(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】炭化処理システム、および炭化処理プログラム
(51)【国際特許分類】
C10B 47/46 20060101AFI20240624BHJP
F27B 9/26 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C10B47/46
F27B9/26
(21)【出願番号】P 2024032731
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-03-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593017119
【氏名又は名称】村松 俊之
(73)【特許権者】
【識別番号】524084274
【氏名又は名称】草場 勇
(73)【特許権者】
【識別番号】524084285
【氏名又は名称】康 光湖
(74)【代理人】
【識別番号】100210804
【氏名又は名称】榎 一
(74)【代理人】
【識別番号】100198498
【氏名又は名称】高橋 靖
(72)【発明者】
【氏名】草場 勇
(72)【発明者】
【氏名】讃井 有喜夫
(72)【発明者】
【氏名】康 光湖
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-001679(JP,A)
【文献】特開2018-024783(JP,A)
【文献】特開平05-214434(JP,A)
【文献】国際公開第2023/042611(WO,A1)
【文献】特開2011-094138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 47/46
F27B 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化処理の対象物を搬送するための収容容器と、
前記収容容器の搬送路に沿って、炭化処理の処理区間を連ねて構成される連続炉と、
前記搬送路を前記処理区間ごとに区切って閉鎖することによって、温度区分の異なる処理室を形成するシャッタと、
前記収容容器を次の前記処理区間へ順送りに前進させる搬送部と、
前記シャッタおよび前記搬送部を制御し、前記収容容器の前進中に前記シャッタを開いて前進後に前記シャッタを閉じ、形成される前記処理室ごとに処理温度を設定して炭化処理を実施する制御部とを備え、
前記搬送部は、
前記順送りの経路に沿って軸配置され、回転自在に軸支されたネジ軸部と、
自転制限された状態で前記ネジ軸部に螺合する摺動ナット部と、
前記ネジ軸部に正/逆の軸回転力を伝達することによって、前記摺動ナット部を前記ネジ軸部に摺動させて往復運動させる駆動部と、
前記収容容器に設けられ、前記摺動ナット部から前進の力を受けるための係合部と、
前記摺動ナット部と前記係合部との間に介在し、前記摺動ナット部が前進する際に前記係合部に係合して前記順送りの力を前記収容容器に作用させ、かつ前記摺動ナット部が前記係合部の後に下がる際に前記係合部を離れる離合部とを備え
、
前記係合部は、前記収容容器の前後方向の2箇所に設けられ、
前記収容容器の前側に設けられた前記係合部(以下「前方係合部」という)は、前記収容容器の前側が前記処理区間に入った状態で、前記摺動ナット部によって前進する前記離合部に係合して前記順送りの力を受けることによって、前記収容容器を前記処理区間に収まる位置まで前進させ、
前記収容容器の後側に設けられた前記係合部(以下「後方係合部」という)は、前記収容容器が前記処理区間に収まった状態で、前記摺動ナット部によって前進する前記離合部に係合して前記順送りの力を受けることによって、前記収容容器の前側を次の前記処理区間に入る位置まで前進させる
ことを特徴とする炭化処理システム。
【請求項2】
請求項1記載の炭化処理システムであって、
前記離合部は、
前記係合部の前端に跳ね上げられて前記係合部の後へ回り込む姿勢モードAと、前記摺動ナット部の前進によって前記係合部に当接して突っ張って係合する姿勢モードBとの間で姿勢が変化する
ことを特徴とする炭化処理システム。
【請求項3】
請求項1記載の炭化処理システムであって、
前記ネジ軸部、前記摺動ナット部、前記離合部、および前記係合部の組み合わせは、前記順送りの経路に沿って平行して複数配設され、
前記制御部は、前記収容容器に平行に前記順送りの力を作用させる
ことを特徴とする炭化処理システム。
【請求項4】
請求項1記載の炭化処理システムであって、
(1)前記収容容器の前側が入った前記処理区間において、前記制御部は、前記離合部を前記前方係合部に係合させ、
(2)前記離合部が前記前方係合部に係合した状態で、前記制御部は、前記摺動ナット部を前進させることによって、前記収容容器を前記処理区間に収まる位置まで前進させ、
(3)前記収容容器が収まった前記処理区間において、前記制御部は、開いていた前記シャッタを閉じて、前記処理室を形成し、
(4)前記処理室が形成された状態で、前記制御部は、加熱水蒸気と不活性ガスを前記処理室に供給して炭化処理を実施し、
(5)炭化処理中または炭化処理後の前記処理区間において、前記制御部は、前記摺動ナット部を後進させることによって、前記離合部を前記前方係合部から離して前記離合部を前記後方係合部に係合させ、
(6)炭化処理後の前記処理区間において、前記制御部は、前方の前記シャッタを開き、前記離合部が前記後方係合部に係合した状態で前記摺動ナット部を前進させることによって、前記収容容器の前側が次の前記処理区間に入る位置まで前進させる
ことを特徴とする炭化処理システム。
【請求項5】
コンピュータシステムを、
請求項1~4のいずれか一項記載
の炭化処理システムの前記制御部として機能させるための炭化処理プログラムであって、
(1)前記収容容器の前側が入った前記処理区間において、前記制御部は、前記離合部を前記前方係合部に係合させ、
(2)前記離合部が前記前方係合部に係合した状態で、前記制御部は、前記摺動ナット部を前進させることによって、前記収容容器を前記処理区間に収まる位置まで前進させ、
(3)前記収容容器が収まった前記処理区間において、前記制御部は、開いていた前記シャッタを閉じて、前記処理室を形成し、
(4)前記処理室が形成された状態で、前記制御部は、加熱水蒸気と不活性ガスを前記処理室に供給して炭化処理を実施し、
(5)炭化処理中または炭化処理後の前記処理区間において、前記制御部は、前記摺動ナット部を後進させることによって、前記離合部を前記前方係合部から離して前記離合部を前記後方係合部に係合させ、
(6)炭化処理後の前記処理区間において、前記制御部は、前方の前記シャッタを開き、前記離合部が前記後方係合部に係合した状態で前記摺動ナット部を前進させることによって、前記収容容器の前側が次の前記処理区間に入る位置まで前進させる
ことを特徴とする炭化処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化処理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃棄物などを炉内で炭化処理する炭化処理システムが知られている。
例えば、特許文献1には、『連続炉の内部において、廃棄物の収容容器を移送コンベアに載せて搬送しつつ、炭化処理を順次に実施する炭化処理システム』旨の技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、移送コンベアを用いて、炉内の廃棄物を順次に搬送する。このとき、搬送される廃棄物からは、炭化処理に伴って高温の油分や残渣物が発生する。
【0005】
移送コンペアは、これらの油分や残渣物に晒されて焼き付くなどして汚染される。特に、移送コンベアのような工業的に一般的な搬送手段は、作動箇所の露出面積が広いため、汚染の影響が大きい。そのため、こびりついた汚染によって、搬送性能がたびたび低下するなどの支障が生じやすい。
【0006】
そこで、移送コンベアの搬送性能を維持するため、連続炉を大規模に解体するなどして、内部の移送コンベアを念入りに清掃する必要が生じる。
【0007】
そのため、特許文献1においては、連続炉内の搬送性能を維持するのに手間と費用がかかるなど、メンテナンスの観点から改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、炭化処理に伴う油分や残渣物による汚染の影響を軽減した搬送手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の炭化処理システムは、次の構成(収容容器、連続炉、シャッタ、搬送部、および制御部)を備える。
【0010】
収容容器は、炭化処理の対象物を搬送するための容器である。
連続炉は、前記収容容器の搬送路に沿って、炭化処理の処理区間を連ねて構成される。
【0011】
シャッタは、前記搬送路を前記処理区間ごとに区切って閉鎖することによって、温度区分の異なる処理室を形成する。
【0012】
搬送部は、前記収容容器を次の前記処理区間へ順送りに前進させる。
制御部は、前記シャッタおよび前記搬送部を制御し、前記収容容器の前進中に前記シャッタを開いて前進後に前記シャッタを閉じ、形成される前記処理室ごとに処理温度を設定して炭化処理を実施する。
【0013】
これらの内、前記搬送部は、次の構成(ネジ軸部、摺動ナット部、駆動部、係合部、および離合部)を備える。
【0014】
ネジ軸部は、前記順送りの経路に沿って軸配置され、回転自在に軸支される。
摺動ナット部は、自転制限された状態で前記ネジ軸部に螺合する。
駆動部は、前記ネジ軸部に正/逆の軸回転力を伝達することによって、前記摺動ナット部を前記ネジ軸部に摺動させて往復運動させる。
【0015】
係合部は、前記収容容器に設けられ、前記摺動ナット部から前進の力を受ける。
離合部は、前記摺動ナット部と前記係合部との間に介在し、前記摺動ナット部が前進する際に前記係合部に係合して前記順送りの力を前記収容容器に作用させ、かつ前記摺動ナット部が前記係合部の後に下がる際に前記係合部を離れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、収容容器の順送りの経路に沿って、ネジ軸部の軸を配置する。このネジ軸部を正/逆に軸回転させることによって、ネジ軸部に螺合する摺動ナット部を往復させる。この摺動ナット部の前進する力は、離合部および係合部を介して、収容容器に作用する。その結果、収容容器は、連続炉の内部を順送りに押されて搬送される。
【0017】
この場合、炭化処理の対象物から発生する油分や残渣物は、ネジ軸部のネジ目に付着することになる。しかしながら、摺動ナット部が往復するたびに、ネジ軸部のネジ部分の山谷は、摺動ナット部のネジ部分に摺動することによって、ネジ軸部のネジ目の汚染は自浄的に軽減される。
【0018】
したがって、本発明によれば、炭化処理システムにおいて、油分や残渣物による汚染の影響を軽減し、メンテナンス性に優れた搬送手段が提供される。
【0019】
なお、上述した以外の課題、構成および効果の詳しい内容については、後述する実施形態において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、炭化処理システム100の内部構成を側面から例示する図である。
【
図2】
図2は、離合部550の作用を説明する図である。
【
図3】
図3は、炭化処理システム100の内部構成を斜視的に例示する図である。
【
図4】
図4は、炭化処理システム100の搬送部500の要部を例示する図である。
【
図5】
図5は、収容容器200の搬送動作(前半)をステップごとに説明する図である。
【
図6】
図6は、収容容器200の搬送動作(後半)をステップごとに説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
《実施例1の構成説明》
図1は、炭化処理システム100の内部構成を側面から例示する図である。
図1において、炭化処理システム100は、収容容器200、連続炉300、シャッタ400、搬送部500、および制御部600を備える。
【0023】
この内、収容容器200は、炭化処理の対象物を搬送するための容器である。この収容容器200の底面側には、円滑に搬送するためのキャスター(車輪)やコロを設けることが好ましい。さらに、収容容器200を搬送路に沿ってガイドするためのレールを設けることも好ましい。
【0024】
連続炉300は、収容容器200の搬送路に沿って、炭化処理の処理区間を必要な数だけ連ねて構成される。外部からは、連続炉300に収容容器200が炉内に順次に搬入される。連続炉300からは、複数の処理区間を通過した収容容器200が外部に順次に搬出される。
【0025】
シャッタ400は、連続炉300の搬送路を処理区間ごとに区切って閉鎖することによって、温度区分の異なる処理室を形成する。
【0026】
搬送部500は、収容容器200を現在の処理区間から次の処理区間へ順送りに前進させる。この搬送部500は、ネジ軸部510、摺動ナット部520、駆動部530、係合部540、および離合部550を備える。
【0027】
この内、ネジ軸部510は、棒状の側周面にネジ目が形成される。ネジ軸部510は、収容容器200を順送りする経路に沿って軸配置され、回転自在に軸支される。実施例1では、ネジ軸部510は、処理室の天井側に配設される。
【0028】
摺動ナット部520は、炉内のガイドレールなどで自転制限された状態でネジ軸部510に螺合する。
【0029】
駆動部530は、ネジ軸部510に対して、正/逆の軸回転力を伝達する。このようにネジ軸部510が正/逆に軸回転することによって、摺動ナット部520はネジ軸部510の軸上を往復方向に移動する。
【0030】
係合部540は、収容容器200に設けられ、摺動ナット部520から前進の力を受ける。この係合部540は、収容容器200の前側に設けられる前方係合部540Aと、後ろ側に設けられる後方係合部540Bから構成される。実施例1では、これらの係合部540は、天井側の摺動ナット部520から前進の力を受けるため、収容容器200の上側に設けられる。
【0031】
離合部550は、摺動ナット部520と係合部540との間に介在して設けられる。この離合部550は、摺動ナット部520が前進する際に係合部540に係合して順送りの力を収容容器200に作用させる。また、離合部550は、摺動ナット部520が後進する際に、摺動ナット部520が係合部540から分離して離れるように作用する。
【0032】
図2は、離合部550の作用を説明する図である。
図2[1]では、摺動ナット部520が係合部540の前方に位置する。この位置から摺動ナット部520が後進する。
【0033】
図2[2]では、後進する離合部550は係合部540の前端に跳ね上げられる。このような自然な跳ね上げを可能にするため、例えば、回動用の軸550aなどを介して離合部550は摺動ナット部520に軸支される。離合部550を跳ね上げた状態(以下「姿勢モードA」という)で、摺動ナット部520および離合部550は、係合部540の上面を後方へすり抜ける。
【0034】
図2[3]では、摺動ナット部520および離合部550が、係合部540の上面をすり抜けて、係合部540の後へ回り込む。離合部550は、自重によって軸550aを下向きに回動し、通常時の離合部550の姿勢に戻る。この位置から、摺動ナット部520は、移動方向を逆転して、前進に転じる。
【0035】
図2[4]では、摺動ナット部520の前進によって、離合部550は、係合部540に当接して突っ張ることによって、係合部540に係合する。このとき、離合部550が逆向きに回動しないよう、ストッパ520aなどの回り止めを設けてもよい。この状態(以下「姿勢モードB」という)で、摺動ナット部520が前進することによって、摺動ナット部520、離合部550および係合部540が一体となって、収容容器200を順送りに前進させる。
【0036】
図3は、炭化処理システム100の内部構成を斜視的に例示する図である。
図4は、炭化処理システム100の搬送部500の要部を例示する図である。
図3および
図4に示すように、ネジ軸部510、摺動ナット部520、離合部550、および係合部540の組み合わせは、収容容器200の順送りの経路に沿って、平行して2列に設けられる。
【0037】
なお、複数列の搬送部500を同様に駆動すればよい場合、単体の駆動部530から複数列の搬送部500に軸回転力を共通に伝達してもよい。
【0038】
なお、
図3および
図4において、
図1と重複する構成については同じ参照符号を付与して図示し、ここでの重複説明を省略する。
【0039】
《炭化処理プログラムについて》
なお、上述した制御部600の一部または全部は、ハードウェアとしてCPU(Central Processing Unit)やメモリなどを備えたコンピュータシステムとして構成してもよい。このハードウェアがコンピュータ可読媒体に記憶された「炭化処理プログラム」を実行することによって、制御部600の一部または全部の機能が実現する。
【0040】
このようなハードウェアの一部または全部については、専用の装置、機械学習デバイス、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、PLD(programmable logic device)などで代替してもよい。
【0041】
また、制御部600は、連続炉300と一体に配置する必要はなく、外部に分離して配置してもよい。例えば、制御部600のコンピュータシステムやプログラムの一部または全部を、クラウド上のサーバに集中または分散して配置して、クラウドシステムを構成してもよい。この場合、制御部600のクラウド化によって、複数の連続炉300に対して、中央の制御部600から制御サービスを随時に提供することが可能になる。
【0042】
《実施例1の動作説明》
続いて、実施例1の動作説明として、収容容器200の搬送動作について説明する。
【0043】
図5および
図6は、収容容器200の搬送動作をステップごとに説明する図である。
以下、
図5および
図6に示すステップ順に説明する。
【0044】
ステップS1: 収容容器200の前側(
図5では前側の略半分)が入った処理区間において、制御部600は、摺動ナット部520を後進させるなどして、離合部550を前方係合部540Aに係合させる。
【0045】
ステップS2: 離合部550が前方係合部540Aに係合した状態で、制御部600は、摺動ナット部520を前進させることによって、収容容器200の前後が処理区間に収まる位置まで前進させる。
【0046】
ステップS3: 収容容器200が収まった処理区間において、制御部600は、開いていた後方のシャッタ400を閉じて、処理室を形成する。
【0047】
ステップS4: 処理室が形成された状態で、制御部600は、加熱水蒸気と不活性ガス(例えば、窒素ガス)を処理室に供給して加熱し、炭化処理を実施する。
【0048】
ステップS5: 炭化処理中または炭化処理後の前記処理区間において、制御部600は、摺動ナット部520を後進させることによって、離合部550を前方係合部540Aから離して離合部550を後方係合部540Bに係合させる。
【0049】
ここで、炭化処理の処理期間中(炭化処理の完了直前も含む)に摺動ナット部520の後進を開始した場合、炭化処理後に次の搬送動作に可及的速やかに移行できる。
【0050】
一方、炭化処理を終えた後(前方のシャッタ400を開いた後でもよい)に摺動ナット部520を後進させた場合、摺動ナット部520が通過した後(すなわち自浄した後)にネジ軸部510に汚染が再び付着するおそれが少ない。
【0051】
ステップS6: 炭化処理後の処理区間において、制御部600は、前方のシャッタ400を開く。
【0052】
ステップS7: 制御部600は、離合部550が後方係合部540Bに係合した状態で、摺動ナット部520を前進させることによって、収容容器200の前側(
図6では前側の略半分)が次の処理区間に入る位置まで前進させる。このとき、次の処理区間において後進状態の離合部550は、前方係合部540Aに前端に跳ね上げられて、前方係合部540Aの後ろに回り込む。
ステップS8~10: 上述した動作(ステップS1~7)を処理区間ごとに繰り返すことによって、搬送部500は収容容器200を次の処理区間へ順送りに前進させる。
【0053】
《実施例1の効果》
実施例1は、上述した構成や動作によって、下記の効果を奏する。
【0054】
(1)実施例1では、炭化処理の対象物から発生する油分や残渣物は、ネジ軸部510のネジ目に付着する。しかし、収容容器200を搬送するに際して、摺動ナット部520が、ネジ軸部510に螺合した状態で往復する。この往復運動によって、ネジ軸部510のネジ目は、摺動ナット部520のネジ部分に摺動するため、ネジ軸部510に付着する汚染は自浄的に軽減される。したがって、実施例1は、炭化処理に伴う油分や残渣物による汚染の影響を軽減した搬送手段が実現するという点で優れている。
【0055】
(2)実施例1では、離合部550は、前記係合部540の前端に跳ね上げられて係合部540の後へ回り込む姿勢モードAと、摺動ナット部520の前進によって係合部540に当接して突っ張って係合する姿勢モードBとの間で姿勢が変化する。この離合部550の姿勢変化によって、往復する摺動ナット部520が前進する際にのみ、収容容器200に順送りの力が作用する。したがって、実施例1は、離合部550によって、摺動ナット部520の往復運動を、収容容器200の順送りの力に変換するという点で優れている。
【0056】
(3)実施例1では、ネジ軸部510、摺動ナット部520、離合部550、および係合部540の組み合わせは、順送りの経路に沿って平行して複数配設される。このように複数列の搬送部500を設けて平行に順送りの力を作用させることによって、収容容器200の前進時の左右がたつきを抑制することが可能になる。したがって、実施例1は、収容容器200の左右がたつきを抑制しつつ、収容容器200を円滑に順送りするという点で優れている。
【0057】
(4)実施例1では、収容容器200の少なくとも前後2箇所に係合部540(前方係合部540A、後方係合部540B)に設けたことによって、収容容器200を半送りずつ2回で、1回分の順送りを実行する。その結果、摺動ナット部520の往復距離が短くなるため、ネジ軸部510の長さを短縮することが可能になる。この場合、ネジ軸部510を短縮することによってネジ軸部510がねじれにくくなる。したがって、実施例1は、ネジ軸部510を短縮してねじれにくくすることによって、順送りの力の損失を低減できるという点で優れている。
【0058】
(6)実施例1では、
図5および
図6に示すように、収容容器200が通過するシャッタ400のみを開き、それ以外のシャッタ400を常に閉じる。そのため、処理区間に対する高温気体の流出をなるべく低減して温度低下を抑制することができる。したがって、実施例1は、炭化処理システム100の加熱に必要なエネルギーを減らして省エネできるという点で優れている。
【0059】
(7)実施例1では、炭化処理『中』の前記処理区間において、摺動ナット部520を後進させて、離合部550を後方係合部540Bに係合させるという動作シーケンスを選択できる。この場合、炭化処理中(炭化処理の完了直前でもよい)に摺動ナット部520を後進するシーケンスをなるべく早く完了して、炭化処理の後に次の搬送動作を可及的速やかに開始できる。したがって、この場合の実施例1は、連続炉300の一連の炭化処理にかかる処理時間を短縮できるという点で優れている。
【0060】
(8)また、実施例1では、炭化処理『後』の前記処理区間において、摺動ナット部520を後進させて、離合部550を後方係合部540Bに係合させる動作シーケンスを選択できる。この場合、炭化処理後(前方のシャッタ400を開いた後でもよい)に摺動ナット部520を後進させることで、今回の炭化処理においてネジ軸部510に付着した汚染を、摺動ナット部520の後進によってまとめて自浄することができる。さらに、炭化処理を終えているため、摺動ナット部520の通過後にネジ軸部510に汚染が再び付着するおそれが少ない。したがって、この場合の実施例1は、ネジ軸部510の汚染をなるべく軽減できるという点で優れている。
【0061】
《その他の補足事項》
なお、実施形態では、処理区間と処理区間との間に間隔を設けている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、処理区間(処理室)の間に間隔を設けず、隣接させてもよい。その場合、隣接する処理区間を区切るシャッタ400は、2枚から1枚に省略できる。
【0062】
また、実施形態では、ネジ軸部510などを順送りの経路にそって2列に設けている。しかしながら、本発明の列数はこれに限定されない。例えば、1列で済ますことで構造を簡略化してもよい。また例えば、3列以上に増やすことで、搬送部500の順送りの力を増加してもよい。
【0063】
さらに、実施形態では、ネジ軸部510などの搬送部500を処理区間の天井側にのみ設けている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、搬送部500を処理区間の側方(収容容器200の右側および左側)や底部に変更ないし増設してもよい。
【0064】
また、実施形態では、係合部540を収容容器200の前後方向の2箇所(前方係合部540A、後方係合部540B)に設けている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、係合部540を収容容器200の前後方向の3箇所以上に設けてもよい。
【0065】
さらに、実施形態では、前方の処理区間を完全に空けた後に、収容容器200を一つずつ順送りしている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、シャッタ400全てを開いて、複数の収容容器200をひとつながりとして、まとめて順送りしてもよい。
【0066】
なお、本発明は、上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0067】
例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために全体を詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成や全てのステップや全ての順序を備えるものに限定されない。
【0068】
また、本発明は、個々の構成に限定されるものではない。例えば、個々の構成を、均等な機能を有する別種類の構成に変更してもよい。
【0069】
また、実施形態の個々の要素を部分的に組み合わせてもよい。さらに、実施形態に対して、他の構成や他のステップを追加・置換をすることも可能である。また、実施形態に対して、一部の構成や一部のステップを削除したり、これらステップの順序を変更してもよい。
【符号の説明】
【0070】
100...炭化処理システム、200...収容容器、300...連続炉、400...シャッタ、500...搬送部、510...ネジ軸部、520...摺動ナット部、520a...ストッパ、530...駆動部、540...係合部、540A...前方係合部、540B...後方係合部、550...離合部、550a...軸、600...制御部
【要約】
【課題】本発明は、炭化処理に伴う油分や残渣物による汚染の影響を軽減した炭化処理技術を提供する。
【解決手段】
本発明の炭化処理システムは、収容容器、連続炉、シャッタ、搬送部、および制御部を備える。このうち、搬送部は、順送りの経路に沿って回転自在に軸支されたネジ軸部と、自転制限された状態でネジ軸部に螺合する摺動ナット部と、ネジ軸部に正/逆の軸回転力を伝達することによって摺動ナット部をネジ軸部に摺動させて往復運動させる駆動部と、収容容器に設けられて摺動ナット部から前進の力を受けるための係合部と、摺動ナット部と係合部との間に介在して摺動ナット部が前進する際に係合部に係合して順送りの力を収容容器に作用させ、かつ摺動ナット部が係合部の後に下がる際に係合部を離れる離合部とを備える。
【選択図】
図1