(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】物体の背後の面から後方散乱される光に基づく生体内物体識別、計数及び撮像
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
A61B3/10 300
(21)【出願番号】P 2021521988
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 US2019057547
(87)【国際公開番号】W WO2020086649
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-09
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514301336
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ロチェスター
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF ROCHESTER
【住所又は居所原語表記】601 Elmwood Ave. Box URV Rochester NY 14642, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲバラ-トレース,ラウル アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】シャレク,ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ,アビー
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-179144(JP,A)
【文献】特開2017-127459(JP,A)
【文献】特表2005-501587(JP,A)
【文献】特開2010-131060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0042954(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0053026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内の生体内物体を撮像する装置の作動方法であって、眼内の生体内物体を撮像する前記装置は、光源と、前記物体の共焦点面の背後の、光スクリーンとして機能する共役面から光を受信するように構成された1つ又は複数の検出器と、コンピュータとを備え、
前記光源が、前記眼内の物体を照明する
工程と、
前記1つ又は複数の検出器が、検出器データを提供するために、前記光スクリーンから後方散乱される前に前記物体により少なくとも部分的に屈折された前記光源からの後方散乱光を受信する
工程と、
前記コンピュータが、前記物体の内部構造又は前記物体のタイプを含む情報を生成するために、一定期間にわたり前記検出器データを処理する
工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記処理する工程は、二次元画像として前記物体に関する前記情報を生成するために、前記コンピュータにより前記一定期間にわたり前記検出器データを処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物体を照明する工程は、細胞を照明することを含み、
前記処理する工程は、前記細胞の細胞核、核小体又は異質染色質に関する前記情報を生成するために、前記コンピュータにより前記一定期間にわたり前記検出器データを処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記物体を照明する工程は、少なくとも1つの赤血球又は少なくとも1つの白血球を照明することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記物体を照明する工程は、造影剤又はラベルの無い状態の前記物体を照明することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理する工程はさらに、撮像されたエリア内の赤血球の数又は白血球の数を計数することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理する工程は、前記眼に無関係な動物又は人間の病状又は病気を診断するための前記物体に関する前記情報を生成するために、前記コンピュータにより前記一定期間にわたり前記検出器データを処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記処理する工程は、動物又は人間の眼を通して見られるような前記動物又は前記人間の免疫細胞活動に関する情報を生成するために、前記コンピュータにより前記一定期間にわたり前記検出器データを処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記処理する工程は、白血球及び赤血球の少なくとも一方を示す前記情報を2D画像で生成するために、前記コンピュータにより前記一定期間にわたり前記検出器データを処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記処理する工程は、動物又は人間の眼の網膜組織内の白血球ローリング;白血球拘束;白血球経内皮遊走(管外遊出);ミクログリア細胞運動性;及び白血球運動性の少なくとも1つを示す前記情報を2D画像で生成するために、前記コンピュータにより前記一定期間にわたり前記検出器データを処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記処理する工程は、炎症の回復に続く白血球の血管への再エントリを示す前記情報を2D画像で生成するために、前記コンピュータにより前記一定期間にわたり前記検出器データを処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記処理する工程は、側方散乱(SSC)検出光に対する前方散乱(FSC)検出光のレシオメトリック比較に基づく物体識別を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記処理する工程は選択的ゲート制御を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の検出器は、前記光スクリーンとして働く前記眼の層の表面からの光を受信するように構成されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ又は複数の検出器は、前記光スクリーンとして働く前記眼の層の内部からの光を受信するように構成されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数の検出器は、分割検出構成されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記処理する工程は、前記眼の血管の外側を遊走する免疫細胞又は前記血管の外側の局所的炎症と戦った後に血管へ再エントリする免疫細胞を示す画像を生成するために、コンピュータにより一定期間にわたり前記検出器データを処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
造影剤が無い状態で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
眼内の生体内物体を撮像する装置であって、
前記眼内の物体を照明する光源と、
前記物体の共焦点面の背後の、光スクリーンとして機能する共役面から光を受信するように構成され、前記光スクリーンから後方散乱される前に前記物体により少なくとも部分的に屈折された前記光源からの後方散乱光を受信して検出器データを提供する、1つ又は複数の検出器と
前記物体の内部構造又は前記物体のタイプを含む情報を生成するために、一定期間にわたり前記検出器データを処理するコンピュータと、
を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年10月23日出願の同時係属米国特許仮出願第62/749,394号明細書 BLOOD CELL IDENTIFICATION USING COMPARISONS OF SCATTER IN SINGLE AND DOUBLE PASS LIGHT IN THE LIVING RETINA 及び2019年10月22日出願の同時係
属米国特許仮出願第16/660,312号明細書 IN VIVO OBJECT IDENTIFICATION, COUNTING,AND IMAGING BASED ON LIGHT BACKSCATTERED FROM A PLANE BEHIND THE OBJECT
からの優先権を主張し、これら出願の開示の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
[連邦政府資金による研究又は開発に関する陳述]
本発明はアメリカ国立衛生研究所により授与されたEY028293及びEY001319下の政府支援によりなされた。政府は本発明のいくつかの権利を有する。
【0003】
[技術分野]
本出願は、生体内(in vivo)撮像に関し、特に、眼内の略細胞規模以下の生体内物体
を撮像、計数及び類別することに関する。
【背景技術】
【0004】
網膜は眼の後部の光感知組織であり、そこから視覚が始まる。脊椎動物網膜内では、光は光受容体により検出される前に網膜神経細胞全体を伝搬しなければならない。内部網膜神経細胞のほとんどは、半透明であり、これにより視覚が得られるが、非侵襲的顕微鏡網膜撮像技術を採用することによってこれらの細胞を撮像するのは大変な挑戦となる。したがって、眼科撮像における細胞コントラストのこの欠如は基礎科学及び臨床試験を制限してきた。
【発明の概要】
【0005】
眼内の生体内物体を撮像する方法は、光源により眼内の物体を照明すること;1つ又は複数の検出器を生体内物体の共焦点面の背後の共役面(共役面は光スクリーンとして働く)から光を受信するように構成すること;検出器データを提供するために、光スクリーンから後方散乱される前に生体内物体により少なくとも部分的に屈折された光源からの後方散乱光を1つ又は複数の検出器において受信すること;及び生体内物体に関する情報を生成するために一定期間にわたって検出器データをコンピュータにより処理することを含む。
【0006】
処理する工程は、生体内物体に関する情報を二次元画像として生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり検出器データを処理することを含み得る。処理する工程は、生体内物体に関するタイプ情報を生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり検出器データを処理することを含み得る。処理する工程は、生体内物体の内部に関する情報を生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり検出器データを処理することを含み得る。
【0007】
生体内物体を照明する工程は細胞を照明することを含み得、処理する工程は、細胞の細胞核、核小体又は異質染色質に関する情報を生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり検出器データを処理することを含み得る。生体内物体を照明する工程は少なくと
も1つの赤血球又は少なくとも1つの白血球を照明することを含み得る。生体内物体を照明する工程は造影剤又はラベルの無い状態で生体内物体を照明することを含み得る。
【0008】
処理する工程はさらに、撮像されたエリア内の赤血球の数又は白血球の数を計数することを含み得る。処理する工程は、眼に無関係な動物又は人間の病状又は病気を診断するために生体内物体に関する情報を生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり検出器データを処理することを含む。処理する工程は、動物又は人間の眼を通して見られるような動物又は人間の免疫細胞活動に関する情報を生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり検出器データを処理することを含み得る。処理する工程は、情報を白血球及び赤血球の少なくとも一方を示す2D画像で生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり検出器データを処理することを含み得る。
【0009】
処理する工程は、以下のうちの少なくとも1つを示す情報を2D画像で生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり検出器データを処理することを含み得る:動物又は人間の眼の網膜組織内の白血球(白血球)ローリング;白血球拘束;白血球経内皮遊走(管外遊出);ミクログリア細胞運動性;及び白血球運動性。処理する工程は、炎症の回復に続く血管への白血球再エントリを示す情報を2D画像で生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり検出器データを処理することを含み得る。
【0010】
処理する工程は、側方散乱(SSC:side scatter)検出光に対する前方散乱(FSC:forward scatter)検出光のレシオメトリック比較に基づく物体識別を含み得る。
【0011】
処理する工程は選択的ゲート制御を含み得る。
【0012】
構成する工程は、光スクリーンとして働く眼の層の表面からの光を受信するように1つ又は複数の検出器を構成することを含み得る。構成する工程は、光スクリーンとして働く眼の層の内部からの光を受信するように1つ又は複数の検出器を構成することを含み得る。構成する工程は分割検出(split detection)構成のために1つ又は複数の検出器を構成することを含み得る。
【0013】
処理する工程は、眼の血管の外側を遊走する免疫細胞又は血管の外側の局所的炎症と戦った後に血管へ再エントリする免疫細胞を示す画像を生成するためにコンピュータにより一定期間にわたり前記検出器データを処理することを含み得る。
【0014】
上述の方法は造影剤が無い状態で行われる。
【0015】
本出願の前述及び他の態様、特徴及び利点は以下の説明と特許請求の範囲とからより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本出願の特徴は以下に説明される添付図面及び特許請求の範囲を参照してより良く理解され得る。添付図面は必ずしも原寸に比例していなく、むしろ本明細書に記載の原理を示すことに概して重点が置かれる。添付図面では、同じ参照符号が様々な図を通して同じ部分を指示するために使用される。
【0017】
【
図1】
図1は、様々な開示実施形態において採用され得るAOSLOの系統図を示す。
【0018】
【
図2】
図2A-
図2Cは、様々な開示実施形態において採用され得る
図1のAOSLOの様々な画像検出技術を示す。
【0019】
【
図3】
図3A-
図3Cは、細胞屈折率の役割を強調する説明される光学モデルの概略図と観測された非対称コントラストを実証する神経節細胞画像とを示す。
【
図4】
図4A-
図4Cは、細胞屈折率の役割を強調する説明される光学モデルの概略図と観測された非対称コントラストを実証する神経節細胞画像とを示す。
【0020】
【
図5】
図5は、光軸からの距離に対する光強度を示す概略図と検出器が検出スクリーンと共役な位置の軸方向に在る場合のコントラストの増加の論理的根拠とを示す。
【0021】
【
図6】
図6は、検出器が光受容体に向かって軸方向に変位された場合のコントラストの2.7倍増加を示すマウス眼内で収集されたデータを示す。
【0022】
【
図7】
図7は、伝統的フローサイトメータの例示的構成を示す例示的データグラフを有する図である。
【0023】
【
図8】
図8は、例示的散乱検出器構成を示す図である。
【0024】
【
図9】
図9は、本出願の新しい方法及び構成による網膜二重通過反射率モデルを示す図である。
【0025】
【
図10】
図10は、どこで検出開口が観測中物体の面に対し共役になるかの準最適性能を示す図である。
【0026】
【
図11】
図11は、本出願による物体面より深い面における検出を示す図である。
【0027】
【
図12】
図12は、細胞識別子をレシオメトリックプロットで明らかにする様々な散乱プロファイルを有する例示的細胞を示す図である。
【0028】
【0029】
【
図14】
図14は、共役後方散乱面からの光の検出を示す図である。
【0030】
【
図15】
図15は、共役後方散乱面からの光の検出を示す別の図である。
【0031】
【
図16】
図16は、白血球により散乱された光と赤血球とにより散乱された光との差を示す図である。
【0032】
【
図17】
図17は、いかなる造影剤又はラベリングも無い状態の白血球の生体内撮像を示す図である。
【0033】
【
図18】
図18は、本出願による構成及び方法を試験する際に使用されるAOSLOの系統図である。
【0034】
【
図19A】
図19Aは、検出器を軸方向に変位させることによる一連の画像と水平細胞からのコントラストの増加を示すグラフである。
【0035】
【
図19B】
図19Bは、すべての撮像された細胞に関して観測されたコントラスト改善を示すグラフである。
【0036】
【
図20】
図20は、検出器をより深い網膜後方散乱の層に向かって軸方向に変位することによる一連の画像と画像コントラストの改善を示すグラフである。
【0037】
【
図21A】
図21Aは、負レンズとして働く細胞が細胞の左端に集束される光線を偏位させるということを示す画像である。
【0038】
【
図21B】
図21Bは、レンズが細胞の左側において合焦された(下図)場合のより深いスクリーンにおけるPSFパターンを予測するZemax光線追跡の画像である。
【0039】
【
図21C】
図21Cは、フーリエ光学系を使用したZemax光線追跡の画像である。
【0040】
【
図22A】
図22Aは、左側に正コントラストそして右側に負コントラストを示す分割検出により撮像された水平細胞(HC:horizontal cell)を示す画像である。
【0041】
【0042】
【
図22C】
図22Cは、検出面におけるシミュレーションされたフーリエ光学結果を示す画像である。
【0043】
【
図22D】
図22Dは、分割検出により捕捉された光受容体(PR:photoreceptor)神経細胞を示す画像である。
【0044】
【0045】
【0046】
【
図24】
図24は、登録及び処理映像を表す一連の静止画像である。
【0047】
【0048】
【
図26】
図26は、TEM逆遊走を表す一連の静止画像(いくつかのタイプの運動映像の合成写真)である。
【0049】
【
図27】
図27は、ラベルにより好中球ローリングを表す一連の静止画像である。
【0050】
【
図28】
図28は、ミクログリア+動的処理の映像を表す一連の静止画像である。
【0051】
【
図29】
図29は、ミクログリア多様性を示す拡張データ図である。
【0052】
【0053】
【
図31】
図31は、U-Netにより評価された病気経時変化系列を表す一連の静止画像である。
【0054】
【
図32】
図32は、本出願の方法及び構成を使用して捕捉されたAOSLOのタイムラプス系列を示す一連の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本明細書では、太字パラグラフ番号以外、非太字角括弧(「[]」)は以下に列挙される引用文献を指す。本出願の各部分の参照は各部分に従う。本出願は5つのパートからなる。
【0056】
パート1は親出願である米国特許出願第16/205,925号明細書 LABEL-FREE CONTRAST ENHANCEMENT FOR TRANSLUCENT CELL IMAGING BY PURPOSEFULLY DISPLACING THE DETECTOR である。パート2は、生きている網膜内の単一通過光における散乱と二重通過光における散乱との比較を使用する血液細胞識別を説明する。パート3は、適応光学検眼鏡検査において半透明細胞コントラストを最適化することについて説明する。パート4は、どうのようにして適応光学が網膜内の動的免疫反応のラベル無し生体内撮像を許容するかについて説明する。パート5は、本出願の新しい方法及び構成を使用する免疫細胞撮像の例示的応用について説明する。
【0057】
<パート1-検出器を意図的に変位させることによる半透明細胞撮像のラベル無しコントラスト強化>
【0058】
最近、検眼鏡検査における技術革新は、内部網膜細胞撮像を改善するために分解能及びコントラストを最適化しようと努力してきた。分解能を改善するために、適応光学系が眼の収差を測定し補正する。コントラストを改善するために、非共焦点(軸外)検出方法が半透明網膜細胞からの位相コントラストを強化するということが実証された。例えば、Elsner et al.(A.E.Elsner et al., “Infrared imaging of sub-retinal structures in the human ocular fundus,”Vision Research 36,191-205(1996)は、合焦された照射スポ
ットから撮像開口を焦点面内で横方向に変位させること(「オフセット開口」)により、走査レーザ検眼鏡内の共焦点領域の外側の光を収集する際のいくつかの構造に関して網膜コントラストが改善される可能性があるということを実証した。Chuiらはこの原理をさらに適応光学走査検眼鏡(AOSLO: adaptive opticsscanning light ophthalmoscope)
へ適用した(T.Y.P.Chui et al., “The use of forward scatter to improve retinal vascular imaging with an adaptive optics scanning laser ophthalmoscope,”Biomed.Opt.Express 3,2537-2549(2012))。Sulaiらは共焦点光を阻止し2つの検出器内の非共焦点光のすべてを捕捉することによりこの手法を修正した(Y.N.Sulai et al., “Visualization of retinal vascular structure and perfusion with a nonconfocal adaptive optics scanning light ophthalmoscope,”J.Opt.Soc.Am.A31,569-579(2014))。この
構成では、走査器における光軸の左側への光は1つの光電子増倍管(PMT: photomultiplier tube)により収集され、右側への光は第2のPMTにより収集された。Sulaiは
、2つの画像の正規化減算がさらに画像内の共通情報を除去し、非対称性を強化する可能性があるということを発見した。Sulaiは自身の方法を「分割検出」と呼び、光受容体内節を分割することを可能にした(D.H.Scoles et al., “In Vivo Imaging of Human Cone Photoreceptor Inner Segments,”IOVS IOVS-14-14542(2014))。
【0059】
このような非共焦点又は軸外検出方法を使用することにより、いくつかのグループは、多様なかつて本質的に像形成不能な細胞が生きた網膜内で今や視覚化可能であり得るということを実証した。光受容体外節の単層の上の光受容細胞体及び水平細胞が例えばオフセット撮像技術を採用することにより明らかにされた(A.Guevara-Torres et al., “Imaging translucent cell bodies in the living mouse retina without contrast agents,”Biomed.Opt.Express 6,2106-2119(2015))。これは、生きた網膜内の光受容体神経細胞の軸方向積み重ねの第1のラベル無し画像のいくつかを提供した。さらなる最適化により、新しい能力が、眼からの視覚情報を脳へ伝達するための責任を負う網膜神経節細胞を撮像
するために拡張された(E.A.Rossi et al., “Imaging individual neurons in the retinal ganglion celllayer of the living eye,”PNAS 114,586-591(2017))。
【0060】
神経細胞に加えて、網膜血管とその中を流れる単一血液細胞とのラベル無し撮像が示された(A.Guevara-Torres et al., “Label free measurement of retinal blood cell flux,velocity,hematocrit and capillary width in theliving mouse eye,”Biomed.Opt.Express,BOE 7,4228-4249(2016))。高速カメラ捕捉とあいまって、毛細血管内の個々の赤血球の通過が、毛細血管幅に加えて血液細胞流量、ヘマトクリット、速度の新しい測定を可能にする。これは、健康網膜及び病気網膜内の代謝物の送達に関する新しい情報を提供する。
【0061】
いくつかの内部網膜細胞はオフセット撮像技術を採用して成功裡に撮像されたが、コントラストの源は完全には理解されなかった。これらの画像診断療法のさらなる理解を提供することとこのような網膜細胞の改善された非侵襲的撮像のコントラストをさらに最適化する方法を提供することとが望ましいだろう。
【0062】
オフセット開口及び分割検出器技術などの非共焦点/軸外検出撮像方法により、いくつかの研究は、安全レベルの近赤外線を使用して識別され得る細胞の新しい分類を実証した。これらの研究により提供される新しい能力の中でも、血管壁、個々の赤血球、光受容体内節、光受容体神経細胞、水平細胞及び神経節細胞の撮像がある。光散乱の以前のモデルはコントラスト機構の部分的説明を提供する。上に参照されたElsnerらの研究とChuiらにより精緻化された研究では、これらの著者は、どのように光がオフセット開口検出において散乱されるかの概略図を提供し、光が前方散乱され次により深いスクリーンにより反射される(いわゆる多重散乱光)ということを暗示している。このモデルは網膜内の光相互作用が複雑であるという理解を提供するが、オフセット開口画像及び分割検出画像のコントラスト特性における非対称性の性質を説明する開発された光学モデルは存在しなく、これら技術のさらなる改善を複雑化する。
【0063】
本開示は、これらの細胞の境界との光相互作用を説明する網膜の光学モデルを開示し、照明の焦点面内の屈折率変化の役割を強調する。単純化モデルでは、AOSLOビームにより照明された単細胞は、屈折率変化の極性に依存してビームを左又は右側へ誘導する微細な球面レンズとして働く。これは、オフセット開口画像及び分割検出画像内で観測される非対称性の作業モデルを提供するだけでなく、コントラストを増加するために検出器構成をさらに改善することにより収集画像のコントラスト及び信号対雑音比を改善することも可能にする。
【0064】
したがって、透明細胞を視覚化する改善された手法であって蛍光を必要とせず網膜により反射される光だけを使用する手法が説明される。光学撮像において慣習的であるように可視光スペクトル及び/又は近赤外スペクトル内の波長が採用され得る。本手法は、オフセット開口画像及び分割検出画像内の非対称コントラストの起源の説明を提供するために照明の面内の細胞の屈折率変化の役割を強調し、そしてこのようなモデルに基づきコントラストをさらに最適化する方法が説明される。具体的には、検出器は共焦点系内の照明と同じ面内で軸方向に配置されるべきであるということが知られているが、本開示は、検出器が非共焦点/軸外検出撮像方法においてコントラスト及び信号対雑音比の強化を提供するために特定軸方向に意図的に「ミスアライメント」される方法を説明する。
【0065】
網膜細胞を撮像するための改善された方法を提供する際の説明された光学モデルの適用可能性を実証するために
図1に示すようなY.Gengらの“Adaptive optics retinal imaging in the living mouseeye,” Biomed.Opt.Express 3, 715-734(2012)に説明され
るような生きたマウス網膜を特に撮像するように設計されたAOSLOが採用され得る。
要約すると、眼の収差は、波面感知ビーコン(WFSB: wavefront sensing beacon)のような904nm光を使用するShack-Hartmann波面センサ(WFS: wavefront sensor)を使用
してこのような装置において測定される。本システムは、皮膜ベース変形可能ミラー(DM: deformable mirror)を使用することにより眼の収差を補正する。AOSLOは、入射
瞳を水平スキャナ(HS)及び垂直(VS)スキャナ、変形可能ミラーDMそして最終的に眼の瞳内へ伝える5つの無限焦点望遠鏡からなる。これらの検眼鏡は走査器(一度に1つのスポットだけが照明されるということを意味する)である。撮像スポットは、796nmスーパールミネセントダイオードにより生成され、15kHzにおいて水平方向高速スキャナそして25Hzにおいて垂直スキャナを使用することによりラスタ走査パターンで動く。このスポットは検眼鏡の検出器部内へ再撮像され、この光分散は点広がり関数(PSF: point spread function)(
図1)と呼ばれる。
【0066】
多様な共焦点及び非共焦点/軸外方法が、PSFの様々なサブセット:共焦点検出、オフセット開口及び分割検出(
図2A~2Cそれぞれ)などを選択することにより開発されてきた。長年、共焦点モードは、
図2Aに示すようにPSFの中心に円状検出開口(DA:detection aperture)を配置することにより実現され、収集効率を最大化する一方で、焦点外れ光を拒絶することにより軸方向区分化(sectioning)を強化する。このような共焦点系では検出器は照明と同じ面内で軸方向に配置されるべきであるということが知られている。オフセット開口方法は
図2Bに示すように開口をPSFの中心から横方向に変位させることにより行われ、そして、分割検出は、
図2Cに示すようにPSFの左及び右側部分を別個に検知する(例えば光増倍管PMT1、PMT2を採用する)ことによりそして次に2つのチャネル間の正規化された差を計算することにより行われる。
【0067】
これらの恩恵は人間撮像へ容易に移され得るが、マウスの眼は照明の面内の光学的区分化を提供する0.49の大きな開口数を有するのでの、説明された光学モデルを有利に実証するためにマウスの眼が選択され得る。軸方向分解能は開口数の2乗で改善し、そしてマウスでは、開口数は人間より2倍大きく、焦点深度をマウスの眼では4倍良くしそして個々の細胞の層を区別する能力を改善する。生物学的変動性を軽減するために、あらゆる実験が複数のマウスにおいて繰り返されるべきである。
【0068】
(光学モデル:より深い後方散乱層と結び付けられる屈折率の変化に起因する前方ビーム偏位)
【0069】
この説明されるモデルは、細胞コントラスト及び非対称性を提供するのに重要である網膜内の三段階の光相互作用を考慮する。この光学モデルを理解するための単純なやり方は、細胞を微細球面レンズであるかのように考えることである。AOSLOにおける収差補正されたスポットは網膜内で発見される細胞の平均サイズより小さい。このスポットが
図3A~3C及び
図4A~4Cそれぞれにおいて概略的に示されるように網膜細胞(
図3A、4Aでは白丸として描写される)の右又は左部分のいずれかを照明すると、集束ビームは反対方向へ偏位されることになる。このビーム偏位は、網膜内のより深い反射層内へ伝播され、
図3A、4Aに示すように距離Δxだけ光軸から変位された光分散を生成することになる。この変位は、
図3B、4Bに示すように光軸からの変位を維持することによりAOSLOにより検出器面内へ再撮像されることになる。オフセット開口及び分割検出のような光軸に対し偏心された非共焦点/軸外検出方式により、1つの検出器内の光は細胞の一端を撮像する際に他端に対して増加することになり、分割検出撮像により取得された
図3C、
図4Cの神経節細胞画像に関して示されるように非対称コントラストを提供する。例えばビーム偏位と同じ方向にオフセットされた検出開口と結合することにより、左端において明るい画素を提供することになり(
図3A~3C)、一方、オフセットされた検出開口がビーム偏位と反対方向に在る場合、より少ない光が開口を介して結合され、右端
において暗い画素を提供することになる(
図4A~4C)。
【0070】
このモデルは、撮像ビームが走査されるにつれて細胞の一端だけが照明されると光は光軸(OA:optical axis)から偏位されるということを暗示する。
図5に示すように、この偏位が、同じ方向にオフセットされた検出器と結合されると、これは検出器がスクリーンに対して共役である場合に高い検出強度I1(すなわち明るい画素)を生じることになり、一方、光が反対方向に偏位されると、光分布が高ピーク化されるので、より少ない光が、オフセットされた開口を介して結合し、そして低強度I2が取得される。したがって、総和に対する強度の差が最終画像内に比較的高いコントラストを提供することになる。スクリーンからの反射は拡散的であると想定されるので、オフセットされた検出器が任意の他の面に在ると焦点外れが追加されることになり、偏心された光分布を広げ、そして強度I3と強度I4との差は総和に対してより小さくなり、コントラストをさらに減少させる。同じ解析は分割検出方式又は光軸から偏心された他の軸外検出方式に対して適用され得る。
【0071】
(光学モデルを試験する実験)
【0072】
上述のAOSLOは、8~40エアリー円盤径(ADD:Airy Disk Diameter)の開口径及び10~50ADDの変位を使用してマウスの眼内の網膜細胞を撮像するためのオフセット検出構成で使用された。検出器開口は、PMTへ取り付けられており、そして三次元ステージ内で動く。第1の工程は光受容体を越えた位置へ検出器を軸方向に移動することであり、これはコントラストの極大を生じ得る。第2の工程では、照明の面はコントラストを最大化する検出器面へ移動され、これにより光受容体のモザイクを明らかにし得る。
【0073】
図6に示す取得されたデータは、検出器が、撮像された細胞層(神経節細胞層GCL:ganglion cell layer)と共役な面から、より深い反射スクリーン(光受容体層PRL:photoreceptor layer)と共役な面に向かって、撮像された細胞層に集束された光源の被写界深度を越えた距離だけ軸方向に移動された場合のコントラストの強化を示す。これらの実験では、神経節細胞層(GCL)内の血管が撮像され、検出器の軸方向変位は光受容体(PRL)と共役状態に近い場所に到達した。収集効率の60%増加及びコントラストの2.7倍増加が、これらの血管を撮像する間に軸方向変位を検出器において行う際に観測された。この例は、光受容体層のような公知の強い網膜反射の層と共役な位置へ検出器を軸方向に変位させることにより画像コントラストは増加するということを実証する。
【0074】
強い反射が複数の網膜層から観測され得る。これにもかかわらず、画像コントラストの極大は、軸方向変位が光受容体の強い反射部に近い又は脈絡膜と強膜との間の界面と共役な面に近い場合に予測される。このモデルでは、網膜反射は拡散性であると想定される。Van Blokland及びVan Norrenは網膜反射の2つの観測された成分:広角散乱成分及び指向性成分を観察した(G.J.Van Blokland et al., “Intensity and
polarization of light scattered at small angles from the human fovea,”Vision Research 26,485-494(1986))。2つの成分が存在しても、広角散乱成分からの改善が得られるということが依然として予測され、そして実際、データは、光受容体に向かう軸方向変位によるコントラスト及び収集効率のこのような改善を示す。拡散性仮定はまた、眼球収差を測定するための二重通過インコヒーレント画像ベース方法に整合する(P.Artal et
al., “Odd aberrations and double-pass measurements of retinal image quality,”
Journal of the Optical Society of America A 12,195(1995); J.Santamaria et al., “Determination of the point-spread function of human eyes using a hybrid optical-digital method,”Journal of the Optical Society of America A 4,1109(1987))。
【0075】
<一般的概要とパート2以降のイントロダクション>
【0076】
一般的に、眼の構造の撮像は、観察対象物体の面内で直接合焦される検出器(物体と共焦点となるように構成された検出器)を使用してきた。撮像される物体又は表面と共焦点となる面以外からの面からの光は意図的に拒絶され、したがって検出器により記録されなかった。SLO及び後のAOSLOが開発されてきた過去20年ほどにわたってすら、AOSLOの検出器はレーザ走査により撮像される物体と共焦点となるように構成されてきた。SLOの適応光学進歩は、角膜及びレンズの光学的不完全性を補償することを可能にし、眼の網膜において及びその近くで撮影される画像を著しく改善した。しかし依然として、一般的通念は、AOSLO検出器を興味ある物体又は表面に対し共焦点となるように設定することだった。
【0077】
AOSLO装置にそれほど経験が無い人のために、本出願の2D例示的画像を生成することに関するノートがこの一般的概要の終わりに続く。
【0078】
パート1で導入され、そして次にパート2以降でさらに展開されるように、我々は、AOSLO検出器を興味のある物体の背後に構成することにより(すなわち興味のある物体の背後の面と共焦点状態にすることにより)、造影剤の必要無しにコントラストの増加を提供するということを実現した。パート1の研究以来、我々は、細胞などの物体の内部(細胞核、核小体及び異質染色質のビューを含む)を文字通り撮像し得るということを今や実現した。さらに、またパート1の研究以来、我々は今や細胞を文字通り類別し得る(個々の細胞の類別化を含む)。
【0079】
観察対象物体の背後の面からの後方散乱に基づく我々の新しい撮像方法の驚くべき結果をより良く理解するために、物理的距離は通常は細胞レベルにおける距離であるということに留意されたい。例えば、上に説明したように眼の後部における細胞を撮像する際、一般的知恵は、撮像検出器(例えばAOSLO検出器)を細胞と共焦点に置くことだった。物体の前方又は後方の検出器構成は撮像構成エラーであると考えられてきた。さらに、従来のAOSLO装置は、撮像される物体又は表面の共焦点面の背後からの光を特に拒絶する(例えばピンホール及び検出器配置による)。
【0080】
次に、本出願の新しい方法によると、我々は意図的に、検出器(少なくとも1つの検出器)が撮像対象物体の背後の面と共焦点となるように構成する。例えば、AOSLOレーザスポットは、わずか数μmの焦点の有効奥行きを有する軸方向に9μm程度である場合がある。新しい方法によると、検出器は、細胞の背後今や130μmの面への共役面の変更のために伝統的検出器構成から約14mm移動される可能性がある。我々は時折、新しい面を、物体の背後の「スクリーン」と呼ぶ。130μmは人間の髪の毛の厚さ未満であるが、眼の後部の物体を撮像する文脈では、130μmは、AOSLOのレーザビームの走査中に1つ又は複数の検出器により光が撮像されるだろう距離の十分に外側の、比較的大きな距離である。さて、物体の背後のスクリーンと共役であるように構成された検出器により受信される後方散乱光は、物体により(ここでは細胞により)屈折されて次にスクリーンから離れる後方散乱光として反射された光を含む。
【0081】
新しい方法は1つの検出器だけで実現され得るが通常は2つ以上の検出器が使用されるということに留意されたい。2つ以上の検出器は、多種多様なパラメータ(波長、分極など)を検出するように構成され得るだけでなく、物体の背後の面と共焦点である新しい構成では、通常は様々な角度から見るようにも構成され得る。さらに、検出器の1又は複数は物体と共焦点である面のビューを追加し得るが、このような追加情報は必要ではない。本出願の強調:物体の背後の面から検出される後方散乱光、物体の背後のスクリーン。
【0082】
本出願を通じて示される画像は、本出願の1つ又は複数の検出器の新しい構成と新しい方法とを有する典型的AOSLO撮像装置を使用することにより1つ又は複数の検出器から生成される。AOSLO機器にそれほど精通していない人のために説明すると、AOSLOレーザビームの走査は、1つの検出器から導出される画像の2次元態様又は2つ以上の検出器からの情報の組み合わせを提供する。通常はAOSLO光電子増倍管(PMT)検出器からの検知器信号情報(例えば、ディジタル化されるアナログ信号)をマッピングする公知のルーチンは、検出器データを所与の時刻のレーザビームの既知の対応位置又は方向へ(当該時刻における検出器データへ)相関付ける。
【0083】
検出器データは通常、撮像装置(通常はAOSLO)に付随するコンピュータにより適時に処理される。通常、PMTデータなどの検出器データは、ディジタル化されてコンピュータへ入力されるアナログ信号である。コンピュータは、2D画像を生成するために及び/又は撮像又は走査されるエリア内の所与の位置の物体データを処理するためにディジタルデータと照明(通常はレーザビーム)の既知の位置とを適時に関連付ける。いくつかの例は概して、検出器データに適時に相関付けられたレーザビームに基づき画像を構築すること及び/又は物体サイズデータを解析すること及び/又は物体を計数すること及び/又は物体の含有物を撮像することに関係したが、任意の他の好適な照明及び検出(例えば2Dセンサによるエリア撮像)が物体の背後の共役面を撮像する新しい方法に使用され得る。この章の終わりのAOSLO 2D画像生成に関する部分も参照されたい。
【0084】
また、概して、本出願の新しい方法は半透明物体を視認するのに有用である。新しい方法は物体の少なくとも一部により屈折された光を活用する(レーザスポットは、必ずしもではないが通常、観測される物体より小さい)。物体のいくつかの部分の屈折率の変化のために、物体の背後の面のスクリーンから受信されそしてAOSLO画像へマッピングされる後方散乱光は、興味ある細胞によるビーム偏位に由来し得る増加されたコントラストと、そして今やパート1の研究から、細胞だけでなく細胞の構成部分などの物体を撮像し類別する能力とを有する新しい情報を含む。我々は概して、撮像される物体の半透明性質に言及するが、新しい方法はまた、AOSLOレーザが物体又は物体の一部を通過するので屈折率の変化がある限り透明構造体又は物体と共に使用され得る。
【0085】
また、我々は簡単のために物体の背後の面をスクリーンと呼ぶが、さらに詳細には、このようなスクリーンは、しばしば凹凸を有しており、通常、画像のAOSLO走査されたエリア全体にわたって完全に平坦ではない場合がある。スクリーンとして使用される特定タイプの構造の知識は、任意の特定タイプのスクリーン(すなわち1つ又は複数の検出器と共役であるように選択された物体の背後の面)からの後方散乱光から導出される画像をさらに補正するために使用され得る。
【0086】
スクリーンは可変厚さを有し得る。反射スクリーンが比較的厚い(例えば約5~100μmの範囲内)場合、検出器は、厚い層の内部の共役位置(いくつかのケースでは物体を撮像、類別、及び/又は計数するためにより最適な検出器データを提供し得る)へ移動され得る。
【0087】
半透明物体により屈折された光から導出されそして物体の背後のスクリーンから検出器により視認されるAOSLO画像は、撮像されている物体のように正確に「見えてもよい」又は、「見えなくてもよい」。構造形状、サイズ又はタイプを指示するこのような画像のいくつかの詳細は、物体と共役な面内で撮影された実際の光学的ビューの文字通りの表現であってもよく、又はそうでなくてもよい。しかし、すべての場合において、コントラストは共焦点撮像において見られる普通の「グリント:glint」に関し大幅に改良される。
【0088】
新しい方法により撮像された物体の増強されたコントラストのために、ラベリング又は造影剤による撮像と同等な又はより良い撮像が実現され得る。代替方法検証又は原理の証明研究に使用される場合以外、本出願の新しい方法及び構成は、「ラベル無し」撮像を可能にし、そして補足的造影剤又はラベリング技術又は薬を使用しない又は必要としない。
【0089】
本出願の例はAOSLOベースであるが、撮像対象物体の背後の面と共役となる(物体と共焦点となるのとは対照的に)ように構成され得る検出器又はセンサを使用する任意のタイプの1D又は2D撮像器が本出願の新しい方法を行い得る。レーザ走査器は、スポット照明サイズが通常、観測されている物体程度である又はそれ以下であるので、特に適切である。しかし、物体の背後からの後方散乱光(物体の少なくとも一部により屈折された)を撮像(検出)するというより広い概念は概して、レーザ走査撮像装置だけでなく有用であると考えられる。
【0090】
眼内の物体を撮像、類別及び/又は計数する新しい能力により、全く新しい範囲の動物及び人間解析が可能にされた。例えば、今や、血液が採取されそしてさらなる解析のために実験室へ送られるということを以前は必要とした多くのタイプの血液パネルの等価物があり得る。しかし、動物及び人間の血液は通常は体を貫流するので、血液細胞は、直接眼を通して生体内の血液細胞を準リアルタイムに直接視認することにより白血球及び赤血球などの細胞を視認することにより本出願の方法により今や類別及び計数され得る。採血はもはや必要ではない。同様に、免疫学的及び全血球数(CBC:complete blood count)解析は、白血球を計数することに又は赤血球の数と白血球の数との比を判断することなどにより眼を介し行われ得る。
【0091】
(2D AOSLO画像生成に関するノート)
【0092】
本出願の例は適応光学走査レーザ検眼鏡(AOSLO)装置の1つ又は複数の検出器により生成されるデータに基づく。
【0093】
ラスタ走査を使用するAOLSOにおける2D画像の生成は、以前の刊行物において広範囲に説明されている(例えば、A.Guevara-Torres et al., “Imaging translucent cell bodies in the living mouse retina without contrast agents,”Biomed.Opt.Express
6,2106-2119(2015))。画像生成における第1の工程は単一画素を捕捉することである。これを行うために、光ファイバのような点光源が光をAOLSO内へ送信する。AOSLOの設定は、興味ある細胞が在る網膜面において光が集束されるように調整され得る。今や、光は、興味ある層における構造から(本出願の新しい方法では背後の(又は観察中の物体より深い)網膜構造から)反射又は後方散乱される。本明細書で述べるように、これらの構造は後方散乱スクリーンとして働き得る。次に、眼から出た光はAOSLO内へ再結合されて、そして例えば本出願のパート1及び3で説明されたように1つ又は複数の検出器により検出され得る。上述の処理は、画像の単一画素を収集し、そして例えば約40MHzの速度で行われ得る。本処理の次の部分は、例えば約15.5kHzであり得る速度で高速スキャナにより網膜において照明スポットを移動することにより1ラインの画素を収集することである。今や、AOSLOが1ラインの画素を捕捉したので、次の工程は、完全な2Dフレームを順次生成することにより複数ラインの画素を捕捉するために、遅いスキャナを直交次元において移動することにより2Dフレームを収集することである。フレームレートは例えば約25Hzであり得、そしてより高い信号対雑音比が複数の2Dフレームを平均化することにより実現され得る。
【0094】
AOSLO線走査撮像の技術はまた、同時係争中でありそしてまたRochester大学へ委譲された米国特許出願第61/933,102号明細書: SYSTEM AND METHOD F
OR OBSERVING AN OBJECT IN A BLOOD VESSELにおいて詳細に説明された。102出願をすべての目的のために全体として参照により本明細書に援用する。
【0095】
<パート2-生きた網膜内の単一通過光及び二重通過光における散乱の比較を使用する血液細胞識別>
【0096】
伝統的フローサイトメータは、N個の検出器により様々な濾過光を処理することにより生体外の増強された画像を提供する。光は一方の側から細胞を照明し、細胞の他方の側で透過光を撮像する。このような撮像技術(例えば眼内の細胞及び他の物体を撮像するための)は生体内構造に関して従来技術では可能ではない。照明は例えば人間の眼の前部を通って達成され得るが、眼の後部における細胞の直接「背後の」検出器を直接配置するやり方は存在しないからである。
【0097】
我々は眼を二重通過光系と見做すことによりこの障害を解決した。すなわち、光源から眼内へ進む光は、眼の後部内の細胞を透照(transilluminate)しそしてその中を進むとこれらの細胞と相互作用し、次に、より深い反射層により後方散乱され、この時点で、光は眼から戻る。我々は、単一血液細胞との光相互作用に基づき血液細胞タイプを判断するために光のこの二重通過性質を使用する。本発明の一態様は、より深い反射スクリーンと共役な面内に前方及び側方散乱検出開口を配置するための最適構成を説明する。前方及び側方散乱を測定する1~N検出器間の測定結果及び比較は、側方散乱に対する前方散乱の比例量(数ある相互作用のなかでもスペクトル、吸収、反射及び屈折に加えて)を指示する。散乱タイプのこのような比は評価された細胞タイプを指示する役目を果たす。次に、本方法及び装置について以下にさらに詳細に説明する。
【0098】
新しい方法は、生きた眼を、個々の血液細胞が生体内で識別、分類、特徴付け、及び評価され得る光学系として使用する。新しい方法は病気及び治療を非侵襲的かつリアルタイムに評価する潜在能力を有する。新しい方法は血液細胞タイプを識別するために様々なタイプの光散乱の比較を使用する。
【0099】
図7(出展:https://www.tlowjo.com/learn/t1owjo-university/flowjo/getting-started-with-flowjo/58)は伝統的フローサイトメータの例示的構成を示す例示的データグラフを有する図である。
図7の左側に示されるのは、光源が試料(例えば血液細胞)の一方の側にそして検出器が試料の反対側に在る透照照明/検出部を有するマイクロ流体光学ヘッドの概略図である。フローサイトメータは、側方散乱(SSC)に対する前方散乱(FSC)を測定して、比を提供し、これにより細胞は様々な種類の白血球へ分類され得る。このような従来のベンチトップフローサイトメータでは、前方散乱光と側方散乱光との比較は、マイクロ流体デバイス内の血液細胞の通過が様々な亜集団血液細胞を指示するかどうかを評価するために使用される(
図7)。多くのこのようなデバイスでは、撮像光は、試料の一方の側の光源及び試料の反対側の光検出器により試料を透照する。
【0100】
前方散乱(又は無散乱)光はインテロゲーション(interrogation)源の主光線の軸に沿った(又はそれに近い)デバイス内で検出される。側方散乱はこの軸から横方向にオフセットされた検出器により検出される。このような検出器は無散乱(無屈折)軸から屈折又は散乱された光を測定する。
【0101】
図8(https://www.flowjo.com/learn/flowjouniversity/flowjo/getting-started-with-flowjo/58から修正)は例示的散乱検出器構成を示す図である。側方散乱光に対する前
方散乱光の割合は任意の時点における血液細胞タイプのバイオリポータとして働く(
図8)。このような手法は、散乱の測度だけでなく波長依存散乱及び吸収も提供する光の様々なスペクトルを使用することにより前方散乱及び側方散乱を評価し得る。ベンチトップフ
ローサイトメータは、細胞が人工装置内でビームにより流れる生体外評価システムである。
【0102】
生体内でこのような測定を行うことはより挑戦的である。しばしば、インテロゲーション光源及び検出器は透照構成(一方の側に発射器、反対側に検出器)で配置され得ない。これは、目的が一列縦隊の血流を測定する(例えば、単一血液細胞流が生体内で実現される毛細血管内で)ことである場合に特に当てはまる。血液細胞タイプの検出に有用なバイオリポータとして細胞屈折及び散乱を使用する実用性を生かすために、「厚い」試料内の他の物体から与えられる散乱を制限することが重要である。動物又は人間の眼は血液細胞散乱が測定又は報告され得る低散乱窓として働き得る。
【0103】
本出願により説明される新しい方法は、眼を二重通過光系と見做すことにより動物又は人間の生体内の細胞のリアルタイム測定のこの障害を解決する。
【0104】
本出願の新しい二重通過系によると、光源から眼内へ進む光は、眼の後部内の細胞を透照しそしてその中を進むにつれこれらの細胞と相互作用し、次に、より深い反射層により後方散乱され、この時点で、光は眼から戻る。新しい方法は、単一血液細胞との光相互作用に基づき血液細胞タイプを判断するために光のこの二重通過性質を使用し得る。
【0105】
前方及び側方散乱検出開口を配置するための最適構成はより深い反射スクリーンと共役な面内であるということが分かった。前方及び側方散乱を測定する1~N検出器間の測定及び比較は、側方散乱に対する前方散乱の比例量(数ある相互作用のなかでもスペクトル、吸収、反射及び屈折に加えて)を指示する。散乱タイプの比は評価された細胞タイプを指示する役目を果たし得る。
【0106】
この手法を使用することにより、個々の血液細胞の細胞分類は、細胞が一列縦隊でインテロゲーションビームのそばを通り過ぎるので、非侵襲的に判断され得る。
【0107】
図9は本出願の新しい方法及び構成による網膜二重通過反射率モデルを示す図である。
【0108】
検出器開口は、細胞散乱(そして屈折)を測定する目的で、より深い反射スクリーンに配置される。より深い面における検出は、光が標的物体と相互作用する機会を提供する(
図9)。この新しい構成は、物体(例えば血液細胞)と共役な面内の様々な物体を撮像する従来の戦略を上回る独特な光学的利点を保持する。
【0109】
図10はどこで検出開口が観測中物体の面に対し共役になるかの準最適性能を示す図である。
図10はインテロゲーション物体が検出器と同じ軸方向共役面内に在る従来の撮像手法を示す。このような構成では、撮像された物体は、標的物体とその周囲との屈折率不整合の特徴である反射「グリント」により席巻される。このようなグリントは、細胞の表面特性を表し、したがって、細胞散乱、屈折、又は標的物体の全体積との光子相互作用に関する最小限情報を含む。
【0110】
本出願は、細胞タイプを分類するために前方散乱成分対側方散乱成分を測定するための新しいやり方を説明する。二重通過前方及び側方散乱を検出するための新しい方法及び構成が
図11に示される。
図11は本出願による物体面より深い面における検出を示す図である。一般的に、新しい方法は網膜に入る光のビームを使用し、血管が撮像される(例えば
図9)。毛細血管の例示的ケースでは、血液細胞は、血管循環を介し進むにつれ一列縦隊で光線を通過して流れる。光が試料(例えば単一血液細胞)に当たると、光の一定割合が吸収され、光の一定割合は屈折され、光の一定割合は最小限度散乱され(偏位無く試料中を進み)、そして光の一部は強く散乱される(照明された軸からオフセットされた経路
内を進む)。
【0111】
面外光を拒絶する共焦点理論を使用して、一連の開口が標的物体より深い面内に配置される。新しい方法は、光がインテロゲーション物体(例えば血液細胞)内を進んだ後に光を反射し検出器へ戻すためにこのより深い面を使用する。
【0112】
網膜の場合、網膜内の一列の血液細胞が照明されると、光は、同じ一般的順方向にであるが本系の元の主光線軸から若干偏位されたベクトルで進み続ける。これらのベクトルは光屈折と光散乱のタイプとの両方を表す。1つ又は複数の開口をこのより深い反射面に配置することにより、前方散乱光対側方散乱光の割合が判断され得る。この面における2つ以上の検出器からのデータの比較が血液細胞内の光量散乱を明らかにし、これによりそのタイプ(例えば顆粒球、単球、好塩基球、好酸球、赤血球、血小板など)を明らかにし得る(
図12)。
図12は細胞識別子をレシオメトリックプロットで明らかにする様々な散乱プロファイルを有する例示的細胞を示す図である。
【0113】
この新しい方法に関し、検出器はより深い反射スクリーン(例えば光受容体、
図9を参照)と共役な面へ設定されるということが実現された。このような構成では、光比較は前方伝播光を強調する。このようにして、網膜は、生体外評価のための従来技術の直交照明パラダイム(例えば
図7)をエミュレートするための代用物として働く。
【0114】
本出願の新しい方法及び構成の撮像光はまた、検出器をより深い網膜面(
図12)内に配置することによりそのスペクトル屈折、吸収及び散乱に基づく血液細胞の直接撮像を可能にする。このような情報を使用することにより、測定ビームは、細胞が存在する場合に撮像チャネルが報告するようなやり方で「ゲート制御」され得る。細胞が識別されると、散乱測定は所望物体に対してゲート制御され得る(
図13)。
【0115】
図13は例示的撮像ゲートを示す図である。解析「ゲート」は、所定サイズ/幾何学形状の細胞が以下のビーム例示的ユーティリティ(beam example utility)に合格する時までのみ適時、散乱測定が適時ゲート制御されることを可能にする:背景散乱の比:標的物体(キュベットブランキングに類似)のFSC又はSSCによる解析オン;交絡散乱信号を標的物体から除去することによる他の物体識別;そして背景散乱の比:物体形態によりゲート制御される新しい亜集団解析による他の物体。この選択的ゲート制御は細胞/物体が存在する場合対存在しない場合に散乱測定を行い得る。選択的ゲート制御は多くの利点を提供する。最初に、選択的ゲート制御は「キュベットブランキング」と同様な測定を許容し、このことは、背景散乱はいかなる物体も存在しない場合に測定され得るということを意味する。無物体測定は、網膜が多くのこのような細胞を含むので重要であり、そして背景の寄与及び透照された組織の寄与を除去することはベースライン測定にとって重要である。ベースライン測定は、雑音を除去し得、そして光が通過しなければならない他の基質(網膜、血管、血漿などの)を考慮し得る。第2に、ゲート制御戦略は、細胞が識別されそしてそれらの形状及び形態に関し類別化されることを可能にする。形状及び形態は、散乱測定に対するさらなる感度及び選択性を与えるために散乱測度と組み合わせられ得る重要な情報を提供する。例えば、前方及び側方散乱測定は、白血球だけに対し、又は血小板だけに対し、又は赤血球だけに対し、又はサイズ及び形態学に基づく他の内因性又は外因性体に対し行われ得る。したがって、スペクトル散乱信号は、測定の感度及び選択性を増加することにより、興味ある標的物体だけに対しさらに精緻化されるだろう。
【0116】
図14は共役後方散乱面からの光の検出を示す図である。
図14は、撮像される血液細胞の実像及び虚像を示すとともに、及び前方散乱光と側方散乱光とを差別的に測定し得る例示的検出器構成を示す。
【0117】
図15は共役後方散乱面からの光の検出を示す別の図である。
図15は前方伝搬を続ける血液細胞中を進む光の詳細を示す。
【0118】
より深いスクリーンにおける反射は細胞含有物、散乱、屈折率に関する情報、及び細胞タイプに関する他の役に立つ情報に関する情報を含む。
【0119】
図16は白血球により散乱された光と赤血球により散乱された光との差を示す図である。
図16は、赤血球及び白血球が撮像されると異なる散乱プロファイルを示す手法により捕捉された実データを示す。この情報は、WBC/RBCタイプを明らかにするだけでなく全血液内の白血球、血小板、網状赤血球、循環悪性細胞及び他の内因性又は外因性体の様々な亜集団も明らかにする前方及び側方散乱情報と組み合わせられることになる。
【0120】
図17はいかなる造影剤又はラベリングも無い白血球の生体内撮像を示す図である。
図17は、白血球が散乱プロファイルだけに基づき赤血球を差別化し得るということを確認する手法により捕捉された実データを示す。
【0121】
パート2の引用文献:生きた網膜内の単一及び二重通過光において散乱の比較を使用する血液細胞識別
【0122】
1. Guevara-Torres, A., Joseph, A. & Schallek, J. (2016) Label free measurement of retinal blood cell flux, velocity, hematocrit and capillary width in the living mouse eye. Biomed. Opt. Express, BOE 7, 4228-4249 (2016). PMID- 27867728
【0123】
2. Guevara-Torres A, Williams DR, Schallek J. (2015) Imaging translucent cell bodies in the living mouse retina without contrast agents. Biomedical Optics Express.6(6):2106-2119. doi: 10.1364/BOE.6.002106. PMID- 26114032.
【0124】
<パート3-適応光学検眼鏡検査における半透明細胞コントラストの最適化>
【0125】
オフセット開口及び分割検出は半透明網膜構造の視覚化を最適化した検眼鏡検査において最近説明された技術である[1-7]。眼の収差を測定し補正する適応光学と組み合わせて、これらの非共焦点方法は、造影剤無しに、光受容体内節及び神経細胞と共に赤血球、水平細胞、神経節細胞を直接撮像する新しい能力を実証した。眼内のこれらの手法の最近の実用性にもかかわらず、このような構成で細胞のコントラストを提供する光学現象を説明するためのモデルは不完全である。
【0126】
Elsner、Chuiにより提示された1つのモデルは光学的コントラストが前方散乱及び多重散乱に起因すると考える[1,6]。このモデルでは、標的物体にぶつかる照明光が、より深い網膜層内へ前方散乱され、次に検出器へ後方散乱される。このモデルは、標的物体が高反射層の上に(視神経円板内などに)ある場合、改善されたコントラストの証拠により支援される[1]。前方散乱光に基づくこのモデルは、オフセット開口条件に固有なコントラスト非対称性について説明しない。このような画像では、標的物体の一端が明るく見える一方で、反対の端は暗く見え、3次元物理的浮き彫りの外観を与える。Sulaiらはまた、中央光軸の両側の光を比較する分割検出構成を使用してコントラスト非対称性を観測した[7]が、コントラストの機構は説明されなかった。
【0127】
この研究に基礎を置き、そして我々自身の観察[3,4]により誘導され、我々は、このコントラストの生物物理学的源を説明する細胞レベルの光学モデルを実現した。単細胞の屈折率及び亜細胞特徴は、光を当該細胞レンズの度数に整合した方向に光軸から遠ざけ
る小さなレンズとして働き得る。
【0128】
したがって、本出願のこのモデルでは、前方伝播光は、光軸から偏位され、そして、偏心された点広がり関数(PSF)をより深い反射層上に形成する。網膜内では、光受容体、網膜色素上皮(RPE:retinal pigment epithelium)、脈絡膜及び強膜複合体が比較的高い量の後方散乱を有し、より深い反射スクリーンとして働く[8-10]。細胞屈折の我々の新しいモデルでは、我々は「コントラストを最大化するための最適構成が、開口を共焦点中心から横方向にオフセットするだけでなく、撮像される標的物体とは反対に、最適後方散乱面と共役な検出面も軸方向に配置する(現在の分割検出及びオフセット開口撮像における慣例)」ということを仮定する。
【0129】
我々の光学モデルを試験するために、我々は生きたマウスの眼を有利な系として使用した。マウスは、横方向分解能において2倍増加及び軸方向分解能において4倍増加を提供する0.49(人間の2倍)の開口数を有する[10]。横方向分解能は約700nm横方向分解能を実現するために理論的かつ実験的に実証された[10]。高NAはまた、厳しい軸方向照明抑制を提供する。軸方向点広がり関数(PSF)のサイズ(理論的に9μm[11])は多くの網膜細胞体のサイズに匹敵する。これに応じて、この高NAは狭い被写界深度を提供する。10マイクロメートルだけ深い又は浅い光は、かなり焦点を外され、これにより最良焦点の小さな軸方向容積に対するコントラストを強化する。これは、顕著な屈折力(560ジオプタ、[12])を有するマウスの眼の有利な特性である。マウスの眼の光学的恩恵に加えて、麻酔の使用は、人の調査を挑戦的なものにする眼運動と瞳中心化の影響とを軽減する安定した準備を提供する。
【0130】
図18は本出願による構成及び方法を試験する際に使用されるAOSLOの系統図である。3つの光源が796及び640nmにおける撮像光並びに904nmにおける波面感知を提供するために使用された。波面センサ(WFS)は収差測定結果を提供し、変形可能ミラー(DM)が収差補正を提供した。眼から後方散乱された光は網膜共役面において脱走査(de-scanned)されそして撮像された(右側)。フレーム内のすべての撮像された点位置からの典型的光分布を明らかにする平均網膜PSFがCCDカメラにより撮像された。次に、検出ピンホール(200μm)が共焦点中心に対して横方向に移動された(オフセット構成、x=233~815μm、又は10~35ADD、y=0μm)。画像コントラストは網膜内の215μm、z=0~22mmの軸方向検出器位置により評価された。
【0131】
我々のモデルを試験するために、我々は、マウス網膜を撮像するように設計された適応光学走査光検眼鏡(AOSLO)を使用する[10]。要約すると、我々は、波面感知のために904nm(8μW)レーザと、撮像のために17nm帯域を有する796nm光(480μW、Superlum、Ireland)及び640nm可視レーザ(30μW、Toptica、Germany)とを使用した。Shack-Hartmann波面センサが収差を測定するために使用され、膜ベース変形可能ミラー(ALPAO、France)が眼の高次及び低次収差の補正を提供した。AOSLOは、眼の瞳を変形可能ミラー並びに水平方向スキャナ及び垂直方向スキャナへ伝える5つの無限焦点望遠鏡からなる(
図18)。この走査器は25Hzのフレームレート及び15.4kHzの高速スキャナ周波数を有する。撮像経路(眼からの戻り経路)は、網膜におけるスポットを脱走査化し検出器アーム内へ再撮像し、アクセス可能PSFを生成する(
図18)。我々のモデルを試験するために、我々は、結合された円状ピンホール有する光電子増倍管(PMT)を横方向次元及び軸方向次元の両次元に移動することによりPSFをサンプリングする。撮像アーム(
図18)の実際のPSFは伝統的PMT位置のCCDカメラ(640x480のモノクロDMK21F04、Imaging Source社、露出1/2048秒)を使用して撮像された。
【0132】
Sulai、Chui、Rossi及びGuevaraによる手法[1,3,5,7]と同様に、第1の工程は検出器ピンホールを正面内で横方向に変位させることだった。検出器開口の直径は200μm(9エアリー円盤径(ADD)に等しい、
図18)だった。開口は、血管のために10ADD、そして水平細胞を撮像する実験のために22及び35ADDだけ水平方向次元において偏心された。これらの偏心された構成が物体のベースライン視覚化を提供するために選択された。
【0133】
検出器の軸方向変位の影響を試験するために、検出器の横方向オフセットは固定されたままであったが、一方、開口/PMTは、撮像される物体の共役照明面から、網膜内で漸次深く(より遠く)なる層へ系統的に移動された。実験毎に、照明及び適応光学補正は一定に保持されたが検出構成は変更された。マクスウェルの伸長式が、検出器の軸方向変位と網膜におけるその対応変位との間の関係式を提供した[11]。
【0134】
【0135】
ここで、mは横倍率であり、n、n’は眼及び検出器における屈折率である。検出器におけるエアリー円盤径は23.3μmであり、マウス網膜では2μmである。次に、前眼部の1.334の屈折率を仮定すると、検出器における1mmの軸方向変位は網膜内の9.8μmの軸方向変位に対応する。検出器位置は、網膜内の軸方向焦点外れの215μm超に対応する最大22mmまで移動された。PMTメカニカルステージのアラインメントは、試験された光学的z変位にわたって1ADD(23μm)未満の横方向偏位を有した。この公差は、重要だったので、軸方向検出器位置の22mm送りに沿ったPSFの中心を計算するためにCCDカメラを使用して確認された。
【0136】
マウスの眼内の小さな残存運動を補正するために、第2の640nmレーザが、別個の可視光PMTを使用することにより共焦点モード内の網膜を同時に撮像するために使用された(
図18)。これは近赤外線において行われる測定に影響を与えることなく、同時デュアルチャネル画像登録を提供した[13]。
【0137】
改善を定量化するために、我々は次の2つのクラスの網膜構造を撮像した:約11マイクロメートル近傍の直径を有する水平細胞[3];その中に血液細胞を有する最小網膜毛細血管(約4マイクロメートル[4])。これらの生物学的標的は、オフセット及び分割検出器構成における強いベースラインコントラストを提供し[3,4]、そしてより深い反射層(この影響を我々は評価したい)に対しvitreadして常在するので、選択された。網膜毛細血管は、マウス網膜の3つの層内に常在するのでさらに有用であり、同構造をより深い反射層からの様々な距離において撮像することを可能にする[14]。
【0138】
これらの物体をオフセット構成で撮像する際、我々は零軸方向オフセット(照明は検出面に共役である)により開始した。画像は、細胞及び構造が以前に報告されたもの[1,3,5,7]と同様であるということを明らかにした。照明は標的物体面上に固定されたたままであったので、軸方向検出器は215μm(38ジオプタ)だけより深くへ増分ステップで移動された(
図19)。
【0139】
図19Aは、一連の画像、及び検出器を軸方向に変位させることによる水平細胞からのコントラストの増加を示すグラフである。水平細胞画像は、平均強度へ正規化され、同じコントラスト範囲(24×24μm視野)で表示された。上記細胞のマイケルソンコントラストは検出器がより深くへ移動されると改善する(灰色のプロット)。
図19Bは、す
べての撮像された細胞(3匹のマウスにわたる6個の細胞)のコントラスト改善が観測されたことを示すグラフである。水平細胞の平均プロット(黒色)は117μmにおけるコントラストの極大を示す。水平細胞と同様な解剖学的深度における毛細血管、(OPL)もまた、同様な検出器位置における極大を示す。誤差バーは標準誤差を表す。
【0140】
検出器の軸方向変位の影響を解析するために、我々は、最初に内顆粒層(INL:inner nuclear layer)と外網状層(OPL:outer plexiform layer)との境界における単層内に常在する水平細胞を撮像した。水平細胞は、網膜内に希薄に分散されており、不均質網状層の境界において簡略化細胞屈折素子としてモデル化され得る[15]。伝統的共焦点理論に対しいくぶん直観に反しているが、検出器面を照明面から38ジオプタ(215μm:軸方向照明PSF(約9μm)より20倍超大きい)離すことにもかかわらず同じ水平細胞が撮像される可能性がある。直接後方散乱だけがコントラストを与えるならば、38ジオプタ離れたいかなる標的物体もぼけのために実質的には認識不能だろう。その代りに、軸方向変位を行うと、同じ水平細胞が視認可能なままであるだけでなく、マイケルソンコントラストも平均で1.9倍増加した。検出器の軸方向変位を続けることにより、コントラストの極大が網膜内の70~170μmの変位の間に観測された。コントラストの改善が3匹のマウスにわたる6個の細胞において観測された(
図19B)。この改善は、マウスの水平細胞と光受容体/RPE/脈絡膜複合体との間の距離に解剖学的に整合する。屈折モデルは、光受容体/RPE層と共役な検出器を軸方向に変位させる利点を予測する。このような構成では、照明PSFが標的物体の光学解像度及び軸方向区分化を提供する一方で、検出器変位はコントラストを最適化する。
【0141】
図20は検出器をより深い網膜後方散乱の層に向かって軸方向に変位させることによる一連の画像と画像コントラストの改善とを示すグラフである。コントラストは血管がGCL内に在る又はOPL内に在るかにかかわらず軸方向変位と共に増加する。コントラストの極大は検出器変位が光受容体面の推定距離に一致すると観測される。GCL内の15回の試行は7つの撮像された毛細血管に対応する。3つの毛細血管がOPL内で撮像された。網膜の軸方向画像はStephen C.Massey (McGovern Medical School, UT Houston)により提供された。誤差バーは±1の標準誤差を示す。
【0142】
これが特別なケース(網膜内の一つのタイプの構造だけに当てはまる)ではないということを試験するために、我々はまた、マウス内の3つの成層内に在る毛細血管内の有効性を検証した[14]。神経節細胞層(GCL)における毛細血管は、我々の試験した軸方向変位の全範囲内でコントラストの連続的2.7倍増加を示した(
図20、左下曲線)。最適軸方向変位が標的物体と光受容体との間の距離に依存するかどうかを試験するために、我々はまた、反射スクリーンにより近いOPLにおける毛細血管によりこれらの実験を行った。OPLにおける毛細血管を撮像する場合(
図20右上曲線)、我々は、GCL毛細血管からの結果と整合するコントラストの当初増加を観測した。しかし、検出器が遠くへ移動し続けると、我々は共役構成における場合より1.9倍高い最大コントラストを観測した。この最大コントラストは、光受容体/RPE/脈絡毛細血管板接合の面にほぼ対応した。この最大コントラストは、最も深い網膜毛細血管と同じ深度に常在する水平細胞に関して同様に観測された(
図19B)。これらのデータは、コントラストのための最適構成が検出器面と最大後方散乱の反射スクリーンとをアライメントする(非直感的に、従来の共焦点及びオフセット撮像において行われるように標的物体の面においてではない)ということを暗示する。
【0143】
図21A~
図21Cはコントラストの増加を説明する光学モデルを示す。
図21Aは「負レンズとして働く細胞が、細胞の左端上に集束される光線を偏位させる」ということを示す画像である。この偏位は光受容体/RPE複合体のようなより深い反射層まで伝播さ
れる。
図21Bは300万光線を使用したZemax光線追跡の画像であり、レンズが細胞の左側に合焦されたときのより深いスクリーンにおけるPSFパターンを予測する(下図)。検出器が集束ビーム及び興味ある細胞と共役であると、焦点外れが導入される(上図)。
図21Cはフーリエ光学を使用したZemax光線追跡の画像である。
【0144】
この改善は、我々の細胞屈折モデル(網膜内の単細胞が光をより深いスクリーンへ誘導する)により予測される(
図21A~
図21C)。一例として、我々は11μmの球状細胞径を考察する。内部では、細胞は1.346の指標としての生物価によりモデル化され、細胞外では、負レンズを生成する1.04の指標不整合を与える1.400の指標としての生物価によりモデル化された[16]。照明光は2mmの径の瞳から来る光錐としてモデル化された[10]。2.38mmの焦点長の前部光学系は796nmの波長により単一球状細胞上に合焦された(
図21A)。この細胞から、光は、細胞下130μmに常在する光受容体などのより深い反射スクリーンまで前方伝播された[25]。
【0145】
モデルは光学における次の2つの慣習を使用して模擬された。(1)
図21Bに示す幾何学的光線追跡ソフトウェア(Zemax, Kirkland, Washington)及び(2)カスタムMATLABスクリプト(Natick, Massachusetts)でのフーリエ光学[17]。フーリエケー
ス(
図21C)では、細胞は球状細胞及び屈折率不整合から生成される2D位相物体として表現される。ビーム焦点における細胞は回折限界PSFにより照明される。通過しそしてより深いスクリーンまで進む光は数値的Fraunhofer伝搬を使用して計算される。787.5nmから804.5nmまで等しく離間された5つの個別波長からの結果が独立に試験されそして組み合わされた。
【0146】
より深いスクリーンから検出器までの光の戻りは次の2つのやり方で表示される:A)検出器がスクリーンと共役である場合、回折限界PSFが、より深いスクリーンからの反射が拡散性であるものと仮定して使用された、又は、B)検出器が、撮像される物体と共役である場合、焦点外れが、スクリーンにおける光パターンと開口数及び焦点外れ距離により定義された幾何学的PSFとを畳み込むことにより導入された。
【0147】
これらの結果は、コントラストが細胞屈折率からそして簡略版で生じるモデルと整合し、細胞レンズ効果により説明され得る[16,18]。幾何学形状に加え細胞及びそれらの周囲の屈折率の差がより深い層へ進む光を偏位させる小さなレンズを生成する。集束光線が細胞全体にわたって走査されると、照明光は当該細胞の屈折力に整合する方向に光軸から偏位される。細胞の左側及び右側を通過する光線は反対方向へ誘導されることになる(
図21A~
図21C)。いずれの場合も、偏位された光線は検出器に向かう光を反射する細胞の下の層にぶつかる。オフセット開口及び分割検出におけるような共焦点中心からの検出器の横方向変位が細胞の一方の側を通過する光を他方の側を通過する光に対し優勢にする。分割検出又はオフセット開口のいずれかの場合[3,5,7]。
【0148】
図21Bはオフセット開口構成を示し、
図21Cは分割検出構成を示す。分割検出及びオフセット開口は2D面内の検出方式である。本出願前は、オフセット開口及び分割検出は、共焦点理論により触発されるように照明の面と共役な面へ制限された。細胞屈折の役割と、より深い後方散乱スクリーンと結合された照明の面内の屈折率の変動とをより理解することにより、本出願は、オフセット開口のような検出マスクを他の面(例えば、より深いスクリーンと共役な面など)へ移動することを提案した。オフセット開口及び分割検出は、1つ又は複数の検出器を使用する2D二進検出マスクの名前であるが、これらの2Dマスクの形状の無限な可能性がある。
【0149】
AOSLO検出の技術はまた、同時係争中のそしてまたRochester大学へ委譲された米国特許出願第15/563,035号明細書:IMAGING MODALITIES USING A REF
LECTIVE APERTURE ARRAY IN THE IMAGING PLANE TO DYNAMICALLY IMAGE AND COMPARE COMPONENTS OF THE DIFFRACTION PATTERN AND IMAGING POINT-SPREAD FUNCTIONに詳細に説明されている。’035出願をすべての目的のために全体として参照により本明細書に援用する。
【0150】
網膜層からの反射は鏡面反射性であるが、以前の研究は拡散性後方散乱の役割を強調した[19]。この相互作用を所与として、前方伝播光は、拡散性スクリーンにぶつかり、この時点で、独立光源として働く。この光は光の細胞屈折に基づき光軸の左又は右へ偏される。光学的誘導を抽出しコントラストを最大化するために、最適戦略は、集束された照明が標的層に位置決めされる一方で検出器をスクリーンと共役にすることである(
図21A~
図21C)。
【0151】
図22A~22Eは、どのようにレンズ極性の差が分割検出器構成において細胞のコントラストを生成し得るかを示す例示的モデル及びデータである。
図22Aは、分割検出により撮像された水平細胞(HC)を示す画像であり、左側の正のコントラスト及び右側の負のコントラストを示す[3]。
図22Bは、
図22Aに示す撮像されたHC全体にわたる強度プロファイルと、0.2μmの走査間隔でのBと同様にシミュレーションされたフーリエ光学データとを示すグラフである。各黄色点はシミュレーションからの結果である。(D)に対応する光受容体神経細胞(PR)のプロファイルは白色で示される。
図22Cは、ビームが-5から5μmまで細胞全体にわたって集束されたときの検出面におけるシミュレーションされたフーリエ光学結果を示す画像である。
図22Dは分割検出により捕捉された光受容体(PR)神経細胞を示す画像である。
図22Eは赤血球の分割検出画像である。
【0152】
細胞レンズ効果の第2の予測は、各細胞が各正レンズ又は負レンズのいずれかとして働く可能性があるということである。これは、より深い反射スクリーン上の光の操縦角度を変更するだろう。このようにして、信号極性は、細胞の内部/外部の屈折率及びそれらの幾何学形状の凸又は凹性質により決定付けられる。分割検出及びオフセット開口画像では、細胞は、一端上の暗い陰影と他端上の明るい反射として現れる。我々は、我々のデータ内にこの現象の証拠(内皮境界の左端は明るく、赤血球の対応する端は暗い)を観測した。光受容体神経細胞及び赤血球は正レンズの予測極性を有する。血液細胞では、これは、血漿に対し赤血球の内部のより高い屈折率に整合する[20]。しかし、同一実験条件にもかかわらず、水平細胞/毛細血管内皮境界は負レンズの極性を有する(
図22)。
【0153】
我々の知る限りでは、これは、細胞屈折率の変化が検眼鏡検査における分割検出及びオフセット開口画像に固有な非対称性を説明するために使用された初めてのことである。このモデルは、以下のことを意味する:分割検出及びオフセット開口は生きた眼内で位相撮像を行うやり方であり、コントラストを生成するための機構は、Schlieren撮像、斜光照明又は差分位相コントラストに類似しており[21-23]、ここでは、焦点面全体にわたる光路長変化が光を特定方向に偏位させる。
【0154】
網膜内の特定細胞タイプを撮像するために最適化パターン、サイズ、横方向及び軸方向オフセット組み合わせを組み合わせる検出マスクがあり得る。この前線上の最近の努力は、適応可能検出マスクの実現可能性及び恩恵を示したSapoznik[24]らに由来する。同時に、我々の光線追跡及びフーリエ光学シミュレーションが最良の開口構成を指示するために使用され得る。スクリーンまでの距離、サイズ、各網膜細胞タイプの幾何学形状及び屈折特性の知識による我々のモデルは細胞分類毎に指示された検出器マスクを提供し得る。
【0155】
この手法は造影剤を必要としないので、これらの戦略は、人間の眼のサイズ、屈折率及
び幾何学形状に整合する検出器構成を最適化するために人間のAOSLOへ移され得る。半透明細胞内にコントラストを生成すること以外に、この構成は、網膜内の神経細胞及び毛細血管の機能状態を報告するための独特なバイオマーカを提供し得る。細胞形状及び屈折率の両方の変化は、細胞活性のバイオマーカを生成するために好ましいやり方でビームを誘導し得る。また、PSF偏位及び形状の検出は標的細胞の活動を明らかにし得る。
【0156】
(パート3の引用文献:適応光学検眼鏡検査における半透明細胞コントラストを最適化)
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【0181】
25. K. H. Kim, M. Puoris’haag, G. N. Maguluri, Y. Umino, K. Cusato, R. B. Barlow, and J. F. de Boer, "Monitoring mouse retinal degeneration with high-resolutio
n spectral-domain optical coherence tomography," J. Vis. 8, 17-17 (2008).
【0182】
<パート4-適応光学は網膜内の動的免疫反応のラベル無し生体内撮像を許容する>
【0183】
適応光学赤外線反射率撮像は、亜細胞分解能でのマウスの眼の内部網膜内の湿潤及び常在免疫細胞のラベル無し且つ環境的無摂動撮像を許容する。炎症性刺激に続いて、全免疫反応が、繰り返され、そして同じ解剖学的位置において数分から数か月にわたって繰り返し追跡され得る。
【0184】
使用される非侵襲的性質及び安全な光レベルのために、眼炎症中の同等の人間撮像は免疫細胞に整合する可動構造を検出し得る(免疫及び眼疾患の研究を大いに進め得る発見)。
【0185】
眼は免疫反応を撮像するように最適に適合される。哺乳動物内の唯一の光学的透明器官として、眼は、アクセスすべきいかなる手術又は環境摂動も必要としなく、生体内の真の免疫系機能の反復視覚化のための最高忠実性プラットホームを提供する[1]。しかし、生体内単細胞分解能を達成する際の制限とマウス及び人の両方における細胞ラベリングのための要件とが基本的免疫学又は失明病の研究へのより広い適用を妨げてきた。
【0186】
これらの課題に取り組むために、適応光学補正(AOSLO)を取り込む走査レーザ検眼鏡がマウスの眼を撮像するために開発された。高次光学収差のリアルタイム調整を使用することにより、この手法は網膜光受容体から血管内赤血球までの単細胞分解能を既に達成した[2,3]。796nm赤外線光による反射率撮像はまた、網膜構造を検出し、同じ位置への反復ナビゲーションを許容する。
【0187】
以下の例は本出願の新しい方法及び検出器構成を使用して作製された。
【0188】
単一の鋭い炎症性刺激が、7日間によるエフェロサイトーシスを介し消散するリポ多糖類(LPS:lipopolysaccharide、骨髄性細胞の網膜漸増を生じることが知られている)の硝子体内注入により与えられた[4]。フローサイトメトリ内の側方散乱に類似のオフセット開口検出戦略を取り込む際に、反射率変化が網膜静脈の周囲に発現し(
図23A-J)、そして最もよく観測された[5]。内部網膜組織内の離散的構造は、画像登録、フレーム平均化及び加速タイムラプス映像による後処理まで、リアルタイムに視覚化されると静的であるように見えた(
図24)。これは、湿潤免疫細胞に整合するダイナミック膜改造、偽足形成及び細胞運動を明らかにした(
図23B、
図24)。後毛細血管細静脈反射率撮像を視認することで、白血球ローリング、クローリング、経内皮及び逆遊走挙動を識別することができた(
図23C、
図26)。細胞位置、サイズ、内部反射率及び運動性における不均質性が直接相互作用の様々な段階において複数の細胞タイプを有する組織の広い領域にわたって観測され得る(
図23D)。
【0189】
図23A-Jは湿潤免疫細胞(
図23A-G)及び常在免疫細胞(
図23H-J)を示す画像である。網膜免疫細胞のラベル無し適応光学撮像は次のように示される:
図23A:隣接AOSLO合成写真の指示された位置(赤色矩形)による796nm反射率広視野55度SLO。
図23B:796nm反射率、LPS後24時間により視覚化された不均質細胞タイプ。
図23C:経内皮遊走の範囲全体にわたる血管内単細胞反射率画像。
図23D:上記網膜静脈による中間拡大視野、LPS後72時間。
図23Eの同時反射率(上図)及び蛍光(下図)の代表的例、反Ly6G抗体ラベル白血球ローリング、LPS後6時間及び
図23F:組織内の細胞及び血管内クローリングによるCD68-GFPリポータマウス、LPS後24時間。
図23G:[除去を考慮]。
図23H(Cx3cr1-GFP):未処置網膜ミクログリアの代表的例
図23I:CD68-GFPリポータマウス
。
図23J:自発的二次ミクログリア処理収縮の反射率画像。スケール・バー=10μm(a=Xμm以外において)。0.9ガウスフィルタが蛍光像へ適用された。
【0190】
LPS注入に対し二次的な眼浸潤細胞はほぼ例外なく好中球又は単球派生物である[4]。同時単一チャネル蛍光検出がこのAOSLOにより可能であるので、共役反Ly6G抗体による血管内色付けが、大多数の内皮ローリングは好中球であるいうことを検証するために使用された(
図23E、
図27)[6]。CD68GFP/+リポータマウスを使用することにより、網膜組織内の血管内単球及び大食細胞も識別することができた(
図23F)。
【0191】
常在免疫細胞が視覚化できたかどうかを確認するために、無炎症眼が撮像され、そして予測神経細胞構成要素とは異なる高反射率樹枝状構造が硝子体腔から神経節細胞層まで観測できた。これらは、Cx3cr1GFP/+及びCD68GFP/+のリポータマウス内の正の蛍光共局在化により網膜ミクログリアとして識別された(
図23H-
図23I)。リアルタイムに記録可能な動的運動性(
図28)により最小限の二次樹状突起までの分解能が可能だった(
図23J、拡張データ
図29)。加えて、亜細胞詳細の分解能はこの母集団内で既に識別されたエンドソームなどの構造に一致できた(拡張データ
図30)[7]。
【0192】
(拡張データ)
【0193】
図24は登録及び処理映像を表す一連の静止画像;拡張データ映像1である。後処理応用の実証。a.C57BL/6Jマウス網膜の生の適応光学補正796nm反射率画像。呼吸及び心拍出量から運動を実証する25fps捕捉で取得されたリアルタイム映像。b.EyeTrackソフトウェアによるフレーム登録に続く生画像。c.25フレーム時間平均化及び加速タイムラプスの応用。上行、浸潤免疫細胞のクラスタ、LPS後6時間。下行、無炎症網膜内の組織常在細胞。スケール・バー=10μm。
【0194】
図25はフレーム(
図23B)を動かすことによる細胞の映像を表す一連の静止画像;拡張データ映像2である。不均質免疫細胞運動性を実証するラベル無しAOSLOタイムラプス映像。C57BL/6Jマウス網膜から25fpsにおいて取得された796nm反射率映像、LPS注入後24時間。合計6分の継続時間記録からの処理後の50フレーム時間平均化。スケール・バー=10μm。
【0195】
図26はTEM逆遊走(reverse migration)を表す一連の静止画像、様々なタイプの運動映像の合成写真;拡張データ映像3である。AOSLO反射率撮像により観測された多様な細胞挙動の例。5~50フレーム平均化のLPS後6時間又は24時間における796nm反射率AOSLO画像。a.後毛細血管細静脈白血球ローリング。b.血流方向及び反血流方向の静脈白血球ローリング及びクローリング。c.血管内細胞と接触した血管周囲ミクログリア処理。d.経内皮遊走及び血管周囲白血球蓄積。e.中間の組織浸潤白血球運動性。f.網膜静脈内への白血球の逆遊走。スケール・バー=10μm。
【0196】
図27はラベルを有する好中球ローリングを表す一連の静止画像;拡張データ映像4である。反Ly6G抗体を有する蛍光性ラベリングを有する後毛細血管細静脈内の好中球内皮ローリング。LPS後6時間。796nm反射率の同時アライメントされた捕捉(上図)及び反Ly6G共役AlexaFluor 647蛍光。スケール・バー=10μm。
【0197】
図28はミクログリア処理プラス動的処理の映像を表す一連の静止画像である。
【0198】
図29はミクログリア多様性を示す拡張データ図;拡張データ
図1である。ミクログリアはAOSLOにより内部網膜内で反射率撮像だけにより可視である。a.6週間経過のCx3cr1GFP/+マウスにおいて同時に取得されたGFP蛍光チャンネル画像と並んだ796nm反射率画像(50フレーム平均化)は、これらが内部網膜ミクログリアであるということを確認した。亜細胞特徴は反射率チャネル内で可視である。b.C57BL/6Jマウスの代表的反射率画像は、GFPの制御が反射率に影響を与えるので同様な構造を実証する。スケール・バー=10μm。
【0199】
【0200】
図31は
図30のU-Net評価の経時変化映像を表す一連の静止画像である。
【0201】
図32は本出願の新しい方法及び構成を使用して捕捉されたAOSLOタイムラプス系列を示す一連の画像である。各パネルはマウス網膜内の小静脈を取り囲む免疫細胞の独特なスナップショットを示す。各スナップショットのタイムスタンプは各パネルの左上に与えられる。マウスはリポ多糖の硝子体内注入により誘起された局所的炎症を有する。免疫細胞は明らかに動的且つ運動性である。あらゆる細胞は、それ自身の物語を有し、体の免疫反応に決定的に重要な一連の固有運動を行う。ここで、我々は細胞活性のタイプのサブセットを示す:「1」でマーキングされた矢印はすべて、同じ免疫細胞が血管の外側の網膜組織内を遊走するので同じ免疫細胞を指す。「2」でマーキングされた矢印はすべて、別の免疫細が感染と戦うために血管から出てこれにより血液脳関門を横切る(免疫反応及び薬物送達において決定的に重要な過程)ので別の免疫細胞を示す。「3」でマーキングされた矢印は、外側の局所炎症と戦うそのジョブを完了して血管に再度入るさらに別の免疫細胞を指す。
【0202】
パート4の引用文献
【0203】
1. Rosenbaum, J. et al. Imaging Ocular Immune Responses by Intravital Microscopy. Int Rev Immunol 21, 255-273 (2009).
【0204】
2. Joseph, A., Guevara-Torres, A. & Schallek, J. Imaging single-cell blood flow in the smallest to largest vessels in the living retina. Elife 8, e45077 (2019).
【0205】
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Vision Research 132, 3-33 (2017).
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4. Chu, C. J. et al. Multimodal analysis of ocular inflammation using the endotoxin- induced uveitis mouse model. Disease Models and Mechanisms 9, 473-481 (2016).
【0207】
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【0208】
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【0209】
7. Uderhardt, S., Martins, A. J., Tsang, J. S., Laemmermann, T. & Germain, R. N.
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【0210】
8. Woodfin, A. et al. The junctional adhesion molecule JAM-C regulates polarized
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【0211】
<パート5-本出願の新しい方法及び構成を使用する免疫細胞撮像の例示的応用>
【0212】
本出願の新しい方法及び構成はまた、健康状態と病気状態との両方における網膜内の免疫細胞のラベル無し且つ非侵襲的生体内撮像に使用され得る。人内の網膜免疫健康状態を評価するための現在の方法は、半透明免疫細胞(白血球、ミクログリア及び他のタイプの免疫細胞)の構造又は活動のいずれかを示さない眼底画像の検査を含む。これは現在の撮像技術の限定された分解能及びコントラストに起因する。
【0213】
網膜内の半透明細胞の観測されるコントラストを改善する(造影剤が無い状態で)上に述べた新しい方法及び構成は、健康及び病気における白血球ローリング、白血球拘束、白血球経内皮遊走(管外遊出);炎症の回復に続く血管への白血球再エントリ、網膜組織内のミクログリア細胞運動性及び白血球運動性を含む免疫細胞活動の視覚化を可能にする。免疫細胞の映像速度(例えば約25Hz)及びタイムラプス撮像(すべてラベル無しで撮像された)は完全な細胞の運動(細胞遊走)と亜細胞構造の運動との両方の動的挙動を示す。報告され得る例示的バイオマーカは、免疫細胞体遊走速度、免疫細胞処理速度、白血球ローリング速度、免疫細胞数、免疫細胞エリア、免疫細胞遊走経路及び方向ベクトル、並びに遊走抑制比を含む。
【0214】
近赤外線の非侵襲的性質及び安全レベル又は光の可視波長の使用のために、これらの新しい方法及び構成は、人間の眼の例えば後部及び前部ブドウ膜炎、糖尿病、散弾状脈絡膜網膜症/ブドウ膜炎、血管炎及びサルコイドーシスなどの炎症性疾患の検出、診断、及び治療効果の評価における有用性の改善を提示する。
【0215】
加えて、脳内の免疫細胞及び人体の他の部分の活動を視覚化するための技術の現在の欠如のために、上記方法はまた、上に述べたように興味ある物体の背後のスクリーンからの後方散乱光を視認することにより、いかなる人間の病気(炎症性構成要素を有する)の検出、診断及び治療効果の評価の有用性を有する。さらに、免疫細胞活動のバイオマーカ(例えば、上述のバイオマーカ)などの新しい方法及び構成は炎症性疾患を治療するための薬及び他の薬物治療の安全性及び治療効果を定量化するために使用され得る。
【0216】
上述の新しい方法を行うためのソフトウェア及び/又はファームウェアはコンピュータ可読非一時的ストレージ媒体上に提供され得る。非一時的データストレージとしてのコンピュータ可読非一時的ストレージ媒体は、非一時的やり方で任意の好適な媒体上に格納される任意のデータを含む。このようなデータストレージは、限定しないがハードドライブ、不揮発性RAM、SSDデバイス、CD、DVDなどを含む任意の好適なコンピュータ可読非一時的ストレージ媒体を含む。
【0217】
上記開示の変形及び他の特徴及び機能又は代替が、多くの他の様々なシステム又はアプリケーションへ組み込まれ得る。様々な現在未だ見ない又は予期しない代替、修正、変形、又はその改善が当業者により今後なされ得、以下の特許請求の範囲により包含されるように意図されている。