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特許7508123吸入化学療法用キットおよび当該キットによる肺癌の処置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】吸入化学療法用キットおよび当該キットによる肺癌の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/243 20190101AFI20240624BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240624BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240624BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240624BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20240624BHJP
【FI】
A61K33/243
A61P35/00
A61K31/282
A61K9/00
A61K9/48
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/34
A61K47/24
A61K45/00
A61K33/24
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021538006
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2019087118
(87)【国際公開番号】W WO2020136272
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/097140
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514084347
【氏名又は名称】ユニベルシテ リブレ デ ブリュッセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アミーギ,カリム
(72)【発明者】
【氏名】ウォートズ,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ロジエール,レミ
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533576(JP,A)
【文献】Development of controlled-release cisplatin dry powders for inhalation against lung cancer,International Journal of Pharmaceutics,2016年,Volume 515, Issues 1-2,Pages 209-220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61K31/33-31/80
A61K33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)脂質マトリックスを有する、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、またはネダプラチン等の白金薬剤の群から選択される少なくとも1つの抗腫瘍剤を含み、PEG修飾賦形剤等の1つ以上の賦形剤および/または担体を任意に含む、1つまたは複数の密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末と、
b)1つまたは複数の使い捨て乾燥粉末吸入装置と、を含み、
i)密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれは、閉鎖状態および開放状態を有し、
ii)使い捨て乾燥粉末吸入装置それぞれは、閉鎖位置および任意で開放位置を有し、
iii)密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれは、前記1つまたは複数の使い捨て乾燥粉末吸入装置のうちの1つの使い捨て乾燥粉末吸入装置に閉鎖状態で収容されるように提供され、
iv)使い捨て乾燥粉末吸入装置それぞれは、密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれが前記開放状態になる前またはひとたび前記開放状態になると、前記閉鎖位置に存在するように設けられ、
前記密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれがカプセル内に存在し、
使い捨て乾燥粉末吸入装置それぞれが、吸入チャネルと流体接続し、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の内部に前記密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれを収容する装填チャンバに接続された分散チャンバを備え、
前記装填チャンバが、前記密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれを開放するために設けられた、作動位置と休止位置とを有する作動手段、および、前記密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれの抜き取りを防止するために設けられた、開放位置とロック位置とを有するロック手段を備え、
前記ロック手段が前記ロック位置に存在するときにのみ、前記作動手段は前記作動位置に移動することができるように設けられている、吸入化学療法用キット。
【請求項2】
前記脂質マトリックスが、トリステアリン、水素化植物油、または、振盪フラスコ法を用いて測定したLogP値が5より高い、任意の疎水性グリセリド誘導体等のトリグリセリドの単一物または混合物のマトリックスである、請求項1に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項3】
前記PEG修飾賦形剤が、ビタミンE、またはトコフェリルポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)もしくはジステアロイルホスホエタノールアミンポリエチレングリコール2000(DSPE-mPEG-2000)等のリン脂質に由来する、請求項1または2に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項4】
前記使い捨て乾燥粉末吸入装置は、使用できる状態であり、吸入チャネルと流体接続し、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の内部に前記密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれを含む装填チャンバに接続された分散チャンバを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項5】
前記密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれは、
幾何学的粒径分布(PSD)d50が、30μm以下であり、
幾何学的粒径分布(PSD)d90が、60μm以下であり、
任意選択で、体積平均径D[4,3]が、40μm以下である、乾燥微粉末の形態である治療用量を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項6】
密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれが、2~100mgの総粉末重量含有量を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項7】
密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれが、0.1~90mgの前記抗腫瘍剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項8】
密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれが、0.1~99.9mgの前記脂質マトリックスを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項9】
密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末それぞれが、0.01~5mgのPEG修飾賦形剤を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項10】
多剤併用療法に使用される、請求項1~9のいずれか1項に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項11】
前記多剤併用療法が、静脈内注射もしくは経口化学療法、免疫療法、標的療法、ホルモン療法、腫瘍切除手術、腫瘍を有する器官の一部または全部を除去するための切除手術、治癒手術、放射線療法およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つの療法と、追加療法としての少なくとも1つの吸入による化学療法とを含む、請求項10に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項12】
前記療法が、一連のサイクルの間に投与されるように提供される、静脈内注射または経口化学療法または免疫療法を少なくとも含み、サイクルそれぞれが投与期間および休薬期間を含み、前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に投与されるように提供される、請求項11に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項13】
前記投与期間が、1日未満にわたる期間であり、
前記休薬期間が2~5週間にわたる期間である、請求項12に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項14】
前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも1つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、任意選択で、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に均等に分散させた態様で投与されるように提供される、請求項11~13のいずれか1項に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項15】
前記多剤併用療法が、腫瘍切除手術、腫瘍を有する器官の一部もしくは全部を除去する切除手術、治癒手術、または放射線療法とそれに続く回復期間を少なくとも含み、前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法の前、前記療法の間、または前記療法の後の期間に投与されるように提供される、請求項10または14に記載の吸入化学療法用キット。
【請求項16】
前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法前、療法の間、または療法の後の期間中に、毎週少なくとも1つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、任意選択で、前記療法前、前記療法の間、または前記療法の後の期間中に、均等に分散させた態様で投与されるように提供される、請求項15に記載の吸入化学療法用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入化学療法用キット、多剤併用療法(polytherapy)および肺癌に対する治療的処置における当該吸入化学療法用キットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肺癌は世界で最も有病率と死亡率が高い癌である。ほとんどの場合、肺癌は進行期で診断される。そのため、患者は、肺または他の臓器にすでに転移、すなわち肺外転移を提示されることが多い。処置で使用される療法はほとんどが併用療法であり、手術、放射線療法、化学療法、標的療法および免疫療法からなる。
【0003】
化学療法は、主に進行期の肺癌患者の60%までに用いられる。化学療法は現在、静脈内注射または経口、すなわち全身投与経路、すなわち全身化学療法によって投与される。化学療法は(i)化学療法薬が生体内に広く分布すること、および(ii)癌細胞に対する選択性の欠如により、重度の全身毒性の原因となる。結果的に、腫瘍医は、より効率的でより許容性の高い新しい治療アプローチを非常に必要としている。
【0004】
化学療法は実際に、最大レベルで非可逆的な毒性副作用および化学療法によって生じる不快な副作用を減少させることによって、投与されるべき最高量の抗腫瘍剤を見出すことが課題である。
【0005】
したがって、非常に複雑な治療スキームは、非常に頻繁に異なる治療様式および行動(例えば、手術)を、放射線療法の第1のサイクルと組み合わせることが予測される。続いて、抗腫瘍剤の注射または静脈内注射の複雑なサイクルを組み合わせることが予測される。これは、各サイクルについて同じであっても異なっていてもよく、そして当該治療スキームへの反応および患者の身体上で特定される副作用に応じて適応される。
【0006】
各抗腫瘍剤または抗腫瘍分子それぞれは、腎毒性、神経毒性、・・・等の用量制限毒性(DLT)を有する。これらは、治療スキームの休止期間に導入する必要があり、可逆的でないとき、患者の身体が有害な副作用から回復することを可能にする。
【0007】
さらに、抗腫瘍剤は、薬剤の作用期間を直接決定する半減期を有する。半減期は、体内の薬剤の濃度または量が半分に減少するのに必要な期間である。抗腫瘍剤の半減期は典型的には12時間~36時間の間に含まれる。抗腫瘍剤の有益な作用に対するヒトの身体の暴露時間を表すものとして半減期を短くすることができる。
【0008】
しかしながら、抗腫瘍剤のDLTのために、いくつかの投与期間(すなわち、サイクル)の間の投与量は制限されたままであり、前述の通り、休薬期間によって互いに分離されるべきである(例えば、US2007/0065522の段落0010を参照されたい)。
【0009】
半減期と用量制限毒性との組み合わせは、抗腫瘍剤が注射または静脈内注射によって投与されるときに、固形腫瘍部位に効率的に到達する抗腫瘍剤の濃度が低く、腫瘍自体に対する効果が限定され、患者の身体に対する全身毒性が高いという事実と相まっている。
【0010】
抗腫瘍剤のさらに別の制約は、身体の同じ部分または全身への抗腫瘍剤の繰り返しの暴露から生じる総用量である累積投与量である。
【0011】
シスプラチンの場合、静脈内経路で投与した場合、4~6サイクル内の累積投与量は300mg/m(人体のm)である。
【0012】
これらの考察により、研究者らはより多くの標的療法および現場での注射/注入法を開発することができた。
【0013】
アプローチの1つは肺経路の手段によって、すなわち吸入によって化学療法を送達することである(例えば、US2007/0065522を参照されたい)。吸入により、生体内への事前の分布がなく、高用量の薬剤を肺腫瘍に直接投与することができる。その結果、重度の全身毒性が軽減される。
【0014】
しかしながら、肺経路に関連する局所的な有害作用が、候補薬剤、その製剤および関連する吸入装置に依存して起こり得る。さらに、(前臨床評価および臨床評価の両方における利益/リスク比の劇的な改善の欠如に加えて、環境汚染を制限するための特定の病院施設および吸入手順による)高財政コストによって、肺腫瘍治療において肺経路の活用は不十分であった。
【0015】
肺経路を介して送達される化学療法は、将来への強力な見通しを提供する可能性がある。一方で、前臨床評価および臨床評価の両方において利益/リスク比を改善することができる候補、さらに、化学療法の利益が生活の質の改善とともに有害作用を上回る候補を提供する必要がある。
【0016】
吸入療法は異なる種類のものであり、気道に有効物質を送達する別個の様式として、ネブライザーと吸入器とを区別することができる。吸入器はまた、異なるタイプのものであってもよく、乾燥粉末吸入器(DPI)がその1つである。
【0017】
ネブライザーと比較して、乾燥粉末吸入器(DPI)は、化学療法によく適合している。DPIは高用量の有効物質に加え、水溶性の低い化合物(すなわち、癌におけるほとんどの化学療法剤)を肺に直接投与することを可能にする。さらに、DPIは(i)患者の吸気流のみによって作動および駆動し、(ii)呼気薬剤用量が無視できるため、エアロゾルによる環境汚染を制限する。最後に、DPIは、使い捨て装置として設計することができる。
【0018】
しかしながら、従来の即時放出型DPI製剤は、それにもかかわらず、肺内での滞留が短過ぎ、かつ、局所耐性が乏しい。これらは、薬剤粒子の迅速な溶解、および肺沈着後の肺液中の抗癌剤の高いピーク濃度に起因する可能性がある。
【0019】
したがって、化学療法のための肺経路を開発し、腫瘍を有する肺に有効な抗癌療法を送達するために、臨床試験で使用される現在の吸入装置および製剤に十分に適応させる必要がある。
【0020】
薬剤が高ロード量であり、高微粒子画分である、制御放出型のシスプラチンベースのDPI製剤が開発された(Levetら、Int J Pharm 2016)。その製剤は制御放出型であり、肺における保持能力が延び、低全身分布をもたらした(Levetら、Int J Pharm 2017)。本文献によれば、肺癌マウスモデルにおいて、このアプローチは半分の用量[用量(それぞれ1.0mg/kg対0.5mg/kg)]で静脈内投与法と同等のインビボ腫瘍縮小効果(tumor response)をもたらした。シスプラチン吸入は原発性肺腫瘍に対してより有効であると思われたが、静脈内投与法は肺外転移に対して良好な結果をもたらした。
【0021】
肺における滞留時間が増加し、全身分布が制限され、葉酸受容体(FR)を標的とすることによって特に肺癌細胞をターゲットとした、パクリタキセルベースのナノ担体から構成されるDPI製剤も開発された(Rosiereら、Int J Pharm 2016;Rosiereら、Mol Pharm, 2018)。FR(特にFR-α)は多くの肺腫瘍(すなわち腺癌の70%超)において癌細胞表面に過剰発現しており、肺癌において標的とする有望な膜受容体である。肺癌マウスモデルにおいて、タキソール(登録商標、市販のパクリタキセル)の静脈内投与と併用したFR標的吸入処置において、タキソール(登録商標)の静脈内投与の単独処置よりも生存率が有意に長かったことが観察された。
【0022】
要約すると、DPI化学療法の使用により、薬剤動態プロファイルおよび安全性の点で有望な前臨床結果が得られるようになったが、効能はまだかなり限定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、吸入化学療法用キット(例えば、多剤併用療法に使用される)を提供することによって、これらの欠点の少なくとも一部の解決をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のキットは、
a)脂質マトリックスを有する、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、またはネダプラチン等の白金薬剤の群から選択される少なくとも1つの抗腫瘍剤を含み、PEG修飾賦形剤等の1つ以上の賦形剤および/または担体を任意に含む、一連の密封包装された単回治療用量の吸入用乾燥粉末と、
b)一連の使い捨て乾燥粉末吸入装置と、を含み、
i)密封包装された単回治療用量それぞれは、閉鎖状態および開放状態を有し、
ii)使い捨て乾燥粉末吸入装置それぞれは、閉鎖位置および任意で開放位置を有し、
iii)密封包装された単回治療用量それぞれは、前記一連の使い捨て乾燥粉末吸入装置のうちの1つの使い捨て乾燥粉末吸入装置に閉鎖状態で収容されるように提供され、
iv)使い捨て乾燥粉末吸入装置それぞれは、密封包装された単回治療用量それぞれが前記開放状態になる前またはひとたび前記開放状態になると、前記閉鎖位置に存在するように設けられている、吸入化学療法用キットである。
【0025】
「1つ以上の賦形剤」という用語は、糖アルコール;ポリオール(ソルビトール、マンニトールおよびキシリトール等);単糖(グルコース、アラビノース等)および二糖(ラクトース、マルトース、サッカロース、トレハロース、マルチトール等)を含む結晶性糖;無機塩(塩化ナトリウム、炭酸カルシウム等);有機塩(乳酸ナトリウム、リン酸カリウムまたはリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、尿素等);多糖(デキストラン、キトサン、デンプン、ヒアルロン酸、およびそれらの誘導体等);オリゴ糖(シクロデキストリンおよびデキストリン等);二酸化チタン;二酸化ケイ素;ステアリン酸マグネシウム;レシチン;アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、トレオニン、リジン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン等);アミノ酸の誘導体(アセスルファムK、アスパルテーム等);ラウリン酸またはその誘導体(エステルおよび塩等);パルミチン酸またはその誘導体(エステルおよび塩等);ステアリン酸またはその誘導体(エステルおよび塩等);エルカ酸またはその誘導体(エステルおよび塩等);ベヘン酸またはその誘導体(エステルおよび塩等);ステアリルフマル酸ナトリウム;ステアリル乳酸ナトリウム;ホスファチジルコリン;ホスファチジルグリセロール;天然の肺サーファクタントおよび合成の肺サーファクタント;ラウリン酸およびその塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等);トリグリセリド;糖エステル;リン脂質;コレステロール;タルク;から選択される化合物を意味する。
【0026】
特定の好ましい実施形態において、賦形剤は、マンニトール、デキストラン、またはラクトースである。
【0027】
特定の好ましい実施形態において、賦形剤は、リン脂質またはコレステロールである。
【0028】
特定の好ましい実施形態において、賦形剤は、マンニトール、デキストラン、ヒアルロン酸、ラクトース、リン脂質、またはコレステロールである。
【0029】
特定の好ましい実施形態において、賦形剤は、マンニトール、デキストラン、リン脂質、またはコレステロールである。
【0030】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つの賦形剤は担体である。
【0031】
用語「密封包装された単回用量(single hermetically packaged dose)」は、本発明の意味の範囲内で、吸入用乾燥粉末の形態である新生物剤が密封包装された単回用量が、カプセル(例えば、HPMCまたはゼラチンカプセル)中に充填されている、ブリスター(例えば、アルミニウム-アルミニウムブリスター)中に密封されている、または、ブリスター中に直接充填されていることを意味する。密封包装された単回用量は、密封された用量であり、すなわち、密封包装された単回用量である。吸入用乾燥粉末の形態である新生物剤が密封包装された単回用量がカプセル中に充填されているとき、密封包装された単回用量の閉鎖状態は、カプセルおよびブリスターが閉じられている、または、カプセルが閉じられブリスターが開かれていることを意味している。吸入目的でカプセルが開かれているとき(すなわち、例えば、オリフィスが穿孔されているとき)、密封包装された単回用量が開放状態である。
【0032】
本発明の意味の範囲内で、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の1つは使用後(すなわち、密封包装された単回用量が開放状態になった後;例えば、患者による単回用量の投与後(好ましくは、看護師または医療スタッフによって支援される))に密封される、カプセルベースまたはブリスターベースの装置である。
【0033】
装置は、再開放を回避すること、薬剤の出口を覆うこと、一方向弁を通るいずれの空気の出口を遮断すること、または、使用後に密封袋に単に導入することによって、密封することができる。
【0034】
前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の1つは、使用中の汚染を制限するための特定の使用手順を有し、適切な手順を使用して廃棄物として排除されるために、使用後に密封包装される(例えば、密封袋に入れる)。
【0035】
好ましくは、本発明の使い捨て乾燥粉末装置は、閉鎖位置において密封包装され(例えば、密封袋に入れ)、前記閉鎖状態においてブリスター中に単回薬剤用量が既に含まれる、使い捨て単回用量ブリスターベースの装置である。(例えば、ブリスターを穿孔または開放することによって)使用直前に密封包装された単回用量が開放状態に達し、前述の通り、装置が排除される前に、ブリスター内に含まれる用量を患者は吸入することができる。使用前および/または使用後に装置を包装することができる密封袋は、同じであっても異なっていてもよい。
【0036】
本発明の別の好ましい変形例において、単回用量を含有するブリスターの形態下での密封包装された単回用量および使い捨てドライパワー(dry power)ブリスターベースの装置が両方とも、別々にしっかりと(密封して)包装され、用量の投与の直前にブリスターが装置に挿入される。
【0037】
本発明のさらなる好ましい変形例において、好ましくは、本発明の使い捨て乾燥粉末装置は、閉鎖位置において密閉包装され(すなわち、密封袋内に収容され)、前記閉鎖状態ではカプセル内に充填された単回薬剤用量が既に収容されている、使い捨て単回用量カプセルベースの装置である。密封包装された単回用量はその使用の直前に開放状態に到達し(例えば、カプセルを穿孔または開放することによって)、そのため、前に説明したように、装置が排除される前に、カプセル内に含まれる用量を患者は吸入することができる。使用前および/または使用後に装置を包装し得る密封袋は、同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
本発明のさらに別の好ましい変形例において、単回用量を含有するカプセルの形態下での密封包装された単回用量および使い捨ておよび密封されたドライパワーカプセルベースの装置が両方とも、別々にしっかりと(密封して)包装され、用量の投与の直前にカプセルが装置に挿入される。
【0039】
本発明によれば、密封包装された単回用量が閉鎖状態であるとき、カプセルベースの装置は部分的に開放位置/閉鎖位置にあることができる。しかしながら、カプセルの挿入後に患者/看護師によってカプセルベースの装置が閉鎖されると、装置は確実に閉鎖され(すなわち、装置の再開放は不可能である)、カプセルは開かれ、開放状態で密封包装された単回用量を有する。したがって、前に説明したように、カプセルベースの装置と共に排除される前に、カプセル内に含まれる用量を患者は吸入することができる。
【0040】
これは、使用中の患者、看護師、および環境への抗癌剤による汚染(すなわち、穿孔/開封されたカプセルを除去するための装置の再開放、微粉末を含む同じ装置の数回の再使用、等)を制限することを再び可能にする。
【0041】
本発明のさらに別の代替形態において、密封包装された単回用量(すなわち、前記閉鎖状態にある単回治療用量を含むカプセル)、およびカプセルベースの使い捨て乾燥粉末吸入装置は、別々にしっかりと(密封)包装される。用量の投与の直前にカプセルが装置に挿入される。装置はカプセルの充填を可能にするために、患者/看護師によって開かれ得る。カプセルが閉鎖状態において装置カプセル装填チャンバ内に適切に配置されると、カプセルベースの装置が閉鎖され、カプセルの開放が装置の最終的な閉鎖を引き起こす。再び説明すると、装置は使い捨てであるべきであり、1回使用した後(好ましくは、廃棄物として排除されるために、特定の密封袋において装置上のキャップ(キャップ密封位置)を設定した後)に包装されるべきである。
【0042】
本発明で使用される、使い捨て装置および密封包装された単回用量の種類がどのようなものであっても、装置を(例えば、カプセルまたはブリスターを穿孔/開封することによって)作動させる場合、装置に含まれる全用量の吸入を確実にするために、患者による吸入手順は、1回、または連続して1回もしくは2回繰り返され得る。
【0043】
本発明において、少なくとも1つの抗腫瘍剤の一連の密封包装された単回治療用量と、一連の使い捨て乾燥粉末吸入装置とを含む吸入化学療法用キットを提供することによって、周囲の大気中の細胞毒性剤の環境汚染に関して、完全に保護された化学療法の処置を可能にする。それによって、患者の快適さを劇的に増加させ、外来治療および/または在宅治療のための多くの可能性を提供する。
【0044】
本発明によれば、少なくとも1つの抗腫瘍剤の一連の密封包装された単回治療用量と、一連の使い捨て乾燥粉末吸入装置とを含むキットにおいて、少なくとも1つの抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量のそれぞれは、新しく清潔な使い捨て乾燥粉末吸入装置において使用される。したがって、新しい使い捨て乾燥粉末吸入装置が少なくとも1つの抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量のそれぞれに対して使用されるので、周囲環境における細胞毒性物質の漏出が防止されることが確実に予見される。このことは、使用後、使い捨て乾燥粉末吸入装置がその使用後、適切かつ即座に廃棄され、次いで、焼却される細胞毒性廃棄物の容器内に隔離されることを意味する。また、次の使用のために、使い捨て乾燥粉末吸入装置において少なくとも1つの抗腫瘍剤の新しい密封包装された単回治療用量が操作によって導入されることが予見されなければならないとき、使い捨て乾燥粉末吸入装置は決して細胞毒性薬剤と接しておらず、操作は周囲の大気の汚染を決して引き起こさないことを意味する。このことは、乾燥粉末吸入器の操作中に大気において細胞毒性の抗腫瘍剤を有する危険性が劇的に減少するので、患者が自宅で治療を受けることを可能にする。
【0045】
本発明によれば、このことは、病院環境での長期滞在および/または反復滞在が患者の回復能力に悪影響を及ぼしていることが認識されているので、肺癌に罹患している患者を劇的に助けると考えられる。
【0046】
周囲の大気中に細胞毒性物質の分散が起こらないことを確実にするために、使い捨て乾燥粉末吸入装置は開放位置および閉鎖位置を有し、密封包装された単回治療用量それぞれは閉鎖状態および開放状態を有する。
【0047】
本発明の吸入化学療法用キットにおいて、密封包装された単回治療用量それぞれは、前記一連の使い捨て乾燥粉末吸入装置において閉鎖状態で収容されるように提供される。また、密封包装された単回治療用量それぞれはまた、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の1つが閉鎖位置にあるときは、開放状態になるように提供される。
【0048】
このことは、使い捨て乾燥粉末吸入装置に完全に収容されず、周囲環境から隔離されていない場合に、少なくとも1つの抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量が開放されないことを確実にすることができる。
【0049】
好ましくは、本発明のキットにおいて、前記密封包装された単回治療用量は、カプセルまたはブリスターである。
【0050】
本発明のキットの好ましい実施形態において、脂質マトリックスは、トリステアリン、水素化植物油(例えば、水素化ヒマシ油)、または、振盪フラスコ法を用いて測定したLogP値が5より高い、好ましくは14~25、より詳細には18~25、好ましくは約20である任意の疎水性グリセリド誘導体等のトリグリセリドの単一物または混合物のマトリックスである。
【0051】
本発明によれば、前記脂質マトリックスは、40℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは75℃以上の融点温度を有するトリグリセリドの単一物または混合物を含む。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態において、PEG修飾賦形剤は、ビタミンE、またはトコフェリルポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)もしくはジステアロイルホスホエタノールアミンポリエチレングリコール2000(DSPE-mPEG-2000)等のリン脂質に由来する。
【0053】
有利には、本発明の吸入化学療法用キットにおいて、使い捨て乾燥粉末吸入装置それぞれは、吸入チャネルと流体接続し、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の内部に前記密封包装された単回治療用量を収容する装填チャンバに接続された分散チャンバを備える。前記装填チャンバは、前記密封包装された単回治療用量を開放するために設けられた、作動位置と休止位置とを有する作動手段、および、前記作動手段が前記作動位置にひとたび移動すると、前記密封包装された単回治療用量の抜き取りを防止するために設けられたロック手段を備える。
【0054】
本発明の変形例において、使い捨て乾燥粉末吸入装置それぞれは、吸入チャネルと流体接続し、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の内部に前記密封包装された単回治療用量を収容する装填チャンバに接続された分散チャンバを備える。前記装填チャンバは、前記密封包装された単回治療用量を開放するために設けられた、作動位置と休止位置とを有する作動手段、および、前記作動手段が前記作動位置にひとたび移動すると、前記密封包装された単回治療用量の抜き取りを防止するために設けられた、開放位置とロック位置とを有するロック手段を備える。前記ロック手段が前記ロック位置に存在するときにのみ、前記作動手段は前記作動位置に移動することができるように設けられている。
【0055】
本発明の別の変形例において、使い捨て乾燥粉末吸入装置それぞれは、吸入チャネルと流体接続し、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の内部に前記密封包装された単回治療用量を収容する装填チャンバに接続された分散チャンバを備える。前記装填チャンバは、前記密封包装された単回治療用量を開放するために設けられた、作動位置と休止位置とを有する作動手段を備える。前記使い捨て乾燥粉末吸入装置は、特に前記吸入チャネルを閉鎖することによって、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の内部から外部環境を隔離するために設けられた閉鎖手段を備える。
【0056】
さらに別の好ましい実施形態において、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置は、使用できる状態であり、吸入チャネルと流体接続し、前記使い捨て乾燥粉末吸入装置の内部に前記密封包装された単回治療用量を含む装填チャンバに接続された分散チャンバを備える。
【0057】
本発明の特定の実施形態において、前記密封包装された単回治療用量は、幾何学的粒径分布(PSD)d50が、30μm以下、好ましくは15μm未満、好ましくは10μm以下、好ましくは5μm以下であり、幾何学的粒径分布(PSD)d90が、60μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下であり、任意選択で、体積平均径D[4,3]が、40μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは6μm以下である、乾燥微粉末の形態である治療用量を含む。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、密封包装された単回治療用量それぞれは、2~100mg、好ましくは3~80mg、より好ましくは4~60mg、特に5~50mg、例えば6~20mgまたは7~15mg、例えば約10mgの総粉末重量含有量を含む。
【0059】
例えば、抗腫瘍剤がシスプラチンである場合、密封包装された単回治療用量は、2~40mg、好ましくは3~30mg、より好ましくは4~20mg、特に5~15mg、例えば6~10mgの総粉末重量含有量を含む。
【0060】
例えば、抗腫瘍剤がカルボプラチンである場合、密封包装された単回治療用量は、10~100mg、好ましくは15~80mg、より好ましくは20~60mg、特に30~50mgの総粉末重量含有量を含む。
【0061】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、密封包装された単回治療用量それぞれは、0.1~90mg、好ましくは1~40mgの前記抗腫瘍剤を含む。
【0062】
例えば、典型的な密封包装された単回治療用量は、0.5~35mg、好ましくは1~30mg、特に2~25mgの前記抗腫瘍剤を含み、例えば、3~15mgの前記抗腫瘍剤を含むことが好ましく、5~10mgの前記抗腫瘍剤を含むことが好ましい。
【0063】
例えば、前記抗腫瘍剤がシスプラチンである場合、典型的な密封包装された単回治療用量は、0.5~20mg、好ましくは1~15mg、より好ましくは2~10mg、特に3~5mgを含む。
【0064】
前記抗腫瘍剤がカルボプラチンである場合、典型的な単回密封包装治療用量は、2.5~80mg、好ましくは5~60mg、より好ましくは10~50mg、特に15~25mgを含む。
【0065】
さらに、典型的な単回密封包装治療用量は抗腫瘍剤の混合物を含んでいてもよく、混合物それぞれが0.5~50mgの量で含まれていてもよい。
【0066】
本発明によれば、密封包装された単回治療用量それぞれは、0.1~99.9mg、好ましくは1~49mgの前記脂質マトリックスを含む。
【0067】
本発明によれば、好ましくは、密封包装された単回治療用量において、前記抗腫瘍剤と前記脂質マトリックスとの重量比(抗腫瘍剤:脂質マトリックス:)が10/90~90/10、好ましくは25/75~75/25、より好ましくは30/70~70/30、特に40/60~60/40、例えば50/50前後で示される。
【0068】
有利には、本発明において、密封包装された単回治療用量それぞれは、0.01~5mg、好ましくは0.03mg~1mgのPEG修飾賦形剤を含む。
【0069】
本発明の吸入化学療法用キットの他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0070】
本発明は、また、多剤併用治療(polytherapy)における吸入化学療法用のキットの使用に関するものである。
【0071】
有利には、前記多剤併用療法が、全身化学療法(静脈内注射および経口化学療法を含む)、ホルモン療法、標的療法、免疫療法、腫瘍切除手術、腫瘍を有する器官の一部または全部を除去するための切除手術、治癒手術、放射線療法およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つの療法と、追加療法としての少なくとも吸入による1つの化学療法とを含む。
【0072】
静脈内注射化学療法は、2種類以上の抗腫瘍剤(例えば、白金ダブレット)によって構成し得る。
【0073】
シスプラチンの累積投与量は、吸入化学療法で安全に増加し得る。現在のIV累積投与量は4~6サイクル以内で300mg/mである。
【0074】
好ましくは、本発明のキットの使用において、前記療法は、一連のサイクルの間に投与されるように提供される、静脈内注射もしくは経口化学療法、ホルモン療法、標的療法、または、免疫療法を少なくとも含む。サイクルそれぞれは、投与期間および休薬期間を含む。前記少なくとも1つの吸入による化学療法は、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に投与されるように提供される。
【0075】
好ましくは、本発明のキットの使用において、前記療法は、一連のサイクルの間に投与されるように提供される、静脈内注射もしくは経口化学療法、または、免疫療法を少なくとも含む。サイクルそれぞれは、投与期間および休薬期間を含む。前記少なくとも1つの吸入による化学療法は、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に投与されるように提供される。
【0076】
本発明の意味の範囲内で、前記療法は一般に、経口または非経口で投与され得る。さらに、吸入による前記少なくとも1つの化学療法は、連続的に、または混合物等と一緒に投与され得る、一連の吸入による化学療法を含み得る。連続的とは、1つの化学療法が同じまたは別の投与計画に従って、別の化学療法直後またはそれ以降に投与され得ることを意味する。
【0077】
本発明によれば、前記投与期間は、1日未満、好ましくは15分~6時間、好ましくは30分~4時間、例えば1~3時間にわたる期間であり、前記休薬期間が1~5週間、好ましくは2~4週間、より好ましくは2,5~3,5週間、特に約3週間±2日にわたる期間であることが好ましい。
【0078】
本発明によれば、前記少なくとも1つの吸入による化学療法は、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも1つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、好ましくは、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも3つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、より好ましくは、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも5つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、場合によっては、一日の用量として、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも7つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、任意選択で、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に均等に分散させた態様で投与されるように提供されることが好ましい。
【0079】
本発明によれば、同じ投与事象中に、同じ抗腫瘍剤または異なる抗腫瘍剤を用いて、腫瘍剤の密封包装された単回治療用量を毎週少なくとも1つの割合で投与されるように提供されることが好ましい。1回の投与事象に対して、2つ以上の密封包装された単回治療用量(同じ抗腫瘍剤または異なる抗腫瘍剤を用いて)が投与されるとき、各抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量は連続的に(一緒に)投与してもよく、または、所定の期間(例えば、2時間毎に1つの密封包装された単回用量、1回の投与事象を形成する3つの密封包装された単回用量、等)の間隔を置いて投与してもよい。
【0080】
本発明によれば、前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも1つの投与事象の割合で、好ましくは、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも3つの投与事象の割合で、より好ましくは、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも5つの投与事象の割合で、場合によっては、一日の用量として、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも7つの投与事象の割合で、任意選択で、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に均等に分散させた態様で投与されるように提供されることが予見される。
【0081】
前記休薬期間が1週間である場合、吸入による化学療法は、抗腫瘍剤の1、2、3、4、5または7つの密封包装された単回治療用量の割合で投与してもよい。好ましくは、吸入による化学療法は、前記1週間の休薬期間までに、2~5、または3~5つの割合で、抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量を投与してもよい。
【0082】
前記療法前の期間が1週間である場合、吸入による化学療法は、抗腫瘍剤の1、2、3、4、5または7つの密封包装された単回治療用量の割合で投与してもよい。好ましくは、吸入による化学療法は、前記1週間の療法の前の期間までに、2~5つ、または3~5つの割合で、抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量を投与してもよい。
【0083】
前記休薬期間が3週間である場合、少なくとも1つの吸入による化学療法は、毎日、1つの抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量の割合で投与してもよい。これは、約3週間の休薬期間の間、15~21用量の抗腫瘍剤を意味する。任意選択的に、少なくとも1つの吸入による化学療法は、2日に1回、1つの抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量の割合で投与してもよい。これは、少なくとも1つの吸入による化学療法は、約3週間の休薬期間の間、9~12用量の抗腫瘍剤を意味する。または、少なくとも1つの吸入による化学療法は3日に1回、1つの抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量の割合で投与してもよい。これは、少なくとも1つの吸入による化学療法は、約3週間の休薬期間の間、6~9用量の抗腫瘍剤を意味する。
【0084】
前記療法前の期間が例えば2週間である場合、前記少なくとも1つの吸入による化学療法は、毎週、抗腫瘍剤の1、2、3、4、5または7つの密封包装された単回治療用量の割合で投与してもよい。好ましくは、前記少なくとも1つの吸入による化学療法は、前記2週間の療法の前の期間までに、2~5つ、または3~5つの割合で、抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量を投与してもよい。
【0085】
典型的な化学療法スキームは例えば、療法前の連続した2週間、一連の1回の投与サイクルに続いて、3週間の休薬期間としてもよい。この場合、少なくとも1つの吸入による化学療法は、療法前の2週間の間に、頻繁に(例えば、毎日または2日毎に1回の抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量)投与してもよい。また、療法投与日には投与せず、休薬期間中(例えば、療法直後、療法後数時間、2日または3日後)に再び投与し、次いで休薬期間の残りの時間にわたって、抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量を毎日1回の割合で再び投与してもよい。
【0086】
同様に、前記休薬期間が4週間である場合、少なくとも1つの吸入による化学療法は、毎日、1つの抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量の割合で投与してもよい。これは、約4週間の休薬期間の間、20~28用量の抗腫瘍剤を意味する。任意選択的に、少なくとも1つの吸入による化学療法は2日に1回、1つの抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量の割合で投与してもよい。これは、少なくとも1つの吸入による化学療法は、約4週間の休薬期間の間、12~16用量の抗腫瘍剤を意味する。または、少なくとも1つの吸入による化学療法は3日に1回、1つの抗腫瘍剤の密封包装された単回治療用量の割合で投与してもよい。これは、少なくとも1つの吸入による化学療法は、約4週間の休薬期間の間、8~12用量の抗腫瘍剤を意味する。
【0087】
本発明によれば、吸入化学療法用キットおよび当該吸入化学療法用キットの使用の特定の一態様において、前記多剤併用療法が、腫瘍切除手術、腫瘍を有する器官の一部または全部を除去する切除手術、治癒手術、または放射線療法とそれに続く回復期間を少なくとも含み、前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法の前、前記療法の間、または前記療法の後の期間に投与されるように提供され、当該期間中典型的には、無経口(no orally)または非経口で化学療法が投与される。
【0088】
有利には、本発明の吸入化学療法用キットおよび当該吸入化学療法用キットの使用において、前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法前、療法の間、または療法の後の期間中に、毎週少なくとも1つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、好ましくは、前記療法前、前記療法の間、または前記療法の後の期間中に、毎週少なくとも3つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、より好ましくは、前記療法前、療法の間、または療法の後の期間中に、毎週少なくとも5つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、場合によっては、一日用量として、前記療法前、前記療法の間、または前記療法の後の期間中に、毎週少なくとも7つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、任意選択で、前記療法前、前記療法の間、または前記療法の後の期間中に、均等に分散させた態様で投与されるように提供される。
【0089】
本発明による使用の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0090】
本発明はさらに、静脈内注射または経口化学療法、ホルモン療法、標的療法、免疫療法、腫瘍切除手術、腫瘍を有する器官の一部または全部を除去するための切除手術、治癒手術、放射線療法およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの吸入化学療法を投与する工程を含む、肺癌に対する治療的処置であって、前記少なくとも1つの吸入化学療法が追加療法である治療的処置に関する。
【0091】
有利には、本発明の治療的処置において、一連のサイクルの間に投与されるように提供される、静脈内注射もしくは経口化学療法、免疫療法、標的療法、またはホルモン療法を少なくとも含み、サイクルそれぞれが投与期間および休薬期間を含み、前記吸入による化学療法が、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に投与されるように提供される。
【0092】
有利には、本発明の治療的処置において、前記療法が、一連のサイクルの間に投与されるように提供される、静脈内注射または経口化学療法または免疫療法を少なくとも含み、サイクルそれぞれが投与期間および休薬期間を含み、前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に投与されるように提供される。
【0093】
好ましくは、本発明の治療的処置において、前記投与期間が、1日未満、好ましくは15分~6時間、好ましくは30分~4時間、例えば1~3時間にわたる期間であり、前記休薬期間が2~5週間、好ましくは2~4週間、より好ましくは2,5~3,5週間、特に約3週間±2日にわたる期間である。
【0094】
より詳細には、本発明において、前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも1つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、好ましくは、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも3つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、より好ましくは、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも5つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、場合によっては、一日用量として、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に、毎週少なくとも7つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、任意選択で、前記療法前の期間および/または前記休薬期間中に均等に分散させた態様で投与されるように提供される。
【0095】
本発明の変形例において、前記多剤併用療法が、腫瘍切除手術、腫瘍を有する器官の一部または全部を除去する切除手術、治癒手術、または放射線療法とそれに続く回復期間を少なくとも含み、前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、前記療法の前、前記療法の間、または前記療法の後の期間に投与されるように提供される。
【0096】
本変形例において、本発明によれば、前記少なくとも1つの吸入による化学療法が、毎週少なくとも1つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、好ましくは、週少なくとも3つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、より好ましくは、毎週少なくとも5つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、場合によっては、一日用量として、毎週少なくとも7つの密封包装された単回治療用量の抗腫瘍剤の割合で、任意選択で、前記療法前、前記療法の間、または前記療法の後の期間中に、均等に分散させた態様で投与されるように提供される。
【0097】
特に、本発明によれば、前記肺癌は、例えば肺転移等の任意の肺腫瘍である。例えば、肺癌の例として、骨肉腫転移、小細胞肺癌または非小細胞肺癌が挙げられる。
【0098】
本発明の治療的処置の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0099】
本発明の他の特徴および利点は、以下の非限定的な説明、および図面と実施例を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】実施例3の未処置の対照群と比較した、2つのシスプラチン処置群についての腫瘍増殖を示す。データは、移植後3日目に対する生物発光シグナルの平均比±SEMとして示す。
図2】実施例3の未処置の対照群と比較した、2つのシスプラチン処置群の生存率(p<0.05、ログランク検定)を示す。
図3】実施例3のシスプラチンDPIと比較したシスプラチンIVの胸部および肺における腫瘍増殖を示す。データは、平均生物発光シグナル±SEMとして示す。
図4】実施例4の未処置の対照群と比較した、2つのシスプラチン処置群についての腫瘍増殖を示す。データは、移植後3日目に対する生物発光シグナルの平均比±SEMとして示す。
図5】実施例4の未処置の対照群と比較した、2つのシスプラチン処置群の生存率(p<0.05、ログランク検定)を示す。
図6】実施例5の腫瘍増殖の生物発光アッセイの結果を示す。
図7】実施例5の群についての生存率(p<0.05、ログランク検定)を示す。
図8】実施例6の腫瘍増殖の生物発光アッセイの結果を示す。
図9】38日目に生き残った2匹のマウス、抗PD1単剤療法群の1匹のマウス、および実施例6の併用群の1匹について、7日目および38日目の生物発光で得られた写真を示す。
図10】実施例9の腫瘍増殖の生物発光アッセイの結果を示す。
図11】実施例9の群についての生存率(p<0.05、ログランク検定)を示す。
図12】実施例10の汚染の原因となるシスプラチン粉末画分を示す。
【0101】
図面において、同じ参照番号は、同じまたは類似の要素に割り当てられている。
【実施例
【0102】
〔実施例1〕シスプラチン乾燥粉末製剤No.1の調製
簡潔に言えば、塊状の粉末(Shanghai Jinhe Bio-technology Co., Ltd., Shanghai, PRC)からの未処理シスプラチン微粒子を、最初に、50mLのイソプロパノールに懸濁させ、5%w/vの懸濁液を得た。次に、高速(24,000rpmにおいて10分間)(X620モーターとT10の分散シャフト、Ingenieurburo CAT M. Zipperer GmbH, Staufen, Germany)および高圧での均質化(EmulsiFlex-C5高圧ホモジナイザー、Avestin Inc., Ottawa, Canada)(各10回のプレミリングサイクルにおいては、5,000psiの次に10,000psi;20回のミリングサイクルにおいては、20,000psi)によって、懸濁液のサイズ減縮を行った。熱交換器を均質化バルブに接続し、F32-MA冷却サーキュレータ(Julabo GmbH, Seelbach, Germany)を用いて-15℃に維持した。レーザー回折によってシスプラチン微粒子の粒径分布(PSD)を測定するために、プロセスの最後にアリコートを懸濁液から除去した(下記参照)。
【0103】
次に、加熱したイソプロパノールに可溶化させたトリステアリン(Tokyo Chemical Company, Tokyo, Japan)およびTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を微粒子懸濁液に添加して、最終濃度1.0%w/vのシスプラチンおよび1.0%w/vのトリステアリン/TPGS(99:1 w/w)混合物を得た。そして、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)で噴霧乾燥して、ヒト用のDPI製剤を得た。
【0104】
噴霧乾燥中に用いた操作パラメーターは、次の通りであった:供給速度3.0g/分、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、800L/分の圧縮空気および乾燥空気流35m/時間であった。装置はB-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0105】
塊状のシスプラチン、サイズ減縮処理したシスプラチン微粒子、およびシスプラチン乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁粒子および個々の粒子として測定した。これは、40Wの超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続されたMastersizer 3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して行った。塊状のシスプラチンおよびサイズ減縮処理したシスプラチン微粒子のアリコートの測定を、シスプラチン飽和イソプロパノール中で行った。シスプラチン乾燥粉末製剤を、0.1%w/v Poloxamer 407(BASF, Ludwigshafen, Germany)を含有するシスプラチン飽和NaCl0.9%水溶液中に予め分散させ、ボルテックスして測定した。PSDを、体積メジアン径d50(粒子の50%が示した直径である)および体積平均径D[4,3]として示した。結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
〔実施例2〕シスプラチン乾燥粉末製剤No.2の調製
シスプラチン(Umicore, Hanau-Wolfgang, Germany)を、最初に50mLのエタノールに懸濁させ、5%w/vの濃度の懸濁液を得た。次に、高速(24000rpmにおいて10分間)(X620モーターとT10分散シャフト、Ingenieurburo CAT M. Zipperer GmbH, Staufen, Germany)、およびEmulsiFlex-C3高圧ホモジナイザー(Avestin Inc., Ottawa, Canada)を用いた高圧での均質化(40サイクルにおいて20,000PSI)により、懸濁液のサイズ減縮を行った。これらのサイクルは、処理された懸濁液を試料タンク(閉ループ)に直接再循環させることによって行った。HPHはサンプル温度を増加させるので、すべての操作はサンプル温度を15±1℃に維持しながら、均質化バルブの前方に配置された熱交換器を使用して行った。
【0108】
プロセスの最後にアリコートを懸濁液から除去し、レーザー回折によってシスプラチン微粒子のPSDを測定した(下記参照)。
【0109】
次に、加熱したイソプロパノールに、可溶化した水素化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)およびTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を微粒子懸濁液に添加して、最終濃度2.0%w/vのシスプラチンおよび2.0%w/vの水素化ヒマシ油/TPGS(99:1 w/w)混合物を得た。そして、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)で噴霧乾燥して、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥中に用いた操作パラメーターは、次の通りであった:供給速度3.0g/分、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、800L/分の圧縮空気および乾燥空気流35m/時間。装置はB-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0110】
塊状のシスプラチン、サイズ減縮処理したシスプラチン微粒子、およびシスプラチン乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁粒子および個々の粒子として実施例1の記載のように測定し、表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
〔実施例3〕マウスモデル1へのシスプラチン投与:単剤療法としてのシスプラチン
動物試験はすべて、医学部(プロトコル424Nと585N)およびマイクロスコープ・分子イメージングセンター(プロトコルCMMI 2017 01)のULBの倫理委員会によって承認された。
【0113】
(肺癌マウスモデル)
同所性肺内移植手順は、以前に記載されたプロトコルの適合を使用して実施した(Wauthoz et al., Nanomedicine 2015)。簡潔に言えば、麻酔下で、6~7週齢のBALB/cマウスを、皮膚の切開および皮下筋肉の切開後に、140万個のM109-HiFR-LUC2細胞を含む、葉酸を含まないRPMI/Matrigel(登録商標)の50:50v/v混合物20μLを、肋間に注射することによって移植した。異なる組織切開部を3-0シルク(Ethicon(登録商標)、St-Stevens-Woluwe, Belgium)で縫合した。完全に回復するまでマウスを念入りに観察した。シスプラチンに対するM109モデルの治療反応を、インビボ光学イメージング(生物発光)および生存分析によって評価した。生物発光は、生きているM109-HiFR-LUC2腫瘍細胞の数に正比例する。生物発光は、PhotonImager RT(Biospace Lab, France)を使用して、従来の供給元のプロトコルを使用して、腫瘍細胞移植後19日目まで行った。マウスの体重を週3回測定し、実験開始時から体重減少が20%を超えた場合、または最後の測定時から体重減少が15%を超えた場合、またはマウスが呼吸困難になった場合に屠殺した。これらの場合において、マウスの死亡は、翌日に生じたものとして通知された。
【0114】
次の6~8匹のマウスの3群を比較した:(i)未処置の陰性対照、(ii)1週間サイクルでシスプラチン1.5mg/kgを静脈内注射(IV)したマウス(1週目と3週目に1サイクル1回投与、2週目は休薬)、(iii)1週間サイクルで、シスプラチン0.5mg/kgの用量の実施例1で調製したシスプラチンDPIで処置したマウス(1週目と3週目に1サイクル3回投与、2週目は1週間休薬)。マウスに適合させた気管内装置(乾燥粉末Insufflator(商標)モデルDP4-M(登録商標)、Penn-Century, Philadelphia, USA)を用い、Levetらの文献(Levet et al., Int J Pharm 2017)に記載されたプロトコルを使用した。腫瘍細胞移植後3日目から処置を行った。
【0115】
図1に示すように、シスプラチン処置した2つの群について、未処置の対照群と比較して腫瘍増殖の低下が認められたが、統計学的有意差は認められなかった(p>0.05、1元配置ANOVA)。データは、移植後3日目に対する生物発光シグナルの平均比±SEMとして示す。
【0116】
図2に示すように、シスプラチン処置した2つの群について、未処置の対照群と比較して有意な生存率の増加(p<0.05、ログランク検定)が認められた。シスプラチンDPIとシスプラチンIVとの間に有意差は認められない(p>0.05、ログランク検定)。
【0117】
同じ肺癌マウスモデルに対する、実施例1のシスプラチンDPIとシスプラチンIVとを評価する追加実験を実施した。
【0118】
腫瘍細胞移植後19日目にマウスを安楽死させ、エクスビボ生物発光分析を実施して、切除した肺における腫瘍(原発性肺腫瘍と考えられる)と胸腔における腫瘍(局所領域転移と考えられる)の局在を分析した。
【0119】
図3に示すように、シスプラチンDPIと比較して、シスプラチンIVでは胸部における腫瘍増殖の低下が認められたが、肺における腫瘍増殖は同程度であった。データは、平均生物発光シグナル±SEMとして示す。
【0120】
〔実施例4〕マウスモデルへのシスプラチンDPIとシスプラチン全身投与との併用処置
実施例3に記載されるプロトコルを、さらなる群を用いて実施した。6~10匹のマウスの3群を比較した:
(i)未処置の陰性対照、
(ii)1週間サイクルで、シスプラチン1.5mg/kgのIV注射を2サイクル行ったマウス(1週目と3週目に1サイクル1回投与、2週目は休薬)
(iii)1週間サイクルで、シスプラチン0.5mg/kgの用量の実施例1で調製したシスプラチンDPI、およびシスプラチン1.5mg/kgのIV注射を併用で処置したマウス(1週目と3週目に1サイクル3回投与、2週目は1週間休薬)。
【0121】
図4に示すように、シスプラチン処置した2つの群について、未処置の対照群と比較して腫瘍増殖の低下が認められた。この低下は併用(iii)では有意であったが(p<0.05、1元配置ANOVA)、シスプラチンIV(ii)では有意ではなかった(p>0.05、1元配置ANOVA)。データは、移植後3日目に対する生物発光シグナルの平均比±SEMとして示す。
【0122】
図5に示すように、シスプラチン処置した2つの群について、未処置の対照群と比較して有意な生存率の増加(p<0.05、ログランク検定)が認められた。シスプラチンIVと比較して、併用についての生存率の有意な増加(p<0.05、ログランク検定)も認められた。
【0123】
〔実施例5〕マウスモデルへの、シスプラチンDPIと、白金ダブレット(Ptダブレット)全身投与としての全身シスプラチンおよびパクリタキセルとの併用処置
本実施例の目的は、シスプラチン乾燥粉末吸入(CIS DPI)と従来の全身化学療法(すなわち、白金ベースのダブレット(Ptダブレット))との相加/相乗効果を実証することである。Ptダブレットは、一次処置、二次処置および後続処置として化学療法により現在処置されているステージIIIおよびIVの非小細胞肺癌(NSCLC)患者に広く使用されている。
【0124】
試験中、2つの主要パラメーターを慎重に追跡した:
-生物発光による経時的な腫瘍増殖(インビボ光学イメージング、生物発光シグナルは、インビボでの生きているM109腫瘍細胞の数に正比例する)。生物発光分析を、3日目(無作為化)から38日目まで週2回行った。
-カプランマイヤー生存曲線および生存期間の中央値(50%マウスが肺腫瘍および/または転移により死亡した期間に相当)を含む生存解析。
【0125】
実施例3に記載のプロトコルを再現した。ただし、生存率も決定した(19日目に安楽死がなく、エクスビボ生物発光分析がない)、下記のスキームを示す表3に従って6日目に処置を開始し、4~15匹のマウスの3群を比較した:
(i)生理食塩水を静脈内注射(IV)した未処置の陰性対照、
(ii)1週間サイクルで、1.5mg/kgのシスプラチンおよび10mg/kgのパクリタキセルから構成される白金ダブレットを2サイクル連続してIV注射したマウス(1サイクルあたり単回IV注射)、
(iii)1週間サイクルでシスプラチン0.5mg/kgの用量のCIS DPI(実施例2)と白金ダブレットを2サイクル連続して併用処置したマウス(1サイクルあたり3回のCIS DPI投与およびPtダブレットの単回IV注射)。
【0126】
【表3】
【0127】
気管内投与手順中に死亡したマウスは、分析では考慮しない-併用群の手順中に7/15が死亡した。
【0128】
図6に示すように、白金ダブレットへのCIS-DPIの追加は処置の間(18日目まで、これは最後に投与された用量に対応する)、腫瘍増殖のより良好な制御を可能にし、大多数の応答者(個々の曲線を参照のこと)を伴い、これは白金ダブレットよりも認められた。
<白金ダブレットに対する応答>
大部分のマウス(7/8、88%)は、白金ダブレットに応答した。しかし、21日目からの腫瘍の再増殖が観察されたように、この応答は一時的な応答であった。
腫瘍細胞の減少(一時的な生物発光値<100%-基準日である3日目の腫瘍サイズ(すなわち、治療前の腫瘍サイズ))は、4/8(50%)のマウスにおいて観察された。
<白金ダブレット+CIS-DPIに対する応答>
すべてのマウス(8/8、100%)が併用処置に応答し、6/8(75%)のマウスでは3日目の基準値と比較して腫瘍細胞の減少が認められた(値<100%)。
【0129】
図7および表4に示すように、白金ダブレットへのCIS-DPIの追加によって生存率が増加する傾向がみられ(p=0.10、ログランク検定)、生存期間の中央値は白金ダブレット(それぞれ31日対26日)と比較して20%増加した。
【0130】
【表4】
【0131】
〔実施例6〕シスプラチンDPIと全身免疫療法との併用
本実施例の目的は、単剤療法(すなわち、~30%のステージIVのNSCLC(PD-L1バイオマーカー発現>50%)における現在の標準治療であるiv化学療法と併用しない)としてCIS DPIと免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果を実証することである。
【0132】
試験中、2つの主要パラメーターを慎重に追跡した:
-生物発光による経時的な腫瘍増殖(インビボ光学イメージング、生物発光シグナルは、インビボでの生きているM109腫瘍細胞の数に正比例する)。生物発光分析を、3日目(無作為化)から38日目まで週2回行った。
-カプランマイヤー生存曲線および生存期間の中央値(50%マウスが肺腫瘍および/または転移により死亡した期間に相当)を含む生存解析。
【0133】
実施例3に記載のプロトコルを再現した。ただし、生存率も決定した(19日目に安楽死がなく、エクスビボ生物発光分析がない)、下記のスキームを示す表5に従って3日目に処置を開始し、8~16匹のマウスの3群を比較した:
(i)陰性対照、すなわち、生理食塩水iv注射+抗βGALラットIgG2a腹腔内(ip)注射(抗PD1のアイソタイプ対照、BioXCell, West Lebanon, NH, USA)+DPIビヒクル(すなわち、シスプラチンを含まない粉末、賦形剤のみ)、
(ii)下記のスキームに従って、1週間サイクルで抗PD1抗体(RMP1-14、BioXCell, West Lebanon, NH, USA)のip注射を1サイクル行ったマウス、
(iii)下記のスキームに従って、1週間サイクルで0.5mg/kgの用量のシスプラチンDPI(実施例2)と抗PD1抗体(RMP1-14、BioXCell, West Lebanon, NH, USA)を1サイクル併用処置したマウス。
【0134】
【表5】
【0135】
気管内投与手順中に死亡したマウスは、分析では考慮しなかった-陰性対照の9/16およびシスプラチンDPI+抗PD1の4/11が手順中に死亡した。
【0136】
図8に示すデータは、免疫療法とシスプラチンDPIとの潜在的な相乗作用を実証した。抗PD1を含まないシスプラチンDPIを2回投与しても腫瘍サイズの縮小は認められなかったが(すなわち、3日目および5日目)、抗PD1を1回投与した10日目から急激な縮小が併用群でのみ認められ、14日目および17日目の平均値は100%を下回り、3日目(参照腫瘍サイズ100%)と比較して腫瘍細胞数の減少が示された。対照的に、抗PD1処理マウスの腫瘍増殖は、陰性対照に続いた。
<陰性対照>
腫瘍増殖がコントロールされておらず、連続的に腫瘍増殖が続き、3日目から21日目の間に腫瘍細胞数が500倍超増加した。
<免疫療法に対する応答>
3/8のマウス(37.5%)は抗PD1単剤療法に応答したが、長い応答者は観察されなかった。これらの3匹の応答者については、投与後14日目から腫瘍の再増殖が認められた。
<シスプラチンDPIと免疫療法との併用に対する応答>
-すべてのマウス(7/7、100%)は最初の10日目までの腫瘍増殖に応答し、続いて腫瘍サイズの急激な減少と17日目までの腫瘍増殖の制御がすべてのマウスで観察された。
-17日目まで(すなわち、処置期間)、抗PD1療法に対するシスプラチンDPIの不可逆的な相加効果は有効である。
【0137】
さらに、併用群において、長い応答者が1/7(14%)認められ、原発性肺腫瘍、局所領域転移、全身転移、腫瘍の痕跡いずれも認められなかった(図9)。抗PD1単剤治療群とは対照的に長い応答者は認められなかった(図9)。
【0138】
表6に示すように、特に27日目まで(23日目および27日目それぞれにおける、抗PD1および抗PD1+シスプラチンDPIの生存期間の中央値を比較すると)、抗PD1免疫療法へのシスプラチンDPIの追加によって生存率が増加する傾向がみられた。
【0139】
【表6】
【0140】
〔実施例7〕シスプラチンDPIと全身的化学療法と全身的免疫療法との併用
6~10匹のマウスの3群を比較したことを除いて、実施例3に記載のプロトコルを再現した:
(i)未処置の陰性対照、
(ii)2週間サイクルで抗PD1抗体(RMP1-14、Bioceros, Utrecht, The Netherlands)を腹腔内注射(IP)したマウス(1週目は4回投与、2週目は休薬)
(iii)3週間サイクルでシスプラチン0.5mg/kgの用量のシスプラチンDPIと、1.5mg/kgのシスプラチンのIV注射との併用処置を行い(1週目と3週目は3回投与、2週目は休薬)、2週間サイクルで抗PD1抗体(RMP1-14、Bioceros, Utrecht, The Netherlands)を腹腔内注射(IP)したマウス(1週目は4回投与、2週目は休薬)で処置したマウス。
【0141】
併用群(iii)において、未処置の対照群(i)および群(ii)と比較して腫瘍増殖の低下が観察された。また、併用群(iii)において、未処置の対照群および群(ii)と比較して生存率の増加が観察された。
【0142】
〔実施例8〕シスプラチンDPIと全身的化学療法と全身的免疫療法との併用
6~10匹のマウスの3群を比較したことを除いて、実施例3に記載のプロトコルを再現した:
(iv)未処置の陰性対照、
(v)2週間サイクルで抗PD1抗体(RMP1-14、Bioceros, Utrecht, The Netherlands)を腹腔内注射(IP)したマウス(1週目は4回投与、2週目は休薬)
(vi)3週間サイクルでシスプラチン0.5mg/kgの用量のシスプラチンDPIと、細胞毒性用量(cytotoxic dose)のカルボプラチンIVとの併用処置を行い(1週目と3週目は3回投与、2週目は休薬)、2週間サイクルで抗PD1抗体(RMP1-14、Bioceros, Utrecht, The Netherlands)を腹腔内注射(IP)したマウス(1週目は4回投与、2週目は休薬)で処置したマウス。
【0143】
併用群(iii)において、未処置の対照群(i)および群(ii)と比較して腫瘍増殖の低下が観察された。また、併用群(iii)において、未処置の対照群および群(ii)と比較して生存率の増加が観察された。
【0144】
〔実施例9〕シスプラチンDPIと全身白金ダブレットと全身免疫療法との併用
本実施例の目的は、~60%のステージIVのNSCLC(PD-L1バイオマーカー発現<50%)における現在の標準治療であるiv化学療法(すなわち、全身白金ダブレット)と併用したときの、シスプラチンDPIと免疫チェックポイント阻害剤(すなわち、抗PD1免疫療法)との相乗効果を実証することである。
【0145】
試験中、2つの主要パラメーターを慎重に追跡した:
-生物発光による経時的な腫瘍増殖(インビボ光学イメージング、生物発光シグナルは、インビボでの生きているM109腫瘍細胞の数に正比例する)。生物発光分析を、3日目(無作為化)から38日目まで週2回行った。
-カプランマイヤー生存曲線および生存期間の中央値(50%マウスが肺腫瘍および/または転移により死亡した期間に相当)を含む生存解析。
【0146】
実施例3に記載のプロトコルを再現した。ただし、生存率も決定した(19日目に安楽死がなく、エクスビボ生物発光分析がない)、下記のスキームを示す表7に従って6日目に処置を開始し、8~24匹のマウスの4群を比較した:
(i)陰性対照、すなわち、生理食塩水iv注射+抗βGALラットIgG2aのip注射(抗PD1のアイソタイプ対照、BioXCell, West Lebanon, NH, USA)+DPIビヒクル(すなわち、シスプラチンを含まない粉末、賦形剤のみ)、
(ii)下記のスキームに従って、1週間サイクルで、抗PD1抗体(RMP1-14、BioXCell, West Lebanon, NH, USA)のip注射と、1.5mg/kgのシスプラチンおよび10mg/kgのパクリタキセルから構成される白金ダブレットのiv注射を1サイクル行ったマウス、
(iii)下記のスキームに従って、1週間サイクルで、0.5mg/kgの用量のシスプラチンDPI(実施例2)と、抗PD1抗体(RMP1-14、BioXCell, West Lebanon, NH, USA)と、10mg/kgのパクリタキセル(すなわち、タキソール)のiv注射と、を1サイクル併用処置したマウス。
(iv)1週間サイクルで、0.5mg/kgの用量のシスプラチンDPI(実施例2)と、抗PD1抗体(RMP1-14、BioXCell, West Lebanon, NH, USA)と、1.5mg/kgのシスプラチンおよび10mg/kgのパクリタキセルから構成される白金ダブレットのiv注射と、を1サイクル併用処置したマウス。
【0147】
【表7】
【0148】
気管内投与手順中に死亡したマウスは、分析では考慮しなかった-陰性対照の9/16、抗PD1/タキソール/シスプラチンDPIの5/14、抗PD1/Ptダブレット/シスプラチンDPIの13/24が投与手順中に死亡した。
【0149】
図10に示すように、併用群(すなわち、群iiiおよびiv)におけるシスプラチンDPIの寄与によって、大部分の応答者において、腫瘍増殖のより良好な制御が可能になった。これは、全身化学療法/免疫療法(すなわち、群ii)よりも認められた。17日目(すなわち、最後の処置(投与)から7日目)から、曲線が分かれ、標準治療群(群ii)では腫瘍の再増殖が観察されたが、両方のシスプラチンDPI併用群においてはいずれも腫瘍細胞数の減少が維持された。
<陰性対照>
腫瘍増殖がコントロールされておらず、連続的に腫瘍増殖が続き、3日目から21日目の間に腫瘍細胞数が500倍超増加した。
<抗PD1+白金ダブレット>
7/13のマウス(54%)は、一時的な生物発光値が100%未満だった(これは、最初の処置(投与)前と比較して腫瘍細胞数の減少を示す)。
<抗PD1+タキソール+シスプラチンDPI>
7/9のマウス(78%)は、生物発光値が100%未満だった(これは、3日目と比較して腫瘍細胞数の減少を示す)。
<抗PD1+白金ダブレット+シスプラチンDPI>
9/11のマウス(82%)は、生物発光値が100%未満だった(これは、3日目と比較して腫瘍細胞数の減少を示す)。
【0150】
図11および表8に示すように、抗PD1/白金ダブレット全身治療へのシスプラチンDPIの追加によって、生存率が有意に増加し(p<0.05、ログランク検定)、生存期間の中央値は白金ダブレット(それぞれ35日対25日)と比較して40%増加した。
【0151】
【表8】
【0152】
〔実施例10〕従来の吸入用キットと比較した、本発明に記載の吸入化学療法用キット(キット1)による環境汚染がないことの実証。
【0153】
環境汚染に関して、本発明のキットを従来のキットと比較した。
【0154】
a.RS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape, Osnago, Italy)、20mgのシスプラチン製剤(実施例2で調製)を含有するサイズ3のHPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps, Madrid, Spain)から構成される従来のキットの使用から環境汚染を回収する手順。
【0155】
簡潔に言えば、サイズ3のHPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps)に、約20mgの粉末(実施例2に従って調製)を手で充填した。次いで、吸入装置を調製し、そして患者への指示に従って直接使用した。
【0156】
環境汚染の原因となる粉末を回収するために、以下の調製工程のすべてを、直径約20cmのガラス晶析装置上で行った。カプセルをRS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape)に入れ、装置を閉じ、カプセルを穿孔した。装置を、用量回収のために欧州薬局方9.02に記載される装置に配置した。この装置は、送達された用量を定量的に捕捉することができる。患者の吸入をシミュレーションするために、TPK臨界流量制御器(Copley Scientific, Nottingham, UK)に直列に接続された2つのHCP5エアポンプ(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて、DFM3流量計(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて測定した100±5L/分の流量を得た。ポンプの作動中(すなわち、吸入中)、250mLのビーカーをDPI装置の周りに配置して、汚染粒子(すなわち、空気汚染)を回収した。欧州薬局方9.02で要求されているように、臨界流量制御器を用いて、100L/分で2.4秒の堆積時間およびP3/P2比率<0.5の臨界流量を確保した。
【0157】
装置を開放し、カプセルを除去し、装置を再閉鎖した。操作中の汚染の原因となる粉末画分(すなわち、開放位置およびカプセルの外側にある装置から、晶析装置、研究者の手袋に残っている粉末)を、DMFで広範囲に洗浄しながら回収し、Levetらの文献(Levet et al, Int J Pharm 2016)に記載された電熱原子吸光分析(ETAAS)検証方法を使用して、その白金含有量について分析した。
【0158】
b.適合させた使い捨てRS.01乾燥粉末吸入器(Plastiape)、20mgのシスプラチン製剤(実施例2で調製)を含有するサイズ3のHPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps)から構成される本発明のキット1の使用から環境汚染を回収する手順。ひとたびカプセルが穿孔されると再開放されないようにRS.01装置は適合され、吸入直後に密封した(すなわち、環境から隔離した)。
【0159】
簡潔に言えば、サイズ3のHPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps)に、約20mgの粉末(実施例1に従って調製)を手で充填した。次いで、吸入装置を調製し、そして患者への指示に従って直接使用した。
【0160】
環境汚染の原因となる粉末を回収するために、以下の調製工程のすべてを、直径約20cmのガラス晶析装置上で行った。カプセルを使い捨てRS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape)に入れ、装置を閉じ、カプセルを穿孔した。装置を、用量回収のために欧州薬局方9.02に記載される装置に配置した。この装置は、送達された用量を定量的に捕捉することができる。患者の吸入をシミュレーションするために、TPK臨界流量制御器(Copley Scientific, Nottingham, UK)に直列に接続された2つのHCP5エアポンプ(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて、DFM3流量計(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて測定した100±5L/分の流量を得た。ポンプの作動中(すなわち、吸入中)、250mLのビーカーをDPI装置の周りに配置して、汚染粒子(すなわち、空気汚染)を回収した。欧州薬局方9.02で要求されているように、臨界流量制御器を用いて、100L/分で2.4秒の堆積時間およびP3/P2比率<0.5の臨界流量を確保した。
【0161】
次いで、使い捨てDPI装置を直ちに密封した(すなわち、環境から隔離した)。
【0162】
操作中の汚染の原因となる粉末画分(すなわち、開放位置およびカプセルの外側にある装置から、晶析装置、研究者の手袋に残っている粉末)を、DMFで広範囲に洗浄しながら回収し、Levetらの文献(Levet et al, Int J Pharm 2016)に記載された電熱原子吸光分析(ETAAS)検証方法を使用して、その白金含有量について分析した。
【0163】
空気汚染からのシスプラチン量は、キット1が4±2μg(平均±SD、n=6)であった。この結果によって、吸入中の空気汚染を制限する、本発明の適合された使い捨てDPI装置の能力が確認された。
【0164】
図13に示すように、キット1で回収された操作中の汚染の原因となるシスプラチン粉末画分は、従来のキットよりも有意に低かった((***)はp<0.001を意味する、スチューデントt検定、n=3)。
【0165】
〔実施例11〕従来の吸入用キットと比較した、本発明に記載の吸入化学療法用キット(キット2)による環境汚染がないことの実証。
環境汚染に関して、本発明のキットを従来のキットと比較した。
【0166】
a.RS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape, Osnago, Italy)、20mgのシスプラチン製剤(実施例2で調製)を含有するサイズ3のHPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps, Madrid, Spain)から構成される従来のキットの使用から環境汚染を回収する手順(実施例10に記載される手順と同じ手順)。
【0167】
b.適合させた使い捨てRS.01乾燥粉末吸入器(Plastiape)、20mgのシスプラチン製剤(実施例2で調製)を含有するサイズ3のHPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps)から構成される本発明のキット2の使用から環境汚染を回収する手順。ひとたびカプセルが穿孔されると再開放されないよう、カプセル穿孔中は薬剤の出口を覆い、一方向弁を通るいずれの空気の出口を遮断するようにRS.01装置は適合され、吸入直後に密封した(すなわち、環境から隔離した)。
【0168】
簡潔に言えば、サイズ3のHPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps)に、約20mgの粉末(実施例1に従って調製)を手で充填した。次いで、吸入装置を調製し、そして患者への指示に従って直接使用した。
【0169】
環境汚染の原因となる粉末を回収するために、以下の調製工程のすべてを、直径約20cmのガラス晶析装置上で行った。カプセルを使い捨てRS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape)に入れ、装置を閉じ、カプセルを穿孔した。装置を、用量回収のために欧州薬局方9.02に記載される装置に配置した。この装置は、送達された用量を定量的に捕捉することができる。患者の吸入をシミュレーションするために、TPK臨界流量制御器(Copley Scientific, Nottingham, UK)に直列に接続された2つのHCP5エアポンプ(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて、DFM3流量計(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて測定した100±5L/分の流量を得た。ポンプの作動中(すなわち、吸入中)、250mLのビーカーをDPI装置の周りに配置して、汚染粒子(すなわち、空気汚染)を回収した。欧州薬局方9.02で要求されているように、臨界流量制御器を用いて、100L/分で2.4秒の堆積時間およびP3/P2比率<0.5の臨界流量を確保した。
【0170】
次いで、使い捨てDPI装置を直ちに密封した(すなわち、環境から隔離した)。
【0171】
操作中の汚染の原因となる粉末画分(すなわち、開放位置およびカプセルの外側にある装置から、晶析装置、研究者の手袋に残っている粉末)を、DMFで広範囲に洗浄しながら回収し、Levetらの文献(Levet et al, Int J Pharm 2016)に記載された電熱原子吸光分析(ETAAS)検証方法を使用して、その白金含有量について分析した。
【0172】
本発明の吸入用キット1で回収された空気汚染からのシスプラチン量は4±2μg(平均±SD、n=6)であり、この結果によって、吸入中の空気汚染を制限する、本発明の適合された使い捨てDPI装置の能力が確認された。一方、本発明のキット2で回収された空気汚染からのシスプラチン量はETAAS法の定量限界未満であったので、キット1よりずっと良好であった。
【0173】
より興味深いことに、本発明のキット1およびキット2で回収された操作中の汚染の原因となるシスプラチン粉末画分は、両方とも、従来のキットを用いた場合よりもはるかに低かった。
【0174】
本発明はマウスモデルを用いて説明したが、ヒトまたは哺乳類を対象としていることを理解されたい。したがって、本実施例に記載される投与スキーム、サイクルおよび投与計画はマウスモデルに適合させ、ヒト治療計画を例示する。
【0175】
例えば、マウスにおいて、サイクルは、ヒトの化学療法で一般的に用いられる3週間サイクルを示す1週間サイクルである。マウスにおいて、サイクル当たりの密封包装された単回治療用量の投与回数が典型的には3回であるが、ヒトの場合、サイクル当たりの密封包装された単回治療用量の投与回数が典型的には15~21回までであることが予見されるに過ぎない。同様に、マウスにおいて、各密封包装された単回治療用量中の抗腫瘍剤が典型的には0.5mg/(動物の)kgであるが、ヒトの場合、各密封包装された単回治療用量中の抗腫瘍剤が典型的には1~5mg/m体表面積(シスプラチンについて)である。
【0176】
本発明は、記載した実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく変形例を適用し得ることに理解されたい。
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