(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240624BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A41D13/11 H
A62B18/02 A
(21)【出願番号】P 2020214144
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 学校法人福岡大学「ものづくりセンターHP」http://www.tec.fukuoka-u.ac.jp/mono/library/library.html(ウェブサイトの掲載日:令和2年5月11日) 毎日新聞西部本社が発行する毎日新聞に掲載(新聞掲載日:毎日新聞の令和2年5月13日付朝刊第19面) 学校並びに医療機関に配布(令和2年5月15日~令和2年8月7日)
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】熊丸 憲男
(72)【発明者】
【氏名】川原 巧己
(72)【発明者】
【氏名】古賀 啓太
(72)【発明者】
【氏名】木村 介人
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3010049(JP,U)
【文献】登録実用新案第3228349(JP,U)
【文献】登録実用新案第3228996(JP,U)
【文献】米国特許第04944312(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0084312(KR,A)
【文献】特開2018-149295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の頭部に装着した状態を維持可能なヘッドバンドと、顔面の前方をカバー可能な透光性を有するシールドフィルムと、前記ヘッドバンド並びに前記シールドフィルムに係合して前記シールドフィルムを湾曲形状に保持するサポーターと、
を備えたフェイスシールドにおいて、
前記サポーターは、前記シールドフィルムに沿って湾曲可能なサポーター本体部と、前記サポーター本体部の両端側に形成された係合部と、前記ヘッドバンドを挿通させるため前記係合部のそれぞれに開設された複数のサポータースリットと、前記サポーターと前記シールドフィルムとを係合させるため前記係合部並びに前記シールドフィルムに設けられた係合手段と、を備えたフェイスシールド。
【請求項2】
前記ヘッドバンドは、その長手方向の一方の端部側に形成された舌片状の係止部と、前記係止部を挿通させるため前記長手方向の他方の端部側に開設された複数のヘッドバンドスリットと、を備えた請求項1記載のフェイスシールド。
【請求項3】
前記サポーターの係合部に開設された複数の前記サポータースリットの長手方向が、前記サポーターの長手方向と交差する方向をなし、複数の前記サポータースリットのうちの前記サポーター本体部の中央寄り(または前記サポーター本体部の中央から離れた側)に位置する前記サポータースリットの長さが他の前記サポータースリットの長さより大である
請求項1または2記載のフェイスシールド。
【請求項4】
前記係合手段が、前記係合部(または前記シールドフィルム)に設けられた突片、並びに、前記突片を着脱可能に挿入するため前記シールドフィルム(または前記係合部)に開設された貫通孔である
請求項1または2記載のフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝染病の飛沫感染を防止することなどを目的として、人体の頭部に装着して顔面をカバーするフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
伝染病の飛沫感染を防止するためのフェイスシールドについては、従来、様々な形状、機能を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1,2,3に記載された「フェイスシールド」などがある。
【0003】
特許文献1に記載された「フェイスシールド」は、着用者の頭部に巻き付けられるベルトと、ベルトに取り付けられるシールドとを備え、ベルト及びシールドは可撓性の樹脂プレートを切断することによって形成され、
シールドは、取付端縁と取付端縁の反対側に位置する開放端縁と取付端縁及び開放端縁の間に延びる一対の側縁とを有し、取付端縁には側縁に沿って延びるとともにベルトが挿入される一対のベルト挿入孔が形成され、
ベルトは、第1ベルト部及び第2ベルト部と、第1ベルト部の端に設けられた鍵部と、第2ベルト部に設けられ鍵部が係合される複数の鍵穴部と、第1ベルト部及び第2ベルト部にそれぞれ設けられシールドの側縁に係合されるシールド係止爪と、を備えたことを特徴とするものである。
【0004】
特許文献2に記載された「フェイスシールド」は、透明なプラスチック製のシールド本体と、シールド本体の内面側に配置された、装着する者の額部分に当接するクッション材と、装着する者の額部分に当接させた状態のクッション材を、頭部に固定するためのベルト部材と、を具備した装着部と、を具備し、
シールド本体は、人の顔部分の曲線に沿って湾曲自在な柔軟素材により形成され、上方部分の左右側両端に斜め方向に傾けたスリットが形成されており、
ベルト部材は、両端部分が互いに連結可能であり、両端部分は、それぞれがスリットを貫通してシールド本体の外面側に出た後に、装着する者の頭部の後方において互いに連結され、スリットを貫通する部分を変更することで、クッション材とシールド本体との間隔を調整可能とした、ことを特徴とするものである。
【0005】
特許文献3に記載された「フェイスシールド」は、装着者の頭部周囲に装着するための装着バンドと、装着バンドを頭部周囲に装着した際、装着者の顔面全体を覆うように装着バンドの長さの一部に亘って取り付けられた透明又は半透明の顔面保護面と、を備え、
顔面保護面の一面に、人物、動物、又はキャラクターを模した顔面模様からなる装飾部を有し、装飾部の一部には、装着バンドを装着した装着者が前方視認可能なように、透明又は半透明の光透過部が形成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】登録実用新案第3228622号公報
【文献】登録実用新案第3227932号公報
【文献】登録実用新案第3228167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1(2,3)に記載されたフェイスシールドは、顔面を覆うためのシールド(シールド本体、顔面保護面)は、ベルト(ベルト部材、装着バンド)のみによって人体の頭部に固定されているので、使用中に頭部を動かすと、シールド(シールド本体、顔面保護面)が揺動したり、固定状態が変化したりすることがあり、不安定である。
【0008】
また、特許文献1(2,3)に記載されたフェイスシールドは、長時間に亘って頭部に装着していると、ベルト(ベルト部材、装着バンド)に対するシールド(シールド本体、顔面保護面)の係合位置が徐々に変化して、顔面の前方に位置するシールド(シールド本体、顔面保護面)の湾曲状態が変化し、視認性に悪影響を及ぼすことがある。このような場合、使用中に前記係合位置を修正しなければならないので、面倒であり、使用者本来の業務の妨げとなることもある。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、使用中に頭部を動かしたり、長時間使用したりしても、顔面を覆うシールドフィルムが揺れたり、ズレたりすることがなく、安定した状態を保つことができるフェイスシールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフェイスシールドは、人間の頭部に装着し状態を維持可能なヘッドバンドと、顔面の前方をカバー可能な透光性を有するシールドフィルムと、前記ヘッドバンド並びに前記シールドフィルムに係合して前記シールドフィルムを湾曲形状に保持するサポーターと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記フェイスシールドにおいては、前記ヘッドバンドは、その長手方向の一方の端部側に形成された舌片状の係止部と、前記係止部を挿通させるため前記長手方向の他方の端部側に開設された複数のヘッドバンドスリットと、を備えたものを用いることができる。
【0012】
前記フェイスシールドにおいては、前記サポーターは、前記シールドフィルムに沿って湾曲可能なサポーター本体部と、前記サポーター本体部の両端側に形成された係合部と、前記ヘッドバンドを挿通させるため前記係合部のそれぞれに開設された複数のサポータースリットと、前記サポーターと前記シールドフィルムとを係合させるため前記係合部並びに前記シールドフィルムに設けられた係合手段と、を備えたものを用いることができる。
【0013】
前記フェイスシールドにおいては、前記サポーターの係合部に開設された複数の前記サポータースリットの長手方向が、前記サポーターの長手方向と交差する方向をなし、複数の前記サポータースリットのうちの前記サポーター本体部の中央寄り(または前記サポーター本体部の中央から離れた側)に位置する前記サポータースリットの長さが他の前記サポータースリットの長さより大であるようにすることができる。
【0014】
前記フェイスシールドにおいては、前記係合手段が、前記係合部(または前記シールドフィルム)に設けられた突片、並びに、前記突片を着脱可能に挿入するため前記シールドフィルム(または前記係合部)に開設された貫通孔であるようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明より、使用中に頭部を動かしたり、長時間使用したりしても、顔面を覆うシールドフィルムが揺れたり、ズレたりすることがなく、安定した状態を保つことができるフェイスシールドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態であるフェイスシールドを示す一部省略斜視図である。
【
図2】
図1に示すフェイスシールドの構成部材であるヘッドバンドの一部省略正面図である。
【
図3】
図1に示すフェイスシールドの構成部材であるシールドフィルムの一部省略正面図である。
【
図4】
図1に示すフェイスシールドの構成部材であるサポーターの一部省略正面図である。
【
図5】
図1に示すフェイスシールドの組立工程を示す一部省略正面図である。
【
図6】
図5に示す組立工程を経て組み立てられた後、頭部に装着する前のフェイスシールドの一部省略正面図である。
【
図7】
図6に示すフェイスシールドを頭部に装着した状態を示す一部省略正面図である。
【
図8】
図6に示すフェイスシールドを頭部に装着した状態を示す一部省略側面図である。
【
図9】
図6に示すフェイスシールドを頭部に装着した状態を示す一部省略平面図である。
【
図10】
図8に示すフェイスシールドの傾動状態を示す一部省略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図10に基づいて、本発明の実施形態であるフェイスシールド100について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るフェイスシールド100は、人間の頭部H(
図9参照)の周りに巻き付けられた状態を維持可能なヘッドバンド10と、顔面F(
図8参照)の前方をカバー可能なシールドフィルム30と、ヘッドバンド10及びシールドフィルム30に係合してシールドフィルム30を湾曲形状に保持するサポーター50と、を備えている。ヘッドバンド10、シールドフィルム30及びサポーター50は何れも透明な合成樹脂シート材で形成されている。
【0019】
図2に示すように、ヘッドバンド10は、その長手方向10Lの一方の端部10a側に舌片状の係止部11が形成され、長手方向10Lの他方の端部10b側に係止部11が挿通可能な複数のヘッドバンドスリット12が開設されている。複数のヘッドバンドスリット12はヘッドバンド10の長手方向10Lに沿って所定距離を隔てて開設され、それぞれの開口部分の長手方向12Lが、ヘッドバンド10の長手方向10Lと直交するように配列されている。
【0020】
係止部11の幅11wは、ヘッドバンド10の本体部13の幅13wより小さく設定されている。ヘッドバンドスリット12の長手方向12Lの長さ12aは、本体部13の幅13wより小さく、係止部11の幅11wより大である。ヘッドバンドスリット12の個数や配列間隔は使用条件に応じて任意に設定することができる。ヘッドバンド10は、透明な合成樹脂材、例えば、PC(ポリカーボネイト)などで形成することができるが、これに限定しない。
【0021】
図3に示すように、シールドフィルム30は、透明な合成樹脂材で形成され、上縁部30a、左右の側縁部30b,30c及び下縁部30dの中央部分が直線状をなしている。上縁部30aと左右の側縁部30b,30cとの境界部分、並びに左右の側縁部30b,30cと下縁部30dとの境界部分はそれぞれ凸曲線状をなしている。左右の側縁部30b,30c寄りの部分であって、且つ、上縁部30a寄りの部分にそれぞれ複数の貫通孔31,32が開設されている。複数の貫通孔31,32はそれぞれ側縁部30b,30cの長手方向30bL,30cLに沿って所定間隔を置いて開設されている。
【0022】
シールドフィルム30の形状やサイズ(広さ)は限定しないので、使用者の顔面前方の必要領域をカバーすることができる程度あればよい。シールドフィルム30は、透光性を有するものであれば良いので、材質は限定しないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などが好適である。フェイスシールド100においては、ヘッドバンド10の厚みは0.5mmであり、シールドフィルム30の厚みは0.125mmであり、サポーター50の厚みは1.0mmであり、これら3つの部材の厚みの大小関係が、シールドフィルム30の厚み<ヘッドバンド10の厚み<サポーターの厚みとなるように設定しているが、これに限定するものではない。
【0023】
図4に示すサポーター50は、後述する
図9に示すように、シールドフィルム30に沿って湾曲可能な帯板状の本体部51と、本体部51の左右の両端側にそれぞれ形成された係合部52a,52bと、ヘッドバンド10(
図2参照)を挿通させるため係合部52a,52bのそれぞれに開設された複数のサポータースリット53,54と、を備えている。係合部52a,52bの幅52wは本体部51の幅51wより大である。
【0024】
また、サポーター50とシールドフィルム30とを着脱可能に係合させるための係合手段として、係合部52a,52bにそれぞれ複数の突片55,56が設けられ、シールドフィルム30に円形の貫通孔31,32(
図3参照)が設けられている。突片55,56は、サポーター50の長手方向50Lに沿ってそれぞれ係合部52a,52bから離れる方向に向かって突設されている。突片55,55(56,56)の配置間隔は、それぞれ貫通孔31,31(32,32)の配置間隔と同じである。
【0025】
図4に示すように、突片55の正面視形状は、矢印の先端部を当該矢印の横断方向に直線状に切断した形状をなし、その最大幅55wは、シールドフィルム30の貫通孔31,32(
図3参照)の内径より若干大である。図示していないが、突片56の正面視形状および最大幅についても突片55と同様である。シールドフィルム30は可撓性を有するので、貫通孔31,32の周囲の部分を撓ませると、突片55,56はそれぞれ貫通孔31,21に挿入・離脱可能となる。
【0026】
図4に示すように、サポーター50の係合部52a,52bに開設された複数のサポータースリット53,54の長手方向が、サポーター50の長手方向50Lと直交する方向をなしている。サポータースリット53,54の長さ53L,54Lは、
図2に示すヘッドバンド10の本体部13の幅13wより大である。また、複数のサポータースリット53,54のうちの本体部51の中央51c(長手方向50Lの中央)寄りに位置するサポータースリット54の長さ54Lは他方のサポータースリット53の長さ53Lより大である。なお、サポータースリット54の長さ54Lとサポータースリット53の長さ53Lとの大小関係は、サポータースリット53の長さ53Lをサポータースリット54の長さ54Lより大とすることもできる。
【0027】
次に、
図5,
図6に基づいて、フェイスシールド100の組立工程について説明する。
図5に示すように、ヘッドバンド10にサポーター50を係合させて一体化させた後、サポーター50の部分をシールドフィルム30に係合させるとフェイスシールド100を形成することができる。
【0028】
初めに、ヘッドバンド10の係止部11側の端部10aを、サポーター50の一方の係合部52aの背面側からサポータースリット53に挿入し、係合部52aの正面側に突出した端部10aをサポータースリット54に挿入し、端部10aを係合部52aの背面側へ突出させる。
【0029】
次に、係合部52aの背面側に突出した端部10aをサポーター50の長手方向50Lに沿って他方の係合部52bに向かって引っ張ることにより、サポーター50をヘッドバンド10の端部10b側へ移動させる。
【0030】
ヘッドバンド10の端部10aが係合部52b付近に到達したら、係合部52bの背面側から端部10aをサポータースリット54に挿入し、係合部52bの正面側に突出した端部10aをサポータースリット53に挿入し、係合部52bの背面側へ突出させる。
【0031】
次に、係合部52bの背面側に突出したヘッドバンド10の端部10aを支えた状態でサポーター50全体を反対側の端部10bに向かって移動させ、サポーター50をヘッドバンド10の全長の中央付近の本体部13に配置する。
【0032】
この後、ヘッドバンド10と一体化したサポーター50の正面側を、シールドフィルム30の背面側の上縁部30a寄りの部分に当接させ、係合部52a側の突片55,55をシールドフィルム30の背面側からそれぞれ貫通孔31,31に差し込んで係合させ、同様に、係合部52b側の突片56,56をシールドフィルム30の背面側からそれぞれ貫通孔32,32に差し込んで係合させると、
図6に示すように、ヘッドバンド10、サポーター50及びシールドフィルム30が一体化したフェイスシールド100が完成する。
【0033】
この後、
図1に示すように、ヘッドバンド10の本体部13に対するサポーター50の係合部52a,52bの係合位置を変更して係合部52a,52bの係合間隔を狭めることによりサポーター50をヘッドバンド10の前方に突出するように弓形に反らせると、これに伴ってシールドフィルム30もヘッドバンド10の前方に向かって膨らむように湾曲する。ヘッドバンド10の本体部13とサポーター50の係合部52a,52bとの間には摩擦力が生じるので、シールドフィルム30及びヘッドバンド10は前方に膨らんだ湾曲形状に保持される。
【0034】
シールドフィルム30の湾曲形状は、ヘッドバンド10の本体部13に対するサポーター50の係合部52a,52bの係合位置を変更して係合部52a,52bの係合間隔を変更することにより調整することができる。
【0035】
最後に、
図1に示すように、ヘッドバンド10の係止部11の端部10aを、端部10b側の複数のヘッドバンドスリット12の何れかに挿入すれば、ヘッドバンド10はリング状となるので、
図7~
図9に示すように、人間の顔面Fの前方にシールドフィルム30が位置するようにし、頭部Hをヘッドバンド10で包囲するように被れば、フェイスシールド100の装着が完了する。
【0036】
図7~
図9に示すように、フェイスシールド100を装着すると、顔面F全体の前方がシールドフィルム30でカバーされるので、使用者の飛沫が拡散したり、他者の飛沫を吸い込んだりするのを阻止することができ、伝染病の飛沫感染の防止に有効である。フェイスシールド100において、シールドフィルム30は、ヘッドバンド10とは別部材であるサポーター50によって湾曲形状に保たれているので、使用中に頭部Hを動かしたり、長時間使用したりしても、顔面Fを覆うシールドフィルム30が揺れたり、ズレたりすることがなく、安定した状態を保つことができる。
【0037】
また、前述した
図4に示すように、サポーター50の係合部52a,52bに開設されたサポータースリット54の長さ54Lはサポータースリット53の長さ53Lより大であるため、
図10に示すように、サポーター50及びシールドフィルム30は、ヘッドバンド10に対して、サポータースリット53付近を中心にして起伏可能である。従って、
図10(a)に示すように、シールドフィルム30の下縁部30dが顎部Tから離れた状態から、
図10(b)に示すようにシールドフィルム30が直立した状態を経て、
図10(c)に示すようにシールドフィルム30の下縁部30dが顎部Tに近づいた状態に至るまで、顔面Fに対するシールドフィルム30の傾斜角度を任意に設定することができる。
【0038】
さらに、フェイスシールド100において、シールドフィルム30の左右の貫通孔31,32はサポーター50の突起55,56に対して係脱可能であるため、シールドフィルム30が汚損したり、損傷したりした場合、シールドフィルム30のみを取り替えることができる。
【0039】
そのほか、フェイスシールド100は次のような長所を備えている。
(1)立体形状のフェイスシールド100は平面状のシート材から切り抜いた3つの部材を組み合わせて形成することができるので、比較的容易に製造することができる。
(2)フェイスシールド100において、ヘッドバンド10及びサポーター50の材料はポリカーボネートであり、シールドフィルム30の材料はポリエチレンテレフタレートであるため、軽量で耐久性が高く、アルコールや洗剤にも十分な耐性を有し、石けん洗浄やアルコール消毒することにより長期間衛生的に使うことができ、安全で衛生的で維持管理も容易である。
(3)立体形状に組み上げた後のフェイスシールド100は、ヘッドバンド10、サポーター50並びにシールドフィルム30の接触部分に生じる必要十分な摩擦力で形状を維持するので、接着剤などの他の固定方法は不要である。
(4)フェイスシールド100を構成する全ての部材(ヘッドバンド10、サポーター50並びにシールドフィルム30)は透明度が高く、目立たないので、医療現場で使用した場合に患者に威圧感を与えない。
(5)ヘッドバンド10とサポーター50とは一体的な構造物をなし、剛性が高いので、強度も良好である。
(6)シールドフィルム30は、サポーター50に密着して湾曲した状態で固定されるので、使用者の頭部が動いてもシールドフィルム30が揺れ難く、顔面シールド部材の揺れに起因する「気持ちが悪くなる」などの症状を防止することができる。
(7)使用者の頭部の大きさに合わせてヘッドバンド10の長さ(内径)を調整することができ、ヘッドバンド10の係止部11とヘッドバンドスリット12との係合部分は摩擦力で固定されるので、頭部に対する締め具合は無段階で調整することができ、締め付け感が小さい割には、安定的に頭部に固定することができる。
(8)ヘッドバンド10に対するサポーター50の係合部52a,52bの係合間隔を調整すればサポーター50の張り出し量を変えることができるので、顔面とシールドフィルム30の距離やシールドフィルム30の平面度(曲率)を細かく調整することができる。
(9)使用者の顔面に対するシールドフィルム30の角度を変えることができるので、口や鼻の部分とシールドフィルム30との間隔を拡げれば、フェイスシールド100と併せて医療用N95マスクを使うこともできる。
(10)フェイスシールド100を構成するヘッドバンド10、サポーター50並びにシールドフィルム30はそれぞれ平面状のシート材をレーザー加工機でカットするだけで簡単に製造することができ、また、金型を製作すればプレス機で打ち抜いて大量生産することもできる。
【0040】
なお、
図1~
図10に基づいて説明したフェイスシールド100は、本発明に係るフェイスシールドの一例を示すものであり、本発明に係るフェイスシールドは前述したフェイスシールド100に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るフェイスシールドは、医院や病院などに勤務する医師、看護師などの医療関係者並びに飲食業界や接客業界の従業者などの様々な産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 ヘッドバンド
10L,12L,30bL,30cL,50L 長手方向
10a,10b 端部
11 係止部
11w,13w,51w,52w 幅
12 ヘッドバンドスリット
12a,53L,54L 長さ
13 ヘッドバンドの本体部
30 シールドフィルム
30a 上縁部
30b,30c 側縁部
30d 下縁部
31,32 貫通孔
50 サポーター
51 サポーターの本体部
51c 中央
52a,52b 係合部
53,54 サポータースリット
55,56 突片
100 フェイスシールド