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特許7508108防火戸エスケープ機構並びにそのエスケープ機構を備えたコンベアライン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】防火戸エスケープ機構並びにそのエスケープ機構を備えたコンベアライン
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/52 20060101AFI20240624BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B65G47/52 A
E06B5/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020214478
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100481
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390029090
【氏名又は名称】靜甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】前野 房枝
(72)【発明者】
【氏名】長澤 佑介
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-189458(JP,A)
【文献】実開昭55-143224(JP,U)
【文献】特開2018-199578(JP,A)
【文献】特開昭50-159134(JP,A)
【文献】米国特許第04753337(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/52
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常には作動時の移動空間を開放させて収納されている防火戸の作動時に、常には前記移動空間の内外に亘って配置される架設部材を前記移動空間上の位置から退避させる退避機構を備える防火戸エスケープ機構であって、
前記退避機構として、
前記架設部材を前記移動空間上の位置と、水平方向に移動させた退避位置との間で進退移動可能とするアクチュエータと、
前記防火戸の作動時に前記架設部材のアクチュエータを駆動させ、前記架設部材を前記移動空間から前記退避位置へ移動させるための動力供給ライン並びに電気信号ラインを備えた電気的退避手段と、
前記電気的退避手段の動力供給ライン及び/または電気信号ラインが寸断された際に、自動かつ非電気的に前記架設部材を前記移動空間から前記退避位置へ移動させる機械的退避手段とを有し、
前記架設部材のアクチュエータは、前記架設部材に直接的または間接的に接続されたロッドを備え、シリンダに供給される動力としての流体により、機械的退避手段による前記ロッドを収縮させる力に抗してロッドを伸長させ、前記架設部材を防火戸の移動空間上に位置させた状態と、前記ロッドを収縮させ、前記架設部材を防火戸の移動空間から退避させた状態とに駆動するロッド式シリンダであり、
前記電気的退避手段は、
動力となる流体の供給源、
前記供給源と前記架設部材のロッド式シリンダとの間を結び、前記ロッドを伸長させる為の動力を供給する第1の動力供給ライン、
前記供給源と前記架設部材のロッド式シリンダとの間を結び、前記ロッドを収縮させる為の動力を供給する第2の動力供給ライン、
前記第1の動力供給ラインを開閉させる第1の流路切替弁、
前記第2の動力供給ラインを開閉させるとともに、前記第1の流路切替弁に接続され、前記供給源から供給される流体を前記第1の流路切替弁の作動に用い、前記第1の流路切替弁を開いて前記第1の動力供給ラインから前記流体を前記架設部材のロッド式シリンダに供給する第1のモードと、前記供給源から供給される流体を、前記第2の動力供給ラインから直接、前記架設部材のロッド式シリンダに供給する第2のモードとを前記電気信号ラインからの駆動信号によって切替可能に配設された電磁弁
を備えることを特徴とする防火戸エスケープ機構。
【請求項2】
前記電気的退避手段は、さらに、
前記供給源と前記防火戸のアクチュエータとの間を結び、前記防火戸のアクチュエータを非作動とする為の動力を供給する第3の動力供給ライン、
前記第2の動力供給ラインにおいて、前記電磁弁の位置よりも動力供給方向下流側にて分岐させて設けられ、前記供給源と前記防火戸のアクチュエータとの間を結び、前記防火戸のアクチュエータを作動させる為の動力を供給する第4の動力供給ライン、
前記第3の動力供給ラインを開閉させる第2の流路切替弁
を備え、
前記電磁弁は、
前記第1のモードにおいては、前記供給源から供給される流体を前記第2の流路切替弁の作動にも用い、前記第2の流路切替弁を閉じて前記第3の動力供給ラインから前記流体を前記防火戸のアクチュエータにも供給し、
前記第2のモードにおいては、前記供給源から供給される流体を、前記第4の動力供給ラインから前記防火戸のアクチュエータにも供給するように切替可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の防火戸エスケープ機構。
【請求項3】
前記機械的退避手段は、自重により前記ロッドを収縮させつつ前記架設部材を退避位置へ導く錘部材、または、弾性部材の弾性力により前記ロッドを収縮させつつ前記架設部材を退避位置へ導く弾性部材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防火戸エスケープ機構。
【請求項4】
防火戸が昇降あるいは直線状に進退するための移動空間を挟んで離間させて配設された上流側コンベアおよび下流側コンベアと、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の防火戸エスケープ機構とを備え、
前記架設部材は、常には前記上流側コンベアと前記下流側コンベアとに懸架させて配置され、搬送対象のワークを挟持し、上流側コンベアから前記下流側コンベアへ渡す一対のサイドベルトを備えた中間コンベアであることを特徴とするコンベアライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる防火シャッタ、防爆シャッタ、防火扉等の防火戸の作動時に該防火戸の移動空間内に位置している設備や荷物等(以下、装置等)を前記移動空間内から退避させる防火戸エスケープ機構と、そのエスケープ機構を備えたコンベアラインに関する。
【背景技術】
【0002】
工場、学校、病院、ホール、商業施設などの施設には、空間を区画することで火災や爆発等の被害の伝播を最低限にとどめることを目的として、普段は物や人が往き来する開口部に防火シャッタなどの防火戸が設けられることがある。そして、防火戸はその作動時には前記開口部を完全に閉鎖しなければならないので、その移動空間には障害物が何も設けられていないことが望ましい。
【0003】
そして、たとえば製品の製造工場などでは、その製品を製造工程を辿りつつ搬送するコンベアラインが前記防火戸としての防火シャッタが設けられた開口部を貫通し、非常時には危険エリアと安全エリアとに区画される両エリアに跨がって配設されるようなことも多い。
【0004】
そこで、防火シャッタの移動空間を確保するように離間させて配置された上流側コンベアおよび下流側コンベアと、前記移動空間に位置して上流側コンベアおよび下流側コンベアを接続させる搬送位置と防火シャッタの作動時に前記移動空間から退避する退避位置との間で揺動可能にコンベアフレーム等に支持されたローラ状(特許文献1)あるいは板状(特許文献2)の接続部材を備えるコンベヤラインも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-254085号公報
【文献】特開2015-147660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらはあくまでも、上流側コンベアの最下流と、下流側コンベアの最上流との間の接続部分に接続部材を揺動により介在・退避させることができるコンベアラインの前記接続部分を移動空間に位置させるという発想である。現実には、工場やビルなどの施設では、スペースの関係で、前記移動空間上に家具、荷物、製品、消化器等を一時的にでも置かざるを得ないような状況も散見されるが、このような問題までも解決することはできない。
【0007】
また、防火戸のうち、防火シャッタや防爆シャッタは、基本的には電気・信号で作動する構成とされ、電気などの動力や電気信号などが寸断された場合には手動で作動させるように構成されているが、災害などの非常時において、それを作動させる電気などの動力や電気信号などが寸断された場合であっても、手動では無く、自動で動作させうる手段を備えていることが安全上望ましいことはいうまでもない。
【0008】
そこで、本発明は、防火戸の移動空間に配置せざるを得ない装置等を、非常時に電気などの動力や電気信号などが寸断された場合であっても、その移動空間から自動で退避させ、防火戸が作動するための空間を確保することができる防火戸エスケープ機構並びにそのエスケープ機構を備えたコンベアラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明の防火戸エスケープ機構は、常には作動時の移動空間を開放させて収納されている防火戸の作動時に、常には前記移動空間の内外に亘って配置される架設部材を前記移動空間上の位置から退避させる退避機構を備える防火戸エスケープ機構であって、前記退避機構として、前記架設部材を前記移動空間上の位置と、水平方向に移動させた退避位置との間で進退移動可能とするアクチュエータと、前記防火戸の作動時に前記架設部材のアクチュエータを駆動させ、前記架設部材を前記移動空間から前記退避位置へ移動させるための動力供給ライン並びに電気信号ラインを備えた電気的退避手段と、前記電気的退避手段の動力供給ライン及び/または電気信号ラインが寸断された際に、自動かつ非電気的に前記架設部材を前記移動空間から前記退避位置へ移動させる機械的退避手段とを有し、前記架設部材のアクチュエータは、前記架設部材に直接的または間接的に接続されたロッドを備え、シリンダに供給される動力としての流体により、機械的退避手段による前記ロッドを収縮させる力に抗してロッドを伸長させ、前記架設部材を防火戸の移動空間上に位置させた状態と、前記ロッドを収縮させ、前記架設部材を防火戸の移動空間から退避させた状態とに駆動するロッド式シリンダであり、前記電気的退避手段は、動力となる流体の供給源、前記供給源と前記架設部材のロッド式シリンダとの間を結び、前記ロッドを伸長させる為の動力を供給する第1の動力供給ライン、前記供給源と前記架設部材のロッド式シリンダとの間を結び、前記ロッドを収縮させる為の動力を供給する第2の動力供給ライン、前記第1の動力供給ラインを開閉させる第1の流路切替弁、前記第2の動力供給ラインを開閉させるとともに、前記第1の流路切替弁に接続され、前記供給源から供給される流体を前記第1の流路切替弁の作動に用い、前記第1の流路切替弁を開いて前記第1の動力供給ラインから前記流体を前記架設部材のロッド式シリンダに供給する第1のモードと、前記供給源から供給される流体を、前記第2の動力供給ラインから直接、前記架設部材のロッド式シリンダに供給する第2のモードとを前記電気信号ラインからの駆動信号によって切替可能に配設された電磁弁を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記機械的退避手段は、自重により前記ロッドを収縮させつつ前記架設部材を退避位置へ導く錘部材、または、弾性部材の弾性力により前記ロッドを収縮させつつ前記架設部材を退避位置へ導く弾性部材であることを特徴とする。
【0013】
そして、前記電気的退避手段は、さらに、前記供給源と前記防火戸のアクチュエータとの間を結び、前記防火戸のアクチュエータを非作動とする為の動力を供給する第3の動力供給ライン、前記第2の動力供給ラインにおいて、前記電磁弁の位置よりも動力供給方向下流側にて分岐させて設けられ、前記供給源と前記防火戸のアクチュエータとの間を結び、前記防火戸のアクチュエータを作動させる為の動力を供給する第4の動力供給ライン、前記第3の動力供給ラインを開閉させる第2の流路切替弁を備え、前記電磁弁は、前記第1のモードにおいては、前記供給源から供給される流体を前記第2の流路切替弁の作動にも用い、前記第2の流路切替弁を閉じて前記第3の動力供給ラインから前記流体を前記防火戸のアクチュエータにも供給し、前記第2のモードにおいては、前記供給源から供給される流体を、前記第4の動力供給ラインから前記防火戸のアクチュエータにも供給するように切替可能とされていることを特徴とする。
【0014】
このように構成された本発明の防火戸エスケープ機構によれば、防火戸を作動させる際に、電気的退避手段に支障が生じた場合であっても、機械的退避手段により、防火戸の移動空間の内外に亘って配置される架設部材を前記移動空間から退避させることが可能となり、さらには、防火戸のアクチュエータをも併せて駆動させることが可能となる。
【0015】
また、本発明のコンベアラインは、防火戸が昇降あるいは直線状に進退するための移動空間を挟んで離間させて配設された上流側コンベアおよび下流側コンベアと、前述のいずれかの防火戸エスケープ機構とを備え、前記架設部材は、常には前記上流側コンベアと前記下流側コンベアとに懸架させて配置され、搬送対象のワークを挟持し、上流側コンベアから前記下流側コンベアへ渡す一対のサイドベルトを備えた中間コンベアであることを特徴とする。
【0016】
このように構成された本発明のコンベアラインによれば、常には、前記アクチュエータのロッドを伸長させ、前記架設部材としての中間コンベアを前記上流側コンベアと、下流側コンベアとに架渡すように配設させ、上流側コンベアの上面に載置され、その下流端部へ搬送されたワークを一対のサイドコンベア間に挟持した状態で駆動し、前記下流側コンベアの上流端部に載置し、下流側コンベアは中間サイドコンベアから渡されたワークをさらに下流へ搬送することができ、非常時には、前記アクチュエータのロッドを収縮させて中間コンベアを防災シャッタの移動空間から退避させることで、中間コンベアが防火シャッタの降下を阻害することを回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明の防火戸エスケープ機構並びにそのエスケープ機構を備えたコンベアラインによれば、防火戸の移動空間に配置せざるを得ない装置等を非常時に電気などの動力や電気信号などが寸断された場合には機械的退避手段を特段の制御を要せずに駆動させることができ、防火戸の移動空間から前記装置等を自動で退避させ、防火戸が移動する空間を確保することができる。よって、常時の空間レイアウトに制限がなく、自由にレイアウトすることが可能となる。さらには、防火戸のアクチュエータと併せて駆動させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の防火戸エスケープ機構の第1実施形態における非作動時(常時)の要部説明図。
図2図1の防火戸エスケープ機構における作動時(非常時)の要部説明図。
図3】本発明の防火戸エスケープ機構の第2実施形態における非作動時(常時)の要部説明図。
図4図3の防火戸エスケープ機構における作動時(非常時)の要部説明図。
図5】本発明のコンベアラインの実施形態における防火戸エスケープ機構の非作動時(常時)の要部説明図。
図6図5のコンベアラインおける防火戸エスケープ機構の作動時(非常時)の要部説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の防火戸エスケープ機構1の第1実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。本実施形態の防火戸エスケープ機構1は、常には作動時の移動空間Sを開放させるべく上部収納部(不図示)に収納されるシャッタ状の防火戸(防火シャッタ)2の作動時に、常には前記移動空間Sの内外領域に亘って配置される架設部材3を前記移動空間Sから退避させるための退避機構4を備えている。
【0020】
本実施形態において、前記架設部材3は所望の装置等を載置可能な載置部5を有し、前記載置部5には床面6との間に位置し、前記載置部5のスライド移動を補助するキャスター7が配設されている。
【0021】
また、前記退避機構4は、前記載置部5に装置等を載置した前記架設部材3を、前記移動空間S上の位置P1と、前記架設部材3とそれに載置されている装置等を前記移動空間Sから退避させた退避位置P2との間で進退移動可能とするアクチュエータ10を備えている。前記アクチュエータ10は、前記架設部材3の取付外壁に直接的に先端を接続されたロッド11を備えるエアシリンダ10であり、供給源13としてのエアポンプからシリンダ12へ供給されるエアを動力として前記ロッド11を伸縮させるように構成されている。
【0022】
そして、前記退避機構4は、前記防火戸2の作動時に前記架設部材3のエアシリンダ10のロッド11を収縮させ、前記架設部材3を前記移動空間S上の位置P1から前記退避位置P2へ移動させるための動力供給ライン並びに電気信号ラインを備えた電気的退避手段20と、前記防火戸2の作動時において前記電気的退避手段20の動力供給ライン及び/または電気信号ライン(いずれも不図示)が寸断された際に、自動かつ非電気的に前記架設部材3のエアシリンダ10のロッド11を収縮させ、前記架設部材3を前記移動空間S上の位置P1から前記退避位置P2へ移動させる機械的退避手段40とを備えている。
【0023】
まず先に、前記機械的退避手段40について説明すると、本実施形態の機械的退避手段40は、前記架設部材3の取付外壁と、前記エアシリンダ10を搭載するために配設された基台8との間に設けられ、前記エアシリンダ10内に供給されたエアの圧力に抗し、前記ロッド11を収縮させつつ前記架設部材3を前記退避位置P2へ導くように作用する弾性部材41としてのコイルばねにより構成されている。
【0024】
他方、前記電気的退避手段20は、前記供給源13とエアシリンダ10との間に、前記ロッド11を伸長させる為のエアを供給する管部材からなる第1の動力供給ラインL1と、前記ロッド11を収縮させる為の動力を供給する管部材かならる第2の動力供給ラインL2が分岐して設けられている。前記第1の動力供給ラインL1には、その供給ラインL1を開閉させる第1の流路切替弁23が設けられている。本実施形態において第1の流路切替弁23は、第1の動力供給ラインL1から後で詳述する電磁弁30および第1の弁作動ラインVL1を通してエアが供給されているとき、ばね24の弾性力に抗して開状態(図1参照)となり、図2に示すように電磁弁30の動作が切り替えられ、エアの供給が無いときには、ばね24の弾性力が勝り、閉状態となるように構成されている。
【0025】
そして、本実施形態における前記電気的退避手段20には、前記第2の動力供給ラインL2に前記供給源13から供給されるエアを第1の弁作動ラインVL1を通して前記第1の流路切替弁23の切替作動に用いる電磁弁30が、前記第1の流路切替弁23を開いて前記第1の動力供給ラインL1から前記エアを前記エアシリンダ10に供給する第1のモードと、前記第1の流路切替弁23を閉じて前記第2の動力供給ラインL2から直接、前記エアシリンダ10に供給する第2のモードとを、前記電気信号ラインから入力される電気信号によって切替可能に配設されている。詳しくは、本実施形態において電磁弁30は、電気信号が入力されているとき、図1に示すように、ばね31の弾性力に抗して第1のモード(防火戸非作動モード)となり、電気信号の入力が無いときには、図2に示すように、ばね31の弾性力が勝り、第2のモード(防火戸作動モード)となるように構成されている。なお、本実施形態にいて、前記電気信号としては、非常ボタンのスイッチのON/OFF信号や防火戸2の作動手段のON/OFF信号を共用すること、あるいは、該防火戸エスケープ機構1の前記電磁弁30に通電するために設けられた専用スイッチのON/OFF信号などでよい。
【0026】
このように構成された本実施形態の防火戸エスケープ機構1は、図1に示すように、常には、前記供給源13を作動させるとともに、前記電磁弁30を前記電気信号ラインからの電気信号によって第1のモードとし、前記電磁弁30に対して供給源13から供給されたエアを第1の弁作動ラインVL1側に、そのエア圧で第1の流路切替弁23をばね24の弾性力に抗して押圧し、開状態とする。これにより、第1の動力供給ラインL1を通してエアを前記エアシリンダ10に供給し、前記機械的退避手段40のコイルばね41を引き伸ばしながらロッド11を伸長させることで、載置部5に載置された装置等を防火戸2が昇降する移動空間S上の位置P1に位置させておくことができる。この第1のモードにおいては、電磁弁30により第2の動力供給ラインL2は閉状態となっているので、前記エアシリンダ11に対する第2の動力供給ラインL2を通したエアの供給はない。
【0027】
そして、防火戸2を作動させる時には、前記電気的退避手段20に支障がなく、動作するときは、前記電磁弁30を前記電気信号ラインから入力される電気信号によって第2のモードに切替える。そして、図2に示すように、前記電磁弁30に対して供給されたエアを第2の動力供給ラインL2を通し、そのエア圧でエアシリンダ10のロッド11を収縮させるとともに、前記機械的退避手段40のコイルばね41を縮めながら、前記架設部材3を前記退避位置P2へ移動させる。なお、第2のモードにおいては、電磁弁30の第2のモードへの切替動作により第1の動力供給ラインL1は閉状態となっているので、前記エアシリンダ11に対する第1の動力供給ラインL1を通したエアの供給はない。
【0028】
そして、前記電気的退避手段20の供給源13自体やエアの供給ラインL1,L2に支障が生じ、エアが供給されない場合には、譬え、電磁弁30が第1のモードとなっていても、第1の流路切替弁23を機械的退避手段40のコイルばね41の弾性力に抗して押圧するエアが供給されないので、第1の流路切替弁23は閉状態となり、前記エアシリンダ10に対する前記第1の動力供給ラインL1を通したエアの供給もない。また、前記架設部材3のエアシリンダ10に対する前記第2の動力供給ラインL2を通した前記エアの供給もない。よって、機械的退避手段40のコイルばね41の収縮力により、フリー状態となっている前記ロッド11を収縮させ、前記架設部材3を防火戸2の移動空間S上の位置P1から退避位置P2へ退避させる。
【0029】
また、前記電気的退避手段20の前記電気信号ラインに支障が生じ、電磁弁30への電気信号の入力がない場合には、電磁弁30はばね31の弾性力が勝り、機械的に作動モードとなって、第2のモードに切替る。よって、第1の流路切替弁23は閉状態となり、前記第1の動力供給ラインL1を通した前記エアの供給は絶たれる。
【0030】
ここで、前記電気信号ラインに支障が生じているものの、供給源13からのエアの供給が継続されている場合には、電磁弁3を通して第2の動力供給ラインL2にはエアが供給されるので、前記エアシリンダ10に対して前記第2の動力供給ラインL2を通したエアの供給を行い、ロッド11を収縮させ、前記架設部材3を前記退避位置P2へ退避させる。
【0031】
また、供給源13からのエアの供給も絶たれた場合には、前述の様に、機械的退避手段40のコイルばね41の収縮力を用い、エアの圧力も減少し、フリー状態となっている前記ロッド11を収縮させ、前記架設部材3を防火戸2の移動空間S上の位置P1から退避位置P2へ退避させる。
【0032】
このように、本実施形態の防火戸エスケープ機構1によれば、防火戸2を作動させる際に、電気的退避手段20に支障が生じた場合であっても、特段の制御を必要とせず、機械的退避手段40により、防火戸2の移動空間Sの内外に亘って配置される架設部材3を前記移動空間S上の位置P1から退避させることが可能となる。
【0033】
なお、第1実施形態では、防火戸エスケープ機構1の構成と作用についてのみ説明し、防火戸2の作動については言及していない。防火戸2が作動する場合、すなわち、本実施形態の場合には、物や人が往き来する開口部の天井部に設けられた上部収納部に巻き上げられて収納されている防火シャッタが下降し、開口部を閉鎖するときには、前記架設部材3が防火シャッタの作動を阻害しないように、退避位置P2へ向かって移動している必要がある。
【0034】
このときの防火戸2の作動のタイミングや作動スピード、架設部材3の退避位置P2への移動スピード(特には、機械的退避手段40による移動スピード)は、作動する前記防火戸2が架設部材3と干渉しないように調整すればよい。たとえば、防火戸2にその移動空間Sの遮蔽物の有無を検出するセンサを設け、センサが架設部材3の移動空間Sからの退避を検出したことを契機として作動するように構成することができる。
【0035】
また、防火戸エスケープ機構1の電気的退避機構20を、防火戸2を作動させる為のスイッチ等のアクチュエータと結び、前記供給源13から供給される流体を用いて前記防火戸2を作動させる構成とすることもできる。図3及び図4には、本発明の防火戸エスケープ機構1の第2実施形態として、前記供給源13から供給される流体を用いて前記防火戸2をも作動させる構成の一例を説明している。以下、第1実施形態の防火エスケープ機構1と異なる構成と作用のみを説明する。
【0036】
第2実施形態の防火戸エスケープ機構1は、前述の第1実施形態の防火戸エスケープ機構1の前記電気的退避手段20に、さらに、前記供給源13と前記防火戸2のアクチュエータ15との間に、前記防火戸2を非駆動の待機状態で保持させる為のエアを供給する第3の動力供給ラインL3と、前記第2の動力供給ラインL2において、前記電磁弁30の位置よりも動力供給方向下流側にて分岐させて設けられ、前記供給源13と前記防火戸2のアクチュエータ15との間を結び、前記防火戸2のアクチュエータ15を作動させる為の動力を供給する第4の動力供給ラインL4が設けられている。
【0037】
前記第3の動力供給ラインL3には、その供給ラインL3を開閉させる第2の流路切替弁33が設けられている。この第2の流路切替弁33も、第1の流路切替弁23と同様、第3の動力供給ラインL3からエアが供給されているとき、ばね34の弾性力に抗して開状態となり、エアの供給が無いときには、ばね34の弾性力が勝り、閉状態となるように構成されている。
【0038】
そして、前記電磁弁30は、前記第1の流路切替弁23および第2の流路切替弁33を開いて、前記第1の動力供給ラインL1から前記エアを前記エアシリンダ10に供給するとともに、前記第3の動力切替ラインL3から前記エアを前記防火戸2のアクチュエータ15に供給する第1のモード(図3参照)と、前記第1の流路切替弁23および第2の流路切替弁33を閉じて前記第2の動力供給ラインL2から直接、前記エアシリンダ10に供給するとともに、第4の動力供給ラインL4から直接前記防火戸2のアクチュエータ15に供給する第2のモード(図4参照)とを、電気信号ラインから入力される電気信号によって切替可能に配設されている。本実施形態において電磁弁30は、電気信号が入力されているとき、ばね31の弾性力に抗して第1のモードとなり、電気信号の入力が無いときには、ばね31の弾性力が勝り、第2のモードとなるように構成されている。
【0039】
すなわち、前記第1のモードにおいては、前記供給源13から供給されるエアを前記第2の流路切替弁33の作動にも用い、前記第2の流路切替弁33を開いて前記第3の動力供給ラインL3からエアを前記防火戸2のアクチュエータ15にも供給し、第2のモードにおいては、前記供給源13から供給されるエアを、前記第4の動力供給ラインL4から前記防火戸2のアクチュエータ15にも供給するように切替可能とされている。
【0040】
このように構成された本実施形態の防火戸エスケープ機構1によれば、防火戸2を作動させる際に、電気的退避手段20に支障が生じた場合であっても、機械的退避手段40により、防火戸2の移動空間Sの内外に亘って配置される架設部材3を前記移動空間Sから退避させることが可能となり、さらには、防火戸2のアクチュエータ15をも併せて駆動させることが可能となる。
【0041】
特に、防火戸2の作動開始のタイミングや作動所要時間を、機械的退避手段40により架設部材3の退避位置P2への移動を完了するタイミングとをあらかじめ調整しておけば、電気的退避手段20に支障が生じ、第1実施形態において記載したような移動空間の遮蔽物の有無を検出するセンサなども作動しなくなった場合において、従来は人力で移動空間Sの遮蔽物を避け、そのうえで防火戸2を降下させるような、操作する者が危険を伴う場所における行動をせずに済み、安全を確保することができる。さらに言えば、前記センサの配設すら不要となる場合もある。
【0042】
なお、前述の防火戸エスケープ機構1のロッド式のシリンダとしては、エアシリンダに限ることなく、例えば、油圧式のシリンダを用いてもよい。また、前記機械式退避機構4の弾性部材は、前記シリンダ12内に配設され、逆止弁等を用いた前記ロッド式シリンダ内の流体の圧力の解除に伴い、前記ロッド11を収縮させつつ前記架設部材3を退避位置P2へ導くように配設された弾性部材であってもよい。さらには、前記ロッド11を収縮させつつ前記架設部材3を退避位置P2へ導く弾性部材に限ることなく、自重により前記ロッド11を収縮させつつ前記架設部材3を退避位置へ導く錘部材であってもよい。
【0043】
また、防火戸2は、前述のように、扉部材が昇降するいわゆるシャッタ式のものに限らず、例えば、板状の扉部材がライン状にスライド移動して開口部を塞ぐようなドア式のものであってもよい。
【0044】
そして、図5及び図6は、本発明の防火戸エスケープ機構1の一実施形態を備えたコンベアライン50の一実施形態である。本実施形態のコンベアライン50は、無端周回状のトップチェーンコンベア(不図示)を、一端側の駆動ローラ(不図示)と他端側の従動ローラ(不図示)とに巻回して形成された上流側コンベア51および下流側コンベア52の2基のコンベアが、防火戸2が昇降するための移動空間Sを挟んで離間させ、直列状態で配設されている。
【0045】
前記架設部材3は、常には前記上流側コンベア51と前記下流側コンベア52とに懸架させて配置され、上流側コンベア51を搬送されてきた搬送対象のワークを挟持し、前記下流側コンベア52へ搬送のタイミングを計りつつ受け渡すように、ベルト面を対向させて配設された左右一対のサイドベルト54からなる中間コンベア55である。
【0046】
この中間コンベア55を備える装置は切り出し装置とも称されるものであり、構成自体は公知であるので、切り出し装置自体の構成の説明は省略するが、本実施形態においては、サーボモータ等の駆動源54の駆動軸(不図示)に取り付けられたプーリ(不図示)とそれと対になるプーリ(不図示)とに無端状のベルトを巻回した一対のサイドベルト53は、互いにワークの幅に適合させて離間させて天板57から吊り下げられ、上流側コンベア51と前記下流側コンベア52とに懸架させて配置されている。
【0047】
本実施形態において、前記天板57はワークの搬送方向における両側方にそれぞれ2本ずつ設けられた支柱56によって上流側コンベア51と前記下流側コンベア52とが離間する移動空間Sの上方に、ワークの搬送経路となる上流側コンベア51と前記下流側コンベア52のワーク載置面と平行に支承されている。そして、計4本の前記支柱56の下端は、上流側コンベア51の配置側に設けられたステージ59の上面において、前記ワークの搬送経路と平行にLMガイド58によりスライド移動可能に配設された板状のスライド部60に固定されている。
【0048】
前記ステージ59の上面には、前記一対のサイドベルト53を間接的に進退させるアクチュエータとしてのエアシリンダ10が前記ワークの搬送経路と平行に配設されており、そのロッド11の先端部は、前記スライド部材60に連結されている。つまり、本実施形態においては、前記架設部材3をスライド移動させるためのアクチュエータ10は、前記架設部材3としての中間コンベア55に対し、間接的に接続されている。
【0049】
本実施形態において、防火戸エスケープ機構1の電気的退避機構20は前述の第1、第2実施形態のように構成することができる。また、本実施形態において、防火戸エスケープ機構1の機械的退避機構4は、先端を前記スライド部材60に固定され、後端には、エアが抜けてフリー状態となっている前記ロッド11を自重により収縮させつつ前記架設部材3を退避位置へ導くことができるように重さを調整された錘部材61が固定された紐状部材62とされている。紐状部材62は、図5、6に示すように、中間部をシリンダ12に固定された滑車63に回し架け、常に錘部材61を前記ステージ57から垂れ下げることができる長さとされている。
【0050】
本発明のコンベアライン50によれば、常には、前記アクチュエータ10のロッド11を伸長させ、前記架設部材3としての中間コンベア55の一対のサイドベルト53を前記上流側コンベア51と、下流側コンベア52とに架け渡すように配設させておく。これにより、上流側コンベア51の上面に載置され、その下流端部へ搬送されたワークを一対のサイドコンベア55間に挟持した状態で駆動し、前記下流側コンベア52の上流端部に載置し、下流側コンベア52は中間コンベア55から渡されたワークをさらに下流へ搬送することができる。
【0051】
そして、防火戸2を作動させる時には、前述の防火戸エスケープ機構1の第1、第2実施形態で説明したように、電気的退避手段20または機械的退避手段40により、前記アクチュエータ10のロッド11を収縮させて中間コンベア55の一対のサイドベルト53を防災シャッタ2の移動空間Sから退避させることで、中間コンベア55が防火戸2の降下を阻害することを回避することができる。
【0052】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できる。
【符号の説明】
【0053】
1 防火戸エスケープ機構
2 防火戸(防火シャッタ)
3 架設部材
4 退避機構
5 載置部
6 床面
7 キャスター
8 基台
10 アクチュエータ(エアシリンダ)
11 ロッド
12 シリンダ
13 供給源 (エアポンプ)
15 (防火戸の)アクチュエータ
20 電気的退避手段
23 第1の流路切替弁
24 ばね
30 電磁弁
31 ばね
33 第2の流路切替弁
34 ばね
40 機械的退避手段
41 弾性部材(コイルばね)
50 コンベアライン
51 上流側コンベア
52 下流側コンベア
53 サイドベルト
55 中間コンベア
56 支柱
57 天板
58 LMガイド
59 ステージ
60 スライド部
61 錘部材
62 紐状部材
63 滑車
S 移動空間
P1 移動空間S上の位置
P2 退避位置
L1 第1の動力供給ライン
L2 第2の動力供給ライン
VL1 第1の弁作動ライン
L3 第3の動力供給ライン
L4 第4の動力供給ライン
VL2 第2の弁作動ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6