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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】金属溶湯移送装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 39/06 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B22D39/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020066496
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021159975
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591140824
【氏名又は名称】有明セラコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】福丸 茂
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-327762(JP,A)
【文献】特開2005-161403(JP,A)
【文献】特開2007-061906(JP,A)
【文献】特開平08-290260(JP,A)
【文献】特開2002-257478(JP,A)
【文献】特開2008-049359(JP,A)
【文献】特開平03-264155(JP,A)
【文献】特開昭58-093562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯を大気圧下で収容している金属溶湯収容槽、
内部に溶湯収容空間を備えていて、前記金属溶湯収容槽に収容されている前記金属溶湯の中に沈設される溶湯移送ポンプ、
前記溶湯収容空間内の前記金属溶湯を前記金属溶湯収容槽の外部に排出する溶湯排出管であって、前記溶湯移送ポンプの前記溶湯収容空間内に伸びている先端である溶湯排出管基端が前記溶湯収容空間内で開口し、前記金属溶湯収容槽の外部に伸びている先端である溶湯排出管先端が前記金属溶湯収容槽の外部で開口している溶湯排出管と、
前記溶湯排出管先端を取り囲んでいて、前記溶湯排出管を介して移送されてきた前記金属溶湯を大気圧下で収容する金属溶湯保持槽であって、当該金属溶湯保持槽に収容される前記金属溶湯の液面の鉛直方向における高さ位置が前記金属溶湯収容槽に収容されている前記金属溶湯の液面の鉛直方向における高さ位置より低い位置に留まる構造の金属溶湯保持槽と、
前記金属溶湯収容槽内の前記金属溶湯を前記溶湯収容空間内に流入させる溶湯流入管であって、前記溶湯移送ポンプの前記溶湯収容空間内に伸びている先端である溶湯流入管先端の外径が前記溶湯排出管基端の内径より小さく、前記溶湯流入管先端が前記溶湯排出管の内部にまで伸びて前記溶湯排出管の内側で開口している溶湯流入管と、
前記溶湯移送ポンプに配備されていて前記溶湯収容空間を大気圧状態に開閉切り替えする溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁と、
前記溶湯移送ポンプに配備されていて前記溶湯収容空間の内部に気体を圧入する気体圧入手段と、
を備えていて、
前記溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁が開にされて前記溶湯収容空間が大気圧状態にされることで前記金属溶湯収容槽内の前記金属溶湯が前記溶湯収容空間内に流入した後に前記溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁を閉に切り替える湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段と、
前記溶湯収容空間内に前記金属溶湯が流入し、前記溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁が閉に切り替えられた後に、前記気体圧入手段によって前記溶湯収容空間に気体を圧入し、前記溶湯収容空間に気体が圧入されたことで前記溶湯収容空間から前記溶湯排出管を介して前記金属溶湯保持槽に移送されてきた前記金属溶湯の前記金属溶湯保持槽内における鉛直方向の液面の高さ位置が前記溶湯排出管先端の鉛直方向の高さ位置より高くなったときに前記気体圧入手段による前記溶湯収容空間への前記気体の圧入を停止する気体圧入手段制御手段と、
前記溶湯排出管基端と前記溶湯排出管先端との間において鉛直方向における高さが最も高い位置における前記溶湯排出管に対して吸引管を介して配備されていて前記溶湯排出管の内部から前記溶湯排出管の外部に向けて吸引を行う溶湯排出管吸引手段と、
前記気体圧入手段による前記溶湯収容空間への前記気体の圧入が前記気体圧入手段制御手段によって停止された後に、前記溶湯排出管吸引手段による前記溶湯排出管の内部から前記溶湯排出管の外部に向けた吸引を開始させ、前記金属溶湯が前記吸引管の内部にまで流入したときに前記溶湯排出管吸引手段による前記溶湯排出管の内部から前記溶湯排出管の外部に向けた吸引を停止させる溶湯排出管吸引手段制御手段
とを備えている金属溶湯移送装置。
【請求項2】
前記金属溶湯保持槽の構造が、前記金属溶湯保持槽に収容される前記金属溶湯の液面の鉛直方向における高さ位置が、前記溶湯収容空間における鉛直方向で最も低い位置にある溶湯収容空間底面の鉛直方向における高さ位置より低くなる請求項1記載の金属溶湯移送装置。
【請求項3】
前記金属溶湯保持槽の構造が、前記金属溶湯保持槽に収容される前記金属溶湯の液面の鉛直方向における高さ位置が、前記金属溶湯収容槽における鉛直方向で最も低い位置にある金属溶湯収容槽底面の鉛直方向における高さ位置より低くなる請求項1記載の金属溶湯移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウム溶湯のような高温の金属溶湯を当該金属溶湯が収容されているところから目的とする移送位置にまで移送する金属溶湯の移送装置及び移送方法に関し、特にサイホン現象を利用した金属溶湯移送装置及び金属溶湯移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイホン現象を利用した金属溶湯移送装置及び金属溶湯移送方法に関しては従来から種々の提案が行われている。例えば、本願出願人もこれまでいくつかの提案を行っている(特許文献1、2、3)。
【0003】
また、本願出願人は特許文献1~3以外にも、この技術分野で利用される種々の提案を行っている(特許文献4、5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-84563号公報
【文献】特開平5-84564号公報
【文献】特開2007-61906号公報
【文献】特開平8-290260号公報
【文献】特開平9-327762号公報
【文献】特開2002-257478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、構造、メカニズムが簡素な金属溶湯移送装置及び移送方法を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
金属溶湯収容槽に大気圧下で収容されている金属溶湯の中に沈設されていて内部に溶湯収容空間を備えている溶湯移送ポンプと、金属溶湯収容槽内の金属溶湯を溶湯収容空間内に流入させる溶湯流入管と、溶湯収容空間内の金属溶湯が金属溶湯収容槽の外部に移送されていく溶湯排出管とを備えている金属溶湯移送装置。溶湯収容空間内において、溶湯流入管の開口している先端が、溶湯排出管の流入側端開口の中にまで伸びている。
【0007】
溶湯移送ポンプの溶湯収容空間が開放されて大気圧状態のときに金属溶湯収容槽内の金属溶湯が溶湯流入管を介して溶湯収容空間に流入し、閉状態で溶湯収容空間が加圧されることで溶湯収容空間に存在している金属溶湯が溶湯排出管を介して金属溶湯収容槽の外部に移送されていく。
【0008】
金属溶湯収容槽内の金属溶湯が、溶湯流入管及び溶湯排出管の中に存在している金属溶湯によって溶湯排出管の排出側端開口にまで臨んで連続している状態にした上で、金属溶湯収容槽に収容されている金属溶湯の液面高さと、溶湯排出管の排出側端開口との間の鉛直方向での高低差を利用したサイホン現象によって金属溶湯収容槽内の金属溶湯を、溶湯流入管及び溶湯排出管を介して金属溶湯収容槽の外部に移送する。
【0009】
[1]
金属溶湯を大気圧下で収容している金属溶湯収容槽、
内部に溶湯収容空間を備えていて、前記金属溶湯収容槽に収容されている前記金属溶湯の中に沈設される溶湯移送ポンプ、
前記溶湯収容空間内の前記金属溶湯を前記金属溶湯収容槽の外部に排出する溶湯排出管であって、前記溶湯移送ポンプの前記溶湯収容空間内に伸びている先端である溶湯排出管基端が前記溶湯収容空間内で開口し、前記金属溶湯収容槽の外部に伸びている先端である溶湯排出管先端が前記金属溶湯収容槽の外部で開口していて、前記溶湯排出管先端の鉛直方向における高さ位置が前記金属溶湯収容槽に収容されている前記金属溶湯の液面の鉛直方向における高さ位置より低い溶湯排出管と、
前記金属溶湯収容槽内の前記金属溶湯を前記溶湯収容空間内に流入させる溶湯流入管であって、前記溶湯移送ポンプの前記溶湯収容空間内に伸びている先端である溶湯流入管先端の外径が前記溶湯排出管基端の内径より小さく、前記溶湯流入管先端が前記溶湯排出管の内部にまで伸びて前記溶湯排出管の内側で開口している溶湯流入管と、
前記溶湯移送ポンプに配備されていて前記溶湯収容空間を大気圧状態に開閉切り替えする溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁と、
前記溶湯移送ポンプに配備されていて前記溶湯収容空間の内部に気体を圧入する気体圧入手段と、
を備えていて、
前記溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁が開にされて前記溶湯収容空間が大気圧状態にされることで前記金属溶湯収容槽内の前記金属溶湯が前記溶湯収容空間内に流入した後に前記溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁を閉に切り替える湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段と、
前記溶湯収容空間内に前記金属溶湯が流入し、前記溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁が閉に切り替えられた後に、前記気体圧入手段によって前記溶湯収容空間に気体を圧入し、前記溶湯収容空間に気体が圧入されたことで前記溶湯収容空間から前記溶湯排出管を介して前記溶湯排出管先端に向けて移動してきた前記金属溶湯の先端部が前記溶湯排出管先端に到達したときに前記気体圧入手段による前記溶湯収容空間への前記気体の圧入を停止する第一の気体圧入手段制御手段
とを備えている金属溶湯移送装置。
【0010】
[2]
前記溶湯排出管先端の鉛直方向における高さ位置が、前記溶湯収容空間における鉛直方向で最も低い位置にある溶湯収容空間底面の鉛直方向における高さ位置より低い[1]の金属溶湯移送装置。
【0011】
[3]
前記溶湯排出管先端の鉛直方向における高さ位置が、前記金属溶湯収容槽における鉛直方向で最も低い位置にある金属溶湯収容槽底面の鉛直方向における高さ位置より低い[1]の金属溶湯移送装置。
【0012】
[4]
金属溶湯を大気圧下で収容している金属溶湯収容槽、
内部に溶湯収容空間を備えていて、前記金属溶湯収容槽に収容されている前記金属溶湯の中に沈設される溶湯移送ポンプ、
前記溶湯収容空間内の前記金属溶湯を前記金属溶湯収容槽の外部に排出する溶湯排出管であって、前記溶湯移送ポンプの前記溶湯収容空間内に伸びている先端である溶湯排出管基端が前記溶湯収容空間内で開口し、前記金属溶湯収容槽の外部に伸びている先端である溶湯排出管先端が前記金属溶湯収容槽の外部で開口していている溶湯排出管と、
前記溶湯排出管先端を取り囲んでいて、前記溶湯排出管を介して移送されてきた前記金属溶湯を大気圧下で収容する金属溶湯保持槽であって、当該金属溶湯保持槽に収容される前記金属溶湯の液面の鉛直方向における高さ位置が前記金属溶湯収容槽に収容されている前記金属溶湯の液面の鉛直方向における高さ位置より低い位置に留まる構造の金属溶湯保持槽と、
前記金属溶湯収容槽内の前記金属溶湯を前記溶湯収容空間内に流入させる溶湯流入管であって、前記溶湯移送ポンプの前記溶湯収容空間内に伸びている先端である溶湯流入管先端の外径が前記溶湯排出管基端の内径より小さく、前記溶湯流入管先端が前記溶湯排出管の内部にまで伸びて前記溶湯排出管の内側で開口している溶湯流入管と、
前記溶湯移送ポンプに配備されていて前記溶湯収容空間を大気圧状態に開閉切り替えする溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁と、
前記溶湯移送ポンプに配備されていて前記溶湯収容空間の内部に気体を圧入する気体圧入手段と、
を備えていて、
前記溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁が開にされて前記溶湯収容空間が大気圧状態にされることで前記金属溶湯収容槽内の前記金属溶湯が前記溶湯収容空間内に流入した後に前記溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁を閉に切り替える湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段と、
前記溶湯収容空間内に前記金属溶湯が流入し、前記溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁が閉に切り替えられた後に、前記気体圧入手段によって前記溶湯収容空間に気体を圧入し、前記溶湯収容空間に気体が圧入されたことで前記溶湯収容空間から前記溶湯排出管を介して前記金属溶湯保持槽に移送されてきた前記金属溶湯の前記金属溶湯保持槽内における鉛直方向の液面の高さ位置が前記溶湯排出管先端の鉛直方向の高さ位置より高くなったときに前記気体圧入手段による前記溶湯収容空間への前記気体の圧入を停止する第二の気体圧入手段制御手段
とを備えている金属溶湯移送装置。
【0013】
[5]
前記金属溶湯保持槽の構造が、前記金属溶湯保持槽に収容される前記金属溶湯の液面の鉛直方向における高さ位置が、前記溶湯収容空間における鉛直方向で最も低い位置にある溶湯収容空間底面の鉛直方向における高さ位置より低くなる[4]の金属溶湯移送装置。
【0014】
[6]
前記金属溶湯保持槽の構造が、前記金属溶湯保持槽に収容される前記金属溶湯の液面の鉛直方向における高さ位置が、前記金属溶湯収容槽における鉛直方向で最も低い位置にある金属溶湯収容槽底面の鉛直方向における高さ位置より低くなる[4]の金属溶湯移送装置。
【0015】
[7]
前記溶湯排出管基端と前記溶湯排出管先端との間において鉛直方向における高さが最も高い位置における前記溶湯排出管に対して吸引管を介して配備されていて前記溶湯排出管の内部から前記溶湯排出管の外部に向けて吸引を行う溶湯排出管吸引手段と、
前記気体圧入手段による前記溶湯収容空間への前記気体の圧入が第二の気体圧入手段制御手段によって停止された後に、前記溶湯排出管吸引手段による前記溶湯排出管の内部から前記溶湯排出管の外部に向けた吸引を開始させ、前記金属溶湯が前記吸引管の内部にまで流入したときに前記溶湯排出管吸引手段による前記溶湯排出管の内部から前記溶湯排出管の外部に向けた吸引を停止させる溶湯排出管吸引手段制御手段と
を更に備えている[4]~[6]のいずれかの金属溶湯移送装置。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、構造、メカニズムが簡素な金属溶湯移送装置及び移送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の金属溶湯移送装置の一実施形態の概略構成を説明する図。
図2図1図示の金属溶湯移送装置で金属溶湯収容槽に収容されている大気圧下の金属溶湯が大気圧状態にある溶湯移送ポンプの溶湯収容空間内に流入してくる状態を説明する図。
図3図2図示の状態から溶湯収容空間が加圧されて、溶湯収容空間内に存在している金属溶湯が溶湯排出管を介して溶湯収容空間から押し出されていってその先端が溶湯排出管の排出側端開口に臨み、金属溶湯収容槽内の金属溶湯が、溶湯流入管及び溶湯排出管の中に存在している金属溶湯によって溶湯排出管の排出側端開口にまで臨んで連続している状態を説明する図。
図4図3の状態に引き続いて溶湯収容空間と溶湯移送ポンプ外部との間の気体流動を遮断し、サイホン現象によって金属溶湯収容槽から金属溶湯収容槽の外部に金属溶湯が移送されていく状態を説明する図。
図5】この発明の金属溶湯移送装置の他の実施形態の概略構成を説明する図。
図6図5図示の金属溶湯移送装置で金属溶湯収容槽に収容されている大気圧下の金属溶湯が大気圧状態にある溶湯移送ポンプの溶湯収容空間内に流入してくる状態を説明する図。
図7図6図示の状態から溶湯収容空間が加圧されて、溶湯収容空間内に存在している金属溶湯が溶湯排出管を介して溶湯収容空間から押し出されていって大気圧下の金属溶湯保持槽に収容され始め、金属溶湯収容槽内の金属溶湯が、溶湯流入管及び溶湯排出管の中に存在している金属溶湯によって溶湯排出管の排出側端開口にまで臨んで連続している状態を説明する図。
図8図7図示の状態に引き続いて溶湯収容空間と溶湯移送ポンプ外部との間の気体流動を遮断し、サイホン現象によって金属溶湯収容槽から金属溶湯収容槽の外部に金属溶湯が移送されていく状態を説明する図。
図9図7図示の工程が終了し、図8図示のサイホン現象による金属溶湯の移送が開始される際に、金属溶湯収容槽における金属溶湯が、溶湯流入管内の金属溶湯、溶湯排出管内の金属溶湯を介して金属溶湯保持槽内の金属溶湯に連続している状態になることを説明する図。
図10】溶湯排出管吸引手段を作動させることで図9図示の状態を確実に実現する例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の金属溶湯移送方法が実現される本発明の実施形態に係る金属溶湯移送装置は、金属溶湯収容槽1に大気圧下で収容されている金属溶湯20の中に沈設されていて内部に溶湯収容空間2aを備えている溶湯移送ポンプ2と、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20を溶湯収容空間2a内に流入させる溶湯流入管4と、溶湯収容空間2a内の金属溶湯20bが金属溶湯収容槽1の外部に移送されていく溶湯排出管7、8、9とを備えている。ここで、溶湯収容空間2a内において、溶湯流入管4の開口している先端4bは、溶湯排出管7の流入側端開口7aの中にまで伸びている。
【0019】
溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2aが開放されて大気圧状態のときに金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20が溶湯流入管4を介して矢印30a、30b、31、32a、32bで示すように溶湯収容空間2aに流入し、閉状態で溶湯収容空間2aが加圧されることで溶湯収容空間2aに存在している金属溶湯20bが溶湯排出管7、8、9を介して矢印35、35a、35b、35cで示すように、金属溶湯収容槽1の外部に移送されていく。
【0020】
金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20が、溶湯流入管4及び溶湯排出管7、8、9の中に存在している金属溶湯によって溶湯排出管9の排出側端開口9aにまで臨んで連続している状態にした上で、金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20の液面21の鉛直方向の高さと、溶湯排出管9の排出側端開口9aの鉛直方向高さとの間の高低差を利用したサイホン現象によって金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20を溶湯流入管4及び溶湯排出管7、8、9を介して金属溶湯収容槽1の外部に移送する。
【0021】
以下、添付図面を参照して詳述する。
【0022】
(実施形態1)
図1図4図示の金属溶湯移送装置は、金属溶湯収容槽1、溶湯移送ポンプ2、溶湯流入管4、溶湯排出管7、8、9、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13、開閉切り替えバルブ14を備えている。以下、本明細書、図面において溶湯排出管7、8、9を総称して溶湯排出管10と表すことがある。
【0023】
金属溶湯収容槽1には金属溶湯20が大気圧下で収容されている。
【0024】
溶湯移送ポンプ2は、内部に溶湯収容空間2aを備えていて、金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20の中に沈設される。
【0025】
後述するように、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2aを大気圧状態にして、大気圧下にある金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20を溶湯流入管4を介して溶湯収容空間2a内に流入させる。そこで、沈設された溶湯移送ポンプ2における溶湯流入管4の先端である溶湯流入管先端4bの鉛直方向における高さ位置が、少なくとも、金属溶湯収容槽1における金属溶湯20の液面21よりも低い位置になるまで溶湯移送ポンプ2を金属溶湯20の中に沈設させる。
【0026】
溶湯排出管10は、溶湯移送ポンプ2における溶湯収容空間2a内の金属溶湯を金属溶湯収容槽1の外部に流動させていく管体である。図1図示の実施形態では、溶湯排出管10は、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内から溶湯移送ポンプ2の外部に向かって鉛直方向に伸びる溶湯排出管7、金属溶湯収容槽1の外部で鉛直方向に伸びる溶湯排出管9、溶湯排出管7の上端と溶湯排出管9の上端とを連結して水平方向に伸びる溶湯排出管8とを備えている。
【0027】
溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内に伸びている溶湯排出管7の先端である溶湯排出管基端7aは溶湯収容空間2a内で開口している。また、金属溶湯収容槽1の外部に伸びている溶湯排出管9の先端である溶湯排出管先端9aは金属溶湯収容槽1の外部で開口している。更に、図1図示のように、溶湯排出管先端9aの鉛直方向における高さ位置は、金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20の液面21の鉛直方向における高さ位置より低くなっている。
【0028】
溶湯排出管先端9aの鉛直方向における高さ位置が、金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20の液面21の鉛直方向における高さ位置より低くなっている形態としては、図1図示のように、溶湯排出管先端9aの鉛直方向における高さ位置が、溶湯収容空間2aにおける鉛直方向で最も低い位置にある溶湯収容空間底面2bの鉛直方向における高さ位置より低い形態を採用することができる。また、溶湯排出管先端9aの鉛直方向における高さ位置が、金属溶湯収容槽1における鉛直方向で最も低い位置にある金属溶湯収容槽底面1aの鉛直方向における高さ位置より低い形態を採用することもできる。
【0029】
溶湯流入管4は、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20を溶湯収容空間2a内に流入させる管体である。図1図示のように、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内に伸びている先端である溶湯流入管先端4bの外径が溶湯排出管基端7aの内径より小さく、溶湯流入管先端4bが溶湯排出管7の内部にまで伸びて溶湯排出管7の内側で開口している。図示の実施形態では、溶湯流入管4は、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2aにおける鉛直方向で最も低い位置にある溶湯収容空間底面2cに形成されている溶湯流入管基端4aから、溶湯排出管7の内部にまで伸びて溶湯排出管7の内側で開口している溶湯流入管先端4bまで鉛直方向で上側に向かって伸びている。
【0030】
溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13は、溶湯移送ポンプ2に配備されていて溶湯収容空間2aを大気圧状態に開閉切り替えする。図示の実施形態では大気圧状態の溶湯移送ポンプ2外部と、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2aとの間を連通する通気管5に溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13が配備されている。
【0031】
溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13が開(〇)にされると溶湯収容空間2aは通気管5を介して大気圧状態となり、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13が閉(×)にされると通気管5を介した溶湯収容空間2aと溶湯移送ポンプ2外部との間の気体の流動は停止される。
【0032】
この実施形態の金属溶湯移送装置は、気体圧入手段(不図示)を備えている。気体圧入手段(不図示)は、溶湯移送ポンプ2に配備されていて溶湯収容空間2aに気体を圧入するものである。例えば、電動ポンプなどからなる不図示の気体圧送手段が開閉切り替えバルブ14が配備されている給気管6を介して溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2aに接続されている構造とし、開閉切り替えバルブ14を開(〇)にして、気体圧送手段(不図示)から気体(例えば、窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガス)を給気管6を介して溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2aに圧入する機構が採用できる。
【0033】
この実施形態の金属溶湯移送装置は、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段(不図示)を備えている。溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段(不図示)は、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13を開(〇)にする制御、閉(×)にする制御を行う。
【0034】
例えば、電磁的な開閉切換え弁からなる溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段が閉信号を出力していて溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13を閉(×)にする。この閉状態になっている溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して開信号を出力し、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13を開(〇)にする。溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13が閉(×)から開(〇)になって溶湯収容空間2aが大気圧状態になると、金属溶湯収容槽1内の大気圧下にある金属溶湯20が、図2に矢印30a、30b、31、32a、32bで示すように、溶湯収容空間2a内に流入する。
【0035】
この後に、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段は、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13を閉(×)に切り替える制御を行う。
【0036】
溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段としては、前述した電磁的な開閉切換え弁からなる溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に電気的に接続されていて、当該電磁的な開閉切換え弁である溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して所定の開、閉の制御情報を出力するコンピュータ制御の溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段を採用することができる。例えば、上述した溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段の機能を発揮するコンピュータからなる制御装置を採用することができる。
【0037】
溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13を電磁的な開閉切換え弁としておき、大気圧下で金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20の液面21より下側に沈設されている溶湯移送ポンプ2の沈降深さ、あるいは溶湯収容空間2aの金属溶湯20の液面21より下側にある容積(体積)との関係などから、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13が閉から開に切り替えられた後、溶湯収容空間2a内に金属溶湯収容槽1から流入してくる金属溶湯の鉛直方向における液面高さが、少なくとも、溶湯排出管基端7aの鉛直方向における高さ位置より高くなるまでに要する時間を確認してこれを弁開放時間として設定しておき、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段が溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して開指示を行った後、前記弁開放時間が経過したならば、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段が溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して閉指示を行う機構を採用することができる。
【0038】
また、溶湯収容空間2aの容積量、溶湯流入管基端4aの鉛直方向における高さ位置から溶湯排出管基端7aの鉛直方向における高さ位置までの高さ方向の間隔(大きさ)、金属溶湯収容槽1の容積量の関係から、溶湯流入管基端4aの位置から溶湯収容空間2aに流入した金属溶湯の鉛直方向における液面高さが、少なくとも、溶湯排出管基端7aの鉛直方向における高さ位置より高くなるまでに金属溶湯収容槽1における金属溶湯20の液面21の高さが低下する距離(大きさ)を確認してこれを必要液面低下距離(大きさ)として設定しておき、所定の液面センサーで金属溶湯収容槽1における金属溶湯20の液面21の鉛直方向高さ位置を検出し、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段が溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して開指示を行った後、前記必要液面低下距離(大きさ)の液面低下を検知できたならば、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段が溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して閉指示を行う機構を採用することもできる。
【0039】
また、上述した機構により、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内の金属溶湯20bの液面22の鉛直方向高さ位置及び、溶湯排出管7内の金属溶湯20aの液面23の鉛直方向高さ位置が、図2図示のように、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20の液面21の鉛直方向高さ位置と同程度になったときに、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段が溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して閉指示を行うようにすることもできる。
【0040】
この実施形態の金属溶湯移送装置は、第一の気体圧入手段制御手段(不図示)を備えている。第一の気体圧入手段制御手段(不図示)は、上述した気体圧入手段(不図示)による溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内への上述した気体の圧入開始、圧入停止を制御するものである。
【0041】
例えば、気体圧送手段(不図示)による溶湯収容空間2a内への気体の圧入を、電気信号の入力に応じて作動する気体圧送手段(不図示)が、電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14が配備されている給気管6を介して溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2aに接続されている形態によって実現し、このような気体圧送手段(不図示)と、開閉切り替えバルブ14とにそれぞれ電気的に接続されていて、このような気体圧送手段(不図示)と、電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14とに対してそれぞれ所定の制御情報を入力するコンピュータ制御の第一の気体圧入手段制御手段を採用することができる。
【0042】
この場合、上述した溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段の機能と、第一の気体圧入手段制御手段の機能とを発揮するコンピュータから構成される1台の制御装置を用いることもできる。
【0043】
このような第一の気体圧入手段制御手段が行う制御は、溶湯収容空間2a内に金属溶湯20が流入し、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13が閉に切り替えられた後に、気体圧入手段(不図示)によって溶湯収容空間2aに気体を圧入し、溶湯収容空間2aに気体が圧入されたことで溶湯収容空間2aから溶湯排出管7、8、9を介して溶湯排出管先端9aに向けて移動してきた金属溶湯の先端部が溶湯排出管先端9aに到達したときに前記気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入を停止するものである。
【0044】
溶湯排出管7、8、9を介して溶湯排出管先端9aに向けて移動してきた金属溶湯の先端部が溶湯排出管先端9aに到達したことは、溶湯排出管先端9aあるいはその近傍に、電気的あるいは光学的な検知手段(不図示)を配備しておいて検知することができる。
【0045】
上述した湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段(不図示)が溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して閉に切り替える信号を送出した後、第一の気体圧入手段制御手段(不図示)が電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14に対して開に切り替える信号を送出し、気体圧入手段(不図示)に対して給気管6を介した溶湯収容空間2a内への気体圧入開始を指示する。
【0046】
溶湯収容空間2aに気体が圧入されたことで溶湯収容空間2a内に収容されている金属溶湯は溶湯排出管7、8、9を介して溶湯排出管先端9aに向けて矢印35、35a、35b、35cで示すように移動し、この移動してきた金属溶湯の先端部が溶湯排出管先端9aに到達(図3)したことを前述した溶湯排出管先端9aあるいはその近傍に配備されている検知手段(不図示)が検知し、その旨の信号が第一の気体圧入手段制御手段(不図示)に送出されると、第一の気体圧入手段制御手段(不図示)は気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入を停止させる信号を気体圧入手段(不図示)に送り、電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14に対して閉(×)に切り替える信号を送出する。
【0047】
(実施の形態1の金属溶湯移送装置による移送方法の実施形態)
以上に説明した構成、構造からなる金属溶湯移送装置によって、大気圧下で金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20が、溶湯移送ポンプ2、溶湯排出管7、8、9を介してその先端である溶湯排出管先端9aまで移送され、開口している溶湯排出管先端9aから金属溶湯収容槽1の外部にまで移送されていく例を以下に説明する。
【0048】
内部に溶湯収容空間2aを備えている溶湯移送ポンプ2が図1図示のように、金属溶湯収容槽1に大気圧下で収容されている金属溶湯20の中に沈設されている。
【0049】
溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2aを大気圧状態にして、大気圧下にある金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20を溶湯流入管4を介して溶湯収容空間2a内に流入させる。そこで、図1図示のように、沈設された溶湯移送ポンプ2における溶湯流入管4の先端である溶湯流入管先端4bの鉛直方向における高さ位置が、少なくとも、金属溶湯収容槽1における金属溶湯20の液面21よりも低い位置になるまで溶湯移送ポンプ2を金属溶湯20の中に沈設させる。
【0050】
溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段(不図示)によって溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13が開(〇)にされて溶湯収容空間2aが大気圧状態にされると、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20が矢印30a、30b、31、32a、32bで示すように、溶湯流入管4を介して、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内に流入してくる(図2)。
【0051】
溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内から金属溶湯収容槽1の外部にまで伸びている溶湯排出管10の先端である溶湯排出管先端9aは大気圧状態にあるので、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内の金属溶湯20bの液面22の鉛直方向高さ位置及び、溶湯排出管7内の金属溶湯20aの液面23の鉛直方向高さ位置は、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20の液面21の鉛直方向高さ位置と同程度になる(図2)。
【0052】
ここで、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段が溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して閉指示を行い、通気管5を介した溶湯収容空間2aと溶湯移送ポンプ2外部との間の気体の流動が停止される。
【0053】
引き続いて、第一の気体圧入手段制御手段(不図示)が電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14に対して開(〇)に切り替える信号を送出し、気体圧入手段(不図示)に対して給気管6を介した溶湯収容空間2a内への気体圧入開始を指示する。
【0054】
これによって、給気管6を介して気体が矢印33、33aで示すように、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内に圧入され、溶湯収容空間2a内の金属溶湯の液面は矢印33b、33cで示すように押し下げられ、溶湯収容空間2a内の金属溶湯は、矢印34a、34bで示すように溶湯排出管7の中に押し入れられ、更に、矢印35、35a、35b、35cで示すように、溶湯排出管7、8、9の中を移動していく(図3)。
【0055】
こうして、溶湯収容空間2aに気体が圧入されたことで溶湯収容空間2aから溶湯排出管7、8、9を介して溶湯排出管先端9aに向けて移動してきた金属溶湯の先端部が溶湯排出管先端9aに到達する(図3)と、気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入が停止され、開閉切り替えバルブ14が閉(×)に切り替えられる(図4)。
【0056】
この状態で、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20は、溶湯流入管4内の金属溶湯、溶湯排出管7、8、9内に存在している金属溶湯によって、溶湯排出管先端9aにまで先端部が臨んでいる金属溶湯に連続している。
【0057】
溶湯排出管先端9aの鉛直方向における高さ位置が、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20の液面21の鉛直方向高さ位置より低く、前記の状態で、図4図示のように、開閉切り替えバルブ13、14が閉(×)になったことで、サイホン現象により、大気圧下にある金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20は、溶湯流入管4の開口している溶湯流入管基端4aから溶湯流入管4内に矢印37a、37b、38で示すように流入し、矢印35で示すように溶湯排出管7内を上昇しようとする。
【0058】
この際、溶湯収容空間2a内の金属溶湯20bも矢印34a、34bで示すように溶湯排出管7の中に流入しようとする。溶湯流入管4は、溶湯流入管先端4bの外径が溶湯排出管基端7aの内径より小さく、溶湯流入管先端4bが溶湯排出管7の内部にまで伸びて溶湯排出管7の内側で開口しているので、溶湯流入管基端4aから溶湯流入管4内に矢印37a、37b、38で示すように流入し、矢印35で示す方向で溶湯流入管先端4bから溶湯排出管7内に吹き出る金属溶湯20の流速の方が、径が大きい溶湯排出管7内に開口している溶湯排出管基端7aから矢印34a、34bで示すように流入してきて矢印35で示す方向で溶湯排出管7内を上昇していこうとする金属溶湯20bの流速よりも大きくなる。
【0059】
こうして、上述したサイホン現象によって、矢印37a、37b、38で示すように溶湯流入管4内に引き込まれ、矢印35で示すように溶湯排出管7内を上昇しようとする金属溶湯収容槽1内に存在している金属溶湯20と、開口している溶湯排出管基端7aから矢印34a、34bで示すように溶湯排出管7中に流入して溶湯排出管7内を矢印35で示す方向に上昇する金属溶湯20bとが合流して、矢印35、35a、35b、35cで示すように、溶湯排出管7、8、9の中を流動していき、開口している溶湯排出管先端9aから矢印36cで示すように、金属溶湯収容槽1の外部に排出されていく。
【0060】
大径の管体と、それよりも小径の管体とを上述した溶湯排出管7、溶湯流入管4の関係のように配置して金属溶湯を流動させ、小径の管体内を流動する金属溶湯の流速の方が大径の管体内を流動する金属溶湯の流速より方大きくなることを利用した金属溶湯の移送メカニズムは本願出願人が特許文献1、2で明らかにしているものである。
【0061】
上述したように、溶湯収容空間2aに気体が圧入されたことで溶湯収容空間2aから溶湯排出管7、8、9を介して溶湯排出管先端9aに向けて移動してきた金属溶湯の先端部が溶湯排出管先端9aに到達した時点で、気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入を停止し、更に、必要であれば、開閉切り替えバルブ14を閉(×)に切り替えて、既に閉(×)になっている開閉切り替えバルブ13とによって、溶湯収容空間2a内への外部からの気体流入が停止され、金属溶湯収容槽1内の大気圧下の金属溶湯20は、溶湯流入管4内の金属溶湯、溶湯排出管7、8、9内に存在している金属溶湯によって、大気圧状態に開口している溶湯排出管先端9aにまで先端部が臨んでいる金属溶湯に連続している。そして、大気圧下で開口している溶湯排出管先端9aの鉛直方向における高さ位置が、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20の液面21の鉛直方向における高さ位置より低くなっていることを利用したサイホン現象によって、金属溶湯収容槽1内に存在している金属溶湯20及び、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内に存在している金属溶湯20bを、溶湯排出管7、8、9を介して、金属溶湯収容槽1の外部に移送することができる。
【0062】
(実施の形態2)
以下、図5図10を用いて本発明の他の金属溶湯移送装置の実施形態を説明する。
【0063】
なお、実施の形態2の金属溶湯移送装置が、実施の形態1の金属溶湯移送装置と相違している点は、溶湯排出管先端9aの鉛直方向における高さ位置に実施の形態1で説明していた条件が課されないことと、一方で、溶湯排出管先端9aを取り囲んで溶湯排出管7、8、9を介して移送されてきた金属溶湯を大気圧下で収容し、収容している金属溶湯の液面の鉛直方向での高さ位置が金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20の液面21の鉛直方向における高さ位置との関係で所定の条件を満たす構造になっている金属溶湯保持槽3を備えている点である。
【0064】
また、実施の形態1における第一の気体圧入手段制御手段が第二の気体圧入手段制御手段に替わっている点が相違している。
【0065】
その他の点は実施の形態1で説明したものと同一である。そこで、実施の形態1(図1図4)で説明したものと同一の部分については図5図10において同一の符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0066】
実施の形態2の金属溶湯移送装置が備えている金属溶湯保持槽3は、溶湯排出管先端9aを取り囲んでいて、溶湯排出管7、8、9を介して移送されてきた金属溶湯を大気圧下で収容するものであって、金属溶湯保持槽3に収容される金属溶湯20cの液面20dの鉛直方向における高さ位置が、金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20の液面21の鉛直方向における高さ位置より低い位置に留まる構造を備えている。
【0067】
金属溶湯保持槽3に収容される金属溶湯20cの液面20dの鉛直方向における高さ位置が、金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20の液面21の鉛直方向における高さ位置より低い位置に留まる構造としては、金属溶湯保持槽3に収容される金属溶湯20cの液面20dの鉛直方向における高さ位置が、溶湯収容空間2aにおける鉛直方向で最も低い位置にある溶湯収容空間底面2cの鉛直方向における高さ位置より低くなる形態を採用することができる。
【0068】
また、金属溶湯保持槽3に収容される金属溶湯20cの液面20dの鉛直方向における高さ位置が、金属溶湯収容槽1における鉛直方向で最も低い位置にある金属溶湯収容槽底面1aの鉛直方向における高さ位置より低くなる形態を採用することもできる。
【0069】
このような構造としては、例えば、図7図8図示のように、金属溶湯保持槽3に収容された金属溶湯20cが金属溶湯保持槽3からあふれ出していく、金属溶湯保持槽3の周壁上端の鉛直方向における高さ位置が、金属溶湯収容槽1における鉛直方向で最も低い位置にある金属溶湯収容槽底面1aの鉛直方向における高さ位置より低い位置になっている構造を採用することができる。
【0070】
また、金属溶湯保持槽3に収容された金属溶湯20cの液面20dの鉛直方向における高さ位置が次第に上昇していき、排出管11の高さ位置になったときに、金属溶湯20cが金属溶湯保持槽3から排出管11を介して金属溶湯保持槽3の外部に排出されていくようにし、この時の排出管11の鉛直方向における高さ位置が、図7図8図示のように、金属溶湯収容槽1における鉛直方向で最も低い位置にある金属溶湯収容槽底面1aの鉛直方向における高さ位置より低い位置になっている構造を採用することもできる。
【0071】
この実施の形態の金属溶湯移送装置が備えている第二の気体圧入手段制御手段(不図示)は、実施の形態1における第一の気体圧入手段制御手段と同じく、気体圧入手段(不図示)による溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内への気体の圧入開始、圧入停止を制御するものである。
【0072】
実施の形態1における第一の気体圧入手段制御手段と同じく、気体圧送手段(不図示)による溶湯収容空間2a内への気体の圧入を、電気信号の入力に応じて作動する気体圧送手段(不図示)が、電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14が配備されている給気管6を介して溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2aに接続されている形態によって実現し、このような気体圧送手段(不図示)と、開閉切り替えバルブ14とにそれぞれ電気的に接続されていて、このような気体圧送手段(不図示)と、電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14とに対してそれぞれ所定の制御情報を入力するコンピュータ制御の第二の気体圧入手段制御手段を採用することができる。
【0073】
そこで、実施の形態1における溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段の機能と、第一の気体圧入手段制御手段の機能と、この実施の形態2における第二の気体圧入手段制御手段の機能を発揮する1台のコンピュータによる制御装置を採用することもできる。
【0074】
第二の気体圧入手段制御手段が行う制御は、溶湯収容空間2a内に金属溶湯20が流入し、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13が閉に切り替えられた後に、気体圧入手段(不図示)によって溶湯収容空間2aに気体を圧入し、溶湯収容空間2aに気体が圧入されたことで溶湯収容空間2aから溶湯排出管7、8、9を介して金属溶湯保持槽3に移送されてきた金属溶湯の金属溶湯保持槽3内における鉛直方向の液面20dの高さ位置が溶湯排出管先端9aの鉛直方向の高さ位置より高くなったときに前記気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入を停止するものである。
【0075】
溶湯排出管7、8、9を介して金属溶湯保持槽3に移送されてきた金属溶湯の金属溶湯保持槽3内における鉛直方向の液面20dの高さ位置が溶湯排出管先端9aの鉛直方向の高さ位置より高くなったことは、金属溶湯保持槽3の周壁上端部などに検知手段、例えば、光学的な検知手段(不図示)を配備しておいて検知することができる。
【0076】
湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段(不図示)が溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して閉に切り替える信号を送出した後、第二の気体圧入手段制御手段(不図示)が電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14に対して開に切り替える信号を送出し、気体圧入手段(不図示)に対して給気管6を介した溶湯収容空間2a内への気体圧入開始を指示する。
【0077】
溶湯収容空間2aに気体が圧入されたことで溶湯収容空間2a内に収容されている金属溶湯は溶湯排出管7、8、9を介して溶湯排出管先端9aに向けて移動し、この移動してきた金属溶湯が金属溶湯保持槽3に収容され、当該金属溶湯20cの金属溶湯保持槽3内における鉛直方向の液面20dの高さ位置が溶湯排出管先端9aの鉛直方向の高さ位置より高くなったことを前述した金属溶湯保持槽3の周壁上端部などに配備しておいた検知手段(不図示)が検知し、その旨の信号が第二の気体圧入手段制御手段(不図示)に送出されると、第二の気体圧入手段制御手段(不図示)は気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入を停止させる信号を気体圧入手段(不図示)に送り、電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14に対して閉(×)に切り替える信号を送出する。
【0078】
上述した構造、構成の金属溶湯移送装置において、更に、溶湯排出管吸引手段(不図示)と、溶湯排出管吸引手段制御手段(不図示)とが配備されている構造、構成にすることもできる。
【0079】
溶湯排出管吸引手段(不図示)は溶湯排出管基端7aと溶湯排出管先端9aとの間において鉛直方向における高さが最も高い位置における溶湯排出管に対して吸引管12を介して配備される。図示の実施形態では、鉛直方向に伸びている溶湯排出管7の上端と、鉛直方向に伸びている溶湯排出管9の上端との間が水平方向に伸びる溶湯排出管8で連結されているので、溶湯排出管8の鉛直方向で上側に吸引管12を介して溶湯排出管吸引手段(不図示)が配備されることになる。
【0080】
溶湯排出管吸引手段(不図示)は溶湯排出管8の内部から溶湯排出管8の外部に向けて吸引を行う手段である。例えば、電気的な吸引ポンプなどによって溶湯排出管吸引手段(不図示)を構成することができる。
【0081】
溶湯排出管吸引手段制御手段(不図示)は、上述した溶湯排出管吸引手段(不図示)による溶湯排出管8の内部から溶湯排出管8の外部に向けた吸引の開始及び、その停止を制御するものである。
【0082】
例えば、溶湯排出管吸引手段(不図示)による溶湯排出管8の内部から溶湯排出管8の外部に向けた吸引を、電気信号の入力に応じて作動する溶湯排出管吸引手段(不図示)が、電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ15が配備されている吸引管12を介して溶湯排出管8に接続されている形態によって実現し、このような溶湯排出管吸引手段(不図示)と、開閉切り替えバルブ15とにそれぞれ電気的に接続されていて、このような溶湯排出管吸引手段(不図示)と、電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ15とに対してそれぞれ所定の制御情報を入力するコンピュータ制御の溶湯排出管吸引手段制御手段(不図示)を採用することができる。
【0083】
そこで、実施の形態1における溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段の機能と、第一の気体圧入手段制御手段の機能と、この実施の形態2における第二の気体圧入手段制御手段の機能と、溶湯排出管吸引手段制御手段の機能とを発揮できるコンピュータからなる1台制御装置を採用することもできる。
【0084】
溶湯排出管吸引手段制御手段(不図示)が行う制御は、気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入が第二の気体圧入手段制御手段によって停止された後に、溶湯排出管吸引手段による溶湯排出管8の内部から溶湯排出管8の外部に向けた吸引を開始させ、溶湯排出管8内、あるいは、溶湯排出管7、9内に存在している金属溶湯が、図10図示のように、吸引管12の内部にまで流入したときに溶湯排出管吸引手段による溶湯排出管8の内部から溶湯排出管8の外部に向けた吸引を停止するものである。
【0085】
(実施の形態2の金属溶湯移送装置による移送方法の実施形態)
以上に説明した構成、構造からなる金属溶湯移送装置によって、大気圧下で金属溶湯収容槽1に収容されている金属溶湯20が、溶湯移送ポンプ2、溶湯排出管7、8、9を介してその先端である溶湯排出管先端9aまで移送され、開口している溶湯排出管先端9aから金属溶湯保持槽3内に収容され、更に、金属溶湯保持槽3から排出されて金属溶湯収容槽1の外部にまで移送されていく例を以下に説明する。
【0086】
なお、実施の形態1の金属溶湯移送装置による移送方法の実施形態と共通している部分は適宜省略して説明する。
【0087】
内部に溶湯収容空間2aを備えている溶湯移送ポンプ2が図5図示のように、金属溶湯収容槽1に大気圧下で収容されている金属溶湯20の中に沈設されている。
【0088】
溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段(不図示)によって溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13が開(〇)にされて溶湯収容空間2aが大気圧状態にされると、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20が矢印30a、30b、31、32a、32bで示すように、溶湯流入管4を介して、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内に流入してくる(図6)。
【0089】
ここで、溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁制御手段が溶湯移送ポンプ大気圧状態開閉切換え弁13に対して閉指示を行い、通気管5を介した溶湯収容空間2aと溶湯移送ポンプ2外部との間の気体の流動が停止される。
【0090】
引き続いて、第二の気体圧入手段制御手段(不図示)が電磁的な開閉切換え弁である開閉切り替えバルブ14に対して開(〇)に切り替える信号を送出し、気体圧入手段(不図示)に対して給気管6を介した溶湯収容空間2a内への気体圧入開始を指示する。
【0091】
これによって、給気管6を介して気体が矢印33、33aで示すように、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内に圧入され、溶湯収容空間2a内の金属溶湯の液面は矢印33b、33cで示すように押し下げられ、溶湯収容空間2a内の金属溶湯は、矢印34a、34bで示すように溶湯排出管7の中に押し入れられ、更に、矢印35、35a、35b、35cで示すように、溶湯排出管7、8、9の中を移動していく(図7)。
【0092】
こうして、溶湯収容空間2aに気体が圧入されたことで溶湯収容空間2aから溶湯排出管7、8、9を介して溶湯排出管先端9aに向けて移動してきた金属溶湯が金属溶湯保持槽3に収容され、金属溶湯保持槽3内の金属溶湯20cの鉛直方向の液面20dの高さ位置が溶湯排出管先端9aの鉛直方向の高さ位置より高くなると気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入が停止され、開閉切り替えバルブ14が閉(×)に切り替えられる(図8)。
【0093】
この状態では、図9図示のように、溶湯排出管7、8、9内に金属溶湯が充満している状態で、金属溶湯保持槽3内の大気圧下にある金属溶湯20cの液面20dの鉛直方向における高さ位置は、溶湯収容槽1の金属溶湯20の液面21の鉛直方向における高さ位置より低い。
【0094】
金属溶湯収容槽1における金属溶湯20は大気圧下にあり、金属溶湯収容槽1における金属溶湯20は、溶湯移送ポンプ2の溶湯流入管4内の金属溶湯、溶湯排出管7、8、9内の金属溶湯を介して、大気圧下にある金属溶湯保持槽3内の金属溶湯20cに連続している(図9)。
【0095】
そこで、開閉切り替えバルブ13、14が閉(×)になっていることで、サイホン現象により、大気圧下にある金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20が、溶湯流入管4の開口している溶湯流入管基端4aから溶湯流入管4内に矢印37a、37b、38で示すように流入し、矢印35で示すように溶湯排出管7内を上昇しようとする。
【0096】
この際、溶湯収容空間2a内の金属溶湯20bも矢印34a、34bで示すように溶湯排出管7の中に流入しようとする。溶湯流入管4は、溶湯流入管先端4bの外径が溶湯排出管基端7aの内径より小さく、溶湯流入管先端4bが溶湯排出管7の内部にまで伸びて溶湯排出管7の内側で開口しているので、溶湯流入管基端4aから溶湯流入管4内に矢印37a、37b、38で示すように流入し、矢印35で示す方向で溶湯流入管先端4bから溶湯排出管7内に吹き出る金属溶湯20の流速の方が、径が大きい溶湯排出管7内に開口している溶湯排出管基端7aから矢印34a、34bで示すように流入してきて矢印35で示す方向で溶湯排出管7内を上昇していこうとする金属溶湯20bの流速よりも大きくなる。
【0097】
こうして、上述したサイホン現象によって、矢印37a、37b、38で示すように溶湯流入管4内に引き込まれ、矢印35で示すように溶湯排出管7内を上昇しようとする金属溶湯収容槽1内に存在している金属溶湯20と、開口している溶湯排出管基端7aから矢印34a、34bで示すように溶湯排出管7中に流入して溶湯排出管7内を矢印35で示す方向に上昇する金属溶湯20bとが合流して、矢印35、35a、35b、35cで示すように、溶湯排出管7、8、9の中を流動していき、開口している溶湯排出管先端9aから矢印36a、36bで示すように、金属溶湯保持槽3内に流入し、矢印37、38で示すように、排出管11を介して金属溶湯収容槽1の外部に排出されていく。
【0098】
上述したように、溶湯収容空間2aに気体が圧入されたことで溶湯収容空間2aから溶湯排出管7、8、9を介して溶湯排出管先端9aに向けて移動してきた金属溶湯が金属溶湯保持槽3内に流入し、金属溶湯保持槽3内に収容された金属溶湯20cの液面20dの鉛直方向における高さが、溶湯排出管先端9aの鉛直方向における高さを越えた時点で、気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入を停止し、更に、必要であれば、開閉切り替えバルブ14を閉(×)に切り替えて、既に閉(×)になっている開閉切り替えバルブ13とによって、溶湯収容空間2a内への外部からの気体流入が停止されると、大気圧下にある金属溶湯収容槽1の金属溶湯20は、溶湯流入管4、溶湯排出管7、8、9内に充満している金属溶湯を介して金属溶湯保持槽3内の大気圧下にある金属溶湯20cに連続し、金属溶湯収容槽1内の金属溶湯20の液面21の鉛直方向高さ位置が、金属溶湯保持槽3内の金属溶湯20cの液面20dの鉛直方向における高さ位置より高いことから、サイホン現象で、金属溶湯収容槽1内に存在している金属溶湯20及び、溶湯移送ポンプ2の溶湯収容空間2a内に存在している金属溶湯20bを、溶湯排出管7、8、9を介して、金属溶湯保持槽3内に移送し、更に、金属溶湯保持槽3から金属溶湯収容槽1の外部に移送することができる。
【0099】
なお、溶湯収容空間2aに気体が圧入されたことで溶湯収容空間2aから溶湯排出管7、8、9を介して溶湯排出管先端9aに向けて移動してきた金属溶湯が金属溶湯保持槽3に収容され、金属溶湯保持槽3内の金属溶湯20cの鉛直方向の液面20dの高さ位置が溶湯排出管先端9aの鉛直方向の高さ位置より高くなって気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入が停止され、開閉切り替えバルブ14が閉(×)に切り替えられた(図8)後に、上述した溶湯排出管吸引手段制御手段(不図示)が行う制御が実行されるようにすることもできる。
【0100】
気体圧入手段(不図示)による溶湯収容空間2aへの気体の圧入が第二の気体圧入手段制御手段によって停止された後に、溶湯排出管吸引手段による溶湯排出管8の内部から溶湯排出管8の外部に向けた吸引を開始させ、溶湯排出管8内、あるいは、溶湯排出管7、9内に存在している金属溶湯が、図10図示のように、吸引管12の内部にまで流入したときに溶湯排出管吸引手段による溶湯排出管8の内部から溶湯排出管8の外部に向けた吸引を停止するものである。
【0101】
このようにすると、図10図示のように、確実に、溶湯排出管7、8、9内が金属溶湯によって充填される。そこで、上述したサイホン現象による金属溶湯の移送をより確実に行う上で効果的である。
【0102】
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明したが本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
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