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  • 特許-2種の固体電解質層を含む全固体電池 図1
  • 特許-2種の固体電解質層を含む全固体電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】2種の固体電解質層を含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20240624BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240624BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240624BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240624BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/052
H01M4/13
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022566716
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 KR2022004404
(87)【国際公開番号】W WO2022211447
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0041332
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ラク・ヨン・チェ
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/151144(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 10/0565
H01M 10/052
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在される固体電解質層とを含み、
前記固体電解質層は、バインダーを含む第1固体電解質層と、バインダーを含まない第2固体電解質層とを含み、
前記第2固体電解質層が前記負極と対面し、
前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルクロライド(polyvinylchloride)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリプロピレンオキサイド(polypropylene oxide)、ポリホスファゼン(Polyphosphazene)、ポリシロキサン(Polysiloxane)、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、ポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF-CTFE)、ポリビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-TFE)、ポリビニリデンカーボネート(polyvinylidene carbonate)、ポリビニルピロリジノン(polyvinylpyrrolidinone)、スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber)、ニトリルブタジエンゴム(nitrile-butadiene rubber)、及び水素化ニトリルブタジエンゴム(Hydrogenated nitrile butadiene rubber)からなる群から選択された1種以上である、全固体電池。
【請求項2】
正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在される固体電解質層とを含み、
前記固体電解質層は、バインダーを含む第1固体電解質層と、バインダーを含まない第2固体電解質層とを含み、
前記第2固体電解質層が前記負極と対面し、
前記第1固体電解質層と前記第2固体電解質層とはバインダーを除いた残りの構成成分が互いに同一である、全固体電池。
【請求項3】
正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在される固体電解質層とを含み、
前記固体電解質層は、バインダーを含む第1固体電解質層と、バインダーを含まない第2固体電解質層とを含み、
前記第2固体電解質層が前記負極と対面し、
前記第1固体電解質層の厚さは前記第2固体電解質層の厚さと同じかそれより大きい、全固体電池。
【請求項4】
前記第1固体電解質層に含まれるバインダーの含量は、前記第1固体電解質層に含まれる全固形分の重量に対して0.2重量%~15重量%である、請求項1からのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記第1固体電解質層と前記第2固体電解質層とは互いに接着されている、請求項1からのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項6】
正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在される固体電解質層とを含み、
前記固体電解質層は、バインダーを含む第1固体電解質層と、バインダーを含まない第2固体電解質層とを含み、
前記第2固体電解質層が前記負極と対面し、
前記負極は負極合剤層を含んでいない、全固体電池。
【請求項7】
前記負極は、コーティング層と、イオン伝達層とを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項8】
正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在される固体電解質層とを含み、
前記固体電解質層は、バインダーを含む第1固体電解質層と、バインダーを含まない第2固体電解質層とを含み、
前記第2固体電解質層が前記負極と対面し、
前記第2固体電解質層の表面の固体電解質粒子は前記負極と接触している、全固体電池。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の全固体電池を単位セルとして含む、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年3月30日付の韓国特許出願第2021-0041332号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は2種の固体電解質層を含む全固体電池に関するものである。具体的には、固体電解質層と負極との接着面を増加させることで全固体電池の短絡の危険を減少させることができるように2種の固体電解質層を含む全固体電池に関するものである。
【背景技術】
【0003】
再充電が可能であり、高エネルギー密度を有するリチウム二次電池は、化石燃料の使用を画期的に減らすことができるのみならず、エネルギーの使用による副産物が発生しないので、環境に優しい特性を有する新エネルギー源として注目されている。
【0004】
前記リチウム二次電池は、ウェアラブル(wearable)デバイスまたはポータブル(portable)デバイスだけではなく、電気自動車のような高出力及び高エネルギー密度を有するデバイスのエネルギー源としても脚光を浴びている。よって、リチウム二次電池の作動電圧及びエネルギー密度を増加させるための研究開発の速度が速くなっている。
【0005】
前記リチウム二次電池の一種として電解液及び分離膜を含むリチウムイオン二次電池は、電解液流出及び火災の危険が高い欠点がある。これに対する代案として、不燃性の固体を電解質として使用して火災及び爆発の危険を低めた全固体電池が提示されている。
【0006】
全固体電池は、安全性が向上するだけでなく固体電解質を含むので、リチウムイオンの移動速度が速く、負極の厚さを減らすことによってエネルギー密度が増加する利点がある。
【0007】
全固体電池のエネルギー密度を高める手段として、負極合剤層を含まず、集電体のみで構成される負極形態が提案された。
【0008】
このような形態の全固体電池を充電すれば、負極集電体と固体電解質層とが接触した部分でリチウムが負極集電体上に付着(plating)し、全固体電池を放電すれば、負極集電体上に付着したリチウムが脱離(stripping)する。このように、繰り返し充放電によって負極集電体上に付着するリチウムのサイズが次第に増加してリチウムデンドライトが成長することができる。前記リチウムデンドライトは電池の短絡または容量低下の原因になることがある。
【0009】
すなわち、負極集電体と固体電解質層との接触面が小さいほどリチウム付着(plating)が局部的に起こるので、リチウムデンドライトの成長可能性が増加することができる。
【0010】
これに関連して、図1は従来の高エネルギー密度用全固体電池の固体電解質層及び負極の断面図である。
【0011】
図1を参照すると、負極140の一面に固体電解質層120が形成されている。固体電解質層120は固体電解質粒子110がバインダー130を介して結着した状態を有するように構成され、負極140の一面に配置されている。
【0012】
固体電解質粒子110を介して負極140に移動したリチウムは負極140の表面に付着する。ここで、固体電解質粒子110と負極140との間にあるバインダー130によってリチウムが負極に移動することができなくなる。
【0013】
図1で、負極と接触している固体電解質粒子のうちリチウムが移動することができるものは矢印で表示されており、バインダー130によってリチウム移動経路が塞がった固体電解質粒子には矢印が表示されていない。
【0014】
このように、バインダーによってリチウムが移動することができないか移動速度が低下することにより、全固体電池の抵抗が増加するようになる。
【0015】
したがって、固体電解質層と負極との接触面を増やすことによって抵抗を低めた全固体電池の開発が必要である。
【0016】
硫化物系固体電解質が適用された全固体電池の場合、固体電解質層自体の抵抗を最小化するために、バインダーなしに固体電解質層を圧着した形態に製作する方法があるが、このような場合には、前記固体電解質層の厚さが数百μm程度になるように製作するので、高エネルギー密度用全固体電池を製造するのには適しない。
【0017】
これに関連して、特許文献1は、正極層と負極層との間に電解質層が配置され、前記電解質層は第1固体電解質層及び第2固体電解質層を含み、前記第1固体電解質層及び/または第2固体電解質層にバインダーを含んでいる全固体電池に関するものである。
【0018】
特許文献1の全固体電池は硫化物系固体電解質を含み、バインダーを含むことにより、硫化物系固体電解質粒子の分散力を確保する効果を得ることができ、固体電解質層の厚さを薄くして抵抗を減少させることができることを開示する。
【0019】
特許文献2は、2以上の電解質層が積層され、前記2以上の電解質層は互いに異なるバインダー含量を有する前固体バッテリー用電解質層に関するものであり、ラミネーティング法の適用の際、電解質層から基材が円滑に脱離するようにし、電解質層の厚さを適切に調節することにより、電極層と電解質層との間の界面抵抗を最小化することができることを開示する。
【0020】
しかし、特許文献1及び特許文献2は固体電解質層に含まれたバインダーによって全固体電池の抵抗が増加する問題を解決するための方法を提示することができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特許第5930035号公報
【文献】韓国公開特許第2017-0055325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであり、負極の表面でリチウムデンドライトが成長することを防止して全固体電池の安全性を確保することができるように、2種の固体電解質層を含む全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような目的を達成するための本発明による全固体電池は、正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在される固体電解質とを含み、前記固体電解質は、バインダーを含む第1固体電解質層と、バインダーを含まない第2固体電解質層とを含み、前記第2固体電解質層が前記負極と対面することができる。
【0024】
前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルクロライド(polyvinylchloride)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリプロピレンオキサイド(polypropylene oxide)、ポリホスファゼン(Polyphosphazene)、ポリシロキサン(Polysiloxane)、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、ポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF-CTFE)、ポリビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-TFE)、ポリビニリデンカーボネート(polyvinylidene carbonate)、ポリビニルピロリジノン(polyvinylpyrrolidinone)、スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber)、ニトリルブタジエンゴム(nitrile-butadiene rubber)、及び水素化ニトリルブタジエンゴム(Hydrogenated nitrile butadiene rubber)からなる群から選択された1種以上であることができる。
【0025】
前記第1固体電解質層と前記第2固体電解質層とはバインダーを除いた残りの構成成分が互いに同一であってもよい。
【0026】
前記第1固体電解質層の厚さは前記第2固体電解質層の厚さと同じかそれより大きくてもよい。
【0027】
前記第1固体電解質層に含まれるバインダーの含量は、前記第1固体電解質層に含まれる全固形分の重量に対して0.2重量%~15重量%であることができる。
【0028】
前記第1固体電解質層と前記第2固体電解質層とは互いに接着されることができる。
【0029】
前記負極は負極合剤層を含んでいなくてもよい。
【0030】
前記負極は、コーティング層と、イオン伝達層とを含むことができる。
【0031】
前記第2固体電解質層の表面の固体電解質粒子は前記負極と接触することができる。
【0032】
本発明は、前記全固体電池を単位セルとして含む電池モジュールを提供する。
【0033】
また、本発明は、前記技術的解決方法を多様に組み合わせた形態としても提供することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上で説明したように、本発明による全固体電池は、固体電解質層と負極との界面での接触面を増加させることにより、負極の表面で局部的にリチウム付着(plating)が起こることを防止することができる。
【0035】
したがって、負極の表面でリチウムデンドライトが成長することを抑制することができる。
【0036】
よって、全固体電池の短絡危険が低くなるので、安全性を向上させることができる。
【0037】
また、リチウムの移動経路を広く確保することにより、全固体電池の抵抗を低めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】従来の高エネルギー密度用全固体電池の固体電解質層及び負極の断面図である。
図2】本発明による全固体電池の固体電解質層及び負極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただ、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0040】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけではなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0041】
また、構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用可能であり、特定の発明に限定されない。
【0042】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0043】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって「または」は、別に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「AまたはBを含む」はAを含むか、Bを含むか、A及びBの両者を含む3種の場合を意味する。
【0044】
本発明を図面に基づいて詳細な実施例と一緒に説明する。
【0045】
本発明による全固体電池は、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在される固体電解質を含み、前記固体電解質は、バインダーを含む第1固体電解質層と、バインダーを含んでいない第2固体電解質層とからなり、前記第2固体電解質層が前記負極と対面する形態を有することができる。
【0046】
前記正極は、例えば、正極集電体上に正極活物質を含む正極合剤を塗布した後、乾燥して製造され、前記正極合剤には、必要によって、バインダー、導電材、及び充填剤などが選択的にさらに含まれてもよい。
【0047】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、高い導電性を有するものであれば特に限定されなく、前記正極集電体としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、及び銀などで表面処理したものを使用することができる。また、正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成することによって正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0048】
前記正極活物質は電気化学的反応を起こすことができる物質であり、下記の式1~3で表現される正極活物質のうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0049】
LiCo1-x (1)
LiMn2-y (2)
LiFe1-zPO (3)
【0050】
前記式で、0.8≦a≦1.2;0≦x≦0.8;0≦y≦0.6、0≦z≦0.5であり、MはTi、Cd、Cu、Cr、Mo、Mg、Al、Ni、Mn、Nb、V及びZrからなる群から選択される1種以上である。
【0051】
すなわち、前記正極活物質は、式1で表示される層状構造のリチウム金属酸化物、式2で表示されるスピネル構造のリチウムマンガン系酸化物、及び式3で表示されるオリビン構造のリチウム含有リン酸化物からなる群から選択される1種または2種以上の物質を含むことができる。
【0052】
前記層状構造のリチウム金属酸化物は、その種類に制限されないが、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト-ニッケル酸化物、リチウムコバルト-マンガン酸化物、リチウムマンガン-ニッケル酸化物、リチウムニッケル-コバルト-マンガン酸化物、及びこれらに他の元素が置換またはドーピングされた物質からなる群から選択される1種または2種以上を含むことができる。
【0053】
前記リチウムニッケル-コバルト-マンガン酸化物は、Li1+zNiCoMn1-(b+c+d)(2-e)(ここで、-0.5≦z≦0.5、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、0≦d≦0.2、0≦e≦0.2、b+c+d<1であり、MはAl、Mg、Cr、Ti、SiまたはYであり、AはF、PまたはClである)で表現することができる。
【0054】
前記スピネル構造のリチウムマンガン系酸化物もその種類に制限されないが、例えば、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物及びこれらに他の元素が置換またはドーピングされた物質からなる群から選択される1種または2種以上を挙げることができる。
【0055】
また、前記オリビン構造のリチウム含有リン酸塩もその種類に制限されないが、例えば、リチウム鉄リン酸化物及びこれに他の元素が置換またはドーピングされた物質からなる群から選択される1種または2種以上を挙げることができる。
【0056】
前記他の元素は、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V及びFeからなる群から選択される1種または2種以上の元素とすることができる。
【0057】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に役立つ成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全体の重量を基準にして1重量%乃至30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、及びこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0058】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物総重量に対して1重量%~30重量%添加される。このような導電材は当該電池に化学的変化を引き起こさないながらも導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;エチレンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材、グラフェン及びカーボンナノチューブなどを使うことができる。
【0059】
前記充填剤は電極の膨張を抑制する成分として選択的に使用することができ、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、繊維状材料であれば特に限定されなく、前記充填剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0060】
一具体例で、前記負極は負極合剤層を含まず、負極集電体のみで構成されることができる。
【0061】
前記負極集電体は、一般に3μm乃至500μmの厚さに作られる。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものであれば特に限定されなく、前記負極集電体としては、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、前記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することによって負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を使用することができる。
【0062】
一具体例で、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一面にコーティングされたリチウムメタルとから構成されることができる。前記リチウムメタルの付加方法は特に限定されず、例えば、熱蒸着法、電子ビーム(e-beam)蒸着法、化学気相蒸着法及び物理気相蒸着法からなる群から選択される蒸着法によって付加することができる。
【0063】
図2は本発明による全固体電池の固体電解質層及び負極の断面図である。
【0064】
図2を参照すると、負極240の一面に固体電解質層220が設けられる。固体電解質層220は、第1固体電解質層221及び第2固体電解質層222からなる2層の層状構造を有する。
【0065】
第1固体電解質層221はバインダー230を含み、第2固体電解質層222はバインダーを含まず、負極240と対面するように配置されるので、第2固体電解質層222の表面にある固体電解質粒子210は負極240と接触するようになる。
【0066】
前記バインダーは固体電解質粒子の結着力を確保して電極との接着力を向上させる機能を果たす一方で、リチウムイオンの移動性を低下することがある。特に、図1に示す固体電解質層及び負極のように、第2固体電解質層222と負極240との接触面でバインダーによって負極の表面のうち局部的にのみリチウムの付着(plating)が起こる場合にはリチウム核が生成しやすいので、リチウムデンドライトが形成される可能性が高くなる。
【0067】
したがって、本発明は、負極と接触する第2固体電解質層にはバインダーを含まないように構成するので、第2固体電解質層のうち負極と対向する最外層の固体電解質粒子は負極と直接接触することができる。よって、負極と固体電解質粒子との接触面を増加させることができる。すなわち、矢印で表示したように、前記最外層の固体電解質粒子の全体でリチウムが負極240に移動することができる。
【0068】
このような構造を有することにより、リチウムデンドライトの発生を抑制して全固体電池の短絡発生を減らすことができる。
【0069】
前記バインダーは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルクロライド(polyvinylchloride)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリプロピレンオキサイド(polypropylene oxide)、ポリホスファゼン(Polyphosphazene)、ポリシロキサン(Polysiloxane)、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、ポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF-CTFE)、ポリビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-TFE)、ポリビニリデンカーボネート(polyvinylidene carbonate)、ポリビニルピロリジノン(polyvinylpyrrolidinone)、スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber)、ニトリルブタジエンゴム(nitrile-butadiene rubber)、及び水素化ニトリルブタジエンゴム(Hydrogenated nitrile butadiene rubber)からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0070】
前記第1固体電解質層に含まれるバインダーは、前記第1固体電解質層に含まれる全固形分の重量に対して0.2重量%~15重量%含むことができ、具体的には1重量%~10重量%含むことができ、より具体的には1重量%~5重量%含むことができる。
【0071】
前記バインダーの含量が0.2重量%より少ない場合には、固体電解質粒子間の結着力が低くて固体電解質層を構成しにくく、ショートが発生しやすい一方で、15重量%より多い場合には、イオン伝導度が大きく減少することがあるので好ましくない。
【0072】
固体電解質層220においてバインダーが固体電解質粒子の結着力を確保する機能を果たす点を考慮すると、固体電解質層の形態安全性のために、バインダーを含む第1固体電解質層の厚さが第2固体電解質層の厚さと同じかそれより大きく形成されることができる。
【0073】
例えば、第1固体電解質層の厚さは第2固体電解質層の厚さに対して100%以上1,000%以下とすることができ、具体的には100%超過500%以下とすることができる。
【0074】
また、固体電解質層の全厚があまりにも大きい場合には抵抗が増加することがあり、あまりにも小さい場合には低強度及び絶縁性が問題となることがあるので、前記固体電解質層の全厚の範囲は20μm~100μmの範囲とすることができる。
【0075】
一具体例で、前記第1固体電解質層の最小厚さは10μmとし、前記第2固体電解質層の最小厚さは10μmとすることができる。すなわち、第2固体電解質層が第1固体電解質層より相対的に厚い場合には、イオン伝導度確保の観点で有利な効果を得ることができるが、固体電解質層の接着力が弱くて取り扱いにくくなることがあるので好ましくない。
【0076】
前記第1固体電解質層及び前記第2固体電解質層は正極と負極との間でイオン伝達の通路として機能するので、イオン伝導度が低下することを防止するために、相互間の界面全体で完全に接着するように構成されることができる。
【0077】
一具体例で、前記第1固体電解質層と第2固体電解質層とはバインダーを除いた残りの構成成分が互いに同じに構成されることができる。
【0078】
例えば、前記第1固体電解質層及び前記第2固体電解質層に含まれる固体電解質の種類は同一であり、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質及び高分子系固体電解質からなる群から選択されるいずれか1種であることができる。
【0079】
前記硫化物系固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、また、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導度を有し、電子絶縁性を有する化合物であることができる。前記硫化物系固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導度を有することが好ましいが、目的又は場合によって、Li、S及びP以外の他の元素を含むことができる。
【0080】
具体的な硫化物系無機固体電解質として、例えば、LiPSCl、LiS-P、LiS-P-LiCl、LiS-P-HS、LiS-P-HS-LiCl、LiS-LiI-P、LiS-LiI-LiO-P、LiS-LiBr-P、LiS-LiO-P、LiS-LiPO-P、LiS-P-P、LiS-P-SiS、LiS-P-SiS-LiCl、LiS-P-SnS、LiS-P-Al、LiS-GeS、LiS-GeS-ZnS、LiS-Ga、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-P、LiS-GeS-Sb、LiS-GeS-Al、LiSiS、LiS-Al、LiS-SiS-Al、LiS-SiS-P、LiS-SiS-P-LiI、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiSiO、LiSiS-LiPO、及びLi10GeP12などを使用することができる。
【0081】
前記硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法として、非晶質化法を使用することができる。前記非晶質化法として、例えば、メカニカルミリング法、溶液法又は溶融急冷法を挙げることができる。これは、常温(25℃)での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるためである。
【0082】
前記酸化物系固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導度を有し、電子絶縁性を有する化合物であることができる。
【0083】
前記酸化物系固体電解質として、例えば、LixaLayaTiO(xa=0.3~0.7、ya=0.3~0.7)(LLT)、LixbLaybZrzbbb mbnb(Mbbは、Al、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Ti、Ge、In及びSnのうち少なくとも1種以上の元素であり、xbは、5≦xb≦10を充足し、ybは、1≦yb≦4を充足し、zbは、1≦zb≦4を充足し、mbは、0≦mb≦2を充足し、nbは、5≦nb≦20を充足する。)、Lixcyccc zcnc(Mccは、C、S、Al、Si、Ga、Ge、In及びSnのうち少なくとも1種以上の元素であり、xcは、0≦xc≦5を充足し、ycは、0≦yc≦1を充足し、zcは、0≦zc≦1を充足し、ncは、0≦nc≦6を充足する。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3-2xe)ee xeeeO(xeは、0以上0.1以下の数を示し、Meeは、2価の金属原子を示す。Deeは、ハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを示す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO-LiSO、LiO-B-P、LiO-SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4-3/2w)(wは、w<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2-xhSiyh3-yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)などを挙げることができる。又は、前記酸化物系固体電解質として、Li、P及びOを含むリン化合物も使用することができ、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素に置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuなどから選ばれた少なくとも1種)などを挙げることができる。又は、前記酸化物系固体電解質として、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C及びGaなどから選ばれた少なくとも1種)なども使用することができる。
【0084】
前記高分子系固体電解質は、それぞれ独立的に溶媒化されたリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された固体高分子電解質であるか、有機溶媒及びリチウム塩を含有した有機電解液を高分子樹脂に含有させた高分子ゲル電解質であることができる。
【0085】
例えば、前記固体高分子電解質は、イオン伝導度材質であって、通常、全固体電池の固体電解質材料として使用される高分子材料であれば特に限定されない。前記固体高分子電解質は、例えば、ポリエーテル系高分子、ポリカーボネート系高分子、アクリレート系高分子、ポリシロキサン系高分子、ホスファゼン系高分子、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン誘導体、アルキレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、又はイオン性解離基を含む重合体などを含むことができる。又は、前記固体高分子電解質は、高分子樹脂であって、PEO(polyethyleneoxide)主鎖にポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリシロキサン及び/又はホスファゼンなどの無定形高分子を共単量体で共重合させた分枝状共重合体、くし状高分子樹脂(comb-like polymer)及び架橋高分子樹脂などを含むことができる。
【0086】
前記高分子ゲル電解質は、リチウム塩を含む有機電解液及び高分子樹脂を含むものであって、前記有機電解液は、高分子樹脂の重量に対して60重量部~400重量部含むことができる。高分子ゲル電解質に適用される高分子は、特定の成分に限定されないが、例えば、ポリビニルクロライド系(Polyvinylchloride、PVC)、ポリメチルメタクリレート(Poly(Methyl methacrylate)、PMMA)系、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile、PAN)、ポリフッ化ビニリデン(poly(vinylidene fluoride、PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-六フッ化プロピレン(poly(vinylidene fluoride-hexafluoropropylene:PVDF-HFP)などを含むことができる。
【0087】
本発明は前記全固体電池を単位セルとして含む電池モジュールを提供し、前記電池モジュールは、高温安全性、長いサイクル特性、及び高い容量特性が要求される中大型デバイスのエネルギー源として使うことができる。
【0088】
前記中大型デバイスの例としては、電池的モーターによって動力を受けて作動する動力工具(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0089】
以下では、本発明の実施例を参照して説明するが、これは本発明のより容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がこれによって限定されるものではない。
【0090】
<製造例1>
固体電解質層を製造するために、固体電解質としてアルジロダイト(LiPSCl)とバインダーとしてポリテトラフルオロエチレンとを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌して第1固体電解質層スラリーを製造した。
【0091】
前記第1固体電解質層スラリーをポリエチレンテレフタレート(PET)離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することで、厚さが50μmの第1固体電解質層を製造した。
【0092】
固体電解質としてアルジロダイトを単独でアニソールに分散及び撹拌して第2固体電解質層スラリーを製造した後、これをポリエチレンテレフタレート離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することで、厚さ30μmの第2固体電解質層を製造した。
【0093】
前記第1固体電解質層の一面に前記第2固体電解質層を積層して固体電解質層を製造した。
【0094】
<製造例2>
前記製造例1で前記第1固体電解質層の厚さが30μmになるように製造したことを除き、前記製造例1と同様な方法で固体電解質層を製造した。
【0095】
<製造例3>
前記製造例1で製造された厚さ50μmの第1固体電解質層のみで構成される固体電解質層を製造した。
【0096】
<参考例>
固体電解質層を別に製造せず、Tiモールド内にアルジロダイトパウダーを充填し、イオン伝導度を測定した。
【0097】
<実験例1>固体電解質層のイオン伝導度
前記製造例1~製造例3で製造された固体電解質層と参考例のアルジロダイトパウダーとのイオン伝導度を測定するために、Ni集電体の間に固体電解質層を介在し、アルミニウムパウチを真空でシーリングして全固体電池を製造した。
【0098】
前記全固体電池をジグに締結し、10MPaの圧力を印加し、インピーダンス分光法(impedance spectroscopy)でイオン伝導度を測定し、その結果を下記の表1に記載した。
【0099】
【表1】
【0100】
前記表1を参照すると、参考例のアルジロダイト自体のイオン伝導度は2.0mS/cmと高く測定されたが、バインダーを含む第1固体電解質層を含む製造例1~製造例3の場合にはイオン伝導度が減少したことが分かる。
【0101】
これは、固体電解質の製造の際、アルジロダイト粒子間の接着力を付与するために付加されたバインダーがアルジロダイト粒子の間に介在されることによってイオン伝導度が減少したからである。
【0102】
バインダーを含んでいない第2固体電解質層を含む製造例1及び製造例2の固体電解質は、バインダーを含む第1固体電解質層のみで構成された製造例3の固体電解質と比較するとき、高イオン伝導度を示す。
【0103】
したがって、イオン伝導度の減少を最小化し、特に充放電の際、Li付着(plating)/脱離(stripping)が起こる負極と固体電解質層との間の界面で固体電解質層と負極との接触を増加させるために、バインダーを含む第1固体電解質層とバインダーを含まない第2固体電解質層とを一緒に構成することが好ましい。
【0104】
<実施例1>
全固体電池用正極を製造するために、正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1、固体電解質としてアルジロダイト(LiPSCl)、導電材としてファーネスブラック、及びバインダーとしてポリテトラフルオロエチレンを77.5:19.5:1.5:1.5の重量比でアニソール(Anisole)に分散して撹拌することによって正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを14μmの厚さのアルミニウム集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、100℃で12時間真空乾燥することによって正極を製造した。
【0105】
コーティング層及びイオン伝達層を含む全固体電池用負極を製造するために、10μmの厚さのニッケル集電体上にAgを30nmの大きさでスパッタリングし、Ag層からなるコーティング層を形成した。その後、前記Ag層上にアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンが97:3の重量比で混合されたスラリーをコーティングすることによってイオン伝達層を形成した後で乾燥し、多層構造を有する負極を製造した。
【0106】
固体電解質層を製造するために、固体電解質としてアルジロダイト(LiPSCl)とバインダーとしてポリテトラフルオロエチレンとを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌して第1固体電解質層スラリーを製造した。
【0107】
前記第1固体電解質層スラリーをポリエチレンテレフタレート(PET)離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することで、厚さ50μmの第1固体電解質層を製造した。
【0108】
固体電解質としてアルジロダイトを単独でアニソールに分散及び撹拌して第2固体電解質層スラリーを製造した後、これをポリエチレンテレフタレート離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することで、厚さ30μmの第2固体電解質層を製造した。
【0109】
前記第1固体電解質層の一面に前記第2固体電解質層を積層して固体電解質層を製造した。
【0110】
前記正極及び負極の間に介在される固体電解質層において第2固体電解質層が前記負極と対面し、前記第1固体電解質層が前記正極と対面するように配置し、アルミニウムパウチに入れてシーリングすることで全固体電池を製造した。
【0111】
<実施例2>
前記実施例1で、第1固体電解質層の厚さが30μmであることを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0112】
<比較例1>
前記実施例1で、固体電解質層の厚さが50μmの第1固体電解質層のみで構成されることを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0113】
<比較例2>
前記実施例1で、固体電解質層の厚さが30μmの第2固体電解質層のみで構成されることを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0114】
<比較例3>
前記実施例1で、前記正極及び負極の間に介在される固体電解質層において第1固体電解質層が前記負極と対面し、前記第2固体電解質層が前記正極と対面するように配置したことを除き、前記実施例1と同様な方法で全固体電池を製造した。
【0115】
<実験例2>
前記実施例1、実施例2、比較例1~比較例3で製造された全固体電池を準備し、60℃で4.25Vまで定電流-定電圧モードで0.05Cで充電し、3.0Vまで0.05Cで放電して、初期充放電容量及び効率を測定した。
【0116】
また、全固体電池の寿命特性を評価するために、電圧範囲4.25V~3.0Vで0.1C充電/0.1C放電の条件で充放電を5回遂行した。
【0117】
このように測定された初期充電容量、初期放電容量、充放電効率、及び維持率を下記の表2に記載した。
【0118】
下記の表2で、初期充電容量及び初期放電容量のそれぞれは1回サイクルの充電容量及び放電容量であり、充放電効率は1回サイクルで測定された充電容量に対する放電容量の効率を意味する。また、下記の表2で維持率は1回サイクルで測定された放電容量に対する5回サイクルで測定された放電容量の比である。
【0119】
【表2】
【0120】
前記表2を参照すると、実施例1及び実施例2の全固体電池は比較例1の全固体電池より充放電効率が高いことを確認することができる。これは、前記実験例1で確認したように、第1固体電解質層のみで構成された固体電解質層より第1固体電解質層及び第2固体電解質層を含む固体電解質層のイオン伝導度が高いことによるものと思われる。
【0121】
バインダーを含まない第2固体電解質層のみで構成された比較例2の全固体電池は固体電解質層の強度が弱いので、全固体電池の製造の際に大変な困難があり、初期充電の際にショート(short)が発生するため、評価が不可能であった。
【0122】
寿命特性を比較して見ると、実施例1及び実施例2の維持率は比較例1より非常に優れた結果を示す。
【0123】
また、実施例1及び実施例2を比較例3と比較するとき、実施例1及び実施例2はバインダーを含まない第2固体電解質層が負極と対面するように配置されるので、固体電解質粒子と負極との接触が増加する結果としてリチウムデンドライトの形成が遅延されることができるので、維持率を高く維持することができる。
【0124】
このように、本発明による全固体電池は、固体電解質層と負極との接触面を確張した構造を有するので、イオン伝導度の減少を減らすことにより、寿命特性が向上した全固体電池を提供することができる。
【0125】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形が可能であろう。
【符号の説明】
【0126】
110、210 固体電解質粒子
120、220 固体電解質層
130、230 バインダー
140、240 負極
221 第1固体電解質層
222 第2固体電解質層
図1
図2