(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】延線対応型緊線金車
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20240624BHJP
H02G 1/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G1/04
(21)【出願番号】P 2020157658
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】505268677
【氏名又は名称】株式会社九建
(73)【特許権者】
【識別番号】000139702
【氏名又は名称】株式会社安田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 眞二
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 玲朗
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-260620(JP,A)
【文献】特開2015-180161(JP,A)
【文献】特開2012-50239(JP,A)
【文献】実開平3-60808(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に多数のシューを有する無限軌道体からなるクローラ型金車において、
当該金車の両側のフレームの縁から前記無限軌道体の円形内周部の中心部まで延びた奥端部を有する切り欠き状のガイド溝を設け、当該ガイド溝の奥端部脇に複数のピン穴を設けた金車本体と、
スプロケットを固定した回転軸を支持体に貫通させ、当該支持体の外側に突出した前記回転軸にウオームホイールを固定し、当該ウオームホイールに噛み合うウオームを前記支持体の外側から突出した軸受体で支持し、当該軸受体から突出したウオームの外周断面を角型部とし、前記支持体の内側の複数箇所から前記ピン穴に嵌合自在なピンを突設し、前記回転軸の両端に回転軸より大径のノブを設け、少なくとも一方のノブは回転軸の軸方向に摺動、固定自在とした治具とから成り、
前記治具の一方のノブを外側に引っ張った状態で回転軸の両端を前記金車本体の各ガイド溝に入れ、回転軸が各ガイド溝の奥端部に達した際、前記支持体の各ピンを各ピン穴に入れた状態で前記スプロケットが前記無限軌道体の内周部に噛み合い、この状態で一方のノブを回転軸の中央部方向に摺動させて、
当該ノブを前記回転軸に固定させ、前記治具を金車本体に着脱自在に固定する構成としたことを特徴とする、延線対応型緊線金車。
【請求項2】
前記治具の回転軸の軸方向に摺動、固定自在なノブは、常時回転軸の中央方向に付勢されたバネを有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の延線対応型緊線金車。
【請求項3】
外側に多数のシューを有する無限軌道体からなるクローラ型金車において、
前記無限軌道体の内周内側に回転軸を設け、当該回転軸の両端を当該金車の両側のフレームに回転自在に支持させ、当該回転軸に、前記無限軌道体の内周と噛み合うスプロケットを固定し、
一方の前記フレームの外側に突出した回転軸にウオームホイールを固定し、
当該ウオームホイールの脇のフレームに第1軸受体を回転自在に設け、当該第1軸受体にウオームの一端を回転自在に支持し、当該ウオームの他端を自体の長孔内に摺動自在かつ回転自在に通して支持する第2軸受体を前記フレームに設け、
当該ウオームは、その他端を前記長孔内で摺動させることにより前記ウオームホイールに噛み合った状態と噛み合わない状態とに変化する構成とし、
当該第2軸受体の外側に突出するウオームの他端を断面角型部とし、前記ウオームは前記第1軸受体を中心に回転自在とし、当該ウオームの他端は前記ウオームホイールと噛み合った状態で第2軸受体に固定自在とした構成であることを特徴とする、延線対応型緊線金車。
【請求項4】
前記ウオームの断面角型部が、ウオームの他端に設けたウオームより大径のノブから成り、当該ノブの前記第2軸受体側に小径段部を有し、当該ノブはウオームの軸方向に摺動自在で、前記小径段部が第2軸受体の長孔に続く大径部に入るようバネにより付勢され、かつウオームの軸を中心とした回転が不能である構成としたことを特徴とする、請求項3に記載の延線対応型緊線金車。
【請求項5】
外側に多数のシューを有する無限軌道体からなるクローラ型金車において、
前記無限軌道体の内周内側に回転軸を設け、当該回転軸の両端を当該金車の両側のフレームに回転自在に支持させ、当該回転軸に、前記無限軌道体の内周と噛み合うスプロケットを固定し、
一方の前記フレームの外側に突出した回転軸にラチェット歯車を固定し、当該ラチェット歯車の外側に突出する回転軸の先端を断面角型部とし、
前記ラチェット歯車に係止するラチェット爪を前記フレームに回転自在に設け、当該ラチェット爪は軸の一側に間隔を空けて相対向する頂点に爪を夫々有し、前記軸の反対側に凹部を有する頂点を設け、前記フレームに前記ラチェット爪の凹部を有する頂点部を常時押す押圧部材を設け、
当該押圧部材の
尖端部が前記ラチェット爪の凹部を有する頂点部の一側を押圧して一方の爪が前記ラチェット歯車の歯に係止するか、前記凹部を有する頂点に押圧部材の尖端部が嵌合し、その状態でラチェット爪が固定され、各爪はラチェット歯車の歯に係止されない状態となる構成であることを特徴とする、延線対応型緊線金車。
【請求項6】
円形のホイールの中心に一体な回転軸を有する金車において、
前記回転軸の両端はフレームに回転自在に支持され、当該
回転軸の一端は前記フレームの一方の外側まで突出し、当該突出した回転軸の一端面にはスプライン孔を設け、この回転軸の一端脇のフレーム外面の複数箇所にピン穴を設けた金車本体と、
前記スプライン孔に嵌合自在なスプライン軸を一端に有する回転軸を支持体の貫通孔に通し、当該支持体の外側に突出する回転軸にウオームホイールを固定し、当該ウオームホイールと噛み合わせたウオームを前記支持体の外面から突出する軸受体に回転自在に支持させ、当該軸受体の外側に突出するウオームの一端を断面角型部とし、前記支持体の内面から、前記ピン穴に嵌合自在なピンを複数突出させた治具とから成り、
前記治具のスプライン軸を金車本体のスプライン孔に入れ、治具のピンを金車本体のピン穴に入れて治具を金車本体に固定自在とする構成としたことを特徴とする、延線対応型緊線金車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電線建設工事における緊線工事において懸垂鉄塔で使用する金車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記緊線工事は延線された電線を耐張鉄塔間で所定の張力で耐張がいし装置に取付け、その後懸垂鉄塔で懸垂装置に固定する工事である。懸垂鉄塔では電線を延線用の金車に載せた状態で耐張鉄塔の緊線を行った後、懸垂鉄塔の金車上の電線を懸垂がいし装置に取り付ける。この金車は一般に短径間側及び高低差のある箇所では高所側に傾く。ここで金車の真下になる位置と傾いて引っ張られたずれ長をクリッピングオフセットという。
【0003】
緊線工事は、金車で電線を支持した状態での電線の弛度状態を見ながらその弛度状態が予め定められている弛度状態に合っているか否かを確認しつつ、電線の張り上げを繰り返しながら行われる。その際前記クリッピングオフセットがあると弛度状態の確認にとって好ましくないので、電線の張り上げの都度金車の傾きを直して金車が垂直になるようにしなければならない。
【0004】
この様な金車の傾きの解消は、実工事ではがいし連が垂直になる位置を見つけるためセンチ単位で電線をずらしてマーキングするが、(1)都度ウインチで電線を持ち上げてクランプをずらす作業を繰り返し行う。(2)休工時や強風対策、電線の損傷防止などに使用される、電線を金車に固定する工具(藤井電工株式会社製ベルト式グリップ)のラチェット機能を利用し、電線を引っ張る。(3)作業員が金車を蹴るなどする。(4)懸垂鉄塔用緊線金車(
図18及び
図19参照)を使用する。
【0005】
上記従来の方法の(1)では懸垂鉄塔が中間1基の場合は、その場だけの作業で済むが、多数基の連続懸垂では一か所が動くと隣の張力も変化するため連携を取りながら行うものの、全基で簡単には合わず、都度鉄塔でウインチを巻いて電線を持ち上げる作業を繰り返さなければならない。また、上記(2)の場合は、緊線工事用として、取り付けに行かなくてはいけない。また、上記(3)の場合は、作業員の危険を伴い、また、その位置を保持しておくのが面倒である。また、上記(4)の場合は、上記懸垂鉄塔用緊線金車は延線機能を備えていないため、従来通りの金車により延線した後に、ヨークに取り付けた緊線金車50に電線を移し替える必要がある。また、
図18及び
図19に示す弛度調整金具51を使用し、緊線金車50のシュー50aの隙間にその金具51を入れてテコにより微調整するが、その作業に相当の力を要し、その位置を保持しておくのに労力を要する。なお、52は前記弛度調整金具51の支点となる箇所を支持するラッシングベルトを示す。
【0006】
この様に従来の方法では、労力や手間がかかる欠点があった。そこで、特許文献1に示す、フレーム体に取り付けた回転軸に固定されたホイールを備えて成る延線用の金車において、回転軸の一端に回動レバーの一端をクラッチにより選択的に固定連結可能として接続するとともに、この回動レバーの他端に、回転レバーを強制回動させるための作動体を接続し、当該作動体は遠隔で操作可能な電動式とし、延線方向に傾きが生じた際に、回動レバーを強制的に回動させてホイールを回転させることにより傾きを解消できるようにした金車が開発された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示すものは、作動体やクラッチが電動で動く構造のため、重量が重く、鉄塔に吊るすのには不向きである。また、構造も複雑で製造コストが高い等の欠点がある。
【0009】
そこで、この発明はこれらの問題点に着目して発明されたもので、ヨーク等に取り付けて延線作業ができ、電線を移し替えることなくそのまま緊線作業ができ、構造が簡単かつ軽量で、作業者の労力も少なくてすむ延線対応型緊線金車を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、外側に多数のシューを有する無限軌道体からなるクローラ型金車において、当該金車の両側のフレームの縁から前記無限軌道体の円形内周部の中心部まで延びた奥端部を有する切り欠き状のガイド溝を設け、当該ガイド溝の奥端部脇に複数のピン穴を設けた金車本体と、スプロケットを固定した回転軸を支持体に貫通させ、当該支持体の外側に突出した前記回転軸にウオームホイールを固定し、当該ウオームホイールに噛み合うウオームを前記支持体の外側から突出した軸受体で支持し、当該軸受体から突出したウオームの外周断面を角型部とし、前記支持体の内側の複数箇所から前記ピン穴に嵌合自在なピンを突設し、前記回転軸の両端に回転軸より大径のノブを設け、少なくとも一方のノブは回転軸の軸方向に摺動、固定自在とした治具とから成り、前記治具の一方のノブを外側に引っ張った状態で回転軸の両端を前記金車本体の各ガイド溝に入れ、回転軸が各ガイド溝の奥端部に達した際、前記支持体の各ピンを各ピン穴に入れた状態で前記スプロケットが前記無限軌道体の内周部に噛み合い、この状態で一方のノブを回転軸の中央部方向に摺動させて、当該ノブを前記回転軸に固定させ、前記治具を金車本体に着脱自在に固定する構成とした、延線対応型緊線金車とした。
【0011】
また、請求項2の発明は、前記治具の回転軸の軸方向に摺動、固定自在なノブは、常時回転軸の中央方向に付勢されたバネを有するものである、請求項1に記載の延線対応型緊線金車とした。
【0012】
また、請求項3の発明は、外側に多数のシューを有する無限軌道体からなるクローラ型金車において、前記無限軌道体の内周内側に回転軸を設け、当該回転軸の両端を当該金車の両側のフレームに回転自在に支持させ、当該回転軸に、前記無限軌道体の内周と噛み合うスプロケットを固定し、一方の前記フレームの外側に突出した回転軸にウオームホイールを固定し、当該ウオームホイールの脇のフレームに第1軸受体を回転自在に設け、当該第1軸受体にウオームの一端を回転自在に支持し、当該ウオームの他端を自体の長孔内に摺動自在かつ回転自在に通して支持する第2軸受体を前記フレームに設け、当該ウオームは、その他端を前記長孔内で摺動させることにより前記ウオームホイールに噛み合った状態と噛み合わない状態とに変化する構成とし、当該第2軸受体の外側に突出するウオームの他端を断面角型部とし、前記ウオームは前記第1軸受体を中心に回転自在とし、当該ウオームの他端は前記ウオームホイールと噛み合った状態で第2軸受体に固定自在とした構成である、延線対応型緊線金車とした。
【0013】
また、請求項4の発明は、前記ウオームの断面角型部が、ウオームの他端に設けたウオームより大径のノブから成り、当該ノブの前記第2軸受体側に小径段部を有し、当該ノブはウオームの軸方向に摺動自在で、前記小径段部が第2軸受体の長孔に続く大径部に入るようバネにより付勢され、かつウオームの軸を中心とした回転が不能である構成とした、請求項3に記載の延線対応型緊線金車とした。
【0014】
また、請求項5の発明は、外側に多数のシューを有する無限軌道体からなるクローラ型金車において、
前記無限軌道体の内周内側に回転軸を設け、当該回転軸の両端を当該金車の両側のフレームに回転自在に支持させ、当該回転軸に、前記無限軌道体の内周と噛み合うスプロケットを固定し、一方の前記フレームの外側に突出した回転軸にラチェット歯車を固定し、当該ラチェット歯車の外側に突出する回転軸の先端を断面角型部とし、前記ラチェット歯車に係止するラチェット爪を前記フレームに回転自在に設け、当該ラチェット爪は軸の一側に間隔を空けて相対向する頂点に爪を夫々有し、前記軸の反対側に凹部を有する頂点を設け、前記フレームに前記ラチェット爪の凹部を有する頂点部を常時押す押圧部材を設け、当該押圧部材の尖端部が前記ラチェット爪の凹部を有する頂点部の一側を押圧して一方の爪が前記ラチェット歯車の歯に係止するか、前記凹部を有する頂点に押圧部材の尖端部が嵌合し、その状態でラチェット爪が固定され、各爪はラチェット歯車の歯に係止されない状態となる構成である、延線対応型緊線金車とした。
【0015】
また、請求項6の発明は、円形のホイールの中心に一体な回転軸を有する金車において、前記回転軸の両端はフレームに回転自在に支持され、当該回転軸の一端は前記フレームの一方の外側まで突出し、当該突出した回転軸の一端面にはスプライン孔を設け、この回転軸の一端脇のフレーム外面の複数箇所にピン穴を設けた金車本体と、前記スプライン孔に嵌合自在なスプライン軸を一端に有する回転軸を支持体の貫通孔に通し、当該支持体の外側に突出する回転軸にウオームホイールを固定し、当該ウオームホイールと噛み合わせたウオームを前記支持体の外面から突出する軸受体に回転自在に支持させ、当該軸受体の外側に突出するウオームの一端を断面角型部とし、前記支持体の内面から、前記ピン穴に嵌合自在なピンを複数突出させた治具とから成り、前記治具のスプライン軸を金車本体のスプライン孔に入れ、治具のピンを金車本体のピン穴に入れて治具を金車本体に固定自在とする構成とした、延線対応型緊線金車とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1~6の発明によれば、ヨークに取り付けたまま延線作業ができるため、電線移し替える手間がなく、そのまま緊線作業ができ、作業時間の短縮が図れる。また、従来の金車にチェーン又はホイールを小さな力で動かす機構を付加的に取り付ける簡単な構造のため、製造コストを抑えることができる。さらに、前記チェーン又はホイールを小さな力で動かす機構は軽量のため、鉄塔の上で使用する金車には最適である。
【0017】
特に請求項1、2及び請求項6の発明は、金車本体と治具に分かれており、必要時に、金車に治具を容易に取り付けてチェーン又はホイールを動かす構成のため、作業が容易となる。また、治具は大掛かりなものではなく、スプロケット及びウオームセットを回転軸に取り付けたもので、小型かつ軽量のため作業者の鉄塔上への持ち運びに便利である。
【0018】
また、請求項2の発明によれば、作業者は回転軸の両端のノブを引っ張って治具の回転軸をガイド溝の端部に嵌め込み、そこで手をノブから外せば、治具を金車本体にワンタッチで取り付けることができる。
【0019】
また、請求項4の発明によれば、ウオームの一端のノブを外方に引っ張った状態で第1軸受体を中心にウオームを回動し、ウオームをウオームホイールに噛み合わせたり、外したりでき、また、ウオームがウオームホイールに噛み合った状態でノブの引張りを解くとウオームの他端を第2軸受体に固定できるため、作業が容易である。
【0020】
また、請求項5の発明によれば、ラチェット機構のラチェット爪の一つの爪をラチェット歯車に係止させれば、一方向にはラチェット歯車が回転し、チェーンも回転するが、反対方向にはラチェット歯車は動かず、チェーンも回転しない。また、押圧部材でラチェット爪の一つの頂部の凹部を押さえた状態ではラチェット爪の各爪はラチェット歯車に係止されず、ラチェット歯車はフリーとなり、延線可能となる。この様に延線作業に続く緊線作業を作業者は簡単迅速に行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施の形態例1の延線対応型緊線金車の治具を取り付けた状態の正面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の延線対応型緊線金車の治具を取った正面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の延線対応型緊線金車の治具を取った側面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の延線対応型緊線金車に取り付け自在な治具を示す図で、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の延線対応型緊線金車のシューを接続したチェーンと治具のスプロケットの係止状態を示す説明図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の延線対応型緊線金車に治具を取り付ける途中の状態の側面断面図である。
【
図7】この発明の実施の形態例2の延線対応型緊線金車の一部断面正面図である。
【
図8】この発明の実施の形態例2の延線対応型緊線金車のウオームの第2軸受体を示す図であり、(a)図は第2軸受け体の拡大正面断面図、(b)図は第2軸受け体の拡大側面図である。
【
図9】この発明の実施の形態例3の延線対応型緊線金車の正面図である。
【
図10】この発明の実施の形態例3の延線対応型緊線金車の側面図である。
【
図11】この発明の実施の形態例3の延線対応型緊線金車のラチェット機構の使用時の要部拡大正面図である。
【
図12】この発明の実施の形態例3の延線対応型緊線金車のラチェット機構の不使用時の要部拡大正面図である。
【
図13】この発明の実施の形態例4の延線対応型緊線金車の治具を外した正面図である。
【
図14】この発明の実施の形態例4の延線対応型緊線金車の治具を示す図で、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。
【
図15】この発明の実施の形態例4の延線対応型緊線金車の治具を外した一部断面側面図である。
【
図16】この発明の実施の形態例4の延線対応型緊線金車の治具を取り付けた正面図である。
【
図17】この発明の実施の形態例4の延線対応型緊線金車の治具を取り付けた一部断面側面図である。
【
図18】従来の緊線金車に弛度調整金具を使用した状態の正面図である。
【
図19】従来の緊線金車に弛度調整金具を使用した状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1の延線対応型緊線金車を
図1~6に基づいて説明する。
【0023】
この実施の形態例1の延線対応型緊線金車Aは、
図1に示すように、クローラ型の金車本体1と当該金車本体1に着脱自在な治具2から成る。クローラ型の金車本体1は外周に多数のシュー1aを有するチェーン1bから成る無限軌道体を備えている。また、当該金車本体1は正面及び背面にフレーム1cを有している。そして、吊り部材1dの下端がこれらの正面及び背面のフレーム1cに回転自在に取り付けられている。また、
図2に示すように、当該金車本体1の正面及び背面のフレーム1cの内周縁から前記無限軌道体の一方の内周円形部の中心部まで延びた奥端部3aを有する切り欠き状のガイド溝3を設け、当該ガイド溝3の一端脇に2個のピン穴4、4を設けている。
【0024】
前記治具2は、
図4に示すように、スプロケット5を一端に固定した回転軸6を板状の支持体7に貫通させ、当該支持体7の外側に突出した前記回転軸6の他端にウオームホイール8を固定し、当該ウオームホイール8にかみ合うウオーム9を前記支持体7の外側から突出した2つの軸受10、10で支持し、当該軸受10の一方から突出したウオーム9の一端の外周断面を角型とした角型部11を設けている。
【0025】
また、前記支持体7の内側の2箇所から前記各ピン穴4に嵌合自在なピン12、12を突設している。また、前記回転軸6の両端に回転軸6より大径のノブ13、13を夫々設け、各ノブ13は回転軸6の軸方向に摺動自在であり、かつ、内包するばねに付勢されて常時回転軸6の長手方向の内側に押されている。
【0026】
そして、当該治具2を金車本体1に取り付ける場合、前記治具2の両方のノブ13、13を
図6に示すように、外側に引っ張った状態で回転軸6の両端を前記金車本体1の各ガイド溝3に入れ、回転軸6が各ガイド溝3の奥端部3aに達した際、支持体7の各ピン12を各ピン穴4に入れた状態で前記スプロケット5が前記チェーン1bの内周円形部に噛み合い、この状態で前期各ノブを離すとばねの力で回転軸6の中央部方向に摺動して、金車本体1の各フレーム1cに固定する。これにより治具2は金車本体1に固定される。
【0027】
従って、当該延線対応型緊線金車Aを延線に使用する場合は治具2を外しておき、電線を延線後、電線を緊線する際に治具2を上述のように取り付け、前記ウオーム9の一端の角型部11にレンチ等を係止してウオーム9を回すことにより、ウオームホイール8が回転軸6と一体に回転し、回転軸6の一端のスプロケット5により金車本体1のチェーン1bが回り、電線が外周のシュー1aに掛けられた当該延線対応型緊線金車Aが動き、金車Aの傾きが解消され、金車Aが垂直状態になる。
【0028】
また、当該延線対応型緊線金車Aの延線後の傾き状況によって、ウオーム9の回転方向を変えればよく、また、治具2を取り付けるガイド溝3も金車本体1の左右に設けられているので、どちらのガイド溝3にも治具2を取り付けられるため、状況に応じて取り付け位置及びウオーム9の回転方向を決めれば、金車Aのどのような傾きも解消できる。
【0029】
(実施の形態例2)
図7及び
図8は、この発明の実施の形態例2の延線対応型緊線金車Bを示すものである。当該延線対応型緊線金車Bは前記延線対応型緊線金車Aと異なり、治具2が金車本体1に一体に取り付けられているものであり、基本的な構成、回転軸6、スプロケット5、支持体7、ウオームホイール8及びウオーム9の構成は上記と同じである。
【0030】
この実施の形態例2では、ウオームホイール8に噛み合うウオーム9が、ウオームホイール8に着脱自在に設けられているものである。前記支持体7は金車本体1のフレーム1cにボルト等で固定されており、ウオーム9の一端に設けられた第1軸受体14は前記支持体7にピン15により回転自在に設けられている。また、ウオーム9の他端は、前記支持体7に設けられた第2軸受体16に支持されている。この第2軸受体16は、
図8に示すように、上端及び下端に大径部17aを有する長孔17が設けられ、当該長孔17に前記ウオーム9の軸の他端が遊貫され、当該長孔17内で摺動自在となっており、その結果、ウオーム9は前記第1軸受体14のピン15を中心に回転自在となっている。
【0031】
また、ウオーム9の他端には、ウオーム9の径より大きい外径を有するノブ18が、ウオーム9の軸方向に摺動自在に被冠されている。当該ノブ18はスプライン軸等により、ウオーム9の軸を中心に回転することはできない構成となっている。さらに、当該ノブ18はバネにより常時ウオーム9の中央部に付勢されている。また、当該ノブ18の断面外形は角型となっている。
【0032】
そして、当該ウオーム9がウオームホイール8に噛み合った状態で、ウオーム9の他端は前記第2軸受体16の長孔17の上端の大径部17aにノブ18の小径端部18aが嵌合して固定される。一方、ノブ18をバネの力に抗して外方に引っ張ると前記大径部17aとノブ18の小径端部18aの嵌合が外れ、ウオーム9の軸が長孔17内を摺動して、
図7の二点鎖線に示す如く、前記ピン15を中心にウオーム9を傾斜させ、ウオームホイール8の噛み合いを解くことができる。この状態でノブ18の小径端部18aを長孔17の下端の大径部17aに嵌めるとウオーム9は固定される。
【0033】
従って、当該延線対応型緊線金車Bを延線に使用する場合は、前記ウオーム9をウオームホイール8の噛み合わせを解き、傾斜させた状態で使用する。そして、延線後緊線金車として使用する場合は、前記ウオーム9を水平にして第2軸受体16に固定することによりウオームホイール8と噛み合う。その後、当該金車Bの傾きを直して垂直位置にするには、ウオーム9の他端のノブ18にレンチ等の工具を取り付け、ウオーム9を回すことにより、ウオームホイール8及び回転軸6が回転し、これによりスプロケット5が回転し、チェーン1bを動かして当該金車Bが垂直となるよう調整する。
【0034】
(実施の形態例3)
図9~
図12は、この発明の実施の形態例2の延線対応型緊線金車Cを示すものである。
【0035】
当該延線対応型緊線金車Cは
図9に示すように、クローラ型の金車本体21から成る。クローラ型の金車本体21は外周に多数のシュー21aを有するチェーン21bから成る無限軌道体を備えている。また、当該金車本体21は正面及び背面にフレーム21cを有している。そして、吊り部材21dの下端がこれらの正面及び背面のフレーム21cに回転自在に取り付けられている。
【0036】
また、金車本体21の両側の前記無限軌道体を成すチェーン21bの内周円形部にスプロケット22がかみ合い、当該スプロケット22と一体な回転軸23の一端が金車本体21の正面側の前記フレーム21cの孔を貫通し、フレーム21cの外面に突出した回転軸23にラチェット歯車24が一体に固定されている。このラチェット歯車24の外面に突出した回転軸23の先端は断面が角型となった角型部23aを構成している。
【0037】
また、前記ラチェット歯車24に係止自在なラチェット爪25がフレーム21cにピン26により回転自在に設けられ、前記ラチェット爪25は変形三角形の2つの頂点が爪25a、25bとなっており、もう1つの頂点は凹部25cが設けられ、前記ピン26は当該ラチェット爪25の略中央部に設けられている。また、前記フレーム21cに先の尖った押圧部材27が設けられ、バネ27aにより尖端部27bが前記ラチェット爪25の凹部25cを有する1つの頂点を押圧するよう付勢されている。また、これらのラチェット歯車24、ラチェット爪25及び押圧部材27の上にはカバー体28が設けられている。
【0038】
これにより
図11に示すように、ラチェット爪25を回して、押圧部材27の尖端部27bがラチェット爪25の凹部25cを有する頂点の上辺を押すと下方の爪25bがラチェット歯車24の歯に係止され、ラチェット歯車24は時計方向の回転が阻止される。また、前記尖端部27bがラチェット爪25の凹部25cを有する頂点の
下辺を押すようにラチェット爪25を回すと上方の爪25aがラチェット歯車24の歯に係止され、ラチェット歯車24は反時計方向の回転が阻止される。また、ラチェット爪25を回して、
図12に示すように、押圧部材27の尖端部27bがラチェット爪25の凹部25cを押すと、爪25a、25bはラチェット歯車24の歯から離れた状態で係止される。
【0039】
従って、当該延線対応型緊線金車Cを用いて電線を延線する場合には、
図12に示すように、ラチェット爪25の何れの爪25a及び25bがラチェット歯車24の歯に係止されていない状態とし、延線後当該金車Cの傾きを直す場合には、例えば、
図11に示すように爪25bをラチェット歯車24の歯に係止して、前記回転軸23を
図11において反時計方向に回転させてチェーン21bを動かして当該金車Cを垂直する。また、チェーン21bを時計方向に回転させるには、前記ラチェット爪25の爪25aをラチェット歯車24の歯に係止すればよい。
【0040】
(実施の形態例4)
図13~
図17は、この発明の実施の形態例4の延線対応型緊線金車Dを示すものである。
【0041】
この実施の形態例1の延線対応型緊線金車Dは、
図13及び
図15に示すように、円形ホイール型の金車本体31と当該金車本体31に着脱自在な治具32から成る。金車本体31はホイール31aの回転軸31bを両側に設けた吊り部材31cで回転自在に支持したものである。
【0042】
前記回転軸31bは前記ホイール31aの中心部を貫通して一体に設けられている。また、この回転軸31bの一端は、
図15に示すように、一方の吊り部材31cの外面から突出しており、当該突出した回転軸31bの一端を囲むように補強枠体33が吊り部材31cに固定されて設けられている。この突出した回転軸31bの一端面にはスプライン穴34が穿設されている。また、前記回転軸31bの脇の前記補強枠体33の外面2箇所にはピン穴35、35が設けられている。
【0043】
前記治具32は、
図14に示すように、一端にスプライン軸36を設けた回転軸37を貫通して支持する支持体38を設け、当該支持体38の外側に突出する回転軸37にウオームホイール39が固定されている。このウオームホイール39と噛み合うウオーム40が前記支持体38の外面から突出した一対の軸受体41、41に回転自在に軸支されている。また、当該ウオーム40の一方の軸受体41から突出したウオーム40の断面は角型となり、角型部40aを形成している。また、前記支持体38の内面に、前記ピン穴35に嵌合自在な2つのピン42、42が突設されている。さらに、当該支持体38の外面には摘み43が設けられている。
【0044】
この延線対応型緊線金車Dを用いて電線を延線し、当該金車Dが傾いた状態の場合は、前記治具32を当該金車Dに取り付ける。取り付けは、治具32の摘み43を手で持って、金車本体31の補強枠体33の2つのピン穴35,35に治具32の2つのピン42、42を嵌合させると、回転軸37の一端のスプライン軸36が金車本体31の回転軸31bのスプライン穴34に嵌合される。
【0045】
そして適宜の手段、例えば、ボルト、ナット等で支持体38を前記補強枠体33に固定する。そして、前記ウオーム40の角型部40aにレンチ等の工具を嵌めてウオーム40を回転させると、ウオームホイール39が回転し、スプライン軸36とスプライン穴34の嵌合で一体となった回転軸31bが回転する。これにより当該延線対応型緊線金車Dのホイール31aが回転し、前記傾きを解消する。
【0046】
なお、上記実施の形態例2及び3では、スプロケット5又は22を有する回転軸6又は23を金車本体1又は21のチェーン1b又は21bからなる無限軌道体の一方の円形を成す内周部に設けているが、これらの回転軸6又は23及びスプロケット5又は22の位置はこれに限らず、無限軌道体の内周であればよい。
【0047】
前記実施の形態例1の支持体7のフレーム1cへの固定方法、前記実施の形態例2のウオーム9の第2軸受体16への固定方法、前記実施の形態例4の支持体38の固定方法は各実施の形態例のものに限定されず、適宜の方法又は手段で着脱自在に固定可能である。
【符号の説明】
【0048】
A 延線対応型緊線金車
B 延線対応型緊線金車
C 延線対応型緊線金車
D 延線対応型緊線金車
1 金車本体 1a シュー
1b チェーン 1c フレーム
1d 吊り部材 2 治具
3 ガイド溝 3a 奥端部
4 ピン穴 5 スプロケット
6 回転軸 7 支持体
8 ウオームホイール 9 ウオーム
10 軸受 11 角型部
12 ピン 13 ノブ
14 第1軸受体 15 ピン
16 第2軸受体 17 長孔
17a 大径孔 18 ノブ
18a 小径端部
21 金車本体 21a シュー
21b チェーン 21c フレーム
21d 吊り部材 22 スプロケット
23 回転軸 23a 角型部
24 ラチェット歯車 25 ラチェット爪
25a 爪 25b 爪
25c 凹部 26 ピン
27 押圧部材 27a バネ
27b 尖端部 28 カバー体
31 金車本体 31a ホイール
31b 回転軸 31c 吊り部材
32 治具 33 補強枠体
34 スプライン穴 35 ピン穴
36 スプライン軸 37 回転軸
38 支持体 39 ウオームホイール
40 ウオーム 40a 角型部
41 軸受体 42 ピン
43 摘み