(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】つりチェーン用クランプを用いた保全工法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20240624BHJP
E04G 3/00 20060101ALI20240624BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20240624BHJP
E04G 5/04 20060101ALI20240624BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
E04G23/02 A
E04G3/00 K
E04G3/24 302H
E04G5/04 F
E04G5/00 301J
(21)【出願番号】P 2020124886
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503055554
【氏名又は名称】ヤマダインフラテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】山田 博文
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔平
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082071(JP,A)
【文献】特開平01-256661(JP,A)
【文献】特開昭62-023468(JP,A)
【文献】特開2018-159172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G1/00-7/34
23/00-23/08
27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
つりチェーン用クランプを用いた保全工法であって、
一のつりチェーンは少なくとも一対のつりチェーン用クランプを具備しており、前記一対のつりチェーン用クランプを被取り付け部材に取り付ける取り付け工程と、
前記取り付け工程の後に、前記被取り付け部材に対してブラスト処理を実行する第一ブラスト工程と、
前記第一ブラスト工程の後に、前記一対のつりチェーン用クランプのうちいずれか一方のみを取り外す取り外し工程と、
前記取り外し工程の後に、前記一方のつりチェーン用クランプが取り外された部位にブラスト処理を実行する第二ブラスト工程と、
前記第二ブラスト工程の後に、前記第二ブラスト工程でブラストされた部位に前記一方のつりチェーン用クランプを取り付け、その後他方のつりチェーン用クランプを取り外すクランプ入れ替え工程と、
前記クランプ入れ替え工程の後に、前記他方のつりチェーン用クランプが取り外された部位にブラスト処理を実行する第三ブラスト工程と、
を含む
ことを特徴とするつりチェーン用クランプを用いた保全工法。
【請求項2】
前記第二ブラスト工程の後に、前記第二ブラスト工程が実行された部位に塗装を実行する第一塗装工程と、
前記第三ブラスト工程の後に、前記第三ブラスト工程が実行された部位に塗装を実行する第二塗装工程と、
をさらに含む
請求項1に記載のつりチェーン用クランプを用いた保全工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つりチェーン用クランプを用いた保全工法及び当該保全工法に用いられるクランプセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、新設するものや既設のものに関わらず鋼橋等の鋼構造物はサビ等の発生を防ぐために、あるいは特に既存の鋼構造物においては経年劣化によって腐食が進行した塗装の更新のために、予防保全が施されている。このように予防保全は、サビ等を取り除いたり、古い塗膜を取り除いたりする必要があるため、近年ではブラスト処理(1種ケレン)によってサビや塗膜を除去し、その後、新規の塗装を施すことが行われている。
【0003】
上述のブラスト処理や塗装を施すために、作業現場では足場が組まれる。特に、鋼橋においては例えば非特許文献1に開示されているつりチェーン用クランプを用いて足場を吊り下げて固定することが多く行われている。つりチェーン用クランプは、
図5に示すように、クランプ本体100の下端部につり輪部101が設けられている。使用する際には、H型鋼のような被取り付け部材にクランプ本体100を取り付け、つり輪部101につりチェーン102を巻きつけるように取り付けてつりチェーン102の下端部に図示しない足場が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】仮設機材認定基準とその解説(厚生労働大臣が定める規格と認定基準)、社団法人仮設工業会編集・発行、2015年8月発行、第14章「つりチェーン用クランプ」、p153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、つりチェーン用クランプを使用したままでは当該クランプが取り付けられた部位にブラスト処理や塗装を行うことが不可能であり、実際の作業現場では、塗装が行われた後にクランプを一旦取り外し、クランプの取り付け位置をずらして足場を組み直してブラスト処理や塗装をやり直していた。そのため手間がかかり、工期が長くなってしまう問題があった。
【0006】
そこで本発明は、工期を大幅に短縮できるつりチェーン用クランプを用いた保全工法を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、工期を大幅に短縮できるクランプセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、つりチェーン用クランプを用いた保全工法であって、一のつりチェーンは少なくとも一対のつりチェーン用クランプを具備しており、前記一対のつりチェーン用クランプを被取り付け部材に取り付ける取り付け工程と、前記取り付け工程の後に、前記被取り付け部材に対してブラスト処理を実行する第一ブラスト工程と、前記第一ブラスト工程の後に、前記一対のつりチェーン用クランプのうちいずれか一方のみを取り外す取り外し工程と、前記取り外し工程の後に、前記一方のつりチェーン用クランプが取り外された部位にブラスト処理を実行する第二ブラスト工程と、前記第二ブラスト工程の後に、前記第二ブラスト工程でブラストされた部位に前記一方のつりチェーン用クランプを取り付け、その後他方のつりチェーン用クランプを取り外すクランプ入れ替え工程と、前記クランプ入れ替え工程の後に、前記他方のつりチェーン用クランプが取り外された部位にブラスト処理を実行する第三ブラスト工程と、を含むことを特徴とするつりチェーン用クランプを用いた保全工法である。
【0009】
かかる構成にあっては、一対のつりチェーン用クランプを交互に付け替えながらブラスト処理を行うため、足場を一旦解体するような手間がかからず、ブラストの未処理部分を残すこと無く、工期を大幅に短縮することができる。
【0010】
また、前記第二ブラスト工程の後に、前記第二ブラスト工程が実行された部位に塗装を実行する第一塗装工程と、前記第三ブラスト工程の後に、前記第三ブラスト工程が実行された部位に塗装を実行する第二塗装工程と、をさらに含む構成が提案される。
【0011】
かかる構成とすることにより、工期をより大幅に短縮することができる。
【0012】
また本発明は、前記つりチェーン用クランプを用いた保全工法に用いられるクランプセットであって、一のつりチェーンには、環状部材が取り付けられており、一対のつりチェーン用クランプが、前記環状部材に取り付けられていることを特徴とするクランプセットである。
【0013】
かかる構成にあっては、一のつりチェーンに一対のつりチェーン用クランプが備えられており、工程によって使用するクランプと使用しないクランプとを選択できる。この際、つりチェーンを取り外すような手間が不要となるため、工期を大幅に短縮することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のつりチェーン用クランプを用いた保全工法は、工期を大幅に短縮することができる効果がある。
【0015】
また本発明のクランプセットは、工期を大幅に短縮することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例にかかる鋼橋の保全の手順を示すフロー図である。
【
図2】実施例にかかるクランプセットの取り付け状態を示す斜視図である。
【
図3】実施例にかかるクランプセットの取り付け状態を示す斜視図である。
【
図4】実施例にかかるクランプセットの取り付け状態を示す斜視図である。
【
図5】従来のつりチェーン用クランプを示す概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるつりチェーン用クランプを用いた保全工法及びクランプセットを具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0018】
(足場仮設)
図1に示すように、鋼橋Hの保全手順としては、まず保全の対象となる鋼橋Hに足場を仮設する。これと共に、外部に粉塵が漏出しないように防塵シートを張設し、非塗装部分の養生を行い、ブラスト処理及び必要に応じてショットピーニング処理を行うための装置を設置する(S101)。この足場を仮設する工程S101が取り付け工程に相当する。
【0019】
ここで使用されるクランプセット1は、
図2に示すように、第一クランプ11及び第二クランプ12を備えている。第一クランプ11及び第二クランプ12には夫々つり輪部21,22が備えられている。そして双方のつり輪部21,22には環状部材31が取り付けられている。ここでは、第一クランプ11及び第二クランプ12の双方が被取り付け部材である鋼橋Hに取り付けられた状態で、当該環状部材31につりチェーン41が取り付けられてつりチェーン用クランプとして用いられる。
【0020】
(第一ブラスト)
その後、鋼橋Hにブラスト処理が施される(S102)。当該ブラスト処理で使用されるグリットの種類や噴射速度等は、事前に調査された旧塗装の種類や厚さ、あるいは鋼橋Hの状況等によって決定される。
【0021】
(第一クランプ外し)
次に、クランプセット1のうち、一方のクランプである第一クランプ11のみを取り外す(S103)。この第一クランプのみを取り外す工程S103が取り外し工程に相当する。
【0022】
詳述すると、
図3に示すように、第二クランプ12は鋼橋Hに取り付けたまま、第一クランプ11のみを鋼橋Hから取り外す。これによって鋼橋Hの第一クランプ11が取り付けられていた部位N1が未ブラスト部位として露出する。
【0023】
(第二ブラスト)
そして、第一クランプ11が取り外されて露出した鋼橋Hの未ブラスト部位としての部位N1にブラスト処理を施す(S104)。
【0024】
(第一塗装)
その後、ブラスト処理が施された部位N1に塗装を施す(S105)。ここで、部位N1のみならず、鋼橋Hの他の部位も同時に塗装を施してもよいし、S102の第一ブラスト処理の後に、部位N1と第二クランプが取り付けられたままであるためにブラスト処理が施されていない部位N2を除く部位に、先に塗装を施しておいてもよい。
【0025】
(クランプ入れ替え)
次に、第一クランプ11を取り付け、その後他方のクランプである第二クランプ12を取り外す(S106)。この取り付けるクランプを入れ替える工程S106がクランプ入れ替え工程に相当する。
【0026】
詳述すると、まず第二クランプ12が取り付けられた状態で、第一クランプ11を取り付ける。その後、第二クランプ12を取り外す。これによって、
図4に示すように、つりチェーン41を含む足場を解体することなく第二クランプ12が取り付けられていた部位N2が未ブラスト部位として露出する。
【0027】
(第三ブラスト)
そして、第二クランプ12が取り外されて露出した鋼橋Hの部位N2にブラスト処理を施す(S107)。
【0028】
(第二塗装)
その後、ブラスト処理が施された部位N2に塗装を施す(S108)。
【0029】
このように、クランプセット1を用いた保全工法においては、足場を一旦解体するといった手間をかけずにクランプが使用されていた部位に連続してブラスト及び塗装を施すことができ、工期を大幅に短縮することができる。
【0030】
上記実施例において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。また、各工程の間に、別途ブラスト処理や塗装された部位の確認等の工程が実行されていても構わない。
【符号の説明】
【0031】
1 クランプセット
11 第一クランプ
12 第二クランプ
21,22 つり輪部
31 環状部材
41 つりチェーン
100 クランプ本体
101 つり輪部
102 つりチェーン