(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】有機層
(51)【国際特許分類】
C07D 498/04 20060101AFI20240624BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240624BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20240624BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240624BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240624BHJP
【FI】
C07D498/04 101
C09K11/06 690
H05B33/12 C
H05B33/14 A
H05B33/22 D
(21)【出願番号】P 2022047167
(22)【出願日】2022-03-23
(62)【分割の表示】P 2020027305の分割
【原出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】201911046002.3
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519333413
【氏名又は名称】北京夏禾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】崔 至皓
(72)【発明者】
【氏名】▲クアン▼ 志遠
(72)【発明者】
【氏名】夏 伝軍
(72)【発明者】
【氏名】張 玄
(72)【発明者】
【氏名】張 麟
(72)【発明者】
【氏名】胡 俊涛
(72)【発明者】
【氏名】劉 艶華
(72)【発明者】
【氏名】丁 華龍
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0181349(US,A1)
【文献】特表2008-502499(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053968(WO,A1)
【文献】特許第7054537(JP,B2)
【文献】特開2010-059235(JP,A)
【文献】特表2017-518288(JP,A)
【文献】国際公開第2014/126200(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0175481(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K
H05B
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1を有する化合物
を含む有機層。
【化1】
(ただし、XおよびYは、出現する毎に同一または異なってCR’’R’’’から選ばれ、
Z
1およびZ
2は、出現する毎に同一または異なって
Oから選ばれ、
R’’およびR’’’は、
シアノ基から選ばれ、
R
は、出現する毎に同一または異なっ
て置換もしくは無置換の6~
20個の炭素原子を有するアリール
基から選ばれ、
各Rは同一でも異なってもよく、且つ、R、R’’およびR’’’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であ
り、前記電子求引性基のハメット定数は0.05以上である。)
【請求項2】
XおよびYは、出現する毎に同一または異なってCR’’R’’’から選ばれ、R、R’’およびR’’’は少なくとも1つの電子求引性基を有する基であ
る、請求項
1に記載の
有機層。
【請求項3】
前記電子求引性基のハメット定数
は0.3以上であ
る、請求項1に記載の
有機層。
【請求項4】
前記電子求引性基のハメット定数は0.5以上である、請求項1に記載の有機層。
【請求項5】
前記電子求引性基は、ハロゲン、ニトロソ、ニト
ロ、カルボニル基、カルボキシル
基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボリル
基、ホスホノキシ基、窒素複素芳香環基、及びハロゲン、ニトロソ、ニト
ロ、カルボニル基、カルボキシル
基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボリル
基、ホスホノキシ基、窒素複素芳香環基のうちの1つまたは複数により置換された、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基のうちの任意の基、およびその組合せからなる群から選ばれ
る、請求項1
に記載の
有機層。
【請求項6】
前記電子求引性基は、F、CF
3
、OCF
3
、SF
5
、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、ピリミジン基、トリアジン基、およびその組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の有機層。
【請求項7】
Rは、出現する毎に同一または異なっ
て、無置換の6~
20個の炭素原子を有するアリール
基、及びハロゲン、ニトロソ、ニトロ、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボリル
基、ホスホノキシ
基のうちの1つまたは複数の基により置換され
た6~20個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選ばれる、請求項1に記載の
有機層。
【請求項8】
Rは、出現する毎に同一または異なって、フェニル基、メトキシフェニル基、p-メチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル基、ビフェニル基、ポリフルオロフェニル基、ニトロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメトキシ)フェニル基、4-シアノテトラフルオロフェニル基、およびF、CN、またはCF
3
のうちの1つまたは複数により置換されたフェニル基またはビフェニル基、およびその組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の有機層。
【請求項9】
Rは、出現する毎に同一または異なって、
【化2】
という構造からなる群から選ばれる、請求項
1に記載の
有機層。
【請求項10】
1つの式1で表される化合物において、2つのRが同じである、請求項9に記載の有機層。
【請求項11】
前記化合物は、式2で表される構造を有する、請求項
9に記載の
有機層。
【化3】
(ただし、
式2における2つのZは構造が同一であり、
2つのRは構造が同一または異なり、且つ、
前記Z、X、Y、Rは、それぞれ対応して下記表に示す原子または基から選ばれる。)
(A1は
【化4】
である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子素子に用いられる化合物に関し、例えば、有機発光素子に関する。特に、脱水素ベンゾビスオキサゾール、脱水素ベンゾビスチアゾール、または脱水素ベンゾビスセレナゾール、およびその類似構造を有する新型な化合物、当該化合物を含む有機エレクトロルミネセント素子および化合物の処方に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子素子は、有機発光ダイオード(OLEDs)、有機電界効果トランジスタ(O-FETs)、有機発光トランジスタ(OLETs)、有機起電セル(OPVs)、色素-増感太陽電池(DSSCs)、有機光検出器、有機感光装置、有機電界効果素子(OFQDs)、発光電気化学セル(LECs)、有機レーザダイオードおよび有機プラズマ発光素子を含むが、それに限定されない。
【0003】
1987年、イーストマンコダック(Eastman Kodak)のTangおよびvan Slykeにより、電子輸送層および発光層として、アリールアミン正孔輸送層とトリス-8-ヒドロキシキノリナート-アルミニウム層とを含む二層有機エレクトロルミネセント素子が報告されている(Applied Physics Letters, 1987, 51(12):913-915(非特許文献1))。素子に対してバイアスが一旦印加されると、緑色光が素子から発射される。この発明は、現代の有機発光ダイオード(OLEDS)の発展の基礎を築き上げている。最も先進的なOLEDsは、電荷注入・輸送層、電荷・励起子ブロッキング層、および陰極と陽極との間の1つまたは複数の発光層などの複数の層を含んでもよい。OLEDSは、自発光性ソリッドステート素子であるので、表示および照明の適用に対して極めて大きな潜在力を提供している。また、有機材料の固有な特性、例えばそれらの可撓性は、可撓性基板で行った製造などの特殊な適用に非常に適合するようになっている。
【0004】
OLEDは、その発光メカニズムに応じて、3種の異なるタイプに分けられている。Tangおよびvan Slykeにより発明されたOLEDは、蛍光OLEDであり、一重項発光のみを使用する。素子において生成した三重項が非輻射減衰通路により浪費され、蛍光OLEDの内部量子効率(IQE)が25%に過ぎないため、この制限はOLEDの商業化を妨害している。1997年、ForrestおよびThompsonにより、錯体含有重金属からの三重項発光を発光体として用いるりん光OLEDが報告されている。そのため、一重項および三重項を収穫し、100%のIQEを実現できる。その効率が高いため、りん光OLEDの発見および発展は、直接的にアクティブマトリクスOLED(AMOLED)の商業化に貢献する。最近、Adachiは、有機化合物の熱活性化遅延蛍光(TADF)によって高効率を実現している。これらの発光体は、小さい一重項-三重項ギャップを有するため、励起子が三重項から一重項に戻るトランジションが可能となる。TADF素子において、三重項励起子がリバースシステム間で貫通すること(逆項間交差)によって一重項励起子を生成することに起因してIQEが高くなっている。
【0005】
OLEDsは、さらに、所用材料の形態に応じて、小分子OLEDとポリマーOLEDとに分けられてもよい。小分子とは、ポリマーではない、有機または有機金属のいずれかの材料を指し、精確な構造を有すれば、小分子の分子量が大きくてもよい。明確な構造を有するデンドリマーは、小分子と認められている。ポリマーOLEDは、共役ポリマーと、側鎖の発光基を有する非共役ポリマーとを含む。製造過程において後重合を発生すると、小分子OLEDがポリマーOLEDになり得る。
【0006】
様々なOLEDの製造方法が公知である。小分子OLEDは、一般的に、真空熱蒸発により製造されるものである。ポリマーOLEDは、例えばスピンコート、インクジェット印刷およびノズル印刷などの溶液法により製造されるものである。材料が溶剤に溶解または分散することが可能であれば、小分子OLEDも溶液法により製造されることができる。
【0007】
有機発光表示装置は、正孔注入層および電子注入層を用いて電荷注入を促進する。ここで、正孔注入層は、単一の材料または1つ以上の材料で形成された機能層である。単一の材料の方法は、一般的にLUMOが深い材料を用い、1つ以上の材料の方法は、P型、LUMOが深い材料を正孔輸送材料にドーピングすることにより形成する。両者の共通点は、LUMOが深い材料を用いる必要があることである。
【0008】
米国特許出願公開第20050121667号明細書(特許文献1)には、有機介在型化合物を有機ドーパントとして有機半導電性の基体材料をドーピングしてその電気的性能を変更する応用が開示され、当該介在型化合物はキノンまたはキノン誘導体であり、同じ蒸発条件でF4-TCNQよりも低い揮発性を有する。その開示された一般式構造は以下を含む。
【化1】
【0009】
当該出願は、主にキノンまたはキノンの誘導体がドーパントとして有する独特な性能に注目するが、任意の本発明と類似する母核構造を有する化合物の特質および応用を開示または示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2005/0121667号明細書
【文献】米国特許第7279704号明細書
【文献】米国特許第5844363号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0230980号明細書
【文献】米国特許第6303238号明細書
【文献】米国特許第5703436号明細書
【文献】米国特許第5707745号明細書
【文献】米国特許第6097147号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0174116号明細書
【文献】米国特許第7968146号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0359122号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0349273号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】Applied Physics Letters, 1987, 51(12):913-915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、LUMOが深い材料は、強い電子求引性置換基を有するため、合成が難しく、さらに、深いLUMO、高い安定性、および高い成膜性等の特質を同時に有しにくい。例えば、F4-TCNQ(P型正孔注入材料)は、深いLUMOを有するが、蒸着温度が低すぎ、積層の制御、生産性の再現性および素子の熱安定性に影響を及ぼす。また、例えば、HATCNは結晶性が強いため、素子において成膜性の問題が存在し、さらにLUMOが十分に深くなく、P型ドーピングとして使用できない。正孔注入層がOLED素子の電圧、効率および寿命のいずれにも大きく影響するため、深いLUMO、高い安定性および高い成膜性の材料の研究開発は、業界で非常に重要であり差し迫っている。
【0013】
本発明は、一連の脱水素ベンゾビスオキサゾール、脱水素ベンゾビスチアゾール、または脱水素ベンゾビスセレナゾール、その類似構造を有する新型な化合物を提供して少なくとも一部の上記問題を解決することを目的とする。この化合物は、有機エレクトロルミネセント素子における電荷輸送材料および電荷注入材料として用いることができる。これらの新型な化合物は、有機エレクトロルミネセント素子の電圧および寿命等の性能を大幅に改善できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施例によれば、式1の構造を有する化合物を開示する。
【化2】
ただし、
XおよびYは、出現する毎に同一または異なってCR’’R’’’、NR’、O、S、またはSeから選択され、
Z
1およびZ
2は、出現する毎に同一または異なってO、S、またはSeから選択され、
R、R’、R’’およびR’’’は、出現する毎に同一または異なって、水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルキル基、置換もしくは無置換の3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、置換もしくは無置換の7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、置換もしくは無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、置換もしくは無置換の3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、置換もしくは無置換の6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基、およびその組合せからなる群から選択され、
各Rは同一でも異なってもよく、かつ、R、R’、R’’およびR’’’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、
隣接する置換基は、結合して環を形成していてもよい。
【0015】
本発明の別の実施例によれば、陽極と、陰極と、式1を有する化合物を含む、前記陽極と陰極との間に設けられた有機層と、を備えるエレクトロルミネセント素子をさらに開示する。
【化3】
ただし、
XおよびYは、出現する毎に同一または異なってCR’’R’’’、NR’、O、S、またはSeから選択され、
Z
1およびZ
2は、出現する毎に同一または異なってO、S、またはSeから選択され、
R、R’、R’’およびR’’’は、出現する毎に同一または異なって、水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルキル基、置換もしくは無置換の3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、置換もしくは無置換の7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、置換もしくは無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、置換もしくは無置換の3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、置換もしくは無置換の6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基、およびその組合せからなる群から選択され、
隣接する置換基は、任意に結合して環を形成することができ、
各Rは同一でも異なってもよく、かつ、R、R’、R’’およびR’’’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0016】
本発明の別の実施例によれば、式1の構造を有する前記化合物を含む化合物の処方をさらに開示する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に開示された脱水素ベンゾビスオキサゾール、脱水素ベンゾビスチアゾール、または脱水素ベンゾビスセレナゾール、およびその類似構造を有する新型な化合物は、エレクトロルミネセント素子における電荷輸送材料および電荷注入材料として用いることができる。これらの新型な化合物は、有機エレクトロルミネセント素子の電圧および寿命等の性能を大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に開示された化合物および化合物の処方を含有可能な有機発光装置の模式図
【
図2】本発明に開示された化合物および化合物の処方を含有可能な直列連結された有機発光装置の模式図
【
図3】本発明に開示された化合物および化合物の処方を含有可能な別の直列連結された有機発光装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
OLEDは、ガラス、プラスチック、および金属などの様々な基板で製造できる。
図1は、有機発光装置100を例示的に制限せずに示している。図面に対して、必ずしも縮尺どおりに製作するわけではなく、図において、必要に応じて一部の層構造を省略してもよい。装置100には、基板101、陽極110、正孔注入層120、正孔輸送層130、電子ブロッキング層140、発光層150、正孔ブロッキング層160、電子輸送層170、電子注入層180および陰極190が含まれてもよい。装置100は、記載される層を順に積層することにより製造されてもよい。各層の性質、機能および例示的な材料については、米国特許第7279704号明細書(特許文献2)の第6~10欄においてより詳細に記載されており、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0020】
これらの層のそれぞれには、より多くの実例がある。例示的には、全文を援用するように組み込まれた米国特許第5844363号明細書(特許文献3)において、可撓性で透明な基板-陽極の組合せが開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号明細書(特許文献4)において、p型ドープの正孔輸送層の実例は50:1のモル比でF4-TCNQがドーピングされたm-MTDATAであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた、トンプソン(Thompson)らによる米国特許第6303238号明細書(特許文献5)において、ホスト材料の実例が開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた特許文献4において、n型ドープの電子輸送層の実例は1:1のモル比でLiがドーピングされたBPhenであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第5703436号明細書(特許文献6)および米国特許第5707745号明細書(特許文献7)において、例えばMg:Agなどの金属薄層と、その上に被覆された、スパッタ積層された透明な導電ITO層とを有する複合陰極を含む陰極の実例が開示されている。
全文を援用するように組み込まれた米国特許第6097147号明細書(特許文献8)および特許文献4において、より詳細に、ブロッキング層の原理と使用が記載されている。
全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号明細書(特許文献9)において注入層の実例が提供されている。全文を援用するように組み込まれた特許文献9において、保護層が記載されている。
【0021】
非限定的な実施例により上述した分層構造が提供される。上述した各種の層を組み合わせることによってOLEDの機能が実現することができ、或いは、一部の層を完全に省略できる。それは、明確に記載されていない他の層を含んでもよい。それぞれの層内に、最適な性能を実現するように、単一の材料または多種の材料の混合物を使用できる。機能層はいずれも、複数なサブ層を含んでもよく、例えば、発光層は、所望の発光スペクトルを実現するように、2層の異なる発光材料を有してもよい。
【0022】
一実施例において、OLEDは、陰極と陽極との間に設けられた「有機層」を有すると記載されてもよい。当該有機層は、1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0023】
一実施例において、2つおよび2つ以上のOLEDユニットを直列連結して直列連結されたOLEDを形成することができ、例えば、
図2は、直列連結された有機発光装置500を例示的に制限せずに示している。装置500は、基板101、陽極110、第1ユニット100、電荷発生層300、第2ユニット200、および陰極290を備えてもよい。ここで、第1ユニット100は、正孔注入層120、正孔輸送層130、電子ブロッキング層140、発光層150、正孔ブロッキング層160、および電子輸送層170を備え、第2ユニット200は、正孔注入層220、正孔輸送層230、電子ブロッキング層240、発光層250、正孔ブロッキング層260、電子輸送層270、および電子注入層280を備え、電荷発生層300は、N型電荷発生層310およびP型電荷発生層320を備える。装置500は、記載される層を順に積層することにより製造できる。
【0024】
OLEDにもカプセル化層が必要であり、
図3に示すように、有機発光装置600が例示的に制限せずに示されている。
図2との相違点は、水分および酸素などの外界からの有害物質を防止するように、陰極290上にカプセル化層102を含んでもよい。ガラス、または有機-無機混合層などのカプセル化機能を提供可能ないかなる材料も、カプセル化層として用いられてもよい。カプセル化層は、OLED素子の外部に、直接、または間接的に配置されるべきである。多層薄膜カプセル化については、米国特許第7968146号明細書(特許文献10)において記載されており、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0025】
本発明の実施例により製造される素子は、当該素子の1つまたは複数の電子部材モジュール(或いは、ユニット)を有する各種の消費製品に組み込まれてもよい。これらの消費製品は、例えば、フラットパネルディスプレイ、モニタ、医療用モニタ、テレビ、ビルボード、室内または室外用照明ランプおよび/または信号ランプ、ヘッドアップディスプレイ、全部または一部透明のディスプレイ、可撓性ディスプレイ、スマートフォン、フラットパネルコンピューター、フラットパネル携帯電話、ウェアラブル素子、スマートウォッチ、ラップトップコンピューター、デジタルカメラ、携帯型ビデオカメラ、ファインダー、マイクロディスプレイ、3-Dディスプレイ、車載ディスプレイおよびテールライトを含む。
【0026】
本明細書に記載される材料および構造は、上述にて列挙されている他の有機電子素子にも用いられてもよい。
【0027】
本明細書において、「頂部」の用語は、基板から最も遠いことを意味し、「底部」の用語は、基板から最も近いことを意味する。第1層が第2層「上」に設けられていると記載されている場合、第1層が基板から相対的に遠いように設けられている。第1層が第2層「と」「接触する」ことを規定していない限り、第1層と第2層との間に他の層が存在してもよい。例示的には、陰極と陽極との間に各種の有機層が存在しても、依然として、陰極が陽極「上」に設けられていると記載されることができる。
【0028】
本明細書において、「溶液が処理可能である」とは、溶液または懸濁液の形態で液体媒体に溶解、分散または輸送可能であり、および/または液体媒体から積層可能であることを意味する。
【0029】
配位子は、直接的に発射材料の感光性質を促成すると、「感光性」と呼ばれてもよいことが信じられている。配位子は、発射材料の感光性質を促成しないと、「補助性」と呼ばれてもよい。しかし、補助性の配位子は、感光性配位子の性質を変更できることが信じられている。
【0030】
蛍光OLEDの内部量子効率(IQE)は、遅延蛍光の存在によって25%のスピン統計による制限を超えてもよいことが信じられている。遅延蛍光は、一般的に2つのタイプ、すなわちP型遅延蛍光およびE型遅延蛍光に分けられてもよい。P型遅延蛍光は、三重項-三重項消滅(TTA)により生成される。
【0031】
一方、E型遅延蛍光は、2つの三重項の衝突ではなく、三重項と一重項との励起状態の変換に依存する。E型遅延蛍光を生成可能な化合物は、エネルギー状態の変換を行うように、極めて小さい一重項-三重項ギャップを有することが必要である。熱エネルギーは、三重項から一重項までの遷移を活性化できる。このようなタイプの遅延蛍光は、熱活性化遅延蛍光(TADF)とも呼ばれる。TADFの顕著な特徴は、遅延成分が温度の上昇と伴って向上することにある。リバースシステム(RISC)間の貫通(逆項間交差)の速度が十分に速いと、三重項からの非輻射減衰を最小化させ、バックフィルした一重項の励起状態の割合は75%に達することができる。一重項の合計割合は100%であってもよく、エレクトロによる励起子のスピン統計の25%をはるかに超えている。
【0032】
E型遅延蛍光の特徴は、励起複合物系または単一の化合物から見える。理論に限定されず、E型遅延蛍光は、発光材料が小さい一重項-三重項エネルギーギャップ(ΔES-T)を有する必要がある。有機非金属含有の供与体・受容体発光材料は、この点を実現する可能性がある。これらの材料の発射は、通常、供与体・受容体電荷遷移(CT)型発射であると特徴付けられる。これらの供与体・受容体型化合物において、HOMOとLUMOとの空間分離は、一般的に小さいΔES-Tを生成することになる。これらの状態は、CT状態を含んでもよい。通常、供与体・受容体発光材料は、電子供与体部分(例えば、アミン基またはカルバゾール誘導体)と電子受容体部分(例えば、N含有の六員芳香族環)を結合することにより構築される。
【0033】
〔置換基の専門用語の定義について〕
ハロゲンまたはハロゲン化物とは、本明細書に用いられるように、フッ素、クロロ、臭素およびヨウ素を含む。
【0034】
アルキル基とは、直鎖および分岐鎖のアルキル基を含む。アルキル基の実例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、ネオペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-ペンチルヘキシル、1-ブチルペンチル、1-ヘプチルオクチル、および3-メチルペンチルを含む。また、アルキル基は、置換されていてもよい。アルキル基鎖における炭素は、他のヘテロ原子で置換されてもよい。そのうち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよびネオペンチルであることが好ましい。
【0035】
シクロアルキル基とは、本明細書に用いられるように、環状アルキル基を含む。好ましいシクロアルキル基は、環炭素原子数4~10のシクロアルキル基であり、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4,4-ジメチルシクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、1-ノルボルニル基、2-ノルボルニル基などを含む。また、シクロアルキル基は、置換されていてもよい。環における炭素は、他のヘテロ原子で置換されてもよい。
【0036】
アルケニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖および分岐鎖のオレフィン基を含む。好ましいアルケニル基は、炭素原子数2~15のアルケニル基である。アルケニル基の実施例は、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、1-メチルビニル基、スチリル基、2,2-ジフェニルビニル基、1,2-ジフェニルビニル基、1-メチルアリル基、1,1-ジメチルアリル基、2-メチルアリル基、1-フェニルアリル基、2-フェニルアリル基、3-フェニルアリル基、3,3-ジフェニルアリル基、1,2-ジメチルアリル基、1-フェニル-1-ブテニル基および3-フェニル-1-ブテニル基を含む。また、アルケニル基は、置換されていてもよい。
【0037】
アルキニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖および分岐鎖のアルキニル基を含む。好ましいアルキニル基は、炭素原子数2~15のアルキニル基である。また、アルキニル基は、置換されていてもよい。
【0038】
アリール基または芳香族基とは、本明細書に用いられるように、非縮合および縮合系を考慮する。好ましいアリール基は、炭素原子数6~60、より好ましくは炭素原子数6~20、さらに好ましくは炭素原子数6~12のアリール基である。アリール基の実施例は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、テトラフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、およびアズレンを含み、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フルオレニルおよびナフタレンを含むことが好ましい。また、アリール基は、置換されていてもよい。非縮合アリール基の実施例は、フェニル、ビフェニル-2-イル、ビフェニル-3-イル、ビフェニル-4-イル、p-ターフェニル-4-イル、p-ターフェニル-3-イル、p-トリビフェニル-2-イル、m-ターフェニル-4-イル、m-ターフェニル-3-イル、m-ターフェニル-2-イル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、p-(2-フェニルプロピル)フェニル、4’-メチルビフェニル、4’’-tert-ブチル-p-ターフェニル-4-イル、o-クミル、m-クミル、p-クミル、2,3-キシリル、3,4-キシリル、2,5-ジメチルフェニル、メシチレンおよびm-テトラフェニルを含む。
【0039】
複素環基または複素環とは、本明細書に用いられるように、芳香族および非芳香族の環状基を考慮する。イソアリール基もヘテロアリール基を指す。好ましい非芳香族複素環基は、環原子が3~7であり、少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、窒素、酸素および硫を含む。複素環基は、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、硫原子およびセレン原子から選択されるヘテロ原子を有する芳香族複素環基であってもよい。
【0040】
ヘテロアリール基とは、本明細書に用いられるように、ヘテロ原子数1~5の非縮合および縮合ヘテロ芳香族基を考慮する。好ましいヘテロアリール基は、炭素原子数3~30、より好ましくは炭素原子数3~20、さらに好ましくは炭素原子数3~12のヘテロアリール基である。好適なヘテロアリール基は、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリドインドール、ピロロピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インデノアジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、ベンゾフランピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノビピリジン、ベンゾセレノピリジン、およびセレンベンゾピリジンを含み、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、ベンズイミダゾール、1,2-アザボラン、1,3-アザボラン、1,4-アザボラン、ボラゾールおよびそのアザ類似物を含むことが好ましい。また、ヘテロアリール基は、置換されていてもよい。
【0041】
アルコキシ基とは、-O-アルキル基で表される。アルキル基の例および好ましい例は、上記例と同様である。炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~6のアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシを含む。炭素原子数が3以上のアルコキシ基は、直鎖状、環状、または分岐鎖状であってもよい。
【0042】
アリールオキシ基とは、-O-アリール基または-O-ヘテロアリール基で表される。
アリール基およびヘテロアリール基の例および好ましい例は、上記例と同様である。炭素原子数6~40のアリールオキシ基の例は、フェノキシ基およびビフェニルオキシ基を含む。
【0043】
アラルキル基とは、本明細書に用いられるように、アリール置換基を有するアルキル基である。また、アラルキル基は、置換されていてもよい。アラルキル基の例は、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピル、2-フェニルイソプロピル、フェニル-tert-ブチル、α-ナフチルメチル、1-α-ナフチルエチル、2-α-ナフチルエチル、1-α-ナフチルイソプロピル、2-α-ナフチルイソプロピル、β-ナフチルメチル、1-β-ナフチル-エチル、2-β-ナフチル-エチル、1-β-ナフチルイソプロピル、2-β-ナフチルイソプロピル、p-メチルベンジル、m-メチルベンジル、o-メチルベンジル、p-クロロベンジル、m-クロロベンジル、o-クロロベンジル、p-ブロモベンジル、m-ブロモベンジル、o-ブロモベンジル、p-ヨードベンジル、m-ヨードベンジル、o-ヨードベンジル、p-ヒドロキシベンジル、m-ヒドロキシベンジル、o-ヒドロキシベンジル、p-アミノベンジル、m-アミノベンジル、o-アミノベンジル、p-ニトロベンジル、m-ニトロベンジル、o-ニトロベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-ヒドロキシ-2-フェニルイソプロピルおよび1-クロロ-2-フェニルイソプロピルを含む。そのうち、ベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピルおよび2-フェニルイソプロピルであることが好ましい。
【0044】
アザジベンゾフラン、アザ-ジベンゾチオフェンなどにおける「アザ」とは、対応する芳香族フラグメントにおける1つまたは複数のC-H基が窒素原子に置換されることを指す。例えば、アザトリフェニレンは、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、ジベンゾ[f,h]キノリン、および環系において2つ以上の窒素を有する他の類似物を含む。当業者であれば、上述したアザ誘導体の他の窒素類似物を容易に想到することができ、かつこれらの類似物は、すべて本明細書に記載される専門用語に含まれるものとして確定される。
【0045】
分子フラグメントについて、置換基または他の形態で他の部分に結合させると記載する場合、フラグメント(例えば、フェニル基、フェニレン基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基)であるか否か、或いは、分子全体(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるか否かにより、その名称を確定できることを理解すべきである。本明細書に用いられるように、置換基の指定、或いはフラグメントの結合の異なる形態は、均等であると認められている。
【0046】
本明細書で言及される化合物において、水素原子が重水素で一部または全部置換されてもよい。他の原子、例えば炭素および窒素も、それらの他の安定した同位体で置換されてもよい。素子の効率および安定性を向上させるために、化合物において他の安定した同位体の置換が好ましい可能性がある。
【0047】
本明細書で言及される化合物において、複数置換とは、二重置換を含む、最も多くの使用可能な置換に達するまでの範囲を指す。本明細書で言及される化合物中のある置換基は、複数置換(二重置換、三重置換、四重置換などを含む)を意味すると、その置換基はその結合構造上の複数の利用可能な置換位置に存在してもよいことを意味し、複数の利用可能な置換位置にいずれも存在する当該置換基は、同じ構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0048】
本発明において、特に断りのない限り、置換のアルキル基、置換のシクロアルキル基、置換のヘテロアルキル基、置換のアラルキル基、置換のアルコキシ基、置換のアリールオキシ基、置換のアルケニル基、置換のアルキニル基、置換のアリール基、置換のヘテロアリール基、置換のアルキルシリル基、置換のアリールシリル基、置換のアミン基、置換のアシル基、置換のカルボニル基、置換のカルボキシル基、置換のエステル基、置換のスルフィニル基、置換のスルホニル基、置換のホスホノキシ基からなる群のうちのいずれかの用語を使用すると、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、およびホスホノキシ基のうちのいずれかの基が、重水素、ハロゲン、無置換の1~20個の炭素原子を有するアルキル基、無置換の3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、無置換の1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、無置換の7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、無置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、無置換の6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、無置換の2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、無置換の2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、無置換の3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、無置換の6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基、無置換の0~20個の炭素原子を有するアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、およびその組合せから選択される1つまたは複数により置換され得ることを意味する。
【0049】
本明細書で言及される化合物において、隣接する置換基が結合して環を形成していてもよいように特に限定されない限り、前記化合物における隣接する置換基は結合して環を形成することができない。本明細書で言及される化合物において、隣接する置換基が結合して環を形成していてもよいことは、隣接する置換基が結合して環を形成する場合を含むとともに、隣接する置換基が結合せずに環を形成しない場合も含む。隣接する置換基が結合して環を形成していてもよい場合、形成される環は、単環または多環、および脂環、ヘテロ脂環、アリール環、またはヘテロアリール環であってもよい。このような記述において、隣接する置換基は、同一の原子に結合された置換基、互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基、またはさらに離れた炭素原子に結合された置換基を指してもよい。好ましくは、隣接する置換基は、同一の炭素原子に結合された置換基および互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基を指す。
【0050】
隣接する置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、同一の炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示できる。
【化4】
【0051】
隣接する置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示できる。
【化5】
【0052】
また、隣接する置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基の一方が水素を表す場合に、第2置換基は水素原子が結合された位置に結合されて環を形成することを意味すると認められている。下記式で例示する。
【化6】
【0053】
本発明の一実施例によれば、式1を有する化合物を開示する。
【化7】
ただし、
XおよびYは、出現する毎に同一または異なってCR’’R’’’、NR’、O、S、またはSeから選択され、
Z
1およびZ
2は、出現する毎に同一または異なってO、S、またはSeから選択され、
R、R’、R’’およびR’’’は、出現する毎に同一または異なって、水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルキル基、置換もしくは無置換の3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、置換もしくは無置換の7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、置換もしくは無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、置換もしくは無置換の3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、置換もしくは無置換の6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基、およびその組合せからなる群から選択され、
各Rは同一でも異なってもよく、かつ、R、R’、R’’およびR’’’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、
隣接する置換基は、結合して環を形成していてもよい。
【0054】
本実施例において、R、R’、R’’およびR’’’は、出現する毎に同一または異なって前記置換基群から選択され、当業者は、式1において同時に出現する2つの同じ番号を有するある置換基(例えば、R、R’、R’’、またはR’’’)が、同一の置換基または異なる置換基から選択できることを明らかに確定できる。
【0055】
本発明の一実施例によれば、XおよびYは、出現する毎に同一または異なってCR’R’’またはNR’’’から選択され、R’、R’’およびR’’’は少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0056】
本発明の一実施例によれば、XおよびYは、出現する毎に同一または異なってCR’R’’またはNR’’’から選択され、R、R’、R’’およびR’’’は少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0057】
本発明の一実施例によれば、XおよびYは、出現する毎に同一または異なってO、S、またはSeから選択され、Rのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0058】
本発明の一実施例によれば、XおよびYは、出現する毎に同一または異なってO、S、またはSeから選択され、Rはいずれも少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0059】
本発明の一実施例によれば、前記電子求引性基のハメット定数は0.05以上であり、または前記電子求引性基のハメット定数は0.3以上であり、または前記電子求引性基のハメット定数は0.5以上である。
【0060】
本発明に係る電子求引性基のハメットの置換基定数は0.05以上であり、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、電子求引性が強く、化合物のLUMOエネルギーレベルを著しく低減し、電荷移動度を向上させる効果を奏することができる。
【0061】
なお、前記ハメット置換基定数は、ハメット置換基のパラ定数および/またはメタ定数であり、パラ定数およびメタ定数のうちの1つが0.05以上であれば、本発明で選択される基とすることができる。
【0062】
本発明の一実施例によれば、前記電子求引性基は、ハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、窒素複素芳香環基、またはハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、窒素複素芳香環基のうちの1つまたは複数により置換された、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基のうちの任意の基、およびその組合せからなる群から選択される。
【0063】
本発明の一実施例によれば、前記電子求引性基は、F、CF3、OCF3、SF5、SO2CF3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、ピリミジン基、トリアジン基、およびその組合せからなる群から選択される。
【0064】
本発明の一実施例によれば、
XおよびYは、出現する毎に同一または異なって、O、S、Se、および下式の構造からなる群から選択される。
【化8】
ここで、
R
1は、出現する毎に同一または異なって、水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルキル基、置換もしくは無置換の3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、置換もしくは無置換の7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、置換もしくは無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、置換もしくは無置換の3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、置換もしくは無置換の6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基、およびその組合せからなる群から選択され、
VおよびWは、出現する毎に同一または異なってCRvRw、NRv、O、S、Seから選択され、
Arは、出現する毎に同一または異なって、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基または置換もしくは無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基から選択され、
A、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、RvおよびRwは、出現する毎に同一または異なって、水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルキル基、置換もしくは無置換の3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、置換もしくは無置換の7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、置換もしくは無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、置換もしくは無置換の3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、置換もしくは無置換の6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基、およびその組合せからなる群から選択され、
Aは少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、かつ、前記任意の構造において、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f、R
g、R
h、R
vおよびR
wのうちの1つまたは複数が出現すると、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0065】
本実施例において、「*」は、前記XおよびY基の、式1中の脱水素ベンゾビスオキサゾール環、脱水素ベンゾビスチアゾール環、または脱水素ベンゾビスセレナゾール環と結合する位置を表す。
【0066】
本発明の一実施例によれば、ここで、R1は、出現する毎に同一または異なって、F、CF3、OCF3、SF5、SO2CF3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、ペンタフルオロフェニル基、4-シアノテトラフルオロフェニル基、テトラフルオロピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、およびその組合せからなる群から選択される。
【0067】
本発明の一実施例によれば、少なくとも1つの電子求引性基を有する基は、F、CF3、OCF3、SF5、SO2CF3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、ペンタフルオロフェニル基、4-シアノテトラフルオロフェニル基、テトラフルオロピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、およびその組合せからなる群から選択される。
【0068】
本発明の一実施例によれば、XおよびYは、出現する毎に同一または異なって、O、S、Se、および下式の構造からなる群から選択される。
【化9】
【0069】
本実施例において、「*」は、前記XおよびY基の、式1中の脱水素ベンゾビスオキサゾール環、脱水素ベンゾビスチアゾール環、または脱水素ベンゾビスセレナゾール環と結合する位置を表す。
【0070】
本発明の一実施例によれば、Rは、出現する毎に同一または異なって、水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、無置換の1~20個の炭素原子を有するアルキル基、無置換の3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、無置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、無置換の2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、およびハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基およびホスホノキシ基のうちの1つまたは複数の基により置換された、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基のうちのいずれかの基、およびその組合せからなる群から選択される。
【0071】
本発明の一実施例によれば、Rは、出現する毎に同一または異なって、水素、重水素、メチル、イソプロピル、NO2、SO2CH3、SCF3、C2F5、OC2F5、OCH3、ジフェニルメチルシリル基、フェニル基、メトキシフェニル基、p-メチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル基、ビフェニル基、ポリフルオロフェニル基、ジフルオロピリジン基、ニトロフェニル基、ジメチルチアゾール基、CNおよびCF3のうちの1つまたは複数により置換されたビニル基、CNまたはCF3のうちの1つにより置換されたエチニル基、ジメチルホスホノキシ基、ジフェニルホスホノキシ基、F、CF3、OCF3、SF5、SO2CF3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメトキシ)フェニル基、4-シアノテトラフルオロフェニル基、F、CNおよびCF3のうちの1つまたは複数により置換されたフェニル基またはビフェニル基、テトラフルオロピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、ジフェニルボリル基、オキサボロンアントラニル基、およびその組合せからなる群から選択される。
【0072】
本発明の一実施例によれば、前記XおよびYは、下式の構造で表される。
【化10】
【0073】
本発明の一実施例によれば、Rは、出現する毎に同一または異なって、下式の構造からなる群から選択される。
【化11】
【化12】
【化13】
【0074】
本実施例において、波線で表されている位置は、前記R基の、式1中の脱水素ベンゾビスオキサゾール環、脱水素ベンゾビスチアゾール環、または脱水素ベンゾビスセレナゾール環と結合する位置を表す。
【0075】
本発明の一実施例によれば、Rは、出現する毎に同一または異なって、B1~B88からなる群から選択される。B1~B88の具体的な構造は前記実施例を参照する。
【0076】
本発明の一実施例によれば、ここで、1つの式1で表される化合物において、2つのRが同じである。
【0077】
本発明の一実施例によれば、ここで、前記化合物は、化合物1~化合物1428からなる群から選択され、化合物1~化合物1428の具体的な構造は下記の通りである。
【化14】
ただし、式2における2つのZは構造が同一であり、2つのRは構造が同一または異なり、かつ、Z、X、Y、およびRは、それぞれ対応して下表に示す原子または基から選ばれる。
【0078】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0079】
本発明の一実施例によれば、陽極と、陰極と、式1を有する化合物を含む、前記陽極と陰極との間に設けられた有機層と、を備えるエレクトロルミネセント素子をさらに開示する。
【化15】
ただし、
XおよびYは、出現する毎に同一または異なってCR’’R’’’、NR’、O、S、またはSeから選択され、
Z
1およびZ
2は、出現する毎に同一または異なってO、S、またはSeから選択され、
R、R’、R’’およびR’’’は、出現する毎に同一または異なって、水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ、ニトロ、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボリル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルキル基、置換もしくは無置換の3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、置換もしくは無置換の7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、置換もしくは無置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、置換もしくは無置換の2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、置換もしくは無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、置換もしくは無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、置換もしくは無置換の3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、置換もしくは無置換の6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基、およびその組合せからなる群から選択され、
各Rは同一でも異なってもよく、かつ、R、R’、R’’およびR’’’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、
隣接する置換基は、結合して環を形成していてもよい。
【0080】
本発明の一実施例によれば、前記素子において、前記有機層は正孔注入層であり、かつ、前記正孔注入層は前記化合物により単独で形成される。
【0081】
本発明の一実施例によれば、前記素子において、前記有機層は、ドーピングを含む前記化合物により形成される正孔注入層であり、前記ドーピングは、少なくとも1種の正孔輸送材料を含み、前記正孔輸送材料は、トリアリールアミン単位を有する化合物、スピロビフルオレン化合物、ペンタセン化合物、オリゴチオフェン化合物、オリゴフェニル化合物、オリゴフェニレンビニル化合物、オリゴフルオレン化合物、ポルフィリン錯体または金属フタロシアニン錯体を含み、前記化合物と前記正孔輸送材料とのドーピングのモル比は、10000:1~1:10000である。
【0082】
本発明の一実施例によれば、前記正孔注入層において、前記化合物と前記正孔輸送材料とのドーピングのモル比は、10:1~1:100である。
【0083】
本発明の一実施例によれば、前記エレクトロルミネセント素子は、陽極と陰極との間に積層された複数の層を含み、前記層は第1発光層および第2発光層を含み、第1層は第1発光層を含み、第2層は第2発光層を含み、電荷発生層は第1層と第2層との間に設けられ、電荷発生層はp型電荷発生層およびn型電荷発生層を含み、前記式1を有する化合物を含む有機層はp型電荷発生層である。
【0084】
本発明の一実施例によれば、前記p型電荷発生層は少なくとも1種の正孔輸送材料をさらに含み、前記p型電荷発生層は、前記化合物を前記少なくとも1種の正孔輸送材料にドーピングすることにより形成され、前記正孔輸送材料は、トリアリールアミン単位を有する化合物、スピロビフルオレン化合物、ペンタセン化合物、オリゴチオフェン化合物、オリゴフェニル化合物、オリゴフェニレンビニル化合物、オリゴフルオレン化合物、ポルフィリン錯体または金属フタロシアニン錯体を含み、前記化合物と前記正孔輸送材料とのドーピングのモル比は、10000:1~1:10000である。
【0085】
本発明の一実施例によれば、前記p型電荷発生層において、前記化合物と前記正孔輸送材料とのドーピングのモル比は、10:1~1:100である。
【0086】
本発明の一実施例によれば、前記電荷発生層は、p型電荷発生層とn型電荷発生層との間に設けられた緩衝層をさらに含み、前記緩衝層は前記化合物を含む。
【0087】
本発明の別の実施例によれば、式1で表される化合物を含む化合物の処方をさらに開示する。前記化合物の具体的な構造は、前記いずれかの実施例に示すとおりである。
【0088】
〔他の材料との組合せ〕
本発明に記載される有機発光素子に用いられる特定層の材料は、素子に存在する各種の他の材料と組み合わせて使用できる。これらの材料の組合せについて、米国特許出願公開第2016/0359122号明細書(特許文献11)の[0132]~[0161]段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、かつ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別できる。
【0089】
本明細書において、有機発光素子に用いられる具体的な層の材料は、前記素子に存在する多種の他の材料と組み合わせて使用できると記載されている。例示的には、本明細書において開示される化合物は、多種のホスト、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極および他の存在可能な層と組み合わせて使用できる。これらの材料の組合せは、米国特許出願公開第2015/0349273号明細書(特許文献12)の[0080]~[0101]段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、かつ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別できる。
【0090】
材料合成の実施例において、説明しない限り、すべての反応が窒素の保護で行われる。
すべての反応溶剤は、無水であり、かつ市販品由来のまま使用される。合成される生成物に対して、本分野通常の1種または多種の機器(Bruker製の核磁気共鳴装置、島津製作所製の液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー/質量分析計、気体クロマトグラフィー/質量分析計、示差熱走査熱量装置、上海稜光技術製の蛍光分光光度計、武漢科思特製の電気化学作業ステーション、安徽貝意克製の昇華装置などを含むがそれに限定されず)を用いて、当業者にとって熟知の方法で構造確認と特性テストを行った。素子の実施例において、素子の特性に対しても、本分野通常の機器(Angstrom Engineering製の蒸着機、蘇州弗士達製の光学テストシステム、耐用年数テストシステム、北京量拓製のエリプソメーターなどを含むがそれに限定されず)を用いて、当業者にとって熟知の方法でテストを行った。当業者は上述した機器の使用、テスト方法などの関連内容を知っているので、サンプルの固有データを確実に、影響を受けずに取得できるため、上記関連内容を本明細書において繰り返し説明はしない。
【実施例】
【0091】
〔材料合成の実施例〕
本発明の化合物の調製方法は限定されず、下記化合物を典型的で非限定的な例とし、その合成経路および調製方法は以下のとおりである。
【0092】
合成実施例1:化合物56の合成ステップ1:[中間体1-a]の合成
【化16】
500mLの三つ口フラスコにDMSO(150mL)を加え、窒素を30分間バブリングし、HC(OEt)
3(22.2g、150mmol)、Y(OTf)
3(2.15g、4mmol)を順に加え、5分間バブリングし続け、2,5-ジアミノ-3,6-ジブロモベンゼン-1,4-ビスフェノール(8.94g、30mmol)を加え、60℃まで昇温し、20分間後に、溶液が茶色またはカーキ色になり、一晩攪拌した。反応が終了した後、その中にDCM/PE(1:1、500mL)を加え、濾過して固体を回収し、アセトンで洗浄し、濾過してオフホワイトの固体1-a(7.2g、収率75%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ=9.03(s,2H)。
【0093】
ステップ2:[中間体1-b]の合成
【化17】
250mLの二つ口フラスコにジオキサン(50mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(225mg、10mol%、1.0mmol)およびXPhos(1.0g、2.1mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、1-a(3.18g、10mmol)、p-トリフロメトキシベンゼンボロン酸(8.24g、40mmol)、炭酸カリウム(8.34g、60mmol)を順に加えた。110℃まで昇温して還流し、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色固体1-b(4.36g、収率91%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ=9.00(s,2H),8.33(d,J=8.8Hz,4H),7.63(d,J=8.8Hz,4H)。
【0094】
ステップ3:[中間体1-c]の合成
【化18】
窒素雰囲気で、中間体1-b(4.36g、9.1mmol)をTHF(114mL、0.08M)に加え、-94℃(アセトン/液体窒素冷却浴)まで降温し、n-ブチルリチウム(13.8mL、20.93mmol、1.6Mのn-へキサン溶液)をゆっくりと滴下し、この温度を1h保持した後、-78℃(アセトン/ドライアイス冷却浴)まで徐々に昇温して8h反応させた。単体ヨウ素(6.93g、27.3mmol)のTHF溶液(15mL)を加え、加え終わった後、室温まで徐々に昇温して一晩置き、少量の飽和塩化アンモニウムの水溶液を加えてクエンチした後、セライトを直接加えて撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:DCM=3:1~1:1)により精製し、白色固体の生成物1-c(4.0g、収率60%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ=8.16(d,J=8.8Hz,4H),7.62(d,J=8.8Hz,4H)。
【0095】
ステップ4:[中間体1-d]の合成
【化19】
窒素雰囲気で、マロノニトリル(2.78g、42mmol)を無水DMF(70mL)に加え、0℃でNaH(1.67g、42mmol、含有量60%)を数回に分けて加え、0℃で10分間撹拌し、室温で20分間撹拌した後、1-c(5.08g、7mmol)およびPd(PPh
4)
3(1.62g、1.4mmol)を加え、90℃まで昇温して24~36h反応させた。完全に変換した後、氷水に注ぎ、4Nの希塩酸でpH<1となるように調節し、十分に撹拌した後、大量の黄色固体が析出し、濾過して固体を回収した。ジクロロメタンで洗浄し、黄色固体を4.38g得た。その後、ジクロロメタンで連続的に2回洗浄し、濾過し、黄色固体1-d(4.2g、収率98%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ=8.08(d,J=8.8Hz,4H),7.56(d,J=8.8Hz,4H)。
【0096】
ステップ5:化合物56の合成
【化20】
窒素雰囲気で、1-d(3.04g、5mmol)をDCM(150mL)に加え、0℃まで降温し、PIFA(6.45g、15mmol)をバッチで加え、室温で3日間撹拌し、溶液が紫黒色となった。反応液にn-へキサン(450mL)を加え、10分間撹拌した後、濾過し、黒緑色固体を得た。それぞれ(DCM/PE=2:1~1:1)を用いて2回洗浄し、最後に、黒緑色固体の化合物56(2.5g、収率83%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.30(d,J=8.4Hz,4H),7.73(d,J=8.4Hz,4H)。
【0097】
合成実施例2:化合物68の合成ステップ1:[中間体2-a]の合成
【化21】
250mLの二つ口フラスコにジオキサン(80mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(360mg、1.6mmol)およびXPhos(1.53g、3.2mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、1-a(4.1g、13mmol)、3,5-ジ(トリフルオロメチル)ベンゼンボロン酸(14.0g、54mmol)、フッ化セシウム(9.12g、60mmol)を順に加えた。110℃まで昇温して還流し、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色固体2-a(6.7g、収率88%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.87(s,4H),8.41(s,2H),8.00(s,2H)。
【0098】
ステップ2:[中間体2-b]の合成
【化22】
窒素雰囲気で、2-a(6.2g、10.6mmol)をTHF(212mL、0.05M)に加え、-94℃(アセトン/液体窒素冷却浴)まで降温し、n-ブチルリチウム(15.2mL、24.4mmol、1.6Mのn-へキサン溶液)をゆっくりと滴下し、この温度を1h保持した後、-78℃(アセトン/ドライアイス冷却浴)まで徐々に昇温して8h反応させた。単体ヨウ素(8.07g、31.8mmol)のTHF溶液(20mL)を加え、加え終わった後、室温まで徐々に昇温して一晩置き、少量の飽和塩化アンモニウムの水溶液を加えてクエンチした後、セライトを直接加えて撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:DCM=6:1~2:1)により精製し、白色固体の生成物2-b(4.7g、収率53%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.69(s,4H),8.01(s,2H)。
【0099】
ステップ3:[中間体2-c]の合成
【化23】
窒素雰囲気で、マロノニトリル(1.56g、23.7mmol)を無水DMF(55mL、0.1M)に加え、0℃でNaH(948mg、23.7mmol、含有量60%)を数回に分けて加え、0℃で10分間撹拌し、室温で20分間撹拌した後、2-b(3.3g、3.95mmol)およびPd(PPh
4)
3(456mg、0.39mmol)を加え、90℃まで昇温して24~36h反応させた。完全に変換した後、氷水に注ぎ、4Nの希塩酸でpH<1となるように調節し、十分に撹拌した後、大量の黄色固体が析出し、濾過して固体を回収した。ジクロロメタンで洗浄し、黄色固体を2.98g得た。
その後、溶剤(DCM/PE=2:1、200mL)を用いて連続的に2回洗浄し、濾過し、黄色固体2-c(2.81g、収率99%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.57(s,4H),8.33(s,2H)。
【0100】
ステップ4:化合物68の合成
【化24】
窒素雰囲気で、2-c(2.85g、4.0mmol)を3部(0.95g/部)分けて3つの二つ口フラスコに入れ、それぞれDCM(200mL)を加え、0℃まで降温した後、PIFA(1.73g、4.0mmol)をバッチでそれぞれ加え、室温で3日間撹拌し、溶液が紫黒色となった。その後、3本の溶液を1Lの一つ口フラスコに入れ、溶液を50mL程度までスピンドライし、その中にn-へキサン(450mL)を加え、10分間撹拌した後、濾過し、黒緑色固体を得た。それぞれ(DCM/PE=2:1、200mL)を用いて2回洗浄し、最後に、黒緑色固体の化合物68(2.4g、収率85%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.86(s,4H),8.37(s,2H)。
【0101】
合成実施例3:化合物70の合成ステップ1:[中間体4-a]の合成
【化25】
250mLの二つ口フラスコにジオキサン(80mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(360mg、1.6mmol)およびXPhos(1.53g、3.2mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、1-a(4.1g、13mmol)、2,4-ジ(トリフルオロメチル)ベンゼンボロン酸(14.0g、54mmol)、フッ化セシウム(9.12g、60mmol)を順に加え、110℃まで昇温して還流し、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色固体4-a(6.83g、収率90%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.19(s,2H),8.12(s,2H),8.02(d,J=8.0Hz,2H),7.77(d,J=8.0Hz,2H)。
【0102】
ステップ2:[中間体4-b]の合成
【化26】
窒素雰囲気で、4-a(6.4g、11mmol)をTHF(150mL)に加え、-94℃(アセトン/液体窒素冷却浴)まで降温し、n-ブチルリチウム(15.8mL、25.3mmol、1.6Mのn-へキサン溶液)をゆっくりと滴下し、この温度を1h保持した後、-78℃(アセトン/ドライアイス冷却浴)まで徐々に昇温して8h反応させた。単体ヨウ素(8.4g、33mmol)のTHF溶液(20mL)を加え、加え終わった後、室温まで徐々に昇温して一晩置き、少量の飽和塩化アンモニウムの水溶液を加えてクエンチした後、セライトを直接加えて撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:DCM=10:1~2:1)により精製し、白色固体の生成物4-b(6.89g、収率75%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.16(s,2H),8.01(d,J=7.6Hz,2H),7.73(d,J=7.6Hz,2H)。
【0103】
ステップ3:[中間体4-c]の合成
【化27】
窒素雰囲気で、マロノニトリル(2.14g、32mmol)を無水DMF(60mL)に加え、0℃でNaH(1.40g、35mmol、含有量60%)を数回に分けて加え、0℃で10分間撹拌し、室温で20分間撹拌した後、4-b(4.51g、5.4mmol)およびPd(PPh
4)
3(1.15g、1.0mmol)を加え、90℃まで昇温して24~36h反応させた。完全に変換した後、氷水に注ぎ、4Nの希塩酸でpH<1となるように調節し、十分に撹拌した後、大量の黄色固体が析出し、濾過して固体を回収した。ジクロロメタンで洗浄し、黄色固体を2.98g得た。その後、ジクロロメタンで連続的に2回洗浄し、濾過し、黄色固体4-c(2.92g、収率76%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.35(m,4H),8.16(d,J=7.6Hz,2H)。
【0104】
ステップ4:化合物70の合成
【化28】
窒素雰囲気で、4-c(2.92g、4.1mmol)を3部(1g/部)分けて3つの二つ口フラスコに入れ、それぞれDCM(100mL)を加え、0℃まで降温した後、PIFA(1.8g、4.2mmol)をバッチでそれぞれ加え、室温で3日間撹拌し、溶液が紫黒色となった。その後、3本の溶液を1Lの一つ口フラスコに入れ、溶液を50mL程度まで濃縮し、その中にn-へキサン(450mL)を加え、10分間撹拌した後、濾過し、紫色固体を得た。それぞれ(DCM/PE=2:1、200mL)を用いて2回洗浄し、最後に、紫色固体化合物70(2.0g、収率70%)を得た。
1H NMR(400MHz,CD
2Cl
2)δ=8.22(s,2H),8.11(d,J=8.4Hz,2H),7.75(d,J=8.0Hz,2H)。
【0105】
合成実施例4:化合物101の合成ステップ1:[中間体5-a]の合成
【化29】
500mLの二つ口フラスコに蒸留水(50mL)を加え、1,4-フェニレンジアミン(17.0g、157mmol)および塩酸(30.7mL、125mmol)を加え、50℃まで昇温し、NH
4SCN(48.4g、636mmol)を加え、90℃まで昇温し続け、24h撹拌した。反応が終了した後、降温して濾過し、エタノールで洗浄した後、濾過し、灰色固体の化合物5-a(31.5g、収率90%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ=9.69(s,2H),7.32(s,4H)。
【0106】
ステップ2:[中間体5-b]の合成
【化30】
500mLの三つ口フラスコに、化合物5-a(15g、66.5mmol)およびクロロホルム(100mL)を順に加え、50℃まで昇温し、臭素(8mL、309mmol)のクロロホルム(100mL)溶液を非常にゆっくりと滴下し、滴下し終わった後、24~36h還流した。反応が終了した後、0℃まで降温し、濾過し、濾過ケーキをクロロホルムで3回洗浄した。固体を回収し、飽和チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、濾過して固体を回収した後、メタノールおよびジクロロメタンでそれぞれ洗浄し、濾過し、茶色固体5-b(12.5g、収率83%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ=8.56(bs,4H),7.83(s,2H)。
【0107】
ステップ3:[中間体5-c]の合成
【化31】
1Lの三つ口フラスコにアセトニトリル(500mL)を加え、窒素を20分間バブリングした後、化合物5-b(11g、50mmol)、ヨウ素(76g、300mmol)およびtBuONO(20.6g、200mmol)を順に加え、70℃で24h反応させた。反応が終了した後、降温し、アセトニトリルを減圧下で留去し、200mLのジクロロメタンを加え、濾過し、石油エーテルで洗浄し、赤レンガ色の固体5-c(11g、収率50%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ=8.74(s,2H)。
【0108】
ステップ4:[中間体5-d]の合成
【化32】
窒素雰囲気で、マロノニトリル(5.35g、81mmol)を無水DMF(135mL)に加え、0℃でNaH(3.24g、81mmol、含有量60%)を数回に分けて加え、0℃で10分間撹拌し、室温で20分間撹拌した後、化合物5-c(6.08g、13.5mmol)およびPd(PPh
4)
3(3.12g、2.7mmol)を加え、90℃まで昇温して24~36h反応させた。完全に変換した後、氷水に注ぎ、4Nの希塩酸でpH<1となるように調節し、十分に撹拌した後、大量の茶色固体が析出し、濾過して固体を回収した。ジクロロメタンで洗浄し、茶色固体を4.2g得た。その後、ジクロロメタンで連続的に2回洗浄し、濾過し、茶色固体5-d(4.02g、収率93%)を得た。LCMS(ESI):m/z 319[M-H]
-。
【0109】
ステップ5:化合物101の合成
【化33】
窒素雰囲気で、化合物5-d(3.20g、10mmol)をDCM(1L)に加え、0℃まで降温し、PIFA(12.9g、30mmol)をバッチで加え、室温で3日間撹拌し、溶液が紫黒色となった。反応が終了した後、溶液を100mL程度までスピンドライし、その後、反応液にn-へキサン(450mL)を加え、10分間撹拌して濾過し、紫黒色固体を得た。ジクロロメタンで2回洗浄し、紫黒色固体の化合物101(3.0g、収率94%)を得た。LCMS(ESI):m/z 317[M-H]
-。
【0110】
合成実施例5:化合物69の合成ステップ1:[中間体6-a]の合成
【化34】
250mLの二つ口フラスコに、窒素雰囲気で2,5-ジ(トリフルオロメチル)ブロモベンゼン(18.5g、63mmol)および超乾燥テトラヒドロフラン(100mL)を加え、-78℃まで降温し、イソプロピル塩化マグネシウム塩化リチウム溶液(54mL、69mmol、1.3Mのテトラヒドロフラン溶液)をゆっくりと滴下し、滴下し終わった後、-78℃で1h反応させ、その後、室温に移して4h反応させた。室温でZnCl
2(35mL、69.3mmol、2.0Mの2-メチルテトラヒドロフラン溶液)溶液をゆっくりと滴下し、滴下し終わった後、室温で1h撹拌した。窒素の保護で、Pd(OAc)
2(337mg、1.5mmol)、XPhos(1.43g、3.0mmol)および1-a(5.0g、15.7mmol)を一度に加え、10分間撹拌し続けた後、昇温して24h還流した。反応が終了した後、降温し、少量の飽和塩化アンモニウム溶液を加えてクエンチし、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、オフホワイトの固体6-a(4.23g、収率46%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.13(s,2H),8.07(d,J=8.4Hz,2H),7.95(d,J=8.4Hz,2H),7.87(s,2H)。
【0111】
ステップ2:[中間体6-b]の合成
【化35】
窒素雰囲気で、6-a(4.23g、7.2mmol)をTHF(200mL)に加え、-94℃まで降温し、n-ブチルリチウム(10.4mL、16.6mmol、1.6Mのn-へキサン溶液)をゆっくりと滴下し、この温度を1h保持した後、-78℃まで徐々に昇温して8h反応させた。-78℃で単体ヨウ素(5.49g、21.6mmol)のTHF溶液(30mL)を加え、加え終わった後、室温まで徐々に昇温して一晩反応させ、少量の飽和塩化アンモニウムの水溶液を加えてクエンチした後、セライトを直接加えて撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:DCM=10:1~1:1)により精製し、淡黄色固体の生成物6-b(2.7g、収率45%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.05(d,J=8.4Hz ,2H),7.94(d,J=8.4Hz,2H),7.83(s,2H)。
【0112】
ステップ3:[中間体6-c]の合成
【化36】
窒素雰囲気で、マロノニトリル(792mg、12mmol)を無水DMF(20mL)に加え、0℃でNaH(480mg、12mmol、含有量60%)を数回に分けて加え、0℃で10分間撹拌した後、室温で20分間撹拌し、その後、6-b(1.70g、2mmol)およびPd(PPh
4)
3(277mg、0.24mmol)を加え、90℃まで昇温して24~36h反応させた。完全に変換した後、氷水に注ぎ、4Nの希塩酸でpH<1となるように調節し、十分に撹拌した後、大量の黄色固体が析出し、濾過して固体を回収した。ジクロロメタンで洗浄し、黄色固体を1.50g得た。その後、ジクロロメタンで連続的に2回洗浄し、濾過し、黄色固体6-c(1.40g、収率98%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.37-8.26(m,5H),8.13(s,1H)。
【0113】
ステップ4:化合物69の合成
【化37】
窒素雰囲気で、500mLの二つ口フラスコに6-c(1.40g、2mmol)およびDCM(200mL)を加え、0℃まで降温した後、PIFA(1.72g、4.0mmol)をバッチで加え、室温で7日間撹拌し、溶液が紫黒色となった。反応が終了した後、溶液を20mL程度まで濃縮し、その中にn-へキサン(450mL)を加え、10分間撹拌した後、濾過し、灰黒色固体を得た。(DCM/PE=2:1,100mL)を用いて2回洗浄し、灰黒色固体の化合物69(1.2g、収率85%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.38-8.27(m,5H),8.13(s,1H)。
【0114】
合成実施例6:化合物42の合成ステップ1:[中間体3-b]の合成
【化38】
250mLの二つ口フラスコにジオキサン(210mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(293mg、1.3mmol)およびSPhos(1.12g、2.73mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、3-a(15.8g、65mmol)、B
2pin
2(23g、91mmol)、KOAc(12.7g、130mmol)を順に加え、110℃まで昇温して還流し、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色固体3-b(16g、収率85%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=7.64(d,J=8.4Hz,1H),7.59(m,2H),1.35(s,12H)。
【0115】
ステップ2:[中間体3-c]の合成
【化39】
250mLの二つ口フラスコにジオキサン(150mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(293mg、1.3mmol)およびXPhos(1.34g、2.8mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、1-a(4.1g、13mmol)、3-b(15.0g、52mmol)、フッ化セシウム(9.5g、62.4mmol)を順に加えた。110℃まで昇温して還流し、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色固体3-c(4.4g、70%収率)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.35(s,2H),8.23(d,J=8.8Hz,4H),7.83(t,J=8.8Hz,2H)。
【0116】
ステップ3:[中間体3-d]の合成
【化40】
窒素雰囲気で、3-c(8.1g、16.7mmol)をTHF(250mL)に加え、-94℃(アセトン/液体窒素冷却浴)まで降温し、n-ブチルリチウム(24mL、38.4mmol、1.6Mのn-へキサン溶液)をゆっくりと滴下し、この温度を1h保持した後、-78℃(アセトン/ドライアイス冷却浴)まで徐々に昇温して8h反応させた。単体ヨウ素(12.73g、50.1mmol)のTHF溶液(20mL)を加え、加え終わった後、室温まで徐々に昇温して一晩置き、少量の飽和塩化アンモニウムの水溶液を加えてクエンチした後、セライトを直接加えて撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体の生成物3-d(6.5g、収率53%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.31-8.27(m,4H),8.02(t,J=8.0Hz,2H)。
【0117】
ステップ4:[中間体3-e]の合成
【化41】
窒素雰囲気で、マロノニトリル(1.58g、24mmol)を無水DMF(40mL)に加え、0℃でNaH(960mg、24mmol、含有量60%)を数回に分けて加え、0℃で10分間撹拌し、室温で20分間撹拌した後、3-d(3.0g、4mmol)およびPd(PPh4)3(462mg、0.4mmol)を加え、90℃まで昇温して24~36h反応させた。完全に変換した後、氷水に注ぎ、4Nの希塩酸でpH<1となるように調節し、十分に撹拌した後、大量の黄色固体が析出し、濾過して固体を回収した。ジクロロメタンで洗浄し、黄色固体を2.8g得た。その後、溶剤(DCM、200mL)を用いて連続的に2回洗浄し、濾過し、黄色固体3-e(2.4g、収率99%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.08(t,J=8.0Hz,2H),8.03-7.96(m,4H)。
【0118】
ステップ5:化合物42合成
【化42】
窒素雰囲気で、3-e(2.4g、4mmol)を500mLの一つ口フラスコに入れ、DCM(200mL)を加え、0℃まで降温した後、PIFA(3.44g、8mmol)をバッチで加え、室温で3日間撹拌し、溶液が紫黒色となった。その後、得られた溶液を1Lの一つ口フラスコに入れ、溶液を残り50mL程度まで回転蒸発させ、その中にn-へキサン(450mL)を加え、10分間撹拌した後、濾過し、黒色固体を得た。それぞれ(DCM/PE=2:1、200mL)を用いて2回洗浄し、黒色固体の化合物42(2.0g、収率82%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6) δ =8.23-8.16(m,6H)。
【0119】
合成実施例7:化合物72の合成ステップ1:[中間体7-b]の合成
【化43】
500mLの二つ口フラスコにテトラヒドロフラン(130mL)および脱イオン水(130mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、その後、Pd(PPh
3)
4(1.73g、1.5mmol)、7-a(13.0g、50mmol)、3,5-ジ(トリフルオロメチル)ベンゼンボロン酸(14.2g、55mmol)、フッ化セシウム(11.1g、72mmol)を順に加え、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、ジクロロメタンで抽出して乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色固体7-b(7.8g、収率40%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=7.99(s,2H),7.96(s,1H),7.77(s,1H),7.72(s,2H)。
【0120】
ステップ2:[中間体7-c]の合成
【化44】
250mLの二つ口フラスコにジオキサン(70mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(113mg、0.5mmol)およびSPhos(431mg、1.05mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、7-b(7.8g、20mmol)、B
2pin
2(7.1g、28mmol)、KOAc(3.92g、40mmol)を順に加え、110℃まで昇温して還流し、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色固体7-c(8.2g、収率85%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.16(d,J=8Hz,2H),8.04(s,2H),7.90(d,J=6.8Hz,2H)。
【0121】
ステップ3:[中間体7-d]の合成
【化45】
2Lの二つ口フラスコにテトラヒドロフラン(1L)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(141mg、0.625mmol)およびXPhos(646mg、1.38mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、1-a(4.0g、12.5mmol)、7-c(22.2g、46mmol)、フッ化セシウム(10.5g、68.8mmol)を順に加えた。110℃まで昇温して還流し、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、テトラヒドロフランで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色固体7-d(11.6g、収率83%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=9.02(s,2H),8.89(s,2H),8.74(s,2H),8.57(s,4H),8.35(s,2H),8.18(s,2H)。
【0122】
ステップ4:[中間体7-e]の合成
【化46】
窒素雰囲気で、7-d(6.02g、6.9mmol)をTHF(250mL)に加え、-72℃まで降温し、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル塩化マグネシウム塩化リチウム複合体(16.6mL、16.6mmol、1.0Mの溶液)をゆっくりと滴下し、この温度を1h保持した後、-20℃まで徐々に昇温し、この温度で2h反応させた。その後、さらに-78℃まで降温し、単体ヨウ素(7.11g、28mmol)のTHF溶液(20mL)を加え、加え終わった後、室温まで徐々に昇温して一晩置き、少量の飽和塩化アンモニウムの水溶液を加えてクエンチした後、セライトを直接加えて撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体の生成物7-e(6.3g、収率82%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=9.00(s,2H),8.70(s,2H),8.57(s,4H),8.42(s,2H),8.21(s,2H)。
【0123】
ステップ5:[中間体7-f]の合成
【化47】
窒素雰囲気で、マロノニトリル(1.35g、20.4mmol)を無水DMF(40mL)に加え、0℃でNaH(820mg、20.4mmol、含有量60%)を数回に分けて加え、0℃で10分間撹拌し、室温で20分間撹拌した後、7-e(3.82g、3.4mmol)およびPd(PPh
4)
3(393mg、0.34mmol)を加え、90℃まで昇温して24~36h反応させた。完全に変換した後、氷水に注ぎ、4Nの希塩酸でpH<1となるように調節し、十分に撹拌した後、大量の固体が析出し、濾過して固体を回収した。ジクロロメタンで洗浄し、濾過してオフホワイトの固体を3.3g得た。その後、溶剤(DCM、200mL)を用いて連続的に2回洗浄し、濾過してオフホワイトの固体7-f(3.2g、収率95%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.92(s,4H),8.41(s,4H),8.37(s,4H)。
【0124】
ステップ6:化合物72合成
【化48】
窒素雰囲気で、7-f(3.2g、3.2mmol)を500mLの一つ口フラスコに加え、DCM(200mL)を加え、0℃まで降温した後、PIFA(2.92g、6.8mmol)をバッチで加え、室温で5日間撹拌し、溶液が紫黒色となった。その後、得られた溶液を1Lの一つ口フラスコに入れ、溶液を残り50mL程度まで回転蒸発させ、その中にn-へキサン(450mL)を加え、10分間撹拌した後、濾過して黒色固体を得た。それぞれ(DCM/PE=1:1,200mL)を用いて2回洗浄し、最後に、黒色固体の化合物72(2.8g、収率88%)を得た。
1H NMR(400MHz,アセトン-d
6)δ=8.56(s,8H),8.24(s,4H)。
【0125】
合成実施例8:化合物54の合成ステップ1:[中間体8-b]の合成
【化49】
500mLの二つ口フラスコにジオキサン(300mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(423mg、1.6mmol)およびXPhos(1.53g、3.2mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、1-a(4.1g、12.9mmol)、ホウ酸8-a(22.8g、51.9mmol)、フッ化セシウム(11.0g、80.0mmol)を順に加えた。110℃まで昇温して還流し、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより白色固体8-b(6.7g、収率45%)を得た。
【0126】
ステップ2:[中間体8-c]の合成
【化50】
窒素雰囲気で、8-b(6.5g、6.85mmol)をTHF(325mL)に加え、-78℃まで降温し、LDA(9.7mL、15.7mmol)をゆっくりと滴下し、この温度を10min保持した後、-15℃まで徐々に昇温し、溶液の色が赤黒色になった。2h後、単体ヨウ素(5.22g、20.56mmol)のTHF溶液(20mL)を加え、加え終わった後、室温まで徐々に昇温して一晩置き、少量の飽和塩化アンモニウムの水溶液を加えてクエンチした後、セライトを直接加えて撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:DCM=10:1~2:1)により白色固体の生成物8-c(5.1g、収率62%)を得た。
【0127】
ステップ3:[中間体8-d]の合成
【化51】
窒素雰囲気で、マロノニトリル(2.06g、31.2mmol)を無水DMF(100mL)に加え、0℃でNaH(1.22g、30.3mmol)を数回に分けて加え、0℃で10分間撹拌し、室温で20分間撹拌した後、溶液が淡黄色になり、その後、8-c(5.0g、4.16mmol)およびPd(PPh
4)
3(0.89g、0.77mmol)を加え、90℃まで昇温して24h反応させた。完全に変換した後、氷水に注ぎ、4Nの希塩酸でpH<1となるように調節し、十分に撹拌した後、大量の黄色固体が析出し、濾過して固体を回収した。ジクロロメタンで叩解し、黄色固体を得、その後、トルエンを用いて90℃で1.5h煮込み、濾過して黄色固体8-d(4.3g、収率95%)を得た。
【0128】
ステップ4:化合物54の合成
【化52】
窒素雰囲気で、8-d(4.3g、3.97mmol)を二つ口フラスコに入れ、DCM(430mL、0.01M)を加え、0℃まで降温した後、PIFA(1.79g、4.17mmol)をバッチで加え、室温で1日間撹拌し、溶液が紫黒色となった。その後、溶液を1Lの一つ口フラスコに入れ、溶液を50mL程度までスピンドライし、その中にn-へキサン(250mL)を加え、10分間撹拌した後、濾過した後、それぞれ(DCM/PE=1:1,200mL)を用いて2回洗浄し、紫黒色固体の化合物54(3.0g、収率70%)を得た。生成物がターゲット生成物であり、分子量1074であることを確認した。
【0129】
合成実施例9:化合物1367の合成ステップ1:[中間体9-a]の合成
【化53】
1Lの二つ口フラスコにジオキサン(450mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(1.27g、5.66mmol)およびXPhos(5.62g、11.8mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、1-a(15.0g、47.18mmol)、2-フェニルベンゼンボロン酸(39.2g、198.1mmol)、フッ化セシウム(33.25g、240.6mmol)を順に加えた。110℃まで昇温して還流し、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより白色固体9-a(5.0g、収率23%)を得た。
【0130】
ステップ2:[中間体9-b]の合成
【化54】
窒素雰囲気で、9-a(4.92g、10.59mmol)をTHF(120mL)に加え、-78℃まで降温し、LDA(15.0mL、24.36mmol、1.6Mの溶液)をゆっくりと滴下し、この温度を10分間保持し、その後、-15℃まで徐々に昇温して反応させた。2時間後に、単体ヨウ素(8.07g、31.77mmol)のTHF溶液(20mL)を加え、加え終わった後、室温まで徐々に昇温して一晩置き、少量の飽和塩化アンモニウムの水溶液を加えてクエンチした後、セライトを直接加えて撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:DCM=10:1~2:1)により白色固体の生成物9-b(6.2g、収率81%)を得た。
【0131】
ステップ3:[中間体9-c]の合成
【化55】
窒素雰囲気で、マロノニトリル(4.28g、64.9mmol)を無水DMF(86mL)に加え、0℃でNaH(2.52g、63.1mmol)を数回に分けて加え、0℃で10分間撹拌し、室温で20分間撹拌した後、溶液が淡黄色(または赤味)となり、その後、9-b(6.2g、8.65mmol)およびPd(PPh
4)
3(1.84g、1.6mmol)を加え、90℃まで昇温して24h反応させた。完全に変換した後、氷水に注ぎ、4Nの希塩酸でpH<1となるように調節し、十分に撹拌した後、大量の黄色固体が析出し、濾過して固体を回収した。ジクロロメタンで叩解し、黄色固体を得た後、トルエンを用いて90℃で1.5h洗浄し、濾過して黄色固体9-c(4.81g、収率93%)を得た。
【0132】
ステップ4:化合物1367の合成
【化56】
窒素雰囲気で、9-c(4.81g、8.12mmol)を二つ口フラスコに入れ、それぞれDCM(480mL)を加え、0℃まで降温した後、PIFA(3.67g、8.53mmol)をバッチで加え、室温で1日間撹拌した。その後、溶液を1Lの一つ口フラスコに入れ、溶液を残り50mL程度まで回転蒸発させ、その中にn-へキサン(400mL)を加え、10分間撹拌した後、濾過して紫黒色固体を得、その後、それぞれ(DCM/PE=1:1,200mL)を用いて2回洗浄し、紫黒色固体の化合物1367(4.1g、85%収率)を得た。生成物がターゲット生成物であり、分子量590であると確認した。
【0133】
合成実施例10:化合物43の合成ステップ1:[中間体10-b]の合成
【化57】
250mLの二つ口フラスコにジオキサン(160mL)を加え、窒素を15分間バブリングし、撹拌しながらPd(OAc)
2(0.282g、1.26mmol)およびXPhos(1.2g、2.52mmol)を加え、10分間撹拌し続けた後、1-a(8.0g、25.16mmol)、10-a(24.46g、75.48mmol)、水酸化ナトリウム(3.52g、88.04mmol)を順に加えた。80℃まで昇温して反応させ、窒素の保護で一晩攪拌した。反応が終了した後、降温し、セライトで濾過し、ジクロロメタンで十分に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより白色固体10-b(13g、収率93.6%)を得た。
【0134】
ステップ2:[中間体10-c]の合成
【化58】
乾燥した500mLのSchlenkフラスコに、窒素雰囲気で10-b(12g、21.7mmol)およびTHF(240mL)を加え、-30℃まで降温し、TMPMgClLiCl(54mL、54mmol、1.0Mの溶液)をゆっくりと滴下し、-30℃で2h反応させ、サンプリングし、HPLCによりリチウム化が完全であるとモニタした後、-30℃で単体ヨウ素(16.55g、65.1mmol)のTHF溶液(50mL)を加え、加え終わった後、室温まで徐々に昇温して一晩置き、少量の飽和塩化アンモニウムの水溶液を加えてクエンチした後、セライトを直接加えて撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:DCM=10:1~2:1-1:1)により、PE:DCM=10:1で叩解し、白色固体10-c(12g、収率69%)を得た。
【0135】
ステップ3:[中間体10-d]の合成
【化59】
乾燥した1Lの三つ口フラスコに、窒素雰囲気でNaH(2.98g、74.4mmol)および超乾燥DMF(80mL)を加え、0℃でマロノニトリル(4.95g、75mmol)を加えた。室温で0.5h反応させ、10-c(10g、12.4mmol)およびPd(PPh3)4(0.718g、0.62mmol)を加え、80℃まで加熱して18h反応させ。反応が終了した後、0℃で100mLの2NのHClを滴下し、濾過して粗品を得た。アセトンを用いて水と共沸し、アセトンを溶解し、不溶物を濾過し、濾過液をスピンドライして結晶化して白色(若干黄色みを帯びている)固体10-d(8.5g、収率91%)を得た。
【0136】
ステップ4:化合物43の合成
【化60】
2Lの三つ口フラスコに、窒素雰囲気で10-d(8.5g、12.5mmol)およびDCM(750mL)を加え、その後、0℃でPIFA(5.91g、13.75mmol)溶液を滴下した。20h反応させた。その後、溶液を2Lの一つ口フラスコに入れ、溶液を残り100mL程度まで回転蒸発し、その中にn-へキサン(500mL)を加え、10分間撹拌した後、濾過して紫黒色固体を得た。それぞれ(DCM/PE=2:1、200mL)を用いて2回洗浄し、最後に、紫黒色固体の化合物43(7.5g、収率88%)を得た。生成物がターゲット生成物であり、分子量678であることを確認した。
【0137】
当業者は、上記調製方法が一例に過ぎず、当業者がそれを改良することにより本発明の他の化合物構造を取得できることを知るべきである。
【0138】
〔素子実施例1〕
(素子実施例1.1)
厚さ80nmのインジウムスズ酸化物(ITO)透明電極を有するガラス基板を、酸素プラズマおよびUVオゾンで処理した。蒸着前に、洗浄後のガラス基板をグローブボックス内のホットステージ上で乾燥した。以下の材料は、真空度が約10-8Torrである場合に、0.2~2オングストローム/秒の速度で順にガラス表面に蒸着した。まず、本発明の化合物56をガラス基板の表面に蒸着して1つの厚さ10nmの膜を形成して正孔注入層(HIL)とした。次に、化合物HT1を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ120nmの膜を形成して正孔輸送層(HTL)とした。続いて、化合物EB1を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ5nmの膜を形成して電子ブロッキング層(EBL)とした。その後、化合物BHおよび化合物BD(重量比96:4)を上記得られた膜に共蒸着して厚さ25nmの膜を形成して発光層(EML)とした。さらに、化合物HB1を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ5nmの膜を形成して正孔ブロッキング層(HBL)とした。また、8-ヒドロキシキノリナート-リチウム(Liq)および化合物ET1(重量比60:40)を上記得られた膜に共蒸着して1つの厚さ30nmの膜を形成して電子輸送層(ETL)とした。最後に、Liqを蒸着して厚さ1nmの膜を形成して電子注入層(EIL)とし、かつ厚さ120nmのアルミニウムを蒸着して陰極とした。その後、当該素子をグローブボックスに移し、ガラスカバーおよび吸湿剤でカプセル化し、当該素子を完了した。
【0139】
(素子実施例1.2)
素子実施例1.2は、化合物56の代わりに化合物68をHILとして用いたほかは、素子実施例1.1と同様にして作成した。
【0140】
(素子実施例1.3)
素子実施例1.3は、化合物56の代わりに化合物70をHILとして用いたほかは、素子実施例1.1と同様にして作成した。
【0141】
(素子実施例1.4)
素子実施例1.4は、化合物70を用いて1つの厚さ5nmの膜を形成してHILとしたほかは、素子実施例1.3と同様にして作成した。
【0142】
(素子実施例1.5)
素子実施例1.5は、化合物70を用いて1つの厚さ2nmの膜を形成してHILとしたほかは、素子実施例1.3と同様にして作成した。
【0143】
(素子実施例1.6)
素子実施例1.6は、化合物HT1の代わりに化合物HT2をHTLとして用いたほかは、素子実施例1.3と同様にして作成した。
【0144】
(素子実施例1.7)
素子実施例1.7は、化合物70を用いて1つの厚さ2nmの膜を形成してHILとしたほかは、素子実施例1.6と同様にして作成した。
【0145】
(素子実施例1.8)
素子実施例1.8は、化合物70を用いて1つの厚さ1nmの膜を形成してHILとしたほかは、素子実施例1.6と同様にして作成した。
【0146】
(素子比較例1.1)
素子比較例1.1は、化合物56の代わりに比較化合物HI1をHILとして用いたほかは、素子実施例1.1と同様にして作成した。
【0147】
(素子比較例1.2)
素子比較例1.2は、化合物70を使用せず、正孔注入層がないほかは、素子実施例1.6と同様にして作成した。
【0148】
詳細な素子層の構造および厚さは表1に示すとおりである。用いられる材料が1種以上の層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0149】
表1:素子実施例および比較例の素子構造
【表17】
【0150】
素子に用いられる材料の構造は以下のとおりである。
【化61】
【化62】
【0151】
以上の素子は、10mA/cm2でIVL特性を測定し、その電圧(V)、電力効率(PE)および寿命(LT95)は、いずれも表2に示される。
【0152】
【0153】
(検討1)
上記表から見られるように、本発明の8個の好ましい実施例および比較例は、単独な材料を用いて正孔注入層とする場合、電圧、電力効率および寿命のいずれの面においても、好ましい実施例は全て比較例よりも優れている。電圧が約0.5V低下でき、電力効率がいずれも向上し、寿命が何倍まで向上した。正孔注入層の厚さを5nmおよび2nmに低減し、さらに1nmに低減した場合にも、電圧、効率および寿命のいずれも非常に優れている。特に、正孔注入層がない場合に、素子の電圧が8.34Vと高く、電力効率および寿命も全て正孔注入層を有する素子よりも劣る。これにより、単独で正孔注入層として用いられる場合、本発明の化合物は比較化合物よりもさらに好ましい選択肢であり、それによる向上は全く予想されないことがわかった。
【0154】
〔素子実施例2〕
(素子実施例2.1)
厚さ80nmのインジウムスズ酸化物(ITO)透明電極を有するガラス基板を、酸素プラズマおよびUVオゾンで処理した。蒸着前に、洗浄後のガラス基板をグローブボックス内のホットステージ上で乾燥した。以下の材料は、真空度が約10-8Torrである場合に、0.2~2オングストローム/秒の速度で順にガラス表面に蒸着した。まず、本発明の化合物56(ドーパント)および化合物HT1(重量比3:97)をガラス基板の表面に共蒸着して1つの厚さ10nmの膜を形成して正孔注入層(HIL)とした。次に、化合物HT1を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ120nmの膜を形成して正孔輸送層(HTL)とした。続いて、化合物EB1を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ5nmの膜を形成して電子ブロッキング層(EBL)とした。その後、化合物BHおよび化合物BD(重量比96:4)を上記得られた膜に共蒸着して厚さ25nmの膜を形成して発光層(EML)とした。さらに、化合物HB1を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ5nmの膜を形成して正孔ブロッキング層(HBL)とした。また、8-ヒドロキシキノリナート-リチウム(Liq)および化合物ET1(重量比60:40)を上記得られた膜に共蒸着して1つの厚さ30nmの膜を形成して電子輸送層(ETL)とした。最後に、Liqを蒸着して厚さ1nmの膜を形成して電子注入層(EIL)とし、かつ厚さ120nmのアルミニウムを蒸着して陰極とした。その後、当該素子をグローブボックスに移し、ガラスカバーおよび吸湿剤でカプセル化し、当該素子を完了した。
【0155】
(素子実施例2.2)
素子実施例2.2は、HILにおいて化合物56の代わりに化合物68をドーパントとして用いたほかは、素子実施例2.1と同様にして作成した。
【0156】
(素子実施例2.3)
素子実施例2.3は、HILにおいて化合物56の代わりに化合物70をドーパントとして用いたほかは、素子実施例2.1と同様にして作成した。
【0157】
(素子実施例2.4)
素子実施例2.4は、化合物HT1の代わりに、化合物HT2を用いて化合物56と共蒸着(重量比97:3)してHILとし、および化合物HT1の代わりに化合物HT2をHTLとして用いたほかは、素子実施例2.1と同様にして作成した。
【0158】
(素子実施例2.5)
素子実施例2.5は、HILにおいて化合物56の代わりに化合物68をドーパントとして用いたほかは、素子実施例2.4と同様にして作成した。
【0159】
(素子実施例2.6)
素子実施例2.6は、HILにおいて化合物56の代わりに化合物69をドーパントとして用いたほかは、素子実施例2.4と同様にして作成した。
【0160】
(素子実施例2.7)
素子実施例2.7は、化合物HT2を用いて化合物42と共蒸着(重量比98:2)してHILとしたほかは、素子実施例2.4と同様にして作成した。
【0161】
(素子実施例2.8)
素子実施例2.8は、化合物42の代わりに化合物72をドーパントとして用いたほかは、素子実施例2.7と同様にして作成した。
【0162】
(素子実施例2.9)
素子実施例2.9は、化合物42の代わりに化合物54をドーパントとして用いたほかは、素子実施例2.7と同様にして作成した。
【0163】
(素子実施例2.10)
素子実施例2.10は、化合物42の代わりに化合物1367をドーパントとして用いたほかは、素子実施例2.7と同様にして作成した。
【0164】
(素子実施例2.11)
素子実施例2.11は、化合物42の代わりに化合物43をドーパントとして用いたほかは、素子実施例2.7と同様にして作成した。
【0165】
(素子比較例2)
素子比較例2は、HILにおいて化合物56の代わりに化合物HI1をドーパントとして用いたほかは、素子実施例2.1と同様にして作成した。
【0166】
素子に用いられる化合物の具体的な構造は、素子実施例1に示すとおりである。
【0167】
詳細な素子層の構造および厚さは表3に示すとおりである。用いられる材料が1種以上の層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0168】
表3:素子実施例および比較例の素子構造
【表19】
【0169】
素子に用いられる新しい化合物の具体的な構造は以下に示すとおりである。
【化63】
【0170】
以上の素子は、10mA/cm2でIVL特性を測定し、その電圧(V)、電力効率(PE)および寿命(LT95)は、いずれも表4に示される。
【0171】
【0172】
(検討2)
上記表から見られるように、本発明の11個の好ましい実施例および比較例は、HT1またはHT2のドーパントを正孔注入層として用いる場合、2種類の材料の素子における性能の差が非常に大きい。まず、電圧の面で、比較例の電圧は8.57Vと高いが、好ましい実施例の電圧は4.18V程度のみであり、半減した。実施例の電力効率も比較例の2倍またはそれ以上であった。特に、寿命の面で、好ましい実施例は比較例の数十倍であり、全く一桁ではない。そのため、ドーパントとして用いられる場合、本発明に開示された化合物は、比較化合物よりも多く優れた正孔注入材料であり、本発明の化合物の素子に対する性能は、特に電圧低減および寿命向上の面において、それによる向上は全く予想されず、かつ圧倒的な優位性を有する。
【0173】
〔素子実施例3〕
(素子実施例3.1)
厚さ80nmのインジウムスズ酸化物(ITO)透明電極を有するガラス基板を、酸素プラズマおよびUVオゾンで処理した。蒸着前に、洗浄後のガラス基板をグローブボックス内のホットステージ上で乾燥した。以下の材料は、真空度が約10-8Torrである場合に、0.2~2オングストローム/秒の速度で順にガラス表面に蒸着した。まず、化合物56をガラス基板の表面に蒸着して1つの厚さ10nmの膜を形成して正孔注入層(HIL)とした。次に、化合物HT1を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ35nmの膜を形成して正孔輸送層(HTL)とした。続いて、化合物EB2を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ5nmの膜作を形成して電子ブロッキング層(EBL)とした。その後、化合物EB2、化合物HB2および化合物GD(重量比46:46:8)を上記得られた膜に共蒸着して厚さ40nmの膜を形成して発光層(EML)とした。さらに、化合物HB2を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ5nmの膜を形成して正孔ブロッキング層(HBL)とした。8-ヒドロキシキノリナート-リチウム(Liq)および化合物ET2(重量比60:40)を上記得られた膜に共蒸着して1つの厚さ35nmの膜を形成して電子輸送層(ETL)とした。最後に、Liqを蒸着して厚さ1nmの膜を形成して電子注入層(EIL)とし、かつ厚さ120nmのアルミニウムを蒸着して陰極とした。その後、当該素子をグローブボックスに移し、ガラスカバーおよび吸湿剤でカプセル化し、当該素子を完了した。
【0174】
(素子実施例3.2)
素子実施例3.2は、化合物56の代わりに、化合物56(ドーパント)と化合物HT1(重量比3:97)とを共蒸着したものを正孔注入層(HIL)として用いたほかは、素子実施例3.1と同様にして作成した。
【0175】
(素子実施例3.3)
素子実施例3.3は、化合物56の代わりに化合物70を正孔注入層(HIL)として用い、および化合物HT1の代わりに化合物HT2をHTLとして用いたほかは、素子実施例3.1と同様にして作成した。
【0176】
(素子実施例3.4)
素子実施例3.4は、化合物70の代わりに、化合物70(ドーパント)と化合物HT2(重量比3:97)とを共蒸着したものを正孔注入層(HIL)として用いたほかは、素子実施例3.3と同様にして作成した。
【0177】
素子に用いられる新しい化合物の具体的な構造は以下に示すとおりである。
【化64】
【0178】
詳細な素子層の構造および厚さは表5に示すとおりである。用いられる材料が1種以上の層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0179】
【0180】
以上の素子は、10mA/cm2でIVL特性を測定し、その電圧(V)、電力効率(PE)および寿命(LT95)は、いずれも表6に示される。
【0181】
【0182】
(検討3)
緑色光素子から見られるように、化合物56および化合物70を単独で正孔注入層として用いる場合、電圧、効率および寿命の表現は非常に優れている。化合物56および化合物70をドーパントとして正孔注入層として用いる場合、実施例3.1および実施例3.3と比べ、電圧差が大きくなく、効率がやや高く、寿命の面では、化合物56および化合物70を単独で正孔注入層として用いる場合が長い。
【0183】
〔素子実施例4〕
(素子実施例4.1)
厚さ80nmのインジウムスズ酸化物(ITO)透明電極を有するガラス基板を、酸素プラズマおよびUVオゾンで処理した。蒸着前に、洗浄後のガラス基板をグローブボックス内のホットステージ上で乾燥した。以下の材料は、真空度が約10-8Torrである場合に、0.2~2オングストローム/秒の速度で順にガラス表面に蒸着した。まず、化合物56をガラス基板の表面に蒸着して1つの厚さ10nmの膜を形成して正孔注入層(HIL)とした。次に、化合物HT1を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ40nmの膜を形成して正孔輸送層(HTL)とした。その後、化合物EB2を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ5nmの膜作を形成して電子ブロッキング層(EBL)とした。その後、化合物RHおよび化合物RD(重量比98:2)を上記得られた膜に共蒸着して厚さ40nmの膜を形成して発光層(EML)とした。その後、化合物HB2を上記得られた膜に蒸着して1つの厚さ5nmの膜を形成して正孔ブロッキング層(HBL)とした。8-ヒドロキシキノリナート-リチウム(Liq)および化合物ET2(重量比60:40)を上記得られた膜に共蒸着して1つの厚さ35nmの膜を形成して電子輸送層(ETL)とした。最後に、Liqを蒸着して厚さ1nmの膜を形成して電子注入層(EIL)とし、かつ厚さ120nmのアルミニウムを蒸着して陰極とした。その後当該素子をグローブボックスに移し、ガラスカバーおよび吸湿剤でカプセル化し、当該素子を完了した。
【0184】
(素子実施例4.2)
素子実施例4.2は、化合物56(ドーパント)および化合物HT1(重量比3:97)をガラス基板の表面に共蒸着して1つの厚さ10nmの膜を形成して正孔注入層(HIL)としたほかは、素子実施例4.1と同様にして作成した。
【0185】
(素子実施例4.3)
素子実施例4.3は、化合物56の代わりに化合物70を正孔注入層(HIL)として用い、および化合物HT1の代わりに化合物HT2をHTLとして用いたほかは、素子実施例4.1と同様にして作成した。
【0186】
(素子実施例4.4)
素子実施例4.4は、化合物70の代わりに、化合物70(ドーパント)と化合物HT2(重量比3:97)とを共蒸着したものを正孔注入層(HIL)として用いたほかは、素子実施例4.3と同様にして作成した。
【0187】
素子に用いられる新しい化合物の具体的な構造は以下に示すとおりである。
【化65】
【0188】
詳細な素子層の構造および厚さは表7に示すとおりである。用いられる材料が1種以上の層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0189】
【0190】
以上の素子は、10mA/cm2でIVL特性を測定し、その電圧(V)、電力効率(PE)および寿命(LT95)は、いずれも表8に示される。
【0191】
【0192】
(検討4)
赤色光素子から見られるように、化合物56および化合物70を単独で正孔注入層として用いる場合、電圧、効率および寿命のいずれの面においても、効果が非常に良好である。化合物56および化合物70をドーパントとして正孔注入層として用いる場合、実施例4.1および実施例4.3と比べ、電圧差が大きくなく、効率がやや高く、寿命の面では、化合物56を単独で正孔注入層として用いる場合が長い。
【0193】
以上の結果をまとめると、脱水素ベンゾビスオキサゾール誘導体は、単独で正孔注入層として用いられても、ドーパントとして用いられても、赤色光、緑色光、青色光素子における効果がいずれも非常に優れ、非常に良好な珍しい正孔注入材料である。
【0194】
本発明に開示された化合物は、脱水素ベンゾビスオキサゾール、脱水素ベンゾビスチアゾール、または脱水素ベンゾビスセレナゾール系誘導体であり、その分子の母核に含まれたヘテロ原子が異なるため、その最低空分子軌道(LUMO)に相違性が存在する。DFTにより、脱水素ベンゾビスオキサゾール(NO系化合物)、脱水素ベンゾビスチアゾール(NS系化合物)、および脱水素ベンゾビスセレナゾール系誘導体(NSe系化合物)という3種類の化合物のLUMOを計算(GAUSS-09、B3LYP/6-311G(d)を条件とする)し、表9に示すとおりである。
【0195】
【0196】
前の素子結果から見られるように、脱水素ベンゾビスオキサゾール系誘導体の素子結果が様々な面でいずれも非常に優れ、効率的な正孔注入材料である。上記DFTの計算結果から見られるように、同一シリーズの分子を比較し、脱水素ベンゾビスオキサゾール系誘導体、脱水素ベンゾビスチアゾール系誘導体、および脱水素ベンゾビスセレナゾール系誘導体のLUMO差がほとんどなく、0.2ev程度であり、3種類の化合物が全て深いLUMOを有し、全て極めて電子が不足である特性を有することを表し、従って、脱水素ベンゾビスチアゾール系誘導体および脱水素ベンゾビスセレナゾール系誘導体も、優れた正孔注入材料になる潜在能力を有し、より長い素子寿命、より高い効率、およびより低い電圧のようなOLED性能を大幅に向上させる可能性があり、非常に広い工業応用の見通しを有している。
【0197】
上記素子結果およびDFTによる計算から見られるように、本発明の脱水素ベンゾビスオキサゾール、脱水素ベンゾビスチアゾール、または脱水素ベンゾビスセレナゾール、およびその類似構造の新型な化合物は非常に重要な電荷遷移材料であり、特に、正孔輸送において圧倒的な優位性があり、異なるタイプの有機半導体素子に適用し、蛍光OLED、りん光OLED、白色光OLED、積層OLED、OTFT、OPV等を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0198】
ここで説明する各実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。そのため、当業者によく見られるように、保護を要求する本発明は、本明細書に係る具体的な実施例および好ましい実施例の変化を含んでもよい。本明細書に係る材料および構造における多くは、他の材料および構造で置換されてもよく、本発明の精神から逸脱しない。本発明の原理に関する各種の理論は、限定的なものではないことが理解されるべきである。