(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ボール発射装置
(51)【国際特許分類】
A63B 69/40 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
A63B69/40 501P
(21)【出願番号】P 2020093805
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】596017602
【氏名又は名称】共和技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】田中 完ニ
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】溝田 武人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和夫
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022016(JP,A)
【文献】特表2007-528764(JP,A)
【文献】特開2009-213650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00 - 69/40
A63B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを発射する際に前記ボールを移動させる発射筒と、
前記発射筒の後端側に設けられると共に、前記発射筒に前記ボールを供給する供給口と、
前記発射筒内部に備わると共に前記供給口から供給された前記ボールを受けるボールホルダーと、
前記ボールホルダーにセットされた前記ボールの第1側方から出て前記ボールの第1側面に接触する第1回転子と、
前記ボールホルダーにセットされた前記ボールの第2側方から出て前記ボールの第2側面に接触して、前記第1回転子と共に前記ボールを前記第1側面および前記第2側面とで把持する第2回転子と、
前記第1回転子および前記第2回転子の少なくとも一方を回転させる回転駆動部と、
前記ボールホルダーの角度を回動させる角度駆動部と、
前記ボールホルダー内部で回転している前記ボールに空気圧を付与する空気圧付与部と、
前記空気圧付与部による空気圧の付与の直前に前記第1回転子と前記第2回転子による前記ボールの把持から離隔させる離隔制御部と、
前記ボールの供給から発射までを制御する制御部と、を備え、
前記第1側方と前記第2側方とは対になる逆方向であり、
前記第1側面は前記第1側方に対応する位置であり、前記第2側面は前記第2側方に対応する位置であり、
前記ボールホルダーにセットされた前記ボールに対して、前記第1回転子および前記第2回転子の両方が近づいて前記ボールに接触することで、前記第1回転子および前記第2回転子は、前記ボールの前記第1側面と第2側面とから、前記ボールを把持して回転させ、
前記
離隔制御部は、前記空気圧付与部が前記ボールに空気圧を付与する直前に、前記第1回転子および前記第2回転子を、前記ボールから離隔させることで、前記空気圧付与部は、前記ボールが回転状態で空気圧を付与可能である、ボール発射装置。
【請求項2】
前記ボール発射装置は、前記空気圧付与部による空気圧の付与による、空気圧によりボールを発射するボール発射装置である、請求項1記載のボール発射装置。
【請求項3】
前記ボールホルダーは、前記供給口および前記空気圧付与部による空気圧付与の位置と対応する位置に備わる、請求項1または2記載のボール発射装置。
【請求項4】
前記ボールホルダーは、対向する方向に対となる開口部を有し、
前記供給口から前記ボールが供給される際には、前記開口部は、前記供給口に連通する上側に向いており、
前記空気圧付与部から空気圧が付与される際には、対となる前記開口部のそれぞれは、前記発射筒の射出口および前記空気圧付与部を向いている、請求項3記載のボール発射装置。
【請求項5】
前記角度駆動部は、前記ボールの回転中であって前記ボールへの空気圧が付与される前に、前記ボールホルダーを回転させて、対となる前記開口部のそれぞれを、前記射出口および前記空気圧付与部に向ける、請求項4記載のボール発射装置。
【請求項6】
前記空気圧付与部は、前記開口部の一方から、前記ボールに空気圧を付与し、
空気圧を付与された前記ボールは、前記開口部の他方から、前記発射筒を移動して前記射出口から発射される、請求項5記載のボール発射装置。
【請求項7】
前記第1回転子および前記第2回転子の両方が回転して、把持している前記ボールを回転させる、請求項1から6のいずれか記載のボール発射装置。
【請求項8】
前記回転駆動部は、前記第1回転子および前記第2回転子を通じて、前記ボールの回転数を変化可能である、請求項1から7のいずれか記載のボール発射装置。
【請求項9】
前記回転駆動部は、前記第1回転子および前記第2回転子を通じて、前記ボールの回転方向を変化可能である、請求項1から8のいずれか記載のボール発射装置。
【請求項10】
前記第1回転子および前記第2回転子による前記ボールの回転は、前記ボールの発射方向に略垂直な回転軸での回転を含む、請求項9記載のボール発射装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記空気圧付与部による空気圧付与タイミングと、前記離隔制御部における離隔タイミングとを制御し、
前記制御部は、
前記空気圧付与タイミングに連動した所定時間だけ早いタイミングを、前記離隔タイミングとして前記離隔制御部での離隔を制御する、請求項1から10のいずれか記載のボール発射装置。
【請求項12】
前記供給口から前記ボールが前記ボールホルダーに供給されると、前記第1回転子および前記第2回転子が、前記ボールを把持し、
前記回転駆動部は、前記第1回転子と前記第2回転子を回転させて、前記ボールを回転させ、
前記角度駆動部は、前記ボールホルダーを回動させて、前記開口部を前記射出口および前記空気圧付与部
に向け、
前記制御部は、前記空気圧付与部による空気圧付与および前記離隔制御部による離隔を制御する制御信号を出力し、
前記離隔制御部は、前記第1回転子および前記第2回転子を、前記ボールから離隔させ、
前記空気圧付与部は、離隔直後に、前記ボールに空気圧を付与し、
前記回転状態にある前記ボールは、空気圧の付与により、前記発射筒を移動して前記射出口から発射される、
請求項4記載のボール発射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やテニスなど、ボールを使った球技の練習などにおいて使用されるボール発射装置であって、空気圧を用いたボール発射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
野球でのバッティング練習や、テニスでのストローク練習などにおいて、野球ボールやテニスボールを自動で発射するボール発射装置が用いられる。野球の練習に使用されるボール発射装置は、ピッチングマシンやバッティングマシーンと呼ばれる。このようにピッチングマシンやバッティングマシーンと呼ばれるボール発射装置が、野球のバッティング練習やテニスのストローク練習などで、練習者にとって利用されている。
【0003】
このようなボール発射装置の例として、先端にボールを載せたアームを回転させてボールを発射する装置(例えば、特許文献1参照)や、近接させた一対のローラの間にボールを通して、一対あるいは3つのローラの回転によりボールを発射する装置(例えば、特許文献2参照)が使用されている。
【0004】
特許文献1に開示されるようなアームを回転させてボールを発射する態様のものを、本明細書では「アーム式発射装置」という。また、特許文献2に開示される一対のローラの回転によりボールを発射する態様のものを、本明細書では、「ローラ式発射装置」という。
【0005】
ここで、ボール発射装置から発射される直球のボールは、ボールの発射方向(進行方向)に対して略垂直方向の回転軸をもって進行する。すなわち、進行方向に直交する回転軸によりバックスピンしながら進行する。発射されるボールに回転が無いと、発射されるボールは落下したりおかしな軌道を描いて進行したりしてしまうからである。
【0006】
すなわち、ボール発射装置は、ボールの発射に際して必要となる十分な回転をボールに付与することが求められる。この回転の付与が無いままに発射されると、基本となる直球が発射できないばかりか、定まらない軌道でのボールが到達することになり、野球のバッティング練習などに不向きとなるからである。
【0007】
これは、野球に限らずテニスなどの球技においても同様である。発射されるボールに十分な回転が付与されていないと、発射されるボールの飛翔や軌道が不安定となってしまい、練習などに不適な状態となってしまう。特に、直球をはじめとしたボールであって、発射のたびに適切で一定の軌道を描くボールが発射されるためには、十分かつ一定に保たれるのに十分な回転数が付与されることが必要である。
【0008】
特許文献1に代表されるアーム式発射装置は、アームの先端の受け皿にボールを載せて、アームの振り下ろしによってボールを発射する。このアームの受け皿での振り下ろしの際の摩擦のみで、ボールに回転が付与される。このため回転数が不十分となりやすい。勿論、回転数の制御ができない。また、ボールや受け皿が雨などで濡れている場合にも、ボールに付与される回転数が不十分となる問題がある。
【0009】
特許文献2に代表されるローラ式発射装置では、対向する2つのローラに送り出される際に、ボールに回転が付与される。しかし、2つのローラで送り出されることで、回転が相殺されてしまい、十分な回転数が付与されないこともあり得る。回転数を変化させるためには都度の調節などを必要とする。また、雨などによりボールやローラが濡れると、ローラでの送り出しでボールが滑ってしまい、どうしても回転数が十分に付与されないこともある。
【0010】
さらには、アーム式やローラ式のボール発射装置では、ボールが投じられる段階でのアームやローラとの接触のみで、ボールに回転が付与される。このため付与される回転数はどうしても不十分になり、発射されるボールが低速であったり高速であったりすると、ボールの速度と回転数とのアンバランスにより、発射されるボールの軌道が安定しない問題も生じる。
【0011】
また、アーム式やローラ式のボール発射装置では、装置の大型化や使用できる場所を選ぶなどの別の問題もある。また、球速などのバリエーションを広げることも難しい問題もある。
【0012】
このため、アーム式やローラ式ではなく、空気圧によりボールを発射する空気圧ボール発射装置の技術も提案されている(例えば、特許文献3、4、5参照)。
【0013】
空気圧によるボールの発射により、発射速度の多様化や装置の小型化、使用できる場所の幅広さの確保などを実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平9-38266号公報
【文献】特開2000-107339号公報
【文献】実開平1-77784号公報
【文献】特開2003-70951号公報
【文献】特表2007-528764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献3は、高圧空気の圧力を受けて筒を移動するボールの面に、山型の凸部を接触させてボールに摩擦を付与するボール回転手段を備えるピッチングマシンを開示する。特許文献4は、筒を移動するボールの一部の面に、2つの凸部が接触することで、人間の投手が二本の指でボールに摩擦を付与することを、模擬的に再現している。この模擬的な再現により、特許文献4に開示されるピッチングマシンは、ボールに回転を付与することができる。
【0016】
特許文献3は、発射部において空気圧が付与されて筒内を移動する際に、凸部によりボールに摩擦が付与される技術である。この摩擦の付与により、ボールに回転が付与される。
【0017】
しかしながら、ボール発射装置が屋外で使用されたりするとボールが濡れてしまうことがある。あるいはボール発射装置の少なくとも一部も濡れてしまうこともある。ピッチングマシンがバッティングセンターなどで使用される場合、投げられたあるいは打たれたボールは屋根のない場所を移動するので、雨天時にはボールが濡れた状態となりうる。勿論、グランドなどの屋外で使用される場合も同様である。
【0018】
このような濡れたボールがピッチングマシンに投入されると、濡れた状態で凸部と接触する。濡れた状態での接触では、十分な摩擦の付与ができず回転数が不十分となる問題がある。
【0019】
また、発射速度が低い場合(バッティングセンターなどで低速の使用もあり得る)には、凸部との摩擦が不足して、ボールがスリップするなどでやはり回転数が不十分となる問題がある。
【0020】
加えて、凸部は発射のたびにボールと接触する。このため、凸部は次第に摩耗して擦り減ったり変形したりする。この凸部の劣化の結果、ボールへ付与される回転数が不十分あるいは不安定となりえることがやはりあり得る。
【0021】
既述したように、ボール発射装置から発射されるボールに十分な回転数が付与されないと、適切な球種としてボールが発射されなかったり、軌道が不安定となって発射されたりしてしまう問題もある。
【0022】
特許文献4は、一端開口が圧力空気取入口となり、他端開口がボール発射口となる直線状の円筒管からなる発射管13と、該発射管13の内壁から突出したローラ20を備え、圧力空気によりボールを開口側へ移動させ、発射管13内で移動するボールの片側にローラ20を接触することにより、ボールにスピンをかけ、ボールの形状を大きく変形させることなく、スピンのかかったボールを発射するボール発射機を開示する。
【0023】
特許文献4も、ボールが移動する筒内部でボールの表面の一部に摩擦を与える。この摩擦によって、発射されるボールに回転を与えることができる。
しかしながら、特許文献4も特許文献3と同様の問題を有している。
【0024】
特許文献5は、縫目のあるボール26を、ボール投球装置10から投球される前に回転させる構造12及び方法に関する。本構造は野球のようなスポーツにおいて投球されるボールを模擬することができる。本構造は、少なくとも1組の対向するボール支持体28A、28Bを備えており、このボール支持体は、ボールが本構造から発射される前に、まず装填されたボールを予め決定された配置に設置し、次に予め決定された量の回転をボールに与えるボール投球装置を開示する。
【0025】
特許文献5は、筒内部の凸部などによる接触ではなくボールそのものを支持部材で回転させてから発射することを開示している。
【0026】
しかしながら、特許文献5は、回転しているボールをどのような機構や仕組みで発射するのかについて開示が無い。また、4方向からの支持部材でボールを把持して回転させているので、この状態からボール発射をするまでに処理時間を要する問題や、ボールを発射する際には回転が大きく減少してしまっている問題もある。
【0027】
また、ボールが支持部材に供給されてから発射筒によりボールが発射される一連の構造が不明瞭であるので、ボールのセットから回転付与を経て発射するまでの所要時間が大きくなりすぎる問題もある。また、4つの支持部材によりボールを把持することが前提であるが、バッティング練習などで使用されるボールのそれぞれでは、製造のばらつきや使用頻度によって、その直径や外形にわずかな相違がある。このため、4つの棒状の支持部材により、直径や外形に相違のあるボールのそれぞれを確実に把持させるのは難しい問題がある。
【0028】
把持させるのが難しいのを解消しようとして、支持部材を一つずつセットして把持しようとすると、ボールの支持部材へのセットに時間を要する問題がある。加えて、発射筒の中心に合わせた位置にボールをセットできず、ボールの発射軌道が不安定になる問題も有している。
【0029】
特に、特許文献5の開示内容によれば、ボールは発射筒の先端から投入されて後端にある支持部材にセットされる。このような構造では、発射筒が水平ないしは前方に傾いている状態ではボールがセットされない。これを回避するために、ボールをセットするたびに、発射筒を前方上向きにすると、ボール発射の際には発射筒の平面に対する角度を変化させるという動作を追加する必要がある。手作業であれば、ボール発射装置を使用した練習において、補助作業者を必要とする問題がある。自動にすると、機構の複雑化や故障要因の増加などに繋がり、使い勝手が悪い問題が生じる。勿論、発射間隔も長くなり、練習に不向きである。特にバッティングセンターなどでは、顧客不満足となってしまう問題も生じる。
【0030】
以上のように、従来技術のボール発射装置では、発射後にボールが移動する発射筒内部の接触部材との接触で回転を付与していた。しかし、上述のように、濡れている場合、低速発射の場合、接触部材の劣化による場合に、回転数が十分に付与されない問題があった。あるいは、特許文献5のように支持部材で回転させる場合には、全体動作の遅延や機構の複雑さに繋がったり、実際の使用には不便であったりする問題があった。
【0031】
本発明は、発射筒に投入したうえでボールを機械的に回転させ、回転している状態を維持して空気圧によって発射するボール発射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記課題に鑑み、本発明のボール発射装置は、ボールを発射する際にボールを移動させる発射筒と、
発射筒の後端側に設けられると共に、発射筒にボールを供給する供給口と、
発射筒内部に備わると共に供給口から供給されたボールを受けるボールホルダーと、
ボールホルダーにセットされたボールの第1側方から出てボールの第1側面に接触する第1回転子と、
ボールホルダーにセットされたボールの第2側方から出てボールの第2側面に接触して、第1回転子と共にボールを第1側面および第2側面とで把持する第2回転子と、
第1回転子および第2回転子の少なくとも一方を回転させる回転駆動部と、
ボールホルダーの角度を回動させる角度駆動部と、
ボールホルダー内部で回転しているボールに空気圧を付与する空気圧付与部と、
空気圧付与部による空気圧の付与の直前に第1回転子と第2回転子によるボールの把持から離隔させる離隔制御部と、
ボールの供給から発射までを制御する制御部と、を備え、
第1側方と第2側方とは対になる逆方向であり、
第1側面は第1側方に対応する位置であり、第2側面は第2側方に対応する位置であり、
ボールホルダーにセットされたボールに対して、第1回転子および第2回転子の両方が近づいてボールに接触することで、第1回転子および第2回転子は、ボールの第1側面と第2側面とから、ボールを把持して回転させ、
離隔制御部は、空気圧付与部がボールに空気圧を付与する直前に、第1回転子および第2回転子を、ボールから離隔させることで、空気圧付与部は、ボールが回転状態で空気圧を付与可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明のボール発射装置は、発射筒の上部から発射位置に供給されたボールが、ボールホルダーにセットされる。このセットされた状態でボールが回転させられる。ボールは機械的に回転させられるので、接触部材を使う場合に生じる問題を解決している。加えて、回転数や回転方向の前後も様々に自動制御できる。
【0034】
この制御された回転状態で、空気圧が付与されてボールが発射される。このため、十分な回転数をもってボールが発射される。特に、制御されて回転された回転数をもって発射されるので、確実な球種や軌道を再現できる。
【0035】
また、発射筒内部で回転を付与する接触部材を不要とできるので、その分に対応する発射筒を短くすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】従来技術における空気圧を用いたボール発射装置の側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1におけるボール発射装置の側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1におけるボール発射装置のボール設置部の内部を上から見た状態の模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態1におけるボールホルダー周辺の模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態1におけるボールホルダー周辺の模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態1におけるボールホルダー周辺の模式図である。
【
図7】本発明の実施の形態1におけるボール発射装置の一部を上方からみた状態を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における発射筒の前方から見た正面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における圧縮空気タンクとその周辺の側面図である。
【
図10】本発明の実施の形態2におけるボール発射装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第1の発明に係るボール発射装置は、ボールを発射する際にボールを移動させる発射筒と、
発射筒の後端側に設けられると共に、発射筒にボールを供給する供給口と、
発射筒内部に備わると共に供給口から供給されたボールを受けるボールホルダーと、
ボールホルダーにセットされたボールの第1側方から出てボールの第1側面に接触する第1回転子と、
ボールホルダーにセットされたボールの第2側方から出てボールの第2側面に接触して、第1回転子と共にボールを第1側面および第2側面とで把持する第2回転子と、
第1回転子および第2回転子の少なくとも一方を回転させる回転駆動部と、
ボールホルダーを回動させる角度駆動部と、
ボールホルダー内部で回転しているボールに空気圧を付与する空気圧付与部と、
空気圧付与部による空気圧の付与の直前に第1回転子と第2回転子によるボールの把持から離隔させる離隔制御部と、
ボールの供給から発射までを制御する制御部と、を備え、
第1側方と第2側方とは対になる逆方向であり、
第1側面は第1側方に対応する位置であり、第2側面は第2側方に対応する位置であり、
ボールホルダーにセットされたボールに対して、第1回転子および第2回転子の両方が近づいてボールに接触することで、第1回転子および第2回転子は、ボールの第1側面と第2側面とから、ボールを把持して回転させ、
開放制御部は、空気圧付与部がボールに空気圧を付与する直前に、第1回転子および第2回転子を、ボールから離隔させることで、空気圧付与部は、ボールが回転状態で空気圧を付与可能である。
【0038】
この構成により、内部環境や外部環境の影響を受けることなく、必要となる回転数を有したボールを発射することができる。
【0039】
本発明の第2の発明に係るボール発射装置では、第1の発明に加えて、ボール発射装置は、空気圧付与部による空気圧の付与による、空気圧によりボールを発射するボール発射装置である。
【0040】
この構成により、空気圧による発射の正確性に加えて、回転を持ったボール発射により、軌道安定したボールを発射できる。
【0041】
本発明の第3の発明に係るボール発射装置では、第1または第2の発明に加えて、ボールホルダーは、供給口および空気圧付与部による空気圧付与の位置と対応する位置に備わる。
【0042】
この構成により、供給口から供給されたボールはそのままボールホルダーにセットされる。
【0043】
本発明の第4の発明に係るボール発射装置では、第3の発明に加えて、ボールホルダーは、対向する方向に対となる開口部を有し、
供給口からボールが供給される際には、開口部は、供給口に連通する上側に向いており、
空気圧付与部から空気圧が付与される際には、対となる開口部のそれぞれは、発射筒の射出口および空気圧付与部を向いている。
【0044】
この構成により、ボールホルダーは、供給口からのボールを受けてセットすること、回転子による回転をさせること、空気圧により発射することを、実現できる。
【0045】
本発明の第5の発明に係るボール発射装置では、第4の発明に加えて、角度駆動部は、ボールの回転中であってボールへの空気圧が付与される前に、ボールホルダーを回転させて、対となる開口部のそれぞれを、射出口および空気圧付与部に向ける。
【0046】
この構成により、空気圧付与部は、ボールに空気圧を付与して発射させることができる。
【0047】
本発明の第6の発明に係るボール発射装置では、第5の発明に加えて、空気圧付与部は、開口部の一方から、ボールに空気圧を付与し、
空気圧を付与されたボールは、開口部の他方から、発射筒を移動して射出口から発射される。
【0048】
この構成により、回転状態を有するボールが発射される。回転を有しているので、軌道の安定したボールが発射できる。
【0049】
本発明の第7の発明に係るボール発射装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、第1回転子および第2回転子の両方が回転して、把持しているボールを回転させる。
【0050】
この構成により、ボールを機械的に確実に回転させることができる。
【0051】
本発明の第8の発明に係るボール発射装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、回転駆動部は、第1回転子および第2回転子を通じて、ボールの回転数を変化可能である。
【0052】
この構成により、ボールの種類、速度、球種、外部環境などの違いに応じて、最適な回転数で軌道を安定させたボールを発射できる。
【0053】
本発明の第9の発明に係るボール発射装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、回転駆動部は、第1回転子および第2回転子を通じて、ボールの回転方向を変化可能である。
【0054】
この構成により、回転方向の変化により球種などを変化させることも可能である。
【0055】
本発明の第10の発明に係るボール発射装置では、第9の発明に加えて、第1回転子および第2回転子によるボールの回転は、ボールの発射方向に略垂直な回転軸での回転を含む。
【0056】
この構成により、いわゆる直球のボールを、高い軌道安定性で発射できる。
【0057】
本発明の第11の発明に係るボール発射装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、制御部は、空気圧付与部による空気圧付与タイミングと、離隔制御部における離隔タイミングとを制御し、
制御部は、空気付与タイミングに連動した所定時間だけ早いタイミングを、離隔タイミングとして離隔制御部での離隔を制御する。
【0058】
この構成により、回転状態のボールを発射させることができる。
【0059】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0060】
(発明者による解析)
図1は、従来技術における空気圧を用いたボール発射装置の側面図である。ボール発射装置200は、発射筒201、圧縮空気タンク202、摩擦付与部材203をはじめとして、筐体や支持体などを備えている。発射筒201内部の所定位置に、ボール100が設置される。この設置されたボール100に圧縮空気タンク202から空気圧が付与される。この付与により、ボール100は、発射筒201内部を移動して、発射筒201から外部に発射される。
【0061】
このとき、発射筒201内部に装着された摩擦付与部材203に、ボール100が接触する。この接触により、ボール100には回転が付与される。この回転付与により、発射されるボール100は、適切な軌道をもって発射される。回転が付与されていないあるいは十分ではないと、ボール100はスピードに関わらず不安定な軌道で飛んでしまう。これに対して、回転が付与されていれば、ボール100は安定した軌道を描いて飛んでいく。
【0062】
しかしながら、このような従来技術のボール発射装置について、発明者は解析を行い次のように解決されていない問題を整理するに至った。
【0063】
(問題1)ボールが濡れていると、摩擦付与部材での回転付与が不十分となる。
ボール発射装置200は、バッティングセンターなどの半屋外であったり、グラウンドなどの屋外で使用されたりすることが多い。バッティングセンターなどでは、ボール発射装置200自身は屋根などでカバーされていても、ボールそのものは屋根のカバーのないところを飛んでいく(発射されたボールの飛行であっても、打撃されたボールの飛行であっても)。この時に、雨などに濡れてしまう。あるいは、ボールが回収される時に、雨などで直接あるいは間接的に濡れてしまう。
【0064】
このように、表面が濡れたボールが、ボール発射装置200に設置されてしまうことも生じうる。
【0065】
表面が濡れたボールは、発射筒201内部を移動して摩擦付与部材203で接触するときに、摩擦力が低くなってしまう。摩擦力が低くなることで、ボール100への回転付与が不十分となってしまう。この回転付与が不十分であることで、ボール100の軌道が不安定になってしまう問題がある。また、濡れたボール100が摩擦付与部材203と接触する際に、摩擦付与部材203が濡れてしまうこともある。これにより、次に発射されるボール100も回転付与が不十分となり、軌道が不安定で発射されてしまう。
【0066】
このように、ボール発射装置200を使用する場所の特性で、雨などによりボール100や摩擦付与部材203が濡れてしまうことも多い。これにより、摩擦付与部材203でのボール100への回転付与は不十分となってしまうことも多い。結果として、軌道安定をさせることの再現性が困難となりえる。
【0067】
(問題2)低速でのボール発射での問題
ボール発射装置200は、バッティングセンターや球技の練習において使用される。このとき、ボール発射装置200が発射するボール100は、低速で発射される必要があることもある。バッティングセンターや野球の練習などであれば、球速が60km/h~80km/hくらいの速度が低速として使用される。
【0068】
このような低速で発射される場合には、発射筒201を移動するボール100が摩擦付与部203と接触する際の接触圧力が低くなる。接触圧力が低くなると、当然にボール100への回転付与が弱くなる。回転付与が弱くなり、ボール100の回転数が不十分となると、発射されるボール100の軌道が不安定となる。低速であっても、直球やその他の球種としてのボール100の軌道は、安定性を持っていることが求められる。しかし、低速の場合には、この軌道の安定性が不十分となる問題がある。
【0069】
(問題3)摩擦付与部材の劣化の問題
摩擦付与部材203は、ボール発射装置200でのボール100の発射の際に、ボール100と接触する。発射筒201の内部で、ボール100は高速で移動するので、接触するたびに、摩擦付与部材203は劣化していく。表面が削れたり、損耗したりするからである。摩擦付与部材203が劣化していくと、ボール100が発射筒201を移動する際に付与できる摩擦力が弱くなり、回転付与が弱くなる。
【0070】
上述の通り、回転付与が弱くなると、発射されるボール100の回転数や回転力が低くなり、ボール100の軌道が不安定になる問題がある。
【0071】
これを防止するためには、摩擦付与部材203を頻繁に交換する必要があるが、そうなると、コストがかさんでしまう問題がある。
【0072】
また、これら以外として、発射筒201を移動する際に摩擦付与部材203とボール100が十分に接触しなければならない。このため、摩擦付与部材203は、ある程度の長さを持っている必要があるし、その長さに対応する発射筒201の長さも長くなる必要がある。結果として、発射筒201の全長が長くならざるを得ず、ボール発射装置200の全体が大型化してしまう問題につながってしまう。また、摩擦付与部材203とボール100との接触によって、発射されるボール100の軌道方向の精度が低下する問題もある。
【0073】
発明者は、このような解析の結果、本発明に至った。
【0074】
(全体概要)
【0075】
図2は、本発明の実施の形態1におけるボール発射装置の側面図である。
図3は、本発明の実施の形態1におけるボール発射装置のボール設置部の内部を上から見た状態の模式図である。
【0076】
ボール発射装置1は、発射筒2、供給口3、ボールホルダー50、第1回転子51、第2回転子52、回転駆動部6、角度駆動部7、離隔制御部8、制御部9、空気圧付与部41と、を備える。また、供給口3からボール100が設置されて回転をさせられる領域として、ボール設置部5が備わる。また、全体を支持する台座11、ボール100に空気圧を付与する圧縮空気空気タンク4を備える。
【0077】
ボール100は、ボール設置部5に設けられた供給口3からボール設置部5に供給され、ボール設置部5内部のボールホルダー3に設置される。ボールホルダー3にセットされたボール100の両側面のそれぞれは、第1回転子51と第2回転子52とで把持される。これら第1回転子51と第2回転子52とに把持されて、ボール100は、進行方向に沿った方向で回転する(第1回転子51と第2回転子52とにより構成される進行方向に交差する方向を回転軸として回転する)。
【0078】
この回転により、従来技術のような摩擦付与部材での回転付与ではなく、機械的に確実に回転が付与される。十分な回転数となったところで、回転付与が続きながらボールホルダー3が回動して、発射筒2の発射方向にボール100が向くようになる(角度回動部7がボールホルダー3を回動させる)。この状態で、制御部9は、圧縮空気タンク4と離隔制御部8とに指示を送り、ボール100を把持している第1回転子51と第2回転子52とをボール100から離隔させ、合わせて圧縮空気タンク4からの空気圧をボール100の背面(発射筒2の射出口21と逆側)に、付与する。
【0079】
この付与により、回転状態を維持しているボール100に発射のための空気圧が付与される。これにより、回転した状態で、ボール100が発射筒2から発射される。すなわち、回転状態でのボール100が発射される。この結果、ボール発射装置1は、軌道を安定させたボール100を発射できる。従来技術と異なり、摩擦付与部材を用いた回転付与ではないので、雨天などによりボール100などが濡れていることにより回転不足の問題、摩擦付与部材の劣化による回転不足の問題、交換コストの問題、低速発射の場合の回転不足の問題などを解決している。これらの解決によって、発射されるボール100の軌道を、その球種や速度に対応して安定させることができる。
【0080】
発射筒2は、ボール100を発射する際に、ボール100を移動させる。発射筒2は、ボール100を増速させて発射する本体部分である。この発射筒2内部で、ボール100は空気圧の付与を受けて移動し、射出口21から発射される。発射筒2内部をボール100が移動することにより、軌道を持ったボール100の発射が行われる。
【0081】
ボール設置部5は、ボール100が設置される部分であり、ボール100の回転および空気圧の付与が行われる部分である。ボール設置部5は、発射筒2と連通している。ボール設置部5は、組み立てにより発射筒2と組み合わされればよい。あるいは、一体構成であってもよい。供給口3は、ボール設置部5に備わり、発射筒2(すなわち、ボール設置部5)に、ボール100を供給する。供給方法は様々でよいが、自由落下により供給されればよい。
【0082】
また、ボール設置部5にボール100が設置されているときに、
図2に示されるようにシールリング55によりボール100が挟まれて固定されることも好適である。これにより、ボール100に空気圧が付与される際に、ボール100の周囲に空気が漏れてしまってボール100への空気圧付与が不足することを防止できるからである。
【0083】
ボールホルダー50は、ボール設置部5内部に備わる。また、ボールホルダー50は供給口3に繋がる(物理的につながることに限定されるものではない)態様であり、供給口3から供給されたボール100を受ける。すなわち、供給口3から供給されたボール100は、ボールホルダー50に設置される(セットされる)。
図3は、このボールホルダー50にボール100がセットされた状態が示されている。
【0084】
第1回転子51は、ボールホルダー50にセットされたボール100の一方の側方である第1側方から出て、ボール100の第1側面に接触可能である。第1回転子51は、
図3の矢印Bの方向に移動可能であり、ボール100がボールホルダー50にセットされると、第1回転子51は、ボール100に向けた方向に移動する。この移動によって、ボール100の第1側面に第1回転子51が接触する。
図3は、第1回転子51がボール100の一方の側面である第1側面に接触している状態を示している。
【0085】
第2回転子52は、ボール100を間にして、第1回転子51と逆側に備わる。第2回転子52は、第1側面と逆側のボール100の側面である、第2側面に接触可能である。
図3における矢印Cのように、第2回転子52は、ボール100に対して移動可能である。ボール100がボールホルダー50にセットされると、第2回転子52は、ボール100の第2側面に向けて移動する。移動によって、第2回転子52が、ボール100の他方の側面である第2側面に接触する。
図3は、第2回転子52がボール100の第2側面に接触している状態を示している。
【0086】
すなわち、
図3のように、第1回転子51と第2回転子52とは、ボール100を両側面から把持する。第1回転子51と第2回転子52とは、対になる逆方向であるので、第1側面と第2側面とは、対になる逆方向である。第1側面は、第1回転子51がボール100の接触のために近づいてくる第1側方に対応する位置である。第2側面は、第2回転子52がボール100への接触のために近づいてくる第2側方に対応する位置である。
【0087】
回転駆動部6は、第1回転子51および第2回転子52の少なくとも一方を回転させる。少なくとも一方を回転させるので、第1回転子51だけあるいは第2回転子52だけを回転させてもよいし、両方を回転させてもよい。また、第1回転子51および第2回転子52の少なくとも一方が回転することで、ボール100を介して対となる回転子も回転を受けて回転する。すなわち、一方だけが回転する場合でも両方が回転する場合でも、第1回転子51と第2回転子52との両方が回転する。
【0088】
この両方の回転により、ボール100は、第1回転子51と第2回転子52とで把持されてできる回転軸に基づいて、回転を行う。
図2、
図3では、発射筒2の延伸方向を基準として側方から第1回転子51と第2回転子52とが、ボール100を把持している。すなわち、
図2、
図3では、発射筒2の延伸方向に略直交する方向が回転軸となる。この回転軸でボール100は回転するので、
図2、
図3に示す矢印Aの方向に回転する。あるいは、矢印Aと逆方向(矢印B)に回転してもよい。このように、第1回転子51および第2回転子52は、ボール100の第1側面と第2側面とから、ボール100を把持して回転させる。
【0089】
第1回転子51と第2回転子52とは、同じ駆動部である回転駆動部6によって回転させられる。このとき、回転駆動部6のリンク機構で第1回転子51と第2回転子52とを同時に把持してさらに離隔させることで、ボール100を常に中心位置で回転させることができる。特に、ボール100の直径にばらつきがある場合でも、発射筒2の中心軸に合わせた中心において、ボール100を回転させることができる。この回転中心を、発射筒2の中心軸に合わせることで、発射されるボール100は、発射筒2の内壁に接触したり衝突したりすることが防止できる。
【0090】
なお、
図3では、ボール発射装置100の要素を説明するために、制御部9などの要素を模式的に示している。この示しているそれぞれの要素の配置は、理解のためであって、実際のボール発射装置100において、この位置に配置されているというものではない。
【0091】
このとき、ボールホルダー50は、ボール100がセットされたことを検出する。接触センサーや光学センサーなどの各種のセンサーが用いられれば検出が可能である(供給口3からボール100が供給されると光学センサーなどが判断して検出される)。検出結果は、制御部9に出力される。制御部9は、この検出結果を受けて、回転駆動部6を制御して、回転駆動部6による第1回転子51および第2回転子52の少なくとも一方の回転を行わせる。
【0092】
空気圧付与部41が、圧縮空気タンク4からの圧縮空気による空気圧を、ボール100に付与する。このとき、ボールホルダー50は、ボール100の背面にも物理的に存在している。このため、このままでは空気圧付与部41は、ボール100の背面に空気圧を付与できない。ボール100を発射筒2から発射するためには、空気圧付与部41は、ボール100の背面に空気圧を付与する必要があるからである。
【0093】
図4は、本発明の実施の形態1におけるボールホルダー周辺の模式図である。
図5は、本発明の実施の形態1におけるボールホルダー周辺の模式図である。
図6は、本発明の実施の形態1におけるボールホルダー周辺の模式図である。
図3と異なり、
図4~
図6は、実際のボール発射装置1の配置として想定される配置で要素を示している。
図3に示した制御部9などは備わっているが、実際の動作説明のために省いて示している。
【0094】
図4の段階では、上述したように回転駆動部6によって、第1回転子51と第2回転子52がボール100を、矢印Aの方向に回転させている。つまり、ボール100は、矢印Aの方向に回転している状態である(上述の通り逆回転の場合でもよい)。このとき、ボールホルダー50の一部は、ボール100の背面であって空気圧付与部41と対面する場所にある。
【0095】
図4の状態に続いて、
図5の状態となる。
図5では、角度駆動部7がボールホルダー50を回動させる。ボールホルダー50は、上方にある供給口3からのボール100の供給を受ける。その態様からボール100を回転させている間は、
図4のようにボール100の背面をボールホルダー50の一部が塞いでいる。角度駆動部7が、このボールホルダー50を回動させることで、背面を塞ぐ部分がなくなり解放される。
図5は、ボールホルダー50が回動して、ボール100の背面が解放されている状態を示している。また、同時に供給口3は、ボールホルダー50によって閉鎖される。
【0096】
解放されることで、空気圧付与部41は、ボール100を発射するために、ボール100の背面に空気圧を付与することができるようになる。制御部9は、この角度駆動部7を制御して、ボールホルダー50を回動させる。
【0097】
次に、
図6のような状態となる。
図6は、離隔制御部8が、第1回転子51と第2回転子52とを、ボール100の第1側面および第2側面のそれぞれから離隔させた状態を示している。
【0098】
制御部9は、離隔制御部8に指示信号を出力する。この指示信号による制御で、離隔制御部8は、第1回転子51を、把持しているボール100の第1側面から離隔させる。同様に、離隔制御部8は、第2回転子52を、把持しているボール100の第2側面から離隔させる。第1回転子51および第2回転子52のボール100の接触からの離隔は、同等のタイミングで行われればよい。同じ離隔制御部8によって動作されるので、第1回転子51と第2回転子52とは、同時にボール100から離隔する。
【0099】
この状態で、制御部9は、空気圧付与部41を制御する。制御を受けた空気圧付与部41は、ボール100の背面に空気圧を付与する。このとき、第1回転子51と第2回転子52の離隔のタイミングの直後に、空気圧付与部41が、空気圧を付与する。このため、空気圧の付与を受ける瞬間においては、ボール100は、まだ回転状態を維持している。すなわち、空気圧付与部41は、ボール100が回転状態にあるままで、ボール100に空気圧を付与することができる。
【0100】
図6に示されるように、ボール100は、回転状態を維持したまま発射筒2を移動して、射出口21から発射される。この回転は、ボール100を把持する第1回転子51および第2回転子52による機械的な回転である。従来技術のような摩擦付与部材での摩擦による回転付与ではない。このため、発射されるボール100は、確実かつ十分な回転を有している。また、回転駆動部6による機械的な回転であるので、正確に制御された回転数を有している。
【0101】
ボール100が濡れている、摩擦付与部材の劣化、発射速度が低速であるなどの問題がなく、確実に回転をもって発射される。加えて、第1回転子51および第2回転子52による機械的な回転を受けての発射なので、回転不足などの問題も低減できる。また、機械的回転であるので、回転数も自在に制御できる。発射速度やボール100の種類、発射筒2の長さや摩擦付与部材の特性などに依存することなく、ボール100が所望の回転数で回転する。この回転状態で、ボール100が発射されるので、ボール100は、適切な軌道をもって飛行できる。
【0102】
このように、本発明のボール発射装置1は、外部環境、内部環境によるばらつきなどがなく、確実な回転をもってボール100を発射することができる。結果として、常に軌道安定したボール100の飛行(発射から到達まで)を実現できる。このため、様々な場所、場面、練習に最適に使用することができる。
【0103】
また、ボール100を発射する発射速度とボール100に付与する回転数とは、独立して制御することができる。このため、低速でも回転数の多いボール100の発射や、高速でも回転数の少ないボール100の発射など、様々な速度と回転数のボール100を発射できる。
【0104】
(発射筒)
発射筒2は、ボール100を発射する本体部である。発射筒2は、内部断面は円形であり、発射されるボール100の形状や大きさに合わせられていればよい。なお、外形は、円筒形でも角筒形状でもよい。上述した通り、発射筒2の一部は、ボール設置部5になっている。
【0105】
発射筒2は、実際にボール100が射出される射出口21を先端に設けている。この射出口21からボール200は、発射される。従来技術のように、発射筒2内部に摩擦付与部材を設置する必要が無いので、発射筒2の長さを短くすることもできる。
【0106】
また、発射筒2内部の内径と形状は、ボール100の直径と形状に合わせられることも好適である。ボール100に付与される空気圧の空気を、発射筒2内部でボール100に十分に付与できる(ボール100の周辺で漏れにくい)。よって、発射筒2から効率よく発射できる。。
【0107】
ボール設置部5に供給口3が備わる。供給口3の上に、ボール100を誘導する誘導管路などが設けられてもよい。この誘導管路により、ボール100が供給口3から発射筒2内部に供給される。
【0108】
(ボールホルダー)
ボールホルダー50は、供給口3および空気圧付与部41による空気圧付与の位置に対応する位置に備わる。この位置に備わることで、供給口3から入ってきたボール100は、そのままボールホルダー50にセットされる。ボールホルダー50は、ボール100の形状と大きさに合わせて受ける形状を有している。これにより、ボールホルダー50の内部に、きちんとボール100がセットされる。
【0109】
ボールホルダー50は、対向する方向に対となる開口部55を有する。
図4、
図5は、対となって相互に対向する開口部55を示している。供給口3からボール100が供給される状態では、開口部55は、供給口3に連通する上側を向いている。これは
図4の状態である。
図4では、開口部55が上側を向いている。
【0110】
一方、角度駆動部7により、ボールホルダー50が回動させられると、
図5、
図6のように、対となる開口部55は、発射筒2の射出口21および空気圧付与部41を向くようになる。この向きに開口部55がセットされると、空気圧付与部41から一方の開口部55を介して空気圧がボール100に付与される。付与されたボール100は、もう一方の開口部55から発射される。
【0111】
このように、ボールホルダー50と角度駆動部7とにより、ボール供給部3から供給されるボール100をセットすること、第1回転子51と第2回転子52とによるボール100の回転、および空気圧付与によるボール100の発射を実行できる。
【0112】
(空気圧付与部)
図7は、本発明の実施の形態1におけるボール発射装置の一部を上方からみた状態を示す説明図である。空気圧付与部41は、圧縮空気タンク4に繋がっている。空気圧付与部41は、この圧縮空気タンク4とつながっていることで、圧縮空気タンク4からの圧縮空気をボール100に付与できる。また、
図6のように、空気圧付与部41が空気圧を付与するときは、ボールホルダー50の開口部55が、発射筒2に沿って開いている。
【0113】
これにより、空気圧付与部41は、ボール100の背面に空気圧を付与してボール100を、射出口21まで移動させて外部に発射させることができる。
【0114】
また、制御部9が、空気圧付与部41を制御する。制御部9は、供給口3からボール100がボールホルダー50にセットされたことを検出した後で、第1回転子51と第2回転子52とのそれぞれを、ボール100の第1側面と第2側面とに接触させる。併せて、制御部9は、回転駆動部6に指示を出して第1回転子51と第2回転子52とを回転させる。これらの回転により、ボール100が回転する。
【0115】
このとき、制御部9もしくは回転駆動部6においては、ボール100の回転数などを設定しておく。この設定に基づいて、回転駆動部6が、ボール100を所定の回転数で回転させる。制御部9は、回転数が適切になったことを検出するあるいは回転開始から一定時間経過したことを受けて、離隔制御部8、角度駆動部7に指示信号を出力する。角度駆動部7は、ボールホルダー50を回転させて空気圧の付与による発射可能状態を作る。これに合わせて離隔制御部8は、第1回転子51と第2回転子52とを、ボール100から離隔させるようにする。
【0116】
さらに、これらと合わせて(連動して)、制御部9は、空気圧付与部41に空気圧の付与を指示する。指示を受けた空気圧付与部41は、上述のように、ボール100の背面に空気圧を付与する。この瞬間においては、ボールホルダー50は回動して空気圧付与と発射筒2からのボール100の発射が可能な状態であると共に、第1回転子51および第2回転子52とは、ボール100から離隔している。制御部9は、これらを制御している。この結果、空気圧付与部41は、ボール100を発射させるための空気圧付与ができ、ボール100が発射筒2から発射される。
【0117】
なお、空気圧付与部41は、圧縮空気タンク4からの圧縮空気によって空気圧を付与する。
【0118】
(第1回転子、第2回転子)
図3~
図7に示されるように、第1回転子51と第2回転子52とが、ボール100の両側面に接触して、ボール100を回転させる。
図7に示すように、第1回転子51と第2回転子52のそれぞれは、ボールホルダー50を貫通する構造でもよい。ボールホルダー50を貫通する構成であることで、ボールホルダー50にセットされたボール100へ第1回転子51と第2回転子52が接触したり離隔したりすることが容易にできるようになる。
【0119】
ボール100がボールホルダー50にセットされたことを検出した制御部9は、第1回転子51と第2回転子52に指示信号を出力する。この指示を受けた第1回転子51と第2回転子52のそれぞれはボール100側に移動して、ボール100を把持(把持)する。
図7のように、ボールホルダー50を貫通する構成であると、ボールホルダー50にセットされているボール100に対して、ボールホルダー50を貫通しつつ、第1回転子51と第2回転子52とがボール100に近づく。近付くと、第1回転子51と第2回転子52とは、ボール100を把持する。
【0120】
制御部9は、第1回転子51と第2回転子52の移動と合わせて回転駆動部6に、回転も指示している。あわせて、回転している際に動作する角度駆動部7にも指示を行う。
【0121】
これにより、第1回転子51と第2回転子52は、ボール100を両側面から把持(把持)して、ボール100を回転させる。このとき、第1回転子51と第2回転子52のいずれか一方のみにモーターなどの回転駆動部6が連結して、一方のみが回転させられてもよい。このときは、直接的に回転させられない回転子は、相手の回転子の回転を受けて回転する構成であればよい。この状態でも、第1回転子51と第2回転子52とは、ボール100を回転させることができる。
【0122】
あるいは、回転駆動部6は、第1回転子51および第2回転子52の両方を直接的に回転させてもよい。この場合にも、第1回転子51と第2回転子52は、ボール100を回転させることができる。後者の場合には、より十分なレベルでの回転を行わせることができる。
【0123】
また、制御部9による制御にもとづいて、回転駆動部6は、回転数などを変化させることができる。この回転数変化により、実際にボール100を回転させる第1回転子51、第2回転子52のそれぞれは、ボール100の回転数を変化させることができる。速度によって、発射軌道を安定させるのに適切な回転数は異なることがある。あるいは、ボール100の種類、ボール発射装置1の使用目的、使用される外部環境、球種などによって、最適な回転数がある。回転駆動部6は、これらに合わせた回転数に変化させて、ボール100を回転させればよい。
【0124】
ここで、
図3~
図7のように、第1回転子51と第2回転子52とが、発射筒2の移動方向を基準として、ちょうど両サイドとなる第1側面と第2側面からボール100を把持していることがある。この場合には、ボール100の発射方向に略垂直な回転軸で回転する。この略垂直な回転軸での回転をした状態のまま、空気圧の付与を受けたボール100が、発射筒2から発射される。
【0125】
図8は、本発明の実施の形態1における発射筒の前方から見た正面図である。発射筒2の射出口21から見た状態を示している。ボール100は、上方から落下するなどして、供給口3からボール100がボールホルダー50に供給される。
図8に示すように、ボール100をセットするボールホルダー50は、射出口21と連通している。この連通状態で、ボール100は、ボールホルダー50の中で回転させられる。
【0126】
回転している状態で、空気圧付与部41から空気圧が付与される。このとき、上述したように、ボールホルダー50が回動しているので、ボールホルダー50の開口部55は空気圧付与部41と射出口21と連通している。この連通状態により、空気圧付与部41からの空気圧を受けたボール100が、射出口21から発射される。
【0127】
(圧縮空気タンク)
上述したように、空気圧付与部41は、圧縮空気タンク4からの圧縮空気を用いて、ボール100に設定された球速に対応する空気圧を付与する。
図9は、本発明の実施の形態1における圧縮空気タンクとその周辺の側面図である。圧縮空気タンク4は、空気圧付与部41に繋がっている。空気圧付与部41は、発射筒2においてボールホルダー50にセットされたボール100へ空気圧を付与する(ボール100が回転した状態のまま)。
【0128】
このため、圧縮空気タンク4も、発射筒2に繋がって備わっていればよい。
図9は、その一例の構成を示している。圧縮空気タンク4が、発射筒2の後端に繋がっている。これにより、空気圧付与部41は、圧縮空気タンク4からの圧縮空気を発射させて、空気圧としてボール100に付与することができる。
【0129】
(離隔制御部)
離隔制御部8は、第1回転子51と第2回転子52を、把持しているボール100の両側面から離隔させる。回転させている状態で離隔させることで、ボール100を空気圧の付与により発射することができる。
【0130】
このとき、ボール100に空気圧が付与される直前に、離隔制御部8は、第1回転子51および第2回転子52を離隔させる。この直前の離隔により、ボール100の回転を維持したまま、空気圧付与部41による空気圧の付与によりボール100を発射することができる。
【0131】
制御部9は、空気圧付与部41による空気圧付与タイミングと、離隔制御部8における離隔タイミングを制御する。ここで、制御部9は、空気圧付与タイミングに連動した所定時間だけ早いタイミングを、離隔タイミングとする。この所定時間だけ早いタイミングである離隔タイミングにおいて、制御部9は、離隔制御部8が第1回転子51と第2回転子52とを離隔させるように制御する。
【0132】
離隔制御部8は、空気圧によって、ボール100からの第1回転子51と第2回転子52の離隔を行うこともよい。離隔制御部8が、空気圧によって第1回転子51と第2回転子52とを離隔させることで、離隔動作を高速に行うことができる。また、制御部9からの空気圧付与タイミングと離隔タイミングとの連動での制御では、空気圧による離隔制御は反応が早く正確に動作させることのできるメリットがある。
【0133】
特に、空気圧付与部41も、空気圧をボール100に付与する。これと連動する直前の離隔制御も空気圧で動作する。これらの連動する動作が空気圧で動作することで、正確で敏速な動作が可能となる。
【0134】
もちろん、空気圧ではなく機械的、電子的な動作によって、離隔制御部8が第1回転子51および第2回転子52の離隔動作を行ってもよい。この場合にも、制御部9が、離隔タイミングと空気圧付与タイミングを連動させて制御する。
【0135】
以上のように、実施の形態1におけるボール発射装置1は、内部環境や外聞環境などの影響を受けることなく、飛行軌道を安定させるのに十分な回転をもって、ボール100を発射させることができる。
【0136】
(実施の形態2)
【0137】
図10は、本発明の実施の形態2におけるボール発射装置の側面図である。
【0138】
まず、ボール100が、供給口3からボール100が発射筒2内部に供給される。より具体的には、発射筒2の一部であるボール設置部5内部に供給される。そのままボールホルダー50にボール100が供給されて、ボール100がセットされる。
【0139】
ボールホルダー50にセットされたことは検出される。検出結果が、制御部9に出力される。制御部9は、離隔制御部8に指示信号を出力する。指示信号を受けた離隔制御部8は、第1回転子51および第2回転子52を、ボール100に接触させる。この接触により、第1回転子51と第2回転子52とが、ボール100を把持する。
【0140】
次いで、制御部9の制御に基づいて、回転駆動部6が、第1回転子51および第2回転子52を回転させる。回転に伴い、把持されているボール100も回転する。すなわち、ボール100を回転させる。
【0141】
制御部9は、角度駆動部7も制御する。角度駆動部7は、ボール100の回転数が所望のレベルに到達したところで、ボール100を回転させながらボールホルダー50を回動させる。回動によって、ボールホルダー50の対となる開口部55のそれぞれは、発射筒2に沿って連通するようになる。すなわち、射出口21から見て発射筒2内部のボール100が見えるような状態となる。さらに、ボール100の背面も連通して、ボール100の背面へ空気圧を付与できる状態となる。
【0142】
制御部9は、離隔制御部8に離隔を指示する信号と空気圧付与部41に空気圧を付与する信号とを、連動して出力する。この連動は、実施の形態1で説明した離隔タイミングと空気圧付与タイミングである。離隔制御部8は、第1回転子51と第2回転子52とを、ボール100から離隔させる。直後に、空気圧付与部41が、ボール100に空気圧を付与する。このとき、ボール100は回転状態にある。
【0143】
空気圧付与によって、回転状態にあるボール100が、発射筒2内部を移動して射出口21から発射される。発射されるボール100は、十分な回転数を持っているので、安定した軌道で発射される(飛行する)。
【0144】
なお、実施の形態1、2で説明したボール発射装置1は、野球、テニスなど、種々の球技の練習やレクリエーションに用いられる。用いられる球技の種類に応じたボールが用いられれば良い。
【0145】
以上、実施の形態1~2で説明されたボール発射装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0146】
1 ボール発射装置
2 発射筒
21 射出口
3 供給口
4 圧縮空気タンク
41 空気圧付与部
5 ボール設置部
51 第1回転子
52 第2回転子
6 回転駆動部
7 角度駆動部
8 離隔制御部
9 制御部
100 ボール