(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】弾性波デバイスパッケージ、及び、弾性波デバイスを含むモジュール
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240624BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H01L23/00 B
(21)【出願番号】P 2020053695
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村 博文
(72)【発明者】
【氏名】門川 裕
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-201285(JP,A)
【文献】特開2015-015546(JP,A)
【文献】特開2013-251323(JP,A)
【文献】特開2005-012751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145
H03H 9/25
H03H 9/42 - H03H 9/44
H03H 9/64
H03H 9/68
H03H 9/72
H03H 9/76
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の一面
に櫛形電極を形成してなる一面を備えた弾性波デバイスと、
前記弾性波デバイスの前記一面との間に隙間を形成させた状態で前記弾性波デバイスを搭載するパッケージ基板と、
前記パッケージ基板
における前記弾性波デバイスの搭載側に形成されて、前記パッケージ基板と前記弾性波デバイスとの間に前記櫛形電極を囲む中空部を形成する封止樹脂とを備えると共に、
前記封止樹脂と前記弾性波デバイスとの間に
、前記弾性波デバイスにおける前記一面と反対の他面の全体と前記弾性波デバイスの端面とが覆われるように導電性樹脂層を形成させてなり、
しかも、前記導電性樹脂層を前記封止樹脂と同系の樹脂から構成し、かつ、前記導電性 樹脂層のシート抵抗を1kΩ/□ないし3MΩ/□の範囲としてなる、中空構造を有する弾性波デバイスパッケージ。
【請求項2】
前記導電性樹脂層が、前記弾性波デバイスの端面を覆う部分に連続して前記パッケージ基板の前記搭載側の面の少なくとも一部を覆う延長部分を備えるようにしてなる、請求項1に記載の中空構造を有する弾性波デバイスパッケージ。
【請求項3】
前記延長部分を、前記パッケージ基板の前記搭載側の面に形成された外部接続端子につながった電極に電気的に接続させてなる、請求項2に記載の中空構造を有する弾性波デバイスパッケージ。
【請求項4】
少なくとも一つの弾性波デバイスを含むモジュールであって、
圧電基板の一面
に櫛形電極を形成してなる一面を備えた弾性波デバイスと、
前記弾性波デバイス以外のモジュール構成要素と、
前記弾性波デバイスの前記一面との間に隙間を形成させた状態で前記弾性波デバイスを搭載すると共に、前記構成要素を搭載するモジュール基板と、
前記モジュール基板
における前記弾性波デバイスの搭載側に形成されて、前記モジュール基板と前記弾性波デバイスとの間に前記櫛形電極を囲む中空部を形成する封止樹脂とを備えると共に、
前記封止樹脂と前記弾性波デバイスとの間に限り前記弾性波デバイス
における前記一面と反対の他面の少なくとも一部を覆う導電性樹脂層を形成させてなり、
しかも、前記導電性樹脂層を前記封止樹脂と同系の樹脂から構成し、かつ、前記導電性樹脂層のシート抵抗を1kΩ/□ないし3MΩ/□の範囲としてなる、弾性波デバイスを含むモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弾性波デバイスパッケージ、及び、弾性波デバイスを含むモジュールの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信機器中に使用されている弾性波デバイスは、一般に、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの圧電基板上に櫛形電極(IDT:Inter-Digital Transducer)を形成してバンドパスフィルタなど周波数フィルタとして機能するよう、構成されている。バンドパスフィルタ機能の場合、その中心周波数は、用いる圧電基板の弾性波伝搬速度と前記櫛形電極の電極指ピッチや電極指の長さなどで決定される。近年のモバイル通信における使用周波数帯の高周波化に伴い、弾性波デバイスを構成する櫛形電極の電極指ピッチは微細化する傾向にある。このため櫛形電極に帯電した場合、前記対向する櫛形電極間での電荷量の差が従来よりも櫛形電極間には大きな電界(電位差)となるため、一般にESD(Electro-Static Discharge)破壊と呼ばれる櫛形電極間で放電による破壊、損傷がが起こりやすくなっている。
【0003】
ここで、近年は弾性波デバイスの製造ラインにおいては自動化が進み、人間が製造工程中にデバイスに触れる機会は減ったため、HBM(Human Body Model)モード によるESD破壊は減る傾向にある。
【0004】
その一方で、自動化装置内で弾性波デバイスが摩擦や静電誘導により帯電し、帯電した弾性波デバイスが金属に接触することによるESD破壊が起こりやすくなっている。
【0005】
このようなESD破壊は、CDM(Charged Device Model)モードと呼ばれ、弾性波デバイスではこれまで構造上の有効な対策がとられていなかった。このため、弾性波デバイスの製造にあたっては、製造ラインにおいて静電気が発生し易い個所に静電気除去装置(イオナイザ)を設置するなどの対策をとることが余儀なくされており、また、弾性波デバイスの実装工程においても静電気管理をとることが余儀なくされており、これらを実現するための設備投資や工数増加が弾性波デバイス及びこれを含んで構成される部品、機器のコストアップを招いている。
【0006】
また、弾性波デバイスの機能の多様化により、一つの弾性波デバイス中に10個以上の櫛形電極を有するものも現れており、これらの中には、弾性波デバイスの外部端子に接続されず、電位が外部から固定されない、フローティングの電極パターンも存在する。このようなフローティングの電極パターンに一旦電荷が蓄積されると電荷は抜けにくく、ESD破壊の原因になりやすい。
【0007】
なお、弾性波デバイスの製造過程での焦電破壊を防止するため、製造過程において弾性波デバイスを構成する弾性波デバイスの電極パターンに導電性部材を接触させておく技術として特許文献1に示されるものがある。また、同様の目的から、弾性波デバイスの製造過程において、前記弾性波デバイスの電極パターンの形成面を導電性高分子を含む保護膜によって覆っておき、後にこれを取り去る技術として、特許文献2及び3に示されるものがある。しかるに、これら特許文献1~3のものは、ESD破壊の抑止を目的とするものでなく、また、ESD破壊の抑止に寄与する構造を弾性波デバイス自体に持たせるようにするものではない。なお、特許文献4を構成する導電性樹脂層は、接地用導体パターンに接続することが構成要件となっており、本願の基本構成とは異なるものである。また、特許文献4の導電性樹脂は電磁シールド層としての機能を持たせるため、「厚さ1mm以下程度で10Ω・cm以下の抵抗値を有するもの」とされており、抵抗値が低いものが望ましいとされている。本願のESD耐性向上という目的に関しては、後述の理由から、導電性樹脂の金属膜並みの低抵抗化は必要とされておらず、目的、構成が異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-33053号公報
【文献】特開平9-172349号公報
【文献】特開平9-116364号公報
【文献】特許第3439975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、弾性波デバイスパッケージ、及び、弾性波デバイスを含むモジュールに、前記ESD破壊を抑止し得る構造、すなわち、ESD耐性を向上させる構造を、適切且つ合理的に付与できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、弾性波デバイスパッケージを、
圧電基板の一面に櫛形電極を形成してなる一面を備えた弾性波デバイスと、
前記弾性波デバイスの前記一面との間に隙間を形成させた状態で前記弾性波デバイスを搭載するパッケージ基板と、
前記パッケージ基板における前記弾性波デバイスの搭載側に形成されて、前記パッケージ基板と前記弾性波デバイスとの間に前記櫛形電極を囲む中空部を形成する封止樹脂とを備えると共に、
前記封止樹脂と前記弾性波デバイスとの間に、前記弾性波デバイスにおける前記一面と反対の他面の全体と前記弾性波デバイスの端面とが覆われるように導電性樹脂層を形成させてなり、
しかも、前記導電性樹脂層を前記封止樹脂と同系の樹脂から構成し、かつ、前記導電性 樹脂層のシート抵抗を1kΩ/□ないし3MΩ/□の範囲としてなる、ものとした。
【0012】
また、前記導電性樹脂層が、前記弾性波デバイスの端面を覆う部分に連続して前記パッケージ基板の前記搭載側の面の少なくとも一部を覆う延長部分を備えるようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0013】
また、前記延長部分を、前記パッケージ基板の前記搭載側の面に形成された外部接続端子につながった電極に電気的に接続させるようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0014】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、弾性波デバイスを含むモジュールを、
少なくとも一つの弾性波デバイスを含むモジュールであって、
圧電基板の一面に櫛形電極を形成してなる一面を備えた弾性波デバイスと、
前記弾性波デバイス以外のモジュール構成要素と、
前記弾性波デバイスの前記一面との間に隙間を形成させた状態で前記弾性波デバイスを搭載すると共に、前記構成要素を搭載するモジュール基板と、
前記モジュール基板における前記弾性波デバイスの搭載側に形成されて、前記モジュール基板と前記弾性波デバイスとの間に前記櫛形電極を囲む中空部を形成する封止樹脂とを備えると共に、
前記封止樹脂と前記弾性波デバイスとの間に限り前記弾性波デバイスにおける前記一面と反対の他面の少なくとも一部を覆う導電性樹脂層を形成させてなり、
しかも、前記導電性樹脂層を前記封止樹脂と同系の樹脂から構成し、かつ、前記導電性樹脂層のシート抵抗を1kΩ/□ないし3MΩ/□の範囲としてなる、ものとした。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、弾性波デバイスパッケージ、及び、弾性波デバイスを含むモジュールに、前記導電性樹脂層によって、前記ESD破壊を抑止し得る構造、すなわち、ESD耐性を向上させる構造を、適切且つ合理的に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイスパッケージ(第一例)の斜視構成図である。
【
図3】
図3は、前記第一例の弾性波デバイスパッケージに形成される櫛形電極の要部平面図である。
【
図4】
図4は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイスパッケージ(第二例)の断面構成図である。
【
図5】
図5は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイスパッケージ(第三例)の断面構成図である。
【
図6】
図6は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイスを含むモジュール(第四例)の平面構成図である。
【
図7】
図7は、
図6におけるA-A線位置での断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図7に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弾性波デバイスパッケージDは、弾性波デバイス1(チップ)と、パッケージ基板2と、封止樹脂3(モールドレジン)と、導電性樹脂層4とを備える。
【0018】
(弾性波デバイス1)
弾性波デバイス1は、圧電基板の一面1aに、櫛形電極1b(IDT)を形成させてなる。すなわち、弾性波デバイス1は、板状をなし、また、その一面1aを櫛形電極1bの形成面としている。
【0019】
また、弾性波デバイス1は、前記櫛形電極1bの形成面と反対の他面1cを有すると共に、その厚さ方向に沿った端面1dとを備える。
【0020】
櫛形電極1bの一例の要部平面図を
図3に示す。櫛形電極1bを構成する
図3中、符号L1で示す長い電極指1eの長さは例えば70μm、隣り合う長い電極指1e間の距離L2は例えば2.2μm、短い電極指1fの先との間に間隔L3を開けて形成されるフローティングの櫛形電極1gと短い電極指1fとの間の前記間隔L3は例えば0.4μmとなるように形成される。
【0021】
(パッケージ基板2)
パッケージ基板2は、前記弾性波デバイス1の前記一面1aとの間に隙間を形成させた状態で前記弾性波デバイス1を搭載する構成となっている。
【0022】
パッケージ基板2は、絶縁性を備えた板状の材料から構成されている。パッケージ基板2は、前記弾性波デバイス1の搭載側の表面2aと、この搭載側の表面2aと反対の裏面2bと、厚さ方向に沿った端面2cとを備える。
【0023】
パッケージ基板2は、弾性波デバイス1の端面1dの外側にパッケージ基板2の端面2cを、弾性波デバイス1の中心x(
図1及び
図2参照)を巡るいずれの位置においても位置させる大きさに形成されている。
【0024】
弾性波デバイス1は、パッケージ基板2の表面2aに形成させたバンプ2dに前記一面1aを接しさせた状態でパッケージ基板2の前記表面2a上に載置される。バンプ2dと弾性波デバイス1とは超音波溶着などの公知の手法により固着される。前記バンプ2dは、ワイヤーボンディングのファーストボンドによって形成される、金スタッドバンプが典型例である。
【0025】
弾性波デバイス1の一面1aと、パッケージ基板2の表面2aとの間には、前記バンプ2d分の隙間が、弾性波デバイス1の前記一面1aのいずれの箇所においても形成されている。
【0026】
パッケージ基板2の裏面2bには外部接続端子2eが形成されている。パッケージ基板2に前記のように搭載された弾性波デバイス1はその櫛形電極1bの少なくとも一部をこの外部接続端子2eに電気的に接続させており、この外部接続端子2eによって弾性波デバイスパッケージDと外部とが電気的に接続されるようになっている。
【0027】
(封止樹脂3)
封止樹脂3は、絶縁性及び疎水性を有し、前記パッケージ基板2の前記搭載側に形成されて、前記パッケージ基板2と協働して、前記弾性波デバイス1を気密状態に収める。この封止樹脂3によって、前記パッケージ基板2と前記弾性波デバイス1との間に前記櫛形電極1bを囲む中空部5が形成されると共に、パッケージ外部からの水分侵入が極力抑えられ耐湿性に優れた信頼性の高い弾性波デバイスパッケージDを提供することができる。
【0028】
封止樹脂3は、弾性波デバイス1の他面1c上に位置する上面部3aと、弾性波デバイス1の端面1dの外側に位置すると共に前記パッケージ基板2の端面2cと面一となる端面部3bとを備える。封止樹脂3の絶縁性及び疎水性により、本発明を適用して提供される弾性波デバイスパッケージDは、既存の標準化、規格化されたフィルタ部品などと同様に、検査装置での検査、包装、保管、基板実装などを行うことが可能となる。
【0029】
(導電性樹脂層4)
導電性樹脂層4は、前記封止樹脂3と前記弾性波デバイス1との間に前記弾性波デバイス1の他面1cの少なくとも80%の範囲を覆うように形成されている。
【0030】
すなわち、かかる導電性樹脂層4は、パッケージ基板2の表面2a上に前記のように弾性波デバイス1を搭載させた状態から、封止樹脂3の形成に先だって、形成される。
【0031】
(第一例)
図1及び
図2に示される第一例にあっては、前記導電性樹脂層4を、前記導電性樹脂層4によって前記弾性波デバイス1の前記他面1cの全体と、前記弾性波デバイス1の端面1dとが覆われるように形成させている。
【0032】
これにより、例えば、高電界内(静電気発生雰囲気内)に弾性波デバイスパッケージDが置かれたとき、弾性波デバイスパッケージD同士の摩擦により電荷が発生したとき、あるいは、ダイシング工程後ダイシングテープなどから弾性波デバイスパッケージDを剥離するときなどに、弾性波デバイス1を構成する櫛形電極1bに集中して帯電が生じないようにすることができる。
【0033】
加えて、導電性樹脂層4と封止樹脂3とは樹脂同士で密着性高く両者を強固に一体化させた状態で弾性波デバイスパッケージDを構成することができる。導電性樹脂層4は100μm以下の厚さで形成可能であり、この程度の厚みは、封止樹脂部3形成工程内の製造条件調整で全体のパッケージサイズへの影響を無くすことができる。このように導電性樹脂層4を新規に設けても、標準化されている規格内のパッケージサイズに収めることは可能である。導電性樹脂層4は、1kΩ/□~3MΩ/□程度のシート抵抗をもつものであることが望ましい。このようなシート抵抗を持つ導電性樹脂層4内の電荷の移動速度は金属膜に比し著しく遅くなる。したがって、導電性樹脂層4に帯電した場合の電荷の移動により発生する周囲の電界のピーク及び反対面に誘起される櫛形電極1b間、あるいは、櫛形電極1bとフローティングの櫛形電極1g間、あるいは、フローティングの櫛形電極1g間の電位差を可及的に抑えることができる。なお、導電性樹脂層4のシート抵抗値は、一例ではあるが、樹脂基材中に一様に分散される導電性フィラーの粒径、密度を適宜設定することにより調整可能である。一般的な樹脂基材は、エポキシ系、シリコン系、ウレタン系、ポリイミド系などの樹脂があり、成型後の封止樹脂3との密着性向上の観点から、導電性樹脂層4と封止樹脂3は同系の樹脂基材とするのが望ましい。導電性樹脂層4の導電性フィラーは炭素系、金属系、導電性高分子系などのフィラーを適用可能である。
【0034】
(第二例)
図4に示される第二例にあっては、前記導電性樹脂層4が、前記弾性波デバイス1の端面1dを覆う部分4aに連続して前記パッケージ基板2の前記搭載側の表面2aの少なくとも一部を覆う延長部分4bを備えるようにしている。
【0035】
図示の例では、前記延長部分4bは、前記端面1dを覆う部分から垂下して前記表面2aに突き当たる第一部分4cと、この第一部分4cの下端から外方に続き端末をパッケージ基板2の端面2cのやや内側に位置させる第二部分4dとを備えるようになっている。また、図示の例では、弾性波デバイス1の中心xを巡るいずれの箇所においても、導電性樹脂層4が、第一部分4cと第二部分4dとを持つようになっている。
【0036】
このようにした場合、第一に、導電性樹脂層4の面積を増大させることができ、弾性波デバイス1を構成する櫛形電極1bに集中して帯電が生じる事態をより防止しやすくなる。また、第二に、封止樹脂3を形成する際に、導電性樹脂層4の延長部分4bによって封止樹脂3を構成する樹脂が前記隙間内に進入することを防いで前記中空部5を形成することができる。
【0037】
この第二例では、このように前記延長部分4bによって前記中空部5を作るための前記隙間への封止樹脂3を構成する樹脂の進入を防ぐことができることから、この進入をできるだけ生じないように弾性波デバイス1の端面1dとパッケージ基板2の端面2cとの間の距離y(
図4参照)を大きく確保しておく必要がなく、前記第一例よりもかかる距離yを縮小可能である。したがって、第二例の構造は、弾性波デバイスパッケージDのサイズの縮小に資する。また、サイズを縮小しない場合には弾性波デバイス1のサイズの可及的最大化が可能となり、弾性波デバイス1上に機能追加のための櫛形電極1bを形成する余地を設けやすくなる。
【0038】
(第三例)
図5に示される第三例にあっては、前記延長部分4bを、前記パッケージ基板2の前記搭載側の表面2aに形成された外部接続端子2eにつながった電極2fに電気的に接続させるようにしている。
【0039】
このようにした場合、導電性樹脂層4に帯電した電荷を外部接続端子2eを利用して放電させ易くなることから、弾性波デバイスパッケージDのESD耐性をより向上させることができる。この際、導電性樹脂層4が前述の適切な抵抗値を有する場合、前記放電が緩慢に行われるため、電界のピークが抑えられ、ESD耐性がより向上する。
【0040】
(第四例)
図6に示される第四例は、弾性波デバイス1と、これ以外のモジュール構成要素6(抵抗器 (R)、インダクタ (L)、コンデンサ (C)など)を備えた弾性波デバイス1を含むモジュールMを示している。前記フロントエンドモジュール構成要素6の代表例は、一般にチップ抵抗、チップインダクタ、チップコンデンサなどと呼ばれるものである。これらは端子金属が多方向の面に露出し、モジュール基板2’に表面実装される部品である。モジュール基板2’は前記パッケージ基板2同様絶縁性を有する。
【0041】
かかる弾性波デバイス1を含むモジュールMは、モジュール基板2’との間に後述の中空部5を形成させた少なくとも一つの弾性波デバイス1を含む。かかる弾性波デバイス1を含むモジュールMは、一面1aを櫛形電極1bの形成面とする弾性波デバイス1と、前記弾性波デバイス1以外のモジュール構成要素6と、前記弾性波デバイス1の前記一面1aとの間に隙間を形成させた状態で前記弾性波デバイス1を搭載すると共に前記構成要素6を搭載するモジュール基板2’と、前記パッケージ基板2と前記弾性波デバイス1との間に前記櫛形電極1bを囲む中空部5を形成させた状態で前記モジュール基板2’の前記搭載側に形成される前記弾性波デバイス1及び前記構成要素6の封止樹脂3とを備える。
【0042】
それと共に、かかる弾性波デバイス1を含むモジュールMは、前記封止樹脂3と前記弾性波デバイス1との間に限り前記弾性波デバイス1の他面1cの少なくとも一部を覆う導電性樹脂層4を形成させた構成となっている。このような構成では、導電性樹脂層4によって前記構成要素6の端子間が短絡されることはない。
【0043】
このようにすれば、弾性波デバイス1についてESD耐性を確保し、それ以外の弾性波デバイスを含むモジュール構成要素6には導電性樹脂層4による影響が及ばないようにした弾性波デバイス1を含むモジュールMの構成が可能となる。
【0044】
以下の工程は一例であるが、このようにすれば、モジュール基板2’上の弾性波デバイス1に対してのみ導電性樹脂層4を形成することができる。
(1)感光性を有する導電性樹脂からなるシートを用意する。
(2)前記シートを、封止樹脂3の形成に先立って、二つの弾性波デバイス1と二つの前記フロントモジュール構成要素6を搭載したモジュール基板2’上に被せたとき、二つの弾性波デバイス1上に位置される箇所のみがモジュール基板2’上に残存するように、フォトリソグラフィでパターニングする。
【0045】
なお、この第四例では、導電性樹脂部は弾性波デバイス1の他面1cの全体と弾性波デバイス1の端面1dとを覆うように形成されると共に、端面1dを覆う部分4aに続く延長部4bを備えた構成となっているが、端面1dを覆う部分4aがない態様でも良く、また、前記第一例と同様に延長部分4bがない態様でもあっても良い。
【0046】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0047】
D 弾性波デバイスパッケージ
M 弾性波デバイスを含むモジュール
1 弾性波デバイス
1a 一面
1b 櫛形電極
1c 他面
1d 端面
1e 長い電極指
1f 短い電極指
1g フローティングの櫛形電極
2 パッケージ基板
2’ モジュール基板
2a 表面
2b 裏面
2c 端面
2d バンプ
2e 外部接続端子
2f 電極
3 封止樹脂
3a 上面部
3b 端面部
4 導電性樹脂層
4a 端面を覆う部分
4b 延長部分
4c 第一部分
4d 第二部分
5 中空部
6 弾性波デバイス以外のモジュール構成要素