の形状を有し、前記管の想像上の「壁」は、好ましくは、0.08mから0.3mの間の半径方向の厚さをどこでも有し、中空空間を形成する。
【0058】
シールドの設計
既に上述したように、シールドは、理論的には、中央管6の周りに必要な半径方向の長さに巻かれた1つの単一のジャケットであり得る。
【0059】
しかし、このような設計では、ほとんどの用途で不便を感じるであろう。そのため、複数のシールドプレート2は、上述したように、中央管6に巻き付けられたジャケット状のシールドを一体に形成することが好ましい。
【0060】
好ましくは、各シールドプレート2は、
図6によって開示されるように設計される。
図7は、ここでコーティングされる基板を形成するタービンブレード3が、このようなシールドプレート2に「コーティングの準備ができた」状態で固定される様子を示す。
【0061】
容易に見られるように、各シールドプレート2は、好ましくは3個から15個のリテーナー開口部19の間を処理する。各リテーナー開口部19は、
図7を参照して、コーティングされる基板をリテーナー開口部19を介して貼り付けることができるように設計される。
【0062】
ほとんどの場合、このようなシールドプレート2は、2つの主面15、2つの側面16、および2つの額面17を有する(完全にまたは実質的に)平板である。典型的には、2つの主面15のそれぞれの表面積は、側面16および額面17のそれぞれの表面積の少なくとも7倍の大きさである。典型的には、2つの側面16のそれぞれの表面積は、額面17のそれぞれの表面積の少なくとも5倍の大きさである。この設計は、シールドプレートに帯状の外観を与える。
【0063】
好ましくは、各シールドプレート2は、保持プレート18とベゼルプレート21とをサンドイッチ状にして形成されており、それらの主面15のうちの1つの主面15で互いに横たわるようになっている。これは
図7で最もよくわかる。
【0064】
保持プレート18は、コーティングされる基板ごとに個別にリテーナー開口部19を搬送する。リテーナー開口部19は、保持プレート18を通過する窓の形状を有する。リテーナー開口部19は、コーティングされる個々の基板に合わせて特注で作られた側壁20を加工する。側壁20は、フォームフィット的にコーティングされる基板の第2部分を包む。それは、コーティングされる基板を正確に定義された位置に保持するための前提条件である。
【0065】
図6から自明のように、保持プレート18を通過する窓は、カバーによって閉じられるのではなく、発明的な単一の中空空間に向かって開かれたままである。
【0066】
ベゼルプレート21は、コーティングされる基板ごとに個別に、ベゼルを形成する窓を運ぶ。この目的のために、前記窓は、保持プレート18を通過する窓よりも小さい。ベゼルプレート21の前記窓の各々は、保持プレート18を通過する割り当てられた窓と整列するように配置される。ベゼルプレート21は、プロセス室内で発生する蒸気によるアクセスに対して第2部分を遮光する。
【0067】
多くの場合、保持プレート18とベゼルプレート21とは、互いに締め付けられている。そのため、蒸着時だけでなく、シールドプレート2を使用することも可能となる。
【0068】
代わりに、このようなシールドプレート2は、例えばサンドブラストの間にしっかりと保持するために、基板の準備の間に既に使用され得る。2枚のプレートが互いに締め付けられていれば、残留サンドブラスト材料が意図せずして蒸着室に運ばれ、不利益な影響を及ぼす危険性はない。
【0069】
前記締め付けは、好ましくは、前記2枚のプレートを一緒にはんだ付けすることによって、場合によっては、プレートの2枚の接触する主面の全表面積にわたって実現される。はんだ付けに用いるはんだとしては、500℃超の温度で負荷がかかっても熱的に安定であり、かつ耐食性にも優れたAg系はんだまたは他のはんだが好ましい。
【0070】
保持プレート18の窓内にコーティングされる基板の第2部分を固定化するために、ばね要素22が設けられている。好ましくは、保持プレート18の前記窓の各々には、自前のばね要素22が割り当てられている。
【0071】
図6から容易に分かるように、ここでは、ばね要素22は、シールドプレートの主面15に垂直な方向に基板の第2部分を押圧するリーフばねとして構成されている。
【0072】
好ましくは、ばね要素22は、そこから延びる2つのフック脚24を有するV字型主部分23を有する。V字型主部分23は、基板の第2部分に押し付けられている。フック脚24の各々は、そこの各窓の少なくとも2つの側面において、その目的のために保持プレート18に設けられた固定穴25にカチッと閉まり得る。1つが見ることができるように、各固定穴25は、蒸着室の蒸気によっての直接アクセスに対してベゼルプレート21によって覆われる。
【0073】
前記固定穴25に代わるものとして、シールドプレートの表面15から延びるむちひもを設けることができる。このようなむちひもについては、後ほど詳しく説明する。しかし、コスト面の理由から、固定穴は、例えば、容易に打ち抜くことができるので好ましい。
【0074】
特に、500℃超の高温に耐えられる耐クリープ性および/または耐熱性のある鋼でスプリングを製造することが有利であることがわかってきた。理想的な材料はNimonic 90である。
【0075】
好ましくは、保持プレート18は、シールドプレート2を支持構造体5に着脱可能に固定するためのフォームフィット要素を備える。
【0076】
これらのフォームフィット要素のうちの1つ、好ましくは上側のものは、
図6および
図7に示すように、C字型のハンガークローとして、またはT字型の突起として具現化されていてもよい。T字型の突起も、支持構造体に引っ掛けることができる。これらのフォームフィット要素の他の1つ、好ましくは下側のものは、
図6を参照して、シールドプレート2を支持構造体5にスナップラッチするため、または支持構造体5にそれをクリックするための舌状の突起として具現化され得る。
【0077】
好ましくは、ベゼルプレート21自体は、
図7を参照して、前記ハンガークロー、前記T字型の突起、または前記舌状の突起を具現化していない。
【0078】
シールドまたはシールドプレート2に使用される材料に関しては、支持構造体5に関して上述したことが適用される。
【0079】
(別の好ましい実施形態)
以下に説明する相違点を除いて、第2の好ましい実施形態は、上記で説明した第1の好ましい実施形態と同一である。そのため、以下に説明する特別な特徴に逆らわない限り、第1の実施形態に係る上述の説明はすべて第2の実施形態にも適用される。
【0080】
第2の好ましい実施形態の顕著な違いは、
図8に示すように、この実施形態では、より汎用性の高いシールドプレート2が使用されていることである。
【0081】
対応するシールドプレート2は、ベースキャリア26を含む。ベースキャリアは、多くの窓を運ぶ。さらに、前記窓を部分的に閉じるために、多くのアダプタープレート27がベースキャリア26に取り付けられている。アダプタープレートは、好ましくは、ベースキャリアのシールドされた裏面に取り付けられる。以下、上述の窓の領域に残存する唯一のブレイクスルーは、各アダプタープレート27に設けられたリテーナー開口部19である。
【0082】
従って、1つと同じキャリア26を、非常に異なる基板をコーティングするために使用することができるという利点がある。
【0083】
キャリア26をコーティングされる異なる基材にカスタマイズするためには、それに応じてカスタマイズされたアダプタープレート以外には何も必要とされない。これにより、製造コストが大幅に削減されるだけでなく、保管コストも大幅に削減され、完全なシールドプレート2を保管する必要がなくなり、はるかに小さいアダプタープレート27のみが保管されるようになる。
【0084】
好ましくは、1つの単一のアダプタープレート27が個々の基板に割り当てられている。
【0085】
アダプタープレート27自体は、好ましくはそれらのリテーナー開口部19に関して、上述したものにしたがって設計される。
【0086】
ここでも、アダプタープレートをサンドイッチとして、好ましくは2層のみで製造することが好ましい。このようなサンドイッチは、第1の実施形態について既に説明したように、ベゼルプレートを形成するフロントプレートと、キャリアプレートを形成するバックプレートとで構成される。キャリアプレートは、第2部分をフォームフィット的に収容する側壁を形成する。好ましくは、ベゼルプレートとキャリアプレートは、ほとんどの場合、上で説明したように、はんだ付けによって、互いに締め付けられる。
【0087】
好ましくは、アダプタープレート27の外周は、アダプタープレート27が異なる回転位置、例えば6時の位置、9時の位置、または12時の位置で、ベースキャリア26内の窓に直交する線に関連したすべてを意味する、異なる回転位置でベースキャリア26に取り付けられるように設計される。
【0088】
このようにして、個々のケースに必要な、つまり最適化されたコーティング結果を得るために、蒸着室内の基板の第1部分の向きを調整することができる。
【0089】
アダプタープレート27の最も好ましい変形は、図に示されていない円形の外周を有する。そのようなアダプタープレートは、必要な各回転位置でベースキャリアに取り付けられ得る。あるいは、円周が四角形、三角形、六角形、または多角形の他のアダプタープレートも使用することが可能である。このようなアダプタープレートは、それほど汎用性が高くなくても、異なる回転位置に取り付けられ得る。
【0090】
図8に示すアダプタープレート27は、円周が長方形に形成されている。そのため、常に同じ位置に取り付けられる必要がある。
【0091】
ベースキャリア26には、アダプタープレート27の位置決めおよび固定を支持するために、複数のむちひも28が設けられている。好ましくは、むちひも28は、アダプタープレート27の円周方向の対向する2つの側面をフォームフィットに案内する。このようにして、各アダプタープレート27の位置決めが正確に行われるようにしている。
【0092】
各むちひも28は、ばね要素22をアンカーするために機能する。好ましくは、ばね要素22は、第1の実施形態に関連して既に説明したように設計されている。このようなばね要素22が使用される場合、ばね要素22の各脚24は、1つのむちひも28に入れ子状にされ得る。
【0093】
そのようにして、ばね要素22は、コーティングされる基板の第2部分に圧力を及ぼす。コーティングされる基板の第2部分は、そのようにしてアダプタープレート27の開口部に押し込まれる。同時に、アダプタープレート27とコーティングされる基板のアセンブリは、一体的にベースキャリア26に押し込まれる。
【0094】
好ましくは、各アダプタープレート27は、2つの横方向の凹部29を備える。各凹部29は、取り付けられたときに、ばね要素22の脚の一部を収容する。そのようにして、アダプタープレート27は、ベースキャリア26からの滑り出しに対して、または(この場合には)むちひも28によって提供される案内からの滑り出しに対して、追加のフォームフィットによって固定される。
【0095】
図8を見ても明らかなように、この設計の大きな利点は、コーティングされる基板とアダプタープレートを同期的に固定するためには、1つの単一のばね要素の張力以外には何も必要ないことである。より正確には、ここで使用されるリーフばね要素22の2本の脚の入れ子以外に、アセンブリ全体を固定するために必要なものは何もない。
【0096】
完全性のために、ここでも、むちひも28の代わりに、第1の実施形態で知られている固定穴25を使用することはオプションであると言わなければならない。
【0097】
参照番号一覧
1 固定治具
2 シールドプレート
3 タービンブレード
4 エアブレード/タービンブレードのエアブレード部分
5 支持構造体
6 中央管
7 第1フランジ
8 第2フランジ
9 支持バー
10 中間支持体
11 フランジ中の窓
12 フランジの平面
13 中空空間
14a フットプレート
14b ヘッドプレート
15 シールドプレートの主面
16 シールドプレートの側面
17 シールドプレートの額面
18 保持プレート
19 リテーナー開口部
20 区画の側壁
21 ベゼルプレート
22 ばね要素
23 主部分
24 フック脚
25 固定穴
26 ベースキャリア
27 アダプタープレート
28 むちひも
29 アダプタープレート中のばね受容凹部
L 長手方向軸