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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/02 20060101AFI20240624BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20240624BHJP
   B25J 15/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B23Q3/02 A
B23Q3/06 304F
B25J15/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021554301
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2020038559
(87)【国際公開番号】W WO2021085110
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2019195284
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】春名 陽介
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/2684(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/145142(WO,A1)
【文献】特開2014-240117(JP,A)
【文献】実開平6-7809(JP,U)
【文献】特開2013-237150(JP,A)
【文献】国際公開第2011/46039(WO,A1)
【文献】実開平6-17833(JP,U)
【文献】国際公開第2010/71072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00 - 3/02
B23Q 3/06
B23Q 7/00 - 7/18
B23B 31/00 - 31/39
B25J 15/04
F16K 31/44 - 31/62
F15B 20/00 - 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブロック(3)内に軸方向へ移動可能にピストン本体部(9)が保密状に挿入されるピストン(8)と、
前記ピストン本体部(9)の進出側または後退側に形成された、圧力流体が供給および排出されるロック室(10)と、
前記第1ブロック(3)に形成されたロックポート(13)であって、前記ロック室(10)に圧力流体を給排するためのロックポート(13)と、
前記ピストン本体部(9)を挟んで前記ロック室(10)の反対側に形成された、圧力流体が供給および排出されるリリース室(11)と、
前記第1ブロック(3)に形成されたリリースポート(15)であって、前記リリース室(11)に圧力流体を給排するためのリリースポート(15)と、
前記第1ブロック(3)から突出された、第2ブロック(4)内に挿入されるプラグ部(16)であって、前記ピストン(8)の出力ロッド部(17)が軸方向へ移動可能に挿入される筒状のプラグ部(16)と、
前記出力ロッド部(17)が軸方向へ移動することで前記第2ブロック(4)を前記第1ブロック(3)側に引き込んで固定する係合手段(19)と、
前記第1ブロック(3)に設けられる弁ケース(31)であって、圧力流体の供給源に接続される一次側圧力流体給排ポート(34)、圧力流体を排出するための圧力流体排出ポート(36)、および前記ロックポート(13)または前記リリースポート(15)に接続される二次側圧力流体給排ポート(35)が形成された弁ケース(31)と、
前記弁ケース(31)内に配置された弁部材(37)であって、前記弁ケース(31)から突出する操作部(38)を軸方向端部に有する弁部材(37)と、
を備え、
前記操作部(38)が前記弁ケース(31)内に押し込まれることにより、前記一次側圧力流体給排ポート(34)および前記二次側圧力流体給排ポート(35)と前記圧力流体排出ポート(36)とが連通する状態から、前記一次側圧力流体給排ポート(34)および前記二次側圧力流体給排ポート(35)と前記圧力流体排出ポート(36)との間が遮断された状態へ移行する、
クランプ装置。
【請求項2】
請求項1のクランプ装置において、
前記一次側圧力流体給排ポート(34)と前記二次側圧力流体給排ポート(35)とを連通させる連通路(43)が、前記弁ケース(31)内における、前記弁部材(37)の弁本体(40)の前記操作部(38)側に設けられており、
前記一次側圧力流体給排ポート(34)から前記二次側圧力流体給排ポート(35)へ向けて前記連通路(43)に圧力流体が供給されているとき、当該圧力流体の圧力で、前記操作部(38)が前記弁ケース(31)内に押し込まれた状態が維持される、
クランプ装置。
【請求項3】
請求項2のクランプ装置において、
前記操作部(38)が前記弁ケース(31)から突出する方向へ前記弁本体(40)を付勢する付勢手段(46)が、前記弁ケース(31)内における、前記弁本体(40)に対して前記操作部(38)とは反対側に設けられた圧力流体排出室(45)に配置されており、
前記操作部(38)が前記付勢手段(46)の付勢力に抗して前記弁ケース(31)内に押し込まれる、
クランプ装置。
【請求項4】
請求項2または3のクランプ装置において、
前記弁本体(40)の外周面に形成された環状の溝(40a)に、前記弁ケース(31)の内周面に形成された弁座(42)に押し付けられる環状の弾性部材(41)が装着されている、
クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具、治具、パレットなどを、ロボットアーム、テーブルなどに着脱可能に固定するためのクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置として、従来では、下記の特許文献1に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
【0003】
特許文献1に記載のクランプ装置は、可動ブロックとしての例えばワークパレットを、基準ブロックとしての例えばクランプパレットに固定するためのものであって、基準ブロック内に上下方向へ移動可能で保密状に挿入されるピストン、基準ブロックから上方へ突出される環状のプラグ部分、および上記ピストンに連結されて可動ブロックを下方へ移動させる出力ロッドなどを備えている。上記ピストンの上側にロック室が形成され、ピストンの下側にリリース室が形成されている。
【0004】
上記クランプ装置は、リリース室に圧縮空気が供給されることで出力ロッドが上昇し、基準ブロックから可動ブロックを取り外し可能なリリース状態となる。また、ロック室に圧縮空気が供給されることで出力ロッドが下降し、可動ブロックが基準ブロック側に引き込まれて基準ブロックに固定される(ロック状態)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5690275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来技術には、次の問題がある。
【0007】
上記ロック状態において、誤操作によりリリース室に圧縮空気が供給されると、クランプ装置はリリース状態になり、可動ブロックは、意図せず、基準ブロックから浮いたフリーの状態となってしまう。また、可動ブロックが存在しない状態で、ロック室に圧縮空気が供給されると、係合ボールがプラグ部分の径方向外側へはみ出した状態となり、この状態で、基準ブロックの上に可動ブロックが載せられると、可動ブロックに形成されているクランプ用の被係止部部分が、上記係合ボールに衝突して互いに損傷してしまう。
【0008】
本発明の目的は、意図しない作動を防止することができる構成を備えたクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1から図7に示すように、クランプ装置を次のように構成した。
【0010】
本発明のクランプ装置は、第1ブロック3内に軸方向へ移動可能にピストン本体部9が保密状に挿入されるピストン8と、前記ピストン本体部9の進出側または後退側に形成された、圧力流体が供給および排出されるロック室10と、前記第1ブロック3に形成されたロックポート13であって、前記ロック室10に圧力流体を給排するためのロックポート13と、前記ピストン本体部9を挟んで前記ロック室10の反対側に形成された、圧力流体が供給および排出されるリリース室11と、前記第1ブロック3に形成されたリリースポート15であって、前記リリース室11に圧力流体を給排するためのリリースポート15と、前記第1ブロック3から突出された、第2ブロック4内に挿入されるプラグ部16であって、前記ピストン8の出力ロッド部17が軸方向へ移動可能に挿入される筒状のプラグ部16と、前記出力ロッド部17が軸方向へ移動することで前記第2ブロック4を前記第1ブロック3側に引き込んで固定する係合手段19と、前記第1ブロック3に設けられる弁ケース31であって、圧力流体の供給源に接続される一次側圧力流体給排ポート34、圧力流体を排出するための圧力流体排出ポート36、および前記ロックポート13または前記リリースポート15に接続される二次側圧力流体給排ポート35が形成された弁ケース31と、前記弁ケース31内に配置された弁部材37であって、前記弁ケース31から突出する操作部38を軸方向端部に有する弁部材37と、を備える。前記操作部38が前記弁ケース31内に押し込まれることにより、前記一次側圧力流体給排ポート34および前記二次側圧力流体給排ポート35と前記圧力流体排出ポート36とが連通する状態から、前記一次側圧力流体給排ポート34および前記二次側圧力流体給排ポート35と前記圧力流体排出ポート36との間が遮断された状態へ移行する。
【0011】
本発明の上記クランプ装置は、次のような作用効果を奏する。
【0012】
操作部が弁ケース内に押し込まれていない状態では、誤操作により一次側圧力流体給排ポートに圧力流体が供給されたとしても、圧力流体は、圧力流体排出ポートから排出されるので、ピストンは作動しない。すなわち、本発明の上記クランプ装置によると、意図しない作動を防止することができる。
【0013】
本発明の上記クランプ装置において、前記一次側圧力流体給排ポート34と前記二次側圧力流体給排ポート35とを連通させる連通路43が、前記弁ケース31内における、前記弁部材37の弁本体40の前記操作部38側に設けられており、前記一次側圧力流体給排ポート34から前記二次側圧力流体給排ポート35へ向けて前記連通路43に圧力流体が供給されているとき、当該圧力流体の圧力で、前記操作部38が前記弁ケース31内に押し込まれた状態が維持されることが好ましい。
【0014】
この構成によると、一次側圧力流体給排ポートに圧力流体が供給されていると、一次側圧力流体給排ポートおよび二次側圧力流体給排ポートと圧力流体排出ポートとの間が遮断された状態が維持されて、ロック室またはリリース室の圧力流体の圧力が保持される。
【0015】
また、本発明の上記クランプ装置において、前記操作部38が前記弁ケース31から突出する方向へ前記弁本体40を付勢する付勢手段46が、前記弁ケース31内における、前記弁本体40に対して前記操作部38とは反対側に設けられた圧力流体排出室45に配置されており、前記操作部38が前記付勢手段46の付勢力に抗して前記弁ケース31内に押し込まれることが好ましい。
【0016】
この構成によると、弁ケース内に押し込まれる方向へ操作部に力が作用していない通常時は、弁ケースから操作部が突出した状態を維持することができる。また、弁本体(弁部材)の軸方向への移動が安定する。
【0017】
また、本発明の上記クランプ装置において、前記弁本体40の外周面に形成された環状の溝40aに、前記弁ケース31の内周面に形成された弁座42に押し付けられる環状の弾性部材41が装着されていることが好ましい。
【0018】
この構成によると、一次側圧力流体給排ポートおよび二次側圧力流体給排ポートと圧力流体排出ポートとの間がより確実に遮断される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、クランプ装置の意図しない作動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1実施形態を示し、クランプ装置(ツール交換装置)のロック状態における立面視の断面図である。
図2図2は、上記クランプ装置のロック状態からリリース状態へ切り換わる途中の立面視の断面図である。
図3図3は、上記クランプ装置のリリース状態における立面視の断面図である。
図4図4は、図1のA部拡大図である。
図5図5は、図2のA部拡大図である。
図6図6は、図3のA部拡大図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態を示し、クランプ装置(ツール交換装置)のリリース状態における立面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1から図6は、本発明の第1実施形態を示す。第1実施形態のクランプ装置としてのツール交換装置は、工具、治具などのツール1を、ロボットアーム2に着脱するためのものであり、例えば、次のように構成される。
【0022】
ロボットアーム2の先端部に第1ブロックとしてのマスタシリンダ3が固定され、ツール1の端部に第2ブロックとしてのツールアダプタ4が固定される。ツールアダプタ4の凹部5には、位置決め用のテーパ孔6とクランプ用の被係止部7とが開口側から順に形成される。
【0023】
上記マスタシリンダ3内の底部側にピストン8のピストン本体部9が軸方向へ移動可能で保密状に挿入される。上記ピストン本体部9の進出側にロック室10が形成され、ピストン本体部9の後退側にリリース室11が形成される。ロック室10は、マスタシリンダ3の一方の側面に形成されたロックポート13に通路12を介して連通され、リリース室11は、マスタシリンダ3の他方の側面に形成されたリリースポート15に通路14を介して連通される。ロックポート13、およびリリースポート15には、それぞれ、圧力流体としての圧縮空気が供給および排出される。
【0024】
上記マスタシリンダ3から筒状のプラグ部16が外方へ一体に突出され、このプラグ部16が上記ツールアダプタ4の凹部5に挿入されるようになっている。プラグ部16の筒孔16aに、ピストン8の出力ロッド部17が軸方向へ移動可能に挿入される。なお、出力ロッド部17とピストン本体部9とを有するピストン8は、一つの素材から形成された一体成形品とされてもよいし、別々に形成された部品が連結されてなるものであってもよい。
【0025】
上記プラグ部16の周壁の先端部に周方向へ所定の間隔をあけて複数の貫通孔18が形成され、各貫通孔18に係合ボール19が出力ロッド部17の径方向の外方の係合位置(図1参照)と、径方向の内方の係合解除位置との間で移動可能に支持される。出力ロッド部17の外周面の先端部には、各係合ボール19に対応させて、押圧面20と退避溝21とが軸方向に連ねて形成される。上記係合ボール19は、出力ロッド部17が後退されることでツールアダプタ4をマスタシリンダ3側に引き込んで固定するための係合手段の一例である。
【0026】
上記プラグ部16の周壁の基端部の外周に、径方向へ拡大および縮小可能なスリーブ23が配置される。このスリーブ23のストレート内周面23aがプラグ部16の外周面に軸方向へ移動可能に支持される。また、スリーブ23のテーパ外周面23bがツールアダプタ4のテーパ孔6に係合可能とされる。ここでは、スリーブ23の周壁の一部にスリット23cを形成することにより、スリーブ23は、テーパ外周面23bに作用する外力によって縮径し、その外力を解除したときに自己の弾性復元力によって拡径する。スリーブ23の基端部は、マスタシリンダ3の先端面に形成された環状凹溝24に挿入される。
【0027】
上記スリーブ23を先端側へ押すためのスリーブ進出手段が設けられる。このスリーブ進出手段は次のように構成される。ピストン本体部9のロック室10側の面に有底の穴25が形成される。この穴25に対向する凹部26がロック室10内に形成される。マスタシリンダ3の外面と上記凹部26とを連通させる貫通孔27が形成される。この貫通孔27に押部材28が封止具29を介して保密状に挿入され、押部材28の先端がスリーブ23に対面される。押部材28の基端部に設けたバネ受け28aと上記穴25の底面との間に進出バネ30が配置される。この構成により、進出バネ30が押部材28を介してスリーブ23を先端側へ付勢する。なお、スリーブ23が所定量以上に先端側へ移動することは、プラグ部16の外周に設けた止め輪49によって阻止される。
【0028】
上記マスタシリンダ3のリリースポート15が形成された面に弁ケース31が設けられる。弁ケース31は、弁ケース本体32と、弁ケース本体32に封止具47を介して螺合固定される筒状の蓋部材33とで構成される。
【0029】
上記弁ケース本体32の一方の側面に一次側圧力流体給排ポート34が形成され、他方(反対側)の側面に二次側圧力流体給排ポート35が形成される。この二次側圧力流体給排ポート35は、上記リリースポート15に接続される。また、蓋部材33の軸方向の端面には、圧縮空気を排出するための圧力流体排出ポート36が形成される。
【0030】
弁ケース本体32内に弁部材37が配置される。この弁部材37の軸方向端部には、弁ケース本体32から突出する操作部としての棒状のプッシャー38が設けられる。このプッシャー38は、弁ケース本体32に形成された貫通孔32aに封止具39を介して保密状に挿入される。弁部材37は、プッシャー38よりも大径の弁本体40を有し、この弁本体40の外周面に形成された環状の溝40aに環状の弾性部材41が装着される。また、上記蓋部材33の内周面にテーパ面形状の弁座42が形成されており、この弁座42に上記弾性部材41が押し付けられるようになっている。
【0031】
一次側圧力流体給排ポート34と二次側圧力流体給排ポート35とを連通させる連通路43が、弁本体40のプッシャー38側に設けられる。なお、プッシャー38が弁ケース本体32から外方へ突出しているとき、弁ケース本体32の底部に配置されたリング部材44と弁本体40との接触により、上記連通路43が遮断されてもよいし、遮断されなくてもよい。リング部材44と弁本体40との接触により連通路43が遮断される場合でも、プッシャー38が弁ケース本体32内に押し込まれると、連通路43の遮断は解除される。
【0032】
弁本体40に対してプッシャー38とは反対側には、上記圧力流体排出ポート36に連通する圧力流体排出室45が設けられる。この圧力流体排出室45に、付勢手段としてのバネ46が配置され、このバネ46は、プッシャー38が弁ケース本体32から突出する方向へ弁本体40を付勢する。
【0033】
上記構成のツール交換装置は次のように動作する。
【0034】
図1に示すロック状態では、リリース室11から圧縮空気が排出されると共に、ロボットアーム2側から配管48を介してロック室10へ圧縮空気が供給されている。ロック室10に圧縮空気が供給されると、ロック室10の圧力によってピストン本体部9が出力ロッド部17を上昇させ、各係合ボール19が出力ロッド部17の径方向の外方へ移動する。そして、係合ボール19が被係止部7に係合し、出力ロッド部17に作用する上向きの力によって、ツールアダプタ4がマスタシリンダ3に強固に固定されて、ツール交換装置を介してロボットアーム2にツール1が固定された状態となっている。
【0035】
このとき、弁ケース31内の弁部材37はバネ46によって付勢されて、その軸方向端部に設けられたプッシャー38は弁ケース本体32から突出している。また、弁本体40(弁本体40に装着された弾性部材41)と弁座42との間に隙間が形成されて、一次側圧力流体給排ポート34および二次側圧力流体給排ポート35と圧力流体排出ポート36との間は連通した状態となっている。そのため、誤操作により、ロボットアーム2側から配管50を介して一次側圧力流体給排ポート34に圧縮空気が供給されたとしても、圧縮空気は圧力流体排出ポート36から排出される。また、リリース室11は、通路14、二次側圧力流体給排ポート35等を介して圧力流体排出ポート36に連通された状態が維持されるので、リリース室11の圧力は上昇しない。これらにより、ピストン8(ピストン本体部9)は下降しない。その結果、ロボットアーム2にツール1が固定された状態が維持される。
【0036】
ロボットアーム2からツール1を取り外す際は、ロボットアーム2を操作して、まず、ツール1をツールストッカ51の凹部51aに嵌め込む。ここで、ツールストッカ51の上面の凹部51a近傍には、プッシャー38を弁ケース31内に押し込むためのプッシャー押込み部材52が設けられている。
【0037】
図2に示すように、ツールストッカ51の凹部51aにツール1が嵌まり込むと、これとほぼ同時に、プッシャー押込み部材52の先端にプッシャー38が当たり、プッシャー押込み部材52によって、バネ46の付勢力に抗して弁ケース31内にプッシャー38が押し込まれる。すると、弁ケース31の内周面に形成された上記弁座42に、弁本体40に装着された上記弾性部材41が押し付けられ、一次側圧力流体給排ポート34および二次側圧力流体給排ポート35(連通路43)と圧力流体排出ポート36とが連通する状態から、一次側圧力流体給排ポート34および二次側圧力流体給排ポート35(連通路43)と圧力流体排出ポート36との間が遮断されて一次側圧力流体給排ポート34から二次側圧力流体給排ポート35へ圧縮空気が流れることが可能となる状態へ移行する。
【0038】
次いで、ロック室10から圧縮空気を排出すると共に、一次側圧力流体給排ポート34、二次側圧力流体給排ポート35等を介してリリース室11に圧縮空気を供給する。すると、リリース室11の圧力によってピストン本体部9が出力ロッド部17を下降させ、出力ロッド部17の先端がツールアダプタ4の凹部5の底面に当接する(図2)。リリース室11の圧力によって出力ロッド部17がさらに下降しようとすると、その反力がマスタシリンダ3に作用し、ロボットアーム2と共にマスタシリンダ3が僅かに上昇する。これにより、プラグ部16から出力ロッド部17の先端が少し突出した状態となり、各係合ボール19は、出力ロッド部17の退避溝21に対面して径方向の内方の係合解除位置へ移動可能になる。図3に示すように、ロボットアーム2を上昇させることで、ロボットアーム2からツール1が完全に外れる。
【0039】
このとき、一次側圧力流体給排ポート34から二次側圧力流体給排ポート35へ向けて一次側圧力流体給排ポート34と二次側圧力流体給排ポート35とを連通させる上記連通路43に圧縮空気が供給され続けている。この連通路43内の圧縮空気の圧力によって弁本体40が付勢されて、上記弁座42に弾性部材41が押し付けられた状態、すなわち、一次側圧力流体給排ポート34および二次側圧力流体給排ポート35と圧力流体排出ポート36との間が遮断された状態が維持され続ける。その結果、リリース室11から圧縮空気が抜けず、リリース室11の圧縮空気の圧力が保持される。プッシャー38は、弁ケース31内に押し込まれた状態が維持される。
【0040】
ロボットアーム2にツール1を取り付ける際のツール交換装置の動作は次の通りである。ロボットアーム2の先端部を降下させて、ツールアダプタ4の凹部5にマスタシリンダ3から突出するプラグ部16を挿入する。プラグ部16を挿入していくと、出力ロッド部17の先端がツールアダプタ4の凹部5の底面に当接する。次いで、リリース室11から圧縮空気を排出すると共に、ロック室10に圧縮空気を供給する。ロック室10に圧縮空気が供給されると、ロック室10の圧力によってピストン本体部9が出力ロッド部17を上昇させる。すると、出力ロッド部17の外周面に形成された押圧面20が各係合ボール19を径方向の外方へ押圧して移動させ、その径方向の押圧力が上記被係止部7を介して上向きの力へ変換され、その上向きの力によってツールアダプタ4が引き上げられる。そして、ツールアダプタ4のテーパ孔6がスリーブ23のテーパ外周面23bにテーパ係合してスリーブ23を縮径させ、テーパ孔6の軸心がプラグ部16の軸心に合致すると共に、ツールアダプタ4の上面がマスタシリンダ3の下面に受止められる。これにより、ロボットアーム2にツール1が軸心を合わせて取り付けられた状態となる。
【0041】
図7は、本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態と第2実施形態との違いは、第2実施形態では、弁ケース本体32の側面に形成された二次側圧力流体給排ポート35がリリースポート15ではなくロックポート13に接続されている点である。なお、この第2実施形態では、リリースポート15に接続された配管48には、リリース用の圧縮空気が給排され、一次側圧力流体給排ポート34に接続された配管50には、ロック用の圧縮空気が給排される。
【0042】
第2実施形態では、リリース状態(ツールアダプタ4(ツール1)が取り付けられていない状態)において、誤操作により、一次側圧力流体給排ポート34に圧縮空気が供給されたとしても、圧縮空気は圧力流体排出ポート36から排出されるので、ロック室10に圧がかからず、ピストン8(ピストン本体部9、出力ロッド部17)は上昇しない。出力ロッド部17が上昇しないので、係合ボール19は、出力ロッド部17の押圧面20で押圧されて、プラグ部16の径方向外側へはみ出した状態とはならない。そのため、誤操作により、一次側圧力流体給排ポート34に圧縮空気が供給されている状態で、ツールアダプタ4の凹部5にマスタシリンダ3から突出するプラグ部16を挿入したとしても、ツールアダプタ4に形成されている被係止部7に係合ボール19が衝突して互いに損傷してしまうことはない。
【0043】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0044】
上記実施形態では、固定物(プッシャー押込み部材52)に弁部材37の操作部(プッシャー38)を押し付けることで、弁部材37を動作させている。これに代えて、人間の指や、周辺の機器で、プッシャー38を押すことで、弁ケース31内にプッシャー38を押し込み、弁部材37を動作させてもよい。
【0045】
上記プッシャー38は、弁ケース31の下面から突出するのではなく、弁ケース31の側面や上面から突出していてもよい。
【0046】
上記スリーブ23に代えて、断面円弧形状の複数の分割体を環状に並べたものを用いてもよい。さらには、上記実施形態において、スリーブ23、およびスリーブ進出手段(押部材28、進出バネ30など)が何も設けられていなくてもよい。
【0047】
ツールアダプタ4(第2ブロック)をマスタシリンダ3(第1ブロック)側に引き込んで固定するための係合手段として、テーパ孔状の被係止部7に対して係合する上記係合ボール19に代えて、ストレート係止孔に対して摩擦力や塑性変形力によって係合するコレットを用いてもよい。
【0048】
ロック室10とリリース室11とが逆に配置されてもよい。すなわち、ピストン本体部9の後退側にロック室10が形成され、ピストン本体部9の進出側にリリース室11が形成されてもよい。この場合、出力ロッド部17の外周面の先端部の押圧面20は、先端側に向かうにつれて先細りする(小径となる)ように形成される。ロック室10に圧縮空気が供給されることで、出力ロッド部17が進出(下降)し、これにより、ロボットアーム2にツール1が固定された状態となる。
【0049】
圧力流体として、圧縮空気に代えて、窒素ガスなどのガス、圧油等の液体を用いてもよい。
【0050】
上記実施形態のツール交換装置は、工具、治具などのツール1を、ロボットアーム2に着脱するためのクランプ装置である。本発明のクランプ装置は、パレットなどをテーブルなどに着脱可能に固定するためのクランプ装置として用いることも可能である。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明した。その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行うことは勿論可能である。
【符号の説明】
【0052】
3:マスタシリンダ(第1ブロック)、4:ツールアダプタ(第2ブロック)、8:ピストン、9:ピストン本体部、10:ロック室、11:リリース室、13:ロックポート、15:リリースポート、16:プラグ部、17:出力ロッド部、19:係合ボール(係合手段)、31:弁ケース、34:一次側圧力流体給排ポート、35:二次側圧力流体給排ポート、36:圧力流体排出ポート、37:弁部材、38:プッシャー(操作部)、40:弁本体、40a:溝、41:弾性部材、42:弁座、43:連通路、45:圧力流体排出室、46:バネ(付勢手段)
図1
図2
図3
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図5
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図7