(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】バルブインジケーター
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20240624BHJP
H10N 30/857 20230101ALI20240624BHJP
H10N 30/60 20230101ALI20240624BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240624BHJP
【FI】
F16K37/00 D
H10N30/857
H10N30/60
H10N30/30
(21)【出願番号】P 2023569959
(86)(22)【出願日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2023040206
【審査請求日】2023-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591264429
【氏名又は名称】コフロック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】新村 英展
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 健
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-034052(JP,A)
【文献】特開2020-043138(JP,A)
【文献】特開2018-163531(JP,A)
【文献】特許第3866258(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂線に少なくとも1層の金属箔が螺旋状に巻き付けられている芯線と、前記芯線を被覆する有機圧電体層と、前記有機圧電体層を被覆する導電体層とを含み、前記金属箔および前記導電体層が、それらの間に前記有機圧電体層が介挿された電極としてそれぞれ機能する圧電素子から
なり、前記圧電素子に対する接触圧の変化によって当該圧電素子の両面の電極間に生じる電圧値によってバルブの開閉を検知するバルブインジケーターを備えたバルブ開閉検知システムであって、流体が流れる流路の上流側から下流側にかけて圧力センサ、温度センサ、流量計、前記バルブインジケーターを備えた流量制御バルブを有し、前記圧力センサ、前記温度センサ、前記流量計及び前記流量制御バルブの作動を制御、監視、演算するコントローラを備え、前記流量制御バルブの下流側の流路に開閉バルブと当該バルブの開閉を検知する前記バルブインジケーターを設けたことを特徴とするバルブ開閉検知システム。
【請求項2】
流量制御バルブの下流側に設けた開閉バルブとバルブインジケーターに代えて、流量計の下流側の流路から前記流量制御バルブを迂回して前記流量制御バルブの下流側の流路に達するようにバイパス流路を設け、当該バイパス流路に第二流量制御バルブと当該バルブの開閉を検知する前記バルブインジケーターを設けたことを特徴とする請求項1に記載のバルブ開閉検知システム。
【請求項3】
流量制御バルブの下流側に設けた開閉バルブとバルブインジケーターに代えて、前記流量制御バルブの下流側の流路に第二流量制御バルブと当該バルブの開閉を検知する前記バルブインジケーターを設け、さらに、前記流量制御バルブの下流側の流路から前記第二流量制御バルブを迂回して前記第二流量制御バルブの下流側の流路に達するようにバイパス流路を設け、当該バイパス流路に第三流量制御バルブと当該バルブの開閉を検知する前記バルブインジケーターを設けたことを特徴とする請求項1に記載のバルブ開閉検知システム。
【請求項4】
流量制御バルブの下流側の流路に設けた開閉バルブとバルブインジケーターに加えて、流量計の下流側の流路から前記流量制御バルブを迂回して前記流量制御バルブの下流側の流路であって、前記開閉バルブの上流側の流路に達するようにバイパス流路を設け、当該バイパス流路に第二流量制御バルブと当該バルブの開閉を検知する前記バルブインジケーターを設けたことを特徴とする請求項1に記載のバルブ開閉検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブインジケーターに関し、より詳細には、圧電素子からなるバルブインジケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子は、圧電体を使用した素子であり、例えば、圧電体の正圧電効果を利用する(圧電体に加えられた外力を電圧に変換する)ことによってセンサとして、また、圧電体の逆圧電効果を利用する(圧電体に印加された電圧を力に変換する)ことによってアクチュエータとして、さまざまな用途において使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「厚み方向を分極方向とする板状の圧電体および前記圧電体の両主面に設けられた一対の電極を有する板状の圧電素子と、前記圧電素子の両主面に固着され、弾性を有する一対の導電性部材と、を備え、前記圧電素子は、前記圧電素子の両主面に固着される前記一対の導電性部材により、前記圧電素子の両主面に平行な方向に圧縮され、外力を加えられたとき、前記圧電体が歪むことにより発電する圧電デバイスと、前記圧電デバイスの前記圧電素子および前記導電性部材に外力を伝達し屈曲させる外力伝達部と、外力を伝達され振動する前記圧電素子により発生した電圧を前記一対の導電性部材から取り出し、電気信号に変換する信号発生回路とを備えることを特徴とする圧電スイッチ」が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された圧電スイッチは、圧電素子の両主面に固着される一対の導電性部材により、圧電素子の両主面に平行な方向に圧縮され、外力を加えられたとき、圧電体が歪むので、圧電素子の表面に亀裂が入りやすいという欠点がある。
【0004】
また、特許文献2には、「定電位に設定される基準電極と、前記定電位に対する電圧を検出する電圧検出回路が接続された検出電極と、基準電極と検出電極との間に挟持された圧電体とからなる圧電素子を備え、電圧検出回路が所定の第1閾値以上の電圧を検出することから、入力操作体が圧電素子を押圧する入力操作を検出する圧電スイッチであって、前記入力操作体の浮遊容量に一部の電流が流れる交流検出信号を発信する発信手段と、前記検出電極に表れる前記交流検出信号の受信レベルを検出する信号検出手段とを更に備え、前記検出電極に接近する前記入力操作体の浮遊容量に応じて変化する前記交流検出信号の受信レベルから、前記入力操作前の前記検出電極に接近する前記入力操作体を検出することを特徴とする圧電スイッチ。」が開示されている。しかし、特許文献2に開示された圧電スイッチは、入力操作体が入力操作をしなければならないという煩わしさがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3866258号明細書
【文献】特開2018-163531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、特別な操作を必要とせず、変形や損傷の恐れがなく、正確にバルブの開閉を検知することができるバルブインジケーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のバルブインジケーターは、樹脂線に少なくとも1層の金属箔が螺旋状に巻き付けられている芯線と、前記芯線を被覆する有機圧電体層と、前記有機圧電体層を被覆する導電体層とを含み、前記金属箔および前記導電体層が、それらの間に前記有機圧電体層が介挿された電極としてそれぞれ機能する圧電素子からなるバルブインジケーターであって、前記圧電素子に対する接触圧の変化によって当該圧電素子の両面の電極間に生じる電圧値によってバルブの開閉を検知することを特徴としている。
【0008】
本発明の1つの態様において、前記樹脂線に2層以上の金属箔が螺旋状に巻き付けられていてよい。
【0009】
本発明の1つの態様において、前記樹脂線に前記少なくとも1層の前記金属箔が螺旋状にギャップ巻されていてよい。かかる態様において、前記金属箔の螺旋ピッチに対するギャップの割合は、0.4~50%であり得る。
【0010】
本発明の1つの態様において、前記樹脂線は、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、および炭素繊維からなる群より選択される少なくとも1種の材料から構成されていてよい。
【0011】
本発明の1つの態様において、前記金属箔は、6~100μmの厚さを有し得、および/または、0.02~2mmの幅を有し得る。
【0012】
本発明の1つの態様において、前記芯線は、0.05~1.5mmの外形寸法を有し得る。
【0013】
本発明の1つの態様において、前記有機圧電体層は、1~200μmの厚さを有し得る。
【0014】
本発明の1つの態様において、前記有機圧電体層は、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体、およびフッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体から成る群より選択される少なくとも1種を含むものであり得る。
【0015】
本発明の1つの態様において、前記圧電素子は、前記導電体層を被覆する絶縁体層を更に含んでいてよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバルブインジケーターは、樹脂線に少なくとも1層の金属箔が螺旋状に巻き付けられている芯線を被覆する有機圧電体層と、前記有機圧電体層を被覆する導電体層とを含み、前記金属箔および導電体層が、それらの間に前記有機圧電体層が介挿された電極として機能する圧電素子からなるので、全体として細長い線状の形態を有するバルブインジケーターとすることができる。本発明のバルブインジケーターは、樹脂線に少なくとも1層の金属箔が螺旋状に巻き付けられている芯線を用いているので、小さな曲率半径で曲げても芯線に歪みが残り難く、よって、柔軟性に優れ、かつ、繰り返し曲げても芯線が破断して導通が切断され難く、よって、耐屈曲性に優れるバルブインジケーターとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明の1つの実施形態における圧電素子を示す概略図であって、
図1(a)は圧電素子の部分切除側面図を示し、
図1(b)は
図1(a)のA-A線に沿った断面図を示し、
図1(c)は
図1(b)の改変例を示す。
【
図2】
図2は本発明の1つの実施形態における圧電素子に使用可能な芯線を示す概略図であって、
図2(a)は芯線の側面図を示し、
図2(b)は
図2(a)のB-B線に沿った断面図を示し、
図2(c)は
図2(b)の改変例を示す。
【
図3】
図3は、圧電素子からなるバルブインジケーターによってバルブの開閉を検知することができるバルブ開閉検知システムの第一実施形態の全体模式図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すバルブ開閉検知システムの第一実施形態で使用することができる流量制御バルブの縦断面を含む概略構成図である。
【
図5】
図5は、圧電素子からなるバルブインジケーターによってバルブの開閉を検知することができるバルブ開閉検知システムの第二実施形態の全体模式図である。
【
図6】
図6は、圧電素子からなるバルブインジケーターによってバルブの開閉を検知することができるバルブ開閉検知システムの第三実施形態の全体模式図である。
【
図7】
図7は、圧電素子からなるバルブインジケーターによってバルブの開閉を検知することができるバルブ開閉検知システムの第四実施形態の全体模式図である。
【
図8】
図8は、圧電素子からなるバルブインジケーターによってバルブの開閉を検知することができるバルブ開閉検知システムの第五実施形態の全体模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述する。なお、添付の図面中、電極端子を黒丸にて模式的に示す。
【0019】
図1を参照して、本実施形態の圧電素子20は、樹脂線1に少なくとも1層の金属箔3が螺旋状に巻き付けられている芯線5と、芯線5を被覆する有機圧電体層7と、有機圧電体層7を被覆する導電体層9とを有し、場合により、導電体層9を被覆する絶縁体層11を更に有する。圧電素子20において、金属箔3および導電体層9が、それらの間に有機圧電体層7が介挿された電極としてそれぞれ機能する(
図1(b)参照)。かかる圧電素子20は、ケーブル状またはワイヤー状などと称され得る、全体として細長い線状の形態を有し、圧電素子全体として柔軟性を有するように構成される。圧電素子20において、芯線5、有機圧電層7、導電体層9、および存在する場合には絶縁体層11は、略同軸上に配置され得るが、本発明はかかる構成に限定されない。
【0020】
本実施形態の圧電素子20は以下のようにして製造され得る。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に使用可能な芯線5は、樹脂線1に少なくとも1層の金属箔3が螺旋状に巻き付けられた構成を有するものであればよい。芯線5は、かかる構成を有することにより、引っ張った場合に引張り応力が主として樹脂線1に作用して芯線5全体が伸長し得、好ましくは3%以上の引張伸度を示し得、比較的小さな曲率半径で曲げた場合(例えば、後述する柔軟性試験に付した場合)にも、芯線5に歪みが残留せず、優れた柔軟性を示す。また、芯線5は、かかる構成を有することにより、繰り返し曲げても導通が切断され難く(例えば、後述する耐屈曲性試験において5000回以上の繰り返し曲げに付しても導通を維持でき)、優れた耐屈曲性を示す。従って、かかる芯線5を用いた本実施形態の圧電素子20は、柔軟性および耐屈曲性に優れるという効果を奏し得る。
【0022】
樹脂線1は、樹脂材料から構成される全体として線状の部材であればよい。かかる樹脂材料の例としては、芳香族ポリアミド(アラミド、例えばパラ型アラミド、メタ型アラミド等)、脂肪族ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、および炭素繊維(例えばカーボンナノチューブ(CNT)等)からなる群より選択される少なくとも1種の材料が挙げられる。
【0023】
樹脂線1は、実質的に円形、楕円、矩形、多角形などの任意の断面形状を有し得、中空および中実のいずれであってもよく、単線、撚り線および編み線などであってもよい。樹脂線1の外形寸法D1(非円形断面を有する場合は断面の最大の外形寸法、円形断面を有する場合は外径、以下同様)は、特に限定されず、芯線5に所望される外形寸法および樹脂線1に巻き付けられる金属箔3の厚さ(2層以上の金属箔の場合には、それらの総厚さ)等を考慮して適宜選択され得る。樹脂線1の外形寸法D1は、例えば0.05~2mmであり得、特に1mm以下、より特に0.5mm以下であり得る。
【0024】
金属箔3は、金属材料から構成される箔状(または層状)の部材であればよい。金属材料としては、電極として機能するのに適した高い導電性を示す(従って、圧電素子全体として低い抵抗値を示すのに寄与する)任意の適切な金属材料を使用でき、単一の金属材料が使用されていても、複数の金属材料が使用されていても(例えば、ある金属材料の母材に他の金属材料のメッキが施されていても)よい。かかる金属材料の好ましい例としては、銅および銅含有合金(例えば銅錫合金、銅銀合金等)が挙げられ、例えば錫等のメッキを有していても、有していなくてもよい。これらは、高い導電性を示すうえ、銅が高い延性を示すことから機械的強度に優れ、圧電素子20の柔軟性および耐屈曲性を一層高めることができる。
【0025】
金属箔3は、金属箔の単層であっても、2層以上の金属箔が重ね合わされたもの(即ち、2層以上の金属箔の積層体)であってよい。後者の場合、樹脂線1に2層以上の金属箔が螺旋状に巻き付けられる。例えば、
図2(c)に示すように、金属箔3aおよび金属箔3bが重ね合わされて、樹脂線1に螺旋状に巻き付けられ得る。互いに隣接する二層の金属箔は、少なくとも部分的に重ね合わさっていればよく(
図2(c)参照)、例えば金属箔の幅の20%以上、特に40%以上で重ね合わさっていればよい。
【0026】
金属箔3として、2層以上の金属箔の積層体を使用する場合、例えば繰り返し曲げ等により、2層以上の金属箔のうちいずれかが破断しても、金属箔の積層体全体では導通が切断されることを回避できるため、圧電素子20が故障することをより効果的に防止できる。金属箔の層数は、例えば2~4層であり得、特に3層以下、より特に2層であり得る。
【0027】
金属箔3の厚さおよび幅は、芯線5に所望される外形寸法、柔軟性および耐屈曲性等を考慮して適宜選択され得る。樹脂線1の外形寸法D1に対する金属箔3の厚さの割合は、例えば0.4~100%であり得、金属箔3の厚さは、例えば6~100μmであり得、特に30μm以下、より特に15μm以下であり得る。金属箔3の幅は、例えば0.02~2mmであり得、特に1mm以下、より特に0.5mm以下であり得る。なお、金属箔3の厚さは、1層の金属箔が使用される場合には、その厚さを言い、2層以上の金属箔が重ね合わされて使用される場合には、それらの総厚さを言うものとする。金属箔3の幅は、樹脂線1に螺旋状に巻き付けられ得る金属箔3の長手方向に沿った中心線に対して垂直な方向における寸法(または金属箔3の長手方向に沿った両側部間の最短距離)を言うものとする。2層以上の金属箔が重ね合わされて使用される場合、各金属箔の厚さおよび幅は互いに同じであっても、異なっていてもよいが、典型的には同じであり得る。
【0028】
芯線5において、樹脂線1に少なくとも1層の金属箔3が螺旋状に、好ましくは一定の螺旋ピッチPで巻き付けられ、重ね巻きされていない。螺旋ピッチPの寸法は、金属箔3の幅より大きければよく、特に限定されない。芯線5(または圧電素子20)に応力が作用していない状態において、樹脂線1の外形寸法D1に対する螺旋ピッチPの割合は、例えば2~4700%、特に100~500%であり得、かかる範囲において、芯線5ひいては圧電素子20の柔軟性および耐屈曲性を一層高めることができる。螺旋ピッチPは、例えば0.03mm~2.35mm、特に0.05~0.6mmであり得る。
【0029】
芯線5において、樹脂線1に少なくとも1層の金属箔3が螺旋状にギャップ巻されていることが好ましい。「ギャップ巻」とは、間隔巻きとも呼ばれ、
図1~2に示すように、樹脂線1に金属箔3を螺旋状に巻き付ける際に、金属箔3にギャップG(
図2(a)参照)を設けて巻き付けることを意味する。ギャップGは、樹脂線1の露出部に一致し、ギャップGの寸法は樹脂線1の露出部に基づいて計測され得る(特に、2層以上の金属箔が重ね合わされて使用され、かつこれら金属箔が互いにずれている場合に、かかる計測方法が適用される)。芯線5(または圧電素子20)に応力が作用していない状態において、螺旋ピッチPに対するギャップGの割合は、例えば0.4~50%、特に5~40%であり得、かかる範囲において、芯線5ひいては圧電素子20の柔軟性および耐屈曲性を一層高めることができる。ギャップGは、例えば0.01~0.35mm、特に0.1mm以下であり得る。
【0030】
芯線5の外形寸法D
2(
図2(b)に示すように非円形断面を有する場合は断面の最大の外形寸法、円形断面を有する場合は外径、以下同様)は、特に限定されず、圧電素子20に求められる仕様に応じて様々であり得る。芯線5は、極めて細くすることが可能であり、その外径寸法D
2は、例えば0.05~1.5mmであり得、特に1.0mm以下、より特に0.5mm以下、より一層特に0.3mm以下であり得る。
【0031】
再び
図1を参照して、芯線5を有機圧電体層7により被覆する。有機圧電体層7は、芯線5の金属箔3と導電体層9との間に、これらが互いに接触しないように設けられ、かつ、好ましくは金属箔3と密着して設けられる。
【0032】
有機圧電体層7は、有機圧電体として既知の任意の材料から構成され得る。有機圧電体は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスで代表される無機圧電体に比べて高い耐衝撃性および耐屈曲性を有する。有機圧電体層7を成す材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン系共重合体(フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体(P(VDF/TrFE))、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体(P(VDF/TeFE))を包含する)などを使用してよい。このうち、有機圧電体層7は、P(VDF/TrFE)およびP(VDF/TeFE)から成る群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0033】
有機圧電体層7の厚さは、特に限定されず、圧電素子20に所望される圧電特性(正圧電効果および/または逆圧電効果)、柔軟性および耐屈曲性等を考慮して適宜選択され得る。有機圧電体層7の厚さは、例えば1~200μmであり得、特に100μm以下、より特に50μm以下であり得る。
【0034】
有機圧電体層7を成す材料は、実際に使用する材料に応じて、圧電性を発現するために必要な処理、例えば延伸および/または分極処理などが、芯線5を被覆する前、被覆形成している間およびその後の任意の適切なタイミングで施され得る。
【0035】
例えば、有機圧電体層7を成す材料としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を用いる場合、有機圧電体層7は次のようにして形成され得る。PVDFは、α、β、γの3種の結晶構造をとり得、通常は、エネルギー的に最も安定なα型であり得るが、α型の結晶構造を多く含むPVDFを、例えば一軸延伸することにより、β型の結晶構造を多く含むPVDFに変換することができる。β型の結晶構造を多く含むPVDFは、強誘電性を示し、これを分極処理に付すことによって、双極子が整列し、圧電性を示すものとなる。よって、PVDFフィルムを一軸延伸して成る延伸PVDFフィルムを芯線5の周囲に隙間無く巻き付け(好ましくは重ね巻きし)、その後、例えばコロナ放電などの分極処理に付すことによって、圧電性を示すPVDF層を得ることができ、この結果、芯線5を有機圧電体層(より詳細にはPVDF層)7で被覆することができる。
【0036】
また例えば、有機圧電体層7を成す材料としてフッ化ビニリデン系共重合体を用いる場合、有機圧電体層7は次のようにして形成され得る。フッ化ビニリデン系共重合体、特にP(VDF/TrFE)およびP(VDF/TeFE)は、PVDFよりもβ型結晶構造を多く含み得る。よって、かかるフッ化ビニリデン系共重合体は、延伸なしに、分極処理を施すだけで、芯線5を有機圧電体層7で被覆した巻線7を容易に作製することができる。具体的には、下記の溶媒コーティング法または溶融押出法により有機圧電体層7を形成することができる。
【0037】
溶媒コーティング法では、まず、フッ化ビニリデン系共重合体を溶媒に溶解または分散させた樹脂液を調製し、この樹脂液を芯線5の表面に適用(例えば塗布)し、これを加熱して溶媒を実質的に除去してフッ化ビニリデン系共重合体層を得、その後、例えばコロナ放電などの分極処理に付すことによって、圧電性を示すフッ化ビニリデン系共重合体層を得ることができ、この結果、芯線5を有機圧電体層(より詳細にはフッ化ビニリデン系共重合体層)7で被覆することができる。溶媒には、ケトン系溶媒(例えばメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル)、エーテル系溶媒(例えばテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン)、アミド系溶媒(例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド)、ピロリドン系溶媒(例えばN-メチルピロリドン)などを使用できる。加熱温度は、使用する溶媒に応じて様々であり得るが、例えば80~180℃であり得る。
【0038】
溶融押出法では、まず、例えばペレット状のフッ化ビニリデン共重合体を加熱溶融して溶融樹脂を得る。加熱温度は、使用するフッ化ビニリデン共重合体の融点以上であればよいが、例えば120~250℃であり得る。この溶融樹脂を芯線5の表面に適用(例えばその周囲に押出被覆)してフッ化ビニリデン系共重合体層を得、その後、例えばコロナ放電などの分極処理に付すことによって、圧電性を示すフッ化ビニリデン系共重合体層を得ることができ、この結果、芯線5を有機圧電体層(より詳細にはフッ化ビニリデン系共重合体層)7で被覆することができる。
【0039】
PVDFおよび/またはフッ化ビニリデン系共重合体を用いた有機圧電体層7は、例えば85℃以上の高い耐熱性を示すので好ましい。PVDFおよびフッ化ビニリデン系共重合体の分子量は特に限定されない。フッ化ビニリデン系共重合体は、フッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンと共重合可能な1種またはそれ以上のフッ素系モノマー(以下、単に他のフッ素系モノマーとも言う)との共重合体である。他のフッ素系モノマーは、トリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの一方または双方であり得る。フッ化ビニリデン系共重合体において、フッ化ビニリデンに由来するユニットは、50モル%以上であり得、好ましくは60モル%以上であり、他のフッ素系モノマーに由来するユニットとフッ化ビニリデンに由来するユニットとのモル比は、適宜選択され得る。
【0040】
しかしながら、有機圧電体層7を成す材料は、上記で詳述した材料に限定されず、任意の適切な他の成分(例えば圧電セラミックス等の添加剤)を例えば比較的少量で更に含んでいてもよく、あるいは、他の既知の圧電性を示す有機材料を用いてもよい。
【0041】
かかる有機圧電体層7を導電体層9により被覆する。導電体層9は、有機圧電体層7を少なくとも部分的に被覆するように設けられ、好ましくは有機圧電体層7と密着して設けられる。
【0042】
導電体層9は、少なくとも有機圧電体層7に接触する表面が導電性を示す材料から構成される可撓性部材であればよい。導電体層9には、シールドとして既知の導電体層を利用してよく、例えば金属素線の編組シールドおよび横巻きシールドを使用できる。また、導電体層9は、有機圧電体層7に螺旋状に巻き付けられた少なくとも1層の金属箔であってもよい。この場合、有機圧電体層7に少なくとも1層の金属箔9’が螺旋状に、好ましくは一定の螺旋ピッチPで巻き付けられ、重ね巻きされていても、重ね巻きされていなくてもよく、更に、例えば
図1(c)に示すように、ギャップ巻されていてもよい。2層以上の金属箔が重ね合わされて使用される場合、互いに隣接する二層の金属箔は、少なくとも部分的に重ね合わさっていればよく、例えば金属箔の幅の20%以上、特に40%以上で重ね合わさっていればよい。金属素線や金属箔を構成する金属材料の好ましい例としては、銅および銅含有合金(例えば銅錫合金、銅銀合金等)が挙げられ、例えば錫等のメッキを有していても、有していなくてもよい。これらは、高い導電性を示すうえ、銅が高い延性を示すことから機械的強度に優れ、圧電素子20の柔軟性および耐屈曲性を一層高めることができる。
【0043】
導電体層9の厚さは、特に限定されず、圧電素子20に所望される柔軟性および耐屈曲性等を考慮して適宜選択され得る。導電体層9の厚さは、例えば5~500μmであり得、特に200μm以下、より特に100μm以下であり得る。
【0044】
導電体層9の外形寸法は、圧電素子20が絶縁体層11を有しない場合の圧電素子20の外形寸法に一致し得、特に限定されないが、例えば0.05~2.2mmであり得、特に1.5mm以下、より特に1mm以下であり得る。
【0045】
更に、本実施形態に必須ではないが、かかる導電体層9を絶縁体層11により被覆してよい。絶縁体層11は、圧電素子20を電気的および/または物理的に保護するために設けられ得る。かかる絶縁体層11は、シース(または外被)としても理解され得る。
【0046】
絶縁体層11は、少なくとも表面が絶縁性を示す材料から構成される可撓性部材であればよい。絶縁体層11は、例えば、絶縁性素線(例えばナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ゴム、シリコーン、ウレタン、ポリアリレート、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド等の絶縁性材料から成る素線)の組紐であってよい。また、絶縁体層11は、導電体層9の周囲に絶縁性材料(例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィン、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、PVDF等)、ゴム等)を押出被覆することにより形成してもよい。
【0047】
絶縁体層11の厚さは、特に限定されず、圧電素子20に所望される柔軟性および耐屈曲性等を考慮して適宜選択され得る。絶縁体層11の厚さは、例えば10~1000μmであり得、特に700μm以下、より特に400μm以下であり得る。
【0048】
絶縁体層11の外形寸法は、圧電素子20が絶縁体層11を有する場合の圧電素子20の外形寸法に一致し得、特に限定されないが、例えば0.07~4.2mmであり得、特に1.5mm以下、より特に1mm以下であり得る。
【0049】
導電体層9と絶縁体層11との間には空気層が少なくとも部分的に存在していてよく、この場合、絶縁体層11を、ワイヤーストリッパー等で容易に除去して導電体層9を露出させて電極端子を取り出すことができる。
【0050】
以上のようにして本実施形態の圧電素子20を得ることができる。本実施形態の圧電素子20は、柔軟性および耐屈曲性に優れる。金属箔3および導電体層9は、電極として機能する(添付の図面中、電極端子を黒丸にて模式的に示す)。導電体層9は、グランドであってよく、その場合、シールドとしても機能し得る。
【0051】
以上、本発明の1つの実施形態における圧電素子について詳述したが、本実施形態は種々の改変が可能である。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
実施形態1にて
図1~2を参照して詳述した構成を有する圧電素子を下記の通り作製した。
【0053】
樹脂線1として、パラ型アラミド繊維からなる直径約15μmの素線50本を撚って構成されている直径約0.15mmの撚り線を使用し、この樹脂線1に、金属箔3として、錫メッキが施された銅錫合金から成る箔が2層積層された積層体であって、各箔の幅約0.17mmであり、積層体の総厚さ約0.012mmであるものをギャップ巻きして、芯線5を準備した。芯線5の外径は約0.17mmであり、ピッチPは約0.27mmであり、ギャップGは約0.08mmであった(G/P=約30%)。
【0054】
他方、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体33gをメチルエチルケトン67gに70℃に加温しながら溶解し、日本エマソン社製の超音波ホモジナイザー“BRANSON Digital Sonifire”で30分間攪拌して樹脂液を調製した。
【0055】
上記で準備した芯線5に、上記樹脂液をディップコーティング法で塗工し、150℃で2分間加熱して、メチルエチルケトンを気化させて除去して、芯線5の表面にフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体層を形成した。このフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体層を、芯線5をグランド電極として、直流高圧安定化電源(エレメント有限会社製)により直流電圧12kVを30秒間コロナ放電することにより、分極処理を施して、有機圧電体層7を得た。有機圧電体層7の厚さは、約40μmであった。
【0056】
次に、この有機圧電体層7の周囲を、導電体層9として、錫メッキが施された錫銅合金から成る箔の単層を螺旋状に巻き付けて(ギャップなしで)被覆した。導電体層9の厚さは、約0.012mmであった。
【0057】
そして、この導電体層9の周囲を低密度ポリエチレンにより押出被覆し、絶縁体層11を形成した。絶縁体層11の厚さは約200μmであった。絶縁体層11の外径(すなわち、圧電素子20の外径)は、約0.67mmであった。
【0058】
以上のようにして本実施例の圧電素子20を作製した。
【0059】
(実施例2)
樹脂線1として、パラ型アラミド繊維からなる直径約14μmの素線50本を撚って構成されている直径約0.14mmの撚り線を使用し、この樹脂線1に、金属箔3として、銅銀合金から成る箔が2層積層された積層体であって、各箔の幅約0.17mmであり、積層体の総厚さ約0.012mmであるものをギャップ巻きして、芯線5を準備した。芯線5の外径は約0.16mmであり、ピッチPは約0.34mmであり、ギャップGは約0.04mmであった(G/P=約12%)。
【0060】
上記で準備した芯線を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、圧電素子を作製した。
【0061】
(実施例3)
樹脂線1として、ポリエステルからなる直径約15μmの素線50本を撚って構成されている直径約0.15mmの撚り線を使用し、この樹脂線1に、金属箔3として、銅錫合金から成る箔の単層であって、箔の幅約0.27mmであり、厚さ約0.019mmであるものをギャップ巻きして、芯線5を準備した。芯線5の外径は約0.19mmであり、ピッチPは約0.23mmであり、ギャップGは約0.02mmであった(G/P=約9%)。
【0062】
上記で準備した芯線を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、圧電素子を作製した。
【0063】
(比較例1)
芯線として、表面に銀メッキを施したナイロン糸(外径約0.11mm、ミツフジ株式会社製、商品名:AGposs(登録商標)銀メッキ繊維(フィラメント)、70d/34f、但し、dはデニール、fはフィラメント本数を意味する)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、圧電素子を作製した。
【0064】
(比較例2)
芯線として、表面に銀メッキを施したナイロン糸(外径約0.16mm、ミツフジ株式会社製、商品名:AGposs(登録商標)銀メッキ繊維(フィラメント)、100d/34f)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、圧電素子を作製した。
【0065】
(比較例3)
芯線として、表面に黄銅メッキを施した高張力ピアノ線の単線(外径約0.05mm、日鉄住金SGワイヤ株式会社製、品名:SPWH)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、圧電素子を作製した。
【0066】
(比較例4)
芯線として、表面に銀メッキを施した銅錫合金からなる素線7本を撚って構成されている撚り線(外径約0.075mm)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、圧電素子を作製した。
【0067】
(比較例5)
芯線として、SUS316(JIS G4309)の単線(外径約0.06mm)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、圧電素子を作製した。
【0068】
(測定および評価)
実施例1~3および比較例1~5で作製した各圧電素子について、下記に従って、抵抗値および引張伸度を測定すると共に柔軟性試験および耐屈曲性試験に付して評価した。結果を表1に示す。
【0069】
・抵抗値測定
圧電素子から、芯線の金属箔(実施例)または金属部分(比較例)と、導電体層とを、それぞれ露出させて電極とし、テスター(株式会社カスタム製、デジタルマルチメータCDM-11D)を使用して、これら電極間に電圧を印加して抵抗値を測定する。圧電素子として実用に耐え得るには、抵抗値は低いほうがよく、具体的には、50Ω/m以下が好ましく、20Ω/m以下がより好ましい。
【0070】
・引張伸度測定
引張試験機(島津製作所製、型番:AGS-H)を使用して、JIS Z2241に準拠して、長さ約100mmに切り出した圧電素子の長手方向両端部をつかみ具でつかんで、10mm/minで引っ張って、破断したときの圧電素子の長さを測定し、試験前の圧電素子の長さに対する、破断したときの圧電素子の伸びの割合(%)を求める(引張伸度は、破断伸度と同義である)。圧電素子の柔軟性に寄与するには、引張伸度は大きいほうがよく、具体的には、3%以上が好ましい。
【0071】
・柔軟性試験
長尺の圧電素子を、内径10mmの輪の形態に交差させて曲げ、その輪がほどけないように交差部をできるだけ維持しながら、輪が縮小するように圧電素子の長手方向両端部を反対方向に引っ張る。その後、圧電素子(より詳細には芯線)に歪みが残留しているか否かを目視により観察して判定する。圧電素子として実用に耐え得るには、歪みが残留していないことが好ましい。
【0072】
・耐屈曲性試験
耐久試験機(ユアサシステム機器株式会社製、型番:DMLHB-P150)を使用して、荷重100gおよび速度60rpmで、圧電素子を±90°繰り返し屈曲させて、圧電素子の電極間の導通が切断されるまでの回数を測定した。圧電素子として実用に耐え得るには、5000回以上の繰り返し曲げに付しても導通を維持できることが好ましく、10000回以上の繰り返し曲げに付しても導通を維持できることがより好ましい。
【0073】
【0074】
表1から理解されるように、実施例1~3の圧電素子は、50Ω/m以下の低い抵抗値を示し、3%以上の引張伸度を示し、柔軟性試験に付した場合にも歪みが残留せず、優れた柔軟性を示した。これは、曲げ応力が主に芯線の樹脂線に作用し、金属箔には直接作用しなかったため、樹脂線の弾性変形により、変形が生じても、元の状態に戻ることができたためであると考えられる。また、実施例1~3の圧電素子は、耐屈曲性試験において5000回以上の繰り返し曲げに付しても導通を維持でき、優れた耐屈曲性を示した。特に、実施例1~2の圧電素子は、耐屈曲性試験において15000回以上の繰り返し曲げに付しても導通を維持でき、極めて優れた耐屈曲性を示した。これは、芯線に2層以上の金属箔の積層体を使用したため、繰り返し曲げにより、2層の金属箔のうちいずれかが破断しても、金属箔の積層体全体では導通が切断されることを回避できたためであると考えられる。他方、比較例1~2の圧電素子は、抵抗値が高くて実用に適さなかった。比較例3~5の圧電素子は、引張伸度が3%未満であり、柔軟性試験において芯線に歪みが残留した。歪みが残留したのは、曲げ応力が芯線の金属部分に直接作用し、金属の塑性変形が生じて、元の状態に戻れなくなったためであると考えられる。また、比較例3~5の圧電素子は、耐屈曲性試験において、5000回未満の繰り返し曲げにより導通が切断された。これは、芯線の金属部分に曲げ応力が直接作用し、金属の塑性変形の蓄積により容易に破断されたためであると考えられる。
【0075】
前記のように構成される圧電素子からなるバルブインジケーターによってバルブの開閉を検知することができるバルブ開閉検知システムの実施形態について、以下に説明する。
【0076】
(第一実施形態)
図3の全体模式図に示すように、第一実施形態のバルブ開閉検知システム21は、流体が流れる流路22と、その流路22内を流れる流体の圧力を検知する圧力センサ23と、その流路22内を流れる流体の温度を検知する温度センサ24と、その流路22内を流れる流体の流量を測定する流量計25と、その流路22内を流れる流体の流量を制御する流量制御バルブ26と、その流量制御バルブ26の開閉を検知することができる圧電素子からなるバルブインジケーター27と、圧力センサ23、温度センサ24、流量計25および流量制御バルブ26の作動を制御・監視・演算する機能を備えたコントローラ28とを備えている。29は半導体の製造において使用されるシリコンウエハである。流量制御バルブ26は配線26aによってコントローラ28に接続され、バルブインジケーター27は配線27aによってコントローラ28に接続されている。
図3に示すバルブ開閉検知システム21の流路22内を流れる純水またはエッチング処理用の薬液は、流量制御バルブ26によって適切な流量に制御された後、シリコンウエハ29に吹き付けられる。
【0077】
半導体の製造において、シリコンウエハの洗浄用の純水やエッチング処理用の薬液等の流体には極めて高い清浄度が求められる。具体的には、半導体製造における大規模集積化、加工の微細化が進み、国際半導体技術ロードマップ(ITRS)において、2015年に32nmプロセスとなることが定められている。プロセスで表される数字(32nm)は、MPUにおける最下層の最も狭い配線のピッチ(線幅+線間隔)の半分(ハーフピッチ)として定義されている。このように配線幅が定められる中にあっては、半導体製造工程内における流体の流通経路への汚れや微細なゴミ(パーティクル)の混入は、製品の歩留まりに大きな影響を与える。パーティクルは、配線ピッチの4分の1(2015年のプロセスの場合、8nm)以下とする必要があることから、流体の清浄度を維持しながら流通させる部材は大きな意味を持つ。
【0078】
従って、流路22内を半導体の製造において使用されるシリコンウエハの洗浄用の純水やエッチング処理用の薬液等の流体が流れる場合、流路22はもちろん、圧力センサ23、温度センサ24、流量計25、流量制御バルブ26およびバルブインジケーター27は、それら純水や薬液の浸食に耐える耐薬品性素材(腐食性薬液の浸食に耐える素材)で形成されていることが必要である。例えば、この耐薬品性素材としては、耐酸性、耐アルカリ性及び耐有機溶剤性に優れているPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂が好ましい。
【0079】
図4は、
図3に示すバルブ開閉検知システムの一実施形態で使用することができる流量制御バルブの縦断面を含む概略構成図である。
図4において、31はダイアフラム、32はバルブブロック、33はピエゾアクチュエータ、34はピエゾアクチュエータ33の入出力端である。この入出力端34はダイアフラム31に接続されている。バルブブロック32の上流側部分32a内に形成された一方の流路(
図4の右方への矢示)に流入した流体を、ピエゾアクチュエータ33の入出力端34から受ける微小圧力によってダイアフラム31が伸縮すると、バルブブロック32の上流側部分32a内に形成された流路(
図4の右方への矢示)から、バルブブロック32の内側面とダイアフラム31の内側面との間隙を経て、バルブブロック32の下流側部分32b内に形成された流路(
図4の右方ヘの矢示)から当該流体を排出することができる。
【0080】
図4において、ダイアフラム31の周縁部とバルブブロック32の上端面とが溶着されて一体化し(
図4のCで示す小さな円で囲んだ箇所参照)、当該溶着部のダイアフラム31の内周面とバルブブロック32の内周面との間に段差及び隙間がなく、ダイアフラム31の内周面とバルブブロック32の内周面が面一であるから、溶着箇所に異物は発生せず、異物が溶着箇所に蓄積せず、滞留することもなく、被制御流体の高度な清浄度を維持することができる。
【0081】
次に、
図4に示す流量制御バルブの動作について説明する。
【0082】
(1)初期パージ
流量制御を始める前に、
図4に示す流路を含む全流路に純水を流して洗浄する。
(2)流量制御
図4はノーマルクローズタイプの場合の流量制御を示している。図示しない電極と
図4に示すピエゾアクチュエータ33を接続し、上記電極に電圧を印加することによりピエゾアクチュエータ33内部に電界を発生させ、これによりピエゾアクチュエータ33の入出力端34をピエゾアクチュエータ33に向かって僅かに引き込み、入出力端34を介してダイアフラム31とバルブブロック32内部の突起部32cおよびバルブブロック32の下流側部分32bとのあいだに微小間隙を生じて、バルブブロック32の上流側部分32aからバルブブロック32の下流側部分32bへ流体が流れるようにする。すなわち、ノーマルクローズタイプの場合を示す
図4において、入出力端34がピエゾアクチュエータ33に向かって僅かに引き込まれることによって、ダイアフラム31とバルブブロック32内部の突起部32cおよびバルブブロック32の下流側部分32bとのあいだに微小間隙が生じる。なお、ピエゾアクチュエータ33内には、入出力端34をピエゾアクチュエータ33から外方に向かって伸長させようとするためのスプリングが挿入されているので、入出力端34をピエゾアクチュエータ33に向かって引き込むようにするためには、このスプリング力に打ち勝つ必要がある。従って、ピエゾアクチュエータ33内部に発生した電界強度を増減することにより、微小間隙を流れる流体流量を調整することができる。ピエゾアクチュエータ33内部に発生した電界強度が上記スプリング力よりも小さくなれば、入出力端34は元の位置に戻ろうとするのでダイアフラム31とバルブブロック32内部の突起部32cおよびバルブブロック32の下流側部分32bとのあいだに微小間隙は形成されず、流体の流路は閉じられるので、バルブブロック32の上流側部分32aからバルブブロック32の下流側部分32bへ流体は流れない。
【0083】
ノーマルオープンタイプの場合の流量制御は下記のように行うことができる。ノーマルオープンタイプの場合は、
図4において、ダイアフラム31とバルブブロック32内部の突起部32cおよびバルブブロック32の下流側部分32bとのあいだに微小間隙がある。そこで、図示しない電極と
図4に示すピエゾアクチュエータ33を接続し、上記電極に電圧を印加することによりピエゾアクチュエータ33内部に電界を発生させ、これによりピエゾアクチュエータ33の入出力端34が伸長し、入出力端34を介してダイアフラム31とバルブブロック32内部の突起部32cおよびバルブブロック32の下流側部分32bとのあいだの微小間隙が閉じられて(
図4に示すように)、バルブブロック32の上流側部分32aからバルブブロック32の下流側部分32bへ流体は流れない。なお、ピエゾアクチュエータ33内には、入出力端34をピエゾアクチュエータ33に向かって引き戻そうとするためのスプリングが挿入されているので、入出力端34が伸張するためには、このスプリング力に打ち勝つ必要がある。従って、ピエゾアクチュエータ33内部に発生した電界強度がこのスプリング力よりも小さくなれば、入出力端34は元の位置に戻ろうとするので、ダイアフラム31とバルブブロック32内部の突起部32cおよびバルブブロック32の下流側部分32bとのあいだに微小間隙が生じて、バルブブロック32の上流側部分32aからバルブブロック32の下流側部分32bへ流体が流れる。従って、ピエゾアクチュエータ33内部に発生した電界強度を増減することにより、微小間隙を流れる流体流量を調整することができる。
【0084】
図4において、35は、段落0082と0083において説明した、ダイアフラム31の伸縮に伴う流量制御バルブの開閉動作によって昇降動作をする突起である。
図4に示す流量制御バルブを
図3の流量制御バルブ26として使用した場合、流量制御バルブ26が閉じられているときには、突起35はバルブインジケーター27に接触せず、流量制御バルブ26が開いているときには、突起35はバルブインジケーター27に接触する。このようにして、圧電素子に対する接触圧の変化によって当該圧電素子の両面の電極間に生じる電圧値によってバルブの開閉を検知することができる。
【0085】
圧電素子の両面の電極間に生じる電圧値によってバルブの開閉を検知するためには、電圧値に閾値を設け、圧電素子の両面の電極間に生じる電圧値が前記閾値を超えたときにはバルブが開状態であると判別し、圧電素子の両面の電極間に生じる電圧値が前記閾値を超えないときにはバルブが閉状態であると判別する演算機能をコントローラ28は備えている。
【0086】
段落0082と0083において説明したように、流量制御バルブ26を開閉させた場合の
図3に示す開閉検知システムの動作について説明する。ノーマルクローズタイプの場合の流量制御を示す
図4において、バルブブロック32の上流側部分32aに流体を流さずに、ピエゾアクチュエータ33内部に発生した電界強度が上記スプリング力よりも小さければ、入出力端34は元の位置に戻ろうとするのでダイアフラム31とバルブブロック32内部の突起部32cおよびバルブブロック32の下流側部分32bとのあいだに微小間隙は形成されず、流体の流路は閉じられ、バルブブロック32の上流側部分32aからバルブブロック32の下流側部分32bへ流体は流れない。このとき、
図4に示す流量制御バルブの突起35はバルブインジケーター27に接触せず、コントローラ28によって算出された電圧値は0mVであり、閾値30mVを下回っていた。
【0087】
次に、バルブブロック32の上流側部分32aに液体を300ml/min流入させると、ピエゾアクチュエータ33内部に発生した電界強度が上記スプリング力よりも大きくなって、ピエゾアクチュエータ33の入出力端34をピエゾアクチュエータ33に向かって僅かに引き込み、入出力端34を介してダイアフラム31とバルブブロック32内部の突起部32cおよびバルブブロック32の下流側部分32bとのあいだに微小間隙を生じて、バルブブロック32の上流側部分32aからバルブブロック32の下流側部分32bへ流体が流れた。このとき、
図4に示す流量制御バルブの突起35はバルブインジケーター27に接触し、コントローラ28によって算出された電圧値は170mVであり、閾値30mVを上回っていた。
【0088】
本発明は、特別な操作を必要とせず、変形や損傷の恐れがなく、正確にバルブの開閉を検知することができるバルブインジケーターを提供することを目的としているので、有機圧電体層によって圧電素子を構成することは好ましく、例えば、強誘電体高分子であるフッ素系化合物を使用することができる。圧電材料の特性を表す指標として、圧電歪定数d、電圧出力定数g及び圧電応力定数e、hがあるが、特に、電圧出力係数gは、「生じた電界の強さ」を「与えられた応力」で除することによって得られるものであり、電圧出力定数gが高い有機圧電体層を採用することは本発明の目的を達成する上において有利である。例えば、無極性α型のポリフッ化ビニリデンを一軸延伸し、一軸延伸後に分極処理を施すことによって得られるβ型ポリフッ化ビニリデンのg31電圧出力定数は0.174(V・m/N)、フッ化ビニリデンが55%で残部がトリフルオロエチレンである共重合体のg31電圧出力定数は0.160(V・m/N)、フッ化ビニリデンが75%で残部がトリフルオロエチレンである共重合体のg31電圧出力定数は0.110(V・m/N)であるが、水晶のg31電圧出力定数は0.050(V・m/N)であり、チタン酸ジルコン酸鉛のg31電圧出力定数は0.010(V・m/N)であり、上記フッ素系化合物は、本発明の有機圧電体層形成材料として好ましい。上記の電圧出力定数gの添え字31は、「応力が1軸方向、電極面の法線方向が3軸方向であること」を意味する。
【0089】
図3に示すバルブ開閉検知システム21を半導体の製造装置に適用して、シリコンウエハの洗浄用の純水やエッチング処理用の薬液等の流量を制御した場合、流路22を経てシリコンウエハ29に吹き付けられる薬液の一部が揮発して、可燃性ガスが室内雰囲気に含有されることがある。そのとき、流量制御バルブ26の開閉を検知するための電気エネルギー量が大きいと、可燃性ガスが引火して、最悪の場合、爆発に至ることがある。ところが、圧電素子は、正圧電効果(圧電素子に加えられた外力を電圧に変換する機能)を発揮するときのエネルギー量は極めて小さいので、以下に説明するように、そのような爆発事故が起こることはない。
【0090】
いま、圧電素子の開閉検知センサのインピーダンスRを1MΩ~1GΩとし、発生電圧Vを170mVとすると、圧電素子の正圧電効果発揮時のエネルギーW(J/秒)=(V×V)/Rより、W=2.89×10
-11~10
-8(J/秒)となる。エネルギー量の大きい方をmJに換算すると、2.89×10
-5(mJ/秒)になる。開閉検知センサの検知時間である約250ミリ秒のあいだ同上電圧を発生したと仮定すると、0.723×10
-5(mJ)のエネルギーが発生することになる。例えば、
図3の流路22内を流れる流体にイソプロピルアルコールが含まれている場合、イソプロピルアルコールの引火点は11.7℃であり、非常に引火しやすいので危険である。しかし、その最小着火エネルギーは0.51mJであるから、たとえ、イソプロピルアルコールの一部が揮発して室内雰囲気に含有されたとしても、イソプロピルアルコールが着火することはない。
【0091】
(第二実施形態)
図5の全体模式図に示すように、第二実施形態のバルブ開閉検知システム41は、
図3に示す第一実施形態のバルブ開閉検知システム21と同様の働きをする、流路42と、圧力センサ43と、温度センサ44と、流量計45と、流量制御バルブ46と、バルブインジケーター47と、コントローラ48と、シリコンウエハ49とを備えている。第二実施形態のバルブ開閉検知システム41は、流量制御バルブ46の下流側に開閉バルブ46aと、第二バルブインジケーター47aとを備えている点が、第一実施形態のバルブ開閉検知システム21と異なる。このように、流路42に対して直列方向に複数のバルブとバルブインジケーターとを備えれば、上流側の流量制御バルブ46とバルブインジケーター47の組合せにより流量制御を検知し、下流側の開閉バルブ46aと第二バルブインジケーター47aの組合せによりバルブの開閉を検知することができるという効果がある。一般的に、流量制御構造としてニードルバルブが採用されることが多く、流路中の流体の流れを止めるためにはニードルバルブのテーパ部が流路を形成するオリフイス部に接触するのでパーティクルが発生しやすい。従って、下流側にパーティクルが発生しにくい構造の開閉バルブを配置する。上流側に開閉バルブを配置すると、開閉バルブの全閉時に流路を流れる純水や薬液等の流体中のパーティクルが、ニードルバルブのテーパ部と流路を形成する配管とのあいだに蓄積しやすくなる。そこで、上流側に流量制御バルブを配置し、下流側に開閉バルブを配置するのが好ましい。さらに、必要に応じて、開閉バルブ46aの下流側に、第二開閉バルブと第三バルブインジケーターの組合せを備えることもできるし、第三開閉バルブと第四バルブインジケーターの組合せを備えることもできる。
【0092】
(第三実施形態)
図6の全体模式図に示すように、第三実施形態のバルブ開閉検知システム51は、
図3に示す第一実施形態のバルブ開閉検知システム21と同様の働きをする、流路52と、圧力センサ53と、温度センサ54と、流量計55と、流量制御バルブ56と、バルブインジケーター57と、コントローラ58と、シリコンウエハ59とを備えている。第三実施形態のバルブ開閉検知システム51は、流路52を迂回するように第一バイパス流路52aを設け、第一バイパス流路52aに第二流量制御バルブ56aと、第二バルブインジケーター57aとを備えている点が、第一実施形態のバルブ開閉検知システム21と異なる。このように、流路52に対して並列方向に流量制御バルブとバルブインジケーターとを備えれば、流路52に設けた流量制御バルブ56とバルブインジケーター57の組合せと、第一バイパス流路52aに設けた第二流量制御バルブ56aと第二バルブインジケーター57aの組合せにより、設定流量が異なる流量制御バルブの開閉を検知することができるという効果がある。さらに、必要に応じて、第一バイパス流路52aに加えて、流路52を迂回するように第二バイパス流路を設けたり、さらに第三バイパス流路を設けることによって、各バイパス流路に、流量制御バルブとバルブインジケーターの組合せを備えることもできる。
【0093】
(第四実施形態)
図7の全体模式図に示すように、第四実施形態のバルブ開閉検知システム61は、
図3に示す第一実施形態のバルブ開閉検知システム21と同様の働きをする、流路62と、圧力センサ63と、温度センサ64と、流量計65と、流量制御バルブ66と、バルブインジケーター67と、コントローラ68と、シリコンウエハ69とを備えている。第四実施形態のバルブ開閉検知システム61は、流量制御バルブ66の下流側に第二流量制御バルブ66aと、第二バルブインジケーター67aとを備え、流路62を迂回するように第一バイパス流路62aを設け、第一バイパス流路62aに第三流量制御バルブ66bと、第三バルブインジケーター67bとを備えている点が、第一実施形態のバルブ開閉検知システム21と異なる。このように、流路62に対して直列方向及び並列方向に複数の流量制御バルブとバルブインジケーターとを備えれば、上流側の流量制御バルブ66とバルブインジケーター67の組合せにより主流路の流量制御バルブの開閉を検知し、下流側の第二流量制御バルブ66aと第二バルブインジケーター67aの組合せと、第一バイパス流路62aに設けた第三流量制御バルブ66bと第三バルブインジケーター67bの組合せにより、設定流量が異なる流量制御バルブの開閉を検知することができるという効果がある。
【0094】
(第五実施形態)
図8の全体模式図に示すように、第五実施形態のバルブ開閉検知システム71は、
図3に示す第一実施形態のバルブ開閉検知システム21と同様の働きをする、流路72と、圧力センサ73と、温度センサ74と、流量計75と、コントローラ78と、シリコンウエハ79とを備えている。第五実施形態のバルブ開閉検知システム71は、流路72に流量制御バルブ76とバルブインジケーター77を設け、流路72を迂回するように第一バイパス流路72aを設け、第一バイパス流路72aに第二流量制御バルブ76aと、第二バルブインジケーター77aとを備え、流量制御バルブ76の下流側に開閉バルブ76bと、第三バルブインジケーター77bとを備えている点が、第一実施形態のバルブ開閉検知システム21と異なる。このように、流路72に対して直列方向及び並列方向に複数のバルブとバルブインジケーターとを備えれば、上流側の流量制御バルブ76とバルブインジケーター77の組合せと、第一バイパス流路72aに設けた第二流量制御バルブ76aと第二バルブインジケーター77aの組合せにより、設定流量が異なる流量制御バルブの開閉を検知し、下流側の開閉バルブ76bと第三バルブインジケーター77bの組合せによりバルブの開閉を検知することができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のバルブインジケーターは、各種液体や気体の流量を制御するバルブの開閉を検知する器具として様々な工業用途において利用され得る。
【符号の説明】
【0096】
1 樹脂線
3、3a、3b 金属箔
5 芯線
7 有機圧電体層
9 導電体層
11 絶縁体層
20 圧電素子
21 バルブ開閉検知システム
22、42、52、62、72 流路
23、43、53、63、73 圧力センサ
24、44、54、64、74 温度センサ
25、45、55、65,75 流量計
26、46、56、66、76 流量制御バルブ
27、47、57、67、77 バルブインジケーター
28、48、58、68、78 コントローラ
29、49、59、69、79 シリコンウエハ
31 ダイアフラム
32 バルブブロック
32a 上流側部分
32b 下流側部分
33 ピエゾアクチュエータ
34 ピエゾアクチュエータ33の入出力端
35 突起
46a、76b 開閉バルブ
56a、66a 76a 第二流量制御バルブ
47a、57a、67a、77a 第二バルブインジケーター
52a、62a、72a 第一バイパス流路
66b 第三流量制御バルブ
67b、77b 第三バルブインジケーター
D1、D2 外形寸法
P 螺旋ピッチ
G ギャップ
【要約】
特別な操作を必要とせず、変形や損傷の恐れがなく、正確にバルブの開閉を検知することができるバルブインジケーターを提供する。樹脂線に少なくとも1層の金属箔が螺旋状に巻き付けられている芯線と、前記芯線を被覆する有機圧電体層と、前記有機圧電体層を被覆する導電体層とを含み、前記金属箔および前記導電体層が、それらの間に前記有機圧電体層が介挿された電極としてそれぞれ機能する圧電素子からなるバルブインジケーターである。