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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】走行装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20240624BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20240624BHJP
   G01N 27/9013 20210101ALI20240624BHJP
【FI】
G01N21/84 B
G01N29/265
G01N27/9013
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020205161
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092377
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000211226
【氏名又は名称】株式会社シーエックスアール
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】白石 時宜
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-30409(JP,A)
【文献】特開2008-126936(JP,A)
【文献】特開2006-89006(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008673(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0012316(US,A1)
【文献】特開2016-28930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01N 29/00-29/52
G01N 27/72-27/9093
B62B 1/00- 5/08
B60B 1/00-11/10
B60B 17/00-19/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の非破壊検査のために前記検査対象物の表面上を走行する走行装置であって、
駆動車両と、
前記駆動車両の前方に位置され、前記駆動車両に左右軸回りに回転可能に連結された先行車両と、
を備え、
前記駆動車両は、
駆動車体と、
前記駆動車体に回転可能に設けられた駆動車輪と、
前記駆動車輪を駆動する駆動源と、
前記駆動車体に配置された磁石と、
を備え、
前記先行車両は、
先行車体と、
前記先行車体に回転可能に設けられた従動輪としての先行車輪と、
前記先行車体に回転可能に設けられ前記先行車輪の後方に位置された従動輪としての後側先行車輪と、
を備え、
前記先行車輪の中心は、前記駆動車輪の中心より高い位置に位置されると共に、前記検査対象物の表面上に突出した段差より高い位置に位置され、
前記後側先行車輪は、前記駆動車輪より大径とされ、
前記先行車輪は、前記後側先行車輪より小径とされ、
前記先行車体は、前記駆動車体に、前記駆動車輪の回転中心回りに回転可能に接続される
ことを特徴とする走行装置。
【請求項2】
前記先行車両は、前記先行車体に配置された先行磁石を備える
請求項に記載の走行装置。
【請求項3】
前記先行車両に設けられた前側検査ユニットを備える
請求項1または2に記載の走行装置。
【請求項4】
前記駆動車両の後方に位置され、前記駆動車両に左右軸回りに回転可能に連結された後側駆動車両を備える
請求項1~のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項5】
前記後側駆動車両の後方に位置され、前記後側駆動車両に左右軸回りに回転可能に連結された後尾車両を備える
請求項に記載の走行装置。
【請求項6】
前記後尾車両に設けられた後側検査ユニットを備える
請求項に記載の走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は走行装置に係り、特に、検査対象物の非破壊検査のために検査対象物の表面上を走行する走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材で作られた配管、橋梁、炉壁、煙突等の構造物において、その表面および内部の少なくとも一方にできた傷、腐食等の欠陥を、構造物を破壊することなく検出する非破壊検査が広く知られている。この非破壊検査では、検査対象物の表面上で走行装置を走行させると共に、走行装置に搭載した検査ユニットで欠陥を検出する。
【0003】
走行装置としては、車体に設けられた車輪をモータで駆動する自走式走行装置が知られている。そしてこの走行装置を検査対象物に吸着させるため、走行装置に磁石を設けることも知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-113478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、検査対象物の表面上に突出した段差がある場合、走行装置がこの段差を乗り越えることができず、検査を余儀なく中止させられる事態が起こり得る。
【0006】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、検査対象物の表面上に突出した段差を乗り越えることができる走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、
検査対象物の非破壊検査のために前記検査対象物の表面上を走行する走行装置であって、
駆動車両と、
前記駆動車両の前方に位置され、前記駆動車両に左右軸回りに回転可能に連結された先行車両と、
を備え、
前記駆動車両は、
駆動車体と、
前記駆動車体に回転可能に設けられた駆動車輪と、
前記駆動車輪を駆動する駆動源と、
前記駆動車体に配置された磁石と、
を備え、
前記先行車両は、
先行車体と、
前記先行車体に回転可能に設けられた先行車輪と、
を備え、
前記先行車輪の中心は、前記駆動車輪の中心より高い位置に位置される
ことを特徴とする走行装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記先行車輪の中心は、前記検査対象物の表面上に突出した段差より高い位置に位置される。
【0009】
好ましくは、前記先行車両は、前記先行車体に回転可能に設けられ前記先行車輪の後方に位置された後側先行車輪を備え、
前記後側先行車輪は、前記駆動車輪より大径とされる。
【0010】
好ましくは、前記先行車輪は、前記後側先行車輪より小径とされる。
【0011】
好ましくは、前記先行車両は、前記先行車体に配置された先行磁石を備える。
【0012】
好ましくは、前記走行装置は、前記先行車両に設けられた前側検査ユニットを備える。
【0013】
好ましくは、前記走行装置は、前記駆動車両の後方に位置され、前記駆動車両に左右軸回りに回転可能に連結された後側駆動車両を備える。
【0014】
好ましくは、前記走行装置は、前記後側駆動車両の後方に位置され、前記後側駆動車両に左右軸回りに回転可能に連結された後尾車両を備える。
【0015】
好ましくは、前記走行装置は、前記後尾車両に設けられた後側検査ユニットを備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、検査対象物の表面上に突出した段差を乗り越えることができる走行装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】走行装置を示す上面図である。
図2】走行装置を示す左側面図である。
図3】走行装置を示す前面図である。
図4】走行装置を示す後面図である。
図5図2のV-V断面図である。
図6図2のVI-VI断面図である。
図7】水平な床上に置いた走行装置を示す左側面図である。
図8】検査装置の全体を示す概略図である。
図9】走行装置をノズルに挿入するときの様子を示す図である。
図10】走行装置が段差を乗り越えるときの様子を示す図である。
図11】走行装置が段差を乗り越えるときの様子を示す図である。
図12】走行装置が段差を乗り越えるときの様子を示す図である。
図13】走行装置が段差を乗り越えるときの様子を示す図である。
図14】走行装置が縦壁を乗り越えるときの様子を示す図である。
図15】走行装置が縦壁を乗り越えるときの様子を示す図である。
図16】走行装置が縦壁を乗り越えるときの様子を示す図である。
図17】走行装置が縦壁を乗り越えるときの様子を示す図である。
図18】走行装置が縦壁を乗り越えるときの様子を示す図である。
図19】第1変形例の走行装置を示す左側面図である。
図20】第2変形例の走行装置を示す左側面図である。
図21】第3変形例の走行装置を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0019】
図1図6に、本実施形態の走行装置1を示す。図1は上面図、図2は左側面図、図3は前面図、図4は後面図、図5図2のV-V断面図、図6図2のVI-VI断面図である。走行装置1の前後左右上下の各方向は図示する通りであり、走行装置1の通常の進行方向を前とする。走行装置1の左右方向の幅(車幅)と、上下方向の高さ(車高)との中心(車両中心という)を符号Cで示す。
【0020】
本実施形態の検査対象物は磁性体である鋼製構造物であり、具体的には配管である。配管は図8に符号Kで示すが、詳しくは後述する。以下便宜上、走行装置1が走行する検査対象物の表面のことを走行面または路面ともいう。また走行面に接触する車輪の表面のことを接地面という。
【0021】
図示するように、走行装置1は、駆動車両20と、駆動車両20の前方に位置され駆動車両20に左右軸回りに回転可能に連結された先行車両10とを備える。また走行装置1は、駆動車両20の後方に位置され駆動車両20に左右軸回りに回転可能に連結された後側駆動車両30と、後側駆動車両30の後方に位置され後側駆動車両30に左右軸回りに回転可能に連結された後尾車両40とを備える。
【0022】
本実施形態の走行装置1は、先頭に位置する先行車両10と、その次に位置する駆動車両20と、その次に位置する後側駆動車両30と、最後尾に位置する後尾車両40とを、前から順番に、左右軸回りに回転可能に連結して構成されている。便宜上、先行車両10、駆動車両20、後側駆動車両30および後尾車両40をそれぞれ1両目、2両目、3両目および4両目ともいう。
【0023】
左右軸とは、左右方向に平行な仮想軸のことをいう。前後軸、上下軸についても同様である。
【0024】
駆動車両20は、駆動車体2と、駆動車体2に回転可能に設けられた駆動車輪3と、駆動車輪3を駆動する駆動源としてのモータ4,5と、駆動車体2に配置された磁石6とを備える。磁石6は、走行面との間に間隔を隔てるように配置されている。
【0025】
駆動車体2は、はしご形フレームに類似の構造とされ、左右のサイドメンバ7と、これらサイドメンバ7を連結する複数(本実施形態では3つ)のクロスメンバ8とを備える。サイドメンバ7は、前後方向に延びる細長いプレート状に形成され、クロスメンバ8は直方体形状の部材によって形成されている。
【0026】
駆動車輪3は、左右に複数ずつ設けられ、本実施形態では3輪ずつ設けられる。本実施形態では全ての駆動車輪3が駆動輪である。よって駆動車両20は全輪駆動の6輪車となっている。全ての駆動車輪3は同一サイズである。
【0027】
図6に示すように、左右の駆動車輪3は、左右方向に延びる回転シャフト9の両端に回転可能に支持されている。回転シャフト9は、クロスメンバ8を貫通してクロスメンバ8に回転可能に支持されている。これにより駆動車輪3が、回転シャフト9の中心すなわち回転中心O1,O2,O3回りに、クロスメンバ8に対して回転可能となる。左右の駆動車輪3は左右対称の形状とされる。1つのクロスメンバ8に1つの回転シャフト9と、左右一対の駆動車輪3とが設けられる。これらからなる1つのユニットが、図1に示すように、前後方向に等間隔で3つ配置されている。
【0028】
駆動車輪3のうち、少なくともその接地面はゴムで形成されている。本実施形態の場合、駆動車輪3は、全体がゴムで形成された略円盤状の部材とされている。但し周知のように、金属製または樹脂製のホイールにゴム製タイヤを装着して駆動車輪3を構成してもよい。このように接地面をゴムで形成すると、走行面が傷付くのを抑制でき、またたとえ走行面が濡れていたり汚れていたりしても、駆動車輪3を走行面に良好にグリップさせることができる。
【0029】
駆動車輪3は、その外周部に、左右軸に平行な基準接地面11を有する。一方、駆動車輪3は、その外側面部(車幅方向外側の側面部)に、テーパ状の接地面すなわちテーパ接地面49を有する。テーパ接地面49は、駆動車輪3の外側面部の外周側に、基準接地面11に隣接して設けられる。テーパ接地面49は、車幅方向外側に向かうほど外径が小さくなるようなテーパ面とされ、基準接地面11に対する角度θが好ましくは45°以上90°未満、より好ましくは60°以上90°未満(図示例では約70°)となるように傾斜されている。
【0030】
このようにテーパ接地面49を設けると、図3に示すように、配管(仮に仮想円Aで示す)の内径が小さく、走行装置1が挿入可能なぎりぎりの大きさであり、かつ、基準接地面11が接地し難い場合にも、テーパ接地面49を配管の内面に接地させて確実に走行を行うことができる。
【0031】
モータ4,5は、DCモータ等の電気モータにより形成される。本実施形態の場合、左側駆動車輪用モータ(左モータともいう)4と、右側駆動車輪用モータ(右モータともいう)5の二つのモータがそれぞれ横置きされ、前後に並べて配置される。左側駆動車輪用モータ4は、前から1番目と2番目のクロスメンバ8の間に配置され、左側のサイドメンバ7に固定される。右側駆動車輪用モータ5は、前から2番目と3番目のクロスメンバ8の間に配置され、右側のサイドメンバ7に固定される。こうしたレイアウトにより、2つのモータ4,5を小さな駆動車体2の中にコンパクトに配置できる。
【0032】
モータ4,5から駆動車輪3に動力を伝達する動力伝達機構は、本実施形態ではギア機構により形成され、左右のサイドメンバ7の車幅方向(左右方向)外側に配置されている。すなわち、左側について説明すると、各駆動車輪3の車幅方向内側(右側)の側面には同歯数の被駆動ギア12が固定されている。またモータ4の出力軸(図示せず)は、左側サイドメンバ7から車幅方向外側(左側)に突出され、このモータ出力軸にピニオンギア13が固定されている。ピニオンギア13は、前から1番目と2番目の被駆動ギア12に噛合されている。
【0033】
符号O4は、左モータ4の出力軸の中心(左モータ中心という)を示す。また符号O5は、右モータ5の出力軸の中心(右モータ中心という)を示す。
【0034】
アイドルギア14が、右モータ中心O5と同軸に、左側サイドメンバ7の左側面部に回転可能に設けられている。このアイドルギア14は、前から2番目と3番目の被駆動ギア12に噛合されている。アイドルギア14はピニオンギア13と同歯数とされる。
【0035】
この構成によれば、左モータ4の駆動力がピニオンギア13を介して前から1番目と2番目の被駆動ギア12に直接的に伝達される。また、前から2番目の被駆動ギア12の駆動力は、アイドルギア14を介して、前から3番目の被駆動ギア12に伝達される。これにより、左側の3つの被駆動ギア12および駆動車輪3は、左モータ4により、同一の回転速度および回転方向で回転駆動される。
【0036】
右側の動力伝達機構についても同様である。各駆動車輪3の車幅方向内側(左側)の側面には同歯数の被駆動ギア12が固定されている。右側サイドメンバ7から突出された右モータ5の出力軸にはピニオンギア13が固定されている。ピニオンギア13は、前から2番目と3番目の被駆動ギア12に噛合されている。
【0037】
アイドルギア14が、左モータ中心O4と同軸に、右側サイドメンバ7の右側面部に回転可能に設けられている。このアイドルギア14は、前から1番目と2番目の被駆動ギア12に噛合されている。アイドルギア14はピニオンギア13と同歯数とされる。
【0038】
右モータ5の駆動力は、ピニオンギア13を介して前から2番目と3番目の被駆動ギア12に直接的に伝達される。また、前から2番目の被駆動ギア12の駆動力は、アイドルギア14を介して、前から1番目の被駆動ギア12に伝達される。これにより、右側の3つの被駆動ギア12および駆動車輪3が、右モータ5により、同一の回転速度および回転方向で回転駆動される。
【0039】
左右のモータ4,5、すなわち、左側の駆動車輪3と右側の駆動車輪3との間に回転速度差を設けることによって、駆動車両20ひいては走行装置1を上下軸回りに旋回させることができる。
【0040】
図6に示すように、磁石6は、長方形板状の永久磁石により形成されている。磁石6は、クロスメンバ8の底面部に、図示しないボルト等により着脱可能かつ交換可能に取り付けられている。これにより磁石6は、検査対象物に応じて異なるサイズ等のものに交換可能である。磁石6は、3つのクロスメンバ8の全てに設けられる。なお、磁石6は、純粋な磁石以外の要素、例えば純粋な磁石を覆う軟質のカバー、コーティングまたはケース等を含んでもよい。
【0041】
次に、先行車両10について説明する。先行車両10は、先行車体15と、先行車体15に回転可能に設けられた先行車輪16とを備える。
【0042】
また本実施形態の先行車両10は、先行車体15に回転可能に設けられ先行車輪16の後方に位置された後側先行車輪17と、先行車体15に配置された別の磁石すなわち先行磁石18とを備える。先行磁石18は、後側先行車輪17の中心軸すなわち回転中心P2の下方に位置され、走行面との間に間隔を隔てるように配置されている。
【0043】
先行車体15は、はしご形フレームに類似の構造とされ、左右のサイドメンバ19と、これらサイドメンバ19を連結する複数(本実施形態では3つ)のクロスメンバ21とを備える。サイドメンバ19は、前後方向に延びる細長いプレート状に形成され、クロスメンバ21は直方体形状の部材によって形成されている。
【0044】
先行車輪16は従動輪であり、左右に1つずつ設けられる。また後側先行車輪17も従動輪であり、左右に1つずつ設けられる。前後方向における先行車輪16の位置と、後側先行車輪17の位置と、それらの中間位置とに、それぞれクロスメンバ21が配置される。
【0045】
図5に示すように、左右の後側先行車輪17は、左右方向に延びる回転シャフト22の両端に回転可能に支持されている。回転シャフト22は、前から3番目のクロスメンバ21を貫通してそのクロスメンバ21に回転可能に支持されている。これにより後側先行車輪17が、回転シャフト22の中心すなわち回転中心P2回りに、クロスメンバ21に対して回転可能となる。
【0046】
図示省略するが、左右の先行車輪16の支持方法も概ね同様である。先行車輪16は、回転シャフト22の中心すなわち回転中心P1回りに、前から1番目のクロスメンバ21に対して回転可能である。但し、回転シャフト22は、前から1番目のクロスメンバ21に固定され、左右のサイドメンバ19に回転可能に支持されている。これにより前から1番目のクロスメンバ21は、サイドメンバ19に対し、左右軸すなわち回転中心P1回りに回転可能となる。これは後述するように、前から1番目のクロスメンバ21に設けられたカメラ等の向きを変えるのに役立つ。
【0047】
先行車輪16および後側先行車輪17のうち、少なくともそれらの接地面はゴムで形成されている。本実施形態の場合、先行車輪16および後側先行車輪17は、一定厚さのゴム板で形成された円盤状の部材とされている。但し周知のように、金属製または樹脂製のホイールにゴム製タイヤを装着して先行車輪16および後側先行車輪17を構成してもよい。接地面をゴムで形成する利点は、駆動車輪3に関して述べた上記利点と同様である。
【0048】
本実施形態の場合、先行車輪16および後側先行車輪17に、駆動車輪3のテーパ接地面49のようなテーパ接地面は設けられていない。但しこれを設けることは自由である。本実施形態の先行車輪16および後側先行車輪17は、駆動車輪3より幅狭である。先行車輪16および後側先行車輪17の接地面は断面半円状に形成されている。
【0049】
図5に示すように、先行磁石18は、長方形板状の永久磁石により形成されている。先行磁石18は、前から3番目のクロスメンバ21の底面部に、図示しないボルト等により着脱可能かつ交換可能に取り付けられている。これにより先行磁石18も、検査対象物に応じて異なるサイズ等のものに交換可能である。先行磁石18は、前から3番目のクロスメンバ21のみに設けられる。なお、先行磁石18は、純粋な磁石以外の要素、例えば純粋な磁石を覆う軟質のカバー、コーティングまたはケース等を含んでもよい。
【0050】
先行磁石18が前から3番目のクロスメンバ21の底面部に取り付けられるため、先行磁石18は、後側先行車輪17の中心軸を規定する回転中心P2の下方に位置される。
【0051】
走行装置1は、先行車両10に設けられた前側検査ユニット50を備える。本実施形態の走行装置1は目視試験を行うよう構成されているため、前側検査ユニット50は、走行装置1の前方の景色を撮影するフロントカメラ23と、走行装置1の前方を照らす複数(本実施形態では3つ)のフロントライト24とを含む。フロントカメラ23はCCDカメラにより形成される。フロントライト24はLEDにより形成される。フロントカメラ23と1つのフロントライト24が、前から1番目のクロスメンバ21の前面部に前向きに取り付けられている。
【0052】
また、前から2番目のクロスメンバ21の上面部に起立して設けられた縦壁25にも、2つのフロントライト24が前向きに取り付けられている。
【0053】
本実施形態では、前から1番目のクロスメンバ21を回転中心P1回りに回転させることにより、フロントカメラ23とフロントライト24の上下方向の向きを変更できる。すなわち、前から1番目のクロスメンバ21にはプーリ26が一体的に設けられる。また前から2番目のクロスメンバ21にはモータ27が取り付けられている。モータ27の回転軸はベルト28を介してプーリ26に連結される。よってモータ27の回転位相を制御することで、フロントカメラ23とフロントライト24の向きを制御可能である。なおモータ27の回転軸の中心をP3で示す。
【0054】
図1に示すように、左右のサイドメンバ19は、その後端部に固定された板状のリンク29を含む。リンク29は、サイドメンバ19を後方に向かって直線的に延長する。リンク29は、駆動車両20の前から1番目のクロスメンバ8に、回転中心O1回りに回転可能に接続される。具体的には図6に示すように、左右のリンク29が、駆動車両20の左右のサイドメンバ7の前端部と、前から1番目のクロスメンバ8との間に位置される。そして左右のリンク29の穴31に回転シャフト9の両端部が回転可能に挿通され、リンク29が回転シャフト9に回転可能に連結される。
【0055】
これにより、先行車両10の全体が駆動車両20に対し、前から1番目の回転中心O1回りに回転可能となる。
【0056】
図1に示すように、左右の先行車輪16の間隔(トレッド)と、左右の後側先行車輪17の間隔とは等しい。またこれら間隔より、左右の駆動車輪3の間隔は大きい。左右の後側先行車輪17は、左右の駆動車輪3の車幅方向内側で、左右の駆動車輪3に対し車長方向(前後方向)にオーバーラップされている。また、左右の先行車輪16の間隔と、左右の後側先行車輪17の間隔とは、駆動車両20の左右のサイドメンバ7の間隔に等しい。
【0057】
図2に示すように、後側先行車輪17は駆動車輪3より大径とされる。言い換えれば後側先行車輪17の外径D17は、駆動車輪3の外径D3より大きい(D17>D3)。
【0058】
また先行車輪16は、後側先行車輪17より小径とされる。言い換えれば先行車輪16の外径D16は、後側先行車輪17の外径D17より小さい(D16<D17)。
【0059】
本実施形態の場合、先行車輪16は駆動車輪3より大径とされる。言い換えれば先行車輪16の外径D16は、駆動車輪17の外径D3より大きい(D16>D3)。従ってD3<D16<D17が成り立つ。
【0060】
後側駆動車両30の構成は、駆動車両20の構成と同様である。従って後側駆動車両30についての詳細な説明は省略する。後側駆動車両30の各回転中心Q1~Q5は駆動車両20の各回転中心O1~O5に対応する。
【0061】
駆動車両20と後側駆動車両30は、前後方向に延びる左右の板状リンク32によって、2箇所の左右軸回りに回転可能に連結される。すなわち、左右のリンク32の前端部は、駆動車両20の前から3番目のクロスメンバ8に、回転中心O3回りに回転可能に接続される。すなわち前記リンク29と同様、左右のリンク32の前端部は、駆動車両20の左右のサイドメンバ7の後端部と、前から3番目のクロスメンバ8との間に位置される。そして左右のリンク32の前端部の穴(図示せず)に回転シャフト9の両端部が回転可能に挿通されることで、リンク32が回転シャフト9に回転可能に連結される。
【0062】
左右のリンク32の後端部の連結方法も同様である。すなわち、左右のリンク32の後端部は、後側駆動車両30の前から1番目のクロスメンバ8に、回転中心Q1回りに回転可能に接続される。詳しくは、左右のリンク32の後端部は、後側駆動車両30の左右のサイドメンバ7の前端部と、前から1番目のクロスメンバ8との間に位置される。そして左右のリンク32の後端部の穴(図示せず)に回転シャフト9の両端部が回転可能に挿通されることで、リンク32が回転シャフト9に回転可能に連結される。
【0063】
これにより後側駆動車両30の全体は、駆動車両20に対し、回転中心O3とQ1回りに回転可能となる。
【0064】
後尾車両40は、先行車両10に類似した構成を有する。後尾車両40は、後尾車体33と、後尾車体33に回転可能に設けられた後尾車輪34とを備える。
【0065】
後尾車体33は、左右のサイドメンバ35と、これらサイドメンバ35を連結するクロスメンバ36とを備える。本実施形態のクロスメンバ36は単一であるが、複数であってもよい。サイドメンバ35は、前後方向に延びる細長いプレートにより形成され、クロスメンバ36は直方体形状の部材によって形成されている。
【0066】
後尾車輪34は従動輪であり、左右に1つずつ設けられる。前後方向における後尾車輪34の位置にクロスメンバ36が配置される。
【0067】
後尾車両40の断面構造は、図5に示した構造と類似しているが一部相違する。すなわち、クロスメンバ36は中空ボックス状とされ、これから一体的に回転シャフトが左右に同軸に突出されている。これら左右の回転シャフトに左右の後尾車輪34がそれぞれ回転可能に支持されている。これにより左右の後尾車輪34が、回転シャフトの中心すなわち回転中心R1回りに、クロスメンバ36に対して回転可能となる。
【0068】
後尾車輪34の構成は、先行車輪16の構成と同様である。特に後尾車輪34の外径D34は、先行車輪16の外径D16と等しくされる(D34=D16)。
【0069】
なお本実施形態の場合、後尾車両40に磁石は設けられていない。しかしながらそれを設けるのは自由である。
【0070】
図4にも示すように、走行装置1は、後尾車両40に設けられた後側検査ユニット60を備える。検査ユニット60は、走行装置1の後方の景色を撮影するリアカメラ37と、走行装置1の後方を照らす複数(本実施形態では2つ)のリアライト38とを含む。リアカメラ37はCCDカメラにより形成される。リアライト38はLEDにより形成される。リアカメラ37と2つのリアライト38が、クロスメンバ36の後面部に後向きに取り付けられている。
【0071】
図1に示すように、左右のサイドメンバ35は前方に向かって伸長され、その前端部は、後側駆動車両30の前から3番目のクロスメンバ8に、回転中心Q3回りに回転可能に接続され、リンクをなす。具体的には、図6に示したのと同様に、左右のサイドメンバ35の前端部が、後側駆動車両30の左右のサイドメンバ7の後端部と、前から3番目のクロスメンバ8との間に位置される。そして左右のサイドメンバ35の穴に回転シャフト9の両端部が回転可能に挿通され、サイドメンバ35が回転シャフト9に回転可能に連結される。
【0072】
これにより、後尾車両40の全体が後側駆動車両30に対し、回転中心Q3回りに回転可能となる。
【0073】
図1に示すように、左右の後尾車輪34の間隔は、左右の先行車輪16の間隔に等しい。後尾車輪34は、後側駆動車両30の前から3番目の駆動車輪3に対し車長方向(前後方向)にオーバーラップされておらず、その駆動車輪3から後方に離間されている。
【0074】
こうして走行装置1は、4つの回転中心O1,O3,Q1,Q3を中心に回転屈曲可能である。
【0075】
この走行装置1を水平な床Fの上に置くと図7に示す如くなる。このとき、先行車輪16の中心は、駆動車輪3の中心より高い位置に位置される。
【0076】
詳しくは図7に示すように、駆動車両20および後側駆動車両30の駆動車輪3が全て同一外径D3なので、各駆動車輪3の回転中心O1,O2,O3,Q1,Q2,Q3は同じ高さhO1に位置される。駆動車両20および後側駆動車両30は水平に配置される。hO1=(D3)/2である。
【0077】
しかし、先行車両10の後側先行車輪17の外径D17が駆動車輪3の外径D3より大きいので、先行車両10が前方斜め上向きに角度θ1で傾けられる(すなわち後傾される)。これにより先行車輪16が床Fから浮上ないし離間され、先行車輪16の位置が高くなる。この結果、先行車輪16の回転中心P1は、駆動車輪3の中心、特に最前端に位置する駆動車輪3の回転中心O1より高い位置hP1に位置される。
【0078】
しかも本実施形態の場合、先行車輪16の回転中心P1は、後側先行車輪17の回転中心P2の高さ位置hP2より高い位置に位置される。hP2=(D17)/2である。
【0079】
本実施形態では、後尾車輪34の中心R1も、駆動車輪3の中心より高い位置hR1に位置される。後尾車輪34の外径D34が駆動車輪3の外径D3より大きいので、後尾車両40が後方斜め上向きに角度θ2で傾けられる(すなわち前傾される)。これにより後尾車輪34の回転中心R1が、最後端に位置する駆動車輪3の回転中心Q3より高い位置hR1に位置される。hR1=(D34)/2である。
【0080】
先行車輪16の回転中心P1は、後尾車輪34の回転中心R1より高い位置に位置される。その理由は、後側先行車輪17の外径D17が後尾車輪34の外径D34より大きく、先行車両10と駆動車両20の回転中心P1,O1間の距離が、後尾車輪34と後側駆動車両30の回転中心R1,Q3間の距離より長いからである。
【0081】
結局、各回転中心P1,P2,O1,R1の高さ位置の間にはhO1<hR1<hP2<hP1の関係がある。
【0082】
次に、本実施形態の作動を説明する。
【0083】
図8は、検査対象物の非破壊検査を行う検査装置の全体を示す概略図である。検査対象物は磁性体である鋼製構造物、具体的には断面円形の配管Kである。ここで図3に示した仮想円Aを、正面視の走行装置1を完全に含む最小径の円、すなわち最小包含円(便宜上、最小装置円という)とすると、配管Kの内径dPは、最小装置円Aの直径DAより著しく大きい。
【0084】
しかし、配管Kにはより小径の断面円形のノズルNが接続されており、走行装置1はこのノズルNから配管K内に挿入される。ノズルNの内径dNは、走行装置1が入るぎりぎりの大きさであり、最小装置円Aの直径DAより僅かに大きいサイズである。言い換えれば、この小さいノズルNのサイズに合わせて走行装置1のサイズが設定されている。先行車輪16の外径D16、後側先行車輪17の外径D17、駆動車輪17の外径D3、および後尾車輪34の外径D34は、当然にノズルNの内径dNより小さくされている。
【0085】
また、配管K内の途中には、配管Kの表面すなわち内面39上に突出した高さhSの段差Sが設けられている。段差Sは、配管Kの内面39の全周に亘ってリング状に設けられている。詳しくは後述するが、走行装置1はこの段差Sを乗り越えることができるように構成されている。
【0086】
本実施形態の場合、hS=(1/2)dNで、例えばdN=60mm、hS=30mmである。dPはhSの10倍程度であり、例えば300~400mmである。
【0087】
配管Kの内面39では、素材である鉄が剥き出しの状態で露出されている。なお、必要に応じて配管Kの内面39に錆止め用樹脂等のコーティング材が被覆されてもよい。
【0088】
検査装置は、配管Kの表面上を走行する走行装置1と、走行装置1に搭載された検査ユニット50,60からデータが送られてくると共に走行装置1に電力および制御信号を出力する制御装置41と、制御装置41に送られてきたデータに基づいて画像を表示するディスプレイ42と、制御装置41に接続され、走行装置1を操縦するために作業者44によって操作されるコントローラ43とを備える。走行装置1と制御装置41はケーブル45で互いに接続される。
【0089】
本実施形態の場合、検査装置は目視試験を行うよう構成されている。配管K内における走行装置1の走行中にはフロントライト24とリアライト38がオンされ、暗い配管K内が光で照らされる。必要に応じて、フロントライト24とフロントカメラ23の向きが変更される。フロントカメラ23とリアカメラ37で撮影された画像もしくは映像のデータは制御装置41に送られ、制御装置41は、一方または両方のカメラで撮影された画像をディスプレイ42に表示する。作業者44はこの画像を見ながら配管Kの内面39の状態を目視で検査すると共に、コントローラ43を操作し、走行装置1を配管K内で自由に走行させる。
【0090】
走行装置1は、ノズルNから配管K内に挿入された後、概ね矢印で示すように、段差Sに向かって配管長手方向に走行させられる。走行装置1は磁石6,18により配管Kの内面39に吸着されながら進行する。よって走行装置1は、内面39上を上ったり、内面39の天井に沿って逆さ状態で走行したりすることもできる。
【0091】
代替的に、検査装置は他の種類の試験を行うよう構成されてもよく、例えば周知の超音波探傷試験や渦電流探傷試験を行うよう構成されてもよい。そして検査ユニット50,60も他の種類の試験に適したもの、例えば超音波探傷試験に適した超音波発信機や、渦電流探傷試験に適した探傷コイルを備えたものに変更されてもよい。検査は配管Kの内面39に限らず、配管Kの外面46やノズルNの表面に対して行ってもよい。
【0092】
走行装置1においては、駆動車両20および後側駆動車両30の左右の駆動車輪3が、左右のモータ4,5により個別に駆動される。そして左右のモータ4,5、ひいては左右の駆動車輪3の回転速度を個別に制御することで、走行装置1を前進、後退、直進、右旋回および左旋回させることができる。
【0093】
例えば、走行装置1を前進かつ直進させるときには左右の駆動車輪3を同速で正転駆動する。また、走行装置1を前進かつ右旋回させるときには左側の駆動車輪3を右側の駆動車輪3より高速で正転駆動する。なお、左側の6つの駆動車輪3は全て同じ回転速度で駆動される。右側の6つの駆動車輪3も同様である。
【0094】
本実施形態ではコントローラ43として、左右のモータ4,5を個別に制御する2本のスティックを備えたスティック式コントローラが使用される。しかしながらこれに限らず、例えばガングリップとステアリングホイールを備えたホイラー式コントローラを使用してもよい。
【0095】
図9には、走行装置1をノズルNに挿入するときの様子を示す。走行装置1は、ノズルNに平行な縦の状態でぶら下げられ、図2に示したような直線状となり、先行車両10から順にノズルNに挿入される。走行装置1の最小装置円Aの直径DAがノズルNの内径dNより小さいので、小径のノズルNにも走行装置1を挿入可能である。
【0096】
特に、先行車輪16が後側先行車輪17より小径であるため、最初に先行車輪16をノズルNに挿入し、これをガイドとして後側の部分を挿入し易くなる。
【0097】
図10には、走行装置1が配管K内底部を走行して段差Sの直前にきたときの様子を示す。ここで注目すべきは、段差Sと先行車輪16の位置関係である。
【0098】
すなわち、先行車輪16の回転中心P1の高さhP1は、段差Sの高さhSより高くなっている。その一方で駆動車輪3の回転中心O1の高さhO1は、段差Sの高さhSより低い。ちなみに後側先行車輪17の回転中心P2の高さ位置hP2も、段差Sの高さhSより低い。
【0099】
仮に、先行車両10が無いと仮定すると、最前端に位置する駆動車輪3の回転中心O1の高さhO1が段差Sの高さhSより低いため、駆動車輪3は段差Sに乗り上げることができない。よって走行装置1の走行は停止され、検査は余儀なく中止されてしまう。
【0100】
しかし本実施形態では、先行車輪16の回転中心P1の高さhP1が駆動車輪3の回転中心O1の高さhO1より高く、特に、段差Sの高さhSより高いため、先行車輪16が段差Sに乗り上げることができる。よって走行装置1の走行を継続し、検査を継続することができる。
【0101】
この説明で分かるように、本実施形態の走行装置1では、先行車輪16の回転中心P1の高さhP1が段差Sの高さhSより高くなるように、先行車両10の諸元が設定されている。これにより先頭の先行車輪16に段差Sを乗り上げさせ、これに続く各車輪を次々と乗り上げさせることができる。
【0102】
なお先行車両10の諸元には、先行車輪16および後側先行車輪17の位置、外径および間隔、ならびに駆動車輪3の回転中心O1から先行車輪16および後側先行車輪17の回転中心P1,P2までの距離が含まれる。
【0103】
図11には、先行車輪16が段差Sに乗り上げ終わった時点での様子を示す。先行車両10が図10のときより大きく傾けられるので、後側先行車輪17が配管Kの内面39から離れて上昇する。これにより後側先行車輪17の回転中心P2の高さhP2が段差Sの高さhSより高くなり、後側先行車輪17も段差Sに乗り上げ可能となる。
【0104】
図12には、後側先行車輪17が段差Sに乗り上げ終わった時点での様子を示す。今度は駆動車両20が前方斜め上向きに傾けられるので、その駆動車輪3(図示例では前から1番目と2番目の駆動車輪3)が配管Kの内面39から離れて上昇する。これにより、まず最前端の駆動車輪3の回転中心O1の高さhO1が段差Sの高さhSより高くなり、段差Sに乗り上げ可能となる。走行装置1が前進するにつれ、その後の駆動車輪3が次々と上昇し、段差Sに乗り上げ可能となる。
【0105】
後側先行車輪17が段差Sに接近し、あるいは段差Sに乗り上げると、先行磁石18が段差Sに引き付けられるので、後側先行車輪17が段差Sに吸着される。これにより、後側先行車輪17を段差Sに押し付ける力すなわちダウンフォースが働く。よって駆動車両20および後側駆動車両30による駆動力を前向きの推進力に効率よく変換できる。
【0106】
駆動車両20の駆動車輪3が配管Kの内面39から離れたとき、この離れた駆動車輪3によっては推進力を得ることができない。しかし、後側駆動車両30の駆動車輪3が配管Kの内面39に接地しているため、この駆動車輪3によって推進力を得ることができる。
【0107】
図13には、駆動車両20の最前端の駆動車輪3が段差Sに乗り上げ終わった時点での様子を示す。こうなると、駆動車両20がさらに大きく傾けられて、前から2番目の駆動車輪3が段差Sに乗り上げ易くなる。
【0108】
最前端の駆動車輪3が段差Sに接近し、あるいは段差Sに乗り上げると、その駆動車輪3に対応する磁石6が段差Sに引き付けられ、駆動車輪3を段差Sに押し付けるダウンフォースが働く。また、最前端の駆動車輪3が段差Sに乗り上げると、その駆動車輪3で直接、段差Sを蹴って推進することができる。磁石6によるダウンフォースがあることから、強力なトラクションを得ることができ、たとえ図示例のように前から2番目の駆動車輪3が浮いてしまっても、強力な推進力を得ることができる。そして、最前端の駆動車輪3より後側の部分を、前から引っ張って駆動することができる。
【0109】
このように、走行装置1は前進するにつれ次々と段差Sに乗り上げ、段差Sを乗り越えることができる。よって段差Sがあっても走行装置1を停止させずに済み、検査を支障なく継続することができる。
【0110】
ところで図14に示すように、配管K内には、上下方向に延びる縦壁47が設けられていることがある。本実施形態の走行装置1は、こうした縦壁47も上って乗り越えることができる。なお縦壁47は、高さがより大きい段差とみなすことができる。
【0111】
図示例においては、水平もしくは前後方向に延びる配管K内の底面48から、鉛直もしくは上下方向に延びる板状の縦壁47が起立している。しかしながら縦壁の形態はこうした形態に限らず、例えば、水平方向から鉛直方向上向きに曲がる配管でその鉛直部分を縦壁とみなしてもよい。
【0112】
縦壁47に向かって底面48上を矢示方向に前進してきた走行装置1は、まず図14に示すように先行車輪16が縦壁47に当接することにより、縦壁47に突き当たる。
【0113】
次に、このまま走行装置1を前進し続けると、図15に示すように、先行車輪16が縦壁47上を転がり上がり、先行車両10がより大きく傾けられる。先行車両10は、駆動車両20および後側駆動車両30により後方から押され、縦壁47を上る。
【0114】
その後、図16に示すように、後側先行車輪17が縦壁47に当接し、次いで最前端の駆動車輪3が縦壁47に当接する。後側先行車輪17が縦壁47に当接するタイミングで後側先行車輪17が先行磁石18により縦壁47に吸着される。そして最前端の駆動車輪3が縦壁47に当接するタイミングでその駆動車輪3が磁石6により縦壁47に吸着される。後側先行車輪17が縦壁47に吸着されるので、先行車両10が図示時計回りに回転して縦壁47から離れアンバランスになるのを抑制できる。
【0115】
最前端の駆動車輪3が縦壁47に当接すると、その駆動車輪3で直接、縦壁47を蹴って上方に推進することができる。磁石6によるダウンフォースがあることから、強力なトラクションを得られ、たとえ図示例のように前から2番目の駆動車輪3が浮いてしまっても、強力な推進力を得ることができる。そして、最前端の駆動車輪3より後側の部分を、前から引っ張って駆動することができる。
【0116】
前から2番目の駆動車輪3が浮いてしまうため、駆動車両20の吸着力および駆動力の低下が懸念される。しかし、駆動車両20は後側駆動車両30により後方から前方に押される。そのため駆動車両20を縦壁47に押し付けることができ、吸着力の低下を補うことができる。
【0117】
その後、図17に示すように、駆動車両20の全ての駆動車輪3が縦壁47に当接すると、これら駆動車輪3が縦壁47に吸着され、かつ縦壁47を蹴って、走行装置1を上向きに推進させる。そしてその後、後側駆動車両30の前から1番目の駆動車輪3が縦壁47に当接し、この駆動車輪3によっても上向きの推進力を得ることができる。
【0118】
図18は、走行装置1全体が縦壁47上に移行したときの様子を示す。このとき駆動車両20および後側駆動車両30の全ての駆動車輪3が縦壁47に吸着され、かつ縦壁47を蹴って、走行装置1を強力に上らせる。
【0119】
この後は図示しないが、縦壁47の上端の周りで走行装置1が図中反時計回りにU字状に折れ曲がり、縦壁47上を走り降りて底面48上に移動する。
【0120】
このように本実施形態の走行装置1は、配管K内に縦壁47があった場合でもそれを乗り越えることができる。よって走行装置1を停止させずに済み、検査を支障なく継続することができる。
【0121】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。
【0122】
(1)例えば、走行装置をより簡略化することが可能である。図19に示した第1変形例の走行装置1は、先行車両10および駆動車両20のみを備え、後側駆動車両30および後尾車両40は省略されている。
【0123】
図20に示す第2変形例の走行装置1は、先行車両10、駆動車両20および後尾車両40のみを備え、後側駆動車両30は省略されている。
【0124】
図21に示す第3変形例の走行装置1は、先行車両10、駆動車両20および後側駆動車両30のみを備え、後尾車両40は省略されている。
【0125】
これら変形例の走行装置1によっても、段差Sおよび縦壁47を乗り越えることが可能である。
【0126】
(2)図示しないが、先行車両10から後側先行車輪17を省略してもよい。こうすると、先行車両10の前方斜め上向きへの傾斜角θ1が小さくなるが、これに対しては、駆動車両20に対する先行車両10の下向きへの回転角を規制するストッパを設ければよい。このストッパにより自然状態の先行車両10を支え、先行車両10を同等の傾斜角θ1に保持することができる。
【0127】
先行車両10から先行磁石18を省略してもよい。
【0128】
(3)前記実施形態では、後側駆動車両30を1台のみ設けたが、後側駆動車両30を複数台設けてもよい。この場合、先頭の後側駆動車両30は駆動車両20に左右軸回りに回転可能に連結されるが、その後の後側駆動車両30は、直前の後側駆動車両30に左右軸回りに回転可能に連結される。
【0129】
(4)駆動車両20は必ずしも6輪車である必要はなく、例えば2輪車、4輪車または8輪車であってもよい。また駆動車両20は必ずしも全輪駆動車である必要はなく、幾つかの従動輪を含んでもよい。
【0130】
(5)駆動車両20および後側駆動車両30における駆動車輪3の駆動方式はギア式に限らず、例えばベルト式、チェーン式、またはシャフトドライブ式であってもよい。
【0131】
(6)各車両10,20,30,40の少なくとも一つに、車輪の上下動を吸収するサスペンション装置を設けてもよい。
【0132】
(7)駆動車体2、先行車体15および後尾車体33の少なくとも一つは、必ずしもはしご形フレームのような構造でなくてもよく、例えばモノコック構造であってもよい。
【0133】
(8)磁石6および先行磁石18は、必ずしも駆動車体2および先行車体21の底面部に配置されてなくてもよく、その設置位置は任意である。
【0134】
(9)先行車輪16の中心P1は、必ずしも段差Sより高い位置に位置されてなくてもよい。段差Sの形状等によっては、段差Sより低くても段差Sに乗り上げることが可能だからである。
【0135】
(10)先行車輪16は、必ずしも後側先行車輪17より小径でなくてもよく、その大きさは任意である。後側先行車輪17と同径であってもよいし、後側先行車輪17より大径であってもよい。また先行車輪16は、必ずしも駆動車輪3より大径でなくてもよい。駆動車輪3と同径であってもよいし、駆動車輪3より小径であってもよい。
【0136】
(11)検査ユニットは、先行車両10および後尾車両40に限らず、任意の車両に設けることができる。
【0137】
本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0138】
1 走行装置
2 駆動車体
3 駆動車輪
4,5 モータ
6 磁石
10 先行車両
15 先行車体
16 先行車輪
17 後側先行車輪
18 先行磁石
20 駆動車両
30 後側駆動車両
39 内面
40 後尾車両
47 縦壁
50 前側検査ユニット
60 後側検査ユニット
K 配管
S 段差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21